(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】抗体-ALK5阻害剤コンジュゲートおよびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240301BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20240301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240301BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240301BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240301BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240301BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K31/444
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021575236
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 US2019040964
(87)【国際公開番号】W WO2020256751
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/037978
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521011145
【氏名又は名称】シンシス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】トーマス-カーヤット,ドリー エー.
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/115218(WO,A1)
【文献】米国特許第08871744(US,B1)
【文献】特表2006-502164(JP,A)
【文献】特表2007-514652(JP,A)
【文献】Nature Communications,2017年,Vol.8,Article 1747
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞表面分子に結合する抗体または抗原結合性断片に作動可能に連結されたALK5阻害剤を含む抗体-ALK5阻害剤コンジュゲート(ADC)を含む、チェックポイント阻害剤と組み合わせて癌の治療に用いられる、医薬組成物
であって、
前記ALK5阻害剤が、下記構造:
を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記ALK5阻害剤が、下記構造:
を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ALK5阻害剤が、下記構造:
を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ALK5阻害剤が、下記構造:
を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ALK5阻害剤が、下記構造:
を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ALK5阻害剤が、非切断可能リンカーまたは切断可能リンカーを介して、前記抗体また
は抗原結合性断片に連結されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート、マレイミドカプロイル、またはメルカプトアセトアミドカプロイルリンカーである非切断可能リンカーを介して、前記ALK5阻害剤が、前記抗体または抗原結合性断片に連結されている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ジペプチドリンカー、ジスルフィドリンカー、またはヒドラゾンリンカーである切断可能リンカーを介して、前記ALK5阻害剤が、前記抗体または抗原結合性断片に連結されている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記リンカーが、プロテアーゼ感受性バリン-シトルリンジペプチドリンカー、グルタチオン感受性ジスルフィドリンカー、または酸感受性ジスルフィドリンカーである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ALK5阻害剤が、プロテアーゼ感受性リンカーを介して前記抗体もしくは抗原結合性断片に連結されている
、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ALK5阻害剤が、バリン-シトルリンジペプチドリンカーを介して前記抗体もしくは抗原結合性断片に連結されている
、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ALK5阻害剤が、前記抗体もしくは抗原結合性断片上の1つもしくは複数のシステイン残基、または、前記抗体もしくは抗原結合性断片上の1つもしくは複数のリジン残基を介してコンジュゲートされ、前記ALK5阻害剤が、リンカーを介してコンジュゲートされていてもよい、請求項1~
11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、2~8の範囲である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体が、ヒトまたはヒト化である、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗原結合性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)
2、またはFv断片である、請求項1~
15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗原結合性断片が、ヒトまたはヒト化抗体の抗原結合性断片である、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記T細胞表面分子が、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD25、CD28、CD70、CD71、CD103、CD184、Tim3、LAG3、CTLA4、またはPD1である、請求項1~
17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記T細胞表面分子が、エンドソームを通して再循環することが可能なT細胞表面分子である、請求項1~
18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記T細胞表面分子が、CD5またはCD7である、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記T細胞表面分子が、CD5である、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記チェックポイント阻害剤が、抗体または抗原結合性断片を含む、請求項1~
21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記チェックポイント阻害剤が、PD1、PDL1、CTLA4、TIGIT、LAG3、OX40、CD40、もしくはVISTAまたはそれらの組み合わせを標的
とする、請求項1~
22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記チェックポイント阻害剤が、
(a)PD1を標的
とし、前記チェックポイント阻害剤がペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、またはドスタルリマブであ
り;
(b)PDL1を標的
とし、前記チェックポイント阻害剤がアテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブであ
り;、
(c)CTLA4を標的
とし、前記チェックポイント阻害剤がイピリムマブであ
り;
(d)TIGITを標的
とし、前記チェックポイント阻害剤が、エチギリマブ、チラゴルマブまたはAB154であ
り;
(e)LAG3を標的
とし、前記チェックポイント阻害剤が、LAG525、Sym022、レラトリマブまたはTSR-033であ
り;
(f)OX40を標的
とし、前記チェックポイント阻害剤が、MEDI6469、PF-04518600またはBMS 986178であ
り;
(g)CD40を標的
とし、前記チェックポイント阻害剤が、セリクレルマブ、CP-870,893またはAPX005Mであ
り;または、
(h)VISTAを標的
とし、前記チェックポイント阻害剤が、HMBD-002であ
る、
請求項
23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記チェックポイント阻害剤が、PD1を標的とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記チェックポイント阻害剤が、PDL1を標的とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、またはドスタルリマブである、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記チェックポイント阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
本出願は、2018年7月9日に出願されたPCT出願の米国特許出願公開第2018/041291号明細書、および2019年6月19日に出願されたPCT出願の米国特許出願公開第2019/037978号明細書の優先権の利益を主張し、その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
2.背景
サイトカインのトランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-β)ファミリーのメンバーは、正常な組織の発達の間ならびに疾患状態の両方で、多種多様の生物学的プロセスを調節する、多機能性タンパク質である。TGF-βファミリーメンバーは、炎症、創傷治癒、細胞外マトリックスの蓄積、骨形成、組織の発達、細胞分化、心臓弁リモデリング、組織線維化、および腫瘍進行などに関与している。(Barnard et al., 1990, Biochim Biophys Acta. 1032:79-87、Sporn et al., 1992, J Cell Biol 119:1017-1021、Yingling et al., 2004, Nature Reviews, 3:1011-1022、Janssens et al., 2005, Endocr Rev., 26(6):743-74)。3つの哺乳動物イソ型が、これまでに同定されている:TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3(Massague, 1990, Annu Rev Cell Biol 6:597-641)。トランスフォーミング増殖因子スーパーファミリーの他のメンバーとして、アクチビン、インヒビン、骨形態形成タンパク質、増殖および分化因子、ならびにミュラー阻害物質が挙げられる。
【0003】
TGF-βΙは、2つの高度に保存された単一の膜貫通セリン/トレオニンキナーゼ受容体、I型(ALK5)およびII型のTGF-β受容体を介して、シグナルを変換する。リガンド誘導性結合およびオリゴマー化が起こると、II型受容体は、ALK5のGS領域において、セリン/トレオニン残基をリン酸化し、これにより、ALK5の活性化、および新規のSMAD導入部位の生成が生じる。SMADは、細胞外環境から細胞の核へのTGF-βのシグナルを変換するのに特化する、細胞内タンパク質である。活性化すると、ALK5は、C末端SSXSモチーフで、Smad2およびSmad3をリン酸化するので、受容体からのそれらの解離およびSmad4との複合体の形成をもたらす。次いで、Smad複合体は、核内に移動し、細胞特異的DNA結合補因子と集合して、細胞の成長、分化、および発生を調節する遺伝子の発現を修飾する。
【0004】
アクチビンは、TGF-βと同様の方法で、シグナルを変換する。アクチビンは、セリン/トレオニンキナーゼ、アクチビンII型受容体(ActRIIB)と結合し、活性化したII型受容体は、ALK4のGS領域において、セリン/トレオニン残基を高リン酸化する(hyperphosphorylate)。活性化したALK4は、順次、Smad2およびSmad3をリン酸化する。結果としてSmad4とのヘテロSmad複合体を形成することにより、遺伝子転写をアクチビンに誘導された遺伝子転写の調節が生ずる。
【0005】
TGF-βシグナル伝達は、Tリンパ球およびBリンパ球、NK細胞、ならびに樹状細胞のような抗原提示細胞を含む、先天性および適応性免疫細胞の両方を調節することにより、免疫ホメオスタシスを維持するのに必須である。TGF-βは、一般に、胸腺でのT細胞の発生、ならびに末梢性寛容を維持するのに必須の役割を担う、免疫抑制性サイトカインとみなされる。TGF-βは、CD4+およびCD8+T細胞の両方の増殖、サイトカインの産生、細胞毒性、ならびにTヘルパーサブセットへの分化を阻害する(Li et al., 2008, Cell 134:392-404)。TGF-βはまた、胸腺で生じる天然の制御性T細胞(nTreg)の発生、ならびに、炎症およびがんのような様々な疾患に応答して末梢で発生する誘導性Treg(iTreg)において重要な役割を担う(Tran et al., 2012, J Mol Cell Bio 4:29-37, 2012)。nTregは、典型的にはCD25+ FoxP3+であり、末梢性T細胞寛容を維持する助けとなるT細胞の活性化を積極的に抑制する、少ない割合のCD4+T細胞サブセットである。TGF-βは、末梢におけるnTregの生存および膨張に重要である(Marie et al., 2005, J Exp Med 201:1061-67)。適切な炎症性条件の下、TGF-βは、ナイーブCD4+T細胞を、FoxP3+ iTregに転換して、局所的な組織常在T細胞を抑制する。高レベルのiTregは、多くの場合、腫瘍自身の中で、T細胞媒介性腫瘍クリアランスを防ぐことが見出されている(Whiteside, 2014, Expert Opin Biol Ther 14:1411-25)。
【0006】
一般的に、高レベルのTGF-β発現は、臨床予後を不良にするのに関連している。多くの場合、腫瘍は、TGF-β経路を組み入れ、それを利用してT細胞媒介性腫瘍クリアランスを避ける(Yang et al., Trends Immunol 31:220-7, 2010、Tu et al., Cytokine Growth Factor Rev 25:423-35, 2014)。これは、2通りで起こる。1つ目は、TGF-βが、CD4+およびCD8+T細胞の膨張、サイトカインの産生、ならびに腫瘍細胞死を直接的に阻害することである。2つ目は、TGF-βが、nTregおよびiTregの生存および/または転換にそれぞれ重要であり、これもまた、免疫媒介性腫瘍クリアランスを抑制することでもある。多数の前臨床マウスモデルにおいて、TGF-βの中和により、T細胞媒介性腫瘍クリアランスの増加に起因して腫瘍搭載が低下することが実証されている。重要なことには、優性ネガティブTGF-βRIIの発現を介するか、または可溶性TGF-β受容体を用いた、T細胞におけるTGF-βシグナル伝達の阻害は、in vivoでの効果的な免疫媒介性腫瘍クリアランスを回復するのに十分である。Gorelik et al., 2001, Nat Med 7:1118-22、Thomas et al., 2005, Cancer Cell 8:369-80。
【0007】
免疫系に対するその効果以外に、TGF-βシグナル伝達は、腫瘍発生において、重要であるが複雑な役割を担う。前臨床研究では、TGF-βが、腫瘍自身に対する逆説的な効果、および周囲の間質細胞に対する交絡効果を有することが示されている。がん進行の初期段階では、TGF-βは、細胞周期メディエーターの調節を介して、腫瘍の増殖および膨張を阻害する。しかし、後期段階では、TGF-βは、その増殖阻害特性を喪失し、上皮-間葉移行(EMT)の誘導を介して、ならびに、間質性線維芽細胞、血管形成、および細胞外マトリックス(ECM)での影響を介して、腫瘍転移を促進する(Connolly et al., 2012, Int J Bio 8:964-78)。誤った段階で送達された場合、TGF-βシグナル伝達の広域スペクトルの阻害には、腫瘍転移を促進する危険性、および/または、非腫瘍性間質細胞集団を阻害し、腫瘍進行を間接的に悪化させる危険性がある(Cui et al., 1996, Cell 86:531-、Siegel et al., 2003, PNAS 100:8430-35、Connolly et al., 2011, Cancer Res 71:2339-49、Achyut et al., 2013, PLOS Genetics 9:1-15)。TGF-β阻害剤により、意図した増殖阻害効果の代わりに、腫瘍は、より侵襲的になり、転移性になる可能性がある。
【0008】
腫瘍自身に対する逆説的な効果、およびTGF-β受容体の広範な発現にもかかわらず、がん治療としてのTGF-β経路の阻害は、長い間注目されている。阻害剤は、TGF-β中和抗体、TGF-β2アンチセンスRNA、および小分子ATP競合ALK5キナーゼ阻害剤を含む。開発されている古典的なALK5阻害剤のいくつかは、ピラゾール系、イミダゾール系、およびトリアゾール系である(Bonafoux et al., 2009, Expert Opin Ther Patents 19:1759-69、Ling et al., 2011, Current Pharma Biotech 12:2190-2202)。多くのALK5阻害剤は、in vitro細胞ベースアッセイ、ならびにin vivoマウス異種移植および同系腫瘍モデルの両方で試験されており、有意な効能が実証されている(Neuzillet et al., 2015, Pharm & Therapeutics 147:22-31)。しかし、TGF-β受容体が偏在的に発現されるので、宿主毒性の問題、および腫瘍の増殖を意図せず促進する恐れから、TGF-β阻害剤の多く、とりわけALK5阻害剤は、前臨床の発見段階のままである。例えば、ラットにおける前臨床の毒性学研究において、2つの異なるシリーズのALK5阻害剤では、出血、炎症、変性、および弁の間質細胞の増殖を特徴とする心臓弁の病変が認められた(Anderton et al., 2011, Tox Path 39:916-24)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、心臓組織で観察されるもののような宿主組織の毒性を最小限にしながら、TGF-βシグナル伝達の阻害が治療的に有用である細胞種に対してALK5阻害剤を標的とする必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
3.概要
標的とする宿主毒性を避け、ならびにALK5阻害剤療法による腫瘍進行の意図しない悪化を防ぐために、発明者は、治療利益をもたらすこれら細胞にのみ化合物を指向させるための新規のアプローチを開発した。
【0011】
がんの処置のために、本アプローチは、ALK5阻害剤をT細胞区画に抗体を介して指向させて、T細胞媒介性腫瘍クリアランスを促進し、全身毒性をもたらすことなく長期的な緩解を確実に行うことを包含する。理論に拘束されるものではないが、T細胞内のTGF-βシグナル伝達の阻害が、T細胞媒介性クリアランスを直接向上させるだけでなく、T細胞を誘導性Tregに転換することを阻害し、腫瘍内の天然のTregの生存率を下げると考えられる。ゆえに、T細胞内のTGF-βシグナル伝達の阻害は、CD4+およびCD8+T細胞の活性を回復させるだけでなく、T細胞でのTreg「ブレーキ」を除去して、免疫系を効果的に再連結させる。より重要なことには、T細胞内のみのTGF-βシグナル伝達の阻害は、腫瘍の観点ならびに宿主組織の毒性の両方から、広域スペクトルのTGF-β阻害より安全である。
【0012】
したがって、本開示は、薬物がALK5阻害剤である、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。ADCの抗体成分は、T細胞表面分子(例えば、ヒトT細胞表面分子)に結合する抗体または抗原結合性断片であり得る。第5.2節は、本開示のADCで使用することができる、例示的な抗体成分を記載する。いくつかの実施形態において、ALK5阻害剤は、イミダゾール-ベンゾジオキソール化合物、イミダゾール-キノキサリン化合物、ピラゾール-ピロロ化合物、またはチアゾール系化合物である。例示的なALK5阻害剤は、第5.3節、および表1~3に記載される。
【0013】
ALK5阻害剤は、抗体成分と直接、コンジュゲート化することができるか、またはリンカーにより抗体成分に連結することができる。リンカーは、非切断可能リンカーであるか、または好ましくは、切断可能リンカーであり得る。例示的な非切断可能リンカーおよび切断可能リンカーは、第5.4節に記載されている。抗体または抗原結合性断片ごとに結合したALK5阻害剤分子の平均数は、様々であり得、一般に、抗体または抗原結合性断片ごとに2から8個のALK5阻害剤分子の範囲である。薬物搭載は、第5.5節に詳述されている。
【0014】
本開示は、本開示のADCを含む、医薬組成物をさらに提供する。本開示のADCを含む、医薬組成物を製剤化するのに使用することができる、例示的な医薬添加剤は、第5.6節に記載されている。
【0015】
本開示は、本開示のADCまたは本開示の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することにより、がんを処置する方法をさらに提供する。本開示のADCおよび医薬組成物は、単独療法として、または併用療法の一部として、例えば免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与することができる。本開示のADCおよび医薬組成物で処置することができる例示的ながん、ならびに例示的な併用療法は、第5.7節に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
4.図面の簡単な説明
【
図1】CD4
+およびCD8
+T細胞でのTGF-βの効果を示す。腫瘍進行の間、腫瘍およびT細胞自身の両方に由来し得るTGF-βは、サイトカイン産生、増殖、およびTh分化のようなCD4
+T細胞の機能を阻害する。同時に、TGF-βはまた、細胞毒性CD8
+T細胞中のグランザイムおよびパーフォリンの発現を阻害することにより、腫瘍死を阻害する。CD4+およびCD8+T細胞集団の両方を阻害することで、T細胞媒介性腫瘍クリアランスを完全に抑制する。
【
図2】腫瘍進行の間のT
reg細胞でのTGF-βの効果を示す。腫瘍進行の間、nT
regおよびiT
reg細胞は、典型的には、腫瘍の中で見出され、in situのT細胞媒介性機能を制御する。TGF-βは、nT
reg細胞生存率、およびiT
reg細胞の転換を促進して、T細胞媒介性腫瘍クリアランスを抑制する。腫瘍部位でのT
reg細胞の増加により、腫瘍に浸潤するT細胞がまた腫瘍を取り除くことも防ぐことが確実となる。
【
図3】CD4
+およびCD8
+T細胞での本開示のADCの作用機序を示す。TGF-βシグナル伝達のT細胞標的化阻害は、CD4
+T細胞の活性、およびCD8
+T細胞媒介性腫瘍死を回復する。
【
図4】T
reg細胞での本開示のADCの作用機序を示す。TGF-βシグナル伝達のT細胞標的化阻害はまた、in situの免疫媒介性腫瘍クリアランスのT
reg媒介性抑制を遮断する。
【
図5A-B】化合物A~Bによる、HEK293T細胞のTGF-β誘導性ルシフェラーゼ活性の阻害を示す。
図5A:化合物A、
図5B:化合物B。
【
図5C-D】化合物C~Dによる、HEK293T細胞のTGF-β誘導性ルシフェラーゼ活性の阻害を示す。
図5C:化合物C、
図5D:化合物D
【
図6A】化合物A~Dに対するMTS増殖アッセイデータを示す。化合物A~Cは、TGF-β処置したCDC4+T細胞における増殖を回復する。
図6A:化合物A~Dに対するデータ。
図6Aにおいて、「TGF-βなし」の上の「A」、「B」、「C」、および「D」と標識したバーは、TGF-βを含まずに100nMで化合物を使用して実施した実験の結果を示す。
図6B:化合物Bに対するデータ、
図6C:化合物Cに対するデータ。
【
図6B-C】化合物A~Dに対するMTS増殖アッセイデータを示す。化合物A~Cは、TGF-β処置したCDC4+T細胞における増殖を回復する。
図6B:化合物Bに対するデータ、
図6C:化合物Cに対するデータ。
【
図7】本開示の例示的なADC(ADC2)に対するLC-MSデータを示す。
図7A:ADC重鎖に対するLC-MSデータ、
図7B:ADC軽鎖に対するLC-MSデータ。
【
図8】SECにより精製した、S-4FB/Ab比を6で調製したADC2のクロマトグラムである。精製したADC2のSEC解析では、凝集が5%未満であることが示されている。
【
図9A-B】本開示の例示的な抗体(抗トランスフェリン受容体抗体R17217)が、初代マウスCD4
+T細胞で、抗体の標的であるトランスフェリン受容体(TfR)の内在化を誘導することを示す。
図9A:抗トランスフェリン受容体抗体を含まない対照、
図9B:抗トランスフェリン受容体抗体での15分のインキュベーション。
【
図9C-D】本開示の例示的な抗体(抗トランスフェリン受容体抗体R17217)が、初代マウスCD4
+T細胞で、抗体の標的であるトランスフェリン受容体(TfR)の内在化を誘導することを示す。
図9C:抗トランスフェリン受容体抗体での30分のインキュベーション、
図9D:抗トランスフェリン受容体抗体での60分のインキュベーション。
【
図9E-F】本開示の例示的な抗体(抗トランスフェリン受容体抗体R17217)が、初代マウスCD4
+T細胞で、抗体の標的であるトランスフェリン受容体(TfR)の内在化を誘導することを示す。
図9E:抗トランスフェリン受容体抗体での180分のインキュベーション、
図9F:3時間の時間経過にわたる平均蛍光強度(MFI)。
【
図10】本開示の例示的なADC(ADC1)による、マウスCTLL2細胞での増殖のTGF-β媒介性阻害の逆転を示す。
【
図11】本開示の例示的なADC(ADC1)による、TGF-βで活性化した初代CD8+T細胞でのグランザイムB発現の抑制解除を示す。ADC1は、遊離ALK5阻害剤に匹敵してグランザイムB発現を部分的に回復する。
【
図12】本開示の例示的なADC(ADC1)が、100mMの遊離ALK5阻害剤と同様に、iTreg生成を低下させることを示す。
【
図14】T3A #2~#5の存在下で、活性化したマウスCD3+T細胞の36時間のインキュベーションに続いて、グランザイム(GzmB)を発現するCD8+T細胞のレベルを示す。
【
図15】T3A #2~#5の存在下で、活性化したマウスCD3+T細胞の36時間のインキュベーションに続く、分泌したIL2のレベルを示す。
【
図16】T3A #2~#5の存在下で、活性化したマウスCD3+T細胞の36時間のインキュベーションに続く、分泌したIFN-γのレベルを示す。
【
図17】T3A #2~#5の存在下で、活性化したマウスCD3+T細胞の72時間のインキュベーションに続く、T細胞増殖の量を示す。
【
図18】CD7の活性化したヒト初代CD3+T細胞への内在化を示す。
【
図19】CMV抗原、ならびに(i)1nMのTGF-β(「+」)、(ii)1ng/mlでの1nMのTGF-βおよびT3A #5(「T3A」)、(iii)1ng/mlでの1nMのTGF-βおよびペムブロリズマブ(「ICI」)、(iv)1ng/mlでの1nMのTGF-β、T3A #5、および1ng/mlでのペムブロリズマブ(「T3A ICI」)、または(v)1nMのTGF-βおよびアイソタイプコントロール抗体(「-対照」)の存在下で培養されたCMV応答性PBMCから分泌されたIFN-γのレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
5.詳細な説明
本開示は、がんを処置するのに有用な抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、直接的に、またはリンカーを通してALK5阻害剤と共有結合した抗体成分を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。本開示のADCの概説は、第5.1節に表す。ADCの抗体成分は、完全な抗体またはその断片であり得る。本開示のADCで使用することができる抗体は、第5.2節に詳述されている。本開示のADCで使用することができるALK5阻害剤は、第5.3節に詳述されている。本開示のADCは、典型的には、抗体とALK5阻害剤の間にリンカーを含有する。本開示のADCで使用することができる例示的なリンカーは、第5.4節に詳述されている。本開示のADCは、抗体当たり様々な数のALK5阻害剤部分を含有することができる。薬物搭載は、第5.5節に詳述されている。本開示は、本開示のADCを含む、医薬製剤をさらに提供する。ADCを含む医薬製剤は、第5.6節に記載されている。本開示は、本開示のADCを使用して様々ながんを処置する方法をさらに提供する。がんの処置のために単独療法として、または併用療法の一部として本開示のADCを使用する方法は、第5.7節に記載されている。
【0018】
5.1.抗体薬物コンジュゲート
本開示のADCは、一般に、共有結合が抗体の標的への結合に干渉しないように、典型的にはリンカーを介して、抗体と共有結合したALK5阻害剤で構成される。
【0019】
薬物を抗体にコンジュゲート化するための技術は、当該技術分野に周知されている(例えば、Hellstrom et al., Controlled Drug Delivery, 2nd Ed., at pp. 623-53(Robinson et al., eds., 1987)、Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58、Dubowchik et al., 1999, Pharmacology and Therapeutics 83:67-123、およびZhou, 2017, Biomedicines 5(4):E64を参照)。ALK5阻害剤は、好ましくは、部位に特異的なコンジュゲート化を介して、本開示のADC中の抗体成分と結合する。例えば、ALK5阻害剤は、1つもしくは複数の天然もしくは設計されたシステイン、リジン、もしくはグルタミン残基、1つもしくは複数の非天然アミノ酸(例えば、p-アセチルフェニルアラニン(pAcF)、p-アジドメチル-L-フェニルアラニン(pAMF)、もしくはセレノシステイン(Sec))、1つもしくは複数のグリカン(例えば、フコース、6-チオフコース、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、もしくはシアル酸(SA))、または、4~6個のアミノ酸の1つもしくは複数の短いペプチドタグを介して、抗体成分とコンジュゲート化することができる。例えば、Zhou, 2017, Biomedicines 5(4):E64を参照し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
一例において、抗体またはその断片は、別のタンパク質(またはその部分、例えば、タンパク質の少なくとも10個、20個、または50個のアミノ酸部分)のアミノ酸配列に対して、共有結合(例えば、ペプチド結合)を介して、抗体のN末端もしくはC末端を通して、または内部で、融合させる。抗体、またはその断片は、他のタンパク質と、抗体の定常ドメインのN末端で連結することができる。組換えDNA手順は、このような融合体を作製するのに使用することができ、例えば、国際公開第86/01533号パンフレット、および欧州特許出願公開第0392745号明細書に記載されている。別の例において、エフェクター分子は、in vivo半減期を増加させることができる、および/または、上皮性関門を通過した、免疫系への抗体の送達を向上することができる。この種の好適なエフェクター分子の例として、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、またはアルブミン結合化合物が挙げられ、例えば、PCT公開の国際公開第2005/117984号パンフレットに記載されているものである。
【0021】
代謝プロセスまたは代謝反応は、酵素プロセス、例えばADCのペプチドリンカーのタンパク分解性切断、または、官能基、例えばヒドラゾン、エステル、もしくはアミドの加水分解であり得る。細胞内代謝物として、限定されないが、細胞への侵入、拡散、取込み、または輸送の後に、細胞内切断される、抗体および遊離薬物が挙げられる。
【0022】
用語「細胞内で切断される」および「細胞内切断」とは、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の細胞内での代謝プロセスまたは代謝反応を指し、これにより、薬物部分(D)と抗体(Ab)との間の共有結合、すなわちリンカーが破壊され、その結果、細胞内に抗体から解離した遊離薬物をもたらす。ゆえに、ADCの切断した部分は、細胞内代謝物である。
【0023】
5.2.抗体成分
本開示は、抗体成分がT細胞表面分子に結合する、抗体薬物コンジュゲートを提供する。別段指示されない限り、用語「抗体」(Ab)とは、特定の抗原と特異的に結合するか、または免疫学的に反応する、免疫グロブリン分子を指し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子操作した抗体、および他の修飾した形態の抗体が挙げられ、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体、および四重特異性抗体)、ならびに、例えばFab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgG、およびscFv断片を含む抗体の抗原結合断片が挙げられる。さらに、別段指示されない限り、用語「モノクローナル抗体」(mAb)とは、タンパク質に特異的に結合することが可能である、完全な分子、ならびに抗体断片(例えば、FabおよびF(ab’)2断片)の両方を含むことを意味する。FabおよびF(ab’)2断片は、完全な抗体のFc断片が欠如しており、動物または植物の循環からより迅速に取り除かれ、完全な抗体より少ない非特異的組織結合を有し得る(Wahl et al., 1983, J. Nucl. Med. 24:316)。
【0024】
用語「scFv」とは、従来の抗体由来の重鎖および軽鎖の可変ドメインを結合して1本の鎖を形成する、一本鎖Fv抗体を指す。
【0025】
「VH」に対する言及は、Fv、scFv、またはFabの重鎖を含む、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」に対する言及は、Fv、scFv、dsFv、またはFabの軽鎖を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。抗体(Ab)および免疫グロブリン(Ig)は、同じ構造特性を有する、糖タンパク質である。抗体が、特異的な標的に対する結合特異性を呈するのに対し、免疫グロブリンは、抗体、および標的特異性が欠如している、他の抗体様分子の両方を含む。天然の抗体および免疫グロブリンは、2つの同一の軽鎖(L)および2つの同一の重鎖(H)からなる、通常、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各重鎖は、アミノ末端で、可変ドメイン(VH)と、それに続くいくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、アミノ末端での可変ドメイン(VL)と、カルボキシ末端での定常ドメインを有する。
【0026】
細胞内のALK5阻害剤の最適な送達のために、抗体は、好ましくは、内在化する。内在化抗体は、細胞表面でそれらの標的分子に結合した後、結合の結果として、細胞により内在化される。この効果は、ADCが細胞により取り込まれることである。抗原に結合した後、抗体の内在化の決定を可能にするプロセスは、当業者に知られており、例えば、PCT公開の国際公開第2007/070538号パンフレットの80頁、および以下の第6.11節に記載されている。内在化されると、例えば第5.4節に記載されるように、切断可能リンカーを使用してALK5阻害剤が抗体に結合する場合、ALK5阻害剤は、リソソームでの切断により、または他の細胞機構により、抗体から放出することができる。
【0027】
用語「抗体断片」とは、全長抗体の部分、一般に標的結合または可変領域を指す。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片が挙げられる。「Fv」断片は、完全な標的認識および結合部位を含有する、最小限の抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変ドメインの二量体からなる(VH-VL二量体)。この構造中で、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用し、VH-VL二量体の表面上に抗原結合部位を規定する。多くの場合、6つのCDRは、抗体に対する標的結合特異性を与える。しかし、いくつかの例において、単一の可変ドメイン(または、標的に特異的な3つのCDRだけを含むFvの半分)は、標的を認識し、結合する能力を有することができる。「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、1本のポリペプチド鎖において、抗体のVHおよびVLドメインを含む。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが標的結合に対する所望の構造を形成することが可能である、VHおよびVLドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含む。「単一ドメイン抗体」は、TNF-αに対する十分な親和性を呈する、単一のVHまたはVLドメインで構成される。具体的な実施形態において、単一ドメイン抗体は、ラクダ抗体である(例えば、Riechmann, 1999, Journal of Immunological Methods 231:25-38を参照)。
【0028】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメイン、および重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端で、いくつかの残基の付加により、Fab断片と相違する。F(ab’)断片は、F(ab’)2ペプシン消化産物のヒンジシステインでのジスルフィド結合の切断により産生される。抗体断片のさらなる化学結合は、当業者に知られている。
【0029】
ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、モノクローナル抗体である。本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術を通して産生される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」とは、単一のクローンに由来する抗体を指し、真核、原核、またはファージクローンを含むが、それを産生する方法は含まない。本開示と関連して有用であるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組合せの使用を含む、当該技術分野に公知の多種多様な技術を使用して調製することができる。本開示の抗体として、キメラ、霊長類化(primatized)、ヒト化、またはヒト抗体が挙げられる。
【0030】
本開示の抗体は、キメラ抗体であり得る。本明細書で使用される用語「キメラ」抗体とは、ラットまたはマウス抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列、および、ヒト免疫グロブリンテンプレートから典型的には選択されるヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体を指す。キメラ抗体を産生するための方法は、当該技術分野に知られている。例えば、Morrison, 1985, Science 229(4719):1202-7、Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214-221、Gillies et al., 1985, J. Immunol. Methods 125:191-202、米国特許第5,807,715号明細書、米国特許第4,816,567号明細書、および米国特許第4,816,397号明細書を参照し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
本開示の抗体は、ヒト化され得る。非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または他の標的結合サブドメイン)である。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここでCDR領域の全て、または実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FR領域の全て、または実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリン共通配列のものを含むことができる。抗体のヒト化の方法は、当該技術分野に知られている。例えば、Riechmann et al., 1988, Nature 332:323-7、Queenらに対する米国特許第5,530,101号明細書、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、米国特許第6,180,370号明細書、欧州特許出願公開第239400号明細書、PCT公開の国際公開第91/09967号パンフレット、米国特許第5,225,539号明細書、欧州特許出願公開第592106号明細書、欧州特許出願公開第519596号明細書、Padlan, 1991, Mol. Immunol., 28:489-498、Studnicka et al., 1994, Prot. Eng. 7:805-814、Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:969-973、米国特許第5,565,332号明細書を参照し、その全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
本開示の抗体は、ヒト抗体であり得る。完全「ヒト」抗体は、ヒトの患者の治療的な処置に対して望ましくあり得る。本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリー、または1つもしくは複数のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックである動物から分離され、内在性免疫グロブリンを発現しない抗体を含む。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ方法を含む、当該技術分野に公知の様々な方法により作製することができる。例えば、米国特許第4,444,887号明細書および米国特許第4,716,111号明細書、ならびにPCT公開の国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第98/16654号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、国際公開第91/10741パンフレットを参照し、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒト抗体はまた、機能性内因性免疫グロブリンを発現することは不可能であるが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができる、トランスジェニックマウスを使用して産生することができる。例えば、PCT公開の国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第92/01047号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、米国特許第5,413,923号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,814,318号明細書、米国特許第5,885,793号明細書、米国特許第5,916,771号明細書、および米国特許第5,939,598号明細書を参照し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。加えて、Medarex(Princeton、N.J.)、Astellas Pharma(Deerfield、Ill.)、Amgen(Thousand Oaks、Calif.)、およびRegeneron(Tarrytown、N.Y.)のような企業に、上述と同様の技術を使用して選択した抗原に対して指向させたヒト抗体を提供させることができる。選択したエピトープを認識する、完全ヒト抗体は、「誘導選択(guided selection)」と称する技術を使用して生成することができる。このアプローチにおいて、選択した非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespers et al., 1988, Biotechnology 12:899-903)。
【0033】
本開示の抗体は、霊長類化され得る。用語「霊長類化抗体」とは、サル可変領域およびヒト定常領域を含む、抗体を指す。霊長類化抗体を産生するための方法は、当該技術分野に知られている。例えば、米国特許第5,658,570号明細書、米国特許第5,681,722号明細書、および米国特許第5,693,780号明細書を参照し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
本開示の抗体は、誘導体化抗体を含む。例えば、限定はしないが、誘導体化抗体は、典型的には、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結(抗体コンジュゲートの考察については第5.1節を参照)などにより修飾される。数多くの化学的な修飾のいずれかは、限定されないが、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、公知の技術により行うことができる。加えて、誘導体は、例えばambrx技術を使用して、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含有することができる(例えば、Wolfson, 2006, Chem. Biol. 13(10):1011-2を参照)。
【0035】
本開示のさらに別の実施形態において、抗体またはその断片は、相当する野生型配列に対して少なくとも1つの定常領域媒介性の生物学的エフェクターの機能を改変するためにその配列を修飾した、抗体または抗体断片であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の抗体を修飾して、非修飾抗体に対して少なくとも1つの定常領域媒介性の生物学的エフェクターの機能を低下させることができ、例えば、Fc受容体(FcγR)またはC1qに対する結合を低下させることができる。FcγRおよびC1q結合は、FcγRまたはC1q相互作用に必要な特定の領域で、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを変異させることにより低下し得る(例えば、Canfield and Morrison, 1991, J. Exp. Med. 173:1483-1491、Lund et al., 1991, J. Immunol. 147:2657-2662、Lo. et al., 2017, J Biol Chem 292: 3900-08、Wang et al., 2018, Protein Cell 9:63-73を参照)。
【0036】
抗体のFcγR結合能の低下はまた、FcγR相互作用に依存している別のエフェクター機能、例えばオプソニン作用、食作用および抗体依存性細胞毒性(「ADCC」)も低減する場合があるが、C1q結合の低下は、補体依存性細胞毒性(「CDCC」)を低減し得る。ゆえに、エフェクター機能の低下または排除により、本開示のADCにより標的化されるT細胞が、ADCCまたはCDCを介して破壊されることを防ぎ得る。したがって、いくつかの実施形態において、抗体のエフェクター機能は、抗体のFc部分の選択的突然変異により修飾され、その結果、抗原特異性および内在化能力を維持するが、ADCC/CDC機能は排除する。
【0037】
FcγRおよびC1q結合を低下させる数多くの突然変異が、当該技術分野で記載されており、このような突然変異は、本開示のADCに含まれ得る。例えば、米国特許第6,737,056号明細書では、位置238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438、または439での単一位置のFc領域アミノ酸修飾により、FcγRIIへの結合およびFcγRIIが低下する結果となることが開示されている。米国特許第9,790,268号明細書では、アミノ酸位置298でのアスパラギン残基、およびアミノ酸位置300でのセリンまたはトレオニン残基が、FcγR結合を低下させることが開示されている。PCT公開の国際公開第2014/190441号パンフレットでは、L234D/L235E:L234R/L235R/E233K、L234D/L235E/D265S:E233K/L234R/L235R/D265S、L234D/L235E/E269K:E233K/L234R/L235R/E269K、L234D/L235E/K322A:E233K/L234R/L235R/K322A、L234D/L235E/P329W:E233K/L234R/L235R/P329W、L234D/L235E/E269K/D265S/K322A:E233K/L234R/L235R/E269K/D265S/K322A、L234D/L235E/E269K/D265S/K322E/E333K:E233K/L234R/L235R/E269K/D265S/K322E/E333K突然変異を有するFcγR結合が低下した、修飾したFcドメインが記載されており、ここで、セミコロンに先行する突然変異の一式は、第一のFcポリペプチド中にあり、セミコロンに続く突然変異は、Fc二量体の第二のFcポリペプチド中にある。FcγR受容体結合ならびにC1q結合を低減することができる突然変異として、N297A、N297Q、N297G、D265A/N297A、D265A/N297G、L235E、L234A/L235A、およびL234A/L235A/P329Aが挙げられる(Lo. et al., 2017, J Biol Chem 292: 3900-08、Wang et al., 2018, Protein Cell 9:63-73)。
【0038】
エフェクター機能を低下させるために定常領域を変異させる、例えば上述のFcドメインを変異させるのに代えて、エフェクター機能は、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、またはF(ab’)2断片)を利用することにより排除することができる。
【0039】
本開示の他の実施形態において、抗体またはその断片を修飾して、非修飾抗体に対して少なくとも1つの定常領域媒介性の生物学的エフェクターの機能を獲得または改善することができ、例えば、FcγR相互作用を向上させることができる(例えば、米国特許出願公開第2006/0134709号明細書を参照)。例えば、本開示の抗体は、FcγRIIA、FcγRIIB、および/またはFcγRIIIAを、相当する野生型定常領域より高い親和性で結合する、定常領域を有することができる。
【0040】
ゆえに、本開示の抗体は、オプソニン作用、食作用またはADCCの低減をもたらす生物活性の変化を有し得る。このような変化は、当該技術分野に知られている。例えば、ADCC活性を低減する抗体における修飾は、米国特許第5,834,597号明細書に記載されている。
【0041】
さらに別の態様において、抗体またはその断片は、例えば、FcRn相互作用に関与する特定の領域で免疫グロブリン定常領域セグメントを変異させることにより、修飾して、胎児性Fc受容体、FcRnに対するその結合親和性を高めるか、または低減する抗体またはその断片であり得る(例えば、国際公開第2005/123780号パンフレットを参照)。このような突然変異は、FcRnへの抗体の結合を高めることができ、抗体を分解から保護し、その半減期を延長させる。
【0042】
さらに他の態様において、抗体は、例えば、Jung and Pluckthun, 1997, Protein Engineering 10(9):959-966、Yazaki et al., 2004, Protein Eng. Des Sel. 17(5):481-9、および米国特許出願公開第2007/0280931号明細書に記載される通り、その超可変領域の1つまたは複数に挿入された、1つまたは複数のアミノ酸を有する。
【0043】
抗体の標的は、ADCの所望の治療用途に依存する。典型的には、標的は、ALK5阻害剤を送達するのに望ましい細胞、例えばT細胞の表面に存在する分子であり、抗体は、好ましくは、標的に結合すると内在化される。内在化抗体は、例えば、Franke et al., 2000, Cancer Biother. Radiopharm. 15:459 76、Murray, 2000, Semin. Oncol. 27:64 70、Breitling et al., Recombinant Antibodies, John Wiley, and Sons, New York, 1998に記載されている。
【0044】
ADCがTGF-β活性を低減することにより免疫系を刺激することを意図される用途について、T細胞表面分子に結合する抗体を生成することが望ましい。理論に制約されることなく、T細胞へのALK5阻害剤の送達が、とりわけ、CD4+および/またはCD8+T細胞の活性を活性化し、制御性T細胞活性を阻害することができ、その両方が、腫瘍の免疫寛容に寄与すると考えられる。したがって、本開示のADCでのT細胞表面分子に結合する抗体の使用は、例えば、以下の第5.7節に記載される様々ながんの処置に有用である。様々な実施形態において、抗体は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、TREG細胞、または前述の任意の組合せに結合する。いくつかの実施形態において、抗体は、汎T細胞表面分子に結合する。標的化するのに好適なT細胞表面分子の例として、限定されないが、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD25、CD28、CD70、CD71、CD103、CD184、Tim3、LAG3、CTLA4、およびPD1が挙げられる。T細胞表面分子に結合し、内在化すると考えられている抗体の例として、OKT6(抗CD1、ATCC受託番号CRL8020)、OKT11(抗CD2、ATCC受託番号CRL8027)、OKT3(抗CD3、ATCC受託番号CRL8001)、OKT4(抗CD4、ATCC受託番号CRL8002)、OKT8(抗CD8、ATCC受託番号CRL8014)、7D4(抗CD25、ATCC受託番号CRL1698)、OKT9(抗CD71、ATCC受託番号CRL8021)、CD28.2(抗CD28、BD Biosciencesカタログ番号556620)、UCHT1(抗CD3、BioXCellカタログ番号BE0231)、M290(抗CD103、BioXCellカタログ番号BE0026)、FR70(抗CD70、BioXCellカタログ番号BE0022)、ペムブロリズマブ(抗PD1、Merck)、ニボルマブ(抗PD1、Bristol-Myers Squibb)、セミプリマブ(抗PD1、Regeneron)、およびドスタルリマブ(抗PD1、GlaxoSmithKline)が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態において、標的化したT細胞表面分子は、エンドソームを通して、内在化の後に細胞表面へと再循環することが可能なT細胞表面分子である(Goldenring, 2015 Curr. Opin. Cell Biol., 35:117-22を参照)。エンドソームを介して再循環することが可能であると考えられている例示的なT細胞表面分子として、CD5、CD7、CD71およびCD2が挙げられる。理論に制約されることなく、エンドソームを通して再循環することができるT細胞表面分子を標的化することは、ALK5がまたエンドソームを通して再循環することができることから、ALK5阻害剤のALK5への送達を促進することができると考えられる。ゆえに、エンドソームを通して再循環することができるT細胞表面分子を標的化することは、ALK5阻害剤をALK5に近接させる助けとなり得る。
【0046】
5.3.ALK5阻害剤
本開示のALK5阻害剤は、好ましくは、競合的、可逆的に、ALK5受容体の細胞質キナーゼドメインでATP結合部位と結合し、下流のR-Smadリン酸化を防ぐ、小分子である。
【0047】
ALK5阻害剤は、ALK5対他のTGF-βファミリー受容体、例えば、ALK4および/もしくはALK7ならびに/またはTGF-β受容体IIに対して、特異的または選択的であり得るが、必ずしもその必要はない。いくつかの実施形態において、ALK5阻害剤は、ALK5およびTGF-β受容体IIの両方に対して活性を有する。ALK5阻害剤が、BMP II受容体に対する限定的な阻害活性を有するのが好ましい一方、これは、本開示のADCはBMP II活性が最小限であるか、またはないT細胞に標的化されることから必要ではない。
【0048】
少なくとも3名の対象、少なくとも5名の対象、または少なくとも10名の対象由来のT細胞を使用するin vitro細胞アッセイで測定される場合、本開示のALK5阻害剤のIC50は、好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM以下、最も好ましくは20nM以下である。例示的な細胞アッセイは、以下の第6.6節で説明する。ADCが、マウスT細胞表面分子ではなくヒトを標的とする場合、マウス細胞の代わりにヒト細胞、ならびにマウスCD28およびCD3の代わりにヒトを認識する抗体を使用することができる。
【0049】
本開示の抗体-薬物コンジュゲートでの使用に好適なALK5阻害剤の具体例として、イミダゾール-ベンゾジオキソール化合物、イミダゾール-キノキサリン化合物、ピラゾール-ピロロ化合物、およびチアゾール系化合物が挙げられる。
【0050】
本開示の一態様にしたがって、イミダゾール-ベンゾジオキソール系ALK5阻害剤は、下記の式を有する。
【0051】
【0052】
式中、R1は、水素、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、R2は、水素、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、R3は、アミド、ニトリル、1~約3個の炭素原子を有するアルキニル、カルボキシル、または1~約5個の炭素原子を有するアルカノールであり、Aは、直接結合、または1~約5個の炭素原子を有するアルキルであり、Bは、直接結合、または1~約5個の炭素原子を有するアルキルである。本開示の別個の好ましい実施形態において、R2は、水素またはメチルであり、Aは、1個の炭素原子を有し、Bは、ベンジル基への直接結合であり、R3は、アミドである。本開示の組み合わせた好ましい実施形態において、R2は、水素またはメチルであり、Aは、1個の炭素原子を有し、Bは、ベンジル基への直接結合である。
【0053】
本開示の別の態様にしたがって、イミダゾール-キノキサリン系ALK5阻害剤は、下記の式を有する。
【0054】
【0055】
式中、R1は、水素、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、R2は、水素、ハロゲン、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、R3は、アミド、ニトリル、1~約3個の炭素原子を有するアルキニル、カルボキシル、または1~約5個の炭素原子を有するアルカノールであり、Aは、直接結合、または1~約5個の炭素原子を有するアルキルであり、Bは、直接結合、または1~約5個の炭素原子を有するアルキルである。本開示の別個の好ましい実施形態において、R2は、水素またはメチルであり、ハロゲンは、フッ素または塩素を含み、Aは、1個の炭素原子を有し、Bは、ベンジル基への直接結合であり、R3は、アミドである。本開示の組み合わせた好ましい実施形態において、R2は、水素またはメチルであり、Aは、1個の炭素原子を有し、Bは、ベンジル基への直接結合である。
【0056】
本開示の別の態様にしたがって、ピラゾール系ALK5阻害剤は、下記の式を有する。
【0057】
【0058】
式中、R2は、水素、ハロゲン、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、R4は、水素、ハロゲン、1~約5個の炭素原子を有する低級アルキル、1~約5個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロアルキル、カルボキシル、カルボキシアルキルエステル、ニトリル、アルキルアミン、または下記の式を有する基である。
【0059】
【0060】
式中、R5は、1~約5個の炭素原子を有する低級アルキル、ハロゲン、またはモルホリノであり、R6は、ピロール、シクロヘキシル、モルホリノ、ピラゾール、ピラン、イミダゾール、オキサン、ピロリジニル、またはアルキルアミンであり、Aは、直接結合、または1~約5個の炭素原子を有するアルキルである。
【0061】
本開示の別の態様にしたがって、ピラゾール-ピロロ系ALK5阻害剤は、下記の式を有する。
【0062】
【0063】
式中、R7は、水素、ハロゲン、1~約5個の炭素原子を有する低級アルキル、アルカノール、モルホリノ、またはアルキルアミンであり、R2は、水素、ハロゲン、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、R8は、水素、ヒドロキシル、アミノ、ハロゲン、または下記の式を有する基である。
【0064】
【0065】
式中、R5は、ピペラジニルであり、R6は、モルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル、アルコキシ、ヒドロキシル、オキサン、ハロゲン、チオアルキル、またはアルキルアミンであり、Aは、1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルである。
【0066】
本開示の別の態様にしたがって、チアゾール系ALK5阻害剤は、下記の式を有する。
【0067】
【0068】
式中、R9は、水素、ハロゲン、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、R10は、水素、または1~約5個の炭素原子を有する低級アルキルである。
【0069】
ある特定の実施形態において、ALK5阻害剤は、以下の表1でA~Nと指定された化合物のいずれかから選択される。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
さらに具体的な実施形態において、ALK5阻害剤は、以下の表2で1~283と指定された化合物のいずれかから選択される。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
ALK5阻害剤の調製および使用は、科学文献および特許文献において、周知であり、十分に実証されている。PCT公開の国際公開第2000/61576号パンフレット、および米国特許出願公開第2003/0149277号明細書では、トリアリールイミダゾール誘導体、およびALK5阻害剤としてのその使用が開示されている。PCT公開の国際公開第2001/62756パンフレットでは、ピリジニルイミダゾール誘導体、およびALK5阻害剤としてのその使用が開示されている。PCT公開の国際公開第2002/055077パンフレットでは、ALK5阻害剤としてのイミダゾリル環状アセタール誘導体の使用が開示されている。PCT公開の国際公開第2003/087304パンフレットでは、トリ置換ヘテロアリール、ならびにALK5および/またはALK4阻害剤としてのその使用が開示されている。国際公開第2005/103028号パンフレット、米国特許出願公開第2008/0319012号明細書、および米国特許第7,407,958号明細書では、ALK5および/またはALK4阻害剤としての2-ピリジル置換イミダゾールが開示されている。代表的な化合物の1つ、IN-1130は、いくつかの動物モデルにおいて、ALK5および/またはALK4阻害剤活性を示す。以下の特許および特許公開は、ALK5阻害剤の追加例を提供し、例示的な合成スキーム、およびALK5阻害剤を使用する方法を提供する:米国特許第6,465,493号明細書、米国特許第6,906,089号明細書、米国特許第7,365,066号明細書、米国特許第7,087,626号明細書、米国特許第7,368,445号明細書、米国特許第7,265,225号明細書、米国特許第7,405,299号明細書、米国特許第7,407,958号明細書、米国特許第7,511,056号明細書、米国特許第7,612,094号明細書、米国特許第7,691,865号明細書、米国特許第7,863,288号明細書、米国特許第8,410,146号明細書、米国特許第8,410,146号明細書、米国特許第8,420,685号明細書、米国特許第8,513,222号明細書、米国特許第8,614,226号明細書、米国特許第8,791,113号明細書、米国特許第8,815,893号明細書、米国特許第8,846,931号明細書、米国特許第8,912,216号明細書、米国特許第8,987,301号明細書、米国特許第9,051,307号明細書、米国特許第9,051,318号明細書、米国特許第9,073,918号明細書、ならびにPCT公開の国際公開第2004/065392号パンフレット、国際公開第2009/050183号パンフレット、国際公開第2009/133070号パンフレット、国際公開第2011/146287号パンフレット、および国際公開第2013/009140号パンフレット。前述の特許および特許公開は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0093】
いくつかのALK5阻害剤は、市販されており、SB-525334(CAS 356559-20-1)、SB-505124(CAS 694433-59-5)、SB-431542(CAS 301836-41-9)、SB-202474(EMD4 Biosciences Merck KGaA、Darmstadt、Germany)、LY-364947(CAS 396129-53-6)、IN-1130、GW-788388、およびD4476(EMD4 Biosciences Merck KGaA、Darmstadt、Germany)が挙げられる。
【0094】
本明細書に記載されるALK5阻害剤の構造および名称は、抗体および/またはリンカーへの結合前の分子を指す。
【0095】
好ましいALK5阻害剤は、遊離NHまたはNH2基、好ましくはアルキル、ヘテロアリール、もしくはアリール基に結合するNHもしくはNH2基、またはアルキル、ヘテロアリール、もしくはアリール基のNHもしくはNH2基部分を介して、リンカーに結合することができるものである(例えば、表2に示される化合物1~23、26-29、31、35、37、39、40、42、43、45~48、50~85、87~90、93、96、98~104、106、108、109、111、112、114、116~120、132、146、149、156、184、187、193、218、260-277、282、および283)。ALK5阻害剤を誘導体化して、遊離NHまたはNH2基を添加することができる。誘導体化したALK5阻害剤の設計は、好ましくは、活性は経験的に決定することもできるが、NHまたはNH2基を加える場合に阻害剤活性を無効にする可能性を減らすために、阻害剤の構造活性相関(SAR)を考慮に入れるべきである。表1に示されるいくつかの化合物の例示的な誘導体化した対応物質は、以下の表3に示される。
【0096】
【0097】
5.4.リンカー
典型的には、ADCは、ALK5阻害剤と抗体との間のリンカーを含む。リンカーは、共有結合を含む部分、または抗体を薬物部分に共有結合する原子の鎖である。様々な実施形態において、リンカーとして、アルキルジイル、アリールジイル、ヘテロアリールジイルのような二価基、-(CR2)nO(CR2)n-、アルキルオキシ(例えばポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)およびアルキルアミノ(例えばポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))の繰返し単位のような部分、ならびにコハク酸塩、スクシンアミド、ジグリコール酸塩、マロン酸塩、およびカプロアミドを含む二酸エステルおよびアミドが挙げられる。例えば、様々なPEGを含有するリンカーは、当該技術分野に知られており、(例えばBroadPharm(broadpharm.com)から)市販されている。例示的なPEGを含有するリンカーとして、Mal-PEG2-Val-Cit-PAB-OH(BroadPharmカタログ番号BP-23203)、Mal-PEG4-Val-Cit-PAB-OH(BroadPharmカタログ番号BP-23204)、Mal-PEG4-Val-Cit-PAB-PNP(BroadPharmカタログ番号BP-23668)、Mal-amido-PEG2-Val-Cit-PAB-PNP(BroadPharmカタログ番号BP-23675)、アジド-PEG3-Val-Cit-PAB-OH(BroadPharmカタログ番号BP-23206)、アジド-PEG4-Val-Cit-PAB-OH(BroadPharmカタログ番号BP-23207)、アジド-PEG3-Val-Cit-PAB-PNP(BroadPharmカタログ番号BP-23368)、Fmoc-PEG4-Ala-Ala-Asn-PAB(BP-23328)、アジド-PEG5-Ala-Ala-Asn-PAB(BroadPharmカタログ番号BP-23329)、Fmoc-PEG3-Ala-Ala-Asn(Trt)-PAB(BroadPharmカタログ番号BP-23285)、アジド-PEG4-Ala-Ala-Asn(Trt)-PAB(BroadPharmカタログ番号BP-23284)、およびFmoc-PEG3-Ala-Ala-Asn(Trt)-PAB-PNP(BroadPharmカタログ番号BP-23297)が挙げられる。
【0098】
リンカーは、ストレッチャーおよびスペーサー部分のような1つまたは複数のリンカー成分を含み得る。例えば、ペプチジルリンカーは、2つ以上のアミノ酸含むことができ、かつ、1つまたは複数のストレッチャーおよび/またはスペーサー部分のペプチジル成分を含んでいてもよい。様々なリンカー成分は、当該技術分野に知られており、そのいくつかは、以下に記載する。
【0099】
リンカーは、細胞内の薬物の放出を促進する「切断可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定リンカー(例としてヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例としてペプチターゼ感受性)リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., 1992, Cancer Research 52:127-131、米国特許第5,208,020号明細書)を、使用することができる。
【0100】
当該技術分野に公知のリンカーおよびリンカー成分の例として、アレイミドカプロイル(mc);マレイミドカプロイル-p-アミノベンジルカルバメート;マレイミドカプロイル-ペプチド-アミノベンジルカルバメートリンカー、例えば、マレイミドカプロイル-L-フェニルアラニン-L-リジン-p-アミノベンジルカルバメート、およびマレイミドカプロイル-L-バリン-L-シトルリン-p-アミノベンジルカルバメート(vc);N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロプリオネート(N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ペンタノエートまたはSPPとしても知られる);4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-2-メチル-2-(2-ピリジルジチオ)-トルエン(SMPT);N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP);N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB);2-イミノチオラン;S-アセチル無水コハク酸;ジスルフィドベンジルカルバメート;カルボネート;ヒドラゾンリンカー;N-(α-マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル;N-[4-(p-アジドサリチルアミド)ブチル]-3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオンアミド(AMAS);N[β-マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル(BMPS);[N-ε-マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(EMCS);N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル(GMBS);スクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ-[6-アミドカプロエート](LC-SMCC);スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート(LC-SPDP);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);N-スクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾエート(SIAB);スクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC);N-スクシンイミジル3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド(SPDP);[N-ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル(スルホ-EMCS);N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBS);4-スルホスクシンイミジル-6-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート-)(スルホ-LC-SMPT);スルホスクシンイミジル6-(3’-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート(スルホ-LC-SPDP);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBS);N-スルホスクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾエート(スルホ-SIAB);スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC);スルホスクシンイミジル4-[p-マレイミドフェニル]ブチレート(スルホ-SMPB);エチレングリコール-ビス(コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)(EGS);ジスクシンイミジルタルトレート(DST);1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA);ジエチレントリアミン-五酢酸(DTPA);チオ尿素リンカー;およびオキシム含有リンカーが挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態において、リンカーは、細胞内または細胞外の条件下で切断可能であるので、リンカーの切断により、適切な環境において抗体からALK5阻害剤が放出される。さらに他の実施形態において、リンカーは、切断可能ではなく、薬物は、例えばリソソームでの抗体の分解により放出される(米国特許出願公開第2005/0238649号明細書を参照し、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0102】
本開示のADCで使用することができる非切断可能リンカーの例として、N-マレイミドメチルシクロヘキサン1-カルボキシレート、マレイミドカプロイル、またはメルカプトアセトアミドカプロイルリンカーが挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態において、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームもしくはエンドソーム、またはカベオラ内)に存在する切断剤により切断可能である。リンカーは、例えば、限定されないが、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含む、細胞内ペプチターゼまたはプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカーであり得る。いくつかの実施形態において、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長、または少なくとも3アミノ酸長、またはそれ以上である、ペプチジル成分を含む。
【0104】
切断剤は、限定されないが、カテプシンBおよびD、およびプラスミンを含み得るが、これらの全ては、標的細胞内で活性薬物を放出するジペプチド薬物誘導体を加水分解することが知られている(例えば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123を参照)。例えば、ペプチジルリンカーは、チオール依存性プロテアーゼカテプシンB(例えば、Phe-Leu、またはGly-Phe-Leu-Glyリンカー)により切断可能である。このようなリンカーの他の例は、例えば、米国特許第6,214,345号明細書に記載されており、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0105】
いくつかの実施形態において、細胞内プロテアーゼにより切断可能であるペプチジルリンカーは、Val-CitリンカーまたはPhe-Lysリンカーである(例えば、val-citリンカーでのドキソルビシンの合成を記載する、米国特許第6,214,345号明細書を参照)。
【0106】
他の実施形態において、切断可能リンカーは、pH感受性、すなわち、ある特定のpH値での加水分解に感受性がある。典型的には、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。例えば、リソソームにおいて加水分解可能である、酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を、使用することができる(例えば、米国特許第5,122,368号明細書、米国特許第5,824,805号明細書、米国特許第5,622,929号明細書、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123、Neville et al., 1989, Biol. Chem. 264:14653-14661を参照)。このようなリンカーは、血液中のような中性pH条件下で比較的安定であるが、リソソームのpHに近いpH5.5または5.0未満で不安定である。ある特定の実施形態において、加水分解性リンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤と結合するチオエーテル)である(例えば、米国特許第5,622,929号明細書を参照)。
【0107】
さらに他の実施形態において、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーは、当該技術分野に知られており、例えば、SATA(N-スクシンイミジル-5-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ))ブチレート)、およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)-トルエン)-、SPDB、ならびにSMPTを使用して形成することができるものを含む。(例えば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931、Wawrzynczak et al., In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer (C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987を参照。また米国特許第4,880,935号明細書も参照)
【0108】
他の実施形態において、リンカーは、マロン酸リンカー(Johnson et al., 1995, Anticancer Res. 15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1299-1304)、または3’-N-アミド類似体(Lau et al., 1995, Bioorg-Med-Chem. 3(10):1305-12)である。
【0109】
いくつかの実施形態において、リンカーは、多くの薬物分子を単一の抗体分子に連結するのに使用することができる多価リンカーである。例えば、Mersanaにより開発されたFleximerリンカー技術は、エステル結合の配列を介して、薬物分子を可溶化したポリアセタールバックボーンに組み込むことに基づいている。方法は、良好な物理化学特性を維持しながら、搭載の高いADC(例えば、最大20の薬物抗体比(DAR)を有する)を可能にする。例示的な多価リンカーは、例えば、国際公開第2009/073445号パンフレット、国際公開第2010/068795号パンフレット、国際公開第2010/138719号パンフレット、国際公開第2011/120053号パンフレット、国際公開第2011/171020号パンフレット、国際公開第2013/096901号パンフレット、国際公開第2014/008375号パンフレット、国際公開第2014/093379号パンフレット、国際公開第2014/093394号パンフレット、および国際公開第2014/093640号パンフレットに記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
多くの場合、リンカーは、細胞外環境に実質的に感受性ではない。本明細書で使用される場合、リンカーの文脈における「細胞外環境に実質的に感受性ではない」とは、ADCのサンプルにおいて約20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、または約1%以下のリンカーが、ADCが細胞外環境(例えば血漿)に存在する場合に切断されることを意味する。
【0111】
リンカーが細胞外環境に実質的に感受性ではないかどうかは、例えば、血漿でADCを所定の時間(例えば2、4、8、16、または24時間)インキュベートし、次いで血漿に存在する遊離薬物の量を定量化することにより決定することができる。
【0112】
互いに排他的ではない他の実施形態において、リンカーは、細胞内在化を促進することができる。ある特定の実施形態において、リンカーは、治療剤とコンジュゲートされる場合(すなわち、本明細書に記載されるADCのリンカー-治療剤部分の環境において)、細胞内在化を促進する。さらに他の実施形態において、リンカーは、ALK5阻害剤および抗体の両方とコンジュゲートされる場合に細胞内在化を促進する。
【0113】
多くの実施形態において、リンカーは、自己犠牲型である。本明細書で使用される場合、用語「自己犠牲」とは、間隔をあけた2つの化学部分と共有結合させて安定な三連分子にすることができる二官能化学部分を指す。それは、第一の部分へのその結合が切断される場合、第二の化学部分から自発的に分離する。例えば、PCT公開の国際公開第2007/059404号パンフレット、国際公開第2006/110476号パンフレット、国際公開第2005/112919号パンフレット、国際公開第2010/062171号パンフレット、国際公開第2009/017394号パンフレット、国際公開第2007/089149号パンフレット、国際公開第2007/018431号パンフレット、国際公開第2004/043493号パンフレット、および国際公開第2002/083180号パンフレットを参照し、これらは、薬物および切断可能物質が任意で自己犠牲リンカーを通して連結する、薬物-切断可能物質コンジュゲートを対象とし、その全てが明白に参照により組み込まれる。自己犠牲リンカーを生成するのに使用することができる自己犠牲スペーサー単位の例は、以下の式に記載される。
【0114】
本組成物および方法で使用することができる様々な例示的なリンカーは、PCT公開の国際公開第2004/010957号パンフレット、米国特許出願公開第2006/0074008号明細書、米国特許出願公開第2005/0238649号明細書、および米国特許出願公開第2006/0024317号明細書に記載される(その各々は、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0115】
本開示のADCは、以下の式Iであり得、ここで抗体(Ab)は、任意のリンカー(L)を介して1つまたは複数のALK5阻害剤の薬物部分(D)とコンジュゲートされる。
Ab-(L-D)p I
【0116】
したがって、抗体は、直接的に、またはリンカーを介してのいずれかで、薬物とコンジュゲート化することができる。式Iにおいて、pは、抗体当たりの薬物(すなわちALK5阻害剤)部分の平均数であり、これは、例えば、抗体当たり約1から約20個の薬物部分の範囲であり得、ある特定の実施形態においては、抗体当たり2から約8個の薬物部分であり得る。薬物搭載のさらなる詳細は、以下の第5.5節に記載される。
【0117】
いくつかの実施形態において、リンカー成分は、例えばシステイン残基を介して、別のリンカー成分または薬物部分に抗体を連結する、「ストレッチャー」を含み得る。例示的なストレッチャーは、以下に示される(式中、左の波線は、抗体への共有結合の部位を示し、右の波線は、別のリンカー成分または薬物部分への共有結合の部位を示す)。
【0118】
【化8】
米国特許第9,109,035号明細書、Ducry et al., 2010, Bioconjugate Chem. 21:5-13を参照。
【0119】
いくつかの実施形態において、リンカー成分は、アミノ酸単位を含み得る。このような一実施形態において、アミノ酸単位は、プロテアーゼによるリンカーの切断を許容し、それにより、リソソーム酵素のような細胞内プロテアーゼに曝露されると、ADCからの薬物の放出が促進される。例えば、Doronina et al., 2003, Nat. Biotechnol. 21:778-784を参照。例示的なアミノ酸単位として、限定されないが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびペンタペプチドが挙げられる。例示的なジペプチドとして、バリン-シトルリン(VCもしくはval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(AFもしくはala-phe)、フェニルアラニン-リジン(FKまたはphe-lys)、またはN-メチル-バリン-シトルリン(Me-val-cit)が挙げられる。トリペプチドの例として、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)、およびグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)が挙げられる。アミノ酸単位は、天然に生じるアミノ酸残基、ならびに少数のアミノ酸、および非天然アミノ酸類似体を含み得、例えば、シトルリンアミノ酸単位が、特定の酵素、例えばカテプシンB、C、およびD、またはプラスミンプロテアーゼにより、酵素切断に対する選択において設計し最適化することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、リンカー成分は、直接的に、またはストレッチャーおよび/もしくはアミノ酸単位のいずれかにより、抗体を薬物部分に連結する、「スペーサー」単位を有し得る。スペーサー単位は、「自己犠牲」または「非自己犠牲」であり得る。「非自己犠牲」スペーサー単位は、一部または全てのスペーサー単位がADCの酵素(例えばプロテアーゼ)切断時に薬物部分に結合し続けるものである。非自己犠牲スペーサー単位の例として、限定されないが、グリシンスペーサー単位およびグリシン-グリシンスペーサー単位が挙げられる。「自己犠牲」スペーサー単位は、別個の加水分解ステップを行わずに、薬物部分の放出が可能である。ある特定の実施形態において、リンカーのスペーサー単位は、p-アミノベンジル単位を含む。このような一実施形態において、p-アミノベンジルアルコールは、アミド結合を介してアミノ酸単位と結合し、カルバミン酸塩、メチルカルバミン酸塩、または炭酸塩は、ベンジルアルコールと細胞毒性剤との間で作製される。例えば、Hamann et al., 2005, Expert Opin. Ther. Patents 15:1087-1103を参照。一実施形態において、スペーサー単位は、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)である。ある特定の実施形態において、p-アミノベンジル単位のフェニレン部分は、Qmで置換され、ここでQは、-C1~C8アルキル、-O-(C1~C8アルキル)、-ハロゲン、-ニトロ、または-シアノであり、mは、0~4の範囲の整数である。自己犠牲スペーサー単位の例として、限定されないが、p-アミノベンジルアルコールと電子的に類似する芳香族化合物(例えば、米国特許出願公開第2005/0256030号明細書を参照)、例えば2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体(Hay et al., 1999, Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237)、およびオルト-またはパラ-アミノベンジルアセタールがさらに挙げられる。置換および非置換4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al., 1995, Chemistry Biology 2:223)、適切に置換したビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al., 1972, Amer. Chem. Soc. 94:5815)、ならびに2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry et al., 1990, J. Org. Chem. 55:5867)のような、アミド結合の加水分解時に環形成を行うスペーサーを使用することができる。グリシンのa位置で置換されるアミン含有薬物の排除(Kingsbury et al., 1984, J. Med. Chem. 27:1447)もまた、ADCに有用な自己犠牲スペーサーの例である。
【0121】
一実施形態において、スペーサー単位は、以下に記載される分岐ビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)単位であり、これを使用して複数の薬物を組み込み、放出することができる。
【0122】
【化9】
(式中、AbおよびDは、式Iについて上記で定義されており、Aは、ストレッチャーであり、aは、0から1の範囲の整数であり、Wは、アミノ酸単位であり、wは、0から12の範囲の整数であり、Qは、-C
1~C
8アルキル、-O-(C
1~C
8アルキル)、-ハロゲン、-ニトロ、または-シアノであり、mは、0~4の範囲の整数であり、nは、0または1であり、pは、1から約20の範囲である)
【0123】
リンカーは、上記のリンカー成分の任意の1つまたは複数を含み得る。ある特定の実施形態において、リンカーは、以下のADCの式において、括弧内に示される:
Ab-(-[Aa-Ww-Yy]-D)p II
(式中、Ab、A、a、W、w、D、およびpは、先の段落で定義されており、Yは、スペーサー単位であり、yは、0、1、または2である)。このようなリンカーの例示的な実施形態は、米国特許出願公開第2005/0238649号明細書に記載され、それは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
例示的なリンカー成分およびその組合せは、式IIのADCの文脈で下記に示される:
【0125】
【0126】
ストレッチャー、スペーサー、およびアミノ酸単位を含む、リンカー成分は、当該技術分野に公知の方法、例えば米国特許出願公開第2005/0238649号明細書に記載されるものにより合成することができる。
【0127】
5.5.薬物搭載
薬物搭載は、pで表され、分子中の抗体当たりのALK5阻害剤部分の平均数である。平均数は、多くの場合、分数または小数であるが、薬物搭載(「p」)は、抗体当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の部分(D)であり得る。一般に、ALK5阻害剤搭載は、平均すると抗体当たり2から8個の薬物部分、より好ましくは抗体当たり2から4個の薬物部分、または抗体当たり5から7個の薬物部分となる。
【0128】
当業者に理解される通り、多くの例において、ADCに対する言及は、(ときに医薬組成物の文脈において)ADC分子の集団または集合の省略表現であり、各分子は、1つまたは複数のALK5阻害剤部分に共有結合した抗体で構成され、個別の分子基部での比が集団においてADC分子ごとに変化し得るが、薬物搭載比は、集団または集合の平均薬物搭載を表す。いくつかの実施形態において、集団または集合は、1~30個の薬物部分のいずれの場所に、いくつかの実施形態においては1~20個、1~15個、2~12個、2~8個、4~15個、または6~12個の薬物部分のいずれかの場所に共有結合する抗体を含む、ADC分子を含有する。好ましくは、集団における平均は、先の段落に記載されており、例えば、抗体当たり2~8個の薬物部分、より好ましくは抗体当たり4~8個の薬物部分、または抗体当たり5~7個の薬物部分である。
【0129】
いくつかのADC集団は、本明細書に記載されるADC、および薬物部分が欠如する抗体分子、例えば、ALK5抗体との結合が失敗した抗体を含む組成物の形態であり得る。
【0130】
コンジュゲート化反応からのADCの調製における、抗体当たりのALK5阻害剤部分の平均数は、質量分光法およびELISAアッセイのような従来の手段により特徴付けられる。
【0131】
pに関してADCの定量分配もまた決定することができる。いくつかの例において、均一なADCの分離、精製、および特徴付けは、pが他のALK5阻害剤搭載を伴うADCからのある特定の値であるが、電気泳動のような手段により達成することができる。
【0132】
いくつかの抗体-薬物コンジュゲートに対して、pは、抗体上の結合部位の数により限定され得る。例えば、結合が、システインチオールである場合、上記の例示的な実施形態において、抗体は、1つもしくは複数のシステインチオール基のみを有し得るか、または、リンカーを結合させることができる、十分な反応性の1つもしくは複数のチオール基のみを有し得る。ある特定の実施形態において、より高い薬物搭載、例えばp>5では、ある特定の抗体-薬物コンジュゲートの凝集、不溶性、毒性、または細胞浸透性の低下が起こり得る。ある特定の実施形態において、本開示のADCに対する薬物搭載は、1~約8、約2~約6、約3~約5、約3~約4、約3.1~約3.9、約3.2~約3.8、約3.2~約3.7、約3.2~約3.6、約3.3~約3.8、または約3.3~約3.7の範囲である。実際に、ある特定のADCに対して、抗体当たりの薬物部分の最適比が、8未満であり得、約2~約5であり得ることが示されている。米国特許出願公開第2005/0238649号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。
【0133】
ある特定の実施形態において、理論上の最大値未満の薬物部分は、コンジュゲート化反応の間、抗体にコンジュゲート化する。抗体は、例えば、以下で論ずる通り、薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応しない、リジン残基を含有し得る。一般に、抗体は、薬物部分に連結することができる多くの遊離性反応性システインチオール基を含有せず、実際に、抗体内の多くのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある特定の実施形態において、抗体を、部分的または全体的な還元条件下、ジチオトレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)のような還元化剤で還元して、反応性システインチオール基を生成することができる。ある特定の実施形態において、抗体を変性条件にさらして、リジンまたはシステインのような反応性求核性基を現す。
【0134】
ADCの搭載(薬物/抗体比)は、様々な手法、例えば、(i)抗体に対する薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)コンジュゲート反応の時間または温度を制限すること、(iii)システインチオール修飾に対する部分的な還元条件または還元条件を制限すること、(iv)システイン残基の数および位置を、リンカー-薬物結合(例えば、PCT公開の国際公開第2006/034488号パンフレット(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるようなチオMabまたはチオFab)の数および/または位置を制御するために修飾するように、組換え技術により抗体のアミノ酸配列を操作することによって制御することができる。
【0135】
2つ以上の求核性基が、薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応し、続いて薬物部分試薬と反応する場合、次いで、得られる生成物が、抗体に結合した1つまたは複数の薬物部分の分布を有するADC化合物の混合物であることは理解すべきである。抗体当たりの薬物の平均数は、デュアルELISA抗体アッセイにより混合物から計算することができ、これは、抗体に特異的であり、薬物に特異的である。個別のADC分子は、質量分光法により混合物内で同定され、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーにより分離され得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、単一の搭載値を有する均一なADCは、電気泳動またはクロマトグラフィーにより複合混合物から単離することができる。
【0137】
5.6.製剤および投与
ADCの投与の好適な経路として、限定されないが、経口、非経口、直腸、経粘膜、腸内投与、髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、体腔内、腹腔内、または腫瘍内注射が挙げられる。投与の好ましい経路は、非経口であり、より好ましいのは静脈内である。あるいは、1つは、全身ではなく局所的な方法において、例えば、固体または血液腫瘍への化合物の直接的な注射を介して、化合物を投与することができる。
【0138】
免疫コンジュゲートは、薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法にしたがって製剤化することができ、それにより、ADCは、混合物を薬学的に有用な添加剤と組み合わせる。滅菌性のリン酸緩衝生理食塩水は、薬学的に有用な添加剤の一例である。他の有用な添加剤は、当業者に周知されている。例えば、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms And Drug Delivery Systems, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、およびGennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)、ならびにその改訂版を参照。
【0139】
好ましい実施形態において、ADCは、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES);N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES);4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES);2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES);3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS);3-(N-モルホリニル)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO);およびピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)[Pipes]からなる群から選択される緩衝液を使用して、Goodの生物学的緩衝液(pH6~7)で製剤化される。より好ましい緩衝液は、好ましくは20~100mMの範囲、より好ましくは約25mMの濃度でのMESまたはMOPSである。最も好ましいのは、pH6.5での25mMのMESである。製剤は、添加剤として25mMのトレハロース、および0.01%v/vのポリソルベート80をさらに含み、添加した添加剤の結果として、最終緩衝液濃度が22.25mMに調整される。保管の好ましい方法は、コンジュゲートの凍結乾燥製剤としてであり、2℃~8℃での最も好ましい保管され、最も好ましくは-20℃~2℃の範囲の温度で保管される。
【0140】
ADCは、例えば、ボーラス注射、緩慢な注入、または連続注入を介して、静脈内投与用に製剤化することができる。好ましくは、ADCは、約4時間未満、より好ましくは約3時間未満にわたって注入される。例えば、最初の25~50mgは、30分以内、好ましくは15分ちょうどで注入し、残りは、次の2~3時間にわたって注入する。注射用の製剤は、添加した保存剤を伴う単位剤形で、例えば、アンプルまたは多用量容器で提供され得る。組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳剤のような形態を取り得、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散化剤のような製剤化剤を含有することができる。あるいは、有効成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば滅菌性のパイロジェンを含まない水で構成するための粉末形態であり得る。
【0141】
さらなる薬学的な方法を利用して、ADCの作用の期間を制御することができる。制御放出の調製物は、ADCを複合体にするかまたは吸着するポリマーの使用を通して調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとして、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)のマトリックス、およびステアリン酸二量体およびセバシン酸のポリ無水物コポリマーのマトリックスが挙げられる。Sherwood et al., 1992, Bio/Technology 10:1446。このようなマトリックスからのADCの放出速度は、ADCの分子量、マトリックス内のADCの量、および分散粒子のサイズに依存する。Saltzman et al., 1989, Biophys. J. 55:163、Sherwood et al.、上記参照。他の固体剤形は、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms And Drug Delivery Systems, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、およびGennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)、ならびにその改訂版に記載されている。
【0142】
一般に、ヒトに投与されるADCの投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、および過去の病歴のような因子によって異なる。約0.3mg/kg~5mg/kgの範囲の投与量のADCを単回の静脈内注入としてレシピエントに提供することが望ましい場合があるが、状況に応じてこれよりも低い投与量または高い投与量が投与される場合もある。例えば、70kgの患者に対する0.3~5mg/kgの投与量は、21~350mgであり、これは1.7mの患者に対する12~206mg/m2の投与量でもある。投与量は、必要に応じて、例えば、2~10週間にわたり週に1回、8週間にわたり週に1回、または4週間にわたり週に1回、繰り返すことができる。維持療法で必要に応じて、より少ない頻度で、例えば、数か月間にわたり1週おきに、または数か月間にわたり月に1回もしくは3か月に1回、与えることもできる。好ましい投与量として、限定されないが、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、1.0mg/kg、1.2mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、および5.0mg/kgが挙げられ得る。より好ましい投与量は、1週間の投与に対して0.6mg/kgであり、より低い頻度での投与に対しては1.2mg/kgである。0.3~5mg/kgの範囲の任意の量を使用することができる。投与量は、好ましくは、1週間に1回、複数回投与される。4週間、より好ましくは8週間、より好ましくは16週間、またはそれより長い期間の最小投与量のスケジュールを使用することができ、その投与頻度は、血液毒性に最も関連する、有害な副作用およびそれからの回復に依存する。投与のスケジュールは、(i)週に1回;(ii)1週おき;(iii)1週間の療法と、続く2週間、3週間、または4週間の休止;(iv)2週間の療法と、続く1週間、2週間、3週間、または4週間の休止;(v)3週間の療法と、続く1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間の休止;(vi)4週間の療法と、続く1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間の休止;(vii)5週間の療法と、続く1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間の休止;および(viii)月に1回からなる群から選択されるサイクルでの、週に1回または2回の投与を含み得る。サイクルは、2回、4回、6回、8回、10回、または12回、またはそれ以上繰り返すことができる。
【0143】
あるいは、ADCは、2週または3週ごとに1投与量で、合計で少なくとも3投与量を繰り返して、投与することができる。または、4~6週間にわたり、週に2回である。投与量は、1週おきに1回、またはさらにより低い頻度で投与することができるので、患者は、いかなる薬物関連毒性からも回復することができる。あるいは、投与量スケジュールは、短縮することができる、すなわち、2~3か月間にわたり2週または3週ごとである。投与スケジュールは、他の間隔で繰り返してもよく、投与量は、適切に調節された用量およびスケジュールで、様々な非経口経路で与えられる。
【0144】
5.7.処置の方法
本開示のADCは、様々ながんの処置に使用することができる。ADCは、例えば、標準ケアの薬剤またはレジメンで、単独療法として、または併用療法レジメンの一部として使用することができる。いくつかの実施形態において、併用療法は、免疫療法、例えばチェックポイント阻害剤療法、キメラ抗原受容体(CAR)療法、養子T細胞療法(例として自己T細胞療法)、腫瘍溶解性ウイルス療法、樹状細胞ワクチン療法、インターフェロン遺伝子の刺激物質(STING)アゴニスト療法、toll様受容体(TLR)アゴニスト療法、腫瘍内CpG療法、サイトカイン療法(例としてIL2、IL12、IFN-α、もしくはINF-γ療法)、またはそれらの組合せと組み合わせて、ADCを投与することを含む。いくつかの実施形態において、併用療法は、免疫保存化学療法(例えば、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、もしくはメトトレキセートのような代謝拮抗物質、シクロホスファミド、ダカルバジン、メクロレタミン、ジアジコン、もしくはテモゾロマイドのようなアルキル化剤、ドキソルビシンもしくはエピルビシンのようなアントラサイクリン、ビンブラスチンのような抗微小管剤、シスプラチンもしくはオキサリプラチンのような白金化合物、パクリタキセルもしくはドセタキセルのようなタキサン、または、エトポシドもしくはミトキサントロンのようなトポイソメラーゼ阻害剤、または、ビンクリスチンのようなビンカアルカロイド)と組み合わせて、ADCを投与することを含む。がんの処置のためのADCに含めるのに好適な抗体は、T細胞の表面抗原を標的化するものである。例示的な抗体は、第5.2節に記載される。
【0145】
本開示のADCを使用して処置することができるがんの例として、限定されないが、膵がん、神経膠芽細胞腫、骨髄異形成症候群、前立腺がん(例えば去勢抵抗性前立腺がん)、肝がん(例えば肝細胞癌)、黒色腫、乳がん、尿路上皮がん(例えば膀胱がん、尿道がん、および尿管がん)、腎がん(例えば腎細胞癌および尿路上皮がん)、肺がん(例えば腺癌、扁平上皮細胞癌、および大細胞癌のような非小細胞肺がん(NSCLC)、ならびに小細胞肺がん)、ならびに結腸直腸がん(例えば腺癌、カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、および結腸直腸リンパ腫)が挙げられる。
【0146】
本開示のADCは、チェックポイント阻害剤、例えば、PD1、PDL1、CTLA4、TIGIT、LAG3、OX40、CD40、またはVISTAを標的化するチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。チェックポイント阻害剤は、抗体および小分子を含む。PD1を標的化する例示的なチェックポイント阻害剤として、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、およびドスタルリマブが挙げられる。PDL1を標的化する例示的なチェックポイント阻害剤として、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS-1001、およびBMS-1166が挙げられる。CTLA4を標的化する例示的なチェックポイント阻害剤は、イピリムマブである。TIGITを標的化する例示的なチェックポイント阻害剤として、エチギリマブ(etigilimab)、チラゴルマブ(tiragolumab)、およびAB154が挙げられる。LAG3を標的化する例示的なチェックポイント阻害剤として、LAG525、Sym022、レラトリマブ(relatlimab)およびTSR-033が挙げられる。OX40を標的化する例示的なチェックポイント阻害剤として、MEDI6469、PF-04518600、およびBMS 986178が挙げられる。CD40を標的化する例示的なチェックポイント阻害剤として、セリクレルマブ(selicrelumab)、CP-870,893、およびAPX005Mが挙げられる。VISTAを標的化する例示的なチェックポイント阻害剤は、HMBD-002である。
【0147】
BRAF突然変異を担持する黒色腫の処置のために、本開示のADCは、ベヌラフェニブ(venurafenibm)、ダブラフェニブ、およびトラメチニブのようなBRAF突然変異を特異的に標的化する薬物と組み合わせて使用することができる。
【0148】
悪性黒色腫の処置のために、本開示のADCは、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、またはアベルマブのようなチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0149】
非小細胞肺がん(NSCLC)の処置のために、本開示のADCは、含まれるシスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、イリノテカン、エトポシド、またはビンブラスチンのような標準ケアの化学療法の処置と組み合わせて使用することができる。加えて、ADCは、ベバシズマブまたはErbituxのような標的療法と組み合わせて使用することができる。加えて、ADCは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ドスタルリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、またはイピリムマブなどのチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0150】
膀胱がんの処置のために、本開示のADCは、シスプラチン、マイトマイシンC、カルボプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、5-FU、メトトレキセート、ビンブラスチン、イホスファミド、およびペメトレキセドを含むが、限定されない標準ケアの処置と組み合わせて使用することができる。加えて、ADCは、イピリムマブのようなチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0151】
腎がんの処置のために、本開示のADCは、標準ケアの処置、例えば、血管形成および/または特異的チロシンキナーゼを遮断する薬剤、例として、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、エベロリムス、パゾパニブ、およびアキシチニブと組み合わせて使用することができる。加えて、ADCは、ニボルマブのようなチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0152】
乳がんの処置のために、本開示のADCは、アンスラサイクリン(ドキソルビシンまたはエピルビシン)、およびタキサン(パクリタキセルまたはドセタキセル)、ならびにフルオロウラシル、シクロホスファミド、およびカルボプラチンのような、標準ケアの化学療法剤と組み合わせて使用することができる。加えて、本開示のADCは、標的療法と組み合わせて使用することができる。HER2/neu陽性腫瘍に対する標的療法として、トラスツズマブおよびペルツズマブが挙げられ、エストロゲン受容体(ER)陽性腫瘍に対する標的療法として、タモキシフェン、トレミフェン、およびフルベストラントが挙げられる。加えて、ADCは、アテゾリズマブのようなチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0153】
膵がんに対して、本開示のADCは、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン、パクリタキセル、カペシタビン、シスプラチン、またはドセタキセルのような、標準ケアの化学療法剤と組み合わせて使用することができる。加えて、ADCは、EGFRを阻害するエルロチニブのような、標的療法と組み合わせて使用することができる。
【0154】
神経膠芽細胞腫に対して、本開示のADCは、カルボプラチン、シクロホスファミド、エトポシド、ロムスチン、メトトレキセート、またはプロカルバジンのような、標準ケアの化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
【0155】
前立腺がんに対して、本開示のADCは、ドセタキセルを含む、標準ケアの化学療法剤と組み合わせて使用することができ、ステロイドであるプレドニゾン、またはカバジタキセルを併用してもよい。加えて、ADCは、イピリムマブのようなチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0156】
1つまたは複数の療法と組み合わせる本開示のADCの使用は、療法を投与する順番を制限しない。例えば、本開示のADCは、対象が1つまたは複数の療法で処置される前、処置される間、または処置した後に投与することができる。いくつかの実施形態において、本開示のADCは、別の療法(例えば上述の第2の治療剤)での患者の処置の前(例えば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前、もしくは12週間前)、処置と同時に、または処置に続いて(例えば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後、もしくは12週間後)、投与される。いくつかの実施形態において、本開示のADCは、第2の治療剤として同じレジメンに組み込まれる。
【実施例】
【0157】
以下の略語は、実施例を通して見られる。
Boc - tert-ブチルオキシカルボニル
DCM - ジクロロメタン
DMA - ジメチルアミン
DMF - ジメチルホルムアミド
DIPEA - N,N-ジイソプロピルエチルアミン
EtOAc - 酢酸エチル
EtOH - エタノール
Fmoc - フルオレニルメチルオキシカルボニル
HOBt - ヒドロキシベンゾトリアゾール
MeOH - メタノール
NaHMDS - ナトリウムヘキサメチルジシルアジド
RT - 室温、およそ21℃
TBTU - O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
TEA - トリエチルアミン
THF - テトラヒドロフラン
TFA - トリフルオロ酢酸
TMS-イミダゾール - 1-(トリメチルシリル)イミダゾール
【0158】
6.1.
[実施例1]
4-(6-メチルピリジン-2-イル)-5-(1,5-ナフチリジン-2-イル)-1,3-チアゾール-2-アミン(化合物A)の合成
化合物Aを、以下のスキーム1における一般的方法にしたがって調製した。
【0159】
【0160】
6.1.1. 2-メチル-1,5-ナフチリジン(A1)
濃硫酸(2.5ml)、m-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム(2.08g、9.24mmol)、ボロン酸(445mg、7.21mmol)、および硫酸第一鉄七水和物(167mg、0.60mmol)の混合物を、室温で撹拌した。グリセロール(1.5ml)を、続いて5-アミノ-2-メチルピリジン(A-SM)(500mg、4.62mmol)および水(2.5ml)を、反応混合物に添加し、135℃で18時間加熱した。TLCにより測定した反応完了後、反応混合物をおよそ21℃に冷却し、4NのNaOHを使用して塩基化し、EtOAc(2×100ml)で抽出した。有機抽出物を合わせて、水(200ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させて、粗化合物A1を得た。粗体を、(2%のMeOH/CH2Cl2)を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡褐色結晶質固体として化合物A1(200mg、30%)を得た。
【0161】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.92 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 8.35 (d, J= 9.0 Hz, 1H), 8.31 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 7.62 (dd, J = 8.5, 4.5 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 2.8 (s, 3H)
【0162】
LC-MS(ESI):m/z 145[M+H]+
【0163】
6.1.2. 1-(6-メチルピリジン-2-イル)-2-(1,5-ナフチリジン-2-イル)エタン-1-オン(A2)
A1(200mg、1.38mmol)およびメチル6-メチルピコリネート(209mg、1.38mmol)の無水THF(10ml)中の溶液を、N2雰囲気下に置き、-78℃に冷却した。カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(トルエン中に0.5M、6.9ml、3.47mmol)を、5分間にわたって滴下添加した。反応混合物を、-78℃で1時間撹拌し、次いでおよそ21℃に加温し、20時間維持した。反応完了後(TLCにより測定)、反応混合物を、飽和塩化アンモニウム溶液(20ml)でクエンチした。水性層をEtOAc(2×20ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を、水(100ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、蒸発させて、粗化合物A2を得た。粗物質を、カラムクロマトグラフィー(1%のMeOH/CH2Cl2)により精製して、橙黄色固体として化合物A2(110mg、30.5%)を得た。
【0164】
1H NMR (400 MHz, CDCl3: エノール型):δ 15.74 (brs,-OH), 8.69 (t, J = 3.6, 1H), 8.12 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.06 (dd, J = 8.4, 4.4 Hz, 2H), 7.82 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.55 (dd, J= 8.4, 4.8 Hz, 1H) 7.45 (d, J= 9.6 Hz,1H), 7.3 (dd, J= 7.6, 4.0 Hz, 1H), 7.16 ( s, 1H), 2.75(s, 3H)
【0165】
LC-MS(ESI):m/z 264[M+H]+
【0166】
6.1.3. 4-(6-メチルピリジン-2-イル)-5-(1,5-ナフチリジン-2-イル)-1,3-チアゾール-2-アミン(化合物A)
A2(110mg、0.418mmol)の1,4-ジオキサン(10ml)中の溶液を、臭素(0.025ml、0.501mmol)で処理した。得られた反応混合物を、およそ21℃で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮して、粗A3(120mg)を得て、これをさらに精製することなく次のステップで用いた。粗A3(120mg)を、エタノール(15ml)に溶解させた。次いで、チオ尿素(3.5mg、0.046mmol)を添加し、反応混合物を、(出発物質の完全な消費がTLCにより観察されるまで)78℃で4時間加熱した。反応混合物を、およそ21℃に冷却し、アンモニア溶液(25%、1.5ml)を穏やかに撹拌しながら添加した。溶媒を蒸発させ、次いで残留物をCH2Cl2(2×20ml)に溶解させ、水(50.0ml)で洗浄した。次いで、分離した有機層を、1NのHCl(30ml×2)で洗浄した。合わせた水性層を35%の水酸化ナトリウム水溶液(20ml)で塩基化し、CH2Cl2(2×20ml)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、粗化合物Aを得た。粗化合物Aをアセトニトリル(2ml)から再結晶させて、黄色結晶質固体として精製した化合物A(35mg、2ステップにわたって49%の収率)を得た。
【0167】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.86 (dd, J = 4.4, 1.6 Hz, 1H), 8.29 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 9.2 Hz,1H), 7.64 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.60-7.55 (m, 2H), 7.46 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 7.6, 1H), 5.32 (brs, 2H), 2.57 (s, 3H)
【0168】
LC-MS(ESI):m/z 320[M+H]+
【0169】
UPLC純度:97.6%
【0170】
6.2.
[実施例2]
N-メチル-2-(4-{4-[3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリジン-2-イル}フェノキシ)エタン-1-アミン(化合物B)の合成
化合物Bを、以下のスキーム2における一般的方法にしたがって調製した。
【0171】
【0172】
6.2.1. tert-ブチル(2-クロロエチル)(メチル)カルバメート(B7)
Boc-無水物(1.7ml、7.30mmol)のTHF(4ml)中の撹拌溶液に、同時に、B6(1g、7.69mmol)の水(4ml)中の溶液、およびTEA(1ml、7.69mmol)のTHF(4ml)中の溶液を、1時間にわたって添加した。得られた混合物を、およそ21℃で16時間撹拌した。反応混合物を、飽和NaCl溶液(20ml)で希釈し、DCM(3×50ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥させ、真空で濃縮して、粗化合物を得て、これを10%のEtOAc/ヘキサンを使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色液体として化合物B7(1g、5.18mmol、71%)を得た。
【0173】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 3.58-3.52 (m, 4H), 2.93 (s, 3H), 1.46 (s, 9H)
【0174】
6.2.2. tert-ブチルメチル(2-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバメート(Int-B)
4-ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステル(789mg、3.58mmol)のDMF(13ml)中の撹拌溶液に、B7(900mg、4.66mmol)、KI(18mg、0.10mmol)、およびCs2CO3(2.57g、7.88mmol)を、アルゴン雰囲気下で添加した。反応混合物を、65℃に加熱し、16時間撹拌した。反応混合物を、水(20ml)に注ぎ入れ、EtOAc(3×20ml)で抽出した。合わせた有機層を、減圧下で濃縮して粗体を得て、これを7%のEtOAc/ヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体としてInt-B(580mg、1.53mmol、43%)を得た。
【0175】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.74 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.87 (d, J= 8.8 Hz, 2 H), 4.16-4.06 (m, 2H), 3.65-3.59 (m, 2H), 2.97 (s, 3H), 1.45 (s, 9H), 1.33 (s, 12H)
【0176】
6.2.3. 2-(2-ブロモピリジン-4-イル)-1-(ピリジン-2-イル)エタン-1-オン(B2)
2-ブロモ-4-メチルピリジン(B1)(2g、11.62mmol)のTHF(30ml)中の撹拌溶液に、アルゴン下の-78℃で、NaHMDS(THF中の2M、12.7ml、25.58mmol)の溶液を滴下添加した。黄色溶液を、-78℃で30分間撹拌した。次いで、ピコリン酸エチル(1.72ml、12.79mmol)のTHF(10ml)中の溶液を添加し、反応混合物を、およそ21℃に加温し、16時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、固体残留物をジエチルエーテルで粉砕し、濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。次いで、固体を飽和NH4Cl溶液(30ml)で希釈し、水性相をEtOAc(2×200ml)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、10%のEtOAc/ヘキサンを使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色固体として化合物B2(2.06g、7.46mmol、64.3%)を得た。
【0177】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 8.75 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.32 (d, J= 5.2 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.89 (t, J =7.6 Hz 1H), 7.56-7.51(m, 2H), 7.28-7.25 (m, 1H), 4.55 (s, 2H)
【0178】
LC-MS(ESI):m/z 277[M]+
【0179】
6.2.4. 2-ブロモ-4-[3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリジン(B3)
B2(850mg、3.07mmol)の乾燥DMF(3.4ml)中の溶液を、アルゴン下で、DMF中の氷酢酸(0.45ml、7.39mmol)で処理した。DMA(0.6ml、4.61mmol)を滴下添加し、混合物をおよそ21℃で2時間、アルゴン雰囲気下で撹拌した。ヒドラジン一水和物(1.15ml、23.09mmol)を滴下添加し、得られた混合物を、50℃で3時間加熱し、およそ21℃で16時間加熱した。反応混合物を、水(30ml)に注ぎ入れ、CH2Cl2(3×30ml)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させて、粗化合物を得た。粗生成物を、30%のEtOAc/ヘキサンを使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色固体として化合物B3(560mg、1.86mmol、60.6%)を得た。
【0180】
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ 8.74 (brs, 1H), 8.34 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.83 (brs, 1H), 7.81 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.49 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.39-7.84 (m, 1H), 7.31-7.26 (m, 1H)
【0181】
LC-MS(ESI):m/z 301[M]+
【0182】
6.2.5. 2-ブロモ-4-(3-(ピリジン-2-イル)-1-トリチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン(B4)
B3(500mg、1.66mmol)のアセトン(10ml)中の撹拌溶液に、K2CO3(1.37g、9.99mmol)およびトリチルクロリド(464mg、2.49mmol)を添加した。その後、反応混合物を、加熱還流し、24時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、次いで、CH2Cl2(20ml)と水(10ml)との間で分配した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗固体を、2%のMeOH/CH2Cl2を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体として化合物B4(402mg、0.74mmol、44%)を得た。
【0183】
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ 8.53 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.75-7.05 (m, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.35-7.32 (m, 9H), 7.25-7.22 (m, 8H)
【0184】
6.2.6. tert-ブチルメチル(2-(4-(4-(3-(ピリジン-2-イル)-1-トリチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバメート(B5)
B4(100mg、0.18mmol)のトルエン(2ml)中の撹拌溶液に、EtOH(0.75ml)中のInt-B(185mg、0.49mmol)を、続いて2MのNa2CO3溶液(0.45ml)を、アルゴン雰囲気下で添加した。反応混合物を、アルゴンで20分間脱気し、次いでPd(PPh3)4(16mg、0.01mmol)を添加し、3時間還流した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、水に注ぎ入れ、トルエン(3×15ml)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、これを30%のEtOAc/ヘキサンを使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色固体として化合物B5(70mg、0.09mmol、53%)を得た。
【0185】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.53 (s, 1H), 8.49 (d, J= 4.8 Hz, 1H),7.82 (d, J = 8.8 Hz, 2H) 7.74-7.76 (m, 3H), 7.60 (s, 1H), 7.40-7.34 (s, 8H), 7.31-7.30 (m, 2H), 7.24-7.19 (m, 4H), 7.12- 7.10 (m, 1H), 6.93(d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.19-4.12 (m, 2H), 3.66-3.58 (m, 2H), 2.98 (s, 3H), 1.46 (s, 9H).
【0186】
6.2.7. N-メチル-2-(4-(4-(3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エタン-1-アミン塩酸塩(化合物B)
B5(70mg、0.09mmol)のCH2Cl2(6ml)中の撹拌溶液に、1,4-ジオキサン(0.5ml)中の4NのHClを0℃で添加した。反応混合物を、アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、溶媒を減圧下で蒸発させて、粗化合物を得て、これをn-ペンタン(2×1ml)で粉砕し、乾燥させて、無色固体として化合物BのHCl塩を得た(25mg、0.06mmol、69%)。
【0187】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 8.94 (brs, 2H), 8.62-8.56 (m, 3H), 8.30 (brs, 1H), 8.03-7.96 (m, 3H), 7.86 (d, J = 7.6 Hz, 1H),7.69 (brs, 1H), 7.49 (dd, J=7.2, 5.6 Hz, 1H), 7.29 (d, J=7.6 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.36 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.39-3.35 (m, 2H), 2.67-2.63 (m, 3H)
【0188】
LC-MS(ESI):m/z 372[M+H]+
【0189】
6.3.
[実施例3]
N-メチル-2-(4-{4-[3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリジン-2-イル}フェノキシ)エタン-1-アミン(化合物C)の合成
化合物Cを、以下のスキーム3における一般的方法にしたがって調製した。
【0190】
【0191】
6.3.1. 2-(2-ブロモピリジン-4-イル)-1-(6-メチルピリジン-2-イル)エタン-1-オン(C2)
2-ブロモ-4-メチルピリジン(B1)(1g、5.81mmol)のTHF(15ml)中の撹拌溶液に、アルゴン下の-78℃で、NaHMDS(THF中の2M、6.39ml、12.8mmol)の溶液を滴下添加した。黄色溶液を、-78℃で30分間撹拌した。次いで、6-メチルピコリン酸メチルエステル(1.19ml、8.72mmol)のTHF(7ml)中の溶液を添加し、反応混合物を、最大でおよそ21℃に加温し、16時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、固体残留物をジエチルエーテルで粉砕し、濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。次いで、固体を飽和NH4Cl溶液(20ml)で希釈し、水性相をEtOAc(2×150ml)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、10%のEtOAc/ヘキサンを使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色固体として化合物C2(1.1g、3.79mmol、65.4%)を得た。
【0192】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.30 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.73 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.36 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 5 Hz, 1H), 4.52 (s, 2H), 2.64 (s, 3H)
【0193】
LC-MS(ESI):m/z 291[M]+
【0194】
6.3.2. 2-ブロモ-4-[3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリジン(C3)
C2(300mg、1.03mmol)の乾燥DMF(1ml)中の溶液を、アルゴン下で、DMF中の氷酢酸(0.14ml、2.48mmol)で処理した。DMA(0.2ml、1.55mmol)を滴下添加し、混合物をおよそ21℃で1時間、アルゴン雰囲気下で撹拌した。ヒドラジン一水和物(0.37ml、7.75mmol)を滴下添加し、得られた混合物を、50℃で3時間加熱し、およそ21℃で16時間加熱した。反応混合物を、水(20ml)に注ぎ入れ、CH2Cl2(3×20ml)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させて、粗C3を得た。粗C3を、2%のMeOH/DCMを使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色固体として精製したC3(172mg、0.54mmol、53%)を得た。
【0195】
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ 11.40 (brs, 1H), 8.37 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.58 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.34 (d, J= 6.0 Hz, 1H), 7.26 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 2.60 (s, 3H)
【0196】
LC-MS(ESI):m/z 315[M+H]+
【0197】
6.3.3. 2-ブロモ-4-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1-トリチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン(C4)
C3(40mg、0.12mmol)のアセトン(2ml)中の撹拌溶液に、K2CO3(53mg、0.38mmol)およびトリチルクロリド(53mg、0.19mmol)を添加した。その後、反応混合物を、加熱還流し、24時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、次いで、CH2Cl2(5ml)と水(5ml)との間で分配した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗固体を、2%のMeOH/CH2Cl2を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体として化合物C4(30mg、0.05mmol、41%)を得た。
【0198】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 8.22 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.59 (s, 3H), 7.39-7.35 (m, 9H), 7.31 (s, 1H), 7.28-7.25 (m, 6H), 7.24 (d, J = 12 Hz, 1H), 2.53 (s, 3H)
【0199】
LC-MS(ESI):m/z 558[M+H]+
【0200】
6.3.4. tert-ブチルメチル(2-(4-(4-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1-トリチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバメート(C5)
C4(150mg、0.26mmol)のトルエン(5ml)中の撹拌溶液に、EtOH(1ml)中のInt-B(152mg、0.40mmol)を、続いて2MのNa2CO3溶液(0.7ml)を、アルゴン雰囲気下で添加した。反応混合物を、アルゴンで20分間脱気し、次いでPd(PPh3)4(25mg、0.02mmol)を添加し、6時間還流した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、水に注ぎ入れ、トルエン(3×10ml)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗C5を得て、これを30%のEtOAc/ヘキサンを使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、褐色固体として精製したC5(51mg、0.07mmol、26%)を得た。
【0201】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.48 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.82 (d, J = 8.8 Hz, 3H), 7.74 (s, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.56 (d, J = 15.2Hz, J = 7.6Hz, 2H), 7.35-7.33 (m, 8H), 7.28-7.27 (m, 6H), 7.08 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 6.93 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.16-4.08 (m, 2H), 3.63-3.58 (m, 2H), 2.98 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 1.46 (s, 9H)
【0202】
6.3.5. N-メチル-2-(4-{4-[3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリジン-2-イル}フェノキシ)エタン-1-アミン(化合物C)
C5(51mg、0.07mmol)のCH2Cl2(5ml)中の撹拌溶液に、1,4-ジオキサン(0.3ml)中の4NのHClを0℃で添加した。次いで、反応混合物を、アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、溶媒を減圧下で蒸発させて、粗化合物Cを得た。次いで、粗化合物Cをn-ペンタン(2×1ml)で粉砕し、乾燥させて、褐色固体として化合物CをHCl塩として得た(20mg、0.05mmol、74%)
【0203】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 8.93 (brs, 2H), 8.61 (d, J = 5.6 Hz, 1H),8.56 (brs, 1H), 8.33 (brs, 1H), 8.03 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.88 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.78-7.74 (m,1H), 7.65 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.36 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.36 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 2.66-2.63 (m, 3H), 2.50-2.46 (m, 3H)
【0204】
LC-MS(ESI):m/z 386[M+H]+
【0205】
6.4.
[実施例4]
(Z)-N-エチル-3-(((4-(N-(2-(メチルアミノ)エチル)メチルスルホンアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキサミド(化合物D)の合成
化合物Dを、以下のスキーム4における一般的方法にしたがって調製した。
【0206】
【0207】
6.4.1. メチル1-アセチル-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(D2)
メチル2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(D1)(2.0g、10.47mmol)の無水酢酸(16ml)中の撹拌溶液を、130℃に、不活性雰囲気下で6時間加熱した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、およそ21℃に冷却した。沈殿物を濾過し、n-ヘキサン(2×50ml)で洗浄し、真空で乾燥して、黄色固体として化合物D2(1.5g、61.5%)を得た。
【0208】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 8.66 (s, 1H), 7.82 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.91 (s, 2H), 3.87 (s, 3H), 2.57 (s, 3H)
【0209】
6.4.2. メチル(Z)-1-アセチル-3-(ヒドロキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキシレート(D3)
化合物D2(1.5g、6.43mmol)のDMF(10ml)中の撹拌溶液に、TBTU(2.69g、8.36mmol)、安息香酸(903mg、7.40mmol)、およびトリエチルアミン(2.2ml)を、不活性雰囲気下の0℃で添加した。反応混合物を、およそ21℃に加温し、16時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、氷冷水(30ml)でクエンチし、EtOAc(2×40ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、粗生成物D3を得て、これを80%のEtOAc/ヘキサンを使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色固体として化合物D3(900mg、42%)を得た。
【0210】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 14.01 (brs, 1H), 8.93 (s, 1H), 7.76-7.70 (m, 3H), 7.67-7.63 (m, 1H), 7.59-7.56 (m, 2H), 7.12 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.90 (s, 3H), 2.83 (s, 3H)
【0211】
LC-MS(ESI):m/z 338.3[M+H]+
【0212】
6.4.3. (Z)-3-(ヒドロキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボン酸(D4)
化合物D3(900mg、2.67mmol)のMeOH(15ml)中の撹拌溶液に、1NのNaOH水溶液(15ml)をおよそ21℃で添加した。反応混合物を、100℃に加熱し、6時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、およそ21℃に冷却し、1NのHCl水溶液(13ml)でクエンチし、30分間撹拌した。沈殿した固体を濾過し、20%のEtOAc/ヘキサンで洗浄して、オフホワイトの固体として化合物D4(580mg、77%)を得て、これをさらに精製することなく次のステップで用いた。
【0213】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 12.76 (brs, 1H), 11.61 (brs, 1H), 7.77-7.50 (m, 8H), 7.13 (brs, 1H)
【0214】
6.4.4. (Z)-N-エチル-3-(ヒドロキシ(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキサミデレート(carboxamidelate)(断片A)
化合物D4(580mg、2.06mmol)のDMF(10ml)中の撹拌溶液に、TBTU(729mg、2.27mmol)、HOBt(306mg、2.27mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.9ml、10.32mmol)を、不活性雰囲気下のおよそ21℃で添加した。30分後、THF(2.1ml、4.12mmol)中の2Nのエチルアミンを、0℃で添加し、1時間撹拌した。次いで、反応混合物を、およそ21℃に加温し、さらに16時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、揮発物を、真空で除去した。残留物を水(15ml)で希釈し、濾過し、20%のEtOAc/ヘキサン(2×10ml)で洗浄し、粗生成物を得て、これを10%のMeOH/CH2Cl2を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、オフホワイトの固体として断片A(410mg、64.5%)を得た。
【0215】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 13.62 (brs, 1H), 11.39 (brs, 1H), 8.35-8.33 (m, 1H), 7.76-7.52 (m, 5H), 7.44-7.36 (m, 3H), 3.29-3.22 (m, 2H), 1.10 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
【0216】
LC-MS(ESI):m/z 307.1(M-H+)
【0217】
6.4.5. N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N-(4-ニトロフェニル)メタンスルホンアミド(D8)
化合物D7(800mg、3.70mmol)のアセトン(15ml)中の撹拌溶液に、炭酸カリウム(1.32g、9.62mmol)、ヨウ化ナトリウム(110mg、0.74mmol)、および化合物B6(799mg、5.55mmol)を、不活性雰囲気下の0℃で添加した。反応混合物を、50℃に加熱し、20時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、揮発物を、真空で除去した。残留物を、水(20ml)で希釈し、EtOAc(2×40ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、粗生成物を得て、これを5%のMeOH/CH2Cl2を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体として化合物D8(460mg、43%)を得た。
【0218】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6):δ 8.27 (d, J = 9.5 Hz, 2H), 7.68 (d, J = 9.5 Hz, 2H), 3.85 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.13 (s, 3H), 2.31 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.12 (s, 6H)
【0219】
LC-MS(ESI):m/z 288.3[M+H]+
【0220】
6.4.6. N-(4-アミノフェニル)-N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)メタンスルホンアミド(断片B)
化合物D8(460mg、1.60mmol)のMeOH(10ml)中の撹拌溶液に、10%のPd/C(40mg)を添加し、水素雰囲気(バルーン圧)下のおよそ21℃で3時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、Celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、MeOH(10ml)で洗浄した。濾液を真空で濃縮して、粗生成物を得て、これを10%のMeOH/CH2Cl2を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体として断片B(300mg、73%)を得た。
【0221】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.54 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.25 (s, 2H), 3.55 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.91 (s, 3H), 2.24 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.12 (s, 6H)
【0222】
LC-MS(ESI):m/z 258.2[M+H]+
【0223】
6.4.7. (Z)-3-(((4-(N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)メチルスルホンアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-N-エチル-2-オキソインドリン-6-カルボキサミド(D5)
断片A(200mg、0.64mmol)、断片B(500mg、1.94mmol)およびTMS-イミダゾール(455mg、3.24mmol)のTHF(5ml)中の溶液を、マイクロ波の下、170℃に1時間加熱した。出発物質の消費(TLCおよびLC-MSによりモニタリング)後、揮発物を、真空で除去した。残留物を水(10ml)で希釈し、EtOAc(3×25ml)で抽出して、粗生成物を得て、これを分取HPLCにより精製して、淡黄色固体として化合物D5(150mg、42%)を得た。
【0224】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 12.14 (s, 1H), 10.91 (s, 1H), 8.17 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 7.64-7.57 (m, 3H), 7.53-7.51 (m, 2H), 7.34 (s, 1H), 7.17 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.84 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.73 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.58 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 3.23-3.20 (m, 2H), 2.93 (s, 3H), 2.13 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.90 (s, 6H), 1.06 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
【0225】
LC-MS(ESI):m/z 548.6[M+H]+
【0226】
6.4.8. (Z)-N-エチル-3-(((4-(N-(2-(メチルアミノ)エチル)メチルスルホンアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキサミド(化合物D)
化合物D5(70mg、0.12mmol)の乾燥トルエン(3ml)中の撹拌溶液に、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルクロリド(0.04ml、0.19mmol)を、不活性雰囲気下のおよそ21℃で添加した。反応混合物を、還流温度(120℃)に加熱し、16時間維持した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、およそ21℃に冷却し、EtOAc(30ml)で希釈し、1NのHCl水溶液(15ml)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、モノ脱メチル化し、ジ-troc保護化した化合物(40mg)を得た。
【0227】
上記の反応由来の粗生成物を、酢酸(3ml)に溶解させ、亜鉛粉末(9mg、0.13mmol)を、不活性雰囲気下のおよそ21℃で添加した。反応混合物を、50℃に加熱し、8時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、およそ21℃に冷却し、揮発物を、真空で除去した。残留物を、水(20ml)で希釈し、EtOAc(2×25ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和NaHCO3溶液(20ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗化合物Dを得て、これを5~6%のMeOH/CH2Cl2を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、83%のHPLC純度の12mgの化合物Dを得た。
【0228】
反応物を60mgのスケールで繰り返し、得られた粗生成物を上記バッチと組み合わせ、分取HPLCにより精製して、淡黄色固体として化合物D(8.0mg、6.3%)を得た。
【0229】
1H NMR (400 MHz, CD3OD):δ 7.65-7.59 (m, 3H), 7.52.7.50 (m, 2H), 7.40 (s, 1H), 7.31 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.07 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.95 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.95 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.39-3.32 (m, 2H), 3.05 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.93 (s, 3H), 2.71 (s, 3H), 1.19 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
【0230】
LC-MS(ESI):m/z 534.6[M+H]+
【0231】
UPLC純度:99.18%
【0232】
6.5.
[実施例5]
(Z)-N-エチル-3-(((4-(N-(2-(メチルアミノ)エチル)メチルスルホンアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキサミド(化合物D)の代替合成
化合物Dをまた、以下のスキーム5における一般的方法にしたがって調製した。
【0233】
【0234】
6.5.1. N-(2-ブロモエチル)-N-(4-ニトロフェニル)メタンスルホンアミド(D9)
化合物D7(1.0g、4.65mmol)のDMF(10ml)中の撹拌溶液に、水酸化ナトリウム(鉱油中に60%、320mg、7.99mmol)を、不活性雰囲気下の0℃で添加し、およそ21℃で30分間撹拌した。この混合物に、1,2-ジブロモエタン(2.18g、11.60mmol)を、およそ21℃で添加した。混合物を、90℃に加熱し、24時間撹拌した。反応物をTLCによりモニタリングした。反応混合物をおよそ21℃に冷却し、氷冷水(30ml)でクエンチし、EtOAc(2×40ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、粗生成物を得て、これを5%のMeOH/CH2Cl2を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、40%の未反応出発物質を含有する混合物として1.2gのD9を得た。得られた混合物を、さらに精製することなく次の反応に直接用いた。
【0235】
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ 8.29 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 4.12 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.44 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.01 (s, 3H)
【0236】
6.5.2. N-(2-(メチルアミノ)エチル)-N-(4-ニトロフェニル)メタンスルホンアミド(D10)
化合物D9(1.2g、不純)のTHF(10ml)中の撹拌溶液に、トリエチルアミン(1.6ml)およびメチルアミン(THF中の2M、9.3ml、18.63mmol)を、封管中で、不活性雰囲気下のおよそ21℃で添加した。反応混合物を、80℃に加熱し、16時間維持した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、およそ21℃に冷却し、減圧下で濃縮して、粗D10を得た。粗D10を、15%のMeOH/CH2Cl2を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色固体として化合物D10(500mg、2ステップにわたって39%の全収率)を得た。
【0237】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6):δ 8.94 (brs, 1H), 8.31 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 4.06 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.15 (s, 3H), 3.00 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.55 (s, 3H)
【0238】
6.5.3. tert-ブチルメチル(2-(N-(4-ニトロフェニル)メチルスルホンアミド)エチル)カルバメート(D11)
D10(500mg、1.83mmol)のCH2Cl2(10ml)中の撹拌溶液に、トリエチルアミン(0.4ml、2.61mmol)および無水Boc(659mg、3.02mmol)を、不活性雰囲気下のおよそ21℃で添加し、5時間維持した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、揮発物を、真空で除去して、粗生成物を得て、これを5%のMeOH/CH2Cl2を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色の濃厚なシロップとしてD11(320mg、47%)を得た。
【0239】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 8.27 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.68 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.91 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.28-3.25 (m, 2H), 3.07 (s, 3H), 2.72-2.70 (m, 3H), 1.33-1.27 (m, 9H)
【0240】
LC-MS(ESI):m/z 274.2(M+-B℃)
【0241】
6.5.4. tert-ブチル(2-(N-(4-アミノフェニル)メチルスルホンアミド)エチル)(メチル)カルバメート(断片BのBoc変異体)
化合物D11(250mg、0.67mmol)のEtOH(10ml)中の溶液に、ラネー-Ni(40mg)を添加し、水素雰囲気(バルーン圧)下のおよそ21℃で1時間撹拌した。出発物質の完全な消費後(TLCによりモニタリング)、反応混合物を、Celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、EtOH(10ml)で洗浄した。合わせた濾液を真空で濃縮して、粗生成物を得て、これを10%のMeOH/CH2Cl2を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体として断片BのBoc変異体(180mg、77%)を得た。
【0242】
H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.53 (d, J = 8.4 HZ, 2H), 5.24 (s, 2H), 3.60 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.18 (t, J = 6.4 HZ, 2H), 2.88 (s, 3H), 2.75-2.71 (m, 3H), 1.36-1.33 (m, 9H)
【0243】
LC-MS(ESI):m/z 244.2(M+-B℃)
【0244】
6.5.5. tert-ブチル(Z)-(2-(N-(4-(((6-(エチルカルバモイル)-2-オキソインドリン-3-イリデン)(フェニル)メチル)アミノ)フェニル)メチルスルホンアミド)エチル)(メチル)カルバメート(D10)
断片A(70mg、0.22mmol)、断片BのBoc変異体(155mg、0.45mmol)およびTMS-イミダゾール(159mg、1.13mmol)のTHF(3ml)中の溶液を、マイクロ波の下、170℃に160分間加熱した。出発物質の消費(TLCおよびLC-MSによりモニタリング)後、揮発物を、真空で除去して、残留物を得て、これを分取HPLCにより精製して、淡黄色固体として化合物D10(50mg、36%)を得た。
【0245】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 12.13 (brs, 1H), 8.01 (brs, 1H), 7.61-7.51 (m, 3H), 7.44-7.41 (m, 3H), 7.13-7.11 (m, 2H), 6.98 (d, J = 8.4 HZ, 1H), 6.75 (d, J = 8.4 HZ, 2H), 5.96-5.91 (m, 2H), 3.74-3.71 (m, 2H), 3.49-3.41 (m, 2H), 3.30-3.27 (m, 2H), 2.80 (s, 6H), 1.40-1.36 (m, 9H), 1.19 (t, J = 7.2 HZ, 3H)
【0246】
LC-MS(ESI):m/z 634.6[M+H]+
【0247】
6.5.6. (Z)-N-エチル-3-(((4-(N-(2-(メチルアミノ)エチル)メチルスルホンアミド)フェニル)アミノ)(フェニル)メチレン)-2-オキソインドリン-6-カルボキサミド塩酸塩(HCl塩としての化合物D)
化合物D10(20mg、0.03mmol)のジエチルエーテル(3ml)中の撹拌溶液に、1,4-ジオキサン(0.3ml)中の4NのHClを、不活性雰囲気下の0℃で添加した。反応混合物を、およそ21℃で1時間撹拌した。出発物質の完全な消費(TLCによりモニタリング)後、揮発物を、真空で除去して、粗生成物を得て、これをn-ペンタン(2×4ml)で粉砕して、淡黄色固体として、HCl塩としての化合物D(12mg、71%)を得た。
【0248】
1H NMR (400 MHz, CD3OD):δ 7.65-7.59 (m, 3H), 7.52.7.50 (m, 2H), 7.40 (s, 1H), 7.31 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.07 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.95 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.95 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.39-3.32 (m, 2H), 3.05 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.93 (s, 3H), 2.71 (s, 3H), 1.19 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0249】
LC-MS(ESI):m/z 534.7[M+H]+
【0250】
UPLC純度:96.26%
【0251】
6.6.
[実施例6]
化合物A~Dの活性を試験するためのin vitroアッセイ
6.6.1. N-(2-ブロモエチル)-N-(4-ニトロフェニル)メタンスルホンアミド(2)
化合物A~Dを試験して、これらが、in vitroでHEK293T細胞のTGF-β誘導性ルシフェラーゼ活性を阻害できるかどうかを決定した。
【0252】
30,000個のHEK293T細胞を、96ウェル白色平底プレートに終夜、播種した。次の日、ウェル当たり100ngのSMADルシフェラーゼのレポータープラスミドを、リポフェクトアミンを使用して、24時間、細胞内にトランスフェクトした。次の日、細胞を、化合物A~Dおよび100pMのTGFβで24時間処理した。ルシフェラーゼ活性を、Dual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイキット(Promega)を使用して測定した。アッセイは、化合物A、B、およびDに対しては2回行い、化合物Cに対しては3回行った。結果を表4に示す。
【0253】
【0254】
【0255】
化合物A~Cは、最大の阻害活性を示した。
【0256】
6.6.2. MTS増殖アッセイ
化合物A~Dを試験して、これらが、初代マウスCD4+T細胞のTGF-βシグナル伝達を阻害できるかどうかを決定した。
【0257】
初代マウスCD4+T細胞を、RoboSep(商標)細胞分離システム(Stemcell Technologies)を使用して、C57/B6マウスの脾臓から分離した。0.5μg/mlのハムスター抗マウスCD3e抗体(145-2C11、eBioscience)を、96ウェル平底プレート上に終夜、コーティングした。1×105個の精製したCD4+T細胞を、1μg/mlの可溶性のハムスター抗マウスCD28抗体(37.51、BD Biosciences)、1nMのTGF-β1、および化合物A~Dの8倍連続希釈液でインキュベートした。72時間後、細胞増殖を、製造会社の説明書にしたがって、MTSアッセイ(Promega)を使用して測定した。結果を表5に示す。
【0258】
【0259】
【0260】
2つの異なる実験において、IC50値は、化合物Dでは得られなかった。化合物Aもまた、マウスCD4+T細胞において一貫した効果を示さなかった。しかし、化合物BおよびCは、T細胞増殖のTGF-β媒介性阻害を逆転した。
【0261】
2つのアッセイに基づいて、化合物Cが、ADCにコンジュゲート化するのに選択された。
【0262】
6.7.
[実施例7]
4-((S)-2-((S)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2H-ピロール-1(5H)-イル)ヘキサンアミド)-3-メチルブタンアミド)-5-ウレイドペンタンアミド)ベンジルメチル(2-(4-(4-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバメートの合成
化合物Cを、以下のスキーム6における一般的方法にしたがって、バリン-シトルリンリンカーに連結させた。
【0263】
【0264】
L1(122mg、0.165mmol、1.1当量)およびTEA(52μl、0.375mmol、2.5当量)を、化合物C(58mg、0.150mmol、1.0当量)のDMF(2ml)中の溶液に、0℃で添加し、反応混合物をおよそ21℃で2時間撹拌して、粗ADC-1を得た。粗ADC-1を、分取HPLCにより精製して、白色固体として精製したADC-1(34mg、24%の収率)を得た。
【0265】
6.8.
[実施例8]
抗体薬物コンジュゲート1(ADC1)の生成
抗マウストランスフェリン受容体抗体R17217、およびラット抗マウスIgG2Aアイソタイプコントロール抗体(BioXCell)を、複合緩衝液(25mMのホウ酸ナトリウム/25mMのNaCl、および0.3mMのEDTA、最終pH7.4)中に終夜透析した。抗体を、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用して、還元率10~30で2時間還元した。ADC-1を、10mMの最終濃度までDMSO中に溶解し、次いで、15%のDMSOの存在下、複合比5~30で抗体にコンジュゲート化した。全ての反応は、およそ21℃で行った。いくつかの薬物抗体比(DAR)に対して、50%のプロピレングリコールを、コンジュゲート化のステップの間、有機溶媒として使用した。最終ADCを、PBS中で終夜透析し、0.22μmのフィルターを使用して濾過し、HPLC-HICを介して分析してDARを決定し、HPLC-SECを介して分析して凝集のレベルを決定した。HPLC-HICに対して、サンプルを、流速0.5ml/分で、TSKgel(登録商標)ブチル-NPRカラム上で実行した。相Aは、25mMのリン酸ナトリウム、およびpH6.95での1.5Mの硫酸アンモニウムであった一方、相Bは、pH6.95での75%の25mMのリン酸ナトリウム、および25%のイソプロピルアルコールであった。HPLC-SEC分析に対して、TSKgel(登録商標)G3000SWカラム(Tosoh Bioscience)を、流速0.25ml/分、280nMで25分間使用した。
【0266】
6.9.
[実施例9]
ジスルフィドリンカーに連結した化合物C(ADC-2)の合成
化合物Cを、以下のスキーム7A~Bにおける一般的方法にしたがって、ジスルフィドリンカーに連結させた。
【0267】
【0268】
【0269】
6.9.1. 中間体Aの合成
2-クロロトリチルクロリド樹脂(L2)(4g、4mmol)を、DCM(2×40ml)で洗浄し、50mlのDCM内で10分間膨潤させ、次いで排出させる。Fmoc-Cys(Trt)-OH(L3)(7.03g、12mmol)を、40mlのDCMに溶解し、2-クロロトリチルクロリド樹脂を含有する容器に添加する。8.7mlのDIPEA(6.8ml、40mmol)を容器に添加し、混合物をおよそ21℃で2時間かき混ぜる。次いで、10mlのメタノールを混合物に添加し、30分間かき混ぜる。次いで、得られた樹脂(L4)を排出させ、DMFで5回洗浄する。次いで、樹脂L4を脱保護して、DMF中のおよそ40mlの20%のピペリジンを樹脂L4に添加し、混合物を振とうし、次いで樹脂から液体を排出することにより、樹脂L5を生成する。DMF中の別の40mlの20%のピペリジンを、樹脂に添加し、15分間振とうする。次いで、樹脂L5を、液体から排出させ、DMF(6×40ml)で洗浄する。
【0270】
Fmoc-アミノ酸の溶液は、Fmoc-Asp(OtBu)-OH(4.93g、12mmol)、Fmoc-Asp(OtBu)-OH(4.93g、12mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(7.79g、12mmol)、Fmoc-Asp(OtBu)-OH(4.93g、12mmol)、およびFmoc-Glu-OtBu(5.1g、12mmol)を、HBTU/HOBT(4.55g、12mmol/1.62g、12mmol)およびDIPEA(2ml、12mmol)と別々に組み合わせて調製する。
【0271】
Fmoc-Asp(OtBu)-OH溶液を、樹脂L5に添加し、60分間振とうして、樹脂L6を生成する。樹脂L6をDMF(6×40ml)で洗浄し、次いで上記の通り、DMF中の20%のピペリジンで脱保護する。次いで、樹脂L7、L8、L9、およびL10を、Fmoc-アミノ酸溶液を使用する連続カップリングを実行することにより作製し、同じ手順を使用して、樹脂L5から樹脂L6を作製する。
【0272】
例示的な合成において、乾燥樹脂L10(8g)をフラスコに添加し、80mlの切断溶液を添加した(TFA:TES:EDT:H2O=90:5:3:2、v/v/v/v)。反応を1.5時間進行させた。次いで、樹脂を、加圧下で、濾過により反応混合物から分離した。次いで、樹脂をTFAで2回洗浄した。濾液を合わせ、10倍の体積の冷MTBEを滴下添加した。次いで、沈殿したペプチド(中間体A)を遠心分離し、冷MTBEで4回洗浄した。次いで、中間体Aを減圧下で乾燥し、分取HPLCにより精製して、白色固体として1.1gの中間体A(37%の収率)を得た。LC-MS(ESI)m/z:752[M+H]+。
【0273】
6.9.2. 2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)エチルメチル(2-(4-(4-(4-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバメート(L12)
化合物C(40mg、0.1038mmol)および4-ニトロフェニル2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)エチルカルバメート(L11)(80mg、0.2272mmol)のDMF(5ml)中の溶液に、DIPEA(0.5ml)およびHOBt(14mg、0.1038mmol)を添加した。混合物をN2下のおよそ21℃で16時間撹拌して、L12を生成した。粗L12を、分取HPLCにより精製して、白色固体として35mgの精製したL12(56%の収率)を得た。
【0274】
6.9.3. (2R,5S,8S,11S,14S,19S)-19-アミノ-5,8,14-トリス(カルボキシメチル)-11-(3-グアニジノプロピル)-2-(((2-(メチル(2-(4-(4-(4-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバモイルオキシ)エチル)ジスルファニル)メチル)-4,7,10,13,16-ペンタオキソ-3,6,9,12,15-ペンタアザイコサン-1,20-二酸(L13)
L12(35mg、0.058mmol)のTHF/H2O(5ml/5ml)中の溶液に、中間体A(80mg、0.106mmol)を、N2下で添加した。混合物をおよそ21℃で16時間撹拌して、L13を生成した。粗L13を、分取HPLCにより精製して、白色固体として23mgの精製したL13(31%の収率)を生成した。
【0275】
6.9.4. (2R,5S,8S,11S,14S,19S)-19-(2-(tert-ブトキシカルボニルアミノオキシ)アセトアミド)-5,8,14-トリス(カルボキシメチル)-11-(3-グアニジノプロピル)-2-(((2-(メチル(2-(4-(4-(4-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバモイルオキシ)エチル)ジスルファニル)メチル)-4,7,10,13,16-ペンタオキソ-3,6,9,12,15-ペンタアザイコサン-1,20-二酸(L15)
L13(32mg、0.025mmol)のDMF(3ml)中の溶液に、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2-(tert-ブトキシカルボニルアミノオキシ)アセテート(L14)(28mg、0.097mmol)を、続いてTEA(0.5ml)を添加した。反応混合物を、N2雰囲気下のおよそ21℃で16時間撹拌して、L15を生成した。粗L15を、分取HPLCにより精製して、白色固体として12mgの精製したL15(33%の収率)を生成した。
【0276】
6.9.5. (2R,5S,8S,11S,14S,19S)-19-(2-(アミノオキシ)アセトアミド)-5,8,14-トリス(カルボキシメチル)-11-(3-グアニジノプロピル)-2-(((2-(メチル(2-(4-(4(4-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)ピリジン-2-イル)フェノキシ)エチル)カルバモイルオキシ)エチル)ジスルファニル)メチル)-4,7,10,13,16-ペンタオキソ-3,6,9,12,15-ペンタアザイコサン-1,20-二酸(ADC-2)
L15(12mg、0.0085mmol)のDCM(5ml)中の混合物に、TFA(1ml)を添加した。混合物を、およそ21℃で30分間撹拌して、ADC-2を生成した。粗ADC-2を濃縮し、分取HPLCにより精製して、白色固体として3.5mgの精製したADC-2(31%の収率)を生成した。
【0277】
6.10.
[実施例10]
抗体薬物コンジュゲート2(ADC2)の生成
ADC-2を、以下のスキーム8における一般的方法にしたがって、抗体リジン残基を介して、抗TfR抗体に結合した。
【0278】
【0279】
ヘテロ二官能性重合体リンカーS-4FBを、Solulinkより購入した。ラット抗マウスIgG2a、および抗マウストランスフェリン受容体抗体R17217を、pH7.4でPBS中で透析した。S-4FBを、異なるモル比で、pH7.4でPBS中の抗体に添加し、およそ21℃で3時間インキュベートした。S-4FB修飾した抗体溶液を、2-ヒドラジノピリジン溶液(100mMのMES緩衝液中に0.5mM、pH5.0)と合わせて、5~50の範囲の様々な複合比で、37℃で30分間インキュベートした。S4FB/Abモル置換比を、A354でUV-Visにより決定した。修飾した抗体を、Zeba(商標)スピン脱塩カラム、50mMのリン酸緩衝液(pH6.5、150mMのNaCl)に交換した緩衝液を使用して精製し、次いで、リンカー-S-S-薬物ADC-2(DMSO中に10mM)と、異なるモル比で、37℃で24時間混合して、ADC2を生成した。次の日、ADC2サンプルを、PBSに対して終夜透析した。サンプルを濾過し、次いでHPLC-SEC、SDS-PAGE、およびLC-MSを介して試験した。S-4FB/Ab比6およびADC-2/Ab比20で調製したADC2に対する例示的なLC-MSデータは、
図7に示す。
図7は、試験したADC2サンプルが平均でDAR4.99であり、重鎖のDARが1.97であり、軽鎖のDARが0.53であることを示す。
【0280】
5%におけるADC2凝集が、HPLC-SECにより検出される場合、凝集した成分は、SECカラム(GE Healthcare Life Sciences、Superdex 200 increase 10/300GL)を備えたAKTAにより分離し、HPLC-SECにより再び分析した。凝集体を除去するためにSECにより精製したADC2のクロマトグラムは、
図8に示す。
【0281】
6.11.
[実施例11]
抗体誘導性受容体の内在化アッセイ
96ウェル平底プレートを、抗マウスCD3e抗体で終夜、4℃でコーティングした。CD4+T細胞を、RoboSep(商標)細胞分離システム(Stemcell Technologies)を使用して、マウスの脾臓から分離した。およそ2×10
5個の細胞を、37℃で24~48時間、可溶性抗CD28抗体を伴うウェルごとにプレーティングした。活性化されると、CD4
+T細胞を収集し、洗浄し、37℃での示した時点で、5μg/mlの初代(抗トランスフェリン受容体)抗体で再びプレーティングして、内在化を誘導した。反応を、氷冷染色緩衝液で停止し、氷上に維持して、内在化を停止させた。アッセイの終了時点で、細胞を、氷冷染色緩衝液で2回洗浄して、未結合抗体を除去した。細胞をペレット化し、次いでPEで染色し、ヤギ抗ラット二次抗体とコンジュゲート化し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を染色緩衝液で洗浄し、次いでFACSを介する発現を分析した。
図9に示す通り、TfR発現は、1時間以内に初代CD4
+T細胞で内在化し始め、3時間以内に、TfRの70%超が、抗トランスフェリン受容体抗体、R17217により内在化される。
【0282】
6.12.
[実施例12]
In vitroアッセイ
6.12.1.増殖アッセイ
マウスCTLL2細胞を、0.2ng/mlのIL2中、細胞1×105個/ウェルで培養した。1nMのTGF-βで示される各ウェルに、1μg/mlのADC、および/または100nMのALK5阻害剤化合物Cを、24時間ウェルに添加した。増殖を、各ウェルにBrdU試薬(Abcam)をさらに12時間添加することにより定量化し、次いでELISAにより分析した。
【0283】
図10で示す通り、TGF-βでのCTLL2細胞の処置により、およそ60%の増殖が阻害された。しかし、ADC1(DAR2-4、4-6、または6-8)を追加することにより、ALK5阻害剤単独での細胞の処置と同様に、TGF-β阻害はほぼ完全に逆転し、CTLL2増殖は回復した。ラット抗マウスIgG2AアイソタイプコントロールALK5 ADCで処置された細胞は、CTLL2増殖は回復しなかった。TGF-βを伴わないADC1で処置されるか、または裸のTfr抗体単独で処置される細胞において、増殖の阻害は起こらず、これは、TGF-βが存在しない限り、ADC1は増殖に影響を及ぼさないことを示した(データは示さず)。
【0284】
6.12.2.グランザイムB発現アッセイ
マウスCD3+T細胞を、EasySep(商標)マウスT細胞分離キット(ネガティブ選択)(Stemcell Technologies)を使用して、マウスの脾臓から精製した。CD3+T細胞を、プレート結合抗CD3e、および可溶性抗CD28を使用する前に、48時間活性化した。T細胞を、洗浄し、5%の血清および1nMのTGF-β -/+ADCを含む培地に再びプレーティングした。
【0285】
ゴルジストップ試薬を、最後の4時間添加し、次いで細胞を、表面のCD8(BD)および細胞内のGzmB(eBioscience)に対して免疫染色し、フローサイトメトリーを介して分析した。グランザイムB(GzmB)は、CD8+T細胞により腫瘍細胞を死滅させるために放出される、セリンプロテアーゼである。ゆえに、GzmBの発現の増加は、CD8+細胞毒性T細胞活性を示す。
【0286】
図11に示す通り、TGF-βが、初代CD8
+T細胞におけるGzmB発現を抑制するが、3つのDAR、2-4、4-6、および6-8の全てのADC1での処置はまた、ALK5化合物と同等に、GzmB発現を回復することができた。加えて、ラット抗マウスIgG2AアイソタイプコントロールALK5 ADCは、GzmB発現を回復しなかった。
【0287】
6.12.3.iTreg転換アッセイ
ナイーブCD4 T細胞を、ネガティブ選択キットを使用して、分離したマウス脾臓細胞から分離した。細胞密度を、細胞0.4×106個/mlに調節し、10ng/mlのマウスIL-2、20ng/mlのTGF-β、および1μg/mlの可溶性抗CD28を、細胞懸濁液に添加した。
【0288】
10μg/mlでの抗マウスCD3抗体を、24ウェルプレート上にコーティングし、4℃で終夜インキュベートした。次いで、抗体をプレートから吸引した。1mlの細胞懸濁液を、24ウェルプレートの各ウェルに添加した。3μg/mlおよび5μg/mlでのADC1(DAR4-6)、抗トランスフェリン受容体抗体、ラット抗マウスIgG2AアイソタイプコントロールALK5 ADC、ならびに100nMおよび1μMでのALK5阻害剤化合物Cを、24ウェルプレートの別個のウェルに添加した。次いで、細胞を72時間培養した。TfR発現を、48時間の時点で試験した(データは示さず)。細胞をFoxP3(eBioscience FoxP3染色緩衝液)で染色し、72時間の時点でFACSにより選別した。
【0289】
図12に示す通り、5μg/mlでのADC1(+CD71-ALK5 ADC)は、100nMの遊離ALK5阻害剤単独(+ALK5 inh 100nM)と同様に、生成されるiTregの量を適度に減少させる。対照的に、コントロールALK5 ADC(+Iso-ALK5 ADC)および裸の抗TfR抗体(+抗CD71)は、iTreg FoxP3発現に効果がなかった。
【0290】
6.13.
[実施例13]
化合物Nの合成および特徴付け
化合物Nを、以下のスキーム9における一般的方法にしたがって合成した。
【0291】
【0292】
化合物Nを、いくつかのin vitroアッセイにおいて、化合物Cと比較した。組換えキナーゼアッセイにおけるそのIC50活性およびそのKi値の概要は、表6に示す。表6はまた、ヒトHEK細胞およびマウスT細胞における、化合物CのTGF-βシグナル伝達の阻害活性も示す。化合物Cは、組換えアッセイにおいて、化合物Nより10倍強力であることが分かった。
【0293】
【0294】
6.14.
[実施例14]
T細胞へのCD2およびCD5の内在化
2つの異なる内在化研究を実施して、それぞれ、抗CD2抗体および抗CD5抗体でのT細胞のインキュベーションに続く、CD2およびCD5の内在化を測定した。
【0295】
6.14.1.研究1:抗体ウォッシュアウトなし
マウスCD3+T細胞を、プレート結合抗CD3抗体(1μg/ml)および可溶性抗CD28抗体(2μg/ml)で36時間活性化した。細胞を洗浄し、1μg/mlのラット抗マウスCD2抗体(クローン12-15、Southern Biotech、カタログ番号1525)、ラット抗マウスCD5抗体(クローン53-7.3、Southern Biotech、カタログ番号1547)、または、ラットアイソタイプコントロール抗体で、示された時点(0、15分、または0.5、1、3、もしくは6時間)、37℃でインキュベートした。各時点で、アッセイを、氷上に細胞を配置することにより停止させた。CD2およびCD5の発現を、蛍光的にコンジュゲートした二次抗体を使用して検出した。
【0296】
6時間の時点で、CD5の60%超、およびCD2の50%超が、マウスCD3+T細胞内で内在化した(それぞれ
図13Aおよび
図13B)。
【0297】
6.14.2.研究2:抗体ウォッシュアウト
研究1を、遊離抗体を4℃で30分間、細胞でインキュベートした以外を繰り返して、細胞表面の受容体全てを飽和した。上澄みに残る抗体を、時間経過を開始する前に洗い流した。
【0298】
6時間の時点で、CD5のほぼ90%、およびCD2の50%超が、マウスCD3+T細胞内で内在化した(それぞれ
図13Cおよび
図13D)。
【0299】
6.14.3.考察
研究1において、新規で再循環した受容体は、存在する場合、時間経過の間、細胞表面に近づき、培地の遊離抗体と結合することができた。研究2において、時間経過を開始する時点で存在する、その受容体の内在化のみをモニタリングできるために、未結合抗体を時間経過を開始する前に洗い流した。CD2に対して、研究1および研究2の結果は、類似しており、CD2が、迅速に反転しないことを示唆している。CD5に対して、ウォッシュアウト研究(研究2)において内在化が約20%増加し、これは新規の受容体が、6時間の時間経過にわたって、de novo合成により再循環するか、または増加するかのいずれかだったことを示している。大量のde novo合成が、6時間の時間経過にわたって予測されないので、再循環が可能性の高い選択肢であると考えられる。ゆえに、研究1および研究2の結果により、CD5が、CD2より多く細胞表面へと再循環する可能性があることを示唆している。
【0300】
6.15.
[実施例15]
ADC標的化CD2およびCD5の生成および特徴付け
6.15.1.実施例15:ADCの生成
本実施例においてT細胞標的TGF-βアンタゴニスト(T3A)と称する、4つのALK5-ADCを、ラット抗マウスCD2抗体(クローン12-15、Southern Biotech、カタログ番号1525)、およびラット抗マウスCD5抗体(クローン53-7.3、Southern Biotech、カタログ番号1547)を使用して作製した。2つのリンカー-ALK5阻害剤ペイロードを使用して、T3Aを作製したが、そのうちの1つは、ALK5-化合物Cに結合した切断可能Val-Cit(VC)リンカーを含み、もう1つは、化合物Nに結合した非切断可能マレイミドカプロイル(MC)リンカーを含む。
【0301】
4つのT3Aの抗体、リンカー、およびALK5ペイロードの組合せは、表7に示す。
【0302】
【0303】
T3A #2~#5を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製し、薬物抗体比を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により計算した。T3A #2~#5のそれぞれに対する%凝集、%未結合抗体、およびDAR値は、表8に示す。
【0304】
【0305】
6.15.2.ADCの特徴付け
逆転するTGF-β媒介性免疫抑制におけるT3A #2~5の効能を決定するために、マウスCD3+T細胞を、脾臓から精製し、1nMのTGF-β、および小分子ALK5阻害剤化合物C(陽性対照)、T3A #2~5、またはアイソタイプコントロールT3A(陰性対照)の存在下、抗CD3および抗CD28抗体で36~72時間活性化した。36時間後、グランザイム(GzmB)を発現するCD8+T細胞のレベルを、細胞毒性のマーカーとして測定し(
図14)、分泌したサイトカインIL2のレベル(
図15)およびIFN-γのレベル(
図16)を、ELISAにより測定した。最終的に、72時間後、T細胞増殖の量を、Cell Titer Glo(Promega)により測定した(
図17)。これらのアッセイの全ては、in vivoでの腫瘍クリアランスに関連がある。
【0306】
活性化T細胞に関連して観察される機能の量(100%に設定)は、
図14~
図17のそれぞれに示す。T3A #5は、GzmB発現およびT細胞増殖を回復したが、IFN-γ発現を部分的にのみ回復した。IL2発現への効果は観察されなかった。
【0307】
6.15.3.考察
上記の実施例のデータは、T細胞での標的発現のレベルが、初代T細胞アッセイでの効能に重要であることを示す。CD2およびCD5の両方は、活性T細胞の20~50%で高発現されるのみであるCD71と異なり、ナイーブT細胞および活性化T細胞の両方の85%超で、高発現される。しかし、CD2およびCD5の両方が、T細胞で高発現されるが、CD5標的化ADCは、CD2標的化ADCより高い効能を有することが観察された。実施例14において、CD2およびCD5で観察される受容体内在化のパターンに基づいて、6時間の時点で、初代マウスT細胞に、CD5の約85%は内在化されたが、CD2の53%のみが内在化された。加えて、CD5は、CD2より早く内在化を開始すると思われた。このデータは、内在化の量も効能に影響を及ぼすことを示す。
【0308】
データはまた、ALK5阻害剤を抗体に結合させるリンカー、および放出機構が、両方とも効能に重要であることも示す。抗CD5抗体(T3A #5)と組み合わせたカテプシンB切断可能VCリンカーは、最も有効なT3Aだった。しかし、抗CD5抗体(T3A #4)リンカーと組み合わせた非切断可能MCは、同様に抗CD5抗体と結合する場合、いくつかの活性を有した。
【0309】
初代マウスT細胞での試験に基づいて、T3Aは、以下の通り、効能をランク付けることができる:1)T3A #5、2)T3A #4、3)T3A #3、および4)T3A #2。
【0310】
理論に制約されることなく、高いADC活性に対して、ADCは、ナイーブT細胞および活性化T細胞にわたり広範囲で発現し(例えば、70%以上の細胞で発現)、迅速に内在化し、確立した細胞内放出機構(例えばタンパク質分解プロセシング)を有する、T細胞標的を標的化すべきであると考えられる。
【0311】
6.16.
[実施例16]
T細胞へのCD7の内在化
内在化研究を実施して、2つの異なる抗CD7抗体でのT細胞のインキュベーションに続く、CD7の内在化を測定した。
【0312】
ヒトCD3+T細胞を、プレート結合抗CD3抗体(1μg/ml)および可溶性抗CD28抗体(2μg/ml)で40時間活性化した。細胞を洗浄し、1μg/mlの抗ヒトCD7抗体(クローン124-D1および4H9、Caprico Biotech)、またはラットアイソタイプコントロール抗体で、4℃で30分間インキュベートして、細胞表面の受容体全てを飽和した。上澄みに残る抗体を洗い流し、次いで細胞を37℃で0~6時間インキュベートした。各時点(5、15、30、60、180、および360分)で、アッセイを、氷上に細胞を配置することにより停止させた。CD7の発現を、蛍光的にコンジュゲート化した二次抗体を使用して検出した。
【0313】
6時間の時点で、CD7のほぼ70~80%を内在化した(
図18)。内在化の量をCD2およびCD5と同等に、ADC標的としてCD7の適合性が示された。
【0314】
6.17.
[実施例17]
T3Aと免疫チェックポイント阻害剤との組合せ
サイトカイン分泌アッセイを実施して、T3A #5(実施例16)のT細胞チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブとの併用効果を測定した。
【0315】
96ウェル丸底プレートにおいて、1.5×105個のCMV応答性ヒトPBMC(Astarte Biologics)を、無血清培地で48時間、単独で、または(i)1nMのTGF-β、(ii)1ng/mlでの1nMのTGF-βおよびT3A #5、(iii)1ng/mlでの1nMのTGF-βおよびペムブロリズマブ、(iv)1ng/mlでの1nMのTGF-β、T3A #5、および1ng/mlでのペムブロリズマブ、もしくは(v)1nMのTGF-βおよびアイソタイプコントロール抗体(陰性対照)の存在下、1.5μg/mlのCMV抗原(Astarte Biologics)で培養した。IFN-γレベルを、R&D ELISAキットを使用して上澄みにおいて測定した。
【0316】
結果を
図19に示す。T3A #5、ペムブロリズマブ、ならびにT3A #5およびペムブロリズマブの組合せは、IFN-γレベルが増加することが観察された。T3A #5およびペムブロリズマブの組合せは、IFN-γレベルにおいて最大の増加量をもたらし、本開示のADCの治療的効能が、T細胞チェックポイント阻害剤と組み合わせた場合、向上し得ることを示した。
【0317】
7.具体的な実施形態
本開示は、以下の具体的な実施形態により例示される。
1.T細胞表面分子に結合する抗体または抗原結合性断片に作動可能に連結されたALK5阻害剤を含む、抗体-ALK5阻害剤コンジュゲート(ADC)。
2.ALK5阻害剤のIC50が、少なくとも20nMである、実施形態1に記載のADC。
3.ALK5阻害剤が、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、またはチアゾール系化合物である、実施形態1または実施形態2に記載のADC。
4.ALK5阻害剤が、イミダゾール系化合物である、実施形態3に記載のADC。
5.ALK5阻害剤が、ピラゾール系化合物である、実施形態3に記載のADC。
6.ALK5阻害剤が、チアゾール系化合物である、実施形態3に記載のADC。
7.ALK5阻害剤が、イミダゾール-ベンゾジオキソール化合物、またはイミダゾール-キノキサリン化合物である、イミダゾール系化合物である、実施形態3に記載のADC。
8.ALK5阻害剤が、イミダゾール-ベンゾジオキソール化合物である、実施形態7に記載のADC。
9.ALK5阻害剤が、イミダゾール-キノキサリン化合物である、実施形態7に記載のADC。
10.ALK5阻害剤が、ピラゾール-ピロロ化合物である、ピラゾール系化合物である、実施形態3に記載のADC。
11.ALK5阻害剤が、イミダゾール-ベンゾジオキソール化合物、イミダゾール-キノキサリン化合物、ピラゾール-ピロロ化合物、またはチアゾール系化合物である、実施形態3に記載のADC。
12.ALK5阻害剤が、リンカーを介して、抗体または抗原結合性断片に連結されている、実施形態1から11のいずれか一項に記載のADC。
13.リンカーが、PEGを含有するリンカーである、実施形態12に記載のADC。
14.リンカーが、多価リンカーである、実施形態12または実施形態13に記載のADC。
15.リンカーが、非切断可能リンカーである、実施形態12から14のいずれか一項に記載のADC。
16.非切断可能リンカーが、N-マレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート、マレイミドカプロイル、またはメルカプトアセトアミドカプロイルリンカーである、実施形態15に記載のADC。
17.非切断可能リンカーが、N-マレイミドメチルシクロヘキサン1-カルボキシレートリンカーである、実施形態16に記載のADC。
18.非切断可能リンカーが、マレイミドカプロイルリンカーである、実施形態16に記載のADC。
19.非切断可能リンカーが、メルカプトアセトアミドカプロイルリンカーである、実施形態16に記載のADC。
20.リンカーが、切断可能リンカーである、実施形態12から14のいずれか一項に記載のADC。
21.切断可能リンカーが、ジペプチドリンカー、ジスルフィドリンカー、またはヒドラゾンリンカーである、実施形態20に記載のADC。
22.切断可能リンカーが、ジペプチドリンカーである、実施形態21に記載のADC。
23.切断可能リンカーが、ジスルフィドリンカーである、実施形態21に記載のADC。
24.切断可能リンカーが、ヒドラゾンリンカーである、実施形態21に記載のADC。
25.リンカーが、プロテアーゼ感受性バリン-シトルリンジペプチドリンカーである、実施形態21に記載のADC。
26.リンカーが、グルタチオン感受性ジスルフィドリンカーである、実施形態21に記載のADC。
27.リンカーが、酸感受性ジスルフィドリンカーである、実施形態21に記載のADC。
28.ALK5阻害剤が、部位特異的コンジュゲート化を介して、抗原または抗原結合性断片にコンジュゲート化する、実施形態1から27のいずれか一項に記載のADC。
29.ALK5阻害剤が、抗体または抗原結合性断片上の1つまたは複数のシステイン、リジン、またはグルタミン残基を介してコンジュゲート化する、実施形態28に記載のADC。
30.ALK5阻害剤が、抗体または抗原結合性断片上の1つまたは複数のシステイン残基を介してコンジュゲート化する、実施形態29に記載のADC。
31.ALK5阻害剤が、抗体または抗原結合性断片上の1つまたは複数のリジン残基を介してコンジュゲート化する、実施形態29に記載のADC。
32.ALK5阻害剤が、抗体または抗原結合性断片上の1つまたは複数のグルタミン残基を介してコンジュゲート化する、実施形態29に記載のADC。
33.ALK5阻害剤が、抗体または抗原結合性断片上の1つまたは複数の非天然アミノ酸残基を介してコンジュゲート化する、実施形態28に記載のADC。
34.1つまたは複数の非天然アミノ酸残基が、p-アセチルフェニルアラニン(pAcF)を含む、実施形態33に記載のADC。
35.1つまたは複数の非天然アミノ酸残基が、p-アジドメチル-L-フェニルアラニン(pAMF)を含む、実施形態33に記載のADC。
36.1つまたは複数の非天然アミノ酸残基が、セレノシステイン(Sec)を含む、実施形態33に記載のADC。
37.ALK5阻害剤が、抗体または抗原結合性断片上の1つまたは複数のグリカンを介してコンジュゲート化する、実施形態28に記載のADC。
38.1つまたは複数のグリカンが、フコースを含む、実施形態37に記載のADC。
39.1つまたは複数のグリカンが、6-チオフコースを含む、実施形態37に記載のADC。
40.1つまたは複数のグリカンが、ガラクトースを含む、実施形態37に記載のADC。
41.1つまたは複数のグリカンが、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含む、実施形態37に記載のADC。
42.1つまたは複数のグリカンが、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を含む、実施形態37に記載のADC。
43.1つまたは複数のグリカンが、シアル酸(SA)を含む、実施形態37に記載のADC。
44.ALK5阻害剤が、リンカーを介してコンジュゲート化する、実施形態28から43のいずれか一項に記載のADC。
45.抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、1~30の範囲である、実施形態1から44のいずれか一項に記載のADC。
46.抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、1~20の範囲である、実施形態1から44のいずれか一項に記載のADC。
47.抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、1~15の範囲である、実施形態1から44のいずれか一項に記載のADC。
48.抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、2~12の範囲である、実施形態1から44のいずれか一項に記載のADC。
49.抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、4~15の範囲である、実施形態1から44のいずれか一項に記載のADC。
50.抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、6~12の範囲である、実施形態1から44のいずれか一項に記載のADC。
51.抗体または抗原結合性断片分子当たりのALK5阻害剤分子の平均数が、2~8の範囲である、実施形態1から44のいずれか一項に記載のADC。
52.抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態1から51のいずれか一項に記載のADC。
53.抗体が、ヒトまたはヒト化である、実施形態52に記載のADC。
54.抗体が、ヒトである、実施形態53に記載のADC。
55.抗体が、ヒト化である、実施形態53に記載のADC。
56.抗原結合性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、またはFv断片である、実施形態1から55のいずれか一項に記載のADC。
57.抗原結合性断片が、Fabである、実施形態56に記載のADC。
58.抗原結合性断片が、Fab’である、実施形態56に記載のADC。
59.抗原結合性断片が、F(ab’)2である、実施形態56に記載のADC。
60.抗原結合性断片が、Fv断片である、実施形態56に記載のADC。
61.抗原結合性断片が、ヒトまたはヒト化抗体の抗原結合性断片である、実施形態56から60のいずれか一項に記載のADC。
62.抗原結合性断片が、ヒト抗体の抗原結合性断片である、実施形態61に記載のADC。
63.抗原結合性断片が、ヒト化抗体の抗原結合性断片である、実施形態61に記載のADC。
64.抗体を含む、実施形態1から55のいずれか一項に記載のADC。
65.抗原結合性断片を含む、実施形態1から63のいずれか一項に記載のADC。
66.T細胞表面分子が、ヒトT細胞表面分子である、実施形態1から65のいずれか一項に記載のADC。
67.T細胞表面分子が、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD25、CD28、CD70、CD71、CD103、CD184、Tim3、LAG3、CTLA4、またはPD1である、実施形態1から66のいずれか一項に記載のADC。
68.T細胞表面分子が、CD1である、実施形態67に記載のADC。
69.T細胞表面分子が、CD2である、実施形態67に記載のADC。
70.T細胞表面分子が、CD3である、実施形態67に記載のADC。
71.T細胞表面分子が、CD4である、実施形態67に記載のADC。
72.T細胞表面分子が、CD5である、実施形態67に記載のADC。
73.T細胞表面分子が、CD6である、実施形態67に記載のADC。
74.T細胞表面分子が、CD7である、実施形態67に記載のADC。
75.T細胞表面分子が、CD8である、実施形態67に記載のADC。
76.T細胞表面分子が、CD25である、実施形態67に記載のADC。
77.T細胞表面分子が、CD28である、実施形態67に記載のADC。
78.T細胞表面分子が、CD70である、実施形態67に記載のADC。
79.T細胞表面分子が、CD71である、実施形態67に記載のADC。
80.T細胞表面分子が、CD103である、実施形態67に記載のADC。
81.T細胞表面分子が、CD184である、実施形態67に記載のADC。
82.T細胞表面分子が、Tim3である、実施形態67に記載のADC。
83.T細胞表面分子が、LAG3である、実施形態67に記載のADC。
84.T細胞表面分子が、CTLA4である、実施形態67に記載のADC。
85.T細胞表面分子が、PD1である、実施形態67に記載のADC。
86.抗体または抗原結合性断片が、ペムブロリズマブもしくはその抗原結合性断片、ニボルマブもしくはその抗原結合性断片、セミプリマブもしくはその抗原結合性断片、またはドスタルリマブもしくはその抗原結合性断片を含む、実施形態85に記載のADC。
87.抗体または抗原結合性断片が、ペムブロリズマブまたはその抗原結合性断片を含む、実施形態86に記載のADC。
88.抗体または抗原結合性断片が、ニボルマブまたはその抗原結合性断片を含む、実施形態86に記載のADC。
89.抗体または抗原結合性断片が、セミプリマブまたはその抗原結合性断片を含む、実施形態86に記載のADC。
90.抗体または抗原結合性断片が、ドスタルリマブまたはその抗原結合性断片を含む、実施形態86に記載のADC。
91.T細胞表面分子が、エンドソームを通して再循環することが可能なT細胞表面分子である、実施形態1から66のいずれか一項に記載のADC。
92.T細胞表面分子が、CD2、CD5、CD7、またはCD71である、実施形態91に記載のADC。
93.T細胞表面分子が、CD5またはCD7である、実施形態91に記載のADC。
94.T細胞表面分子が、CD5である、実施形態92に記載のADC。
95.T細胞表面分子が、CD7である、実施形態92に記載のADC。
96.T細胞表面分子が、CD2である、実施形態91に記載のADC。
97.T細胞表面分子が、CD71である、実施形態91に記載のADC。
98.エフェクター機能を低下させる、1つまたは複数のアミノ酸置換を有するFcドメインを含む、実施形態1から97のいずれか一項に記載のADC。
99.1つまたは複数の置換が、N297A、N297Q、N297G、D265A/N297A、D265A/N297G、L235E、L234A/L235A、L234A/L235A/P329A、L234D/L235E:L234R/L235R/E233K、L234D/L235E/D265S:E233K/L234R/L235R/D265S、L234D/L235E/E269K:E233K/L234R/L235R/E269K、L234D/L235E/K322A:E233K/L234R/L235R/K322A、L234D/L235E/P329W:E233K/L234R/L235R/P329W、L234D/L235E/E269K/D265S/K322A:E233K/L234R/L235R/E269K/D265S/K322A、またはL234D/L235E/E269K/D265S/K322E/E333K:E233K/L234R/L235R/E269K/D265S/K322E/E333Kを含む、実施形態98に記載のADC。
100.1つまたは複数の置換が、N297Aを含む、実施形態99に記載のADC。
101.1つまたは複数の置換が、N297Qを含む、実施形態99に記載のADC。
102.1つまたは複数の置換が、N297Gを含む、実施形態99に記載のADC。
103.1つまたは複数の置換が、D265A/N297Aを含む、実施形態99に記載のADC。
104.1つまたは複数の置換が、D265A/N297Gを含む、実施形態99に記載のADC。
105.1つまたは複数の置換が、L235Eを含む、実施形態99に記載のADC。
106.1つまたは複数の置換が、L234A/L235Aを含む、実施形態99に記載のADC。
107.1つまたは複数の置換が、L234A/L235A/P329Aを含む、実施形態99に記載のADC。
108.1つまたは複数の置換が、L234D/L235E:L234R/L235R/E233Kを含む、実施形態99に記載のADC。
109.1つまたは複数の置換が、L234D/L235E/D265S:E233K/L234R/L235R/D265Sを含む、実施形態99に記載のADC。
110.1つまたは複数の置換が、L234D/L235E/E269K:E233K/L234R/L235R/E269Kを含む、実施形態99に記載のADC。
111.1つまたは複数の置換が、L234D/L235E/K322A:E233K/L234R/L235R/K322Aを含む、実施形態99に記載のADC。
112.1つまたは複数の置換が、L234D/L235E/P329W:E233K/L234R/L235R/P329Wを含む、実施形態99に記載のADC。
113.1つまたは複数の置換が、L234D/L235E/E269K/D265S/K322A:E233K/L234R/L235R/E269K/D265S/K322Aを含む、実施形態99に記載のADC。
114.1つまたは複数の置換が、L234D/L235E/E269K/D265S/K322E/E333K:E233K/L234R/L235R/E269K/D265S/K322E/E333Kを含む、実施形態99に記載のADC。
115.実施形態1から114のいずれか一項に記載のADC、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
116.医薬組成物の少なくとも30%のADC分子が、1~30の薬物抗体比(DAR)を有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
117.医薬組成物の少なくとも30%のADC分子が、1~20のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
118.医薬組成物の少なくとも30%のADC分子が、1~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
119.医薬組成物の少なくとも30%のADC分子が、2~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
120.医薬組成物の少なくとも30%のADC分子が、4~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
121.医薬組成物の少なくとも30%のADC分子が、6~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
122.医薬組成物の少なくとも30%のADC分子が、2~8のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
123.医薬組成物の少なくとも40%のADC分子が、1~30のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
124.医薬組成物の少なくとも40%のADC分子が、1~20のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
125.医薬組成物の少なくとも40%のADC分子が、1~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
126.医薬組成物の少なくとも40%のADC分子が、2~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
127.医薬組成物の少なくとも40%のADC分子が、4~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
128.医薬組成物の少なくとも40%のADC分子が、6~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
129.医薬組成物の少なくとも40%のADC分子が、2~8のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
130.医薬組成物の少なくとも50%のADC分子が、1~30のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
131.医薬組成物の少なくとも50%のADC分子が、1~20のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
132.医薬組成物の少なくとも50%のADC分子が、1~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
133.医薬組成物の少なくとも50%のADC分子が、2~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
134.医薬組成物の少なくとも50%のADC分子が、4~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
135.医薬組成物の少なくとも50%のADC分子が、6~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
136.医薬組成物の少なくとも50%のADC分子が、2~8のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
137.医薬組成物の少なくとも60%のADC分子が、1~30のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
138.医薬組成物の少なくとも60%のADC分子が、1~20のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
139.医薬組成物の少なくとも60%のADC分子が、1~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
140.医薬組成物の少なくとも60%のADC分子が、2~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
141.医薬組成物の少なくとも60%のADC分子が、4~15のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
142.医薬組成物の少なくとも60%のADC分子が、6~12のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
143.医薬組成物の少なくとも60%のADC分子が、2~8のDARを有する、実施形態115に記載の医薬組成物。
144.がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、実施形態1から114のいずれか一項に記載のADC、または実施形態115から143のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
145.がんが、免疫原性がんである、実施形態144に記載の方法。
146.がんが、腫瘍抗原を発現する充実性腫瘍である、実施形態145に記載の方法。
147.腫瘍抗原が、gp100、メランA、またはMAGE A1である、実施形態146に記載の方法。
148.腫瘍抗原が、gp100である、実施形態147に記載の方法。
149.腫瘍抗原が、メランAである、実施形態147に記載の方法。
150.腫瘍抗原が、MAGE A1である、実施形態147に記載の方法。
151.がんが、免疫性浸潤を含む充実性腫瘍である、実施形態144に記載の方法。
152.がんが、免疫療法により処置可能である、実施形態144から151のいずれか一項に記載の方法。
153.免疫療法が、サイトカイン療法、養子T細胞療法、キメラ抗原受容体(CAR)療法、T細胞チェックポイント阻害剤療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、樹状細胞ワクチン療法、STINGアゴニスト療法、TLRアゴニスト療法、または腫瘍内CpG療法である、実施形態152に記載の方法。
154.免疫療法が、サイトカイン療法、養子T細胞療法、キメラ抗原受容体(CAR)療法、またはT細胞チェックポイント阻害剤療法である、実施形態152に記載の方法。
155.免疫療法が、サイトカイン療法である、実施形態154に記載の方法。
156.サイトカイン療法が、IL2療法である、実施形態155に記載の方法。
157.サイトカイン療法が、IL12療法である、実施形態155に記載の方法。
158.サイトカイン療法が、IFN-α療法である、実施形態155に記載の方法。
159.サイトカイン療法が、IFN-γ療法である、実施形態155に記載の方法。
160.免疫療法が、養子T細胞療法である、実施形態154に記載の方法。
161.養子T細胞療法が、自己T細胞療法である、実施形態160に記載の方法。
162.免疫療法が、キメラ抗原受容体(CAR)療法である、実施形態154に記載の方法。
163.免疫療法が、T細胞チェックポイント阻害剤療法である、実施形態154に記載の方法。
164.T細胞チェックポイント阻害剤が、抗体である、実施形態163に記載の方法。
165.T細胞チェックポイント阻害剤が、PD1、PDL1、またはCTLA4の阻害剤である、実施形態154、実施形態163または実施形態164に記載の方法。
166.T細胞チェックポイント阻害剤が、PD1の阻害剤である、実施形態165に記載の方法。
167.PD1の阻害剤が、抗体である、実施形態166に記載の方法。
168.PD1の阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、またはドスタルリマブである、実施形態167に記載の方法。
169.PD1の阻害剤が、ペムブロリズマブである、実施形態168に記載の方法。
170.PD1の阻害剤が、ニボルマブである、実施形態168に記載の方法。
171.PD1の阻害剤が、セミプリマブである、実施形態168に記載の方法。
172.PD1の阻害剤が、ドスタルリマブである、実施形態168に記載の方法。
173.T細胞チェックポイント阻害剤が、PDL1の阻害剤である、実施形態165に記載の方法。
174.PDL1の阻害剤が、抗体である、実施形態173に記載の方法。
175.PDL1の阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである、実施形態174に記載の方法。
176.PDL1の阻害剤が、アテゾリズマブである、実施形態175に記載の方法。
177.PDL1の阻害剤が、アベルマブである、実施形態175に記載の方法。
178.PDL1の阻害剤が、デュルバルマブである、実施形態175に記載の方法。
179.T細胞チェックポイント阻害剤が、CTLA4の阻害剤である、実施形態165に記載の方法。
180.CTLA4の阻害剤が、抗体である、実施形態179に記載の方法。
181.CTLA4の阻害剤が、イピリムマブである、実施形態180に記載の方法。
182.T細胞チェックポイント阻害剤が、TIGITを標的化する、実施形態163または164に記載の方法。
183.T細胞チェックポイント阻害剤が、LAG3を標的化する、実施形態163または164に記載の方法。
184.T細胞チェックポイント阻害剤が、OX40を標的化する、実施形態163または164に記載の方法。
185.T細胞チェックポイント阻害剤が、CD40を標的化する、実施形態163または164に記載の方法。
186.T細胞チェックポイント阻害剤が、VISTAを標的化する、実施形態163または164に記載の方法。
187.がんが、肺がん、肝がん、尿路上皮がん、腎がん、乳がん、黒色腫、膵がん、神経膠芽細胞腫、骨髄異形成症候群、前立腺がん、または結腸直腸がんである、実施形態144から186のいずれか一項に記載の方法。
188.がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、肝がん、尿路上皮がん、腎がん、乳がん、または黒色腫である、実施形態187に記載の方法。
189.がんが、肺がんである、実施形態187に記載の方法。
190.がんが、NSCLCである、実施形態189に記載の方法。
191.NSCLCが、腺癌である、実施形態190に記載の方法。
192.NSCLCが、扁平上皮細胞癌である、実施形態190に記載の方法。
193.NSCLCが、大細胞癌である、実施形態190に記載の方法。
194.がんが、小細胞肺がんである、実施形態189に記載の方法。
195.がんが、肝がんである、実施形態187に記載の方法。
196.肝がんが、肝細胞癌である、実施形態195に記載の方法。
197.がんが、尿路上皮がんである、実施形態187に記載の方法。
198.がんが、膀胱がんである、実施形態197に記載の方法。
199.がんが、尿道がんである、実施形態197に記載の方法。
200.がんが、尿管がんである、実施形態197に記載の方法。
201.がんが、腎がんである、実施形態187に記載の方法。
202.腎がんが、腎細胞癌である、実施形態201に記載の方法。
203.腎がんが、尿路上皮がんである、実施形態201に記載の方法。
204.がんが、乳がんである、実施形態187に記載の方法。
205.がんが、黒色腫である、実施形態187に記載の方法。
206.がんが、膵がんである、実施形態187に記載の方法。
207.がんが、神経膠芽細胞腫である、実施形態187に記載の方法。
208.がんが、骨髄異形成症候群である、実施形態187に記載の方法。
209.がんが、前立腺がんである、実施形態187に記載の方法。
210.がんが、結腸直腸がんである、実施形態187に記載の方法。
211.結腸直腸がんが、腺癌である、実施形態210に記載の方法。
212.結腸直腸がんが、カルチノイド腫瘍である、実施形態210に記載の方法。
213.結腸直腸がんが、消化管間質性腫瘍である、実施形態210に記載の方法。
214.結腸直腸がんが、結腸直腸リンパ腫である、実施形態210に記載の方法。
215.がんが、ALK5阻害剤により処置可能である、実施形態144から214のいずれか一項に記載の方法。
216.がんが、化学療法により処置可能である、実施形態144から215のいずれか一項に記載の方法。
217.ADCまたは医薬組成物が、単独療法として投与される、実施形態144から216のいずれか一項に記載の方法。
218.ADCまたは医薬組成物が、実施形態1から114のいずれか一項に記載のADCではない1つまたは複数の薬剤(各々「第2の治療剤」)を投与することを含んでいてもよい併用療法レジメンの一部として投与される、実施形態144から216のいずれか一項に記載の方法。
219.ADCまたは医薬組成物が、標準ケアの療法または治療レジメンと組み合わせて投与される、実施形態218に記載の方法。
220.併用療法が、少なくとも1つの第2の治療剤を対象に投与することを含む、実施形態218または219に記載の方法。
221.併用療法レジメンが、免疫療法を含み、免疫療法が、チェックポイント阻害剤療法、キメラ抗原受容体(CAR)療法、養子T細胞療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、樹状細胞ワクチン療法、STINGアゴニスト療法、TLRアゴニスト療法、腫瘍内CpG療法、またはサイトカイン療法であってもよい、実施形態218から220のいずれか一項に記載の方法。
222.併用療法が、チェックポイント阻害剤療法を含む、実施形態218から221のいずれか一項に記載の方法。
223.チェックポイント阻害剤療法が、T細胞チェックポイント阻害剤療法を含む、実施形態222に記載の方法。
224.T細胞チェックポイント阻害剤療法が、抗体またはその抗原結合性断片を含む、実施形態223に記載の方法。
225.チェックポイント阻害剤療法が、PD1、PDL1、CTLA4、TIGIT、LAG3、OX40、CD40、VISTA、またはその組合せを標的化する、実施形態222から224のいずれか一項に記載の方法。
226.チェックポイント阻害剤療法が、PD1を標的化する、実施形態225に記載の方法。
227.第2の治療剤が、ペムブロリズマブである、実施形態226に記載の方法。
228.第2の治療剤が、ニボルマブである、実施形態226に記載の方法。
229.第2の治療剤が、セミプリマブである、実施形態226に記載の方法。
230.第2の治療剤が、ドスタルリマブである、実施形態226に記載の方法。
231.チェックポイント阻害剤療法が、PDL1を標的化する、実施形態225から230のいずれか一項に記載の方法。
232.第2の治療剤が、アテゾリズマブである、実施形態231に記載の方法。
233.第2の治療剤が、アベルマブである、実施形態231に記載の方法。
234.第2の治療剤が、デュルバルマブである、実施形態231に記載の方法。
235.チェックポイント阻害剤療法が、CTLA4を標的化する、実施形態225から234のいずれか一項に記載の方法。
236.第2の治療剤が、イピリムマブである、実施形態235に記載の方法。
237.チェックポイント阻害剤療法が、TIGITを標的化する、実施形態225から236のいずれか一項に記載の方法。
238.第2の治療剤が、エチギリマブである、実施形態237に記載の方法。
239.第2の治療剤が、チラゴルマブである、実施形態237に記載の方法。
240.第2の治療剤が、AB154である、実施形態237に記載の方法。
241.チェックポイント阻害剤療法が、LAG3を標的化する、実施形態225から240のいずれか一項に記載の方法。
242.第2の治療剤が、LAG525である、実施形態241に記載の方法。
243.第2の治療剤が、Sym022である、実施形態241に記載の方法。
244.第2の治療剤が、レラトリマブである、実施形態241に記載の方法。
245.第2の治療剤が、TSR-033である、実施形態241に記載の方法。
246.チェックポイント阻害剤療法が、OX40を標的化する、実施形態225から245のいずれか一項に記載の方法。
247.第2の治療剤が、MEDI6469である、実施形態246に記載の方法。
248.第2の治療剤が、PF-04518600である、実施形態246に記載の方法。
249.第2の治療剤が、BMS 986178である、実施形態246に記載の方法。
250.チェックポイント阻害剤療法が、CD40を標的化する、実施形態225から249のいずれか一項に記載の方法。
251.第2の治療剤が、セリクレルマブである、実施形態250に記載の方法。
252.第2の治療剤が、CP-870,893である、実施形態250に記載の方法。
253.第2の治療剤が、APX005Mである、実施形態250に記載の方法。
254.チェックポイント阻害剤療法が、VISTAを標的化する、実施形態225から253のいずれか一項に記載の方法。
255.第2の治療剤が、HMBD-002である、実施形態254に記載の方法。
256.第2の治療剤が、キメラ抗原受容体(CAR)である、実施形態218から255のいずれか一項に記載の方法。
257.併用療法が、養子T細胞療法を含む、実施形態218から256のいずれか一項に記載の方法。
258.養子T細胞療法が、自己T細胞療法である、実施形態257に記載の方法。
259.併用療法が、腫瘍溶解性ウイルス療法を含む、実施形態218から258のいずれか一項に記載の方法。
260.併用療法が、樹状細胞ワクチン療法を含む、実施形態218から259のいずれか一項に記載の方法。
261.併用療法が、STINGアゴニスト療法を含む、実施形態218から260のいずれか一項に記載の方法。
262.併用療法が、TLRアゴニスト療法を含む、実施形態218から261のいずれか一項に記載の方法。
263.併用療法が、化学療法を含む、実施形態218から262のいずれか一項に記載の方法。
264.第2の治療剤が、代謝拮抗物質、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗微小管剤、白金化合物、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、またはビンカアルカロイドである、実施形態263に記載の方法。
265.第2の治療剤が、代謝拮抗物質である、実施形態264に記載の方法。
266.代謝拮抗物質が、5-フルオロウラシルである、実施形態265に記載の方法。
267.代謝拮抗物質が、ゲムシタビンである、実施形態265に記載の方法。
268.代謝拮抗物質が、メトトレキセートである、実施形態265に記載の方法。
269.第2の治療剤が、アルキル化剤である、実施形態264に記載の方法。
270.アルキル化剤が、シクロホスファミドである、実施形態269に記載の方法。
271.アルキル化剤が、ダカルバジンである、実施形態269に記載の方法。
272.アルキル化剤が、メクロレタミンである、実施形態269に記載の方法。
273.アルキル化剤が、ジアジコンである、実施形態269に記載の方法。
274.アルキル化剤が、テモゾロマイドである、実施形態269に記載の方法。
275.第2の治療剤が、アントラサイクリンである、実施形態264に記載の方法。
276.アントラサイクリンが、ドキソルビシンである、実施形態275に記載の方法。
277.アントラサイクリンが、エピルビシンである、実施形態275に記載の方法。
278.第2の治療剤が、抗微小管剤である、実施形態264に記載の方法。
279.抗微小管剤が、ビンブラスチンである、実施形態278に記載の方法。
280.第2の治療剤が、白金化合物である、実施形態264に記載の方法。
281.白金化合物が、シスプラチンである、実施形態280に記載の方法。
282.白金化合物が、オキサリプラチンである、実施形態280に記載の方法。
283.第2の治療剤が、タキサンである、実施形態264に記載の方法。
284.タキサンが、パクリタキセルである、実施形態283に記載の方法。
285.タキサンが、ドセタキセルである、実施形態283に記載の方法。
286.第2の治療剤が、トポイソメラーゼ阻害剤である、実施形態264に記載の方法。
287.トポイソメラーゼ阻害剤が、エトポシドである、実施形態286に記載の方法。
288.トポイソメラーゼ阻害剤が、ミトキサントロンである、実施形態286に記載の方法。
289.第2の治療剤が、ビンカアルカロイドである、実施形態264に記載の方法。
290.ビンカアルカロイドが、ビンクリスチンである、実施形態289に記載の方法。
291.併用療法が、腫瘍内CpG療法を含む、実施形態218から290のいずれか一項に記載の方法。
292.第2の治療剤が、サイトカインである、実施形態218から291のいずれか一項に記載の方法。
293.サイトカインが、IL2である、実施形態292に記載の方法。
294.サイトカインが、IL12である、実施形態292に記載の方法。
295.サイトカインが、IFN-αである、実施形態292に記載の方法。
296.サイトカインが、IFN-γである、実施形態292に記載の方法。
297.併用療法で対象を処置することを含む、実施形態218から296のいずれか一項に記載の方法。
298.第2の治療剤を対象に投与することを含む、実施形態218から297のいずれか一項に記載の方法。
【0318】
様々な具体的な実施形態が例示および記載されるが、本開示の精神および範囲を逸脱することなく、様々な変化がなされ得ることが理解されよう。
【0319】
8.参照文献の引用
本出願で引用される全ての刊行物、特許、特許出願、および他の文献は、各刊行物、特許、特許出願、または他の文献が、個別に、全ての目的に対して参照により組み込まれると示されるのと同様の程度まで、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書および本開示に組み込まれる参照文献の1つまたは複数の教示の間に不一致がある場合、本明細書の教示が意図される。