(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20240301BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20240301BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20240301BHJP
C25D 3/38 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
H05K3/18 F
C25D7/00 J
H05K1/09 A
C25D3/38 101
(21)【出願番号】P 2021560658
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012774
(87)【国際公開番号】W WO2021200614
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-10-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020066298
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢治
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】山澤 宏
【審判官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082320(JP,A)
【文献】特開2006-057177(JP,A)
【文献】特開2011-014721(JP,A)
【文献】特表2012-522898(JP,A)
【文献】国際公開第2006/057177(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/039992(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/18
H05K 1/09
C25D 7/00
C25D 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、
上記配線が銅系めっき層を有し、
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10
-8Ω・mより大きく、
上記銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径が2μm以上100μm以下であ
り、
上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、
上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記窒素の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記炭素の含有量が0.001質量%以上0.01質量%以下であるフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.73×10
-8Ω・m以上2.10×10
-8Ω・m以下である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.76×10
-8Ω・m以上1.93×10
-8Ω・m以下である請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、
上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が
0.0005質量%以上
0.001質量%以下であり、上記窒素の含有量が
0.0005質量%以上
0.001質量%以下であり、上記炭素の含有量が
0.002質量%以上
0.005質量%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
上記配線が、上記ベースフィルムの上記一方の面に接する第1導電性下地層をさらに含み、
上記銅系めっき層は上記第1導電性下地層の上記ベースフィルムに接する面とは反対の面に設けられ、
上記第1導電性下地層が、上記ベースフィルムの上記一方の面に接する第1層と上記第1層の上記ベースフィルムに接する面とは反対の面に設けられる第2層を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
上記第1層が、ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項5に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
上記第2層が、上記第2層において50質量%以上の銅を含有する請求項5又は請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、
上記配線が銅系めっき層を有し、
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10
-8Ω・mより大きく、
上記銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径が2μm以上100μm以下であり、
上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、
上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記窒素の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記炭素の含有量が0.001質量%以上0.01質量%以下であり、
上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に導電性下地層を積層する工程と、
上記導電性下地層の表面にレジストパターンを形成する工程と、
めっき液中にて、上記導電性下地層上の上記レジストパターンの開口部に電気めっきすることにより、銅系めっき層を形成する工程と、
上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記銅系めっき層の非積層領域を除去する工程とを備え、
上記めっき液が第1有機化合物、第2有機化合物及び第3有機化合物を含有し、
上記第1有機化合物が3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウムを含み、
上記第2有機化合物がポリエチレングリコールを含み、
上記第3有機化合物が窒素含有有機化合物を含むフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
上記第3有機化合物が、ジアリルアンモニウムと二酸化硫黄との共重合体、ポリビニルイミダゾリウム4級化物、ビニルピロリドンとビニルイミダゾリウム4級化物との共重合体及び4級ポリアミンから選ばれる1種以上である請求項8に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
上記めっき液中、
上記第1有機化合物の含有量は0.0001質量%以上1質量%以下であり、
上記第2有機化合物の含有量は0.004質量%以上5質量%以下であり、
上記第3有機化合物の含有量は0.0001質量%以上0.5質量%以下である請求項8又は請求項9に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板及びその製造方法に関する。本出願は、2020年4月1日出願の日本出願第2020-066298号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、様々な電子機器の回路を構成するために広く利用されている。近年、電子機器の小型化に伴い、フレキシブルプリント配線板の小型化及びその配線密度の増大が著しい。
【0003】
このような小型のフレキシブルプリント配線板として、シート状の絶縁性基材と、この基材の表面にめっきによって積層されるコイル状の配線層とを有するものが提案されている(特開2018-195681号公報参照)。
【0004】
一方、フレキシブルプリント配線板における配線を形成するための電気めっきのめっき液として、銅イオン、硫酸、塩素イオン、及びヒドロキシカルボン酸を含有するものを用いることが提案されている(特開平7-102392号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-195681号公報
【文献】特開平7-102392号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、配線が銅系めっき層を有し、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きい。
【0007】
本開示の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、ベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、配線が銅系めっき層を有し、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きく、ベースフィルムの少なくとも一方の面に導電性下地層を積層する工程と、導電性下地層の表面にレジストパターンを形成する工程と、めっき液中にて、導電性下地層上のレジストパターンの開口部に電気めっきすることにより、銅系めっき層を形成する工程と、レジストパターン及び導電性下地層における銅系めっき層の非積層領域を除去する工程とを備え、めっき液が第1有機化合物、第2有機化合物及び第3有機化合物を含有し、第1有機化合物が3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウムを含み、第2有機化合物がポリエチレングリコールを含み、第3有機化合物が窒素含有有機化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的端面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的端面図である。
【
図3】
図3は、
図1のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図である。
【
図4】
図4は、
図1のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
ここで、フレキシブルプリント配線板では、種々の設計規格に適合させるべく、配線の電気抵抗を大きくすることが要望される場合がある。この点に関し、上記したようなフレキシブル配線板では、配線の電気抵抗を大きくするためには、配線の線幅を小さくしたり、長さを大きくしたりする必要がある。しかし、上述のように小型化が進む現状において、このような寸法の変更を行うと、小型化を図ることが困難になったり、電気抵抗以外の他の設計規格を満たすことが困難になったりするおそれがある。
【0010】
そこで、小型化を図りつつ種々の設計規格に適合可能なフレキシブルプリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
【0011】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、小型化を図りつつ種々の設計規格に適合可能である。本開示の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、小型化を図りつつ種々の設計規格に適合可能なフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、配線が銅系めっき層を有し、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きい。
【0013】
当該フレキシブルプリント配線板は、配線の平均線幅及び平均間隔がそれぞれ上記範囲内であることで、小型化が図られる。加えて、配線が銅系めっき層を有することで、同じ寸法で比較して配線の電気抵抗を大きくすることが可能になる。従って、当該フレキシブルプリント配線板は、小型化を図りつつ種々の設計規格に適合可能である。
【0014】
銅系めっき層の電気抵抗率としては、1.73×10-8Ω・m以上2.10×10-8Ω・m以下であってもよい。
【0015】
銅系めっき層の電気抵抗率が1.73×10-8Ω・m以上であることで、より広範に種々の設計規格に適合可能となる。電気抵抗率が2.10×10-8Ω・m以下であることで、無用な電気抵抗の増大を抑制することができる。
【0016】
銅系めっき層の電気抵抗率としては、1.76×10-8Ω・m以上1.93×10-8Ω・m以下であってもよい。
【0017】
銅系めっき層の電気抵抗率が1.76×10-8Ω・m以上であることで、さらに広範に種々の設計規格に適合可能となる。電気抵抗率が1.93×10-8Ω・m以下であることで、無用な電気抵抗の増大をより抑制することができる。
【0018】
銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、銅系めっき層中の硫黄の含有量としては0.0001質量%以上0.005質量%以下であってもよく、窒素の含有量としては、0.0001質量%以上0.005質量%以下であってもよく、炭素の含有量としては、0.001質量%以上0.01質量%以下であってもよい。
【0019】
硫黄、窒素及び炭素の各含有量がそれぞれ上記範囲内であることで、より確実に、電気抵抗率を上記範囲内に設定することができる。
【0020】
銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径としては、0.05μm以上100μm以下であってもよい。
【0021】
銅結晶粒の平均直径が上記範囲内であることで、より確実に、電気抵抗率を上記範囲内に設定することができる。
【0022】
配線が、ベースフィルムの上記一方の面接する第1導電性下地層をさらに含み、銅系めっき層は第1導電性下地層のベースフィルムに接する面とは反対の面に設けられ、第1導電性下地層が、ベースフィルムの上記一方の面に接する第1層と第1層のベースフィルムに接する面とは反対の面に設けられる第2層を含んでもよい。
【0023】
第1層が、ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合、ベースフィルムに対する配線層の密着力の熱劣化を抑制することができる。
第2層が、第2層において50質量%以上の銅を含有する場合、第2層の表面に電気めっきにより銅系めっき層を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0024】
また、本開示の異なる態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、ベースフィルムと、ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、配線が銅系めっき層を有し、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きく、ベースフィルムの少なくとも一方の面に導電性下地層を積層する工程と、導電性下地層の表面にレジストパターンを形成する工程と、めっき液中にて、導電性下地層上のレジストパターンの開口部に電気めっきすることにより、銅系めっき層を形成する工程と、レジストパターン及び導電性下地層における銅系めっき層の非積層領域を除去する工程とを備え、めっき液が第1有機化合物、第2有機化合物及び第3有機化合物を含有し、第1有機化合物が3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウムを含み、第2有機化合物がポリエチレングリコールを含み、第3有機化合物が窒素含有有機化合物を含む。
【0025】
第3有機化合物は、ジアリルアンモニウムと二酸化硫黄との共重合体、ポリビニルイミダゾリウム4級化物、ビニルピロリドンとビニルイミダゾリウム4級化物との共重合体及び4級ポリアミンから選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0026】
めっき液中、第1有機化合物の含有量は0.0001質量%以上1質量%以下であり、第2有機化合物の含有量は0.004質量%以上5質量%以下であり、第3有機化合物の含有量は0.0001質量%以上0.5質量以下であってもよい。
【0027】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法によれば、上述した当該フレキシブルプリント配線板を製造することができる。すなわち、小型化を図りつつ種々の設計規格に適合可能なフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0028】
ここで、「線幅」とは、1本の配線における長手方向と垂直な方向の寸法を意味し、「平均線幅」とは、配線の長手方向と垂直な断面における配線の最大幅をその配線の長手方向において任意に5か所測定し、それらを平均した値を意味する。「間隔」とは、対向する2本の配線の隣接面間の距離を意味し、「平均間隔」とは、上記隣接面間の距離を配線の長手方向に任意に5か所測定し、それらを平均した値を意味する。
ただし、各配線間を接続するためのビア(スルーホール、ブラインドビア、フィルドビア)を有するランド部分、実装部品との接続するランド部分、他のプリント基板やコネクターとの接続するためのランド部分等のランド部分については、上記にて規定する「線幅」、「間隔」から除外するものとする。「電気抵抗率」とは、20℃での銅系めっき層の電気抵抗率の値を意味する。「平均直径」とは、FIB(Focused Ion Beam)装置で、配線の厚み方向の断面を、配線の長さ方向に沿って200μmの長さとなるように切り出して、FIB装置、SEM(Scanning Electron Microscope)又は金属顕微鏡を用いて断面を観察し、この断面における銅系めっき層に存在する結晶の長径と短径とを測定して平均した値を意味する。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板及びその製造方法の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。なお、本実施形態において「表面側」とは、ベースフィルムの厚み方向のうち、配線層が積層される側を指すものであり、本実施形態の表裏がフレキシブルプリント配線板の使用状態における表裏を決定するものではない。
【0030】
[フレキシブルプリント配線板]
図1に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板10は、絶縁性を有するベースフィルム3と、ベースフィルム3の一方の面側(表面側)に積層される複数本の配線13を有する配線層11とを主に備える。フレキシブルプリント配線板10は、ベースフィルム3又は配線層11の表面側にカバーフィルムをさらに備えてもよい。
【0031】
<ベースフィルム>
ベースフィルム3は、絶縁性を有する合成樹脂製の層である。ベースフィルム3は、可撓性も有する。このベースフィルム3は、配線層11を形成するための基材でもある。ベースフィルム3の形成材料としては、絶縁性及び可撓性を有するものであれば特に限定されないが、シート状に形成された低誘電率の合成樹脂フィルムを採用し得る。この合成樹脂フィルムの主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば形成材料中50質量%以上を占める成分を意味する。ベースフィルム3は、ポリイミド等の例示した樹脂以外の他の樹脂、帯電防止剤等を含有してもよい。
【0032】
ベースフィルム3の平均厚みの下限としては、特に限定されないが、3μmであってもよく、5μmであってもよく、10μmであってもよい。ベースフィルム3の平均厚みの上限としては、特に限定されないが、200μmであってもよく、150μmであってもよく、100μmであってもよい。ベースフィルム3の平均厚みが3μm未満である場合、ベースフィルム3の絶縁強度及び機械的強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム3の平均厚みが200μmを超える場合、フレキシブルプリント配線板10が不要に厚くなるおそれがある。ここで、「平均厚み」とは、任意の十点において測定した厚みの平均値を意味する。
【0033】
<配線層>
配線層11は、ベースフィルム3の表面側に直接又は他の層を介して積層される。配線層11が有する配線13としては、例えば信号を送るための信号線、電力供給用の電流を送るための電流線、磁界発生用の電流を送るための電流線等が挙げられる。
【0034】
配線13は、ベースフィルム3の表面側に積層される第1導電性下地層23と、第1導電性下地層23のベースフィルム3と反対の側(表面側)に積層される銅系めっき層25とによって形成される。
【0035】
配線13の平均線幅Lの下限としては、1μmであってもよく、3μmであってもよく、5μmであってもよい。配線13の平均線幅Lの上限としては、30μmであってもよく、20μmであってもよく、10μmであってもよい。配線13の平均線幅Lが1μmに満たない場合、配線13の機械的強度が不足するおそれがある。一方、配線13の平均線幅Lが30μmを超える場合、十分な小型化を図ることができないおそれがある。「平均線幅」は配線板10の長さ方向に垂直な断面を各配線あたり5か所ミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、配線13における最も幅の大きい部分の長さを顕微鏡等によって測定し、これら測定値の平均値として算出される値である。
【0036】
複数の配線13が互いに隣接して配置される場合、これら配線13の平均間隔Sの下限としては、1μmであってもよく、3μmであってもよく、5μmであってもよく。配線13の平均間隔Sの上限としては、30μmであってもよく、20μmであってもよく、10μmであってもよい。配線13の平均間隔Sが1μmに満たない場合、短絡が発生するおそれがある。一方、配線13の平均間隔Sが30μmを超える場合、十分な小型化を図ることができないおそれがある。「平均間隔」は、配線板10の長さ方向に垂直な断面を各配線当たり5箇所ミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、2本の配線13間の隙間における最も間隔の小さい部分の長さを顕微鏡等によって測定し、これら測定値の平均値として算出される値である。
【0037】
配線13の平均厚みの下限としては、1μmであってもよく、3μmであってもよく、5μmであってもよい。配線13の平均厚みの上限としては、30μmであってもよく、20μmであってもよく、10μmであってもよい。平均厚みが1μmに満たない場合、機械的強度が不足するおそれがある。一方、平均厚みが30μmを超える場合、配線13の可撓性が低下するおそれがある。ここで、「厚み」とは、このベースフィルム3の平面視垂直方向(厚み方向)の断面図におけるベースフィルム上面から配線13の上端縁までの距離を意味する。「平均厚み」は、1本の配線13の任意の十点において測定した厚みの平均値を意味する。具体的には、配線13の長さ方向に垂直な断面を任意の十箇所ミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、断面観察により厚みを測定し、測定値の平均値を算出することによって得られる。なお、以下において他の部材等の「平均厚み」も、これと同様に測定される値である。
【0038】
第1導電性下地層23は、後述する導電性下地層M(例えば
図3参照)の一部によって形成される。第1導電性下地層23の形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金等が挙げられる。
図2のとおり、第1導電性下地層23は、第1層231と第2層232を含んでもよい。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、第1導電性下地層23が、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層231)を含んでもよい。さらに、第1導電性下地層23が、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層231)を含むことがより好ましい。また、第1導電性下地層23が、この第1層231の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層232)を含むことがより好ましい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば第2層232中50質量%以上を占める成分を意味する。
【0039】
例えば、第1層231の平均厚みの下限としては、1nmであってもよく、2nmであってもよい。第1層231の平均厚みの上限としては、15nmであってもよく、8nmであってもよい。平均厚みが1nmに満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、平均厚みが15nmを超える場合、第1層231が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層231は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0040】
例えば、第2層232の平均厚みの下限としては、0.1μmであってもよく、0.2μmであってもよい。第2層232の平均厚みの上限としては、2μmであってもよく、1μmであってもよい。平均厚みが0.1μmに満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、平均厚みが2μmを超える場合、第2層232が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層232は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されることが好ましく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、第1導電性下地層23の最上面側に無電解銅めっき層が配置されることが好ましく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
【0041】
銅系めっき層25は、銅を含有する。この銅系めっき層25の電気抵抗率は、1.68×10-8Ω・mより大きい。ここで、通常、純銅によって形成されるめっき層の電気抵抗率は、1.68×10-8Ω・mである。従って、銅系めっき層25は、純銅のめっき層よりも大きい電気抵抗率を有する。
【0042】
電気抵抗率は、上記のように1.68×10-8Ω・mより大きく、さらに1.73×10-8Ω・m以上であってもよく、1.76×10-8Ω・m以上であってもよい。電気抵抗率の上限としては、2.10×10-8Ω・mであってもよく、1.93×10-8Ω・mであってもよく、1.84×10-8Ω・mであってもよい。電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mに満たない場合、十分に種々の設計規格に適合させることが困難となるおそれがある。一方、電気抵抗率が2.10×10-8Ω・mを超える場合、無用な電気抵抗が増大するおそれがある。ここで、電気抵抗率は、20℃で、四端子法によって測定される値である。
【0043】
銅系めっき層25中の銅の含有量としては、99.0質量%以上であってもよく、99.5質量%以上であってもよく、99.9%以上であってもよい。
【0044】
銅系めっき層25中には、銅以外の添加剤が含有されてもよい。例えば、銅系めっき層25は、硫黄(原子)、窒素(原子)及び炭素(原子)を含有してもよい。銅系めっき層25が上記各元素(原子)を有することで、より確実に、電気抵抗率を上記範囲内に設定することができる。
【0045】
銅系めっき層25が硫黄、窒素及び炭素を含有する場合、銅系めっき層25中の硫黄の含有量の下限としては、0.0001質量%であってもよく、0.0002質量%であってもよく、0.0003質量%であってもよい。硫黄の含有量の上限としては、0.005質量%であってもよく、0.004質量%であってもよく、0.003質量%であってもよい。硫黄の含有量が0.0001質量%に満たない場合、電気抵抗率を上記範囲内により確実に設定することが困難になるおそれがある。一方、硫黄の含有量が0.005質量%を超える場合にも、電気抵抗率を上記範囲内により確実に設定することが困難になるおそれがある。硫黄の含有量は高周波燃焼―赤外線吸収法(例えば、JISG1215-4(2018)、JISH1070(2013))に基づき測定できる。
【0046】
銅系めっき層25が硫黄、窒素及び炭素を含有する場合、銅系めっき層25中の窒素の含有量の下限としては、0.0001質量%であってもよく、0.0002質量%であってもよく、0.0003質量%であってもよい。窒素の含有量の上限としては、0.005質量%であってもよく、0.004質量%であってもよく、0.003質量%であってもよい。窒素の含有量が0.0001質量%に満たない場合、電気抵抗率を上記範囲内により確実に設定することが困難になるおそれがある。一方、窒素の含有量が0.005質量%を超える場合にも、電気抵抗率を上記範囲内により確実に設定することが困難になるおそれがある。窒素の含有量は不活性ガス搬送融解―熱伝導度法(例えば、JISG1228(2006))に基づき測定できる。
【0047】
銅系めっき層25が硫黄、窒素及び炭素を含有する場合、銅系めっき層25中の炭素の含有量の下限としては、0.001質量%であってもよく、0.002質量%であってもよく、0.003質量%であってもよい。炭素の含有量の上限としては、0.01質量%であってもよく、0.009質量%であってもよく、0.008質量%であってもよい。炭素の含有量が0.001質量%に満たない場合、電気抵抗率を上記範囲内により確実に設定することが困難になるおそれがある。一方、炭素の含有量が0.01質量%を超える場合にも、電気抵抗率を上記範囲内により確実に設定することが困難になるおそれがある。ここで、炭素の含有量は、高周波燃焼―赤外線吸収法(例えば、JISZ2615(2015)、JISG1211-3(2018))に基づき測定できる。
【0048】
硫黄、窒素及び炭素の各供給源である化合物としては、これらの少なくとも1種を含有し、銅系めっき層25中に硫黄、窒素及び炭素を上記各含有量で含有させ得る化合物であればよく、特に限定されない。例えば硫黄及び炭素を含有する化合物としては、硫黄を含有する有機化合物(硫黄含有有機化合物、以下、「第1有機化合物」ともいう。
)が挙げられる。この第1有機化合物としては、例えば3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム(SPS)等が挙げられる。例えば炭素を含有する化合物としては、有機化合物(以下、「第2有機化合物」ともいう。)が挙げられる。この第2有機化合物としては、ポリエチレングリコール(PEG)等が挙げられる。PEGとしては、重量平均分子量1000以上のものであってよい。ここで、重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatography)によって測定される。例えば窒素及び炭素を含有する化合物としては、窒素を含有する有機化合物(窒素含有有機化合物、以下、「第3有機化合物」ともいう。)が挙げられる。この第3有機化合物としては、ジアリルアンモニウムと二酸化硫黄との共重合体、ポリビニルイミダゾリウム4級化物(PVI4級化物)、ビニルピロリドンとビニルイミダゾリウム4級化物との共重合体、4級ポリアミン等が挙げられる。これらのうち、例えば銅系めっき層25中の硫黄、窒素及び炭素の含有量が上記範囲内となるよう、SPS、PEG及びジアリルアンモニウムと二酸化硫黄との共重合体を混合して用いることができる。
【0049】
銅系めっき層25は、銅と、上記各含有量の硫黄、窒素及び炭素とを含有し、残部が不可避不純物であってもよい。ここで、不可避不純物とは、銅系めっき層25中の含有量が0.0001質量%未満であるような不純物をいう。
【0050】
銅系めっき層25を形成するための材料(形成材料)は、第1金属材料を含む。この第1金属材料は、銅系の金属材料である。この第1金属材料中の銅の含有量としては、99.0質量%以上であってもよく、99.5質量%以上であってもよく、99.9%以上であってもよい。
【0051】
形成材料は、第1金属材料に加えて、硫黄、窒素及び炭素を含有してもよい。形成材料中の硫黄、窒素及び炭素の各含有量は、上述した範囲内に設定し得る。
【0052】
銅系めっき層25中に硫黄、窒素及び炭素を上記各含有量に設定するために、めっき液中の第1有機化合物、第2有機化合物、第3有機化合物の含有量はそれぞれ以下の通り調整するとよい。
めっき液中の第1有機化合物の含有量の下限としては、0.0001質量%であってもよく、0.0005質量%であってもよく、0.001質量%であってもよい。めっき液中の第1有機化合物の含有量の上限としては、1質量%であってもよく、0.1質量%であってもよく、0.05質量%であってもよい。
めっき液中の第2有機化合物の含有量の下限としては、0.004質量%であってもよく、0.02質量%であってもよく、0.04質量%であってもよい。めっき液中の第2有機化合物の含有量の上限としては、5質量%であってもよく、1質量%であってもよく、0.5質量%であってもよい。
めっき液中の第3有機化合物の含有量の下限としては、0.0001質量%であってもよく、0.0005質量%であってもよく、0.001質量%であってもよい。めっき液中の第3有機化合物の含有量の上限としては、0.5質量%であってもよく、0.1質量%であってもよく、0.005質量%であってもよい。
【0053】
めっき液中の第1有機化合物、第2有機化合物、第3有機化合物の含有量をそれぞれ上記の通り調整することにより、めっき液中の硫黄、窒素及び炭素の含有量を、それぞれ硫黄0.00005質量%以上0.005質量%以下、窒素0.000001質量%以上0.001質量%以下、炭素の含有量が0.01質量%以上0.5質量%以下に調整してもよい。
【0054】
このような形成材料を、後述する当該フレキシブルプリント配線板の製造方法で用いるめっき液として用いることができる。
【0055】
銅系めっき層25における銅結晶粒の平均直径の下限としては、0.05μmであってもよく、0.1μmであってもよく、0.5μmであってもよい。銅結晶粒の平均直径の上限としては、100μmであってもよく、50μmであってもよく、10μmであってもよい。銅結晶粒の平均直径が0.05μmに満たない場合、より確実に、電気抵抗率を上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。一方、銅結晶粒の平均直径が100μmを超える場合にも、より確実に、電気抵抗率を上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。ここで、平均直径は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0056】
銅結晶粒の平均直径は、形成材料中の銅成分以外の成分の添加、例えば上記有機化合物の種類、その添加量、電気めっきにおける電気密度等を変更することによって、適宜調整し得る。
【0057】
<利点>
フレキシブルプリント配線板10は、配線13の平均線幅L及び平均間隔Sがそれぞれ上記範囲内であることで、小型化が図られる。加えて、配線13が銅系めっき層25を有することで、同じ寸法で比較して配線の電気抵抗を大きくすることが可能になる。従って、フレキシブルプリント配線板10は、小型化を図りつつ種々の設計規格に適合可能である。
【0058】
[フレキシブルプリント配線板の製造方法]
次に、本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法について、フレキシブルプリント配線板10を用いて説明する。
【0059】
フレキシブルプリント配線板10の製造方法は、レジストパターンR1を用い、めっき液中にてベースフィルム3の少なくとも一方の面側(表面側)に導電性下地層Mが積層されたベースフィルムの導電性下地層M上に電気めっきすることにより、銅系めっき層25を形成するめっき工程と、レジストパターンR1及び導電性下地層Mにおける銅系めっき層25の非積層領域を除去する除去工程とを備える。めっき液が硫黄、窒素及び炭素を含有する。めっき液における硫黄の含有量が0.00005質量%以上0.005質量%以下であり、窒素の含有量が0.000001質量%以上0.001質量%以下であり、炭素の含有量が0.01質量%以上0.5質量%以下である。
【0060】
<導電性下地層>
導電性下地層Mは、ベースフィルム3の表面側に積層される。この導電性下地層Mは、予めベースフィルム3の表面側の全面に積層されたものを用いる。導電性下地層Mの一部が、第1導電性下地層23となる。
【0061】
導電性下地層Mの形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金等が挙げられる。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、導電性下地層Mが、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層231)を含んでもよい。さらに、導電性下地層Mが、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層231)を含むことがより好ましい。また、導電性下地層Mが、この第1層231の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層232)を含むことがより好ましい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0062】
例えば、第1層231の平均厚みの下限としては、1nmであってもよく、2nmであってもよい。第1層231の平均厚みの上限としては、15nmであってもよく、8nmであってもよい。平均厚みが1nmに満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、平均厚みが15nmを超える場合、第1層231が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層231は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0063】
例えば、第2層232の平均厚みの下限としては、0.1μmであってもよく、0.2μmであってもよい。第2層232の平均厚みの上限としては、2μmであってもよく、1μmであってもよい。平均厚みが0.1μmに満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、平均厚みが2μmを超える場合、第2層232が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層232は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されることが好ましく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、導電性下地層Mの最上面側に無電解銅めっき層が配置されることが好ましく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
【0064】
<めっき工程>
本工程は、導電性下地層Mの表面にレジストパターンR1を形成するレジストパターン形成工程と、形成されたレジストパターンR1を用い、導電性下地層M上に第1金属材料を電気めっきすることにより、銅系めっき層25を形成する銅系めっき層形成工程とを有する。
【0065】
(レジストパターン形成工程)
本工程では、
図3に示すようにレジストパターンR1を導電性下地層Mの表面に形成する。具体的には導電性下地層Mの表面に感光性フィルム等のレジスト膜を積層し、積層されたレジスト膜を露光及び現像することにより、所定のパターンを有するレジストパターンR1を形成する。レジスト膜の積層方法としては、例えばレジスト組成物を導電性下地層Mの表面に塗工する方法、ドライフィルムフォトレジストを導電性下地層Mの表面に積層する方法等が挙げられる。レジスト膜の露光及び現像条件は、用いるレジスト組成物等に応じて適宜調節可能である。レジストパターンR1の開口部は、形成すべき銅系めっき層25に応じて適宜設定され得る。
【0066】
(銅系めっき層形成工程)
本工程では、めっき液が、硫黄、窒素及び炭素を含有する。めっき液における硫黄の含有量が0.00005質量%以上0.005質量%以下であり、窒素の含有量が0.000001質量%以上0.001質量%以下であり、炭素の含有量が0.01質量%以上0.5質量%以下である。このようなめっき液として、上述した形成材料を含有するものを用いることができる。
【0067】
本工程では、例えばめっき液として第1金属材料、例えば銅塩等の銅供給源と、第1有機化合物、第2有機化合物及び第3有機化合物の混合物とを硫黄、窒素及び炭素の含有量が範囲内になるように配合して用いる。本工程では、このめっき液を用い、導電性下地層Mに通電しつつ第1金属材料を電気めっきすることにより、
図4に示すように導電性下地層MにおけるレジストパターンR1の非積層領域に銅系めっき層25を形成する。
【0068】
めっき液中の硫黄、窒素及び炭素の各含有量を各含有量に設定するために、めっき液中の第1有機化合物の含有量の下限としては、上述のように、0.0001質量%であってもよく、0.0005質量%であってもよく、0.001質量%であってもよい。めっき液中の第1有機化合物の含有量の上限としては、上述のように、1質量%であってもよく、0.1質量%であってもよく、0.05質量%であってもよい。
【0069】
めっき液中に硫黄、窒素及び炭素の各含有量を上記各含有量に設定するために、めっき液中の第2有機化合物の含有量の下限としては、上述のように、0.004質量%であってもよく、0.02質量%であってもよく、0.04質量%であってもよい。
めっき液中の第2有機化合物の含有量の上限としては、上述のように、5質量%であってもよく、1質量%であってもよく、0.5質量%がさらに好ましい。
【0070】
めっき液中に硫黄、窒素及び炭素の各含有量を上記各含有量に設定するために、めっき液中の第3有機化合物の含有量の下限としては、0.0001質量%であってもよく、0.0005質量%であってもよく、0.001質量%であってもよい。めっき液中の第3有機化合物の含有量の上限としては、0.5質量%であってもよく、0.1質量%であってもよく、0.005質量%であってもよい。
【0071】
例えば、本工程の電気めっきにおいて、電流密度を調整することで、銅系めっき層の電気抵抗率をより詳細に調整することができる。この電流密度は、上述しためっき液中の上記有機化合物の含有量等に応じて適宜設定され得る。また、この電流密度を調整することで、上述したように銅系めっき層25における銅結晶粒の平均直径を調整することができる。
【0072】
<除去工程>
本工程は、導電性下地層MからレジストパターンR1を剥離する剥離工程と、導電性下地層Mにおける銅系めっき層25の非積層領域(不要領域)をエッチングするエッチング工程とを有する。
【0073】
(剥離工程)
本工程では、導電性下地層MからレジストパターンR1を剥離する。この剥離液としては、公知のものを用いることができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性水溶液、アルキルベンゼンスルホン酸等の有機酸系溶液、エタノールアミン等の有機アミン類と極性溶剤との混合液等が挙げられる。
【0074】
(エッチング工程)
本工程では、銅系めっき層25をマスクとして導電性下地層Mをエッチングする。このエッチングにより、
図1に示すようにベースフィルム3に第1導電性下地層23及び銅系めっき層25が積層された配線13が得られる。エッチングには導電性下地層Mを形成する金属を浸食するエッチング液が使用される。当該製造方法においては、このように、いわゆるセミアディティブ法が好適に用いられる。
【0075】
<利点>
フレキシブルプリント配線板10の製造方法によれば、上述したフレキシブルプリント配線板10を製造することができる。すなわち、小型化を図りつつ種々の設計規格に適合可能なフレキシブルプリント配線板10を製造することができる。
【0076】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0077】
実施形態では、単一のベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面に積層された配線層を有するフレキシブルプリント配線板について説明したが、当該フレキシブルプリント配線板は、単一のベースフィルムの両面に配線層が積層されたものであってもよい。また、当該フレキシブルプリント配線板は、複数のベースフィルムを有し、各ベースフィルムが一方の面又は両面に複数の配線層を有する多層プリント配線板であってもよい。この場合、ランド部を介して両面の配線層が導通され得る。
【0078】
実施形態では、ベースフィルムに1の配線層が積層される場合について説明したが、ベースフィルムに複数の配線層が互いに間隔を空けて積層されてもよい。
【0079】
実施形態では、配線層が上記特定の銅系めっき層を有する配線を含む場合について説明したが、配線層がこのような配線に加えて、それ以外の配線も含むような態様も採用し得る。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
<試料の作製>
(実施例1~4、比較例1~3)
ベースフィルムの一面側(表面側)に導電性下地層が積層されたフィルム(ユーピレックス(登録商標)-S、宇部興産社製)を用いた。銅系めっき層を形成するための材料として、硫酸銅75g/L、硫酸190g/Lに加え、SPS、PEG及びジアリルアンモニウムと二酸化硫黄との共重合体を表1に示す配合量で混合しためっき液を用いた。表1において、「-」は、添加されていないことを示す。これらフィルム及びめっき液を用い、フィルムの導電性下地層上に、上述した
図1に示すような配線を有する配線層を形成した。具体的には、上述したレジストパターンを用い、導電性下地層に導通しつつ導電性下地層上に、めっき液を用いて電気めっき槽内で、表1に示す各電流密度で電気めっきすることにより、銅系めっき層を形成した。その後、上述したように除去工程を行って、平均線幅が15μm、平均間隔が15μm、平均厚みが15μmの配線を有する実施例1~4、比較例1~3の配線板を作製した。得られた各配線板における銅系めっき層中の硫黄、窒素及び炭素の含有量(濃度)、銅結晶粒の平均直径、及び銅系めっき層の電気抵抗率を以下のようにして測定した。
【0082】
<硫黄、窒素、炭素の含有量の測定>
銅系めっき層を引きはがして採取し下記の方法で測定した。
(硫黄と炭素の含有量)
銅系めっき層中の硫黄と炭素の含有量は高周波燃焼―赤外線吸収法に基づき測定した。装置は、装置型番:CSLS600(LECO社製)を使用した。硫黄の含有量は、JISH1070(2013)の測定方法に従って測定した。炭素の含有量は、JISZ2615(2015)の金属材料の炭素定量方法通則に従ってJISG1211-3(2018)に基づき測定した。
【0083】
(窒素の含有量)
銅系めっき層中の窒素の含有量を不活性ガス搬送融解―熱伝導度法によって測定した。装置は、装置型番:TC600(LECO社製)を使用した。窒素の含有量の測定は、JISG1228(2006)中の附属書4に基づいて実施した。
【0084】
(銅結晶粒の平均直径)
各配線板における銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径を、上述したようにFIB装置を用いて切り出した断面を観察することによって測定した。
【0085】
(電気抵抗率)
実施例1~4、比較例1~3の各配線板の銅系めっき層について、四端子法により、電気抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
硫黄の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、窒素の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、炭素の含有量が0.001質量%以上0.01質量%以下である実施例1~4では、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mを超えた。一方で、硫黄、窒素、炭素がいずれも0.00001質量%である比較例1、2、3では、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・m以下であった。
【符号の説明】
【0088】
10 フレキシブルプリント配線板
3 ベースフィルム
11 配線層
13 配線
23 第1導電性下地層
231 第1層
232 第2層
25 銅系めっき層
L 平均線幅
S 平均間隔
M 導電性下地層
R1 レジストパターン