(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】光学素子と発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/08 20060101AFI20240301BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20240301BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240301BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240301BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240301BHJP
【FI】
G02B3/08
G02B5/10 A
G02B5/02 B
F21V5/00 510
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2022035774
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2020071406の分割
【原出願日】2020-04-13
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】201911316954.2
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310014779
【氏名又は名称】隆達電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】チェン スゥウェン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0025297(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0155009(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138778(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110972475(CN,A)
【文献】中国特許第107300769(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/08
G02B 5/10
G02B 5/02
F21V 5/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、
前記底面の上方に位置し、光学素子の持つ前記底面に垂直である中心軸から外方へ延伸して前記中心軸から離れる周縁を有し、前記中心軸から前記周縁へ連続的に湾曲する全反射面
であって、前記底面の内へ凹む全反射面と、
前記底面から前記全反射面へ凹む凹部と、
前記全反射面の前記周縁から、前記中心軸から離れて前記底面へ直接的に延在する第1の出光面であって、前記中心軸に垂直でないか又は前記底面に平行でない少なくとも1つの第1の線形サブ屈折面からなる第1の出光面と、
前記第1の出光面に接続され、前記中心軸から離れて延在して前記底面に接続される第2の出光面であって、
複数の第2の線形サブ屈折面からなる第2の出光面と、
を含み、
前記第2の線形サブ屈折面は、それぞれ前記第1の出光面から、上から下へ順次に接続されて前記底面に延伸し、1つ目の前記第2の線形サブ屈折面は前記底面の前記周縁から直接的に上方に延在し、2つ目の前記第2の線形サブ屈折面の少なくとも一部は、前記1つ目の前記第2の線形サブ屈折面の少なくとも一部の上端から直接上方に延在し、
前記第1の線形サブ屈折面は前記底面に対し夾角を有し、前記第2の線形サブ屈折面の各々は前記底面に対し夾角を有し、前記第1の線形サブ屈折面と前記底面の間の前記夾角と前記第2の線形サブ屈折面と前記底面の間の前記夾角は90度以下であり、3つ目の前記第2の線形サブ屈折面は、前記第1の線形サブ屈折面の下端部から直接下方に延在し、前記第1の線形サブ屈折面と前記底面の間の前記夾角は、前記3つ目の前記第2の線形サブ屈折面と前記底面の間の前記夾角よりも大きく、
複数の前記第2の線形サブ屈折面と前記底面の間の前記夾角は、前記第1の出光面から前記底面まで上から下へ次第に増加し、
前記第1及び第2の線形サブ屈折面の各々は前記中心軸を通る任意の断面で直線として現れることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記第1及び第2の線形サブ屈折面と前記底面との少なくとも一方は、ゼロよりも大きい算術平均粗さを有することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1及び第2の線形サブ屈折面は、それぞれゼロよりも大きく且つ互いに同じ又は異なる算術平均粗さを有することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1及び第2の線形サブ屈折面の前記算術平均粗さは、0.5μm~40μmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第2の線形サブ屈折面の各々は、前記中心軸に対して回転対称となるトロイド曲面であり、前記トロイド曲面の各々は、対向する上辺と底辺を有し、且つ前記上辺の長さが前記底辺の長さよりも小さく又はそれに等しいことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第2の線形サブ屈折面の各々は、前記中心軸に対して回転対称となるトロイド曲面であり、前記トロイド曲面の各々は、対向する上辺と底辺を有し、前記上辺と前記中心軸との第1の距離が前記底辺と前記中心軸との第2の距離よりも小さく又はそれに等しいことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1の出光面の前記少なくとも1つの第1の線形サブ屈折面は、複数の第1の線形サブ屈折面であり、前記第1の線形サブ屈折面は、それぞれ上から下へ順次に前記全反射面と前記第2の出光面に接続され、それぞれ前記中心軸から離れて延伸することを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記全反射面には、全反射メカニズムを破るための複数の突起構造を有し、
それぞれの突起構造の曲率半径は0.2μm~2μmの間の範囲にあることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1及び第2の線形サブ屈折面の各々は、前記中心軸に対して回転対称となるトロイド曲面であることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項10】
駆動基板と、
前記駆動基板に設けられる発光素子と、
前記駆動基板に設けられ、前記凹部が前記発光素子を収納することに用いられ、前記凹部は、連続的に湾曲する上面と連続的に湾曲した側壁とを有し、前記連続的に湾曲した上面は、前記上面の最上部から前記上面の端部まで延び、前記連続的に湾曲した側壁は、前記連続的に湾曲した上面の端部から前記底面の端部まで延びる請求項1~
9の何れか1項に記載の光学素子と、
を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項11】
前記発光素子は、発光ダイオードを含むことを特徴とする請求項
10に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学素子、及び発光素子を使用する発光装置に関し、特に、出光面が複数の線形屈折面からなる光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、発光ダイオードパッケージは、発光角度が一定である。異なる光学特性に対する様々な要求を満たすために、発光ダイオードパッケージの上方に光学レンズを覆うことで、発光ダイオードパッケージから放射された光の形状を調整することは、一般的である。
【0003】
例として、光学レンズは、例えば、反射式レンズである。発光ダイオードパッケージから放射された光線は、全反射面で反射された後で、出光面を通って光学レンズ本体から屈折されることができる。しかしながら、既存の出光面は、何れも曲面によって光線を制御するように設計されるが、このような方法では、放射された光の形状にハロー現象があり、またスポットが小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本開示の目的の1つは、ハローの問題を解消し、スポットをより大きくすることのできる発光素子と発光モジュールを提出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、底面と、底面の上方に位置し、光学素子の持つ底面に垂直である中心軸から外方へ延伸して中心軸から離れる周縁を有する全反射面と、底面から全反射面へ凹む凹部と、全反射面の周縁に接続され、中心軸から離れる方向に底面へ延伸する第1の出光面と、第1の出光面に接続され、中心軸から離れる方向に延伸して底面に接続される第2の出光面と、を含み、第1の出光面と第2の出光面とはそれぞれ少なくとも1つの線形サブ屈折面からなり、線形サブ屈折面の各々は中心軸を通る任意の断面で直線として現れる光学素子を開示する。
【0006】
1つ又は複数の実施形態において、線形サブ屈折面と底面との少なくとも一方は、ゼロよりも大きい算術平均粗さを有する。
【0007】
1つ又は複数の実施形態において、線形サブ屈折面は、それぞれゼロよりも大きく且つ互いに同じ又は異なる算術平均粗さを有する。いくつかの実施形態において、線形サブ屈折面の算術平均粗さは、0.5μm~40μmの範囲にある。
【0008】
1つ又は複数の実施形態において、第2の出光面の少なくとも1つの線形サブ屈折面は、複数の第2の線形サブ屈折面であり、第2の線形サブ屈折面は、それぞれ第1の出光面から、上から下へ順次に接続されて底面に延伸する。
【0009】
いくつかの実施形態において、第2の線形サブ屈折面の各々は、実質的に中心軸に対して回転対称となるトロイド曲面である。トロイド曲面の各々は、対向する上辺と底辺を有し、且つ上辺の長さが底辺の長さよりも小さく又はそれに実質的に等しい。
【0010】
いくつかの実施形態において、第2の線形サブ屈折面の各々は、実質的に中心軸に対して回転対称となるトロイド曲面であり、トロイド曲面の各々は、対向する上辺と底辺を有し、上辺と中心軸との距離が底辺と中心軸との距離よりも小さく又はそれに実質的に等しい。
【0011】
いくつかの実施形態において、各々の第2の線形サブ屈折面と底面との間には、中心軸に向かう90度以下の夾角を有する。いくつかの実施形態において、前記第2の線形サブ屈折面の夾角は、第1の出光面から底面まで上から下へ次第に増加する。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、第1の出光面の少なくとも1つの線形サブ屈折面は、複数の第1の線形サブ屈折面である。前記第1の線形サブ屈折面は、それぞれ上から下へ順次に全反射面と第2の出光面に接続される。前記第1の線形サブ屈折面は、それぞれ中心軸から離れる方向へ延伸する。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、全反射面には、全反射メカニズムを破るための複数の突起構造を有する。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、線形サブ屈折面の各々は、実質的に中心軸に対して回転対称となるトロイド曲面である。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、全反射面は、底面の内へ凹む。
【0016】
本開示の一態様は、駆動基板と、駆動基板に設けられる発光素子と、駆動基板に設けられ、凹部が発光素子を収納することに用いられる上記に記載の光学素子と、を含む発光装置を開示する。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、発光装置の発光素子は、発光ダイオードを含む。
【0018】
以上をまとめると、本開示の光学素子の出光面の何れも線形サブ屈折面からなる。各線形サブ屈折面の勾配と長さを制御することで、ハロー現象を効果的に解決し、スポットサイズを大きくすることができる。
【0019】
上記説明は、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、及び発明の効果等を述べるためにのみ使用される。本発明の具体的な詳細については、以下の発明を実施するための形態及び関連の添付図面において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付図面には、本開示の1つ又は複数の実施形態を開示し、明細書における説明に合わせて、本開示の原理を説明する。可能な限り、図面全体にわたって同じ参照番号によって実施形態における同じ又は類似な素子を指す。これらの図面は、以下のものを含む。
【
図1】本開示の一実施形態による光学素子を示す斜視図である。
【
図3】
図1の光学素子の線分L-L’に沿った断面図である。
【
図4】本開示の光学素子と別の曲面光学レンズとの発光強度の変位に伴う変化を示す関係図である。
【
図6】それぞれ本開示の各異なる実施形態による異なる光学素子を示す断面模式図である。
【
図7】それぞれ本開示の各異なる実施形態による異なる光学素子を示す断面模式図である。
【
図8】それぞれ本開示の各異なる実施形態による異なる光学素子を示す断面模式図である。
【
図9】それぞれ本開示の各異なる実施形態による異なる光学素子を示す断面模式図である。
【
図10】本開示の一実施形態による発光装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を挙げて添付図面に合わせて詳しく説明するが、提供された実施例は本発明に含まれる範囲を限定するためのものではなく、構造や動作についての記述はその実行の手順を限定するためのものではなく、素子から新たに組み合わせられた構造、それにより生じる等価な効果を持つ装置であれば、いずれも本発明の範囲に含まれる。また、図面は、説明するためのものだけであり、原寸で作図されたものではない。容易に理解させるために、実際に各種の特徴のサイズを任意に増加又は減少することができる。理解しやすくするために、下記説明において、同一の素子に同一の符号を付けて説明する。
【0022】
別に定義されない限り、本明細書に用いる全ての語彙(技術及び科学用語を含む)も、当業者に理解される一般的な意味を有する。更に、上記の語彙の、普通によく用いられる辞典での定義は、本明細書の内容において、本発明の関連分野と一致である意味として理解されるべきである。特に明確に定義されない限り、これらの語彙は、理想化又はあまり正式的な意味に解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書に使用される「第1の」、「第2の」等は、特に順序又は順位を指すものではなく、本発明を制限するためのものでもなく、同じ技術用語で説明される要素又は操作を区別するためのものだけである。
【0024】
次に、本文に使用される「含む」、「備える」、「有する」、「含有」等は、何れも開放的な用語であり、つまり、含むがそれに限定されないことを指す。
【0025】
本明細書において、本文で冠詞について特に限定しない限り、「1つ」と「前記」は、単一又は複数をまとめて指すことができる。更に理解すべきなのは、本明細書に用いる「備える」、「含む」、「有する」及び類似な語彙は、記載される特徴、領域、整数、工程、操作、素子と/又は部品を明記するが、述べられる又は別の1つ又は複数の他の特徴、領域、整数、工程、操作、素子、部品、と/又はそれらの群を排除しない。
【0026】
図1を参照されたい。
図1は、本開示の一実施形態による光学素子100を示す斜視図である。本実施形態において、光学素子100は、光学レンズであり、発光素子が光学素子100の内に設けられてよい。光学素子100の内に設けられる発光素子が発光する場合、発光素子から発光された光の一部は光学素子100の上方から透過し、別の一部は光学素子100の出光面にて屈折される。
【0027】
図1に示すように、光学素子100は、底面110と、第1の出光面140と第2の出光面160を含み、底面110に設けられる出光面と、を有する。本開示において、第1の出光面140と第2の出光面160は、いずれも1つ又は複数の線形サブ屈折面からなる。本実施形態において、第1の出光面140は単一の線形屈折面からなり、第2の出光面160は複数の線形サブ屈折面からなり、第2の出光面160を構成する複数の線形サブ屈折面が線形サブ屈折面1601、線形サブ屈折面1602、線形サブ屈折面1603と線形サブ屈折面1604を含む。
【0028】
図2は、
図1の光学素子100を示す側面図である。
図2において、つまり光学素子100の側面図では、第1の出光面140、及び第2の出光面160を構成する複数の線形サブ屈折面1601~1604を含めて、何れも直線として現れる。
【0029】
図1に戻す。本実施形態において、
図1に示す光学素子100は、実質的に底面110に垂直である中心軸180を有し、且つその各反射面と屈折面の何れも中心軸180を参照して設けられる。例として、本実施形態において、光学素子100は、中心軸180に対して回転対称を有し、これは各線形サブ屈折面(線形サブ屈折面1601、線形サブ屈折面1602、線形サブ屈折面1603と線形サブ屈折面1604を含む)に対応して実質的にトロイド曲面であり、且つこれらの環状の線形サブ屈折面が中心軸180に対しても回転対称を有する。いくつかの実施形態において、光学素子は、中心軸180に対して回転対称とならないように設けられてもよい。
【0030】
光学素子100の構成を更に説明するために、同時に
図2と
図3を参照されたい。
図3は、
図1の光学素子100の線分L-L’に沿った断面図であり、線分L-L’が中心軸180を貫通する。
図3に示すように、光学素子100は、底面110、全反射面120、凹部130、第1の出光面140と第2の出光面160を含む。光学素子100の中心軸180は、底面110における中心点Oを貫通し底面110に垂直である。
図3に示すように、中心軸180は、中心点Oを貫通する線分O-O’と見なされてよい。
【0031】
全反射面120は、底面110の上方に位置し、中心軸180から外方へ延伸するので、中心軸180から離れる周縁を有し、且つその周縁に頂点PAを有する。本実施形態において、全反射面120は、底面110内向きに凹む。第1の出光面140は、全反射面120の周縁に接続され、中心軸180から離れる方向に底面110へ延伸するが、底面110に接触せず、第2の出光面160に接触する。第2の出光面160は、第1の出光面140に接続され、同様に中心軸180から離れる方向に底面110へ延伸し底面110に接触する。
【0032】
前記のように、第2の出光面160は、線形サブ屈折面1601、線形サブ屈折面1602、線形サブ屈折面1603と線形サブ屈折面1604を含む。
図3に記載の光学素子100の断面については、線分L-L’が中心軸180を貫通するため、
図3に示す断面に対応すると、中心軸180を貫通する。従って、明らかに見えられるように、本実施形態において、
図3に示す光学素子100の断面で、線形サブ屈折面の各々(線形サブ屈折面1601、線形サブ屈折面1602、線形サブ屈折面1603と線形サブ屈折面1604を含む)は、断面で直線として現れる。つまり、本開示において、出光面は、単一又は複数の曲面からなるわけではなく、断面で直線となる複数の線形サブ屈折面からなる。
【0033】
図2に戻す。具体的に、線形サブ屈折面の各々と他の線形サブ屈折面との境界が、何れもそれぞれ1組の上辺と底辺に対応し、上辺又は底辺に頂点がある。本文において、頂点を通して各線形サブ屈折面の設置を説明するために、各頂点の符号については、具体的に下記のように定義される。
図2に示すように、第1の出光面140は、上辺に頂点PAを有する。第1の出光面140の上辺は、また全反射面120(
図3に示す)から外方へ延伸する周縁に対応する。第1の出光面140と第2の出光面160との境界には、頂点PBがあり、つまり、頂点PBは、第1の出光面140の底辺、つまり第2の出光面160の上辺の上に位置する。頂点PCは、底面110と第2の出光面160の境界、つまり第2の出光面160の底辺に位置する。
【0034】
本実施形態において、第2の出光面160が複数の線形サブ屈折面からなり、線形サブ屈折面と線形サブ屈折面との間の境界にも頂点を有する。例として、線形サブ屈折面1601と線形サブ屈折面1602との境界は、線形サブ屈折面1601の底辺と線形サブ屈折面1602の上辺に対応すると、頂点PB1を有するので、第2の出光面160から底面110へ上から下へ接触する初めての境界であることが判明される。類似的に、第2の出光面160から底面110へ上から下へ接触する複数の境界については、順次に頂点PB2と頂点PB3と表記されてよい。類似的な表記形態は、本文において第1の出光面140が複数の線形サブ屈折面からなる状況に適用されてもよく、第1の出光面140の上辺から第1の出光面140の底辺へ上から下へ接触する境界については、下記
図8に示すように、これらの境界における頂点が順次に頂点PA1、頂点PA2等と表記されてよい。
【0035】
従って、
図2と
図3に示すように、線分L-L’の断面で、第1の出光面140は直線線分PA-PBに対応する。第2の出光面160は、複数の線形サブ屈折面からなり、線形サブ屈折面1601(直線線分PB-PB1に対応する)、線形サブ屈折面1602(直線線分PB1-PB2に対応する)、線形サブ屈折面1603(直線線分PB2-PB3に対応する)及び線形サブ屈折面1604(直線線分PB3-PCに対応する)を含む。これらの第2の出光面160を構成する線形サブ屈折面1601-1604は、それぞれ第1の出光面140の底辺から上から下へ順次に接続されて底面110に延伸し、断面における頂点PB-頂点PB1-頂点PB2-頂点PB3-頂点PCの接続に対応し、且つ頂点PB、頂点PB1、頂点PB2、頂点PB3と頂点PCと中心軸180との距離は順次に遠くなる。
【0036】
本実施形態において、光学素子100が中心軸180に対して回転対称であるため、線形サブ屈折面1601-1604は、実質的にそれぞれ前記中心軸に対して回転対称となるトロイド曲面であり、且つトロイド曲面の上辺に対する長さが底辺の長さよりも小さく又はそれに実質的に等しい。例として、線形サブ屈折面1601にとって、上辺は頂点PB1を有し、底辺は頂点PB2を有する。頂点PB1から中心軸180までの距離が頂点PB2から中心軸180までの距離よりも小さいため、線形サブ屈折面1601の上辺の長さは、底辺の長さよりも小さい。
【0037】
図3に示すように、本実施形態において、線形サブ屈折面1601、線形サブ屈折面1602、線形サブ屈折面1603及び線形サブ屈折面1604と底面110の水平方向との間には、それぞれ中心軸180に向かう夾角θ1、夾角θ2、夾角θ3と夾角θ4を有する。夾角θ1~θ4は90度よりも小さく又は実質的に90度に等しくてよいので、第2の出光面160が中心軸へ凹むことはなく、光学素子100の製造に有利である。本実施形態において、夾角θ1、夾角θ2、夾角θ3と夾角θ4が第1の出光面140から底面110へ上から下へ次第に増加し、つまり夾角θ4が夾角θ3よりも大きく、夾角θ3が夾角θ2よりも大きく、且つ夾角θ2が夾角θ1よりも大きい。これにより、第2の出光面160にあまりにも不連続な変化が生じないようにし、第2の出光面160の形も更に曲面に近くなるが、異なる発光素子に対応するために、曲面からなる出光面よりも、もっと調整しやすい。
図3に示すように、夾角θ1~θ3は90度よりも小さいが、線形サブ屈折面1604が底面110に延伸する場合、線形サブ屈折面1604の夾角θ4が90度に近く又は実質的に90度に等しく、これは、半円形の表面が平面に接する場合に似ている。従って、線形サブ屈折面1604の頂点PB3の中心軸180から離れる距離は、実質的に底辺の頂点PCから中心軸180までの距離に等しく、即ち線形サブ屈折面1604の上辺の長さは、実質的に底辺の長さに等しい。
【0038】
複数の線形サブ屈折面によって出光面(例えば、第1の出光面140と第2の出光面160)を形成するメリットは、様々な異なる発光素子に対応するために、製造でパラメータを調整しやすいことにある。曲面に比べると、線形サブ屈折面によって出光面を形成するには、線形サブ屈折面の断面での長さ、及び線形サブ屈折面の各々と底面110との夾角を調整するだけでよい。また、光学シミュレーションでは、線形サブ屈折面からなる出光面は、パラメータを調整しやすい。
【0039】
このように、光学素子100の内部に設けられる発光素子が発光すると、改善された光形状が得られる。発光素子は、光学素子100の凹部130(下記
図10に示す)に設けられて光線を投射する。一部の光線は全反射面120によって第1の出光面140に反射された後で屈折されるが、一部の光線は直接第2の出光面160の複数の線形サブ屈折面に到達して屈折される。一部の光線は、光学素子100の内部で反射されて、互いに干渉して光形状に影響を与える可能性もある。
【0040】
図4、
図5Aと
図5Bを参照されたい。
図4は、本開示の光学素子100と別の曲面光学レンズとの発光強度(輝度)の変位に伴う変化を示す関係図である。
図5Aは、本開示の光学素子100の光形状を示し、
図5Bは、別の曲面光学レンズの光形状を示す。本実施形態において、光学素子100の設置によって、光線は光学素子100の上方から投射され、
図4で曲線Aとして現わされ、
図5Aの光形状に対応する。比較とする別の曲面光学レンズは、
図4で曲線Bとして現わされ、
図5Bの光形状に対応する。
図4において、変位とは、光形状の中心までの距離であり、単位はmmである。輝度とは、対応する発光強度であり、且つ得られた最大の発光強度で正規化されるので、縦軸には単位がない。
図4に示すように、本開示の光学素子100の発生した光の形状の輝度は、明らかに別の曲面光学レンズの発生した光の形状の輝度よりも大きい。
図5Aと
図5Bの光形状に示すように、
図5Aの光形状の範囲が明らかに大きくなり、スポットサイズが増加する。
【0041】
いくつかの実施形態において、底面110と、第1の出光面140及び第2の出光面160を構成する線形サブ屈折面とに異なる表面粗さを持たせてもよい。これは、線形サブ屈折面から屈折される複数の光線が互いに干渉して光形状に影響を与えないように、底面110と線形サブ屈折面の何れもゼロよりも大きい算術平均粗さを有してよいことに対応する。ひいては、異なる線形サブ屈折面は、互いに同じ又は異なる算術平均粗さとなるように設計されてよい。いくつかの実施形態において、線形サブ屈折面の算術平均粗さは、0.5μm~40μmの範囲にあるように設計されてよい。
【0042】
粗化処理がない場合、光形状の分布は大きくなる。底面110と一部の第2の出光面160に粗化処理を行ってハローの分布を抑制することは、既存の曲面光学レンズよりも、光線が制御され、且つ光形状が大きく、ハローが明らかではなく、ハロー現象を解決することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、全反射面120に複数の突起構造を設けてもよい。これらの突起構造は、全反射メカニズムを破って、光学素子100の中心軸180の付近の輝度を向上させることができる。いくつかの実施形態において、突起構造の曲率半径は0.2μm~2μmの間の範囲にあり、且つ突起構造の各々の曲率半径は同じ又は異なってよい。
【0044】
図6~
図9は、それぞれ本開示の各異なる実施形態による異なる光学素子を示す断面模式図である。
【0045】
図6は、本開示の光学素子の簡単な実例を示し、第1の出光面140と第2の出光面とがそれぞれ単一の線形屈折面からなる。
【0046】
図7は、本開示の光学素子の別の実例を示す。
図3に記載の光学素子100と比べると、
図7において、第2の出光面160は、2つの線形サブ屈折面1605と1606からなってよい。線形サブ屈折面1605及び1606と底面110の水平方向とは、それぞれ夾角θ5とθ6を有し、且つ上から下へ夾角θ5が夾角θ6よりも小さい。また、夾角θ5、θ6は、90度よりも小さく又は実質的に90度に等しくてよく、
図7に示すように、夾角θ5は90度よりも小さく、夾角θ6は90度に近く又は実質的に90度に等しい。従って、線形サブ屈折面1605の頂点PBから中心軸180までの距離は、底辺の頂点PB1から中心軸180までの距離よりも小さく、即ち線形サブ屈折面1605の上辺の長さは底辺の長さよりも小さい。線形サブ屈折面1606の頂点PB1から中心軸180までの距離は、実質的に底辺の頂点PCから中心軸180までの距離に等しく、即ち線形サブ屈折面1606の上辺の長さは実質的に底辺の長さに等しい。
【0047】
図8は、本開示の別の実施形態による光学素子を示す実例である。
図3に記載の光学素子100と比べると、
図8において、第2の出光面160は線形サブ屈折面であり、第1の出光面140は線形サブ屈折面1401(断面における直線線分PA-PA1に対応する)、線形サブ屈折面1402(断面における直線線分PA1-PA2に対応する)と線形サブ屈折面1403(断面における直線線分PA2-PBに対応する)からなる。これらの線形サブ屈折面1401-1403は、それぞれ全反射面120の周縁から上から下へ順次に接続されて第2の出光面160の上辺に延伸する。頂点PAは全反射面120と線形サブ屈折面1401との境界に位置し、頂点PA1は線形サブ屈折面1401と1402との境界に位置し、頂点PA2は線形サブ屈折面1402と1403との境界に位置する。且つ、線形サブ屈折面1401-1403は、上から下へ底面110の水平方向との夾角が次第に大きくなる。
【0048】
図9は、本開示の別の実施形態による光学素子を示す実例である。
図8に記載の発光素子と比べると、
図9において、線形サブ屈折面1404-1406は、第1の出光面140を形成し、且つ上から下へ底面110の水平方向との夾角も次第に小さくなり、本開示にも含まれる。
【0049】
図10は、本開示の一実施形態による発光装置200を示す断面図である。
図10に示すように、発光装置200は、前記のような光学素子100を含み、更に、駆動基板220と発光素子210を含み、光学素子100の凹部130は発光素子210を収納することに用いられる。駆動基板220は、発光素子210を駆動するように接続される。いくつかの実施形態において、発光素子は、発光ダイオードを含む。いくつかの実施形態において、発光ダイオードは、発光ダイオードチップ、サブミリメートル発光ダイオードチップ(mini LED chip)、マイクロ発光ダイオードチップ(micro LED chip)であってよい。いくつかの実施形態において、発光ダイオードは、少なくとも1つの発光ダイオードチップを含むパッケージ構造であってよい。
【0050】
発光装置200において、発光素子210が駆動されて発光すると、発光した複数の光線は凹部130の上面、側面から放出され、例えば一部が線分PD-PEの曲面から放出され、これらの線分PD-PEから放出された光線の一部が全反射面120によって第1の出光面140に反射され、第1の出光面140から屈折される。その同時に、一部の光線は凹部130における線分PE-PFの対応する側面を介して直接第2の出光面160に到達し、複数の線形サブ屈折面1601-1604からなる第2の出光面160から屈折される可能性もある。
【0051】
以上をまとめると、本開示の光学素子は、それぞれ1つ又は複数の線形サブ屈折面からなる第1のと第2の出光面を含み、且つ線形サブ屈折面が反射面から底面まで上から下へ外方へ延伸し、製造しやすいだけでなく、線形サブ屈折面を調整するには少ないパラメータのみを必要とし、製造前の光学シミュレーションに便利である。これは、製造コストを低下させるだけでなく、元の曲面光学レンズのスポットサイズを簡単で且つ効果的に改善することができる。その同時に、異なる線形サブ屈折面に対して異なる算術平均粗さを設置し、更にハローの現象を改善することもできる。
【0052】
本発明の実施例を前述の通りに開示したが、これは、本発明を限定するものではなく、当業者なら誰でも、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができ、従って、本発明の保護範囲は、後に付いた特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0053】
100 光学素子
110 底面
120 全反射面
130 凹部
140 第1の出光面
1401、1402、1403、1404、1405、1406、1601、1602、1603、1604、1605、1606 線形サブ屈折面
160 第2の出光面
180 中心軸
200 発光装置
210 発光素子
220 駆動基板
A、B 曲線
O 中心点
O-O’、L-L’、PD-PE、PE-PF 線分
PA、PA1、PA2、PB、PB1、PB2、PB3、PC 頂点
θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、θ6 夾角