(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】印刷物光沢加工のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20240301BHJP
B44C 1/165 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B41M5/00 700
B44C1/165 J
(21)【出願番号】P 2022515036
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2020074055
(87)【国際公開番号】W WO2021047922
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】102019124105.7
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510017402
【氏名又は名称】カマ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バルト・ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】パーニッツケ・アンドレ
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-279868(JP,A)
【文献】特開2017-226159(JP,A)
【文献】特表2016-508080(JP,A)
【文献】特開平05-051147(JP,A)
【文献】特開2017-211614(JP,A)
【文献】特開2009-051109(JP,A)
【文献】特開2012-210764(JP,A)
【文献】特開2015-047748(JP,A)
【文献】特開平11-170684(JP,A)
【文献】特表2005-516803(JP,A)
【文献】特開2009-073015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B44C 1/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物光沢加工のための方法であって、
-
シート形の被印刷材料(1)および転写層付きの転写箔(6)を用意し、
-被印刷材料(1)を搬送経路に沿って搬送速度で移動させ、
-被印刷材料(1)を移動させながら搬送経路の第一セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを被印刷材料(1)に塗布し、
-照射線硬化型プラスチックの塗布後に搬送経路の第二セクションにおいて被印刷材料(1)に照射線をあてつつ同時に転写箔(6)を被印刷材料(1)に押し付けて被印刷材料とともに搬送経路に沿って移動させ、
-搬送経路の第二セクションを出て行くときに、転写箔(6)を被印刷材料(1)から取り除き、
被印刷材料(1)を水平に寝かせたまま移動させ、転写箔(6)を搬送経路の第二領域において押圧ローラ(42)の一部外周まわりに案内し、その押圧ローラを被印刷材料(1)に押し付け、
転写箔(6)が押圧ローラ(42)の外周に沿って押圧ローラ(42)の回転に伴って搬送経路から離れるときに、搬送経路を水平に移動する被印刷材料(1)から転写箔を取り除き、
前記押圧ローラ(42)は、
シート形の被印刷材料(1)がその下方を通過するときに搬送経路に押し付けられるとともに被印刷材料(1)がその下方を通過していないときに持ち上げられる
方法。
【請求項2】
被印刷材料(1)の搬送速度に等しい周速で押圧ローラ(42)を回転させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
押圧ローラ(42)を照射線透過性の中空体として設け、押圧ローラ(42)内に照射線源(51)を設ける請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
印刷物光沢加工のための装置であって、
-
シート形の被印刷材料(1)を搬送経路に沿って移動させる搬送装置(2)と、
-搬送経路の第一セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを被印刷材料(1)に塗布する印刷装置(3)と、
-搬送経路の第二セクションにおいて被印刷材料(1)の表面に転写箔(6)を供給する箔供給装置(4)と、
-少なくとも一つの照射線源(51)を有し、搬送経路の第二セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを硬化させる照射装置(5)と
を有し、
箔供給装置(4)は、少なくとも一つの巻出装置(41)および巻取装置(43)並びにそれらの間に配設された押圧ローラ(42)を備え、当該押圧ローラの周りに転写箔(6)が案内されているとともに当該押圧ローラが被印刷材料(1)に押し付けられ、
転写箔(6)が押圧ローラ(42)の外周に沿って押圧ローラ(42)の回転に伴って搬送経路から離れるときに、搬送経路を水平に移動する被印刷材料(1)から転写箔が取り除かれ、
前記押圧ローラ(42)は、
シート形の被印刷材料(1)がその下方を通過するときに当該押圧ローラが搬送経路に押し付けられる下方位置と、
被印刷材料(1)がその下方を通過していないときに当該押圧ローラが搬送経路から持ち上げられる上方位置との間で行ったり来たりを繰り返すことが可能である
装置。
【請求項5】
搬送装置(2)は、吸引ベルトコンベア(21)を備え、当該吸引ベルトコンベア(21)上で被印刷材料(1)が負圧により保持される
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
巻出装置(41)と押圧ローラ(42)との間および/または押圧ローラ(42)と巻取装置(43)との間に、転写箔(6)に一定のウェブ張力を生じさせるための少なくとも一つのテンションローラ(44)が配設されている請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
押圧ローラ(42)が照射線透過性の中空体として構成され、少なくとも一つの照射線源(51)が押圧ローラ(42)内に配設されている
請求項4から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
照射装置(5)は、少なくとも一つの照射線源(51)に加えて、照射線源(51)により生成された照射線に方向を与えるための可動に配設された少なくとも一つの絞り(52)を有している
請求項4から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
絞り(52)は、スリット形の絞り開口部を備えた中空円筒形の本体を有し、押圧ローラ(42)の内部において当該押圧ローラの長手方向軸線周りに回転可能に配設されている
請求項7を引用する請求項8に記載の装置。
【請求項10】
照射線硬化型プラスチックは、赤外線により硬化可能であり、少なくとも一つの照射線源(51)は、赤外線を放射する
請求項4から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
照射線硬化型プラスチックは、紫外線により硬化可能であり、少なくとも一つの照射線源(51)は、紫外線を放射する
請求項4から9のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物光沢加工のための改良された方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物光沢加工は、追加のコーティングによって、紙、段ボールなどの被印刷材料の表面を変えることを言う。この加工を通じて、紙は、その元の未処理の外観にはない所定の光沢、構造或いは予め決めておいた効果を具備するようになる。印刷物光沢加工により紙面が変化をきたし、それが一方では印刷製品を全体的に擦損から保護して長寿命化し、他方では光学的または触覚的な価値を高めて印刷製品の売れ行き或いは印刷製品に掲載された製品やサービスの売れ行きに貢献する。
【0003】
光沢加工の方法は、被印刷材料のコーティング、貼合(貼り合わせ)、変形(成形加工)ないし分離(取り除き)に基づいているとしてよい。貼合により光沢加工が行なわれる方法には、カバー、ラミネート並びに箔転写が含まれる。箔転写には、転写層をキャリアフィルムから剥がして被印刷材料上に転写する光沢加工の方法が含まれる。この方法の一群には、ホットフォイルスタンピング、コールド箔転写およびデジタル印刷として行なわれるトナーへの箔転写が含まれる。製品の見た目の価値を向上させる以外にも、特殊なフォイル(ホログラムフォイル)を用いることで製品および文書のセキュリティを実現することができる。
【0004】
ホットフォイルスタンピングでは、圧力、温度および接触時間の影響下でエンボスフォイルの転写層がエンボススタンプを用いて材料に転写され、このとき同時に永続的な形状変化を受ける。ホットフォイルスタンピングは、一つの器具を使用したフラットエンボス加工または雄型と雌型を使用したレリーフエンボス加工として行なわれる。エンボス器具として、箔転写のために加熱されるエンボスローラか或いは平らなエンボススタンプが使用される。温度は、使用するエンボスフォイル、被印刷材料および機械の種類によって異なるものの、80~220℃である。
【0005】
エンボスフォイルは、いくつかの層からなる。一つ又は複数の転写層が、ポリエステル製のキャリアフィルム上に直に形成されているか、或いはそれらの転写層が、キャリアフィルム上にある(熱が作用すると溶けて転写層を解放する)離型層上に形成されている。転写層は、光学機能層と貼着層(再活性可能な接着物質)とを有する。貼着層は、被印刷材料との、光学機能層の耐久性および耐擦性のある接合を担う。光学機能層には、着色顔料、金属粉顔料およびプラスチックを用いることができ、これが極めて多彩な視覚効果をもたらす。
【0006】
コールド箔転写では、ホットフォイルスタンピングと似たような視覚効果が得られるが、材料の変形はない。キャリアフィルムから解離される金属的にされたプラスチック層を転写し、必要に応じて後から追刷りすることにより、さまざまな金属効果を得ることができる。
【0007】
コールド箔光沢加工は、公知の方法では例えば、オフセット印刷機において印刷装置を二つ追加することにより実現される。第一の印刷装置では、標準的な印刷版を用いて特殊な接着物質が被印刷材料上に載せられる。オフセット印刷の特質が生かされるので、小さな網点と細い線幅を転写することができる。第二の印刷装置には、箔転写装置が装備されている。箔は、巻き出しステーションからゴムブランケット胴と圧胴との間の印刷間隙に案内され、被印刷材料に接触させられる。
【0008】
箔は、キャリアフィルム上にあるいくつかの層から構成される。色を与えるのがアルミニウム層と保護ラッカー層であり、これらの着色が色の印象に影響する。印刷された接着物質層に貼着層を付着させることで、転写層が基材上に貼り付いたままとなる。その後、キャリアフィルムは再び巻き取られる。
【0009】
コールド箔の光学効果は、エンボスフォイルのものに似ている。ただし、触って分かる表面変化や形状変化がないので、触覚効果は生まれない。
【0010】
コールド箔は、例えば、ラベル印刷、高品質パッケージまたはペラ物印刷において、さまざまな印刷製品を製造するのに使用される。
【0011】
この光沢加工は、印刷機においてインラインで行なうことができ、他のタイプの光沢加工に比べて特殊な器具を製作する必要がなく、その事がコスト上の利点をもたらす。ただし、コールド箔転写には、二つの追加の印刷装置と箔転写ステーションが必須となる。
米国特許出願公開第2009/078364号明細書には、金箔等を転写するための箔転写装置を有する印刷機が記載されている。転写装置は、圧胴とフィルム転写装置を含む。圧胴は、排紙胴から枚葉紙を受け取る。箔転写装置は、紫外線硬化樹脂ワニスを接着剤として塗布した枚葉紙に転写用フィルムを押し付け、転写用フィルムから金箔等を枚葉紙に転写する。転写用フィルムは、枚葉紙上の樹脂ワニスに押し付けられる。次に、押し付けられた枚葉紙の上に上方からランプで紫外線を照射し、樹脂ワニスを硬化させる。
国際公開第2009/053316号は、画像形成層または被覆層を転写用フィルムから印刷材料に転写するためのコーティング機構に関する。枚葉紙輪転印刷機では、この目的のために少なくとも一つのフィルム貼付モジュールが使用される。コーティングされたフィルム用シートは裏面から乾燥させることができる。対応する乾燥装置は、フィルムコーティング部の下流に配置されている。ここでは、上流または下流にワニス塗布モジュールが設けられたオフセット印刷機に関連して、フィルム用印刷材料にフィルムが貼付される。貼付の前または後に、例えば紫外線乾燥機を用いて、追加の印刷および中間乾燥を行なうことができる。フィルム貼付に関連する減熱された紫外線乾燥機構を使用することは、コールド箔ラミネートの際に用いることができる。
米国特許出願公開第2015/343761号明細書には、三次元物体にコールドエンボス加工を施す方法が記載されている。対象物はここで、回転軸周りに回転可能に保持装置によって保持される。第1のステップでは、接着剤が第1の作業ステーションで対象物に塗布される。第2のステップでは、第2の作業ステーションにおいて、押し付け装置によって転写フィルムが対象物上に押し付けられる。同時に、接着剤が、第2の作業ステーションにおいて硬化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、印刷物光沢加工、特にコールド箔転写のための公知の方法および装置をさらに発展および改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのためにまず提案されるのは、印刷物光沢加工のための方法であって、この方法では、被印刷材料および転写層付きの転写箔を用意し、被印刷材料を搬送経路に沿って搬送速度で移動させ、被印刷材料を移動させながら搬送経路の第一セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを被印刷材料に塗布し、照射線硬化型プラスチックの塗布後に搬送経路の第二セクションにおいて被印刷材料に照射線をあてつつ同時に転写箔を被印刷材料に押し付けて被印刷材料とともに搬送経路に沿って移動させ、搬送経路の第二セクションを出て行くときに、転写箔を被印刷材料から取り除く。
【0014】
従前から周知のコールド箔転写の方法は、被印刷材料に塗布する際にすでに貼着性があり且つキャリアフィルムを被印刷材料から取り除くときに転写層を容易に転写箔から引き離せる接着剤を使用する。本発明による方法では、それに代えて、照射線硬化型プラスチックを接着剤として用い、その照射線硬化型プラスチックは、最初は樹脂、つまり液状またはペースト状で存在し、接着強度は無いか或いは殆ど無いに等しい。この樹脂に特定の波長の照射線を照射した場合にのみ樹脂が貼着性となり、それから硬化する。このようにして、被印刷材料の表面が照射線硬化型プラスチックの樹脂を有している領域では転写層が転写箔から引き離される一方、その他の領域では転写層が転写箔上に留まる。これが重要な利点をもたらす。例えば、被印刷材料に塗布された樹脂は、印刷後にしか照射されないので、被印刷材料に樹脂を塗布するのに用いられる印刷装置のノズルは、もう詰まることがない。
【0015】
被印刷材料を水平に寝かせたまま移動させ、転写箔を搬送経路の第二領域において押圧ローラの一部外周まわりに案内し、その押圧ローラを被印刷材料に押し付ける。これは、特に、ロール・ツー・ロール方式とは異なり、一枚ずつの枚葉紙とされた被印刷材料に印刷物光沢加工する場合に利点がある。この場合には、被印刷材料と転写箔は、搬送方向に見て本発明により非常に短い区間でしか接触しないので、異なる長さの搬送経路に由来する相対変位が光沢加工の仕上がりに悪影響を及ぼすことがないようにできる。同じ理由で、提案した方法ではさらに、有利にも被印刷材料の搬送速度に等しい周速で押圧ローラを回転させるものとされる。
押圧ローラは、被印刷材料がその下方を通過するときに押し付けられ、被印刷材料がその下方を通過していないときに持ち上げられる。これにより、搬送経路に押し付けられた押圧ローラに被印刷材料が衝突することで発生する紙詰まりを回避することができる。
【0016】
特に有利にはさらに、押圧ローラを照射線透過性の中空体として設け、押圧ローラ内に照射線源を設けるようにしてもよい。品質の高い結果を得るには、転写箔を被印刷材料に押し付けることが有意であることには変わりがない。照射は、樹脂の硬化プロセスが押圧ローラの作用中に始まるように事前に行なうこともできるし、或いは後で行なってもよい。しかしながら、押圧ローラが照射線透過性の中空体で、その内部に照射線源が配設されれば、印刷材料に箔を押し当てることと、照射線硬化型プラスチックの樹脂の硬化とが一緒になり、押圧ローラを押し当てている間に照射線が透光性の中空体を通過して作用を及ぼすことになる。
【0017】
(削除)
【0018】
上記課題はまた、印刷物光沢加工のための装置によって解決され、この装置は、以下のものを有する:被印刷材料を搬送経路に沿って移動させる搬送装置、搬送経路の第一セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを被印刷材料に塗布する印刷装置、搬送経路の第二セクションにおいて被印刷材料の表面に転写箔を供給する箔供給装置、および、少なくとも一つの照射線源を有し、搬送経路の第二セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを硬化させる照射装置。
箔供給装置は、少なくとも一つの巻出装置および巻取装置並びにそれらの間に配設された押圧ローラを備え、この押圧ローラの周りに転写箔が案内されているとともにこの押圧ローラが被印刷材料に押し付けられる。押圧ローラは、押圧ローラが搬送経路に押し付けられる下方位置と、押圧ローラが搬送経路から持ち上げられる上方位置との間で往来可能である。これにより、押圧ローラは、被印刷材料がその下方を通過するときに搬送経路に押し付けられ、被印刷材料がその下方を通過していないときに持ち上げられることが可能になる。こうすることで、搬送経路に押し付けられた押圧ローラに被印刷材料が衝突することで発生する紙詰まりを回避することができる。
【0019】
搬送装置はここで、例えばベルトコンベアを備えていてもよく、その上に被印刷材料を寝かせたまま搬送する。有利には、搬送装置は吸引ベルトコンベアを備え、その上に被印刷材料が負圧により保持される。この吸引ベルトコンベアは例えば、複数の偏向ローラの周りに案内される穴の開いた搬送ベルトを備えていてもよく、これらの偏向ローラの間に、いわゆる吸引ボックスが配設され、その内部空間には、ポンプによって負圧が形成される。
【0020】
(削除)
【0021】
さらに他の態様において、巻出装置と押圧ローラとの間および/または押圧ローラと巻取装置との間に、転写箔に一定のウェブ張力を生じさせるための少なくとも一つのテンションローラが配設されている構成とされていてもよい。
【0022】
特に有利にはさらに、押圧ローラが照射線透過性の中空体として構成され、少なくとも一つの照射線源が押圧ローラ内に配設されている構成とされていてもよい。被印刷材料に箔を押し当てることと、照射線硬化型プラスチックの樹脂の硬化とがこれにより一緒になり、押圧ローラを押し当てている間に照射線が透光性の中空体を通過して作用を及ぼす。
【0023】
さらに他の態様において、提案した装置は、照射装置が、少なくとも一つの照射線源に加えて、照射線源により生成された照射線に方向を与えるための可動に配設された少なくとも一つの絞りを有した構成とされていてもよい。この絞りは例えば、スリット形の絞り開口部を備えた中空円筒形の本体を有し、押圧ローラの内部に押圧ローラの長手方向軸線周りに回転可能に配設されていてもよい。
【0024】
照射線硬化型プラスチックとして赤外線により硬化可能なプラスチックが用いられる方法変形例では、少なくとも一つの照射線源が赤外線を放射するように装置側が構成されている。
【0025】
照射線硬化型プラスチックとして紫外線により硬化可能なプラスチックが用いられる方法変形例では、少なくとも一つの照射線源が紫外線を放射するように装置側が構成されている。
【0026】
以下に、実施例とそれに関連する図に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による装置の始端にはシートフィーダ11があり、装置の終端にはデリバリ12がある。
【0029】
シートフィーダ11とデリバリ12の間には、搬送経路に沿って被印刷材料1を移動させるための搬送装置2が配設され、その始点と終点がそれぞれ水平な矢印で表されている。
【0030】
搬送装置2は、吸引ベルトコンベア21を備え、その上に被印刷材料1が負圧により保持される。吸引ベルトコンベア21は、複数の偏向ローラの周りに案内される穴の開いた搬送ベルトを備え、これらの偏向ローラの間に吸引ボックスが配設され、その内部空間にポンプ22によって負圧が形成される。
【0031】
搬送装置2の上側には、搬送経路の第一セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを被印刷材料1に塗布する印刷装置3が配設されている。印刷装置3は、ある種のインクジェットプリンタに形成され、このインクジェットプリンタにおいて、搬送装置2により被印刷材料1が印刷装置3の下を通過させられている間に照射線硬化型プラスチックの樹脂がインクの代わりに被印刷材料1の表面に塗布される。接着剤は、印刷像の形を安定させる(所謂“ピン止め”)ために、結合反応を起こさせることによって活性化される。
【0032】
印刷装置3の下流側には、搬送経路の第二セクションにおいて、やはり搬送装置2の上側に、被印刷材料1の表面に転写箔を供給する箔供給装置4が配設されている。箔供給装置4は、巻出装置41、巻取装置43および巻出装置41と巻取装置43の間に配設された押圧ローラ42を有している。転写箔6は、押圧ローラ42の周りに案内され、被印刷材料1に押し付けられる。巻出装置41と押圧ローラ42の間並びに押圧ローラ42と巻取装置43の間には、互いに連結された二つのテンションローラ44からなるアセンブリがそれぞれ配設され、これが、転写箔6に一定のウェブ張力を生成する役割を果たしている。
【0033】
押圧ローラ42は、連結棒45と当該連結棒45に係合する空気圧シリンダ46によって、押圧ローラ42が、搬送経路を押す下方位置と、押圧ローラ42が搬送経路から持ち上げられている上方位置との間を往来可能とされている。
【0034】
この装置はさらに、照射線硬化型プラスチックを硬化させる照射線源51として、UVランプを備えた照射装置5を有している。押圧ローラ42は、照射線透過性の中空体として形成され、UVランプ51は、この押圧ローラ42の中に配設されている。加えて、照射装置5は、照射線源51により生成された照射線に方向を与えるための可動に配設された絞り52を有し、この絞りが、スリット形の絞り開口部を備えた中空円筒形の本体として形成され、その中空円筒形の本体は、押圧ローラ42の内部において押圧ローラ42の長手方向軸線周りに回転可能とされている。
なお、本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
印刷物光沢加工のための方法であって、
-被印刷材料(1)および転写層付きの転写箔(6)を用意し、
-被印刷材料(1)を搬送経路に沿って搬送速度で移動させ、
-被印刷材料(1)を移動させながら搬送経路の第一セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを被印刷材料(1)に塗布し、
-照射線硬化型プラスチックの塗布後に搬送経路の第二セクションにおいて被印刷材料(1)に照射線をあてつつ同時に転写箔(6)を被印刷材料(1)に押し付けて被印刷材料とともに搬送経路に沿って移動させ、
-搬送経路の第二セクションを出て行くときに、転写箔(6)を被印刷材料(1)から取り除く
方法。
2.
被印刷材料(1)を水平に寝かせたまま移動させ、転写箔(6)を搬送経路の第二領域において押圧ローラ(42)の一部外周まわりに案内し、その押圧ローラを被印刷材料(1)に押し付ける上記1に記載の方法。
3.
被印刷材料(1)の搬送速度に等しい周速で押圧ローラ(42)を回転させる上記2に記載の方法。
4.
押圧ローラ(42)を照射線透過性の中空体として設け、押圧ローラ(42)内に照射線源(51)を設ける上記2または3に記載の方法
5.
押圧ローラ(42)は、被印刷材料(1)がその下方を通過するときに搬送経路に押し付けられ、被印刷材料(1)がその下方を通過していないときに持ち上げられる上記2から4のいずれかに記載の方法
6.
印刷物光沢加工のための装置であって、
-被印刷材料(1)を搬送経路に沿って移動させる搬送装置(2)と、
-搬送経路の第一セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを被印刷材料(1)に塗布する印刷装置(3)と、
-搬送経路の第二セクションにおいて被印刷材料(1)の表面に転写箔(6)を供給する箔供給装置(4)と、
-少なくとも一つの照射線源(51)を有し、搬送経路の第二セクションにおいて照射線硬化型プラスチックを硬化させる照射装置(5)と
を有する装置。
7.
搬送装置(2)は、吸引ベルトコンベア(21)を備え、当該吸引ベルトコンベア(21)上で被印刷材料(1)が負圧により保持される
上記6に記載の装置。
8.
箔供給装置(4)は、少なくとも一つの巻出装置(41)および巻取装置(43)並びにそれらの間に配設された押圧ローラ(42)を備え、当該押圧ローラの周りに転写箔(6)が案内されているとともに当該押圧ローラが被印刷材料(1)に押し付けられる
上記6または7に記載の装置。
9.
押圧ローラ(42)は、当該押圧ローラが搬送経路に押し付けられる下方位置と、当該押圧ローラが搬送経路から持ち上げられる上方位置との間で往来可能である
上記8に記載の装置。
10.
巻出装置(41)と押圧ローラ(42)との間および/または押圧ローラ(42)と巻取装置(43)との間に、転写箔(6)に一定のウェブ張力を生じさせるための少なくとも一つのテンションローラ(44)が配設されている上記8または9に記載の装置。
11.
押圧ローラ(42)が照射線透過性の中空体として構成され、少なくとも一つの照射線源(51)が押圧ローラ(42)内に配設されている
上記6から10のいずれかに記載の装置。
12.
照射装置(5)は、少なくとも一つの照射線源(51)に加えて、照射線源(51)により生成された照射線に方向を与えるための可動に配設された少なくとも一つの絞り(52)を有している
上記6から11のいずれかに記載の装置。
13.
絞り(52)は、スリット形の絞り開口部を備えた中空円筒形の本体を有し、押圧ローラ(42)の内部において当該押圧ローラの長手方向軸線周りに回転可能に配設されている
上記11を引用する上記12に記載の装置。
14.
照射線硬化型プラスチックは、赤外線により硬化可能であり、少なくとも一つの照射線源(51)は、赤外線を放射する
上記6から13のいずれかに記載の装置。
15.
照射線硬化型プラスチックは、紫外線により硬化可能であり、少なくとも一つの照射線源(51)は、紫外線を放射する
上記6から13のいずれかに記載の装置。
【符号の説明】
【0035】
1 被印刷材料
11 シートフィーダ
12 デリバリ
2 搬送装置
21 吸引ベルトコンベア
22 ポンプ
3 印刷装置
4 箔供給装置
41 巻出装置
42 押圧ローラ
43 巻取装置
44 テンションローラ
45 連結棒
46 空気圧シリンダ
5 照射装置
51 照射線源
52 絞り
6 転写箔