(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】光学レンズの製造方法及び製造システム
(51)【国際特許分類】
B29D 11/00 20060101AFI20240301BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20240301BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20240301BHJP
B29C 64/10 20170101ALI20240301BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240301BHJP
【FI】
B29D11/00
G02C7/00
G02C7/02
B29C64/10
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2021531778
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083527
(87)【国際公開番号】W WO2020115061
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ルセル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク・パデュウ
(72)【発明者】
【氏名】マテュー・フィヤード
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・グロー
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・クエール
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0153589(US,A1)
【文献】特表2016-529541(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0011874(KR,A)
【文献】特表2002-539500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
G02C 1/00 - 13/00
B29D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の点における少なくとも参照光学レンズ度を有する光学レンズ(100)の製造方法であって、
- 定数の光学素子の間で、前記光学レンズ(100)を製造するための1つの光学素子(2)を選択するステップであって、前記光学レンズ(100)の前記所与の点における前記参照光学レンズ度の機能として実行され、前記選択された光学素子(2)が、前記光学レンズ(100)の前記所与の点における前記参照光学レンズ度の絶対値以下の絶対値を有する光学レンズ度を有するように実行される、選択するステップと、
- 前記選択された光学素子(2)上に補完的部分(20)を堆積させることによって、付加製造技術を使用して前記光学レンズ(100)を製造するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記光学レンズ度が球面レンズ度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学レンズ度が円柱レンズ度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記定数の光学素子の少なくとも1つが、ゼロではない円柱レンズ度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記定数の光学素子が、それぞれ、第1の光学レンズ度及び第2の光学レンズ度を有する第1の光学素子及び第2の光学素子を含み、前記第2の光学レンズ度が前記第1の光学レンズ度とは異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記選択された光学素子(2)が、第1の面及び第2の面を含み、前記補完的部分(20)が前記第1の面又は前記第2の面の少なくとも1つに堆積される、請求項1~5のいずれか一項に方法。
【請求項7】
前記選択された光学素子(2)の前記第1の面及び前記第2の面が、それぞれ、第1の曲率及び第2の曲率を有し、前記第1の曲率が前記第2の曲率より低く、前記補完的部分(20)が前記第1の面に堆積される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された光学素子(2)の前記第1の面が凹面であり、前記第1の面が、前記製造するステップの間、実質的に凹面のままである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記選択された光学素子(2)の前記第1の面が凸面であり、前記第1の面が、前記製造するステップの間、実質的に凸面のままである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記定数の光学素子の少なくとも1つが、それぞれ、第1の両眼離反運動及び第2の両眼離反運動を有する第1の面及び第2の面を含み、前記第1の両眼離反運動及び前記第2の両眼離反運動の合計が少なくとも実質的にゼロに等しい、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記定数の光学素子の少なくとも1つが、非球面若しくはトーリックであるか、又は累進面若しくは累進光学レンズ度分布を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
所与の点における参照光学レンズ度を有する光学レンズ(100)を製造するための製造システムであって、
- 定数の光学素子の間で、そして前記光学レンズ(100)の前記所与の点における前記参照光学レンズ度の機能として光学素子(2)を選択するように設計された選択ユニットであって、前記選択された光学素子(2)が、前記光学レンズ(100)の前記所与の点において前記参照光学レンズ度の絶対値以下の絶対値を有する光学レンズ度を有するように構成される選択ユニットと、
- 前記選択された光学素子(2)上に補完的部分(20)を堆積させることによって、付加製造技術を使用して前記光学レンズ(100)を製造するように設計された製造ユニットと、
を含む、製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光学レンズ、特に眼用レンズの製造に関する。
【0002】
より厳密には、本発明は、付加製造技術を使用する光学レンズの製造方法及び製造システムに関する。
【背景技術】
【0003】
光学レンズ、特に眼用レンズの製造に付加製造技術を使用することが注目される理由は、得られる光学レンズが、光学レンズを支持するフレームに合致するよう直接成形され、且つ/又は得られる光学レンズが着用者の光学的処方に適合するからである。
【0004】
しかしながら、付加製造によって完全な光学レンズレイヤー・バイ・レイヤーを製造することは、有意な量の時間を消費する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この制約に取り組むために、ビルドオーバー技術が提案される。それは、光学レンズを製造するために、既存の光学素子上に、付加製造によって材料を付加することからなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、付加製造技術を使用して光学レンズを製造する方法を提供する。本方法は、付加製造によって光学レンズの製造効率を改善することを目的とする。
【0007】
より厳密には、本発明は、所与の点における少なくとも参照光学レンズ度(reference optical power)を有する光学レンズを製造する方法からなる。本方法は、
- 定数の光学素子の間で、光学レンズを製造するための1つの光学素子を選択するステップであって、光学レンズの所与の点における参照光学レンズ度の機能として実行され、選択された光学素子が、光学レンズの所与の点における参照光学レンズ度の絶対値以下の絶対値を有する光学レンズ度を有するように実行される、選択するステップと、
- 選択された光学素子上に補完的部分を堆積させることによって、付加製造技術を使用して光学レンズを製造するステップと、を含む。
【0008】
本発明によって、光学レンズを製造するために使用される光学素子は、光学素子の限定的な群の間で選択される。したがって、光学素子のこの限定的な群のため、製造のために利用可能な光学素子の数を最小化することができる。適切な光学素子を選択することによって、次いで、光学レンズを製造するための付加材料の制限が可能となる。
【0009】
本方法の他の有利な特徴は、以下の通りである。
- 光学レンズ度は球面レンズ度である;
- 光学レンズ度は円柱レンズ度である;
- 定数の光学素子の少なくとも1つは、ゼロではない円柱レンズ度を有する;
- 定数の光学素子は、それぞれ、第1の光学レンズ度及び第2の光学レンズ度を有する第1の光学素子及び第2の光学素子を含み、第2の光学レンズ度は第1の光学レンズ度とは異なる;
- 選択された光学素子は、第1の面及び第2の面を含み、補完的部分が第1の面又は第2の面の少なくとも1つに堆積される;
- 選択された光学素子の第1の面及び第2の面は、それぞれ、第1の曲率及び第2の曲率を有し、第1の曲率は第2の曲率より低く、補完的部分が第1の面に堆積される;
- 選択された光学素子の第1の面は凹面であり、前記第1の面は、製造ステップの間、実質的に凹面のままである;
- 選択された光学素子の第1の面は凸面であり、前記第1の面は、製造ステップの間、実質的に凸面のままである;
- 定数の光学素子の少なくとも1つは、それぞれ、第1の両眼離反運動及び第2の両眼離反運動を有する第1の面及び第2の面を含み、第1の両眼離反運動及び第2の両眼離反運動の合計は少なくとも実質的にゼロに等しい;
- 定数の光学素子の少なくとも1つは、非球面若しくはトーリックであるか、又は累進面若しくは累進光学レンズ度分布を有する。
【0010】
本発明は、所与の点における参照光学レンズ度を有する光学レンズを製造するための製造システムを含む。
【0011】
本製造システムは、
- 定数の光学素子の間で、そして光学レンズの所与の点における参照光学レンズ度の機能として光学素子を選択するように設計された選択ユニットであって、選択された光学素子が、光学レンズの所与の点において参照光学レンズ度の絶対値以下の絶対値を有する光学レンズ度を有するように構成される選択ユニットと、
- 選択された光学素子上に補完的部分を堆積させることによって、付加製造技術を使用して光学レンズを製造するように設計された製造ユニットと
を含む。
【0012】
非限定的な例として与える添付の図面に関する以下の説明により、本発明の構成要素及び実施方法に対する理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による光学レンズの製造に適合された例示的製造システムを示す。
【
図2】本発明による光学素子の第1の実施形態を示す。
【
図3】本発明による光学素子の第1の実施形態を示す。
【
図4】本発明による光学素子の第2の実施形態を示す。
【
図5】本発明による光学素子の第3の実施形態を示す。
【
図6】本発明による光学素子の第4の実施形態を示す。
【
図7】本発明による光学素子の第4の実施形態を示す。
【
図8】本発明による光学素子の第4の実施形態を示す。
【
図9】本発明による光学素子の第4の実施形態を示す。
【
図10】本発明による光学素子の第5の実施形態を示す。
【
図11a】本発明による光学素子の第6の実施形態を示す。
【
図11b】本発明による光学素子の第6の実施形態を示す。
【
図12a】本発明による光学素子の第6の実施形態を示す。
【
図12b】本発明による光学素子の第6の実施形態を示す。
【
図13a】本発明による光学素子の第6の実施形態を示す。
【
図13b】本発明による光学素子の第6の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、光学レンズを製造するように適応された製造システム1を示す。本明細書中に記載される実施例において、光学レンズは眼用レンズである。選択肢として、光学素子は、眼用レンズの成分、例えば、エレクトロクロミックレンズの場合、ウエハーであることが可能である。
【0015】
製造システム1は、デバイス3及び担体5を含む。デバイス3は、付加製造技術を使用して光学レンズを製造するために適切である。「付加製造」という表現は、体積要素又はボクセルを並置することにより固体物体を製造するプロセスを意味する。したがって、本発明の場合、光学レンズは、光学素子2上に交互に体積要素、交互に層を付加することによって製造される。実際には、体積を光学素子2上に直接付加することができる。選択肢として、付加された体積を別個に製造することが可能であり、次いで光学素子上に積層することができる。付加製造技術は、実際にはステレオリソグラフィー(SLA)又はポリマー噴射(若しくはインクジェット印刷)であり得る。好ましくは、ポリマー噴射が使用される。
【0016】
デバイス3は、制御ユニット(
図1中に示されない)を含む。この制御ユニットは、マイクロプロセッサ及びメモリを含む。メモリは、これらの指示がマイクロプロセッサによって実行される時に、製造システム1が下記のように光学レンズの製造方法を実施することを許可する指示を貯蔵する。特に、メモリは、光学素子2の特徴を決定するデータを貯蔵する。これらのデータは、光学素子2から光学レンズ100を形成するために光学素子2上に堆積される補完的部分20を定義するデータも含む。
【0017】
製造システム1は、選択ユニット及び製造ユニットなどのユニットのアセンブリ(図示されない)を含む。これらのユニットは、実際には、ハードウェア要素及びソフトウェア要素の組合せによって製造される。それぞれのユニットは、本発明による方法に記載される、以下に説明される機能を実施する。それぞれのユニットに関して、製造システム1は、例えば、材料要素を使用するため、したがって関連ユニットに関連する機能を実行するためにマイクロプロセッサによって実施可能なソフトウェア指示を貯蔵する。
【0018】
光学素子2は、本発明による方法の実施の前に得られる。例えば、光学素子2は、成形又は付加製造などの異なる方法によって製造することによって得ることができる。別の例として、光学素子2は、活性光学シースルー成分であることが可能である。例えば、活性光学シースルー成分は、封入エレクトロクロミック溶液のために使用されるエレクトロクロミックセルであることが可能である。例えば、眼用レンズも含まれるエレクトロクロミックセルに関するより多くの詳細は、文献、米国特許出願公開第2018/0196283号明細書に見ることができる。別の例として、活性シースルー成分は、拡張現実デバイス又は任意のエレクトロアクティブ成分であることが可能である。
【0019】
実際には、光学素子2は、異なる屈折率を有する異なる材料を含む。光学素子2は、ハードコートなどの光学素子2上に堆積される非透明な基材(例えばフォトクロミック、極性ウエハー又は着色基在)、或いは別の要素を含むこともできる。このような別の要素は、実際には、補完的部分20が印刷される面とは異なる光学素子2の面上に堆積されてもよい。
【0020】
光学素子2は、光学レンズ100を製造するためのベース要素である。光学素子2は、最終光学レンズの一部である。言い換えると、光学素子2は、例えば光学レンズ100の前面と第2の面との間で光学レンズ100中に含まれる。選択肢として、光学素子2は、光学レンズ100の前面又は背面の1つの一部であることが可能である。
【0021】
光学素子2は、光学レンズ100を定義するために必要とされるいくつかの特性を有するように設計される。例えば、光学素子2は透明である。
【0022】
たとえそれが光学レンズ100(本明細書中すでに記載された通り、眼用レンズ)に関して期待される正確な矯正を提供しないとしても、光学素子2は着用者の処方と一致するように選択される。特に、着用者の処方は、光学レンズ100を製造するために使用される光学レンズ100(本明細書中、眼用レンズ)の所与の点における参照光学レンズ度を含む。所与の点における参照光学レンズ度は、プラス又はマイナスである。例えば、所与の点における参照光学レンズ度は、遠方視力処方(遠方視野に相当する所与の点)に相当することができる。別の例として、所与の点における参照光学レンズ度は、全光学レンズ100上に期待される光学レンズ度の最大値の絶対値として評価することができる。
【0023】
実際には、処方は光学レンズ(本明細書中、眼用レンズ)の光学レンズ度に関するデータを含む。いくつかの実施形態によると、光学レンズ度は、全光学レンズ上で一定であることが可能である。選択肢として、光学レンズ度は光学レンズ100において局所的に、例えば光学レンズ100の定義された幾何学的又は光学的中心において一定であることが可能である。別の選択肢として、光学レンズ度は光学レンズ100に沿って変動することができる。
【0024】
しかしながら、光学素子2は、着用者の要求された処方と互換性を有するために必要とされる全ての特性によって完全には構成されていなくてもよいか、又はフレームにそれを取り付けるために望ましい最終レンズ外形によって形成されなくてもよい。特に、光学素子2は、いくつかの領域において光学レンズ100の参照光学レンズ度とは異なり得る光学レンズ度を有する。光学素子2と光学レンズ100との間の光学レンズ度差は、次いで製造プロセスの間に補われる。本明細書中、光学レンズ度は球面レンズ度又は円柱レンズ度である。
【0025】
図2及び3に示される第1の実施形態によると、光学素子2の厚さは、実質的に光学素子2に沿って同一である。実際には、光学レンズ100の厚さ閾値の組合せは、(したがって、光学素子2及び補完的部分20を含む)光学レンズ100の端部の機械的抵抗又は後処理を可能にするように定義することができる。光学レンズの最終厚さを制御するために、光学素子2の厚さを制限する必要がある。本明細書中、実際には、光学素子2の厚さは、光学レンズ100の厚さ閾値の組合せに含まれる厚さ閾値の最小限より(厳密に)低い。光学素子2の厚さ及び光学レンズ100の機械的抵抗に関する制限の間の妥協案を満たすために、光学素子2の厚さは、例えば0.3ミリメートル(mm)より厚く、例えば0.3mmと1mmとの間、本明細書中、約0.5mmである。
【0026】
この第1の実施形態において、この光学素子2の曲率は実質的に平坦である。第1の実施形態は、例えば正視視力に適応する。それは、近視視力(
図2)又は遠視視力(
図3)に適応することもできる。
【0027】
図4中に示される第2の実施形態によると、光学素子2の光学レンズ度はマイナスである。光学素子2は、その端部44よりもその中心42において薄い。この第2の実施形態は、例えば近視視力に適切である。選択肢として、光学素子2はその表面の1つにおいて円柱を含むこともできる。
【0028】
図5中に示される第3の実施形態によると、光学素子2の光学レンズ度はマイナスである。光学素子2は、その端部54よりもその中心52において薄い。好ましくは、光学素子2の厚さは、その中心において1mmに実質的に等しい。
【0029】
本実施形態において、光学素子2は、ゼロではない曲率を有する。選択肢として、光学素子2はその表面の1つにおいて円柱を含むこともできる。この第3の実施形態は、近視視力にも適切である。
【0030】
図6及び
図7は、光学素子2に関する第4の実施形態を示す。この場合、光学素子2の光学レンズ度はプラスである。光学素子2は、その端部64、74よりもその中心62、72で大きい。実際には、別の光学素子2は、端部64、74の厚さを最小化するために、異なる直径Dを有することができる。例えば、光学レンズを製造するために使用される光学素子2は、光学レンズの最終外形に適合可能な直径Dを有するものであることが可能である。
【0031】
端部64、74の厚さは、好ましくは1mm未満である。実際には、端部64、74の厚さは、0.3mm又は0.5mmに実質的に等しい。
【0032】
この第4の実施形態は、例えば、遠視視力に適切である。
【0033】
図8及び9中に示される選択肢として、光学素子2は、外部領域84、94及び中心部82、92を含むことができる。中心部82、92は、プラスの光学レンズ度を有する。外部領域84、94の厚さは、実質的に一定のままである。好ましくは、外部領域の厚さは、0.3mmと0.5mmとの間で変動する。
【0034】
図10は、光学素子2の第5の実施形態を示す。この場合、光学素子2はトーリック又は非球面である。選択肢として、光学素子2は、第1のトーリック面及び第2の非球面(両形状は関連する)を有することができる。この第5の実施形態は、累進光学装置を必要とする着用者に適している。
【0035】
図11a及び11b中に示される第6の実施形態によると、光学素子2は一定の曲率及び一定の厚さを有する。
【0036】
選択肢として、光学素子2は、曲線状の中心部及び平坦な端部を有することができる(
図12a及び12b)。この場合、光学素子2は非球面である。例えば、光学素子2は、累進面若しくは累進光学レンズ度分布を有することができる。
【0037】
別の選択肢(
図13a及び13b)として、光学素子2の厚さは、その延長に沿って異なることができる。この場合、光学素子2の曲率も異なることが可能である。
【0038】
図1に示され、且つ上記される製造システム1は、付加製造技術を使用して光学レンズ100を製造する方法を実行するために適切である。
【0039】
この方法を実行する前に、定数の光学素子の群が決定される。この群に含まれる光学素子のみが、光学レンズ100を製造する方法の間に使用可能である。
【0040】
この群は、光学レンズを製造するために使用することができる光学素子の数を最小化するために決定される。群に含まれる光学素子は、光学レンズを製造するための製造時間を減少するために、又は材料の付加体積を減少するために選択される。
【0041】
しかしながら、群に含まれる光学素子は、任意の処方で任意のレンズを製造することができるように慎重に選択される。言い換えると、定数は、入手可能な光学素子の数を最小化することと、次のステップでより少ない材料を付加することの間の妥協案として決定される。
【0042】
実際には、以前に導入された光学素子2に関する種々の実施形態を、定数の光学素子の群において導入することができる。例えば、定数の光学素子の群は、異なる光学レンズ度を有する光学素子、ゼロではない円柱レンズ度を有する少なくとも1つの光学素子、又は少なくとも1つの非球面若しくはトーリック光学素子を含むことができる。別の例として、そして光学素子が第1の両眼離反運動を有する第1の面及び第2の両眼離反運動を有する第2の面を有することを考慮すると、定数の光学素子の群は、第1の両眼離反運動及び第2の両眼離反運動の合計がゼロに実質的に等しい少なくとも1つの光学素子を含むことができる。
【0043】
光学レンズ100を製造する方法は、上記で決定された定数の光学素子の群の間で1つの光学素子を選択するステップS2を含む。上記の通り、本方法は、所与の点における参照光学レンズ度を有する光学レンズ100を製造することを目的とする。したがって、選択は光学素子2の光学レンズ度の機能として実行される。実際には、製造システム1に含まれる選択ユニットは、関連する光学レンズ度との比較に基づいて適切な光学素子2を選択する。
【0044】
光学素子2を選択するステップS2は、選択された光学素子が、光学レンズ100の所与の点における参照光学レンズ度の絶対値以下の絶対値を有する光学レンズ度を有するように実行される。実際には、選択された光学素子は、光学レンズ100の所与の点における参照光学レンズ度の絶対値より低い光学レンズ度の最高絶対値を有するものであることが可能である。
【0045】
本方法ではステップS4が続く。このステップの間、光学レンズ100を製造するために、選択された光学素子上に補完的部分20が堆積される。補完的部分20の堆積は、付加製造技術を使用して実行される。
【0046】
実際には、選択された光学素子の第1の面及び第2の面を考慮すると、補完的部分20は、第1の面及び第2の面の少なくとも1つの上に堆積される。選択肢として、補完的部分20は、選択された光学素子の第1及び第2の面の両方に堆積されることができる。
【0047】
本発明によると、堆積ステップS4に関する種々の実施形態を識別することができる。ステップS4に関する種々の実施形態は、光学素子に関して導入された以前の実施形態に基づく。
【0048】
選択された光学素子が(
図2及び4に示される)以前の第1及び第2の実施形態の1つであり、近視視力に関して適切である場合、補完的部分20は、選択された光学素子の片面上に堆積される。例えば、第1の面が選択された光学素子の背面であり、そして第2の面が選択された光学素子の前面である場合、本明細書中、補完的部分20は、選択された光学素子の背面上に堆積される。しかしながら、
図2及び4に示すように、補完的部分20は、選択された光学素子の背面全体上に堆積されない。この選択された光学素子の端部24、44は、フレームに光学レンズ100(本明細書中、上記された通り、眼用レンズ)を取り付けるために維持される。
【0049】
実際には、補完的部分20は、光学レンズ100の中心の厚さを最小化するそのような様式で印刷される。したがって、製造ステップS4は、選択された光学素子上に付加されなければならない補完的部分20の厚さに依存する。
【0050】
選択肢として、選択された光学素子が、
図5に示される(近視視力に関して適切でもある)第3の実施形態に相当する場合、補完的部分20は、選択された光学素子の前面に堆積される。選択された光学素子の光学レンズ度はマイナスであり、且つ所与の点における参照光学レンズ度より低いため、補完的部分20はマイナスの光学レンズ度を有する。実際には、この条件は、補完的部分20が堆積される面(本明細書中、選択された光学素子の前面)の曲率の減少を含む。
【0051】
実際には、堆積される補完的部分20の厚さは、美的な理由のため、背面に含まれることが可能な円柱成分を補うために評価されることができる。
【0052】
選択された光学素子が(
図3、6及び8に示される)以前の第1及び第4の実施形態の1つであり、遠視視力に関して適切である場合、補完的部分20は、選択された光学素子の面の片面上に堆積される。例えば、補完的部分20は、本明細書中、選択された光学素子の前面に堆積される。
【0053】
実際には、光学レンズ(本明細書中、眼用レンズ)の背面と着用者の眼との間の予め定められた距離を保持しながら、補完的部分20は、光学レンズ100の端部の厚さを最小化するような様式で印刷される。
【0054】
選択肢として、選択された光学素子が、
図7及び9に示される(遠視視力に関して適切でもある)第4の実施形態に相当する場合、補完的部分20は、選択された光学素子の背面に堆積される。実際には、選択された光学素子の第1の面及び第2の面が、それぞれ、第1の曲率と第2の曲率を有すること、そして第1の曲率が第2の曲率より低いことを考慮すると、補完的部分20は、第1の面に堆積される。本明細書中、第1の面は背面に相当する。言い換えると、補完的部分20は、最も低い曲率でその面に堆積される。
【0055】
この場合、選択された光学素子の背面は凹面である。補完的部分20の堆積は全体的な曲率を変化させず、そして背面は製造ステップS4の間、凹面のままである。しかしながら、例えば累進光学レンズに関して、この背面は局所的に凸面となる可能性がある。
【0056】
(図示されない)別の選択肢として、選択された光学素子の背面は、凸面であることが可能である。この場合、補完的部分20の堆積は全体的な曲率を変化させず、そして背面は製造ステップS4の間、凸面のままである。しかしながら、この背面は局所的に凹面となる可能性がある。
【0057】
選択された光学素子が(
図10に示される)以前の第5の実施形態に相当し、そして累進視力に関して適切である場合、補完的部分20は、選択された光学素子の片面に、本明細書中、選択された光学素子の前面に堆積される。
【0058】
選択肢として、選択された光学素子の背面は、トーリック成分を含むことができる。このトーリック成分は、(補完的部分の)付加材料の体積を最小化するように選択される。
【0059】
実際には、以前に導入された実施形態の全ては、美的条件を満たすために、選択された光学素子の片面に円柱成分を含むことができる。例えば、近視視力の場合、小円柱成分が前面に含まれることができる。この小円柱成分は、例えば、0.25~1ジオプターの範囲である。しかしながら、遠視視力に関しては、最低円柱成分が含まれなければならない。
【0060】
実際には、光学レンズの製造をより容易にするために、特に高円柱成分を用いて、トーリック光学素子を使用することができる。
【0061】
選択された光学素子が(
図11a、11b、12a、12b、13a及び13bに示される)以前の第6の実施形態に相当する場合、補完的部分20は、2つの部分、第1の部分200及び第2の部分202を含む。第1の部分200は、例えば、前面に堆積され、そして第2の部分202は、背面に印刷される。これらの構成によって、光学レンズの大きい光学レンズ度範囲を製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
1 製造システム
2 光学素子
3 デバイス
5 担体
20 補完的部分
24 端部
42 中心
44 端部
52 中心
54 端部
62 中心
64 端部
72 中心
74 端部
82 中心部
84 外部領域
92 中心部
94 外部領域
100 光学レンズ
200 第1の部分
202 第2の部分