(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】小分子標的を同定するためのハイスループットスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/48 20060101AFI20240301BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240301BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240301BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20240301BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20240301BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
C12Q1/48 Z
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
C40B40/06
C12N1/16 Z
C12N1/19
(21)【出願番号】P 2022559815
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021027111
(87)【国際公開番号】W WO2021231013
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-29
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522384318
【氏名又は名称】エー-アルファ バイオ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤンガー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ロペズ,ランドルフ
(72)【発明者】
【氏名】セン,アーピタ
(72)【発明者】
【氏名】エマーソン,ライアン
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-100746(JP,A)
【文献】PNAS,2017年,Vol.114, No.46,pp.12166-12171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N 15/
C40B 40/06
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1の培養物において、一倍体酵母細胞の表面に、
i)1つ又は複数の野生型標的化タンパク質;及び/又は
ii)前記野生型標的化タンパク質とは少なくとも1つのアミノ酸が異なる1つ又は複数の修飾された標的化タンパク質
の1つ又は両方を発現させること;
b)第2の培養物において、一倍体酵母細胞の表面に、
i)1つ又は複数の野生型標的タンパク質;及び/又は
ii)前記野生型標的タンパク質とは少なくとも1つのアミノ酸が異なる1つ又は複数の修飾された標的タンパク質
の1つ又は両方を発現させること;
c)標的化タンパク質と標的タンパク質との結合が二倍体酵母細胞の形成をもたらすように、前記一倍体酵母細胞の第1の培養物と一倍体酵母細胞の第2の培養物を単一液体培養物に合わせること;及び
d)前記第1及び第2の培養物の前記一倍体酵母細胞間の交配事象の数に基づいて、前記野生型標的タンパク質と前記野生型標的化タンパク質との間の相互作用よりも
少なくとも10倍小さい、前記標的化タンパク質と前記標的タンパク質との間の解離定数を生じる、前記標的化タンパク質及び/又は標的タンパク質、又は前記標的化タンパク質及び前記標的タンパク質の両方の、アミノ酸配列変異を決定すること
を含む方法であって、
前記野生型標的タンパク質と前記野生型標的化タンパク質との間の相互作用が、100nMより大きい解離定数(Kd)を有し;
前記標的化タンパク質又は標的タンパク質のいずれかがユビキチンリガーゼであ
り、
少なくとも1つの前記第1の培養物又は前記第2の培養物が、それぞれ、1つ又は複数の修飾された標的化タンパク質又は標的タンパク質を発現する一倍体酵母細胞を含む、
方法。
【請求項2】
前記修飾された標的タンパク質及び/又は標的化タンパク質の1つ又は複数が、それぞれの野生型標的タンパク質又は野生型標的化タンパク質の切断型バージョンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の変異が、標的化、ランダム、又は部位飽和変異誘発によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記修飾された標的化タンパク質と前記標的タンパク質との間の弱い又は強い相互作用が、前記野生型標的化タンパク質と野生型標的タンパク質との間の相互作用よりも約20、30、40、50、100、500、1000パーセント弱いか又は強いと決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記弱い相互作用が、1マイクロモーラー又は10マイクロモーラーより大きい解離定数(Kd)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記強い相互作用が、10ナノモーラー又は1ナノモーラー未満の解離定数(Kd)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記弱い相互作用と1つ又は複数の強い相互作用との間の差が、1、2、又は3桁以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記ユビキチンリガーゼが、E3ユビキチンリガーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つ又は複数の前記変異が、標的化タンパク質及び/又は標的タンパク質に立体バルクを付加する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記強い相互作用を構成する2つのタンパク質間の界面の構造を決定することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記構造が、結晶学を使用して決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記構造が、続いてコンピューターモデリングを用いて決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記弱い相互作用の前記構造が、その後、前記強い相互作用の前記構造を取得し、全てのアミノ酸を前記野生型標的タンパク質及び前記野生型標的化タンパク質に見出されるものにコンピューターで復元することによって予測される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記弱い相互作用を安定化させる小分子化合物を同定することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記一倍体酵母細胞の表面上で前記タンパク質を発現させるためにポリヌクレオチドライブラリーを使用することをさらに含み、前記ポリヌクレオチドライブラリーが、10,000個までの標的化タンパク質及び10,000個までの標的タンパク質をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記一倍体酵母細胞の第1及び第2の培養物がそれぞれ、いかなる天然の有性凝集プロセスによっても交配することができない、Mat a細胞及びMat α細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
決定ステップにおける交配事象の数が、次世代DNA配列決定によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ユビキチンリガーゼが、E3ユビキチンリガーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記ユビキチンリガーゼが、E3ユビキチンリガーゼである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ユビキチンリガーゼが、E3ユビキチンリガーゼである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2020年5月11日に出願された米国仮特許出願第63/023,181号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 細胞内の生物学的プロセスを標的として薬理学的な介入を行うことは、創薬の中心的な目標である。特定の標的タンパク質に対する阻害薬を同定するプロセスは、標的に対する高い親和性、標的効果に対する高い効力及び選択性、及び毒性及び意図しないオフターゲット効果を最小限に抑えながら、目的の組織で十分に高い薬物濃度を維持して所望の薬理学的効果を維持する用量を特定することの需要を満たさなければならない。小分子は、原形質膜を通過し、広範囲の組織及び作用部位にアクセスし、複数の標的に同時に影響を及ぼし、経済的に大規模で産生することができる能力を有するため、細胞内標的の調節の魅力的な候補である。
【0003】
[0003] ユビキチン-プロテアソームシステム(UPS)は、真核生物種全体で高度に保存された内因性の細胞内タンパク質分解システムである。E3ユビキチンリガーゼによる標的タンパク質のポリユビキチン化は、標的タンパク質が、その後、標的タンパク質基質をタンパク質分解的に分解するマルチユニット円筒構造であるプロテアソームにより破壊されることを運命づける。この高度に調節されたタンパク質分解システムは、細胞の恒常性にとって重要であり、様々な病状で撹乱され得る。この天然のタンパク質分解システムを利用して特定の疾患標的をタンパク質レベルで調節することは、現在活発に研究されている分野であり、特に、これまで「創薬不可能」と考えられてきた標的に対し、治療の大きな可能性を有する。
【0004】
[0004] E3ユビキチンリガーゼによる標的タンパク質、基質へのユビキチン分子の移動は、基質認識及び近接の両方によって媒介される。天然の状況では、基質認識のいくつかの異なるメカニズムが存在し、その大半はデグロン(E3ユビキチンリガーゼによって認識され、リガーゼと標的タンパク質基質間の相互作用を媒介する、標的タンパク質上の短いアミノ酸配列又は化学モチーフ)を含む。標的タンパク質のN末端のN-デグロンは、タンパク質分解的切断によって明らかになり、E3ユビキチンリガーゼによる認識を媒介する可能性がある。ホスホデグロンは、標的タンパク質のチロシン、セリン、又はスレオニン残基のリン酸化によって、活性で認識される形態に変換される。ユビキチンリガーゼは、リガーゼ-基質結合部位内の安定化により、基質のリン酸化されたバージョンのみを認識し、リン酸化されていない基質は認識されない可能性がある。さらに、基質の酸素、小分子、又は構造モチーフもデグロン認識に影響を与え得る。
【0005】
[0005] 以前の研究では、標的タンパク質と相互作用することが知られている小分子が、E3ユビキチンリガーゼと相互作用することが知られているエピトープに結合し、標的タンパク質とE3ユビキチンリガーゼとの間の近接ベースの相互作用を媒介し、それにより、目的タンパク質の細胞分解を引き起こす可能性があることが実証された。いわゆる「タンパク質分解誘導キメラ」又はPROTACは、E3ユビキチンリガーゼと分解標的との間の三元複合体の人為的安定化が標的の分解の成功をもたらすことを示した。PROTACは、リンカーで接続された2つの小分子で構成される。しかし、大半のPROTACは、分子量が比較的大きいこと、物理化学的特性、及び薬学的特性のため、小分子薬の候補としては不適切である。
【0006】
[0006] 最近、あるクラスの小分子が、E3ユビキチンリガーゼとその標的タンパク質基質との間の相互作用を媒介又は誘導することが示された。レナリドマイド及びポマリドミドを含むサリドマイド類似体は、E3ユビキチンリガーゼCRL4CRBNに結合し、Ikaros(IKZF1)、Aiolos、及びCK1αを含む様々な標的の分解を驚くべき汎用性及び選択性をもって誘導する。これらの発見は、とりわけ、タンパク質間相互作用(例えば、E3ユビキチンリガーゼと新規標的タンパク質との間)を刺激し得る小分子を同定し、治療標的を同定する機会に光をあてた。例えば、小分子は、従来の小分子阻害剤に耐性のある創薬不可能なタンパク質のUPS媒介性分解を化学的に誘導するように同定又は設計され得る。
【0007】
[0007] 本明細書に開示される方法は、既存のタンパク質間相互作用スクリーニングアプローチ、例えばファージ提示又は酵母表面提示を超えるいくつかの明確な利点を含む。第1に、本明細書に開示される方法は、ライブラリーごとのスクリーニング、すなわち、ある複数の潜在的なタンパク質結合パートナーと別の複数のタンパク質結合パートナーとの間の相互作用をまとめてハイスループットな方法で調査することを可能にする。ファージ及び酵母表面提示技術は、既存の蛍光レポーターのスペクトル分解能により、限られた数の標的に対する結合のみを同時にスクリーニングできる。例えば、そのような技術は、一度に少数のE3ユビキチンリガーゼのみの標的をスクリーニングすることに限定されるであろう。本明細書に開示される方法は、多数のE3ユビキチンリガーゼの多数のバリアントの標的を一度に1回のアッセイでスクリーニングすることを可能にする。
【0008】
[0008] 第2に、本明細書に開示される方法は、非常に細かいレベルの分解能で相互作用強度の定量的結果を提供する。既存のアプローチは、研究者によって確立された特定の閾値を超える強力な相互作用の検出のみに制限され、それらの強力な相互作用のみを強化する可能性がある。本明細書に開示される方法は、例えば、第2のタンパク質結合パートナーの部位飽和変異誘発(SSM)ライブラリーに対する1つのタンパク質結合パートナーの部位飽和変異誘発(SSM)ライブラリーのスクリーニング中に、潜在的なタンパク質結合パートナーのバリアント間の結合親和性の微妙な調節を検出し得る。他のスクリーニングプラットフォームでは検出されなかったであろう、結合界面での変異のわずかな定量的効果が、本明細書に開示される方法によって検出され得る。さらに、本明細書に開示される方法は、タンパク質を標的とする潜在的に新規な基質、例えば、E3ユビキチンリガーゼの新規基質を検出及び同定するのに特に好適である。E3ユビキチンリガーゼとこれまで知られていなかった基質との間の相互作用は、小分子の発見及び設計の魅力的な候補である。
【0009】
[0009] 最後に、本明細書に開示された方法は、ハイスループットで、高速で、費用対効果が高い。本明細書に開示される方法によって可能になる広範なライブラリーごとの研究における全てのタンパク質結合パートナーは、遺伝的にコードされ、酵母細胞によって産生される。高価で手間のかかる組換えタンパク質の発現及び精製は必要でない。何千もの潜在的な相互作用が、1回のアッセイで迅速且つ安価にスクリーニングされる。
【0010】
[0010] 上記の理由から、タンパク質結合パートナーの対、例えば、E3ユビキチンリガーゼ及びその標的タンパク質基質を発見するための、合理的なハイスループット法への需要があり、その相互作用は小分子による調節を受けやすい可能性がある。このようなタンパク質結合パートナーの対が発見された後、ハイスループット小分子スクリーニングキャンペーン又はタンパク質間界面の結晶構造に基づく合理的なドラッグデザイン。本明細書に開示される方法は、その需要を満たすものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
[0011] いくつかの実施形態では、タンパク質間相互作用をアッセイするための方法が提供され、この方法は、第1の複数の組換え一倍体酵母細胞の表面上に発現及び提示された複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種を提供することであって、第1の複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種が、野生型ポリペプチドユビキチンリガーゼ種と、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で改変された変異ポリペプチドユビキチンリガーゼ種とのライブラリーを含むこと;第2の複数の組換え一倍体酵母細胞の表面上に発現及び提示された複数のポリペプチド基質種を提供することであって、複数のポリペプチド基質種が、野生型ポリペプチド基質種と、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で改変された変異ポリペプチド基質種とのライブラリーを含むこと;第1の複数の組換え一倍体酵母細胞と第2の複数の組換え一倍体酵母細胞を液体培地中で合わせて、培養物を産生すること;複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種の1つ又は複数と複数のポリペプチド基質種の1つ又は複数との間の1つ又は複数の相互作用が、第1の複数の組換え一倍体酵母細胞の1つ又は複数と第2の複数の組換え一倍体酵母細胞の1つ又は複数との間の1つ又は複数の交配事象を媒介するような条件下で一定期間、培養物を増殖させて、1つ又は複数の二倍体酵母細胞を産生すること;培養物中の交配事象の数に基づいて、複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種の1つ又は複数と複数のポリペプチド基質種の1つ又は複数との間の相互作用の強さを決定すること;及びポリペプチドの対を同定することであって、ポリペプチドユビキチンリガーゼ種の1つ及びポリペプチド基質種の1つのうち1つ又は両方が、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で修飾されており、ポリペプチドユビキチンリガーゼ種とポリペプチド基質種との間の相互作用の強さ(KD)が、対応する野生型ポリペプチド種間の相互作用よりも少なくとも10%強い又は弱いことを含む。
【0012】
[0012] さらなる実施形態では、ポリペプチドユビキチンリガーゼ種とポリペプチド基質種との間の相互作用の強さ(KD)は、対応する野生型ポリペプチド種間の相互作用よりも少なくとも25%強い又は弱い。またさらなる実施形態では、1つ又は複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種は、E3ユビキチンリガーゼ種である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のポリペプチド基質種は、既知の又は予測されるデグロンモチーフを含む。他の実施形態では、第1の複数のポリペプチドの1つ又は複数は、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で修飾されて、ポリペプチドのドメインに立体バルク(steric bulk)を導入している。
【0013】
[0013] 他の実施形態では、方法は、ポリペプチドユビキチンリガーゼ種とポリペプチド基質種との間の界面の構造を決定するために、ポリペプチドユビキチンリガーゼ種と、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で修飾されたポリペプチド基質種との間の界面をコンピューターでモデル化することをさらに含む。さらなる実施形態では、増殖ステップは、1つ又は複数の小分子、タンパク質、ペプチド、医薬化合物、又は他の化学物質の存在下で培養物を増殖させることをさらに含む。
【0014】
[0014] さらに他の実施形態では、同定ステップは、ポリペプチドの対を同定することをさらに含み、ここで、1つ又は複数の小分子、タンパク質、ペプチド、医薬化合物、又は他の化学物質の存在下でのポリペプチドユビキチンリガーゼ種とポリペプチド基質種との間の相互作用の強さ(KD)は、1つ又は複数の小分子、タンパク質、ペプチド、医薬化合物、又は他の化学物質の非存在下でのポリペプチドユビキチンリガーゼ種とポリペプチド基質種との間の相互作用より少なくとも10%強い又は弱い。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態では、複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種は野生型ユビキチンリガーゼ種であり、複数のポリペプチド基質種は野生型ポリペプチド基質種である。他の実施形態では、複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種の1つと複数のポリペプチド基質種の1つとの間の相互作用は、1つ又は複数の小分子、タンパク質、ペプチド、医薬化合物の存在下で検出され、小分子、タンパク質、ペプチド、医薬化合物、又は他の化学物質の非存在下では、複数のポリペプチドユビキチンリガーゼ種の1つと複数のポリペプチド基質種の1つとの間では、相互作用は検出されない。
【0016】
[0016] 他の実施形態では、タンパク質間相互作用をアッセイするための方法が提供され、この方法は、第1の複数の組換え一倍体酵母細胞の表面上に発現及び提示された複数の第1のタンパク質結合パートナーを提供することであって、複数の第1のタンパク質結合パートナーが、野生型ポリペプチド種と、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で改変された変異ポリペプチド種とのライブラリーを含むこと;第2の複数の組換え一倍体酵母細胞の表面上に発現及び提示された複数の第2のタンパク質結合パートナーを提供することであって、複数の第2のタンパク質結合パートナーが、野生型ポリペプチド種と、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で改変された変異ポリペプチド種とのライブラリーを含むこと;第1の複数の組換え一倍体酵母細胞と第2の複数の組換え一倍体酵母細胞を液体培地中で合わせて、培養物を産生すること;複数の第1のタンパク質結合パートナーの1つ又は複数と複数の第2のタンパク質結合パートナーの1つ又は複数との間の1つ又は複数の相互作用が、第1の複数の組換え一倍体酵母細胞の1つ又は複数と第2の複数の組換え一倍体酵母細胞の1つ又は複数との間の1つ又は複数の交配事象を媒介するような条件下で一定期間、培養物を増殖させて、1つ又は複数の二倍体酵母細胞を産生すること;培養物中の交配事象の数に基づいて、複数の第1のタンパク質結合パートナーの1つ又は複数と複数の第2のタンパク質結合パートナーの1つ又は複数との間の相互作用の強度を決定すること;及びポリペプチドの対を同定することであって、第1のタンパク質結合パートナーの1つ及び第2のタンパク質結合パートナーの1つのうち1つ又は両方が、変異誘発によって1つ又は複数のアミノ酸残基位置で修飾されており、第1のタンパク質結合パートナーと第2のタンパク質結合パートナーとの間の相互作用の強度(KD)が、対応する野生型ポリペプチド種間の相互作用よりも少なくとも10%強い又は弱いことを含む。
【0017】
図面の簡単な説明
[0017] 本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、1つ又は複数の実施形態を示し、記述とともにこれらの実施形態を説明する。添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。添付のグラフ及び図面に示されている値寸法は、説明のみを目的としており、実際の値又は好ましい値又は寸法を表している場合も表していない場合もある。該当する場合、基礎となる特徴の説明を補助するために、一部又は全ての特徴が図示されていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】[0018]本明細書に開示される方法のライブラリーごとのスクリーニング能力及び解像度を示す一連のチャートを示す。
【
図2A】[0019]複合体中で相互作用する2つのタンパク質結合パートナーの概略図であり、2つのタンパク質結合パートナー間の界面及び2つのタンパク質結合パートナーの部位飽和変異誘発(SSM)スクリーンを強調している。
【
図2B】[0020]2つのタンパク質結合パートナーのSSMライブラリー間の相互作用のライブラリーごとのスクリーニングについて本明細書に開示される方法によって生成された相対強度データを表すヒートマップである。
【
図3A】[0021]
図2Bのヒートマップに示されるタンパク質間相互作用のサブセットについての定量的相互作用データのグラフ表示であり、野生型タンパク質結合パートナーが高親和性で相互作用し、変異体タンパク質結合パートナーが高親和性で相互作用するが、第1又は第2のタンパク質結合パートナーのいずれかの変異体が他のタンパク質結合パートナーの野生型と相互作用しないシナリオを示す。
【
図3B】[0022]
図2Bのヒートマップに示されるタンパク質間相互作用のサブセットについての定量的相互作用データのグラフ表示であり、第1のタンパク質結合パートナーの野生型及び変異型の両方が、第2のタンパク質結合パートナーの野生型と相互作用するが、野生型の第1のタンパク質結合パートナーは、変異型の第2のタンパク質結合パートナーと相互作用しない、すなわち、第2のタンパク質結合パートナーの変異は、野生型の第1のタンパク質結合パートナーとの相互作用を無効にするシナリオを示す。
【
図3C】[0023]
図2Bのヒートマップに示されるタンパク質間相互作用のサブセットについての定量的相互作用データのグラフ表示であり、第1のタンパク質結合パートナーの野生型及び変異型の両方が、第2のタンパク質結合パートナーの変異型と相互作用するが、変異型の第1のタンパク質結合パートナーは、野生型の第2のタンパク質結合パートナーと相互作用しない、すなわち、第1のタンパク質結合パートナーの変異は、野生型の第2のタンパク質結合パートナーとの相互作用を無効にするシナリオを示す。
【
図4】[0024]本明細書に開示される方法を使用したライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーニングのワークフローを示す。
【
図5】[0025]本明細書に開示される方法を使用した候補小分子の存在下でのライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーニングのワークフローを示す。
【
図6A】[0026]2つのタンパク質結合パートナー間の相互作用に対する既知の小分子アゴニストの効果を検出するための、本明細書に開示される方法の能力を示す。
【
図6B】[0027]本明細書に開示される方法によって検出される、FKBP12とFRBドメインとの間の相互作用に対するラパマイシン及びその類似体のアゴニスト効果を示すプロットである。
【
図7A】[0028]CRBNとIKZF1との間の相互作用を媒介するサリドマイド又はその類似体を示す概略図である。
【
図7B】[0029]変異CRBNではなく野生型CRBNとのIKZF1の相互作用に対するサリドマイド、レナリドマイド、及びポマリドミドのアゴニスト効果を強調するチャートである。
【
図8】[0030]機能的小分子スクリーニングの候補を示し得る、タンパク質結合パートナーにおける推定上の「ホール」を同定するための、本明細書に開示される方法によるプロセスを示す概略図である。
【
図9】[0031]本明細書に開示される方法による、第1のタンパク質結合パートナーと第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーとの間の相互作用についてのスクリーニングを示す概略図である。
【
図10】[0032]第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーと第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーとの間の相互作用についてのスクリーニングを示す概略図である。
【
図11】[0033]本明細書で開示される方法のワークフローを示すフローチャートである。
【
図12】[0034]本明細書に開示される方法を使用したライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーニングのワークフローを示し、ここで、タンパク質結合パートナーの第1のライブラリーの2つ以上のメンバーは、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼであり、タンパク質結合パートナーの第2のライブラリーの2つ以上のメンバーは、ポリペプチド標的基質である。
【
図13】[0035]ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとポリペプチド標的基質との間の相互作用の強度を表す、本明細書に開示される方法によって生成される定量的結合親和性データのヒートマップを示す。
【
図14A】[0036]タンパク質結合パートナー間の特定の相互作用の強度をより高い解像度で強調する
図13のヒートマップのズームイン部分を示す。
【
図14B】[0037]
図14Aのヒートマップの一部をさらに拡大してより詳細に示し、小分子化合物を含む追加の実験の結果を示す。
【
図15】[0038]ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼKEAP1とポリペプチド標的基質Nrf2との間の、本明細書に開示される方法によって生成された定量的結合親和性データのヒートマップを示す。
【
図16】[0039]ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとポリペプチド標的基質との間の相互作用の強度を表す定量的結合親和性データのヒートマップを示し、E3ユビキチンリガーゼKEAP1及びSPSB2の新規基質を同定する。
【
図17A】[0040]ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼセレブロン(CRBN)の変異体のライブラリーとそのポリペプチド標的基質イカロス(IKZF1)のバリアントのライブラリーとの間の相互作用の強度を表す定量的結合親和性データのヒートマップを示す。
【
図17B】[0041]
図17Aのヒートマップに表される結合親和性データのサブセットのプロットである。
【
図18】[0042]CRBNとIKZF1との間の結合界面の構造モデルを示し、CRBN及びIKZF1の野生型及び変異バリアントの結合界面を強調している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例示的な実施形態の詳細な説明
[0043] 添付の図面に関連して以下に記載される説明は、開示された主題の様々な例示的な実施形態の説明であることを意図している。特定の特徴及び機能は、各例示的実施形態に関連して説明される。しかし、当業者には、開示された実施形態がそれらの特定の各特徴及び機能なしで実施され得ることが明らかであろう。
【0020】
[0044] 明細書全体での「一実施形態(one embodiment)」又は「実施形態(an embodiment)」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、開示される主題の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一実施形態(one embodiment)において」又は「実施形態(a embodiment)において」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられ得る。さらに、開示された内容の実施形態は、その修正及び変形をカバーすることが意図されている。
【0021】
[0045] 本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別段の明示がない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。すなわち、別段の明示的な指定がない限り、本明細書で使用される「a」、「an」、「the」などの単語は、「1つ又は複数」の意味を有する。さらに、本明細書で使用され得る「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」、「横」、「高さ」、「長さ」、「幅」、「上部」、「下部」、「内部」、「外部」、「内側」、「外側」などの用語は、参照点を説明するに過ぎず、必ずしも本開示の実施形態を特定の向き又は構成に限定するものではないことを理解されたい。さらに、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、本明細書に開示される多数の部分、構成要素、ステップ、操作、機能、及び/又は参照点のうちの1つを特定するに過ぎず、同様に、必ずしも本開示の実施形態を特定の構成又は向きに限定するものではない。
【0022】
[0046] さらに、用語「およそ」、「約」、「近似」、「軽微な変動」、及び同様の用語は、一般に、特定の実施形態において、20%、10%、又は好ましくは5%のマージン内に特定された値を含む範囲、及びその間の任意の値を指す。
【0023】
[0047] 一実施形態に関連して説明される全ての機能は、明示的に述べられている場合、又は特徴若しくは機能が追加の実施形態と適合性でない場合を除いて、以下に説明される追加の実施形態に適用可能であることを意図している。例えば、所望の特徴又は機能が一実施形態に関連して明示的に記載されているが、代替の実施形態に関連して明示的に言及されていない場合、本発明者らは、特徴又は機能が代替的実施形態と適合性でない場合を除き、代替的実施形態に関連してその特徴又は機能を展開、利用、又は実装できることを意図していることを理解されたい。
【0024】
[0048] 本明細書に記載される技術の実践は、別段の指示がない限り、有機化学、高分子技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、細胞培養、生化学、及び配列決定技術の従来の技術及び説明を採用してもよく、これらは当業者の技術範囲内である。そのような従来の技術には、細菌、真菌、及び哺乳動物の細胞培養技術及びスクリーニングアッセイが含まれる。本明細書の例を参照することにより、適切な技術の具体的な実例を得ることができる。しかし、もちろん、他の同等の従来の手順も使用することができる。そのような従来の技術及び説明は、Green, et al., Eds.(1999), Genome Analysis:A Laboratory Manual Series (Vols. I-IV);Weiner, Gabriel, Stephens, Eds.(2007), Genetic Variation:A Laboratory Manual;Dieffenbach, Dveksler, Eds.(2003), PCR Primer:A Laboratory Manual;Bowtell and Sambrook (2003), DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual;Mount (2004), Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis;Sambrook and Russell (2006), Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual;及びSambrook and Russell (2002), Molecular Cloning:A Laboratory Manual (all from Cold Spring Harbor Laboratory Press);Stryer, L.(1995) Biochemistry (4th Ed.) W.H.Freeman, New York N.Y.;Gait, “Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach” 1984, IRL Press, London;Nelson and Cox (2000), Lehninger, Principles of Biochemistry 3rd Ed., W. H.Freeman Pub., New York, N.Y.;Berg et al.(2002) Biochemistry, 5th Ed., W.H.Freeman Pub., New York, N.Y.などの標準的な実験マニュアルに見出すことができ、これら全ては、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
[0049] 別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物は、ここに記載される発明に関連して使用され得る、デバイス、方法、及び細胞集団を記載及び開示する目的で、参照により組み込まれる。
【0026】
[0050] 本明細書で使用される「相補的」という用語は、ヌクレオチド間のワトソン・クリック塩基対形成を指し、具体的には、2つの水素結合によってアデニン残基に結合されたチミン又はウラシル残基、並びに3つの水素結合によって結合されたシトシン及びグアニン残基によって相互に水素結合されたヌクレオチドを指す。一般に、核酸は、特定の第2のヌクレオチド配列に対して「パーセント相補性」又は「パーセント相同性」を有すると記載されるヌクレオチド配列を含む。例えば、ヌクレオチド配列は、特定の第2のヌクレオチド配列に対して80%、90%、又は100%の相補性を有し、これは、配列の10個中8個、10個中9個、又は10個中10個のヌクレオチドが特定の第2のヌクレオチド配列に相補的であることを示す。例えば、ヌクレオチド配列3’-TCGA-5’は、ヌクレオチド配列5’-AGCT-3’と100%相補的であり;ヌクレオチド配列3’-TCGA-5’は、ヌクレオチド配列5’-TTAGCTGG-3’の領域と100%相補的である。
【0027】
[0051] 「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間、又は本開示の文脈においてより頻繁には、2つの核酸分子間の、配列類似性を指す。「相同領域」又は「相同アーム」という用語は、標的ゲノムDNA配列とある程度の相同性を有するドナーDNA上の領域を指す。相同性は、比較のためにアラインされ得る各配列の位置を比較することによって決定することができる。比較された配列の位置が同じ塩基又はアミノ酸に占められている場合、分子はその位置で相同である。配列間の相同性の程度は、配列が共有する、一致する又は相同な位置の数の関数である。
【0028】
[0052] 「作動可能に連結された」とは、要素、例えば、バーコード配列、遺伝子発現カセット、コード配列、プロモーター、エンハンサー、転写因子結合部位の配置を指し、そのように記載された構成要素は、それらの通常の機能を実施するように構成されている。したがって、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の転写、場合によっては翻訳を行うことができる。制御配列は、コード配列の発現を指示するように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在性の未翻訳であるが転写された配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列は、依然としてコード配列に「作動可能に連結されている」とみなすことができる。実際、そのような配列は、同じ連続したDNA分子(すなわち、染色体)に存在する必要はなく、依然として、調節の変更を生じる相互作用を有し得る。
【0029】
[0053] 本明細書で使用される「選択マーカー」という用語は、人為的選択に適した形質を付与する、細胞に導入された遺伝子を指す。一般的な使用の選択マーカーは、当業者に周知である。アンピシリン/カルベニシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ストレプトマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、及びG418などの薬物選択マーカーが使用され得る。選択マーカーはまた、栄養要求性選択可能マーカーであってもよく、ここで、選択される細胞株は、必須栄養素を合成できなくする変異を保有する。そのような株は、欠乏している必須栄養素が増殖培地に供給された場合にのみ増殖する。例えば、酵母変異株の必須アミノ酸栄養要求性選択は、一般的であり、当技術分野で周知である。本明細書で使用される「選択培地」は、選択マーカーについて、又は選択マーカーに対して選択する化合物又は生物学的部分が添加された細胞増殖培地、又は必須栄養素が欠乏し、栄養要求性株に対して選択する培地を指す。
【0030】
[0054] 本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、細胞に送達され、及び/又は細胞内で発現される、所望の配列を含む様々な核酸のいずれかである。ベクターは典型的にはDNAで構成されるが、RNAベクターも利用できる。ベクターには、とりわけ、プラスミド、フォスミド、ファージミド、ウイルスゲノム、BAC、YAC、PAC、合成染色体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
[0055] 本明細書で使用される場合、「親和性」は、単一の生体分子とそのリガンド又は結合パートナーとの間の結合相互作用の強度である。親和性は通常、平衡解離定数KDを使用して測定及び説明される。KD値が低いほど、タンパク質とその結合パートナーとの間の親和性が高くなる。親和性は、結合パートナー間の水素結合、静電相互作用、疎水性力及びファンデルワールス力によって、又は結合アゴニスト又はアンタゴニストなどの他の分子の存在によって影響を受ける可能性がある。
【0032】
[0056] 本明細書で使用される場合、「部位飽和変異誘発」(SSM)は、タンパク質工学及び分子生物学で使用されるランダム変異誘発技術を指し、ここで、コドン又はコドンのセットは、ポリペプチド内の位置において全ての可能なアミノ酸で置換される。SSMは、1つのコドン、いくつかのコドン、又はタンパク質内の全ての位置に対して実施され得る。その結果、ポリペプチドの1つ、いくつか、又は全てのアミノ酸位置で可能なアミノ酸の完全な相補体を表す変異タンパク質のライブラリーが得られる。いくつかの実施において、ポリペプチド配列中の1つ又は複数の部位は、バリアントポリペプチド配列のライブラリーを産生するために、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19個の異なるアミノ酸残基に変更され得る。
【0033】
[0057] 本明細書で使用される場合、「標的タンパク質」は、第2のタンパク質結合パートナーに作用する第1のタンパク質結合パートナーを指す。「標的タンパク質」は、第1のタンパク質結合パートナーが作用する第2のタンパク質結合パートナーを指す。いくつかの実施において、標的化タンパク質はE3ユビキチンリガーゼであってもよく、標的タンパク質はE3ユビキチンリガーゼの基準基質であってもよい。他の実施において、標的タンパク質は、E3ユビキチンリガーゼの、新規の、これまでに特徴付けられていない、又は推定上の基質であり得る。他の実施において、標的タンパク質は、既知の又は予測されるデグロンモチーフを含むペプチドであり得る。本明細書で使用される場合、「標的化タンパク質」及び「標的タンパク質」はそれぞれ、全長タンパク質、切断型タンパク質、ハイスループットオリゴヌクレオチドコード化ポリペプチド、切断型ポリペプチドモチーフ、又は既知の若しくは予測されるデグロンモチーフを含み得る。本明細書で使用される場合、「標的化タンパク質」及び「標的タンパク質」は、長さが1~50、50~100、100~500、500~1000、又は1000超のアミノ酸残基であるポリペプチドを含み得る。
【0034】
[0058] いくつかの実施において、方法は、第1のタンパク質結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーを含む。第1のタンパク質結合パートナーは標的タンパク質であってもよい。他の実施において、第1のタンパク質結合パートナーは、例えば、E3ユビキチンリガーゼであってもよい。第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、例えば、ポリペプチド基質種を含み得る。タンパク質結合パートナーの第2のライブラリーは、例えば、既知のマッピングされた全長E3ユビキチンリガーゼ基質ドメイン;ハイスループットオリゴコード可能切断型E3ユビキチンリガーゼ基質;部位飽和変異誘発によって修飾されたE3ユビキチンリガーゼ基質種;過去に定義されたデグロンモチーフ;又はコンピューターで予測されたデグロンモチーフをさらに含み得る。第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、標的タンパク質の複数のユーザー指定変異体及び野生型標的タンパク質を含み得る。標的タンパク質の複数のユーザー指定変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれを超える数のアミノ酸置換を有する標的タンパク質のバリアントを含み得る。アミノ酸置換は、標的タンパク質に立体バルクを導入するために選択してもよく、野生型アミノ酸は天然又は非天然アミノ酸で置換され得る。アミノ酸置換は、部位飽和変異誘発によって生成され得る。第1のタンパク質結合パートナー、及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、並列化ハイスループット方法において、第1のタンパク質結合パートナーと複数のユーザー指定変異体のそれぞれとの間の相互作用について個別に親和性が測定されるように、結合親和性についてアッセイされる。野生型標的タンパク質と第1のタンパク質結合パートナーの結合親和性よりも高い第1のタンパク質結合パートナーとの結合親和性を有することが見出された第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーのメンバーが同定され、さらなる研究のために選択される。
【0035】
[0059] 第1のタンパク質結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーが結合親和性についてアッセイされるいくつかの実施において、アッセイは、ファージ提示、酵母表面提示、又は別の並列化ハイスループット方法であり得る。
【0036】
[0060] 他の実施において、方法は、第1のタンパク質結合パートナーのライブラリー及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーを含む。第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、例えば、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼ種を含み得る。タンパク質結合パートナーの第1のライブラリーは、例えば、マッピングされたドメインを有する全長E3ユビキチンリガーゼ;ハイスループットのユーザー設計又はランダムに生成された、オリゴコード可能切断型E3ユビキチンリガーゼドメイン;又は部位飽和変異誘発によって修飾されたポリペプチドE3ユビキチンリガーゼ種をさらに含み得る。第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、標的化タンパク質の複数のユーザー指定変異体及び野生型標的化タンパク質を含み得る。標的化タンパク質の複数のユーザー指定変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれを超える数のアミノ酸置換を有する標的化タンパク質のバリアントを含み得る。アミノ酸置換は、標的化タンパク質に立体バルクを導入するために選択してもよく、野生型アミノ酸は天然又は非天然アミノ酸で置換され得る。アミノ酸置換は、リン酸化又は他の翻訳後修飾を模倣するように選択され得る。アミノ酸置換は、標的、ランダム、又は部位飽和変異誘発によって生成され得る。第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、例えば、ポリペプチド基質種を含み得る。タンパク質結合パートナーの第2のライブラリーは、例えば、既知のマッピングされた全長E3ユビキチンリガーゼ基質ドメイン;ハイスループットオリゴコード可能切断型E3ユビキチンリガーゼ基質;変異誘発によって修飾されたE3ユビキチンリガーゼ基質種;過去に定義されたデグロンモチーフ;又はコンピューターで予測されたか、又は別の方法で予測されたデグロンモチーフをさらに含み得る。第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、標的タンパク質の複数のユーザー指定変異体及び野生型標的タンパク質を含み得る。標的タンパク質の複数のユーザー指定変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれを超える数のアミノ酸置換を有する標的タンパク質のバリアントを含み得る。アミノ酸置換は、標的タンパク質に立体バルクを導入するために選択してもよく、野生型アミノ酸は天然又は非天然アミノ酸で置換され得る。アミノ酸置換は、リン酸化又は他の翻訳後修飾を模倣するように選択され得る。アミノ酸置換は、標的、ランダム、又は部位飽和変異誘発によって生成され得る。第1のタンパク質結合パートナーのライブラリー、及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、並列化ハイスループット方法において、複数の変異型の第1のタンパク質結合パートナーのそれぞれと複数の変異型の第2のタンパク質結合パートナーのそれぞれとの間の相互作用について個別に対で親和性が測定されるように、結合親和性についてアッセイされる。第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーから選択されるメンバーと、野生型標的化タンパク質と野生型標的タンパク質の結合親和性よりも高い結合親和性を有することが見出された第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーから選択されるメンバーとを含む対が同定され、さらなる研究のために選択される。
【0037】
[0061] いくつかの実施において、第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーから選択されるメンバーと、第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーから選択されるメンバーとを含むタンパク質結合パートナーの対は、野生型標的化タンパク質と野生型標的タンパク質の結合親和性よりも高い結合親和性を有することが本明細書に開示される方法によって同定される。タンパク質結合パートナーの対は、変異標的化タンパク質及び野生型標的タンパク質;野生型標的タンパク質及び変異標的タンパク質;又は変異標的化タンパク質及び変異標的タンパク質を含み得る。いくつかの実施において、野生型標的化タンパク質と野生型標的タンパク質の結合親和性よりも高い結合親和性を有することが本明細書に開示される方法によって同定されるタンパク質結合パートナーの対は、野生型標的化タンパク質と野生型標的タンパク質の結合親和性よりも、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、500%、1000%、又はこれらの間の値だけ高い結合親和性を有し得る。他の実施において、野生型標的化タンパク質と野生型標的タンパク質の結合親和性よりも低い結合親和性を有することが本明細書に開示される方法によって同定されるタンパク質結合パートナーの対は、野生型標的化タンパク質と野生型標的タンパク質の結合親和性よりも、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、500%、1000%、又はこれらの間の値だけ低い結合親和性を有し得る。
【0038】
[0062] 第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーが、結合親和性について第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーに対してアッセイされるいくつかの実施において、アッセイは、酵母ツーハイブリッドシステム、AlphaSeqシステム、又は別の並列化されたハイスループットのライブラリーごとのスクリーニング方法によるものであり得る。AlphaSeq法は、米国特許出願第15/407,215号に記載されており、この文献は全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
[0063] いくつかの実施において、変異標的化タンパク質のライブラリーを含む変異種又は変異標的タンパク質のライブラリーを含む変異種は、標的化タンパク質と標的タンパク質との間の界面に立体バルクを追加するように選択される。原子のグループが占める空間の量は、「立体バルク」と呼ばれる。2つのタンパク質間の相互作用面の周りの立体バルクを調節すると、タンパク質間の親和性に影響を与え得る。すなわち、相互作用する2つのタンパク質の一方又は他方の相互作用面にバルクを追加すると、2つのタンパク質間の親和性が低下するか、又は2つのタンパク質間の親和性が増加し得る。
【0040】
[0064] 好ましい実施において、結合親和性が、野生型/野生型タンパク質結合パートナーの結合親和性よりも高いとして本明細書に開示される方法によって測定された、立体バルクを導入するために選択された1つ又は複数の変異体を含むタンパク質結合パートナーの対のサブセットが、さらに特徴付けられる。タンパク質結合パートナーのこのサブセットでは、一方の結合パートナーのアミノ酸置換によって導入された立体バルクが、反対側の結合パートナーとの界面で「ホール」を充填していると推測できる。タンパク質-タンパク質複合体は、アミノ酸置換の追加バルクによって媒介されるこのホール充填によって安定化され、タンパク質結合パートナー間の親和性が向上する。いくつかの実施において、この安定化及び増強された親和性は、第1のタンパク質結合パートナーと第2のタンパク質結合パートナーとの間の新しい水素結合によって媒介される。したがって、タンパク質結合パートナーのこのサブセットは、本明細書に開示される方法によって同定された推定上のホールを同様に充填する小分子の合理的な設計の候補である。小分子は、1つの結合パートナーの表面で同定されたホールを同様に充填し、2つのタンパク質結合パートナーの複合体を安定化させ、2つのタンパク質結合パートナー間の親和性を高めるように同定又は設計され得る。
【0041】
[0065] いくつかの実施において、本明細書に開示される方法によって同定されたタンパク質結合パートナーの対は、例えば、当技術分野で周知のタンパク質-タンパク質複合体を特徴付けるための他の方法の中でもとりわけ、結晶学、低温電子顕微鏡法、マイクロ電子回折、質量分析、コンピューターモデリングによって、さらに特徴付けられる。タンパク質結合パートナー又は変異タンパク質結合パートナーの対は、個別に、又は2つのパートナー間のタンパク質-タンパク質複合体との関連で、さらに特徴付けられ得る。
【0042】
[0066] 本明細書に開示される方法によって同定されるタンパク質結合パートナーについて、推定上のホール充填を再現し、タンパク質結合パートナー間の複合体を同様に安定化する小分子薬物候補を設計又は同定し、機能的効果についてスクリーニングし得る。小分子の設計又は同定は、コンピューターモデリング、コンピューター予測、表面モデリング、キャビティ検出ソフトウェア、又はコンピューターツール、例えば、その他の当技術分野で周知のタンパク質モデリングツールの中でもとりわけ、Relibase、sc-PDB、Pocketome、CavBase、RAPMAD、IsoMIF、TrixPによって支援され得る。候補小分子は、任意の従来の小分子スクリーニングプラットフォームによってスクリーニングされ得る。
【0043】
[0067] いくつかの実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーは全長タンパク質である。他の実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーは切断型タンパク質である。他の実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーは融合タンパク質である。他の実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーはタグ付きタンパク質である。タグ付きタンパク質には、当技術分野で公知の他のものの中でもとりわけ、エピトープタグ付き、例えば、FLAGタグ付き、HAタグ付き、Hisタグ付き、Mycタグ付きタンパク質が含まれる。いくつかの実施において、第1のタンパク質結合パートナーは全長タンパク質であり、第2のタンパク質結合パートナーは切断型タンパク質である。第1のタンパク質結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーはそれぞれ、全長タンパク質、切断型タンパク質、融合タンパク質、タグ付きタンパク質、又はそれらの組み合わせのいずれかであり得る。
【0044】
[0068] いくつかの実施において、第1の結合パートナーはE3ユビキチンリガーゼである。他の実施において、第1の結合パートナーのライブラリーは、他の方法の中でもとりわけ、部位飽和変異誘発によって生成されたE3ユビキチンリガーゼのライブラリー又はE3ユビキチンリガーゼ変異体のライブラリーである。E3ユビキチンリガーゼには、MDM2、CRL4CRBN、SCFβ-TrCP、UBE3A、及び当技術分野で周知の多くの他の種が含まれる。E3ユビキチンリガーゼは、ユビキチンをロードしたE2ユビキチン結合酵素を動員し、その標的タンパク質基質を認識し、その後のプロテアソーム複合体による分解のために、E2からタンパク質基質へのユビキチン分子の移動を触媒する。
【0045】
[0069] いくつかの実施において、第2の結合パートナーは、デグロンを含む標的タンパク質である。他の実施において、第2の結合パートナーのライブラリーは、他の方法の中でもとりわけ、部位飽和変異誘発によって生成されたデグロンを含むタンパク質のライブラリー又はデグロン変異体を含むタンパク質のライブラリーである。デグロンは、場合によってはユビキチンプロテアソームシステムによって、調節されたタンパク質分解を媒介するタンパク質の一部である。デグロンは、とりわけ、短いアミノ酸モチーフ;翻訳後修飾、例えば、リン酸化;構造モチーフ;糖修飾を含む。
【0046】
[0070] 第2の結合パートナーがデグロンであるいくつかの実施において、デグロンは蛍光タグ付けされ得る(すなわち、遺伝的にコードされた蛍光タグ、例えば、とりわけ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、mCherry、M Scarlet、tdTomatoを含む、融合タンパク質としてデグロンを発現させることによって)。
【0047】
[0071] いくつかの実施において、蛍光タグ付きデグロンをコードする発現カセットを保有する核酸ベクターは、任意の数の従来のトランスフェクション方法によって哺乳動物細胞にトランスフェクトされ得る。核酸ベクターはまた、哺乳動物細胞において発現ベクターが一般的に保有する他の特徴の中でもとりわけ、1つ又は複数の分子バーコード、1つ又は複数の選択マーカー、1つ又は複数の組換え部位を含み得る。蛍光タグ付きデグロンペプチドは、SSMによって、ペプチドの立体バルクに寄与するアミノ酸置換で修飾されたデグロンペプチドのライブラリーを含み得る。蛍光タグ付きデグロンペプチドをコードする発現カセットでトランスフェクトされた哺乳動物細胞は、蛍光活性化細胞分類(FACS)によって2つ以上の異なる集団、例えば、高い蛍光強度を提示する哺乳動物細胞を含む第1の集団と、低い蛍光強度を提示する哺乳動物細胞を含む第2の集団に分類され得る。いくつかの実施において、低い蛍光強度を提示する哺乳動物細胞を含む集団は、哺乳動物細胞に存在した1つ又は複数のE3ユビキチンリガーゼとの相互作用によって蛍光タグ付きデグロンペプチドが分解された細胞をさらに含む。
【0048】
[0072] いくつかの実施において、蛍光タグ付きデグロンをコードする発現カセットは、任意の数の従来の核酸抽出技術によって、低い蛍光強度を提示する哺乳動物細胞の集団から単離され得る。蛍光タグ付きデグロンペプチドをコードする発現カセットは、分解されたデグロン変異体を同定するために、任意の数の核酸配列決定方法によって配列決定され得る。
【0049】
[0073] いくつかの実施において、上記で開示されるようにNGSによって同定される変異デグロンペプチドは、変異デグロンタンパク質が相互作用する1つ又は複数のE3ユビキチンリガーゼを同定するためのペプチドプルダウンアッセイにおける「ベイト」として使用され得る。変異デグロンペプチド及びそれが相互作用するE3ユビキチンリガーゼを含む複合体は、例えば、当技術分野で周知のタンパク質-タンパク質複合体を特徴付けるための他の方法の中でもとりわけ、結晶学、低温電子顕微鏡法、マイクロ電子回折、質量分析、又はコンピューターモデリングによって、さらに特徴付けられ得る。
【0050】
[0074]
図1は、AlphaSeq法のライブラリーごとのスクリーニング能力を示す一連のチャートを示す。チャート100は、100個の結合パートナーの第2のライブラリーに対する100個の結合パートナーの第1のライブラリーの相互作用をスクリーニングし、10,000の相互作用を測定することを示す。タンパク質結合パートナーの第1のライブラリーは、例えば、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼ種を含み得る。タンパク質結合パートナーの第1のライブラリーは、例えば、マッピングされたドメインを有する全長E3ユビキチンリガーゼ;ハイスループットのユーザー設計オリゴコード可能切断型E3ユビキチンリガーゼドメイン;又は部位飽和変異誘発によって修飾されたポリペプチドE3ユビキチンリガーゼ種をさらに含み得る。タンパク質結合パートナーの第2のライブラリーは、例えば、ポリペプチド基質種を含み得る。タンパク質結合パートナーの第2のライブラリーは、例えば、既知のマッピングされた全長E3ユビキチンリガーゼ基質ドメイン;ハイスループットオリゴコード可能切断型E3ユビキチンリガーゼ基質;部位飽和変異誘発によって修飾されたE3ユビキチンリガーゼ基質種;過去に定義されたデグロンモチーフ;又はコンピューターで予測されたデグロンモチーフをさらに含み得る。チャート102は、1,000個の結合パートナーの第2のライブラリーに対する1,000個の結合パートナーの第1のライブラリーの相互作用をスクリーニングし、1,000,000の相互作用を測定することを示す。チャート104は、10,000個の結合パートナーの第2のライブラリーに対する10,000個の結合パートナーの第1のライブラリーの相互作用をスクリーニングし、100,000,000の相互作用を測定することを示す。チャート106は、10,000の相互作用について、タンパク質間親和性(K
D)とAlphaSeq強度との相関関係を示す。チャート108は、1,000,000の相互作用について、タンパク質間親和性(K
D)とAlphaSeq強度との相関関係を示す。チャート110は、100,000,000の相互作用について、タンパク質間親和性(K
D)とAlphaSeq強度との相関関係を示す。
【0051】
[0075]
図2Aは、複合体中で相互作用する2つのタンパク質結合パートナーの概略図であり、2つのタンパク質結合パートナー間の界面及び2つのタンパク質結合パートナー204及び206の部位飽和変異誘発(SSM)スクリーンを強調している。タンパク質結合パートナー204のアミノ酸残基200は、タンパク質結合パートナー206のアミノ酸残基202に対応する。タンパク質結合パートナー204のアミノ酸残基200は、利用可能な、天然又は人工の追加のアミノ酸残基のいずれかによって置換され、タンパク質結合パートナー206のアミノ酸残基202の置換の同様のライブラリーに対して相互作用についてスクリーニングされ得る。このようなライブラリーごとのSSMスクリーニングの結果を
図2Bに示す。ヒートマップ208は、タンパク質間界面を定義する全てのアミノ酸残基でSSM変異を保有するタンパク質結合パートナー間の相互作用の、AlphaSeqによるライブラリーごとの強度測定値を示す。より濃い色はAlphaSeq強度が高いことを表し、より薄い色はAlphaSeq強度が低いことを表す。例えば、挿入
図210は、アミノ酸214の置換のSSMライブラリーに対して測定された、アミノ酸212の置換のSSMライブラリーのライブラリーごとのAlphaSeq強度を強調している。
【0052】
[0076]
図3A~3Cは、
図2A~2Bに示されるデータによって検出されたタンパク質間相互作用のサブセットのグラフ表示であり、野生型及び変異タンパク質結合パートナー間の相対的親和性、及び2つのタンパク質結合パートナー間の親和性に対する単一アミノ酸置換の効果を検出する、本明細書に開示される方法の能力を示す。
図3Aは、野生型タンパク質結合パートナーが高親和性で相互作用し、変異体タンパク質結合パートナーが高親和性で相互作用するが、第1又は第2のタンパク質結合パートナーのいずれかの変異体が他のタンパク質結合パートナーの野生型と相互作用しないシナリオを示す。
図3Bは、第1のタンパク質結合パートナーの野生型及び変異型の両方が、第2のタンパク質結合パートナーの野生型と相互作用するが、野生型の第1のタンパク質結合パートナーは、変異型の第2のタンパク質結合パートナーと相互作用しない、すなわち、第2のタンパク質結合パートナーの変異は、野生型の第1のタンパク質結合パートナーとの相互作用を無効にするシナリオを示す。
図3Cは、第1のタンパク質結合パートナーの野生型及び変異型の両方が、第2のタンパク質結合パートナーの変異型と相互作用するが、変異型の第1のタンパク質結合パートナーは、野生型の第2のタンパク質結合パートナーと相互作用しない、すなわち、第1のタンパク質結合パートナーの変異は、野生型の第2のタンパク質結合パートナーとの相互作用を無効にするシナリオを示す。
【0053】
[0077]
図4は、AlphaSeqを使用したライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーニングのワークフローを示す。タンパク質結合パートナーの第1のライブラリー400及びタンパク質結合パートナーの第2のライブラリー402は、部位飽和変異誘発によって生成され、酵母で発現される。相互作用ステップ404では、2つのライブラリー集団が混合され、タンパク質結合パートナーが結合する。相互作用したタンパク質結合パートナーを発現する細胞は、融合ステップ406で交配する。第1のライブラリーと第2のライブラリーとの間のタンパク質間相互作用は、測定ステップ408で検出され、定量化される。
【0054】
[0078]
図5は、AlphaSeqを使用した候補小分子の存在下でのライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーニングのワークフローを示す。タンパク質結合パートナーの第1のライブラリー500及びタンパク質結合パートナーの第2のライブラリー502は、部位飽和変異誘発によって生成され、酵母で発現される。2つのライブラリー集団を液体培養物中で混合し、小分子503を培養物に導入し、相互作用ステップ504でタンパク質結合パートナーを結合させる。相互作用したタンパク質結合パートナーを発現する細胞は、融合ステップ506で交配する。第1のライブラリーと第2のライブラリーとの間のタンパク質間相互作用は、測定ステップ508で検出され、定量化される。
【0055】
[0079]
図6A及び6Bは、2つのタンパク質結合パートナー間の相互作用に対する既知の小分子アゴニストの効果を検出するAlphaSeqの能力を実証する。
図6Aは、プロリルイソメラーゼFKBP12、TORのFRBドメインと、小分子ラパマイシン並びにその類似体エベロリムス及びリダフォロリムスとの間の既知の解離定数を示す。したがって、
図6Bは、FKBP12とFRBドメインとの間の相互作用に対するラパマイシン及びその類似体のアゴニスト効果を示すチャートである。化合物濃度の増加は交配効率の増加と相関し、したがって、2つのタンパク質結合パートナー間の結合親和性が増加する。
【0056】
[0080]
図7A及び7Bは、E3ユビキチンリガーゼセレブロン(CRBN)及びその基質イカロス因子1(IKZF1)との間の相互作用に対するサリドマイド及びその類似体の既知のアゴニスト効果の検出におけるAlphaSeqの能力を実証する。
図7Aは、CRBNとIKZF1との間の相互作用を媒介するサリドマイド又はその類似体を示す概略図である。
図7Bは、変異CRBNではなく野生型CRBNとのIKZF1の相互作用に対するサリドマイド、レナリドマイド、及びポマリドミドのアゴニスト効果を強調するチャートである。
【0057】
[0081]
図8は、機能的小分子スクリーニングの候補を示し得る、タンパク質結合パートナーにおける推定上の「ホール」を同定するためのプロセスを示す概略図である。例えば、野生型タンパク質結合パートナー800及び野生型タンパク質結合パートナー802は、相互作用が弱く、親和性が低いか又は検出できない可能性がある。タンパク質結合パートナー804は、SSMによって、立体バルク806に寄与するアミノ酸置換で修飾されている。タンパク質結合パートナー804及び810は、非常に低いK
Dで劇的に上昇した親和性を示し、推定上の「ホール」808の存在を示唆している。追加の立体バルク806は「ホール」808を充填し、タンパク質結合パートナー804と810との間の三元複合体を安定化する。同様に、小分子814は、推定上のホールを充填し、三元複合体を安定化し、タンパク質結合パートナー812と816との間の親和性を高めるように同定又は設計され得る。
【0058】
[0082]
図9は、第1のタンパク質結合パートナーと第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーとの間の相互作用についてのスクリーニングを示す概略図である。野生型タンパク質結合パートナー900及び野生型タンパク質結合パートナー902は、結合親和性をほとんど又は全く示さない。タンパク質結合パートナー906は、SSMによって、立体バルク908に寄与するアミノ酸置換で修飾されており、SSMによって同様に修飾されたタンパク質結合パートナーのライブラリーのメンバーであり、追加の立体バルクに寄与する異なるアミノ酸置換をそれぞれが保有する。変異タンパク質結合パートナーのこのライブラリーは、結合親和性を検出及び測定し、小分子開発で創薬可能な標的を表す推定上の「ホール」を特定するために、タンパク質結合パートナー904に対してスクリーニングされる。或いは、タンパク質結合パートナー904は、SSMによって、立体バルクに寄与するアミノ酸置換で修飾されて、SSMによって同様に修飾されたタンパク質結合パートナーのライブラリーを生成し得、このライブラリーは、タンパク質結合パートナー906に対してスクリーニングされ得る。
【0059】
[0083]
図10は、第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーと第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーとの間の相互作用についてのスクリーニングを示す概略図である。野生型タンパク質結合パートナー1000及び野生型タンパク質結合パートナー1002は、結合親和性をほとんど又は全く示さない。タンパク質結合パートナー1004は、SSMによって、立体バルク1006に寄与するアミノ酸置換で修飾されており、SSMによって同様に修飾されたタンパク質結合パートナーのライブラリーのメンバーであり、追加の立体バルクに寄与する異なるアミノ酸置換をそれぞれが保有する。タンパク質結合パートナー1008は、SSMによって、立体バルク1010に寄与するアミノ酸置換で修飾されており、SSMによって同様に修飾されたタンパク質結合パートナーのライブラリーのメンバーであり、追加の立体バルクに寄与する異なるアミノ酸置換をそれぞれが保有する。変異タンパク質結合パートナー1004を含む変異タンパク質結合パートナーのライブラリーは、変異タンパク質結合パートナーのこのライブラリーは、結合親和性を検出及び測定し、小分子開発で創薬可能な標的を表す推定上の「ホール」を特定するために、変異タンパク質結合パートナー1008を含む変異タンパク質結合パートナーのライブラリーに対してスクリーニングされる。
【0060】
[0084]
図11は、本明細書で開示される方法のワークフローを示すフローチャートである。ステップ1100では、本明細書に開示される方法に従って、一方又は両方のタンパク質結合パートナーが変異されて立体バルクを導入し、野生型タンパク質結合パートナーと比較して上昇した親和性で結合するタンパク質結合パートナーの対が同定される。ステップ1102では、変異タンパク質結合パートナーは、例えば結晶学によって、さらに特徴付けられ、複合体又は個別のいずれかでそれらの構造を決定する。ステップ1104では、得られた構造はコンピューターでそれらの野生型アミノ酸配列に復元される。ステップ1100で同定された変異体とそれらのそれぞれの野生型構造との間の比較により、推定上の「ホール」の構造が示される。ステップ1106では、コンピューターによる小分子設計のために、推定上のホールの構造が使用される。
【0061】
[0085]
図12は、AlphaSeqを使用したライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーニングのワークフローを示し、ここで、タンパク質結合パートナーの第1のライブラリーの2つ以上のメンバーは、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼであり、タンパク質結合パートナーの第2のライブラリーの2つ以上のメンバーは、ポリペプチド標的基質である。E3ユビキチンリガーゼの第1のライブラリー1200及びポリペプチド標的基質の第2のライブラリー1202は、変異誘発によって生成され、酵母で発現される。相互作用ステップ1204では、2つのライブラリー集団が混合され、タンパク質結合パートナーが結合する。相互作用したタンパク質結合パートナーを発現する細胞は、融合ステップ1206で交配する。第1のライブラリーと第2のライブラリーとの間のタンパク質間相互作用は、測定ステップ1208で検出され、定量化される。
【0062】
[0086]
図13は、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼ1302とポリペプチド標的基質1304との間の相互作用の強度を表すAlphaSeqデータのヒートマップ1306を示し、ここで、スケールバー1300によると、より濃い色は相対的に強い相互作用を示し、より薄い色は相対的に弱い相互作用を示す。ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼのライブラリー1302の個々のメンバーはグリッドの縦軸によって表され、ポリペプチド標的基質のライブラリー1304の個々のメンバーはグリッドの横軸によって表される。ヒートマップの影付きボックスは、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼのライブラリー1302の単一メンバーとポリペプチド標的基質のライブラリー1304の単一メンバーとの間の相互作用の強度を表す。
【0063】
[0087]
図14Aは、タンパク質結合パートナー間の特定の相互作用の強度をより高い解像度で強調するヒートマップ1306のズームイン部分1400を示し、ここで、ボックス1408は、より詳細に調べるために選択されている。E3ユビキチンリガーゼMDM2は十分に特徴付けられており、何百ものポリペプチド標的基質と相互作用することが知られている。AlphaSeqアッセイは、様々な切断型MDM2 E3ユビキチンリガーゼのライブラリーと、既知のMDM2標的基質のサブセットのライブラリーとを使用して実施された。切断型MDM2 E3ユビキチンリガーゼのライブラリーはヒートマップ1400の縦軸1404によって表され、既知のMDM2標的基質のライブラリーはヒートマップ1400の横軸1402によって表される。より濃い色(例えば、ボックス1406の近傍にあるボックス内)は、様々な切断型MDM2 E3ユビキチンリガーゼのライブラリーの個々のメンバーと、既知のMDM2標的基質のサブセットのライブラリーとの間の相対的に強い相互作用を示す。
【0064】
[0088]
図14Bは、ヒートマップ1400の一部をさらに拡大してより詳細に示し、小分子化合物を含む追加の実験の結果を示す。ヒートマップ1410は、
図14に示される四角形1406の近傍にあるヒートマップ1400からの四角形のサブセットを示す。E3ユビキチンリガーゼMDM2とポリペプチド標的基質p53との間の相互作用は周知であり、完全に特徴付けられている。ヒートマップ1410は、E3ユビキチンリガーゼMDM2の様々なトランケーション(MDM2 t1;MDM2 t2;MDM2 t3)とポリペプチド標的基質p53の様々なトランケーション(p53 t1;p53 t2;p53 t3;p53 t4)との間の対相互作用の相対強度を表す。文献で報告されているように、個々のMDM2トランケーションと個々のp53トランケーションとの間の基準相互作用は、特定の切断型間でのみ発生し、これは、AlphaSeqアッセイがポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとポリペプチド標的基質との間の相互作用の強さを確実に検出及び定量化することを示す。さらに、ヒートマップ1412は、MDM2とp53との間の相互作用を阻害することが知られているシスイミダゾリン類似体である、2つの小分子化合物、nutlinの存在を伴う、又は伴わない、いくつかのMDM2トランケーションとp53トランケーションのそれぞれの間の対相互作用の相対強度を測定する追加の実験である。例えば、ボックス1414は、nutlinの非存在下でのMDM2 t2とp53 t1との間の強い相互作用を表す。ボックス1416は、nutlinが相互作用を妨害することによる、nutlinの存在下でのMDM2 t2とp53 t1との間の比較的弱い相互作用を表す。この実験は、AlphaSeqアッセイがポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとポリペプチド標的基質との間の相互作用の強さを確実に検出及び定量化することをさらに示し、アッセイが小分子化合物の影響によるタンパク質結合パートナー間の破壊を検出することを示す。
【0065】
[0089]
図15は、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼ1502とポリペプチド標的基質1504との間の相互作用の強度を表すAlphaSeqデータのヒートマップ1500を示し、ここで、スケールバー1506によると、より濃い色は相対的に強い相互作用を示し、より薄い色は相対的に弱い相互作用を示す。ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼのライブラリー1502の個々のメンバーはグリッドの縦軸によって表され、ポリペプチド標的基質のライブラリー1504の個々のメンバーはグリッドの横軸によって表される。ヒートマップ1508は、特定の相互作用をより詳細に強調するためにズームインされたヒートマップ1500からの四角形のサブセットを示す。E3ユビキチンリガーゼKEAP1とポリペプチド標的基質Nrf2との間の相互作用は周知であり、文献で十分に特徴付けられている。ヒートマップ1508は、ヒトKEAP1又はマウスKEAP1のトランケーションといくつかのNrf2バリアント(Nrf2 t1;Nrf2 t1変異体;Nrf2 t2;Nrf2 t2変異体)との間の対相互作用の相対強度を示す。それぞれのNrf2トランケーション変異は、標的変異誘発によって生成された。ボックス1510及び1512によって示されるように、ヒトKEAP1 t1は、Nrf2 t1及びNrf2 t2のそれぞれと比較的強い相互作用を有する。しかし、ボックス1511及び1513は、Nrf2 t1及びNrf2 t2のそれぞれの変異がこの相互作用を破壊することを示す。マウスKEAP1についても同様である。この実験は、AlphaSeqアッセイがポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとポリペプチド標的基質との間の相互作用の強さを確実に検出及び定量化することを示し、アッセイがタンパク質結合パートナーの1つの変異によるタンパク質結合パートナー間の破壊を検出し得ることを示す。
【0066】
[0090]
図16は、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼ1602とポリペプチド標的基質1604との間の相互作用の強度を表すAlphaSeqデータのヒートマップ1600を示し、ここで、スケールバー1606によると、より濃い色は相対的に強い相互作用を示し、より薄い色は相対的に弱い相互作用を示す。挿入
図1608は、E3ユビキチンリガーゼKEAP1といくつかのポリペプチド標的基質との間の相互作用に関する定量的データを強調している。Nrf2はKEAP1の既知の標的基質であり、KEAP1とNrf2との間の相互作用強度は、KEAP1と陰性対照ポリペプチド標的基質との間よりも少なくとも3桁大きい。グラフにおいて、バー1612及び1614は、2つの新規KEAP1基質についての定量的相互作用強度データを表す。これらの新規ポリペプチド標的基質は、KEAP1と陰性対照との相互作用よりも少なくとも1桁大きい、KEAP1との相互作用強度を有する。KEAP1のこれら2つの推定上の基質は、KEAP1と推定上の標的基質との間の相互作用を強化するために小分子が選択、同定、又は設計され得る可能な標的を表す。
【0067】
[0091] 挿入
図1610は、E3ユビキチンリガーゼSPSB2といくつかのポリペプチド標的基質との間の相互作用に関する定量的データを強調している。Par4はSPSB2の既知の標的基質であり、SPSB2とPar4との間の相互作用強度は、SPSB2と陰性対照ポリペプチド標的基質との間よりも少なくとも3桁大きい。グラフにおいて、バー1616及び1618は、2つの新規SPSB2基質についての定量的相互作用強度データを表す。これらの新規ポリペプチド標的基質は、SPSB2と陰性対照との相互作用よりも少なくとも1桁大きい、SPSB2との相互作用強度を有する。SPSB2のこれら2つの推定上の基質は、SPSB2と推定上の標的基質との間の相互作用を強化するために小分子が選択、同定、又は設計され得る可能な標的を表す。この実験は、AlphaSeqアッセイがポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとポリペプチド標的基質との間の相互作用の強さを確実に検出及び定量化することを示し、アッセイがタンパク質結合パートナー間の新規相互作用、小分子発見の候補となり得る新規相互作用を検出し得ることを示す。
【0068】
[0092]
図17Aは、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼセレブロン(CRBN)の変異体のライブラリーとそのポリペプチド標的基質イカロス(IKZF1)の変異体のライブラリーとの間の相互作用の強度を表すAlphaSeqデータのヒートマップ1700を示し、ここで、スケールバー1702によると、より濃い色は個々のCRBNバリアントとIKZF1バリアントとの間の相対的に強い相互作用を示し、より薄い色は相対的に弱い相互作用を示す。CRBNバリアントのライブラリーの個々のメンバーはグリッドの縦軸1704によって表され、IKZF1バリアントのライブラリーの個々のメンバーはグリッドの横軸1706によって表される。ヒートマップの影付きボックスは、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼのライブラリー1704の単一メンバーとポリペプチド標的基質のライブラリー1706の単一メンバーとの間の相互作用の強度を表す。野生型E3ユビキチンリガーゼCRBNとその野生型標的基質IKZF1との相互作用は、当技術分野で周知である。CRBNバリアントのライブラリー及びIKZF1バリアントのライブラリーは、それぞれ部位飽和変異誘発によって生成された。ヒートマップ1708は、特定の相互作用をより詳細に強調するためにズームインされたヒートマップ1700からの四角形のサブセットを示す。矢印1712で示される四角形は、野生型CRBNと野生型IKZF1との相互作用を表し、相対的に薄い色は、野生型タンパク質結合パートナー間の相対的に穏やかな結合親和性を示す。矢印1710で示される四角形は、野生型CBRNと、2つのタンパク質結合パートナー間の界面に立体バルクを導入する変異を有するIKZF1の変異体との相互作用を表す。相対的に濃い色は、野生型CBRNと野生型IKZF1との間の結合親和性よりも有意に高い、野生型CBRNと変異IKZF1との間の結合親和性を示す。
【0069】
[0093] ヒートマップ1700及び1708に表される結合親和性データのサブセットは、
図17Bのプロットで表される。野生型CRBNと野生型IKZF1(1716)との相互作用は、野生型CRBN(1712)と陰性対照、又は野生型IKZF1と陰性対照(1714)よりも少なくとも1桁大きい結合親和性を有する。ヒートマップ1708によって示されるように、野生型CRBNとIKZF1の変異体、結合界面に立体バルクを導入したG151Eとの相互作用により、野生型CRBNと野生型IKZF1(1716)との結合親和性と比較して結合親和性が少なくとも3桁増加した(1718)。さらに、変異CRBN(E377C)と変異IKZF1(G151E)との相互作用は、野生型CRBNと変異(G151E)IKZF1(1718)との相互作用よりも、ポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとその標的基質との間の結合親和性(1720)をさらに大幅に上昇させる。これらの結果は、AlphaSeqアッセイがポリペプチドE3ユビキチンリガーゼとポリペプチド標的基質との間の相互作用の強さを確実に検出及び定量化することを示し、タンパク質結合パートナーの飽和変異誘発ライブラリーと組み合わせると、アッセイが、野生型タンパク質結合パートナー間の結合親和性と比較して、タンパク質結合パートナー間の結合親和性を大幅に高める新規変異を検出し得ることを示す。次に、アッセイによって同定される新規変異は、タンパク質結合パートナー間の結合界面に対する変異の予測又は観察される影響に基づいて、小分子スクリーニングキャンペーン又は合理的なドラッグデザインに情報を与え得る。
【0070】
[0094]
図18は、CRBNとIKZF1との間の結合の構造モデルを示す。CRBNとIKZF1の結晶構造は周知であり、コンピューターモデリングプログラムUCSF ChimeraX(Pettersen EF, Goddard TD, Huang CC, Meng EC, Couch GS, Croll TI, Morris JH, Ferrin TE.Protein Sci.2021 Jan;30(1):70-82.)を使用して、
図17A及び17Bに示した実験で同定された変異の影響を予測した。パネル1800は、野生型CRBNと野生型IKZF1との間の予測される結合界面を示す。パネル1802は、分子接着剤ポマリドミドの存在下での野生型CRBNと野生型IKZF1との間の予測される結合界面を示す。免疫調節薬(IMiD)ポマリドミドは、IKZF1とCRBNとの間の結合親和性を増強し、IKZF1のユビキチン化及び分解をもたらすというその役割が十分に特徴付けられている。ポマリドミドは、パネル1802に示すように、結合界面で水素結合を形成し、CRBNとIKZF1との間の相互作用を安定化することによってこれを達成した。パネル1804は、野生型CRBNと変異(G151E)IKZF1との間の予測される結合界面を示し、
図17Bにプロットされた定量的結果に対応する。パネル1806は、
図17Bにプロットされた定量的結果に対応する変異CRBN(E377C)と変異IKZF1(G151E)との間の予測される結合界面を示す。パネル1804及び1806の矢印で強調されているように、タンパク質結合パートナーに導入された変異は、タンパク質結合パートナー間の水素結合も媒介し、結合界面を安定化させ、
図17Bで定量化された結合親和性の増強をもたらし得る。パネル1804に示すように、IKZF1変異G151Eは、野生型CRBNと変異IKZF1との間の水素結合を媒介すると予測される。1806に示すように、IKZF1変異G151E及びCRBN変異E377Cはそれぞれ、変異CRBNと変異IKZF1との間の水素結合を媒介すると予測される。これらの結果は、不偏性のスクリーニング方法で、結合界面に関する過去の知見がなくても、タンパク質結合パートナー間の結合相互作用を安定させ得、野生型タンパク質結合パートナー間の結合親和性よりも実質的に高い結合親和性を生じる変異を検出するアッセイの能力を示す。構造モデリングとコンピューターによる予測を組み合わせることで、この方法で同定された変異を使用して、タンパク質結合パートナー間の結合界面に対する変異の予測又は観察される影響に基づいて、小分子スクリーニングキャンペーン又は合理的なドラッグデザインに情報を与え得る。
【0071】
[0095] いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ示したものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。実際に、本明細書に記載の新規な方法、装置、及びシステムは、他の多様な形態で具現化することができる。さらに、本開示の精神から逸脱することなく、本明細書に記載の方法、装置、及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び精神に含まれる形態又は修正をカバーすることを意図している。