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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240301BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
B60R11/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023125948
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2019140402の分割
【原出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2023143962
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 耕平
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-112579(JP,A)
【文献】特開2006-56280(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003266(WO,A1)
【文献】特開2008-38438(JP,A)
【文献】特開2019-100014(JP,A)
【文献】特開2019-109130(JP,A)
【文献】特開2022-170826(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体に設置された運転座席の上方に配置され、前記運転座席の後方で立設する一対の支柱に支持される庇と、
前記一対の支柱に接続するベース体に左右一対に立設されたアンテナ支柱にそれぞれ取り付けられたGNSSアンテナと、
を備え、
前記アンテナ支柱の一方が前記支柱の一方と対向することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械であって、
前記支柱の一方の後方に、前記アンテナ支柱の一方が配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械であって、
背面視で、前記アンテナ支柱の他方が前記支柱の他方に対して側方にずれて配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械であって、
背面視で、前記アンテナ支柱の他方が前記運転座席の他方側の側方にずれて配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の建設機械であって、
平面視で、前記GNSSアンテナの何れかが前記庇の外側の輪郭と前記上部旋回体の外側の輪郭との間に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械であって、
平面視で、前記GNSSアンテナの中心が前記上部旋回体の外側の輪郭に近接する位置にあることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、GNSSアンテナが取り付けられた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、GPSアンテナが取り付けられた作業車両を開示する。この作業車両には、上下に長い棒状の固設部材が取り付けられている。GPSアンテナは、固設部材に取り付けられている。
【0003】
特許文献2は、下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能に支持される上部旋回体と、を備える建設機械を開示する。この建設機械には、GPSアンテナが取り付けられている。具体的には、上部旋回体には作動油タンクが配置されており、この作動油タンクにGPSアンテナが取り付けられている。また、作動油タンクはタンクカバーに覆われているため、GPSアンテナもタンクカバーで覆われることとなり、アンテナを保護できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-56280号公報
【文献】特開2003-112579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のように下部走行体及び上部旋回体を備える建設機械において、上部旋回体にGNSSアンテナを取り付ける場合、上部旋回体の旋回角度に応じてGNSSアンテナの位置が変化する。従って、建設機械の位置を精度良く取得するためには、例えば2つのGNSSアンテナを取り付ける必要がある。また、GNSSアンテナが別の部材で覆われている場合、GNSS衛星からの電波を適切に受信できない可能性がある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、下部走行体と上部旋回体を備える建設機械において、GNSSアンテナを適切に配置するための構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の建設機械が提供される。即ち、建設機械は、庇と、GNSSアンテナと、を備える。前記庇は、下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体に設置された運転座席の上方に配置され、前記運転座席の後方で立設する一対の支柱に支持される。前記GNSSアンテナは、前記一対の支柱に接続するベース体に左右一対に立設されたアンテナ支柱にそれぞれ取り付けられる。前記アンテナ支柱の一方が前記支柱の一方と対向する。
【0009】
前記の建設機械においては、前記支柱の一方の後方に、前記アンテナ支柱の一方が配置されていることが好ましい。
【0010】
前記の建設機械においては、背面視で、前記アンテナ支柱の他方が前記支柱の他方に対して側方にずれて配置されていることが好ましい。
【0011】
前記の建設機械においては、背面視で、前記アンテナ支柱の他方が前記運転席の他方側の側方にずれて配置されていることが好ましい。
【0012】
前記の建設機械においては、平面視で、前記GNSSアンテナの何れかが前記庇の外側の輪郭と前記上部旋回体の外側の輪郭との間に配置されていることが好ましい。
【0013】
前記の建設機械においては、平面視で、前記GNSSアンテナの中心が前記上部旋回体の外側の輪郭に近接する位置にあることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る旋回作業車の全体的な構成を示す側面図。
図2】旋回作業車の平面図。
図3】上部旋回体の後部を示す斜視図。
図4】アンテナ取付構造の分解斜視図。
図5】第1変形例の旋回作業車が備えるアンテナ取付構造の斜視図。
図6】第1変形例の旋回作業車の平面図。
図7】第2変形例の旋回作業車が備えるアンテナ取付構造の斜視図。
図8】第3変形例の旋回作業車が備えるアンテナ取付構造の斜視図。
図9】1対のアンテナを個別に取り付ける比較例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る旋回作業車1の全体的な構成を示す側面図である。
【0016】
図1に示す旋回作業車(建設機械、油圧ショベル)1は、下部走行体11と、上部旋回体12と、を備える。
【0017】
下部走行体11は、クローラ走行装置21と、油圧モータ22と、を備える。クローラ走行装置21及び油圧モータ22は、それぞれ左右1対で配置されている。
【0018】
それぞれのクローラ走行装置21は、例えばゴムからなる無端状のクローラを備える。このクローラはスプロケットに巻き掛けられており、スプロケットは、クローラ走行装置21と同じ側に配置された油圧モータ22の出力軸と連結されている。
【0019】
それぞれの油圧モータ22は正逆回転が可能に構成されており、これにより、旋回作業車1を前進及び後進させることができる。油圧モータ22は左右で個別に駆動可能に構成されており、これにより、旋回作業車1を直進させたり、旋回作業車1(下部走行体11)の向きを変更させたりすることができる。
【0020】
上部旋回体12は、旋回フレーム31と、車体部32と、旋回モータ33と、エンジン(原動機)34と、油圧ポンプユニット35と、操縦部36と、運転座席37と、GNSSアンテナ64と、作業装置13と、カウンターウェイト38と、を備える。
【0021】
旋回フレーム31は、下部走行体11の上方に配置され、上下方向に延びる軸を中心として回転可能となるように下部走行体11に支持されている。車体部32は、旋回フレーム31と一体的に回転するように当該旋回フレーム31に固定されている。車体部32は、平面視で略円形(詳細には前部が直線状の形状)であり、上部旋回体12の側面の一部を構成している。車体部32の内部には空間が形成されており、この空間に、旋回モータ33、エンジン34、及び油圧ポンプユニット35等が配置されている。
【0022】
旋回モータ33は、旋回フレーム31及び車体部32を下部走行体11に対して回転させる駆動力を発生させる。エンジン34は、上部旋回体12の後部に配置されている。後部とは、例えば前後方向の中央よりも後方を意味する。エンジン34は、例えばディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン34は、ガソリンエンジンであってもよい。また、エンジン34に加えて又は代えて電動モータを設けてもよい。油圧ポンプユニット35は、エンジン34によって駆動され、旋回作業車1の走行及び作業に必要な油圧力を発生させる。
【0023】
操縦部36は、様々な操作部材を備える。この操作部材には、左右1対で配置される走行操作レバー36a及び作業操作レバー36b等が含まれる。運転座席37は、エンジン34の上方であって、操縦部36の近傍に配置されている。オペレータは、運転座席37に着座して、上記の操作部材を操作することにより、各種の指示を旋回作業車1に与える。GNSSアンテナ64は、運転座席37の後方に配置されている。なお、GNSSアンテナ64の取付方法の詳細については後述する。
【0024】
作業装置13は、ブーム41と、アーム42と、バケット43と、ブレード(排土板)47と、を備える。また、作業装置13は、アクチュエータとして、ブームシリンダ44、アームシリンダ45、バケットシリンダ46、及びブレードシリンダ48を備える。
【0025】
ブーム41は細長い部材として構成されており、その基端部が、車体部32の前部に回転可能に支持されている。ブーム41にはブームシリンダ44が取り付けられており、ブームシリンダ44が伸縮することでブーム41を回転させることができる。
【0026】
アーム42は細長い部材として構成されており、その基端部が、ブーム41の先端部に回転可能に支持されている。アーム42にはアームシリンダ45が取り付けられており、アームシリンダ45が伸縮することでアーム42を回転させることができる。
【0027】
バケット43は、容器状に形成された部材として構成されており、その基端部が、アーム42の先端部に回転可能に支持されている。バケット43にはバケットシリンダ46が取り付けられており、バケットシリンダ46が伸縮することでバケット43を回転させて、すくい動作/ダンプ動作を行うことができる。
【0028】
ブレード47は、車体幅方向(左右方向)に延びるように設けられている。ブレード47は、下部走行体11の前方に配置されている。ブレード47は、下部走行体11に対して、左右方向に延びる軸を中心として回転可能に支持されている。ブレード47にはブレードシリンダ48が取り付けられており、ブレードシリンダ48が伸縮することでブレード47を昇降させることができる。
【0029】
本実施形態では、ブームシリンダ44、アームシリンダ45、バケットシリンダ46、及びブレードシリンダ48は、何れも油圧シリンダから構成されている。これらの油圧シリンダは、油圧ポンプユニット35が発生させた油圧力によって伸縮する。
【0030】
カウンターウェイト38は、前部に重量物である作業装置13を備える旋回作業車1を安定させるための重りである。そのため、カウンターウェイト38は、上部旋回体12の後端に配置されている。平面視において、カウンターウェイト38の外縁(外周面)は、円弧状である。
【0031】
次に、GNSSアンテナ64の取付方法の詳細について図2から図4を参照して説明する。
【0032】
ここで、下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回した場合、下部走行体11の前後と上部旋回体12の前後が一致しなくなる。以下では上部旋回体12の構成について説明するため、上部旋回体12の前後を単に前後と称する。
【0033】
図3及び図4等に示すように、旋回作業車1には、2つのGNSSアンテナ64が取り付けられている。これは、マシンコントロール技術やマシンガイダンス技術などの情報化施工を実施する際、旋回作業車1の作業装置13の位置情報を収得する必要があるためである。特に旋回作業車1の場合、下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回した場合でも、作業装置13の位置情報を検出するためには、旋回作業車1の位置と、上部旋回体12の旋回角度情報が必要であり、これらの値を求めるためには、2つのGNSSアンテナ64の検出結果が必要となる。また、これらの値を求めるためには、旋回作業車1に対する2つのGNSSアンテナ64の相対位置が必要となる。また、これらの値を精度良く求めるためには、2つのGNSSアンテナ64の配置間隔を規定の値(最小配置間隔)以上にする必要がある。
【0034】
図3に示すように、旋回作業車1は、庇支持部51及び庇55を備えており、この庇支持部51にGNSSアンテナ64が取り付けられる。庇支持部51は、左右1対で配置されており、2つの庇支持部51に対応する位置にそれぞれ1つのGNSSアンテナ64が取り付けられる。図2に示すように左右の庇支持部51の形状は異なるが、左右の庇支持部51の機能は同じなので、以下ではまとめて説明する。なお、左右の庇支持部51が同じ形状又は左右対称であってもよい。
【0035】
図3に示すように、庇支持部51は、後側支柱52と、庇取付部53と、前側支柱54と、を備える。庇支持部51は、1つの部材(パイプ材)を湾曲させた構成であってもよいし、複数の部材を溶接又はボルト等によって接続した構成であってもよい。
【0036】
後側支柱52は、上部旋回体12の後部から上方に延びる部材(長手方向が上下方向と平行な部材)である。上部旋回体12の後部とは、上部旋回体12の前後方向の中央よりも後側(更に言えば上部旋回体12を前後方向で4等分した場合の最も後側の部分)を意味する。また、別の観点で説明すれば、後側支柱52は、運転座席37の取付位置よりも後方から上方に延びる。後側支柱52は、車体部32にボルト等で固定されている。また、後側支柱52は、斜め上方に延びていてもよい。
【0037】
庇取付部53は、後側支柱52の上端に接続されている。庇取付部53は、前後に延びる部材である。左右1対の庇取付部53を接続するように、庇55が取り付けられている。庇55は、操縦部36及び運転座席37の上方を覆うように配置される。
【0038】
前側支柱54は、上部旋回体12の前部から上方に延びる部材である。前部の定義は後部の定義に対応するものとする。前側支柱54の上端には、庇取付部53の前端が接続される。
【0039】
このように、本実施形態の旋回作業車1は、支柱に庇が取り付けられるいわゆるキャノピータイプである。言い換えれば、本実施形態の旋回作業車1は、キャビンタイプではないので、操縦部36及び運転座席37が配置される運転空間が、外部に対して仕切られていない。また、本実施形態の旋回作業車1は、前後にそれぞれ2つの支柱があるため、いわゆる4柱キャノピータイプである。旋回作業車1は、前側支柱54を省略した2柱キャノピータイプであってもよい。
【0040】
次に、アンテナ取付構造60について説明する。アンテナ取付構造60は、GNSSアンテナ64を旋回作業車1に取り付けるための構造である。図3及び図4に示すように、アンテナ取付構造60は、ベース体61と、アンテナ支柱63と、GNSSアンテナ64と、を備える。
【0041】
ベース体61は、左右に延びる部材である。図3に示すように、ベース体61は、左右1対の後側支柱52を接続するように、当該後側支柱52の後側に配置される。具体的には、ベース体61の前側には、ベース体61を後側支柱52に取り付けるための、左右1対の取付部材62が取り付けられている。
【0042】
取付部材62は、クランプ部材であり、後側支柱52を挟んだ状態でボルトを締め付けることで、後側支柱52に対して取り付けられる。取付部材62の左右の配置間隔は、後側支柱52の左右の配置間隔と一致する。従って、左右1対の取付部材62は、左右1対の後側支柱52にそれぞれ取り付けられる。また、取付部材62と後側支柱52の間にゴム等の伸縮可能な部材が配置されてもよい。また、取付部材62は、ボルトを緩めることで把持が解除されるため、後側支柱52から取り外すこともできる。
【0043】
取付部材62を着脱可能にすることで、既存の旋回作業車1に簡単な方法でGNSSアンテナ64を追加することができる。また、例えば旋回作業車1をトラック等に積み込んで搬送する際に、アンテナ取付構造60を取り外すことで旋回作業車1のサイズを小さくできるので、例えばトラックの積載サイズの上限を超えないようにすることができる。また、後側支柱52の配置間隔が一定である場合、アンテナ取付構造60の取付高さを簡単に調整することができる。
【0044】
アンテナ支柱63は、上下に延びる部材であり、ベース体61の上面に左右1対で取り付けられている。アンテナ支柱63の上部には、図4に示すように、ネジ溝を有する突出部が形成されている。上述したように、2つのGNSSアンテナ64はできる限り離すことが好ましいため、本実施形態では、取付部材62の配置間隔(後側支柱52の配置間隔)よりも、アンテナ支柱63の配置間隔の方が大きい。ただし、両者の配置間隔は同じであってもよいし、アンテナ支柱63の配置間隔の方が小さくてもよい。
【0045】
GNSSアンテナ64は、左右1対で配置されており、左右1対のアンテナ支柱63の上部にそれぞれ取り付けられる。具体的には、GNSSアンテナ64の下面には、ネジ孔が形成されており、アンテナ支柱63の突出部にGNSSアンテナ64のネジ孔を合わせて回転させることで、GNSSアンテナ64をアンテナ支柱63に取り付けることができる。また、GNSSアンテナ64を逆回転させることで、アンテナ支柱63から取り外すことができる。GNSSアンテナ64を着脱可能にすることで、使用しないときにGNSSアンテナ64を取り外すことで、盗難を防止できる。
【0046】
GNSSアンテナ64は、GPS等の衛星測位システムを構成するGNSS衛星からの信号を受信する。GNSSアンテナ64によって受信された測位信号は、図略の受信部に入力され、測位演算が行われる。測位演算を行うことで、旋回作業車1の位置情報(特にGNSSアンテナ64の位置情報)が例えば緯度・経度情報として算出される。また、上部旋回体12の旋回角度も同時に算出される。
【0047】
アンテナ取付構造60は、後側支柱52の後側に取り付けられている。従って、旋回作業車1の平面図(図2)において、アンテナ支柱63及びGNSSアンテナ64は、庇55と重ならない位置に配置されている。これにより、GNSS衛星からの測位信号が庇55で遮られにくくなる。また、図1に示すように、GNSSアンテナ64の上端は、庇取付部53(又は庇55)の上端と同じか、僅かにGNSSアンテナ64が低い。これにより、上方からの落下物がGNSSアンテナ64に直接当たりにくくなる。また、後側支柱52と庇取付部53の境界は直角に折れ曲がるのではなく緩やかに湾曲しているため、庇支持部51とGNSSアンテナ64の配置間隔を大きくすることができる。そのため、GNSS衛星からの測位信号が受信され易くなる。なお、GNSSアンテナ64を庇取付部53よりも高い位置に配置して、GNSS衛星からの測位信号が更に受信され易くしてもよい。
【0048】
旋回作業車1にGNSSアンテナ64を取り付けるアンテナ取付方法を行う場合、初めに、1対の後側支柱52同士を接続するように、ベース体61を1対の後側支柱52の両方に取り付ける(ベース体取付工程)。次に、ベース体61から上方に延びる1対のアンテナ支柱63に、1対のGNSSアンテナ64をそれぞれ取り付ける(アンテナ取付工程)。なお、上記の各工程の順序は一例であり、異なっていてもよい。つまり、事前にアンテナ支柱63にGNSSアンテナ64を取り付けた後に、ベース体61を後側支柱52に取り付けてもよい。
【0049】
次に、図2を参照して、旋回作業車1の旋回領域100に対するアンテナ取付構造60の位置について説明する。以下の説明では、旋回領域100は、平面視においてカウンターウェイト38の外縁が上部旋回体12とともに旋回した際の軌跡(円又は円弧)を外縁とする領域(軌跡の外縁の内側の領域)である。また、別の観点では、旋回領域100は、平面視において上部旋回体12のうち車体部32が旋回する領域、平面視において上部旋回体12のうち作業装置13及びアンテナ取付構造60を除いた部分が旋回する領域、あるいは、上部旋回体12の後部(前後方向の中央よりも後側の部分であってアンテナ取付構造60を除いた部分)が旋回する領域と捉えることもできる。
【0050】
本実施形態の旋回作業車1は、旋回領域100が下部走行体11よりも左右方向の内側に位置している(言い換えれば、旋回領域100が下部走行体11の車幅内に位置している)。詳細には、旋回中心は旋回作業車1の左右方向の中央である。また、下部走行体11の左右幅(詳細には左側の下部走行体11の左端から右側の下部走行体11の右端までの長さ)よりも、旋回領域100の直径の方が小さい。言い換えれば、上部旋回体12を旋回させたとしても、当該上部旋回体12が下部走行体11の外側に位置することがない。なお、旋回領域100の直径は、下部走行体11の左右幅よりも大きくてもよい。この場合でもあっても、下部走行体11の左右幅の1.2倍よりも、旋回領域100の直径が小さいことが好ましい。
【0051】
本実施形態のアンテナ取付構造60は、下部走行体11の左右幅よりも小さく、下部走行体11から左右方向に突出していない。言い換えれば、アンテナ取付構造60の左右方向の端部は、下部走行体11の左右方向の端部よりも、左右方向の内側に位置している。そのため、下部走行体11が走行可能な幅であれば、基本的には、アンテナ取付構造60が障害物に衝突することがない。
【0052】
本実施形態のアンテナ取付構造60は、左端の一部を除いた全体が旋回領域100の内側に位置している。また、アンテナ取付構造60の旋回領域100からの突出量も僅かであるため、上部旋回体12の旋回時において、アンテナ取付構造60が障害物に衝突しにくい。また、以下の第1変形例に示すように、アンテナ取付構造60の全体を旋回領域100の内側に位置させることもできる。
【0053】
次に、図5及び図6を参照して、第1変形例について説明する。なお、以後の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0054】
第1変形例の旋回作業車1は、GNSSアンテナ64同士の配置間隔が小さくなり過ぎないようにしつつ、かつ、アンテナ取付構造60を旋回領域100の内側に位置させることが可能なアンテナ取付構造60を備える。第1変形例は、主にベース体61の構造が上記実施形態とは異なる。具体的には、第1変形例のベース体61は、平面視でL字状となる形状である。言い換えれば、ベース体61は、第1部分61aと、第2部分61bと、を備える。
【0055】
第1部分61aは、上記実施形態のベース体61と同様に、左右に延びるとともに左右1対の後側支柱52を接続するための部分である。2つの取付部材62は、何れも第1部分61aに取り付けられている。第1部分61aには、第2部分61bとの境界とは異なる側の端部近傍(詳細には端部から少し離れた位置)に、アンテナ支柱63が配置されている。
【0056】
取付部材62がベース体61の端部に取り付けられている一方で、アンテナ支柱63は当該端部から少し離れた位置(例えば平面視で取付部材62とGNSSアンテナ64が重ならない位置)に配置されている。これにより、図6に示すように、GNSSアンテナ64を旋回領域100の内側に位置させることができる。また、第1部分61aの左端(取付部材62が取り付けられている箇所)は、後側の角部が落とされている(面取りされている)。これにより、図6に示すように、ベース体61を旋回領域100の内側に位置させることができる。
【0057】
第2部分61bは、第1部分61aとの境界から前方に延びる部分である。従って、第1部分61aの長手方向は、第2部分61bの長手方向と交差(直交)する。第2部分61bには、第1部分61aとの境界とは異なる側の端部近傍に、アンテナ支柱63が配置されている。なお、第1部分61aの右端(第2部分61bの後端)の角部は落とされていないが、この角部を落としてもよい。
【0058】
アンテナ取付構造60が旋回領域100の内側に位置することで、上部旋回体12を旋回させてもアンテナ取付構造60が旋回領域100の外側に位置することがない。更に言えば、上記実施形態と同様に、旋回領域100が下部走行体11よりも左右方向の内側に位置しているため、上部旋回体12を旋回しても、アンテナ取付構造60が下部走行体11よりも外側に位置することがない。以上により、アンテナ取付構造60が障害物に衝突する可能性を低くすることができる。
【0059】
また、第2部分61bを設けて、第2部分61bにGNSSアンテナ64を配置することで、直線状のベース体61にGNSSアンテナ64を配置する構成と比較して、GNSSアンテナ64の配置間隔を大きくすることができる。
【0060】
次に、図7を参照して、第2変形例について説明する。第2変形例は、ベース体61が、第1調整機構70を備えている点において、上記実施形態とは異なる。第1調整機構70は、左右1対の取付部材62の配置間隔を調整するための機構である。
【0061】
図7に示すように、第1調整機構70は、ベース体61の内側にスライド可能に挿入される内側部材71を備える。取付部材62は、内側部材71に取り付けられている。内側部材71には、位置決めのための複数の内側孔72が形成されている。また、ベース体61にも、位置決めのための外側孔73が形成されている。取付部材62の所望の配置間隔に応じた内側孔72を外側孔73と合わせた後に、ボルト74を締結することで、ベース体61に対して内側部材71が取り付けられる。
【0062】
取付部材62の配置間隔と後側支柱52の配置間隔が一致していなければ、アンテナ取付構造60を後側支柱52に取り付けることができない。この点、第2変形例では、取付部材62の配置間隔を調整できるので、様々な旋回作業車1にアンテナ取付構造60を取り付けることができる。また、例えば上方に近づくに連れて後側支柱52の配置間隔が変わる構成の旋回作業車1であっても、所望の高さにアンテナ取付構造60を取り付けることができる。
【0063】
取付部材62の配置間隔を調整する構成は、上記に限られない。例えば、ベース体61に対して取付部材62を着脱可能に構成し、取付部材62を取り付けるための孔等をベース体61に複数形成した構成であってもよい。
【0064】
次に、図8を参照して、第3変形例について説明する。第3変形例は、ベース体61が、第2調整機構80を備えている点において、上記実施形態とは異なる。第2調整機構80は、左右1対のアンテナ支柱63の配置間隔を調整するための機構である。
【0065】
図8に示すように、第2調整機構80は、ベース体61の内側にスライド可能に挿入される内側部材81を備える。アンテナ支柱63は、内側部材81に取り付けられている。内側部材81には、位置決めのための複数の内側孔82が形成されている。また、ベース体61にも、位置決めのための外側孔83が形成されている。GNSSアンテナ64の所望の配置間隔に応じた内側孔82を外側孔83と合わせた後に、ボルト84を締結することで、ベース体61に対して内側部材81が取り付けられる。
【0066】
上述したように、2つのGNSSアンテナ64の配置間隔は大きい方が好ましい。具体的には、旋回作業車1の位置等を適切に検出するためには、GNSSアンテナ64の配置間隔は、最小配置間隔よりも大きくする必要がある。この最小配置間隔は、GNSSアンテナ64の種類によって異なる。この点、第2変形例ではアンテナ支柱63(GNSSアンテナ64)の配置間隔を調整できるので、GNSSアンテナ64の種類に応じて最小配置間隔の条件を満たすようにGNSSアンテナ64を配置できる。
【0067】
アンテナ支柱63の配置間隔を調整する構成は、上記に限られない。例えば、ベース体61に対してアンテナ支柱63を着脱可能に構成し、アンテナ支柱63を取り付けるための孔等をベース体61に複数形成した構成であってもよい。
【0068】
上記実施形態及び変形例の構成では、2つのGNSSアンテナ64が同じベース体61に接続されている。そのため、GNSSアンテナ64の相対位置が一定かつ既知である。そのため、図9に示すようにベース体61が分離されている構成と比較して、旋回作業車1に対する2つのGNSSアンテナ64の相対位置を登録する作業が簡単かつ正確となる。
【0069】
アンテナ取付構造60は、左右1対の前側支柱54を接続するように配置することも不可能ではない。しかし、前側支柱54の前方は作業装置13等の影響でスペースが狭いため、上記実施形態のようにアンテナ取付構造60を取り付けることが好ましい。また、アンテナ取付構造60は、前後に配置される後側支柱52と前側支柱54を接続するように配置することも不可能ではない。しかし、後側支柱52と前側支柱54の間は、オペレータの乗車に使用するスペースであるため、上記実施形態のようにアンテナ取付構造60を取り付けることが好ましい。
【0070】
以上に説明したように、上記実施形態の旋回作業車1は、下部走行体11と、上部旋回体12と、を備える。上部旋回体12は、下部走行体11に旋回可能に支持される。上部旋回体12は、エンジン34と、運転座席37と、庇55と、後側支柱52と、ベース体61と、アンテナ支柱63と、GNSSアンテナ64と、を備える。エンジン34は、上部旋回体12の後部に配置されており、(油圧ポンプユニット35を駆動することで)少なくとも下部走行体11を駆動する。運転座席37は、エンジン34の上方に配置されており、オペレータが着座する。庇55は、運転座席37の上方に配置される。後側支柱52は、1対で配置され、上部旋回体12の後部から上方に延びており、庇55を支持する。ベース体61は、1対の後側支柱52同士を接続するように、1対の後側支柱52の両方に取り付けられる。アンテナ支柱63は、1対で配置され、平面視で庇55と重ならない位置においてベース体61から上方に延びる。GNSSアンテナ64は、1対で配置され、1対のアンテナ支柱63にそれぞれ取り付けられる。
【0071】
これにより、1対のGNSSアンテナ64がアンテナ支柱63を介して同じベース体61に接続されているため、1対のGNSSアンテナ64の相対位置が一定かつ既知であるので、GNSSの設定が容易になる。また、後側支柱52を用いて上記の位置関係でGNSSアンテナ64を取り付けることで、GNSS衛星の電波が庇55等で遮られにくい位置にGNSSアンテナ64を位置させることができる。
【0072】
また、上記実施形態の旋回作業車1において、ベース体61は、1対の後側支柱52にそれぞれ着脱可能に取り付けられる1対の取付部材62を備える。
【0073】
これにより、GNSSアンテナ64が不要な状況(例えば旋回作業車1の運搬時等)で旋回作業車1のサイズを小さくすることができる。また、後側支柱52の配置間隔が一定等の理由によってベース体61の取付高さを変更可能な場合は、GNSSアンテナ64の取付高さを変化させることができる。
【0074】
また、第2変形例の旋回作業車1において、ベース体61は、1対の取付部材62の配置間隔を変更可能な第1調整機構70を備える。
【0075】
これにより、後側支柱52の配置間隔が異なる様々な旋回作業車1にベース体61を取り付けることができる。また、高さに応じて後側支柱52の配置間隔が変化する旋回作業車1に対しても、ベース体61の取付高さを調整することができる。
【0076】
また、第1変形例の旋回作業車1では、平面視において、上部旋回体12の後端に配置されたカウンターウェイト38の外縁が上部旋回体12とともに旋回した際の軌跡を外縁とする領域を旋回領域100としたときに、ベース体61、アンテナ支柱63、及びGNSSアンテナ64が旋回領域100の内側に位置している。
【0077】
これにより、GNSSアンテナ64を取り付けるための部材によって旋回領域100が大きくなることを防止できる。
【0078】
また、上記実施形態の旋回作業車1において、旋回領域100が、下部走行体11の車幅内にある。
【0079】
これにより、旋回しても上部旋回体12の主要部が下部走行体11の外側に出ない比較的小型の建設機械に対して、本発明を適用できる。
【0080】
また、上記実施形態の旋回作業車1は、平面視において、ベース体61、アンテナ支柱63、及びGNSSアンテナ64のそれぞれの左右方向の端部が、下部走行体11の左右方向の端部よりも、左右方向の内側に位置している。
【0081】
これにより、GNSSアンテナ64を取り付けるための部材が下部走行体11から左右方向に突出しないので、例えば旋回作業車1が狭い空間に位置している状況において、GNSSアンテナ64等が障害物に衝突しにくい。
【0082】
また、第3変形例の旋回作業車1において、ベース体61は、1対のアンテナ支柱63の配置間隔を変更可能な第2調整機構80を備える。
【0083】
GNSSアンテナ64の仕様に応じて1対のGNSSアンテナ64の最小配置間隔が定められているため、上記の第2調整機構80を備えることで、様々な仕様のGNSSアンテナ64に対応可能となる。
【0084】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0085】
上述した各変形例の構成は適宜組み合わせることができる。例えば、第1変形例のL字状のベース体61を第2変形例又は第3変形例に適用できる。また、第2変形例の第1調整機構70を第1変形例又は第3変形例に適用できる。また、第3変形例の第2調整機構80を第1変形例又は第2変形例に適用できる。
【0086】
アンテナ取付構造60を構成する各部の形状は一例であり、適宜変更可能である。例えば、ベース体61又はアンテナ支柱63は直線状に限られず曲げを含んでいてもよい。取付部材62はクランプ部材に限られず、後側支柱52側にネジ孔等を形成して、当該ネジ孔を用いて取り付ける構成であってもよい。また、上記実施形態では着脱可能と説明した構造は着脱不能であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 旋回作業車(建設機械)
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 作業装置
51 庇支持部
52 後側支柱(支柱)
53 庇取付部
54 前側支柱
55 庇
60 アンテナ取付構造
61 ベース体
62 取付部材
63 アンテナ支柱
64 GNSSアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9