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特許7446424スルホニル尿素環置換単環式β-ラクタム系抗生物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】スルホニル尿素環置換単環式β-ラクタム系抗生物質
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20240301BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 31/549 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
A61K31/433
A61K31/549
A61P31/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022529868
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2020130568
(87)【国際公開番号】W WO2021098840
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】201911159356.9
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522201462
【氏名又は名称】スージョウ アーイェ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジーガン
(72)【発明者】
【氏名】ディン チャールズ ズィー.
(72)【発明者】
【氏名】リー ジアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シューフイ
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510580(JP,A)
【文献】米国特許第05317016(US,A)
【文献】特開昭53-079894(JP,A)
【文献】特表2013-544276(JP,A)
【文献】特表2018-528241(JP,A)
【文献】YASUYOSHI ISO et al.,A novel 1β-methylcarbapenem antibiotic, S-4661. Synthesis and Structure-activity Relationships of 2-(5-Substituted Pyrrolidin-3-ylthio)-1β-methylcarbapenems,Journal of Antibiotics, (1996), 49(2),199-209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
ここで、
は、-CHCH-、-CHCHCH-、-C(=O)CH-、-C(=O)CHCH-、及び-CHC(=O)CH-から選択され、
は、単結合及び-CH-から選択され、
は、H、CN、C1~3アルキルから選択され、前記C1~3アルキルは任意選択的に1、2及び3個のRによって置換され、
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ(alkoxy)、-CH-O-C(=O)-C1~3アルキル、-CH-NH-C1~3アルキル、-CH-NH-C(=NH)NH、及び-CH-NH-C(=O)-C1~3アルキルから選択され、前記C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、-CH-O-C(=O)-C1~3アルキル、-CH-NH-C1~3アルキル、-CH-NH-C(=NH)NH、及び-CH-NH-C(=O)-C1~3アルキルは、任意選択的に1、2及び3個のRによって置換され、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CH、CHCH、CF、CHF、及びCHFから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br、I、OH、CN、COOH、CH、CHCH、CHCHCH、CH(CH、OCH、OCF、CHF、CHF、及びNHから選択される、前記式(I)で示される化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
は、H、CN、及びCHから選択される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、C1~3アルキル、C1~3アルコキシ、
【化2】

【化3】
及び
【化4】
から選択され、前記C1~3アルキル、C1~3アルコキシ、
【化5】

【化6】
、及び
【化7】
は、任意選択的に1、2及び3個のRによって置換されてもよい、請求項1に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
及びRは、それぞれ独立して、H、CH
【化8】

【化9】

【化10】
及び
【化11】
から選択される、請求項3に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
構造単位
【化12】
は、
【化13】
【化14】
及び
【化15】
から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
構造単位
【化16】
は、
【化17】
から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
化合物は、
【化18】
及び
【化19】
から選択され、
ここで、
、R、R、R、R、R及びRは請求項1~6のいずれか1項と同義である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
化合物は、
【化20】
から選択され、
ここで、R、R、R、R、R及びRは請求項7と同義である、請求項7に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
以下から選択される、下記式で示される化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化21】
【請求項10】
以下から選択される、請求項9に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化22】
【請求項11】
細菌感染症に関連する疾患を治療する薬物の製造における請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2019年11月22日のCN201911159356.9の優先権を主張している。
【0002】
本発明は、新規なスルホニル尿素環置換単環式β-ラクタム系抗生物質に関し、具体的には、式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩又はその立体異性体、及び細菌感染症に関連する疾患の治療における使用を開示する。
【背景技術】
【0003】
1928年にイギリスの科学者フレミングが最初にペニシリンを発見して以来、β-ラクタム系抗生物質は数え切れない命を救って、人々の日常生活の中でもますます重要な役割を果たしている。薬剤耐性遺伝子及び超広スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBLs)、セリン型カルバペネマーゼ(KPCs)などの抗生物質加水分解酵素が相次いで出現するに伴い、既存の抗生物質の機能はますます不十分になっている。特にメタロ-β-ラクタマーゼ(MBLs)が媒介する深刻な多剤耐性により、ペニシリン類、セファロスポリン類、カルバペネム類などの従来の抗生物質はこれらの耐性菌による感染に対応できなくなっており、人類の健康と安全にもますます深刻な脇威をもたらしている。アズトレオナムに代表される単環式βヒトラクタム環系抗生物質は、メタロ-β-ラクタマーゼ(MBLs)に対して安定的であり、極めて優位性を有する化学薬剤シリーズである。
【0004】
市販薬であるアズトレオナムは、浸透性が悪く、排出作用が強く、静菌スペクトルが狭いという欠点があり、これらの臨床的な問題を克服するために、シデロホアを通じて透過性を増強する策略が導入され、例えばBasilea(WO2007065288)、Naeja Pharmaceuticals(WO2002022613)は対応するシリーズ分子を報告しており、最近、Novartis(WO2015148379)により、アズトレオナム分子上の置換基を修飾することにより薬剤耐性を克服する研究が報告されており、化合物の一般式は以下のとおりであり、ここで、基Hetはヘテロ芳香環又は1~2個のヘテロ原子で置換されたヘテロ環である。
【化1】
【0005】
薬剤耐性が深刻化することに鑑み、新規な単環式β-ラクタム系抗生物質を開発し、現在の薬剤耐性の課題を解決することは急務となっており、本発明のスルホニル尿素環置換単環式β-ラクタム系分子は将来性が期待できる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、式(I)で示される化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化2】
ここで、
は、-CHCH-、-CHCHCH-、-C(=O)CH-、-C(=O)CHCH-、及び-CHC(=O)CH-から選択され、
は、単結合及び-CH-から選択され、
は、H、CN、C1~3アルキルから選択され、前記C1~3アルキルは、任意選択的に1、2及び3個のRによって置換され、
及びRは、それぞれ独立して、H、OH、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ(alkoxy)、-CH-O-C(=O)-C1~3アルキル、-CH-NH-C1~3アルキル、-CH-NH-C(=NH)NH、及び-CH-NH-C(=O)-C1~3アルキルから選択され、前記C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、-CH-O-C(=O)-C1~3アルキル、-CH-NH-C1~3アルキル、-CH-NH-C(=NH)NH、及び-CH-NH-C(=O)-C1~3アルキルは、任意選択的に1、2及び3個のRによって置換され、
、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CH、CHCH、CF、CHF、及びCHFから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br、I、OH、CN、COOH、CH、CHCH、CHCHCH、CH(CH、OCH、OCF、CHF、CHF、及びNHから選択される。
【0007】
本発明のいくつかの態様では、上記のRは、H、CN、及びCHから選択され、残りの変数は本発明で定義したとおりである。
【0008】
本発明のいくつかの態様では、上記のR及びRは、それぞれ独立して、H、OH、C1~3アルキル、C1~3アルコキシ、
【化3】

【化4】
及び
【化5】
から選択され、前記C1~3アルキル、C1~3アルコキシ、
【化6】

【化7】
及び
【化8】
は、任意選択的に1、2及び3個のRによって置換され、残りの変数は本発明で定義したとおりである。
【0009】
本発明のいくつかの態様では、上記のR及びRは、それぞれ独立して、H、CH
【化9】

【化10】

【化11】
、及び
【化12】
から選択され、残りの変数は本発明で定義したとおりである。
【0010】
本発明のいくつかの態様では、上記の構造単位
【化13】
は、
【化14】

【化15】
及び
【化16】
から選択され、残りの変数は本発明で定義したとおりである。
【0011】
本発明のいくつかの態様では、上記の構造単位
【化17】
は、
【化18】
から選択され、残りの変数は本発明で定義したとおりである。
【0012】
本発明のいくつかの態様では、上記の化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩において、化合物は、
【化19】
及び
【化20】
から選択され、
ここで、R、R、R、R、R、R及びRは本発明で定義したとおりである。
【0013】
本発明のいくつかの態様では、上記の化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩において、化合物は、
【化21】
から選択され、
ここで、R、R、R、R、R及びRは本発明で定義したとおりである。
【0014】
本発明はまた、以下からから選択される以下の式で示される化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化22】
【0015】
本発明のいくつかの態様では、上記の化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩は、以下から選択される。
【化23】
【0016】
本発明は、また、細菌感染症に関連する疾患を治療する薬物の製造における上記の化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
本発明の別のいくつかの態様は上記の各変数を任意に組み合わせたものである。
【0017】
技術的効果
本発明の化合物は、特にβ-ラクタマーゼを産生する各種の細菌に対して、高い抗菌活性を有し、水溶性に優れ、細菌感染症に関連する疾患を治療する薬物の製造に使用することができる。
【0018】
定義及び説明
特に断らない限り、本明細書で使用される以下の用語及び語句は、以下の意味を有することを意図している。特定の用語や語句は、特に定義されていない限り、不確実又は不明瞭であるとみなされるべきではなく、一般的な意味で理解されるべきである。本明細書では、商品名が記載された場合、対応する商品又はその活性成分を指すことを意図している。
【0019】
ここで使われている「薬学的に許容される」という用語は、過剰な毒性、刺激性、アナフィラキシー、又はその他の問題や合併症なしに、信頼性のある医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形に対するものである。
【0020】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と、比較的毒性のない酸又は塩基とから製造された本発明の化合物の塩を意味する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、純粋な溶液中又は適切な不活性溶媒中で、そのような化合物に十分な量の塩基を接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミン、若しくはマグネシウム塩又は類似の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、純粋な溶液中又は適切な不活性溶媒中で、そのような化合物に十分な量の酸を接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、例えば、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、硝酸(nitric acid)、炭酸(carbonic acid)、重炭酸(hydrogen carbonate)イオン、リン酸(phosphoric acid)、リン酸一水素(monohydrogen phosphate)イオン、リン酸二水素(dihydrogen phosphate)、硫酸(sulfuric acid)、硫酸水素(hydrogen sulfate)イオン、ヨウ化水素酸(hydroiodic acid)、亜リン酸(phosphorous acid)などの無機酸の塩;酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、イソ酪酸(isobutyric acid)、マレイン酸(maleic acid)、マロン酸(malonic acid)、安息香酸(benzoic acid)、コハク酸(succinic acid)、スベリン酸(suberic acid)、フマル酸(fumaric acid)、乳酸(lactic acid)、マンデル酸(mandelic acid)、フタル酸(phthalic acid)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic acid)、p-トルエンスルホン酸(p -Toluenesulfonic acid)、クエン酸(citric acid)、酒石酸(tartaric acid)、及びメタンスルホン酸(methanesulfonic acid)などの類似の酸の有機酸の塩;アミノ酸(amino acid)(例えばアルギニン(arginine))の塩;グルクロン酸(glucuronic acid)などの有機酸の塩が含まれる。本発明の特定の化合物のいくつかは、塩基性及び酸性の官能基を含有し、それによって、任意の塩基又は酸付加塩に変換することができる。
【0021】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、酸基又は塩基を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、水、有機溶媒、又は両者の混合物中で、これらの化合物を遊離酸又は塩基の形で化学量論的に適当な塩基又は酸と反応させることによって製造される。
【0022】
本発明の化合物は、特定の幾何異性体又は立体異性体の形態を有していてもよい。本発明は、シス異性体及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、並びにそれらのラセミ混合物、並びに、エナンチオマー又はジアステレオマーリッチな混合物のような他の混合物を含む全てのこのような化合物を想定しており、これらのすべての混合物は本発明の範囲内に属する。アルキルなどの置換基には、さらに不斉炭素原子が存在していてもよい。これらすべての異性体及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0023】
特に断らない限り、「エナンチオマー」又は「旋光異性体」という用語は、互いに鏡像関係にある立体異性体を意味する。
【0024】
特に断らない限り、「シス/トランス異性体」又は「幾何異性体」という用語は、二重結合又は環を形成する炭素原子の単結合が自由に回転できないことから生じる。
【0025】
特に断らない限り、「ジアステレオマー」という用語とは、分子が2つ以上のキラル中心を有し、分子間が非鏡像の関係にある立体異性体を意味する。
【0026】
特に断らない限り、「(D)」又は「(+)」は右旋性、「(L)」又は「(-)」は左旋性、「(DL)」又は「(±)」はラセミを意味する。
【0027】
特に断らない限り、くさび形実線キー(
【化24】
)及びくさび形破線キー(
【化25】
)は、立体中心の絶対配置を表し、直線形実線キー(
【化26】
)及び直線形破線キー(
【化27】
)は、立体中心の相対配置を表し、波線(
【化28】
)はくさび形実線キー(
【化29】
)又はくさび形破線キー(
【化30】
)を表し、又は波線(
【化31】
)は直線形実線キー(
【化32】
)又は直線形破線キー(
【化33】
)を表す。
【0028】
特に断らない限り、化合物に二重結合構造、例えば炭素炭素二重結合、炭素窒素二重結合及び窒素窒素二重結合が存在し、且つ二重結合上の各原子に2つの異なる置換基が連結されている場合(窒素原子を含む二重結合では、窒素原子上の一対の孤立電子がこれに連結された1つの置換基とみなされる)、該化合物の二重結合上の原子とその置換基とが波線
【化34】
で連結されれば、該化合物の(Z)型異性体、(E)型異性体又は2種の異性体の混合物を表す。例えば下記式(A)は、該化合物が式(A-1)又は式(A-2)の単一異性体の形態で存在するか、又は式(A-1)と式(A-2)の2種の異性体の混合物の形態で存在することを示し、下記式(B)は、該化合物が式(B-1)又は式(B-2)の単一異性体の形態で存在するか、又は式(B-1)と式(B-2)の2種の異性体の混合物の形態で存在することを示す。下記式(C)は、該化合物が式(C-1)又は式(C-2)の単一異性体の形態で存在するか、又は式(C-1)と式(C-2)の2種の異性体の混合物の形態で存在することを示す。
【化35】
【0029】
本発明の化合物は、特定のものを有してもよい。特に断らない限り、「互変異性体」又は「互変異性体の形態」という用語は、室温において、異なる官能基異性体が動的平衡にあり、かつ相互に迅速に転化することができることを意味する。互変異性体が可能であれば(溶液中)、互変異性体の化学平衡が達成される。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピー互変異性体(prototro pictautomer)とも呼ばれる)は、ケト-エノール異性化やイミン-エナミン異性化などのプロトン移動による相互変換を含む。価数結合異性体(valence tautomer)には、結合している電子の再結合による相互変換が含まれる。このうち、ケト-エノールの互変異性化の具体例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシペンタ-3-エン-2-オンの2つの互変異性体間の互変である。
【0030】
特に断らない限り、「異性体リッチ」、「異性体が濃縮される」、「エナンチオマーリッチ」、「エナンチオマーが濃縮される」又はという用語は、1種の異性体又はエナンチオマーの含有量が100%未満、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、又は99.9%以上であることを意味する。
【0031】
特に断らない限り、「異性体過剰」又は「エナンチオマー過剰」という用語は、2つの異性体又は2つのエナンチオマーの相対百分率の差を意味する。例えば、一方の異性体又はエナンチオマーの含有量を90%、他方の異性体又はエナンチオマーの含有量を10%とすると、異性体又はエナンチオマーの過剰量(ee値)は80%となる。
【0032】
光学活性な(R)-異性体及び(S)-異性体、ならびにD及びL異性体は、キラル合成又はキラル試薬又は他の従来技術によって製造することができる。本発明の化合物の1種のエナンチオマーを得ることが望まれる場合、不斉合成により、又はキラル助剤を有する誘導作用により製造することができ、その際、得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を開裂させて純粋な所望のエナンチオマーを提供する。あるいは、分子内に塩基性官能基(例えば、アミノ)又は酸性官能基(例えば、カルボキシル)を含有する場合、適切な光学活性酸又は塩基とジアステレオマーの塩を形成し、次いで、当分野で公知の従来の方法によりジアステレオマー分割を行い、次いで回収して純粋なエナンチオマーを得る。さらに、エナンチオマーとジアステレオマーの分離は、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーを用いて、必要に応じて化学的誘導法(例えば、アミンからカルバミン酸塩を生成する)と組み合わせて行うことが一般的である。本発明の化合物は、該化合物を構成する1つ以上の原子上に非自然比の原子同位体を含んでいてもよい。例えば、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)などの放射性同位体で化合物を標識してもよい。また例えば、重水素を水素に置換して重水素化薬物を形成してもよく、重水素と炭素の結合は普通の水素と炭素の結合よりも強く、重水素化していない薬物と比べ、重水素化薬物は毒副作用を低下させ、薬物の安定性を増加させ、治療効果を増強し、薬物の生物半減期を延長するなどの優位性がある。本発明の化合物のすべての同位体組成の変換は、放射能の有無にかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、後述するイベント又は状況が発生する可能性があるが、必ずしも発生するわけではないことを意味し、この記載は前記イベント又は状況が発生した場合及び前記イベント又は状況が発生しない場合を含む。
【0033】
「置換される」という用語は、特定の原子上の任意の1つ以上の水素原子が置換基によって置換されることを意味し、特定の原子の価数が正常であり、置換された化合物が安定である限り、重水素及び水素の変異体を含み得る。置換基が酸素(即ち=O)である場合、2つの水素原子が置換されていることを意味する。芳香族基では酸素置換は起こらない。「置換されてもよい」という用語は置換されても、置換されなくてもよいことを意味し、特に規定がない限り、置換基の種類及び数は、化学的に達成可能な限り任意である。
【0034】
いずれかの変数(例えばR)が化合物の組成又は構造中に複数回出現する場合、その定義はそれぞれ独立である。したがって、例えば、1つの基が0~2つのRで置換されている場合、前記基は任意選択的に多くとも2つのRで置換され、それぞれの場合のRには独立した選択肢がある。さらに、置換基及び/又はその変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物を生成する場合にのみ許容される。
【0035】
連結基の数が0である場合、例えば-(CRR)-は、その連結基が単結合であることを示す。
【0036】
1つの変数が単結合から選択された場合、それにより連結される2つの基が直接連結されることを示し、例えば、A-L-ZにおいてLが単結合を表す場合、その構造が実質的にA-Zであることを示す。
【0037】
置換基が空である場合、その置換基が存在しないことを示し、例えば、A-XにおいてXが空である場合、その構造が実際にはAであることを示す。列挙された置換基の中に、どの原子を介して被置換基に連結しているかが示されていない場合、そのような置換基は、そのいずれかの原子を介して結合していてもよく、例えば、ピリジル(pyridyl)は置換基としてピリジン(pyridine)環上の任意の炭素原子を介して被置換基に連結されてもよい。
【0038】
列挙された連接基が連接方向を特定していない場合、その連接方向は任意であり、例えば、
【化36】
において、連接基Lが-M-W-であり、この場合、-M-W-は、左から右への読み取り順と同じ方向に環Aと環Bを連接して
【化37】
を構成してもよいし、左から右への読み取り順と逆方向に環Aと環Bを連接して
【化38】
を構成してもよい。前記連結基、置換基及び/又はその変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物を生成する場合にのみ許容される。
【0039】
特に規定がない限り、ある基が連結可能な部位を1つ以上有する場合、その基の任意の1つ以上の部位と他の基とが化学結合により連結されていてもよい。前記部位と他の基とが連結している化学結合は、直線形実線キー(
【化39】
)、直線形破線キー(
【化40】
)、又は波線(
【化41】
)で表すことができる。例えば-OCHの直線形実線キーは、その基中の酸素原子を介して他の基と連結していることを表し、
【化42】
での直線形破線キーは、その基の窒素原子の両端を介して他の基と連結していることを表し、
【化43】
の波線は、このフェニルの1位と2位の炭素原子を介して他の基と連結していることを表す。
【0040】
特に規定がない限り、「C1~6アルキル」という用語は、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を表す。前記C1~6アルキルは、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~4、C、及びCアルキルなどを含み、これは、1価(例えばメチル)、2価(例えばメチレン)又は多価(例えばメチン)であってもよい。C1~6アルキルの例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、s-ブチル及びt-ブチルを含む)、ペンチル(n-ペンチル、イソペンチル及びネオペンチルを含む)、ヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
特に規定がない限り、「C1~3アルキル」という用語は、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を表す。前記C1~3アルキルはC1~2、及びC2~3アルキルなどを含み、これは、1価(例えばメチル)、2価(例えばメチレン)又は多価(例えばメチン)であってもよい。C1~3アルキルの例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
特に規定がない限り、「C1~6アルコキシ」という用語は、1つの酸素原子を介して分子の残りの部分に連結されているような炭素数1~6のアルキルを表す。前記C1~6アルコキシは、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~4、C、C、C、及びCアルコキシなどを含む。C1~6アルコキシの例としては、メトキシ(methoxy)、エトキシ(ethoxy)、プロポキシ(butoxy)(n-プロポキシ(propoxy)及びイソプロポキシを含む)、ブトキシ(butoxy)(n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、及びt-ブトキシを含む)、ペンチルオキシ(pentyloxy)(n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ及びネオペンチルオキシを含む)、ヘキシルオキシなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
特に規定がない限り、「C1~3アルコキシ」という用語は、1つの酸素原子を介して分子の残りの部分に連結されているような炭素数1~3のアルキルを表す。前記C1~3アルコキシはC1~2、C2~3、C、及びCアルコキシなどを含む。C1~3アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(n-プロポキシ及びイソプロポキシを含む)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の化合物は、当業者によく知られている従来の方法により構造を確認することができ、また、本発明が化合物の絶対配置に係わっている場合、その絶対配置を当業者の従来の技術的手段により確認することができる。例えば単結晶X線回折法(SXRD)では、成長させた単結晶をBruker D8 venture回折計で回折強度データを収集し、光源はCuKα放射、走査方式:φ/ω走査でデータを収集した後、さらに直接法(Shelxs97)を用いて結晶構造を解析すれば、絶対配置を確証することができる。
【0045】
本発明に使用される溶媒は、市販品として入手可能である。
【0046】
本発明では、下記の略語が使用されている。
aq:水
HOBT:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HBTU:N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート
HATU:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
EDCI:N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
eq:当量、等量
DCM:ジクロロメタン
PE:石油エーテル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
MeOH:メタノール
CBz:アミン保護基であるベンジルオキシカルボニル
BOC:アミン保護基であるt-ブトキシカルボニル
HOAc:酢酸
THF:テトラヒドロフラン
BocO:二炭酸ジ-t-ブチル
TFA:トリフルオロ酢酸
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド
iPrOH:2-プロパノール。
【0047】
化合物は当該分野の通常の命名原則に基づいて、又はChemDraw(登録商標)ソフトウェアを使用して命名し、市販の化合物はサプライヤーの目録に記載の名称を採用する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明を何ら不適に限定するものではない。本発明の化合物は、当業者に公知の複数の合成方法によって製造することができ、以下に記載の具体的な実施形態、他の化学合成方法と組み合わせた実施形態、並びに当業者に公知の同等の置換形態を含み、好ましい実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されるものではない。当業者にとっては、本発明の主旨や範囲を逸脱することなく本発明の具体的な実施形態について各種の変化や改良を加えることが明らかなことである。
【0049】
一般的な合成経路
反応手順1
【化44】
PGは一般的なアミン保護基、例えばトリチル、t-ブトキシカルボニルなどであり、PGは一般的なカルボキシル保護基、例えばジベンジル、t-ブチルなどである。他の変数は全て本発明で定義したとおりであり、式(I)の化合物は、反応中間体SM-1を用いて3つのステップを経て製造してもよく、具体的には、ステップ1は、通常、0~20℃のような低い温度で、縮合剤例えばHOBT、EDCI、HATU、HBTU、DCC及び適切な塩基の作用で行われる酸-アミン縮合反応であり、ステップ2は、通常、溶媒DMF中で、基質SM-2とスルホン化試薬例えばDMF・SOとをピリジン・SOの作用により低温で反応させるようなスルホン化反応であり、好ましい温度範囲は0~10℃であり、ステップ3は、通常、酸の作用で行われる脱保護反応であり、よく使用されている酸には、トリフルオロ酢酸、ギ酸などがあり、溶媒はジクロロメタンであり、アニソールは保護基の除去に有利であり、好ましい反応温度範囲は-10~10℃とする。
【0050】
中間体の製造
中間体の合成経路1
【化45】
中間体A-6の合成は文献(Org.Process Res.Dev.2018,22,212)を参照すればよく、ラセミ体A-5を化学分割して単一キラル化合物A-6を得た。
【0051】
中間体の合成経路2
【化46】
ステップ1:化合物B-2の製造
A-6(3.8g、10.40mmol、1当量)及びトリエチルアミン(2.10g、20.80mmol、2.89mL、2当量)をジクロロメタン(30mL)溶液に溶解し、ベンジルクロロスルホニルカルバメート(2.60g、10.40mmol、1当量)のジクロロメタン(30mL)溶液を0℃で滴下し、混合物を10~20℃で1時間撹拌した。反応混合物を水(40mL)で洗浄して5分間撹拌した。ジクロロメタン(30mL)で抽出した。併せた有機相を食塩水(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、ろ過し、有機相を真空濃縮させ、化合物B-2(6.0g)を得た。LCMS(ESI)m/z:579.2(M+1)。
ステップ2:化合物B-3の製造
化合物B-2(6g、10.37mmol、1当量)をMeCN(60mL)に溶解し、N保護下、10~20℃で溶液に1,2-ジブロモエタン(3.90g、20.74mmol、1.56mL、2当量)及びKPO(4.40g、20.74mmol、2当量)を一括して加えた。混合物を60℃で14時間撹拌し、1,2-ジブロモメタン(1.95g、10.37mmol、782.32μL、1当量)を補充し、混合物を90℃で8時間撹拌した。混合物をろ過し、減圧濃縮させ、残留物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=4:1~2:1、次に、ジクロロメタン/PE=50:1~20:1)により残留物を精製した。化合物B-3を得た。LCMS(ESI)m/z:477(M+23);399(M-56+1)。
ステップ3:化合物B-4の製造
化合物B-3(3.4g、5.62mmol、1当量)をHO(45mL)及びMeCN(90mL)に溶解し、25℃、窒素ガス保護下、リン酸水素二カリウム(3.92g、22.49mmol、4当量)及び過硫酸カリウム(6.84g、25.30mmol、4.5当量)を一括して加えた。混合物を100℃で0.5時間撹拌した。反応混合物に重炭酸ナトリウム水溶液50mLを加えて、酢酸エチル(100mL溶液)で抽出した。併せた有機相を食塩水洗浄、無水NaSOで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(V/V、以下同様)=4:1~1:3)により残留物を精製した、化合物B-4を得た。LCMS(ESI)m/z:399.1(M-56+1)。
ステップ4:化合物B-5の製造
化合物B-4(1.6g、3.52mmol、1当量)及びPd/C(320mg、10%純度)をEtOH(30mL)に溶解し、25℃、H(15psi)下、2時間撹拌した。ろ過し、ろ液を真空濃縮させた。B-5を得て、次の反応に直接用いた。
ステップ5:化合物B-6の製造
化合物B-5をジクロロメタン(5mL)溶液に溶解し、窒素ガス保護下、0℃でTFA(8.47g、74.28mmol、5.50mL、21.63当量)を一括して加えた。混合物を25℃で1時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮させ、化合物B-6のトリフルオロ酢酸塩を得た。LCMS(ESI)m/z:242.9(M+23)。
【0052】
中間体の合成経路3
【化47】
ステップ1:化合物C-2の製造
化合物A-6(500mg、1.37mmol、1当量)をアセトニトリル(20mL)に溶解し、25~30℃、窒素ガス保護下、2-ブロモエタノール(341.97mg、2.74mmol、194.30μL、2当量)及びKPO(580.88mg、2.74mmol、2当量)を一括して加えた。混合物を90℃で12時間持続して撹拌し、混合物をろ過し、ろ液を食塩水(30mL)で洗浄し、混合物をEtOAc(80mL)で抽出し、有機層をNaSOで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。カラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=3:1~0:1)により残留物を精製した。化合物C-2を得た。LCMS(ESI)m/z:410.2(M+1)。
ステップ2:化合物C-1の製造
化合物A-6(410.0mg、1.12mmol、1当量)を1,2-ジクロロエタン(20mL)及びMeOH(2mL)に溶解し、窒素ガス保護下、30℃で2-[t-ブチル(ジメチル)シリル]オキシアセトアルデヒド(293.36mg、1.68mmol、320.62μL、1.5当量)を加え、AcOH(67.38mg、1.12mmol、64.17μL、1当量)で混合物をpH=5に調整し、30分間撹拌し、次に、0~10℃に冷却してNaBH(OAc)(832.28mg、3.93mmol、3.5当量)を加え、さらに混合物を18時間撹拌した。溶液に飽和NaHCO水溶液(5mL)を加え、DCM(10mL)で抽出した。併せた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を真空濃縮させた。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1~0:1)により濃縮液を精製し、化合物C-1を得た。LCMS(ESI)m/z:524.5(M+1)。
ステップ3:化合物C-2の製造
0℃で、窒素ガス保護下、化合物C-1(740mg、1.41mmol、1当量)のTHF(10mL)溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(1M、2.83mL、2当量)を加え、次に、1時間撹拌した。混合物に飽和食塩水20mLを加え、有機相を分離し、EA(20mL、3)で抽出し、収集した有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=5:1~0:1)により濃縮液を精製し、化合物C-2を得た。LCMS(ESI)m/z:410.3(M+1)。
ステップ4:化合物B-3の製造
化合物C-2(380mg、928.02μmol、1当量)のTHF溶液(10ml)にN-(トリエチルアミノスルホニル)ベンジルカルバメート(Chem.Eur.J.2004,10,5581-5606合成参照))(2575.3mg、2.78mmol、3当量)を25℃で加え、次に、窒素ガス下、75℃で4時間撹拌した。混合物に水10mLを加え、EA(20mL混合)で抽出し、有機相を食塩水20mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=5:1~0:1)により濃縮液を精製し、化合物B-3を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.35-7.28(m,3H),7.27-7.20(m,2H),7.17(s,5H),6.38-6.33(m,1H),5.23(s,1H),5.14-5.00(m,2H),3.71(d,J=4.3Hz,5H),3.38-3.29(m,2H),3.18-2.99(m,2H),1.48(s,20H),1.37-1.29(m,9H),1.28-1.05(m,4H),0.96-0.69(m,2H);LCMS(ESI)m/z:605.4(M+1)。
【0053】
中間体の合成経路4
【化48】
ステップ1:化合物D-2の製造
窒素ガス保護下、0~10℃で、ジフェニルケトンヒドラゾン(10g、50.96mmol、1当量)とジクロロメタン(100mL)の混合物にMgSO(4.60g、38.22mmol、0.75当量)及び二酸化マンガン(15.50g、178.35mmol、3.5当量)を一括して加えた。反応混合物を0~30℃で1時間撹拌した。混合物をろ過し、0~10℃、窒素ガス保護下、ろ液をD-1(4.94g、48.42mmol、0.95当量)のMeOH(30mL)混合物に加えた。混合物を0~30℃で2時間撹拌した。混合物を真空濃縮させた。PE(150mL)から再結晶させ、化合物D-2を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.20-7.30(m,10H),6.85(s,1H),1.27-1.36(m,2H),1.09-1.22(m,2H)。
ステップ2:化合物D-3の製造
O-ジフェニルホスフィニルヒドロキシルアミン(521.50mg、2.24mmol、1.2当量)及び化合物D-2(0.5g、1.86mmol、1当量)のTHF(10mL)混合物に、0~10℃、窒素ガス保護下、t-BuONa(214.91mg、2.24mmol、1.2当量)を加えた。反応混合物を0~10℃で120分間撹拌した。反応液を5%食塩水(30mL)で洗浄し、15分間撹拌した。不溶分をろ別し、ろ過ケーキを酢酸エチル(10mL)で洗浄し、ろ液を酢酸エチル(20mL)で抽出した。併せた有機相を飽和食塩水(20mL併せた)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。化合物D-3のEtOAc/THF(60mL)溶液を得て、次の反応に直接用いた。
ステップ3:化合物D-4の製造
化合物D-3のEtOAc/THF溶液(理論収量528mg、1.86mmol、1当量、60mL)に、窒素ガス保護下、15~25℃で2-オキサ-2-[2-(トリフェニルアミノ)チアゾール-4-イル]酢酸(617.94mg、1.49mmol、0.8当量)を一括して加えた。混合物を15~25℃で撹拌しながら8時間反応させた。反応混合物を45℃で減圧濃縮させ、化合物D-4を得た。LCMS(ESI)m/z:680.2(M+1)。
【0054】
実施例1
化合物1の合成
【化49】
ステップ1:化合物1-2の製造
15℃で、化合物B-6のトリフルオロ酢酸塩(1.1g、3.29mmol、1当量)、化合物D-4(2.01g、2.96mmol、0.9当量)及びDMF(20mL)の混合溶液に、HATU(1.63g、4.28mmol、1.3当量)及びTEA(998.97mg、9.87mmol、1.37mL、3当量)を加え、次に、反応混合物を15℃、窒素ガス保護下、8時間撹拌した。反応液に水(50mL)を加え、水相を酢酸エチル(100mL酢酸)で抽出した。併せた有機相をNaHCO水溶液及び食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。シリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=4:1~1:3)により粗製品を精製し、化合物1-2を得た。LCMS(ESI)m/z:882.2(M+1)。
ステップ2:化合物1-3の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物1-2(1.3g、1.47mmol、1当量)とDMF(15mL)の混合溶液に、DMF・SO錯体(1.35g、8.84mmol、6当量)を一括して加えた。溶液を15℃で1時間撹拌した。溶液に水(20mL)を加え、酢酸エチル(50mL)で抽出した。併せた有機相を水及び食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、化合物1-3を得た。LCMS(ESI)m/z:962.7(M+1)。
ステップ3:化合物1の製造
化合物1-3(400.00mg、415.77μmol、1当量)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、窒素ガス保護下、0℃で、該反応混合物にアニソール(89.92mg、831.53μmol、90.37μL、2当量)及びTFA(3.08g、27.01mmol、2.00mL、64.97eq)を加えた。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。化合物にメチルt-ブチルエーテル(100mL)を加えて固体を析出させ、ろ過し、ろ過ケーキを収集した。逆相HPLC(カラム:Phenomenex Luna C18 200×40mm×10μm;移動相:[移動相A:水(0.1%TFA);移動相B:アセトニトリル];移動相Bの百分率:1%~27%、10min)によりろ過ケーキを精製し、粗製品として化合物1を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d+DO)δ=6.96(s,1H),5.39-5.10(m,1H),4.28-4.05(m,2H),3.56-3.42(m,1H),3.36-3.29(m,2H),3.27-3.03(m,3H),1.40(br d,J=3.9Hz,4H);LCMS(ESI)m/z:553.9(M+1);473.9(M-80+1)。
【0055】
実施例2
化合物2の合成
【化50】
化合物1の製造過程を参照して、逆相HPLC(カラム:Phenomenex Synergi C18 150mm×25mm×10μm;移動相:[移動相A:水(0.1%TFA;移動相B:アセトニトリル];移動相Bの百分率%:1%~25%、10min)により処理し、化合物2を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d+DO)δ=6.90-6.84(m,1H),5.21(d,J=5.7Hz,1H),4.22-4.12(m,1H),3.59(br dd,J=3.2,14.1Hz,2H),3.31-3.05(m,6H),1.37(br s,4H);LCMS(ESI)m/z:567.5(M+1)。
【0056】
実施例3
化合物3の合成
【化51】
ステップ1:化合物3-2の製造
化合物A-6(5.7g、15.60mmol、1当量)、t-ブチル-ジメチル-[[((2R)-エチレンオキシド-2-イル]メトキシ]シラン(3.23g、17.16mmol、1.1当量)及びジイソプロピルエチルアミン(2.32g、17.94mmol、3.12mL、1.15当量)を15℃、窒素ガス保護下、エタノール(60mL)に溶解し、次に、混合物を90℃で18時間撹拌した。溶液を真空濃縮させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー精製(石油エーテル/酢酸エチル=4/1~0/1)に通した。化合物3-2を得た。
ステップ2:化合物3-3の製造
化合物3-2(4.02g、7.26mmol、1当量)、トリエチルアミン(1.47g、14.52mmol、2.02mL、2当量)をジクロロメタン(40ml)に溶解し、0℃に降温して、窒素ガス保護下、ベンジルクロロスルホニルカルバメート(1.81g、7.26mmol、1当量)のジクロロメタン(20ml)溶液を滴下し、次に、混合物を0~15℃で2時間撹拌した。溶液に水(50mL)を加えてクエンチングし、ジクロロメタン(50mL×3)で抽出した。併せた有機相を食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、粗品3-3を得た。
ステップ3:化合物3-4の製造
化合物3-3(6.30g、8.21mmol、1eq)、トリエチルアミン(1.25g、12.32mmol、1.71mL、1.5当量)をジクロロメタン(70ml)に溶解し、0℃に降温して、窒素ガス保護下、メタンスルホニルクロリド(1.13g、9.86mmol、762.92μL、1.2当量)を滴下し、溶液を0℃で2時間撹拌した。溶液を水(100mL)でクエンチングし、ジクロロメタン(100mL×3)で抽出した。併せた有機相を食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、粗品3-4を得た。
ステップ4:化合物3-5の製造
化合物3-4(13.40g、15.86mmol、1当量)、リン酸カリウム(4.38g、20.61mmol、1.3当量)を15℃でアセトニトリル(150mL)に混合し、次に、反応液を80℃で2時間撹拌した。ろ液を真空濃縮させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー精製(石油エーテル/酢酸エチル=5/1~3/1)に通して、化合物3-5を得た。
ステップ5:化合物3-6の製造
25℃、窒素ガス保護下、化合物3-5(5.00g、6.68mmol、1当量)、リン酸二水素カリウム(4.65g、26.70mmol、4当量)、過硫酸カリウム(8.12g、30.04mmol、6.02mL、4.5当量)を混合して、アセトニトリル(240mL)及び水(120mL)に溶解し、次に、溶液を100℃に加熱して40分間撹拌した。溶液を冷却し、ろ過し、ろ液を真空濃縮させ、次に、水(50mL)を加えて、酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、併せた有機相を食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー精製(石油エーテル/酢酸エチル=4/1~2/1)に通した。化合物3-6を得た。
ステップ6:化合物3-7の製造
化合物3-6(2.30g、3.84mmol、1当量)をジクロロメタン(30mL)に溶解し、25℃、窒素ガス保護下、反応液にトリエチルアミン三フッ化水素塩(3.72g、23.05mmol、3.76mL、6当量)を加え、次に、溶液を25℃で15時間撹拌した。溶液に水(30mL)を加えて希釈し、ジクロロメタン(30mL×3)で抽出し、併せた有機相を食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー精製(石油エーテル/酢酸エチル=3/1~0/1)に通した。化合物3-7を得た。
ステップ7:化合物3-8の製造
窒素ガス保護下、0℃で、化合物3-7(700mg、1.44mmol、1当量)、トリエチルアミン(190.05mg、1.88mmol、261.42μL、1.3当量)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、塩化アセチル(136.09mg、1.73mmol、123.72μL、1.2当量)を滴下し、溶液を25℃にゆっくりと昇温して、4時間撹拌した。溶液に水(10mL)を加えてクエンチングし、ジクロロメタン(20mL×3)で抽出した。併せた有機相を食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー精製(石油エーテル/酢酸エチル=3/1~0/1)に通した。化合物3-8を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.46-7.34(m,5H),6.53-6.46(m,1H),5.40-5.31(m,2H),5.06-5.05(m,1H),5.10-5.00(m,1H),4.57-4.47(m,1H),4.41-4.34(m,1H),4.28-4.21(m,1H),4.12-4.06(m,1H),4.18-4.06(m,3H), 3.64-3.55(m,1H),3.52-3.43(m,1H),3.39-3.33(m,1H),3.26-3.18(m,1H),2.12-2.09(m,3H),1.50-1.42(m,9H)。
ステップ8:化合物3-9の製造
20℃、窒素ガス保護下、化合物3-8(430mg、816.62μmol、1当量)のエタノール(10mL)溶液にパラジウム炭素(130mg、189.56μmol、純度10%)を加え、窒素ガス置換を行い、次に、該溶液を20℃、水素圧(15Psi)で2時間撹拌した。溶液をろ過し、テトラヒドロフランで洗浄し、ろ液を真空濃縮させた。精製せずに化合物3-9を得た。
ステップ9:化合物3-10の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物3-9(280mg、713.51μmol、1当量)をジクロロメタン(1mL)に溶解し、溶液にTFA(1.54g、13.51mmol、1mL、18.93当量)を添加した。反応液を25℃に昇温して、2時間反応させた。該反応溶液を真空濃縮させた。3-10のトリフルオロ酢酸塩粗品を得た。
ステップ10:化合物3-11の製造
25℃、窒素ガス保護下、化合物3-10のトリフルオロ酢酸塩(290mg、713.70μmol、1当量)をDMF(10mL)に溶解し、該反応溶液に化合物D-4(485.16mg、713.70μmol、1当量)、HATU(352.78mg、927.81μmol、1.3当量)及びトリエチルアミン(216.66mg、2.14mmol、298.02μL、3当量)を添加した。溶液を4時間撹拌した後、溶液に水10mLを加え、水相を酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。併せた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。粗製品をシリカゲルクロマトグラフィー精製(PE/EA=3/1~1/3)に通し、化合物3-11を得た。LCMS:954.3(M+1)。
ステップ11:化合物3-12の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物3-11(100mg、104.81μmol、1当量)をDMF(3mL)に溶解し、該反応液にN,N-ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体(96.32mg、628.88μmol、6当量)を加えた。25℃で2時間反応させた。反応溶液に水(5mL)を加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出し、併せた有機相を食塩水(20mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、粗品3-12を得た。LCMS:1034.3(M+1)。
ステップ12:化合物3の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物3-12(60mg、58.02μmol、1当量)をジクロロメタン(0.8mL)に溶解し、アニソール(62.74mg、580.19μmol、63.06μL、10当量)及びTFA(1.23g、10.80mmol、0.8mL、186.23当量)を加え、次に、反応液を25℃、窒素ガス保護下、1時間撹拌した。溶液をn-ヘプタン(5mL×2)で洗浄し、上澄みを捨てて、次に、冷却したMTBE(20mL)をスラリー化し、ろ過し、ろ過ケーキをMTBE(5mL)で洗浄し、ろ過ケーキを逆相HPLC(カラム:Phenomenex Luna C18 150×25mm×10μm;移動相:[移動相A:水(0.1%TFA);移動相B:アセトニトリル];移動相Bの百分率:10%~30%、10min)により精製し、化合物3を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=6.81(s,1H),5.25(d,J=5.5Hz,1H),4.18-4.10(m,1H),3.96-3.88(m,2H),3.76-3.66(m,1H),3.63-3.46(m,2H),3.05(br dd,J=8.3,13.6Hz,1H),2.95-2.69(m,2H),2.01-1.96(m,3H),1.42-1.28(m,4H);LCMS(ESI)m/z:626(M+1);546(M-80+1)。
【0057】
実施例4
化合物4の合成
【化52】
ステップ1:化合物4-2の製造
化合物A-6(5g、13.68mmol、1当量)、(S)-2-(エチレンオキシド-2-イルメチル)イソインドリン-1,3-ジオン(1.95g、9.58mmol、0.7当量)、過塩素酸リチウム(4.37g、41.05mmol、1.80mL、3当量)及びアセトニトリル(30mL)を混合し、反応液を60℃で3.5時間撹拌した。溶液を水100mlでクエンチングし、次に、酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、併せた有機層を水(100mL×2)及び食塩水(100mL×2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー法(PE/EA/DCM=5/1/1~DCM/MeOH=10/1)により精製した。残留物をDCM:EA=1:1(80mL)にて16時間スラリー化し、白色固体を形成し、ろ過して固体を収集し、EA(10mL×2)で洗浄した。ろ過ケーキを収集して化合物4-2を得た。LCMS(ESI)m/z:569.3(M+1)。
ステップ2:化合物4-3の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物4-2(2.8g、4.92mmol、1当量)及びトリエチルアミン(996.56mg、9.85mmol、1.37mL、2当量)のDCM(20mL)溶液に、ベンジルクロロスルホニルカルバメート(1.84g、7.39mmol、1.5当量)のDCM(5mL)溶液を滴下して、1時間撹拌した。水50mLで反応をクエンチングし、次に、DCM(50mL×2)で抽出し、有機層を水(100mL×2)及び食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、粗品4-3を得た。LCMS(ESI)m/z:726.2(M-55)。
ステップ3:化合物4-4の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物4-3(4.78g、6.11mmol、1当量)及びトリエチルアミン(804.26mg、7.95mmol、1.11mL、1.3当量)のDCM(40mL)溶液にメタンスルホニルクロリド(700.35mg、6.11mmol、473.21μL、1当量)を滴下し、滴下終了後、反応液を1時間撹拌した。水(50mL)で反応をクエンチングし、次に、DCM(50mL×2)で抽出し、有機層を水(100mL×2)及び食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、化合物4-4を得た。LCMS(ESI)m/z:804.2(M-55)。
ステップ4:化合物4-5の製造
化合物4-4(5.32g、6.19mmol、1当量)、リン酸カリウム(1.71g、8.04mmol、1.3当量)及びアセトニトリル(80mL)を混合し、混合物を、窒素ガス保護下、60℃で16時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ液を真空濃縮させ、化合物4-5を得た。LCMS(ESI)m/z:708.2(M-55)。
ステップ5:化合物4-6の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物4-5(2.94g、3.85mmol、1当量)をアセトニトリル(100mL)及び水(30mL)に溶解し、該反応溶液に硝酸セリウムアンモニウム(4.22g、7.70mmol、3.84mL、2当量)の水(20mL)溶液を1滴ずつ滴下し、次に、0~25℃で5時間撹拌した。反応溶液に水100mLを加え、次に、EA(100mL×2)で抽出し、有機層を水(100mL×2)及び食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を真空濃縮させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EA=5/1~1/1、20%DCM)により精製し、化合物4-6を得た。LCMS(ESI)m/z:558.2(M-55)。
ステップ6:化合物4-7の製造
化合物4-6(1.42g、2.31mmol、1当量)及びPd/C(150mg、10%純度)をエタノール(40mL)と混合し、20~30℃、水素ガス(15psi)下、15時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ液を真空濃縮させ、化合物4-7を得た。
ステップ7:化合物4-8の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物4-7(1.2g、2.50mmol、1当量)のDCM(16mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(12.32g、108.05mmol、8mL、43.17当量)を加え、0℃で1時間撹拌した。該溶液を真空濃縮させ、4-8のトリフルオロ酢酸塩粗品を得た。
ステップ8:化合物4-9の製造
化合物4-8のトリフルオロ酢酸塩(1.3g、2.63mmol、1当量)、化合物D-4(1.79g、2.63mmol、1当量)及びDMF(15mL)の混合溶液に、HATU(1.30g、3.42mmol、1.3当量)及びジイソプロピルエチルアミン(1.02g、7.89mmol、1.37mL、3当量)を加え、次に、20~30℃で1時間撹拌した。溶液を水100mLに注入し、DCM(100mL×2)で抽出し、有機層を水(100mL)及び食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー法(DCM/EA=1/0~1/2)により精製し、化合物4-9を得た。LCMS(ESI)m/z:1041.4(M+1)。
ステップ9:化合物4-10の製造
化合物4-9(1.22g、1.04mmol、1当量)、ヒドラジン水和物(265.13mg、5.19mmol、257.40μL、98%純度、5当量)をエタノール(30mL)と混合し、混合溶液を30℃で4時間撹拌した。溶液を水250mLに注入し、DCM(150mL×3)で抽出し、有機層を食塩水(200mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。濃縮液をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー法(DCM/MeOH=50/1~20/1)により精製し、4-10を得た。LCMS(ESI)m/z:911.4(M+1)。
ステップ10:化合物4-11の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物4-10(145mg、159.16μmol、1当量)及びトリエチルアミン(40.26mg、397.89μmol、55.38μL、2.5当量)とDCM(5mL)の混合溶液に、BocO(45.16mg、206.90μmol、47.53μL、1.3当量)のDCM(0.5mL)溶液を加えて、1時間撹拌した。BocO10mgを加えて25~30℃で1時間撹拌した。溶液をDCM(10mL)で希釈し、次に、食塩水(10mL×2)で洗浄し、有機層をNaSOで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー法精製(PE/EA=2/1~0/1)に通し、化合物4-11を得た。LCMS(ESI)m/z:1011.5(M+1)。
ステップ11:化合物4-12の製造
25℃で、化合物4-11(130mg、128.56μmol、1当量)のDMF(2mL)溶液に、N,N-ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体(59.07mg、385.69μmol、3当量)を加えた。反応液を25℃で1時間反応させた。溶液に水10mLを加え、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。併せた有機相を食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。化合物4-12を得た。LCMS(ESI)m/z:1091.4(M+H)。
ステップ12:化合物4の製造
0℃で、化合物4-12(150mg、137.46μmol、1当量)、アニソール(29.73mg、274.92μmol、29.88μL、2当量)のDCM(1mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(1.54g、13.51mmol、1mL、98.26当量)を加えた。次に、混合物を25℃で1時間撹拌した。0℃に降温して、混合物にn-ヘプタン(6mL×3)を添加し、上澄みを捨てて、次に、冷却したMTBE(4mL)をスラリー化し、次に、N保護下、溶液をろ過した。逆相HPLC(カラム:Waters Atlantis T3 150mm×30mm×5μm;移動相:[移動相A:水(0.1%TFA);移動相B:アセトニトリル];移動相Bの百分率:5%~35%、10min)により粗製品を精製し、化合物4のトリフルオロ酢酸塩を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d+DO)δ=6.86(s,1H),5.27-5.19(m,1H),4.23-4.16(m,1H),3.73-3.59(m,2H),3.40-3.33(m,1H),3.20-3.06(m,2H),3.03-2.82(m,3H),1.36(br s,4H);LCMS(ESI)m/z:583.0(M+1)。
【0058】
実施例5
化合物5の合成
【化53】
ステップ1:化合物5-2の製造
化合物4-10(87mg、95.49μmol、1当量)、(E)-t-ブチル(((t-ブトキシカルボニル)アミノ)(1H-ピラゾール-1-イル)メチレン)カーバメート(35.56mg、114.59μmol、1.2当量)を20~25℃でアセトニトリル(5mL)と混合し、該混合物にトリエチルアミン(24.16mg、238.73μmol、33.23μL、2.5当量)を滴下し、次に、硫酸マグネシウム(53.22mg、442.14μmol、4.63当量)を加えて、20~25℃で20時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ液を減圧濃縮させ、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10/1~DCM/MeOH=10/1)により残留物を精製し、粗製品化合物5-2を得た。LCMS(ESI)m/z:1153.5(M+1)。
ステップ2:化合物5-3の製造
25℃、窒素ガス保護下、化合物5-2(85mg、73.70μmol、1当量)をDMF(2mL)に溶解し、該溶液にN,N-ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体(33.86mg、221.10μmol、3当量)を加え、次に、25℃で1時間撹拌した。反応溶液に水10mLを加え、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。併せた有機相を食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、粗品5-3を得た。LCMS(ESI)m/z:1234.7(M+1)。
ステップ3:化合物5の製造
0℃で、化合物5-3(93mg、75.40μmol、1当量)、アニソール(16.31mg、150.80μmol、16.39μL、2当量)のDCM(1mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(1.54g、13.51mmol、1mL、179.12当量)を加えた。次に、混合物を25℃で1時間撹拌した。0℃に降温して、混合物にn-ヘプタン(6mL×3)を添加し、上澄みを捨てて、0℃で冷却したMTBE(4mL)でスラリー化し、次に、窒素ガス保護下、ろ過した。逆相HPLC(カラム:Shim-pack C18 150×25mm×10μm;移動相:[移動相A:水(0.1%TFA);移動相B:アセトニトリル];移動相Bの百分率:12%~30%、10min)により粗製品を精製し、化合物5を得た。LCMS(ESI)m/z:625.0(M+1)。
【0059】
実施例6
化合物6の合成
【化54】
ステップ1:化合物6-2の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物4-10(160mg、175.62μmol、1当量)、トリエチルアミン(44.43mg、439.05μmol、61.11μL、2.5当量)及びDCM(5mL)の混合溶液に、無水酢酸(17.93mg、175.62μmol、16.45μL、1当量)のジクロロメタン(0.5mL)溶液を滴下し、この温度で1時間撹拌した。溶液を食塩水(10mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させた。シリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=2/1~0/1~DCM/MeOH=10/1)により精製し、粗製品6-2を得た。LCMS(ESI)m/z:953.5(M+1)。
ステップ2:化合物6-3の製造
25℃、窒素ガス保護下、化合物6-2(210mg、220.34μmol、1当量)をDMF(5mL)に溶解し、該溶液にN,N-ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体(101.24mg、661.01μmol、3当量)を加えた。この温度で1時間撹拌した。溶液に水(10mL)を加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。併せた有機相を食塩水(20mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮させ、化合物6-3を得た。LCMS:1033.6(M+1)。
ステップ3:化合物6の製造
0℃、窒素ガス保護下、化合物6-3(190mg、183.90μmol、1当量)のDCM(0.8mL)溶液を撹拌しながら、アニソール(99.43mg、919.51μmol、99.93μL、5当量)及びトリフルオロ酢酸(20.97mg、183.90μmol、13.62μL、1当量)を加え、次に、この反応液を25℃で1時間撹拌した。0℃に降温して、混合物にn-ヘプタン(5mL×2)を添加し、上澄みを捨てて、0℃で冷却したMTBE(10mL)を用いてスラリー化し、ろ過し、MTBEでろ過ケーキを洗浄した。逆相HPLC(カラム:Waters Atlantis T3 150×30mm×5μm;移動相:[移動相A:水(0.1%TFA);移動相B:アセトニトリル];移動相Bの百分率:5%~35%、10min)により粗製品を精製し、化合物6を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d+DO)δ=6.89(s,1H),5.24(d,J=5.6Hz,1H),4.20-4.12(m,1H),3.60(quin,J=6.8Hz,1H),3.53-3.36(m,2H),3.15-2.99(m,3H),2.91(dd,J=7.0,9.5Hz,1H),1.87-1.73(m,3H),1.38(br s,4H);LCMS:625(M+1);545(M-80+1)。
【0060】
実験例1:化合物の静菌作用(MIC)検出
クレブシエラ・ニューモニエATCC BAA-205(TEM-1/SHV-1/SHV-12)、ATCC BAA-1705(KPC-2)、ATCC BAA-2470(NDM-1)3株、エンテロバクター・クロアカATCC BAA-1143(AmpC)、大腸菌ATCC BAA-2523(OXA-48)、ATCC 25922 2株について、臨床検査標準協会(Institute of clinical and laboratory standard、CLSI)の要件に従って、微量液体希釈法により、各化合物の最小静菌濃度(Minimum Inhibitory Concentration、MIC)を測定した。丸底96ウェルプレート(Catalog#3788、Corning)に2倍連続希釈化合物(最終濃度範囲0.125μg/mL-128μg/mL)を加え、一晩放置して、ミューラー・ヒントン寒天培地Mueller Hinton II Agar(MHA、Cat.No.211438、BD BBL TM)プレートから新鮮な細菌単一クローンを選択して、滅菌生理食塩水に懸濁させ、濃度を1×10CFU/mLに調整し、次に、カチオンで調整されたミューラー・ヒントン培地Cation-Adjusted Mueller Hinton II Broth(MHB、Catalog#212332、BD BBLTM)を用いて5×10CFU/mLに希釈し、薬物を容れた丸底96ウェルプレートに100μLを加えた。プレートを逆様にして37℃で20~24h培養した後、MIC値を読み取り、細菌成長を阻害する最低薬物濃度をMICとした。結果を表1に示す。コロニー形成ユニット(CFU、Colony-Forming Units)とは、単位体積あたりの細菌コロニー総数である。
【表1】
結論:本発明の化合物は複数種類の菌に対して良好な阻害効果を有する。
【0061】
実験例2:臨床分離菌に対する化合物の静菌作用(MIC)の検出
寒天二倍希釈法によって、化合物とβ-ラクタマーゼ(MBLs)阻害剤との併用による、カルバペネム系薬剤耐性を有する臨床分離した腸内細菌科細菌に対する最小静菌濃度(MIC)を測定し、MBLs産菌株に対する被検化合物の活性を確認した。抗生物質及び酵素阻害剤をそれぞれ秤量して、滅菌超純水又はジメチルスルホキシドで溶解して母液を調製し、MHA培地を調製し、pH値を7.2~7.4に調整し、121℃で15min滅菌し、55℃の水浴鍋に入れて保温し、二倍希釈法によって母液を被検濃度に希釈し、直接菌懸濁液法によって接種液を製造し、製造した菌液を1mL吸い取って接種チューブに入れ、位置決め針及び接種針をセットした。細菌多点接種装置を起動させて接種した。菌液が寒天で吸収されると、平皿を逆様にして37℃のインキュベータに入れて16~20h培養し、結果を観察した。3回のテストの平均値を取る。化合物単独及び併用の場合のテスト結果を以下の表2、表3に示されたようである。
結論:本発明の化合物単独及びβ-ラクタマーゼ(MBLs)阻害剤と併用する場合の抗菌活性はLYS-228及び市販薬物であるメロペネム、アズトレオナムよりも明らかに優れる。
【表2】
【表3】
【0062】
実験例3:マウスのインビボ薬効の実験評価(マウス大腿筋モデル)
CD-1メスマウス9匹を、1ケージあたり3匹で、3つのケージに入れて、免疫阻害剤であるシクロホスファミド(150mg/kg)を腹腔内注射した。
24時間後、3ケージにあるマウスに免疫阻害剤であるシクロホスファミド(100mg/kg)、MHAプレート蘇生菌株E.coli ATCC-25922を再度腹腔内注射した。蘇生させたコロニーを選択して生理食塩水に溶解し、濃度1.36E+07CFU/mLのE.coli ATCC-25922菌液を製造し、マウス大腿筋肉に感染させた。実験マウスの大腿筋肉への菌液注射量を100μL/匹、即ち、接種量を1.36E+06CFU/匹とした。2h感染後、対照群マウスから大腿筋肉組織を取って生理食塩水10mLに入れ、大腿筋肉組織をホモジネートし、連続希釈してスポッティング(spotting)を行った。
マウスへの投与は具体的には以下のとおりである。
(1)2h感染後:第1ケージにあるマウスを2h感染させるところを終点とし、大腿筋肉組織を生理食塩水10mLに入れて、大腿筋肉組織をホモジネートし、連続希釈してスポッティングし、マウス1匹あたり2回繰り返し、マウスの大腿筋肉組織の菌担持量をカウントした。第3ケージにあるマウスのそれぞれに100mg/kgの化合物1を皮下注射した。
(2)4、6、8h感染後:第3ケージにあるマウスのそれぞれに100mg/kg化合物1を皮下注射した。第2~3ケージにあるマウスを10h感染させるところを終点とし、大腿筋肉組織を生理食塩水10mLに入れて、大腿筋肉組織をホモジネートし、連続希釈してスポッティングし、マウス1匹あたり2回繰り返した。マウス大腿筋肉組織の菌担持量をカウントし、実験結果をまとめて、表4に示す。
【表4】
結論:本発明の化合物は、明らかな感染阻害作用を有する。
【0063】
実験例4:マウス大腿筋肉感染モデルの薬効実験の評価
CD-1メスマウス15匹を、1ケージあたり3匹で、5ケージに入れ、感染当日を0日目とした。
Day-4に免疫阻害剤であるシクロホスファミド150mg/kgを腹腔内注射し、1日目に免疫阻害剤であるシクロホスファミド100mg/kgを再度腹腔内注射して、免疫不全マウスを作成した。
1日目にMHAプレートで菌株Klebsiella pneumoniae ATCC-BAA 2470蘇生をさせた。蘇生させたコロニーを選択して、無菌生理食塩水に溶解し、濃度9.5E+07CFU/mLの菌液を製造して、マウスの大腿筋肉を感染させた。感染開始時間を0hとし、1匹あたり、0hに大腿筋肉に菌液100μLを注射し、即ち、接種量を9.5E+06CFU/mouseとした。2h感染後、実験スキームに従って投与した。具体的な実験スキームは以下のとおりである(表5参照)。
(1)2h感染後:第1ケージにあるマウスを殺し、大腿筋肉組織を無菌生理食塩水10mLに入れて、ホモジナイザーにより組織をホモジネートし、ホモジネート液を連続希釈してスポッティングし、マウス1匹あたり、2回繰り返した。
(2)2h感染後:第2~3ケージについて、マウス体重10mL/kgの体積でそれぞれ治療を施した。第2ケージにあるマウスについて、2hごとに溶媒を皮下投与し、24hを終点とした。第3ケージにあるマウスについて、2hごとに200mg/kgの化合物4を腹腔内注射し、24hを終点とした。終点になると、大腿筋肉組織を摘出し、無菌生理食塩水10mLに入れて、ホモジナイザーにより組織をホモジネートし、ホモジネート液を連続希釈してスポッティングし、マウス1匹あたり、2回繰り返した。マウスの大腿筋肉組織の菌担持量をカウントし、実験結果を表6に示す。
【表5】
【表6】
結論:本発明の化合物は明らかな感染阻害作用を有する。