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特許7446491電極部材、頭部装具、身体装具およびウェアセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】電極部材、頭部装具、身体装具およびウェアセット
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/252 20210101AFI20240301BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20240301BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61B5/252
A61B5/256 100
A61N1/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022580566
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2022003835
(87)【国際公開番号】W WO2022172806
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021021263
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502136780
【氏名又は名称】中津川 重一
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】中津川 重一
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-039008(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107049302(CN,A)
【文献】特開2008-149016(JP,A)
【文献】特開昭58-116338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054288(US,A1)
【文献】特開昭57-160438(JP,A)
【文献】実開平03-003304(JP,U)
【文献】米国特許第04166457(US,A)
【文献】特開2009-268696(JP,A)
【文献】特開2019-072310(JP,A)
【文献】特開2005-161025(JP,A)
【文献】国際公開第2019/231897(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208926360(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25~259
A61N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体表に取り付けられる電極部材であって、
中央付近に貫通孔を備え、使用者の体表に吸着可能な吸着部と、
前記吸着部の前記貫通孔に挿入された電極と、
皮脂溶解液を貯留する第1貯留部と、
を備え、
前記吸着部の前記貫通孔の内周面と前記電極との間には、間隙からなる流路が形成されており、
前記第1貯留部に貯留された皮脂溶解液が前記流路を通じて、前記貫通孔の一端側から流出可能であることを特徴とする電極部材。
【請求項2】
前記吸着部は、
前記貫通孔の一端側の周囲に形成され、前記流路と接続する第1凹部を備え、
前記皮脂溶解液は、前記第1貯留部から前記流路を通じて前記第1凹部に送られることを特徴とする請求項1の電極部材。
【請求項3】
前記吸着部は、前記第1凹部の周囲に形成された第2凹部を備え、前記第2凹部を介して使用者の体表に吸着することを特徴とする請求項2の電極部材。
【請求項4】
前記第1貯留部は、前記貫通孔の他端側に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの電極部材。
【請求項5】
さらに、電解質ゲルを貯留する第2貯留部を備え、前記電解質ゲルが前記第2貯留部から前記流路を通じて、前記貫通孔の一端側から流出可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかの電極部材。
【請求項6】
マッサージ用またはPSG検査用であることを特徴とする請求項1から5のいずれかの電極部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの電極部材と、頭部装着部材とを備えることを特徴とする頭部装具。
【請求項8】
前記頭部装着部材は、頭部表面と当接する吸湿層と、前記吸湿層上に積層された絶縁層とを含むことを特徴とする請求項7の頭部装具。
【請求項9】
前記電極部材の電極に接続された導線を含み、
この導線は、正面視略正六角形の単位が連続する網目状構造が形成されており、前記頭部装着部材の前記絶縁層側の表面が前記導線で覆われていることを特徴とする請求項8の頭部装具。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかの電極部材と、身体装着部材とを備えることを特徴とする身体装具。
【請求項11】
前記身体装着部材は、体表と当接する吸湿層と、前記吸湿層上に積層された絶縁層とを含むことを特徴とする請求項10の身体装具。
【請求項12】
前記電極部材の電極に接続された導線を含み、
この導線は、正面視略正六角形の単位が連続する網目状構造が形成されており、前記身体装着部材の前記絶縁層側の表面が前記導線で覆われていることを特徴とする請求項11の身体装具。
【請求項13】
請求項7から9のいずれかの頭部装具と、請求項10から12のいずれかの身体装具とを含むウェアセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極部材、頭部装具、身体装具およびウェアセットに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、世界規模で急速に進む、地球の温暖化に伴う環境破壊による気候の極端化、グローバル経済によるあらゆる面での格差の拡大、米中対立の激化に伴う戦争の可能性そして新型コロナウイルスの世界的な蔓延による、特に高齢者・持病のある人々での死への恐怖など、人類を取り巻く状況が激変しつつある。格差は経済力、栄養・教育に留まらず、運動・情報取得・処理能力等までにも広く及んでいる。即ち、かってない激動の渦の中にいると言っても過言ではない。このような状況の中で、人々が心の平穏、身体的な健康を維持する上で重要な質量共に十分な良好な睡眠を維持することはかなり難しい。
【0003】
人々の人生(日常活動)は、長さにおいて約34~50%を占める家庭の外での社会的
活動、約17~33%を占める家庭生活、残る約33%の睡眠時間から成り体内時計により調節されている。睡眠は、その時間中に、記憶が固定され、内臓機能のメンテにも大きな役割を演じており、生産性の向上に欠かせないことが明らかになってきた。ある意味で、睡眠時間以外の活動は、心理や身体環境など、即ち、栄養、運動、睡眠、生活習慣、記憶、生き甲斐などに支えられ、逆に、睡眠は身体的或いは心理的な疲労、ストレス、心理状態、他の社会的活動、栄養、運動、生活習慣などを反映して、その質・量が左右される。
【0004】
また、睡眠は、体温の変化、発熱量(運動量・食事内容など)と共に熱発散量(発汗能力など)のバランスなど個人差が大きく、居住する地域の気候、即ち、温度、湿度、音、光など環境からも大きな影響を受けることも知られている。個人差に関しては、個人の身体組成、殊に発熱量に関連した筋肉量、骨格・放熱・発汗に関連した心血管系・神経系、内蔵の発達・加齢の程度、生活習慣病の組合せ、免疫・内分泌系のバランス等、また仕事の質量・内容、など幅広く、大きな違いを生むこととなる。
【0005】
さらに、睡眠時間自体、5時間よりも短い場合、昼寝が30分以上の場合、睡眠時無呼吸症候群の場合など睡眠障害と糖尿病など生活習慣病のリスクが高いことが知られるなど、生体時計と関係した自律神経の調節機序の重要性が知られるようになり、副交感神経優位にできる鼻呼吸を持続した深い睡眠時間の確保の重要性が示唆されている。この意味でも、睡眠時無呼吸症候群治療法(therapy for upper-airway restoration and maintenance:以下「TURM」と表記する)を含めた快眠を実現するノウハウは、ウィズコロナという不安心理が避けがたい時代には必須のものといえよう。
【0006】
一方、確実な快眠や再入眠には、古くから、全身的なマッサージを含めた鍼灸治療の効果が知られてきた。また、運動不足、過食、ストレスが強いなど不安な心理状態、増加し続ける交代勤務、不規則勤務では、睡眠中の目覚め、早朝覚醒などが頻発し、再入眠が困難な場合が多い。しかし、新型コロナウイルス感染が続く昨今、ヘッドマッサージなど施術者が必須となると、毎晩の睡眠に応用することは現実的ではない。そこで、ユーザが自身で、交感神経優位の興奮活動状態から、鍼灸治療と同様なリラックスできる副交感神経優位での入眠あるいは再入眠の効果を生む方法論が望まれている。
【0007】
そして、睡眠時無呼吸症候群(SAS)だけでなく、睡眠に関する最終的な検査として知
られる終夜睡眠ポリグラフ検査(以下、「PSG検査」と記載する)についても、我が国で
は、昨春から保険診療報酬が、大幅に下がるなど、人手が掛かるのに比較して、大変なコスト割れを招く事態となり、PSG検査を止める施設が増えている。結果、社会的にも、早
期発見・早期治療が望まれるSASの診断が難しい事態となっており、人件費・消耗品コス
トを掛けずにPSG検査を実施可能とすることが、強く求められると予想される。
【0008】
PSG検査においては、以下の構成が考慮される。
1)脳波 前頭部(国際10/20法に規定されるF3,F4): 深睡眠に出現するデルタ波を判定
する上で有用。
中心部(国際10/20法に規定されるC3,C4):瘤波または頭頂部鋭波、睡眠紡錘波、K複合と覚醒の指標α波の観察に最適。
後頭部(国際10/20法に規定されるO1,O2):覚醒の判定を確実にする(α波を観察)。
2)眼電図(眼球の運動による電位の変化を導出) stage R(レム睡眠)の鑑別に重要。
緩やかな眼球運動から入眠が予測可能。
3)顎筋電図 覚醒とレム睡眠を鑑別するのに重要。
4)心電図:心拍数、心拍変動、不整脈、ST-Tの変化等を記録。
5)動脈血酸素飽和度(SpO2):無呼吸・低呼吸の判定、睡眠呼吸障害の重症度判定に重要。
パルスオキシメータを用いて、SpO2を測定する。
6)呼吸曲線:閉塞性、中枢性、混合性の無呼吸の分類、低呼吸の評価に重要。呼吸曲線は、鼻孔・口部からのエアーフロー、胸部及び腹部の運動の測定が必要。
鼻・口センサとして、無呼吸判定の為の検出センサには、気流の温度変化を感知する温度センサ(サーミスター法、サーモカップル法)、低呼吸判定の為の検出センサ、圧差から気流変化を検出する圧トランスデューサー(エアプレシャー法)を用いることが推奨されている。
7)いびき音:音響センサ(マイクロフォン等)でいびき音を記録する。
8)体位:OSASでは側臥位での睡眠で重症度が軽減する例、仰臥位での睡眠で重症度が増悪する例があり、治療の際に有用な情報である。
9)下肢筋電図:周期性四肢運動(PLM)を判定するのに重要。下肢筋電図として前脛骨筋
が用いられる。
【0009】
PSG検査装置としては、例えば、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1には
、ユーザの脳波を取得する脳波電極と、ユーザの眼電を取得する眼電電極と、ユーザの酸素飽和度を取得する酸素飽和度センサとを有するPSG検査用頭部装具を含む装置が記載さ
れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-81691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、PSG検査の場合、高度肥満や頭皮など体表面に皮脂などが付着している
場合、脳脊髄液や頭蓋骨により隔てられた脳波など微弱電流を捕捉し難いため、特許文献1に記載のPSG検査装置などを使用する場合、検査前に使用者の皮脂や化粧などを落とす
必要があり、手間がかかる。また、PSG検査を行う場合、睡眠が浅いと、睡眠時の無呼吸
や低呼吸が起こりにくくなることがあるため、使用者の入眠を促すための装置の工夫も必要であると考えられる。
【0012】
また、ユーザが自身で、交感神経優位の興奮活動状態から、鍼灸治療と同様なリラックスできる副交感神経優位での入眠あるいは再入眠の効果をより確実に生むことができる頭部装具や身体装具などが切望されている。
【0013】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、コストや検査の手間を抑えつつ、確実にPSG検査の実施が可能な電極部材、頭部装具、身体装具およびウェアセット
を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の電極部材は、使用者の体表に取り付けられる電極部材であって、
中央付近に貫通孔を備え、使用者の体表に吸着可能な吸着部と、
前記吸着部の前記貫通孔に挿入された電極と、
皮脂溶解液を貯留する第1貯留部と、
を備え、
前記吸着部の前記貫通孔の内周面と前記電極との間には、間隙からなる流路が形成されており、
前記第1貯留部に貯留された皮脂溶解液が前記流路を通じて、前記貫通孔の一端側から流出可能であることを特徴としている。
【0015】
本発明の頭部装具は、前記電極部材と、頭部装着部材とを備えることを特徴としている。
【0016】
本発明の身体装具は、前記電極部材と、身体装着部材とを備えることを特徴している。
【0017】
本発明のウェアセットは、頭部装具と身体装具とを含むことを特徴している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電極部材、頭部装具、身体装具およびウェアセットによれば、コストや検査の手間を抑えつつ、確実にPSG検査の実施が可能であり、鍼灸治療の代替治療効果により快
眠および再入眠を確実に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の電極部材の第1実施形態を例示した縦断面図である。
図2図1に例示した電極部材を使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図3図1に例示した電極部材を使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図4図1に例示した電極部材を使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図5】本発明の電極部材の第2実施形態を例示した縦断面図である。
図6】本発明の電極部材の第3実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図7】本発明の電極部材の第3実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図8】本発明の電極部材の第3実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図9】本発明の電極部材の第3実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図10】本発明の電極部材の第3実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図11】本発明の電極部材の第4実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図12】本発明の電極部材の第4実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図13】本発明の電極部材の第4実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図14】本発明の電極部材の第4実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図15】本発明の電極部材の第4実施形態について、使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
図16】(A)は、本発明の頭部装具の一実施形態を例示した正面図であり、(B)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の電極部材の第1実施形態について説明する。
【0021】
本発明の電極部材は、例えば、またはPSG検査の用途に好ましく使用することができる
【0022】
近年、ヘッドマッサージによる寝落ちが着目されており、頭部や頸部だけでなく、全身の副交感神経関連のツボに配置された電極部材によって電気刺激することで、睡眠障害あるいは入眠障害、目覚め後の再入眠困難を解決することができると考えられる。また、本発明の電極部材は、PSG検査の用途においても、使用者の頭部表面などからの脳波(微弱
電流)を取得することができる。また、本発明の電極部材は、局在診断を加味した脳波測定に利用することもできる。
【0023】
図1は、本発明の電極部材の一実施形態を例示した縦断面図である。
【0024】
電極部材1は、吸着部2と、電極3と、第1貯留部4Aとを備えている。
【0025】
吸着部2は、使用者の体表(頭部表面を含む)に吸着可能である。具体的には、この実施形態では、吸着部2は、下方に向かって経大となるように拡開する傾斜部21が形成されている。また、吸着部2の上端側には、平坦部22が形成されており、この平坦部22の中央付近から下方に向かって、上下に貫通する貫通孔23が形成されている。
【0026】
吸着部2の下端側には、貫通孔23の開口端部の周囲に形成され、上方に向かって凹む略円形の第1凹部24が形成されている。さらに、第1凹部24の周囲には、上方に向かって凹む円環状の第2凹部25が形成されている。第1凹部24と第2凹部25の間には、下方に向かって隆起する境界部26が形成されている。また、第2凹部25の外側には、下方に向かって突出する外縁部27が形成されている。第2凹部25は、第1凹部24よりも上方に向かって大きく窪んでいる。
【0027】
吸着部2の材料は特に限定されないが、例えば、シリコーンなどの弾性材料を好ましく例示することができる。
【0028】
電極3は、吸着部2の貫通孔23に挿入されている。この実施形態では、長尺な棒状の電極3が例示されている。電極3は、使用者の脳波(Electroencephalogram:EEG)を取
得可能であり、従来知られている材料(例えば、銅など)で構成されたものを使用することができる。
【0029】
電極3の一端(下端)は、吸着部2の第1凹部24内に露出している。電極3の他端(上端)は、吸着部2の平坦部22付近に位置しており、導線Lを介して、各種の測定装置などと接続することができる。
【0030】
そして、吸着部2の貫通孔23の内周面23Aと電極3との間には、間隙からなる流路Rが形成されている。この流路Rは、毛細管現象を利用して液体の移動が可能とされている。流路Rの下端は、吸着部2の第1凹部24と接続している。
【0031】
PSG検査用の形態では、体表面の微弱電流を電極3によって捕捉することができる。ま
た、マッサージ用の形態では、電極3から体表に電流を印加し刺激することができる。
【0032】
第1貯留部4Aは、中空であり、内部に皮脂溶解液Cを貯留することができる。皮脂溶解液Cの成分は特に限定されないが、界面活性剤、アルコールやリパーゼを含むことが好ましく、具体的には、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウレス硫酸ナトリウム、ステアリルアルコール、トリアシルグリセリドリパーゼなどの混合液を例示することができる。なお、高度肥満でない場合、脳波に比べ電流が微弱ではない筋電図や心電図などの測定部位などは、上記頭皮とは異なり、皮脂溶解液Cは必ずしも必要ない。
【0033】
この実施形態では、第1貯留部4Aは、吸着部2の平坦部22上(貫通孔23の他端側)に設けられており、第1貯留部4Aから流路Rを通じて、皮脂溶解液Cが、貫通孔23の一端側から流出し、第1凹部24へ供給される。
【0034】
図2図4は、図1に例示した電極部材を使用者の体表(頭部など)に取付ける方法の一形態を例示した断面概要図である。
【0035】
図2に例示したように、電極部材1を体表Bに取り付ける場合、所定の体表B位置に電極部材1を配置し、電極部材1の上方から体表B側に向かって最初の押圧を行う。これによって、吸着部2が変形して体表Bに密着し、第1凹部24および第2凹部25の内部が陰圧状態になり、電極部材1が体表Bに吸着する。図2に例示した形態では、吸着部2の外縁部27が体表Bに接触している。また、第1貯留部4A内の皮脂溶解液Cが、毛細管現象により流路Rを下降し、第1凹部24側に吸い出され易い状態になっている。
【0036】
次に、図3に例示したように、電極部材1の上方から体表B側に向かって2回目の押圧を行い、吸着部2を変形させて、第1凹部24および第2凹部25の内部の陰圧を強化する。この際、境界部26と外縁部27が体表Bに接触しており、第1凹部24の内部と第2凹部25とは内部空間の体積が減少するとともに、体表Bとの間で密閉された第1空間S1と第2空間S2が形成されている。このため、流路Rを通じて供給された皮脂溶解液Cが体表Bと接した状態で第1凹部24(第1空間S1)内に満たされる。また、この際、電極3の下端が体表Bに接触するように設計されている。
【0037】
そして、第1凹部24内が皮脂溶解液Cで満たされた状態を5~30分程度維持し、体表Bの皮脂を溶解させる。
【0038】
その後、図4に例示したように、電極部材1の上方から体表B側に向かって3回目の押圧を行い、第1凹部24内の陰圧を陽圧にし、皮脂溶解液Cの一部を流路Rを上昇させて第1貯留部4A内へ戻す。これにより、体表Bの皮脂を溶かした上で、第1凹部24および第2凹部25により電極部材1を体表Bにおける所定の位置に密着、固定させることができる。このため、マッサージ用の形態では、所定の位置において、電極3から体表Bに電流を印加して刺激することができ、使用者をリラックスさせ、入眠を促進することができる。また、PSG検査用の形態では、電極3から体表Bからの微弱電流(脳波など)を確
実に捕捉することができ、コストや検査の手間を抑えつつ、検査精度を向上させることができる。さらに、マッサージ用の形態では、電極部材1は、低周波照射や超音波照射を可能とすることで、マッサージ効果を高めることもできる。周波数は、対象者やマッサージ効果などを考慮して適宜設定することができる。
【0039】
次に、本発明の電極部材の第2実施形態について図4とともに説明する。上記実施形態と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を一部省略する。
【0040】
この実施形態の電極部材1では、吸着部2の下端側に、外縁部27から貫通孔23側に向かって上方に凹む略円形の第1凹部24が形成されている。すなわち、この実施形態の電極部材1では、上述した実施形態における第2凹部は形成されていない。
【0041】
この実施形態の電極部材1においては、所定の体表B位置に電極部材1を配置し、電極部材1の上方から体表側に向かって押圧を行うことで、吸着部2が変形して体表に密着し、第1凹部24の内部が陰圧状態になり、電極部材1が体表に吸着する。そして、流路Rを通じて供給された皮脂溶解液Cが体表と第1凹部24内に満たされることで、体表の皮脂を溶解させることができる。
【0042】
この実施形態の電極部材1によっても、マッサージ用の形態では、所定の位置において、電極3から体表Bに電流を印加して刺激することができ、使用者をリラックスさせ、入眠を促進することができる。また、PSG検査用の形態では、電極3から体表Bからの微弱
電流(脳波など)を確実に捕捉することができ、コストや検査の手間を抑えつつ、検査精度を向上させることができる。
【0043】
さらに、本発明の電極部材の第3実施形態について、図6図10とともに説明する。第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を一部省略する。
【0044】
図6に例示したように、この実施形態の電極部材1は、電極3と隣接する吸着部2の上側内部に第1貯留部4Aを備えている。図6に示した形態では、第1貯留部4Aは、吸着部2の一方側(図中の左半分)に形成されている。
【0045】
また、この実施形態の電極部材1は、第1貯留部4Aと隣接する吸着部2の他方側(図中の右半分)に第2貯留部4Bを備えている。第1貯留部4Aには、皮脂溶解液Cが貯留されており、皮脂溶解液Cが流路(第1流路R1)を通じて、貫通孔23の一端側から流出可能である。
【0046】
第2貯留部4Bには、電解質ゲルDが貯留されており、電解質ゲルDが流路(第2流路R2)を通じて、貫通孔23の一端側から流出可能である。電解質ゲルDの成分は特に限定されないが、電極3と体表Bの接触面積の狭さをカバーし(接触不良を防ぎ)、かつ通電性が増加する材料を含むことが好ましい。
【0047】
さらに、電極部材1は、第1貯留部4Aの上側に第1押圧部P1を備え、第2貯留部4Bの上側に第2押圧部P2を備えている。第1押圧部P1と第2押圧部P2とは、分割されて隣接しており、それぞれ独立に操作することができる。
【0048】
この実施形態の電極部材1を体表Bに取り付ける場合、所定の体表Bの位置に電極部材1を配置する。
【0049】
次に、電極部材1を上方から体表B側に向かって押す(第1の押圧)。左右の第1押圧部P1および第2押圧部P2を上方から押し、これによって、吸着部2が変形して体表Bに密着し、第1凹部24および第2凹部25の内部が陰圧状態になり、電極部材1が体表Bに吸着する。
【0050】
続いて、図7に例示したように、左右の第1押圧部P1および第2押圧部P2の上方から体表B側に向かって押す(第2の押圧)。第2の押圧によって、吸着部2を変形させて、第1凹部24および第2凹部25の内部の陰圧を強化する。この際、境界部26と外縁部27が体表Bに接触しており、第1凹部24の内部と第2凹部25とは内部空間の体積が減少するとともに、体表Bとの間で密閉された第1空間S1と第2空間S2が形成されている。
【0051】
そして、図8に例示したように、第1押圧部P1のみを上方から押す(第3の押圧)。第3の押圧では、第1押圧部P1のみを押し、皮脂溶解液Cを第1流路R1を介して第1凹部24内に流出させ、第1凹部24内の体表Bに皮脂溶解液Cを作用させる。
【0052】
その後、図9に例示したように、30~60分かけて、第1押圧部P1のバネの作用などを利用して、皮脂溶解液Cを第1流路R1を介して、第1貯留部4Aに大半を回収する。
【0053】
図10に例示したように、第2押圧部P2のみを上方から押す(第4の押圧)。第4の押圧によって、電解質ゲルDを第2流路R2を介して第1凹部24内に流出させ、第1凹部24内を電解質ゲルDで満たすことができる。これにより、例えば、PSG検査中、電解
質ゲルDが体表Bと電極3間の接触を良好に保ち、多少の体動などによる体表Bの形状や動きなどに伴う接触不良を抑制することができる。
【0054】
なお、検査後または治療後は、電極部材1を外した時に、アルコールガーゼなどで、体表Bに残った皮脂溶解液Cや電解質ゲルDを取り除くことが望ましい。
【0055】
この実施形態の電極部材1においても、マッサージ用の形態では、所定の位置において、安定に電極3から体表Bに電流を印加して刺激することができ、使用者をリラックスさせ、入眠を促進することができる。また、PSG検査用の形態では、電極3から体表Bから
の微弱電流(脳波など)を確実に捕捉することができ、コストや検査の手間を抑えつつ、検査精度を向上させることができる。さらに、電解質ゲルDが体表Bと電極3間の接触を良好に保ち、多少の体動などによる体表Bの形状や動きなどに伴う接触不良を抑制することができる。
【0056】
続いて、本発明の電極部材の第4実施形態について、図11図15とともに説明する。第1実施形態および第3実施形態と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を一部省略する。
【0057】
図11に例示したように、この実施形態の電極部材1は、吸着部2の上側に、袋状の第1貯留部4Aおよび第2貯留部4Bを備えている。第1貯留部4Aと第2貯留部4Bとは、電極3を挟んで隣接している。
【0058】
図11に例示した形態では、第1貯留部4Aは、図中左側に設けられており、内部に皮脂溶解液Cが貯留されている。また、第1貯留部4Aは、第1連通孔T1を介して流路(第1流路R1)の内部と連通している。第1貯留部4Aから皮脂溶解液Cが第1流路R1を通じて、貫通孔23の一端側から流出可能である。
【0059】
また、第2貯留部4Bには、図中右側に設けられており、内部に電解質ゲルDが貯留されている。また、第2貯留部4Bは、第2連通孔T2を介して流路(第2流路R2)の内部と連通している。電解質ゲルDが第2流路R2を通じて、貫通孔23の一端側から流出可能である。電解質ゲルDの成分は特に限定されないが、電極3と体表Bの接触面積の狭さをカバーし(接触不良を防ぎ)、かつ通電性が増加する材料を含むことが好ましい。
【0060】
電極部材1は、第1貯留部4Aの上側に第1押圧部P1を備え、第2貯留部4Bの上側に第2押圧部P2を備えている。第1押圧部P1と第2押圧部P2とは、分割されて隣接しており、それぞれ独立に操作することができる。
【0061】
電極部材1は、電極3の上側周囲に周壁部Wを備えており、電極3と周壁部Wとの間に第3流路R3および第4流路R4が形成されている。第3流路R3は、第1連通孔T1を介して第1流路R1と上下に対向しており、第4流路R4は、第2連通孔T2を介して第2流路R2と上下に対向している。
【0062】
電極部材1は、電極3の上端の周囲に、中央に円形開口f1を有する略円盤状の操作部Fを備えている。操作部Fの円形開口f1には、電極3と周壁部Wの上端側が挿入されている。さらに、電極3の上端(操作部Fの円形開口f1)を覆うように、圧力調整機構Gが設けられている。圧力調整機構Gを介して、空気を供給または吸引等することができ、これによって、第3流路R3および第4流路R4内の空気圧を調整することができる。
【0063】
この実施形態の電極部材1を体表Bに取り付ける場合、所定の体表Bの位置に電極部材1を配置する。
【0064】
次に、電極部材1全体を上方から体表B側に向かって押し込む(第1の押圧)。第1の押圧によって、吸着部2が変形して体表Bに密着し、第1凹部24および第2凹部25の内部が陰圧状態になり、電極部材1が体表Bに吸着する。
【0065】
続いて、図12に例示したように、操作部Fを上方から体表B側に向かって押し込み、電極3を体表Bに当接させる(第2の押圧)。第2の押圧によって、吸着部2をさらに変形させて、第1凹部24および第2凹部25の内部の陰圧を強化する。この際、境界部26と外縁部27が体表Bに接触しており、第1凹部24の内部と第2凹部25とは内部空間の体積が減少するとともに、体表Bとの間で密閉された第1空間S1と第2空間S2が形成されている。第2の押圧によって、電極3の下端部が体表Bに当接した状態で、吸着部2を安定に固定することができる。また、第2の押圧の際には、圧力調整機構Gによって、第1空間S1内の圧力を調整して、吸着強度を高めることもできる。
【0066】
そして、図13に例示したように、第1押圧部P1のみを下方に向かって押す(第3の押圧)。第3の押圧によって、第1貯留部4Aが圧縮され、内部の皮脂溶解液Cが第1連通孔T1を通じて、第1流路R1に流出し、第1凹部24内に供給されることで、体表Bに皮脂溶解液Cが作用する。
【0067】
その後、図14に例示したように、30~60分かけて、第1押圧部P1のバネの作用などを利用して、皮脂溶解液Cを第1流路R1を介して、第1貯留部4Aに大半を回収する。
【0068】
次に、図15に例示したように、第2押圧部P2のみを下方に向かって押す(第4の押圧)。第4の押圧によって、第2貯留部4Bが圧縮され、内部の電解質ゲルDが第2連通孔T2を通じて、第2流路R2に流出し、第1凹部24内に電解質ゲルDが充填される。これにより、例えば、PSG検査中、電解質ゲルDが体表Bと電極3との間の接触を良好に
保ち、多少の体動などによる体表Bの形状や動きなどに伴う接触不良を抑制することができる。
【0069】
なお、第2押圧部P2は、第4の押圧によって押し込まれた状態が維持される構造であってもよいし、第1押圧部P1と同様に押圧前の位置に復帰する構造であってもよい。
【0070】
また、検査後または治療後は、例えば、圧力調整機構Gなどを利用して、第1凹部24および第2凹部25の内部を陽圧にするなどして、吸着部2を体表Bから取り外すことができる。電極部材1を外した後は、アルコールガーゼなどで、体表Bに残った皮脂溶解液Cや電解質ゲルDを取り除くことが望ましい。
【0071】
この実施形態の電極部材1においても、マッサージ用の形態では、所定の位置において、安定に電極3から体表Bに電流を印加して刺激することができ、使用者をリラックスさせ、入眠を促進することができる。また、PSG検査用の形態では、電極3から体表Bから
の微弱電流(脳波など)を確実に捕捉することができ、コストや検査の手間を抑えつつ、検査精度を向上させることができる。さらに、電解質ゲルDが体表Bと電極3間の接触を良好に保ち、多少の体動などによる体表Bの形状や動きなどに伴う接触不良を抑制することができ、微弱電流を捕捉することができる。
【0072】
以上の通り、本発明の電極部材1は、使用者の体表Bに取り付けられる電極部材1であって、
中央付近に貫通孔23を備え、使用者の体表Bに吸着可能な吸着部2と、
吸着部2の貫通孔23に挿入された電極3と、
皮脂溶解液Cを貯留する第1貯留部4Aと、
を備え、
吸着部2の貫通孔23の内周面23Aと電極3との間には、間隙からなる流路Rが形成されており、
第1貯留部4Aに貯留された皮脂溶解液Cが流路Rを通じて、貫通孔23の一端側から流出する。
【0073】
次に、本発明の頭部装具、身体装具およびウェアセットの一実施形態について説明する。上述した電極部材についての説明は省略する。
【0074】
図16は、本発明の頭部装具の一実施形態を例示した正面図および断面図である。
【0075】
本発明の頭部装具5は、上述した本発明の電極部材1と、頭部装着部材6とを備える。
【0076】
頭部装着部材6は、頭部表面と当接する吸湿層61と、この吸湿層61上に積層されている絶縁層62を含む2層構造を有していることが好ましい。
【0077】
吸湿層61の材料は特に限定されないが、伸縮性に富んだ吸湿性素材であることが好ましく、これにより、発汗による悪影響を低減することができる。
【0078】
また、絶縁層62の材料は特に限定されないが、伸縮性、耐久性、保温性に富む絶縁材料であることが好ましい。電極部材1の配設位置は個人毎に、体格等により変わるため、それに対応可能な材料、構造であることが考慮される。絶縁層62は、電流が導線Lを通じて体表側へ流れるのを遮断することができる。
【0079】
また、電極部材1の配設位置は、目的に応じて、国際10/20法に規定される所定位置、
各ツボの位置、耳介部・眼瞼部・下顎など所望の位置を例示することができる。電極部材1の配設位置に応じて、吸湿層61および絶縁層62を貫通する開口部を設けることができ、この開口部を介して電極部材1を頭部装着部材6の表面から露出させることができる。
【0080】
さらに、微弱電流を捕捉するPSG用および通常電流を送るマッサージ用では、発汗によ
る漏電の影響を最小限にする為にも、頭部装着部材6の表面に、正面視略正六角形の単位が連続する吸湿性の網目状構造からなるメッシュ体が被覆されていることが好ましい。このメッシュ体は、線状の絶縁体で形成されていることが好ましい。このメッシュ体により、電極部材1を確実に固定することができる。この場合、例えば、電極部材1から延びる微弱電流用および通常電流用の導線を、直接、PSG測定装置やコントローラー、マッサージ装置本体などに接続することができる。
【0081】
この形態の場合、図示していないが、電極部材とは別体として、取り外し可能な固定具を網目状構造の付近に取り付けることができる。電極部材から延びる微弱電流用の導線と通常電流用の導線とを、この固定具を介して、測定装置やコントローラーなどに接続することもできる。この実施形態では、固定具は、微弱電流用の導線と通常電流用の導線とを保持するための複数の開口などを有していても良い。
【0082】
なお、図16(A)(B)では、後述する導線Lから構成される網目状構造を例示しているが、上述したメッシュ体(線状の絶縁体)の場合も同様の構造を採用することができる。
【0083】
一方、別の形態としては、図16(A)(B)に示したように、絶縁層62の表面に、電極部材1の電極3と接続している導線Lが延び、導線Lによって正面視略正六角形の単位が連続する網目状構造が形成されている形態を例示することができる。この導線Lの網目状構造により、目、口などの除く頭部全体が覆うことができる。電極3から捕捉された頭部表面からの微弱電流は、導線Lの網目状構造を介して、部位や脳波ごとに分けて中心部やコントローラーなどに導くことができる。
【0084】
本発明の頭部装具は、PSG用の場合、上述した電極部材の特徴とともに、線状の絶縁体
または導線Lが網目状構造を形成していることで、電極部材1の配設位置を容易に調整することができるため、PSG検査の準備作業の負担が軽減される。具体的には、例えば、従
来、1~2人のスタッフで、30分~40分以上掛かっていた、PSG検査の準備作業が、
1人のスタッフで、10~15分程度で済むことにより、同じ日に、数人から10人以上のPSG検査が可能となり、大きなコストカットが実現できることになる。なお、新型コロ
ナウイルス感染症の問題もあり、本発明の頭部装具5は、アルコール消毒で、完全にウイルス感染症を抑制できない限り、ディスポーザブルとすべきである。
【0085】
線状の絶縁体(メッシュ体)または導線Lによって形成される正六角形の単位構造の大きさは特に限定されず、例えば、部位や使用目的(PSGまたはマッサージ)に応じて適宜
設計することができる。具体的には、例えば、正六角形の中心を通る線分の長さが5mm~10cmの範囲内であることが好ましい。
【0086】
また、本発明の頭部装具では、マッサージ用及び、PSG用(微弱電流捕捉用)での捕捉
効率が導線による網目状構造単独では十分でない場合、例えば、電極部材1から延びる微弱電流用および通常電流用の導線を、直接、PSG測定装置やコントローラー、マッサージ装置本体などに接続することが好ましい。
【0087】
その他、本発明の頭部装具5は、PSG検査の用途においては、例えば、眼電電極、酸素
飽和度センサ、システムリファレンス電極、頤筋電電極、気流センサなどを含むことができる。
【0088】
眼電電極は、使用者の眼電(Electro-oculogram:EOG)を取得するための電極である。眼電電極は、例えば、電解液が含浸された弾性部材からなるものとすることができ、例えば、使用者のこめかみ付近に配置することができる。
【0089】
酸素飽和度センサは、使用者の経皮的血中酸素飽和度(percutaneous oxygen saturation:SPO2)を取得するためのセンサである。酸素飽和度センサは、皮膚に光を照射する発光部と、反射光を測定する受光部を備え、酸素濃度による反射光の吸光度差から酸素飽和度を判定する構造のものを用いることが可能である。酸素飽和度センサは、例えば、使用者の前額部付近に配置することができる。
【0090】
システムリファレンス電極は、脳波電極、眼電電極および後述する頤筋電電極の基準となる基準電位を取得するための電極である。システムリファレンス電極は、例えば、電解液が含浸された弾性部材からなるものすることができる。
【0091】
頤筋電電極は、頤部の筋電(electromyograph:EMG)を取得するための電極である
。頤筋電電極は、例えば、電解液が含浸された弾性部材からなるものとすることができる。
【0092】
気流センサは、使用者の鼻口呼吸フローを取得するためのセンサである。気流センサは、呼気による差圧を測定するセンサを採用することができる。
【0093】
本発明の身体装具(図示していない)についても、上述した本発明の頭部装具と同様の構成を採用することができる。上述した本発明の頭部装具と共通する部分についての説明は一部省略する。
【0094】
本発明の身体装具は、上述した本発明の電極部材と、身体装着部材とを備える。
【0095】
身体装着部材は、使用者の身体(頭部を除く全体)を被覆するものであり、好ましくは、使用者の身体に密着するものである。具体的には、例えば、男性用バレエウェアのような被服の形態であることが・BR>Dましい。
【0096】
身体装着部材は、体表と当接する吸湿層と、吸湿層上に積層されている絶縁層を含む2層構造を有していることが好ましい。電極部材の配設位置に応じて、吸湿層および絶縁層62を貫通するに開口部を設けることができ、この開口部を介して電極部材を身体装着部材の表面から露出させることができる。
【0097】
微弱電流を捕捉するPSG用および通常電流を送るマッサージ用の形態において、上述し
た頭部装具の形態と同様に、身体装着部材の表面は、正面視略正六角形の単位が連続する網目状構造からなるメッシュ体で被覆されていることが好ましい。このメッシュ体は、線状の絶縁体であることが好ましい。このメッシュ体により、電極部材を確実に固定することができる。
【0098】
この場合、例えば、電極部材から延びる微弱電流用および通常電流用の導線を、直接、PSG測定装置やコントローラー、マッサージ装置本体に接続することができる。
【0099】
この形態においても、電極部材とは別体として、取り外し可能な固定具を網目状構造の付近に取り付けることができる。電極部材から延びる微弱電流用の導線と通常電流用の導線とを、この固定具を介して、測定装置やコントローラーなどに接続することもできる。
【0100】
線状の絶縁体(メッシュ体)または導線によって形成される正六角形の単位構造の大きさは、特に限定されず、例えば、部位や使用目的(PSGまたはマッサージ)に応じて適宜
設計することができる。具体的には、例えば、正六角形の中心を通る線分の長さが5mm~10cmの範囲内であることが好ましい。
【0101】
一方、別の形態としては、上述した頭部装具の形態と同様に、絶縁層の表面に、導線によって正面視略正六角形の単位が連続する網目状構造が形成されている形態を例示することができる。導線の網目状構造により、体全体を覆うことができる。電極部材の電極から捕捉された体表からの微弱電流は、導線の網目状構造を介して、部位ごとに、または、心電図、筋電図などごとに分けて中心部やコントローラーなどに導くことができる。また、例えば、マッサージの用途などの通常電流の場合も同様に、電源からの電流を導線の網目状構造を介して体表に供給することができる。導線が網目状構造を形成していることで、電極部材の配設位置を容易に調整することができる。さらに、この実施形態では、身体装着部材の絶縁層は必ずしも必要ではなく、導線の表面を絶縁材料で被覆することもできる。
【0102】
また、本発明の身体装具では、マッサージ用及び、PSG用(微弱電流捕捉用)での捕捉
効率が導線による網目状構造単独では十分でない場合、例えば、電極部材から延びる微弱電流用および通常電流用の導線を、直接、PSG測定装置やコントローラー、マッサージ装置本体などに接続することが好ましい。
【0103】
電極部材の配設位置は、目的に応じて、適宜調整することができるが、例えば、予め、個別ユーザ毎に3Dレーザースキャナーで全身の体形を詳細にかつ三次元的に把握し、電極部材の配設位置を個人毎に示すマップを内側の吸湿層上に印刷しておき、電極の位置を調整して配置することもできる。
【0104】
また、その他、身体装具は、例えば、心電センサ、呼吸運動センサなどを含むことができる。
【0105】
心電センサは、使用者の心電(electrocardiogram:ECG)を取得するためのセンサであ
る。心電センサは、例えば、電解液が含浸された弾性部材からなるものとしてもよく、この他の使用者の胸部に電気的に接続可能な構造を有するものとすることもできる。
【0106】
呼吸運動センサは、使用者の呼吸運動を取得するためのセンサである。呼吸運動センサは、例えば、使用者の胴体に固定するベルトの伸縮を測定するものなど、任意のものを用いることが可能である。
【0107】
さらに、身体装着部材では、使用者の背面側に位置する電極部材は、使用者による荷重がかかることで、使用者の体表に吸着固定するように設定することができる。
【0108】
本発明のウェアセット(図示していない)は、上述した頭部装具と身体装具とを含み、マッサージ用(好ましくは、完全に絶縁体からなる正六角形による網目状構造を採用したもの)またはPSG検査用(好ましくは、完全に絶縁体からなる正六角形による網目状構造
を採用したもの)のウェアセットとして好適に利用することができる。
【0109】
本発明の電極部材をマッサージ用またはPSG検査用の頭部装具や身体装具に使用するこ
とで、コストや検査の手間を抑えつつ、快適なマッサージ(鍼灸治療代替治療)や確実なPSG検査の実施が可能である。
また、本発明の電極部材およびこれを備えた頭部装具および身体装具では、例えば、局所薬剤濃度を上昇させるための局所投与法(低周波或いは超音波照射を併用しての投与)を可能としてもよい。この場合、例えば、各種の薬剤を電極部材の流路を通じて、適宜なタイミングで薬剤を電極部材から流出させて、作用させることができる。また、電極部材に第1貯留部や第2貯留部を備える形態では、第1貯留部や第2貯留部に薬剤を貯留することもできる。薬剤の種類は特に限定されないが、例えば、AGA(男性型脱毛症)に対するものとして、増毛剤(血管新生剤、ホルモン剤など)を例示することができ、皮膚病変に対しては、アトピー治療薬、尋常性乾癬治療薬、抗がん剤などを例示することができる。
【0110】
なお、頭部および全身への電気刺激による鍼灸治療代替治療では、個別ユーザ毎に、合併症や季節・天候毎に、その日の体調など毎に、全ての電極への同時あるいは異時通電は、必ずしも、治療効果を最大にするものではないと考えられる。そこで、通電する電極の部位や数、通電する電流の強度、時間、タイミングおよび導線の種類、その固定位置などを変化させ、鍼灸代替治療後の効果を、快眠チェック表などを用い1~2週に一度タブレットなどに入力し、記録し、AIにフィードバック学習させることで改善することもできる。
【0111】
なお、快眠チェック表としては、例えば、以下の通り、複数の段階にわけて処置を変更させてもよい。
【0112】
8スコア以下 現状のまま
9~14スコア 装置担当者による調整が必要
15~20スコア 主治医の処方変更などの指示が必要
21スコア以上 睡眠専門医あるいは精神神経科専門医の診療が必要
このため、本発明のウェアセットを利用した治療においても、基礎疾患やその時々の身体状況・病態に応じて個人毎に快適性が異なる可能性を踏まえ、入眠・再入眠の快適さなどを、使用者からの情報に基づいてAIを活用しながらフィードバックして制御することもできる。
【0113】
そのため、本発明のウェアセットなどの使用前に、使用者に、同居家族構成(ストレスの有無、介護状況など含め)、身長・体重(BMI)、既往歴(特に脳卒中、不整脈など心
臓病)・合併症(慢性扁桃腺炎、副鼻腔炎など鼻・口腔関係など)・現症(高血圧症、糖尿病、心不全など心臓病、脳血管障害、喘息、肺気腫、肝臓病、うつ等)・家族歴、生活歴(睡眠習慣(睡眠時の姿勢(主に仰臥位、右側臥位、左側臥位)・睡眠時間(昼寝や二度寝など)、入浴(時間・温度、サウナなど)、コーヒー(時間(昼間、夕方以降)、量など)他、喫煙(過去喫煙、現在の喫煙・受動喫煙)・飲酒(頻度、量、赤面あり・なし)、嗜好品等、アレルギー歴(花粉症・喘息など)、普段の血圧・脈拍数・体温、最近の症状、普段の食事時間、食事内容、間食の有無(内容)、仕事の内容(ストレスの有無(対人関係など内容))・時間帯(夜勤の有無、交代勤務など含め)等をタブレットなどに入力させ、睡眠時無呼吸症候群診断時のAHI値などの状況により、AIによって、初回以降
の通電電極の部位、数、通電電流強度・時間など治療メニュー・内容を調整することができる。
【0114】
さらに、使用者には、できれば連日、夕食時から睡眠前までの時間に、タブレットなどで、その日の体調、仕事でのストレス、運動時間・内容、食事時間・内容、飲酒の有無・量、入浴時間・内容、などをタッチパネル方式で入力させることが好ましい。また、起床後にも、睡眠時間・内容(目覚め回数、夜間のトイレ回数など含め)、起床時の体調、快眠感・頭痛・乾きなど症状、機器の状態・不具合なども同様に入力させることが好ましい。これにより、個人毎の睡眠などの最適条件を導き出し、治療当日の、睡眠条件設定に生かすことができる。
【0115】
また、1~4週間単位で、あるいは従来の平均、前週・期間との比較などの見直しにより、よりよい快適性を追求することができるようにする。
【0116】
さらに、使用者に、自覚症状に関する項目として、日中の眠気が出る状況など(例えば:大体いつもうとうと居眠りする、座って新聞や本を読んでいる時、座ってTVを見ている時、会議中や映画館・劇場で静かに座っている時、他人が運転する車に1時間続けて乗っている時、午後横になって休息している時、座って人とおしゃべりしている時、飲酒せず昼食後静かに座っている時、自分で運転中、渋滞等で数分停車中など)について、タブレットで入力してもらうことが好ましい。
【0117】
その他、使用者には、以下の症状があるかどうかも入力してもらうことが好ましい。
【0118】
頻繁にいびきをかく、息が苦しくて目覚める、夜間2回以上尿意で目覚める、記憶力・集中力の低下を感じる、倦怠感があり疲れが取れない、家族から睡眠中の息の停止・数分の無呼吸を指摘される、夜間眠りが浅く、またはしばしば目覚める、起床時或いは午前中頭重・頭痛がある、起床時熟睡感がなく慢性的な睡眠不足を感じる、睡眠薬代りに連日飲酒している等。
【0119】
以上のように、AIの活用によりスマート快眠を実現し、快眠・再入眠に関してビッグデータを活用し、研究開発し、さらに、より快適な入眠・再入眠を永続的に追求していく。
【0120】
本発明の電極部材、頭部装具、身体装具およびウェアセットは、以上の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0121】
1 電極部材
2 吸着部
23 貫通孔
24 第1凹部
25 第2凹部
3 電極
4A 第1貯留部
4B 第2貯留部
5 頭部装具
6 頭部装着部材
61 吸湿層
62 絶縁層
C 皮脂溶解液
D 電解質ゲル
L 導線
R 流路
R1 第1流路
R2 第2流路
R3 第3流路
R4 第4流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16