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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 171/00 20060101AFI20240301BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20240301BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240301BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240301BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240301BHJP
   F21V 17/10 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C09J171/00
C09J123/00
C09J133/04
C09J11/04
C09J11/06
F21V17/10 350
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021518890
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 CN2018112856
(87)【国際公開番号】W WO2020087316
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グオ、イ
(72)【発明者】
【氏名】ポン、チアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、チアン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、イェ
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222485(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041550(WO,A1)
【文献】特開2010-111870(JP,A)
【文献】特開2008-007777(JP,A)
【文献】特開平07-182905(JP,A)
【文献】特開2012-203992(JP,A)
【文献】特開2009-054348(JP,A)
【文献】特開2000-182410(JP,A)
【文献】特開2010-257714(JP,A)
【文献】特許第4628548(JP,B2)
【文献】特開2012-017427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10;9/00-201/10
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘイズ防止コーティングで処理された、ランプのフロントレンズを、ランプ本体に接着するための、2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物であって、
ベース部、すなわちA部と、触媒パッケージ、すなわちB部と、を含み、
前記ベース部、すなわちA部が、
(a)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基[式中、各Rは、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、mは、1、2、又は3である]を有するシリル変性有機ポリマーであって、ポリエーテル、炭化水素ポリマー、及びアクリレートポリマーから選択される、有機ポリマーと、
(b)沈降炭酸カルシウム、沈降シリカ、及びヒュームドシリカから選択される1つ以上の補強充填剤と、
を含み、
並びに
前記触媒パッケージ、すなわちB部が、
(i)スズ系触媒、及び
(ii)架橋剤であって、
(iic)構造
(R’O)Si(CHN(H)-(CHNH
[式中、各R’は同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは2~10であり、zは2~10である]のシランのみからなるか、又は、
前記(iic)の構造のシランと、下記(iia)、(iib)、及び(iid)の構造のシラン:
(iia)構造
Si(OR4-j
[式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、2個以上の炭素原子を有するアルキル基であり、
jは、1又は0であり、
は、炭素数が2個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されている有機基、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、若しくはイソシアネート基を有する有機基である]のシラン、
(iib)構造
Si(OMe)
[式中、RはRである]の、ただし分子量が190以上である、シラン、及び、
(iid)構造
(RO)(Y3-r-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-r
[式中、Rは、C1~10アルキル基であり、Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各rは、独立して1、2、又は3であり、wは、0又は1である]の二脚状シラン、
のうちの1つ以上との混合物のみからなる、架橋剤、
並びに任意選択的に、
(iii)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマーa)、及び/又は
(iv)充填剤、
を含む、2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項2】
A部中の前記補強充填剤(b)が、沈降炭酸カルシウムであり、B部中の前記任意選択による充填剤(iv)が、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、沈降シリカ、及び/又はヒュームドシリカである、請求項1に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項3】
触媒(i)が、スズトリフレート、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、第一スズオクトエート、ジブチルスズビス2,4-ペンタンジオネート、ジメチルスズジネオデカノエート、及びジブチルスズジオクトエートから選択されるスズ触媒である、請求項1又は2に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項4】
A部中のポリマー(a)及びB部中のポリマー(a)がいずれも、
(R)(Y3-m-Si-D-[NH-C(=O)]
[式中、各Rは、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、mは、1、2、又は3であり、Dは、二価C2-6アルキレン基であり、kは、1又は0である]を末端とするポリエーテルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項5】
架橋剤(ii)が、タイプ(iic)の架橋剤、又は架橋剤(iic)と(iid)との混合物のいずれかである、請求項1~4のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項6】
カーボンブラックが、前記触媒パッケージの1~30重量%の量でB部、すなわち前記触媒パッケージ中に更に存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項7】
B部が、前記触媒パッケージの全重量%を100重量%として、
前記触媒パッケージの重量に基づいて、0.5~40重量%の量の縮合硬化系触媒(i)、
前記触媒パッケージの重量に基づいて、1~80重量%の量の架橋剤(ii)、並びに任意選択的に
前記触媒パッケージの重量に基づいて、0~98.5重量%の量の、1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマー、及び/又は
前記触媒パッケージの重量に基づいて、0~40重量%の量の充填剤、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項8】
A部、すなわち前記ベースと、B部、すなわち前記触媒パッケージとが、15:1~1:1の重量比で混合される、請求項1~7のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物。
【請求項9】
光源が入っているランプチャンバを画定するランプ本体を有し、フロント開口部を有する、ランプであって、フロントレンズが、前記フロント開口部に係合するよう提供され、前記フロントレンズは、内面及び外面を有し、前記内面は、前記ランプチャンバを更に画定し、前記内面は、ヘイズ防止コーティングでコーティングされており、前記フロントレンズが前記ランプチャンバに、請求項1~8のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物から作製された硬化接着剤によって接着されていることを特徴とする、ランプ。
【請求項10】
収容された前記ランプ本体が、ポリブチレンテレフタレート、鋳造アルミニウム、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアミド、アクリル-スチレン-アクリロニトリル、又はこれらの複合体から作製された、請求項9に記載のランプ。
【請求項11】
前記フロントレンズが、ポリカーボネート又はポリ(メチルメタクリレート)から作製された、かつ/又は、前記フロントレンズの前記外面が、耐擦過コーティングで処理されている、請求項9又は10に記載のランプ。
【請求項12】
請求項9、10、又は11に記載のランプの製造方法であって、フロント開口部及びフロントレンズを有する、ランプ本体を準備する工程であって、前記フロントレンズが、少なくとも、ヘイズ防止コーティングで処理された内面を有する、準備する工程と、前記フロントレンズとの間に前記ランプ本体の前記フロント開口部への接合部を、前記フロントレンズを前記ランプ本体の前記フロント開口部に係合させることによって形成する工程と、前記フロントレンズと前記ランプ本体との間の前記接合部を請求項1~7のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物で封止する工程であって、前記2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物のA部とB部とを一緒に混合して混合物を形成し、前記混合物を前記フロントレンズと前記ランプ本体との間の前記接合部に適用して、前記2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物の硬化を引き起こす、すなわち前記2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物を硬化させることによって封止する工程と、を含む、方法。
【請求項13】
屋外照明、装飾照明、及び/又は車両ランプにおける、請求項9、10、又は11に記載のランプの使用。
【請求項14】
前記車両ランプが、ヘッドランプ、ブレーキランプ、ランニングランプ、方向指示ランプ、フォグランプ、バックアップランプ、及び駐車ランプから選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
ヘイズ防止コーティングで処理された、ランプのフロントレンズを、ランプ本体に接着し、それとともに、前記ヘイズ防止コーティングの機能を阻害する化学種の発生を最小化又は防止するための、接着剤としての、請求項1~8のいずれか一項に記載の2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に、照明用途のためのランプ本体上へのフロントレンズの接着に使用するための、縮合硬化性シリル変性ポリマー(SMP)系接着剤の提供、及び、ランプ本体とフロントレンズとを備え、当該レンズをランプ本体に接着するために当該接着剤を利用している、ランプに関する。
【0002】
縮合硬化性SMP系接着剤は、様々な照明及び窓用途に利用されている。例として、これらは、防曇窓用の接着剤、照明用途のためのレンズ用の接着剤、及び/又は自動車照明、道路照明、屋外照明などの照明用途のための透明カバー用の接着剤として使用することができる。特に重要なものは、「高効率」照明システム、例えば発光ダイオード(LED)用途、有機LED用途、蛍光照明用途、蒸気ガス放電照明用途、及びネオン灯用途におけるその使用である。
【0003】
高効率照明用途の特徴の1つは、それにより生じる熱が従来の光源よりも少ないことである。これらの高効率照明システムは、多くの場合、囲われたハウジングにて提供される。照明ユニット、例えば、自動車ヘッドランプは、多くの場合、ランプチャンバを画定するランプ本体を備え、フロント開口部と、フロント開口部に適合し係合するよう設計され、接着剤、例えば、縮合硬化性オルガノシロキサン系接着剤により定位置に封止されたフロントレンズとを有する。ランプチャンバ内に位置する放電灯電球は、光源として働く。
【0004】
フロントレンズは、典型的には透明であり、様々な材料、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリカーボネート樹脂から作製することができる。このような樹脂は、例えば照明ユニット用のフロントレンズを作製するために成形、押出成形、及び/又は熱成形することができ、また、照明システムの全体的な透明性及び透過性を改善することができる。しかし、ポリカーボネート及びこれらのレンズを製造するのに好適な他の樹脂から作製された製品は、典型的には疎水性表面を有する。これらの表面の疎水性の性質は、封止された照明ユニット内で、例えばLEDシステム内で透明な前カバーとして使用されるとき、並びに熱がより少ない他の発光器具として使用されるとき、例えば、ポリカーボネート材料がその光学品質、高屈折率(RI)、及び/又は光学的透明度のために使用されるとき、問題があると判明することがある。この理由は、樹脂表面上の水分/水の滴/粒子が蓄積しやすく、材料を通る可視光の透明性及び/又は透過性を低減するためであり、特に、封止された照明ユニット内、例えばヘッドランプ内で透明な前カバーの内面上に蓄積される場合、当業界においてコールドフォギング又はコールドヘイジングと呼ばれる。
【0005】
残念ながら、高度に効率的な照明システムによりエネルギーを節約する一方で、その導入の副作用は、以前に示されたように、それにより生じる熱が少なくなり、ひいてはこれらの照明システムの表面上に蓄積された水分が使用中に蒸発する可能性が低くなることである。上記の灯ユニットの透明カバーの内面上への水分などの蓄積は、当業界において「フォギング」又は「ヘイジング」と呼ばれる。これらの用語は、効果的に交換可能であるが、以降、ヘイジングと呼ぶ。
【0006】
ヘッドランプのフロントレンズが、ポリカーボネート樹脂(PC)などの疎水性表面を有する材料から作製されているとすると、フロントレンズの内面は疎水性であり、ランプ本体内に封止されている。しかし、自動車用ヘッドランプは、気密的に封止されていないが、圧力平衡化のための開口部を有することができる。これらの開口部は、大気及び湿度をヘッドランプの内外に移動させる膜により封止されている。特定の環境条件(例えば、低温であるが高湿度)下で、ヘッドランプ内部の湿度は、非常に微細な液滴の形態でフロントレンズの内側疎水性表面上に凝結することがあり、外側からヘイズがある膜(又はフォグ)の外観となり、フロントレンズを通ってランプから発する照明の品質が低下することとなる。
【0007】
このヘイジング又はフォギングの問題に対抗するためのいくつかの解決策が開発されてきた。恐らく最も一般的なものは、フロントレンズの内面上へのヘイズ防止コーティング(AHC)の適用である。AHCは、レンズの内面に適用されると、その上に親水性表面コーティングを形成し、それにより、表面上での凝縮が依然として起きることがある一方で、水により、薄膜を形成しもはやエンドユーザに見えなくすることが可能になる。しかし、レンズの内面がAHCコーティングされたヘッドランプが、標準的なシリコーン接着剤で封止されているとき、脱気、及びAHCと相互作用することがあるシリコーン接着剤からランプチャンバ内に放出された揮発性物質により、短時間後にAHCの親水性が破壊される。
【0008】
広範な成分を、このような市販の親水性防曇/ヘイズ防止コーティング組成物に組み込むことができ、これを設計して、このような前カバーの内面の表面エネルギーを最大化する。これらとしては、例えば、メチルメタクリレート、ジエチレングリコール-モノメチルエーテルメタクリレート、並びにヒドロゲル及びゼラチンをはじめとする、親水性有機物質を挙げることができる。
【0009】
別の解決策は、レンズの製造中に、ヘイズ防止添加剤、例えば界面活性剤を樹脂自体に導入することである。これらは、コーティングと同様に機能することが意図されているが、レンズの内面上にこのようなコーティングを適用する必要がなく、すなわち、親水性表面を提供することによって、レンズの当該内面にミスト、凝縮、又は他の形態のヘイジングが生じないように意図されている。
【0010】
これらの添加剤としては、ソルビタンエステル、エトキシル化ソルビタンエステル、ポリオールエステル、及びグリセロールエステルが挙げられる。このような添加剤は、いくつかの防曇物品に使用されるポリエチレン及びポリ(塩化ビニル)材料にうまく導入され、ヘイズ防止コーティングの必要性が回避されてきた。しかし、これらは、ポリカーボネート及び芳香族熱可塑性ポリマーに使用するのに概して不適当であることが見出された。
【0011】
その結果、このような透明なポリマー表面は、多くの場合、防曇性能及び耐擦過性又は耐摩耗性をもたらすために、1つ以上のコーティングにより処理されている。レンズコーティングは、例えばディップコーティングプロセス又はスピンコーティングプロセスを使用するなど、異なる方法で適用することができる。多重コーティングもまた、ミラーコーティングなどの他の特性、並びに防染み及び防汚性を得るのに必要とされることがある。
【0012】
前述のように、照明ユニット用の透明なフロントレンズは、概して、ランプチャンバのフロント開口部に適合し係合するよう設計され、接着剤を使用して定位置に封止されて、封止されたユニットを形成する。物理的特性を考慮すると、縮合硬化シリコーン系接着剤は、この用途での最も好ましい接着剤のうちの1つである。これらは接着剤の役割に優れており、一方、硬化を引き起こすための、縮合硬化機構、及び架橋剤の好ましい選択により、封止されたユニット内部の硬化プロセス中に化学的副生成物が生じる。
【0013】
組成物は、典型的には、-OH末端ポリジメチルシロキサンポリマーと、メチルトリメトキシシランなどの架橋剤(ポリジメチルシロキサンポリマーからの-OH基と相互作用する反応性メトキシ基を有する)とを含み、硬化プロセス中に副生成物としてメタノールが生成する。縮合副生成物及び残留架橋剤材料は、多くの場合、フロントレンズのAHC処理された内面上に沈着し、得られたヘイズ防止コーティング上へのこの沈着により、ヘイズ防止コーティングの有効性が減少していること、又は更に、それが完全には機能しないようにし、前カバーの内面上のヘイジングが徐々に増加するようにすることができることが見出された。製造中に添加剤がポリマー/樹脂材料に導入されるシステムの場合と同様に、硬化副生成物の沈着は減少し、又はこれによりヘイズ防止機能が防がれ、このことによって再び、前カバーの内面上のヘイジングが徐々に増加する。また、上記シリコーン接着剤の接着を補助するために使用される接着促進剤の一部もまた、特に揮発性であるヘイズ防止コーティングの機能に悪影響を及ぼす場合があることも特定されている。
【0014】
したがって、縮合硬化接着剤は、AHCコーティングで予めコーティングされた、フロントレンズをランプ本体に封止するのに最も好ましく好適な接着剤のうちの1つであるが、硬化副生成物及び残留架橋剤のヘイズ防止コーティングの表面上への沈着をもたらし、又は表面では、縮合硬化副生成物の沈着によって引き起こされた結果としてのヘイジングのために、これらの材料の組み合わせ使用が問題となると理解することができる。
【0015】
本明細書における開示は、硬化時に、ヘイズ防止処理された材料表面の機能を最小化することも防ぐこともない、好適な代替の縮合硬化性SMP系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0016】
本明細書では、ベース部、すなわちA部と、触媒パッケージ、すなわちB部と、を含む、2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー(SMP)系接着剤組成物であって、ベース部、すなわちA部が、
(a)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基[式中、各Rは、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、mは、1、2、又は3である]を有するシリル変性有機ポリマーであって、ポリエーテル、炭化水素ポリマー、アクリレートポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリ尿素から選択される、有機ポリマー
と、
(b)補強充填剤と、を含み、
並びに
触媒パッケージ、すなわちB部が、
(i)縮合硬化触媒、
(ii)架橋剤であって、
(iia)構造
Si(OR4-j
[式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、2個以上の炭素原子を有するアルキル基であり、
jは、1又は0であり、
は、炭素数が2個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたもの、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、若しくはイソシアネート基を有する有機基である]のシラン、
(iib)構造
Si(OMe)
[式中、RはRである]の、ただし分子量が190以上である、シラン、
(iic)構造
(R’O)Si(CHN(H)-(CHNH
[式中、各R’は同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは2~10であり、zは2~10である]のシラン、若しくは
(iid)構造
(RO)(Y3-r-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-r
[式中、Rは、C1~10アルキル基であり、Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各rは、独立して1、2、又は3であり、wは、0又は1である]の二脚状シラン、又は(iie) (iia)、(iib)、(iic)、及び(iid)のうちの2つ以上の混合物、
からなる群から選択される、架橋剤、並びに任意選択的に、
(iii)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマー(a)、及び/又は
(iv)充填剤、
を含む、2部型縮合硬化性シリル変性ポリマー系接着剤組成物が提供される。
【0017】
また、光源が入っているランプチャンバを画定するランプ本体を有し、フロント開口部を有する、ランプが提供され、フロントレンズが、フロント開口部に適合し係合するよう提供され、当該フロントレンズは、内面及び外面を有し、当該内面は、ランプチャンバを更に画定し、内面は、ヘイズ防止コーティングでコーティングされており、フロントレンズがランプチャンバに、本明細書で先に記載の組成物から作製された硬化接着剤によって接着されていることを特徴とする。
【0018】
更にまた、前述のランプの製造方法であって、フロント開口部及びフロントレンズを有する、ランプ本体を準備する工程であって、当該フロントレンズが、少なくとも、ヘイズ防止コーティングで処理された内面を有する、準備する工程と、フロントレンズとの間にランプ本体のフロント開口部への接合部を、フロントレンズをランプ本体のフロント開口部に係合させることによって形成する工程と、フロントレンズとランプ本体との間の接合部を前述の接着剤で封止する工程であって、組成物のA部とB部とを一緒に混合して混合物を形成し、混合物をフロントレンズとランプ本体との間の接合部に適用して、組成物の硬化を引き起こす、すなわち組成物を硬化させることによって封止する工程と、を含む、方法が提供される。
【0019】
また、本明細書では、本明細書に記載の接着剤組成物の、ヘイズ防止コーティングで処理された、ランプのフロントレンズを、ランプ本体に接着し、それとともに、ヘイズ防止コーティングの機能を阻害する化学種の発生を最小化又は防止するための、接着剤としての使用も提供される。
【0020】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」の観念は、その最も広い意味で使用され、「含む(include)」、及び「~からなる(consist of)」という概念を意味し、これを包含する。
【0021】
本出願の目的で、「置換」とは炭化水素基中の1つ以上の水素原子が別の置換基で置換されていることを意味する。このような置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子;クロロメチル基、ペルフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、及びノナフルオロヘキシル基などのハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル基及びカルボキシル基などの酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基などの窒素原子含有基;硫黄原子;並びにメルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
ベース成分は、(a)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基[式中、各Rは、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、mは、1、2、又は3である]を有するシリル変性有機ポリマーであって、ポリエーテル、炭化水素ポリマー、アクリレートポリマー、ポリウレタン、及びポリ尿素から選択される、有機ポリマーを含む。
【0023】
(R)(Y3-m-Si基は、任意の好適な結合を介して有機ポリマー主鎖に結合されてもよく、又は適宜、直接結合されてもよい。例えば、シリル変性ポリエーテルポリマーの場合、(R)(Y3-m-Si基は、以下のものを介してポリエーテルポリマー主鎖に結合した末端基であってもよい。
(R)(Y3-m-Si-D-[NH-C(=O)]
式中、R、Y、及びmは、前述のとおりであり、Dは、二価C2-6アルキレン基、あるいはC2-4アルキレン基、あるいはエチレン基又はプロピレン基であり、kは、1又は0である。そこで、シリル変性ポリエーテルは、以下のように表すことができる。
(R)(Y3-m-Si-D-[NH-C(=O)]-O[CH(CH)-CH-O]-[C(=O)-NH]-D-Si(Y3-m(R)
ここで、上記の例では、ポリエーテル繰り返し基は、例として、オキシプロピレン基[CH(CH)-CH-O]である。
【0024】
(R)(Y3-m-Si基中の各置換基Rは、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であってもよい。加水分解性基は、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ(ketoximo)基及びイソブチルケトキシミノ(isobutylketoximino)基);アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ基及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ基)から選択されてもよい。しかし、各Rは、OH基、又は炭素数が1~10個のアルコキシ基、あるいはOH基、又は炭素数が1~6個のアルコキシ基、あるいはOH基、メトキシ基、又はエトキシ基であることが好ましい。置換基Yは、炭素数が1~8個、あるいは炭素数が1~6個、あるいは炭素数が1~4個のアルキル基である。したがって、RがOH又は加水分解性基であり、加水分解性基がアルコキシ基である場合、(R)(Y3-m-Si基は、-(Y)SiOH、-(YSiOH-、-YSi(OR-、-Si(OR、-(YSiORから選択されてもよく、Rは、炭素数が1~8個のアルキル基である。典型的には、シリル変性有機ポリマーは、末端硬化性シリル基を有する、有機主鎖を有する。
【0025】
ポリマー主鎖の1つの好ましい種類は、アクリレートポリマー主鎖である。アクリレートポリマーは、アクリレート及び/又はメタクリレートエステルモノマーの付加重合ポリマーであり、アクリレートポリマー中に50重量%以上(すなわち、50重量%~100重量%)のモノマー単位を含む。アクリレートエステルモノマーの例は、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートである。メタクリレートエステルモノマーの例は、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びラウリルメタクリレートである。アクリレートポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは周囲温度未満であり、アクリレートポリマーは、より低Tgのポリマーを形成することから、メタクリレートよりも概して好ましい。ポリブチルアクリレートが特に好ましい。アクリレートポリマーは、少量のみ、スチレン、アクリロニトリル、又はアクリルアミドなどの、他のモノマーを含んでもよい。アクリレートを、従来のラジカル重合又はリビングラジカル重合(原子移動ラジカル重合など)、可逆的付加開裂連鎖移動重合、又はアニオン重合(例えば、リビングアニオン重合)といった様々な方法により重合させることができる。
【0026】
1つの代替例では、アルコキシシリル末端有機ポリマーは、前述のようなポリエーテルである。ポリマー主鎖は、上記の構造にて、
[CH(CH)-CH-O]
として例示され、このようなポリエーテルは、平均式(-C2p-O-)[式中、pは2~4の整数であり、yは4以上、すなわち4以上の整数である]によって例示される、様々な繰り返しオキシアルキレン単位を含んでもよい。各ポリエーテルの数平均分子量(Mn)は、約300~約10,000の範囲であってもよく、ASTM D5296-05によって求め、ポリスチレン分子量当量として計算することができる。更に、オキシアルキレン単位は、ポリオキシアルキレン全体にわたって必ずしも同一ではなく、単位ごとに異なっていてもよい。ポリオキシアルキレンは、例えば、オキシエチレン単位(-C-O-)、オキシプロピレン単位(-C-O-)、若しくはオキシブチレン単位(-C-O-)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。好ましくは、ポリオキシアルキレンポリマー主鎖は、本質的に、オキシエチレン単位又はオキシプロピレン単位からなる。他のポリオキシアルキレンとしては、例えば、構造、
-[-R-O-(-R-O-)-Pn-CR -Pn-O-(-R-O-)q1-R]-
[式中、Pnは、1,4-フェニレン基、各Rは、同じ又は異なり、2~8個の炭素原子を有する、二価炭化水素基であり、各Rは、同じ又は異なり、エチレン基又はプロピレン基であり、各Rは、同じ又は異なり、水素原子又はメチル基であり、下付文字h及びq1の各々は、3~30の範囲の正の整数である]の単位を含んでもよい。
【0027】
1つの好ましい種類のポリエーテルには、式(-C2p-O-)[式中、pは2~4の整数である]の繰り返しオキシアルキレン単位を含むポリオキシアルキレンポリマーがある。ポリオキシアルキレンポリマーは、通常、末端ヒドロキシル基を有し、例えば、過剰のアルキルトリアルコキシシランと反応させて前述のような末端アルキルジアルコキシシリル基を導入することにより、容易に水分硬化性シリル基で変性することができる。あるいは、重合を、ヒドロシリル化型プロセスによって起こしてもよい。全体的に又は主にオキシプロピレン単位からなるポリオキシアルキレンの特性は、多くの接着用途に好適である。
【0028】
シリル変性炭化水素ポリマーの例としては、シリル変性ポリイソブチレンが挙げられる。シリル変性ポリイソブチレンは、例えば、シリル置換アルキルアクリレート又はメタクリレートモノマー(アルコキシジアルキルシリルプロピルメタクリレート、ジアルコキシアルキルシリルプロピルメタクリレート又はトリアルコキシシリルプロピルメタクリレートなど)から誘導した硬化性シリル基を含んでもよく、これは、ポリイソブチレンと反応することができる。
【0029】
典型的には、SMPポリマーは、ベース組成物の30~80重量%、あるいはベース組成物の35~65重量%、あるいはベース組成物の40~60重量%の量でベース組成物中に存在する。
【0030】
ベース成分補強充填剤(b)は、例えば籾殻灰をはじめとする、沈降炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、及び/又は沈降シリカなどの、1つ以上の微細化補強充填剤を含有してもよい。典型的には、補強充填剤(b)の表面積は、ISO 9277:2010に準拠してBET法によって測定して、沈降炭酸カルシウムの場合、15m/g以上、あるいは15~50m/g、あるいは15~25m/gである。シリカ補強充填剤は、50m/g以上の典型的な表面積を有する。一実施形態では、補強充填剤(b)は、沈降炭酸カルシウム、沈降シリカ及び/又はヒュームドシリカであり、あるいは沈降炭酸カルシウムである。高表面積ヒュームドシリカ及び/又は高表面積沈降シリカの場合、これらは、ISO 9277:2010に準拠してBET法によって測定して100~400m/gの表面積を有することができ、あるいはISO 9277:2010に準拠してBET法によって100~300m/gの表面積を使用のために選択することができる。典型的には、補強充填剤は、ベース組成物の20~70重量%、あるいはベース組成物の35~65重量%、あるいはベース組成物の40~60重量%の量でベース組成物中に存在する。
【0031】
補強充填剤(b)は、例えば1つ以上の脂肪酸、例えばステアリン酸などの脂肪酸、若しくはステアレートなどの脂肪酸エステルで、又は、オルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、若しくはオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザン、又は短鎖シロキサンジオールで、疎水性処理し、充填剤を疎水性にし、ひいては他の接着剤成分との均質混合物の取扱い及び入手をより容易にすることができる。充填剤の表面処理により、ベース成分のシロキサンポリマー(a)による湿潤が容易になる。これらの表面変性充填剤は凝集することがなく、ベース成分のシリコーンポリマー(a)に均質に組み込むことができる。これにより未硬化組成物の室温での機械的特性が改善される。充填剤を、前処理してもよく、又はポリマー(a)と混合する際にin situで処理してもよい。
【0032】
前述のように、2つの構成要素による組成物の触媒パッケージは、触媒パッケージ、すなわちB部を含み、B部は、
(i)縮合硬化触媒、及び
(ii)架橋剤であって、
(iia)構造
Si(OR4-j
[式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、2個以上の炭素原子を有するアルキル基であり、
jは、1又は0であり、
は、炭素数が2個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたもの、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、若しくはイソシアネート基を有する有機基である]のシラン、
(iib)構造
Si(OMe)
[式中、RはRである]の、ただし分子量が190以上である、シラン、
(iic) (R’O)Si(CHN(H)-(CHNH
[式中、各R’は同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは2~10であり、zは2~10である]のシラン、
(iid)構造
(RO)(Y3-r-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-r
[式中、Rは、C1~10アルキル基であり、Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各rは、独立して1、2、又は3であり、wは、0又は1である]の二脚状シラン、又は
(iie) (iia)、(iib)、(iic)、及び(iid)のうちの2つ以上の混合物、
からなる群から選択される、架橋剤、並びに任意選択的に、
(iii)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマー(a)、及び/又は
(iv)充填剤、を含む。
【0033】
縮合硬化触媒(i)は、ベース成分と触媒パッケージ成分とを一緒に混合した後の全組成物の硬化の触媒となるのに好適な、任意の好適なスズ系縮合触媒(i)であってもよい。例としては、スズトリフレート、有機スズ金属触媒、例えば、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、並びにジオルガノスズ塩、特にジオルガノスズジカルボキシレート化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、第一スズオクトエート、ジブチルスズビス(2,4-ペンタンジオネート、ジメチルスズジネオデカノエート(DMTDN)、及びジブチルスズジオクトエートが挙げられる。
【0034】
あるいは、縮合触媒(i)は、チタン系触媒又はジルコニウム系触媒であってもよい。特定のシリコーンシーラント組成物に含めるために選択される触媒は、必要とされる硬化速度に応じて異なる。チタネート系触媒及び/又はジルコネート系触媒は、一般式Ti[OR又はZr[OR[式中、各Rは同じでも異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状であってもよい一価の、第一級、第二級、又は第三級脂肪族炭化水素基を表す]による化合物を含んでもよい。任意選択的に、チタネートは、部分不飽和基を含有してもよい。なお、Rの好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三級ブチル基、及び分岐状第二級アルキル基、例えば2,4-ジメチル-3-ペンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。各Rが同じである場合、好ましくは、Rは、イソプロピル基、分岐状第二級アルキル基又は第三級アルキル基、特に第三級ブチル基である。好適な例としては、例えばテトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラ-t-ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、及びジイソプロポキシジエチルアセトアセテートチタネート(並びにジルコネートの均等物)が挙げられる。あるいは、チタネート/ジルコネートは、キレート化されていてもよい。キレート化は、アルキルアセチルアセトネート、例えばメチル又はエチルアセチルアセトネートなどの、任意の好適なキレート剤によってもよい。あるいは、チタネートは、3つのキレート剤をもたらすモノアルコキシチタネート、例えば2-プロパノラト、トリスイソオクタデカノアトチタネートであってもよい。
【0035】
触媒パッケージはまた、架橋剤(ii)を含有する。架橋剤(ii)は、構造
Si(OR4-j
[式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、炭素数が2個以上、あるいは炭素数が2~20個、あるいは炭素数が2~10個、あるいは炭素数が2~6個のアルキル基である]を有するシラン(iia)から選択されてもよい。「j」の値は、0又は1である。各R基は同じであっても異なっていてもよいが、2つ以上のR基は同じであるか、あるいは3つ以上のR基は同じであるか、あるいは、jが0である場合、全てのR基は同じであることが好ましい。したがって、jがゼロである場合の架橋剤(iia)の具体例としては、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラ(n-)ブチルオルトシリケート、及びテトラ(t-)ブチルオルトシリケートが挙げられる。
【0036】
jが1である場合、R基が存在する。Rは、炭素数が2個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたもの、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソシアヌレート基、若しくはイソシアネート基を有する有機基である。Rとして好適な非置換一価炭化水素基としては、アルキル基、例えば、エチル基、プロピル基、及び他のアルキル基、アルケニル基を挙げることができ、シクロアルキル基としては、シクロペンタン基及びシクロヘキサン基を挙げることができる。Rに、又はそれとして好適な置換基としては、例として、3-ヒドロキシプロピル基、3-(2-ヒドロキシエトキシ)アルキル基、ハロプロピル基、3-メルカプトプロピル基、トリフルオロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,3-エポキシプロピル基、3,4-エポキシブチル基、4,5-エポキシペンチル基、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル基、アミノプロピル基、N-メチルアミノプロピル基、N-ブチルアミノプロピル基、N,N-ジブチルアミノプロピル基、3-(2-アミノエトキシ)プロピル基、メタクリルオキシアルキル基、アクリルオキシアルキル基、カルボキシアルキル基、例えば3-カルボキシプロピル基、10-カルボキシデシル基を挙げることができる。
【0037】
好適な架橋剤(iia)の具体例としては、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン又はビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2,3-エポキシプロピルトリエトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリエトキシシラン、4,5-エポキシペンチルトリエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N-ブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ジブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエトキシ)プロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-カルボキシプロピルトリエトキシシラン、及び10-カルボキシデシルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
架橋剤(ii)は、構造(iib)
Si(OMe)
[式中、RはRである]の化合物を更に又は代替的に含んでもよく、ただし当該シラン(iib)の分子量は190以上である。
【0039】
したがって、Rはまた、以下のリストから選択されるケイ素結合有機基であってもよく、ただしその分子量は190以上である。したがって、これは、炭素数が5個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたもの、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、若しくはイソシアネート基を有する有機基であってもよい。Rとして好適な非置換一価炭化水素基としては、炭素数が5個以上のアルキル基、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、及び他のより長鎖のアルキル基、炭素数が5個以上のアルケニル基を挙げることができ、シクロアルキル基としては、シクロペンタン基及びシクロヘキサン基を挙げることができる。Rに、又はそれとして好適な置換基としては、例として、3-(2-ヒドロキシエトキシ)アルキル基、ハロプロピル基、3-メルカプトプロピル基、トリフルオロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,3-エポキシプロピル基、3,4-エポキシブチル基、4,5-エポキシペンチル基、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル基、アミノプロピル基、N-メチルアミノプロピル基、N-ブチルアミノプロピル基、N,N-ジブチルアミノプロピル基、3-(2-アミノエトキシ)プロピル基、イソシアヌレート基、メタクリルオキシアルキル基、アクリルオキシアルキル基、カルボキシアルキル基、例えば3-カルボキシプロピル基、10-カルボキシデシル基を挙げることができる。
【0040】
好適な架橋剤(iib)の具体例としては、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、2,3-エポキシプロピルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリメトキシシラン、4,5-エポキシペンチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-カルボキシプロピルトリメトキシシラン、及び10-カルボキシデシルトリメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
架橋剤(ii)は、構造(iic)
(R’O)Si(CHN(H)-(CHNH
[式中、各R’は同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは2~10であり、zは2~10である]の化合物を更に又は代替的に含んでもよい。各R’は同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、あるいはメチル基又はエチル基である。1つの代替例では、2つ以上のR’基は同じであり、あるいは全てのR’基は同じである。2つ以上のR’基が同じ、あるいは全てのR’基が同じである場合、それらは、メチル基又はエチル基であることが好ましい。1つの代替例では、n個の-CH-基があってもよく、nは2~10であり、1つの代替例では、nは2~6であってもよく、別の代替例では、nは2~5であってもよく、なおも更なる代替例では、nは2又は3であってもよく、あるいは、nは3である。z個の-CH-基があってもよく、zは2~10であり、1つの代替例では、zは2~6であってもよく、別の代替例では、zは2~5であってもよく、なおも更なる代替例では、zは2又は3であってもよく、あるいは、zは2である。具体例としては、(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン及び(エチレンジアミンプロピル)トリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
架橋剤(ii)は、構造
(RO)(Y3-r-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-r
[式中、Rは、C1~10アルキル基であり、Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各rは、独立して1、2、又は3であり、wは、0又は1である]の二脚状シラン(iid)を更に又は代替的に含んでもよい。
【0043】
二脚状シラン(iid)の例としては、w=0である場合、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン及びビス(トリメトキシシリル)ヘキサンが挙げられる。
【0044】
w=1である場合、触媒パッケージの二脚状シラン(iid)は、以下の式
(RO)(Y3-r-Si(CH-(NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-r
[式中、RはC1-10アルキル基であり、Yは炭素数が1~8個のアルキル基であり、Qは孤立電子対を有するヘテロ原子を有する化学基、あるいはアミン又は尿素であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各rは、独立して、1、2又は3、あるいは2又は3であり、更なる代替例では、r=3である]によって定義することができる。
【0045】
1つの代替例では、Qは、第二級アミンであり、各xは2~4である。
【0046】
二脚状シラン(iid)の例としては、w=1である場合、
ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)尿素、及びビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)尿素が挙げられる。
【0047】
特定の好適な例としては、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、
ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)尿素、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)尿素、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)尿素、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)尿素、及び/又はビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)尿素が挙げられる。
【0048】
なおも更なる代替例では、二脚状シラン(iid)は、以下の式のものであり、
(RO)-Si(CH-(NHCHCH-NH(CH-Si(OR
この場合、二脚状シランは、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、例えばビス(3-トリプロピルオキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンから選択されてもよく、又はビス(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミン、例えばN,N-ビス((3-トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンであってもよい。
【0049】
架橋剤は、あるいは、2つ以上の(iia)、(iib)、(iic)、及び(iid)の混合物であってもよい。一実施形態では、架橋剤は、(iic)構造を単独で、又はタイプ(iid)の架橋剤と組み合わせて有する架橋剤である。
【0050】
任意選択的に、触媒パッケージはまた、
(iii)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマー、及び/又は
(iv)充填剤、
のうちの1つ以上を含んでもよい。
1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有する任意選択によるシリル変性有機ポリマー(iii)は、上記シリル変性有機ポリマー(a)について上記と同じ定義を有し、実際には、追加量の上記(a)と同じポリマーであってもよいが、それに限定されない。
【0051】
触媒部中の充填剤(iv)は、上記(b)による補強充填剤であってもよく、あるいは非補強充填剤又はこれらの混合物であってもよい。
【0052】
好適な非補強充填剤は、例えば、破砕石英、粉砕炭酸カルシウム、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、及びカーボンブラック、タルクを含んでもよく、珪灰石が組成物中に存在してもよい。単独で、又は上記に加えて使用することができる他の非補強充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、粘土、例えばカオリン、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(水滑石)、グラファイト、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バリウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチウム石が挙げられる。
【0053】
酸化アルミニウム、かんらん石族;ざくろ石族;アルミノケイ酸塩;環状ケイ酸塩;鎖状ケイ酸塩;及び層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩が挙げられる。かんらん石族は、ケイ酸塩鉱物、例えばフォルステライト及びMgSiOを含むが、これらに限定されない。ざくろ石族は、赤色ざくろ石;MgAlSi12;緑ざくろ石;及びCaAlSi12などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。アルミノケイ酸塩(Aluninosilicate)は、珪線石;AlSiO;ムライト;3Al.2SiO;カイヤナイト;及びAlSiOなどの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。環状ケイ酸塩族は、コージェライト及びAl(Mg、Fe)[SiAlO18]などのケイ酸塩鉱石を含むが、これらに限定されない。鎖状ケイ酸塩族は、粉砕ケイ酸塩鉱物、例えば、珪灰石及びCa[SiO]を含むが、これらに限定されない。
【0054】
層状ケイ酸塩は、雲母;KAI14[SiAl20](OH);葉蝋石;Al[Si20](OH);タルク、Mg[Si20](OH);蛇絞石、例えばアスベスト;カオリナイト;Al[Si10](OH);及びバーミキュライトなどのケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。
【0055】
非補強充填剤はまた、上記の補強充填剤について論じたものと類似の処理剤を使用して疎水性になるよう、表面処理することができる。
【0056】
一実施形態では、本明細書における組成物のB部中の任意選択による充填剤(iv)は、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、沈降シリカ、及び/又はヒュームドシリカである。触媒パッケージ中の各成分の含有量は、使用直前に混合される場合、2つの部の所定の重量比に少なくとも部分的に依存する。典型的には、ベース成分組成物及び触媒パッケージ組成物は、15:1~1:1、あるいは15:1~2:1、あるいは、2つの部が一緒に混合される場合、12:1~2:1の所定の重量比で混合することができる。ベース成分:触媒パッケージの意図される混合重量比が12:1以上、すなわち15:1~12:1である場合、触媒パッケージの内容物は、成分(i)(縮合触媒)及び(ii)(架橋剤)のみであってもよく、この場合、架橋剤は触媒パッケージの約60~80重量%の量で存在し、添加剤が存在しない限り、触媒は、それに応じて全触媒組成物の20~40重量%の量で存在する。しかし、ベース組成物と触媒パッケージとが1:1に迫る重量比で混合される事態では、触媒パッケージの大部分は、最終組成が同じになることを視野に入れ、成分(iii)ポリマー(a)及び充填剤(iv)と存在する少量の成分(i)及び(ii)とで構成される。このような場合、縮合触媒は、触媒パッケージの0.01~20重量%、あるいは0.1~5重量%の量で存在し、架橋剤(ii)は、触媒組成物の2~30重量%の量、ただし概して触媒組成物の2~15重量%、あるいは触媒組成物の4~11重量%であってもよい。
【0057】
必要に応じて他の添加剤を使用してもよい。これらとしては、顔料、レオロジー調整剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、水捕捉剤(典型的には、架橋剤又はシラザンとして使用されるものと同じ化合物)、硬化調整剤、電気伝導性充填剤、熱伝導性充填剤、及び殺真菌剤、及び/又は殺生物剤など、組成物の硬化を促進するための共触媒、例えばカルボン酸及びアミンの金属塩を挙げることができる。添加剤の一部は複数の添加剤のリストに挙げられることが理解される。その場合、このような添加剤は言及されているすべての異なる用途で機能する能力を有する。
【0058】
顔料は必要に応じて利用され、組成物を着色する。組成物と適合性がある限り、任意の好適な顔料を用いることができる。2部型組成物では、顔料及び/又は着色(非白色)充填剤、例えばカーボンブラックを触媒パッケージに利用して、最終接着剤製品を着色することができる。存在する場合、カーボンブラックは、非補強充填剤及び着色剤の両方として機能し、触媒パッケージ組成物の1~30重量%、あるいは触媒パッケージ組成物の1~20重量%、あるいは触媒パッケージ組成物の5~20重量%、あるいは触媒組成物の7.5~20重量%の範囲で存在する。
【0059】
本発明による水分硬化性組成物中に組み込むことができるレオロジー調整剤としては、シリコーン有機コポリマー、例えばポリエーテル又はポリエステルのポリオールに基づく欧州特許第0802233号に記載されているもの;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシル化ヒマシ油、オレイン酸エトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、コポリマー若しくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド、及びシリコーンポリエーテルコポリマーからなる群から選択されるノニオン性界面活性剤;並びにシリコーングリコールが挙げられる。いくつかの系について、これらのレオロジー調整剤、特に、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマー、及びシリコーンポリエーテルコポリマーにより、基材、特に可塑性基材に対する接着を増強することができる。
【0060】
可塑剤は、シリル変性有機ポリマー系組成物に利用されることが多い。ポリマー主鎖が実質的に有機である(すなわち、ポリマー主鎖中にSi-O-Si結合を含有しない)という事実を考慮すると、可塑剤は概して、ポリマー(a)及び存在する場合(iii)を可塑化するのに好適なものから選択される。例としては、ヒドロキシル末端ポリプロピレンエーテル、ヒドロキシル末端ポリエチレンエーテル、ヒドロキシル末端ポリプロピレン/ポリエチレンエーテルコポリマーが挙げられる。アルコキシ末端ポリプロピレンエーテル、アルコキシ末端ポリエチレンエーテル、アルコキシ末端ポリプロピレン/ポリエチレンエーテルコポリマーが挙げられる。市販のヒドロキシル末端ポリプロピレンエーテルは、Dow Chemical Companyによって商標名VORANOLで販売されている。
【0061】
必要と考えられる場合、任意の好適な酸化防止剤を利用することができる。例としては、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5(メチルヒドロシンナメート)、36443-68-2;テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、6683-19-8;オクタデシル[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロキシシンナメート、2082-79-3;N,N-ヘキサメチレン-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロキシシンナマミド)、23128-74-7;3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロケイ皮酸、C7~9分岐状アルキルエステル、125643-61-0;N-フェニルベンゼンアミン、2,4,4-トリメチルペンテンとの反応生成物、68411-46-1;例えば、BASF製のIrganox(登録商標)の名称で販売されている酸化防止剤を挙げることができる。
【0062】
必要な場合、殺生物剤を組成物中で更に使用することができる。用語「殺生物剤」は、殺菌剤、殺真菌剤、及び殺藻剤などを包含するものであることに留意されたい。本明細書に記載の組成物中で使用することができる、有用な殺生物剤の好適な例としては、例えば:
【0063】
カルバメート、例えば、メチル-N-ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメート(カルベンダジム)及び他の好適なカルバメートなど、10,10’-オキシビスフェノキサシン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、ジヨードメチルp-トリルスルホン、紫外線安定剤との組み合わせに適切な場合、2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾール、3-ヨード-2-プロピニル(propinyl)ブチルカルバメート(IPBC)、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキサイド、トリアゾリル化合物及びイソチアゾリノン、例えば、4,5-ジクロロ-2-(n-オクチル)-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(n-オクチル)4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、及びn-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BBIT)など、が挙げられる。他の殺生物剤としては、例えば、亜鉛ピリジンチオン、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール及び/又は1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾールを挙げることができる。
【0064】
好適には、殺真菌剤及び/又は殺生物剤は、組成物の0~0.3重量%の量で存在していてもよく、欧州特許第2106418号に記載されているとおり、要求される場合、カプセル化した形態で存在していてもよい。
【0065】
熱安定剤にはその例を挙げることができ、熱安定剤の例としては、金属化合物、例えば、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、水酸化第二鉄、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、銅フタロシアニン、水酸化アルミニウム、ヒュームド二酸化チタン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸セリウム、セリウムジメチルポリシラノレート、及び銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、セリウム、ジルコニウム、チタンなどから選択される金属のアセチルアセトン塩が挙げられる。
【0066】
難燃剤としては、例えば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム水和物、及びケイ酸塩(例えば、珪灰石)、白金、及び白金化合物を挙げることができる。
【0067】
UV安定剤としては、例として、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤、及び/又はヒンダードアミン光安定剤(HALS)、例えばCiba Specialty Chemicals Inc.製のTINUVIN(登録商標)製品品目を挙げることができる。
【0068】
電気伝導性充填剤としては、カーボンブラック、銀粒子などの金属粒子、任意の好適な電気伝導性金属酸化物充填剤、例えば、表面がスズ及び/又はアンチモンで処理された酸化チタン粉末、表面がスズ及び/又はアンチモンで処理されたチタン酸カリウム粉末、表面がアンチモンで処理された酸化スズ、並びに表面がアルミニウムで処理された酸化亜鉛を挙げることができる。
【0069】
熱伝導性充填剤としては、金属粒子、例えば、粉末、フレーク及びコロイド状の銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウム、及びチタン、金属酸化物、特に酸化アルミニウム(Al)、及び酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、セラミック充填剤、例えば、一炭化タングステン、炭化ケイ素及び窒化アルミニウム、窒化ホウ素及びダイヤモンドを挙ることができる。
【0070】
2部型組成物の場合、ベース成分は、ベース成分の全重量%を100重量%として、
20~80重量%、あるいは35~65重量%のシリル変性有機ポリマー(a)と、
20~80重量%、あるいは35~65重量%の補強充填剤(b)と、を含む。
【0071】
添加剤は、好ましく組成物のA部又はB部のいずれかに導入することができる。例えば、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、及び/又は顔料は、A部に導入される可能性が最も高いが、代替的に、B部組成物中に存在してもよい。
【0072】
当該2部型組成物において、触媒パッケージ、すなわちB部は、典型的には、触媒パッケージの全重量%を100重量%として、
触媒パッケージの重量に基づいて、0.5~40重量%の量の縮合硬化(例えば、スズ)系触媒(i)、
触媒パッケージの重量に基づいて、1~80重量%の量の架橋剤(ii)、並びに任意選択的に
触媒パッケージの重量に基づいて、0~98.5重量%の量の、1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマー、及び/又は
触媒パッケージの重量に基づいて、0~40重量%の量の充填剤、を含む。
【0073】
A部とB部とが一緒に混合された場合の最終組成は、典型的には、組み合わせた組成物の重量に基づいて、以下:
18~72重量%、あるいは35~67重量%のSMPポリマー(a)と、
18~63重量%、あるいは25~50重量%の補強充填剤(b)と、
0.5~5重量%の量の縮合触媒(i)、
1~15重量%、あるいは2~10重量%の量の架橋剤(ii)、をベースとし、並びに任意選択的に
0~40重量%の量の、触媒パッケージからの充填剤、及び
必要に応じて他の任意選択による成分という方針に沿う。
【0074】
組成物は、好ましくは、加熱することなく室温で硬化するという点で、室温加硫可能な組成物であるが、適切と考えられる場合、加熱により促進することができる。
【0075】
A部とB部との組成物は、任意の好適な混合装置を使用して、成分を混合することによって調製することができる。他の更なる任意選択による成分は、適切であると考えられる際、A部又はB部のいずれかに添加することができる。
【0076】
混合後、A部とB部との組成物、特にB部の組成物は、実質的に無水の条件、例えば封止容器内で、使用に必要となるときまで保管することができる。
【0077】
また、光源が入っているランプチャンバを画定するランプ本体を有し、フロント開口部を有する、ランプが提供され、フロントレンズが、フロント開口部に係合するよう提供され、当該フロントレンズは、内面及び外面を有し、当該内面は、ランプチャンバを更に画定し、内面は、ヘイズ防止コーティングでコーティングされており、フロントレンズがランプチャンバに、第1の部、すなわちA部を含む、2部型縮合硬化性SMP系接着剤組成物から作製された硬化接着剤によって接着されていることを特徴とし、A部が、
(a)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基[式中、各Rは、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、mは、1、2、又は3である]を有するシリル変性有機ポリマーであって、ポリエーテル、炭化水素ポリマー、アクリレートポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリ尿素から選択される、有機ポリマー
と、
(b)補強充填剤と、を含み、
並びに
触媒パッケージ、すなわちB部が、
(i)スズ系触媒、及び
(ii)架橋剤であって、
(iia)構造
Si(OR4-j
[式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、2個以上の炭素原子を有するアルキル基であり、
jは、1又は0であり、
は、炭素数が2個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたもの、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、若しくはイソシアネート基を有する有機基である]のシラン、
(iib)構造
Si(OMe)
[式中、RはRである]の、ただし分子量が190以上である、シラン、
(iic)構造
(R’O)Si(CHN(H)-(CHNH
[式中、各R’は同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは2~10であり、zは2~10である]のシラン、
(iid)構造
(RO)(Y3-r-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-r
[式中、Rは、C1~10アルキル基であり、Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各rは、独立して1、2、又は3であり、wは、0又は1である]の二脚状シラン、又は
(iie) (iia)、(iib)、(iic)、及び(iid)のうちの2つ以上の混合物、
からなる群から選択される、架橋剤、並びに任意選択的に、
(iii)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマー(a)、及び/又は
(iv)充填剤、を含む。
【0078】
ランプ本体は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、鋳造アルミニウム、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリアミド(PA)、アクリル-スチレン-アクリロニトリル(ASA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びこれらの複合体などの、任意の好適な材料製であってもよい。PBT-GF30(グラスファイバー入りのポリブチレンテレフタレート)、TV40+PP及びTV20/GF10、PBT-MF30、ポリブチレンテレフタレートとアクリロニトリルスチレンアクリレートとのブレンド(PBT/ASA)、並びにPP+GF20(ガラス繊維強化PP)製であってもよい。
【0079】
フロントレンズは、任意の好適な材料製であってもよく、具体例としては、ポリカーボネート又はPMMAなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
レンズの外面は、耐擦過コーティングで処理することができる。
【0081】
また、前述のランプの製造方法であって、フロント開口部及びフロントレンズを有する、ランプ本体を準備する工程であって、当該フロントレンズが、少なくとも、ヘイズ防止コーティングで処理された内面を有する、準備する工程と、フロントレンズとの間にランプ本体のフロント開口部への接合部を、フロントレンズをランプ本体のフロント開口部に係合させることによって形成する工程と、フロントレンズとランプ本体との間の接合部を前述の接着剤で封止する工程であって、組成物のA部とB部とを一緒に混合して混合物を形成し、混合物をフロントレンズとランプ本体との間の接合部に適用して、組成物の硬化を引き起こす、すなわち組成物を硬化させることによって封止する工程と、を含み、当該接着剤が、2部型縮合硬化性シリコーン系接着剤組成物であって、
第1の部、すなわちA部と、触媒パッケージ、すなわちB部と、を含み、A部が、
(a)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基[式中、各Rは、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、mは、1、2、又は3である]を有するシリル変性有機ポリマーであって、ポリエーテル、炭化水素ポリマー、アクリレートポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリ尿素から選択される、有機ポリマー
と、
(b)補強充填剤と、を含み、
並びに
触媒パッケージ、すなわちB部が、
(i)縮合触媒、及び
(ii)架橋剤であって、
(iia)構造
Si(OR4-j
[式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、2個以上の炭素原子を有するアルキル基であり、
jは、1又は0であり、
は、炭素数が2個以上の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐状の一価炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は前述のいずれか1つから選択されるケイ素結合有機基であって、炭素に結合した1つ以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されたもの、又はエポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、若しくはイソシアネート基を有する有機基である]のシラン、
(iib)構造
Si(OMe)
[式中、RはRである]の、ただし分子量が190以上である、シラン、
(iic)構造
(R’O)Si(CHN(H)-(CHNH
[式中、各R’は同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは2~10であり、zは2~10である]のシラン、
(iid)構造
(RO)(Y3-r-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-r
[式中、Rは、C1~10アルキル基であり、Yは、炭素数が1~8個のアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各rは、独立して1、2、又は3であり、wは、0又は1である]の二脚状シラン、又は
(iie) (iia)、(iib)、(iic)、及び(iid)のうちの2つ以上の混合物、
からなる群から選択される、架橋剤、並びに任意選択的に、
(iii)1分子中に2つ以上の(R)(Y3-m-Si基を有するシリル変性有機ポリマー(a)、及び/又は
(iv)充填剤、を含む、組成物であり、
2部処方物が、適用の短時間前に一緒に混合される、方法が提供される。
【0082】
プロセスは、ランプのレンズをランプチャンバのフロント開口部に適合させ係合することと、A部とB部との組成物を所定の比率、例えばA部:B部が15:1~1:1で、例えば約10:1で混合することと、を伴ってもよい。次いで、得られた接着剤組成物は、ランプチャンバのフロント開口部で係合された当該フロントレンズと、ランプチャンバとの間の空間/接合部上に適用され、組成物の硬化を引き起こし、すなわち組成物を硬化させ、それによってフロントレンズとランプチャンバとの間の当該接合部を封止することができる。
【0083】
このプロセスはまた、ヘイズ防止コーティング組成物のコーティングを、フロントレンズの少なくとも一方の表面、すなわち内面上に適用する工程、を含んでもよい。コーティングは、乾燥/硬化したときに1~100μmの厚さを有するよう、適用される。
【0084】
上記のような接着剤は、様々な用途、例えば、屋外照明、装飾照明、例えば、自動車、トラック、オートバイ、及びボートランプ用の車両ランプ、並びに、他の車両ランプ、照明用途、及び低揮発性内容物を有する副生成物を伴う縮合硬化接着剤が必要とされる実際に任意の他の用途に、例えば電子部品の筐体/箱を封止するために、利用することができる。車両ランプとしては、例として、ヘッドランプ、ブレーキランプ、ランニングランプ、方向指示ランプ、フォグランプ、バックアップランプ、及び駐車ランプを挙げることができる。
【実施例
【0085】
言及した全ての粘度いついては、Brookfield(登録商標)HAF粘度計を使用して、3番スピンドルを10rpmで使用して、25℃で測定した。
【0086】
一連の実施例を調製しておいて、2つの部の参照材料と比較する。2つの部の参照材料の処方を以下の表1a及び表1bに示す。
【表1】
【0087】
使用した炭酸カルシウムは、speciality Minerals Inc.製の名称Calofort(登録商標)SM EAで販売されているステアリン酸処理済市販炭酸カルシウムであった。
【表2】
【0088】
触媒パッケージに使用する処理済シリカは、Evonik製のAEROSIL(登録商標)974であった。参照組成物を、A部:B部の重量比13:1にて混合した。本明細書に記載の組成によって一連の実施例を調製し、試験した。組成を、以下の表2a及び表2bに提示する。
【表3】
【0089】
VORANOL(商標)3003LMは、Dow Chemical Company製のヒドロキシル末端ポリプロピレンエーテルである。Irganox(登録商標)1135及びIrganox(登録商標)1076の酸化防止剤は、BASF製の市販酸化防止剤である。ウレタン結合あり及びなしとの言及は、先に記載し以下に提示するウレタン結合に関してkが1(あり)及び0(なし)であることと同等である。
(R)(Y3-m-Si-D-[NH-C(=O)]
【表4】
【0090】
実施例1、4、及び5の組成物を、A部:B部の重量比10:1にて混合した。実施例2及び3の組成物を、A部:B部の重量比3:1にて混合した。全ての例で、すなわち、参照例及び実施例の両方で、A部の組成物及びB部の組成物の両方を、各々の場合に23℃及び相対湿度50%で高速ミキサを毎分2000回転(rpm)にて40秒間使用して、個々に調製した。前混合したA部の組成物及びB部の組成物を、高速ミキサにて上記の比で、再度2000rpmにて40秒間、同じ条件下で一緒に混合した。
【0091】
上記の組成物を、以下の表3に示すような物理的特性について評価した。試験を進め、囲われた空間内の接着剤剤組成物からの副生成物及び揮発性物質の、ヘイズ防止コーティングに対する効果を測定した。基材を、市販のヘイズ防止コーティングでコーティングした。試験プロトコルを以下に記載し、これは、全ての実施例及び比較例に使用したものである。
ヘイズ防止コーティング(AHC)適合性試験方法、シリコーン接着剤の、2つの市販ヘイズ防止コーティング(AHC)に対する適合性判定。
【0092】
疑義を回避するために、この試験に関する適合性は、試料片の内部閉鎖表面上に市販のAHCを提供することによって意図する水膜形成効果が、シリコーン接着剤からの副生成物及び残留架橋剤材料によって変更されるかどうかに関する判定を意味する意図であった。
【0093】
試験におけるSMP接着剤については、最初に、A部とB部とを、A部:B部の比10:1にて高速ミキサを使用して混合することによって調製した。得られた未硬化接着剤約1.0gを混合してから、生成物を、Alu-Cup(Alu-Kappen Art.-Nr.3621313(32×30mm)、SCHUETT-BIOTEC GMBH製、以降、「Alu-Cup」と呼ぶ)の底部上に配置した。次いで、Alu-cupの開放端部を覆い、上にヘイズ防止コーティングで予めコーティングしておいたポリカーボネート(PC)プレートを配置することによって閉鎖し、完全な閉鎖を確保した。PCプレートを定位置に固定し、シリコーン接着剤とAHCとがシリコーン接着剤の典型的な硬化時間の場合と同じ雰囲気を確かに共有するようにした。次いで、Alu-Cupを7日間放置し、接着剤を完全に硬化させた。硬化プロセス中、それが縮合硬化プロセスによるものであることを考慮すると、副生成物及び残留架橋剤がカップ内の雰囲気中に蒸発し、ポリカーボネートストリップの内向き面上のAHCに混入物があり影響を及ぼす場合があることを理解されたい。
【0094】
7日間の硬化期間後、第2のAlu-Cupを水で満たし、実験室用ホットプレート上で75℃まで加熱した。次いで、PCプレートを元のAlu-Cupから取り出し、第2のAlu-Cupの開口部上に配置し、AHCコーティングを中の水に向けた。次いで、熱水とAHCコーティング表面との間の相互作用を観察して、ヘイジング/フォギングに関するAHCの有効性を判定した。AHCが水蒸気と接触しているときのAHCの熱水に対する反応、及びその水膜形成特性を、評価することができるように、
1.この分析を、30秒間行った。観察の代替として、結果を撮影することができる。観察を、カメラ又はビデオによって記録してもよい。
2.次いで、試料を以下のようにランク付けした。
a.ヘイズがある表面、alu-cup底部は見えない→AHCに十分に混入物がある。
b.澄んだ表面、alu-cup底部は見えない、微細な水滴→AHCに混入物がある。
c.澄んだ表面、alu-cup底部は見える、大きな水滴→AHCに混入物があった可能性がある。
d.澄んだ表面、alu-cup底部は見える、水膜→AHCに混入物がない。
3.(c)及び(d)(合格基準)でランク付けしたシリコーン接着剤は、適合性とランク付けすることができる。
【0095】
一連の標準的な物理的特性試験を行い、接着剤が接着剤として機能するのに必要な物理的特性を有することについて確認した。その結果を、標準的な試験方法の詳細と一緒に、表3にも示す。
【0096】
スナップ時間は、硬化組成物の表面上でスパチュラに、規則的な時間間隔(典型的には2~3分)で穏やかに触れることによって測定される。硬化が進行するにつれて、コーティングは粘度及び弾性を得る。これら2つが十分に高い場合、コーティングはスパチュラを「はじく(snaps off)」。コーティングのキャスティングとはじく効果の最初の観察との間の経過時間は、スナップ時間として記録される。この値は、コーティングの作業時間に関する指標を提供するので、実用的な重要性を有する。作業時間は、塗布器が適切に取り扱われ、加工されることを妨げる十分に高い粘度の状態に到達する前に、塗布器が材料と協働することができる時間として定義される。スナップ時間は、作業時間の大まかな見積りとして使用される。この場合、基剤2を、スナップ時間の測定のために触媒パッケージと混合した。
【0097】
また、重ね剪断試験を、以下のように行った。
重ね剪断引張強度
1mm×25mm×100mmサイズの試料クーポンをイソプロピルアルコールで清浄化し、次いでプラズマ処理により清浄化した後、試験した。
【0098】
0.76の、最小限の結合厚さで25mmの重なりを満たすのに十分な組成物(A部+B部)の試料を、積層装置内で、予め清浄化した第1の基材クーポン(ポリプロピレン)表面上に適用した。次いで、第2の基材(先にプラズマ処理しておいたポリカーボネート)を、第1の基材に適用した組成物の上部に配置して、予めサイズ決めした重なりを得た。2つの基材を圧縮し、過剰な組成物を除去した。2つの基材の間に挟まれた当該予めサイズ決めした重なりにおける組成物の試料を、室温で7日間硬化させた後、Instron(登録商標)3366装置を使用して、2.0cm/分の速度で、剥離(180°引張り)ではなく剪断により、予めサイズ決めした重なりを引っ張り離すことによって、重ね剪断引張強度を求めた。
【0099】
凝集破壊(CF)は、硬化したエラストマー/接着剤自体が基材表面から分離せずに破断するときに観察される。破壊がCFによるものではなかった場合、接着破壊(AF)によるとみなした。接着破壊(AF)は、試料が基材表面からきれいに分離している(剥がれている)状態を指す。いくつかの場合では、混合破壊型が観察された。すなわち、一部の領域は、剥がれている(すなわちAF)が、一部は硬化したエラストマー/接着剤で覆われたまま(すなわちCF)であった。このような場合、CF(CF%)を示す割合を記録する(CF%+AF%=100%を念頭に置く)。
【表5】
【0100】
ヘイズ防止試験に使用したときの参照材料は、試験においてヘイズ防止コーティングが表面上に多くの見える水滴を有していたこと、及びまた非常にヘイズがある外観ももたらしたことが判明した。しかし、各場合で、本明細書に記載の実施例では全て、液滴のない透明なヘイズ防止コーティングが得られ、そのため、ヘイズ防止コーティングに悪影響を及ぼさないと解釈することができる。更にまた、実施例の物理的特性は良好な結果を示し、試験した様々な実施例が全てランプ接着剤になり得たことを示し、これにより、後硬化が、ヘイズ防止コーティングと悪く相互作用する生成物/架橋剤によって解けなかったこと、ひいてはヘイズ防止コーティングが機能することが可能となったことを示した。