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特許7446503ナッツ由来成分を含有する飲食品及びその製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ナッツ由来成分を含有する飲食品及びその製法
(51)【国際特許分類】
   A23L 25/00 20160101AFI20240301BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20240301BHJP
   A23G 9/38 20060101ALI20240301BHJP
   A23G 9/42 20060101ALI20240301BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240301BHJP
【FI】
A23L25/00
A23L2/38 D
A23G9/38
A23G9/42
A23L5/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023062400
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2022208582の分割
【原出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2022192265
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真川 竜太
(72)【発明者】
【氏名】畠中(衣笠) 美月
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 裕之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 真
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080672(JP,A)
【文献】Pharm. Innov. J.,2018年,vol.7, no.10,pp.1-2
【文献】アーモンド効果 オリジナル 200ml,2022年07月25日,pp.1-5,retrieved on 2023.06.16, retrieved from the internet,https://www.glico.com/jp/product/drink/almondkoka/39445/
【文献】Food. Chem.,2020年,vol.325,pp.126901(1-10), Fig. S1-3
【文献】七訂食品成分表,2016年,p.40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 25/00
A23C 11/00-11/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品の製造方法であって、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、40℃以上、80℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120℃~150℃で流動させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
飲食品が飲料である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計4.0~15.0質量%含む飲食品の製造方法であって、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、80℃以上、100℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を85℃以上、120℃未満で加熱する工程
を含む、方法(ただし、アーモンドに粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品の製造方法を除く)。
【請求項4】
飲食品が冷菓である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計7.0~95.0質量%含む飲食品の製造方法であって、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、35℃以上、80℃未満の温度で混合する工程、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を85℃以上で静置する工程を含む、方法(ただし、アーモンドに粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品の製造方法を除く)。
【請求項6】
飲食品がゲル状食品である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
ナッツ類がアーモンドである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
ナッツ類がアーモンドである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
アーモンドが焙煎アーモンドである、請求項1、2、5~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナッツ由来成分を含有する飲食品及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナッツ類は、コクのある味わいと香ばしい香りから人気のある食品材料である。またナッツ類には一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸等の良質な脂質が含まれているため健康面からも注目されている。そのため、アーモンド等のナッツ類を使用した様々な飲食品について研究がされている(非特許文献1)。
【0003】
一方、従来、ナッツ類を使用したものに限らず、タンパク質や油脂等を含む食材を原料とする飲食品の製造には、通常、当該食材由来成分の凝集・沈殿を抑えるための乳化剤、安定化剤等の食品添加物が使用されているが、食品添加物の使用量低減を望む消費者の声を受けて乳化剤、安定化剤等の使用量を低減させた飲食品の開発も進められている(特許文献1~5)。しかし、ナッツ類を使用した飲食品について、乳化剤、安定化剤等の使用量を低減しつつ、それぞれの飲食品に応じた物性を示す飲食品を製造することは容易ではない。カゼイン等の乳タンパク質と異なり、植物性タンパク質は乳化安定性が劣るためであり、特にナッツ類に由来するタンパク質を含む飲食品について高品質なゲル化組成物、乳化組成物を得ることが非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2020/166493
【文献】特開2020-80717
【文献】WO2019/188788
【文献】特許第5879997号
【文献】特許第6426699号
【文献】特開2020-010679
【非特許文献】
【0005】
【文献】Food Science and Technology 62(2005) 488-498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、それぞれの飲食品に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況の下、本発明者らは、ナッツ類を用いて多種多様な製法にて飲食品を作製し、その物性を確認するという試行錯誤を何度も繰り返した結果、飲料及び食品のそれぞれについて、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂等の組成が特定の要件を満たす飲食品により、当該課題を解決し得ることを見出した。本発明者らは、かかる飲食品を得るために好適な製造工程、具体的にはナッツ類に由来するタンパク質の乳化、ゲル化に適した工程の条件等についてさらに鋭意研究をつづけた結果、本発明を完成するに至った。従って、本発明は以下の項を提供する:
項1.以下の項1-1又は項1-2に記載の飲食品:
項1-1.ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む液状飲食物であって、当
該液状飲食物は、ナッツ類に由来するタンパク質、及び油脂を合計1.8~7.5質量%含み、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対し、油脂を1.5~6.0質量部含む、液状飲食品。
項1-2.項1-1に記載の液状飲食品(ただし、アーモンドに粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品を除く)。
【0008】
項2.ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計4.0~95.0質量%含む食品である、飲食品。
【0009】
項3.ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対し、油脂を0.01~10.0質量部含む、項2に記載の飲食品。
【0010】
項4.ナッツ類がアーモンドである、項1~3のいずれか一項に記載の飲食品。
【0011】
項5.アーモンドが焙煎アーモンドである、項4に記載の飲食品。
【0012】
項6.ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品の製造方法であって、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、4℃以上、80℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120℃~150℃で流動させる工程
を含む、方法。
【0013】
項7.飲食品が飲料である、項6に記載の方法。
【0014】
項8.ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計4.0~15.0質量%含む飲食品の製造方法であって、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、80℃以上、100℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を80℃以上、120℃未満で加熱する工程
を含む、方法。
【0015】
項9.飲食品が冷菓である、項8に記載の方法。
【0016】
項10.ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計7.0~95.0質量%含む飲食品の製造方法であって、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、0℃以上、80℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を80℃以上で静置する工程を含む、方法。
【0017】
項11.飲食品がゲル状食品である、項10に記載の方法。
【0018】
項12.ナッツ類がアーモンドである、項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
項13.アーモンドが焙煎アーモンドである、項12に記載の方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品の種類に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
飲食品
本発明は、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を含む飲食品を提供する。本発明において、ナッツ類には、アーモンド、ピーナッツ、マカダミアナッツ、クルミ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ等が含まれ、特にアーモンドが好ましい。ナッツ類は皮付きのものであっても皮なしのものであってもよいが、皮なしのものがより好ましい。また、本発明において、アーモンドとしては、焙煎していないアーモンド及び焙煎アーモンドの両方が挙げられるが、焙煎アーモンドが好ましい。
【0022】
本発明における飲食品には、飲料及び食品が含まれる。また、本発明にかかる飲食品は、液状飲食品及び非液状飲食品と分類することができる。本発明において液状飲食品とは、食に供されるときの温度、圧力において、液体状である飲食品を示す。同様に、本発明において非液状飲食品とは、食に供されるときの温度、圧力において、非液体状である飲食品を示す。
【0023】
また、本発明における飲食品は、水分を含んでいてもよい。本発明にかかる飲食品の水分含有量は限定されないが、例えば、1質量%~97質量%のものが挙げられる。本発明にかかる飲食品としては、水分含有量が比較的多いものが好ましい。従って、本発明における飲食品は、水分含有量が30質量%以上であることが好ましい。
【0024】
液状飲食品としては、ナッツ飲料(ナッツミルク(アーモンドミルク等)等);炭酸飲料、オレンジ、レモン、ブドウ、リンゴ等の天然果汁を含有する飲料;トマト、ニンジン等の野菜汁を含有する飲料、乳飲料、豆類飲料(豆乳等)、穀物飲料(オーツミルク等)、乳酸菌飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、スポーツ飲料、清涼飲料;ビール類、チューハイ等のアルコール飲料;ビールテイスト飲料などのノンアルコール飲料の飲料;ポタージュ、ビスク、かぼちゃスープ、クラムチャウダー、クリームスープ等のスープ等が挙げられ、ナッツ飲料(ナッツミルク等)が好ましい。本発明において非液状飲食品には、以外の飲食品が広く含まれ得るが、例えば、冷菓、焼き菓子、等が挙げられる。本明細書において、冷菓としては、アイスクリーム類、豆乳アイスクリーム、フローズンヨーグルトが挙げられ、アイスクリーム類には、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓が含まれる。
焼き菓子としては、例えば、カヌレ、テリーヌ、スフレ、ケーキ、ビスケット、プレッツェル、マドレーヌ、タルト等が挙げられる。
【0025】
本発明の飲食品には、ゲル状食品も包含される。本発明において、用語「ゲル状食品」が意味するところは、本発明が属する食品の技術分野において理解されている通りであるが、典型的には、食に供されるときの温度、圧力において、ゲル状である食品を示す。本発明においてゲル状とは、コロイド溶液が固体又は半固体状になった状態を示す。また、本発明において用語「ゲル状食品」には、食に供されるときの温度、圧力において、食品全体としてゲル状である食品だけでなく、ゲル状部分とゲル状でない部分を両方含む食品(例えば、ゲル状でない塊とゲルとが混合されている食品等)も包含され得る。ゲル状食品には、非液状食品も液状食品も含まれ得る。ゲル状食品としては、例えば、また、プリン、ゼリー、ムース、クリーム、ババロア、ブリュレ、くず饅頭、蒸し饅頭、水ようかん、パンナコッタ、杏仁豆腐、発酵食品、ハンバーグ等の肉製品および代替肉製品、ちくわ、はんぺん、かまぼこ、魚肉ソーセージ等の海産物製品および海産物代替品、高栄養食品、ゴマ豆腐等の和洋菓子;茶碗蒸し、ムース等の食品;ゲル状調味料、ソース(ベシャメ
ルソース(ホワイトソース)、モルネーソース、オーロラソース、ナンテュアソース、クリームソース、マスタードソース、スビーズソース、チーズソース、オランデーズソース、カルボナーラ等のパスタソース等)、カレー、和風あん、中華あん等が挙げられる。
【0026】
本発明の飲食品は、乳化剤、安定化剤等の食品添加物を含まなくてもよく、これらを使用したとしても少量でよいため好ましい。食品添加物としては、例えば、乳化剤、安定化剤、ゲル化剤、増粘多糖類、セルロース、pH調整剤等が挙げられ、使用する場合には、これらの一部、例えば、乳化剤、安定化剤等のみを用いることが好ましい。乳化剤、安定化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム等が挙げられる。これらの食品添加物を使用する場合、一種単独で使用しても二種以上を組み合わせてもよい。これらの食品添加物を使用する場合、その使用量は限定されないが、本発明の飲食品に対し、例えば、10.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の範囲で設定できる。食品添加物を複数種類使用する場合、各食品添加物一種の使用量が上記範囲であってもよく、好ましくは、各食品添加物のうち少なくとも二種の組み合わせ(より好ましくは全て)の合計量が上記範囲であってもよい。
【0027】
また、栄養価の観点、食品ロス、環境負荷低減の観点から、本発明の飲食品としては、非特許文献1に記載のようなアーモンドに粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品でないものが好ましい。同様に、本発明の飲食品としては、ナッツ類に粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品でないものが好ましい。上記ナッツ類(アーモンド等)に粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品とは、任意選択で水、その他の材料の存在下で、ナッツ類(アーモンド等)に粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いて得られるものを意味する。
【0028】
第一の実施形態において、本発明は、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む液状飲食物であって、当該液状飲食物は、ナッツ類に由来するタンパク質、及び油脂を合計1.8~7.5質量%含み、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対し、油脂を1.5~6.0質量部含む、液状飲食品を提供する。本発明の液状飲食品は、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料、水、任意選択で油脂、その他の原料を用いて製造することができる。ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料は限定されないが、例えば、ナッツ類ペースト、ナッツ類由来のタンパク質を含む液体原料、ナッツ類由来のタンパク質を含む粉体原料、ナッツ類由来のタンパク質を含む固体または半固体原料を挙げることができるが、これに限らない。例えば、本発明の液状飲食品は、ナッツ類に由来するタンパク質及びナッツ類に由来する油脂を含むナッツ類ペーストを原料として用いてもよいし、油脂とナッツ類に由来するタンパク質とを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
以下、ナッツ類ペーストを用いる実施形態を主に挙げて本発明の液状飲食品について例示的に説明する。かかる実施形態において、本発明は、ナッツ類ペースト及び水を含む液状飲食物であって、当該飲料は、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含み、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対し、油脂を1.5~6.0質量部含む、液状飲食品を提供する。
【0030】
ナッツ類ペーストとしては、公知のもの、又は公知の方法により得られるものを適宜使用することができる。例えば、ナッツ類ペーストは、ナッツ類を粉砕することにより得ることができる。ナッツ類を粉砕する方法は限定されず、本発明が属する技術分野において用いられ得るものを広く使用することができる。粉砕方法としては、例えば、凍結粉砕、凍結工程を経ない粉砕等が挙げられる。粉砕工程としては、ローラー、ボールミル、擂潰機、回転式石臼等を用いた粉砕等が挙げられる。ナッツ類ペーストの製法は特に限定されないが、その一例としては、ナッツ類を凍結粉砕し、その後常温に置くことで得ることが
できる。かかる実施形態において凍結粉砕は、例えば、ナッツ類を液体窒素等の冷却媒体で凍結し、衝撃粉砕によって微粒子化させることにより実施される。かくして得られるナッツ類の粉砕品は、凍結状態ではさらさらの粉末状であるが、室温ではナッツ類に含まれる油脂によりペースト状になり得る。前述のように粉砕・摩砕方法はどのような方法であってもよく、上記のような凍結工程を経ない粉砕を用いることもできる。
本実施形態において、本発明の液状飲食品におけるナッツ類ペーストの配合量は特に限定されないが、例えば、本発明の液状飲食品100質量部に対し、ナッツ類ペースト2.0~12.0質量部が好ましく、4.0~10.0質量部がより好ましい。
【0031】
本実施形態において、本発明の液状飲食品は、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%、好ましくは3.0~6.0質量%含む。本発明において、本発明の飲食品がナッツ類に由来する油脂以外の油脂を含む場合、「ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂」「ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する油脂」等の記載における「油脂」とは、ナッツ類に由来する油脂だけでなくナッツ類由来以外のものも含む油脂を意味する。従って、本発明において「ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を・・・質量部含む」「ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合」等における油脂の含有量は、ナッツ類に由来する油脂及び(それを含有する場合)ナッツ類由来以外の油脂の合計の含有量を意味する。また、本実施形態における本発明の液状飲食品において、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合は、1.5~6.0質量部であり、好ましくは2.5~5.0質量部である。
【0032】
本発明の液状飲食品におけるナッツ類に由来するタンパク質の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の液状飲食品100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質0.3~3.0質量部が好ましく、1.0~2.0質量部がより好ましい。本発明の液状飲食品における油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の液状飲食品100質量部に対し、油脂1.1~6.4質量部が好ましく、2.0~5.0質量部がより好ましい。
【0033】
当該実施形態において本発明の液状飲食品は、その構成上の特徴に起因して、乳化安定性が高い。前述したように、植物性タンパク質は乳化安定性が劣るため、ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来の液状飲食品においては、保存中にナッツ類由来のタンパク質が凝集し、分離・沈殿が発生し、なめらかで均一な物性が得られないという問題があった。このような物性の液状飲食品は風味が良好ではなく、外観も不良である。本発明の液状飲食品は、乳化安定性が高いため有用である。
【0034】
当該実施形態において、本発明の液状飲食品は、植物油脂を含んでいてもよい。植物油脂は、特に限定されないが、常温で液状の油脂が好ましい。例えば、アーモンド油、亜麻仁油、エゴマ湯、オリーブ油、ゴマ油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、調合油、トウモロコシ油、菜種油、ぶどう油、綿実油、落花生油、ひまわり油、マカデミアナッツオイル、ヤシ油、パーム油等が挙げられる。植物油脂を用いる場合、その配合量は限定されず、本発明の液状飲食品における油脂の総量(植物油脂及び(存在する場合)植物油脂以外の油脂の総量)が、前述した範囲となるよう用いることが好ましい。非限定的な例としては、例えば、本発明の液状飲食品100質量部中、植物油脂1.1~6.4質量部が好ましく、2.0~5.0質量部がより好ましい。また、当該実施形態において、本発明の液状飲食品には、ナッツ類由来のタンパク質の分散性を高めるための素材をさらに添加してもよい。ナッツ類由来のタンパク質の分散性を高めるための素材としては、食物繊維等が好ましい。食物繊維としては、イヌリン、シトラスファイバー、難消化性デキストリン等が挙げられる。これらの分散性を高めるための素材は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。分散性を高めるための素材を用いる場合、その配合量は限定されないが、例えば、本発明の液状飲食品100質量部中、分散性を高めるための素材0
.01~10.0質量部が好ましい。当該実施形態において、本発明の液状飲食品は、例えば、糖類、ビタミン、安定剤、香料、セルロース、pH調整剤等の添加物を含んでいてもよい。尚、当該実施形態における本発明の液状飲食品は乳化安定性が高いため、安定剤等の添加剤を配合しないか、添加しても少量でなめらかで均一な物性を得ることができることは前述のとおりである。物性の不安定化を防ぐため、使用する水としてはイオン交換水等の金属イオン濃度が低いものが好ましい。
以上、ナッツ類ペーストを用いる実施形態を挙げて本発明の液状飲食品について例示的に説明した。しかし、前述のようにナッツ類に由来するタンパク質を含む原料はナッツ類ペースト以外にも存在するため、本発明の液状飲食品は上記の実施形態に限定されない。そうでないことが明記されていない限り、ナッツ類由来の粉体タンパク質等の、ナッツ類ペースト以外の原料を用いる実施形態においても、本発明の液状飲食品における成分の含有量、原料の種類等は上記と同様に設定できる。
【0035】
第二の実施形態において、本発明は、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計4.0~15.0質量部、好ましくは7.5~12.5質量部含む食品を提供する。当該第
二の実施形態において、食品としては、限定されないが、冷菓が好ましい。
【0036】
当該実施形態において、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する、油脂の含有割合は2.5~10.0質量部が好ましく、5.0~8.0質量部がより好ましい。
【0037】
当該実施形態において、ナッツ類に由来するタンパク質を含む本発明の食品は、ナッツ系の原料を含む。ナッツ系の原料としては、ナッツ類ペースト、ナッツ類粉末、ナッツ類タンパク抽出物、ナッツ類エキス、ナッツ類加工品等が挙げられ、ナッツ類ペースト等が好ましい。ナッツ類ペーストとしては前述のものを使用することができる。本実施形態において、本発明の食品におけるナッツ系の原料の配合量は特に限定されないが、例えば、本発明の食品100質量部に対し、ナッツ系の原料5.0~12.0質量部が好ましく、7.0~11.0質量部がより好ましい。
【0038】
本発明の食品におけるナッツ類に由来するタンパク質の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の食品100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質0.4~4.3質量部が好ましく、1.2~3.5質量部がより好ましい。本発明の食品における油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の食品100質量部に対し、油脂2.9~13.6質量部が好ましく、5.0~11.5質量部がより好ましい。
【0039】
当該実施形態において本発明の食品は、その構成上の特徴に起因して、乳化安定性が高い。前述したように、当該第二の実施形態において、食品としては、冷菓が好ましい。ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来の冷菓は、乳化剤、安定剤を十分量添加しないと喫食に適さないほど硬い物性となり、なめらかな物性が得られなかった。このような物性の食品は風味が良好ではなく、外観も不良である。本実施形態において、本発明の冷菓の場合、フリージングの際のオーバーラン性向が向上し、十分に空気を含ませることが可能となり、その結果、なめらかで高品質な物性を実現することができる。
【0040】
当該実施形態においても、本発明の食品は、植物油脂を含んでいてもよい。植物油脂としては前述のものを使用できる。植物油脂を用いる場合、その配合量は限定されず、本発明の飲食品における油脂の総量(植物油脂及び(存在する場合)植物油脂以外の油脂の総量)が、前述した範囲となるよう用いることが好ましい。非限定的な例としては、例えば、本発明の食品100質量部中、植物油脂2.9~13.6質量部が好ましく、5.0~11.5質量部がより好ましい。また、当該実施形態において、本発明の食品には、ナッツ類由来のタンパク質の分散性を高めるための素材をさらに添加してもよい。ナッツ類由来のタンパク質の分散性を高めるための素材としては、前述のものを使用することができ
る。分散性を高めるための素材を用いる場合、その配合量は限定されないが、例えば、本発明の食品100質量部中、分散性を高めるための素材0.01~10質量部が好ましい。当該実施形態において、本発明の食品は、糖類、ビタミン、安定剤、香料、セルロース、pH調整剤等の添加物を含んでいてもよい。当該実施形態における本発明の食品は乳化安定性が高いため、安定剤等の添加剤を配合しないか、添加しても少量でもなめらかな物性を得ることができることは前述のとおりである。
【0041】
第三の実施形態において、本発明は、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計7.0~95.0質量%、好ましくは14.9~59.5質量%含み、より好ましくは20
.0~44.6質量%含む飲食品を提供する。当該第三の実施形態において、飲食品としては、限定されないが、ゲル状飲食品が好ましい。
【0042】
当該実施形態において、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する、油脂の含有割合0.01~10.0質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましい。
【0043】
当該実施形態において、ナッツ類に由来するタンパク質を含む本発明の飲食品は、ナッツ系の原料を含む。ナッツ系の原料としては、ナッツ類ペースト、ナッツ類粉末、ナッツ類タンパク抽出物、ナッツ類エキス、ナッツ類加工品等が挙げられ、ナッツ類ペースト等が好ましい。ナッツ類ペーストとしては前述のものを使用することができる。本実施形態において、本発明の飲食品におけるナッツ系の原料の配合量は特に限定されないが、例えば、本発明の飲食品100質量部に対し、ナッツ系の原料7.0~95.0質量部が好ましく、21.3.~63.7質量部がより好ましい。
【0044】
本発明の飲食品におけるナッツ類に由来するタンパク質の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の飲食品100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質0.6~94.1質量部が好ましく、4.0~40.0質量部がより好ましい。本発明の飲食品における油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の飲食品100質量部に対し、油脂0.1~86.4質量部が好ましく、4.0~60.0質量部がより好ましい。
【0045】
当該実施形態において本発明の飲食品は、その構成上の特徴に起因して、乳化安定性が高い。前述したように、当該第三の実施形態において、飲食品としては、ゲル状飲食品が好ましい。ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来のゲル状飲食品は、なめらかで弾力のある物性を得られなかった。このような物性の飲食品は風味が良好ではなく、外観も不良となる。本実施形態において、本発明の飲食品は、食品添加物を使用しないかもしくは使用しても少量で、なめらかで弾性のある物性を有する食品を提供することができる。
【0046】
当該実施形態においても、本発明の飲食品は、植物油脂を含んでいてもよい。植物油脂としては前述のものを使用できる。植物油脂を用いる場合、その配合量は限定されず、本発明の飲食品における油脂の総量(植物油脂及び(存在する場合)植物油脂以外の油脂の総量)が、前述した範囲となるよう用いることが好ましい。非限定的な例としては、例えば、本発明の飲食品100質量部中、植物油脂0.1~86.4質量部が好ましく、4.0~60.0質量部がより好ましい。当該実施形態において、本発明の飲食品は、糖類、ビタミン、安定剤、香料、セルロース、pH調整剤等を含んでいてもよいが、これに限らない。当該実施形態における本発明の飲食品は乳化安定性が高いため、安定剤等の添加剤を配合しないか、添加しても少量でもなめらかで弾力のある物性を得ることができることは前述のとおりである。
【0047】
飲食品の製造方法
第四の実施形態において、本発明は、
ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品の製造方法であって、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、4℃以上、80℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120℃~150℃で流動させる工程
を含む、方法を提供する。
【0048】
当該第四の実施形態において、まず、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、4℃以上、80℃未満の温度で混合する工程を行う。本工程において、原料としては、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料(当該原料が油脂を含む)と水と任選択でその他の原料の組合せ、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料と油脂と水と任選択でその他の原料の組合せ等が挙げられる。本工程において、原料のうち、ナッツ類に由来するタンパク質を含むものとしては、ナッツ類ペースト、ナッツ類粉末、ナッツ類タンパク抽出物、ナッツ類エキス、ナッツ類加工品等が挙げられる。ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料の配合量は特に限定されないが、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」の混合物100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料2.0~12.0質量部が好ましく、4.0~10.0質量部がより好ましい。ま
た、油脂としては、上記ナッツ類に由来するタンパク質に含まれる油脂、それ以外の油脂(例えば、前述した植物油脂等)等が挙げられる。当該実施形態において、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」の総量100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含むことが好ましく、3.0~6.0質量部含むことがより好ましい。
【0049】
また、当該第四の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」において、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合は、1.5~6.0質量部が好ましく、より好ましくは2.5~5.0質量部である。
【0050】
当該第四の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」中のナッツ類に由来するタンパク質の含有量は特に限定されないが、例えば、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質0.3~3.0質量部が好ましく、1.0~2.0質量部がより好ましい。当該第四の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」中の油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」100質量部に対し、油脂1.1~6.4質量部が好ましく、2.0~5.0質量部がより好ましい。
【0051】
本工程に用いる原料のうち、ナッツ類に由来するタンパク質を含むもの以外の原料としては、本発明の飲食品の説明において前述したものを使用することができ、使用量なども前記と同様に設定できる。
【0052】
当該混合工程において、上記「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を混合する際の温度は、4℃以上、80℃未満である。当該工程を70℃以下で行うことが好ましい。また、当該工程を40℃以上で行うことが好ましく、50℃以上で行うことがより好ましい。当該混合工程の時間は限定されないが、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を80℃以上に加熱すると、当該原料はゲル化する。そのため、本工程ではゲル化を抑えた状態でまずは原料をより均一に混合する。当該混合は、攪拌機、ブレンダー、ニーダー等により行うことができる。上記混合工程で得られた混合物を次の加熱流動工程に供する。
【0053】
好ましい実施形態において、原料混合以降にホモゲナイザー(二段式ホモゲナイザー等)により均質化させてもよい。均質化の際の温度は限定されないが、例えば、40℃~80℃、好ましくは60~70℃の範囲で適宜設定できる。当該均質化工程を行うことにより、脂肪球やタンパク質を微細化させ、良好な乳化分散状態が得られるため好ましい。さらに、任意選択で均質化させた混合物を次の工程に移す前にあらかじめ1~30℃まで冷却してもよい。
【0054】
次に、上記工程で得られた混合物を120℃~150℃で流動させる工程(加熱流動工程)を行う。当該工程は145℃以下で行うことが好ましい。また、当該工程は120℃以上で行うことが好ましく、130℃以上で行うことがより好ましい。当該加熱流動工程の時間は限定されないが、例えば、2~100秒、好ましくは15~60秒、より好ましくは20~45秒の範囲で適宜設定できる。当該加熱流動工程は、チューブ式殺菌機、プレート式殺菌機、インジェクション式殺菌機、インフュージョン式殺菌機、ジュール式殺菌機、バッチ式殺菌機等により行うことができる。ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料の混合物を120℃以上に加熱するとナッツ類に由来するタンパク質が熱変性し、乳化安定力が向上する。また、当該加熱工程を上記混合物を静置した状態で行うと、加熱条件によっては混合物のゲル化が生じるところ、本実施形態においては、当該加熱工程を混合物を流動させた状態で行うことにより、混合物を液状のままタンパク質の乳化安定力を向上させることができる。従って、当該第四の実施形態にかかる方法は、飲料の製造、特に第一の実施形態における飲料の製造に適している。
当該飲食品を、保管に適した温度に冷却し、容器充填してもよい。
【0055】
当該第四の実施形態にかかる方法を用いることにより、ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来の飲料と比較して、ナッツ類由来のタンパク質の凝集および、それによる分離・沈殿が抑制され、なめらかで均一な物性を有する飲料を得ることができるため、有用である。
【0056】
第五の実施形態において、本発明は、
ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計4.0~15.0質量%含む飲食品の製造方法であって、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、80℃以上、100℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を80℃以上、120℃未満で加熱する工程を含む、方法を提供する。
【0057】
当該第五の実施形態において、まず、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、80℃以上、100℃未満の温度で混合する工程を行う。本工程においても、原料としては、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料(当該原料が油脂を含む)と水と任選択でその他の原料の組合せ、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料と油脂と水と任選択でその他の原料の組合せ等が挙げられる。本工程において、原料のうち、ナッツ類に由来するタンパク質を含むものとしては、ナッツ類ペースト、ナッツ類粉末、ナッツ類タンパク抽出物、ナッツ類エキス、ナッツ類加工品等が挙げられ、ナッツ類ペーストが好ましい。ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料の配合量は特に限定されないが、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」の総量100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料5.0~12.0質量部が好ましく、7.0~11.0質量部がより好ましい。また、油脂としては、上記ナッツ類に由来するタンパク質に含まれる油脂、それ以外の油脂(例えば、前述した植物油脂等)等が挙げられる。当該実施形態において、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」の総量100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を4.0~15.0質量部含
むことが好ましく、7.5~12.5質量%含むことがより好ましい。
【0058】
また、当該第五の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」において、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合は、2.5~10.0質量部が好ましく、より好ましくは5.0~8.0質量部である。
【0059】
当該第五の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」中のナッツ類に由来するタンパク質の含有量は特に限定されないが、例えば、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質0.4~4.3質量部が好ましく、1.2~3.5質量部がより好ましい。当該第五の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」中の油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」100質量部に対し、油脂2.9~13.6質量部が好ましく、5.0~11.5質量部がより好ましい。
【0060】
本工程に用いる原料のうち、ナッツ類に由来するタンパク質を含むもの以外の原料としては、本発明の飲食品の説明において前述したものを使用することができ、使用量なども前記と同様に設定できる。 当該混合工程において、上記「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を混合する際の温度は、80℃以上、100℃未満である。当該工程を98℃以下で行うことが好ましく、95℃以下で行うことがより好ましい。また、当該工程を80℃以上で行うことが好ましく、85℃以上で行うことがより好ましい。当該混合工程の時間は限定されないが、例えば、10~60分、好ましくは25~35分の範囲で適宜設定できる。「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を80℃以上に加熱すると、当該原料はゲル化する。そのため、本工程ではゲル化した状態で原料を混合する。これにより、増粘安定剤を使用せずとも粘度を付与し、空気を抱き込みやすい物性が得られる。当該混合は、攪拌機、ブレンダー、ニーダー等により行うことができる。上記混合工程で得られた混合物を次の加熱工程に供する。
【0061】
好ましい実施形態において、混合工程で得られた混合物をさらにホモゲナイザー(二段式ホモゲナイザー等)により均質化させてもよい。均質化の際の温度は限定されないが、例えば、40℃~80℃、好ましくは60~70℃の範囲で適宜設定できる。当該均質化工程を行うことにより脂肪球やタンパク質を微細化させ、良好な乳化分散状態が得られるため好ましい。
【0062】
次に、上記工程で得られた混合物を80℃以上、120℃以下で加熱する工程(加熱工程)を行う。当該工程は120℃以下で行うことが好ましく、100℃以下で行うことがより好ましい。また、当該工程は80℃以上で行うことが好ましく、85℃以上で行うことがより好ましい。当該加熱工程の時間は限定されないが、例えば、2~100秒、好ましくは15~60秒、より好ましくは30~45秒の範囲で適宜設定できる。
【0063】
当該加熱工程は、加熱時の固体化を防ぐ観点から、混合物を流動させながら行うことが好ましい。当該加熱工程は、チューブ式殺菌機、プレート式殺菌機、インジェクション式殺菌機、インフュージョン式殺菌機、ジュール式殺菌機、バッチ式殺菌機等により行うことができる。
【0064】
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料の混合物を120℃以上に加熱するとナッツ類に由来するタンパク質が熱変性し、低粘度化が生じる。本実施形態では、120℃未満で加熱することにより、ゲル化による増粘が生じ、オーバーラン性が向上し、滑らかな物性を得ることができるため好ましい。
【0065】
当該第五の実施形態にかかる方法を用いることにより、ナッツ類に由来するタンパク質
を含有する従来の食品(冷菓等)と比較して、乳化剤、安定剤を使用しないか、使用してもより少ない量で、フリージングの際のオーバーラン性向が向上し、十分に空気を含ませることが可能となり、その結果、なめらかで高品質な物性を実現することができるため好ましい。従って、当該第五の実施形態にかかる方法は、食品の製造、特に第二の実施形態における食品(好ましくは冷菓等)の製造に適している。
【0066】
第六の実施形態において、本発明は、
ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計7.0~95.0質量% 含む飲食品の製
造方法であって、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、0℃以上、80℃未満の温度で混合する工程、
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を80℃~150℃で静置する工程
を含む、方法
を提供する。
【0067】
当該第六の実施形態において、まず、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、0℃以上、80℃未満の温度で混合する工程を行う。本工程においても、原料としては、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料(当該原料が油脂を含む)と水と任選択でその他の原料の組合せ、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料と油脂と水と任選択でその他の原料の組合せ等が挙げられる。本工程において、原料のうち、ナッツ類に由来するタンパク質を含むものとしては、ナッツ類ペースト、ナッツ類粉末、ナッツ類タンパク抽出物、ナッツ類エキス、ナッツ類加工品等が挙げられ、ナッツ類ペーストが好ましい。ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料の配合量は特に限定されないが、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」の総量100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質を含む原料7.0~95.0質量部が好ましく、14.9~63.7がより好ましく、21.3~63.7質量部がより好ましく、21.3~44.6質
量部がより好ましい。また、油脂としては、上記ナッツ類に由来するタンパク質に含まれる油脂、それ以外の油脂(例えば、前述した植物油脂等)等が挙げられる。当該実施形態において、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」の混合物100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計7.0~95.0質量部含むことが好ましく、14.9~59.5質量部含むことがより好ましい。より好ましくは、20.0~44.6質量部含むことがさらに好ましい。
【0068】
また、当該第六の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」において、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合は、0.01~10.0質量部が好ましく、より好ましくは0.1~5.0質量部である。
【0069】
当該第六の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」中のナッツ類に由来するタンパク質の含有量は特に限定されないが、例えば、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質0.6~94.1質量部が好ましく、4.0~40.0質量部がより好ましく、4.0~17.5質量%がより好ましい。当該第六の実施形態における「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」中の油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」100質量部に対し、油脂0.1~86.4質量部が好ましく、4.0~60.0質量部がより好ましく、4.0~45.0%がより好ましい。
【0070】
本工程に用いる原料のうち、ナッツ類に由来するタンパク質を含むもの以外の原料としては、本発明の飲食品の説明において前述したものを使用することができ、使用量なども
前記と同様に設定できる。
【0071】
当該混合工程において、上記「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を混合する際の温度は、0℃以上、80℃未満である。当該工程を60℃以下で行うことが好ましく、45℃以下で行うことがより好ましい。また、当該工程を20℃以上で行うことが好ましく、35℃以上で行うことがより好ましい。「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を80℃以上に加熱すると、当該原料はゲル化する。そのため、本工程ではゲル化を抑えた状態でまずは原料をより均一に混合する。当該混合は、攪拌機、ブレンダー、ニーダー等により行うことができる。上記混合工程で得られた混合物を次の加熱工程に供する。
【0072】
好ましい実施形態において、混合工程で得られた混合物をさらにホモゲナイザーにより均質化させてもよい。均質化の際の温度は限定されないが、例えば、40℃~80℃、好ましくは60~70℃の範囲で適宜設定できる。当該均質化工程を行うことにより、脂肪球やタンパク質が微細化し、均一に分散する。それにより、加熱後のゲル物性が均一で、なめらかで安定した状態となるため好ましい。
【0073】
次に、上記工程で得られた混合物を80℃以上で静置する工程(静置加熱工程)を行う。当該工程は150℃以下で行うことが好ましく、120℃以下で行うことがより好ましい。また、当該工程は85℃以上で行うことが好ましく、100℃以上で行うことがより好ましい。当該静置加熱工程の時間は限定されないが、例えば、300~3000秒、好ましくは500~1500秒、より好ましくは570~800秒の範囲で適宜設定できる。当該静置加熱工程は、加熱加圧殺菌機、オーブン、蒸し器、電子レンジ等により行うことができる。好ましくは加熱加圧殺菌機、オーブン等の静置加熱処理が挙げられる。
ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料の混合物を80℃以上に加熱するとゲル化し、120℃以上に静置加熱するとナッツ類に由来するタンパク質がゲル化する。従って、本実施形態によれば、ゲル化した飲食品を得ることができ当該第六の実施形態にかかる方法は、食品の製造、特に第三の実施形態における食品(好ましくはゲル状食品等)の製造に適している。
【0074】
当該第六の実施形態にかかる方法を用いることにより、ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来の食品(ゲル状食品等)と比較して、食品添加物を使用しないかもしくは使用しても少量で、なめらかで弾性のある物性を有する食品を提供することができるため好ましい。
【0075】
以下に、実施例を用いて本発明の特定の実施形態を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されない。
【実施例
【0076】
実施例1 液状食品
<配合>
アーモンドペースト(皮なしアーモンドを原料とするもの) 6.0%
食物繊維 3.1%
水 残部
<製造方法>
まず、上記配合の原料を70℃で混合した。次に、得られた混合物を二段式ホモゲナイザーで均質化した(15MPa ※二段目で5MPaまで上げ、一段目で15MPaまで上げ
る)。上記で均質化した混合物を10℃以下に冷却した。冷却した混合物をプレート式殺菌機等で135度30秒殺菌した。混合物を25℃以下に冷却し、容器充填して、容器詰のアーモンドミルクを得た。上記方法により得られたアーモンドミルクのタンパク量を燃
焼法により測定した。また、当該アーモンドミルクの油脂量をエーテル抽出法により測定した。
【0077】
さらに、得られたアーモンドミルクについて、静置試験及び官能評価を行った。具体的には、静置試験は、アーモンドミルクを20℃で100日間静置し、目視にて外観の均一性を評価した。評価基準は以下の通り:
〇:著しい分離・沈殿が認められない
×:著しい分離・沈殿が発生している
また、食品の官能試験に精通した6名のパネラーにより、アーモンドミルクの滑らかさを評価した。評価基準は以下の通り:
◎:なめらか
〇:ややなめらか(僅かにざらつき・口残りを感じる)
△:なめらかではない(ざらつきを感じる)
×:全くなめらかではない(著しいざらつきを感じる)
実施例1のアーモンドミルクの成分値及び試験の結果を表1に示す:
【0078】
【表1】
【0079】
上記に示すように、得られたアーモンドミルクは、なめらかで高品質な物性を示した。
【0080】
実施例2 冷菓
<配合>
アーモンドペースト 10%
食物繊維 5%
植物油脂 8.5%
糖類 20%
水 残部
<製造方法>
上記配合の原料を80℃で30分間混合した。得られた混合物を二段式ホモゲナイザーで均質化した(15MPa ※二段目で5MPaまで上げ、一段目で15MPaまで上げ
る)。均質化した混合物をプレート式殺菌機で90℃30秒殺菌した。殺菌後の混合物を10℃以下に冷却した。冷却後の上記混合物を連続式フリーザーでフリージングし、容器に充填して、冷菓を得た。
【0081】
上記方法により得られた冷菓のタンパク量及び油脂量を実施例1と同様に測定した。
【0082】
さらに、得られた冷菓について官能評価を行った。具体的には
食品の官能試験に精通した6名のパネラーにより、冷菓の滑らかさを評価した。評価基準
は以下の通り:
◎:なめらか
〇:ややなめらか(僅かに氷晶感を感じる)
△:なめらかではない(氷晶感を感じる)
×:全くなめらかではない(著しい氷晶感を感じる)
実施例2の冷菓の成分値及び官能試験の結果を表2に示す:
【0083】
【表2】
【0084】
上記に示すように、得られた冷菓は、フリージングの際のオーバーラン性向が向上し、十分に空気を含ませることが可能となり、その結果、なめらかで高品質な物性を実現することができた。
【0085】
実施例3 ゲル状食品
<配合>
アーモンドペースト 40%
活性炭処理水 60%
<製造方法>
まず、上記配合の原料を40℃で混合した。得られた混合物を卓上ホモゲナイザーで均質化(9700rpm 1分)した。次に、均質化した混合物を容器に充填し、加圧加熱
殺菌機で120℃20分静置加熱し、10℃に冷却して、ゲル状食品を得た。
【0086】
上記方法により得られたゲル状食品のタンパク量及び油脂量を実施例1と同様に測定した。
【0087】
さらに、得られたゲル状食品について官能評価を行った。具体的には、食品の官能試験に精通した6名のパネラーにより、冷菓の硬さ及び滑らかさを評価した。評価基準は以下の通り:
ゲル状態の評価基準
〇:ゲルを形成している
×:ゲルを形成していない
なめらかさの評価基準
◎:なめらか
〇:ややなめらか(僅かにざらつき・口残りを感じる)
△:なめらかではない(ざらつきを感じる)
×:全くなめらかではない(著しいざらつきを感じる)
実施例3のゲル状食品の成分値及び官能試験の結果を表3に示す:
【0088】
【表3】
【0089】
上記に示すように、得られたゲル状食品は、なめらかで弾性のある物性を有していた。
【要約】
【課題】乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、それぞれの飲食品に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供すること。
【解決手段】ナッツ類に由来するタンパク質、及び油脂を合計1.8~7.5質量%含み、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対し、油脂を1.5~6.0質量部含む、液状飲食品(ただし、アーモンドに粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品を除く)。
【選択図】なし