(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ヘッドライト装置、及び傾斜車両
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/115 20060101AFI20240301BHJP
B62J 6/023 20200101ALI20240301BHJP
【FI】
B60Q1/115
B62J6/023
(21)【出願番号】P 2022557576
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2021038716
(87)【国際公開番号】W WO2022085712
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2020176820
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】井上 武宏
(72)【発明者】
【氏名】加茂 厚
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓央
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168249(WO,A1)
【文献】特開2018-20772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/08
B60Q 1/14
B62J 6/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のいずれか一方に旋回する時に当該一方へ向けて傾斜する傾斜車両に用いられるように構成されたヘッドライト装置であって、
前記傾斜車両の前方の複数のエリアに対する光の明照射/暗照射を行うように構成され、
前記複数のエリアは、前記傾斜車両の左右の各々の前方にそれぞれ位置する左右一対の斜方エリアのセットを含み、前記斜方エリアのセットの各々は、複数の斜方エリアを含み、前記複数の斜方エリアは、前記傾斜車両の直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する、ヘッドライトと、
前記傾斜車両の直立時に、
前記斜方エリアのセットの各々において、前記複数の斜方エリアの一部を、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとする一方、残りの斜方エリアを暗照射エリアとし、前記暗照射エリアは、最上位斜方エリアを含み、前記アダプティブ照明制御は、前記明照射エリア内に対向車及び/又は先行車が存在するときに、前記複数の斜方エリアのうち前記対向車及び/又は先行車が存在する斜方エリアが前記明照射エリアから前記暗照射エリアに変わるように、前記複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を切り替える制御であり、前記最上位斜方エリアは、前記斜方エリアのセットの中で最も上に位置する前記斜方エリアであり、
前記傾斜車両が左右のいずれか一方に旋回するときに、
前記一方への傾斜角の増加に応じて、前記一方に対応する前記斜方エリアのセット内において、前記最上位斜方エリアの下方で前記最上位斜方エリアと上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアを前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアとしつつ、前記最上位斜方エリアを、前記暗照射エリアから、前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアに変えるように、
前記複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を制御する制御装置
を備える、ヘッドライト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドライト装置であって、
前記斜方エリアのセットの各々において、前記複数の斜方エリアは、1つの水平上斜方エリアを含み、
前記水平上斜方エリアは、前記最上位斜方エリアよりも下方に位置し且つ前記複数の斜方エリアのうち、前記傾斜車両の直立時に水平基準線に最も近い下端を有する斜方エリアであり、
前記傾斜車両の直立時に、前記水平上斜方エリアは、前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアである、ヘッドライト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のヘッドライト装置であって、
前記斜方エリアのセットの各々において、前記複数の斜方エリアは、前記最上位斜方エリアと、前記1つの水平上斜方エリアと、前記上下方向において前記最上位斜方エリアと前記1つの水平上斜方エリアとの間に位置する中間斜方エリアとを含み、前記中間斜方エリアは、1つ又は複数の前記斜方エリアからなり、
前記傾斜車両の直立時に、
前記1つの水平上斜方エリアは、前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアであり、前記最上位斜方エリアは、前記暗照射エリアであり、
前記中間斜方エリアのうち、前記最上位斜方エリアと連なる1つ又は複数の前記斜方エリアは、前記暗照射エリアであり、残りの前記斜方エリアが存在する場合には、当該残りの前記斜方エリアは、前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアである、ヘッドライト装置。
【請求項4】
請求項3に記載のヘッドライト装置であって、
前記制御装置は、前記中間斜方エリアのうち前記1つ又は複数の前記斜方エリアを前記暗照射エリアとする際に、当該斜方エリアが前記最上位斜方エリアより明るく且つ前記1つの水平上斜方エリアより暗くなるように、当該斜方エリアに対応する光源を減光状態で点灯させる、ヘッドライト装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のヘッドライト装置であって、
前記斜方エリアのセットの各々において、前記複数の斜方エリアは、1つの水平下斜方エリアを含み、
前記水平下斜方エリアは、前記複数の斜方エリアのうち、前記傾斜車両の直立時に水平基準線に最も近い上端を有する斜方エリアであり、
前記傾斜車両の直立時に、前記水平下斜方エリアは、前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアである、ヘッドライト装置。
【請求項6】
請求項5に記載のヘッドライト装置であって、
前記斜方エリアのセットの各々において、前記複数の斜方エリアは、前記1つの水平下斜方エリアと、前記上下方向において前記1つの水平下斜方エリアより下方に位置する下方斜方エリアとを含み、前記下方斜方エリアは、1つ又は複数の前記斜方エリアからなり、
前記傾斜車両の直立時に、
前記1つの水平下斜方エリアは、前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアであり、
前記下方斜方エリアのうち、1つの最下位斜方エリア、又は、前記1つの最下位斜方エリア及び前記最下位斜方エリアと連なる1つ若しくは複数の前記斜方エリアは、前記暗照射エリアであり、残りの前記斜方エリアが存在する場合には、当該残りの前記斜方エリアは、前記アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアである、ヘッドライト装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のヘッドライト装置であって、
前記制御装置は、前記下方斜方エリアのうち前記1つの最下位斜方エリア、又は、前記1つの最下位斜方エリア及び前記最下位斜方エリアと連なる1つ若しくは複数の前記斜方エリアを前記暗照射エリアとする際に、当該斜方エリアが前記1つの水平下斜方エリアより暗くなるように、当該斜方エリアに対応する光源を減光状態で点灯させる、ヘッドライト装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のヘッドライト装置であって、
前記制御装置は、
前記傾斜車両が左右のいずれか一方に旋回するときに、
前記一方への傾斜角の増加に応じて、前記一方に対応する前記斜方エリアのセット内において前記明照射エリアが上に移動し、その過程の中で、前記明照射エリアが、前記第二上位斜方エリアから前記最上位斜方エリアに移動するように、
前記複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を制御する、
ヘッドライト装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のヘッドライト装置であって、
前記制御装置は、
前記傾斜車両が左右のいずれか一方に旋回するときに、
前記一方への傾斜角の増加に応じて、前記一方に対応する前記斜方エリアのセット内において前記明照射エリアが全体として前記上下方向に拡大するように前記明照射エリアを構成する前記斜方エリアが増加し、かつ、前記他方における前記明照射エリアが全体として前記上下方向に縮小するように前記明照射エリアを構成する前記斜方エリアが減少し、前記明照射エリアを構成する前記斜方エリアが増加する過程の中で、前記第二上位斜方エリアが前記明照射エリアとなった後に、前記最上位斜方エリアが前記明照射エリアとなるように、
前記複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を制御する、
ヘッドライト装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のヘッドライト装置であって、
前記光の明照射は、前記光の暗照射よりも明るく光を照射することであり、
前記光の暗照射は、前記光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことであり、
前記明照射エリアは、前記暗照射エリアよりも、前記ヘッドライト装置によって照射される光が明るいように設定されており、
前記暗照射エリアは、前記明照射エリアよりも前記ヘッドライト装置により照射される光が暗いか、又は前記ヘッドライト装置により光が照射されないように、設定されている、
ヘッドライト装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のヘッドライト装置であって、
前記斜方エリアに対応する光源の最大明るさの1/2よりも明るい明るさで前記光源を点灯するときに、前記光源に対応する前記斜方エリアは、前記明照射エリアであり、かつ、その明るさは最大であるとした場合、
前記光の明照射は、前記光源に対応する前記斜方エリアの明るさが前記明照射エリアの最大明るさの1/2よりも明るくなるように、光を照射することであり、
前記光の暗照射は、前記光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことであり、
前記明照射エリアは、前記暗照射エリアよりも、前記ヘッドライト装置によって照射される光が明るいように設定されており、
前記暗照射エリアは、前記明照射エリアよりも前記ヘッドライト装置により照射される光が暗いか、又は前記ヘッドライト装置により光が照射されないように、設定されている、ヘッドライト装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載のヘッドライト装置であって、
前記斜方エリアに対応する光源の最大明るさの60%よりも明るい明るさで前記光源を点灯するときに、前記光源に対応する前記斜方エリアは、前記明照射エリアであり、かつ、その明るさは最大であるとした場合、
前記光の明照射は、前記光源に対応する前記斜方エリアの明るさが前記明照射エリアの最大明るさの60%よりも明るくなるように、光を照射することであり、
前記光の暗照射は、前記光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことであり、
前記明照射エリアは、前記暗照射エリアよりも、前記ヘッドライト装置によって照射される光が明るいように設定されており、
前記暗照射エリアは、前記明照射エリアよりも前記ヘッドライト装置により照射される光が暗いか、又は前記ヘッドライト装置により光が照射されないように、設定されている、ヘッドライト装置。
【請求項13】
傾斜車両であって、
左右のいずれか一方に旋回する時に当該一方へ向けて傾斜する傾斜車体と、
請求項1~12の何れか1項に記載のヘッドライト装置と
を備える、傾斜車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜車両に用いられるように構成されたヘッドライト装置、及び傾斜車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対向車及び/又は先行車が存在するか否かに応じて車両前方の複数のエリアに対する光の明照射/暗照射を変化させる機能、すなわち、アダプティブフロントライティング機能を有するヘッドライト装置を備えた傾斜車両が知られている。このような傾斜車両は、例えば、国際公開第2018/168249号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アダプティブフロントライティング機能を有し、傾斜車両に用いられるように構成されたヘッドライト装置であって、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができるヘッドライト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係るヘッドライト装置は、以下の構成を採用する。
(1)ヘッドライト装置は、左右のいずれか一方に旋回する時に当該一方へ向けて傾斜する傾斜車両に用いられるように構成されたヘッドライト装置である。
ヘッドライト装置は、ヘッドライトと、制御装置とを備える。
ヘッドライトは、傾斜車両の前方の複数のエリアに対する光の明照射/暗照射を行うように構成されている。複数のエリアは、傾斜車両の左右の各々の前方にそれぞれ位置する左右一対の斜方エリアのセットを含む。斜方エリアのセットの各々は、複数の斜方エリアを含む。複数の斜方エリアは、傾斜車両の直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する。
制御装置は、傾斜車両の直立時に、斜方エリアのセットの各々において、複数の斜方エリアの一部を、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとする一方、残りの斜方エリアを暗照射エリアとする。暗照射エリアは、最上位斜方エリアを含む。アダプティブ照明制御は、明照射エリア内に対向車及び/又は先行車が存在するときに、複数の斜方エリアのうち対向車及び/又は先行車が存在する斜方エリアが明照射エリアから暗照射エリアに変わるように、複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を切り替える制御である。最上位斜方エリアは、斜方エリアのセットの中で最も上に位置する斜方エリアである。
制御装置は、傾斜車両が左右のいずれか一方に旋回するときに、当該一方への傾斜角の増加に応じて、当該一方に対応する斜方エリアのセット内において、最上位斜方エリアの下方で最上位斜方エリアと上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアをアダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとしつつ、最上位斜方エリアを、暗照射エリアから、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアに変えるように、複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を制御する。
【0006】
(1)のヘッドライト装置によれば、傾斜車両の直立時に、斜方エリアのセットの各々において、複数の斜方エリアの一部を、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとする一方、残りの斜方エリアを暗照射エリアとする。そのため、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができる。つまり、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴う電力消費量や、当該光の明照射に伴って発生する熱量を、低減又は抑制することができる。特に、(1)のヘッドライト装置では、傾斜車両の直立時に、斜方エリアのセットの中で最も上に位置する最上位斜方エリアが暗照射エリアに含まれる。ここで、傾斜車両の直立時に、斜方エリアのセットに含まれる複数の斜方エリアの各々に光を照射すると、最上位斜方エリアに照射された光が傾斜車両から最も遠い位置を照らすことになる。最上位斜方エリアに照射された光が照らす位置に傾斜車両が到達するのに時間がかかる。そのため、傾斜車両の直立時に、最上位斜方エリアへの光の照射は、優先順位が低くなる。つまり、(1)のヘッドライト装置によれば、複数の斜方エリアの一部を明照射エリアにすることで、傾斜車両の乗員にとって良好な前方視認性を得ながら、傾斜車両の直立時に優先順位の低いエリア、すなわち、最上位斜方エリアを暗照射エリアに含めることで、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができる。また、傾斜車両が左右のいずれか一方に旋回するときに、当該一方への傾斜角の増加に応じて、当該一方に対応する斜方エリアのセット内において、最上位斜方エリアの下方で最上位斜方エリアと上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアをアダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとしつつ、最上位斜方エリアを、暗照射エリアから、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアに変える。そのため、傾斜車両の旋回中に乗員が見るエリアを明るく照らすことができる。その結果、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ることができる。特に、(1)のヘッドライト装置では、傾斜車両の旋回時に、斜方エリアのセットの中で最も上に位置する最上位斜方エリアが暗照射エリアから明照射エリアに変わる。傾斜車両の旋回時に、最上位斜方エリアに照射された光が照らす位置は、傾斜車両の進行方向に存在し、かつ、傾斜車両の直立時に照らす位置よりも傾斜車両に近くなる。そのため、傾斜車両の旋回時に、最上位斜方エリアへの光の照射は、優先順位が高くなる。つまり、(1)のヘッドライト装置によれば、傾斜車両の旋回時に優先順位の高いエリア、すなわち、最上位斜方エリアを暗照射エリアから明照射エリアに変えることにより、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ることができる。したがって、(1)のヘッドライト装置によれば、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができる。
【0007】
(2) (1)のヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
斜方エリアのセットの各々において、複数の斜方エリアは、1つの水平上斜方エリアを含む。
水平上斜方エリアは、最上位斜方エリアよりも下方に位置し且つ複数の斜方エリアのうち、傾斜車両の直立時に水平基準線に最も近い下端を有する斜方エリアである。
傾斜車両の直立時に、水平上斜方エリアは、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアである。
【0008】
(2)のヘッドライト装置によれば、傾斜車両の直立時に、水平基準線に最も近い下端を有する水平上斜方エリアが、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアである。そのため、水平基準線近傍を照らして乗員の視認性を確保しながら、エネルギー消費量を低減又は抑制できる。
【0009】
(3) (2)のヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
斜方エリアのセットの各々において、複数の斜方エリアは、最上位斜方エリアと、1つの水平上斜方エリアと、中間斜方エリアとを含む。中間斜方エリアは、上下方向において最上位斜方エリアと1つの水平上斜方エリアとの間に位置する。中間斜方エリアは、1つ又は複数の斜方エリアからなる。
傾斜車両の直立時に、1つの水平上斜方エリアは、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアである。最上位斜方エリアは、暗照射エリアである。中間斜方エリアのうち、最上位斜方エリアと連なる1つ又は複数の斜方エリアは、暗照射エリアである。残りの斜方エリアが存在する場合には、当該残りの斜方エリアは、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアである。
【0010】
(3)のヘッドライト装置によれば、水平基準線近傍を照らして乗員の視認性を確保しながら、エネルギー消費量を低減又は抑制できる。
【0011】
(4) (3)のヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
制御装置は、中間斜方エリアのうち1つ又は複数の斜方エリアを暗照射エリアとする際に、当該斜方エリアが最上位斜方エリアより明るく且つ1つの水平上斜方エリアより暗くなるように、当該斜方エリアに対応する光源を減光状態で点灯させる。
【0012】
(4)のヘッドライト装置によれば、水平基準線近傍を照らして乗員の視認性を確保しながら、エネルギー消費量を低減又は抑制できる。
【0013】
(5) (1)~(4)の何れかのヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
斜方エリアのセットの各々において、複数の斜方エリアは、1つの水平下斜方エリアを含む。
水平下斜方エリアは、複数の斜方エリアのうち、傾斜車両の直立時に水平基準線に最も近い上端を有する斜方エリアである。
傾斜車両の直立時に、水平下斜方エリアは、アダプティブ照明制御が適用された前記明照射エリアである。
【0014】
(5)のヘッドライト装置によれば、傾斜車両の直立時に、水平基準線に最も近い上端を有する水平下斜方エリアが、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアである。そのため、水平基準線近傍を照らして乗員の視認性を確保しながら、エネルギー消費量を低減又は抑制できる。
【0015】
(6) (5)のヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
斜方エリアのセットの各々において、複数の斜方エリアは、1つの水平下斜方エリアと、下方斜方エリアとを含む。下方斜方エリアは、上下方向において1つの水平下斜方エリアより下方に位置する。下方斜方エリアは、1つ又は複数の斜方エリアからなる。
傾斜車両の直立時に、1つの水平下斜方エリアは、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアである。下方斜方エリアのうち、1つの最下位斜方エリア、又は、1つの最下位斜方エリア及び最下位斜方エリアと連なる1つ若しくは複数の斜方エリアは、暗照射エリアである。残りの斜方エリアが存在する場合には、当該残りの斜方エリアは、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアである。
【0016】
(6)のヘッドライト装置によれば、水平基準線近傍を照らして乗員の視認性を確保しながら、エネルギー消費量を低減又は抑制できる。
【0017】
(7) (5)又は(6)のヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
制御装置は、下方斜方エリアのうち1つの最下位斜方エリア、又は、1つの最下位斜方エリア及び最下位斜方エリアと連なる1つ若しくは複数の斜方エリアを暗照射エリアとする際に、当該斜方エリアが1つの水平下斜方エリアより暗くなるように、当該斜方エリアに対応する光源を減光状態で点灯させる。
【0018】
(7)のヘッドライト装置によれば、水平基準線近傍を照らして乗員の視認性を確保しながら、エネルギー消費量を低減又は抑制できる。
【0019】
(8) (1)~(7)の何れかのヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
制御装置は、
傾斜車両が左右のいずれか一方に旋回するときに、当該一方への傾斜角の増加に応じて、当該一方に対応する斜方エリアのセット内において明照射エリアが上に移動し、その過程の中で、明照射エリアが、第二上位斜方エリアから最上位斜方エリアに移動するように、
複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を制御する。
【0020】
(8)のヘッドライト装置によれば、一方への旋回時に、当該一方において、明照射エリアを移動させることにより、当該一方において光の明照射に伴うエネルギー消費量を一定にできる。
【0021】
(9) (1)~(8)の何れかのヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
制御装置は、
傾斜車両が左右のいずれか一方に旋回するときに、
当該一方への傾斜角の増加に応じて、当該一方に対応する斜方エリアのセット内において明照射エリアが全体として上下方向に拡大するように明照射エリアを構成する斜方エリアが増加し、かつ、他方における明照射エリアが全体として上下方向に縮小するように明照射エリアを構成する斜方エリアが減少し、明照射エリアを構成する斜方エリアが増加する過程の中で、第二上位斜方エリアが明照射エリアとなった後に、最上位斜方エリアが明照射エリアとなるように、
複数の斜方エリアに対する光の明照射/暗照射を制御する。
【0022】
(9)のヘッドライト装置によれば、一方への旋回時に、当該一方と他方の両方において、明照射エリアを変化させることにより、光の明照射に伴うエネルギー消費量を全体として一定にできる。左右のバランスをとることで、エネルギー消費量を一定にできる。
【0023】
(10) (1)~(9)の何れかのヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
光の明照射は、光の暗照射よりも明るく光を照射することである。
光の暗照射は、光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことである。
明照射エリアは、暗照射エリアよりも、ヘッドライト装置によって照射される光が明るいように設定されている。
暗照射エリアは、明照射エリアよりもヘッドライト装置により照射される光が暗いか、又はヘッドライト装置により光が照射されないように、設定されている。
【0024】
(10)のヘッドライト装置によれば、傾斜車両の乗員から見て明照射エリアと暗照射エリアとの区別がより明確になる。傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、エネルギー消費量を低減又は抑制することができる。
【0025】
(11) (1)~(10)の何れかのヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
斜方エリアに対応する光源の最大明るさの1/2よりも明るい明るさで光源を点灯するときに、当該光源に対応する斜方エリアは、明照射エリアであり、かつ、その明るさは最大であるとする。
光の明照射は、光源に対応する斜方エリアの明るさが明照射エリアの最大明るさの1/2よりも明るくなるように、光を照射することである。
光の暗照射は、光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことである。
明照射エリアは、暗照射エリアよりも、ヘッドライト装置によって照射される光が明るいように設定されている。
暗照射エリアは、明照射エリアよりもヘッドライト装置により照射される光が暗いか、又はヘッドライト装置により光が照射されないように、設定されている。
【0026】
(11)のヘッドライト装置によれば、光源の最大明るさの1/2よりも明るい明るさで光源を点灯するときに、当該光源に対応する斜方エリアは、明照射エリアであり、かつ、その明るさは最大である。そして、光源に対応する斜方エリアの明るさが明照射エリアの最大明るさの1/2よりも明るくなるように光を照射することで、光の明照射が実現される。そのため、明照射エリアの明るさを確保できる。また、光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことにより、光の暗照射が実現される。そのため、傾斜車両の乗員から見て明照射エリアと暗照射エリアとの区別がより明確になる。したがって、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、エネルギー消費量を低減又は抑制することができる。
【0027】
(12) (1)~(11)の何れかのヘッドライト装置は、例えば、以下の構成を採用する。
斜方エリアに対応する光源の最大明るさの60%よりも明るい明るさで光源を点灯するときに、当該光源に対応する斜方エリアは、明照射エリアであり、かつ、その明るさは最大であるとする。
光の明照射は、光源に対応する斜方エリアの明るさが明照射エリアの最大明るさの60%よりも明るくなるように、光を照射することである。
光の暗照射は、光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことである。
明照射エリアは、暗照射エリアよりも、ヘッドライト装置によって照射される光が明るいように設定されている。
暗照射エリアは、明照射エリアよりもヘッドライト装置により照射される光が暗いか、又はヘッドライト装置により光が照射されないように、設定されている。
【0028】
(12)のヘッドライト装置によれば、光源の最大明るさの60%よりも明るい明るさで光源を点灯するときに、当該光源に対応する斜方エリアは、明照射エリアであり、かつ、その明るさは最大である。そして、光源に対応する斜方エリアの明るさが明照射エリアの最大明るさの60%よりも明るくなるように光を照射することで、光の明照射が実現される。そのため、明照射エリアの明るさを確保できる。また、光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことにより、光の暗照射が実現される。そのため、傾斜車両の乗員から見て明照射エリアと暗照射エリアとの区別がより明確になる。したがって、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、エネルギー消費量を低減又は抑制することができる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る傾斜車両は、左右のいずれか一方に旋回する時に当該一方へ向けて傾斜する傾斜車体と、(1)~(12)の何れかのヘッドライト装置とを備える。
【0030】
このような傾斜車両によれば、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができる。
【0031】
本発明の一実施形態に係るヘッドライト装置において、エリアは、例えば、ヘッドライトに設けられた光源により光が照射される領域である。本発明の一実施形態に係るヘッドライト装置は、固定配光型であり、ヘッドライトの物理的な配光の設定を維持するように構成されている。複数のエリアは、互いの相対的な位置関係が固定されるように設定される。光源は、例えば、発光ダイオード、半導体レーザ、HID(High-Intensity Discharge)バルブ、ハロゲン電球、白熱電球等である。光源は、傾斜車両の前方に直接光を照射してもよいし、光を反射する反射部材を介して傾斜車両の前方に光を照射してもよい。光源は、複数の斜方エリアのそれぞれに対応するように設けられる。光源に電力を供給することで、光源は光を照射する。光源に電力を供給する方法は、特に限定されない。
【0032】
本発明の一実施形態に係るヘッドライト装置において、制御装置は、例えば、ECU(Electric Control Unit)である。ECUは、例えば、IC(Integrated Circuit)、電子部品、回路基板等の組み合わせによって実現される。制御装置が実行する制御は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が不揮発性のメモリに記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムに従って所定の処理を実行すること等によって実現される。
【0033】
複数の斜方エリアは、傾斜車両の直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する。複数の斜方エリアは、互いに部分的に重なり合っていてもよく、全く重なり合っていなくてもよい。複数の斜方エリアのうち、上下方向で隣り合う2つの斜方エリアは、互いに部分的に重なり合っていてもよく、全く互いに重なり合っていなくてもよい。左右の一方に位置する斜方エリアは、その全てが当該一方の空間に含まれるように配置されてもよく、当該斜方エリアの半分超が当該一方の空間に含まれるように配置されてもよい。
【0034】
第二上位斜方エリアは、傾斜車両の直立時に、明照射エリアであってもよいし、暗照射エリアであってもよい。最上位斜方エリアが暗照射エリアから明照射エリアに変わるときに、第二上位斜方エリアが明照射エリアであればよい。最上位斜方エリアが暗照射エリアから明照射エリアに変わった後、第二上位斜方エリアは、明照射エリアであってもよいし、暗照射エリアであってもよい。例えば、最上位斜方エリアが暗照射エリアから明照射エリアに変わるとともに、第二上位斜方エリアが明照射エリアから暗照射エリアに変わってもよい。例えば、傾斜角が最大であるときに、最上位斜方エリアが明照射エリアであり、かつ、第二上位斜方エリアが暗照射エリアであってもよい。
【0035】
水平基準線は、例えば、傾斜車両の直立時において所定エリアの上端に形成されて傾斜車両の左右方向に延びる境界線を傾斜車両の左方向及び右方向の各々に延長した直線である。ここで、所定エリアは、傾斜車両のロービームの照射エリアであってもよく、水平下斜方エリアであってもよい。水平基準線は、例えば、水平下斜方エリアの上端と重なっていてもよいし、水平上斜方エリアの下端と重なっていてもよい。
【0036】
水平上斜方エリアは、第二上位斜方エリアそのものであってもよく、又は第二上位斜方エリアと別であってもよい。水平上斜方エリアと第二上位斜方エリアとが別である場合、傾斜車両の上下方向において、水平上斜方エリアと第二上位斜方エリアとが隣り合ってもよく、水平上斜方エリアと第二上位斜方エリアとの間に1つ又は複数の斜方エリアが存在してもよい。
【0037】
水平下斜方エリアは、第二上位斜方エリアそのものであってもよく又は第二上位斜方エリアと別であってもよい。水平下斜方エリアと第二上位斜方エリアとが別である場合、傾斜車両の上下方向において、水平下斜方エリアと第二上位斜方エリアとが隣り合ってもよく、水平下斜方エリアと第二上位斜方エリアとの間に1つ又は複数の斜方エリアが存在してもよい。
【0038】
明照射エリアの上方への移動は、斜方エリアのセット内での移動を指す。傾斜車両の鉛直方向を基準とした場合、一方への傾斜角の増加に応じた明照射エリアの移動は、上方への移動に見えてもよく、見えなくてもよい。
明照射エリアの上方への移動は、例えば、上下方向に連なる2つ以上の斜方エリアの各々が明照射エリアである場合、一番上の明照射エリアが上方に移動することと、一番下の明照射エリアが上方に移動することとにより実現されてもよい。一番上の明照射エリアが上方に移動することは、当該一番上の明照射エリアに隣接する暗照射エリアに対応する斜方エリアが暗照射エリアから明照射エリアへ切り替わることにより実現される。一番下の明照射エリアが上方に移動することは、当該一番下の明照射エリアに対応する斜方エリアが明照射エリアから暗照射エリアへ切り替わることにより実現される。一番上の明照射エリアが上方に移動することは、一番下の明照射エリアが上方に移動することと同時でなくてもよい。
第二上位斜方エリアから最上位斜方エリアへの明照射エリアの移動は、第二上位斜方エリアの明照射エリアから暗照射エリアへの切替と、最上位斜方エリアの暗照射エリアから明照射エリアへの切替とにより実現されてもよい。この場合、上下方向に1つの明照射エリアが移動する。第二上位斜方エリアから最上位斜方エリアへの明照射エリアの移動は、第二上位斜方エリアが明照射エリアのままで、最上位斜方エリアが暗照射エリアから明照射エリアに変わることにより、実現されてもよい。上下方向に連なる2つ以上の明照射エリアが上下方向に移動してもよい。
【0039】
一方に対応する斜方エリアのセット内において明照射エリアが全体として上下方向に拡大するように明照射エリアを構成する斜方エリアが増加することは、他方における明照射エリアが全体として上下方向に縮小するように明照射エリアを構成する斜方エリアが減少することと同時でなくてもよい。
【0040】
暗照射と明照射との間の切替は、照射/非照射の切替であってもよく、明るさの変化であってもよい。1つのエリア内における明るさの変化は、当該エリアにおいて全体的又は部分的に行われる。
【0041】
暗照射エリアは、アダプティブ照明制御の対象としてもよいし、アダプティブ照明制御の対象でなくてもよい。
【0042】
対向車は、本発明の一実施形態に係るヘッドライト装置を備える傾斜車両が進む方向とは反対の方向に進む車両であれば、特に限定されない。
【0043】
先行車は、本発明の一実施形態に係るヘッドライト装置を備える傾斜車両が進む方向と同じ方向に進む車両であれば、特に限定されない。先行車は、本発明の一実施形態に係るヘッドライト装置を備える傾斜車両と同じ走行レーンを走行していなくてもよい。
【0044】
対向車及び/又は先行車が存在するか否かの判定は、例えば、対向車及び/又は先行車を検出する検出装置からの信号に基づいて行われる。検出装置は、ヘッドライト装置に設けられていてもよい。検出装置は、ヘッドライト装置と有線又は無線により通信可能であるように傾斜車両に設けられていてもよい。このような検出装置は、例えば、対向車及び/又は先行車が発する光を検出可能な光検出装置である。
【0045】
対向車又は先行車が存在するエリアの明照射エリアから暗照射エリアへの変更は、対向車又は先行車が存在するエリアのみを対象として行われてもよく、対向車又は先行車が存在するエリアに加え、他のエリアも対象として行われてもよい。他のエリアとしては、例えば、対向車又は先行車が存在するエリアの周囲のエリアが挙げられる。
【0046】
一実施形態に係るヘッドライト装置において、ヘッドライトは、傾斜車両の前方に光を照射する少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの光源を収容する筐体を含んでいてもよい。筐体は、検出装置を収容してもよい。筐体は、筐体本体と、アウタレンズとを含んでいてもよい。アウタレンズは、筐体本体に取り付けられて、少なくとも1つの光源の前に配置されてもよい。筐体は、制御装置を収容してもよい。
【0047】
本発明の一実施形態において、ヘッドライト装置が用いられる傾斜車両は、例えば、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを備える。傾斜車両は、鞍乗型車両であってもよい。鞍乗型車両とは、乗員が鞍にまたがるような状態で乗車する車両である。傾斜車両は、シットインタイプのシートを備えた車両であってもよい。傾斜車両は、例えば、傾斜車両に推進力を付与する駆動源を備える。駆動源は、エンジンであってもよいし、電動モータであってもよいし、エンジン及び電動モータであってもよい。傾斜車両は、例えば、左右のいずれか一方に旋回する時に当該一方へ向けて傾斜する車体を含む。つまり、車体は、傾斜車両が左方向に旋回するときには左方向に傾斜し、傾斜車両が右方向に旋回するときには右方向に傾斜する。車体は、車体フレームを含む。車体フレームは、複数の部品を組み合わせたフレ-ムであってもよいし、複数の部品を一体的に成形したフレ-ムであってもよい。車体フレームの材料は、アルミ、鉄などの金属であってもよいし、CFRPなどの合成樹脂であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。車体フレームは、傾斜車両の外観部品で構成したモノコック構造であってもよいし、その一部が傾斜車両の外観部品を兼ねるセミモノコック構造であってもよい。
【0048】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、傾斜車両の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができる、アダプティブフロントライティング機能を有し、傾斜車両に用いられるように構成されたヘッドライト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の実施の形態による傾斜車両の左側面図と、当該傾斜車両が備えるヘッドライト装置の概略構成を示すブロック図と、傾斜車両が直立状態から左旋回状態に移行するときに明照射エリアが変化する態様の一例を示す説明図と、対向車及び/又は先行車が存在する斜方エリアが明照射エリアから暗照射エリアに変化する態様の一例を示す説明図とを併せて示す図面である。
【
図2】本発明の実施の形態の変形例1に係るヘッドライト装置を用いた場合において、傾斜車両が直立状態から左旋回状態に移行するときに明照射エリアが変化する態様の一例を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態の変形例2に係るヘッドライト装置を用いた場合において、傾斜車両が直立状態から左旋回状態に移行するときに明照射エリアが変化する態様の一例を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態の変形例3に係るヘッドライト装置を用いた場合において、傾斜車両が直立状態から左旋回状態に移行するときに明照射エリアが変化する態様の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態の変形例4に係るヘッドライト装置を用いた場合において、傾斜車両が直立状態から左旋回状態に移行するときに明照射エリアが変化する態様の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態による傾斜車両の詳細について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施の形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0052】
図1を参照しながら、本発明の実施の形態による傾斜車両10について説明する。
図1は、傾斜車両10の左側面図と、傾斜車両10が備えるヘッドライト装置50のブロック図と、傾斜車両10が直立状態から左旋回状態に移行するときに明照射エリアが変化する様子を示す説明図と、対向車及び/又は先行車が存在する斜方エリアが明照射エリアから暗照射エリアに変化する態様の一例を示す説明図とを併せて示す図面である。
【0053】
図1を参照して、傾斜車両10は、傾斜車体としての車体20と、複数の車輪30と、ハンドル40とを備える。以下、これらについて説明する。
【0054】
車体20は、左右のいずれか一方に旋回する時に当該一方へ向けて傾斜する。つまり、車体20は、傾斜車両10が左方向に旋回するときに左方向に傾斜し、傾斜車両10が右方向に旋回するときに右方向に傾斜する。車体20は、車体フレームを含む。車体フレームにより、パワーユニットが支持される。パワーユニットは、例えば、駆動源としてのエンジンと、変速機等を含む。
【0055】
車体20は、複数の車輪30を支持する。複数の車輪30は、傾斜車両10が左方向に旋回するときには車体20とともに左方向に傾斜し、傾斜車両10が右方向に旋回するときには車体20とともに右方向に傾斜する。複数の車輪30は、乗員がハンドル40を操作することで操舵される前輪30Fと、パワーユニットの動力が伝達されることで回転する後輪30Rとを含む。
【0056】
傾斜車両10は、ヘッドライト装置50をさらに備える。ヘッドライト装置50は、左右のいずれか一方に旋回する時に当該一方へ向けて傾斜する傾斜車両10に用いられるように構成されている。ヘッドライト装置50は、ヘッドライト52と、制御装置54とを含む。
【0057】
ヘッドライト52は、傾斜車両10の前方に光を照射する。ヘッドライト52は、複数の光源を含む。複数の光源の各々は、傾斜車両10の前方に光を照射する。ヘッドライト52は、車体20に支持される。
【0058】
ヘッドライト52は、傾斜車両10の前方の複数のエリアUL、ML、DL、UC、DC、UR、MR、DRに対する光の明照射/暗照射を行うように構成されている。ここで、光の明照射は、光の暗照射よりも明るく光を照射することである。光の暗照射は、光の明照射よりも暗く光を照射すること、又は光を照射しないことである。複数のエリアUL、ML、DL、UC、DC、UR、MR、DRは、傾斜車両10の左の前方に位置する斜方エリアのセットと、傾斜車両10の右の前方に位置する斜方エリアのセットを含む。傾斜車両10の左の前方に位置する斜方エリアのセットは、複数の斜方エリアUL、ML、DLを含む。傾斜車両10の右の前方に位置する斜方エリアのセットは、複数の斜方エリアUR、MR、DRを含む。
【0059】
図1に示す例では、傾斜車両10の左の前方に位置する複数の斜方エリアUL、ML、DLは、3つである。傾斜車両10の左の前方に位置する複数の斜方エリアUL、ML、DLは、傾斜車両10の直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する。
【0060】
図1に示す例では、傾斜車両10の右の前方に位置する複数の斜方エリアUR、MR、DRは、3つである。傾斜車両10の右の前方に位置する複数の斜方エリアUR、MR、DRは、傾斜車両10の直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する。
【0061】
図1に示す例では、複数のエリアUL、ML、DL、UC、DC、UR、MR、DRは、2つの中央エリアUC、DCを含む。2つの中央エリアUC、DCは、傾斜車両10の左右方向において、傾斜車両10の左における複数の斜方エリアUL、ML、DLと傾斜車両10の右における複数の斜方エリアUR、MR、DRの間に位置する。
【0062】
制御装置54は、傾斜車両10の直立時に、傾斜車両10の左において、複数の斜方エリアUL、ML、DLの一部を明照射エリアとする一方、残りの斜方エリアを暗照射エリアとする。ここで、明照射エリアは、暗照射エリアよりも、ヘッドライト装置50によって照射される光が明るいように設定されている。暗照射エリアは、明照射エリアよりもヘッドライト装置50により照射される光が暗いか、又はヘッドライト装置50により光が照射されないように、設定されている。明照射エリアは、傾斜車両10の前方に配置されたスクリーンに向かってヘッドライト52の光を照射することで確認することができる。
図1において、明照射エリアは、その外形を実線で示すとともに、ハッチングを付している。また、暗照射エリアは、その外形を破線で示すとともに、ハッチングを付していない。
【0063】
図1に示す例では、傾斜車両10の直立時において、傾斜車両10の左における明照射エリアは、水平斜方エリアMLである。つまり、傾斜車両10の直立時において、傾斜車両10の左における明照射エリアは、上斜方エリアULと、下方斜方エリアDLとが、暗照射エリアとして残るように、設定される。
図1に示す例では、複数の斜方エリアUL、ML、DLのうち最も上に位置する斜方エリア、つまり、最上位斜方エリアが上斜方エリアULである。そして、上斜方エリアULが、傾斜車両10の直立時に、暗照射エリアに設定される。また、最上位斜方エリアとしての上斜方エリアULの下方で上斜方エリアULと上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアは、水平斜方エリアMLである。そして、水平斜方エリアMLが、傾斜車両10の直立時に、明照射エリアに設定される。なお、
図1に示す例では、傾斜車両10の直立時において、水平斜方エリアMLの上端は、水平基準線HLよりも上に位置し、水平斜方エリアMLの下端は、水平基準線HLよりも下に位置する。つまり、傾斜車両10の直立時において、明照射エリアとしての水平斜方エリアMLは、水平基準線HLより下の空間と上の空間とを含む1つの斜方エリアである。なお、水平基準線HLは、例えば、傾斜車両10の直立時にエリアDCの上端に形成されて傾斜車両10の左右方向に延びる境界線を傾斜車両10の左右方向に延長した直線である。
【0064】
制御装置54は、傾斜車両10の直立時に、傾斜車両10の右において、複数の斜方エリアUR、MR、DRの一部を明照射エリアとする一方、残りの斜方エリアを暗照射エリアとする。
図1に示す例では、傾斜車両10の直立時において、傾斜車両10の右における明照射エリアは、水平斜方エリアMRである。つまり、傾斜車両10の直立時において、傾斜車両10の右における明照射エリアは、上斜方エリアURと、下方斜方エリアDRとが、暗照射エリアとして残るように、設定される。
図1に示す例では、複数の斜方エリアUR、MR、DRのうち最も上に位置する斜方エリア、つまり、最上位斜方エリアが上斜方エリアURである。そして、上斜方エリアURが、傾斜車両10の直立時に、暗照射エリアに設定される。また、最上位斜方エリアとしての上斜方エリアURの下方で上斜方エリアURと上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアは、水平斜方エリアMRである。そして、水平斜方エリアMRが、傾斜車両10の直立時に、明照射エリアに設定される。なお、
図1に示す例では、傾斜車両10の直立時において、水平斜方エリアMRの上端は、水平基準線HLよりも上に位置し、水平斜方エリアMRの下端は、水平基準線HLよりも下に位置する。つまり、傾斜車両10の直立時において、明照射エリアとしての水平斜方エリアMRは、水平基準線HLより下の空間と上の空間とを含む1つの斜方エリアである。
【0065】
明照射エリアには、アダプティブ照明制御が適用されている。アダプティブ照明制御は、明照射エリア内に対向車及び/又は先行車が存在するときに、左右それぞれの複数の斜方エリアUL、ML、DL、UR、MR、DRのうち対向車及び/又は先行車が存在する斜方エリアが明照射エリアから暗照射エリアに変わるように、左右それぞれの複数の斜方エリアUL、ML、DL、UR、MR、DRに対する光の明照射/暗照射を切り替える制御である。
【0066】
制御装置54は、傾斜車両10が左右のいずれか一方に旋回する時に、一方への車体20の傾斜角に応じて、一方に対応する斜方エリアのセット内において、最上位斜方エリアの下方で最上位斜方エリアと上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアをアダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとしつつ、最上位斜方エリアを、暗照射エリアから、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアに変えるように、複数の斜方エリアUL、ML、DL、UR、MR、DRに対する光の明照射/暗照射を制御する。つまり、制御装置54は、傾斜車両10が左右のいずれか一方に旋回する時に、傾斜車両10の乗員による操作なしで、複数の斜方エリアUL、ML、DL、UR、MR、DRに対する光の明照射/暗照射を制御する。
【0067】
車体20の傾斜角は、車体20の直立状態を基準とする。車体20の傾斜角は、車体20の直立状態からの傾斜角である。車体20の傾斜角は、車体20の傾斜角を検出する傾斜角センサによって検出される。傾斜角センサによって検出された車体20の傾斜角を示す信号は、制御装置54に入力される。
【0068】
図1に示す例では、傾斜車両10が左方向に旋回するときに、上斜方エリアULが暗照射エリアから明照射エリアに変化する。これにより、水平斜方エリアMLと上斜方エリアULのそれぞれが明照射エリアになる。つまり、左の明照射エリアは、傾斜車両10の旋回に伴って全体として上下方向に拡大する。一方、右の明照射エリアは、傾斜車両10の旋回に伴って変化しない。
【0069】
なお、上斜方エリアULの暗照射エリアから明照射エリアへの変更は、調光を伴って行われてもよい。調光は、例えば、光の明るさを時間の経過又は傾斜角の変化に応じて徐々に変化させることにより行われる。
【0070】
なお、制御装置54は、傾斜車両10の直立時だけでなく、傾斜車両10が左右のいずれか一方に旋回する時においても、2つの中央エリアUC、DCを明照射エリアにする。
【0071】
ヘッドライト装置50によれば、傾斜車両10の直立時に、斜方エリアのセットの各々において、複数の斜方エリアの一部を、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとする一方、残りの斜方エリアを暗照射エリアとする。そのため、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができる。つまり、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴う電力消費量や、当該光の明照射に伴って発生する熱量を、低減又は抑制することができる。また、傾斜車両10が左右のいずれか一方に旋回するときに、当該一方への傾斜角の増加に応じて、当該一方に対応する斜方エリアのセット内において、最上位斜方エリアの下方で最上位斜方エリアと上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアをアダプティブ照明制御が適用された明照射エリアとしつつ、最上位斜方エリアを、暗照射エリアから、アダプティブ照明制御が適用された明照射エリアに変える。そのため、傾斜車両10の旋回中に乗員が見るエリアを明るく照らすことができる。その結果、傾斜車両10の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ることができる。つまり、ヘッドライト装置50によれば、傾斜車両10の乗員にとっての前方視認性、特に旋回時の良好な前方視認性を得ながら、車両前方の複数のエリアに対する光の明照射に伴うエネルギー消費量を低減又は抑制することができる。
【0072】
(ヘッドライト装置の変形例1)
図2を参照しながら、ヘッドライト装置の変形例1について説明する。変形例1に係るヘッドライト装置は、ヘッドライト装置50と比べて、傾斜車両の前方の複数のエリアが異なるとともに、当該複数のエリアに対する光の明照射/暗照射が異なる。
【0073】
図2に示す例では、傾斜車両の左の前方に位置する複数の斜方エリアUL1、UL2、MUL、MDL、DL1は、5つである。傾斜車両の左の前方に位置する複数の斜方エリアUL1、UL2、MUL、MDL、DL1は、傾斜車両の直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する。複数の斜方エリアUL1、UL2、MUL、MDL、DL1は、傾斜車両の直立時に水平基準線HLに最も近い下端を有するように形成される1つの水平上斜方エリアMULを含む。複数の斜方エリアUL1、UL2、MUL、MDL、DL1は、傾斜車両の直立時に水平基準線HLに最も近い上端を有するように形成される1つの水平下斜方エリアMDLを含む。複数の斜方エリアUL1、UL2、MUL、MDL、DL1は、最上位斜方エリアUL2を含む。複数の斜方エリアUL1、UL2、MUL、MDL、DL1は、中間斜方エリアUL1を含む。中間斜方エリアUL1は、上下方向において最上位斜方エリアUL2と水平上斜方エリアMULとの間に位置する。中間斜方エリアUL1は、最上位斜方エリアUL2と上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアである。複数の斜方エリアUL1、UL2、MUL、MDL、DL1は、上下方向において水平下斜方エリアMDLよりも下方に位置する下方斜方エリアDL1を含む。下方斜方エリアDL1は、最下位斜方エリアである。
【0074】
図2に示す例では、傾斜車両の右の前方に位置する複数の斜方エリアUR1、UR2、MUR、MDR、DR1は、5つである。傾斜車両の右の前方に位置する複数の斜方エリアUR1、UR2、MUR、MDR、DR1は、傾斜車両の直立時に互いに上下方向に異なる高さに位置する。複数の斜方エリアUR1、UR2、MUR、MDR、DR1は、傾斜車両の直立時に水平基準線HLに最も近い下端を有するように形成される1つの水平上斜方エリアMURを含む。複数の斜方エリアUR1、UR2、MUR、MDR、DR1は、傾斜車両の直立時に水平基準線HLに最も近い上端を有するように形成される1つの水平下斜方エリアMDRを含む。複数の斜方エリアUR1、UR2、MUR、MDR、DR1は、最上位斜方エリアUR2を含む。複数の斜方エリアUR1、UR2、MUR、MDR、DR1は、中間斜方エリアUR1を含む。中間斜方エリアUR1は、上下方向において最上位斜方エリアUR2と水平上斜方エリアMURとの間に位置する。中間斜方エリアUR1は、最上位斜方エリアUR2と上下方向に隣り合う第二上位斜方エリアである。複数の斜方エリアUR1、UR2、MUR、MDR、DR1は、上下方向において水平下斜方エリアMDRよりも下方に位置する下方斜方エリアDR1を含む。下方斜方エリアDR1は、最下位斜方エリアである。
【0075】
図2に示す例では、傾斜車両の直立時において、傾斜車両の左における明照射エリアは、水平上斜方エリアMUL及び水平下斜方エリアMDLである。そして、傾斜車両の直立時において、傾斜車両の左における明照射エリアは、最上位斜方エリアUL2と、中間斜方エリアUL1と、下方斜方エリアDL1とが、暗照射エリアとして残るように、設定される。なお、
図2では、光が照射されないように設定された暗照射エリアは、その外形を破線で示すとともに、ハッチングを付していない。光が減光状態で照射されるように設定された暗照射エリアは、その外形を破線で示すとともに、ハッチングを付している。つまり、最上位斜方エリアUL2は、光が照射されないように設定された暗照射エリアであり、中間斜方エリアUL1と下方斜方エリアDL1は、光が減光状態で照射されるように設定された暗照射エリアである。
【0076】
図2に示す例では、傾斜車両の直立時において、傾斜車両の右における明照射エリアは、水平上斜方エリアMUR及び水平下斜方エリアMDRである。そして、傾斜車両の直立時において、傾斜車両の右における明照射エリアは、最上位斜方エリアUR2と、中間斜方エリアUR1と、下方斜方エリアDR1とが、暗照射エリアとして残るように、設定される。最上位斜方エリアUR2は、光が照射されないように設定された暗照射エリアであり、中間斜方エリアUR1と下方斜方エリアDR1は、光が減光状態で照射されるように設定された暗照射エリアである。
【0077】
図2に示す例では、傾斜車両が左方向に旋回するときに、左の明照射エリアが、2つの斜方エリアから3つの斜方エリアに拡大し、その後、上方向に移動する。一方、右の明照射エリアは、2つの斜方エリアから1つの斜方エリアに縮小し、その後、消失する。
【0078】
(ヘッドライト装置の他の変形例)
傾斜車両の直立時における明照射エリアと暗照射エリアは、
図2に示す例に限定されない。例えば、
図3、
図4及び
図5に示すように、傾斜車両の直立時における明照射エリアと暗照射エリアを設定してもよい。なお、
図4及び
図5では、傾斜車両の左の前方に位置する複数の斜方エリアUL2、UL1、MUL、MDL、DL1、DL2は、6つである。下方斜方エリアDL2が、最下位斜方エリアである。傾斜車両の右の前方に位置する複数の斜方エリアUR2、UR1、MUR、MDR、DR1、DR2は、6つである。下方斜方エリアDR2が、最下位斜方エリアである。なお、
図4及び
図5では、明照射エリアにハッチングを付しており、暗照射エリアにハッチングを付していない。
【0079】
(その他の実施形態)
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【0080】
例えば、
図1~5に示す例では、エリアUCが明照射エリアになっているが、エリアUCは暗照射エリアであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 傾斜車両
20 車体
50 ヘッドライト装置
52 ヘッドライト
54 制御装置