(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】フラットパネルディスプレイ用ブランクマスク及びフォトマスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/52 20120101AFI20240301BHJP
G03F 1/38 20120101ALI20240301BHJP
G03F 1/40 20120101ALI20240301BHJP
G03F 1/58 20120101ALI20240301BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G03F1/52
G03F1/38
G03F1/40
G03F1/58
C23C14/06 G
(21)【出願番号】P 2022199299
(22)【出願日】2022-12-14
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0147032
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514205126
【氏名又は名称】エスアンドエス テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン-グン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドン-シク
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,ジョン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ミン
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2022-0131585(KR,A)
【文献】特開2020-016845(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0123569(KR,A)
【文献】特開2018-173644(JP,A)
【文献】特開2019-168558(JP,A)
【文献】特開2010-079110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に備えられた金属薄膜を含み、
前記金属薄膜は、電荷が蓄積されることを防止する帯電防止層、露光光を遮断するための遮光層、及び露光光の一部を反射させる反射層を含み、
前記帯電防止層は、前記遮光層と前記反射層との間に形成されることを特徴とする
、フラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項2】
前記帯電防止層は、クロム(Cr)、窒素(N)、酸素(O)を含むことを特徴とする、請求項
1に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項3】
前記帯電防止層は、クロム(Cr)30~60at%、窒素(N)20~60at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含むことを特徴とする、請求項
2に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項4】
前記金属薄膜は、特定波長の露光光に対して反射率を調節し、電荷の移動と蓄積を防止する反射率調節層をさらに含むことを特徴とする、請求項
3に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項5】
前記金属薄膜は、前記透明基板上に、前記遮光層、前記帯電防止層、前記反射層、前記反射率調節層の順序で積層して形成されることを特徴とする、請求項
4に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項6】
前記金属薄膜は、前記透明基板と前記遮光層との間に形成され、露光装置から照射された露光光の反射を防止するための後面反射率調節層をさらに含むことを特徴とする、請求項
5に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項7】
透明基板上に備えられた金属薄膜を含み、
前記金属薄膜は、電荷が蓄積されることを防止する帯電防止層、露光光を遮断するための遮光層、及び露光光の一部を反射させる反射層を含み、
前記帯電防止層は、クロム(Cr)30~60at%、窒素(N)20~60at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含み、
前記反射層はクロム(Cr)を含むか、或いはクロム(Cr)及び窒素(N)を含むことを特徴とする
、フラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項8】
前記反射層は、クロム(Cr)50~100at%、窒素(N)0~50at%、炭素(C)0~10at%を含むことを特徴とする、請求項
7に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項9】
前記反射率調節層は、クロム(Cr)、窒素(N)、酸素(O)を含むことを特徴とする、請求項
4に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項10】
前記遮光層は、クロム(Cr)、又はクロム(Cr)に窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)のうち一つ以上を含むクロム(Cr)化合物で構成されることを特徴とする、請求項
3に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項11】
透明基板上に備えられた金属薄膜を含み、
前記金属薄膜は、電荷が蓄積されることを防止する帯電防止層、露光光を遮断するための遮光層、露光光の一部を反射させる反射層、及び特定波長の露光光に対して反射率を調節し、電荷の移動と蓄積を防止する反射率調節層を含み、
前記帯電防止層は、クロム(Cr)30~60at%、窒素(N)20~60at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含み、
前記帯電防止層は500~1500Åの厚さを有し、前記反射層は50~1000Åの厚さを有し、前記反射率調節層は50~500Åの厚さを有することを特徴とす
る、フラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項12】
前記帯電防止層は、100Ω/□以上の面抵抗を有することを特徴とする、請求項
3に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスクを用いて製造されたフラットパネルディスプレイ用フォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ用ブランクマスク及びフォトマスクに関し、より詳細には、静電気及び過電流によるパターン損傷を防止できるフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク及びフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、TFT-LCD(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)を含むフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:以下、FPDという。)デバイスを製造するためのリソグラフィ工程では、ブランクマスクから製造されたフォトマスクを用いたパターンの転写が行なわれている。
【0003】
ブランクマスクは、合成石英ガラスなどの透光性基板上に金属薄膜が単層又多層で形成され、この薄膜上にレジスト膜が形成された構造を有する。ここで、各層は、光学的特徴によって、遮光層、反射防止層、位相反転層、反射層などであってよい。フォトマスクは、このようなブランクマスクのレジスト膜を露光及び現像してレジスト膜パターンを形成した後、それをエッチングマスクとして用いて金属薄膜にパターンを形成することによって製作される。
【0004】
フォトマスク使用中にフォトマスクと接する機器との接触、摩擦、剥離、イオン吸着などによる帯電によって静電気が発生する。このとき、フォトマスクと基材との接触面積、接触時間、摩擦頻度、着脱速度、温度差などが、フォトマスクにおける帯電の大きさに影響を及ぼす主要因子として働く。このような因子によってフォトマスクの内部に静電気が発生し、金属薄膜のパターンが損傷する問題が発生する。
【0005】
具体的には、フォトマスクを用いてディスプレイパネルのパターンを形成する露光工程を行う際に、金属薄膜のパターンが帯電することによって起きた静電気はキャパシターのような働きをして電荷を蓄積し、蓄積された電荷はパターンの縁などのような脆弱地点から放電されることがある。このように蓄積された電荷が放電される過程で金属薄膜のパターンが破壊される。このため、転写されるパターンに不良が発生し、製品の不良率が増加する問題点がある。
【0006】
一方、静電気によるフォトマスクの金属パターンの損傷問題を解決するために、クリーンルーム(clean room)内の湿度を調節する方法、帯電防止剤を使用する方法、又はイオナイザー(ionizer)を設置する方法などが用いられている。このような従来のフォトマスク損傷防止のための技術は、高い湿度によって装備が腐食する問題、帯電防止剤として使用される薬品によって製品の品質が低下する問題、或いはイオナイザーのような追加の構成を設置すべき問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フォトマスクに備えられた金属薄膜パターンに発生する帯電による電荷蓄積を抑制することによって金属薄膜パターンの損傷を防止できるフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク及びフォトマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラットパネルディスプレイ用ブランクマスクは、透明基板上に備えられた金属薄膜を含み、前記金属薄膜は、電荷が蓄積されることを防止する帯電防止層を含む。
【0009】
前記金属薄膜は、露光光を遮断するための遮光層、及び露光光の一部を反射させる反射層をさらに含むことができる。
【0010】
前記帯電防止層は、前記遮光層と前記反射層との間に形成されることが好ましい。
【0011】
前記帯電防止層は、クロム(Cr)、窒素(N)、酸素(O)を含む。
【0012】
前記帯電防止層は、クロム(Cr)30~60at%、窒素(N)20~60at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含むことが好ましい。
【0013】
前記金属薄膜は、特定波長の露光光に対して反射率を調節し、電荷の移動と蓄積を防止する反射率調節層をさらに含むことができる。
【0014】
前記金属薄膜は、前記透明基板上に前記遮光層、前記帯電防止層、前記反射層、前記反射率調節層を順に積層して形成される。
【0015】
前記金属薄膜は、前記透明基板と前記遮光層との間に形成され、露光装置から照射された露光光の反射を防止するための後面反射率調節層をさらに含むことができる。
【0016】
前記反射層は、クロム(Cr)を含むか、クロム(Cr)及び窒素(N)を含む。
【0017】
前記反射層は、クロム(Cr)50~100at%、窒素(N)0~50at%、炭素(C)0~10at%を含むことが好ましい。
【0018】
前記反射率調節層は、クロム(Cr)、窒素(N)、酸素(O)を含む。
【0019】
前記反射率調節層は、クロム(Cr)20~50at%、窒素(N)30~70at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含むことができる。
【0020】
前記遮光層は、クロム(Cr)、又はクロム(Cr)に窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)のうち一つ以上を含むクロム(Cr)化合物で構成される。
【0021】
前記遮光層は、クロム(Cr)50~100at%、窒素(N)0~40at%、酸素(O)0~10at%、炭素(C)0~10at%を含むことができる。
【0022】
前記遮光層は、i線、h線及びg線を含む複合波長の露光光に対して2.5~7.0の光学密度を有する。
【0023】
前記帯電防止層は500~1500Åの厚さを有し、前記反射層は50~1000Åの厚さを有し、前記反射率調節層は50~500Åの厚さを有する。
【0024】
前記帯電防止層は100Ω/□以上の面抵抗を有することが好ましい。
【0025】
本発明の他の側面によれば、上記のような構成のフラットパネルディスプレイ用ブランクマスクを用いて製造されたフラットパネルディスプレイ用フォトマスクが提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、金属薄膜内に電荷の移動を最小化する帯電防止層が備えられ、帯電による電荷蓄積が防止される。これにより、フォトマスクの使用中に蓄積された電荷が放電されてフォトマスクパターンが損傷することを最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係るFPD用ブランクマスクを示す図である。
【
図2】本発明の変形された形態のFPD用ブランクマスクを示す図である。
【
図3】本発明の結果確認のために行った静電破壊特性評価のためのパターンマスクのデザインである。
【
図4】本発明の実施例と比較例の静電破壊特性評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明に係るFPD(Flat Pannel Display)用ブランクマスクを示す図である。本発明のブランクマスクは、液晶表示装置(LCD)、OLEDなどを含むFPD用ブランクマスクである。ブランクマスクは、透明基板202上に金属薄膜201とレジスト膜220が順次に積層された構造を有する。金属薄膜201は、透明基板202上に順次に形成された遮光層214、帯電防止層212、反射層210、及び反射率調節層208を含む。
【0029】
透明基板202は、一辺が300mm以上である長方形の透明な基板であり、合成石英ガラス、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板、低熱膨脹ガラス基板などで構成されてよい。
【0030】
遮光層214は、露光工程に用いられる露光光が、転写を要しないパネル(Panel)部分に転写されられないように露光光を遮断する役割を担う。遮光層214は、露光光の遮光効果が大きい必要があり、また、その他一般に要求されるエッチング時間などの要件を満たさなければならない。
【0031】
遮光層214は、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、セレン(Se)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、硫黄(S)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ボロン(B)、ベリリウム(Be)、ナトリウム(Na)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ニオビウム(Nb)、シリコン(Si)のいずれか一つ以上の物質を含んでなるか、又は前記物質に窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)のうち一つ以上をさらに含んでなる。遮光層214は、クロム(Cr)、又はクロム(Cr)に窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)のうち一つ以上を含むクロム(Cr)化合物、例えば、CrN、CrO、CrC、CrCO、CrCN、CrON、CrCONで構成されることが好ましい。
【0032】
好ましくは、遮光層214は、クロム(Cr)50~100at%、窒素(N)0~40at%、酸素(O)0~10at%、炭素(C)0~10at%を含む物質で構成される。クロム(Cr)の含有量が50at%以下である場合又は窒素(N)の含有量が40at%以上である場合は、クロム(Cr)の含有量が減るため、要求される光学密度が減少し、遮光性が確保し難い。酸素(O)はその含有量が増加すると光学密度が大きく減少して透過率が大きく増加するため、酸素(O)の含有量は10at%以下が好ましい。酸素(O)は選択的に含まれてよい。すなわち、酸素(O)は含まれなくてもよく、含まれる場合には、10at%以内の含有量で含まれることが好ましい。炭素(C)は、遮光層214のエッチング時間を調節するために含まれてよい。炭素(C)が10at%以上である場合にはエッチング時間が過度に増加し、エッチング断面の形成に影響を与える。炭素(C)は選択的に含まれてよい。
【0033】
遮光層214は、200~1,500Åの厚さを有する。遮光層214は、i線、h線及びg線を含む複合波長の露光光に対して2.5~7.0の光学密度を有することが好ましく、より好ましくは3.0~6.0の光学密度を有する。
【0034】
遮光層214は、クロム(Cr)ターゲットを用いたスパッタリング工程で形成する。このとき、スパッタリング工程ではアルゴン(Ar)のような不活性ガスが単独で使用されるか、窒素(N)、炭素(C)、酸素(O)のうち1つ又は2つ以上を含む反応性ガスが共に用いられる。
【0035】
帯電防止層212は、金属薄膜201の表面に発生した静電気の電荷が金属薄膜201に蓄積されることを防止する機能を担う。すなわち、帯電防止層212は、フォトマスクにおいて運送及び使用する過程で発生する静電気電荷の蓄積を最小化するために用いられ、全体の金属薄膜201内で帯電が起きないように電荷の移動を防止する機能を担う。
【0036】
帯電防止層212は、クロム(Cr)、窒素(N)、酸素(O)を含む物質で構成される。具体的には、帯電防止層212は、クロム(Cr)30~60at%、窒素(N)20~60at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含む物質で構成される。窒素(N)の含有量が20at%以下であるか、酸素(O)の含有量が10at%以下である場合には、帯電防止層212の内部で電荷が増加し、フォトマスクに帯電する電荷の蓄積が防止し難くなり、ESD(Electrostatic Discharge)発生にも影響を与える。窒素(N)の含有量が60at%以上であるか或いは酸素(O)の含有量が40at%以上であれば、電荷の蓄積防止には効果が高いが、薄膜の透過率が増加してしまうため、光学密度を合わせるには厚さが過度に増加しなければならない。炭素(C)は帯電防止層212のエッチング時間を調節するために含まれてよい。炭素(C)が10at%以上であれば、エッチング時間が過度に増加してしまい、エッチングされたパターンの断面形状に影響を与える。炭素(C)は選択的に含まれてよい。
【0037】
反射層210は、露光光の一部を反射させる機能を担う。反射層210はクロム(Cr)単独で構成されるか、クロム(Cr)及び窒素(N)を含む物質で構成されてよい。具体的には、反射層210は、クロム(Cr)50~100at%、窒素(N)0~50at%、炭素(C)0~10at%を含む物質で構成される。クロム(Cr)の含有量が50at%以下であるか、窒素(N)の含有量が50at%以上である場合には、光の反射率が低すぎるため、反射層210の機能を果たすことができず、窒素(N)の含有量が10at%以下である場合には、光の反射率が高すぎるため、露光光の波長で要求される反射率が確保し難い。炭素(C)は、反射層210のエッチング時間を調節するために含まれてよい。炭素(C)の含有量が10at%以上であれば、エッチング時間が過度に増加してしまい、エッチングされたパターンの断面形状に影響を与える。炭素(C)は選択的に含まれてよい。
【0038】
反射率調節層208は、特定波長の露光光に対して反射率を調節する機能及び電荷の移動と蓄積を防止する機能を担う。反射率調節層208は、クロム(Cr)20~50at%、窒素(N)30~70at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含む物質で構成される。窒素(N)の含有量が30at%以下であるか、酸素(O)の含有量が10at%以下であれば、表面電荷の蓄積が防止し難く、表面の反射防止にも影響を与える。窒素(N)の含有量が70at%以上であるか、酸素(O)の含有量が40at%以上であれば、電荷の蓄積防止には効果が高いが、表面の反射率が制御可能範囲から外れる。炭素(C)は、反射率調節層208のエッチング時間を調節するために含まれてよい。炭素(C)の含有量が10at%以上であれば、エッチング時間が過度に増加してしまい、エッチングされたパターンの断面形状に影響を与える。炭素(C)は選択的に含まれてよい。
【0039】
金属薄膜201の積層順序は、透明基板202上に遮光層214、帯電防止層212、反射層210、反射率調節層208の順序であることが好ましく、特に、帯電防止層212は、遮光層214と反射層210との間に位置することが、電荷の蓄積を防止する点から最も好ましい。
【0040】
このような構造の金属薄膜201は、4個の層が互いに区分された多層構造で形成されるか、金属薄膜201内の組成が上下方向に連続して変化して各層214,212,210,208が構成される連続膜の形態で形成されてよい。ここで、連続膜は、プラズマ(Plasma)が放電されている状態で工程パワー、圧力、ガスの組成などのような工程変数を次第に変更して形成することによってその組成が連続して変わる薄膜を意味する。
【0041】
帯電防止層212は500~1500Åの厚さを有し、反射層210は50~1000Åの厚さを有し、反射率調節層208は50~500Åの厚さを有する。特に、静電気蓄積を防止する上では帯電防止層212の厚さが非常に重要な役割を担う。帯電防止層212の厚さが500Å以下であれば帯電防止層212の伝導性が増加してしまい、帯電効果が増加する。このため、帯電防止層212は500Å以上の厚さを有することが好ましい。一方、厚さが増加すると、静電気蓄積を防止する特性は良くなるが、マスクが持つべき解像力及びCD(Critical Dimension)特性が悪くなる。したがって、帯電防止層212は1500Å以下の厚さを有することが好ましい。帯電防止層212は100Ω/□以上の面抵抗を有する。一般に、金属薄膜201を構成する各層は20Ω/□程度の面抵抗を有するが、このように高い面抵抗を有することによって帯電防止層212は電荷の蓄積を防止する機能を果たす。
【0042】
図2は、本発明に係るブランクマスクの変形された形態を示す図であり、
図1の構成において金属薄膜201が後面反射率調節層216をさらに備える。後面反射率調節層216は遮光層214の下に配置される。後面反射率調節層216は、露光装置から照射された露光光がフォトマスクの上面(
図2の下面)で露光装置に向かって反射されないようにすることにより、反射された露光光が露光装置によって再反射されてパネルに照射されることを防止する機能を担う。後面反射率調節層216は、最上層の反射率調節層208と同様に、クロム(Cr)20~50at%、窒素(N)30~70at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含む物質で構成されてよい。
【0043】
本発明によれば、フォトマスク内での電荷の移動と蓄積を防止する帯電防止層212によってフォトマスクのパターンの表面に電荷が蓄積されることが防止される。すなわち、本発明は、窒化酸化物で構成されて不導体の性質を有する帯電防止層212が金属薄膜201内に備えられることにより、フォトマスクの伝導性を下げることができる。これにより、フォトマスクパターンの表面への電荷の移動が最小化して電荷の蓄積が防止されることにより、ESDの発生を抑制することができる。したがって、フォトマスクパターンで発生する静電気が抑制され、静電気によるパターン不良が最小化する。
【0044】
以下では、本発明の具体的な実施例を述べる。
【0045】
(実施例1)
本発明の実施例に係るブランクマスクを製造し、これを用いてフォトマスクを製造した後、任意に静電気を印加してパターンの破壊程度を確認した。
【0046】
図1のようなブランクマスクを作製するために、透明基板202上に、クロム(Cr)ターゲットを用いたDCマグネトロン反応性スパッタリング装備によって遮光層214を形成し、その上部に帯電防止層212、反射層210、反射率調節層208を順次に形成して金属薄膜201を完成した。
【0047】
このとき、帯電防止層212は、反応性ガスである窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)を追加した雰囲気で形成し、クロム(Cr)45at%、窒素(N)20at%、酸素(O)30at%、炭素(C)5at%の組成を有する帯電防止層212を形成した。
【0048】
次に、金属薄膜201上にレジスト膜220を形成し、
図1のようなブランクマスクの製造を完了した。
【0049】
その後、静電破壊特性の確認のために、レジスト膜220を
図3のようなデザインにパターニングし、パターニングされたレジスト膜220を用いて金属薄膜201に対するエッチング工程を行い、残ったレジスト膜220を除去することで、
図3のような静電破壊特性評価のためのパターンマスク作製を完了した。
【0050】
作製されたパターンマスク上に静電気発生装置を用いて人為的に0.5、1.0、1.5、2.0、2.5kVを印加し、パターン損傷の有無を顕微鏡で確認した。
図4を参照すると、0.5kvから2.0kVまではパターン損傷が発生しないことが分かる。
【0051】
(実施例2)
図1のようなブランクマスクを作製するために、透明基板202上に、クロム(Cr)ターゲットを用いたDCマグネトロン反応性スパッタリング装備で後面反射率調節層216を形成し、その上に、遮光層214、帯電防止層212、反射層210、及び反射率調節層208を順次に形成して金属薄膜201を完成した。
【0052】
このとき、帯電防止層212は、反応性ガスである窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)を追加した雰囲気で形成し、クロム(Cr)45at%、窒素(N)20at%、酸素(O)30at%、炭素(C)5at%の組成を有する帯電防止層212を形成した。
【0053】
次に、金属薄膜201上にレジスト膜220を形成し、
図2のようなブランクマスクの製造を完了した。
【0054】
その後、静電破壊特性の確認のために、レジスト膜220を
図3のようなデザインにパターニングし、パターニングされたレジスト膜220を用いて金属薄膜201に対するエッチング工程を行い、残ったレジスト膜220を除去することで、
図3のような静電破壊特性評価のためのパターンマスク作製を完了した。
【0055】
作製されたパターンマスク上に静電気発生装置を用いて人為的に0.5、1.0、1.5、2.0、2.5kVを印加し、パターン損傷の有無を顕微鏡で確認した。
図4を参照すると、0.5kvから2.0kVまではパターン損傷が発生しないことが分かる。
【0056】
(比較例1)
透明基板202上に、クロム(Cr)ターゲットを用いたDCマグネトロン反応性スパッタリング装備で遮光層214を形成し、その上部に、帯電防止層212、反射層210、反射率調節層208を順次に形成して金属薄膜201を完成した。
【0057】
このとき、帯電防止層212は、反応性ガスである窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)を追加した雰囲気で形成するが、本発明の条件とは違い、窒素(N)と酸素(O)の含有量を下げ、クロム(Cr)70at%、窒素(N)15at%、酸素(O)10at%、炭素(C)5at%の組成を有する帯電防止層212を形成した。
【0058】
次に、金属薄膜201上にレジスト膜220を形成し、比較例1のブランクマスクの製造を完了した。
【0059】
その後、静電破壊特性の確認のためにレジスト膜220を
図3のようなデザインにパターニングし、パターニングされたレジスト膜220を用いて金属薄膜201に対するエッチング工程を行い、残ったレジスト膜220を除去することで、
図3のような静電破壊特性評価のためのパターンマスク作製を完了した。
【0060】
作製されたパターンマスク上に静電気発生装置を用いて人為的に0.5、1.0、1.5、2.0、2.5kVを印加し、パターン損傷の有無を顕微鏡で確認した。
図4を参照すると、0.5kVではパターン損傷が発生しなかったが、1.0kVではパターン損傷が発生することが分かる。
【0061】
以上、図面を参照して本発明の構造によって本発明を具体的に説明するが、構造は、単に本発明の例示及び説明をするための目的で使われるもので、意味を限定したり特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を制限したりするために使われるものではない。したがって、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、構造から様々な変形及び均等な他の構造が可能であるという点が理解できよう。したがって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲の技術的事項によって定められるべきであろう。
【符号の説明】
【0062】
202:透明基板 201:金属薄膜
208:反射率調節層 210:反射層
212:帯電防止層 214:遮光層
216:後面反射率調節層 220:レジスト膜
【要約】 (修正有)
【課題】フォトマスクに備えられた金属薄膜パターンに発生する帯電による電荷蓄積を抑制することによって金属薄膜パターンの損傷を防止できるフラットパネルディスプレイ用ブランクマスク及びフォトマスクを提供する。
【解決手段】フラットパネルディスプレイ用ブランクマスクは、透明基板上に備えられた金属薄膜を有する。金属薄膜は、露光光を遮断するための遮光層、露光光の一部を反射させる反射層、及び金属薄膜に静電気の電荷が蓄積されることを防止する帯電防止層を含む。帯電防止層は、クロム(Cr)30~60at%、窒素(N)20~60at%、酸素(O)10~40at%、炭素(C)0~10at%を含み、100Ω/□以上の面抵抗を有する。帯電防止層によって金属薄膜内の電荷蓄積が防止され、電荷の放電によるフォトマスクパターンの損傷が防止される。
【選択図】
図1