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特許7446458内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグ、内燃機関および自動車両
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  • 特許-内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグ、内燃機関および自動車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグ、内燃機関および自動車両
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/12 20060101AFI20240301BHJP
   F02B 23/10 20060101ALI20240301BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F02B19/12 A
F02B23/10 310A
F02P13/00 302B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022552505
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021053259
(87)【国際公開番号】W WO2021175551
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】102020001385.6
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ホーリー
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-153221(JP,A)
【文献】特開昭54-069605(JP,A)
【文献】実開平06-030433(JP,U)
【文献】特開昭56-156465(JP,A)
【文献】特開2020-191160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 1/00 ~ 23/10
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグ(10)であって、前記副室点火プラグは副室(12)を有し、前記副室(12)は、複数の開口部(16)を有し、前記開口部(16)を介して前記燃焼室に流体的に接続可能であり、前記開口部を介して燃料空気混合気が前記燃焼室から前記副室(12)内に導入されることができるものであり、および、前記副室(12)内に配置される少なくとも1つの電極装置(18)を有し、前記電極装置(18)によって、前記副室(12)に導入される燃料空気混合気を点火するための少なくとも1つの点火火花を、前記副室(12)内の少なくとも1つの火花位置(O)に発生させることができるものであり、前記副室点火プラグ(10)は、前記開口部(16)を介して前記副室(12)に流入する前記燃料空気混合気のタンブル状の流れ(26)をもたらすように構成され、前記開口部(16)はそれぞれ、前記燃料空気混合気が流れることができる流れ断面を有するものであり、前記タンブル状の流れ(26)は、前記副室(12)の第1の領域(B1)において前記開口部(16)から上方を向く第1の流れ部(T1)と、前記副室(12)の第2の領域(B2)において前記開口部(16)の方向に下方を向く、前記第1の流れ部(T1)に続く第2の流れ部(T2)と、を備えるものであり、前記火花位置(O)が前記第2の領域(B2)に少なくとも部分的に配置されている、前記副室点火プラグ(10)において、
前記火花位置(O)は、前記タンブル状の流れ(26)が前記第2の領域(B2)において下方に向けられる下向きタンブル経路に配置され、および
前記開口部(16)はボアとして形成され、および
少なくとも2つの前記開口部(16)の前記流れ断面は、その形状に関して互いに異なっており、および
前記開口部(16)は、仮想円に沿って配置され、その中心は仮想軸上にあり、ここで、前記仮想軸が延びる仮想平面に対して、前記仮想円を2つの同じ大きさの半分に分割し、前記仮想円の第1の半分に配置される前記開口部(16)の前記流れ断面の合計が、前記仮想円の第2の半分に配置される前記開口部(16)の前記流れ断面の合計よりも大きいものであり、前記副室(12)は、前記仮想軸に対して回転対称であることを特徴とする、前記副室点火プラグ(10)。
【請求項2】
前記開口部(16)が、前記開口部(16)を介して前記副室(12)に流入する燃料空気混合気のタンブル状の流れ(26)をもたらすように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の副室点火プラグ(10)。
【請求項3】
前記仮想軸が前記副室(12)の長手方向に延びることを特徴とする、請求項1または2に記載の副室点火プラグ(10)。
【請求項4】
前記第1の半分に配置される開口部(16)の流れ断面が、前記第2の半分に配置される開口部(16)の流れ断面よりも大きいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の副室点火プラグ(10)。
【請求項5】
前記第1の半分に配置される開口部(16)の数が、前記第2の半分に配置される開口部(16)の数より多いことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の副室点火プラグ(10)。
【請求項6】
前記開口部(16)がそれぞれ直径を有するように、前記開口部(16)が円形であり、前記第1の半分に配置される前記開口部(16)の直径が、前記第2の半分に配置される前記開口部(16)の直径よりも大きいことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の副室点火プラグ(10)。
【請求項7】
自動車両用の内燃機関であって、前記内燃機関は、少なくとも1つの燃焼室を有し、および副室点火プラグ(10)を有するものであり、前記副室点火プラグ(10)は、前記燃焼室に割り当てられ、そして副室(12)を有するものであり、前記副室(12)は、複数の開口部(16)を有し、前記開口部(16)を介して前記燃焼室に流体的に接続され、前記開口部(16)を介して燃料空気混合気が前記燃焼室から前記副室(12)に導入されることができるものであり、および、前記副室(12)内に配置される少なくとも1つの電極装置(18)を有し、前記電極装置(18)によって、前記副室(12)に導入される燃料空気混合気を点火するための少なくとも1つの点火火花を、前記副室(12)内の少なくとも1つの火花位置(O)に発生させることができるものであり、前記副室点火プラグ(10)は、前記開口部(16)を介して前記副室(12)に流入する前記燃料空気混合気のタンブル状の流れ(26)をもたらすように構成され、前記開口部(16)はそれぞれ、前記燃料空気混合気が流れることができる流れ断面を有するものであり、前記タンブル状の流れ(26)は、前記副室(12)の第1の領域(B1)において前記開口部(16)から上方を向く第1の流れ部(T1)と、前記副室(12)の第2の領域(B2)において前記開口部(16)の方向に下方を向く、前記第1の流れ部(T1)に続く第2の流れ部(T2)と、を備えるものであり、前記火花位置(O)が前記第2の領域(B2)に少なくとも部分的に配置されている、前記内燃機関において、
前記火花位置(O)は、前記タンブル状の流れ(26)が前記第2の領域(B2)において下方に向けられる下向きタンブル経路に配置され、および
前記開口部(16)はボアとして形成され、および
少なくとも2つの前記開口部(16)の前記流れ断面は、その形状に関して互いに異なっており、および
前記開口部(16)は、仮想円に沿って配置され、その中心は仮想軸上にあり、ここで、前記仮想軸が延びる仮想平面に対して、前記仮想円を2つの同じ大きさの半分に分割し、前記仮想円の第1の半分に配置される前記開口部(16)の前記流れ断面の合計が、前記仮想円の第2の半分に配置される前記開口部(16)の前記流れ断面の合計よりも大きいものであり、前記副室(12)は、前記仮想軸に対して回転対称であることを特徴とする、前記内燃機関。
【請求項8】
請求項7に記載の内燃機関を有する自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の前文による、特に自動車両の内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグに関する。さらに本発明は、請求項7に記載の前文による、自動車両用の内燃機関に関する。本発明はまた、自動車両、特に自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、内燃機関の予燃焼室配置の予燃焼室先端を開示している。さらに、予燃焼室は特許文献2から知られている。さらに、内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグは、特許文献3から知られていると考えることができる。特許文献4は、点火プラグを開示している。また、特許文献5は、内燃機関を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】EP 2 700 796 A1
【文献】US 2013/0055986 A1
【文献】DE 10 2018 007 093 A1
【文献】特開2012-211594号公報
【文献】DE 10 2018 117 726 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、内燃機関の特に有利な運転が実現され得るような、内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグ、このような副室点火プラグを少なくとも1つ有する内燃機関、および自動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する副室点火プラグによって、請求項7の特徴を有する内燃機関によって、および請求項8の特徴を有する自動車両によって解決される。本発明の好都合な展開を伴う有利な実施形態は、残りの請求項に記載されている。
【0006】
本発明の第1の態様は、特に自動車両用の、内燃機関とも呼ばれる燃焼機関の燃焼室用の副室点火プラグに関する。副室点火プラグは、例えば貫通開口部の形態の複数の開口部を有する副室を有し、この開口部を介して副室が燃焼室に流体的に接続可能である。特に開口部は、まっすぐにまたはむしろ直線状に、好ましくはその全長にわたって延びることができる。単に混合気とも呼ばれる燃料空気混合気は、燃焼室から様々な開口部を介して副室に導入されることができる。
【0007】
副室点火プラグは、さらに少なくとも1つの電極装置を備え、この電極装置は、特に副室内に少なくとも部分的に配置されるか、または副室内に少なくとも部分的に突出しており、かつ、副室内に導入される燃料空気混合気を点火するために、副室内の少なくとも1つの火花位置で少なくとも1つの点火火花を生成するために使用することができる。この目的のために、電極装置は、例えば、少なくともまたは正確に2つの電極を有し、ここで、例えば、一方の電極は、第1の電極とも呼ばれ、他方の電極は、第2の電極とも呼ばれる。電極、特に副室内に配置されるそれらのそれぞれの端部または先端部は、例えば互いに距離が離れているので、例えば、電極、特にそれらの自由端部または先端部は、点火が発生され得る火花領域を形成するまたは範囲を定めるものであり、そこでは点火火花が特に電極間およびまさに特に電極の端部間に生成されることができる。例えば、火花位置は、したがって火花領域であり、その中で、例えば、燃焼機関の燃焼運転中に、点火火花が、燃焼機関の各サイクル内で、電極によって、特に電極間に、特に電極の端部間に生成される。
【0008】
点火火花によって、開口部を介して副室に流入する、単に混合気とも呼ばれる燃料空気混合気が、火花をうけまたは点火され、続いて副室内で燃焼されることができるため、例えば、混合気の点火および燃焼から生じる炎または燃焼フレアが、開口部を介して副室から流出し、燃焼室に流入または進むことができる。その結果、燃焼室内に残留する混合気が燃焼室内で点火される。
【0009】
各開口部は、燃料空気混合気または対応するフレアが流れることができる流れ断面を有する。流れ断面は、例えば、混合気が流れることができる領域、または、混合気によって通過され得る領域または表面積を有する。特に、流れ断面は、混合気が流れることができる各開口部の最小または最低の流れ断面であると理解されるべきである。
【0010】
燃焼機関の特に有利な動作を実現できるようにするために、本発明に従って、副室点火プラグが、開口部を介して副室に流入する燃料空気混合気のタンブル状の流れを引き起こすように構成されていることが提供される。これは、副室点火プラグが、開口部を通って流れる、したがって開口部を介して副室に流入する混合気に、タンブル流とも呼ばれるタンブル状の、したがって円筒状の流れを与えるため、燃料空気混合気のタンブル状の流れが副室内で発生するまたは起こることを意味すると理解されるものとする。タンブル状の流れは、副室内の混合気の円筒状の流れである。円筒状の流れは、ここで円筒状に、特に架空または仮想の円筒軸の周囲を円筒状に延び、ここで、この円筒軸は、例えば、副室点火プラグの軸、特に副室の軸に対して垂直に延びる。当該軸は、例えば、副室の長手方向の中心軸、または副室の主軸、特に副室の長手方向の中心軸または主軸である。副室は、例えば、軸線または長手方向の中心軸に対して回転対称である。特に、軸は、副室点火プラグまたは副室の長手方向に延びる。また、円筒軸が平面に対して垂直に延び、したがって平面の面法線であり、ここでタンブル状の流れは、当該平面内でタンブル状または円筒状に延びることも考えられる。ここで、前述の平面は前述の軸に平行に延びるか、または前述の軸は円筒平面とも呼ばれる当該平面で延びる。特に、副室内の混合気のタンブル状の流れは、開口部の適切な選択および/または構成、特に開口部の数および/または配置に関して、特に前述の軸の周りおよび/またはそれらの流れ断面に関して、特にその形状および/または大きさに関して実現することができる。
【0011】
特に点火動作中の各サイクル内において、副室内で生じるまたは起こるタンブル状の流れは、副室の第1の領域において、特に第1の半分において、開口部から上方を向く流れ部を備える。加えて、副室内で生じるまたは起こるタンブル状の流れは、副室の第2の領域において、特に第2の半分において、開口部の方向に下方を向く、第1の流れ部に続く第2の流れ部を備える。例えば、副室の当該領域または半分は同じ大きさであり、ここで、副室は、例えば分割面によって領域または半分に分割される。分割面は架空平面または仮想平面であり、ここで分割面は、例えば、前述の円筒平面に対して垂直に延びる。特に、分割面は当該軸に平行に延びるか、またはその軸は分割面内を延びる。さらに、火花位置が少なくとも部分的に、特に少なくとも支配的にまたは完全に第2の領域に配置されることが、本発明に従って提供される。例えば副室点火プラグが副室内に複数の火花位置を有し、その各々において少なくとも1つの点火火花を発生させることができる場合、火花位置の少なくとも1つ、全ての火花位置ではない複数の火花位置、または全ての火花位置が、第2の領域に配置されており、タンブル状の流れまたは第2の流れ部が下方を指している、すなわち下方を向いているものと考えられる。第1の流れ部は、上向きの流れ部とも呼ばれ、または上向きであると言われる。
【0012】
従来の副室点火プラグと比較して、ノズルとも呼ばれまたはノズルとして形成される開口部の方向への初期火炎コアの急速な対流は、第2の領域における火花位置の配置によって実現することができる。これにより、副室からの火炎の退出が特に速くなり、拡張された低負荷容量となる。特に、火炎の退出とは、前述の燃焼フレアが開口部を介して副室から流出することを意味すると理解されるものとする。加えて、特に少なくとも1つの電極のより低い挿入深さに関して、燃焼に対してより有利な様式で副室点火プラグの電極の構成を達成することができものであり、ここで少なくとも1つの電極は、例えばいわゆる接地電極として形成される。これにより、表面積が小さくなり、壁の熱損失が低くなる。これにより、従来の副室点火プラグと比較して早期着火の傾向を低減することができる。
【0013】
従来の副室点火プラグでは、特に火花位置の配置、すなわち軸との関係で回転対称であるが、初期火炎コアが対流されていないか、または副室ノズルとも呼ばれる開口部から離れて対流されることは不利である。従来の副室点火プラグの開口部への十分に迅速な火炎コア対流を達成するためには、通常、副室の奥深くに突出する特に長い電極を使用しなければならない。これにより、副室内の表面がギザギザになり、無駄容積が大きくなる。前述の問題および欠点は、本発明による副室点火プラグによって回避することができる。
【0014】
特に、従来の解決法と比較して、副室内の混合気の燃焼は、第2の領域における火花位置の当該配置によって改善され得る。火花位置が第2の領域に配置されるため、およびタンブル状の流れが第2の領域において下方に向けられるため、火花位置は、下向きタンブル経路または下向きタンブル流路とも呼ばれる、または下向きタンブル経路または下向きタンブル流路に沿って流れる、下向き流れ部に配置される。下向きのタンブル経路に火花位置を配置することにより、副室点火プラグの作業面積を従来の解決法と比較して大きくすることができ、それによりアイドリング時および前処理によるより長い予点火リスクのより安定した点火を実現できる。さらに、燃焼の改善は、副室内のより大きな圧力上昇をもたらし、その結果、燃焼室のより深いフレア侵入深さをもたらす。これにより、主燃焼室での燃焼も向上する。フレアの侵入深さは、様々なフレアが副室または燃焼室に侵入する距離、深さまたは経路を意味すると理解されなければならない。各フレアは、混合気が副室内で点火され、その後燃焼されるという事実から生じる。
【0015】
本発明の基礎を形成するさらなる知見は、副室点火プラグが、通常、副室内の流れ構造に従って区別され得ることである。特に、従来の副室点火プラグに関して、副室内の構造のない(混沌とした)流れ形態と回転対称な流れ形態とを区別することができる。流れ構造は、開口部の配置および開口部の対応する構成によって決定される。開口部は、伝統的に、例えば副室の主軸である軸を中心に回転対称に配置される。これにより、副室内で回転対称な流れ構造が得られる。
【0016】
本発明に従って、各開口部はボアとして形成される。代替的にまたは付加的に、少なくとも2つの開口部の流れ断面が、その形状に関して互いに異なることが提供される。代替的にまたは追加的に、開口部は架空円または仮想円に沿って配置され、架空または仮想の中心が架空軸または仮想軸上にあることが提供され、その結果、例えば、開口部は、円に沿って連続して軸の周りに配置される。これは、特に、開口部または流れ断面の領域のそれぞれの中心点または幾何学的重心、特に重心が、仮想円上および円に沿って、特に連続して配置されることを意味すると理解することができる。軸が延びる架空または仮想の分割面に対して、円を2つの同じ大きさの半分に分割するか、同じ大きさまたは等しい長さの2つの部分に分割すると、円の第1の半分に配置される開口部の流れ断面の合計は、円の第2の半分に配置される開口部の流れ断面の合計よりも大きい。特に有利な流れ条件、したがって特に有利な動作を生成するために、副室が軸に対して回転対称であることがここで提供される。
【0017】
分割面は、前述の分割面であることが好ましい。例えば、円の第1の半分は、第1の半円とも呼ばれ、特に完全に、副室の領域の1つにおいて、特に第1の領域に配置され、ここで、円の第2の半分は、第2の半円とも呼ばれ、特に完全に、副室の他の領域において、特に第2の領域に好ましくは配置される。本実施形態の流れ断面の結果として、開口部は、開口部を介して副室内に流入する燃料空気混合気のタンブル状の流れをもたらすように構成されることができる。換言すれば、燃焼機関の燃焼運転において、開口部は、特にまた、それらの配置および/またはそれらの数および/またはそれらの幾何学的形状の結果として、そして、本発明に従って、第1の半円に配置される開口部の流れ断面またはすべての流れ断面の合計が、第2の半円に配置される開口部の流れ断面またはすべての流れ断面の合計よりも大きいため、開口部を通って流れ、したがって燃焼室から副室に流入する、単に混合気とも呼ばれる燃料空気混合気の実質的にタンブル状の流れを、または少なくとも実質的にタンブル状の流れをもたらす。ここでも、異なる表現をすれば、例えば貫通開口部として形成される開口部は、タンブル流とも呼ばれる、少なくとも実質的にタンブル形状の、したがって円筒状の流れを、開口部を流れる、したがって燃焼室から副室に流入する混合気に付与し、その結果、副室点火プラグの、ひいては燃焼機関全体の、特に有利な動作を達成することができる。
【0018】
第1の半円に配置される開口部の流れ断面の合計が、第2の半円に配置される開口部の流れ断面の合計よりも大きいため、ボアとして形成された開口部が、当該軸に対して、または軸の周りに回転非対称に配置されることが本発明に従って提供される。この回転非対称な構成は、断面積とも呼ばれる、または断面積を備える、特定の開口部の対応する位置決めおよび/または流れ断面を備え、または含むことができる。
【0019】
換言すれば、開口部が、軸の周りに、すなわち軸に対して、回転非対称に配置されることが提供されることができる。これは、例えば、開口部が、軸の周りに、したがって、副室の円周方向に、または軸の周りに延びる副室において、非対称に、すなわち不均一に分布して全体に配置されることを特に意味する。代替的に、または付加的に、開口部が軸の周りに回転非対称に配置または形成されるという特徴は、少なくとも2つの開口部が、それらの幾何学的形状、特にそれらのそれぞれの流れ断面の幾何学的形状において互いに異なり、そうすることで、特に軸の周りに、回転非対称な配列を有することを意味すると理解することができる。これは、特に、これらの少なくとも2つの開口部の流れ断面が、特にそれらの形状および/または大きさに関して、すなわち、面積または表面積に関して互いに異なることを意味し、ここで、少なくとも2つの開口部または好ましくは、すべての開口部は、軸の周りに回転非対称な配列を有する。これは、特に、軸周りの少なくとも2つの開口部または好ましくはすべての開口部は、不均一または無秩序な様式で、すなわち規則的な配列に従うことなく、互いに後に続くこと意味する。
【0020】
軸周りの開口部の回転非対称な配置とは対照的に、そして、例えば副室の主軸の周りに螺旋状または環状に延びる、起こり得る回転対称流れとは対照的に、タンブル状の流れは、円筒流とも呼ばれる円筒状の流れであり、例えば主軸が位置する、円筒平面内で少なくとも部分的に延びるか、または円筒平面内を延びる。
【0021】
開口部が、開口部を介して副室に流入する燃料空気混合気のタンブル状の流れをもたらすように構成されている場合、特に有利であることが証明されている。したがって、特に有利な流れ条件を副室内で生成することができ、その結果、混合気の特に有利な燃焼、および結果的に特に有利な動作が確保され得る。
【0022】
さらなる実施形態は、少なくとも2つの開口部が、混合気が流れることができる異なる流れ断面、特に直径、を有するという点で区別される。
【0023】
本発明の特に有利な実施形態では、軸が副室の長手方向に延びることが提供され、それによって、特に有利な動作を実施することができる。
【0024】
さらなる実施形態は、第1の半円上に配置される開口部の流れ断面または全ての流れ断面が、第2の半円上に配置される開口部の流れ断面または全ての流れ断面よりも大きいという点で区別される。したがって、特に有利な流れ条件、したがって特に有利な動作が確保され得る。
【0025】
本発明の特に有利な実施形態では、第1の半分に配置される開口部またはすべての開口部の数が、第2の半分に配置される開口部またはすべての開口部の数よりも大きいことが提供される。したがって、有利なタンブル状の流れを特に有利に生成することができ、その結果、特に有利な動作を生じさせることができる。
【0026】
特に単純で信頼性の高い方法で特に有利な動作を生じさせることができるようにするために、本発明のさらなる実施形態において、開口部がそれぞれ特定の直径を有するように、またはすべての開口部が円形であることが提供される。ここでは、特に、またはすべての流れ断面がそれぞれ円形であり、したがって特定の直径を有することが提供される。ここで、第1の半分に配置される第1の開口部の直径または全ての直径が、第2の半分に配置される第2の開口部の直径または全ての直径よりも大きいことが提供されることが好ましい。
【0027】
本発明のさらなる実施形態において、第1の半円に配置される開口部の流れ断面または全ての流れ断面の平均値は、第2の半円に配置される開口部の流れ断面または全ての流れ断面の平均値よりも大きい。平均値は、好ましくは、算術平均とも呼ばれる算術平均値を意味すると理解されるものとし、これは、例えば、特定の半円に配置される開口部の流れ断面の合計を、その特定の半円に配置される開口部の数で割って、すなわち割ることによって、計算される。
【0028】
本発明の第2の態様は、好ましくは自動車の形態、非常に好ましくは乗用車または商用車の形態であり得る自動車両用の、好ましくはレシプロピストンエンジンの形態の内燃機関に関する。内燃機関は、少なくとも1つの燃焼室を有する。燃焼室は、例えば、シリンダによって区切られ、かつ、ピストンが並進して移動できるようにシリンダ内に配置される内燃機関のピストンによって区切られ、シリンダは、例えば、特にクランクケースまたはシリンダクランクケースとして形成される内燃機関のエンジンハウジングによって形成され、区切られる。加えて、燃焼室は、例えば、燃焼室ルーフで部分的に区切られ、これは、例えば、エンジンハウジングとは別に形成され、エンジンハウジングに接続されたシリンダヘッドによって形成される。
【0029】
燃焼機関は、燃焼室に割り当てられ、例えば、燃焼室内に少なくとも部分的に配置される少なくとも1つの副室点火プラグをさらに含む。
【0030】
副室点火プラグは、複数の開口部を有する副室を備え、この開口部を介して副室が、主燃焼室とも呼ばれる燃焼室に流体的に接続される。単に混合気とも呼ばれる燃料空気混合気は、開口部を介して燃焼室から副室に導入または流入することができる。すなわち、例えば、前述の燃料空気混合気は、燃焼室内に形成されるか、または、燃料空気混合気は燃焼室内に導入される。例えば、燃料、特に液体燃料、および空気は、燃焼室内で混合される。例えば、燃料は燃焼室に直接噴射される。上記混合気は、ここで燃焼室に導入されているまたは導入された空気および燃料を含む。燃焼室からの混合気の少なくとも一部は、開口部を通って流れ、したがって開口部を介して副室に入ることができる。副室内では、混合気の一部に点火して燃焼させることができ、その結果、前述のフレアが生じる。フレアは、開口部を介して副室から流出することができ、そして主燃焼室に流入することができ、そこで残りの混合気を点火することができる。各開口部は、例えば、混合気または各フレアが流れることができる流れ断面を有する。
【0031】
特に有利な動作を実現できるようにするため、本発明に従って、副室点火プラグ、特に開口部が、特に副室内で、開口部を介して副室に流入する燃料空気混合気のタンブル状の流れをもたらすように構成されるかまたは構成されていることが提供される。ここで、副室内で発生するまたは起こるタンブル状の流れは、副室の第1の領域において、開口部から上方を向く、したがって上方に向けられる、第1の流れ部と、そして、副室の第2の領域において、開口部の方向に下方に向く、したがって下方に向けられる、第1の流れ部に続く第2の流れ部と、を備える。
【0032】
また、副室内には点火プラグの電極装置が配置されている。副室に導入された混合気を点火するための少なくとも1つの点火火花は、電極装置によって、副室内の少なくとも1つの火花位置で発生させることができる。ここで、火花位置は、第2の領域において、少なくとも部分的に、特に少なくとも優勢にまたは完全に配置される。本発明によれば、開口部がボアとして形成されることが提供される。代替的に、または追加的に、少なくとも2つの開口部の流れ断面が、それらの形状に関して互いに異なることが提供される。代替的にまたは付加的に、開口部が仮想円に沿って配置され、その中心が仮想軸上にあり、ここで、仮想平面に対して、円を2つの同じ大きさの半分に分割し、その中で軸が延びるものであり、第1の半分に配置される開口部の流れ断面の合計が、第2の半分に配置される開口部の流れ断面の合計よりも大きく、ここで副室は、その軸に対して回転対称であることが提供される。
【0033】
本発明の第1の態様の利点および有利な実施形態は、本発明の第2の態様の利点および有利な実施形態とみなされるべきであり、その逆も同様である。
【0034】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい例示的な実施形態の以下の説明および図面から明らかになるであろう。説明において上述した特徴および特徴の組み合わせ、ならびに図の説明において以下に述べる特徴および/または単独の図に単独で示されている特徴および特徴の組み合わせは、それぞれの場合に示された組み合わせにおいてだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせにおいて、またはそれ自体で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本図は、単独の図において、自動車両の内燃機関の燃焼室のための、本発明による副室点火プラグの概略断面側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
単独の図は、概略断面側面図において、自動車両の、特に乗用車または商用車などの自動車の、例えばシリンダによって形成された、またはシリンダとして形成された、またはシリンダによって区切られた、例えばレシプロピストンエンジンとして形成された、内燃機関の燃焼室用の副室点火プラグ10を示す。自動車両は、内燃機関によって駆動することができる。副室点火プラグ10は、少なくとも1つまたは正確に1つの副室12を有し、その輪郭は図1において14によって示される。副室12は、ノズルとも呼ばれる複数の開口部16を有し、この場合は貫通開口部として形成され、これを介して副室12は燃焼室と流体的に接続される。その完全に製造された状態では、内燃機関は前述の燃焼室および副室点火プラグ10を有し、そのため内燃機関の完全に製造された状態では、副室点火プラグ12は開口部16を介して燃焼室と流体的に接続される。その結果、単に混合気とも呼ばれる燃料空気混合気は、燃焼室から、開口部16を少なくとも部分的に流れることができ、したがって、副室12に流入することができ、その結果、単に混合気とも呼ばれる燃料空気混合気の少なくとも一部は、燃焼室から開口部16を通って流れることができ、したがって開口部16を介して副室12に流入することができる。
【0037】
副室点火プラグ10は、さらに副室12内に少なくとも部分的に配置されている電極装置18を有する。電極装置19は、第1の電極20および第2の電極22を含み、ここで、電極20および22は、特に、それらの対応する自由端部E1およびE2は、副室12内に配置される。副室12内に配置される端部E1およびE2は、ここで互いに距離が離れており、従って接触しない。第1の電極20は、例えば、いわゆる中心電極であり、第2の電極22は、例えば、いわゆる接地電極である。少なくとも1つまたは正確に1つの点火火花は、電極20および22によって、したがって電極装置18によって、特に燃焼運転中に、内燃機関の各サイクル内で、副室12内の少なくともまたは正確に火花位置Oで生成することができる。開口部16を介して副室12に入った混合気は、点火火花によって点火され、続いて燃焼される。同図から、電極20,22、特にそれらの端部E1およびE2は、点火火花のための火花位置Oを定義し、範囲を定め、または境界を形成していることが分かる。例えば、火花位置Oは、少なくとも部分的に、特に少なくとも主としてまたは完全に、電極20と22の間、特に端部E1とE2との間である。言い換えると、点火火花は火花位置Oで発生するか、または点火火花は火花位置から広がる。これは、特に、電極20,22によって、少なくとも1つの点火火花が、副室12内において、火花位置とも呼ばれる火花位置Oに提供されることができることを意味する。燃焼フレアは、副室12内の混合気の点火およびその結果の燃焼から生じ、そして開口部16を通って流れ、したがって副室12から出て、開口部16を介して燃焼室に流入する。その結果、例えば、燃焼室に残る混合気のさらに一部が点火され、続いて燃焼し、したがって前述のピストンを駆動する。
【0038】
この副室点火プラグ10、特に開口部16は、開口部16を介して副室12に流入する混合気のタンブル状の流れをもたらすように構成され、これは矢印24、26によって図に示されており、円筒流、シリンダ流またはタンブル流とも呼ばれる。これは、混合気のタンブル状の流れが、少なくとも副室12内で生じるまたは起こることを意味する。特に、図1に示す矢印24,26は、流れ輪郭とも呼ばれるタンブル状の流れの輪郭を示している。
【0039】
さらに、特に矢印26を参照すると、副室12内で起こるまたは生じるタンブル状の流れが開口部16から上方に向いており、そして副室12の第1の領域B1に配されまたは生じる流れ部T1を備えることが分かる。加えて、タンブル状の流れは、第1の流れ部T1に続く第2の流れ部T2を備え、それは開口部16の方向に下方に向き、配されまたは生じ、副室12の第2の領域B2において流れまたは生じる。火花位置Oは、少なくとも部分的に、特に少なくとも大部分または完全に、タンブル状の流れが下方に向けられる第2の領域B2に配置される。また、この図から、領域B1は第1の半分であり、領域B2は副室12の第2の半分であり、ここで半分が同じ大きさであることも分かる。ここで副室12は、例えば、副室点火プラグ10または副室12の1つの軸または主軸が延びる仮想または仮想分割面Eによって領域B1およびB2に分割される。例えば副室12は、主軸に対して少なくとも略回転対称である。例えば、複数の第1の開口部16は、副室12の第1の半分に配置され、複数の第2の開口部16は、副室12の第2の半分に配置される。
【0040】
分割面Eは、例えば、同図に示すさらなる円筒平面に対して垂直に延び、主軸もその平面内を延びる。ここで、タンブル状の流れは、上述の円筒平面内でタンブル状に延びる。タンブル状の流れにより、無駄容積とも呼ばれる副室12の容積Vを特に低く抑えることができ、その結果、副室点火プラグ10の特に大きな動作領域を確保することができる。また、多方面の開口部16の軸は、図中28で示されている。例えば、各開口部16は、その特定の軸28に対して回転対称であり、また円形でもあるので、例えば、当該軸28は、対応する開口部16の長手方向に延びる。当該軸28は、混合気が燃焼室から対応する開口部16を通って、したがって副室12に流れ込むことができる対応する通過方向と一致する。加えて、例えば、副室12内の混合気の点火から生じる特定のフレアは、対応する開口部16を通って流れ、したがって、副室12から燃焼室に流出することができる。この場合、当該開口部16は、対応する流れ断面を有し、それを通って当該フレアまたは混合気が流れることができる。特に、当該開口部16が円形であるか、または円筒状のボアとしてまたは円筒状のボアによって具現化されている場合、例えばボアとして形成される対応する開口部16の断面とも呼ばれる当該流れ断面は、後者の直径によって特徴付けることができ、ここでは円形とすることができる。また、図中に電極領域EBを見ることができ、その中に電極20,22、特にそれらの端部E1,E2、および/または火花位置Oが配置されている。
【0041】
円筒流と呼ばれるタンブル流は、副室12の主軸と直交する流れ中心を有し、例えば平面E内を延びる。特に、流れ中心は、円筒平面に直交して延びる円筒軸である。タンブル流は、ここで円筒軸を中心に円筒状に延び、これは例えば分割面E内を延び、かつ副室12の主軸に対して垂直に延びる。換言すれば、タンブル流は、混合気の流れが、ボアから離れた第2の領域B2において電極領域EBの方向に流れ、したがって、電極20,22に対して上向きまたは上向きの方向に流れる構造として定義することができ、これは上昇流とも呼ばれ、次いで電極領域EBを流れ、次いで電極領域EBから離れて領域B1をボアの方向に、したがって下向きに流れ、これは下降流とも呼ばれる。したがって、タンブル流は、構造化された流れ形態であり、しかし、これは副室主軸に対して回転対称ではない。
【符号の説明】
【0042】
10 副室点火プラグ
12 副室
14 輪郭
16 開口部
18 電極装置
20 電極
22 電極
24 矢印
26 矢印
28 軸
O 火花位置
B1、B2 領域
E 分割面
EB 電極領域
E1、E2 端部
T1,T2 流れ部
V 容積


図1