(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】第1の動力部および第2の動力部を備えるパワーステアリングシステムの制御方法であって、評価・調整工程を実行する方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240301BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2021544453
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 FR2020050136
(87)【国際公開番号】W WO2020157431
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーポンティエ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ペレット ベルトラン
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361869(US,A1)
【文献】特開2003-264992(JP,A)
【文献】特開2004-182039(JP,A)
【文献】特開2005-053340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04 -6/10
H05P 5/00- 7/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された第1の動力部(M1)と第2の動力部(M2)とを備えるパワーステアリングシステム(1)の制御方法(100)であって、
前記制御方法は、
目標トルクから第1の分散トルク(E’1)および第2の分散トルク(E’2)を決定する分散工程(D)と、
第1の目標モータトルク(E1)を決定するように第1の補償リクエスト(C1)を前記第1の分散トルク(E’1)に付加するとともに、第2の目標モータトルク(E2)を決定するように第2の補償リクエスト(C2)を前記第2の分散トルク(E’2)に付加する決定工程(A)と、
前記第1の動力部(M1)が前記第1の目標モータトルク(E1)に応じた第1のモータトルク(F1)を印加するとともに、前記第2の動力部(M2)が前記第2の目標モータトルク(E2)に応じた第2のモータトルク(F2)を印加する、実行工程(B)と、
第1の偏差(Δ1)を前記第1のモータトルク(F1)および前記第1の目標モータトルク(E1)の関数として計算し、第2の偏差(Δ2)を前記第2のモータトルク(F2)および前記第2の目標モータトルク(E2)の関数として計算する補償工程(G)と、
を実行し、
前記制御方法(100)は、前記第1の補償リクエスト(C1)および前記第2の補償リクエスト(C2)を前記第1の偏差(Δ1)および前記第2の偏差(Δ2)の関数として計算する評価・調整工程(H)を実行
し、
前記評価・調整工程(H)は、前記第1の補償リクエスト(C1)、前記第2の補償リクエスト(C2)、前記第1の偏差(Δ1)、前記第2の偏差(Δ2)、および残部(R)の合計を最小化し、
前記残部(R)は、前記第1および第2の目標モータトルクと第1および第2のモータトルク(F1,F2)との間の、補償されない偏差に対応し、
前記制御方法(100)は、
C1
*
+C2
*
+Δ1+Δ2=R
*
を満たし、
C1
*
は、C1に対応する最適値であり、C2
*
は、C2に対応する最適値であり、R
*
は、Rに対応する最適値である
ことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の制御方法(100)において、
前記評価・調整工程(H)は、前記合計の二次最小化を行う
ことを特徴とする制御方法。
【請求項3】
請求項
1に記載の制御方法(100)において、
前記評価・調整工程(H)は、前記第1の偏差(Δ1)の符号および前記第2の偏差(Δ2)の符号が同一でありかつ前記第1の偏差(Δ1)の絶対値が前記第2の偏差(Δ2)の絶対値よりも大きい場合に、前記第2の補償リクエスト(C2)が前記第2の偏差(Δ2)-前記第1の偏差(Δ1)に等しく、前記第1の補償リクエスト(C1)が0に等しいと計算する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項4】
請求項
1または
3のいずれか1項に記載の制御方法(100)において、
前記評価・調整工程(H)は、前記第1の偏差(Δ1)の符号および前記第2の偏差(Δ2)の符号が同一でありかつ前記第1の偏差(Δ1)の絶対値が前記第2の偏差(Δ2)の絶対値よりも小さい場合に、前記第2の補償リクエスト(C2)が0に等しく、前記第1の補償リクエスト(C1)が前記第1の偏差(Δ1)-前記第2の偏差(Δ2)に等しいと計算する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項
1、3または4のいずれか1項に記載の制御方法(100)において、
前記評価・調整工程(H)は、前記第1の偏差(Δ1)の符号および前記第2の偏差(Δ2)の符号が互いに異なりかつ前記第1の偏差(Δ1)の絶対値が前記第2の偏差(Δ2)の絶対値よりも大きい場合に、前記第2の補償リクエスト(C2)が前記第1の偏差(Δ1)および前記第2の偏差(Δ2)の合計の反対符号の値に等しく、前記第1の補償リクエスト(C1)が0に等しいと計算する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
請求項
1または3~5のいずれか1項に記載の制御方法(100)において、
前記評価・調整工程(H)は、前記第1の偏差(Δ1)の符号および前記第2の偏差(Δ2)の符号が互いに異なりかつ前記第1の偏差(Δ1)の絶対値が前記第2の偏差(Δ2)の絶対値よりも小さい場合に、前記第2の補償リクエスト(C2)が0に等しく、前記第1の補償リクエスト(C1)が前記第1の偏差(Δ1)および前記第2の偏差(Δ2)の合計の反対符号の値に等しいと計算する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の制御方法(100)において、
前記評価・調整工程(H)は、所定の時間区間(t)にわたる前記第1の補償リクエスト(C1)の値および前記第2の補償リクエスト(C2)の値を、前記所定の時間区間(t)より前の第1の時点における前記補償工程(G)によって計算された前記第1の偏差(Δ1)の値および前記所定の時間区間(t)より前の第2の時点における前記補償工程(G)によって計算された前記第2の偏差(Δ2)の値の関数として、計算する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の制御方法(100)であって、
前記第1の時点および前記第2の時点は、同一の時間区間内に含まれる
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリングシステムの分野に関し、より詳細には、パワーステアリングシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のパワーステアリングシステムは、運転手、または、自律的な車両の場合のコンピュータが車両の車輪の方位角を変更することによって車両の軌道を制御できるようにすることを目的とする。
【0003】
この目的のために、電動式パワーステアリングシステムは、トルクをラックおよび/またはハンドルに印加する少なくとも1つの制御モータを備える。
【0004】
一般に、制御モータは、「ブラシレス」と呼ばれる電気モータである。制御モータは、印加されるべき目標トルク、すなわち、トルク設定値を入力として受信し、そして物理的トルクに対応する印加トルクをラックまたはハンドルに印加する。
【0005】
以下、便宜的に、用語「トルク」は、トルク設定値と同義とする。用語「印加トルク」および「モータトルク」のみが物理的トルクまたは該物理的トルクの値を表す。
【0006】
上記少なくとも1つの制御モータは、車両の軌道を保証することを可能にするパワーステアリングシステムの一要素である。したがって、車両の乗員の安全は、制御モータの適正な動作と関連する。
【0007】
ステアリングシステムの安全要求を満たすために、2つの異なる動力部、すなわち、分離された第1の動力部および第2の動力部を備える制御モータを設置することが通例である。これらの動力部はともに自律的な動力部であり、並列に配置される。各動力部は、独自の電源を有し、印加されるべき目標モータトルク(目標トルクの一部に対応する)を入力として受信し、モータトルクを印加する。2つの動力部は、独立にかつ/または同時に動作可能である。
【0008】
2つの動力部のうちの一方の安全性に関わると考えられる永続的な劣化、すなわち、例えば、2つの動力部のうちの一方の完全な故障などのステアリングシステムの安全性を問題とする顕著な劣化が生じた場合、故障した動力部が修理されるまで、他方の動力部が目標トルクに等しい目標モータトルクを入力として受信する。
【0009】
2つの動力部が機能していると判断される場合、目標トルクを2つの動力部に分散することによって、燃費および振動の最小化の両方について、制御モータの最適な動作が保証される。2つの動力部は、目標トルクの一部を入力として受信する。次いで、2つの動力部は、それらの全体の挙動が単一の動力部と同等になるように同時に動作する。2つの動力部のそれぞれは、合計が印加トルクに等しく、実質的に目標トルクに一致するモータトルクを確実に送達する。
【0010】
一般に、モータトルクは、実質的に目標モータトルクに等しい。しかし、動力部によって生成されるトルクは、目標モータトルクに対して偏差を有し得る。この偏差は、動力部の全体動作に問題を生じさせないが、当該動力部によって印加可能な最大モータトルクを制限する。
【0011】
この偏差は、系統偏差または局部偏差であり得る。
【0012】
系統偏差は、2つの動力部の設計において固有のものである。2つの動力部は、同一の要素を有するか、または同じ技術を使用するので、モータトルクと、要求される設定値、すなわち、目標モータトルクとの偏差が完全にまたは部分的に同一になる場合がある。
【0013】
同時に両方の動力部に影響を与える系統偏差が、例えば、駐車操作が長引いたり、または、繰り返された際に現れ得る。実際に、駐車操作中に、動力部は、その内部温度を上昇させる強いストレスにさらされることになる。動作部の冷却能力は限られるので、永続的な損傷を回避するために、動作部の最大モータトルクを低減する必要がある。
【0014】
また、同時に2つの動力部に影響を与える系統偏差は、例えば、動力部の技術と関連し得る。実際に、目標モータトルクを送信および受信し、物理的に印加することは、瞬時に起こるものではない、すなわち、印加遅延がある。パワーステアリングシステムにおいて、この印加遅延は、実際には系統偏差により時点tにおいて生じるが、10msの範囲内にある。
【0015】
局部偏差は、1つの動力部のみに影響を与える偏差である。例えば、制御チェーンの要素またはこの制御チェーンの入力(例えば、動力部の電源)の劣化などである。なお、永続的な劣化を検出するための仕組みは、意図的に、予測可能でないようにされる。制御チェーンの永続的な劣化は、そのように判断される前に、局部偏差として判断されることになる。
【0016】
したがって、偏差によって影響を受けた動力部は、機能していると考えられるが、所定の時点に期待されるモータトルクを送達しないことがある。したがって、モータトルクは、目標モータトルクと異なる。2つの動力部のモータトルクの合計は、目標トルクと異なる。したがって、目標トルクは、完全には発揮されない。
【0017】
2つの動力部の冗長性を確実にするために、したがって、目標トルクが所定の時点において可能な限り完全に印加されることを確実にするために、2つの動力部間で補償機能を行うことが知られている。
【0018】
上記補償機能は、「マスター-スレーブ」型であり得る。すなわち、補償機能は、ある時点において一方向に行うことができるだけであり、例えば、各動力部の供給電流の電圧、または各動力部の内部温度などの動力部外部の信号によって、大きい方のモータトルクを生成できる動力部を判定し、したがって、補償の方向を決定する。以下、この動力部をスレーブ動力部と呼ぶ。反対に、小さい方のモータトルクを生成できる動力部をマスター動力部と呼ぶ。次いで、補償機能は、マスター動力部によって達成されない目標モータトルクの部分を決定する。次いで、目標モータトルクのこの部分は、補償機能によって、スレーブ動力部の目標モータトルクに加えられる。このように、スレーブ動力部によって生成されるトルクは、マスター動力部によって生成されるトルクを補償する。目標トルクが完全に生成される。
【0019】
この「マスター-スレーブ」型補償機能は、完全には満足なものではない。なぜなら、局部偏差がスレーブ動力部に現れた場合、マスター動力部は、その局部偏差を補償しないからである。ところで、補償機能は、多数の外部信号によって、不正確かつ/または非常に複雑なやり方でマスター動力部およびスレーブ動力部を判定し、場合によっては、2つの動力部の能力を活用できないことがある。
【0020】
上記短所を克服するために、
図1に例示するような「二重」型補償機能が知られている。この補償機能は、各動力部が目標トルク1aの一部に等しい値を有する分散トルク2’a,2’’aを達成する必要があることを、分散工程D’a中に、規定する。次いで、補償機能は、各動力部について、目標モータトルク3’a,3’’aと推定モータトルクとの間の偏差5’a,5’’aを計算する。推定モータトルクは、モータトルク4’a,4’’aに近い。しかし、推定モータトルクは、若干の修正および誤差だけモータトルクと異なる。本発明の理解を容易にするために、推定モータトルクは、以下の記載において、モータトルク4’a,4’’aと一緒とする。この偏差5’a,5’’aは、後で、第1の動力部から第2の動力部への補償リクエストに対応し、またその逆も成り立つ。最後に、補償機能は、第1の動力部について計算された補償リクエスト5’aを第2の動力部の分散トルク2’’aに加える、またその逆も成り立つ、すなわち、第2の動力部について計算された補償リクエスト5’’aを第1の動力部の分散トルク2’aに加える。このように、各動力部は、他方の動力部の偏差5’a,5’’aを補償する。
【0021】
例えば、各動力部が最適な動作を行う場合、各動力部の目標モータトルク3’a,3’’aは、分散トルク2’a,2’’aに等しい。次いで、各動力部は、目標モータトルク3’a,3’’aに等しいモータトルク4’a,4’’aを生成する。第1の動力部と第2の動力部との間の補償リクエスト5’a,5’’a、または、その逆は、ゼロである。
【0022】
別の例によると、第1の動力部に局部偏差が存在する場合、例えば、モータトルク4’aは、目標モータトルク3’aと異なる。したがって、第1の動力部について計算される補償リクエスト5’aは、0と異なる。したがって、補償リクエスト5’aは、第2の動力部の分散トルク2’’aに加えられる。したがって、第2の動力部の目標モータトルクは、補償リクエスト5’aだけ増大された分散トルク2’’aに等しい。次いで、第2の動力部は、補償リクエスト5’aだけ増大された分散トルク2’’aに等しいモータトルクを達成する。
【0023】
この「二重」型補償機能は、上記状況において、「マスター-スレーブ」型補償機能よりも正確かつより効率的である。なぜなら、二重型補償機能は、各動力部の特定の偏差を両方向に補償することを可能にするからである。
【0024】
しかし、系統偏差が存在する場合、第1の動力部は、時点tにおいて、期待されるモータトルク4’aを与えず、補償リクエスト5’aを第2の動力部に送信し、第2の動力部は、期待されるモータトルク4’’aを与えず、補償リクエスト5’aを第1の動力部に送信する。
【0025】
より詳細には、補償機能のスケジューリングによって、時間tにおいて計算された補償リクエスト5’a,5’’aが時間t+1で印加される、すなわち、補償リクエスト5’a,5’’aの決定と他方の動力部による考慮との間にずれ時間が存在する。このずれは、スケジューリングタスクの遅延、すなわち、約1msに相当する。
【0026】
このように、時間t+1において、各動力部は、動力部が達成できない分散トルク2’a,2’’aを補償リクエスト5’a,5’’aだけ増大させたものに等しい目標モータトルク3’a,3’’aを受信する。モータトルクと目標モータトルクとの間の偏差は、時間とともに増大する。したがって、第1の動力部は、時間tにおいて決定された補償リクエストよりも大きな補償リクエスト5’aを第2の動力部に送信し、また、第2の動力部は、時間tにおいて決定されたリクエストよりも大きな補償リクエスト5’’を第1の動力部に送信する。これらの補償リクエスト5’a,5’’aは、時間t+2において考慮される。
【0027】
動力部が受信する分散トルク2’a,2’’aがその動力部の達成できないトルクである限り、補償リクエスト5’a,5’’aは、増大する。
【0028】
このように、時間t+x(xは、自然数)において、各動力部は、動力部が達成可能な分散トルク2’a,2’’aを時間t+x-1において計算された補償リクエスト5’a,5’’aだけ増大させたものに等しい目標モータトルク3’a,3’’aを受信する。次いで、動力部は、所望の目標トルク1aよりも大きな印加トルク6aを与える。これは、「二重」型補償機能を不安定にするリバウンド現象である。
【0029】
さらに、「二重」または「マスター-スレーブ」型の補償は、単一の動力部の場合と異なり、系統偏差の全部または一部を補償するという特徴を有する。この系統偏差の全部または一部を補償することは、本来的に系統偏差を有する単一動力部システムと、補償をともなう2つの動力部からなるシステムとの間の挙動における、制御できない差異を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、各動力部から要求される補償リクエスト5’a,5’’aを最小化する「二重」型の補償機能を2つの制御動力部が有する系統偏差の関数として提案することによって、上記短所の全部または一部を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の主題は、並列に配置された第1の動力部と第2の動力部とを備えるパワーステアリングシステムの制御方法であって、当該制御方法は、
目標トルクから第1の分散トルクおよび第2の分散トルクを決定する分散工程と、
第1の目標モータトルクを決定するように第1の補償リクエストを第1の分散トルクに付加し、第2の目標モータトルクを決定するように第2の補償リクエストを第2の分散トルクに付加する決定工程と、
第1の動力部が第1の目標モータトルクに応じた第1のモータトルクを印加し、第2の動力部が第2の目標モータトルクに応じた第2のモータトルクを印加する、実行工程と、
第1の偏差を第1のモータトルクおよび第1の目標モータトルクの関数として計算し、第2の偏差を第2のモータトルクおよび第2の目標モータトルクの関数として計算する補償工程と、
を実行し、
制御方法は、第1の補償リクエストおよび第2の補償リクエストを第1の偏差および第2の偏差の関数として計算することによって、評価・調整工程を実行することを特徴とする、
方法。
【0032】
本発明に係る制御方法は、局部的な欠陥によって生成された第1の偏差および第2の偏差の一部だけが第1の補償リクエストおよび第2の補償リクエストの対象であるように、系統的に生成された、すなわち、系統偏差によって生成された第1の偏差および第2の偏差の一部と、局部的に生成された、すなわち、局部偏差によって生成された第1の偏差および第2の偏差の一部とを区別しようとする。
【0033】
実際に、出願人は、従来技術の「二重」および「マスター-スレーブ」型補償機能の短所は、第1の補償リクエストおよび第2の補償リクエストが、区別なく、局部偏差、さらにまた系統偏差を消去しようとすることに関連づけられると理解した。言い換えると、従来技術において、補償機能は、偏差が局部的または系統的であるかを区別せず、目標トルクと、第1のモータトルクおよび第2のモータトルクの合計に一致する印加トルクとの間の偏差がゼロとなるようにしようとする。
【0034】
系統偏差は、両方の動力部に対して該当する、すなわち、動力部に対して通常である固有要素に相当する。したがって、動力部上で検出される系統的トルク偏差は、本来的に、他方の動力部上でも検出される。この偏差が補償可能であり、補償される場合、2つの組み合わされた動力部の挙動は、単一の動力部の挙動と非常に異なる。このトルク偏差が時点tにおいて補償されないか、または補償可能でない場合、したがって、これにより、上記リバウンド現象が生じる。
【0035】
本発明に係る制御方法は、評価・調整工程のおかげで、第1の偏差および第2の偏差だけを使用して、補償されるべき偏差の一部、すなわち、補償リクエストに対応する局部偏差に関連づけられる偏差の一部を決定することによって、良好なレベルの精度を保証することを可能にする。
【0036】
本発明の一特徴によると、補償工程は、第1のモータトルクおよび第1の目標モータトルクを引き算することによって第1の偏差を計算し、第2のモータトルクおよび第2の目標モータトルクを引き算することによって第2の偏差を計算する。
【0037】
本発明の一特徴によると、評価・調整工程は、第1の補償リクエスト、第2の補償リクエスト、第1の偏差、第2の偏差、および残部の合計を最小化する。
【0038】
残部は、系統的に、すなわち、系統偏差によって生成された第1の偏差および第2の偏差の一部に対応する。言い換えると、残部は、目標トルクと印加トルクとの間の、補償されない偏差に対応する。したがって、本発明に係る方法は、目標トルクと印加トルクとの間の偏差が補償されないことを可能にする。このように、上記方法は、系統偏差と局部偏差とを区別する。
【0039】
残部は、調節可能である。
【0040】
本発明の一特徴によると、評価・調整工程は、合計の二次最小化を行う。
【0041】
したがって、第1の補償リクエストおよび第2の補償リクエストを決定することを可能にする、目標トルクと印加トルクとの間の偏差の解析解が得られる。
【0042】
本発明の一特徴によると、評価・調整工程は、第1の偏差の符号および第2の偏差の符号が同一であり、第1の偏差の絶対値が第2の偏差の絶対値よりも大きい場合に、第2の補償リクエストが第2の偏差から第1の偏差を引いた値(第2の偏差-第1の偏差)に等しく、第1の補償リクエストが0に等しいと計算する。
【0043】
本発明の一特徴によると、評価・調整工程は、第1の偏差の符号および第2の偏差の符号が同一で、第1の偏差の絶対値が第2の偏差の絶対値よりも小さい場合に、第2の補償リクエストが0に等しく、第1の補償リクエストが第1の偏差から第2の偏差を引いた値(第1の偏差-第2の偏差)に等しいと計算する。
【0044】
本発明の一特徴によると、評価・調整工程は、第1の偏差の符号および第2の偏差の符号が互いに異なり、第1の偏差の絶対値が第2の偏差の絶対値よりも大きい場合に、第2の補償リクエストが第1の偏差および第2の偏差の合計の反対符号の値に等しく、第1の補償リクエストが0に等しいと計算する。
【0045】
本発明の一特徴によると、評価・調整工程は、第1の偏差の符号および第2の偏差の符号が互いに異なり、第1の偏差の絶対値が第2の偏差の絶対値よりも小さい場合に、第2の補償リクエストが0に等しく、第1の補償リクエストが第1の偏差および第2の偏差の合計の反対符号の値に等しいと計算する。
【0046】
このように、第1の補償リクエストおよび第2の補償リクエストを決定することを可能にする、目標トルクと印加トルクとの間の偏差の実験解が得られる。
【0047】
上記実験解は、解析解に近い結果を与え、実行がより容易である。
【0048】
本発明の一特徴によると、評価・調整工程は、所定の時間区間にわたる第1の補償リクエストの値および第2の補償リクエストの値を、当該時間区間より前の第1の時点における補償工程によって計算された第1の偏差の値および当該時間区間より前の第2の時点における補償工程によって計算された第2の偏差の値の関数として計算する。
【0049】
本発明に係る制御方法は、一連の時間区間にわたって制御ループを実行する。補償工程は、第1の補償リクエストおよび第2の補償リクエストに対して開ループである。本発明の一特徴によると、第1の時点および第2の時点は、同一の時間区間内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、従来技術に係る制御方法の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る制御方法の模式図である。
【
図3】
図3は、一時間区間における本発明に係る制御方法の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る制御方法の簡略化図である。
【
図5】
図5は、第1の外乱トルクおよび第2の外乱トルクの関数としての第1の補償リクエストの解析解を表すグラフである。
【
図6】
図6は、第1の外乱トルクおよび第2の外乱トルクの関数としての第2の補償リクエストの解析解を表すグラフである。
【
図7】
図7は、第1の外乱トルクおよび第2の外乱トルクの関数としての残部の解析解を表すグラフである。
【
図8】
図8は、第1の外乱トルクおよび第2の外乱トルクの関数としての第1の補償リクエストの実験解を表すグラフである。
【
図9】
図9は、第1の外乱トルクおよび第2の外乱トルクの関数としての第2の補償リクエストの実験解を表すグラフである。
【
図10】
図10は、第1の外乱トルクおよび第2の外乱トルクの関数としての残部の実験解を表すグラフである。
【
図11】
図11は、車両のパワーステアリングシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、本発明に係る一実施形態に関し、非限定の例によって与えられ、添付の模式図を参照して説明される以下の記載からよりよく理解される。
【0052】
本発明は、車両2、より詳細には、人員の輸送を目的とするモータ車両2用のパワーステアリングシステム1の制御方法100に関する。
【0053】
それ自体公知のやり方で、
図11から分かるように、パワーステアリングシステム1は、ハンドル3を備える。ハンドル3は、運転手が力(「ハンドルトルク」T3と呼ぶ)をハンドル3に印加することによってパワーステアリングシステム1を操作することを可能にする。
【0054】
ハンドル3は、ステアリングコラム4上に取り付けられる。ステアリングコラム4は、車両2上で回転においてガイドされ、ステアリングピニオン5によって、ラック6と噛み合う。ラック6自体は、車両2に固定されたステアリングケーシング7内で平行移動においてガイドされる。
【0055】
また、本発明に係る制御方法100は、ハンドル3とラック6との機械的結合を備えていないステアリングシステムにおいても適用され得る。このタイプのステアリングシステムは、「ワイヤによるステアリング」とも呼ばれる。
【0056】
好ましくは、ラック6の両端は、被操舵車輪10,11(それぞれ左車輪10および右車輪11)のナックルホルダに接続されたステアリングタイロッド8,9にそれぞれ接続されるので、ラック6を長軸方向に平行移動変位をさせることよって、被操舵車輪のステアリング角(ヨー角)を修正することが可能になる。
【0057】
また、被操舵車輪10,11は、さらに好ましくは、駆動車輪であり得る。
【0058】
また、パワーステアリングシステム1は、印加トルクFを供給して、パワーステアリングシステム1の操作を補助するように意図された制御モータ12を備える。
【0059】
印加トルクFは、特にセンサ23によって測定されたフライホイールトルクT3から、目標トルクEを決定するコンピュータ20によって決定される。
【0060】
制御モータ12は、適宜ギア型レジューサを介して、ステアリングコラム4自体に係合して、いわゆる「単一ピニオン」機構を形成し得るか、またはラック6に直接係合して、いわゆる「二重ピニオン」機構を形成し得るかのいずれかである。ラック6に直接係合する場合は、例えば、
図11に例示するように、ステアリングコラム4をラック6に噛み合わせ可能とするステアリングピニオン5と異なる第2のピニオン13によって係合するか、または、当該ステアリングピニオン5から間隔を置かれた、ラック6の対応するねじ山と協働するボールねじによっても係合する。
【0061】
制御モータ12は、好ましくは、2つの動作方向を有する電気モータであり、また好ましくは、ブラシレス型の回転電気モータである。さらに、ステアリングシステム1の安全要求を満たすために、制御モータ12は、
図2に示すように、並列に配置された2つの異なる動力部、すなわち、第1の動力部M1および第2の動力部M2を備える。
【0062】
第1の動力部M1は、第2の動力部M2から独立している。第1の動力部M1は、入力として、印加されるべき第1の目標モータトルクE1を受信し、第1のモータトルクF1をラック6に印加する。
【0063】
第2の動力部M2は、第1の動力部M1から独立している。第2の動力部M2は、入力として、印加されるべき第2の目標モータトルクE2を受信し、第2のモータトルクF2にラック6に印加する。
【0064】
本発明に係る制御方法100は、
図2において模式的に表された工程D,A,B,G,Hを実行する。
【0065】
より詳細には、制御方法100は、分散工程Dを包含する。この分散工程Dは、目標トルクEを各動力部M1,M2に分散する。より詳細には、分散工程Dは、第1の動力部M1によってラック6に印加されるように意図される第1の分散トルクE’1と、第2の動力部M2によってラック6に印加されるように意図される第2の分散トルクE’2とを決定する。好ましくは、動力部M1,M2の一方に故障がない場合に、分散工程は、以下を決定する。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
また、本発明に係る制御方法100は、第1の目標モータトルクE1を決定するように第1の補償リクエストC1を第1の分散トルクE’1に付加し、第2の目標モータトルクE2を決定するように第2の補償リクエストC2を第2の分散トルクE’2に付加する決定工程Aを包含する。
【0070】
次いで、本発明に係る制御方法100は、実行工程Bを包含する。実行工程Bにおいて、第1の動力部M1は、第1の目標モータトルクE1に応じた第1のモータトルクF1を印加し、第2の動力部M2は、第2の目標モータトルクE2に応じた第2のモータトルクF2を印加する。
【0071】
動力部M1、M2の設計は、動力部M1,M2が要求されたトルクを印加するのに必要な時間に対応する反応性時間を決定する。言い換えると、動力部M1,M2がxNm(xは、正の十進数)のトルクを入力として受信した場合、動力部がxNmのトルクを印加するのに反応性時間が必要である。この反応性時間が経過する前は、動力部は、xNmよりも低いトルクを印加する。これは、安定性と反応性との折衷を確実にすることを可能にする、通常の動力部の内部調整効果である。
【0072】
反応性時間は、反応性時間よりも短い時間区間では、動力部M1,M2が目標モータトルクE1,E2を生成しないことを意味する。言い換えると、反応性時間よりも短い時間区間では、モータトルクF1,F2は、目標モータトルクE1,E2と異なる。
【0073】
以下、動力部M1,M2が目標モータトルクE1,E2を達成しない場合、動力部M1,M2において偏差があるという。
【0074】
より詳細には、反応性時間などのように、偏差が動力部M1,M2に対して通常である固有要素と関連するか、または温度などのように、偏差が同時に2つの動力部M1,M2に影響を与える場合は、系統偏差が存在するということにする。制御チェーンの要素の劣化などのように、偏差が一方の動力部M1,M2だけに影響を与える場合は、局部偏差が存在するということにする。
【0075】
このように、動力部M1,M2が目標モータトルクE1,E2を達成していない場合、動力部M1,M2によって誘導された偏差が存在し、当該偏差は、系統偏差および局部偏差を含む。
【0076】
第1のモータトルクF1および第2のモータトルクF2の合計は、摩擦および慣性現象を除いて、制御モータ12によって印加されるトルクFに、実質的に一致する。
【0077】
最後に、制御方法100はまた、補償工程Gを実行する。補償工程Gは、第1のモータトルクF1に実質的に等しい第1の推定モータトルクを受信する。第1の推定モータトルクは、いくらかの修正および誤差だけ第1のモータトルクF1と異なる。本発明の理解を容易にするために、第1の推定モータトルクは、以下の記載において、第1のモータトルクF1と一緒とする。
【0078】
補償工程Gは、第1の偏差Δ1を第1のモータトルクF1および第1の目標モータトルクE1の関数として計算する。したがって、第1の偏差Δ1は、第1の動力部M1によって生成されない第1の目標モータトルクの一部を表す。以下、第1の偏差Δ1を第1の外乱トルクD1とも呼ぶ。
【0079】
また、補償工程Gは、第2のモータトルクF2に実質的に等しい第2の推定モータトルクを受信する。第2の推定モータトルクは、いくらかの修正および誤差だけ第2のモータトルクF2と異なる。本発明の理解を容易にするために、第2の推定モータトルクは、以下の記載において、第2のモータトルクF2と一緒とする。
【0080】
補償工程Gは、第2の偏差Δ2を第2のモータトルクF2および第2の目標モータトルクE2の関数として計算する。したがって、第2の偏差Δ2は、第2の動力部M2によって生成されない第2の目標モータトルクの一部である。以下、第2の偏差Δ2を第2の外乱トルクD2とも呼ぶ。
【0081】
第1の偏差Δ1および第2の偏差Δ2は、印加トルクFと目標トルクEとの偏差、すなわち、制御モータ12に印加された外乱の値を表す。目標トルクEに近い印加トルクFを得るために、第1の偏差Δ1および第2の偏差Δ2の合計は、可能な限り小さい必要がある。言い換えると:
【0082】
【数4】
ところで、第1の偏差Δ1および第2の偏差Δ2は、局部偏差および系統偏差の合計である偏差を表す。なお、制御方法の安定性を保持するために、一方の動力部M1,M2の局部偏差と関連する偏差の一部だけが他方の動力部M1,M2によって補償される必要がある。
【0083】
したがって、制御方法100は、評価・調整工程Hを実行する。評価・調整工程Hは、第1の偏差Δ1および第2の偏差Δ2によって、局部偏差と関連する偏差の一部を表す第1の補償リクエストC1および第2の補償リクエストC2を決定する。
【0084】
時間区間tにおける制御方法の一例を
図3に例示する。
図3において、時間区間tにおいて、目標トルクEは、6Nmに等しい。分散工程Dは、第1の分散トルクE’1が3Nmに等しく、第2の分散トルクE’2が3Nmに等しいと決定する。
【0085】
時間区間t-1において計算され、時間区間tにおいて印加される第1の補償リクエストC1および第2の補償リクエストC2は、ゼロである。
【0086】
より詳細には、時間区間tにおいて決定工程Aによって使用される第1の補償リクエストC1および第2の補償リクエストC2は、時間区間tよりも前の第1の時点において補償工程Hによって計算された第1の偏差Δ1の値および時間区間tよりも前の第2の時点において補償工程Hによって計算された第2の偏差Δ2の値の関数として計算された。
【0087】
したがって、第1の目標モータトルクE1は、3Nmに等しく、第2の目標モータトルクE2は、3Nmに等しい。
【0088】
第1の動力部M1は、偏差を有し、したがって、生成工程B中に、要求される3Nmの代わりに、1Nmの第1のモータトルクF1を生成する。したがって、補償工程Gは、時間区間tにおいて、第1の偏差Δ1が2Nmに等しいと計算する。
【0089】
また、第2の動力部M2は、偏差を示し、したがって、生成工程B中に、要求される3Nmの代わりに、2Nmの第2のモータトルクF2を生成する。したがって、補償工程Gは、時間区間tにおいて、第2の偏差Δ2が1Nmに等しいと計算する。
【0090】
次いで、制御方法100は、時間区間t+1において印加される第1の補償リクエストC1および第2の補償リクエストC2を決定する評価・調整工程Hを包含する。
【0091】
時間区間t+1より前の第1の時点において計算された第1の偏差Δ1および時間区間t+1より前の第2の時点において計算された第2の偏差Δ2の関数として、時間区間tにおいて計算された第1の補償リクエストC1および第2の補償リクエストC2は、時間区間t+1において印加される。
【0092】
図4の制御方法100の簡略化図に基づいて、第1の補償リクエストC1および第2の補償リクエストC2を第1の偏差Δ1および第2の偏差Δ2の関数として計算する評価・調整工程Hをより詳細に記載する。
【0093】
簡略化図において、実行工程B中に、第1の動力部M1は、第1の目標モータトルクE1に等しい第1の完全なモータトルクF’1を印加し、第2の動力部は、第2の目標モータトルクE2に等しい第2の完全なモータトルクF’2を印加する。
【0094】
ところで、第1の動力部M1は、第1の偏差Δ1に対応する第1の外乱トルクD1を受信する。したがって、第1の完全なモータトルクF’1および第1の外乱トルクD1の合計が第1のモータトルクF1に等しい。言い換えると、第1の外乱トルクD1は、局部または系統偏差が原因で第1の動力部M1が生成するトルクではなく、第1の動力部に印加されるトルクを表す。
【0095】
さらに、第2の動力部M2は、第2の偏差Δ2に対応する第2の外乱トルクD2を受信する。したがって、第2の完全なモータトルクF’2および第2の外乱トルクD2の合計が第2のモータトルクF2に等しい。言い換えると、第2の外乱トルクD2は、局部または系統偏差が原因で第2の動力部M2が生成するトルクではなく、第2の動力部に印加されるトルクを表す。
【0096】
制御方法100は、第1のモータトルクF1および第2のモータトルクF2の合計に等しい印加トルクFを第1の分散トルクE’1および第2の分散トルクE’2の合計に一致する目標トルクEに近づけようとする。
【0097】
より詳細には、制御方法100は、系統偏差と関連する第1の外乱トルクD1の一部および第2の外乱トルクD2の一部ではなく、局部偏差と関連する第1の外乱トルクD1の一部および第2の外乱トルクD2の一部を補償しようとする。したがって、制御方法100は、第1の補償リクエストC1および第2の補償リクエストC2が第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2と異なることを可能にする。制御方法100は、残部Rが以下となることを可能にする。
【0098】
【数5】
したがって、
図4の簡略化図から、制御方法100は、以下を成立させようとする。
【0099】
【数6】
したがって、制御方法100は、以下の方程式を解く。
【0100】
【数7】
ここで、C1
*は、C1に対応する最適値であり、C2
*は、C2に対応する最適値であり、R
*は、Rに対応する最適値である。
【0101】
方程式7の解は、実数の集合に属するα1,α2,α3およびα4を用いて以下のようにも記述できる。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【数12】
一解析的実施形態によると、評価・調整工程Hは、方程式9の二次最小化を行う。
【0107】
【0108】
最終的に、制御方法100は、第1の仮定を考慮する。第1の仮定によれば、第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2は、第1の動力部および第2の動力部の生成能力を反映する、すなわち、動力部が要求される目標モータトルクを生成する能力が低いほど、外乱トルクが大きくなり、当該動力部を使用して補償することがより所望されなくなる。外乱トルクの絶対値は、補償リクエストに対してペナルティを課さなければいけない。
【0109】
また、制御方法100は、第2の仮定を考慮する。第2の仮定によれば、残部Rは、調節可能である、すなわち、残部Rは、一般に低くなければいけないが、第1の外乱トルクD1が第2の外乱トルクD2に実質的に等しい場合は、増大し得る。残部は、第1の外乱トルクD1と第2の外乱トルクD2との偏差の絶対値の関数としてペナルティを課される。
【0110】
最後に、
図5、6および7において表される解析解を得る。より詳細には、
図5は、第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2の関数としての第1の補償リクエストC1の解析解を例示する。
図6は、第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2の関数としての第2の補償リクエストC2の解析解を例示する。
図7は、第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2の関数としての残部Rの解析解を例示する。
【0111】
一実験的実施形態によると、評価・調整工程は、方程式9の実験最小化を行ってもよい。
【0112】
この場合、以下のように決定される。
【0113】
【表1】
最後に、
図8,9および10に示された実験解を得る。より詳細には、
図8は、第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2の関数としての第1の補償リクエストC1の実験解を例示する。
図9は、第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2の関数としての第2の補償リクエストC2の実験解を例示する。
図10は、第1の外乱トルクD1および第2の外乱トルクD2の関数としての残部Rの実験解を例示する。
【0114】
当然ながら、本発明は、本明細書に記載され、添付の図面に示された実施形態に限定されない。特に種々の要素の構成または技術的均等物の代替の観点から、本発明は、その保護の範囲を逸脱せずに変更可能である。