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特許7446401相変化材料熱貯留器と、相変化材料貯留器の周りの取り外し可能な熱絶縁層とを伴う受動的崩壊熱除去システムを組み込む、液体金属によって冷却される原子炉
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】相変化材料熱貯留器と、相変化材料貯留器の周りの取り外し可能な熱絶縁層とを伴う受動的崩壊熱除去システムを組み込む、液体金属によって冷却される原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/02 20060101AFI20240301BHJP
   G21C 15/12 20060101ALI20240301BHJP
   G21C 15/02 20060101ALI20240301BHJP
   G21C 15/18 20060101ALI20240301BHJP
   G21C 11/08 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G21C1/02 100
G21C15/12 F
G21C15/02 B
G21C15/18 A
G21C15/18 L
G21C11/08
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200285
(22)【出願日】2022-12-15
(65)【公開番号】P2023089972
(43)【公開日】2023-06-28
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】2113633
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・プヴロー
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ブリソノー
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・パンタノ
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-092566(JP,A)
【文献】特開2020-173201(JP,A)
【文献】特開平02-222879(JP,A)
【文献】特開2011-242160(JP,A)
【文献】特開平11-084056(JP,A)
【文献】特開平11-242091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/02
G21C 15/12
G21C 15/02
G21C 15/18
G21C 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属によって冷却される高速中性子原子炉(1)であって、
前記原子炉の一次回路の熱交換流体としての液体金属で満たされる、いわゆる一次格納容器(10)と、
前記一次格納容器の周りに位置付けられ、容器間空間を定める格納容器シンク(30)と、
前記一次格納容器の内部の前記液体金属を封じ込めるための閉鎖スラブ(17)と、
事故の状況における前記原子炉の公称出力の少なくとも一部と崩壊熱の少なくとも一部との両方の排出のためのシステム(2)であって、
熱交換液体で満たされる閉回路(4)であって、
前記容器間空間に位置付けられ、前記一次格納容器の周りに分配され、U字形の底が前記一次格納容器の底を向く状態で前記一次格納容器に沿って各々が延びる複数のU字形パイプ(400)の層(40)、
低温分枝と呼ばれる前記U字形の一方の分枝(401)を介して前記層の前記パイプの各々が溶接される、低温集熱器と呼ばれる第1の集熱器(41)であって、前記低温集熱器は、前記閉鎖スラブの外側および上方に位置付けられる、第1の集熱器(41)、
高温分枝と呼ばれる前記U字形の他方の分枝(402)によって前記層の前記パイプの各々が溶接される、高温集熱器と呼ばれる第2の集熱器(42)であって、前記高温集熱器は、前記閉鎖スラブの外側および上方に位置付けられる、第2の集熱器(42)、および、
一端(431)が前記低温集熱器に連結され、他端(432)が高温集熱器に連結される交換器(43)
を備え、
前記回路は、前記熱交換液体が自然対流によって前記回路内で循環し、前記崩壊熱を放出する事故の状況における動作において液体状態で留まるように構成される、閉回路(4)、ならびに、
冷却源(5)であって、
前記一次格納容器から距離を置いて、前記閉鎖スラブより上方に位置付けられる少なくとも1つの貯留器(50、50.1、50.2)であって、前記貯留器は、前記交換器が挿入される固体-液体タイプの相変化材料(51)を収容し、前記相変化材料は、前記交換器の前記液体金属との交換の間、前記原子炉の通常の動作において固体状態となり、前記崩壊熱を放出する事故の状況において液体状態になるように適合される、少なくとも1つの貯留器(50、50.1、50.2)、および、
前記貯留器(50)の外壁(500)の少なくとも一部に取り外し可能な手法で固定されるように適合され、前記外壁(500)を覆い、前記壁の温度が所定の閾値に達した場合、前記外壁(500)から受動的に取り外されるように適合される熱絶縁層(6)
を備える、冷却源(5)
を備える、システム(2)と
を備える、高速中性子原子炉(1)。
【請求項2】
前記熱絶縁層(6)は、前記貯留器の外壁から取り外されたとき、重力によって落下するように構成される、請求項1に記載の原子炉(1)。
【請求項3】
前記絶縁層(6)は、隣接する複数の熱絶縁パネル(60)を含む、請求項1または2に記載の原子炉(1)。
【請求項4】
前記熱絶縁層を前記所定の閾値温度まで固定するように、および、前記閾値温度を上回ると前記熱絶縁層を受動的に取り外すように構成される、前記熱絶縁層(6)を取り外し可能に固定するための少なくとも1つの受動的デバイス(7)を備える、請求項1に記載の原子炉(1)。
【請求項5】
熱絶縁パネルごとに少なくとも1つの受動的取り外し可能固定デバイスを備える、請求項4に記載の原子炉(1)。
【請求項6】
前記貯留器は、磁性材料から作られ、前記受動的取り外し可能固定デバイスは、各々の熱絶縁パネルに固定される少なくとも1つの永久磁石(7)を備え、前記磁石は、前記閾値温度未満において前記貯留器の前記外壁に磁気的に取り付けられ、前記磁石がその磁気特性を失うキュリー温度が前記閾値温度の関数として決定される、請求項5に記載の原子炉(1)。
【請求項7】
前記永久磁石は、Fe-Ni合金から作られる、請求項6に記載の原子炉(1)。
【請求項8】
前記貯留器の前記外壁は、前記熱絶縁層が前記壁を覆うときに前記熱絶縁層によって覆われる、複数のフィン(501)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項9】
前記複数のフィンのうちの少なくとも1つは、各々の熱絶縁パネルに挿入される、請求項8に記載の原子炉(1)。
【請求項10】
前記熱絶縁層を固定するように、および、前記貯留器の前記外壁の温度に関わらず前記熱絶縁層を前記外壁から取り外すために、使用者による命令で作動させられるように構成される、前記熱絶縁層を取り外し可能に固定するための少なくとも1つの能動的デバイス(8)をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項11】
熱絶縁パネルごとに少なくとも1つの受動的取り外し可能固定デバイスをさらに備える、請求項10に記載の原子炉(1)。
【請求項12】
前記冷却源(5)は、1つまたは複数の貯留器を備える、特に2つの異なる貯留器(50.1、50.2)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項13】
前記2つの異なる貯留器の2つの前記交換器のうちの一方は、前記集熱器の一端に連結され、前記交換器のうちの他方は、前記集熱器の他端に連結される、請求項12に記載の原子炉(1)。
【請求項14】
前記交換器は、各々の貯留器において並行に配置され、前記相変化材料(51)によって包囲される、複数の管(430)へと分割されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項15】
前記低温集熱器を前記単管交換器の端に連結する少なくとも1つの液圧分枝(451)、および、前記低温集熱器を前記交換器の端に連結する少なくとも1つの液圧分枝(452)を備える循環ループ(45)と、適切な場合には1つまたは複数の他の流体構成要素とを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項16】
前記排出システムの各々の貯留器を閉じ込めるための少なくとも1つの閉じ込め建屋(52)を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項17】
前記崩壊熱除去回路の前記熱交換液体は、二元鉛-ビスマス(Pb-Bi)合金、NaKなどの二元ナトリウム-カリウム合金から選択される液体合金、または、前記液体金属の他の三元合金である、請求項1から16のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項18】
前記貯留器を満たす前記相変化材料は、鉛、カドミウム、亜鉛もしくはzamakタイプの亜鉛合金、錫およびその鉛との合金、または三元Li-Na-K炭酸塩混合物から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項19】
前記排出システムの前記貯留器は、Hastelloy(登録商標)およびInconel(登録商標)を含め、ニッケルベースのHastelloy(登録商標)またはフェライト系ステンレス鋼から作られる、請求項1から18のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体金属によって冷却され、特に液体ナトリウムによって冷却され、RNR-Na炉またはナトリウム高速炉(SFR)として知られ、いわゆる第4世代原子炉の系統の一部をなす、高速中性子原子炉の分野に関係する。
【0002】
本発明は、より詳細には、これらの原子炉からの崩壊熱の排出のための機能の向上に対処する。
【0003】
本発明は、特に、発熱用原子炉については100MWthから500MWthの間の出力で典型的には動作し、発電用原子炉については50Mweから200Mweの間の出力で典型的には動作する、低出力または中出力の原子炉またはSMR(小型モジュール炉)に適用される。
【0004】
原子炉の崩壊熱(「崩壊熱」としても知られている)は、原子核連鎖反応の停止に続いて炉心によって生成され、核分裂生成物の崩壊のエネルギーから成る熱であることに留意されたい。実際、電力供給の喪失の場合に、中性子連鎖反応が、原子炉へと落下する制御棒によって遮断される。しかしながら、熱出力のうちの一部はなおも存在し、崩壊熱と呼ばれている。この出力は、低減していくものの、原子炉の炉心における温度の上昇が高くなりすぎるのを防止するために、必ず排出されなければならない。
【0005】
本発明は、液体ナトリウムによって冷却される原子炉を参照して記載されているが、原子炉一次回路において熱交換流体として使用される、液体鉛などの任意の他の液体に適用される。
【背景技術】
【0006】
原子炉において、あらゆるときに確保されなければならない基本的な安全機能は、閉じ込め、反応度の制御、熱および崩壊熱の排出である。
【0007】
崩壊熱の排出について、向上した全体の信頼性を保証するために、システムの受動性および多様性を向上させるための持続的な努力がある。その目的は、電気によって動力供給される冷却手段の完全喪失を伴う、福島タイプのシナリオに相当する電力の長期的な全般的欠如(ステーション停電)の場合であっても、構造の完全性、つまり、第1の閉じ込め障壁(燃料組立体シース)および第2の閉じ込め障壁(主格納容器)の完全性を保つことである。
【0008】
より具体的には、主格納容器を介した完全に受動的な手法での液体金属原子炉の崩壊熱の排出が、現在考えられている。この目的は、大きいサイズの原子炉については、出力が大きすぎるため、達成可能とはならないと思われるが、安全性の内在的な向上と、以後において崩壊熱除去システムと呼ばれる、主格納容器を介した崩壊熱の排出のためのシステムの内在的な向上とを保証するために、小さい出力(SMR)の原子炉については現実的に検討することができる。
【0009】
ナトリウム冷却原子炉において現在使用されている崩壊熱除去システムは、制御命令および/または人の介入を実際には用いているため、完全に受動的ではない。さらに、これらのシステムは、失陥を被る可能性のある空気中の冷却源を伴うナトリウム循環回路をしばしば使用している。さらに、現在のシステムは、事故の場合に、最終冷却源としても知られる、原子炉の最終的な冷却を提供する熱プールに関して多様な解決策を提案していない。現在のシステムは、内部および外部からの攻撃および悪意に対して敏感であり得る。
【0010】
大まかに言って、製造された崩壊熱除去システム、または文献において知られている崩壊熱除去システムは、
A/ ループにおいてエネルギー変換システムの上流に位置付けられる崩壊熱除去システムと、
B/ 原子炉の一次格納容器の内部に少なくとも部分的に位置付けられる崩壊熱除去システムと、
C/ 原子炉の一次または二次の格納容器の外側に位置付けられる崩壊熱除去システムと
の3つのカテゴリに分類することができる。
【0011】
A/システムは、空気/液体金属タイプの交換器に熱を放出する[1]。それらの主な欠点は、少なくとも2つの交換器の使用を必要とすること、自然対流の観点から低い性能を伴う主に強制的な対流による能動的な動作を伴うこと、ならびに、液体金属の漏れの場合の化学的相互作用、および最終冷却源への外部からの攻撃の危険性を伴う空気/液体金属タイプの交換器の最終冷却源の使用を必要とすることである。
【0012】
B/システムは、空気/液体金属タイプの交換器の最終冷却源に排出される場合、熱も放出する。
【0013】
一部のB/システムは、低温集熱器または高温集熱器のいずれかを一次格納容器の内部に置く[1]。A/システムの前述の主な欠点とは別に、B/システムは、格納容器における放射性液体金属との接触の危険性も伴い、これらのB/システムの構成要素の取り扱いの場合に、原子炉の停止を必要とする。
【0014】
特許文献1の特許出願も、一部がスラブを通過する受動的冷却システムとして記載されているB/システムを開示している。提案されている解決策は、スラブを通過するところに必要とされるシール、ドームへの熱の伝達の可能性、システムの構成要素を取り扱う場合に原子炉を停止する必要性、および、スラブによって支持される追加重量を含め、数多くの欠点を有する。
【0015】
C/システムは、交換器、パイプの束、および(安全な)一次または二次の格納容器の外側の空気流を含む。
【0016】
本発明の文脈において、安全な格納容器は、それ自体が金属容器であり得るか、または金属ライナであり得る。
【0017】
二次格納容器の外側に位置付けられた既知のC/システムは、
- 必ず能動的な動作、つまり、強制対流を使用すること、
- 使用される内部流体(熱媒油)が優れた熱の伝導体ではないことによる限られた有効性、
- 300~350℃を上回る温度での熱交換流体の化学的不安定性、
- 二次格納容器からの放射線によって主に影響されることによる不十分な冷却性能
という主要な欠点を有する。
【0018】
前述の特許出願の特許文献1は、安全格納容器の外側に位置付けられるC/システムを開示しており、集熱器を備え、集熱器とサイロとの間、および集熱器と保護容器との間にそれぞれ形成された、熱交換液体が循環する管を一次格納容器の周りに用いた液体の下降および上昇を含み、外部空気が、下降する流れの通路へと導入され、下向きに流れてから上向きに流れ、サイロの底へと流れ、最終的に外部へと排出される。このシステム設計は、上記の欠点を有しており、つまり、空気が優れた熱の伝導体ではないことによる低い有効性と、安全格納容器によってもたらされることによる低い冷却性能とを有する。さらに、外部に露出された最終冷却源への外部からの攻撃の危険性がある。
【0019】
特許文献2の特許出願は、二次格納容器の外側に位置付けられるC/システムを開示している。ここでもまた、最終冷却源が外部に露出される。さらに、開示されている解決策は数多くの欠陥を被っている。先ず、システムの構成要素が二次格納容器に溶接されなければならない。さらに、システムの動作は熱交換流体の相転移を仮定し、これは密度の大きな変化をもたらし、そのため配管の中に機械的な力をもたらし、格納容器の穿孔および炉心のメルトダウンに先立つ局面において、非効果的である。
【0020】
特許文献3の出願は、原子炉の建屋を含め、原子炉を改修しないで、または最小限で改修するだけで、前述のA/、B/、C/のシステムの欠点を軽減する、相変化材料の冷却源を伴う崩壊熱除去システムを組み込んだ、液体金属によって冷却される原子炉を提案している。
【0021】
図1図4に描写されているのは、ループ式構造と、原子炉がその設計出力の100%において動作するときの公称出力、および原子炉の崩壊熱を少なくとも排出するためのシステム2とを伴う、この特許文献3の出願の教示によるSFR型ナトリウム冷却原子炉1である。原子炉の公称動作の局面の間に機能するこのシステム2は、
- 事故の場合に必要とされるシステムの一般的な始動がないこと、
- 後でさらに詳細に記載されているように、格納容器プールを部分的に冷却すること
という2つの主な利点を有する。
【0022】
このタイプのSMR型原子炉1は、一次液体と呼ばれる液体ナトリウムが充填された一次格納容器10または原子炉格納容器を備え、その容器の内部に炉心11があり、炉心11には、燃料の核分裂によって熱エネルギーを発生させる複数の燃料組立体110と、側方中性子保護組立体111とが設置されている。
【0023】
格納容器10は、一次回路におけるナトリウムの重量の他に、内部の構成要素の重量を支持する。
【0024】
炉心11は、支持の機能と炉心への冷却流体の供給の機能との分離を可能にする2つの異なる構造、すなわち、
- 燃料組立体110の足元に位置決めされ、一次ポンプによって冷却ナトリウムが(400℃で)送り込まれる、ダイアグリッドと呼ばれる第1の圧力溶接された構造12、
- ダイアグリッドが圧し掛かり、一次格納容器10の底部において内壁の一部に概して圧し掛かる、ストロングバックと呼ばれる第2の溶接された構造13
によって支持されている。
【0025】
ダイアグリッド12およびストロングバック13は、典型的にはAISI316Lステンレス鋼から作られる。
【0026】
組立体110のシースが第1の閉じ込め障壁を構成する一方で、格納容器10は第2の閉じ込め障壁を構成する。
【0027】
描写されているように、一次格納容器10は、中心軸Xを有し、半球形の底において延在する円筒形のものである。一次格納容器10は、高温での亀裂の危険性を防止するために、非常に少量のホウ素含有量を伴うAISI316Lステンレス鋼から典型的には作られる。その外面は、酸化前の処理によって高放射性とされ、これは、崩壊熱の排出の局面の間に外部への熱の放射を容易にするために有効とされる。
【0028】
炉心カバープラグと呼ばれるプラグ14が、鉛直方向において炉心11と一直線に位置付けられている。
【0029】
この種類の原子炉1では、炉心11の内部で核反応の間に生成される熱は、図示されている例では、原子炉格納容器10に位置付けられたポンプ手段150を用いて、格納容器10の外側に位置付けられた中間交換器15に、一次ナトリウムを循環させることで抽出される。
【0030】
したがって、熱は、送り込みパイプ152を介して低温で到着する二次ナトリウムによって中間交換器15において抽出され、その後、二次ナトリウムは出口パイプ151を介して高温で中間交換器15を出て行く。次に、抽出された熱は、描写されていない蒸気発生器において蒸気を生成するために使用され、生成された蒸気は、同じく描写されていない1つまたは複数のタービンおよび交流発電機へと送り込まれる。タービンは、蒸気の機械エネルギーを電気エネルギーへと変換する。大まかに言って、ナトリウムによって炉心から抽出された熱は、交換器システムによって流体と交換でき、流体の機能は、電気タービンを回させること、および/または、電気発生と異なる用途のために熱を生成することである。
【0031】
原子炉格納容器10は、原子炉格納容器10の内部に位置付けられた少なくとも1つの格納容器16から成る分離デバイスによって、2つの異なる領域に分割されている。このデバイスは、ステップとして知られてもおり、AISI316Lステンレス鋼から作られる。大まかに言えば、図2に示されているように、このデバイスは、その形が少なくともその上方部において円筒形である単一の内部格納容器16から成る。
【0032】
ステップ16は、図3および図4に示されているように、ダイアグリッド12に概して溶接される。
【0033】
図1に示されているように、内部格納容器16によって内部に画定された一次ナトリウム領域は、炉心11を出るナトリウムを集め、この領域は、ナトリウムが最も高温である領域を構成し、そのため高温領域160または高温集熱器と通常は呼ばれる。内部格納容器16と原子炉格納容器10との間に画定された一次ナトリウム領域161は、一次ナトリウムを集め、ポンプ手段に送り、この領域は、ナトリウムが最も低温である領域を構成し、そのため低温領域または低温集熱器161と通常は称される。
【0034】
図2に示されているように、原子炉格納容器10は、描写されていないポンプ手段、以後において説明されているような排出システム2の一部の構成要素、および炉心カバープラグ18など、様々な構成要素を支持する閉鎖スラブ17によって固定および閉鎖される。そのため、閉鎖スラブ17は、一次格納容器10の内部の液体ナトリウムを封じ込める上カバーである。スラブ17は、典型的には非合金(A42)鋼鉄から作られる。
【0035】
一次格納容器10のシールは、閉鎖スラブ17と炉心カバープラグ18との間の金属シールによって保証される。
【0036】
炉心カバープラグ18は、すべての取り扱いシステム、炉心のタイプおよび炉心の出力にその数が依存する制御棒を含めた炉心の監視のために必要なすべての器具、ならびに熱電対および他の監視デバイスを支える回転プラグである。カバープラグ18は、AISI316Lステンレス鋼から典型的には作られる。
【0037】
カバーガスプレナムと一般的に称される、閉鎖スラブ17とナトリウムの液面との間の空間は、典型的にはアルゴンである、ナトリウムに対して中性であるガスで満たされる。
【0038】
支持および閉じ込めシステム3が、一次格納容器10の周りで、その閉鎖スラブ17の下方に位置付けられている。
【0039】
より正確には、図3および図4に示されているように、このシステム3は、外側から内側へと挿入される格納容器シンク30と、熱絶縁材料の層31と、ライナ式の被覆32と、原子炉の一次格納容器10とを備える。
【0040】
格納容器シンク30は、スラブ17の重量を支持し、延いては、スラブ17が支持する構成要素の重量を支持する平行六面体の大まかな外形のブロックである。格納容器シンク30の機能は、生物学的保護、および外部からの攻撃に対する保護を提供することであり、低い温度を維持するために外部環境を冷却することでもある。格納容器シンク30は、典型的にはコンクリートのブロックである。
【0041】
熱絶縁材料の層31は格納容器シンク30の熱絶縁を保証する。層31は、典型的にはポリウレタン発泡体またはケイ酸塩から作られる。
【0042】
ライナ被覆32は、一次格納容器10からの漏れの場合における一次ナトリウムの保持と、格納容器シンク30の保護とを保証する。別の言い方をすれば、一次格納容器からの漏れの場合に一次ナトリウムの保持を保証するライナ32は、ここでは安全格納容器と同様である。ライナ32は、格納容器シンク30に圧し掛かり、その上方部が閉鎖スラブ17に溶接される。ライナ32は、典型的にはAISI316Lステンレス鋼から作られる。
【0043】
容器間空間と呼ばれる、ライナ被覆32と一次格納容器との間の空間Eは、一次格納容器10の表面を冷却するために、および、若干ではあるが崩壊熱除去システムへの熱の伝達を向上するために、窒素などの熱伝導性ガスで満たされる。そのため、空間Eは、使用される検査システムの配置を可能にするだけの十分さでなければならない。容器間空間Eの厚さは、用途に依存して、おおよそ30cmから50cmの間で変動する。開示されているSFR用途では、厚さEはおおよそ30cmになると考えられる。
【0044】
この特許文献3の出願による一次格納容器10を介した崩壊熱除去システム2の排出は、次のように記載されている。
【0045】
崩壊熱除去システム2は、一次格納容器10の外部への崩壊熱の完全に受動的な排出を可能とし、一次格納容器10によって発せられる熱放射を容器間空間Eにおいて捕らえる。
【0046】
この特許文献3の出願によるシステム2のすべて、特にシステム2における熱貯蔵器は、
- 熱交換流体の自然循環を確保するための、連続条件(通常の動作または公称出力)と、
- 炉心が、現在考えられているような典型的には7日間といった目標の時間期間の間に温度が過度に上昇しないように、炉心からの十分な出力を排出するための、事故の状況における、つまり、電力供給手段の部分的または完全な喪失(エンベロープ状況としてのステーション停電)による崩壊熱の排出での崩壊熱除去条件と
の動作の2つのモードに適合する大きさとされなければならない。
【0047】
システム2は、第一に、液体金属で満たされた閉回路4を備え、閉回路4は、
- 容器間空間Eに位置付けられ、一次格納容器10の周りに分配され、U字形の底が一次格納容器10の底を向く状態で一次格納容器10に沿って各々が延びるU字形パイプ400の層40と、
- 低温分枝と呼ばれるU字形の各々の分枝401によって各々の層に直接的に溶接される、低温集熱器と呼ばれる第1の集熱器41であって、低温集熱器は、閉鎖スラブ17の外側および上方に位置付けられる、第1の集熱器41と、
- 高温分枝と呼ばれるU字形の他方の分枝402によって層のパイプの各々に直接的に溶接される、高温集熱器と呼ばれる第2の集熱器42であって、高温集熱器は、閉鎖スラブ17の外側および上方に位置付けられ、好ましくは、第1の低温集熱器41と鉛直方向に並んで位置付けられる、第2の集熱器42と、
- 一端431が高温集熱器42に連結され、他端432が低温集熱器41に連結される単管交換器43と
を備える。
【0048】
閉鎖スラブ17の上方部は、低温集熱器41および高温集熱器42を支持する部品の重量を支持する。
【0049】
閉鎖スラブ17は、層の各々のパイプ400の挿入を可能にするために、異なるタイプの開口を含む。したがって、各々の管400はスラブ17の上部を介して出入りする。
【0050】
図示されているようなループ原子炉の場合、一部のパイプ400は、一次格納容器10の側部において出入りする場合、一次回路の分枝を迂回してもよい。
【0051】
図4に示されているように、U字形パイプ400の低温分枝401は、その温度の上昇を制限するために、および、液体の循環の反転の現象を防止するために、および最終的な分析において、各々のパイプ400の内部の液体金属の自然循環を可能とするために、熱絶縁層31の内部に完全に挿入されている。
【0052】
パイプの層は、一次格納容器10の直径の関数である直径と、要求される熱の排出のために必要な面積を有するのに十分な高さとを有する。
【0053】
別の言い方をすれば、層40を構成するU字形パイプ400の全体の数および寸法は、一次格納容器10の直径と、原子炉の炉心11の出力とに依存する。例えば、層のパイプのピッチは10cmに等しくでき、これは、放射による熱の製造と吸収との良好な妥協案である。
【0054】
例えば、各々のパイプ400の外径は、損失水頭を最小限にするために、容器間空間Eにおけるパイプの嵩張りを低減するために、および、一次格納容器10に曝される領域を最大化するために、5cmの標準的な寸法に設定される。各々のパイプの厚さは、内部の液体金属によって、および管自体の重量によって発揮される機械的応力に依存する。
【0055】
各々のパイプ400の材料は、熱を吸収する高温分枝402側において良好な放射率特性を有していなければならない。パイプの材料は、AISI316Lステンレス鋼、フェライト鋼、ニッケル、Inconel(登録商標)、Hastelloy(登録商標)から典型的には選択される。この材料は、閉回路4のために使用される内部流体に依存する。
【0056】
この内部熱交換流体Cは、化学的に安定し、低粘度であり、良好な熱交換を提供する熱の良好な伝導体であり、回路4の配管のすべてと化学的に適合し、150~600℃の間の温度範囲で自然対流によって機能することができる液体金属である。回路4の液体金属は、NaK合金、Pb-Bi合金、ナトリウム、または、液体金属の三元合金のうちの1つなどから典型的には選択され得る。
【0057】
図2に示されているように、低温集熱器41および高温集熱器42は、一次格納容器10の中心軸(X)を中心とするトロイダルの大まかな形を有する。これらの集熱器41、42は、閉鎖スラブ17に直接的に溶接された支持部品44に圧し掛かる。
【0058】
各々の単管交換器43の機能は、システム2の内部の流体を出口において冷却し、熱交換流体の自然対流移動を連続的に保証するのに十分な公称出力の排出と、崩壊熱の排出との両方を可能にすることで、システム2の内部の流体によって吸収された熱を排出することである。図示されているように、各々の単管交換器43は、好ましくは直管である。各々の単管交換器43は、AISI316ステンレス鋼から典型的には作られる。
【0059】
図2および図5に示されているように、本発明による崩壊熱除去システム2は、パイプ400の層40の全体を介して一次格納容器10からの放射によって排出された熱を吸収するように構成された冷却源5も備える。冷却源5の寸法は、排出される事実上の崩壊熱を決定する原子炉の炉心11の出力と、十分な熱慣性を必要とする想定過渡期間との両方に依存する。公称動作点(公称出力)は冷却源5の寸法にも影響する。
【0060】
冷却源5は、一次格納容器10から距離を置いて、閉鎖スラブ17より上の高さにおいて、円筒形の少なくとも1つの貯留器50を備える。各々の円筒形の貯留器50、50.1、50.2は、単管交換器43が挿入される固体-液体タイプの相変化材料を含む。各々の貯留器50、50.1、50.2は、外部との自然対流およびその壁から外部への放射による交換によって、事故の局面の間に排出される出力の一部、および、公称出力における原子炉の動作の間にシステム2によって排出される熱のすべてを消散する。
【0061】
図示されているように、各々の貯留器50、50.1、50.2は、円筒形の大まかな形を有し、その重量と、相変化材料51および単管交換器43の重量とを支持するために、好ましくはコンクリート基礎に配置される。
【0062】
各々の貯留器50、50.1、50.2の外壁は、放射によって発せられる熱を増加させるために、好ましくは大きな放射率のものである。各々の貯留器50、50.1、50.2は、典型的にはHastelloy(登録商標)-Nまたは316ステンレス鋼から作られる。
【0063】
各々の貯留器50、50.1、50.2の寸法は、それが収容する相変化材料と、通常の動作および崩壊熱除去システムの状況において排出される出力とに依存する。
【0064】
各々の貯留器50、50.1、50.2は、好ましくは閉じ込め建屋52に閉じ込められる。したがって、本発明によるシステム2の最終冷却源5は、可能性のある外部からの攻撃に対して保護される。
【0065】
閉じ込め建屋52の内壁は、収容されている貯留器50、50.1、50.2の外壁によって放射された熱をより容易に排出するために、高い放射率の特性を好ましくは有する。
【0066】
冷却源5を一次格納容器10から最適な距離に配置するために、液圧回路2は、パイプのセットを含む連結ループ45、45.1、45.2と、適用可能な場合、低温集熱器41と高温集熱器42と各々の単管交換器43との間の弁とを含む。
【0067】
より正確には、図示されているように、各々の連結ループ45、45.1、45.2は、貯留器50の底において低温集熱器41を単管交換器43の低温端432に連結する液圧分枝451と、高温集熱器42を単管交換器43の高温端431に連結する液圧分枝452とを備える。
【0068】
そのため、低温集熱器41は、低温分枝451の内部の液体金属の流れを、U字形の底を伴う各々の管400の各々の低温分枝401へと分配し、高温集熱器42は、高温分枝452に送り込むために、U字形の底を伴う各々の管400の各々の低温分枝401から来る内部の液体金属を集める。
【0069】
別の言い方をすれば、この特許文献3の出願において提案されているシステムは、既存の設備と比較して、補足の中間回路を備える。この補足の回路は、炉心から原子炉の外部の熱貯蔵貯留器への出力の伝達を可能とし、この熱貯蔵器はさらに、熱損失によって、貯留部が位置付けられる建屋に熱出力を排出する。この回路において自然対流によって循環する熱交換流体は、格納容器の周りに配置されるパイプ400の層に向けた放射によって、一次格納容器10の外壁によって加熱される。加熱されると、熱交換流体は崩壊熱除去システムの冷却源5へと向けられ、そこで冷却され、これは熱交換流体を格納容器10へと再び下降させることができる。この自然の循環は、連続条件(原子炉の通常の動作)と崩壊熱除去条件との両方の下で機能する。流量は、排出される出力が連続条件の下より高いため、崩壊熱除去条件の下において、より大きい。
【0070】
相変化材料は、単管交換器43の液体金属との交換の間、原子炉の通常の動作(連続条件)において固体状態となり、崩壊熱を発する原子炉に影響を与える事故の状況(崩壊熱除去システム条件)においてのみ液体状態になるように適合される熱緩衝材として作用する。
【0071】
別の言い方をすれば、連続条件の下で、相変化材料は、自然対流による熱交換流体の流れを維持するために、外部(「低温位置」)との熱交換器の役目を遂行するだけである。交換される出力は、サイクルにとって損失であるため、最小でなければならないが、自然対流による移動において熱交換流体を維持するのに十分でなければならない。相変化材料の貯蔵のための使用は、崩壊熱除去システム条件の下で溶解されているとき、その潜熱の便益を可能にする。貯留器50、50.1、50.2に収容された相変化材料は、システムの熱交換流体の温度上昇を制限するために有用である熱緩衝材の機能を有する。この効果は、相の変化の間に材料の温度が準一定であるため、得られる。具体的に言えば、システムの熱交換流体の温度があまり素早く上昇しない場合、より多くの熱が放射によって格納容器と熱交換流体との間で交換される。崩壊熱除去条件の下での冷却機能は向上させられる。
【0072】
管の層を介したシステムの冷却源への熱の伝達を向上させるために、相変化材料は高い熱伝導率を有していなければならない。
【0073】
事故の状況における良好な動作のために、相変化材料は、高い熱慣性(大きい密度および比熱)、大きい潜熱、250℃から400℃の間の融点、150℃(固体状態)から600℃(液体状態)の間での使用の温度の特性を有していなければならない。
【0074】
相変化材料は、単管交換器43からの漏れに続く相互作用の事象において問題が生じないように、閉回路2の内部流体と化学的に適合可能でなければならない。
【0075】
相変化材料は、典型的には、閉回路2の内部の熱交換流体がNaK合金であるときにはカドミウムから選択され、熱交換流体がPb-Bi合金であるときには鉛から選択される。
【0076】
そのため、このタイプの貯蔵器は、材料の温度を増加させることのみに基づいて、顕熱式の貯蔵器より高い単位体積あたりのエネルギー密度を達成することを可能にする。システム2は、流体の流れが自然対流のみによって生成されるため、ならびに、外部冷却が、相変化材料を貯蔵する貯留器50、50.1、50.2の外壁のレベルにおける放射および自然対流によってもたらされるため、全体として受動的なままである。
【0077】
特許文献3のこの出願における相変化材料の貯蔵器の実施形態は図5に示されている。単管交換器43は、熱交換流体が循環し、貯留器50の高さで延びる巻回/コイルの形態を取っている。
【0078】
相変化材料51は、単管交換器43において、および単管交換器43の周りで、貯留器50における配置を容易にする一方で熱の伝導を向上させる粉末、または小さい球のセットから成る。
【0079】
この種類の形状において、前述の2つの動作モードに適合するために、
- 連続条件の下で外部への熱損失を制限するのに十分な熱抵抗を確保するのに十分である、巻回43と貯留器50の外壁500との間の距離であって、巻回43と貯蔵器外壁500との間の相変化材料の厚さは、維持される熱交換流体の自然対流にとって十分な損失を達成するように決定される、距離と、
- 熱交換流体と相変化材料との間の出力の交換にとって十分である巻回43の長さおよび直径と、
- 典型的には7日間といった目標期間にわたって、熱交換流体の温度、延いては炉心の温度を制限するのに十分な相変化材料の体積と
を必要とする。
【0080】
相変化材料の貯蔵器のこの例は、述べられた3つの制約に適合することが非常に大きな貯蔵器体積をもたらすため、十分に満足できるものではない。
【0081】
他の可能な構成が図6に示されており、これは、並行に位置付けられ、相変化材料51に埋められる複数の管430によって巻回43を置き換えることから成り、これがすべて、貯留器50の外壁500に置かれた熱絶縁層433によって包囲される。管430は、熱交換流体と相変化材料との間の交換の面積と、随時実際に用いられる相変化材料の体積とを増加させることで、交換される出力を向上させることを可能とし、熱絶縁層433は、周囲にある管430が壁500の近くにあっても、連続条件の下で正確な熱損失の大きさを得ることを可能にする。これらの変形は、連続条件の下で、および崩壊熱除去システム条件の下で、すべての制約に適合することを可能とし、壁500に近いものを含め、相変化材料のすべてを使用することで、貯蔵貯留器50の大きさを制限することを可能にする。さらに、この構成は、熱交換流体が貯蔵器に入るときに損失水頭のより大きな制限を可能とし、これは、熱交換流体の自然対流による流れにとって好ましい。特に、これは、連続条件の下での自然対流の移動を維持するために必要な熱損失の制限を可能にする。
【0082】
他方で、崩壊熱除去システム条件の下では、この図6の構成は完全に満足できるものではない。実際、絶縁層433は、貯留器50の外部に出力を排出するための障害となり、外部への出力の排出を減速させ、これは貯留器50における温度の上昇をもたらし、最終的な分析では、熱交換回路および相変化材料貯蔵器における温度の上昇をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【文献】特開2013-076675号公報
【文献】韓国特許出願公開第20150108999号明細書
【文献】仏国特許出願公開第3104311号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0084】
そのため、液体金属によって冷却される原子炉の崩壊熱除去システムを向上させる需要があり、特に、特許文献3の特許出願において提案され、図6に示されるものなど、冷却源から外部への熱の排出についての解決策を向上させる需要がある。
【0085】
本発明の目的は、この需要に少なくとも部分的に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0086】
このために、本発明の一態様は、液体金属によって冷却される高速中性子原子炉であって、
原子炉の一次回路の熱交換流体としての液体金属で満たされる、いわゆる一次格納容器と、
一次格納容器の周りに位置付けられ、容器間空間を定める格納容器シンクと、
一次格納容器の内部の液体金属を封じ込めるための閉鎖スラブと、
事故の状況における原子炉の公称出力の少なくとも一部と崩壊熱の少なくとも一部との両方の排出のためのシステムであって、
熱交換液体で満たされる閉回路であって、
容器間空間に位置付けられ、一次格納容器の周りに分配され、U字形の底が一次格納容器の底を向く状態で一次格納容器に沿って各々が延びる複数のU字形パイプの層、
低温分枝と呼ばれるU字形の一方の分枝を介して層のパイプの各々が溶接される、低温集熱器と呼ばれる第1の集熱器であって、低温集熱器は、閉鎖スラブの外側および上方に位置付けられる、第1の集熱器、
高温分枝と呼ばれるU字形の他方の分枝によって層のパイプの各々が溶接される、高温集熱器と呼ばれる第2の集熱器であって、高温集熱器は、閉鎖スラブの外側および上方に位置付けられる、第2の集熱器、および、
一端が低温集熱器に連結され、他端が高温集熱器に連結される交換器
を備え、
回路は、熱交換液体が自然対流によって回路内で循環し、崩壊熱を放出する事故の状況における動作において液体状態で留まるように構成される、閉回路、ならびに、
冷却源であって、
一次格納容器から距離を置いて、閉鎖スラブより上方に位置付けられる少なくとも1つの貯留器であって、貯留器は、交換器が挿入される固体-液体タイプの相変化材料を収容し、相変化材料は、交換器の液体金属との交換の間、原子炉の通常の動作において固体状態となり、崩壊熱を放出する事故の状況において液体状態になるように適合される、少なくとも1つの貯留器、および、
貯留器の外壁の少なくとも一部に取り外し可能な手法で固定されるように適合され、外壁を覆い、前記壁の温度が所定の閾値に達した場合、外壁から受動的に取り外されるように適合される熱絶縁層
を備える、冷却源
を備える、システムと
を備える、高速中性子原子炉に関係する。
【0087】
崩壊熱除去システム条件の下での動作について、この所定の温度は、公称条件の下で達せられる温度より高い。
【0088】
有利には、熱絶縁層は、貯留器の外壁から取り外されたとき、重力によって落下するように構成される。
【0089】
1つの有利な実施形態によれば、絶縁層は、隣接する複数の熱絶縁パネルを含む。
【0090】
他の有利な実施形態によれば、原子炉は、熱絶縁層を所定の閾値温度まで固定するように、および、閾値温度を上回ると熱絶縁層を受動的に取り外すように構成される、熱絶縁層を取り外し可能に固定するための少なくとも1つの受動的デバイスを備える。
【0091】
この実施形態によれば、好ましくは、原子炉は、熱絶縁パネルごとに少なくとも1つの受動的取り外し可能固定デバイスを備える。
【0092】
この実施形態および有利な変形実施形態によれば、貯留器は、磁性材料から作られ、受動的取り外し可能固定デバイスは、各々の熱絶縁パネルに固定される少なくとも1つの永久磁石を備え、磁石は、閾値温度未満において貯留器の外壁に磁気的に取り付けられ、磁石がその磁気特性を失うキュリー温度が閾値温度の関数として決定される。
【0093】
好ましくは、永久磁石は、Fe-Ni合金から作られる。
【0094】
他の有利な実施形態によれば、貯留器の外壁は、熱絶縁層が壁を覆うときに熱絶縁層によって覆われる、複数のフィンを備える。
【0095】
有利には、複数のフィンのうちの少なくとも1つは、各々の熱絶縁パネルに挿入される。
【0096】
他の有利な実施形態によれば、原子炉は、熱絶縁層を固定するように、および、貯留器の外壁の温度に関わらず熱絶縁層を貯留器の外壁から取り外すために、使用者による命令で作動させられるように構成される、熱絶縁層を取り外し可能に固定するための少なくとも1つの能動的デバイスをさらに備える。別の言い方をすれば、熱絶縁体層の取り外しは、操作者がそのように決定するときに、能動的に引き起こすことができる。
【0097】
この実施形態によれば、好ましくは、能動的に取り外し可能な固定デバイスは、熱絶縁パネルごとに少なくとも1つの受動的取り外し可能固定デバイスを備える。
【0098】
冷却源は、1つまたは複数の貯留器を備え得、特に2つの異なる貯留器を備え得る。
【0099】
好ましくは、2つの異なる貯留器の2つの交換器のうちの一方は、集熱器の一端に連結され、交換器のうちの他方は、集熱器の他端に連結される。
【0100】
有利な変形によれば、交換器は、各々の貯留器において並行に配置され、相変化材料によって包囲される、複数の管へと分割されている。相変化材料は、管と直接的または間接的に接触し得る。間接的な接触の場合、鋼鉄の箱の壁が管の壁と接触し得る。
【0101】
有利な構成によれば、原子炉は、低温集熱器を単管交換器の端に連結する少なくとも1つの液圧分枝、および、低温集熱器を交換器の端に連結する少なくとも1つの液圧分枝を備える循環ループと、適切な場合には1つまたは複数の他の流体構成要素とを備える。
【0102】
他の有利な構成によれば、原子炉は、排出システムの各々の貯留器を閉じ込めるための少なくとも1つの閉じ込め建屋を備える。
【0103】
好ましくは、崩壊熱除去回路の熱交換液体は、二元鉛-ビスマス合金、NaKなどの二元ナトリウム-カリウム合金から選択される液体合金、または、液体金属の他の三元合金である。
【0104】
好ましくは、貯留器を満たす相変化材料は、鉛、カドミウム、亜鉛もしくはzamakタイプの亜鉛合金、錫およびその鉛との合金、または三元Li-Na-K炭酸塩混合物から選択される。
【0105】
排出システムの貯留器は、Hastelloy(登録商標)およびInconel(登録商標)を含め、ニッケルベースのHastelloy(登録商標)またはフェライト系ステンレス鋼から作られる。
【発明の効果】
【0106】
したがって、本発明は本質的に、
- 事故の初期の時点からの完全に受動的な手法での崩壊熱の排出と、
- 一次格納容器を介した出力の排出と、
- 相変化材料が間に挿入される複数の並列管へと分割された統合交換器を組み込む貯留器を伴う最終冷却源の存在と
を保証し、貯留器が、所定の閾値温度に達した場合に受動的な手法で取り外され得る熱絶縁層によって包囲される、統合システムを組み込む原子炉を製作することにある。
【0107】
熱絶縁層は、貯蔵貯留器の側方の外被のすべてを有利に包囲する複数の熱絶縁パネルから好ましくは成る。
【0108】
取り外し可能な熱絶縁層の受動的な取り外しは、例えば、絶縁体に固定され、閾値温度の関数として決定されるキュリー温度においてその磁気特性を失う永久磁石によって確保され得る。
【0109】
本発明による取り外し可能な熱絶縁層は、
- 交換器の管を壁の近くに位置決めし、貯蔵器への熱の向上した伝達、および、すべての相変化材料のより良好な使用を可能にする一方で、連続条件の下で外部への熱交換を制限することと、
- 連続条件から崩壊熱除去システム条件になるときに受動的な手法で貯蔵貯留器と外部との間の熱抵抗を変更することであって、これはシステムの完全に受動的な特徴を維持する、変更することと、
- 貯留器の壁から外向きに延びるフィンを伴う変形では、貯留器の壁と外部との間の熱絶縁に結び付けられる熱抵抗の抑制を、貯留器の壁と外部環境との間の交換の領域における増加と組み合わせることで、熱絶縁層を留め付け解除/取り外しするとすぐに、外部に交換される出力を非常に高い度合いまで増加させることと
を可能にする。
【0110】
これらの利点は、FR3104311A1の出願による解決策と比較して、貯蔵器からの熱のより効果的な排出を可能にし、貯蔵器に収容される材料の温度があまり素早く上昇せず、そのため、熱交換流体の温度の上昇を減速させることができる。貯蔵器の有効性が向上させられる。別の言い方をすれば、受動的な手法で取り外せる絶縁層を使用することは、典型的には7日間といった定められた期間にわたって、炉心の温度の上昇と、原子炉の一次格納容器の温度の上昇とを制限する一方で、熱交換流体の自然対流を可能にする通常の動作と、崩壊熱を排出するための事故の状況との両方において、貯蔵器の必要な大きさを低減することを可能にする。
【0111】
さらに、本発明による崩壊熱除去システムは、600℃の程度の高温の放射から便益を得て、一次格納容器の外部から容器間空間へと、崩壊熱除去システムの貯蔵施設からの熱絶縁層の取り外しのために、完全に受動的な手法で出力を十分に排出する手法を通じて、FR3104311A1の出願によるものと同じ利点を有する。
【0112】
そのため、システムは、知られていて使用されている他の崩壊熱除去システムからの多様化および逸脱の高度な態様を有し、これは、内部の流体の恒久的な循環を前提として、向上された受動的な安全特性と、介入による遅れの無さとをシステムに付与する。したがって、電圧の全般的な喪失(MdTG)の事象において、崩壊熱除去システムの機能は、制御命令、操作者、または、外部の水もしくは空気と接触しているタイプの冷却源の必要性と関連付けられない。これは、内在的安全または「放置安全」原子炉と称される。
【0113】
本発明によるシステムは、公称出力における原子炉の通常の動作と、事故の状況との両方において、連続的に動作する。
【0114】
事故の開始からの崩壊熱の完全に受動的な排出は、通常の動作においても起こる内部熱交換流体の恒久的な自然の循環によって保証される。この連続的な自然の循環は、U字形パイプの高温分枝および低温分枝との間の流体の密度の差、およびそれらの高さによって可能とされる。
【0115】
一次格納容器を介した熱の排出は、この機能が、格納容器の内部構造の深刻な変形をもたらす可能性がある重大な事故または地震活動の事象においてもアプリオリに保証できるため、有利である。このような過酷な条件の下では、既に存在しているものなど、格納容器の内部のシステムは、この安全機能を正しく遂行することができない。
【0116】
本発明による崩壊熱除去システムの冷却源および受動的動作の多様化は、外部からの攻撃およびある他のシステムの失陥に対する設置の安全性の概念を強化する。
【0117】
さらに、相変化材料の使用は、空気/液体金属タイプの最終冷却源と比較して、はるかにコンパクトな寸法を可能にする。
【0118】
必要な場合、閉回路の内部の熱交換液体の循環の流量を向上させるために、ヒートポンプを追加することが考えられてもよい。
【0119】
本発明は、典型的には、発熱用原子炉については100MWthから500MWthの間の動作出力、発電用原子炉については50Mweから200Mweの間の動作出力の、小型もしくは中型の出力、またはSMR(小型モジュール炉)の一次回路のモードを特徴付けるその構成に関わらず、液体ナトリウムによって冷却されるすべての原子炉に適用され、例えば、
- 一次ポンプおよび交換器が、炉心を封じ込める主格納容器の内部に全体として収容され、前記主格納容器の閉鎖スラブを通じてその格納容器の冷却流体に沈められる統合したRNR、
- 一次ポンプだけが、炉心を封じ込める主格納容器の内部に収容される部分的に統合した(「ハイブリッド」)RNR、
- 一次ポンプおよび中間熱交換器が、炉心および内部構造だけを収容する原子炉の主格納容器の外側の専用格納容器に配置され、主格納容器と構成要素格納容器とが一次パイプによって連結される、いわゆる「ループ型」RNR
に適用される。
【0120】
崩壊熱除去システム回路の熱交換液体は、好ましくは、二元鉛-ビスマス(Pb-Bi)合金、二元ナトリウム-カリウム(NaK)合金、ナトリウムから選択される液体金属、または、それら液体金属の他の三元合金である。
【0121】
貯留器を満たす相変化材料は、鉛、カドミウム、亜鉛もしくはzamakタイプの亜鉛の合金、錫およびその鉛との合金、または三元Li-Na-K炭酸塩混合物から好ましくは選択される。
【0122】
排出システムの貯留器は、Hastelloy(登録商標)およびInconel(登録商標)を含め、ニッケルベースのHastelloy(登録商標)またはフェライト系ステンレス鋼から好ましくは作られる。
【0123】
回路のパイプ、高温集熱器、および低温集熱器と、適用可能な場合にはループの構成要素とは、AISI316Lまたは304Lのステンレス鋼、フェライト鋼、ニッケルベースの合金、Inconel(登録商標)、Hastelloy(登録商標)から選ばれる材料から好ましくは作られる。
【0124】
本発明の好ましい適用は、特に、ナトリウムおよび鉛によって冷却される原子炉において、第4世代の仲間のGenIVの小型原子炉(SMR)である。
【0125】
安全面とは別に、本発明は、負荷の監視におけるより大きな柔軟性のために、通常の動作のために等しく用いられてもよい。
【0126】
本発明の他の利点および特徴は、以下の図を参照して非限定的な図示を用いて提供されている本発明の実施形態の詳細な記載を読むことで、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
図1】本発明による崩壊熱除去システムを伴う、液体ナトリウムによって冷却される原子炉(SFR)の斜視図である。
図2図1の一部の部分断面図である。
図3】一次格納容器と、SFR式原子炉の燃料組立体の一部と、本発明による崩壊熱除去システムのパイプの層の一部とを示す長手方向での部分断面図である。
図4】熱絶縁材料の層の存在していない状態で図3を再現した図である。
図5】FR3104311A1の特許出願による崩壊熱除去システムの閉回路の相変化材料および単管交換器を収容する熱貯蔵貯留器の内部の斜視図である。
図6】相変化材料と複数の管へと分割された交換器とを収容する先行技術の熱貯蔵貯留器の1つの可能な実施形態を示す断面図である。
図7A】本発明による、熱貯蔵貯留器のフィン付き外壁を覆う熱絶縁パネルを伴う熱貯蔵貯留器の外壁のレベルにおける、熱絶縁パネルが壁から受動的に取り外される前の一部の断面図である。
図7B】本発明による、熱貯蔵貯留器のフィン付き外壁を覆う熱絶縁パネルを伴う熱貯蔵貯留器の外壁のレベルにおける、熱絶縁パネルが壁から受動的に取り外された後の一部の断面図である。
図8】Fe-Ni合金のためのキュリー温度を、ニッケルの割合の関数として曲線の形態で示す図である。
図9A】壁がフィンのない本発明の第1の変形による、熱貯蔵貯留器の外壁を覆う熱絶縁パネルを伴う熱貯蔵貯留器の外壁のレベルにおける、熱絶縁パネルが壁から受動的に取り外される前の一部の断面図である。
図9B】壁がフィンのない本発明の第1の変形による、熱貯蔵貯留器の外壁を覆う熱絶縁パネルを伴う熱貯蔵貯留器の外壁のレベルにおける、熱絶縁パネルが壁から受動的に取り外された後の一部の断面図である。
図10】原子炉において負わされる、排出される熱出力の例と、フィンのある、およびフィンのない貯留器の外壁から、熱絶縁パネルが240℃において受動的に取り外された状態、ならびに、比較のために、恒久的な熱絶縁層を伴う先行技術の構成(図6)における、多管へと分割された統合交換器を組み込んでいる熱貯蔵貯留器の外部への熱損失とを、それぞれの曲線の形態で示す図である。
図11】フィンのある、およびフィンのない貯留器の外壁から熱絶縁パネルが240℃において受動的に取り外された状態、ならびに、比較のために、先行技術の恒久的な熱絶縁層を伴う構成(図6)における、多管へと分割された交換器を組み込んでいる熱貯蔵貯留器の入口および出口における熱交換流体の温度の例を、それぞれの曲線の形態で示す図である。
図12】貯留器のフィンのある外壁から熱絶縁パネルが240℃において受動的に取り外された状態における、統合多管交換器を組み込んでいる熱貯蔵貯留器の入口および出口における熱交換流体の温度の例を、それぞれの曲線の形態で示す図である。
図13A】パネルを取り外すための能動的デバイスを備える本発明の第2の変形による、熱貯蔵貯留器の外壁を熱絶縁パネルが覆っている、熱絶縁パネルが壁から受動的に取り外される前の壁のレベルにおける一部の断面図である。
図13B】パネルを取り外すための能動的デバイスを備える本発明の第2の変形による、熱貯蔵貯留器の外壁を熱絶縁パネルが覆っている、熱絶縁パネルが壁から受動的に取り外された後の壁のレベルにおける一部の断面図である。
図13C】パネルを取り外すための能動的デバイスを備える本発明の第2の変形による、熱貯蔵貯留器の外壁を熱絶縁パネルが覆っている、熱絶縁パネルが壁から受動的に取り外される前の壁のレベルにおける詳細図である。
図14A】貯留器にフィンが設けられるとき、パネルが重力によるその落下に適合される形を有する本発明の変形による、熱貯蔵貯留器の外壁を覆う熱絶縁パネルを伴う貯留器の外壁のレベルにおける一部の断面図である。
図14B】貯留器にフィンが設けられるとき、パネルが重力によるその落下に適合される形を有する本発明の変形による、熱貯蔵貯留器の外壁を覆う熱絶縁パネルを伴う貯留器の外壁のレベルにおける一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0128】
本出願を通じて、「鉛直」、「下方」、「上方」、「底」、「上」、「~の下」、および「~の上」という用語は、液体ナトリウムで満たされた一次格納容器、および、鉛直の動作構成における熱貯蔵貯留器を参照して理解されるものである。
【0129】
明確性のために、先行技術による要素、および本発明による要素を指示する同じ符号が、図1図13Cのすべてについて使用される。
【0130】
図1図6は、前文において既に述べられているため、以後においてさらに述べられることはない。
【0131】
本発明による冷却源5が、図5からの先行技術によるものの代わりに適用される、図1図4において描写されている原子炉からの公称出力および崩壊熱の少なくとも一部の排出のためのシステム2を伴う、ループ式構成を伴うナトリウム冷却(SFR式)原子炉1は、これ以上説明されない。
【0132】
冷却源5は、図6におけるように、並行に配置され、相変化材料51に埋め込まれた複数の管430を収容する少なくとも1つの熱貯蔵貯留器50を備える。
【0133】
本発明によれば、熱絶縁層6が、貯留器の外壁500の側方の外被に取り外し可能に固定されるように位置付けられ、貯留器を覆い、前記壁の温度が所定の閾値に達した場合、貯留器から受動的な手法で取り外される。
【0134】
図7Aおよび図7Bに示されているように、層6は、隣接する複数の熱絶縁パネル60から成る。これらは、グラスウールまたはロックウールベースのパネルであり得る。
【0135】
隔離パネル60の取り外し可能な固定のために、少なくとも1つの受動的デバイス7が、熱絶縁層を所定の閾値温度まで固定し、閾値温度を上回ると熱絶縁層を受動的に取り外すように構成される。
【0136】
受動的デバイス7は、各々の熱絶縁パネル60に固定される永久磁石から好ましくは成る。この場合、貯留器50は磁性材料から作られる。
【0137】
例えば、Fe-Niタイプの合金はキュリー温度を有し、図8に示されているように、キュリー温度を上回る温度で、合金は、構成物質の割合に依存するその磁気特性を失う。そのため、構成物質の割合は、磁石7がもはや機能せず、そのためパネル60が貯留器50の外壁500から落下する閾値温度の関数としてキュリー温度を定めるように、選択され得る。
【0138】
熱絶縁パネル60が貯留器50の壁500から取り外されるときだけ必要である、外部空気との交換のための領域を増加させるために、図示されている例では真っ直ぐであるフィン501が、壁500に生成される。フィン501は、円筒の貯留器50に対して径方向に延び、各々の熱絶縁パネル60によって、その固定構成において覆われ、そのため、絶縁パネルが所定位置にあるとき、外部との熱交換において効果的な役目を有していない。図示されている例では、2つのフィン501がパネル60に挿入されている。フィン501は、貯留器50に固定され得る、または、貯留器50の一体部を形成し得る。
【0139】
そのため、貯留器50の外壁500の温度が閾値温度未満であるとき、磁石7は外壁500に磁気的に取り付けられる(図7A)。
【0140】
外壁500の温度が閾値温度を上回るとすぐに、後で説明されるように、磁石7の磁気特性の喪失のため、熱絶縁パネル60の固定はもはや有効ではない。そのため、パネル60は壁500から取り外され、重力のため落下する。そのため、外壁500はむき出しとなり、そのフィン501を介して、周囲空気と直接的に熱を交換する(図7B)。
【0141】
外壁にフィンがないに変形があってもよい。この変形は図9Aおよび図9Bに示され、絶縁パネル60の固定の構成と、絶縁パネル60が外壁500から取り外されたところとをそれぞれ示している。この変形は、外壁500および絶縁層6の製作と、絶縁層6の壁500への固定とを容易にすることができる。しかしながら、フィンのないことは、図10および図11に結果が示される後に記載するシミュレーションによって裏付けられているように、外部との熱交換の有効性を制限してしまう。
【0142】
本発明による取り外し可能な熱絶縁パネルの解決策の便益を示すために、本発明者は、240℃に等しいパネルの取り外しのための閾値温度と、フィン501を介して壁500を包囲する空気による交換の面積の3倍の増加との仮定を用いて、数値シミュレーションを実行した。
【0143】
これらのシミュレーションにおいて、磁石の役目を確保する材料は、熱絶縁パネルが取り外されるための閾値温度より高いキュリー温度を有するFe-Ni合金であり得る。永久磁石7のキュリー温度と閾値温度との間の差は、典型的には50℃程度のものであり得る。この温度差は、キュリー温度に到達する前に磁化の低減が始まり、キュリー温度においてゼロになるという事実によって説明される。そのため、絶縁パネル60は、典型的には50℃の程度の差から、外壁のレベルにおいてキュリー温度に実際に到達する前に、絶縁パネル60自体の重量によって外壁500から取り外されることになる。
【0144】
シミュレーションでは、交換器43は、図6において概略的に描写されているように、熱交換流体の熱出力を貯蔵された相変化材料と交換するためのより良好な性能を提供する複数の並列な鉛直管430として取り扱われている。
【0145】
熱交換流体のレベルにおいて負わされる排出される出力プロフィール、および、熱交換流体の温度を7日間の期間にわたり550℃未満で維持する目的が、考慮される。この負わされる出力プロフィールは、2つの局面、つまり、連続条件の下での5日間の第1の局面と、6日目の開始において始まり、12時間にわたる急速な発達と、それに続くゆっくりとした低下とを伴う特徴的な形態を取る排出される出力のピークを伴う第2の局面とを含む(図10における実線での曲線)。
【0146】
- 7日間にわたる熱交換流体(550℃)の温度上昇における制約に合う大きさとされた多管430を使用する先行技術の基準の貯蔵器、
- 永久磁石7の減磁と、周囲空気との交換の面積を3倍に増加させる大きさとされたフィン501とによって、240℃の閾値温度において完全に受動的な手法で壁500から取り外される熱絶縁パネルを伴う、基準の貯蔵器と同じ寸法を伴う貯蔵器、
- 永久磁石7の減磁によって、240℃の閾値温度において完全に受動的な手法でフィンのない壁500から取り外される熱絶縁パネルを伴う、基準の貯蔵器と同じ寸法を伴う貯蔵器
の3つの熱貯蔵器構成を比較する。
【0147】
図10に示し、以後に記載するように、外部との貯蔵器の熱交換が、絶縁パネル60が受動的な手法で取り外されることで増加させられ、貯蔵貯留器50がその壁500の周囲にフィン501を有するときになおもさらに増加させられることが、シミュレーションから明らかになった。
【0148】
貯留器50の外部への熱のこの増加した排出は、貯留器50の温度の上昇の制限を可能とし、そのためこれは、図11に示されているように、熱交換流体の温度を限度温度未満でより長期にわたって保つことを可能にする。
【0149】
基準の構成では、つまり、取り外し可能ではない絶縁パネル60では、熱交換流体の温度は、管430および相変化材料51の貯留器50の寸法が、この制約に適合させることができるように定められているため、電気の完全な喪失の開始から7日後に550℃の限度値に達する。
【0150】
本発明による熱絶縁パネル60を使用することで、熱交換流体は、常に470℃未満で留まり、更にはピークの開始の後の2.5日間に温度が低減する(図11)。そのため、本発明は、熱交換流体の出力の排出について、貯蔵器を相当により有効にすることができる。
【0151】
本発明によるパネル60を使用するこの向上した貯蔵性能は貯蔵貯留器50の寸法の縮小と、7日間にわたる550℃の温度限度と適合するために必要な材料51の寸法の縮小とを可能にする。
【0152】
以下のTable 1(表1)は、述べられている3つの構成についての様々な寸法をまとめている。
【0153】
【表1】
【0154】
Table 1(表1)から、基準の構成と比較して、
- 本発明によるフィンのないパネル60の構成に対し、貯留器50の直径に関して10%の縮小、および相変化材料の体積に関して19%の縮小、
- 本発明によるフィン501のあるパネル60の構成に対し、貯留器50の直径に関して38%の縮小、および相変化材料の体積に関して62%の縮小
が分かる。
【0155】
本発明により縮小した寸法において、3日後に550℃の最高温度に到達し、その後に温度が低下する(図11)。これは、本発明を用いることで、目標の7日間を越えて温度制約と適合し続けることが可能であることを意味し(図10)、これは、基準の貯蔵器構成についての場合、つまり、取り外し可能なパネル60のない場合にはないことである。
【0156】
図13A図13Cは、他の可能な変形の実施形態を示している。
【0157】
この変形によれば、熱絶縁パネル60を取り外し可能に固定するための各々の受動的デバイス7に、使用者による命令で各々の絶縁パネル60を取り外させることができる能動的デバイス8が加えられている。
【0158】
いくつかのタイプの能動的デバイス8が考えられ得る。
【0159】
まず、電磁吸着器が使用できる。電磁吸着器は、それ自体で吸着器と磁気バッキングプレートとを備える。例えば、ここでは、取り外し可能パネル60に吸着器を固定し、バッキングプレートを支持体に固定する準備をすることができ、支持体自体は、受動的デバイスによる永久磁石によって貯留器の壁500に固定され、受動的デバイスは、閾値温度を超えるとその磁性能力を失う。電力供給が遮断された場合、吸着器の2つの部品は分離し、そのためパネルが解放される。
【0160】
他の能動的デバイス8は、電気パルスによって作動させられるデバイスであり得、電気パルスは、例えば、原子炉の通常の動作であればパネルは所定位置で保持されるであろう打撃を起こす磁気効果を生成する。電磁的な吸着器デバイス8に対して、電気パルスで作動するデバイスは、原子炉の炉心の状況が必ずしも必要としていないときにすべてのパネルの望ましくない取り外しをもたらし得る、たとえ最短の継続時間でも電流の可及的最小の遮断に依存しないことを可能にすることができる。
【0161】
他の能動的デバイス8は、モータによって可動である保持構造であり得、その動作は、熱絶縁パネルの取り外しを引き起こし、それによって熱絶縁パネルを重力によって落下させる。
【0162】
考えられ得る他の能動的デバイス8の解決策は、貯留器50に固定されたレールに配置される各々の熱絶縁パネル60の縁にのみ永久磁石7を配置することであり得、能動的な要素8が、重力によってレールを下降し、永久磁石7を外す。
【0163】
より一般には、例えば、熱絶縁パネルが固定されて移動させられる転がり構造など、人の介入を伴うデバイスといった、他の能動的デバイス8が考えられ得る。
【0164】
任意のこのような能動的デバイス8が、例えば制御線80を介して制御されてもよい。
【0165】
能動的デバイス8によって、作業員が、受動的な取り外しの閾値温度基準に到達する前であってもパネル60を取り外すことができる。例えば、原子炉の炉心のレベルにおいて気付かれた崩壊熱除去モードへと移る場合、操作者は、外壁500が閾値温度に到達する前であっても、予防的な対策としてパネル60を取り外そうとすることができる。これは、周囲空気との熱交換の効果のための時間を節約すること、延いては、温度の上昇を制限することを可能にする。操作者が能動的デバイスによる取り外しのこの可能性を利用しない場合であっても、閾値温度基準に到達したときには受動的な取り外しが自動的に行われる。
【0166】
フィン501を伴う構成では、フィン501および熱絶縁パネル60の設計の作用として、フィンのうちの少なくとも一部が、熱絶縁パネル60が受動的な手法または能動的な手法のいずれかで取り外されても、熱絶縁パネル60のうちの少なくとも1つにおいて保持されてしまう可能性がある。このフィン(これらのフィン)は、パネルの落下を妨げる位置に保持される可能性がある。
【0167】
この危険性を排除するために、発明者は、フィンの存在に関わらず、例えば永久磁石の減磁といった受動的または能動的なトリガが起こるときに何が起ころうとも、熱絶縁パネルを重力によって落下させる幾何学的構成を考えた。パネルの幾何学的構成は、パネルを底から傾かせることができるパネルの回転移動を可能にしなければならない。取り外しの前および最中のこの構成の例が図14Aに示されており、熱絶縁パネル60はその下方部において先細りの形600を有し、これは、貯留器50の壁500から取り外されるとき、熱絶縁パネル60を上部から傾かせることができる。
【0168】
図14Bは、パネル60内に作られ、前記パネル60によって覆われるようにフィン501がそれぞれに挿入できる溝601を示している。
【0169】
本発明は、記載されている例に限定されず、図示されていない変形において見出される図示された例の特徴は、特に、互いと組み合わせることができる。
【0170】
他の変形および実施形態が、本発明の範囲から逸脱することなく考えられ得る。
【0171】
ループ式原子炉を参照して記載された崩壊熱除去システムは、電気または熱を発生させるための統合式の原子炉で用いられ得る。
【0172】
1つの統合された原子炉の設計では、パイプの層40は、同種の手法で一次格納容器10のすべてを包囲する。
【0173】
あるループ式の原子炉では、一次回路の傍らに位置付けられるパイプ400は、関わるU字形パイプ400に関して起こり得るホットスポットを防止するために、分枝のレベルにおいて小型集熱器において結合することができる。
【0174】
図示されている例では、フィン501は真っ直ぐであり、円筒形の貯蔵貯留器50に対して径方向に延びている。特に波状の板、金属編み組などといった、任意の他のタイプのフィンがあり得る。
【0175】
本発明は、熱発生式の原子炉において全体として用いられてもよい。
(参考文献)[1]: HOURCADE E. et al., “ASTRID Nuclear Island design: update in French-Japanese joint team development of decay heat removal system”, 2018, ICAPP.
【符号の説明】
【0176】
1 SFR型ナトリウム冷却原子炉
2 排出システム
3 支持および格納システム
4 閉回路
5 冷却源
6 熱絶縁層
7 受動的デバイス、永久磁石
8 能動的デバイス
10 一次格納容器
11 炉心
12 第1の圧力溶接された構造、ダイアッグリッド
13 第2の溶接された構造、ストロングバック
14 炉心カバープラグ
15 中間交換器
16 格納容器
17 閉鎖スラブ
18 炉心カバープラグ
30 格納容器シンク
31 熱絶縁材料の層
32 ライナ式の被覆
40 層
41 第1の集熱器、低温集熱器
42 第2の集熱器、高温集熱器
43 単管交換器、巻回
45、45.1、45.2 連結ループ
50、50.1、50.2 熱貯蔵貯留器
51 相変化材料
60 熱絶縁パネル、隔離パネル
80 制御線
110 燃料組立体
111 側方中性子保護組立体
150 ポンプ手段
151 出口パイプ
160 高温領域、高温集熱器
161 一次ナトリウム領域、低温領域、低温集熱器
400 U字形パイプ
401 低温分枝
402 高温分枝
430 管
431 一端、高温端
432 他端、低温端
433 熱絶縁層
451 低温分枝
452 高温分枝
500 外壁
501 フィン
600 先細りの形
601 溝
E 容器間空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B