(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】カバーフィルム及びそれを用いた電子部品包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240301BHJP
B65D 73/02 20060101ALI20240301BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D73/02 B
B32B27/08
(21)【出願番号】P 2021530674
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026205
(87)【国際公開番号】W WO2021006208
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019128925
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿津坂 高範
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 沙織
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 岳史
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-312719(JP,A)
【文献】特開2003-312727(JP,A)
【文献】特開2010-173673(JP,A)
【文献】特開2008-273602(JP,A)
【文献】特開2002-179183(JP,A)
【文献】特開2017-105076(JP,A)
【文献】国際公開第2017/091398(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024529(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0010526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 73/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層とシーラント樹脂層とを少なくとも有し、
シーラント樹脂層が、基材層の一方の面に接するように形成され、又は、基材層の一方の面に接する中間樹脂層上に形成され、
基材層に接する中間樹脂層又は基材層に接するシーラント樹脂層が、エポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有
し、
基材層に接する中間樹脂層又は基材層に接するシーラント樹脂層中のエポキシ化脂肪酸又はその誘導体の含有量が、基材層に接する中間樹脂層又は基材層に接するシーラント樹脂層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.00001質量部以上0.5質量部以下であり、
シーラント樹脂層が、以下の[1]~[3]:
[1]スチレン-ジエンブロック共重合体を含有するスチレン系樹脂及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物
[2]芳香族ビニル由来の単量体単位を15~45質量%含む芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物
[3]オレフィン成分を70~91質量%含むエチレン-酢酸ビニル共重合体
から選択される1以上を含有する、カバーフィルム。
【請求項2】
中間樹脂層がポリエチレン樹脂を含有する、請求項
1に記載のカバーフィルム。
【請求項3】
ポリエチレン樹脂のJIS K7112の測定法に従って測定した密度が、0.85~0.95g/cm
3である、請求項
2に記載のカバーフィルム。
【請求項4】
基材層が、二軸延伸ポリエステル及び二軸延伸ポリプロピレンから選択される1以上を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載のカバーフィルム。
【請求項5】
基材層の中間樹脂層及びシーラント樹脂層と接しない面、及び/又は、シーラント樹脂層の中間樹脂層及び基材層と接しない面が、帯電防止剤を含有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のカバーフィルム。
【請求項6】
帯電防止剤が、界面活性剤、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、及びカーボンブラックから選択される1以上を含有し、帯電防止
剤を含有する面の表面抵抗値が1×10
13Ω/□以下である、請求項
5に記載のカバーフィルム。
【請求項7】
熱可塑性樹脂を含むキャリアテープの蓋材としての、請求項1から
6のいずれか一項に記載のカバーフィルムの使用。
【請求項8】
請求項1から
6のいずれか一項に記載のカバーフィルムを用いた蓋材と、熱可塑性樹脂を用いたキャリアテープとを有する、電子部品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーフィルム及びそれを用いた電子部品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型高性能化が進み、併せて電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に部品を自動的に実装することが行われている。表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて熱成形によりポケットが連続的に形成されたキャリアテープに収納される。電子部品を収納後、キャリアテープの上面に蓋材としてカバーフィルムを重ね、加熱したシールバーでカバーフィルムの両端を長さ方向に連続的にヒートシールして包装体としている。
【0003】
カバーフィルムの一般的な構成として、ポリエステルフィルム等を含む基材層上に、必要に応じて中間樹脂層を介してシーラント樹脂層が形成されている構成が知られている。基材層上に中間樹脂層やシーラント樹脂層を形成する方法としては、従来、基材層上に予めウレタン樹脂やエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等を含むアンカーコート剤を塗布しておき、その塗布面上に中間樹脂層やシーラント樹脂層を形成する方法が知られている(例えば特許文献1)。しかしながら、アンカーコート剤を用いる場合、工数が増えコストがかかるとともに、アンカーコート剤に含まれる有機溶剤による環境汚染の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アンカーコート剤を用いずとも層間接着性に優れるカバーフィルム及びそれを用いた電子部品包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に関するものである。
(1)基材層とシーラント樹脂層とを少なくとも有し、シーラント樹脂層が、基材層の一方の面に接するように形成され、又は、基材層の一方の面に接する中間樹脂層上に形成され、基材層に接する中間樹脂層又は基材層に接するシーラント樹脂層が、エポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有する、カバーフィルム。
(2)基材層に接する中間樹脂層又は基材層に接するシーラント樹脂層中のエポキシ化脂肪酸又はその誘導体の含有量が、基材層に接する中間樹脂層又は基材層に接するシーラント樹脂層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.5質量部以下である、(1)に記載のカバーフィルム。
(3)中間樹脂層がポリエチレン樹脂を含有する、(1)又は(2)に記載のカバーフィルム。
(4)ポリエチレン樹脂のJIS K7112の測定法に従って測定した密度が、0.85~0.95g/cm3である、(3)に記載のカバーフィルム。
(5)シーラント樹脂層が、以下の[1]~[3]から選択される1以上を含有する、(1)から(4)のいずれかに記載のカバーフィルム。
[1]スチレン-ジエンブロック共重合体を含有するスチレン系樹脂及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物
[2]芳香族ビニル由来の単量体単位を15~45質量%含む芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物
[3]オレフィン成分を70~91質量%含むエチレン-酢酸ビニル共重合体
(6)基材層が、二軸延伸ポリエステル及び二軸延伸ポリプロピレンから選択される1以上を含む、(1)から(5)のいずれかに記載のカバーフィルム。
(7)基材層の中間樹脂層及びシーラント樹脂層と接しない面、及び/又は、シーラント樹脂層の中間樹脂層及び基材層と接しない面が、帯電防止材を含有する、(1)から(6)のいずれかに記載のカバーフィルム。
(8)帯電防止材が、界面活性剤、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、及びカーボンブラックから選択される1以上を含有し、帯電防止材を含有する面の表面抵抗値が1×1013Ω/□(ohms per square)以下である、(7)に記載のカバーフィルム。
(9)熱可塑性樹脂を含むキャリアテープの蓋材としての、(1)から(8)のいずれかに記載のカバーフィルムの使用。
(10)(1)から(8)のいずれかに記載のカバーフィルムを用いた蓋材と、熱可塑性樹脂を用いたキャリアテープとを有する、電子部品包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アンカーコート剤を用いずとも層間接着性に優れるカバーフィルム及びそれを用いた電子部品包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態のカバーフィルムの層構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態のカバーフィルムの層構成を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態のカバーフィルムの他の層構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係るカバーフィルムは、基材層とシーラント樹脂層とを有する。シーラント樹脂層は、基材層上に、基材層の一方の面に接するように形成されていてもよく、基材層の一方の面に接する中間樹脂層を介して形成されていてもよい。以下では、シーラント樹脂層が基材層の一方の面に接するように形成されている実施形態を第1実施形態ということがあり、シーラント樹脂層が基材層の一方の面に接する中間樹脂層上に形成されている(つまり、シーラント樹脂層が中間樹脂層を介して基材層上に形成されている)実施形態を第2実施形態ということがある。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るカバーフィルムの層構成を示す概略断面図である。このカバーフィルム10は、基材層11の一方の面に接するようにシーラント樹脂層12が設けられている。また、
図1においてシーラント樹脂層12は1層のみ設けられているが、厚み及び/又は組成が異なる2層以上が積層されていてもよい。
【0012】
図2は、第2実施形態に係るカバーフィルムの層構成を示す概略断面図である。このカバーフィルム20は、基材層21の一方の面に接するように設けられている中間樹脂層23を介してシーラント樹脂層22が基材層21上に設けられている。
図2においてシーラント樹脂層22は1層のみ設けられているが、厚み及び/又は組成が異なる2層以上が積層されていてもよい(
図3を参照)。
図3は、第2実施形態に係るカバーフィルムにおいてシーラント樹脂層を2層構造(符号32a,32b)にした場合の層構成を示す概略断面図である。
図1~3では、シーラント樹脂層12,22,32a,32bは、基材層11,21,31の一方の面上のみに形成されているが、必要に応じて、基材層11,21,31の両面に形成されていてもよい。この場合、基材層11,21,31の一方の面側の層構成と他方の面側の層構成は、同じであってもよいし異なっていてもよい。層構成が異なる場合の例としては、基材層の一方の面側が第1実施形態に係る層構成を有し、他方の面側が第2実施形態に係る層構成を有する例が挙げられる。
【0013】
(基材層)
基材層は、カバーフィルムの基材となる層であり、通常は熱可塑性樹脂を用いて形成されている。すなわち、基材層は熱可塑性樹脂を含む。基材層を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;6,6-ナイロン、6-ナイロン等のポリアミド樹脂等が挙げられ、これらから選択される少なくとも1種を含む樹脂の無延伸物又はその延伸物を用いて形成することができる。
中でも、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)等の二軸延伸ポリエステル;二軸延伸ポリプロピレン;二軸延伸ナイロンから選択される少なくとも1種を用いて形成されていることが好ましく、透明性と剛性の高さの点から、二軸延伸ポリエステル又は二軸延伸ポリプロピレンを用いて形成されていることがより好ましい。
【0014】
基材層の平均厚みは、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~80μmであることがより好ましく、12μm~30μmであることがさらに好ましい。基材層の厚みを5μm以上とすることで、カバーフィルム自体の引張り強度が低くなることによってカバーフィルムを剥離する際に「フィルムの破断」が発生するのを抑制することができる。一方、100μm以下とすることで、キャリアテープに対するヒートシール性の低下及びコストの上昇を抑制することができる。なお、本明細書において、基材層、中間樹脂層及びシーラント樹脂層等の各層の「平均厚み」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面の観察から計測した5点の平均値とし、以下では単に「厚み」として記載する場合がある。
【0015】
(シーラント樹脂層)
シーラント樹脂層は、キャリアテープに熱溶着する作用を有する層である。カバーフィルムが有するシーラント樹脂層がキャリアテープに熱溶着することで、カバーフィルムを用いた蓋材と、熱可塑性樹脂を用いたキャリアテープとを有する電子部品包装体が作製される。
【0016】
シーラント樹脂層は、熱可塑性樹脂を用いて形成されている。すなわち、シーラント樹脂層は熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びこれらの水素添加物の何れか又はこれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物;芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物;エチレン-酢酸ビニル共重合体等から選択される1以上を含むことが好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂は、より好ましくは、以下の[1]~[3]から選択される1以上を含有する。さらに好ましくは、以下の[1]~[3]から選択される1以上を、シーラント樹脂層を構成する成分中に合計50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上含有する。
[1]スチレン-ジエンブロック共重合体を含有するスチレン系樹脂及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物
[2]芳香族ビニル由来の単量体単位を15~45質量%含む芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物
[3]オレフィン成分を70~91質量%含むエチレン-酢酸ビニル共重合体
【0018】
[1]スチレン系樹脂及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物
スチレン系樹脂は、スチレン-ジエンブロック共重合体を主成分として含有することが好ましい。本明細書において、「主成分」とは、含有量が全体の50質量%以上の成分のことをいう。
【0019】
スチレン-ジエンブロック共重合体は、スチレン由来の単量体単位及びジエン由来の単量体単位を必須とするブロック共重合体であり、ポリスチレン鎖とポリジエン鎖とを有する。スチレン由来の単量体単位としては、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、o-クロロスチレン等の単量体単位が挙げられる。スチレン由来の単量体単位は、1種類でもよく、2種類以上の併用であってもよい。ジエン由来の単量体単位としては、共役ジエン由来の単量体単位が挙げられ、例えばブタジエンやイソプレン等が挙げられる。
【0020】
スチレン-ジエンブロック共重合体の具体例としては、スチレンとブタジエンのジブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体、スチレンとイソプレンのブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンのトリブロック共重合体等が挙げられ、これらから選択される1以上を含有することが好ましい。これらの中では、スチレンとブタジエンのジブロック共重合体がヒートシール性の点で好ましい。
【0021】
スチレン系樹脂には、他の成分として、汎用ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系樹脂を、樹脂成分中に50質量%未満、30質量%以下、又は10質量%以下の割合で含むことができる。
【0022】
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体中のα-オレフィン由来の単量体単位としては、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等の単量体単位が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
スチレン-ジエンブロック共重合体とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体との含有割合は、(スチレン-ジエンブロック共重合体)/(エチレン-α-オレフィンランダム共重合体)の質量比として、95/5~40/60であることが好ましく、80/20~55/45であることがより好ましい。上記範囲内にすることで、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキが小さく好適に用いることができる。
【0024】
[2]芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物
芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物は、芳香族ビニル由来の単量体単位と、共役ジエン由来の単量体単位の二重結合を水素添加処理して単結合とした単位とからなる共重合体である。
【0025】
芳香族ビニル由来の単量体単位としては、スチレン及び各種の置換スチレン、例えばp-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、o-クロロスチレン等の各スチレン系単量体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも好ましくはスチレン単位、p-メチルスチレン単位、p-クロロスチレン単位であり、特に好ましくはスチレン単位である。これら芳香族ビニル由来の単量体単位は、1種類でもよく、2種類以上の併用であってもよい。
【0026】
共役ジエン由来の単量体単位としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン単量体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも好ましくはブタジエン単位、イソプレン単位である。これら共役ジエン単量体単位は1種類でもよく、2種類以上の併用であってもよい。
【0027】
芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物の具体例としては、スチレンとブタジエンのジブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物、スチレンとイソプレンのブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレンースチレンのトリブロック共重合体の水素添加物等を挙げることがでる。カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを抑制する点で、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物が好ましい。
【0028】
芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物を構成している芳香族ビニル由来の単量体単位の含有量は、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキをより小さくすることができる点で、15~45質量%であることが好ましく、25~35質量%であることがより好ましい。共役ジエン単量体単位の二重結合を水素添加処理して単結合とした単位の含有量については、芳香族ビニル単量体単位を除く全量であってもよいが、水素添加処理の工程で共役ジエン単量体単位の二重結合を全て単結合にすることは生産性の観点から困難であるため、発明の効果を損なわない範囲として、水添ブロック共重合体中に共役ジエン単量体単位が20質量%以下であれば含有することができる。
【0029】
芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の水素添加物の流動性については特に制限はないが、JIS K7210の測定法において温度230℃、荷重2.16kgで測定した値が1g/10分~20g/10分、好ましくは3g/10分~10g/10分である。
【0030】
[3]エチレン-酢酸ビニル共重合体
エチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレン由来の単量体単位と酢酸ビニル由来の単量体単位とを必須とする共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合体において、オレフィン成分の含有量は70~91質量%であることが好ましく、75~88質量%であることがより好ましい。オレフィン成分の含有量を好ましくは70~91質量%、より好ましくは75~88質量%の範囲内にすることで、ヒートシール性をより発現することができる。また、カバーフィルムが高温環境下に曝された場合でもヒートシール箇所以外でキャリアテープへの接着が発生することを防ぐことができる。
【0031】
シーラント樹脂層の平均厚みは、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~40μmであることがより好ましい。シーラント樹脂層の厚みを好ましくは5μm~50μm、より好ましくは10μm~40μmの範囲内にすることで、透明性を維持しつつキャリアテープとの接着性をより高めることができる。また、シーラント樹脂層が十分な剥離強度を示すことができる、コスト上昇を抑制することができる、カバーフィルムを剥離する際に剥離強度のバラツキを抑制することができる等の効果を得ることができる。なお、シーラント樹脂層が2層以上積層されている場合は、積層後の平均厚みが上記範囲内であることが好ましい。
【0032】
シーラント樹脂層は、無機フィラーが添加されていてもよい。カバーフィルムは、電子部品を入れたキャリアテープの表面にヒートシールされた状態で、封止樹脂に含まれる水分を除去するために、60℃の環境下で72時間、又は80℃の環境下で24時間程度の条件でベーキング処理されることがあり、このような場合に内容物である電子部品がカバーフィルムに接着すると、カバーフィルムを剥離して電子部品を実装する工程でトラブルとなることがある。シーラント樹脂層に無機フィラーを添加すると、ベーキング処理した場合でも電子部品がカバーフィルムに付着することを防ぐことができる。
無機フィラーは、特に限定されないが、例えば、球状又は破砕形状のタルク粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、マイカ粒子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらはバインダー樹脂中に分散されたマスターバッチとして用いることもできる。カバーフィルムの透明性を維持する点で、無機フィラーはメジアン径(D50)が200nm未満であることが好ましく、これを例えばシーラント樹脂層を構成する樹脂成分100質量部に対して、10~50質量部含有することができる。マスターバッチとして用いる場合は、バインダー樹脂を含めた樹脂成分100質量部に対して上記含有量にすることができる。
【0033】
(中間樹脂層)
中間樹脂層は、シーラント樹脂層と基材層との間に形成されていてもよい層である。中間樹脂層を設けることによって、カバーフィルムをキャリアテープにヒートシールする際にシーラント樹脂層とキャリアテープとの密着性を高めることができる。
【0034】
中間樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含有することが好ましい。「主成分」については上記のとおりである。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エポキシ変性ポリエチレンやエチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-エチレングラフト共重合体、スチレン-プロピレングラフト共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、プロピレン重合体、エチレン重合体等およびこれらのブレンド物があげられる。これらを単独で用いることもできるが複数を併用することもできる。
【0035】
これらの中でも、柔軟性を有していてかつ適度の剛性があり、常温での引裂き強度に優れる直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと示す)を好適に用いることができ、特に密度が0.85~0.95g/cm3、より好ましくは0.900~0.925g/cm3の範囲の樹脂を用いることで、ヒートシールする際の熱や圧力による、カバーフィルム端部からの中間樹脂層樹脂の食み出しが起こりにくいためヒートシール時のコテの汚れが生じにくいだけでなく、カバーフィルムをヒートシールする際に中間樹脂層が軟化することによりヒートシールコテの当り斑を緩和するため、カバーフィルムを剥離する際に安定した剥離強度が得られ易い。なお、密度は、JIS K7112の測定法に従って測定した値とする。
【0036】
LLDPEには、チグラー型触媒で重合されたものと、メタロセン系触媒で重合されたもの(以下、m-LLDPEと示す)がある。m-LLDPEは、分子量分布が狭く制御されているため、とりわけ高い引裂強度を有しており、本発明の中間樹脂層として好適に用いることができる。m-LLDPEは、コモノマーとして炭素数3以上のオレフィン、好ましくは炭素数3~18の直鎖状、分岐状、芳香核で置換されたα-オレフィンとエチレンとの共重合体である。直鎖状のモノオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等が挙げられる。また、分岐状モノオレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン等が挙げられる。また、芳香核で置換されたモノオレフィンとしては、スチレン等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独又は2種以上を組み合わせて、エチレンと共重合することができる。この共重合では、ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等のポリエン類を共重合させてもよい。中でも、コモノマーとして1-へキセン、1-オクテンを用いたものは、引張強度が強くまたコスト面でも優れていることから、好適に用いることができる。
【0037】
中間樹脂層の平均厚みは、透明性を維持した状態でシーラント樹脂層とキャリアテープとの密着性を高めることができる点で、10~40μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましく、15~30μmとすることもできる。
【0038】
(エポキシ化脂肪酸又はその誘導体)
本発明の一実施形態に係るカバーフィルムにおいて、基材層に接する層(中間樹脂層又はシーラント樹脂層)は、エポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有する。言い換えると、シーラント樹脂層が基材層に直接的に接するように形成されている場合(第1実施形態)、シーラント樹脂層は、エポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有する。シーラント樹脂層が中間樹脂層を介して基材層に間接的に接するように形成されている場合(第2実施形態)、中間樹脂層はエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有する。基材層に接する層(中間樹脂層又はシーラント樹脂層)がエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有することで、透明性を維持しつつ、イソシアネート化合物、ウレタン樹脂、及び/又はエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等を含むアンカーコート剤を用いずとも基材とシーラント樹脂層との接着性を高めることができる。
なお、シーラント樹脂層が中間樹脂層を介して基材層に間接的に接するように形成されている場合(第2実施形態)は、中間樹脂層がエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有するように構成されていればよいが、この場合もシーラント樹脂層がエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有していてもよい。
【0039】
エポキシ化脂肪酸又はその誘導体としては、エポキシ化動物油および植物油、例えばエポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化パーム油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化ナタネ油、エポキシ化ベニバナ油、エポキシ化トール油、エポキシ化キリ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化メチルステアレート、エポキシ化ブチルステアレート、エポキシ化2-エチルヘキシルステアレート、エポキシ化ステアリルステアレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ化大豆油が好ましい。エポキシ化大豆油は、メタノール加圧分解で得られた可溶分をTMAH試薬で反応させGC-MSにより分析すると、エポキシオレイン酸としてピークが検出される。
【0040】
エポキシ化脂肪酸又はその誘導体の含有量は、アンカーコート剤を用いずとも基材層と中間樹脂層又はシーラント樹脂層との接着性を確実に高めることができ、かつ透明性の低下をより抑制することができる点で、基材層に接する中間樹脂層又は基材層に接するシーラント樹脂層を構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以下であることがさらに好ましい。下限値は、0.00001質量部以上、又は、0.00002質量部以上であることが好ましく、0.0001質量部以上であることがより好ましく、0.001質量部以上であることがさらに好ましい。
【0041】
(帯電防止剤)
本実施形態に係るカバーフィルムにおいて、基材層の、中間樹脂層又はシーラント樹脂層と接しない側の面(基材層の、中間樹脂層又はシーラント樹脂層と接する側と反対側の表面;カバーフィルムの基材層側の最表面)、又は、シーラント樹脂層の、中間樹脂層又は基材層と接しない側の面(シーラント樹脂層の、中間樹脂層又は基材層と接する側と反対側の表面;カバーフィルムのシーラント樹脂層側の最表面)が、帯電防止処理されていてもよい。帯電防止処理されている面は、帯電防止剤を含有する。帯電防止剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系、ベタイン系などの界面活性剤;バインダー樹脂に分散した酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、及びカーボンブラック等の導電材等挙げることができる。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。作業性の点で、帯電防止剤が添加される中間樹脂層又はシーラント樹脂層と同じ樹脂を用いることが好ましい。
【0042】
帯電防止処理は、帯電防止剤を、グラビアロールを用いたロールコーターやリップコーター、スプレー等により基材層の表面に塗布する方法;帯電防止剤を、基材層又はシーラント樹脂層を構成する樹脂中に予め混合させておく方法等を挙げることができる。
【0043】
帯電防止剤を塗布する方法で帯電防止処理された基材層又はシーラント樹脂層の上には、帯電防止剤を含有する層(帯電防止層)が形成されている。帯電防止層の平均厚みは、0.05~10μmであることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましい。ここでいう平均厚みとは乾燥後の平均厚みである。帯電防止層の平均厚みを上記範囲内にすることで、カバーフィルムの透明性を維持しつつカバーフィルム表面の表面抵抗率を小さくすることができる。帯電防止剤を均一に塗布するために、帯電防止処理を行う前に、基材表面にコロナ放電処理やオゾン処理することが好ましく、特にコロナ放電処理することが好ましい。なお、帯電防止層の「平均厚み」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面の観察から測定した5点の平均値とする。
【0044】
帯電防止剤を、基材層又はシーラント樹脂層を構成する樹脂中に予め混合させておく方法において、帯電防止剤の混合量は、樹脂成分100質量部に対して5~30質量部であることが好ましく、10~25質量部であることがより好ましい。
【0045】
帯電防止処理された面の表面抵抗率は、例えば、1×1013Ω/□以下、1×101
2Ω/□以下、1×109Ω/□以下、又は1×107Ω/□以下とすることができる。1×1013Ω/□以下であることが好ましい。
【0046】
(カバーフィルム)
本実施形態において、カバーフィルムの平均厚みは、30μm~100μmが好ましく、35μm~80μmがより好ましく、40μm~70μmがさらに好ましい。カバーフィルムの平均厚みを30μm以上とすることで、カバーフィルムを剥離した際の切れを防止することができる。一方、カバーフィルムの平均厚みを100μm以下とすることで、コスト上昇を抑制するだけでなく、シール時間の短縮により生産性を向上ことができる。なお、カバーフィルムの「平均厚み」は、尾崎製作所製ピーコック精密測定機器を用いて測定した5点の平均値とする。
【0047】
カバーフィルムは、基材層とシーラント樹脂層との接着強度が、1.5N/15mm以上であることが好ましく、3.0N/15mm以上であることがより好ましい。接着強度は、積層体を、流れ方向に15mm幅の短冊状に切出し、基材層と基材層の一方の面に接するように形成されたシーラント樹脂層、又は、基材層の一方の面に接するように形成された中間樹脂層との層間の界面で剥離し、剥離速度300mm/分、T剥離試験(SHIMADZ社製、EZ-TEST)により測定した値とする。
【0048】
カバーフィルムは、中間樹脂層及びシーラント樹脂層にエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有しない基準フィルムに対するヘイズの増加率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。ヘイズの増加率は、基材層、中間樹脂層、及びシーラント樹脂層を有するカバーフィルムにおいて、中間樹脂層及びシーラント樹脂層にエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有しない基準フィルムと、中間樹脂層にエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有した評価用フィルムを準備し、それぞれについてヘーズメーター(日本電色社製、NDH7000)によりヘイズ値を測定し、基準フィルムに対する評価用フィルムのヘイズ値の増加率として算出する。
【0049】
本実施形態は、アンカーコート剤を用いずとも基材と中間樹脂層又はシーラント樹脂層との接着性を高めることができるが、アンカーコート剤を用いる態様を除外するものではない。すなわち、一実施形態において、カバーフィルムは、アンカーコート剤成分を含有していてもよい。
一方、一実施形態において、カバーフィルムは、アンカーコート剤成分を含有しない構成にすることもできる。例えば、カバーフィルムは、イソシアネート化合物、及び/又はウレタン樹脂を実質的に用いない構成(例えば、イソシアネート化合物及び/又はウレタン樹脂の含有量が全樹脂成分中5質量%以下)にすることができる。
【0050】
[カバーフィルムの製造方法]
上記カバーフィルムを作製する方法は特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができる。例えば、基材層の二軸延伸ポリエステルフィルム表面に本発明の中間樹脂層、シーラント樹脂層をTダイから押出し基材層との積層フィルムとする。さらに帯電防止層を有する場合は、シーラント樹脂層の上に、帯電防止層を構成する樹脂組成物を、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等によりコーティングすることで、目的とするカバーフィルムを得ることができる。本実施形態のカバーフィルムは、アンカーコート剤を用いる必要がないので、アンカーコート剤の塗布工程を省略することができ、アンカーコート剤に含まれる有機溶剤による環境問題も生じない。
【0051】
他の方法として、シーラント樹脂層を予めTダイキャスト法、あるいはインフレーション法等で製膜しておき、これを基材層と接着するドライラミネート法により、基材層とシーラント樹脂層からなるフィルムを得ることもできる。
【0052】
前記の工程に加えて、必要に応じて、シーラント樹脂層上に帯電防止層を形成することができる。帯電防止層は、帯電防止剤を含む組成物を、グラビアロールを用いたロールコーターやリップコーター、スプレー等により塗布することで形成することができる。
【0053】
[用途]
カバーフィルムは、電子部品の収納容器であるキャリアテープの蓋材として用いることができる。キャリアテープとは、電子部品を収納するためのポケットを有した幅8mmから100mm程度の帯状物である。カバーフィルムを蓋材としてヒートシールする場合、キャリアテープを構成する材質は特に限定されるものではなく、市販のものを用いることができ、例えばポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を使用することができる。キャリアテープは、カーボンブラックやカーボンナノチューブを樹脂中に練り込むことにより導電性を付与したもの、帯電防止剤や導電材が練り込まれたもの、あるいは表面に界面活性剤型の帯電防止剤やポリピロール、ポリチオフェン等の導電物をアクリル等の有機バインダーに分散した塗工液を塗布することにより、帯電防止性を付与したものを用いることができる。
【0054】
電子部品を収納した包装体は、例えば、キャリアテープの電子部品収納部に電子部品等を収納した後にカバーフィルムを蓋材とし、カバーフィルムの長手方向の両縁部を連続的にヒートシールして包装し、リールに巻き取ることで得られる。この形態に包装することで電子部品等は保管、搬送される。電子部品等を収納した包装体は、キャリアテープの長手方向の縁部に設けられたキャリアテープ搬送用のスプロケットホールと呼ばれる孔を用いて搬送しながら断続的にカバーフィルムを引き剥がし、部品実装装置により電子部品等の存在、向き、位置を確認しながら取り出し、基板への実装が行われる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた各種材料は以下の通りである。
【0056】
(基材層)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム:東洋紡株式会社製、「E-5100」、厚み16μm
(中間樹脂層)
m-LLDPE:メタロセン系触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン株式会社製、「ユメリット2040F」(JIS K7112による密度0.918g/cm3)
(シーラント樹脂層)
スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体水素添加樹脂:旭化成株式会社製、「タフテックH1041」
スチレン-ブタジエンブロック共重合体1:デンカ株式会社製、「デンカクリアレン」
スチレン-ブタジエンブロック共重合体2:JSR株式会社製、「TRレジン」
エチレン-1-ブテンランダム共重合体:三井化学株式会社社製、「タフマーA」
ハイインパクトポリスチレン:東洋スチレン株式会社製、「E640N」
エチレン-酢酸ビニル共重合体:三井・デュポンポリケミカル株式会社製、「エバフレックスV5711」
タルク-シリカマスターバッチ:東洋インキ株式会社製、「PEX-ABT-16」
エポキシ化大豆油:株式会社ADEKA製、「O-130P」
【0057】
[実施例1]
以下のようにして、基材層、中間樹脂層、及びシーラント樹脂層をこの順で有する3層構造のカバーフィルムを作製した。シーラント樹脂層を構成する樹脂としてスチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加樹脂(旭化成ケミカルズ社製、「タフテックH1041」、オレフィン成分量70質量%)100質量部とタルク、シリカマスターバッチ(東京インキ社製、「PEX-ABT-16」、オレフィン成分量50質量%)25質量部とをタンブラーにてプリブレンドして、単軸押出機を用いて厚さ20μmのシーラントフィルムを得た。このシーラントフィルムと二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み16μm)の間に、中間樹脂層を構成する樹脂である、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、「ユメリット2040F」)100質量部とエポキシ化大豆油(ADEKA製、「O-130」)0.25質量部とをタンブラーでブレンドした樹脂を単軸押出機で13μmの厚みで押し出し、押出しラミネート法で積層させて電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムを得た。この際、アンカーコート剤や接着剤は用いていない。
【0058】
[実施例2~6,8,9、比較例1,2]
表1に示す材料及び組成とした以外は、実施例1と同じ方法でカバーフィルムを得た。なお、比較例1,2は、3層構造のカバーフィルムにおいて、基材層に接する中間樹脂層にエポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有しない場合の例である。
【0059】
[実施例7]
以下のようにして、基材層及びシーラント樹脂層をこの順で有する2層構造のカバーフィルムを作製した。シーラント樹脂層を構成する樹脂としてスチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加樹脂(旭化成ケミカルズ社製、「タフテックH1041」、オレフィン成分量70質量%)100質量部、タルク、シリカマスターバッチ(東京インキ社製、「PEX-ABT-16」、オレフィン成分量50質量%)25質量部、エポキシ化大豆油(ADEKA製、「O-130」)0.156質量部をタンブラーにてブレンドして、単軸押出機を用いて厚さ20μmのシーラントフィルムとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み16μm)上へ押出しコーティングし、電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムを得た。この際、アンカーコート剤や接着剤は用いていない。
[比較例3]
シーラント樹脂層にエポキシ化大豆油を混合せず表1の組成にしたこと以外は、実施例7と同じ方法でカバーフィルムを得た。
【0060】
[測定及び評価方法]
各実施例及び各比較例で作製した電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムについて下記に示す方法で測定を行い、以下に示す基準に基づいて評価を行った。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0061】
(層間接着強度)
上記工程によって得られた積層体を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、樹脂流れ方向に15mm幅の短冊状に切出し、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下、T剥離試験機(SHIMADZU社製、EZ-TEST)を用い300mm/分の速度にて、基材層と基材層の一方の面に接するように形成されたシーラント樹脂層との層間(実施例7、比較例3)、又は、基材層と基材層の一方の面に接するように形成された中間樹脂層との層間(実施例1~6,8,9、比較例1,2)の界面で剥離して剥離強度を測定し、以下の基準に沿って評価した。
4:3.0N/15mm以上
3:1.5N/15mm以上、3.0N/15mm未満
2:1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満
1:1.0N/15mm未満
【0062】
(ヘイズ増加率)
得られた積層体を、一辺50mmの正方形に切出し、ヘーズメーター(日本電色社製、NDH7000)を用い、JIS K7136の測定条件にてヘイズ値を評価した。ヘイズの増加率は、エポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有した積層体のヘイズ値をA、エポキシ化脂肪酸又はその誘導体を含有していないこと以外は、同一の組成および構成である積層体のヘイズ値をBとした場合、ヘイズ増加率(%)=(1-(B/A))×100で得られる値とした。以下の基準に沿って評価した。
4:10%以下
3:11%以上、20%以下
2:21%以上、30%以下
1:31%以上
【0063】
【符号の説明】
【0064】
10,20,30 カバーフィルム
11,21,31 基材層
12,22,32a,32b シーラント樹脂層
23,33 中間樹脂層