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特許7446522煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
A62C31/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023515112
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 KR2021012057
(87)【国際公開番号】W WO2022050799
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113266
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0118265
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518064271
【氏名又は名称】キム、ジュン ギュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ウゥ
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1855393(KR,B1)
【文献】特表2015-507500(JP,A)
【文献】特開2016-106656(JP,A)
【文献】特表2003-531706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0168538(US,A1)
【文献】特開2012-61025(JP,A)
【文献】特開2006-263217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内天井に埋め込まれ、下方に開放されたアウターハウジングと、
アウターハウジング内に配置され、下方に開放されたインナーハウジングと、
インナーハウジングの内部に設けられ、外部から提供された水を通過させて噴射するものであって、水が通過する間にベンチュリ効果による負圧を発生させて周辺のガスを吸気し、水とガスとを混合して排出する吸気型噴射ヘッドと、
前記アウターハウジングの下部に着脱可能に配置され、アウターハウジング及びインナーハウジングをカバーし、吸気型噴射ヘッドから噴射される水の圧力を受けて分離されるカバープレートと、
前記吸気型噴射ヘッドに供給される水の運動エネルギーを受けて電力を生産する発電部と、
発電部から電力を供給されて動作する照明手段と、を含む、
煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項2】
前記インナーハウジングの内側には、
負圧によってインナーハウジング内部に流入したガスと反応し、ガス中に含まれている一酸化炭素を二酸化炭素に変換する触媒が備えられた、
請求項1に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項3】
前記吸気型噴射ヘッドは、
外部から供給される水を下向に噴射するノズルと、
ノズルから噴射された水を通過させ、ベンチュリ効果による負圧を形成し、周辺ガスを吸気して、水との混合を誘導するベンチュリケーシングと、
ベンチュリケーシングに昇降可能に支持されるものであって、上昇した状態で待機し、水が噴射されるときに下降し、下端部にデフレクタを備えた昇降ケーシングが含まれた、
請求項1に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項4】
前記昇降ケーシングの下端部には、垂直のガイド孔を有する多数のデフレクタホルダが備えられ、
前記デフレクタは、
各ガイド孔に挿入されて昇降可能な垂直棒、垂直棒の上端部に固定され、垂直棒がガイド孔から抜けることを防止する離脱防止突起、垂直棒の下端部に固定された状態で昇降ケーシングの鉛直下部に位置し、噴射された水を周辺に散水するデフレクタ本体を有する、
請求項3に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項5】
前記昇降ケーシングとデフレクタ本体との間には、
ノズルから噴射された水と衝突してガスと水との混合を行う末端ミキシング部が設けられている、
請求項4に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項6】
前記ノズルの内部には、
ノズルを通過する水の流れを渦巻くようにする渦流誘導部が内蔵された、
請求項3に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項7】
前記ベンチュリケーシングの内部には、ベンチュリケーシングの内部を通過する水とガスとの混合を行う上側ミキシング部がさらに備えられた、
請求項3に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項8】
前記アウターハウジングまたはインナーハウジングの内部には、
制御信号を出力する制御器と、
火災発生を感知して感知内容を制御器に伝達するセンサと、
制御器によって動作して火災警報信号を出力する警報装置がさらに含まれる、
請求項1に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【請求項9】
前記吸気型噴射ヘッドには、設定温度到達時に作動して水が噴射されるようにする感熱器が取り付けられ、
感熱器と制御器との間に、
温度コントローラ、温度コントローラによって発熱する発熱パッド、発熱パッドの熱を感熱器に伝達して感熱器を動作させる熱伝達部材が設けられた、
請求項8に記載の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置に関するものであって、より詳細には、火災時に消火水を噴射するとともに負圧を形成して周辺の煙、有毒ガスを吸気及び除去し、照明を提供することによって迅速な避難を誘導する煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年建築される建物には、強化した建築消防法に規定された基準を満たす様々な消防設備が義務的に設けられる。消防用設備には、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水設備、消火活動関連設備などが含まれ、最近ではより性能が良く誤動作のない除煙設備やスプリンクラー装置などが開発及び適用されている。このような消防設備は、火災を早期探知及び鎮圧して人命被害を最小化することを目的とする。
【0003】
前記様々な設備のうち、スプリンクラーは、火災発生時に消火用水を噴出する自動消火設備であって、通常、建物の天井に配置され、立て管と支管を介して供給される水を放射方向に噴射することによって火災を鎮圧する。
【0004】
スプリンクラーには様々な種類があり、その中には閉鎖型と開放型も含まれる。閉鎖型は感熱部が設けられたタイプであり、平常時に噴射ノズルが閉鎖されている構造を有し、開放型は感熱部がなく噴射ノズルも開放された構成を有する。
【0005】
また、閉鎖型には溶融型と破裂型が含まれる。フラッシュヘッド溶融型はヒューズメタルが作動温度で溶けて脱落し、水が散水されるものであり、破裂型は作動温度でガラスバルブが割れて脱落し、水を散水するものである。
【0006】
火災位置で発生した煙、有毒ガスは熱による浮力を得て天井部に達し、天井部の圧力を高める熱気流を形成し、圧力が低い方向の冷たい方に広がり、厚い層を形成しながら室内に満ちることになる。
【0007】
煙の移動の原因の第一は熱気であり、第二は圧力である。
【0008】
火災によって発生した高温の煙は、その浮力によって持続的に上昇し、運搬されて上層部の圧力を高め、当然圧力の低いところに煙(未燃焼可燃性ガス)が移動し、輻射熱によって一定の臨界点で着火するフラッシュオーバー(Flashover)現象により火災は拡散する。
【0009】
「既存のスプリンクラー」は煙及び有毒ガスを除去できず、「既存のスプリンクラー」が作動すると、上層部の高温の煙、有毒ガスが冷却され、床側に「濃縮、下降」して窒息環境を作り、下降した濃縮した黒煙のため脱出口をさらに見つけることができない、視野が「O」となる、スモークロギング現象(Smoke Logging)環境を作る「致命的な問題」がある。
【0010】
床に敷かれる濃縮した有毒ガスは、要救助者をわずか数秒で窒息させ、視野を遮断することによって脱出をほとんど不可能にする。
【0011】
図1は、火災時に発生するスモークロギング現象を説明するための図である。
【0012】
図1のA)及びB)に示しているように、火災初期には高温の煙、有毒ガスが室内空間の上層部に連続的に上がって溜り、圧力を高め、煙、有毒ガス(未燃焼可燃性ガス)は圧力の低い方向に広がって着火し、フラッシュオーバー(Flashover)現象で火災は周辺に拡散するようになる。
【0013】
この状態でスプリンクラーが作動して消防用水が噴射されると(C)、有毒ガスが消防用水によって冷却及び濃縮され、下降し始める。これによって、D)に示しているように室内空間の上層部と下層部を問わず全部が暗黒の状態となり、さらに火災で停電した状態で時間が経つほど毒(Poison)ガスの濃度は濃くなり、一寸先も見えない真っ暗な状況で、要救助者はパニックに陥って呼吸が3倍以上速くなり、有毒ガス吸入速度が速くなり、判断力喪失、互いに絡み合って脱出できず、窒息死することになる。ちなみに、火災毒ガスに10~15秒暴露されると意識不明の状態になり、火災時に多量に発生するシアン化水素(HCN)ガスは、一口か二口でも死亡する 。
【0014】
また、有毒ガスを排気させる排気装置を駆動するとしても、建物内部を満たしている煙、有毒ガスを排気させ、呼吸できるほどにする程度までには(人が息を堪える時間よりはるかに)長い時間がかかるので、人々が安全に避難できるゴールデンタイムを守れない。
【0015】
室内の有毒ガス自体を除去する装置で、短時間で有毒ガスの致死量を安全な範囲以下に下げる努力が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記問題を解消ために創出されたものであり、火災時に水を噴射するとともに、周辺の煙、有毒ガスを吸い込んで除去し、静電状態で照明を提供することによって迅速な避難を誘導することができる、煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するための課題の解決手段としての本発明の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置は、室内天井に埋め込まれ、下方に開放されたアウターハウジングと、アウターハウジング内に配置され、下方に開放されたインナーハウジングと、インナーハウジングの内部に設けられ、外部から提供された水を通過させて噴射するものであって、水が通過する間にベンチュリ効果による負圧を発生させて周辺のガスを吸気し、水とガスとを混合して排出する吸気型噴射ヘッドと、前記アウターハウジングの下部に着脱可能に配置され、アウターハウジング及びインナーハウジングをカバーし、吸気型噴射ヘッドから噴射される水の圧力を受けて分離されるカバープレートと、前記吸気型噴射ヘッドに供給される水の運動エネルギーを受けて電力を生産する発電部と、発電部から電力を供給されて動作する照明手段と、を含む。
【0018】
また、前記インナーハウジングの内側には、負圧によってインナーハウジング内に流入したガスと反応して、ガス中に含まれている一酸化炭素を二酸化炭素に変換する触媒が備えられる。
【0019】
また、前記吸気型噴射ヘッドは、外部から提供された水を下向に噴射するノズルと、ノズルから噴射された水を通過させ、ベンチュリ効果による負圧を形成し、周辺ガスを吸気して、水との混合を誘導するベンチュリケーシングと、ベンチュリケーシングに昇降可能に支持されるものであって、上昇した状態で待機し、水が噴射される時に下降し、下端部にデフレクタを備えた昇降ケーシングが含まれる。
【0020】
また、前記昇降ケーシングの下端部には、垂直のガイド孔を有する多数のデフレクタホルダが備えられ、前記デフレクタは、各ガイド孔に挿入されて昇降可能な垂直棒、垂直棒の上端部に固定され、垂直棒がガイド孔から抜けることを防止する離脱防止突起、垂直棒の下端部に固定された状態で昇降ケーシングの鉛直下部に位置し、噴射された水を周辺に散水するデフレクタ本体を有する。
【0021】
さらに、昇降ケーシングとデフレクタ本体との間には、ノズルから噴射された水と衝突してガスと水との混合を行う末端ミキシング部が設けられている。
【0022】
また、前記ノズルの内部には、ノズルを通過する水の流れを渦巻くようにする渦流誘導部が内蔵される。
【0023】
また、前記ベンチュリケーシングの内部には、ベンチュリケーシングの内部を通過する水とガスとの混合を行う上側ミキシング部がさらに備えられる。
【0024】
また、前記アウターハウジングまたはインナーハウジングの内部には、制御信号を出力する制御器と、火災発生を感知して感知内容を制御器に伝達するセンサと、制御器によって動作して火災警報信号を出力する警報装置がさらに含まれる。
【0025】
また、前記吸気型噴射ヘッドには、設定温度到達時に作動して水が噴射されるようにする感熱器が取り付けられ、感熱器と制御器との間に、温度コントローラ、温度コントローラによって発熱する発熱パッド、発熱パッドの熱を感熱器に伝達して感熱器を動作させる熱伝達部材が設けられる。
【発明の効果】
【0026】
前記のようになされる本発明の煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置は、火災時に、水を噴射するとともに周辺の煙、有毒ガスを吸い込んで除去し、短時間で有毒ガスの致死量を安全な範囲内にできるだけ下げ、可視距離を確保し、停電時にも照明を提供することによって迅速な避難を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】火災時に既存のスプリンクラーが作動すると発生するスモークロギング(Smoke-Logging)現象を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態に係る煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置の全体構成と作動方法を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態に係る煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置の全体構成と作動方法を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係る煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置の全体構成と作動方法を説明するための図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、図1に示す吸気型噴射ヘッドを別途に示す図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置に適用可能な別の吸気型噴射ヘッドの断面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、本発明の一実施形態に係る閉鎖型スプリンクラー装置に適用可能な別の吸気型噴射ヘッドの断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、本発明の一実施形態に係る開放型スプリンクラー装置に適用可能な別の吸気型噴射ヘッドの断面図である。
図9図9(a)~図9(f)は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置に取り付け可能な渦巻き(Swirl)誘導体を説明するための図である。
図10図10(a)~図10(d)は、図5(a)に示す上側ミキシング部の平面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置に適用可能な昇降ケーシングの変形例を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置の昇降ケーシングに設置可能な末端ミキシング部の平面図である。
図13】本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置の昇降ケーシングに設置可能な末端ミキシング部の平面図である。
図14図14(a)及び図14(b)は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置における吸気型噴射ヘッドの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る一実施形態を、添付図面を参照してより詳細に説明することにする。
【0029】
基本的に、本発明の多機能スプリンクラー装置は、火災時に発生する有毒ガスを吸気した後、水に溶解させることによって有毒ガス除去装置の役割を果たし、また火災煙中の少なくとも約78%の不活性窒素ガス(Unaffected Nitrogen Gas)が混合された水を、消防用水として使用するので、火炎に対する冷却消火と酸素遮断(窒素消火)を同時に行い、それだけに鎮火能力に優れる。
【0030】
図2図4は、本発明の一実施形態に係る煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置10の全体的な構成及び作動方式を説明するための図である。図2は、大気状態の様子、図3は、火災発生時にスプリンクラー装置10の作動が始まる様子、図4は、スプリンクラー装置の作動中の様子を示す。また、図5(a)及び図5(b)は、図1に示す吸気型噴射破砕型ヘッドを、図6(a)及び図6(b)は、別途に開放型ヘッドを示す図である。
【0031】
図示しているように、本実施形態に係る煙、煙、有毒ガス同時除去型天井隠蔽式多機能スプリンクラー装置10は、アウターハウジング13、インナーハウジング17、吸気型噴射ヘッド50、カバープレート15、ホルダ14、発電部、照明手段を備える。
【0032】
アウターハウジング13は、天井100に形成されている設置孔101に埋め込まれた略円筒状ケースであって、下方に開放した空間部13cを提供する。アウターハウジング13のサイズや形状はいくらでも変わり得る。
【0033】
アウターハウジング13の下端部にはホルダ14が固定される。ホルダ14は、リングの形状を取り、円周方向に沿って一定の断面形状を有して固定しわ部14aを提供する。固定しわ部14aは、歯車状凹凸部であり、カバープレート15の取付維持部15aが掛かる部分である。
【0034】
インナーハウジング17は、アウターハウジング13の空間部13cに収容される円筒状ケースであって、下方に開放された有毒ガス集中空間17aを有する。有毒ガス集中空間17aは、後述する吸気型噴射ヘッド50の作動時に吸気型噴射ヘッド50に溜まる周辺の有毒ガスが満たされる空間である。有毒ガスは、一旦有毒ガス集中空間17aに溜められた後、吸気型噴射ヘッド50の入口部53eに吸い込まれる。
【0035】
インナーハウジング17の内部には、触媒19と密閉チャンバ18とが位置する。密閉チャンバ18はインナーハウジングの内部上側に配置され、制御器41、温度コントローラ43、発熱パッド45、安定器48を収容する。温度コントローラ43と発熱パッド45とは、吸気型噴射ヘッド50が開放型の場合には省略可能である。
【0036】
触媒19は、有毒ガス集中空間17a内部の有毒ガス中の一酸化炭素と接して一酸化炭素を二酸化炭素に変換する役割を果たす。二酸化炭素に変換する理由は、一酸化炭素が水によく溶けないためである。一酸化炭素は、触媒によって二酸化炭素に変換された後、水に溶解される。有毒ガス中の一酸化炭素が除去されることである。そのような触媒自体は一般的なものである。
【0037】
また、インナーハウジング17の下端部外側には照明手段としてのLEDランプ37と、センサ38と、警報装置39が設けられる。LEDランプ37は、小水力発電機35から電力線36を介して印加された電力によって動作して室内に光を照射する。要救助者はLEDランプ37の光を見て避難路を見つけることができる。
【0038】
小水力発電機35は、電力を生産する発電部であって、連結チューブ21の外側に設けられる。連結チューブ21は、外部の給水パイプと吸気型噴射ヘッド50とを連結する導管である。小水力発電機35は、連結チューブ21を通過する水の運動エネルギーを伝達されて作動して電力を生産する。図面符号33はフィルタである。フィルタ33は、小水力発電機35に供給される水から不純物をろ過する。
【0039】
センサ38は火災を感知する役割を果たす。例えば、室内の温度や濃度の変化を感知するものである。センサ38は信号ケーブル38aを介して制御器41に伝達される。制御器41は、信号ケーブル38aから伝達された情報に基づいて適切な制御信号を出力する。例えば、警報装置39を駆動するか火災事実を管理者に無線で送信する。
【0040】
警報装置39は、信号ケーブル39aを介して制御器41と有線接続され、制御器41によって動作して火災警報信号を出力する。警報装置として警光灯やスピーカーを適用することができる。
【0041】
一方、前述のように、温度コントローラ43と発熱パッド45とは、適用された吸気型噴射ヘッド50が閉鎖型の場合に用いられるものである。発熱パッド45は、熱伝達部材47を介して感熱部54と連結される。熱伝達部材47は、発熱パッド45の熱を感熱部54に伝達する。感熱部54は、熱伝達部材47から伝達された熱が設定温度以上になる時に動作し、通常の感熱部54と同一に作動する。感熱部54が溶けるか割れると、詰まっていたノズル51から水の噴射が始まる。
【0042】
温度コントローラ43は、発熱パッド45の発熱温度を調節する。例えば、火災発生時に発熱パッド45を加熱し、正確な作動温度でガラスバルブやヒューズメタルが割れるか溶けて脱落し、ノズル内部の水が噴射されるように感熱部54を作動させる。温度コントローラ43も制御部41によって制御される。図面符号11は、外部の電力を制御器41に印加する電力引込線である。
【0043】
カバープレート15は、アウターハウジング13の下部に着脱可能に配置された状態でアウターハウジング及びインナーハウジングをカバーする円板である。アウターハウジング13とインナーハウジング17と吸気型噴射ヘッド50と設置孔101はカバープレート15に覆われて見えない。カバープレート15の上面には、取付維持部15aが弾性変形可能に備えられる。取付維持部15aは、固定しわ部14aに嵌合する部分である。カバープレート15は、吸気型噴射ヘッド50から水が噴射されるとき、水の圧力を受けて下部に分離されるか、取付維持部15aに特殊合金が接合されたメタルが作動温度で溶けてカバープレート(15)は脱落する。
【0044】
吸気型噴射ヘッド50は、インナーハウジング17の内部中央に配置された状態で、連結チューブ21を介して外部から提供された水を通過させて下向に噴射する。特に吸気型噴射ヘッド50は、水が通過する間にベンチュリ効果による負圧を発生させる。吸気型噴射ヘッド50内部の圧力が周辺の圧力よりも低くなる。内部圧力が低くなると、当然、持続的な上昇で周辺の圧力が高くなった天井部の高温の有毒ガスが吸気型噴射ヘッド50の内部に吸い込まれる。
【0045】
吸気型噴射ヘッド50に流入した液体微粒子系有毒ガスは、水に溶解(disolution)、希釈(dilution)されて除去され、固体微粒子系スート、煤、超微細粉塵などは物理吸着(physical adsorption)されて除去され、残りの窒素(N)ガスは水に混合された状態で火炎に噴射され、火炎を冷却及び窒息消火する。例えば、約78%の窒素ガス(Unaffected Nitrogen)のような非活性ガスが、水の運動エネルギーを得て火炎に加えられることである。言い換えれば、水の流れに乗って火炎に到達することである。
【0046】
図5(a)及び図5(b)に示しているように、吸気型噴射ヘッド天井50は、垂直のノズル51、ベンチュリケーシング53、昇降ケーシング57、上側ミキシング部55、末端ミキシング部57k、デフレクタ59を備える。
【0047】
ノズル51は、連結チューブ21を介して供給される水を通過させて下方に噴射する役割を果たす。図5(a)に示すタイプの吸気型噴射ヘッド50は閉鎖型であるので、ノズル51の下端部が感熱部54で塞がれている。感熱部54は、火災発生時に除去され、ノズル51aを通じた水の噴射が行われるようにする。図5(a)では、ガラスバルブ型感熱部54を示しているが、溶融型感熱部も同様である。
【0048】
ベンチュリケーシング53は、上下に開放された円筒状部材であって、多数のストラット52を介してノズル51と結合する。ストラット52は、ノズル51をベンチケーシング53の入口部53eの中央に垂直に固定する支持部材である。
【0049】
ベンチュリケーシング53の内径は、図6に示しているように、入口部53eが最も大きい。これによって、ベンチュリケーシング53を通過する流体の流速がベンチュリケーシング53内で加速される。流速が速くなると、ベンチュリ原理により、ベンチュリケーシング53内部の圧力が低くなり、負圧(周辺の圧力よりも低い圧力)が形成される。このようなベンチュリ効果をさらに増大させるために、ベンチュリケーシング53の内周面の形状を許容範囲内でくびれるように形成することもできる。
【0050】
結局、ベンチュリケーシング53は、ノズル51から噴射された水を通過させ、ベンチュリ効果による負圧を形成し、天井部の高温高圧の周辺ガスを内部に吸い込み、水との混合を図る。ベンチュリケーシング53に流入した有毒ガスが水とミキシング(Mixing)される。
【0051】
ベンチュリケーシング53の下端部には支持突起53cが設けられている。支持突起53cは、昇降ケーシング57の上端の係止部57hを掛けて支持し、昇降ケーシング57が下方に抜けないようにする。
【0052】
上側ミキシング部55は、ベンチュリケーシング53の内部に取り付けられ、ベンチュリケーシングを通過する水とガスとを混合する。
【0053】
図10(a)~図10(d)は、図5(a)に示す上側ミキシング部の平面図である。
【0054】
図示しているように、上側ミキシング部55は、加速ダクト55aとミキシングブレード55cとを有する。加速ダクト55aは上下に開放されたダクトであって、上下端部の内径よりも中央部の内径が小さい。加速ダクト55aを通過する流体の速度が速くなることは言うまでもない。流速が速くなると圧力が下がり、外部のガスを吸い込むベンチュリ現象が生じる。
【0055】
ミキシングブレード55cは、加速ダクト55aの内周面に一体に形成された螺旋状の翼であって、加速ダクト55aを通過する水とガスとの混合物を渦巻くようにしてより均一な混合を誘導する。また、ミキシングブレード55cを適用することによって、加速ダクト55a内部の流体の流動長さが長くなり、水とガスとが混合する時間も長くなる。
【0056】
昇降ケーシング57は、ベンチュリケーシング53に昇降可能に支持されるものであって、上昇した状態で待機し、水が噴射される時に下降する。昇降ケーシング57は、図5(a)に示しているようにベンチュリケーシング53を、その内部に収容してもよく、図14(a)及び図14(b)のようにベンチュリケーシング53の内部に収容してもよい。
【0057】
昇降ケーシング57は、平常時にはベンチュリケーシング53を包んだ状態で待機し(図5(a))、火災発生時に、噴射される水の圧力を受けて下部に落ち、図5(b)に示しているように、水とガスとの混合物の流動を制御する。
【0058】
このような機能ができる限り、昇降ケーシングの形状はいくらでも変わり得る。例えば、図11のように誘導ボディ57aを有してもよい。
【0059】
末端ミキシング部57kは、ベンチュリケーシング53と昇降ケーシング57を通過したガス及び水の混合物と衝突して、ガスと水をもう一度ミキシングする役割を果たす。末端ミキシング部57kも様々に具現可能であり、例えば、図12図13に示す構造を有してもよい。
【0060】
図12及び図13は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置10の昇降ケーシング57に設置可能な末端ミキシング部57kの平面図である。
【0061】
図12に示す末端ミキシング部57kは、固定板部57pと、翼部57qとを有する。末端ミキシング部57kは、円板状部材の縁部を半径方向に切断し、切断部分を上に折り返して作製したものである。折り返した部分が翼部57qである。翼部57qは、水とガス混合流と衝突してミキシング作用、及び水を一定の広さに分散するデフレクタ(Deflector)の役割を果たす。固定板部57pの中央にはセンターホール57rが形成されている。センターホール57rは、水が抜ける孔である。分離された感熱部の破片は、図6(b)において、59(59cと59aとの間)に水圧によって抜け出すことになる。
【0062】
また、末端ミキシング部57kの両側にはデフレクタホルダ57mが備えられる。デフレクタホルダ57mは、固定棒57sの両端部に固定される部材であって、垂直のガイド孔57nを提供する。ガイド孔57nは垂直棒59bを受容して支持する。
【0063】
図13に示す末端ミキシング部57kは、プレス方式で作製されたものであり、翼部57qが固定板部57pの外周エッジラインと、センターホール57rとの間に位置する。図13の末端ミキシング部57kの両側にもデフレクタホルダ57mが固定されている。
【0064】
一方、デフレクタ59は、末端ミキシング部57kを通過した水と衝突して水を側方向に飛散させる役割を果たす。つまり、水を周辺に振り切ることになる。デフレクタ自体の役割は一般的なスプリンクラーと同一である。
【0065】
デフレクタ59は、一対の垂直ロッド59b、離脱防止突起止め59c、デフレクタ本体59aを有する。
【0066】
デフレクタ本体59aは、下方に噴射される水と衝突して水を周辺に振り切る。水にガスが溶けているか混合されていることは言うまでもない。垂直棒59bは、デフレクタ本体59aの中心部を挟んで反対側に固定された直線状の部材であって、下端部がデフレクタ本体59aに結合した状態で垂直上部に延びる。垂直棒59bは、デフレクタホルダ57mのガイド孔57nに挿入された状態で昇降可能である。逸脱防止突起59cは、垂直棒の上端に固定された部材であって、垂直棒がガイド孔から下方に抜けることを防止する。
【0067】
図6(a)及び図6(b)は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置に適用可能な別の吸気型噴射ヘッド50の断面図である。
【0068】
図面において、前記図面符号と同一の図面符号は、同一の機能の同一部材を指し、それに関する説明は省略することにする。
【0069】
図6(a)及び図6(b)に示す吸気型噴射ヘッド50は開放型である。すなわち、ノズル51の下端部に感熱部が省略されたものである。外部から供給される水は、ノズル51をそのまま通過した後、ベントリーケーシング53、昇降ケーシング57、末端ミキシング部57kを経てデフレクタ本体59aと衝突した後、周辺に広がる。図6(a)のベンチュリケーシング53の内部は空いているが、前述の上側ミキシング部55が取り付けられる。
【0070】
図7(a)は、閉鎖型噴射ヘッドであり、感熱部としてガラスバルブを有するタイプであり、図7(b)は、感熱部として溶融鉛を内蔵したタイプである。このような感熱部自体は一般的なものである。
【0071】
図8(a)及び図8(b)は開放型噴射ヘッドであり、本発明に係る他の種類の水噴射ノズル装置に適用可能な吸気型噴射ヘッドの断面図である。
【0072】
図8(a)及び図8(b)に示す吸気型噴射ヘッド50は、ノズル51の内部に渦流誘導体63を有する。渦流(Swirl)誘導体63は、ノズル51を通過する水の流れを渦巻くようにする。水のストリームラインを螺旋状にすることである。このようにする理由は、当然水とガスとの混合効率を向上させるためである。
【0073】
図9(a)~図9(f)は、ノズル51の内部に渦流誘導体63が取り付けられた様子を様々な角度から見た様子を示す図である。
【0074】
図示しているように、ノズル51の内部に渦流誘導体63が固定されている。渦流誘導体63は、ノズル51を通過する水を渦巻くようにする。
【0075】
図8(a)及び図8(b)は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置10及び水噴射ノズルに適用可能な別の吸気型噴射ヘッド50の断面図である。
【0076】
図8(a)及び図8(b)は開放型である。つまり、感熱部がないものである。図示しているように、ノズル51の内部に渦流誘導体63が設けられていることがわかる。
【0077】
図11は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置に適用可能な昇降ケーシング57の変形例を示す図である。
【0078】
図11に示す昇降ケーシング57は、下部に向かって広がる円筒状誘導ボディ57aと、誘導ボディ57aの下端部の両側に備えられたデフレクタホルダ57mと、誘導ボディ57aの上端部に一体となる係止ねじ取付部57eを備える。
【0079】
誘導ボディ57aには螺旋状誘導凹凸部57bが形成されている。誘導凹凸部57bは、下方に流れる水の流れを渦流状に誘導して末端ミキシング部57k側にガイドする。ガスが混合された水は誘導凹凸部に沿って流れて末端ミキシング部57kに衝突して、もう一度ミキシングされる。
【0080】
係止ねじ取付部57eには雌ねじ孔57fが形成されている。雌ねじ孔57fは、係止ねじ57gが結合する孔である。係止ねじ57gは雌ねじ孔57fに螺合し、先端部が誘導ボディ57aの内側領域に突出する。係止ねじ57gは、係止部(図5(b)の57h)に代わるものであって、支持突起53cに掛けられて昇降ケーシング57が下方に抜けないようにする。
【0081】
図14(a)及び図14(b)は、本発明の一実施形態に係るスプリンクラー装置における吸気型噴射ヘッドの変形例を概略的に示す断面図である。
【0082】
図14に示すタイプの吸気型噴射ヘッド50は、昇降ケーシング57がベンチュリケーシング53の内側に収容される構造を有する。すなわち、昇降ケーシング57が上昇した状態でベンチュリケーシング53内に収容され、火災時にはベンチュリケーシング53から下方に抜けることである。
【0083】
結局、前記のようになされる本発明のスプリンクラー装置10は、火災時に、室内に広がる煙、有毒ガスを吸い込んで除去するとともに(非活性ガスが混合されている)水を火炎に加えることによって、火災を迅速に鎮火することはもちろん、窒息による人命事故を最小化できるものである。
【0084】
以上、本発明を具体的な実施例を通じて詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で通常の知識を有する者によって様々な変形が可能である。
図1
図2
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図6
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図10
図11
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図13
図14