(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】部材運搬装置、及び部材運搬方法
(51)【国際特許分類】
B62B 3/10 20060101AFI20240301BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B62B3/10 Z
B62B3/02 C
(21)【出願番号】P 2023071839
(22)【出願日】2023-04-25
【審査請求日】2023-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 真道
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-131368(JP,U)
【文献】実開昭58-196246(JP,U)
【文献】特開平08-216890(JP,A)
【文献】特開2004-010175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
B60P 3/40
B66B 7/00- 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車
を備え、
前記台車は、長尺部材を載せる積載面が形成された台座と、前記台座に設けられた取付部とを有しており、
前記取付部は、前記台座に前記長尺部材を連結する連結軸を有しており、
前記連結軸は、前記台座に着脱可能になっており、
前記長尺部材が前記連結軸によって前記台座に連結された状態では、前記長尺部材に設けられた連結用穴に前記連結軸が通されているとともに、前記積載面に対する前記長尺部材の角度が変化する方向へ前記長尺部材が前記連結軸を中心として回転自在になっている部材運搬装置。
【請求項2】
前記台座は、前記連結軸に交差する方向で、かつ前記積載面に沿った方向へ伸縮可能になっている請求項1に記載の部材運搬装置。
【請求項3】
前記長尺部材を吊る揚重機
を備え、
前記長尺部材が前記連結軸によって前記台座に連結された状態では、前記長尺部材が前記揚重機によって引き上げられることにより、前記長尺部材が起き上がる方向へ前記長尺部材が前記連結軸を中心として回転する請求項1又は請求項2に記載の部材運搬装置。
【請求項4】
前記揚重機は、前記長尺部材を吊る吊り体と、前記吊り体を上下方向へ移動させる揚重機本体と、前記揚重機本体から離れた位置において操作可能な操作部とを有しており、
前記揚重機本体は、前記操作部の操作に応じて動作する請求項3に記載の部材運搬装置。
【請求項5】
台車の台座に形成された積載面に長尺部材を載せる積載工程と、
前記積載工程の後、前記長尺部材に設けられた連結用穴に
、前記台座に着脱可能な連結軸を通すことにより、前記台座に前記長尺部材を前記連結軸によって連結する連結工程と、
前記積載工程及び前記連結工程の後、前記長尺部材が前記積載面に倒れている状態から前記長尺部材を起き上がらせながら、運搬先の空間に前記長尺部材を搬入する搬入工程と
を備え、
前記搬入工程では、前記積載面に対する前記長尺部材の角度が大きくなる方向へ前記連結軸を中心として前記長尺部材を回転させながら、前記長尺部材を起き上がらせる部材運搬方法。
【請求項6】
前記台座は、前記連結軸に交差する方向で、かつ前記積載面に沿った方向へ伸縮可能になっており、
前記積載工程では、前記台座を伸ばした状態にし、
前記搬入工程では、前記台座を縮めながら前記長尺部材を起き上がらせる請求項5に記載の部材運搬方法。
【請求項7】
揚重機に前記長尺部材を接続する接続工程
を備え、
前記接続工程は、前記搬入工程の前に実施され、
前記搬入工程では、前記揚重機によって前記長尺部材
を引き上げることにより、前記長尺部材を起き上がらせる請求項5又は請求項6に記載の部材運搬方法。
【請求項8】
前記揚重機は、前記長尺部材を吊る吊り体と、前記吊り体を上下方向へ移動させる揚重機本体と、前記揚重機本体を動作させる操作部とを有しており、
前記接続工程では、前記吊り体に前記長尺部材を接続し、
前記搬入工程では、前記運搬先の空間の外側において前記操作部を操作することにより、前記揚重機本体を動作させて前記長尺部材を引き上げる請求項7に記載の部材運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、長尺部材を運搬する部材運搬装置、及び部材運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベータ用レールを乗場から昇降路内に搬入するために、エレベータ用レールの後端を載せるローラコンベヤ体を乗場に設置し、エレベータ用レールの前端を引き上げるウィンチを昇降路内に設けた部材搬入治具が開示されている。ローラコンベヤ体には、ローラコンベヤ体を摺動可能な台座板が設けられている。エレベータ用レールの後端は、台座板を介してローラコンベヤ体に載せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来の部材搬入治具では、エレベータ用レールの前端がウィンチによって引き上げられることにより、エレベータ用レールの後端が台座板とともに昇降路側に引き寄せられる。従って、従来の部材搬入治具では、エレベータ用レールの後端が昇降路側に引き寄せられるときに、エレベータ用レールの後端が台座板を滑って台座板から落下してしまうおそれがある。これにより、エレベータ用レールの後端の位置が台座板に対してずれた場合に、エレベータ用レールの後端の位置を元に戻す調整を行う必要がある。従って、エレベータ用レールの搬入作業の負担が大きくなる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、長尺部材の運搬作業の負担を軽減することができる部材運搬装置、及び部材運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る部材運搬装置は、台車を備え、台車は、長尺部材を載せる積載面が形成された台座と、台座に設けられた取付部とを有しており、取付部は、台座に長尺部材を連結する連結軸を有しており、長尺部材が連結軸によって台座に連結された状態では、長尺部材に設けられた連結用穴に連結軸が通されているとともに、積載面に対する長尺部材の角度が変化する方向へ長尺部材が連結軸を中心として回転自在になっているものである。
また、本開示に係る部材運搬方法は、台車の台座に形成された積載面に長尺部材を載せる積載工程と、積載工程の後、長尺部材に設けられた連結用穴に連結軸を通すことにより、台座に長尺部材を連結軸によって連結する連結工程と、積載工程及び連結工程の後、長尺部材が積載面に倒れている状態から長尺部材を起き上がらせながら、運搬先の空間に長尺部材を搬入する搬入工程とを備え、搬入工程では、積載面に対する長尺部材の角度が大きくなる方向へ連結軸を中心として長尺部材を回転させながら、長尺部材を起き上がらせるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、長尺部材の運搬作業の負担を軽減することができる部材運搬装置、及び部材運搬方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る部材運搬装置を用いて長尺部材が運搬されている状態を示す構成図である。
【
図3】
図2の台座が縮まっているときの台車を示す斜視図である。
【
図5】
図4の連結軸によってエレベータ用レールが台座に連結されている状態を示す拡大図である。
【
図6】
図5のエレベータ用レールが積載面に対して傾斜しているときの取付部を示す拡大図である。
【
図7】実施の形態1に係る部材運搬方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図7の積載工程、連結工程及び接続工程のそれぞれを実施した後の部材運搬装置の状態を示す構成図である。
【
図9】
図8のエレベータ用レールの第2端部が揚重機によって引き上げられているときの部材運搬装置の状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本開示の対象は、以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、又は実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
建物にエレベータが据え付けられるときには、エレベータを構成する複数のエレベータ用部材が建物の昇降路内に運搬される。複数のエレベータ用部材には、エレベータ用レール、エレベータ用機械台ビームなどの長尺部材が含まれている。本開示の部材運搬装置は、長尺部材を運搬する。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る部材運搬装置を用いて長尺部材が運搬されている状態を示す構成図である。本実施の形態では、部材運搬装置1によって運搬される長尺部材がエレベータ用レール2とされている。また、本実施の形態では、長尺部材を運搬する運搬先の空間がエレベータの昇降路3とされている。エレベータ用レール2は、建物の乗場4から乗場出入口5を通って昇降路3内に運搬される。
【0012】
部材運搬装置1は、台車6と、揚重機7とを有している。エレベータ用レール2が乗場4から昇降路3内に運搬されるときには、エレベータ用レール2が台車6に載せられた状態で、エレベータ用レール2が揚重機7によって引き上げられる。エレベータ用レール2は、第1端部2a及び第2端部2bを有している。揚重機7は、エレベータ用レール2の第2端部2bを引き上げる。
【0013】
揚重機7は、吊り体71と、揚重機本体72と、操作部73とを有している。
【0014】
吊り体71は、エレベータ用レール2を吊るチェーンである。吊り体71としては、ワイヤロープを用いてもよい。吊り体71は、エレベータ用レール2の第2端部2bに接続可能になっている。エレベータ用レール2の第2端部2bには、貫通穴である接続用穴が設けられている。吊り体71は、吊り体71の端部に設けられたフックが接続用穴に通されることにより第2端部2bに接続される。
【0015】
揚重機本体72は、昇降路3内に設置可能になっている。揚重機本体72が昇降路3内に設置されている状態では、揚重機本体72の位置が乗場4よりも高い位置となっている。揚重機本体72は、吊り体71を巻き取ることにより吊り体71を上方へ移動させ、吊り体71を繰り出すことにより吊り体71を下方へ移動させる。即ち、揚重機本体72は、吊り体71を上下方向へ移動させる。
【0016】
揚重機本体72は、モータを有している。揚重機本体72は、モータの駆動力によって動作する。これにより、揚重機本体72は、モータの駆動力によって吊り体71を上下方向へ移動させる。
【0017】
操作部73は、揚重機本体72から離れた位置において操作可能な携帯用の機器である。本実施の形態では、操作部73が揚重機本体72と無線通信を行う。これにより、部材運搬装置1を用いてエレベータ用レール2を運搬する作業者8は、昇降路3の外側に位置する乗場4において操作部73を操作可能である。
【0018】
揚重機本体72は、操作部73の操作に応じて動作する。操作部73の操作は、上昇用操作及び下降用操作のいずれかを選択して行われる。揚重機本体72は、操作部73の上昇用操作によって吊り体71を上方へ移動させ、操作部73の下降用操作によって吊り体71を下方へ移動させる。
【0019】
台車6は、台座61と、ハンドル部62と、取付部63と、一対の前輪64と、一対の後輪65とを有している。
【0020】
図2は、
図1の台車6を示す斜視図である。台座61には、積載面611が形成されている。台座61は、積載面611を上方に向けて配置される。エレベータ用レール2は、積載面611に載せられる。台座61は、台座61の前端部及び後端部の間の距離が変化する方向へ伸縮可能になっている。これにより、台座61は、積載面611に沿った方向へ伸縮可能になっている。
【0021】
図3は、
図2の台座61が縮まっているときの台車6を示す斜視図である。また、
図4は、
図2の台座61の要部を示す拡大図である。台座61は、複数のスライド部材612を有している。複数のスライド部材612は、台座61が伸縮する方向へ互いにスライド可能に順次連結されている。台座61は、複数のスライド部材612が互いにスライドすることにより伸縮する。
【0022】
本実施の形態では、各スライド部材612の形状が筒状であり、各スライド部材612の断面形状が矩形状である。また、本実施の形態では、複数のスライド部材612の断面積が台座61の前端部及び後端部のそれぞれから台座61の中央部に向かって順次小さくなっている。これにより、本実施の形態では、台座61の前端部及び後端部のそれぞれに位置するスライド部材612の内側に複数のスライド部材612が互いにスライドしながら順次挿入可能になっている。
【0023】
台座61は、台座61の前端部及び後端部のそれぞれに位置するスライド部材612の内側に複数のスライド部材612が順次挿入されることにより縮む。台座61が縮んでいる状態では、
図3に示すように、台座61の前端部及び後端部に位置する2つのスライド部材612が互いに隣接して並んでいる。
【0024】
台座61は、台座61の前端部及び後端部のそれぞれに位置するスライド部材612から複数のスライド部材612が順次引き出されることにより伸びる。台座61が伸びている状態では、
図2に示すように、台座61の前端部及び後端部に位置する2つのスライド部材612の間に複数のスライド部材612が連続して並んでいる。台座61の後端部から前端部までの距離は、台座61が縮んでいる状態から台座61が伸びることにより大きくなる。
【0025】
一対の前輪64及び一対の後輪65は、台座61の裏面に取り付けられている。台座61の裏面は、台座61の積載面611とは反対側の面である。台座61は、一対の前輪64及び一対の後輪65によって支持されている。台車6は、一対の前輪64及び一対の後輪65のそれぞれを回転させながら、乗場4の床面を移動する。
【0026】
一対の前輪64は、台座61の前端部に位置するスライド部材612に取り付けられている。一対の後輪65は、台座61の後端部に位置するスライド部材612に取り付けられている。これにより、一対の後輪65から一対の前輪64までの距離は、台座61が伸縮することにより変化する。従って、台座61が伸びている状態では、台座61が縮んでいる状態よりも、一対の後輪65から一対の前輪64までの距離が大きくなっている。
【0027】
ハンドル部62は、台座61の後端部に固定された枠である。ハンドル部62は、積載面611から立ち上がった状態で台座61に固定されている。作業者8は、ハンドル部62を持ちながら台車6を移動させる。
【0028】
取付部63は、台座61の後端部に設けられている。本実施の形態では、取付部63がハンドル部62の内側に配置されている。取付部63は、一対の支持柱631と、連結軸632とを有している。
【0029】
一対の支持柱631は、台座61に固定されている。一対の支持柱631のそれぞれは、ハンドル部62に繋がっている。一対の支持柱631は、台座61の幅方向において互いに離して配置されている。台座61の幅方向は、台座61が伸縮する方向に直交する方向で、かつ積載面611に沿った方向である。
【0030】
連結軸632は、台座61にエレベータ用レール2の第1端部2aを連結するピンである。連結軸632は、一対の支持柱631のそれぞれに着脱可能に取り付けられている。これにより、連結軸632は、一対の支持柱631を介して台座61に着脱可能になっている。
【0031】
連結軸632は、一対の支持柱631の間に配置されている。また、連結軸632は、台座61から離れた位置に配置されている。台車6が積載面611を上方に向けて配置されている状態では、連結軸632が積載面611よりも高い位置に配置されている。また、連結軸632は、台座61が伸縮する方向において台座61の後端部よりも台座61の外側の位置に配置されている。
【0032】
連結軸632は、台座61が伸縮する方向に交差し、積載面611に沿って配置されている。言い換えると、台座61は、連結軸632に交差する方向で、かつ積載面611に沿った方向へ伸縮可能になっている。本実施の形態では、連結軸632が台座61の幅方向に沿って配置されている。
【0033】
本実施の形態では、一対の支持柱631のそれぞれに挿入穴が設けられている。また、本実施の形態では、連結軸632の両端部が各挿入穴に挿入された状態で、連結軸632が一対の支持柱631に取り付けられている。連結軸632は、各挿入穴から抜けることにより一対の支持柱631から外れる。
【0034】
図5は、
図4の連結軸632によってエレベータ用レール2が台座61に連結されている状態を示す拡大図である。エレベータ用レール2の第1端部2aには、貫通穴である連結用穴21が設けられている。エレベータ用レール2が積載面611に倒れて載っている状態では、連結用穴21の位置が連結軸632の位置と同じ高さとなる。
【0035】
連結用穴21の内径は、連結軸632の外径よりも大きくなっている。これにより、連結用穴21には、連結軸632が挿入可能になっている。連結軸632が連結用穴21に通されている状態では、連結用穴21の内周面と連結軸632の外周面との間に隙間が生じている。
【0036】
連結軸632は、連結用穴21に通されることによりエレベータ用レール2の第1端部2aに取り付けられ、連結用穴21から抜かれることによりエレベータ用レール2の第1端部2aから外れる。従って、連結軸632は、エレベータ用レール2の第1端部2aに着脱可能になっている。
【0037】
台座61には、エレベータ用レール2の第1端部2aが連結軸632によって連結される。エレベータ用レール2の第1端部2aは、連結用穴21に通された連結軸632が一対の支持柱631に取り付けられることにより台座61に連結される。従って、エレベータ用レール2が連結軸632によって台座61に連結された状態では、連結軸632が連結用穴21に通されている。
【0038】
エレベータ用レール2が連結軸632によって台座61に連結された状態では、積載面611に対するエレベータ用レール2の角度が変化する方向へエレベータ用レール2が連結軸632を中心として回転自在になっている。積載面611に対するエレベータ用レール2の角度が大きくなる方向へエレベータ用レール2が連結軸632を中心として回転すると、エレベータ用レール2が起き上がる。
【0039】
エレベータ用レール2が連結軸632によって台座61に連結された状態では、エレベータ用レール2が揚重機7によって引き上げられることにより、積載面611に対するエレベータ用レール2の角度が大きくなる。エレベータ用レール2は、揚重機7によって引き上げられることにより、積載面611に倒れている状態から起き上がる方向へ連結軸632を中心として回転する。
【0040】
図6は、
図5のエレベータ用レール2が積載面611に対して傾斜しているときの取付部63を示す拡大図である。エレベータ用レール2が起き上がる方向へエレベータ用レール2が連結軸632を中心に回転すると、エレベータ用レール2の第1端部2aの一部が積載面611よりも低い位置へ移動する。しかし、連結軸632は、台座61が伸縮する方向において台座61の後端部よりも台座61の外側の位置に配置されている。これにより、エレベータ用レール2は、第1端部2aが台座61に干渉することなく起き上がることができる。
【0041】
次に、部材運搬装置1を用いてエレベータ用レール2を乗場4から昇降路3内へ運搬する部材運搬方法について説明する。
図7は、実施の形態1に係る部材運搬方法を示すフローチャートである。部材運搬方法は、積載工程S1と、連結工程S2と、接続工程S3と、搬入工程S4とを有している。エレベータ用レール2を乗場4から昇降路3内へ運搬するときには、積載工程S1、連結工程S2及び接続工程S3のそれぞれを実施した後、搬入工程S4を実施する。本実施の形態では、積載工程S1、連結工程S2、接続工程S3及び搬入工程S4の順に、各工程を実施する。作業者8は、積載工程S1、連結工程S2、接続工程S3及び搬入工程S4のそれぞれを乗場4において実施する。
【0042】
<積載工程S1>
積載工程S1では、エレベータ用レール2を台座61の積載面611に載せる。このとき、台座61を伸ばした状態にする。また、このとき、エレベータ用レール2が積載面611に倒れている状態にする。さらに、このとき、台座61の長さをエレベータ用レール2の長さに対応させて調整する。また、このとき、積載面611に載せたエレベータ用レール2の長手方向を、台座61が伸縮する方向と一致させる。
【0043】
<連結工程S2>
連結工程S2では、エレベータ用レール2の第1端部2aを連結軸632によって台座61に連結する。即ち、連結工程S2では、一対の支持柱631から外した連結軸632をエレベータ用レール2の第1端部2aの連結用穴21に通し、連結用穴21に通した連結軸632を一対の支持柱631に取り付ける。これにより、エレベータ用レール2の第1端部2aが連結軸632によって台座61に連結される。
【0044】
積載工程S1及び連結工程S2の後で接続工程S3の前には、エレベータ用レール2を載せた台車6を乗場4に配置する。台車6は、台座61の前端部を乗場出入口5に向けて配置する。
【0045】
<接続工程S3>
接続工程S3では、揚重機7にエレベータ用レール2を接続する。具体的には、接続工程S3において、昇降路3内に設置された揚重機本体72から乗場出入口5を通して吊り体71を乗場4に繰り出す。このとき、乗場4において操作部73を操作することにより揚重機本体72を動作させる。この後、乗場4においてエレベータ用レール2の第2端部2bを吊り体71に接続する。
【0046】
図8は、
図7の積載工程S1、連結工程S2及び接続工程S3のそれぞれを実施した後の部材運搬装置1の状態を示す構成図である。乗場4では、エレベータ用レール2が第2端部2bを乗場出入口5に向けて台車6に載せられている。揚重機7の吊り体71は、昇降路3内の揚重機本体72から乗場出入口5を通ってエレベータ用レール2の第2端部2bに接続されている。この状態で、搬入工程S4が実施される。
【0047】
<搬入工程S4>
搬入工程S4では、エレベータ用レール2が積載面611に倒れている状態からエレベータ用レール2を起き上がらせながら、運搬先の空間である昇降路3内にエレベータ用レール2を搬入する。搬入工程S4では、揚重機7によってエレベータ用レール2を引き上げることにより、エレベータ用レール2を起き上がらせる。
【0048】
揚重機7によるエレベータ用レール2の引き上げは、乗場4において操作部73を操作することにより、揚重機本体72を動作させて行う。即ち、乗場4において操作部73を操作して吊り体71を上方へ移動させることにより、エレベータ用レール2の第2端部2bを引き上げる。これにより、積載面611に対するエレベータ用レール2の角度が大きくなる方向へエレベータ用レール2が連結軸632を中心として回転しながら、エレベータ用レール2が起き上がる。
【0049】
図9は、
図8のエレベータ用レール2の第2端部2bが揚重機7によって引き上げられているときの部材運搬装置1の状態を示す構成図である。エレベータ用レール2が起き上がるときには、エレベータ用レール2の第2端部2bが昇降路3内に引き込まれながら、エレベータ用レール2の第1端部2aが乗場出入口5に向かって引き寄せられる。これにより、台車6の連結軸632がエレベータ用レール2の第1端部2aに追従しながら乗場出入口5に向かって引き寄せられる。このとき、乗場4の作業者8は、台座61の前端部の位置を維持したまま台座61を縮めることにより、連結軸632を乗場出入口5に近づく方向へ移動させる。
【0050】
即ち、搬入工程S4では、台座61を縮めながら、操作部73を操作してエレベータ用レール2を起き上がらせる。
【0051】
搬入工程S4では、エレベータ用レール2を起き上がらせた後、エレベータ用レール2が揚重機7によって吊られた状態で、エレベータ用レール2を連結軸632から外す。これにより、エレベータ用レール2が昇降路3内に搬入される。
【0052】
このような部材運搬装置1では、エレベータ用レール2が連結軸632によって台座61に連結されるようになっている。エレベータ用レール2が連結軸632によって台座61に連結された状態では、エレベータ用レール2に設けられた連結用穴21に連結軸632が通されている。このため、エレベータ用レール2が積載面611を滑って台座61から落下してしまうことをより確実に防止することができる。また、エレベータ用レール2を昇降路3内に搬入するときに、エレベータ用レール2に台車6を追従させながら、エレベータ用レール2を容易に起き上がらせることができる。さらに、積載面611に載せられたエレベータ用レール2の連結用穴21に連結軸632を通すことにより、エレベータ用レール2を台座61に連結軸632によって容易に連結することができる。これにより、エレベータ用レール2の運搬作業の負担を軽減することができる。また、エレベータ用レール2を運搬するときの作業時間の短縮化も図ることができる。
【0053】
また、台座61は、連結軸632に交差する方向で、かつ積載面611に沿った方向へ伸縮可能になっている。このため、エレベータ用レール2を昇降路3内に搬入するときに、エレベータ用レール2に追従して連結軸632を移動させながら、台座61を縮めることができる。これにより、エレベータ用レール2の運搬作業時に台座61が邪魔にならないようにすることができ、エレベータ用レール2の運搬作業の負担をさらに確実に軽減することができる。また、エレベータ用レール2を運搬するときの作業時間の短縮化もさらに確実に図ることができる。さらに、台座61を縮めた状態で台車6を保管することができる。これにより、部材運搬装置1を保管するスペースの省スペース化を図ることができる。
【0054】
また、エレベータ用レール2が連結軸632によって台座61に連結された状態では、エレベータ用レール2が揚重機7によって引き上げられる。このため、エレベータ用レール2が積載面611に倒れている状態からエレベータ用レール2を揚重機7の駆動力によって容易に起き上がらせることができる。これにより、エレベータ用レール2の運搬作業の負担をさらに確実に軽減することができる。また、エレベータ用レール2を運搬するときの作業時間の短縮化もさらに確実に図ることができる。
【0055】
また、揚重機7は、揚重機本体72から離れた位置において操作可能な操作部73を有している。また、揚重機本体72は、操作部73の操作に応じて動作する。このため、昇降路3の外側に位置する乗場4において作業者8が昇降路3内の揚重機本体72を動作させることができる。これにより、台車6の操作と揚重機7の操作とを一人の作業者8によって行うことができる。従って、エレベータ用レール2を運搬するときの作業者8の数の低減化を図ることができる。
【0056】
また、このような部材運搬方法では、連結工程S2において、連結用穴21に連結軸632を通すことにより、台座61にエレベータ用レール2を連結軸632によって連結する。このため、エレベータ用レール2が台座61から落下してしまうことをより確実に防止することができる。また、エレベータ用レール2に台車6を追従させながら、エレベータ用レール2を容易に起き上がらせることができる。さらに、エレベータ用レール2を台座61に連結軸632によって容易に連結することができる。これにより、エレベータ用レール2の運搬作業の負担を軽減することができる。また、エレベータ用レール2を運搬するときの作業時間の短縮化も図ることができる。
【0057】
また、積載工程S1では、台座61を伸ばした状態にし、搬入工程S4では、台座61を縮めながらエレベータ用レール2を起き上がらせる。このため、エレベータ用レール2に追従して連結軸632を移動させながら、台座61を縮めることができる。これにより、エレベータ用レール2の運搬作業時に台座61が邪魔にならないようにすることができ、エレベータ用レール2の運搬作業の負担をさらに確実に軽減することができる。また、エレベータ用レール2を運搬するときの作業時間の短縮化もさらに確実に図ることができる。
【0058】
また、接続工程S3では、揚重機7にエレベータ用レール2を接続する。さらに、搬入工程S4では、揚重機7によってエレベータ用レール2を引き上げる。このため、揚重機7の駆動力によってエレベータ用レール2を容易に起き上がらせることができる。これにより、エレベータ用レール2の運搬作業の負担をさらに確実に軽減することができる。また、エレベータ用レール2の運搬作業時間の短縮化もさらに確実に図ることができる。
【0059】
また、搬入工程S4では、昇降路3の外側に位置する乗場4において操作部73を操作することにより、揚重機本体72を動作させてエレベータ用レール2を引き上げる。このため、台車6の操作と揚重機7の操作とを一人の作業者8によって行うことができる。これにより、エレベータ用レール2を運搬するときの作業者8の数の低減化を図ることができる。
【0060】
なお、上記の実施の形態では、各スライド部材612の形状が筒状になっている。しかし、各スライド部材612の形状は、これに限定されない。例えば、各スライド部材612は、C字状の断面形状を持つパネルになっていてもよい。この場合、スライド部材612の断面形状の開放部分を台座61の裏側に向けて各スライド部材612が配置される。
【0061】
また、上記の実施の形態では、台座61が伸縮可能になっている。しかし、台座61は、伸縮可能になっていなくてもよい。このようにしても、エレベータ用レール2を連結軸632によって台座61に連結することができる。この場合、エレベータ用レール2の長さよりも台座61の長さを短くすることにより、エレベータ用レール2に連結軸632を追従させながら台車6を移動させることができる。これにより、エレベータ用レール2が台座61から落下することをより確実に防止することができる。
【0062】
また、上記の実施の形態では、部材運搬装置1が揚重機7を有している。しかし、昇降路3内に搬入される長尺部材が重量物ではなく、昇降路3内の作業者によって長尺部材を引き上げ可能である場合には、揚重機7はなくてもよい。
【0063】
また、上記の実施の形態では、積載工程S1及び連結工程S2の後で搬入工程S4の前に接続工程S3が実施されている。しかし、積載工程S1の後で連結工程S2の前に接続工程S3を実施してもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態では、揚重機7にエレベータ用レール2を接続する接続工程S3が部材運搬方法に含まれている。しかし、昇降路3内に搬入される長尺部材が重量物ではない場合には、昇降路3内の作業者によって長尺部材を引き上げ可能であるため、接続工程S3を実施しなくてもよい。
【0065】
また、上記の実施の形態では、取付部63が台座61の後端部に設けられている。しかし、台座61に対する取付部63の位置は、これに限定されない。例えば、取付部63が台座61の中央部に設けられていてもよい。このようにしても、台座61が伸縮することにより、連結軸632から台座61の前端部までの距離を変化させることができる。これにより、エレベータ用レール2の運搬作業時に台座61が邪魔にならないようにすることができ、エレベータ用レール2の運搬作業の負担を軽減することができる。また、台座61を縮めた状態で台車6を保管することができ、部材運搬装置1を保管するスペースの省スペース化を図ることができる。
【0066】
また、上記の実施の形態では、操作部73が揚重機本体72と無線通信を行うようになっている。しかし、これに限定されない。例えば、操作部73を揚重機本体72にケーブルを介して繋ぐことにより、操作部73が揚重機本体72と有線通信を行うようにしてもよい。
【0067】
以上、上記の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 部材運搬装置、2 エレベータ用レール(長尺部材)、6 台車、7 揚重機、61 台座、63 取付部、71 吊り体、72 揚重機本体、73 操作部、611 積載面、631 連結軸。
【要約】
【課題】長尺部材の運搬作業の負担を軽減することができる部材運搬装置、及び部材運搬方法を提供する。
【解決手段】部材運搬装置1において、台車6は、エレベータ用レール2を載せる積載面611が形成された台座61と、台座61に設けられた取付部63とを有している。取付部63は、連結軸632を有している。エレベータ用レール2が連結軸632によって台座61に連結された状態では、エレベータ用レール2に設けられた連結用穴21に連結軸632が通されているとともに、積載面611に対するエレベータ用レール2の角度が変化する方向へエレベータ用レール2が連結軸632を中心として回転自在になっている。
【選択図】
図5