(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】車両用超音波式物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20240301BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20240301BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240301BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20240301BHJP
B60R 13/04 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
G01S7/521 B
G01S15/931
B60J5/04 Z
B60R13/08
B60R13/04 A
(21)【出願番号】P 2021552478
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039158
(87)【国際公開番号】W WO2021075565
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2019190926
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】徳留 哲夫
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100881(JP,A)
【文献】特開2017-088100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0308464(US,A1)
【文献】特開2017-202771(JP,A)
【文献】特開2014-215283(JP,A)
【文献】特開2007-16412(JP,A)
【文献】特開2007-114182(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013225872(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 7/52- 7/64
G01S 13/00-15/96
B60J 5/00- 5/14
B60R 13/01-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用超音波式物体検出装置であって、
車両の車体は、開口部と、前記開口部を開閉するドアと、前記開口部の下側で車長方向に延びるように配置された前記ドアとは異なる部材とを備え、前記ドアは車外側に位置する金属製のドアアウターパネルと、車内側に位置するドアインナ
ーパネルとを有し、
車外側から見て前記部材に設けられた貫通孔を
覆うように前記部材の車外側に設けられた振動板と、
前記貫通孔を貫通すると共に、前記振動板の内面に密着するように配置された、超音波を発信可能な超音波発信器と、
前記ドア
アウターパネルの内面に密着するように前記ドア内に配置された、前記超音波の反射波を受信可能な超音波受信器と
を備える、車両用超音波式物体検出装置。
【請求項2】
前記部材と前記振動板の間に介設されたベースプレートを備え、
前記ベースプレートは、穴が形成されており前記貫通孔を取り囲む枠状であって、前記部材の外面に固定され
ており、
前記振動板は前記穴を塞ぐように前記ベースプレートに固定され、
前記超音波発信器は前記貫通孔
及び前記穴
内に
配置されている、請求項1に記載の車両用超音波式物体検出装置。
【請求項3】
前記部材はサイドアンダースカートである、請求項1又は2に記載の車両用超音波式物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用超音波式物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアが開放動作時に障害物と衝突するのを回避するための、車両用超音波式物体検出装置が知られている。この車両用超音波式物体検出装置は、超音波の送受信が可能な超音波センサを備える。超音波センサによる超音波の発信から、物体で反射された超音波が超音波センサで受信されるまでの時間を測定し、それに基づいて、障害物の有無と障害物までの距離が検出される。
【0003】
上述のような超音波センサを車両のドア内に配置する場合、超音波を遮らないために、ドアのアウターパネルに設けられた外部と連通する開口に臨むように、超音波センサが配置される。
【0004】
特許文献1には、上述のようなドアのアウターパネルに設けられた開口を、超音波を透過させる部材で塞ぐことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-088100号公報(段落0067)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のように、超音波を遮らないための開口を設けた場合、ドアの外部から開口を介して超音波センサが見えてしまい、車両の外観ないしデザイン上、好ましくない。
【0007】
また、特許文献1のように、超音波を透過させる部材で開口を塞いでも、アウターパネル(一般に鋼板製)の一部が他の部分とは異なる材料で構成されることになるので、車両の外観ないしデザイン上、好ましくない。
【0008】
上述のような開口を設けることなく超音波センサを車両のドア内に配置した場合、ドアのアウターパネル(一般に鋼板製)が発信された超音波の一部を遮り、横波がアウターパネルに残留する。超音波センサは、アウターパネルに残留する横波を減衰するまで感知し続ける。その結果、障害物で反射されて戻ってくる縦波と、アウターパネルに残留する横波とを超音波センサが識別できず、障害物の検出が困難な場合がある。
【0009】
本発明は、車両の外観ないしデザイン性を損なうことなく、物体の検出が可能な、車両用超音波式物体検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、車両用超音波式物体検出装置であって、車両の車体は、開口部と、前記開口部を開閉するドアと、前記開口部の下側で車長方向に延びるように配置された前記ドアとは異なる部材とを備え、前記ドアは車外側に位置する金属製のドアアウターパネルと、車内側に位置するドアインナーパネルとを有し、車外側から見て前記部材に設けられた貫通孔を覆うように前記部材の車外側に設けられた振動板と、前記貫通孔を貫通すると共に、前記振動板の内面に密着するように配置された、超音波を発信可能な超音波発信器と、前記ドアアウターパネルの内面に密着するように前記ドア内に配置された、前記超音波の反射波を受信可能な超音波受信器とを備える、車両用超音波式物体検出装置を提供する。
【0011】
超音波発信器は車体の外側に取り付けられているので、超音波発信器が発信する超音波の横波がドアに残留することがない。そのため、ドアに到達した反射波(縦波)がドアに残留する横波と干渉することがなく、ドア内に配置された超音波受信器は確実に反射波を受信できる。言い換えれば、車両の周囲の物体を確実に検出できる。
【0012】
また、超音波受信器はドア内に配置されているので、外部から見えず、車両の外観ないしデザイン性が損なわれない。
【0013】
以上のように、本態様の車両用超音波式物体検出装置によれば、車両の外観ないしデザイン性を損なうことなく、超音波による物体の検出が可能である。
【0015】
超音波発信器は振動板の内側に配置されているので、外部から見えず、車両の外観ないしデザイン性が損なわれない。
【0018】
ドアアウターパネルの超音波受信器が配置された箇所以外の部分に入射した反射波は、ドアアウターパネルを伝播して超音波受信器に到達する。つまり、反射波をドアアウターパネルの全体で受信することができる。そのため、超音波受信器による反射波の受信領域を拡大できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の車両用超音波式物体検出装置によれば、車両の外観ないしデザイン性を損なうことなく、物体の検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用超音波式物体検出装置を備える自動車の側面図。
【
図2】第1実施形態に係る車両用超音波式物体検出装置のブロック図。
【
図3】
図1の自動車のフロントサイドドアを開放した状態の後方から見た斜視図。
【
図4】
図1のIV-IVに沿った発信ユニットの断面図。
【
図7】
図7のVII-VII線に沿ったドアの断面図。
【
図9】第1実施形態の第1変形例における、アウターパネル内面の超音波センサの取付部分の部分拡大図。
【
図11】第1実施形態の第2変形例の
図1と同様の図。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る車両用超音波式物体検出装置を備える自動車の側面図。
【
図13】第2実施形態における、アウターパネル内面の超音波センサの取付部分の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用超音波式物体検出装置1(以下、単に物体検出装置1と呼ぶ)を備える、車両の一例である自動車2を示す。本実施形態では、自動車2は、車体3の開口部3aを開閉するいずれも旋回式の4枚のドア、つまり左右のフロントサイドドア4と、同じく左右のリアサイドドア5を備える。
図7を併せて参照すると、フロントサイドドア4は車外側のアウターパネル(ドアアウターパネル)21と、車内側のインナーパネル(ドアインナーパネル)22とを備える。アウターパネル21とインナーパネル22の上端にはサイドウインドガラス23の昇降のための開口24が設けられている。本実施形態では、フロントサイドドア4のアウターパネル21とインナーパネル22はいずれも鋼板製である。同様に、リアサイドドア5も鋼板製のアウターパネルとインナーパネルを備える。
【0031】
本実施形態では、自動車2は、右側のフロントサイドドア4及びリアサイドドア5用の物体検出装置1と、左側のフロントサイドドア4及びリアサイドドア5用の物体検出装置1を備える。本実施形態では、右側用と左側用の物体検出装置1の構成は同一である。以下の説明では、右側用のフロントサイドドア4及びリアサイドドア5用の物体検出装置1について説明する。
【0032】
図2を併せて参照すると、物体検出装置1は、4個の第1超音波センサ6A~6Dと、2個の第2超音波センサ7A,7Bと、これら第1及び第2超音波センサ6A~6D,7A,7Bを制御する制御部8(例えばECU)を備える。第1及び第2超音波センサ6A~6D,7A,7Bは、いずれも超音波の発信と発信した超音波の反射波の受信とが可能である。本実施形態では、第1超音波センサ6A~6Dは超音波の発信にのみ使用され、第2超音波センサ7A,7Bは反射波の受信にのみ使用される。第1超音波センサ6A,6Bと第2超音波センサ7Aは、フロントサイドドア3の周囲の物体の検出に使用され、第1超音波センサ6C,6Dと第2センサ7Bは、リアサイドドア4の周囲の物体の検出に使用される。後述するように、第1超音波センサ6A~6Dは、車体8の外側に取り付けられた発信ユニット12に組み込まれている。また、後述するように、第2超音波センサ7Aはフロントサイドドア4内に配置され、第2超音波センサ7Bはリアサイドドア4内に配置されている。第1超音波センサ6A~6Dは、
図4にのみ図示する信号線6aを介して、制御部8に電気的に接続されている。同様に、第2超音波センサ7A,7Bは、
図7にのみ図示する信号線7aを介して、制御部8に電気的に接続されている。
【0033】
制御部8は、第1超音波センサ6A,6Bに超音波を発信させる。物体で反射された超音波(以下、反射波と呼ぶ)は、第2超音波センサ7Aで受信される。制御部8は、第2超音波センサ7Aによる反射波の受信の有無に基づいてフロントサイドドア4の周囲の物体の有無を検出する。また、制御部8は第1超音波センサ6A,6Bによる超音波の発信から、物体で反射された反射波が第2超音波センサ7Aで受信されるまでの時間を測定し、それに基づいて、物体までの距離を検出する。また、制御部8は、第1超音波センサ6C,6Dに超音波を発信させ、第2超音波センサ7Bによる反射波の受信の有無に基づいてリアサイドドア5の周囲の物体の有無を検出し、第1超音波センサ6C,6Dによる超音波の発信から第2超音波センサ7Bによる反射波の受信までの時間に基づいて物体までの距離を検出する。
【0034】
図2を参照すると、制御部8は、フロントサイドドア4及びリアサイドドア5用のドア開閉駆動装置9を制御し、ドア開閉駆動装置9によるフロントサイドドア4及びリアサイドドア5の開放動作に応じて第1及び第2超音波センサ6A~6D,7A,7Bを制御してもよい。
【0035】
図1、
図3、及び
図4を参照すると、車体3は、開口部3aの下側で車長方向に延びるように配置されたサイドアンダースカート11を備えている。なお、
図4では、サイドアンダースカート11以外の車体3を構成する部材の図示を省略している。
【0036】
サイドアンダースカート11の車外側には、第1センサ6A~6Dが内蔵された発信ユニット12が取り付けられている。発信ユニット12は、ベースプレート13と振動板14,15を備える。本実施形態では、ベースプレート13と振動板14,15は、いずれも樹脂製である。
図5に最も明瞭に示すように、ベースプレート13は車長方向に延びる細長い矩形穴13aを備える枠状体である。ベースプレート13は、サイドアンダースカート11の車外側の面、つまり外面11aに固定されている。
図6に最も明瞭に示すように、振動板14,15は細長い矩形状であり、矩形穴13aを塞ぐようにベースプレート13に固定されている。振動板14は矩形穴13aのフロントサイドドア4側の領域を塞ぎ、振動板15は矩形穴13aのリアサイドドア5側の領域を塞いでいる。
【0037】
図1及び
図4を参照すると、振動板14の車内側の面、つまり内面14aには、第1超音波センサ6A,6Bが密着して固定されている。また、振動板15の内面15aには、第1超音波センサ6C,6Dが密着して固定されている。サイドアンダースカート11には、ベースプレート13の第1超音波センサ6A~6Dの取付位置と対応する部分に、貫通穴11bが設けられている。貫通穴11bは矩形穴13aと連通し、第1超音波センサ6A~6Dは、貫通穴11b及び矩形穴13a内に配置されている。
【0038】
第2超音波センサ7Aのフロントサイドドア4に対する取付態様と第2超音波センサ7Bのリアサイドドア5に対する取付態様は同様である。以下、第2超音波センサ7Aのフロントサイドドア4に対する取付態様を説明する。
図1、
図7、及び
図8を参照すると、第2超音波センサ7Aはフロントサイドドア4のアウターパネル21の車内側の面、つまり内面21aに密着して固定されている。本実施形態では、後述する
図9及び
図10の変形例や第3実施形態(
図12~
図13)とは異なり、アウターパネル21の内面21aには制振材は取り付けられていない。
【0039】
以下、車両用超音波式物体検出装置1による超音波の発信と受信を、フロントサイドドア4について説明する。リアサイドドア5についても、同様の態様で、車両用超音波式物体検出装置1による超音波の発信と受信が実行される。
【0040】
制御部8によって駆動された第1超音波センサ6A,6Bが発信した超音波は、振動板14を介してフロントサイドドア4の周囲に放射される。この放射された超音波が物体で反射されると、反射波はフロントサイドドア4のアウターパネル21に入射する。アウターパネル21に入射した反射波は第2超音波センサ7Aにより受信される。前述のように、制御部8は、第2超音波センサ7Aによる反射波の受信の有無に基づいてフロントサイドドア4の周囲の物体の有無を検出する。また、制御部8は、第1超音波センサ5A,5Bによる超音波の発信から、物体で反射された反射波が第2超音波センサ7Aで受信されるまでの時間を測定し、それに基づいて、物体までの距離を検出する。
【0041】
物体検出装置1は、フロントサイドドア4用の第1超音波センサ6A,6Bと第2超音波センサ7Aに関して以下の特徴を有する。
【0042】
第1超音波センサ6A,6Bを備える発信ユニット12は、車体3の外側にいるサイドアンダースカート11に取り付けられているので、第1超音波発信器6A,6Bが発信する超音波の横波が、第2超音波センサ7Aが取り付けられているフロントサイドドア4のアウターパネル21に残留することがない。そのため、フロントサイドドア4のアウターパネル21に到達した反射波(縦波)がフロントサイドドア4のアウターパネル21に残留する横波と干渉することがなく、第2超音波センサ7Aは確実に反射波を受信できる。言い換えれば、物体検出装置1は車両の周囲の物体を確実に検出できる。
【0043】
フロントサイドドア4のアウターパネル21の第2超音波センサ7Aが取り付けられた箇所に入射した反射波が第2超音波センサ7Aで受信される。また、フロントサイドドア4のアウターパネル21の第2超音波センサ7Aが取り付けられた箇所以外の部分に入射した反射波もアウターパネル21を伝播して第2超音波センサ7Aに到達し、第2超音波センサ7Aによって受信される。つまり、反射波をアウターパネル21の全体で受信することができ、第2超音波センサ7Aによる反射波の受信領域を拡大できる。
【0044】
第1超音波センサ6A,6Bは、振動板14の内面14aに取り付けられ、第1超音波センサ6A,6Bが発信した超音波は、振動板14を介してフロントサイドドア4の周囲に放射される。すなわち、振動板14は超音波によって振動し、振動板14全域から超音波が発信される。これにより、第1超音波センサ6A,6Bによる物体の検出範囲を拡大できる。
【0045】
第1超音波センサ6A,6Bは、振動板14の内面14aに取り付けられており、外部から見えない。第2超音波センサ7Aも、フロントサイドドア4のアウターパネル21の内面21aに取り付けられており、外部から見えない。このように、第1超音波センサ6A,6Bと第2超音波センサ7Aがいずれも外部から見えないので、自動車の外観ないしデザイン性を損なうことなく、超音波による物体の検出が可能である。
【0046】
図3を参照すると、本実施形態においては、フロントサイドドア4の開放時には、第1超音波センサ6A,6Bで発信された超音波が、フロントサイドドア4のインナーパネル22にも入射し得る。インナーパネル22に入射した超音波がアウターパネル21に伝播して第2超音波センサ7Aで受信されると、フロントサイドドア4自体が物体として検出される可能性があり、物体検出の精度が低下する場合がある。本実施形態では、
図3においてハッチングを付して概念的に示すように、インナーパネル22の車内側、つまり外面22aのうち鋼板が露出している部分に、超音波吸収材25が配置されている。この超音波吸収材25の例としては、不織布のような布、皮、樹脂、シリコーンゴムのようなゴム、ウレタン、スポンジ、防音塗料、防音材、吸音材がある。インナーパネル22の外面22aのうち鋼板が露出している部分に超音波吸収材25を配置することで、フロントサイドドア4開放時にインナーパネル22で受信された超音波がインナーパネル22からアウターパネル21を伝播して第2超音波センサ7Aで受信されるのを防止できる。その結果、物体検出の精度を向上できる。
【0047】
本実施形態では、超音波を発信する第1超音波センサ6A,6Bを含む発信ユニット12は、車体3の下部に位置するサイドアンダースカート11に取り付けられている。そのため、フロントサイドドア4の開放時において、フロントサイドドア4のインナーパネル22の車高方向上部には反射波は入射しないか、第2超音波センサ7Aによって検出されない程度の強度の反射波しか入射しない。そのため、本実施形態では、インナーパネル22の車高方向下部にのみ超音波吸収材25が配置されている。
【0048】
リアサイドドア5のインナーパネルにも、フロントサイドドア4と同様の態様で超音波吸収材が配置されている。
【0049】
以上のように、本実施形態の物体検出装置1によれば、自動車3の外観ないしデザインを損なうことなく、超音波による物体の検出が可能である。
【0050】
以上の特徴は、リアサイドドア5用の第1超音波センサ6C,6Dと第2超音波センサ7Bについても該当する。
【0051】
図9から
図11は、第1実施形態の変形例を示す。これらの変形例において、特に言及しない点については、第1実施形態と同様である。
【0052】
図9及び
図10に示す第1変形例では、フロントサイドドア4のアウターパネル21の内面21aに、間隔をあけて第2超音波センサ7Aを取り囲むように、環状の制振部材31が取り付けられている。制振部材31は、アウターパネル21の内面21aに密着して固定されている粘弾性体32(例えばブチルゴム製)と、粘弾性体32の表面に配置された薄厚の金属板33(例えばアルミニウム製)とを備える。
【0053】
フロントサイドドア4のアウターパネル21の制振部材31で囲まれた領域34では、アウターパネル21に入射した反射波は第2超音波センサ7Aにより受信される。一方、フロントサイドドア4のアウターパネル21の制振部材31の外側の領域35に入射した超音波(反射波を含む)は、第2超音波センサ7Aで受信されない。これは、この領域35から第2超音波センサ7Aに向かって伝播する反射波は、制振部材31により減衰するので第2超音波センサ7Aまで到達しないためである。このように、この変形例では、第2超音波センサ7Aにより反射波が受信されるのは、フロントサイドドア4のアウターパネル21のうち制振部材31で囲まれた領域34に限定される。そのため、この変形例では、第1実施形態の超音波吸収材25を設けることなく、フロントサイドドア4の開放時にインナーパネル22で受信された超音波が第2超音波受信器7Aまで到達するのを防止できる。
【0054】
リアサイドドア5のインナーパネルの内面にも、
図9及び
図10に示す制振部材31と同様の制振部材が、間隔をあけて第1超音波センサ7Bを取り囲むように取り付けられている。
【0055】
図11に示す第2変形例では、物体検出装置1は、サイドアンダースカート11に取り付けられた発信ユニット12(例えば
図1参照)は備えていない。第1超音波センサ6A,6Bはフロントサイドドア4の外側に取り付けられた樹脂製のサイドモール41に内蔵されている。また、第1超音波センサ6C,6Dも、リアサイドドア5の外側に取り付けられた樹脂製のサイドモール42に内蔵されている。
【0056】
(第2実施形態)
図12から
図14は、本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態において、特に言及しない点については、第1実施形態と同様である。
【0057】
第2実施形態に係る物体検出装置1では、フロントサイドドア4のアウターパネル21の内面21aに取り付けられた超音波センサ51Aと、同様に、リアサイドドア5のアウターパネルの内面に取り付けられた超音波センサ51Bとが、超音波の発信と、反射波の受信の両方を実行する。従って、本実施形態の物体検出装置1は、サイドアンダースカート11に取り付けられた発信ユニット12(例えば
図1参照)を備えていない。以下、フロントサイドドア4の超音波センサ51Aを例に、本実施形態をさらに説明する。
【0058】
フロントサイドドア4のアウターパネル21の内面21aに、間隔をあけて超音波センサ51Aを取り囲むように、環状の制振部材61が取り付けられている。
【0059】
図9及び
図10に示す第1実施形態の第1変形例における制振部材31よりも高い制振性を得るため、より具体的には、超音波センサ51Aが発信した超音波がアウターパネル21を通過する際、アウターパネル21に生じる横波を確実に減衰させるために、制振部材61は、いずれも環状である2個の制振部材62,63を重ねた2層構造を有する。個々の制振部材62,63は、粘弾性体64(例えばブチルゴム製)と、粘弾性体32の表面に配置された薄厚の金属板65(例えばアルミニウム製)とを備える。
【0060】
制振部材62の粘弾性体64は、アウターパネル21の内面21aに密着して固定されている。制振部材63の粘弾性体64は制振部材62の金属板65に密着して固定されている。
【0061】
制振部材62,63の外形寸法は同じであるが、第1層の制振部材62の開口62aの面積よりも第2層の制振部材63の開口63aの面積を大きく設定している。そのため、車室側から見て超音波センサ51Aを取り囲むアウターパネル21の内面21aが露出している領域66は、制振部材62の開口62aにより画定される。
【0062】
本実施形態では、超音波センサ51Aが発信した超音波が物体で反射され、反射波が領域66の部分でアウターパネル21に入射すると、超音波センサ51Aによって受信される。超音波センサ51Aによる反射波の受信の有無に基づいてフロントサイドドア4の周囲の物体の有無が検出される。また、超音波センサ51Aによる超音波の発信から、物体で反射された反射波が超音波センサ51Aで受信されるまでの時間に基づいて、物体までの距離が検出される。
【0063】
超音波センサ51Aが発信した超音波がアウターパネル21を通過する際、アウターパネル21に生じる横波が制振部材61により減衰される。そのため、物体で反射されてフロントサイドドア4のアウターパネル21の領域66に到達した反射波(縦波)がアウターパネル21に残留する横波と干渉することがなく、フロントサイドドア4内に配置された超音波センサ51Aは確実に反射波を受信できる。言い換えれば、自動車2の周囲の物体を確実に検出できる。
【0064】
前述のように、超音波センサ51Aはフロントサイドドア4のアウターパネル21の内面21aに配置されているので、外部から見えず、自動車2の外観ないしデザイン性が損なわれない。
【0065】
以上のように、本実施形態の物体検出装置1によれば、自動車2の外観ないしデザイン性を損なうことなく、超音波による物体の検出が可能である。
【0066】
旋回式のサイドドアを例に本発明を説明したが、本発明は、ガルウィング式のような旋回式以外のドアにも適用可能であり、リアドアのようなサイドドア以外のドアにも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用超音波式物体検出装置
2 自動車
3 車体
3a 開口部
4 フロントサイドドア
5 リアサイドドア
6A,6B,6C,6D 第1超音波センサ(超音波発信器)
6a 信号線
7A,7B 第2超音波センサ(超音波)
7a 信号線
8 制御部
9 ドア開閉駆動装置
11 サイドアンダースカート
11a 外面
11b 貫通穴
12 発信ユニット
13 ベースプレート
13a 矩形穴
14 振動板
14a 内面
15 振動板
15a 内面
21 アウターパネル
21a 内面
22 インナーパネル
22a 外面
23 サイドウインドガラス
24 開口
25 超音波吸収材
31 制振部材
32 粘弾性体
33 金属板
34,35 領域
41,42 サイドモール
51A,51B 超音波センサ
61,62,63 制振部材
62a,63a 開口
64 粘弾性体
65 金属板
66 領域