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特許7446396貴金属合金を製造するための方法およびそれにより得られる貴金属合金
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】貴金属合金を製造するための方法およびそれにより得られる貴金属合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/05 20230101AFI20240301BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20240301BHJP
   C22C 5/02 20060101ALI20240301BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20240301BHJP
   B22F 9/02 20060101ALI20240301BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20240301BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240301BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240301BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240301BHJP
   C04B 35/58 20060101ALI20240301BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20240301BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C22C1/05 E
C22C1/04 E
C22C5/02
B22F9/04 C
B22F9/02 A
B22F10/00
B22F1/00 K
B33Y70/00
B33Y40/20
C04B35/58 050
B22F10/34
B22F3/15
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022187454
(22)【出願日】2022-11-24
(62)【分割の表示】P 2020570435の分割
【原出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2023025102
(43)【公開日】2023-02-21
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】18210947.0
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】ミコ,シラ
(72)【発明者】
【氏名】グロジャン,レミ
(72)【発明者】
【氏名】バザン,ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】ポルトー,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ル ゴデック,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ドラクロワ,シモン
(72)【発明者】
【氏名】イゴア サルダナ,フェルナンド
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103898460(CN,A)
【文献】特開昭51-016496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0169620(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0164700(US,A1)
【文献】QIANG Chen et al.,On the structures and bonding in boron-gold alloy clusters: B6Aun- and B3Aun (n=1-3),THE JOURNAL OF CHEMICAL PHYSICS,2013年02月19日,138,084306-1~084306-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/04-1/05
C22C 5/02
B22F 1/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
75重量%の金と25重量%のマイクロメートルサイズのナノ構造ホウ素粉末としてのホウ素とを含む合金であって、前記ナノ構造ホウ素粉末が25nmを超えない寸法の粒子の形態をとり、この粒子が85%以上の重量割合のホウ素と残余が粉末の合成から生じる不可避の不純物とによって構成され、前記不純物が以下の元素:リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ヨウ素、塩素、臭素およびフッ素のうちの1種または複数種である金/ホウ素合金。
【請求項2】
18カラットの金であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
他の合金化された元素を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の合金。
【請求項4】
6.6~7g/cmの範囲の密度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属合金を製造するための方法に関する。本発明はさらに、そのような貴
金属系合金に関する。特に、本発明は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウ
ムまたはイリジウムから得られる軽貴金属合金を製造するための方法に関する。本明細書
に関連する軽貴金属合金は滴定可能である、すなわち、これらは、合金の組成中の貴金属
の重量とこの合金の総重量との比が、法則によって決定される合金である。
【背景技術】
【0002】
金属合金は、第1の金属元素と、少なくとも1種の第2の金属元素を溶融して組み合わ
せることによって得られる。金属合金の利点は、そのような合金の特性、特に機械的特性
が、合金を構成する個々の金属元素の機械的特性に比べ向上するという事実にある。
【0003】
特に、金属の機械的特性は、変形、特に加工硬化によって向上させることができ、これ
らの機械的特性はまた、1種または複数種の合金元素を母材に添加することにより、化学
的手法によっても向上させることができる。こうした添加はまた、多くの場合、母材の耐
食性などの化学的特性をも向上させる。
【0004】
金属合金技術は、金などの貴金属の場合に特に重要である。より詳細には、金は、冷間
時に容易に変形することが知られており、このことから金は、宝飾品類および装飾品を生
成するために新石器時代末期から、ならびに古代では硬貨を生成するために使用されてき
た。しかしながら、この貴金属を使用して生成された宝飾品類は、単純な機械的衝撃さえ
あれば変形するため、金の変形し易さは欠点でもある。このため、金を他の金属元素と合
金化することにより、その機械的特性を向上させる試みが極めて早期からなされていた。
銀および銅は、金を合金化するために使用される2つの主要な金属であり、金の剛性を改
善することが知られている。
【0005】
金を銀または銅などの他の金属元素と合金化することにより、金より大きな硬度を有す
る金属合金が生成される。しかしながら、これらの金合金は、密度が高いという欠点を有
する。このため、金を、密度が低い金属元素と合金化する試みがなされてきた。
【0006】
重金属である、すなわち密度が高い(約19.3g.cm-3)金属である金(Au)と
、極めて軽い金属である、すなわち密度が低い(約2.3g.cm-3)金属であるホウ素
(B)との合金化を試みる試験が既に行われている。しかしながら、金とホウ素を従来の
冶金技術を使用して合金化しようとするこれまでなされた試みは、すべて失敗に終わるか
、良くてもホウ素の極めて低い溶解速度がもたらされる程度であり、工業生産は不可能で
ある。金とホウ素の組合せから得られる材料は不安定であることが分かり、この組合せを
使用して、18カラットの金などの、固体の滴定可能な成分を生成することは不可能であ
ることが示されている。こうした問題は、特に、溶融したときに金とホウ素が混合できな
い、より詳細には、金は、その高い密度のためにるつぼの底に沈殿しやすい一方で、密度
がより低いホウ素は浮遊するという事実に起因する。
【0007】
近年、ナノ構造化技術によって得られるホウ素粉末が流通したことにより、金とホウ素
の合金、およびより全般的に貴金属(金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウ
ム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir))とホウ
素(B)との間で形成されるすべての種類の合金への関心が再び高まっている。
【0008】
粉末冶金技術を使用して金属合金を製造するための方法によって、従来の冶金技術を使
用して製造することが不可能である材料がもたらされる。これは、そのような金属合金を
形成するために使用される金属が、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム
(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)などの滴定
可能な貴金属である場合に特に重要である。さらに、粉末技術を使用して得られる金属合
金は、従来の冶金手法を使用して得られる金属合金より軽く、堅固である。
【0009】
一種のナノ構造ホウ素は、寸法が5nm~12nmの範囲である粒子から形成される灰
色/黒色の粉末の形態をとり、この粒子は、HfB2、NiB、CoB、YB4またはYB
6から構成され、かつ構造が結晶性であるコアと、厚さが数ナノメートルに等しく、かつ
これらの粒子のコアをコーティングする非晶質ホウ素層とから形成される。これらの粒子
は互いに凝集して、寸法がマイクロメートルの範囲であり、かつ比表面積が粉末1gにつ
きおよそ700m2である三次元構造を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、固体成分を生成することができる、軽貴金属合金を製造するための、
特に、物理化学的観点から安定な軽合金を得るための方法をもたらすことである。本発明
はさらに、そのような軽貴金属系合金に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、貴金属とホウ素を合金化することによって部品を製造す
るための方法であって、貴金属が、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムお
よびイリジウムからなる群から選択され、方法は、
- 粉末形態にされた少なくとも1つの量の貴金属を用意するステップ、
- 粒子の凝集体によって形成された、ある量のマイクロメートルサイズのナノ構造粉
末を用意するステップであり、マイクロメートルサイズのナノ構造粉末を構成するこれら
の凝集体は、マイクロメートル範囲の寸法を有し、これらの凝集体それ自体は、少なくと
も部分的にホウ素を含有する粒子から構成され、粒子は、マイクロメートルサイズのナノ
構造粉末の反応性に寄与するナノメートル範囲の少なくとも1つの幾何学的値を有する、
ステップ、
- 貴金属粉末をマイクロメートルサイズのナノ構造粉末と混合し、一軸圧を加えるこ
とによってこの粉末混合物を圧縮するステップ、
- 貴金属粉末とマイクロメートルサイズのナノ構造粉末との混合物を、0.5GPa
~10GPaの範囲の圧力で放電プラズマ焼結もしくはフラッシュ焼結処理に、または8
0バール~2,200バールの範囲の圧力で熱間等方圧プレス(HIP)処理に供するス
テップであり、処理は400℃~2,100℃の範囲の温度で行われ、少なくとも1つの
貴金属/ホウ素合金インゴットが得られる、ステップ、および
- 貴金属/ホウ素合金インゴットを機械加工し、所望の部品を得るステップ、または
- 微細化処理によって貴金属/ホウ素合金インゴットを粉末形態にし、微細化処理か
ら生じた粉末を処理することによって所望の部品を得るステップ
を含む、方法に関する。
【0012】
これらの特色のために、本発明による方法は、優れた機械的特性を有し、かつ密度が低
い貴金属/ホウ素合金をもたらす。出願人の知る限り、本発明による方法は、密度が極め
て低い成分、この場合はホウ素を、密度が高い貴金属、限定されるものではないが特に金
と、工業規模で合金化する可能性を初めて提供するものである。本発明の方法により、物
理化学的観点から安定であり、優れた機械的特性を有し、密度が低い貴金属/ホウ素合金
を得ることができる。特筆すべきことに、本発明による方法では、選択される貴金属とホ
ウ素粒子は、いかなるときでも2種の材料間に偏析現象が観察されることなく緊密に合金
化される。
【0013】
本発明の特別な実施形態によると、
- 所望の部品を得るために、微細化処理から生じた粉末は金型に挿入され、一軸また
は等方圧に供される、
- 所望の部品を得るために、微細化処理から生じた粉末は三次元積層造形処理に供さ
れる、
- 三次元積層造形処理は、直接印刷型のものである、
- 直接印刷による処理は、選択的レーザー溶融法(SLM)および電子ビーム溶融法
からなる群から選択される、
- 三次元積層造形処理は、間接印刷型のものである、
- 間接印刷処理は、インクジェット法、ナノ粒子ジェット法(NPJ)およびデジタ
ル光投影法(DLP)からなる群から選択される。
【0014】
本発明の別の特別な実施形態によると、製造方法はさらに、
- 貴金属/ホウ素合金インゴットの微細化処理から生じた粉末をバインダーと混合し
て、原材料を得るステップ、
- 原材料を積層造形射出成形またはマイクロ射出成形に供することによってグリーン
ボディを生成するステップ、
- グリーンボディを化学的に処理した後に炉内で加熱処理して残留ポリマーバインダ
ーを燃焼する、脱バインダー工程と称されるポリマーバインダーを除去する工程に、グリ
ーンボディを供することによって、ブラウンボディを得るステップであり、この脱バイン
ダー工程は典型的に、気相中で、硝酸またはシュウ酸雰囲気下で、100℃~140℃の
範囲の温度で行われる、ステップ、
- ブラウンボディを、保護雰囲気下で、700℃~1,800℃の範囲の温度で焼結
処理に供して、所望の部品を得るステップ
を含む。
【0015】
本発明の別の特別な実施形態によると、製造方法はさらに、
- 貴金属/ホウ素合金インゴットの微細化処理から生じた粉末をバインダーと混合し
て、原材料を得るステップ、
- 間接積層造形技術を使用して、形状が所望の加工物プロファイルに一致するグリー
ンボディを生成するステップ、
- グリーンボディを化学的に処理した後に炉内で加熱処理して残留ポリマーバインダ
ーを燃焼する、脱バインダー工程と称されるポリマーバインダーを除去する工程に、グリ
ーンボディを供することによって、ブラウンボディを得るステップであり、この脱バイン
ダー工程は典型的に、気相中で、硝酸またはシュウ酸雰囲気下で、100℃~140℃の
範囲の温度で行われる、ステップ、
- ブラウンボディを、保護雰囲気下で、700℃~1,800℃の範囲の温度で焼結
処理に供し、所望の部品を得るステップ
を含む。
【0016】
本発明の他の特別な実施形態によると、
- 積層造形技術は、バインダージェット法、粒子上への溶剤ジェット法、FDM法、
またはマイクロ押出成形法からなる群から選択される、
- 焼結処理の後、焼結するステップから生じた部品を、500バール~2,200バ
ールの範囲の圧力および600℃~2,100℃の範囲の温度で熱間等方圧プレス(HI
P)後処理ステップに供する、
- バインダーは、ポリエチレングリコール(PEG)、酢酸酪酸セルロース(CAB
)、ナノセルロース、トウモロコシデンプン、糖、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレン、
ポリプロピレン、合成または天然ワックスおよびステアリン酸からなる群から選択される

- 貴金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニ
ウム(Ru)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)からなる群から選択され、マ
イクロメートルサイズのナノ構造ホウ素粉末は、NiB、CoB、YB4およびYB6から
なる群から選択される、
- マイクロメートルサイズのナノ構造ホウ素粉末25wt%を、金75wt%と混合
する、
- 本発明の必要性に良好に適合する、第1の形態のマイクロメートルサイズのナノ構
造ホウ素粉末は、寸法が25~999nmの範囲である粒子によって形成される黒色/茶
色粉末の形態をとり、粒子は、95%より高い重量割合がホウ素からなり、残余が、非限
定的に、炭素、窒素、酸素、カリウム、ナトリウム、塩素、ヨウ素、セシウム、リチウム
、ルビジウムおよびマグネシウムなどの、合成の間に組み込まれる不可避の不純物からな
る。マイクロメートルサイズのナノ構造ホウ素粉末の1つの例として、参照名PVZ n
ano BoronでPavezyumから市販の製品が挙げられる。
- 本発明の必要性に良好に適合する、第2の形態のマイクロメートルサイズのナノ構
造ホウ素粉末は、「ナノ構造非晶質ホウ素材料」の名称で言及される材料に相当し、これ
を得るための特徴および条件は、国際特許出願PCT WO2016207558A1に
記載されている。この材料は、寸法が25ナノメートルを超えない粒子の形態をとる、マ
イクロメートルサイズのナノ構造ホウ素粉末であり、粒子は、85%以上の重量割合がホ
ウ素からなり、残余が、粉末の合成から生じる不可避の不純物によって構成され、不純物
は、以下の元素:リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ヨウ素、塩
素、臭素およびフッ素のうちの1種または複数種である。このマイクロメートルサイズの
ナノ構造ホウ素粉末は、溶融塩合成(SMS)によって得られ、この合成は、乾式プロセ
スによって、湿式プロセスによって、またはアルゴン雰囲気下で行われる。
- 本発明の必要性に良好に適合する、第3の形態のマイクロメートルサイズのナノ構
造ホウ素粉末は、寸法が5nm~12nmの範囲である粒子から形成される灰色/黒色の
粉末の形態をとり、粒子は、HfB2、NiB、CoB、YB4またはYB6から構成され
、かつ構造が結晶性であるコアと、厚さが数ナノメートルに等しく、かつこれらの粒子の
コアをコーティングする非晶質ホウ素層から形成される。これらの粒子は互いに凝集して
、寸法がマイクロメートルの範囲であり、かつ比表面積が粉末1gにつきおよそ700m
2である凝集体を形成する。このマイクロメートルサイズのナノ構造ホウ素粉末は溶融塩
合成(SMS)によって得られ、この合成は、乾式プロセスによって、湿式プロセスによ
って、またはアルゴン雰囲気下で行われる。
- 本発明の方法による金/ホウ素合金により、6.6~7g/cm3の範囲の密度を
有する18カラットの金を得ることが可能となる。
【0017】
粒径は、以下の技術:透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、動的光散乱法、またはX
線回折(結晶性材料に関してシェラーの式を使用して)のうちの1つによって決定される
【0018】
粉末の比表面積は、窒素吸着技術を使用して、ブルナウアー-エメット-テラー(BE
T)法によって決定される。
【0019】
最後に、密度はピクノメーターを使用して決定される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、物理化学的観点から安定であり、優れた機械的特性を有する滴定可能な貴金
属合金をもたらすことからなる、本発明の全般的な概念から導かれた。
【0021】
この目的のために、本発明は、貴金属をホウ素と合金化することによって部品を製造す
るための方法であって、貴金属が、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムお
よびイリジウムからなる群から選択され、方法が、
- 粉末形態にされた少なくとも1つの量の貴金属を用意するステップ、
- 粒子の凝集体によって形成された、ある量のマイクロメートルサイズのナノ構造粉
末を用意するステップであり、マイクロメートルサイズのナノ構造粉末を構成する凝集体
は、マイクロメートル範囲の寸法を有し、これらの凝集体それ自体は、少なくとも部分的
にホウ素を含有する粒子から構成され、粒子は、マイクロメートルサイズのナノ構造粉末
の反応性に寄与するナノメートル範囲の少なくとも1つの幾何学的値を有する、ステップ

- 貴金属粉末をマイクロメートルサイズのナノ構造粉末と混合し、一軸圧を加えるこ
とによってこの粉末混合物を圧縮するステップ、
- 貴金属粉末とマイクロメートルサイズのナノ構造粉末との混合物を、0.5GPa
~10GPaの範囲の圧力で放電プラズマ焼結もしくはフラッシュ焼結処理に、または8
0バール~2,200バールの範囲の圧力で熱間等方圧プレス(HIP)処理に供するス
テップであり、処理は400℃~2,100℃の範囲の温度で行われ、少なくとも1つの
貴金属/ホウ素合金インゴットが得られる、ステップ、および
- 貴金属/ホウ素合金インゴットを機械加工し、所望の部品を得るステップ、または
- 微細化処理によって貴金属/ホウ素合金インゴットを粉末形態にし、微細化処理か
ら生じた粉末を処理することによって所望の部品を得るステップ
を含む、方法に関する。
【0022】
本発明による方法を実施することによって得られる貴金属/ホウ素合金インゴットが微
細化された後、所望の固体部品を得るための第1の可能性は、微細化処理から生じた粉末
を金型に挿入すること、およびこの金型を一軸または等方圧に供することからなる。
【0023】
本発明による方法を実施することにより得られる貴金属/ホウ素合金インゴットが微細
化された後、所望の固体部品を得るための第2の可能性は、微細化処理から生じた粉末を
三次元積層造形処理に供することからなる。
【0024】
三次元積層造形処理は、直接印刷型のものでありうる。利用可能な直接型の三次元積層
造形技術は、選択的レーザー溶融法(SLM)および電子ビーム溶融法である。
【0025】
三次元積層造形処理は、間接印刷型のものでありうる。利用可能な間接型の三次元積層
造形技術は以下である:
- インクジェット法:貴金属/ホウ素合金インゴットの微細化処理から生じた粉末を
インクに分散する。インクは次々に層に印刷され、層のそれぞれは、後続の層の堆積前に
、光源からの光線、例えばUV光への曝露によって固化する。
- ナノ粒子ジェット法(NPJ):特にXJetによって開発されたこの技術は、液
体インクジェットと同様であるが、例外として、インクは、微細化処理から生じた懸濁さ
れたナノ粒子からなる。懸濁液はその後、次々に層に噴霧され、乾燥される。
- デジタル光投影法(DLP):この技術は、フォトポリマーに分散された、微細化
処理から生じた粉末粒子を含有する粉末床に、構造化すべき部品の画像を鏡に反射させて
投影することからなる。
【0026】
本発明の別の特別な実施形態によると、貴金属/ホウ素合金インゴットの微細化処理か
ら生じた粉末をバインダーと混合して原材料を得た後、原材料を、射出成形もしくはマイ
クロ射出成形または積層造形技術のいずれかに供することにより、形状が所望の加工物プ
ロファイルに一致するグリーンボディが生成される。
【0027】
利用可能な間接積層造形技術として、以下が挙げられる:
- バインダージェット法:この技術は、溶媒およびバインダーを含有するインクジェ
ットを、微細化処理から生じた粉末粒子が分散された粉末床に噴霧することからなる。
- 粒子上への溶剤ジェット法:この技術は、溶媒を顆粒床に噴霧することからなり、
これらの顆粒のそれぞれは、バインダーによって互いに凝集した、微細化処理から生じた
複数の粉末粒子によって形成される。これらの顆粒の寸法は、およそ10μm~50μm
である。所望の部品が、バインダーによって凝集した顆粒によって次々に層に印刷される
。所望の部品が印刷されると、部品は、溶媒を除去するために脱バインダー操作に供され
、その後焼結される。
- FFD法(熱溶解フィラメント積層法(Fused Filament Depo
sition)):微細化処理から生じた粉末粒子をバインダーによって凝集させること
により、寸法がミリメートル範囲のフィラメントを生成する。次に、これらのフィラメン
トを加熱し、フィラメントを構成する材料を、直径およそ40μmのノズルから吐出させ
、所望の部品が三次元印刷される。
- マイクロ押出成形法。
【0028】
バインダーは、ポリエチレングリコール(PEG)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、
ナノセルロース(セルロースのナノメートルサイズの誘導体)、トウモロコシデンプン、
糖、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、合成または天然ワックスおよ
びステアリン酸からなる群から選択される。
【0029】
ブラウンボディは、グリーンボディを化学的に処理した後に炉内で加熱処理して残留ポ
リマーバインダーを燃焼する、脱バインダー工程と称されるポリマーバインダーを除去す
る工程に、グリーンボディを供することによって得られ、この脱バインダー工程は典型的
に、気相中で、硝酸またはシュウ酸雰囲気下で、100℃~140℃の範囲の温度で行わ
れる。
【0030】
最後に、ブラウンボディは、保護雰囲気下で、700℃~1,800℃の範囲の温度で
焼結処理に供され、所望の部品が得られる。
【0031】
焼結処理の後、焼結するステップから生じた部品は、500バール~2,200バール
の範囲の圧力および600℃~2,100℃の範囲の温度で、熱間等方圧プレス(HIP
)後処理ステップに供されてもよいことに留意すべきである。
【0032】
本発明の特定の実施形態によると、貴金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)
、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir
)からなる群から選択される。ホウ素は、以下からなる群から選択される:
- 寸法が25~999nmの範囲である粒子によって形成される黒色/茶色粉末の形
態をとり、粒子は、95%より高い重量割合がホウ素からなり、残余が、非限定的に、炭
素、窒素、酸素、カリウム、ナトリウム、塩素、ヨウ素、セシウム、リチウム、ルビジウ
ムおよびマグネシウムなどの、合成の間に組み込まれる不可避の不純物からなる、ホウ素
。そのような材料の1つの例として、参照名PVZ nano BoronでPavez
yumから市販の製品が挙げられる。
- これを得るための特徴および条件が、国際特許出願PCT WO20162075
58A1に記載されているホウ素。このホウ素は、寸法が25ナノメートルを超えない粒
子によって形成される粉末の形態をとり、粒子は、85%以上の重量割合がホウ素からな
り、残余が、粉末の合成から生じる不可避の不純物によって構成され、不純物は、以下の
元素:リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ヨウ素、塩素、臭素お
よびフッ素のうちの1種または複数種である。
- 寸法が5nm~12nmの範囲である粒子から形成される灰色/黒色のマイクロメ
ートルサイズのナノ構造ホウ素粉末であり、粒子は、HfB2、NiB、CoB、YB4
たはYB6から構成され、かつ構造が結晶性であるコアと、および厚さが数ナノメートル
に等しく、かつこれらの粒子のコアをコーティングする非晶質ホウ素層から形成される、
ホウ素粉末。これらの粒子は互いに凝集して、寸法がマイクロメートルの範囲であり、か
つ比表面積が粉末1gにつきおよそ700m2である凝集構造を形成する。所望の材料を
得るために、良好な金とホウ素の混合の結果をもたらす比の1つは、マイクロメートルサ
イズのナノ構造ホウ素粉末25wt%と金75wt%である。
【0033】
特に、本発明は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムまたはイリジウム
から得られる軽貴金属合金を製造するための方法に関する。本明細書が関連する軽貴金属
合金は滴定可能である、すなわち、合金の組成中の貴金属の重量と、この合金の総重量と
の比が、法則によって決定される合金である。本発明の方法によって得られる特筆すべき
貴金属合金は、6.6~7g/cm3の範囲の密度を有する18カラットの金/ホウ素合
金である。得られる生成物はAuB6およびAu212であり、Au212は、AuB2含有
物を含有することができる。
【0034】
本発明は上述の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発
明の範囲から離れない限り、種々の簡潔な代替および改変が当業者によって考慮されうる
ことは言うまでもない。
【0035】
本明細書が関するホウ素粉末は、この粉末を構成する粒子凝集体の寸法がマイクロメー
トルの範囲であり、これらの凝集体それ自体が、ホウ素を本質的に含有し、かつマイクロ
メートルサイズのナノ構造粉末の反応性に寄与するナノメートル範囲の少なくとも1つの
幾何学的値を有する粒子から構成される限りにおいて、「マイクロメートルサイズ」およ
び「ナノ構造」とみなされることが決定されていることに特に留意すべきである。反応性
に寄与する幾何学的値という用語は、ナノメートル範囲にあるホウ素含有粒子の比表面積
、表面粗さまたは1つの面の面積などの幾何学的値を意味すると理解される。したがって
、本発明によれば、ホウ素含有粒子は、少なくとも1つのナノメートル範囲の幾何学的値
を有するが、この粒子の他の幾何学的寸法は、これらのホウ素を含有する粒子の反応性に
影響を及ぼさない限り、マイクロメートル範囲にあってもよい。さらに、本明細書を通し
て、マイクロメートルサイズのナノ構造粉末という用語は、マイクロメートル範囲に及び
、かつホウ素を本質的に含有し、少なくとも1つの寸法がナノメートル範囲にある粒子の
凝集から生じる凝集体によって形成される材料を意味すると理解されることに留意すべき
である。
【0036】
さらに、本明細書は本質的に、金およびホウ素から形成される二元貴金属合金に関する
が、本発明はそのような例に限定されず、例えば三元または四元の貴金属合金も含むこと
に留意すべきである。例示として、本発明によれば、マイクロメートルサイズのナノ構造
ホウ素粉末の粒子は、金と、それぞれ75wt%および23wt%の重量パーセンテージ
で混合でき、残余は微細化されたニッケルによって構成されてもよい。
【0037】
さらに、本発明の範囲内で使用される金は、24カラットで1/2ブライトイエローゴ
ールドであること、および、この金をハンマーで叩くことによって得られ、本発明の範囲
内で使用される金粉末を形成する粒子の寸法は、50μm未満であること、に留意すべき
である。
【0038】
さらに、本明細書が関連するマイクロメートルサイズのナノ構造ホウ素粒子は、特に、
Universite Pierre et Marie Curie - Paris
VI,2016において2018年10月17日に公表された、「Boron-bas
ed nanomaterials under extreme condition
s」と題するRemi Grosjeanの論文の70ページ以下から公知であることが
留意されるべきである。この論文は、以下のアドレス:https://tel.arc
hives-ouvertes.fr/tel-01898865(HAL Id:te
l-01898865)でインターネットからアクセス可能である。これらのマイクロメ
ートルサイズのナノ構造ホウ素粒子は、溶融塩合成(SMS)によって得られる。この合
成は、反応性物質の存在下で、金とホウ素を塩混合物に入れることからなる。混合物を加
熱すると、塩が溶融し、それにより液体媒体として働く。溶融塩中でのナノ構造ホウ化物
の典型的な合成は、金属源(一般的には塩化物MClx)および水素化ホウ素ナトリウム
を用いる。水素化ホウ素ナトリウムは、ホウ素源と、反応媒体でM0を得るための還元剤
の両方として使用される。そのような前駆体ならびにリチウムおよびカリウム塩を使用す
る場合、これらの化学物質が水および/または酸素に感受性であるため、不活性雰囲気下
で作業する必要がある。結果として、前駆体は、アルゴン不活性雰囲気下で実験室のグロ
ーブ・ボックス内で取り扱われ、混合される。合成そのものは、窒素雰囲気下ではなくア
ルゴン雰囲気下で行われるが、これは、窒素がある特定のホウ素種と反応し、窒化ホウ素
をもたらす可能性があるためである。
【0039】
したがって、実験設定の要件は以下の通りである:
- 反応媒体がアルゴン雰囲気下に保たれることを確実とする;この課題は、作業温度
で安定であり、シュレンク管に接続される石英管を使用することによって達成される。
- 300℃~1,000℃の温度範囲で加熱する。温度が均質である石英管の領域は
幅約8cmである、すなわち、反応媒体の均質な加熱を可能とするのに十分広く、かつ、
塩が蒸発して凝縮するのを可能として、反応の間に溶媒が減少するのを妨げるのに十分狭
い。加熱速度は10℃/分である。
- 反応媒体と石英管との間の副反応を妨げる。ガラス状炭素は、アルゴン雰囲気下で
化学的に不活性であり、したがって、るつぼとして使用される。るつぼは、塩が炉の低温
領域で蒸発して凝縮するのを可能とするのに十分長い。
- 一部の場合では、反応混合物は撹拌されなければならない。これは、回転ガラス状
炭素ロッドを使用して行われる。
【0040】
反応後、反応媒体を自然に冷めるよう放置する。ある体積の凍結した塩に分散されたナ
ノ粒子の形態の金属ホウ化物が得られる。塩を除去するために、水またはメタノールなど
の極性溶媒中で洗浄/遠心分離サイクルを行う。調整可能なパラメータとして、特に、合
成温度、滞留時間、および金属源とホウ素源との間の初期の比が挙げられる。
【0041】
前述の論文は、特に、二ホウ化ハフニウムおよび六ホウ化カルシウムの2つのナノ構造
金属ホウ化物に関する。CaB6およびHfB2は、高温高圧で相転移を生じないため、
ホウ化物粒子が埋め込まれる非晶質相の結晶化の研究に良好に適合する。
【0042】
共晶塩の2つの混合物、すなわち、LiCl/KClおよびLiI/KIを使用した。
HfB2の最初の合成を、溶融点が約350℃であるLiCl/KCl(45/55wt
%)共晶混合物中で行った。HfCl4およびNaBH4をHf:B=1:4のモル比で
使用し、食塩水と混合する。900℃で4時間加熱し、冷却し、脱イオン水で洗浄し、真
空下で乾燥すると、黒色の粉末が得られる。この粉末のX線回折パターンは、HfB2が
唯一の結晶相であることを示し、溶媒塩、またはホウ化物形成の副生成物として生じうる
塩化ナトリウムのいずれに対応する反射も示さない。さらに、HfB2の構造は、ハニカ
ム構造を示すホウ素シート間に金属原子が挿入された、二ホウ化物に典型的なものである
【0043】
シェラーの式によると、粒径は7.5nmである。これは、透過型電子顕微鏡によって
確認され、粒径が5~12nmの範囲にあることを示す。SAED、FFTおよびHRT
EMによって得た他の画像により、HfB2が材料中で唯一の結晶相であり、ナノ粒子の
みが結晶性であることが確認される。
【0044】
また、透過型電子顕微鏡は、粒子が、厚さが2~4nmの範囲である非晶質シェルに囲
まれていることを示す。粒子は、三次元非晶質マトリックス内の内包物の形態で存在する
。粒子間の間隙は、厚さが2~4nmの範囲である非晶質マトリックスで満たされる。結
果として、マトリックスもまたナノ構造であり、材料はナノ複合体であると説明すること
ができる。