(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】嚥下障害用の電気刺激治療装置及び電気刺激治療装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
A61N1/36
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022038430
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097255
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発明者らが令和3年3月11日にネイチャー・リサーチ社の学術雑誌scientific reportsのウェブサイトにて公開(https://www.nature.com/articles/s41598-021-84972-6)
(73)【特許権者】
【識別番号】522336281
【氏名又は名称】アールエス リハブ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ジュ ソック
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ゴ,ジン ヨン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0130808(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1798365(KR,B1)
【文献】特表2009-522059(JP,A)
【文献】特表2010-512843(JP,A)
【文献】特開2015-47365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嚥下障害用の電気刺激治療装置において、
低粘度液体と高粘度液体に区分される飲食物類型を含むユーザ情報が入力される入力部と、
複数のチャンネルにより構成され、ユーザの嚥下筋肉を刺激する刺激部と、
前記刺激部を駆動する制御命令を生成するプロセッサとを含み、
前記プロセッサは、前記ユーザ情報に基づき、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの両側の舌骨上筋(SH、suprahyoid muscle)と、甲状舌骨筋(TH、thyrohyoid muscle)と、胸骨甲状筋(StH、sternothyroid muscle)とを含む嚥下筋肉を順次に刺激
し、
前記ユーザ情報は、筋肉収縮類型をさらに含み、
前記筋肉収縮類型は、
嚥下筋肉が全て単相性パターンを有する第1の類型と、
嚥下筋肉のうち1つ以上の嚥下筋肉が二相性パターンを有し、残りの嚥下筋肉が単相性パターンを有する第2の類型とを含む、電気刺激治療装置。
【請求項2】
前記第1の類型は、舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て単相性パターンで構成された第1のパターンを含み、
前記第2の類型は、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)は二相性パターンで構成された第2のパターンと、
胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)及び甲状舌骨筋(TH)は二相性パターンで構成された第3のパターンと、
舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て二相性パターンで構成された第4のパターンとを含む、請求項
1に記載の電気刺激治療装置。
【請求項3】
前記刺激部は、
顎二腹筋及び顎舌骨筋に付着し、両側の舌骨上筋(SH)を刺激する第1の刺激部と、甲状軟骨の両側上に付着し、甲状舌骨筋(TH)を刺激する第2の刺激部と、胸鎖乳突筋の内側と甲状軟骨の下に付着し、胸骨甲状筋(StH)を刺激する第3の刺激部とを含む、請求項1に記載の電気刺激治療装置。
【請求項4】
嚥下障害用の電気刺激治療装置の動作方法において、
予め設定された筋肉活性化シーケンスに従って刺激部がユーザの両側の舌骨上筋(SH、suprahyoid muscle)、甲状舌骨筋(TH、thyrohyoid muscle)及び胸骨甲状筋(StH、sternothyroid muscle)を順次に刺激するために必要な、低粘度液体と高粘度液体に区分される飲食物類型を含むユーザ情報の入力をユーザから入力部を介して受けるステップを含
み、
前記ユーザ情報は、筋肉収縮類型をさらに含み、
前記筋肉収縮類型は、
嚥下筋肉が全て単相性パターンを有する第1の類型と、
嚥下筋肉のうち1つ以上の嚥下筋肉が二相性パターンを有し、残りの嚥下筋肉が単相性パターンを有する第2の類型とを含む、嚥下障害用の電気刺激治療装置の動作方法。
【請求項5】
前記第1の類型は、舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て単相性パターンで構成された第1のパターンを含み、
前記第2の類型は、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)は二相性パターンで構成された第2のパターンと、
胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)及び甲状舌骨筋(TH)は二相性パターンで構成された第3のパターンと、
舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て二相性パターンで構成された第4のパターンとを含む、請求項
4に記載の嚥下障害用の電気刺激治療装置の動作方法。
【請求項6】
前記刺激部は、
顎二腹筋及び顎舌骨筋に付着し、両側の舌骨上筋(SH)を刺激する第1の刺激部と、甲状軟骨の両側上に付着し、甲状舌骨筋(TH)を刺激する第2の刺激部と、胸鎖乳突筋の内側と甲状軟骨の下に付着し、胸骨甲状筋(StH)を刺激する第3の刺激部とを含む、請求項
4に記載の嚥下障害用の電気刺激治療装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下障害用の電気刺激治療装置及び電気刺激治療装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下障害とは、飲食する際の嚥下(swallowing)が困難になることである。しいては、嚥下障害により口からの飲食物の攝取又は栄養の攝取を諦める場合も多く、QOL(quality of life)の観点から見て大きな問題となる。同時に、嚥下障害を持つ患者が飲食することを看病する人にとっても、精神的、身体的なストレスが非常に高い。また、高齢者の死亡原因として肺炎の割合が急激に増加しているが、その殆どが嚥下障害(dysphagia)による誤嚥性(吸引性)肺炎(aspiration pneumonia)であると見なされている。
【0003】
嚥下障害(dysphagia)の症状は、脳血管障害、パーキンソン病、老化、認知症、頭頸部癌、放射線治療、脳性麻痺など様々な疾患において発生する。また、口腔、咽頭、食道など、嚥下に関与する部位の筋肉と神経の異常と、これを調節する中枢神経系の異常など、様々な原因によって嚥下障害が発生し得る。よって、嚥下反射の改善は、飲食することの不自由を強いられる嚥下障害患者のQOL向上及び看病負担の軽減、又は誤嚥性(吸引性)肺炎を予防するのにおいて相当重要である。
【0004】
既存の嚥下障害の治療法としては様々なリハビリテーション治療方法が施行されてきた。しかし、リハビリテーション治療は、対象者によって効果が大きい場合と大きくない場合があり、対象者の協力が必要な場合もある。従って、リハビリテーション治療の効果を高めるためには、これらの治療技法のうち最大の効果が見られる対象を選別することも必要であり、治療効果が高い様々な治療技法を開発することも必要である。
【0005】
それに関し、大韓民国登録特許第10-1798365号(発明の名称:嚥下補助用の電気刺激装置)は、人体の甲状舌骨に付着して飲食物の飲み込み時点を検出し、人体の両側の顎二腹筋(digastric muscle)に電気刺激を与える電極刺激装置に関するものを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一部の実施例は、上述した問題点を解決するために創案されたものであり、本発明は、飲食物類型及び筋肉収縮類型のユーザ情報に基づき、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの嚥下筋肉を順次に刺激する嚥下障害用の電気刺激治療装置及び電気刺激治療装置の動作方法を提供することにその目的がある。
【0007】
但し、本実施例が解決しようとする技術的課題は、上記したような技術的課題に限定されるものではなく、また他の技術的課題が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を解決するための技術的手段として、本発明の一実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置は、低粘度液体と高粘度液体に区分される飲食物類型を含むユーザ情報が入力される入力部と、複数のチャンネルにより構成され、ユーザの嚥下筋肉を刺激する刺激部と、刺激部を駆動する制御命令を生成するプロセッサとを含み、プロセッサは、ユーザ情報に基づき、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの両側の舌骨上筋(SH、suprahyoid muscle)と、甲状舌骨筋(TH、thyrohyoid muscle)と、胸骨甲状筋(StH、sternothyroid muscle)とを含む嚥下筋肉を順次に刺激するものである。
【0009】
本発明の他の実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置による電気刺激治療方法は、(a)ユーザから入力部を介して低粘度液体と高粘度液体に区分される飲食物類型を含むユーザ情報の入力を受けるステップと、(b)刺激部により、ユーザ情報に基づき、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの両側の舌骨上筋(SH、suprahyoid muscle)、甲状舌骨筋(TH、thyrohyoid muscle)及び胸骨甲状筋(StH、sternothyroid muscle)を順次に刺激するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明の課題を解決するための手段の何れか1つによれば、本発明の一実施例に係る3チャンネル以上により構成される電気刺激治療装置は、飲み込む過程(嚥下過程)に必要な筋肉を全て刺激することができる。
【0011】
また、正常な嚥下筋肉収縮パターンに従い、順次に筋肉の収縮を誘導することができる。これにより、既存の電気刺激治療器では順次に刺激されず、嚥下筋肉が同時に収縮して、正常な筋肉収縮パターンを反映できないという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る刺激部の構成を説明するために示す構成図である。
【
図3a】本発明の一実施例に係る刺激部が設けられる位置を示す例示図である。
【
図3b】本発明の一実施例に係る刺激部が設けられる位置を示す例示図である。
【
図3c】本発明の一実施例に係る刺激部が設けられる位置を示す例示図である。
【
図3d】本発明の一実施例に係る刺激部が設けられる位置を示す例示図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る嚥下筋肉の筋肉収縮パターンを説明するためのものである。
【
図5】本発明の一実施例に係る筋肉収縮パターンの2つの類型を説明するためのものである。
【
図6a】本発明の一実施例に係る低粘度液体を飲み込む間の時間の流れに応じた筋肉の変位を示す例示図である。
【
図6b】本発明の一実施例に係る高粘度液体を飲み込む間の時間の流れに応じた筋肉の変位を示す例示図である。
【
図7】本発明の一実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置の電気刺激治療方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付した図面を参照しながら、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施例を詳しく説明する。ところが、本発明は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0014】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味し、1つ或いはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除するものではないと理解されなければならない。
【0015】
本明細書において「部」とは、ハードウェア又はソフトウェアによって実現されるユニット(unit)、両方を利用して実現するユニットを含み、1つのユニットが2つ以上のハードウェアを利用して実現されても良く、2つ以上のユニットが1つのハードウェアによって実現されても良い。一方、「~部」は、ソフトウェア又はハードウェアに限定される意味ではなく、「~部」は、アドレッシングできる格納媒体にあるように構成されてもよく、1つ又はそれ以上のプロセッサを再生するように構成されても良い。従って、一例としての「~部」は、ソフトウェア構成要素、オブジェクト指向のソフトウェア構成要素、クラス構成要素、及びタスク構成要素のような構成要素と、プロセス、関数、属性、プロシージャ、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバー、ファームウェア、マイクロコード、回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ及び変数を含む。構成要素と「~部」の中で提供される機能は、より小さい数の構成要素及び「~部」に結合されたり、追加の構成要素と「~部」にさらに分離されても良い。それだけでなく、構成要素及び「~部」は、デバイス内の1つ又はそれ以上のCPUを再生するように具現されても良い。
【0016】
ネットワークは、端末及び装置のようなそれぞれのノードの相互間に情報交換が可能な連結構造を意味するものであり、構内通信網(LAN:Local Area Network)、広域通信網(WAN:Wide Area Network)、インターネット(WWW:World Wide Web)、有無線データ通信網、電話網、有無線テレビ通信網などを含む。無線データ通信網の一例には、3G、4G、5G、3GPP(3rd Generation Partnership Project)、LTE(Long Term Evolution)、WIMAX(World Interoperability for Microwave Access)、ワイファイ(Wi-Fi)、ブルートゥース(登録商標)通信、赤外線通信、超音波通信、可視光通信(VLC:Visible Light Communication)、ライファイ(LiFi)などが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置を示す構成図である。
【0018】
図面に示すように、本発明の一実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置100は、低粘度液体と高粘度液体に区分される飲食物類型を含むユーザ情報が入力される入力部150と、複数のチャンネルにより構成され、ユーザの嚥下筋肉を刺激する刺激部200と、刺激部200を駆動する制御命令を生成するプロセッサ130とを含み、プロセッサ130は、ユーザ情報に基づき、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの両側の舌骨上筋(SH、suprahyoid muscle)と、甲状舌骨筋(TH、thyrohyoid muscle)と、胸骨甲状筋(StH、sternothyroid muscle)とを含む嚥下筋肉を順次に刺激する。また、ユーザ情報は、筋肉収縮類型をさらに含み、入力部150は、ユーザ情報として飲食物類型の他に筋肉収縮類型の入力をさらに受けても良い。
【0019】
よって、本発明は、既存の電気刺激治療器が嚥下筋肉を同時に収縮させるといった問題を解決し、飲み込む過程(嚥下過程)において必要な筋肉を全て順次に刺激することができるという効果がある。
【0020】
具体的に、
図1に示すように、電気刺激治療装置100は、通信モジュール120と、プロセッサ130と、メモリ140と、入力部150と、刺激部200とを含む。
【0021】
入力部150は、物理ボタン又はディスプレイによるタッチ入力などによりユーザ情報を選択するように構成されても良い。例えば、ユーザは、入力部150を通じて水のような低粘度液体又はヨーグルトのような粘性を有する高粘度飲食物のうち何れか1つを選択しても良く、
図4を参照しながら後述する筋肉収縮パターンを選択しても良い。
【0022】
通信モジュール120は、刺激部200と各々データ通信を処理する。通信モジュール120は、通信網と連動して各部に送受信される信号をパケットデータの形態で提供するのに必要な通信インターフェースを提供する。ここで、通信モジュール120は、他のネットワーク装置と有無線連結により制御信号又はデータ信号のような信号を送受信するために必要なハードウェア及びソフトウェアを含む装置であっても良い。
【0023】
メモリ140には、刺激部200を制御するプログラムが格納されており、メモリに格納された刺激部200を制御するプログラムは、プロセッサ130により駆動されても良い。
【0024】
また、メモリ140は、プロセッサ130が処理するデータを一時的又は永久に格納する機能を行う。ここで、メモリ140は、揮発性格納媒体(volatile storage media)又は不揮発性格納媒体(non-volatile storage media)を含んでいても良いが、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0025】
メモリ140は、プロセッサ130の処理及び制御のための運営体制など別途のプログラムが格納されても良く、入力或いは出力されるデータを臨時格納するための機能を行っても良い。
【0026】
メモリ140は、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、カードタイプのメモリ(例えば、SD又はXDメモリなど)、RAM、ROMのうち少なくとも1つのタイプの格納媒体を含んでいても良い。また、ユーザ端末は、インターネット(internet)上においてメモリ140の格納機能を行うウェブストレージ(web storage)を運営しても良い。
【0027】
プロセッサ130は、メモリ140に格納された刺激部200を制御するプログラムを行い、嚥下障害用の電気刺激治療装置を制御するための全般的な動作を制御する。
【0028】
そのために、プロセッサ130は、少なくとも1つのプロセッシングユニット(CPU、micro-processor、DSPなど)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)などを含んで具現されても良く、メモリ140に格納されたプログラムをRAMで読み取り、少なくとも1つのプロセッシングユニットにより実行しても良い。また、実施例によって、「プロセッサ」という用語は、「コントローラ」、「演算装置」、「制御部」などの用語と同じ意味に解釈されても良い。
【0029】
本発明の一実施例に係る刺激部200を制御するプログラムにより嚥下障害用の電気刺激治療装置を制御する概略的な手続きは、次の通りである。
【0030】
プロセッサ130は、プログラムの実行により、入力部150に入力されたユーザ情報に基づき、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの両側の舌骨上筋(SH)と、甲状舌骨筋(TH)と、胸骨甲状筋(StH)とを含む嚥下筋肉を順次に刺激するように刺激部200を制御しても良い。
【0031】
図2は、本発明の一実施例に係る刺激部の構成を説明するために示す構成図である。
図3a、
図3b、
図3c及び
図3dは、本発明の一実施例に係る刺激部が設けられる位置を示す例示図である。
【0032】
図面に示すように、刺激部200は、顎二腹筋及び顎舌骨筋に付着し、両側の舌骨上筋(SH)を刺激する第1の刺激部210と、甲状軟骨の両側上に付着し、甲状舌骨筋(TH)を刺激する第2の刺激部220と、胸鎖乳突筋の内側と甲状軟骨の下に付着し、胸骨甲状筋(StH)を刺激する第3の刺激部230とを含む。
【0033】
例えば、プロセッサ130は、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従って、ユーザの嚥下筋肉を刺激するよう第1の刺激部210乃至第3の刺激部230を順次に駆動することができる。
【0034】
例えば、刺激部200は、3チャンネル又は4チャンネルにより構成することも可能である。例えば、チャンネルは、電源を含む1つの閉回路を形成し、閉回路に電流を流した際、電流が流れる通路のことを意味する。つまり、電源と、電源に連結した2つの電極(陰極及び陽極)と、電極間を連結する筋肉とを含んで1チャンネルに構成されても良い。ここで、チャンネルは、電気刺激を与えるための構成であり、各チャンネルは2つの電極(陽極及び陰極)を含んでいても良い。
【0035】
一例において、
図3aを参照すると、刺激部200は、3チャンネルにより構成されても良い。例えば、第1の刺激部210は、顎二腹筋(前腹)及び顎舌骨筋を対象に刺激する第1のチャンネルCh1で構成されても良い。このとき、第1のチャンネルCh1における2つの電極は、両側の舌骨上筋(SH)の右側と左側にそれぞれ配置されても良い。また、
図3aに示すように、第1のチャンネルCh1で両側の舌骨上筋(SH)を刺激する場合、第1のチャンネルCh1のパッドは、2つの筋肉(顎二腹筋及び顎舌骨筋)をカバーするよう第2のチャンネル及び第3のチャンネルのパッドよりも広い面積を有することが効果的である。このとき、第1のチャンネルCh1の間隔は1cm程離れていても良いが、これに限定されるものではない。
【0036】
第2の刺激部220は、甲状舌骨筋(TH)を対象に刺激する第2のチャンネルCh2で構成されても良い。このとき、第2のチャンネルCh2における電極は、甲状軟骨の両側の上部に配置されても良い。
【0037】
第3の刺激部230は、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨及び胸骨甲状筋(StH)を対象に刺激する第3のチャンネルCh3で構成されても良い。このとき、第3のチャンネルCh3における電極は、胸鎖乳突筋の上部に配置され、甲状軟骨の下部に配置されても良い。
【0038】
他の例において、
図3bに示すように、刺激部200は、4チャンネルにより構成されても良い。例えば、第1の刺激部210は、顎二腹筋(前腹)及び顎舌骨筋を対象に刺激する第1のチャンネルCh1及び第2のチャンネルCh2で構成されても良い。このとき、第1のチャンネルCh1における電極は、右側の舌骨上筋(SH)にそれぞれ配置され、第2のチャンネルCh2における電極は、左側の舌骨上筋(SH)にそれぞれ配置されても良い。ここで、各チャンネルの電極は、1cmの間隔で舌骨よりも上に位置し下顎の後側に配置されても良いが、これに限定されるものではなく、人の顔の形態によって顎が細過ぎたりする場合は、1cmよりも狭い間隔で配置されても良い。
【0039】
第2の刺激部220は、甲状舌骨筋(TH)を対象に刺激する第3のチャンネルCh3で構成されても良い。このとき、第3のチャンネルCh3における電極は、甲状軟骨の両側の上部にそれぞれ配置されても良い。
【0040】
第3の刺激部230は、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨及び胸骨甲状筋(StH)を対象に刺激する第4のチャンネルCh4で構成されても良い。このとき、第4のチャンネルCh4における電極は、胸鎖乳突筋の上部に配置され、甲状軟骨の下に配置されても良い。
【0041】
追加の実施例において、
図3cに示すように、刺激部200は、6チャンネルにより構成されても良く、刺激部200は、
図3bに示された第1乃至第3の刺激部210~230の他に、第4の刺激部240をさらに含んでいても良い。例えば、第4の刺激部240は、顎二腹筋及び茎突舌骨筋の後側部分(RH、舌骨後筋)の上咽頭収縮筋(superior pharyngeal constrictor)を対象に刺激する第5のチャンネルCh5及び第6のチャンネルCh6で構成されても良い。このとき、第5のチャンネルCh5における電極は、右側の咽頭収縮筋(好ましくは、下顎の直ぐ後ろと胸鎖乳突筋の前側)にそれぞれ配置され、第6のチャンネルCh6における電極は、左側の咽頭収縮筋にそれぞれ配置されても良い。さらに他の例において、
図3dに示すように、刺激部200は、5チャンネルにより構成されても良く、刺激部200は、
図3aに示された第1乃至第3の刺激部210~230の他に、第4の刺激部240をさらに含んでいても良い。例えば、第4の刺激部240は、顎二腹筋及び茎突舌骨筋の後側部分(RH、舌骨後筋)の上咽頭収縮筋を対象に刺激する第4のチャンネルCh4及び第5のチャンネルCh5で構成されても良い。このとき、第4のチャンネルCh4における電極は、右側の咽頭収縮筋(好ましくは、下顎の直ぐ後ろと胸鎖乳突筋の前側)にそれぞれ配置され、第5のチャンネルCh5における電極は、左側の咽頭収縮筋にそれぞれ配置されても良い。一方、後述する筋肉活性化シーケンスに従って、第2の刺激部220が甲状舌骨筋(TH)を刺激する時点に第4の刺激部240が咽頭収縮筋を刺激するのが嚥下過程に役立つことができるが、刺激の時点がこれに限定されるものではない。
【0042】
図4は、本発明の一実施例に係る嚥下筋肉の筋肉収縮パターンを説明するためのものである。
図5は、本発明の一実施例に係る筋肉収縮パターンの2つの類型を説明するためのものである。
【0043】
図面に示すように、筋肉収縮パターン(筋肉収縮類型)は、嚥下筋肉が全て単相性パターンを有する第1の類型(TypeI)と、嚥下筋肉のうち1つ以上の嚥下筋肉が二相性パターンを有し、残りの嚥下筋肉が単相性パターンを有する第2の類型(TypeII)とを含む。
【0044】
図5(a)に示すように、単相性パターンは、1つの主要ピーク振幅のみを示すものであり、
図5(b)に示すように、二相性パターンは、2つ以上の事前ピーク振幅と主要ピーク振幅を示すものを意味する。
【0045】
例えば、
図4を参照すると、第1の類型(TypeI)は、舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て単相性パターンで構成された第1のパターンを含む。
【0046】
第2の類型(TypeII)は、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)は二相性パターンで構成された第2のパターン(TypeII(a))と、胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)及び甲状舌骨筋(TH)は二相性パターンで構成された第3のパターン(TypeII(b))と、舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て二相性パターンで構成された第4のパターン(TypeII(c))とを含む。
【0047】
例えば、ユーザは、入力部150を介して筋肉収縮類型を入力しても良い。例えば、入力部150は、ボタン又はタッチ入力などにより構成されても良い。ユーザは、基準によって第1の類型(第1のパターン)又は第2の類型(第2のパターン~第4のパターン)を選択しても良い。
【0048】
一実施例において、筋肉収縮類型を入力する基準を説明すると、ユーザ(患者)が自分の嚥下筋肉に電極を付着した状態で、飲食物を所定回数飲み込んでも良い。このとき、プロセッサ130は、ユーザの嚥下筋肉にそれぞれ付着されているチャンネルの電極パッドを利用して筋肉活性化シーケンスを収集及び記録しても良い。その後、プロセッサ130は、収集した筋肉活性化シーケンスに基づき、各嚥下筋肉のパターンが単相性であるか、それとも二相性(多相性)であるかを把握し、ユーザに筋肉収縮類型を提供しても良い。その後、ユーザが入力部150を介して自分の筋肉収縮類型を入力すると、プロセッサ130は、ユーザが飲食物を飲み込むタイミングに刺激部200を介して嚥下筋肉を刺激しても良い。つまり、プロセッサ130は、ユーザの筋肉収縮類型に当たる筋肉活性化シーケンスに従って、嚥下筋肉を全て順次刺激しても良い。
【0049】
他の実施例において、ユーザが所定期間飲食物を飲み込みながら入力部150によって刺激を入力すると、プロセッサ130は、刺激部200を介して各嚥下筋肉を刺激しても良い。このとき、プロセッサ130は、ユーザが刺激を入力するタイミングを記憶及び学習し、刺激入力タイミングに基づいて筋肉活性化シーケンスを把握し、ユーザに筋肉収縮類型を提供しても良い。
【0050】
例えば、第2の類型の場合、始点だけ訓練を通じて合わせれば、筋肉別の収縮順番は同一であるので、現在の刺激プロトコルによっても適用可能である。
【0051】
一例において、ユーザが第1の類型を選択すると、プロセッサ130は、第1のパターン(TypeI)に対応する筋肉活性化シーケンスに従って第1の刺激部210~第3の刺激部230を駆動しても良い。
【0052】
他の例において、ユーザが第2の類型(第2のパターン~第4のパターン)を選択すると、プロセッサ130は、選択された第2のパターン(TypeII(a))~第4のパターン(TypeII(c))に対応する筋肉活性化シーケンスに従って第1の刺激部210~第3の刺激部230を駆動しても良い。
【0053】
また、ユーザは、入力部150を介して飲食物類型を入力しても良い。例えば、ユーザが摂取しようとする飲食物類型を低粘度液体又は高粘度液体に選択しても良い。このとき、飲食物類型を選択する基準は、ユーザ(患者)がご飯のような固体を上手く噛むことができれば高粘度液体に選択し、水のような液体しか飲み込めなければ低粘度液体に選択しても良い。
【0054】
具体的に、ユーザが選択した飲食物類型によって、同じ類型(パターン)でも第1の刺激部210~第3の刺激部230が両側の舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)を刺激する時間が異なる。つまり、同じ類型(パターン)でも、ユーザが入力した飲食物類型(低粘度液体又は高粘度液体)別に各々の刺激部200が対象筋肉を刺激する刺激時点が異なる。
【0055】
図6aは、本発明の一実施例に係る低粘度液体を飲み込む間の時間の流れに応じた筋肉の変位を示す例示図である。
図6bは、本発明の一実施例に係る高粘度液体を飲み込む間の時間の流れに応じた筋肉の変位を示す例示図である。
【0056】
図6a及び
図6bは、両側の舌骨上筋(SH)、両側の舌骨後筋(RH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)の上に配置された6チャンネル表面電極(
図3cを参照)を利用して、5ccの低粘度液体及び高粘度液体を飲み込む間に健康な高齢グループ(>60歳)及び若いグループ(<60歳)に対する筋電図信号を測定したものである。つまり、嚥下筋肉の収縮パターン(筋肉活性化シーケンス)が、嚥下動作が健康な2つのグループの何れにおいても、両側の舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)の順に収縮が起こることを示す。これにより、プロセッサ130は、ユーザが入力した筋肉収縮類型及び飲食物類型を基に、正常な筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの嚥下筋肉の収縮を誘導することができる。
【0057】
以下、
図6a及び
図6bを参照しながら、第1の類型(TypeI)及び第2の類型(TypeIIc)を比較し、各飲食物類型別の各々の刺激部200の刺激時点の例を説明することとする。
【0058】
例えば、第1の類型(第1のパターン)の筋肉活性化シーケンスは、主要ステップ(即ち、全ての嚥下筋肉が単相性パターンを示す)を含む。つまり、
図6aを参照すると、第1の類型を入力した高齢グループ(>60歳)が低粘度液体などを飲む際、主要ステップにおいて、第1の刺激部210が舌骨上筋(SH)を刺激し、舌骨上筋(SH)の収縮開始後を基準に、0.120~0.150s後に第2の刺激部220が甲状舌骨筋(TH)を刺激し、0.150~0.250s後に第3の刺激部230が胸骨甲状筋(StH)を刺激しても良い。第1の類型は、低粘度液体などを飲む際に若い年齢と高齢における筋肉収縮パターンの差が軽微であり、類似した電気刺激プロトコルの適用が可能である。これにより、ユーザの筋肉は、正常な筋肉活性化シーケンスに従って、嚥下筋肉の収縮が両側の舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)の順に誘導されることができる。一方、
図6aに示された舌骨後筋(RH、retrohyoid muscle)は、舌骨上筋(SH)が収縮する際に伸張性収縮(eccentric contraction)されるものであるので、舌骨後筋(RH)と係わる筋肉を刺激してはならない。つまり、舌骨上筋(SH)を刺激してから0.010~0.025s後に舌骨後筋(RH)の部分を刺激する場合、食塊の通過を阻み得るので、寧ろ嚥下過程に妨げとなる。
【0059】
また、
図6bを参照すると、第1の類型を入力した高齢グループ(>60歳)が高粘度液体を飲み込む間、主要ステップにおいて、第1の刺激部210が舌骨上筋(SH)を刺激し、舌骨上筋(SH)の収縮開始後を基準に、0.200~0.250s後に第2の刺激部220が甲状舌骨筋(TH)を刺激し、0.250~0.300s後に第3の刺激部230が胸骨甲状筋(StH)を刺激しても良い。
【0060】
また、若いグループ(<60歳)においては、舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)の順に嚥下筋肉の収縮が開始する順番が高齢グループと類似しているが、高粘度液体を飲み込む際に各筋肉がより長く収縮を維持し、強く飲み込むように誘導することができる。つまり、電気刺激の順番及び収縮期間は、正常の状態(若い成人)が最も効果的で且つ安全な順番である。
【0061】
それに対し、高齢グループにおいては、順次に収縮する時間間隔が若いグループに比べてより増加し、粘度を感知する能力(口腔内感覚又は認知機能)が低下しているので、低粘度液体と高粘度液体との収縮期間に差がない。つまり、若いグループに比べて筋肉の収縮期間(duration)が短い。
【0062】
よって、高齢グループにおいては、高粘度液体を飲む際に収縮期間をより増やして長い間飲み込むように刺激を与えなければ、安全で且つ効果的に飲み込むことができない。
【0063】
順次に嚥下筋肉を刺激する時間間隔は、高粘度飲食物の場合、粘度が高い特徴により上手く吸引が発生せず、残りの低粘度液体を多く残したり、飲み込み難いといった特徴がある。よって、嚥下筋肉を刺激する時間間隔は、高齢グループのように甲状舌骨筋(TH)は0.200~0.250s後に刺激し、胸骨甲状筋(StH)は0.250~0.300s後に刺激しても良い。このとき、若いグループのような時間間隔(低粘度のように)で刺激しても問題はないが、このような刺激の方がより楽で且つ効果的である。
【0064】
これにより、ユーザの筋肉は、正常な筋肉活性化シーケンスに従って嚥下筋肉の収縮が両側の舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)の順に誘導されることができる。同様に、
図6bに示された舌骨後筋(RH)は、舌骨上筋(SH)が収縮する際に伸張性収縮されるものであり、当該時点に舌骨後筋(RH)と係わる筋肉を刺激してはならない。
【0065】
また、第2の類型(第4のパターン)の筋肉活性化シーケンスは、事前反射ステップと主要ステップ(即ち、全ての嚥下筋肉が二相性パターンを示す)とを含む。つまり、
図6aを参照すると、第2の類型を入力した高齢グループ(>60歳)が低粘度液体を飲み込む間、事前反射ステップ(
図6aにおいて、主要ステップの始点(0秒)を基準に事前反射ステップの開始時間表示)において、第1の刺激部210が主要ステップの開始前である-0.720~-0.680msに舌骨上筋(SH)を刺激し、-0.650~-0.550msに第2の刺激部220が甲状舌骨筋(TH)を刺激し、-0.450~-0.400msに第3の刺激部230が胸骨甲状筋(StH)を刺激しても良い。これにより、ユーザの筋肉は、正常な筋肉活性化シーケンスに従って嚥下筋肉の収縮が両側の舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)の順に誘導されることができる。
【0066】
また、
図6bを参照すると、第2の類型を入力した高齢グループ(>60歳)が高粘度液体を飲み込む間、事前反射ステップにおいて、第1の刺激部210が主要ステップの開始前である-0.750~0.730msに舌骨上筋(SH)を刺激し、-0.700~-0.600msに第2の刺激部220が甲状舌骨筋(TH)を刺激し、-0.600~-0.550msに第3の刺激部230が胸骨甲状筋(StH)を刺激しても良い。これにより、ユーザの筋肉は、正常な筋肉活性化シーケンスに従って嚥下筋肉の収縮が両側の舌骨上筋(SH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)の順に誘導されることができる。
【0067】
一方、第2の類型における事前反射ステップは、吸引を阻むための保護収縮を意味する。つまり、第1の類型においては、高齢グループが高粘度食餌に対する収縮期間を若い成人のように増やすことができないが、第2の類型においては、高齢グループも若い成人のように収縮期間を効果的に増やしていることが分かる。よって、第2の類型における事前反射ステップは、高齢グループにおいて嚥下作用に適応するための適応機転として示される。
【0068】
電気刺激の観点では、第2の類型であるとしても筋肉収縮の順番、期間などには差がなく(事前反射ステップを除けば)、第1の類型のような刺激を印加することができるが、電気刺激と実際の飲み込みを同期化するためには患者の訓練がさらに必要となる。
【0069】
以下では、上述した
図1乃至
図6bに示された構成のうち、同じ機能をする構成の場合はその説明を省略することとする。
【0070】
図7は、本発明の一実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置の電気刺激治療方法を説明するためのフローチャートである。
【0071】
図7を参照すると、本発明の一実施例に係る嚥下障害用の電気刺激治療装置による電気刺激治療方法は、ユーザから入力部150を介して低粘度液体と高粘度液体に区分される飲食物類型を含むユーザ情報の入力を受けるステップS110と、刺激部200によって、ユーザ情報に基づき、予め設定された筋肉活性化シーケンスに従ってユーザの両側の舌骨上筋(SH、suprahyoid muscle)、甲状舌骨筋(TH、thyrohyoid muscle)及び胸骨甲状筋(StH、sternothyroid muscle)を順次に刺激するステップS120とを含む。
【0072】
筋肉収縮類型は、嚥下筋肉が全て単相性パターンを有する第1の類型と、嚥下筋肉のうち1つ以上の嚥下筋肉が二相性パターンを有し、残りの嚥下筋肉が単相性パターンを有する第2の類型とを含み、単相性パターンは、1つの主要ピーク振幅のみを発生するものであり、二相性パターンは、2つ以上の事前ピーク振幅と主要ピーク振幅を発生する。
【0073】
第1の類型は、舌骨上筋(SH)、舌骨後筋(RH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て単相性パターンで構成された第1のパターンを含み、第2の類型は、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)及び舌骨後筋(RH)は二相性パターンで構成された第2のパターンと、胸骨甲状筋(StH)が単相性パターンで、舌骨上筋(SH)、舌骨後筋(RH)及び甲状舌骨筋(TH)は二相性パターンで構成された第3のパターンと、舌骨上筋(SH)、舌骨後筋(RH)、甲状舌骨筋(TH)及び胸骨甲状筋(StH)が全て二相性パターンで構成された第4のパターンとを含む。
【0074】
刺激部は、顎二腹筋及び顎舌骨筋に付着し、両側の舌骨上筋(SH)を刺激する第1の刺激部と、甲状軟骨の両側上に付着し、甲状舌骨筋(TH)を刺激する第2の刺激部と、胸鎖乳突筋の内側と甲状軟骨の下に付着し、胸骨甲状筋(StH)を刺激する第3の刺激部とを含む。
【0075】
本発明の一実施例は、コンピュータにより実行されるプログラムモジュールのようなコンピュータにより実行可能な命令語を含む記録媒体の形態に具現されても良い。コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータによってアクセスできる任意の可用媒体であっても良く、揮発性及び不揮発性の媒体、分離型及び非分離型の媒体を全て含む。また、コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ格納媒体を含んでいても良い。コンピュータ格納媒体は、コンピュータ読み取り可能な命令語、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータのような情報格納のための任意の方法又は技術で具現された揮発性及び不揮発性、分離型及び非分離型の媒体を全て含む。
【0076】
本発明の方法及びシステムは特定の実施例と係わって説明されたが、それらの構成要素又は動作の一部又は全部は、汎用のハードウェアアーキテクチャを有するコンピュータシステムを使用して具現されても良い。
【0077】
上述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、上記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0078】
本発明の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0079】
100:電気刺激治療装置
120:通信モジュール
130:プロセッサ
140:メモリ
150:入力部
200:刺激部
210:第1の刺激部
220:第2の刺激部
230:第3の刺激部
240:第4の刺激部