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特許7446346情報分析装置、情報分析方法および情報分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】情報分析装置、情報分析方法および情報分析システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240301BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022024932
(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023121539
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田 稔
(72)【発明者】
【氏名】八木田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】前畑 俊之
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110947772(CN,A)
【文献】特開2000-042873(JP,A)
【文献】特開2006-261253(JP,A)
【文献】特開平09-184068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール製品の材料の搬送ラインに沿って配置される複数のセンサから時系列のプロセスデータを取得する取得部と、
前記複数のセンサには前記材料の搬送長さを計測する複数の測長センサが含まれており、最下流に配置された前記測長センサからの製品長さ基準の座標値を含む前記プロセスデータを抽出する抽出部と、
2つの前記測長センサにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて前記材料の伸縮量を算出する算出部と、
搬送向きにおける前記センサの位置情報および前記伸縮量に基づいて前記プロセスデータに前記座標値を対応付ける対応付け部と
を備えることを特徴とする情報分析装置。
【請求項2】
前記搬送ラインに前記材料を一時的に貯留するリザーバが含まれる場合には、
前記対応付け部は、
前記位置情報、前記伸縮量および前記リザーバが貯留している材料の長さに基づいて前記プロセスデータに前記座標値を対応付けること
を特徴とする請求項1に記載の情報分析装置。
【請求項3】
前記プロセスデータを前記搬送向きに沿う複数のセクションに区分けする区分け部
をさらに備え、
前記区分け部は、
各々の前記セクションの上流端に前記測長センサが位置するように前記プロセスデータを区分けし、
前記算出部は、
2つの前記セクションの前記上流端の前記測長センサにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて前記材料の伸縮量を算出し、
前記対応付け部は、
前記セクション内に配置されたその他の前記センサの位置を前記上流端の前記測長センサと当該センサとの距離として取り扱うこと
を特徴とする請求項1に記載の情報分析装置。
【請求項4】
前記搬送ラインに前記材料を一時的に貯留するリザーバが含まれる場合には、
前記区分け部は、
前記リザーバが前記セクションの下流端に位置するように前記プロセスデータを区分けし、
前記対応付け部は、
前記位置情報、前記伸縮量および前記リザーバが貯留している材料の長さに基づいて前記プロセスデータに前記座標値を対応付けること
を特徴とする請求項3に記載の情報分析装置。
【請求項5】
前記対応付け部は、
前記最下流の前記測長センサに対応する前記セクションである最終セクションから隣り合う前記セクションを上流へ向けて遡る順序で前記測長センサに対応する前記プロセスデータに前記座標値を対応付けること
を特徴とする請求項3に記載の情報分析装置。
【請求項6】
前記対応付け部は、
前記セクション内においては前記伸縮量を一定とみなし、隣り合う前記セクション間の距離を上流端の前記測長センサ同士の位置の差とすることで、前記測長センサに対応する前記プロセスデータに前記座標値を対応付けること
を特徴とする請求項5に記載の情報分析装置。
【請求項7】
ロール製品の材料の搬送ラインに沿って配置される複数のセンサから時系列のプロセスデータを取得する取得工程と、
前記複数のセンサには前記材料の搬送長さを計測する複数の測長センサが含まれており、最下流に配置された前記測長センサからの製品長さ基準の座標値を含む前記プロセスデータを抽出する抽出工程と、
2つの前記測長センサにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて前記材料の伸縮量を算出する算出工程と、
搬送向きにおける前記センサの位置情報および前記伸縮量に基づいて前記プロセスデータに前記座標値を対応付ける対応付け工程と
を含むことを特徴とするコンピュータによる情報分析方法。
【請求項8】
前記ロール製品の材料の搬送ラインと、
請求項1~6のいずれか一つに記載の情報分析装置と
を備えることを特徴とする情報分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、情報分析装置、情報分析方法および情報分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板、紙、フィルム等を巻き上げたロール製品を連続して製造したり加工したりする製造・加工過程にてロール製品の材料(鋼板、紙、フィルム等)を搬送する搬送ラインにおいて一定周期で取得されるセンサデータ(以下「プロセスデータ」という)を分析する情報分析手法が知られている。かかる情報分析手法では、分析結果に基づき、完成したロール製品の異常箇所に対応する搬送ラインの部位を特定する。
【0003】
また、時系列の搬送データを製造過程における鋼板の搬送距離について再編集することで、製品品質の分析を支援する製品品質分析支援システムも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-192915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術では、時系列のプロセスデータを、完成品を基準とした製品長軸に対応付ける処理に多大な処理負荷を要するという問題がある。なお、特許文献1には、プロセスデータを時間軸から搬送距離に変換する例が開示されているものの、材料の伸び縮みについては考慮されていない。したがって、完成品の異常箇所に対応する搬送ラインの部位を厳密には特定することはできない。
【0006】
実施形態の一態様は、材料に伸び縮みがある場合であっても、時間軸に沿うプロセスデータを製品長軸に対応付ける処理の処理負荷を低減することができる情報分析装置、情報分析方法および情報分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る情報分析装置は、取得部と、抽出部と、算出部と、対応付け部とを備える。取得部は、ロール製品の材料の搬送ラインに沿って配置される複数のセンサから時系列のプロセスデータを取得する。前記複数のセンサには前記材料の搬送長さを計測する複数の測長センサが含まれており、抽出部は、最下流に配置された前記測長センサからの製品長さ基準の座標値を含む前記プロセスデータを抽出する。算出部は、2つの前記測長センサにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて前記材料の伸縮量を算出する。対応付け部は、搬送向きにおける前記センサの位置情報および前記伸縮量に基づいて前記プロセスデータに前記座標値を対応付ける。
【0008】
実施形態の一態様に係るコンピュータによる情報分析方法は、取得工程と、抽出工程と、算出工程と、対応付け工程とを含む。取得工程では、ロール製品の材料の搬送ラインに沿って配置される複数のセンサから時系列のプロセスデータを取得する。前記複数のセンサには前記材料の搬送長さを計測する複数の測長センサが含まれており、抽出工程では、最下流に配置された前記測長センサからの製品長さ基準の座標値を含む前記プロセスデータを抽出する。算出工程では、2つの前記測長センサにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて前記材料の伸縮量を算出する。対応付け工程では、搬送向きにおける前記センサの位置情報および前記伸縮量に基づいて前記プロセスデータに前記座標値を対応付ける。
【0009】
実施形態の一態様に係る情報分析システムは、前記ロール製品の材料の搬送ラインと、上記した情報分析装置とを備える。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、材料に伸び縮みがある場合であっても、時間軸に沿うプロセスデータを製品長軸に対応付ける処理の処理負荷を低減することができる情報分析装置、情報分析方法および情報分析システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る情報分析手法の概要を示す説明図である。
図2図2は、搬送ラインのセクション分けを示す説明図である。
図3図3は、セクション内におけるセンサの配置図である。
図4図4は、情報分析システムの構成を示すブロック図である。
図5図5は、対応付け処理の例を示す説明図その1である。
図6図6は、対応付け処理の例を示す説明図その2である。
図7図7は、対応付け処理の例を示す説明図その3である。
図8図8は、情報分析装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する情報分析装置、情報分析方法および情報分析システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態では、鋼板を巻き上げたロール製品の製造・加工過程にてロール製品の材料である鋼板を搬送する搬送ラインについて説明するが、搬送ラインは、紙やフィルム等の材料を搬送するものであってもよい。
【0013】
また、以下に示す実施形態では、「直交」、「水平」あるいは、「同じ」といった表現を用いるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0014】
まず、実施形態に係る情報分析手法について図1を用いて説明する。図1は、実施形態に係る情報分析手法の概要を示す説明図である。なお、図1に示す搬送ライン10は、ロール製品Pの材料Mの搬送向きTDと直交する水平向きからみた側面模式図に相当する。
【0015】
また、図1に示す搬送ライン10には、ロール製品Pを製造する製造ラインや、ロール製品Pに対して塗工などの加工を行う加工ラインが含まれる。つまり、搬送ライン10は、ロール製品Pの製造・加工過程において、材料Mを搬送する設備に相当する。
【0016】
搬送ライン10には、搬送ライン10に沿って複数のセンサSが配置される。センサSは、各種検出器やドライブ装置等に相当する。また、複数のセンサSには、材料Mの搬送長さを計測する複数の測長センサSLが含まれる。ここで、搬送ライン10の最下流に配置された測長センサSLは、ロール製品Pの製品長さ基準の座標値を計測する。なお、図1では、最下流の測長センサSLをその他の測長センサSLよりも大きい「円」の記号で示している。
【0017】
また、図1では、測長センサSLを材料Mの下側に「円」の記号で、測長センサSL以外のセンサSを材料Mの側方に「台形」の記号で、それぞれ示しているが、センサの上下方向の位置や形状を限定するものではない。つまり、各記号は、各センサS(測長センサSL含む)の種別および搬送向きTDに沿う位置を模式的に示したものである。
【0018】
ここで、複数のセンサSからのプロセスデータは、PLC(Programmable Logic Controller)装置を経由するなどして時系列に送信される。また、搬送ライン10は一般的に材料Mに張力をかけた状態で搬送を行い、かつ、設備長も長いので材料Mの伸び縮みが発生する。このため、材料Mの伸び縮みを考慮しつつ、時系列のプロセスデータと、完成品を基準とした製品長軸とを対応付けようとすると多大な処理負荷を要する。
【0019】
そこで、実施形態に係る情報分析手法では、以下の手順を実行することで、時間軸に沿うプロセスデータに対して完成品であるロール製品Pの製品長軸を対応付ける処理の処理負荷を低減することとした。
【0020】
具体的には、実施形態に係る情報分析手法では、複数のセンサSから時系列のプロセスデータを取得すると(ステップS1)、取得したプロセスデータの中から、製品長さ基準の座標値を含むプロセスデータを抽出する(ステップS2)。たとえば、図1に示した搬送ライン10の例では、最下流に配置されロール製品Pを測長する測長センサSLに対応するプロセスデータが抽出される。
【0021】
そして、実施形態に係る情報分析手法では、測長センサSLの搬送速度の比較により材料Mの伸縮量(伸縮長さ)を算出する(ステップS3)。たとえば、隣り合う測長センサSLの搬送速度が同じ期間が継続した場合には、かかる期間における伸縮量を0[m]とする。
【0022】
また、たとえば、隣り合う測長センサSLのうち上流側の測長センサSLの搬送速度が1[m/sec]で、下流側の測長センサSLの搬送速度が2[m/sec]である場合には、隣り合う測長センサSLの間で倍の長さに伸びていることになる。
【0023】
また、たとえば、隣り合う測長センサSLのうち上流側の測長センサSLの搬送速度が2[m/sec]で、下流側の測長センサSLの搬送速度が1[m/sec]である期間が1[sec]間継続した場合には、隣り合う測長センサSLの間で半分の長さに縮んでいることになる。
【0024】
なお、本実施形態では、後述するように、ロール製品Pの製品長さを100%とした比率で各伸縮量をあらわすこととする。
【0025】
つづいて、実施形態に係る情報分析手法では、各センサSの位置情報および算出した伸縮量に基づいて時系列のプロセスデータに製品長さ基準の座標値を対応付ける(ステップS4)。なお、かかる対応付け処理の詳細については、図5図7を用いて後述することとする。
【0026】
このように、実施形態に係る情報分析手法では、大量のプロセスデータの中から、製品長さ基準の座標値を含むプロセスデータを抽出し、材料Mの伸縮量を反映しつつ、時系列のプロセスデータに製品長さ基準の座標値を対応付けることとした。つまり、算出した材料Mの伸縮量を加味したうえで、時系列のプロセスデータに完成品における製品長さ基準の座標値を対応付けるので、完成品の異常箇所に対応する搬送ライン10の部位を精度良く特定することができる。
【0027】
また、完成品の座標値をプロセスデータに対応付けるので、すべてのプロセスデータに搬送距離を付与しておく必要がない。つまり、対応付けの対象とするプロセスデータの数を絞り込むことができる。したがって、材料Mに伸び縮みがある場合であっても、時間軸に沿うプロセスデータを製品長軸に対応付ける処理の処理負荷を低減することができる。
【0028】
次に、図1に示した搬送ライン10を搬送向きTDに沿って複数のセクションに区分けするセクション分けの概要について図2を用いて説明する。図2は、搬送ライン10のセクション分けを示す説明図である。なお、図2では、最下流のセクションをZセクション、Zセクションの上流側隣のセクションをYセクション、以下、上流側へ向けて、Xセクション、Wセクション、のように記載している。
【0029】
また、図2では、搬送ライン10を、「A」~「Z」の26個のセクションに区分けする例を示しているが、これは説明の簡略化を目的とするものであり、セクション分けの個数を限定するものではない。すなわち、セクション分けにおけるセクション数は任意の個数とすることができる。
【0030】
また、図2では、材料Mを一時的に貯留するリザーバRを示している。なお、各リザーバRを区別する場合には、リザーバRw、リザーバRxのように、符号の末尾にセクションをあらわす小文字のアルファベットを付記することとする。また、同様に、測長センサSLについても符号の末尾にセクションをあらわす小文字のアルファベットを付記することとする。
【0031】
各リザーバRは、たとえば、内蔵されるローラの間隔を変更することで材料Mの貯留長を変化させることができる。また、貯留長は、基準となる貯留長を0とした場合に、基準値よりも貯留長を増加させた場合にはプラスの値をとり、基準値よりも貯留長を減少させた場合にはマイナスの値をとる。
【0032】
図2に示すように、搬送ライン10を複数のセクションに区分けする場合には、セクションの上流端に測長センサSLがそれぞれ位置するように区分けする。また、搬送ライン10にリザーバRが含まれる場合には、リザーバRがセクションの下流端に位置するように区分けする。つまり、各セクションには上流端に測長センサSLが必ず位置し、リザーバが存在する場合には、いずれかのセクションの下流端にリザーバRが必ず位置するようにセクション分けが行われる。
【0033】
ここで、図2に示した各項目の一覧表を用いて各項目の内容について説明する。「セクション」項目は、各セクションのセクション名をあらわす。既に説明したように、図2では、搬送ライン10が、AセクションからZセクションまでの26個のセクションに区分けされた場合を示している。
【0034】
「測長値」項目は、各セクションの上流端に配置される測長センサSLによって計測される材料Mの搬送長さであり、大文字の「C」に小文字のセクション名を付加した変数であらわされる。たとえば、Aセクションの測長値は変数「Ca」であらわされ、Zセクションの測長値は変数「Cz」であらわされる。
【0035】
「測長速度」項目は、「測長値」項目の単位時間あたりの変化量であり、大文字の「V」に小文字のセクション名を付加した変数であらわされる。たとえば、Aセクションの測長速度は変数「Va」であらわされ、Zセクションの測長速度は変数「Vz」であらわされる。
【0036】
「当セクションでの伸縮量」項目は、隣り合うセクションの上流端にそれぞれ配置される測長センサSLの測長速度の比較によって求められる値であり、大文字の「T」に小文字のセクション名を付加した変数であらわされる。たとえば、Wセクションの伸縮量は変数「Tw」であらわされ、Xセクションの伸縮量は「Tx」であらわされる。なお、最後のセクションであるZセクションの伸縮量は、1.0に固定される(Tz=1.0)。
【0037】
「後セクションからの距離」項目は、隣り合うセクションの上流端にそれぞれ配置される測長センサSL同士の距離であり、大文字の「D」に小文字のセクション名を付加した変数であらわされる。
【0038】
たとえば、Yセクションの「後セクションからの距離」は、Zセクションの上流端の測長センサSLzとYセクションの上流端の測長センサSLyとの距離であるので、図2に示したように、変数「Dy」であらわされる。なお、最後のセクションであるZセクションには後セクションが存在しないので「後セクションからの距離」は0に固定される(Dz=0)。
【0039】
「リザーバの有無」項目は、各セクションにリザーバRが存在するか否かを示しており、存在すれば「有」、存在しなければ「無」となる。なお、本実施形態では、WセクションおよびXセクションのみにリザーバRが存在する例を示しているので、両セクションは「有」であり、その他のセクションは「無」である。
【0040】
「貯留長」項目は、リザーバRによる材料Mの貯留長さであり、大文字の「L」に小文字のセクション名を付加した変数であらわされる。たとえば、Wセクションの貯留量は変数「Lw」であらわされ、Xセクションの貯留量は変数「Lx」であらわされる。なお、リザーバRが存在しないセクションの貯留量は常に0である。
【0041】
次に、図2に示した測長センサSL以外のセンサSの位置のあらわし方について図3を用いて説明する。図3は、セクション内におけるセンサSの配置図である。なお、図3では、Wセクションにおける例を示しているが、他のセクションについても同じ要領で測長センサSL以外のセンサSの位置をあらわすこととする。
【0042】
図3に示すように、Wセクションの上流端における測長センサSLwを基準とする下流側へのオフセット量(距離)を、その他のセンサSの位置として取り扱う。たとえば、Wセクションの上流端における測長センサSLwと、Xセクションの上流端における測長センサSLxとの距離が「Dw」であるとする。この場合、測長センサSLwに最も近いセンサSw1の位置は「Dw-Dw1」とあらわされる。つまり、測長センサSLwにn(nは1以上の整数)番目に近いセンサSwnの位置は「Dw-Dwn」とあらわされる。たとえば、センサSw3について材料MのZセクションに対する伸縮量を含めた長さは、「Tz×Ty×Tx×Tw×(Dw-Dw3)」とあらわされる。つまり、センサSw3については、製品長さ基準の座標値のどこに相当するかを求める際に、下流側から遡る量をセンサSLwの場合に遡る量よりも「Tz×Ty×Tx×Tw×Dw3」だけ短くすることとすればよい。なお、下流側から遡る具体的方法については後述することとする。
【0043】
このように、上流端の測長センサSLw以外のセンサSwの位置を、測長センサSLwの位置を基準としてあらわすことで、各センサSがロール製品P(図1参照)における製品長さ基準の座標値のどこに相当するのかを簡便な計算で対応付けることができる。これにより、ロール製品Pの異常箇所が、搬送ライン10における搬送向きTDのどの位置に対応するかを容易に見つけることができる。
【0044】
次に、情報分析システム1の構成について図4を用いて説明する。図4は、情報分析システム1の構成を示すブロック図である。図4に示すように、情報分析システム1は、搬送ライン10と、情報分析装置100とを備える。なお、搬送ライン10に設けられるセンサSは、LAN(Local Area Network)などのネットワークNW経由で、情報分析装置100に接続される。
【0045】
情報分析装置100は、制御部110と、記憶部120とを備える。制御部110は、取得部111と、抽出部112と、算出部113と、対応付け部114と、区分け部115とを備える。記憶部120はプロセスデータ121と、位置情報122と、対応付けデータ123とを記憶する。
【0046】
ここで、情報分析装置100は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0047】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部110の取得部111、抽出部112、算出部113、対応付け部114および区分け部115としてそれぞれ機能する。また、取得部111、抽出部112、算出部113、対応付け部114および区分け部115のうち少なくとも1つをASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0048】
記憶部120は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、プロセスデータ121、位置情報122および対応付けデータ123を記憶することができる。なお、情報分析装置100は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。さらに、情報分析装置100を複数台のお互いに通信可能な装置として構成してもよく、上位または下位の装置と通信可能な階層式の装置として構成してもよい。
【0049】
取得部111は、搬送ライン10の各センサS(測長センサSL含む)から、時系列のプロセスデータを取得し、記憶部120に、プロセスデータ121として記憶させる。抽出部112は、記憶部120のプロセスデータ121の中から、搬送ライン10の最下流に配置された測長センサSLからの製品長さ基準の座標値を含むプロセスデータを抽出する。
【0050】
算出部113は、抽出部112から抽出されたプロセスデータ121を受け取るとともに、2つの測長センサSLにおける材料Mの搬送速度同士の比較結果に基づいて材料Mの伸縮量(伸縮長さ)を算出する。なお、算出部113は、区分け部115を経由するなどして位置情報122から測長センサSLの位置を取得する。対応付け部114は、搬送向きTDにおけるセンサSの位置情報122および算出部113によって算出された伸縮量に基づいてプロセスデータ121に座標値を対応付ける。そして、対応付け部114は、座標値を対応付けたプロセスデータ121を、対応付けデータ123として記憶部120に記憶させる。
【0051】
ここで、搬送ライン10に材料Mを一時的に貯留するリザーバR(図2参照)が含まれる場合には、対応付け部114は、算出部113経由で受け取った位置情報122、算出部113によって算出された伸縮量およびリザーバRが貯留している材料Mの長さに基づいてプロセスデータ121に座標値を対応付ける。
【0052】
このように、リザーバRの貯留量を加味したうえで時系列のプロセスデータ121に完成品における製品長さ基準の座標値を対応付けるので、貯留量が随時変動する場合であっても、完成品の異常箇所に対応する搬送ライン10の部位を精度良く特定することができる。ここで、リザーバRの貯留量が変化する場合には、リザーバRの前後の材料Mの搬送速度に差が生じるので、かかる差を材料Mの伸縮量と分離するために以下の手法をとる。具体的には、リザーバRの貯留量の検出値についてサンプリングタイム毎に前回値との差分値を算出し、算出した差分値をサンプリング間隔で除することで貯留量の変化速度を求める。そして、求めた変化速度を、貯留量の増加中には下流側隣セクションの測長センサSLの測長速度から減算し、貯留量の減少中には下流側隣セクションの測長センサSLの測長速度に加算する。このようにすることで、下流側隣セクションの測長センサSLの測長速度を補正することができる。そして、隣接する測長センサSL同士の搬送速度の比から材料Mの伸縮量を求める場合には、各測長センサSLの測長速度として上記した補正後の測長速度を用いることとすればよい。これにより、リザーバRの貯留量が変化する場合であっても、材料Mの伸縮量を精度良く算出することができる。
【0053】
なお、図4に示した区分け部115については省略することもできるが、以下では、区分け部115を設ける場合について説明することとする。区分け部115は、プロセスデータ121を搬送向きTDに沿う複数のセクションに区分けする。区分け部115は、各々のセクションの上流端に測長センサSLが位置するようにプロセスデータ121を区分けする。また、区分け部115は、記憶部120から読み出した位置情報122を算出部113へ渡す。なお、区分け部115を省略する場合には、算出部113が位置情報122を記憶部120から読み出す。
【0054】
このように、区分け部115を設ける場合には、算出部113は、2つのセクションの上流端の測長センサSLにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて材料Mの伸縮量を算出する。そして、対応付け部114は、セクション内に配置されたその他のセンサSの位置を、上流端の測長センサSLと、該当するセンサSとの距離として取り扱う(図3参照)。
【0055】
このように、区分け部115は、測長センサSLが各セクションの上流端に位置するようにセクション分けするので、セクションごとに対応付け部114による対応付け処理を行うことが可能となる。したがって、対応付け部114による対応付け処理の効率化を図ることができる。
【0056】
また、搬送ライン10に材料Mを一時的に貯留するリザーバR(図2参照)が含まれる場合には、区分け部115は、リザーバRがセクションの下流端に位置するようにプロセスデータ121を区分けする。そして、対応付け部114は、位置情報122、算出部113によって算出された伸縮量およびリザーバRが貯留している材料Mの長さ(貯留量)に基づいてプロセスデータ121に座標値を対応付ける。
【0057】
このように、リザーバRがある場合には、区分け部115は、リザーバRがいずれかのセクションの下流端に位置するようにセクション分けするので、1つのセクションに複数のリザーバRが含まれることはない。したがって、リザーバRの貯留量の変動の影響を該当するセクションに限定することができ、対応付け部114による対応付け処理の効率化を図ることができる。
【0058】
プロセスデータ121は、取得部111によって取得されるセンサSの時系列データである。たとえば、プロセスデータ121は、データの発生時刻、センサSの識別子、センサSの出力内容等を含んだ時系列のデータの集合体である。たとえば、測長センサSLの出力内容としては、ドライブ装置の速度やトルク、ローラ径等を含む。また、その他のセンサSの出力内容としては、ヘルパロールの速度、ミルの圧下量やギャップ量、周囲の気温や気圧、材料Mの温度等を含む。
【0059】
位置情報122は、搬送ライン10に設置される各センサS(測長センサSL含む)の搬送向きTDにおける位置を定義した情報である。また、対応付けデータ123は、プロセスデータ121の該当するデータに対し、ロール製品Pの製品長さ基準の座標値を対応付けたデータである。
【0060】
次に、図4に示した情報分析装置100の対応付け部114によって行われる対応付け処理について図5図7を用いて説明する。図5図7は、対応付け処理の例を示す説明図その1~その3である。
【0061】
なお、図5図7の縦軸は、いずれも共通の時系列の時間軸である。また、図5は、図2に示したZセクションからYセクションへ遡る対応付け処理に対応し、図6は、同じくYセクションからXセクションへ遡る対応付け処理に対応する。そして、図7は、同じくXセクションからWセクションへ遡る対応付け処理に対応する。
【0062】
また、図5図7に示した例では、ロール製品P(図2参照)の規定長さを「27.0m」としている。ここで、規定長さとはロール製品Pの巻取り開始点から巻取り終了点の長さのことであり、通常は情報分析装置100に対して、ネットワークNWを経由して外部の機器から送信される。または、情報分析装置100に接続された操作器により、情報分析装置100に対して直接書き込まれてもよい。さらに、搬送ライン10の最上流部で生じた継ぎ目が最終セクションに到達した時点をロール製品Pの巻取り終了時点とする場合は、継ぎ目到達時点の最終セクション(セクションZ)の測長値を規定長さとしてもよい。また、図5図7では、縦軸は、プロセスデータが発生した時刻を示す時間軸であり、時間は同図の上から下へ流れているものとする。なお、図5図7では、時間値が3.9[sec]から5.8[sec]までの0.1[sec]刻みのプロセスデータを示している。そして、各時間に対応する行は、同じ時間に発生したプロセスデータに対応する。
【0063】
まず、ZセクションからYセクションへの遡り処理について図5を用いて説明する。図5に示すように、Zセクションは、搬送ライン10の最下流に配置された測長センサSLz(図2参照)によってロール製品Pの測長が行われるセクションである。「ロール番号」項目は、ロール製品Pが規定長さ(27.0m)になった場合に1つ増加する。ここで、継ぎ目がWセクションに到達した時点で「ロール番号」項目を1つ増加させることとしてもよい。また、「ロール番号」は任意の記号、文字で表される「ロール名称」であってもよい。この場合、「ロール名称」は規定長さになる以前、あるいは、継ぎ目がWセクションに到達する以前に、次のロール製品Pの「ロール名称」として、たとえば、ネットワークNW経由で情報分析装置100に入力される。ロール製品Pが規定長さになった、あるいは、継ぎ目がWセクションに到達した時点で「ロール名称」は次のロール製品Pの「ロール名称」に切り替わる。
【0064】
「Z基準縮み」項目は、Zセクションを100%とした場合の材料Mの伸縮量を示している。なお、Zセクションにおいては常に100%の値をとる。「巻取長」項目は、測長センサSLzによる測長値に相当し、変数「Cz」であらわされる。そして、Cz=27.0(=規定長さ)となるとCz=0.0にリセットされる。
【0065】
つづいて、Yセクションについて説明する。図5に示すように、Yセクションは、Zセクションの上流側隣のセクションであり、測長センサSLy(図2参照)によって材料Mの測長が行われるセクションである。「測長値」項目は、測長センサSLyによる測長値に相当し、変数「Cy」であらわされる。
【0066】
「測長差分」項目は、1つ前の測長値との差分である。たとえば、時間が「4.0」の測長値は「239.0」であり、1つ前の時間(3.9)の測長値は、「238.0」であるので、時間が「4.0」の測長差分は、「1.0(=239.0-238.0)」とあらわされる。
【0067】
「Z基準縮み」項目は、Zセクションを「100%」とした場合の材料Mの伸縮量を示している。ここで、Yセクションの測長速度は、Vy=1.0[m/sec]であり、Zセクションの測長速度も、Vz=1.0[m/sec]であり、両者は等しい。したがって、Ty=1.0である。
【0068】
つまり、YセクションとZセクションとの間で材料Mの伸縮はないとみなせるので、「Z基準縮み」項目は、Tz×Tyで求められるZセクションのYセクションに対する伸びの逆数を%であらわした「100%」の値をとる。「Z換算差分」項目は、Zセクションからみた「測長差分」項目の大きさであり、同じ時間のデータについて、「測長差分」項目の値を、「Z基準縮み」項目の値を比率に換算した値(100%=1.0)で除した値となる。
【0069】
そして、「Z測長」項目は、Zセクションにおける巻取長(Cz)、すなわち、製品長さ基準の座標値がどの行のデータに相当するのかをあらわす。「Z測長」項目は、本来は空欄であり、対応付け部114(図4参照)による対応付け処理によって座標値が埋められていく。次に、かかる対応付け処理について具体的に説明する。
【0070】
まず、Zセクションの巻取長(Cz)について巻取長のリセットを検出する(ステップS11)。Cz=27.0(=規定長さ)となった時間は「5.6」であるので、時間が「5.6」の行のYセクションのデータを基準行とする。
【0071】
ここで、後セクションからの距離を示すDyは、Dy=3であり、貯留長を示すLyは、Ly=0であるので(図2参照)、「Z換算差分」項目について「3.0m(=Dy+Ly)」遡ったデータがZセクションの終点に対応するデータとなる。このため、「Z換算差分」項目の合計値が「3.0」になるまで時間軸を遡る終点検索を行う(ステップS12)。
【0072】
そうすると、時間が「5.3」の行が、Yセクションでは製品の終点に相当するので、かかる行の「Z測長」項目に「27.0」を入れることで、Yセクションにおける終点を確定する(ステップS13)。以下、時間を遡りつつ「Z換算差分」項目の値を「Z測長」項目から差し引いた値を「Z測長」項目に入れていく。
【0073】
次に、YセクションからXセクションへの遡り処理について図6を用いて説明する。Yセクションについては、図5を用いて既に説明したので、以下では、Xセクションについて説明する。図6に示すように、Xセクションは、Yセクションの上流側隣のセクションであり、測長センサSLx(図2参照)によって材料Mの測長が行われるセクションである。「測長値」項目は、測長センサSLxによる測長値に相当し、変数「Cx」であらわされる。
【0074】
「測長差分」項目は、1つ前の測長値との差分である。たとえば、時間が「4.0」の測長値は「619.5」であり、1つ前の時間(3.9)の測長値は、「619.0」であるので、時間が「4.0」の測長差分は、「0.5(=619.5-619.0)」とあらわされる。
【0075】
「Z基準縮み」項目は、Zセクションを「100%」とした場合の材料Mの伸縮量を示している。ここで、Xセクションの測長速度は、Vx=0.5[m/sec]であり、Yセクションの測長速度は、Vy=1.0[m/sec]であり、VxはVyの50%である。つまり、Yセクションに入る際には、材料Mの長さがXセクションに入る際の2倍に伸びたことになる。したがって、Tx=2.0である。
【0076】
そして、かかる伸びをZ基準に換算すると、XセクションのZ基準縮みは、YセクションのZ基準縮みの半分となる。具体的には、XセクションのZ基準縮みはTz×Ty×Txで求められるZセクションのXセクションに対する伸びの逆数を%であらわした「50%」となる。「Z換算差分」項目は、Zセクションからみた「測長差分」項目の大きさであり、同じ時間のデータについて、「測長差分」項目の値を「Z基準縮み」項目の値で除した値となる。たとえば、時間が「4.0」の測長差分は「0.5」であり、Z基準縮みは「50%」であるので、時間が「4.0」のZ換算差分は「1.0(=0.5/50%)」となる。
【0077】
そして、「Z測長」項目は、Zセクションにおける巻取長(Cz)、すなわち、製品長さ基準の座標値がどの行のデータに相当するのかをあらわす。ここで、Yセクションの「Z測長」項目が製品の終点(製品長さ)に相当する行は、前述のとおり時間が「5.3」の行であった。
【0078】
また、後セクションからの距離を示すDxは、Dx=5であり、貯留長を示すLxは、Lx=0であるので、Xセクションの「Z換算差分」項目について、時間が「5.3」の行から「5.0m(=Dx+Lx)」遡った行のデータがZセクションの終点に対応するデータとなる。このため、「Z換算差分」項目の合計値が「5.0」になるまで時間軸を遡る終点検索を行う(ステップS21)。
【0079】
そうすると、時間が「4.8」の行が、Xセクションでは製品の終点に相当するので、かかる行の「Z測長」項目に「27.0」を入れることで、Xセクションにおける終点を確定する(ステップS22)。以下、時間を遡りつつ「Z換算差分」項目の値を「Z測長」項目から差し引いた値を「Z測長」項目に入れていく。
【0080】
次に、XセクションからWセクションへの遡り処理について図7を用いて説明する。Xセクションについては、図6を用いて既に説明したので、以下では、Wセクションについて説明する。図7に示すように、Wセクションは、Xセクションの上流側隣のセクションであり、測長センサSLw(図2参照)によって材料Mの測長が行われるセクションである。「測長値」項目は、測長センサSLwによる測長値に相当し、変数「Cw」であらわされる。
【0081】
「測長差分」項目は、1つ前の測長値との差分である。たとえば、時間が「4.1」の測長値は「269.5」であり、1つ前の時間(4.0)の測長値も、「269.5」であるので、時間が「4.1」の測長差分は、「0.0(=269.5-269.5)」とあらわされる。また、時間が「4.0」の測長値は「269.5」であり、1つ前の時間(3.9)の測長値は、「269.0」であるので、時間が「4.0」の測長差分は、「0.5(=269.5-269.0)」とあらわされる。
【0082】
「Z基準縮み」項目は、Zセクションを「100%」とした場合の材料Mの伸縮量を示している。ここで、Wセクションの測長速度は、Vw=0.5[m/sec]であり、Xセクションの測長速度も、Vx=0.5[m/sec]であり、両者は等しい。したがって、Tw=1.0である。
【0083】
そして、かかる伸びをZ基準に換算すると、WセクションのZ基準縮みは、XセクションのZ基準縮みと同じとなる。具体的には、Tz×Ty×Tx×Twで求められるZセクションのWセクションに対する伸びの逆数を%で表すことにより、WセクションのZ基準縮みも「50%」となる。ここで、仮に、Vx=0.3[m/sec]であったとしたら、Z基準縮みは「30%」となる。「Z換算差分」項目は、Zセクションからみた「測長差分」項目の大きさであり、同じ時間のデータについて、「測長差分」項目の値を「Z基準縮み」項目の値で除した値となる。
【0084】
たとえば、時間が「4.0」の測長差分は「0.5」であり、Z基準縮みは「50%」であるので、時間が「4.0」のZ換算差分は「1.0(=0.5/50%)」となる。また、時間が「4.5」の測長差分は「0.0」であり、Z基準縮みは「50%」であるので、時間が「4.5」のZ換算差分は「0.0(=0.0/50%)」となる。
【0085】
そして、「Z測長」項目は、Zセクションにおける巻取長(Cz)、すなわち、製品長さ基準の座標値がどの行のデータに相当するのかをあらわす。ここで、Xセクションの「Z測長」項目が製品の終点(製品長さ)における製品の終点に相当する行は、前述のとおり時間が「4.8」の行であった。
【0086】
また、後セクションからの距離を示すDwは、Dw=8であり、貯留長を示すLwは、時間「4.8」においてLw=-5.0であるので、Wセクションの「Z換算差分」項目について時間が「4.8」の行から「3.0m(=Dw+Lw)」遡った行のデータがZセクションの終点に対応するデータとなる。このため、「Z換算差分」項目の合計値が「3.0」になるまで時間軸を遡る終点検索を行う(ステップS31)。
【0087】
そうすると、時間が「4.0」の行が、Wセクションでは製品の終点に相当するので、かかる行の「Z測長」項目に「27.0」を入れることで、Wセクションにおける終点を確定する(ステップS32)。以下、時間を遡りつつ「Z換算差分」項目の値を「Z測長」項目から差し引いた値を「Z測長」項目に入れていく。
【0088】
図5図7に示したように、図4に示した情報分析装置100の対応付け部114は、最下流の測長センサSLに対応するセクションである最終セクションから隣り合うセクションを上流へ向けて遡る順序で測長センサSLに対応するプロセスデータに座標値を対応付ける。
【0089】
このように、セクションを上流へ遡る順序で対応付け処理を実行することで、時系列のプロセスデータへ効率的に座標値を対応付けることができる。したがって、対応付け部114による対応付け処理の効率化を図ることができる。
【0090】
また、対応付け部114は、セクション内においては材料Mの伸縮量を一定とみなし、隣り合うセクション間の距離を上流端の測長センサSL同士の位置の差とすることで、測長センサSLに対応するプロセスデータに座標値を対応付ける。
【0091】
このように、セクション内での伸縮量を一定とみなし、セクション間の距離を上流端の測長センサSL同士の位置の差とすることで、対応付け部114による対応付け処理を迅速に行うことができる。
【0092】
次に、図4に示した情報分析装置100が実行する処理手順について図8を用いて説明する。図8は、情報分析装置100が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下では、図4に示した符号を適宜用いながら説明することとする。
【0093】
情報分析装置100の取得部111は、材料Mの搬送ライン10におけるセンサS群から時系列のプロセスデータ121を取得する(ステップS101)。つづいて、抽出部112は、センサS群に含まれる測長センサSLのうち最下流の測長センサSLからの製品長さ基準の座標値を含むプロセスデータ121を抽出する(ステップS102)。
【0094】
そして、算出部113は、2つの測長センサにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて材料Mの伸縮量を算出する(ステップS103)。つづいて、対応付け部114は、センサSの位置情報122および算出部113によって算出された材料Mの伸縮量に基づいてプロセスデータ121に製品長さ基準の座標値を対応付ける(ステップS104)。そして、対応付け部114は、対応付けデータ123を記憶部120へ保存し(ステップS105)、処理を終了する。
【0095】
上述してきたように、実施形態に係る情報分析装置100は、取得部111と、抽出部112と、算出部113と、対応付け部114とを備える。取得部111は、ロール製品Pの材料Mの搬送ライン10に沿って配置される複数のセンサSから時系列のプロセスデータ121を取得する。
【0096】
複数のセンサSには材料Mの搬送長さを計測する複数の測長センサSLが含まれており、抽出部112は、最下流に配置された測長センサSLからの製品長さ基準の座標値を含むプロセスデータ121を抽出する。算出部113は、2つの測長センサSLにおける搬送速度同士の比較結果に基づいて材料Mの伸縮量を算出する。対応付け部114は、搬送向きTDにおけるセンサSの位置情報122および伸縮量に基づいてプロセスデータ121に座標値を対応付ける。
【0097】
このように、情報分析装置100は、製品長さ基準の座標値を含むプロセスデータ121を抽出し、材料Mの伸縮量を反映しつつ、時系列のプロセスデータ121に製品長さ基準の座標値を対応付けることとした。つまり、算出した材料Mの伸縮量を加味したうえで、時系列のプロセスデータ121に完成品における製品長さ基準の座標値を対応付けるので、完成品の異常箇所に対応する搬送ライン10の部位を、精度良く特定することができる。
【0098】
また、完成品の座標値をプロセスデータ121に対応付けるので、すべてのプロセスデータ121に搬送距離を付与しておく必要がない。つまり、対応付けの対象とするプロセスデータ121の数を絞り込むことができる。したがって、材料Mに伸び縮みがある場合であっても、時間軸に沿うプロセスデータ121に製品長軸を対応付ける処理の処理負荷を低減することができる。
【0099】
なお、上述した実施形態では、搬送ライン10が上流側から下流側へ向けて直線状に材料Mを搬送する場合を示したが、搬送ライン10は直線状に材料Mを搬送しなくてもよい。たとえば、搬送向きを折り返したり、搬送向きの折り返しを繰返したりしつつ材料Mを搬送することとしてもよい。また、搬送向きを曲線状に変化させつつ材料Mを搬送することとしてもよい。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 情報分析システム
10 搬送ライン
100 情報分析装置
110 制御部
111 取得部
112 抽出部
113 算出部
114 対応付け部
115 区分け部
120 記憶部
121 プロセスデータ
122 位置情報
123 対応付けデータ
M 材料
P ロール製品
R リザーバ
S センサ
SL 測長センサ
TD 搬送向き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8