(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】オープンイヤー指向性音響デバイスのアクティブノイズ低減
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20240301BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240301BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20240301BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G10K11/178 110
H04R3/00 320
H04R1/40 320
H04R1/10 101A
(21)【出願番号】P 2022507490
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 US2020045007
(87)【国際公開番号】W WO2021026234
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-03-03
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンキタ・ディー・ジャイン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・シー・シュトルジック
(72)【発明者】
【氏名】デール・マケルホーン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エム・ゴーガー・ジュニア
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-039632(JP,A)
【文献】特表2017-521902(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059955(WO,A1)
【文献】特表2013-509807(JP,A)
【文献】特開2012-178748(JP,A)
【文献】特開2012-247738(JP,A)
【文献】特開2012-249097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 3/00- 3/14
H04R 1/40
H04R 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響デバイスであって、
ヘッド装着状態で、前記音響デバイスのユーザーの外耳道が妨げられていないオープンイヤー構成にあるように配置された少なくとも1つの音響トランスデューサと、
第1の方向とは異なる少なくとも第2の方向と比較して、前記第1の方向から優先的にオーディオを捕捉する
、2つ以上の第1のマイクロフォン
及び2つ以上の第2のマイクロフォンを含むアレイであって、
前記2つ以上の第2のマイクロフォンは、前記第2の方向からのオーディオを捕捉し、前記アレイを使用して捕捉された前記オーディオが、前記少なくとも1つの音響トランスデューサを通して処理及び再生される、アレイと、
1つ以上の処理デバイスを備えるアクティブノイズ低減(ANR)エンジンであって、前記少なくとも1つの音響トランスデューサのためのドライバ信号を生成するように構成され、前記ドライバ信号が、少なくとも前記第2の方向から捕捉されたオーディオの影響を低減する位相を有する、ANRエンジンと、
を備え、
前記ANRエンジンは、フィードバック経路及びフィードフォワード経路を含み、
前記2つ以上の第1のマイクロフォンは、前記フィードバック経路のオーディオを捕捉するように使用され、
前記2つ以上の第2のマイクロフォンは、前記フィードフォワード経路のオーディオを捕捉するように使用され、
前記第2のマイクロフォンは、(i)前記音響トランスデューサと
前記第2のマイクロフォンとの間の結合量、及び(ii)前記音響トランスデューサと前記外耳道の位置との間の結合量、の比率に基づいて
、前記比率が0dBより小さいときに対応する位置に配置される、音響デバイス。
【請求項2】
前記ANRエンジンが、300~1500Hz周波数帯域で前記第2の方向から捕捉された前記オーディオの前記影響を低減するように構成されている、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項3】
前記ANRエンジンが、(i)前記第1の方向から捕捉された、前記300~1500Hz周波数帯域におけるオーディオ信号と、(ii)少なくとも前記第2の方向から捕捉された、前記300~1500Hz周波数帯域におけるオーディオ信号と、の電力比を、少なくとも5dB増加させるように構成されている、請求項2に記載の音響デバイス。
【請求項4】
前記アレイを使用して捕捉された前記オーディオを処理するように構成された増幅器回路を更に備える、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの音響トランスデューサ及び2つ以上の第1のマイクロフォンの前記アレイが、眼鏡フレームのテンプルに沿って配置されている、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項6】
前記第1の方向が、前記音響デバイスの前記ユーザーの推定された視線方向である、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項7】
前記アレイを使用して捕捉された前記オーディオが、ビーム形成プロセスを使用して処理されて、前記第1の方向からオーディオを捕捉する、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの音響トランスデューサ及び2つ以上の第1のマイクロフォンの前記アレイが、オープンイヤーヘッドフォン内に配置されている、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの音響トランスデューサが、音響トランスデューサのアレイの一部である、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項10】
前記ヘッド装着状態で、前記少なくとも1つの音響トランスデューサから
前記第1のマイクロフォンへの音圧応答の大きさ及び位相が、前記少なくとも1つの音響トランスデューサから外耳道の場所への音圧応答と実質的に同様である、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項11】
前記ヘッド装着状態で、前記少なくとも1つの音響トランスデューサの放射線パターンのメインローブが、前記ユーザーの前記外耳道に向けられ、(i)前記ユーザーの前記外耳道に向かって放射される前記少なくとも1つの音響トランスデューサの出力の一部と、(ii)前記アレイのマイクロフォンに向かって放射される前記少なくとも1つの音響トランスデューサの出力の一部と、の電力比が少なくとも10dBである、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項12】
前記ANRエンジンが、アナログデジタル変換器と、増幅器と、補償器と、デジタルアナログ変換器と、を備える、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項13】
ウェアラブルオーディオ眼鏡のセットであって、
フレームであって、
一対のレンズ容器を含む前面領域と、前記レンズ容器の間に配置されたブリッジと、
前記フレームの前記前面領域から延在する一対のアームと、を備える、フレームと、
前記一対のアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの音響トランスデューサであって、前記音響トランスデューサが、前記オーディオ眼鏡のヘッド装着状態でユーザーの耳にオーディオ出力を向けるように構成されている、少なくとも1つの音響トランスデューサと、
第1の方向とは異なる少なくとも第2の方向と比較して、第1の方向からオーディオを優先的に捕捉する
、2つ以上の第1のマイクロフォン
及び2つ以上の第2のマイクロフォンを含むアレイ
であって、前記2つ以上の第2のマイクロフォンは、前記第2の方向からのオーディオを捕捉する、アレイと、
電子機器モジュールであって、
前記アレイを使用して捕捉された前記オーディオを受信し、前記オーディオに基づいて前記少なくとも1つの音響トランスデューサのための第1のドライバ信号を生成する増幅器回路と、
1つ以上の処理デバイスを備えるアクティブノイズ低減(ANR)エンジンであって、前記ANRエンジンが、前記少なくとも1つの音響トランスデューサのための第2のドライバ信号を生成し、前記第2のドライバ信号が、少なくとも前記第2の方向から捕捉されたオーディオの影響を低減する位相を有する、アクティブノイズ低減(ANR)エンジンと、
を備え
る、
電子機器モジュールと、を備え、
前記ANRエンジンは、フィードバック経路及びフィードフォワード経路を含み、
前記2つ以上の第1のマイクロフォンは、前記フィードバック経路のオーディオを捕捉するように使用され、
前記2つ以上の第2のマイクロフォンは、前記フィードフォワード経路のオーディオを捕捉するように使用され、 前記第2のマイクロフォンは、(i)前記音響トランスデューサと
前記第2のマイクロフォンとの間の結合量、及び(ii)前記音響トランスデューサと外耳道の位置との間の結合量、の比率に基づいて
、前記比率が0dBより小さいときに対応する位置に配置される、
ウェアラブルオーディオ眼鏡のセット。
【請求項14】
前記ANRエンジンが、300~1500Hz周波数帯域で前記第2の方向から捕捉された前記オーディオの前記影響を低減する、請求項
13に記載のウェアラブルオーディオ眼鏡のセット。
【請求項15】
前記ANRエンジンが、(i)前記第1の方向から捕捉された、前記300~1500Hz周波数帯域におけるオーディオ信号と、(ii)少なくとも前記第2の方向から捕捉された、前記300~1500Hz周波数帯域におけるオーディオ信号と、の電力比を、少なくとも5dB増加させるように構成されている、請求項
14に記載のウェアラブルオーディオ眼鏡のセット。
【請求項16】
前記ヘッド装着状態で、前記少なくとも1つの音響トランスデューサの放射線パターンのメインローブが、前記ユーザーの外耳道に向けられ、(i)前記ユーザーの前記外耳道に向かって放射される前記少なくとも1つの音響トランスデューサの出力の一部と、(ii)前記アレイのマイクロフォンに向かって放射される前記少なくとも1つの音響トランスデューサの出力の一部と、の電力比が少なくとも10dBである、請求項
13に記載のウェアラブルオーディオ眼鏡のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ウェアラブルオープンイヤー音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
オフイヤーヘッドフォンなどのウェアラブルオーディオデバイスは、ユーザーの外耳道の入り口から離間した電気音響トランスデューサを使用して音を生成する。これらのウェアラブルオーディオデバイスは、様々なフォームファクタをとり得る。いくつかの事例では、これらのウェアラブルオーディオデバイスは、ユーザーの耳及び鼻の上に置かれるように構成されたオーディオ眼鏡を含む。オーディオ眼鏡は、例えば眼鏡のアーム上に位置する、ユーザーの耳の一方又は両方に近接するトランスデューサを含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本文書は、ヘッド装着状態で、音響デバイスのユーザーの外耳道が妨げられていないオープンイヤー構成にあるように配置された少なくとも1つの音響トランスデューサを含む音響デバイスを特徴とする。音響デバイスはまた、第1の方向とは異なる少なくとも第2の方向と比較して、第1の方向から優先的にオーディオを捕捉する2つ以上の第1のマイクロフォンのアレイであって、アレイを使用して捕捉されたオーディオが、少なくとも1つの音響トランスデューサを通して処理及び再生される、アレイと、1つ以上の処理デバイスを含むアクティブノイズ低減(active noise reduction、ANR)エンジンと、を含む。ANRエンジンは、少なくとも1つの音響トランスデューサのためのドライバ信号を生成するように構成され、ドライバ信号は、少なくとも第2の方向から捕捉されたオーディオの影響を低減する位相を有する。
【0004】
別の態様では、本文書は、フレーム、少なくとも1つの音響トランスデューサ、2つ以上の第1のマイクロフォンのアレイ、及び電子機器モジュールを含むウェアラブルオーディオ眼鏡のセットを特徴とする。フレームは、一対のレンズ容器を含む前面領域と、レンズ容器の間に配置されたブリッジと、を含む。フレームはまた、フレームの前面領域から延在する一対のアームを含む。少なくとも1つの音響トランスデューサは、オーディオ眼鏡のヘッド装着状態でユーザーの耳に音声出力を向けるように構成されている。2つ以上の第1のマイクロフォンのアレイは、第1の方向とは異なる少なくとも第2の方向と比較して、第1の方向からオーディオを優先的に捕捉する。電子機器モジュールは、アレイを使用して捕捉されたオーディオを受信し、オーディオに基づいて少なくとも1つの音響トランスデューサのための第1のドライバ信号を生成する増幅器回路を含む。電子機器モジュールはまた、1つ以上の処理デバイスを備えるアクティブノイズ低減(ANR)エンジンを含み、ANRエンジンは、少なくとも1つの音響トランスデューサのための第2のドライバ信号を生成し、第2のドライバ信号は、少なくとも第2の方向から捕捉されたオーディオの影響を低減する位相を有する。
【0005】
上記の態様の実装は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。ANRエンジンは、300~1500Hz周波数帯域で第2の方向から捕捉されたオーディオの影響を低減するように構成することができる。ANRエンジンは、(i)第1の方向から捕捉された、300~1500Hz周波数帯域におけるオーディオ信号と、(ii)少なくとも第2の方向から捕捉された、300~1500Hz周波数帯域におけるオーディオ信号と、の電力比を、少なくとも5dB増加させるように構成され得る。音響デバイスは、第2の方向からオーディオを捕捉するための少なくとも第2のマイクロフォンを含むことができる。ヘッド装着状態で、第2のマイクロフォンは、ユーザーの耳介の背後に位置することができる。音響デバイスは、アレイを使用して捕捉されたオーディオを処理するように構成された増幅器回路を含むことができる。少なくとも1つの音響トランスデューサ及び2つ以上の第1のマイクロフォンのアレイは、眼鏡フレームのテンプルに沿って配置することができる。第1の方向は、音響デバイスのユーザーの推定された視線方向とすることができる。アレイを使用して捕捉されたオーディオは、ビーム形成プロセスを使用して処理されて、第1の方向からオーディオを捕捉することができる。少なくとも1つの音響トランスデューサ及び2つ以上の第1のマイクロフォンのアレイは、オープンイヤーヘッドフォン内に配置することができる。少なくとも1つの音響トランスデューサは、音響トランスデューサのアレイの一部とすることができる。ヘッド装着状態で、少なくとも1つの音響トランスデューサからマイクロフォンへの音圧応答の大きさ及び位相は、少なくとも1つの音響トランスデューサから外耳道の場所への音圧応答と実質的に同様であり得る。ヘッド装着状態で、少なくとも1つの音響トランスデューサの放射線パターンのメインローブは、ユーザーの外耳道に向けられ得、(i)ユーザーの外耳道に向かって放射される少なくとも1つの音響トランスデューサの出力の一部と、(ii)アレイのマイクロフォンに向かって放射される少なくとも1つの音響トランスデューサの出力の一部と、の電力比は、少なくとも10dBとすることができる。ANRエンジンは、アナログデジタル変換器と、増幅器と、補償器と、デジタルアナログ変換器とを含むことができる。
【0006】
本明細書に記載される様々な実装は、以下の利点のうちの1つ以上を提供し得る。オープンイヤーデバイス内に配置されたマイクロフォンのアレイは、例えば、特定の方向(例えば、ユーザーの外観/視線方向)から来るオーディオを増幅するための指向性捕捉を容易にすることができる。1つ以上の音響トランスデューサは、マイクロフォンに大きな結合することなく、ユーザーの耳へのオーディオの送達を容易にすることができる。場合によっては、マイクロフォンのうちの1つ以上は、そのようなマイクロフォンによって検出された信号がエコーキャンセラの参照として使用され得るように、耳に実質的に近い位置に配置され得る。そのようなエコーキャンセラの使用は、ユーザーの耳に送達されるオーディオの質を潜在的に改善し、それによってユーザー体験を改善することができる。
【0007】
場合によっては、オープンイヤーデバイスはまた、特定の方向(例えば、ユーザーの外観/視線方向)から信号対雑音比(signal to noise ratio、SNR)を少なくとも5dB改善するように構成され得るフィードフォワード及び/又はフィードバックアクティブノイズ低減(ANR)信号経路を含むことができる。スペクトルの特定の部分(例えば、発話帯域の一部)に対するそのような改善は、いくつかのユーザーにとって発話明瞭度を潜在的に改善することができる。ノイズ低減(場合によっては、指向性捕捉/増幅と組み合わせて)は、補聴器としてだけでなく、一般に聴力損失を有さないユーザーに対する発話明瞭度を改善する聴覚補助デバイスとしても、オープンイヤーデバイスを使用する可能性を改善することができる。
【0008】
一般に、本明細書に記載の技術は、オーディオ眼鏡又はヘッドマウント音響デバイスなどのオープンイヤーオーディオデバイスの音響性能を潜在的に改善することができる。場合によっては、指向性捕捉、SNR、及び/又はマイクロフォンと音響トランスデューサとの間の結合の低減の改善は、補聴器などのオープンイヤーデバイスの使用を容易にすることができる。そのようなオープンイヤーフォームファクタは、一部のユーザー、特に他の方法で補聴器を使用することを躊躇しているユーザーにとって、(例えば、社会的使用の観点から)補聴器をより許容できるようにすることができる。
【0009】
本概要の項に記載される特徴を含む、本開示に記載される特徴のうちの2つ以上を組み合わせて、特に本明細書に記載されない実装を形成することができる。1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において述べられる。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに「特許請求の範囲」から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】オープンイヤー音響デバイスの一例としての一対のオーディオ眼鏡の概略図を示す。
【
図1B】
図1Aのオーディオ眼鏡に含まれる電子機器モジュールの概略図である。
【
図2】ANRデバイス内の複数の信号経路のブロック図である。
【
図3】
図1Aに示す一対のオーディオ眼鏡のアームの表面上の音響分布を示すヒートマップ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本文書は、オープンイヤー音響デバイス内のオーディオ信号の捕捉を容易にし、マイクロフォンと音響トランスデューサとの間の結合が有意ではなく、音響トランスデューサの出力がユーザーの近くの他の人々に到達しないように十分に低いように、捕捉された(及び増幅された)オーディオをユーザーの耳に送達するための技術を記載する。更に、本文書はまた、1つ以上の目標方向の外側の方向から来るオーディオの影響を低減することを可能にするフィードフォワード及びフィードバックノイズ低減プロセスについて説明する。このようなノイズ低減は、特に発話帯域の部分において、信号対雑音比(SNR)の改善の少なくとも5dBをもたらす可能性があり、これにより、聴力損失を有さないユーザーにとって、発話知覚/明瞭度を改善することができる。マイクロフォンアレイを使用してオーディオの指向性捕捉と組み合わされると、本明細書に記載の技術は、ユーザーがオーディオを強調するための目標方向を選択することを可能にすることができる。例えば、目標方向は、ユーザーが見ている方向とすることができ、本明細書では、ユーザーの外観方向又は視線方向と称される。
【0012】
図1Aは、オープンイヤー音響装置の一例としての一対又はセットのウェアラブルオーディオ眼鏡10の概略図を示す。図示のように、オーディオ眼鏡10は、前面領域30を有するフレーム20と、前面領域30から延びる一対のアーム(テンプルとも称される)40a及び40b(一般に40)とを含むことができる。従来の眼鏡と同様に、レンズ領域30及びアーム40は、ユーザーの頭部に置かれるように設計されている。前面領域30は、対応するレンズ容器に取り付けられたレンズ50のセットを含むことができる。2つのレンズ容器は、オーディオ眼鏡のヘッド装着状態でユーザーの鼻に静止するためのブリッジ60(パディングを含み得る)によって接続されている。レンズは、処方、非処方、及び/又は光フィルタリングレンズを含み得る。アーム40は、ユーザーのそれぞれの耳に載せるための輪郭65を含み得る。
【0013】
フレーム20は、特定の実装による、電子機器モジュール70及びオーディオ眼鏡10を制御するための他の構成要素を含む。いくつかの事例では、電子機器モジュール70の別個のセット又は重複セットがフレームの一部、例えば、フレーム20内の対応するアーム40の各々に収容される。しかしながら、本明細書に記載されるある特定の構成要素は、単一の形態で存在し得る。また、電子機器モジュール70は、フレーム20のアーム40内に配置されているが、いくつかの実装では、電子モジュール70の少なくとも一部は、フレーム内の他の場所(例えば、ブリッジ60などの前面領域30の一部)に配置され得る。
【0014】
図1Bは、
図1Aのオーディオ眼鏡に含まれる電子機器モジュール70の概略図である。いくつかの実装では、電子機器モジュール70内の構成要素は、ハードウェア及び/又はソフトウェアとして実装され得、そのような構成要素は、有線及び/又は無線接続によって互いに接続され得る。いくつかの実装では、オーディオ眼鏡10又は他のシステム内の他の構成要素に接続又は結合された構成要素は、優先接続を介して、及び/又は通信プロトコルを使用して通信し得る。いくつかの実装では、電子機器モジュール70は、トランシーバ72と、別の電子機器モジュール及び/又は携帯電話、タブレット、又はスマートウォッチなどの他の無線対応デバイスとの無線通信を容易にするアンテナ74を含む。いくつかの事例では、互いに通信する際に電子機器モジュール70によって使用される通信プロトコルは、例えば、無線ローカルエリアネットワーク(local area network、LAN)を使用するWi-Fiプロトコル、IEEE 802.11b/gなどの通信プロトコル、セルラーネットワークベースのプロトコル(例えば、第3世代、第4世代、又は第5世代(3G、4G、5Gのセルラーネットワーク))、又はBluetooth、BLE Bluetooth、ZigBee(メッシュLAN)、Z波(サブGHzメッシュネットワーク)、6LoWPAN(軽量IPプロトコル)、LTEプロトコル、RFID、超音波オーディオプロトコルなどの、複数のモノのインターネット(internet-of-things、IoT)プロトコルのうちの1つを含み得る。
【0015】
いくつかの実装では、電子機器モジュール70は、対応するデバイスのヘッド装着状態において、1つ以上の電気音響トランスデューサ80がオープンイヤー構成にあるように配置された1つ以上の電気音響トランスデューサ80を含む。これは、音響トランスデューサ(及び/又は対応するデバイスの他の部分)が環境から外耳道を完全に閉塞しないように、ユーザーの外耳道と対応する音響トランスデューサとの間に物理的分離が存在する構成を指す。例えば、
図1に戻って参照すると、音響トランスデューサ80は、トランスデューサ80がユーザーの外耳道を覆わないように、オーディオ眼鏡10のアーム40上に配置することができる。いくつかの実装では、少なくとも2つの電気音響トランスデューサ80が、ユーザーの耳(例えば、各々の耳に近接する1つのトランスデューサ80に近接して(ただし、物理的に分離されて)位置付けられる。いくつかの実装では、1つ以上のトランスデューサ80は、それら(又は耳とインターフェースするためのそれぞれのハウジング又は構造)が、環境から外耳道を閉塞しない一方で、ユーザーの耳の少なくとも一部に物理的に接触するように、アーム40から延在するように配置され得る。しかしながら、
図1Aのオーディオ眼鏡10が頭部装着型オープンイヤー音響デバイスの例として示されているが、他のタイプのオープンイヤーデバイスも本開示の範囲内にあることに留意されたい。例えば、本明細書に記載される技術は、オープンイヤーヘッドフォン又は他のヘッド装着音響デバイスで使用することができ、その例は、米国特許第9,794,676号、及び同第9,794,677号に示され、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
いくつかの実装では、各トランスデューサ80は、その前側から前側音響放射を放出し、その後側から後側音響放射を放出する音響ドライバ又はラジエータを有する双極子ラウドスピーカとして使用することができる。双極子ラウドスピーカは、オーディオ眼鏡10のフレーム20内に組み込まれ得る。いくつかの実装では、眼鏡10のハウジング内(例えば、アーム40内)に画定された音響チャネルは、前側音響放射を方向付けることができ、別の音響チャネルは、後側音響放射を方向付けることができる。ハウジング内の複数の音響電動通気孔(開口部)は、音がハウジングから出ることを可能にする。眼鏡フレーム20内の開口部は、音がフレーム20からも出るように、これらの通気孔と位置合わせされ得る。いくつかの実装では、音響伝導開口部間の距離は、ラウドスピーカの音響双極子の有効長を画定する。有効長は、任意の特定の周波数で放出される放射に最も寄与する2つの開口部間の距離であると考えることができる。ハウジング及びその開口部は、有効双極子長が周波数依存性であるように構築及び配置され得る。ある特定の事例では、トランスデューサ80(例えば、ラウドスピーカ双極子トランスデューサ)は、この特徴を有さないオフイヤーヘッドフォンと比較して、(i)耳に送達される音圧と(ii)漏出する音とのより高い比を達成することができる。例示的な双極子トランスデューサは、2018年10月4日に出願された米国特許出願第16/151,541号、及び2019年5月9日に出願された同第16/408,179に示され、記載されている。
【0017】
電子モジュール70はまた、1つ以上のマイクロフォンのアレイ75を含むことができる。いくつかの実装では、アレイ75内のマイクロフォンを使用して、特定の方向から優先的にオーディオを捕捉することができる。例えば、アレイ75内のマイクロフォンの各々は、特定の方向からオーディオを捕捉する本質的に指向性であり得る。他の例では、アレイによって捕捉された音声は、(例えば、スマートアンテナ又はビーム形成プロセスを使用して)処理されて、特定の方向から捕捉された音声を強調することができる。いくつかの実装では、マイクロフォンアレイ75は、(例えば、第1の方向とは異なる少なくとも第2の方向と比較して)第1の方向から優先的に周囲オーディオを捕捉する。例えば、マイクロフォンアレイ75は、2つのアーム40に平行な方向に沿ってフレーム20の前面から優先的にオーディオを捕捉/強調するように構成することができる。場合によっては、これにより、オーディオ眼鏡10のユーザーの視線方向と一致する方向からオーディオを優先的に捕捉することが可能になる。捕捉されたオーディオが1つ以上の音響トランスデューサ80を通って再生される実装では(場合によっては、いくつかの増幅を有する)、これにより、ユーザーは、例えば、他の方向からの音と比較して、その方向からの音をよりよく聞くように視線の方向を変更することができる。いくつかの実装では、そのような増幅を容易にするために、電子モジュール70は、アレイ75のマイクロフォンを使用して捕捉されたオーディオを表す信号を処理し、1つ以上の音響トランスデューサ80のためのドライバ信号を生成する増幅器回路86を含む。場合によっては、これは、ノイズ環境におけるユーザーの発話の知覚を改善することができる。例えば、特定の方向からの電力と他の方向からの電力の比率における5~10dBの改善でさえ、特に改善がオーディオスペクトルの発話帯域内(例えば、300~1500Hz周波数帯域内)にあるとき、発話の知覚を改善することができる。
【0018】
複数のマイクロフォンは、様々な方法で対応するデバイス内に配置することができる。
図1Aの例示的なデバイスの場合(オーディオ眼鏡10)、アレイ75の1つ以上のマイクロフォンは、眼鏡フレーム20のアーム又はテンプル40に沿って配置され得る。いくつかの実装では、アレイ75の少なくとも1つのマイクロフォンは、フレーム20の前面領域30に(例えば、ブリッジ60上に)配置され得る。いくつかの実装では、アレイ75のマイクロフォンは、(例えば、発話コマンド、電話会話などのために)ユーザーの声を捕捉する目的で配置された任意のマイクロフォンとは別個であり得る。いくつかの実装では、アレイ75の1つ以上のマイクロフォンを使用して、ユーザーの声を捕捉することもできる。
【0019】
いくつかの実装では、アレイ75内のマイクロフォンの位置及び1つ以上の音響トランスデューサ80の位置は、オープンイヤー音響デバイス内の指向性オーディオ送達及び捕捉を提供する音響パッケージを実装するために一緒に決定され得る。例えば、トランスデューサ80及びアレイ75内のマイクロフォンの位置は、目標又は閾値量にわたってマイクロフォンにオーディオを向けることなく、トランスデューサ80がユーザーの耳に向かってオーディオを十分に送達するように決定することができる。例えば、1つ以上の音響トランスデューサ80及びアレイ75の複数のマイクロフォンは、頭部装着音響デバイス(例えば、オーディオ眼鏡10)上に配置することができ、そのため、ヘッド装着状態で、指向性音響トランスデューサの放射線パターンのメインローブが、ユーザーの外耳道に向けられ、(i)ユーザーの外耳道に向かって放射される1つ以上の音響トランスデューサの出力の一部と、(ii)アレイ75のマイクロフォンに向かって放射される少なくとも1つの音響トランスデューサの出力の一部と、の電力比が閾値条件を満たす。例えば、閾値条件は、上記で参照された電力比が少なくとも10dBであることを決定することができる。いくつかの実装では、トランスデューサ80及びアレイ75のマイクロフォンの位置は、トランスデューサ、及び/又はマイクロフォン、及び/又は対応するアレイの指向性を考慮して決定され得る。
【0020】
いくつかの実装では、アレイ75のマイクロフォンの位置が最初に決定され、次いで、音響トランスデューサ80の位置が、上で考察された目標性能を達成するために決定される。例えば、マイクロフォンアレイ75に関連付けられた位置が決定されると、1つ以上の音響トランスデューサ80の位置は、目標又は閾値量にわたってマイクロフォンにオーディオを向けることなく、トランスデューサ80が、アレイ75のマイクロフォンに向かってオーディオを標的又は閾値量にわたって方向付けることなく、ユーザーの耳に向かってオーディオを十分に送達するように決定される。双極子トランスデューサが使用される場合、マイクロフォンは、双極子トランスデューサの放射線パターン内の音響ヌル内又はその近くに位置し得る。場合によっては、マイクロフォンは、トランスデューサの第1の放射面から放射される音響エネルギーが、トランスデューサの第2の放射面から放射される音響エネルギーと破壊的に干渉する領域に位置付けられる。
【0021】
いくつかの実装では、電子モジュール70は、電子モジュール70の様々な部分を調整し、制御するコントローラ82を含む。コントローラ82は、1つ以上の非一時的な機械可読記憶デバイスと通信して、電子モジュール70の様々な動作を実行する1つ以上の処理デバイスを含むことができる。いくつかの実装では、コントローラ82は、「ノイズ」と見なされるオーディオ信号の効果を低減するためのドライバ信号を生成するアクティブノイズ低減(ANR)エンジン84を実装する。例えば、特定の使用事例のシナリオでは、特定の方向(例えば、ユーザーの視線方向)から捕捉されたオーディオは、関心のある信号であると見なすことができ、他の方向から捕捉されたオーディオは、ノイズと見なすことができる。ANRエンジン84は、ノイズ信号の位相に対して実質的に反転された位相を有する1つ以上のドライバ信号を生成するように構成することができ、これにより、ANRエンジン84によって生成されたドライバ信号は、(重ね合わせの原理に基づいて)ノイズ信号に破壊的に干渉し、ノイズの影響が低減する。
【0022】
いくつかの実装では、ANRエンジン84は、対応する参照信号を捕捉するためにマイクロフォンの使用を必要とするフィードバック経路及びフィードフォワード経路(一般にANR経路、ANR信号経路と称される)などの複数のノイズ低減経路を含むことができる。いくつかの実装では、アレイ75の1つ以上のマイクロフォンを、ANR信号経路のマイクロフォンとして使用することができ、そのような場合、対応するマイクロフォンの配置は、フィードフォワード経路又はフィードバック経路の参照オーディオを捕捉するためにマイクロフォンが使用されるかどうかによって管理され得る。しかしながら、そのような配置の理解を容易にするために、ANRエンジン84の説明が最初に提供される。
【0023】
エコーキャンセル、フィードバックノイズキャンセル、フィードフォワードノイズキャンセルなどの機能を可能にするために、様々な信号伝達トポロジをANRデバイスに実装することができる。例えば、
図2のANRエンジン84の例示的なブロック図に示されるように、信号伝達トポロジは、出力トランスデューサ80を駆動して、(例えば、フィードフォワード補償器212を使用して)騒音防止信号を生成して、フィードフォワードマイクロフォン202によって拾われる騒音信号の効果を低減する、フィードフォワードノイズ低減経路210を含むことができる。別の実施例では、信号伝達トポロジは、フィードバックノイズ低減経路214を含むことができ、フィードバックノイズ低減経路214は、出力トランスデューサ80を駆動して、(例えば、フィードバック補償器216を使用して)騒音防止信号を生成して、フィードバックマイクロフォン204によって拾われる騒音信号の効果を低減することができる。信号伝達トポロジはまた、ANRエンジン84のノイズ低減性能を更に改善するための回路(例えば、エコーキャンセラ220)を含む追加の信号処理経路218を含むことができる。いくつかの実装では、ANRエンジン84は、様々な信号伝達トポロジ及びフィルタ構成を実装するために使用することができる構成可能なデジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)を含むことができる。そのようなDSPの例は、米国特許第8,073,150号及び同第8,073,151号に記載されており、それらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ANRエンジン84はまた、アナログデジタル変換器(マイクロフォンによって捕捉されたアナログ信号を処理デバイスによって処理可能なデジタル信号に変換するための)、及びデジタルアナログ変換器(処理デバイスの出力をトランスデューサ80によって再生可能な信号に変換するための)など1つ以上の追加の構成要素を含むこともできる。
【0024】
いくつかの実装では、フィードフォワードマイクロフォン202及び/又はフィードバックマイクロフォン204は、マイクロフォンアレイ75に含まれ得る。そのような場合、フィードフォワードマイクロフォン202及び/又はフィードバックマイクロフォン204の場所は、1つ以上のトランスデューサ80の場所を決定する前に最初に決定され得る。例えば、フィードバックマイクロフォン204は、デバイスのヘッド装着状態において、フィードバックマイクロフォン204がユーザーの耳の近くに位置するような位置で、デバイス上に配置することができる。これにより、ユーザーが実際に聞いているものと、マイクロフォンが捕捉したものとの間に高いコヒーレンス度が生じ得る。
図1Aに戻って参照すると、位置42は、フィードバックマイクロフォン204の可能な位置を表す。次いで、音響トランスデューサ80(例えば、双極子)を、フィードバックマイクロフォンが双極子のヌルに位置するように配置することができる。これは、いくつかの用途、例えば、オーディオ眼鏡10が補聴器として使用されているときに特に有利であり得る。いくつかの実装では、フィードバックマイクロフォンは、トランスデューサ80とマイクロフォンとの間の音響経路の伝達関数が、トランスデューサと外耳道との間の音響経路の伝達関数と大きさ及び位相で類似している位置にあり得る。したがって、このマイクロフォンの位置は、トランスデューサと環境の両方からの音のための外耳道の近似プロキシとして機能するため、フィードバックマイクロフォンで音を制御するためにANRエンジンを構成することにより、外耳道で同様に制御された音が得られる。一対のオーディオ眼鏡10の場合、フィードフォワードマイクロフォン202は、例えば、マイクロフォンがデバイスの頭部装着状態でユーザーの耳介の後ろに位置するような位置に配置することができる。
図1Aに戻って参照すると、アーム40の端部の位置44は、フィードフォワードマイクロフォンの可能な位置を表す。いくつかの実装態様では、フィードフォワードマイクロフォン202のそのような耳介の後ろの位置は、デバイスのヘッド装着(head-word)状態においてユーザーの後ろから来る音の効果的なフィードフォワードキャンセルを可能にし、次いで、正面方向から来る音の知覚を改善する(例えば、ユーザーの視線方向と一致し得る)。
【0025】
いくつかの実装では、オープンイヤーデバイスの性能は、フィードバックマイクロフォン204などのマイクロフォンによって選択されるように、トランスデューサ80の任意の出力の影響を低減するエコーキャンセラ(又はエコーキャンセル回路)を実装することによって更に改善され得る。例えば、参照マイクロフォン208は、フィードバックマイクロフォン204によって拾い上げられるか又は捕捉される信号の異なるバージョンを拾い上げるために使用することができる。信号の2つのバージョンに基づいて、エコーキャンセル回路(K
echo)220は、追加の信号を生成することができ、これは、フィードバック補償器216の出力と組み合わせたときに、トランスデューサ80とマイクロフォンとの間の結合の効果を更に低減する。
図2の実施例に示されるエコーキャンセル回路は、フィードバック信号経路に関連するエコーをキャンセルするためのものであるが、フィードバック経路内のエコーキャンセラの有無にかかわらず、同様のエコーキャンセラをフィードバック信号経路に実装することができる。いくつかの実装では、エコーキャンセル回路は、エコーキャンセル(又は補聴器の場合のフィードバックキャンセル)のための参照信号を生成するバイクワッドフィルタを含む。
【0026】
図1Bに戻って参照すると、電子モジュール70はまた、慣性測定ユニット(IMU)90、及び電源100を含むことができる。様々な実装形態では、電源100はトランスデューサ80に接続され、更にIMU90に接続され得る。トランスデューサ80、IMU90、及び電源100の各々は、コントローラ82と接続され、コントローラ82は、本明細書に記載される様々な実装形態に従って制御機能を実行するように構成されている。IMU90は、多軸加速度計、ジャイロスコープ、及び/又は磁力計を組み合わせる微小電気機械システム(microelectromechanical system、MEMS)デバイスを含み得る。追加又は代替センサは、本明細書に記載されるような動きを検出するための、IMU90、例えば、光学系追跡システム、加速度計、磁力計、ジャイロスコープ、又はレーダーの機能を実行し得ることが理解される。IMU90は、位置/配向に基づく制御機能を可能にするために、オーディオ眼鏡10の物理的位置及び/又は配向の変化を検出するように構成され得る。電子機器70はまた、オーディオ眼鏡10に位置する1つ以上の光学的若しくは視覚的検出システム、又はオーディオ眼鏡10の位置/配向を検出するように構成された別の接続デバイスを含み得る。いずれの場合でも、IMU90(及び/又は追加のセンサ)は、オーディオ眼鏡10の位置及び/又は配向に関するセンサデータをコントローラ82に提供し得る。
【0027】
トランスデューサ80への電源100は、局所的に(例えば、フレーム20のつる領域の各々の電池を用いて)提供され得るか、又は単一の電池が、フレーム20を通過するか、ないしは別の方法で一方のつるから他方のつるに転送される配線を介して電力を伝達し得る。電源100は、様々な実装形態によるトランスデューサ80の動作を制御するために使用され得る。
【0028】
コントローラ82は、本明細書に記載されるプロセスに従ってプログラム命令又はコードを実行するための従来のハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素を含み得る。例えば、コントローラ82は、1つ以上の処理デバイス、メモリ、構成要素間の通信経路、及び/又はプログラムコードを実行するための1つ以上の論理エンジンを含んでもよい。コントローラ82は、任意の従来の無線接続及び/又は有線接続を介して電子機器モジュール70内の他の構成要素と連結することができ、それにより、コントローラ82は、それらの構成要素との間で信号を送受信し、それらの動作を制御することが可能になる。
【0029】
図1Aに戻ると(及び引き続き
図1Bを参照すると)、ある特定の実装形態では、オーディオ眼鏡10は、コントローラ82と接続されたインターフェース95を含む。これらの事例では、インターフェース95は、オーディオ選択などの機能に使用され、オーディオ眼鏡に電力を供給するか、又は音声制御機能に従事し得る。ある特定の事例では、インターフェース95は、ボタン又は静電容量式タッチインターフェースを含む。いくつかの追加の実装形態では、インターフェース95は、ユーザーが、ユーザーインターフェースコマンドを開始するために、オーディオ眼鏡10の1つ以上のセクション(例えば、アーム40)を強く押すことを可能にし得る圧縮可能インターフェースを含む。いくつかの実装では、インターフェース95は、ユーザーから発話されたコマンドを捕捉するために使用される1つ以上のマイクロフォンを含むことができる。いくつかの実装では、インターフェース95に関連する1つ以上のマイクロフォンはまた、マイクロフォンアレイ75の一部であり得る。いくつかの実装では、インターフェース95のマイクロフォンは、指向性であってもよく、又はユーザーの口の方向から優先的に音を捕捉する指向性アレイの一部であってもよい。
【0030】
図3は、
図1Aに示す一対のオーディオ眼鏡のアーム40の表面上の音響分布を示すヒートマップ
図300である。そのような音響分布
図300は、基礎をなす1つ以上の音響トランスデューサの放射線パターンを表し、本明細書の技術による1つ以上のマイクロフォンの配置に使用することができる。ヒートマップ図は、周波数の関数として変化することができ、複数の周波数又は周波数範囲の図は、音響トランスデューサ及び/又はマイクロフォンの最適な位置を決定するために考慮される必要があり得る。
図3の例は、それぞれ位置405a及び405bに2つの端部を有する双極子音響トランスデューサ(音響双極子とも称される)から発する1000Hzの音声のヒートマップ図を示す。ヒートマップは、耳の表面圧力に対して正規化された様々な位置での表面圧力の分布を示す。したがって、ヒートマップは、アーム40上の位置の関数として、2つの量、(i)G
od、対応する位置に配置された音響トランスデューサとマイクロフォンとの間の結合量、及び(ii)G
ed、音響トランスデューサと耳の位置との間の結合量、の比率の変動を追跡する。1つ以上のマイクロフォンは、比率が低い位置(dBで表現されるとき、より負である)に配置することができる。したがって、ヒートマップ凡例の底部315に向かう陰影は、マイクロフォンの配置のための良好な位置を表し、ヒートマップ凡例の頂部310に向かう陰影は、マイクロフォンが耳の位置で聞こえるものに近似するオーディオを拾い上げる可能性が高い位置を表す。
図3の例では、領域320は、比率が非常に低い位置を表し(例えば、双極子などの音響トランスデューサの放射線パターンで音響ヌルで予想されるように)、そのような位置を1つ以上のマイクロフォンの配置に好適なものにする。同様に、比率は、位置325(アーム40の後端)で非常に低く、
図2を参照して上述したように、1つ以上のフィードフォワードマイクロフォン202の配置に理想的な位置となる。いくつかの実装では、外耳道での環境音信号とコヒーレントにするために、1つ以上のフィードバックマイクロフォン204を、外耳道の近くに配置することができる。これは、例えば、マッピングされた比率が約0dBであるヒートマップの輪郭に沿って、例えば、最も明るい灰色と白色の輪郭との間の境界で1つ以上のフィードバックマイクロフォンを配置することによって行うことができる。そのような場合、フィードバックマイクロフォンによって拾い上げられたトランスデューサ80から受信したオーディオは、トランスデューサ80から外耳道に到達するオーディオと近似する。
【0031】
フィードバックマイクロフォンとフィードフォワードマイクロフォンとの間で区別が行われていることがあるが、オープンイヤー音響デバイスなどの音響デバイスにおいて、フィードフォワードマイクロフォンは、いくらかの量のトランスデューサ信号を捕捉することができ、したがってフィードバック挙動の可能性を有する。したがって、1つ以上のマイクロフォン及びそれらのそれぞれの位置は、より一般的には、外耳道とコヒーレントな環境音信号又はトランスデューサ音信号のいずれかを捕捉することができると考えることができる。ヒートマップ内の1(又は約0dB)近くの比率に対応するマイクロフォン位置は、ANRシステムの安定性を犠牲にして、外耳道で環境音信号を正確に捕捉するのにより好適であり得、逆もまた同様である。それにもかかわらず、特定のトランスデューサ及びマイクロフォンシステム構成では、ANRエンジンは、一般にフィードバックとフィードフォワード経路を厳密に区別することなく、それらのトレードオフを考慮するように設計することができる。
【0032】
本明細書に記載される機能又はその部分、及びその様々な修正(以下「機能」)は、少なくとも部分的にコンピュータプログラム製品(例えば、1つ以上のデータ処理装置、例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/若しくはプログラム可能論理構成要素、による実行のための、又はその動作を制御するための、1つ以上の非一時的機械可読媒体又は記憶デバイスなどの情報担体において有形に具現化されたコンピュータプログラム)を介して実装され得る。
【0033】
コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語を含む任意の形態のプログラム言語で書くことができ、それは、スタンドアローンプログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン、若しくは他のユニットとして含む任意の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、若しくは1つのサイトにおける複数のコンピュータ上で実行されるように配備されるか、又は複数のサイトにわたって配信されて、ネットワークによって相互接続され得る。
【0034】
機能の全部又は一部を実装することと関連した動作は、較正プロセスの機能を実施するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって実施され得る。機能の全部又は一部は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA及び/又はASIC(application-specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)として実装され得る。いくつかの実装形態では、機能の少なくとも一部はまた、Analog Devices Inc.によって開発されたSuper Harvard Architecture Single-Chip Computer(Super Harvard Architecture Single-Chip Computer、SHARC)などの浮動小数点又は固定小数点デジタル信号プロセッサ(DSP)上で実行されてもよい。
【0035】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしてはまた、例として、一般的及び特殊目的マイクロプロセッサの両方、並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はそれらの両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの構成要素は、命令を実行するためのプロセッサ、並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスを含む。
【0036】
本明細書に記載される異なる実装形態の要素は、特に上に記載されない他の実施形態を形成するために組み合わされ得る。要素は、それらの動作に悪影響を及ぼすことなく、本明細書に記載される構造から除かれ得る。更にまた、様々な別個の要素は、本明細書に記載される機能を実施するために、1つ以上の個々の要素と組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0037】
70 電子機器モジュール
72 トランシーバ
74 アンテナ
75 マイクアレイ
80 トランスデューサ
82 コントローラ
90 慣性測定ユニット(IMU)
92 電源
95 インターフェース