(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】コード核酸の治療可能性についての効力アッセイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240301BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240301BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240301BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240301BHJP
C12N 15/87 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
A61K48/00
A61P37/02
G01N33/68
G01N27/62 V
C12N15/87 Z
(21)【出願番号】P 2023534012
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022074395
(87)【国際公開番号】W WO2023031367
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/074304
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】ハース, ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハー, イェンス
(72)【発明者】
【氏名】テンザー, シュテファン
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/011773(WO,A2)
【文献】特表2020-516658(JP,A)
【文献】Mol. Ther.,2015年,vol.23, no.9,p.1456-1464
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする同じRNAの異なるバッチを分析するための方法であって、以下の工程:
(i)前記RNAを提供する工程;
(ii)インビトロで細胞に前記RNAをトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の発現を可能にする工程;
(iv)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量を決定する工程;および
(v)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量を、生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力の指標として使用する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記細胞が
、動物細胞株の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の前記断片が、前記発現されるアミノ酸配列に特異的である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の前記断片が、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列に含まれない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、質量分析を用いて決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、前記細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用して決定され、前記細胞によって発現される前記1つ以上のアミノ酸配列がハウスキーピングタンパク質の1つ以上のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力が、前記RNAの治療効力を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が所定のカットオフを上回る場合、前記RNAが生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効
力を有し、または生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が所定のカットオフ未満である場合、前記RNAが生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効
力を有さない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記所定のカットオフを決定するために使用される前記RNAと前記分析されるRNAとが同じ化学組成を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効
力を有するRNAバッチが治療に使用されるかもしくは使用されることになっており、および/または生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効
力を有さないRNAバッチが治療に使用されないかもしくは使用されないことになっている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効
力が、前記RNA
の品質を反映する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記RNAの品質が、前記RNAが有害な条件に曝露されたかどうかおよび/またはどの程度曝露されたかを反映する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効
力が、前記RNAの完全性および/または前記RNAのキャッピングを反映する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記RNAの品質および/または量が生物系において生物学的活性を誘導するのに十分であるかどうかを分析するためのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、前記RNAの品質および/または量が生物系において生物学的活性を誘導するのに十分であるかどうかを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的活性が、疾患関連系において特異的応答を誘発する能力を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記特異的応答が免疫応答を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記RNAが粒子として製剤化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
生物学的活性を有する前記ペプチドまたはポリペプチドがワクチンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記ワクチンがT細胞ワクチンである、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療可能性を測定、決定、同定、定量化、確認および/または検証するための効力アッセイを提供する。効力アッセイは、1つ以上の抗原または1つ以上のエピトープを含む薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドを含む、様々な種類のペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を用いて実施され得る。治療可能性を有する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、下流の臨床用途、例えば、対象において、免疫応答が治療的または部分的もしくは完全に保護的であり得る、核酸によってコードされる1つ以上の抗原または1つ以上のエピトープに対する免疫応答を誘発するために有用であり得る。したがって、治療可能性を有する核酸は、ワクチン接種に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
生物学的に活性なタンパク質をコードするそれらの周知の能力とは別に、DNAおよびRNAなどの核酸は、それらを魅力的な治療薬にする他の注目すべき特性を有する。核酸に基づく治療薬は、製造が容易であり、比較的安価である。
【0003】
一般に、DNAはRNAよりも安定であるが、抗DNA抗体の誘導および導入遺伝子の宿主ゲノムへの組み込みなどのいくつかの潜在的な安全性リスクを有する。
【0004】
外来遺伝子情報を標的細胞に送達するためのRNAの使用は、DNAの魅力的な代替物を提供する。RNAの利点には、一過性の発現および非形質転換特性が含まれる。RNAは発現のために核浸潤を必要とせず、さらに宿主ゲノムに組み込まれることができないため、腫瘍形成のリスクを排除する。
【0005】
効力試験は、製品の品質および製造管理に関連する製品属性を測定するために使用され、臨床試験の全段階中に使用される生成物の同一性、純度、強度(効力)および安定性を保証するために実施される。同様に、効力測定値は、規定された仕様または許容基準を満たす製品ロットのみが臨床調査の全ての段階中および市場承認後に投与されることを実証するために使用される。したがって、生物製剤の効力を定義することは、製品開発中およびその後の中心的存在である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効力アッセイは、規定された生物学的効果を達成する生成物の能力を表すべき特定の基準の定量的尺度を含む。測定される基準は、生成物の意図される生物学的効果に密接に関連しているべきであり、理想的には、生成物の臨床目的に関連しているべきである。生成物の効力の測定は、臨床効果の測定と同じではない。むしろ、それは、特にGMPの下で、生成物の品質を管理し、適切な出荷基準を提供するための手段である。通常、対象に投与されることになるありとあらゆる生成物について、別個の効力アッセイを開発しなければならない。急速に進化している核酸の世界では、潜在的な数百の異なる構築物があり、ほとんどの場合、検出に利用可能な抗体がないので、新しい生成物に容易に適合させることができる効力アッセイは非常に有益であろう。
【0007】
コード核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療可能性、特に、前記コード核酸を含む粒子製剤、例えば核酸製剤の治療可能性およびその関連する使用を測定、決定、同定、定量化、確認および/または検証するための効力アッセイを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、インビトロで細胞系においてコードされた薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドを発現する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の能力は、インビボでの治療可能性に関連することが観察された。この観察に基づいて、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療可能性を測定、決定、同定、定量化、確認および/または検証するための迅速で、費用対効果が高く、信頼性があり、使用および解釈が容易な効力アッセイが提供される。本明細書で提供される効力アッセイは、新しい生成物に容易に適合させることができる。
【0009】
具体的には、核酸産物、例えばRNA-リポプレックス(RNA-LPX)またはDNA-LPXまたはRNA-脂質ナノ粒子(RNA-LNP)産物についてのLC-MS効力アッセイが本明細書に記載されており、これは、生物学的活性、例えばT細胞の活性化に直結する産物特異的作用機構(MoA)の重要な工程の試験に基づく。読み出し、すなわち送達された核酸(RNAおよび/またはDNAなど)のペプチドへの翻訳の測定値は、核酸産物、例えばRNA-LPX、DNA-LPXまたはRNA-LNP製剤の産物品質を直接示し、安定性を示している。このアッセイは、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の取り込みおよびそれぞれのペプチド、例えば抗原への翻訳の成功をカバーする効力への洞察を可能にし、生物学的活性、例えばT細胞活性化を予測する。
【0010】
細胞の取り込みおよび翻訳を測定するために、動物細胞株由来の細胞、特に、レシピエントの細胞(すなわち、樹状細胞(DC)などの核酸産物を取り込むことになるレシピエントの標的細胞)と同じ機構を使用して核酸産物、例えばRNA-LPX、DNA-LPXまたはRNA-LNPを取り込み、任意で、バッチ出荷のためのQC環境(GMP QC環境など)での日常的な試験に適している細胞を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、K562、HepG2、HEK293T、RAW、およびC2C12細胞からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、CHO細胞は、樹状細胞(DC)と同じ機構を使用し、バッチ出荷のためのQC環境(GMP QC環境など)での日常的試験に対するそれらの適合性に基づいて、これらの細胞が核酸産物、例えばRNA-LPXまたはRNA-LNPを取り込むことを考慮して選択した。翻訳時に、CHO細胞は、同族T細胞に抗原エピトープを提示することができ、それらの刺激をもたらす。したがって、このアッセイは、製剤の生物学的機能を反映する。
【0011】
翻訳されたペプチドを定量化するために、核酸にコードされた(例えばRNAにコードされた)配列のC末端に共通のユニークなMITD(MHCクラスI輸送ドメイン)ペプチドを、LC-MS/MS分析を使用して全細胞溶解物から定量化し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、核酸にコードされた(例えばRNAにコードされた)配列の別のペプチドも、発現されたペプチドの定量化に使用することができる。いくつかの実施形態では、別のペプチドは、LC-MS/MSを使用して定量化することができる。いくつかの実施形態では、別のペプチドは、生物発光を生じるペプチドまたはポリペプチド(緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼのような)などのレポータペプチドまたはポリペプチドであるか、あるいはレポータペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0012】
様々な実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療可能性についての効力アッセイが企図される。効力アッセイは、対象への投与前に臨床核酸に基づくそのようなRNAベースの治療製品を迅速かつ確実に検証するために使用することができるので、臨床的に重要である。実際に、本明細書で企図される治療可能性についての効力アッセイのための枠組みは、RNA産物などの治療用核酸のための「ゴールドスタンダード」検証アッセイになる可能性が高い。
【0013】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする核酸を分析するための方法であって、以下の工程:
(i)核酸を提供する工程;
(ii)インビトロで細胞に核酸をトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;および
(iv)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を決定する工程
を含む方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、以下の工程:
(v)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、生物系において生物学的活性を誘導する核酸の効力の指標として使用する工程
をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、核酸は、DNA(例えば1つ以上のDNA)、RNA(例えば1つ以上のRNA)、またはDNAとRNAとの混合物(例えば1つ以上のDNAおよび1つ以上のRNA)である。
【0016】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするDNAを分析するための方法であって、以下の工程:
(i)DNAを提供する工程;
(ii)インビトロで細胞にDNAをトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;および
(iv)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を決定する工程
を含む方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、以下の工程:
(v)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、生物系において生物学的活性を誘導するDNAの効力の指標として使用する工程
をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、DNAは、ベクター、例えば生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするDNAを含むベクターの形態で存在する。いくつかの実施形態では、ベクターはDNAベクターである。
【0019】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をそれぞれコードするDNAとRNAとの混合物を分析するための方法であって、以下の工程:
(i)DNAとRNAとの混合物を提供する工程;
(ii)DNAとRNAとの混合物をインビトロで細胞にトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;および
(iv)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を決定する工程
を含む方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、以下の工程:
(v)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、生物系において生物学的活性を誘導するDNAとRNAとの混合物の効力の指標として使用する工程
をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、DNAは、ベクター、例えば生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするDNAを含むベクターの形態で存在する。いくつかの実施形態では、ベクターはDNAベクターである。
【0022】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするRNAを分析するための方法であって、以下の工程:
(i)RNAを提供する工程;
(ii)インビトロで細胞にRNAをトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;および
(iv)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を決定する工程
を含む方法を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本方法は、以下の工程:
(v)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、生物系において生物学的活性を誘導するRNAの効力の指標として使用する工程
をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞は、生物系の核酸取り込み機構(RNAおよび/またはDNA取り込み機構など)を模倣する。
【0025】
いくつかの実施形態では、生物系はヒト患者に存在する。
【0026】
いくつかの実施形態では、生物系は抗原提示細胞、好ましくは樹状細胞を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、樹状細胞は未成熟樹状細胞を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、細胞は、マクロピノサイトーシス媒介RNA取り込み機構を特徴とする。これらの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)はリポプレックス粒子として製剤化されることが好ましい。
【0029】
いくつかの実施形態では、細胞は、エンドソーム媒介RNA取り込み機構を特徴とする。これらの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は脂質ナノ粒子として製剤化されることが好ましい。
【0030】
いくつかの実施形態では、細胞は、動物細胞株由来の細胞、特に、レシピエントの細胞(すなわち、樹状細胞(DC)などの核酸産物を取り込むことになるレシピエントの標的細胞)と同じ機構を使用して核酸産物、例えばRNA-LPX、DNA-LPXまたはRNA-LNPを取り込み、QC環境(GMP QC環境など)での日常的な試験に適している細胞である。
【0031】
いくつかの実施形態では、細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、K562、HepG2、HEK293T、RAW、およびC2C12細胞から、例えばK562、HEK293T、RAW、およびC2C12細胞から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の断片は、発現されるアミノ酸配列に特異的である。
【0033】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の断片は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列に含まれない。
【0034】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の断片は、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列またはその断片を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、MHC分子、好ましくはMHCクラスI分子の膜貫通および細胞質ドメインに対応するアミノ酸配列を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の断片は、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列またはその断片を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、ヘルパーエピトープ、好ましくは破傷風トキソイド由来のヘルパーエピトープを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の断片は、生物発光を生じるアミノ酸配列を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、生物発光を生じるアミノ酸配列は、蛍光を生じる。
【0042】
いくつかでは、生物発光を生じるアミノ酸配列は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(EBFP)、シアン蛍光タンパク質(ECFP)、それらの変異体(例えば、増強GFP(EGFP)、スーパーフォルダGFP(sfGFP)およびルシフェラーゼ)からなる群より選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を決定する前に細胞を溶解する工程を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を決定する前に細胞溶解物を処理する工程をさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、細胞溶解物の処理は、変性、還元、プロテアーゼ消化(例えば、トリプシン、Glu-C、LysN、Lys-C、Asp-Nキモトリプシン、またはこれらのプロテアーゼのいずれか2つ以上の混合物を用いた消化)、アルキル化、乾燥、再構成および脱塩から、例えばトリプシン消化、アルキル化および脱塩から選択される1つ以上を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量は、質量分析を用いて決定される。
【0047】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量は、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)を使用して決定される。
【0048】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量は、標的LC-MSを用いて決定される。
【0049】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量は、細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用して決定される。
【0050】
いくつかの実施形態では、細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列は、ハウスキーピングタンパク質の1つ以上のアミノ酸配列を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、生物系において生物学的活性を誘導する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の効力は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療効力を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量が所定のカットオフを上回る場合、生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量が所定のカットオフ未満である場合、生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有さない。
【0054】
いくつかの実施形態では、所定のカットオフは、生物系において生物学的活性を誘導するための許容される効力、例えば治療効力を有することが公知の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を使用して決定される。
【0055】
いくつかの実施形態では、所定のカットオフを決定するために使用される核酸(RNAおよび/またはDNAなど)と分析される核酸(RNAおよび/またはDNAなど)とは、同じ化学組成を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、同じ核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の異なるバッチを分析するためのものである。
【0057】
いくつかの実施形態では、生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有する核酸(RNAおよび/もしくはDNAなど)または核酸バッチ(RNAおよび/もしくはDNAバッチなど)は、治療に使用されるかまたは使用されることになっており、ならびに/または生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有さない核酸(RNAおよび/もしくはDNAなど)または核酸バッチ(RNAおよび/もしくはDNAバッチなど)は、治療に使用されないかまたは使用されないことになっている。
【0058】
いくつかの実施形態では、生物系において生物学的活性を誘導する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の効力、例えば核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療効力は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療品質などの品質を反映する。
【0059】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の品質は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)が有害な条件に曝露されたかどうかおよび/またはどの程度曝露されたかを反映する。
【0060】
いくつかの実施形態では、有害な条件は熱を含む。
【0061】
無細胞系(網状赤血球溶解物など)の代わりに生きている細胞系を使用することは、本明細書で提供される効力アッセイが、生物系において生物学的活性を誘導する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の効力(核酸の治療効力など)が核酸(またはRNA-LPXなどの核酸を含む製剤/組成物)の1つ以上のパラメータを反映するかどうかを示すことができるという利点を提供し得るが、無細胞系に基づく効力アッセイはそのような指標を提供することができない。
【0062】
したがって、いくつかの実施形態では、生物系において生物学的活性を誘導する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の効力、例えば核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療効力は、粒子パラメータ、製剤/組成物パラメータ、ならびに核酸(RNAおよび/またはDNAなど)パラメータからなる群より選択される1つ以上のパラメータを反映する。
【0063】
いくつかの実施形態では、粒子パラメータは、サイズ、表面電荷、脂質の質(例えば分解)、粒子構造(例えばラメラ性)、ならびに細胞内核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の放出、N/P比、遊離核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の濃度、ならびにアクセス可能な核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の濃度を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、製剤/組成物パラメータは、重量オスモル濃度、pH、核酸以外の製剤/組成物成分の品質(例えば緩衝液成分の品質)、およびエンドトキシンの濃度を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)パラメータは、濃度、配列の正確さ(例えばフレームシフトまたは早期停止)、完全性、およびエンドトキシンの濃度を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、RNAパラメータは、RNA濃度、配列の正確さ(例えばフレームシフトまたは早期停止)、RNAの完全性、エンドトキシンの濃度、キャッピング、ポリA配列、dsRNAの濃度、ならびにUTR(5’および/または3’)を含む。特に、これに関して、本明細書で提供される効力アッセイは、生物系において生物学的活性を誘導するRNAの効力(RNAの治療効力など)がキャッピングを反映するかどうかを示すことができるが(キャップされたRNAのみがコードされたペプチドまたはポリペプチドに翻訳されるため)、無細胞系に基づく効力アッセイはそのような指標を提供することができない(そのような無細胞系では、キャップされていないRNAもコードされたペプチドに翻訳されるため)ことに留意されたい。
【0067】
いくつかの実施形態では、生物系において生物学的活性を誘導する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の効力、例えば核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の治療効力は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の完全性を反映する。
【0068】
いくつかの実施形態では、核酸はRNAであり、生物系において生物学的活性を誘導するRNAの効力、例えばRNAの治療効力は、RNAのキャッピングを反映する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、生物系において生物学的活性を誘導する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の効力を分析するためのものである。
【0070】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量は、生物系において生物学的活性を誘導する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の効力を示す。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の品質および/または量が生物系において生物学的活性を誘導するのに十分であるかどうかを分析するためのものである。
【0072】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の品質および/または量が生物系において生物学的活性を誘導するのに十分であるかどうかを示す。
【0073】
いくつかの実施形態では、生物学的活性は、疾患関連系において特異的応答を誘発する能力を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、特異的応答は、免疫応答を含むか、または免疫応答である。
【0075】
いくつかの実施形態では、免疫応答はT細胞応答を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドは、ワクチン(例えば抗原、エピトープ)、補充療法のためのタンパク質、抗体、抗体様分子およびサイトカインからなる群より選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、核酸はRNAである。
【0078】
いくつかの実施形態では、RNAは一本鎖RNAである。
【0079】
いくつかの実施形態では、RNAはmRNAである。
【0080】
いくつかの実施形態では、RNAは、RNAのインビトロ転写によって生成される。
【0081】
いくつかの実施形態では、RNAは5’キャップ構造を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、RNAは修飾リボヌクレオチドを含まない。
【0083】
いくつかの実施形態では、RNAは修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、修飾リボヌクレオチドは修飾ウリジンを含む。いくつかの実施形態では、修飾ウリジンはN1-メチル-プソイドウリジンを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、核酸はDNAである。
【0085】
いくつかの実施形態では、DNAはベクターの形態で存在する。
【0086】
いくつかの実施形態では、ベクターは、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするDNAを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、ベクターはDNAベクターである。
【0088】
いくつかの実施形態では、核酸は、RNAとDNAとの混合物である。
【0089】
いくつかの実施形態では、混合物中のRNAは一本鎖RNAである。
【0090】
いくつかの実施形態では、混合物中のRNAはmRNAである。
【0091】
いくつかの実施形態では、混合物中のRNAは、RNAのインビトロ転写によって生成される。
【0092】
いくつかの実施形態では、混合物中のRNAは5’キャップ構造を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、混合物中のRNAは修飾リボヌクレオチドを含まない。
【0094】
いくつかの実施形態では、混合物中のRNAは修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、修飾リボヌクレオチドは修飾ウリジンを含む。いくつかの実施形態では、修飾ウリジンはN1-メチル-プソイドウリジンを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、混合物中のDNAはベクターの形態で存在する。
【0096】
いくつかの実施形態では、混合物中のベクターは、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするDNAを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、混合物中のベクターはDNAベクターである。
【0098】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、送達ビヒクルと共に製剤化される。
【0099】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を複合体化する1つ以上の化合物と共に製剤化される。
【0100】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、粒子として製剤化される。
【0101】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、リポプレックス粒子として製剤化される。これらの実施形態では、細胞は、マクロピノサイトーシス媒介RNA取り込み機構を特徴とすることが好ましい。
【0102】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、脂質ナノ粒子として製剤化される。
【0103】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドはワクチンである。
【0104】
いくつかの実施形態では、ワクチンはT細胞ワクチンである。
【0105】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、異なる核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、例えば2つ以上のRNA、2つ以上のDNA、または1つ以上のRNAと1つ以上のDNA)の混合物を含み、各核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0106】
いくつかの実施形態では、異なる核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、例えば2つ以上のRNA、2つ以上のDNA、または1つ以上のRNAと1つ以上のDNA)の混合物は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む異なるアミノ酸配列をコードする核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、例えば2つ以上のRNA、2つ以上のDNA、または1つ以上のRNAと1つ以上のDNA)を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、異なるアミノ酸配列は、生物学的活性を有する異なるペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、生物学的活性を有する異なるペプチドまたはポリペプチドは、異なる抗原を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、異なる抗原のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする異なる核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、例えば2つ以上のRNA、2つ以上のDNA、または1つ以上のRNAと1つ以上のDNA)の混合物を含む。
【0110】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする核酸が、生物系において生物学的活性を誘導する効力を分析するための方法であって、以下の工程:
(i)核酸を提供する工程;
(ii)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの動物細胞株の細胞にインビトロで核酸をトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;
(iv)細胞を溶解する工程;
(v)細胞溶解物を処理する工程;および
(vi)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、質量分析を用いて決定する工程であって、CHO細胞などの動物細胞株の細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用する、工程
を含む方法を提供する。
【0111】
この方法の実施形態は、本明細書に記載される通りである。
【0112】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするDNAが生物系において生物学的活性を誘導する効力を分析するための方法であって、以下の工程:
(i)DNAを提供する工程;
(ii)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの動物細胞株の細胞にインビトロでDNAをトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;
(iv)細胞を溶解する工程;
(v)細胞溶解物を処理する工程;および
(vi)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、質量分析を用いて決定する工程であって、CHO細胞などの動物細胞株の細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用する、工程
を含む方法を提供する。
【0113】
この方法の実施形態は、本明細書に記載される通りである。
【0114】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするRNAとDNAとの混合物が生物系において生物学的活性を誘導する効力を分析するための方法であって、以下の工程:
(i)RNAとDNAとの混合物を提供する工程;
(ii)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの動物細胞株の細胞にインビトロでRNAとDNAとの混合物をトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;
(iv)細胞を溶解する工程;
(v)細胞溶解物を処理する工程;および
(vi)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、質量分析を用いて決定する工程であって、CHO細胞などの動物細胞株の細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用する、工程
を含む方法を提供する。
【0115】
この方法の実施形態は、本明細書に記載される通りである。
【0116】
いくつかの態様では、本発明は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするRNAが生物系において生物学的活性を誘導する効力を分析するための方法であって、以下の工程:
(i)RNAを提供する工程;
(ii)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの動物細胞株の細胞にインビトロでRNAをトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列の発現を可能にする工程;
(iv)細胞を溶解する工程;
(v)細胞溶解物を処理する工程;および
(vi)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を、質量分析を用いて決定する工程であって、CHO細胞などの動物細胞株の細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用する、工程
を含む方法を提供する。
【0117】
この方法の実施形態は、本明細書に記載される通りである。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAは、細胞、例えば本明細書に記載のアッセイで使用される細胞およびレシピエントの細胞に入るとそれぞれのタンパク質に翻訳され得る一本鎖RNAである。生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチド、例えば抗原配列などの薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする野生型またはコドン最適化配列に加えて、RNAは、安定性および翻訳効率に関してRNAの最大効果のために最適化された1つ以上の構造要素(5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)尾部)を含み得る。一実施形態では、RNAはこれらの要素の全てを含む。一実施形態では、β-S-ARCA(D1)(m2
7,2’-OGppSpG)またはm2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGを、RNA原薬の5’末端の特異的キャッピング構造として利用し得る。5’-UTR配列として、任意で翻訳効率を高めるために最適化された「コザック配列」を有する、ヒトα-グロビンmRNAの5’-UTR配列を使用し得る。3’-UTR配列として、より高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続性を確実にするために、コード配列とポリ(A)尾部との間に配置された「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素(FI要素)の組合せを使用し得る。これらは、RNAの安定性を付与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択プロセスによって同定された(参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/060314号参照)。あるいは、3’-UTRは、ヒトβグロビンmRNAの2つの反復3’-UTRであり得る。さらに、30個のアデノシン残基のストレッチ、それに続く(ランダムヌクレオチドの)10個のヌクレオチドリンカー配列および別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)尾部を使用し得る。このポリ(A)尾部配列は、RNA安定性および翻訳効率を高めるように設計された。
【0119】
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチド、例えば抗原配列などの薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を含み得る。そのような他のアミノ酸配列は、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドの機能または活性を支持し得る。いくつかの実施形態では、そのような他のアミノ酸配列は、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列を含む。代替的にまたは追加的に、そのような他のアミノ酸配列は、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列を含む。代替的にまたは追加的に、そのような他のアミノ酸配列は、生物発光を生じるアミノ酸配列を含む。そのような他のアミノ酸配列は、本明細書に記載されるアッセイにおいて、生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列またはその断片の量を決定するために有用であり得る。特に、そのような他のアミノ酸配列は、LC-MS/MS分析による定量化に有用であり得る。
【0120】
本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)をポリマー、タンパク質および/または脂質、好ましくは脂質と複合体化して、投与のための核酸粒子を生成し得る。異なる核酸の組合せが使用される場合、核酸は、一緒に複合体化され得るか、または別々に複合体化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1】CHO細胞におけるCy5標識RNA-LPXのマクロピノサイトーシス駆動の用量依存的取り込み。CHO細胞を、選択的マクロピノサイトーシス阻害剤ロットレリンで前処理するかまたは前処理せず、0.2、1.5または3μgのCy5標識ルシフェラーゼRNA-LPXと共にインキュベートした。洗浄後、細胞を固定し、Cy5シグナルを蛍光顕微鏡法によって分析した(左パネルは代表的な画像を示す)。スケールバー:50μm。(右)Cy5陽性細胞の定量化(n≧20.000細胞/用量/処置を分析した)。エラーバーはSEMを表す。略語:CHO=チャイニーズハムスター卵巣細胞;LPX=RNA-リポプレックス;SEM=平均の標準誤差。
【
図2】DCまたはCHO細胞におけるRNA-LPXコード抗原の局在化。細胞を腫瘍抗原MAGE-A3-RNA-LPX(構築物については
図12参照)と共に24時間インキュベートし、その後、天然条件下でMAGE A3特異的抗体(緑色)で染色し、構造化照明顕微鏡法によって分析した。小さい写真は、直交ビューを表す。C)では、細胞膜を並行して染色した(赤色)。グラフは、重ね合わせ画像からのラインスキャン(白色の点線)を示す。バーは20μm(A/B)または25μm(C)を表す。略語:CHO=チャイニーズハムスター卵巣;DC=樹状細胞;MAGE A3=黒色腫関連抗原3。
【
図3】eGFP-LPX-リポフェクトDC(左)およびCHO細胞(右)の用量反応曲線。細胞を、レポータeGFPをコードする滴定量のRNA-LPXと共インキュベートした。eGFP蛍光シグナルを分析し、平均相対蛍光単位(RFU)を計算した。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。略語:CHO=チャイニーズハムスター卵巣;DC=樹状細胞;eGFP=増強された緑色蛍光タンパク質;LPX=リポプレックス。
【
図4】非ストレス負荷(対照)またはストレス負荷eGFP-RNA-LPXによるリポフェクション後のDC(左)またはCHO細胞(右)の用量反応曲線。RNA-LPXは、リポフェクションに使用する前に熱ストレスに曝露した。その後、細胞を、レポータeGFPをコードする滴定量のストレス負荷または非ストレス負荷RNA-LPX(eGFP-LPX)と共インキュベートした。eGFP蛍光シグナルを分析し、平均RFUを計算する。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。略語:CHO=チャイニーズハムスター卵巣;DC=樹状細胞;eGFP=増強された緑色蛍光タンパク質;RFU=相対蛍光単位;RNA LPX=リボ核酸リポプレックス。
【
図5A】効力アッセイに対するDP変動の影響。A)異なるRNA完全性(95%;80%;74%および40%)をもたらす4つの熱分解RNAをRNA-LPXの製造に使用した。B)5’キャップを有する(キャップあり、黒色の線)または5’キャップを有さない(キャップなし、青色の線)RNAをRNA-LPXの製造に使用した。左側に、蛍光シグナルを各製剤用量の関数としてプロットしている。異なる色は、示されている熱分解RNAを用いて製造されたそれぞれのDPでの測定値を表す。右側には、対応するAUC値をプロットした。C)使用したRNAの機能性を検証するためのウサギ網状赤血球溶解物を使用したキャップされたRNA(左)およびキャップされていないRNA(右)のインビトロ翻訳。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。
【
図5C】効力アッセイに対するDP変動の影響。A)異なるRNA完全性(95%;80%;74%および40%)をもたらす4つの熱分解RNAをRNA-LPXの製造に使用した。B)5’キャップを有する(キャップあり、黒色の線)または5’キャップを有さない(キャップなし、青色の線)RNAをRNA-LPXの製造に使用した。左側に、蛍光シグナルを各製剤用量の関数としてプロットしている。異なる色は、示されている熱分解RNAを用いて製造されたそれぞれのDPでの測定値を表す。右側には、対応するAUC値をプロットした。C)使用したRNAの機能性を検証するためのウサギ網状赤血球溶解物を使用したキャップされたRNA(左)およびキャップされていないRNA(右)のインビトロ翻訳。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。
【
図6】概念実証。A)eGFPをコードするRNA-リポプレックスによるリポフェクションの24時間後の細胞の三連測定。3つの異なるRNA-リポプレックス用量をトランスフェクションに使用した。B)eGFP構築物のアミノ酸配列。赤色は、MS/MSによって細胞溶解物中で同定された特異的ペプチド(n=3)。C)eGFP MSペプチドシグナル強度(赤色)と比較した溶解物中のeGFP蛍光シグナル(青色)の相関。
【
図7】代表的なiNeST RNA-LPXを用いた概念実証。iNeSTデザインスペースRNA-リポプレックスによるリポフェクションの24時間後の細胞の正規化したLC-MS(MS/MS)MITDペプチドの定量化。エラーバーは標準偏差を表す(n=6)。
【
図8】iNeSTリポプレックス化リポフェクトCHO細胞の用量反応曲線。CHO細胞を、異なるネオ抗原(iNeST5または6)をコードする滴定量のRNA-リポプレックスと共インキュベートし、正規化したMITDペプチドの定量化(MS/MS)をiNeST構築物5(左)および6(右)について示した。略語:CHO=チャイニーズハムスター卵巣;LPX=リポプレックス。
【
図9】LC-MS効力に対する加速温度ストレスの影響。6つ全てのiNeST RNA-LPX(iNeST1~6)に熱ストレスを負荷し(2日間、40℃)、得られた試料を3つの異なる用量レベルで細胞に適用し、LC-MS効力アッセイによって分析した。用量反応曲線を、非ストレス負荷試料(青色)およびストレス負荷試料(橙色)についての正規化したMITDペプチド量に対して並行してプロットした。
【
図10】加速ストレス条件の2つの時点の影響。6つ全てのiNeST RNA-LPX(iNeST1~6)に、40℃で2日間(左のグラフ)または10日間(右のグラフ)、熱ストレスを負荷した。非ストレス負荷対照試料(灰色のバー)およびストレス負荷試料(橙色のバー)のRNA完全性を分析している(黄色の点線はRNA完全性の仕様限界を示す)。並行して、全ての試料を細胞に適用し、LC-MS効力アプローチによって分析した。それぞれのMITDペプチド量を、非ストレス負荷MITDペプチド量からのシグナル(青色のバー)に対して正規化している。
【
図11】異なる読み出しの測定は、RNA-LPX用量反応曲線関係を示す。A)CHO細胞を腫瘍抗原MAGE A3 RNA-LPXで用量依存的にリポフェクトした。細胞を、意図するLC-MS効力アプローチによってMAGE A3翻訳について分析した(LC-MS、橙色の点)。細胞を、天然抗体染色および定量的HT顕微鏡法によって表面局在化(
図2参照)について並行して分析した(AB、青色の点)。細胞を、特殊なJurkat NFATアッセイによってT細胞を活性化する能力についても分析した(緑色の点)。CHO細胞にHLA-A*0101 RNAをエレクトロポレーションし、滴定量のMAGE-A3コードRNA-LPXをトランスフェクトし、HLA-A*0101拘束性MAGE-A3-TCRを発現するJurkat T細胞を活性化するそれらの能力について評価した。レポータとしてのルシフェラーゼのNFAT駆動発現に基づくMAGE-A3-TCRトランスフェクトJurkat細胞の同族活性化。B)Aと同じ実験で、CHO細胞を、抗原(E7)をコードするRNA-LPXでリポフェクトした。CHO細胞にHLA-DQBA1*0102およびDQB1*0501 RNAをエレクトロポレーションし、滴定量のHPV-E7コードRNA-LPXでトランスフェクトし、HLA-DQBA1*0102/DQB1*0501拘束性HPV-E7-TCRを発現するJurkat T細胞を活性化するそれらの能力について評価した。トランスフェクトされたCHO細胞を標的LC-MSアッセイに供して、翻訳されたHPV-E7タンパク質のレベルを測定し、並行してHT顕微鏡法によって表面局在化を測定した。レポータとしてのルシフェラーゼのNFAT駆動発現に基づくHPV E7 TCRトランスフェクトJurkat細胞の同族活性化。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。
【
図12】BNT111(NY-ESO-1、チロシナーゼ、MAGE-A3、およびTPTE)ならびにBNT113(HPV-E6およびHPV-E7)腫瘍抗原をコードするRNAの一般構造。5’キャップ、5’および3’非翻訳領域、内因性分泌シグナルペプチドを含むコード配列(該当する場合)、ならびにポリ(A)尾部を有するRNAの一般構造の概略図。個々の要素は、それぞれの配列の長さと比較して正確に縮尺通りに描かれているわけではないことに留意されたい。ORF=オープンリーディングフレーム;UTR=非翻訳領域;sec=分泌シグナルペプチド。
【
図13】一定の5’キャップ[β-S-ARCA(D1))、5’-および3’-UTR(それぞれhAg-コザックおよびFI)]、N末端およびC末端融合タグ(それぞれsec2.0およびMITD)、ならびにポリ(A)尾部(A120)、ならびにGSリッチリンカーによって融合されたネオエピトープ(neo1~10)をコードする患者特異的配列を有するiNeST RNA原薬の一般構造の概略図。略語:GS-グリシンおよびセリン;MITD-主要組織適合遺伝子複合体クラスI輸送ドメイン;sec-分泌シグナルペプチド;UTR-非翻訳領域。
【
図14】分析した腫瘍抗原構築物の概要(#1:MAGE-A3、2#:チロシナーゼおよび3#NY-ESO、
図12も参照のこと)。構築物のC末端定常部分を強調している(ペプチド#1;ペプチド#2およびMITD)。
【
図15】3つの(A~C)腫瘍抗原のMSに基づく相対定量化の結果。各構築物について、6つの用量を二連で適用した(n=2)。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図16A】細胞を、MAGE A3(
図16A)またはTPTE(
図16B)をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的にリポフェクトした。分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2またはCHO細胞を含む)および定量的免疫蛍光顕微鏡法(IF))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DPならびに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図16B】細胞を、MAGE A3(
図16A)またはTPTE(
図16B)をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的にリポフェクトした。分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2またはCHO細胞を含む)および定量的免疫蛍光顕微鏡法(IF))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DPならびに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図17】非ストレス負荷(右の値)、3日間(中央の値)および10日間(左の値)ストレス負荷したDPの様々な分析結果の評価および比較(LC-MS対JurkatおよびRNA完全性(CE)対LC-MS)。様々な分析測定の線形適合の勾配をグラフにプロットし、線形回帰によって適合させた。
【
図18】LC-MS(図の右側のバー)およびJurkatアッセイ(図の左側のバー)の結果の評価および比較。用量反応曲線のデータ点を、相対効力GMPソフトウェアPLAを用いて分析した。異なるストレス負荷試料を非ストレス負荷試料(100%効力として設定)と比較し、PLAソフトウェアを使用してそれぞれの効力を計算する。
【
図19A】細胞を、TYR(
図19A)またはNY-ESO(
図19B)をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的にリポフェクトした。分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2を含む))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DP、さらに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図19B】細胞を、TYR(
図19A)またはNY-ESO(
図19B)をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的にリポフェクトした。分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2を含む))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DP、さらに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図20】非ストレス負荷(右の値)、3日間(中央の値)および10日間(左の値)ストレス負荷したDPの様々な分析結果の評価および比較(LC-MS対JurkatおよびRNA完全性(CE)対LC-MS)。様々な分析測定の線形適合の勾配をグラフにプロットし、線形回帰によって適合させた。
【
図21】LC-MS(図の右側のバー)およびJurkatアッセイ(図の左側のバー)の結果の評価および比較。用量反応曲線のデータ点を、相対効力GMPソフトウェアPLAを用いて分析した。異なるストレス負荷試料を非ストレス負荷試料(100%効力として設定)と比較し、PLAソフトウェアを使用してそれぞれの効力を計算する。
【
図22A】細胞を、E6(
図22A)またはE7(
図22B)をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的にリポフェクトした。分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2またはCHOを含む)および定量的免疫蛍光顕微鏡法(IF))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DP、さらに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図22B】細胞を、E6(
図22A)またはE7(
図22B)をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的にリポフェクトした。分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2またはCHOを含む)および定量的免疫蛍光顕微鏡法(IF))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DP、さらに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図23】非ストレス負荷(右の値)、3日間(中央の値)および10日間(左の値)ストレス負荷したDPの様々な分析結果の評価および比較(LC-MS対JurkatおよびRNA完全性(CE)対LC-MS)。様々な分析測定の線形適合の勾配をグラフにプロットし、線形回帰によって適合させた。
【
図24】LC-MS(図の右側のバー)およびJurkatアッセイ(図の左側のバー)の結果の評価および比較。用量反応曲線のデータ点を、相対効力GMPソフトウェアPLAを用いて分析した。異なるストレス負荷試料を非ストレス負荷試料(100%効力として設定)と比較し、PLAソフトウェアを使用してそれぞれの効力を計算する。
【
図25】CHO細胞にATMまたはCTM DP(LNP)をトランスフェクトした。DPは、T細胞ストリング融合構築物をコードするRNAを含む。DPを用量依存的に(0.75~9μg、非翻訳細胞(UT)も対照として分析した)細胞に適用した。RNAの取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。2つのT細胞特異的ペプチドをLC-MS/MS(PRM)によって分析し、正規化した発現値をプロットした。
【
図26A】CHO細胞にuRNAまたはmodRNAを含むDP ATM(LNP)をトランスフェクトした。各DPは、8つのTB抗原から構成される4つの融合タンパク質(Ag85A+Hrp1;ESAT6+RpfD;M72+VapB47;RpfA+HbhA)をコードする4つのRNAを含む。DPを用量依存的に(150~2400ng)細胞に適用した。取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。TB抗原特異的ペプチドをPRMによって分析した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図26B】CHO細胞にuRNAまたはmodRNAを含むDP ATM(LNP)をトランスフェクトした。各DPは、8つのTB抗原から構成される4つの融合タンパク質(Ag85A+Hrp1;ESAT6+RpfD;M72+VapB47;RpfA+HbhA)をコードする4つのRNAを含む。DPを用量依存的に(150~2400ng)細胞に適用した。取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。TB抗原特異的ペプチドをPRMによって分析した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図27】CHO細胞に、レポータルシフェラーゼをコードするRNAを含有するLNP対照をトランスフェクトし、ルシフェラーゼは分泌型であった。DPを1用量で三連で細胞に適用した。取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。ルシフェラーゼ特異的ペプチドをPRMによって分析した。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図28】DNAがeGFPをコードする、DNA-リポフェクタミン2000(リポフェクタミン2000(Fisher Scientific GmbH、11668030)、ロット:2418953)による24時間のリポフェクション後のCHO細胞の二重蛍光測定。4つの異なるDNA-リポフェクタミン用量(225~1800ng)を細胞に適用した。RNAの取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。細胞のeGFP蛍光シグナル(蛍光強度)は、2つの異なるGFP特異的ペプチド(Top1およびTop2)に由来するeGFP MS/MSペプチドシグナル強度(MSシグナル)と比較して相関していた。
【
図29A】細胞を、5つの異なる腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的に(抗原あたり11の異なる投与量)リポフェクトした。24時間のインキュベーション時間後、細胞を回収し、LC-MS分析に供した。(p2p16ドメインの)ペプチド3をLC-MSアプローチによって定量化し、正規化した発現を適用された投与量に対してプロットしている。
【
図29B】細胞を、5つの異なる腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的に(抗原あたり11の異なる投与量)リポフェクトした。24時間のインキュベーション時間後、細胞を回収し、LC-MS分析に供した。(p2p16ドメインの)ペプチド3をLC-MSアプローチによって定量化し、正規化した発現を適用された投与量に対してプロットしている。
【
図29C】細胞を、5つの異なる腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的に(抗原あたり11の異なる投与量)リポフェクトした。24時間のインキュベーション時間後、細胞を回収し、LC-MS分析に供した。(p2p16ドメインの)ペプチド3をLC-MSアプローチによって定量化し、正規化した発現を適用された投与量に対してプロットしている。
【
図30】細胞を、1つの腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的に(抗原あたり11の異なる投与量)リポフェクトした。24時間のインキュベーション時間後、細胞を回収し、LC-MS分析に供した。(p2p16ドメインの)ペプチド3をLC-MSアプローチによって定量化し、正規化した発現を適用された投与量に対してプロットしている。
【0122】
以下の表は、本明細書で参照される特定の配列のリストを提供する。
【0123】
【発明を実施するための形態】
【0124】
本開示を以下でより詳細にさらに説明するが、この開示は本明細書に記載される特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0125】
以下において、本開示の要素をより詳細に説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせ得ることを理解されたい。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本開示を明示的に記載される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記述される全ての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されていると見なされるべきである。
【0126】
本開示の実施は、特に明記されない限り、当分野の文献で説明されている従来の化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術を使用する。
【0127】
本明細書および以下の特許請求の範囲を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される特徴、要素、メンバー、整数もしくは工程または特徴、要素、メンバー、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の特徴、要素、メンバー、整数もしくは工程または特徴、要素、メンバー、整数もしくは工程の群の除外も意味しないと理解される。「から本質的になる」という用語は、特許請求の範囲または開示の範囲を、指定された特徴、要素、メンバー、整数または工程、ならびに特許請求の範囲または開示の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。「からなる」という用語は、特許請求の範囲または開示の範囲を、指定された特徴、要素、メンバー、整数または工程に限定する。「含む」という用語は、「から本質的になる」という用語を包含し、これは次に「からなる」という用語を包含する。したがって、本出願における各存在ごとに、「含む」という用語は、「から本質的になる」または「からなる」という用語で置き換えられてもよい。同様に、本出願における各存在ごとに、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語で置き換えられてもよい。
【0128】
本開示を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0129】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。
【0130】
本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図しており、特許請求される本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本開示の実施に不可欠な特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0131】
本明細書で使用される「任意の」または「任意に」という用語は、続いて記述される事象、状況または状態が発生してもよくまたは発生しなくてもよいこと、およびその記述が、前記事象、状況または状態が発生する場合と発生しない場合とを含むことを意味する。
【0132】
本明細書で使用される場合、「および/または」は、他のものを含むまたは含まない、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「Xおよび/またはY」は、(i)X、(ii)Y、ならびに(iii)XおよびYの各々の具体的な開示として、あたかも各々が本明細書に個別に記載されているかのごとくに解釈されるべきである。
【0133】
本開示の文脈において、「約」という用語は、当業者が問題の特徴の技術的効果を依然として保証すると理解する精度の区間を示す。この用語は、典型的には、示された数値からの±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%、例えば±0.01%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±10%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±5%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±4%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±3%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±2%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±1%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.9%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.8%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.7%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.6%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.5%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.4%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.3%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.2%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.1%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.05%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.01%の偏差を示す。当業者には理解されるように、所与の技術的効果の数値に対するそのような具体的な偏差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、天然または生物学的な技術的効果は、一般に、人工的または工学的な技術的効果のものよりも大きいそのような偏差を有し得る。
【0134】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個別に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。
【0135】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書などを含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認として解釈されるべきではない。
【0136】
定義
以下において、本開示の全ての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有する。未定義の用語は、それらの技術分野で広く認められている意味を有する。
【0137】
核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の「治療可能性」または「効力」は、核酸の治療品質、核酸が対象に投与された場合に治療的利益を提供する能力を指す。特定の実施形態では、核酸の治療可能性は、核酸の治療可能性を示す、核酸によってコードされるペプチドまたはポリペプチドの発現、特に強い発現、例えば閾値を超える発現によって測定、決定、同定、定量化、確認および/または検証することができる。一実施形態では、治療可能性は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)がインビボで薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドを発現する能力を指し、前記薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドは、その薬学的効果、例えば治療的効果を発揮する。
【0138】
いくつかの実施形態では、強い発現、例えば閾値を超える発現を示す核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、「十分な治療可能性」を有する。核酸の治療可能性は、核酸が、意味のある薬学的効果、例えば治療効果が達成されるように、コードされた薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをインビボで発現する能力を有する場合に十分である。
【0139】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)に関して「量を決定する」または「発現を決定する」などの語句または同様の語句は、アミノ酸配列の量または存在を決定することを指す。
【0140】
本明細書で使用される「低減する」または「阻害する」などの用語は、例えば、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、または約75%以上のレベルの全体的な減少を生じさせる能力を意味する。「阻害する」という用語または同様の語句は、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減を含む。
【0141】
本明細書で使用される「増強する」という用語は、例えば、少なくとも約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約75%以上、または約100%以上のレベルの全体的な増加または増強を生じさせる能力を意味する。
【0142】
本明細書で使用される「生理学的pH」は、約7.4のpHを指す。いくつかの実施形態では、生理学的pHは、7.3~7.5である。いくつかの実施形態では、生理学的pHは、7.35~7.45である。いくつかの実施形態では、生理学的pHは、7.3、7.35、7.4、7.45または7.5である。
【0143】
本開示で使用される場合、「%w/v」は、ミリリットル(mL)単位での溶液の総体積のパーセントとして表されるグラム(g)単位での溶質の量を測定する濃度の単位である、重量体積パーセントを指す。
【0144】
本開示で使用される場合、「重量%」は、グラム(g)での全組成物の総重量のパーセントとして表されるグラム(g)での物質の量を測定する濃度の単位である、重量パーセントを指す。
【0145】
本開示で使用される場合、「モル%」は、全ての成分の総モル数に対する1つの成分のモル数の比率に100を乗じたものとして定義される。
【0146】
本開示で使用される場合、「モル%」は、全ての脂質の総モル数に対する1つの脂質成分のモル数の比率に100を乗じたものとして定義される。これに関連して、いくつかの実施形態では、「総脂質」という用語は、脂質および脂質様物質を含む。
【0147】
「イオン強度」という用語は、特定の溶液中の異なる種類のイオン種の数とそれらのそれぞれの電荷との間の数学的関係を指す。したがって、イオン強度Iは、式:
【0148】
【0149】
によって数学的に表され、式中、cは特定のイオン種のモル濃度であり、zはその電荷の絶対値である。総和Σは、溶液中の全ての異なる種類のイオン(i)に適用される。
【0150】
本開示によれば、いくつかの実施形態における「イオン強度」という用語は、一価イオンの存在に関する。二価イオン、特に二価カチオンの存在に関して、キレート剤の存在により、それらの濃度または有効濃度(遊離イオンの存在)は、いくつかの実施形態では、核酸の分解を防止するのに十分に低い。いくつかの実施形態では、二価イオンの濃度または有効濃度は、RNAヌクレオチドなどのヌクレオチド間のホスホジエステル結合の加水分解のための触媒レベルよりも低い。いくつかの実施形態では、遊離二価イオンの濃度は20μM以下である。いくつかの実施形態では、遊離二価イオンは存在しないか、または本質的に存在しない。
【0151】
「重量オスモル濃度」は、溶媒のキログラムあたりの溶質のオスモル数として表される特定の溶質の濃度を指す。
【0152】
「凍結乾燥する」または「凍結乾燥」という用語は、物質を凍結し、次いで周囲の圧力を低下させて(例えば、15Pa未満、例えば10Pa未満、5Pa未満、または1Pa以下)、物質中の凍結媒体を固相から気相に直接昇華させることによる物質の凍結乾燥を指す。したがって、「凍結乾燥する」および「フリーズドライする」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0153】
「噴霧乾燥」という用語は、容器(噴霧乾燥機)内で(加熱された)気体を霧化(噴霧)される流体と混合することによって物質を噴霧乾燥することを指し、形成された液滴からの溶媒が蒸発し、乾燥粉末をもたらす。
【0154】
「再構成する」という用語は、乾燥した生成物をその元の液体状態などの液体状態に戻すために、水などの溶媒を乾燥した生成物に添加することに関する。
【0155】
本開示の文脈における「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。一実施形態では、本開示の文脈における「組換え物」は、天然には存在しない。
【0156】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人間によって意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。「自然界で見出される」という用語は、「自然界に存在する」ことを意味し、公知の物体ならびに自然からまだ発見および/または単離されていないが、天然源から将来発見および/または単離される可能性がある物体を含む。
【0157】
本明細書で使用される場合、「室温」および「周囲温度」という用語は、本明細書では互換的に使用され、少なくとも約15℃、例えば約15℃~約35℃、約15℃~約30℃、約15℃~約25℃、または約17℃~約22℃の温度を指す。そのような温度には、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃および22℃が含まれる。いくつかの実施形態では、温度は、15℃~約25℃である。いくつかの実施形態では、温度は、17℃~約25℃である。いくつかの実施形態では、温度は約15℃である。いくつかの実施形態では、温度は約16℃である。いくつかの実施形態では、温度は約17℃である。いくつかの実施形態では、温度は約18℃である。いくつかの実施形態では、温度は約19℃である。いくつかの実施形態では、温度は約20℃である。いくつかの実施形態では、温度は約21℃である。いくつかの実施形態では、温度は約22℃である。
【0158】
「EDTA」という用語は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を指す。全ての濃度はEDTA二ナトリウム塩に関して与えられる。
【0159】
「凍結保護剤」という用語は、凍結段階中に活性成分を保護するために製剤に添加される物質に関する。
【0160】
「凍結乾燥保護剤」という用語は、乾燥段階中に活性成分を保護するために製剤に添加される物質に関する。
【0161】
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに連結された約2個以上、約3個以上、約4個以上、約6個以上、約8個以上、約10個以上、約13個以上、約16個以上、約20個以上、および最大約50個、約100個または約150個までの連続するアミノ酸を含む物質を指す。「ポリペプチド」という用語は、大きなペプチド、特に少なくとも約151個のアミノ酸を有するペプチドを指す。「ペプチド」および「ポリペプチド」は、両方ともタンパク質分子である。
【0162】
「生物学的活性」という用語は、分子に対する生物系の応答を意味する。そのような生物系は、例えば、細胞または生物であり得る。いくつかの実施形態では、そのような応答は治療的または薬学的に有用である。いくつかの実施形態では、生物学的活性は、薬学的活性を含む。
【0163】
本明細書で使用される「生物系」という用語は、その挙動が1つ以上の生物学的プロセスまたは機構によって全体的または部分的に特徴付けられ得る、相互作用するまたは潜在的に相互作用する生物学的構成要素の任意の系を指す。生物系は、例えば、個々の細胞、細胞培養物などの細胞の集合体、器官、組織、および個体または対象、例えばヒト患者などの多細胞生物を含むことができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、生物系は、個体もしくは対象に存在するか、または個体もしくは対象であり、そのような生物系における生物学的活性は、治療的または薬学的に有用な活性であり、すなわち、生物学的活性は、治療的または薬学的に有用な効果をもたらすか、またはそれに寄与する。
【0165】
本開示の様々な実施形態によれば、ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、インビトロでまたは対象において存在し得る細胞に取り込まれるか、または導入される、すなわちトランスフェクトまたは形質導入され、前記ペプチドまたはポリペプチドの発現をもたらす。細胞は、例えば、コードされたペプチドもしくはポリペプチドを細胞内で(例えば細胞質および/もしくは核内で)発現し得る、コードされたペプチドもしくはポリペプチドを分泌し得る、および/またはそれを表面上で発現し得る。
【0166】
本開示によれば、「発現する核酸」および「コードする核酸」などの用語または同様の用語は、本明細書では互換的に使用され、特定のペプチドまたはポリペプチドに関して、核酸が、適切な環境、例えば細胞内に存在する場合、発現されて前記ペプチドまたはポリペプチドを産生することができることを意味する。
【0167】
「部分」という用語は画分を指す。アミノ酸配列またはタンパク質などの特定の構造に関して、その「部分」という用語は、前記構造の連続または不連続な画分を指し得る。
【0168】
「部分」および「断片」という用語は、本明細書では互換的に使用され、連続する要素を指す。例えば、アミノ酸配列またはタンパク質などの構造の一部は、前記構造の連続する要素を指す。組成物に関連して使用される場合、「部分」という用語は、組成物の一部を意味する。例えば、組成物の一部は、前記組成物の0.1%~99.9%(例えば0.1%、0.5%、1%、5%、10%、50%、90%、または99%)の任意の部分であり得る。
【0169】
アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)に関して、「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えば、オープンリーディングフレームの3’末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、例えば、トランケートされたオープンリーディングフレームが翻訳を開始させるように働く開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5’末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列からの少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列の最大8個、特に最大10個、最大12個、最大15個、最大20個、最大30個または最大55個の連続するアミノ酸の配列を含む。
【0170】
アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)に関して本明細書で使用される「変異体」は、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、異なるアミノ酸、または同じアミノ酸の改変)によって親アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然もしくは野生型(WT)アミノ酸配列であり得るか、または野生型アミノ酸配列の改変形態であり得る。いくつかの実施形態では、変異体アミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸差異、例えば、親と比較して1~約20個のアミノ酸差異、例えば1~約10個または1~約5個のアミノ酸差異を有する。
【0171】
本明細書における「野生型」または「WT」または「天然」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界で見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはポリペプチドは、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
【0172】
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。「変異体」という用語は、全ての突然変異体、スプライス変異体、翻訳後修飾変異体、立体配座変異体、アイソフォーム変異体、対立遺伝子変異体、種変異体、および種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。「変異体」という用語は、特にアミノ酸配列の断片を含む。
【0173】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、得られた産物の適切なスクリーニングを伴うランダムな挿入も可能である。アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、タンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なペプチドもしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列内の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の特性を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。いくつかの実施形態では、ペプチドおよびポリペプチド変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖が関連するアミノ酸のファミリーのうちの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に4つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群内の置換を含む:
-グリシン、アラニン;
-バリン、イソロイシン、ロイシン;
-アスパラギン酸、グルタミン酸;
-アスパラギン、グルタミン;
-セリン、トレオニン;
-リジン、アルギニン;および
-フェニルアラニン、チロシン。
【0174】
いくつかの実施形態では、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の同一性などの類似性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、例えば、少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸、いくつかの実施形態では連続するアミノ酸について与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列同一性などの配列類似性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、例えば最良の配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を使用して行うことができる。
【0175】
「配列類似性」は、同一であるか、または保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0176】
「%同一」および「同一性%」という用語または同様の用語は、特に、比較される配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図されている。前記パーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の差は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしもそうではない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメント後に、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手操作によって、またはSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444の類似性検索アルゴリズムを用いて、もしくは前記アルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)を援用して実施し得る。いくつかの実施形態では、2つの配列の同一性パーセントは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(United States National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のウェブサイト(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=blast2seq&LINK_LOC=align2seq)で入手可能なBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTNアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)28に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)1、-2に設定された一致/不一致スコア;(v)線形に設定されたギャップコスト;および(vi)使用されている低複雑度領域のフィルタ。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTPアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)3に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)BLOSUM62に設定されたマトリックス;(v)存在:11、拡張:1に設定されたギャップコスト;および(vi)条件付き組成スコアマトリックス調整。
【0177】
同一性パーセントは、比較される配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較される位置の数(例えば、参照配列中の位置の数)で除し、この結果に100を乗じることによって得られる。
【0178】
いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のヌクレオチド、いくつかの実施形態では連続するヌクレオチドについて与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0179】
相同なアミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98または少なくとも99%の同一性を示す。
【0180】
本明細書に記載のアミノ酸配列変異体は、例えば組換えDNA操作により、当業者によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはポリペプチドを調製するためのDNA配列の操作は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition,M.R.Green and J.Sambrook eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 2012に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチド、ポリペプチドおよびアミノ酸変異体は、公知のペプチド合成技術を用いて、例えば固相合成および同様の方法によって容易に調製され得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)の断片または変異体は、「機能的断片」または「機能的変異体」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一または類似の1つ以上の機能特性を示す、すなわち機能的に等価である任意の断片または変異体に関する。抗原または抗原配列に関して、1つの特定の機能は、断片または変異体が由来するアミノ酸配列によって示される1つ以上の免疫原性活性である。本明細書で使用される「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、特に、親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸によって変化しており、それでも親分子または配列の機能の1つ以上を果たす、例えば免疫応答を誘導することができるアミノ酸配列を含む変異体分子または配列を指す。いくつかの実施形態では、親分子または配列のアミノ酸配列の改変は、分子または配列の特徴に有意に影響を及ぼさないかまたは変化させない。異なる実施形態では、機能的断片または機能的変異体の機能は、低減され得るが、依然として有意に存在し得、例えば、機能的断片または機能的変異体の機能は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の実施形態では、機能的断片または機能的変異体の機能は、親分子または配列と比較して増強され得る。
【0182】
指定されたアミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチドまたはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。いくつかの実施形態では、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片と同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列の変異体またはその断片であり得る。例えば、本明細書での使用に適した抗原は、天然配列の望ましい活性を保持しながら、それらが由来する天然に存在する配列または天然配列とは配列が異なるように改変され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0183】
いくつかの実施形態では、「単離された」は、天然の状態から、または製造プロセスからの組成物などの人工組成物から取り出された(例えば精製された)ことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸、ペプチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸、ペプチドまたはポリペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸、ペプチドまたはポリペプチドは、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0184】
「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本開示の目的のために、「トランスフェクション」という用語はまた、細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みを含み、細胞は、対象、例えば患者に存在し得るか、または細胞はインビトロ、例えば患者の外部に存在し得る。したがって、本開示によれば、本明細書に記載の核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロまたはインビボで存在することができ、例えば、細胞は患者の器官、組織および/または身体の一部を形成することができる。本開示によれば、トランスフェクションは一過性または安定であり得る。トランスフェクションのいくつかの用途では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。トランスフェクションの過程で導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないので、外来核酸は有糸分裂によって希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることが望ましい場合は、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。そのような安定なトランスフェクションは、例えば、トランスフェクションのためにウイルスベースの系またはトランスポゾンベースの系を使用することによって達成することができる。一般に、抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
【0185】
本明細書に記載の方法におけるトランスフェクションに有用な細胞には、動物細胞株由来の細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、K562、HepG2、HEK293T、RAW、およびC2C12細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞は、CHO、K562、HEK293T、RAW、およびC2C12細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0186】
本開示は、ペプチドまたはポリペプチドの類似体を含む。本開示によれば、ペプチドまたはポリペプチドの類似体は、それが由来する前記ペプチドまたはポリペプチドの修飾形態であり、前記ペプチドまたはポリペプチドの少なくとも1つの機能的特性を有する。例えば、ペプチドまたはポリペプチドの薬理学的に活性な類似体は、その類似体が由来するペプチドまたはポリペプチドの薬理学的活性の少なくとも1つを有する。そのような修飾には、任意の化学修飾が含まれ、炭水化物、脂質および/またはペプチドもしくはポリペプチドなどのペプチドまたはポリペプチドに関連する任意の分子の単一または複数の置換、欠失および/または付加が含まれる。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドの「類似体」には、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護基/ブロッキング基の導入、タンパク質分解切断、または抗体もしくは別の細胞リガンドへの結合から生じる修飾形態が含まれる。「類似体」という用語はまた、前記ペプチドおよびポリペプチドの全ての機能的な化学的等価物に及ぶ。
【0187】
本明細書で使用される場合、「連結された」、「融合された」、または「融合」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインの結合を指す。
【0188】
本明細書で使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織もしくは系からの、またはそれらの内部で産生される任意の物質を指す。
【0189】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織もしくは系から導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の物質を指す。
【0190】
本明細書で使用される「発現」という用語は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0191】
本開示の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNA(特にmRNA)に転写されるプロセスに関する。その後、RNAはペプチドまたはポリペプチドに翻訳され得る。
【0192】
RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、mRNAの鎖が、ペプチドまたはポリペプチドを作製するようにアミノ酸の配列のアセンブリを指示する、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。
【0193】
本明細書に記載される特定の化合物のプロドラッグは、個体への投与時に生理学的条件下で化学変換を受けて特定の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境で化学的または生化学的方法によって特定の化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、例えば、適切な酵素または化学試薬と共に経皮パッチリザーバに入れた場合、特定の化合物にゆっくり変換され得る。例示的なプロドラッグは、インビボで加水分解可能なエステル(特定の化合物に含まれるアルコールもしくはカルボキシ基を使用する)またはアミド(特定の化合物に含まれるアミノもしくはカルボキシ基を使用する)である。具体的には、特定の化合物に含まれ、少なくとも1つの水素原子を担持する任意のアミノ基をプロドラッグ形態に変換することができる。典型的なN-プロドラッグ形態には、カルバメート、マンニッヒ塩基、エナミン、およびエナミノンが含まれる。
【0194】
本明細書では、化合物の構造式は、前記化合物のある特定の異性体を表し得る。しかしながら、本発明は、構造的に生じる幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体などの全ての異性体および異性体混合物を含み、式の記述に限定されないことを理解されたい。
【0195】
「異性体」は、同じ分子式を有するが、構造が異なる化合物(「構造異性体」)、または官能基および/もしくは原子の幾何学的(空間的)配置が異なる化合物(「立体異性体」)である。「鏡像異性体」は、重ね合わせることができない互いの鏡像である一対の立体異性体である。「ラセミ混合物」または「ラセミ化合物」は、一対の等量の鏡像異性体を含み、接頭辞(±)によって示される。「ジアステレオマ」は、重ね合わせることができず、互いの鏡像ではない立体異性体である。「互変異性体」は、純粋であっても、個々の原子または原子群の移動のために、自発的かつ可逆的に相互変換する同じ化学物質の構造異性体である;すなわち、互変異性体は互いに動的化学平衡状態にある。互変異性体の一例は、ケト-エノール互変異性の異性体である。「コンフォーマ」は、形式上単結合の周りの回転だけで相互変換することができる立体異性体であり、特に、シクロヘキサンのいす形、半いす形、舟形、およびねじれ舟形などの異なる三次元形態の(複素)環式環をもたらすものを含む。
【0196】
「平均直径」という用語は、いわゆるキュムラントアルゴリズムを使用したデータ分析を伴う動的光散乱(DLS)によって測定される粒子の平均流体力学的直径を指し、これは、結果として、長さの次元を有するいわゆるZ平均、および無次元である多分散指数(PDI)を提供する(Koppel,D.,J.Chem.Phys.57,1972,pp 4814-4820,ISO 13321)。ここで、粒子の「平均直径」、「直径」または「サイズ」は、このZ平均の値と同義で使用される。
【0197】
いくつかの実施形態では、「多分散指数」は、「平均直径」の定義で言及されているように、いわゆるキュムラント解析による動的光散乱測定に基づいて計算され得る。特定の前提条件下では、これは、ナノ粒子の集合体のサイズ分布の尺度と見なすことができる。
【0198】
回転軸を中心とした粒子の「回転半径」(本明細書ではRgと略す)は、粒子の質量全体が集中していると仮定した場合に、所与の軸を中心としたその慣性モーメントがその実際の質量分布と同じになる点の回転軸からの半径方向距離である。数学的には、Rgは、その質量中心または所与の軸のいずれかからの粒子の成分の二乗平均平方根距離である。例えば、質量中心から固定距離siに位置する質量mi(i=1、2、3、...、n)のn個の質量要素から構成される高分子の場合、Rgは全ての質量要素にわたるsi
2の質量平均の平方根であり、以下のように計算することができる:
【0199】
【0200】
回転半径は、例えば光散乱を使用することによって実験的に決定するまたは計算することができる。特に、小さな散乱ベクトル
【0201】
【0202】
の場合、構造関数Sは以下のように定義され:
【0203】
【0204】
式中、Nは成分の数である(ギニエの法則)。
【0205】
粒子の「流体力学的半径」(「ストークス半径」または「ストークス-アインシュタイン半径」と呼ばれることもある)は、前記粒子と同じ速度で拡散する仮想の剛体球の半径である。流体力学的半径は、サイズだけでなく溶媒効果も考慮して、粒子の移動度に関連する。例えば、水和がより強いより小さい荷電粒子は、水和がより弱いより大きい荷電粒子よりも大きい流体力学的半径を有し得る。これは、より小さい粒子が溶液を通って移動するにつれて、より多くの水分子を引きずるためである。溶媒中の粒子の実際の寸法は直接測定できないので、流体力学的半径はストークス-アインシュタイン方程式:
【0206】
【0207】
によって定義され得、式中、kBはボルツマン定数であり、Tは温度であり、ηは溶媒の粘度であり、Dは拡散係数である。拡散係数は、例えば、動的光散乱(DLS)を使用することによって実験的に決定することができる。したがって、粒子または粒子集団の流体力学的半径(例えば、本明細書に開示される試料もしくは対照組成物に含まれる粒子の流体力学的半径、またはそのような試料もしくは対照組成物をフィールドフローフラクショネーションに供することから得られる粒子ピークの流体力学的半径)を決定するための1つの手順は、前記粒子または粒子集団のDLSシグナル(例えば、本明細書に開示される試料もしくは対照組成物に含まれる粒子のDLSシグナル、またはそのような試料もしくは対照組成物をフィールドフローフラクショネーションに供することから得られる粒子ピークのDLSシグナル)を測定することである。
【0208】
本明細書で使用される「光散乱」という表現は、光が通過する媒体内の局所的な不均一性のために、光が1つ以上の経路だけ直線軌道から逸脱することを余儀なくされる物理的プロセスを指す。
【0209】
「UV」という用語は紫外線を意味し、10nm~400nmの波長、すなわち可視光の波長よりも短いがX線よりも長い波長を有する電磁スペクトルの帯域を示す。
【0210】
本明細書で使用される「多角度光散乱」または「MALS」という表現は、試料によって複数の角度に散乱された光を測定するための技術に関する。「多角度」とは、これに関して、散乱光が、例えば、選択された特定の角度を含む範囲にわたって移動する単一の検出器、または特定の角度位置に固定された検出器のアレイによって測定されるように、異なる離散角度で検出され得ることを意味する。特定の実施形態では、MALSで使用される光源は、レーザー源(MALLS:多角度レーザー光散乱)である。粒子を含む組成物のMALSシグナルに基づき、適切な形式(例えば、Zimmプロット、Berryプロット、またはDebyeプロット)を使用することによって、回転半径(Rg)、したがって前記粒子のサイズを決定することが可能である。好ましくは、Zimmプロットは、以下の式:
【0211】
【0212】
を使用したグラフ表示であり、式中、cは溶媒中の粒子の質量濃度(g/mL)であり、A2は第2のビリアル係数(mol・mL/g2)であり、P(θ)は散乱光強度の角度依存性に関するフォームファクタであり、Rθは過剰レイリー比(cm-1)であり、K*は4π2ηo(dn/dc)2λ0
-4NA
-1に等しい光学定数であり、ここで、ηoは入射放射(真空)波長での溶媒の屈折率であり、λ0は入射放射(真空)波長(nm)であり、NAはアボガドロ数(mol-1)であり、dn/dcは示差屈折率増分値(mL/g)である(例えば、Buchholz et al.(Electrophoresis 22(2001),4118-4128);B.H.Zimm(J.Chem.Phys.13(1945),141;P.Debye(J.Appl.Phys.15(1944):338;およびW.Burchard(Anal.Chem.75(2003),4279-4291参照)。好ましくは、Berryプロットは、以下の項:
【0213】
【0214】
で計算され、式中、c、RθおよびK*は上で定義した通りである。好ましくは、Debyeプロットは、以下の項:
【0215】
【0216】
で計算され、式中、c、RθおよびK*は上で定義した通りである。
【0217】
本明細書で使用される「動的光散乱」または「DLS」という表現は、特に粒子の流体力学的半径に関して、粒子のサイズおよびサイズ分布プロファイルを決定する技術を指す。単色光源、通常はレーザーが、偏光子を通して試料に入射する。次いで、散乱光は第2の偏光子を通過し、そこで検出され、得られた画像がスクリーンに投影される。溶液中の粒子は光に当たり、光を全方向に回折させる。粒子からの回折光は、建設的に(明るい領域)または破壊的に(暗い領域)干渉することができる。このプロセスは短い時間間隔で繰り返され、得られたスペックルパターンのセットは、各スポットにおける光の強度を経時的に比較する自己相関器によって分析される。
【0218】
本明細書で使用される「静的光散乱」または「SLS」という表現は、特に粒子の回転半径、および/または粒子のモル質量に関して、粒子のサイズおよびサイズ分布プロファイルを決定する技術を指す。高強度単色光、通常はレーザーが、粒子を含有する溶液中で発射される。1つ以上の角度で散乱強度を測定するために、1つ以上の検出器が使用される。角度依存性は、半径の全ての高分子のモル質量とサイズの両方の正確な測定値を得るために必要である。したがって、多角度光散乱(MALS)または多角度レーザー光散乱(MALLS)として公知の、入射光の方向に対するいくつかの角度での同時測定は、一般に、静的光散乱の標準的な実施態様と見なされる。
【0219】
核酸
「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、それらの組合せ、およびそれらの修飾形態を含む。この用語は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子、および化学的に合成された分子を含む。いくつかの実施形態では、核酸はDNAである。いくつかの実施形態では、核酸はRNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAとRNAとの混合物である。いくつかの実施形態では、核酸はDNAである。核酸は、一本鎖または二本鎖および直鎖状または共有結合閉環分子として存在し得る。核酸は単離することができる。「単離された核酸」という用語は、本開示によれば、核酸が、(i)例えばDNAについてはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、もしくはRNAについてはインビトロ転写(例えばRNAポリメラーゼを使用して)によって、インビトロで増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断およびゲル電気泳動による分離によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。
【0220】
「ヌクレオシド」(本明細書では「N」と略す)という用語は、リン酸基を有さないヌクレオチドと考えることができる化合物に関する。ヌクレオシドは糖(例えばリボースまたはデオキシリボース)に結合した核酸塩基であるが、ヌクレオチドはヌクレオシドと1つ以上のリン酸基から構成される。ヌクレオシドの例としては、シチジン、ウリジン、プソイドウリジン、アデノシン、およびグアノシンが挙げられる。
【0221】
通常天然に存在する核酸を構成する5つの標準的なヌクレオシドは、ウリジン、アデノシン、チミジン、シチジンおよびグアノシンである。5つのヌクレオシドは、一般に、それぞれその1文字コードU、A、T、CおよびGと略される。ただし、チミジンは、ウリジンに見出されるリボフラノース環ではなく2’-デオキシリボフラノース部分を含むので、より一般的には「dT」(「d」は「デオキシ」を表す)と表記される。これは、チミジンがリボ核酸(RNA)ではなくデオキシリボ核酸(DNA)に見出されるためである。逆に、ウリジンはDNAではなくRNAに見出される。残りの3つのヌクレオシドは、RNAとDNAの両方に見出され得る。RNAでは、それらはA、CおよびGとして表され、DNAでは、dA、dCおよびdGとして表される。
【0222】
修飾されたプリン(AもしくはG)またはピリミジン(C、T、もしくはU)塩基部分は、好ましくは1つ以上のアルキル基、より好ましくは1つ以上のC1-4アルキル基、さらにより好ましくは1つ以上のメチル基によって修飾されている。修飾されたプリンまたはピリミジン塩基部分の特定の例としては、N7-アルキル-グアニン、N6-アルキル-アデニン、5-アルキル-シトシン、5-アルキル-ウラシル、およびN(1)-アルキル-ウラシル、例えばN7-C1-4アルキル-グアニン、N6-C1-4アルキル-アデニン、5-C1-4アルキル-シトシン、5-C1-4アルキル-ウラシル、およびN(1)-C1-4アルキル-ウラシル、好ましくはN7-メチル-グアニン、N6-メチル-アデニン、5-メチル-シトシン、5-メチル-ウラシル、およびN(1)-メチル-ウラシルが挙げられる。
【0223】
本明細書では、「DNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、DNAは、デオキシリボヌクレオチド残基の全部または大部分を含む。本明細書で使用される場合、「デオキシリボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を欠くヌクレオチドを指す。DNAは、限定されないが、二本鎖DNA、一本鎖DNA、部分的に精製されたDNAなどの単離されたDNA、本質的に純粋なDNA、合成DNA、組換え生産されたDNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するDNAとは異なる修飾DNAを包含する。そのような改変は、内部DNAヌクレオチドまたはDNAの末端(一方もしくは両方)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。本明細書では、DNA中のヌクレオチドは、化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることも企図される。本開示では、これらの改変されたDNAは、天然に存在するDNAの類似体と見なされる。分子中のデオキシリボヌクレオチド残基の含有量が、分子中のヌクレオチド残基の総数に基づいて50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)を超える場合、分子は「デオキシリボヌクレオチド残基の大部分」を含む。分子中のヌクレオチド残基の総数は、全てのヌクレオチド残基(ヌクレオチド残基が標準的(すなわち天然に存在する)ヌクレオチド残基であるかその類似体であるかに関わらず)の合計である。
【0224】
DNAは組換えDNAであり得、核酸、特にcDNAのクローニングによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0225】
「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、RNAは、リボヌクレオチド残基の全部または大部分を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを指す。RNAは、限定されないが、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような改変は、内部RNAヌクレオチドまたはRNAの末端(一方もしくは両方)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。本明細書では、RNA中のヌクレオチドは、化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることも企図される。本開示では、これらの改変/修飾ヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドの類似体と呼ぶことができ、そのような改変/修飾ヌクレオチドを含む対応するRNA(すなわち改変/修飾RNA)は、天然に存在するRNAの類似体と呼ぶことができる。分子中のリボヌクレオチド残基の含有量が、分子中のヌクレオチド残基の総数に基づいて50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)を超える場合、分子は「リボヌクレオチド残基の大部分」を含む。分子中のヌクレオチド残基の総数は、全てのヌクレオチド残基(ヌクレオチド残基が標準的(すなわち天然に存在する)ヌクレオチド残基であるかその類似体であるかに関わらず)の合計である。
【0226】
「RNA」には、mRNA、tRNA、リボソームRNA(rRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、自己増幅RNA(saRNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、dsRNA、阻害性RNA(例えば、アンチセンスssRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)など)、活性化RNA(例えば低分子活性化RNA)および免疫刺激性RNA(isRNA)が含まれる。いくつかの実施形態では、「RNA」はmRNAを指す。
【0227】
本明細書で使用される「インビトロ転写」または「IVT」という用語は、転写(すなわちRNAの生成)が無細胞的に行われることを意味する。すなわち、IVTは、生存/培養細胞を使用するのではなく、細胞から抽出された転写機構(例えば、細胞溶解物またはRNAポリメラーゼ(好ましくはT7、T3もしくはSP6ポリメラーゼ)を含むその単離された成分)を使用する。
【0228】
mRNA
本開示によれば、「mRNA」という用語は「メッセンジャーRNA」を意味し、DNA鋳型を使用することによって生成され得、ペプチドまたはポリペプチドをコードし得る「転写物」に関する。典型的には、mRNAは、5’UTR、ペプチド/ポリペプチドコード領域、および3’UTRを含む。本開示の文脈において、mRNAは、DNA鋳型からのインビトロ転写(IVT)によって生成され得る。上記のように、インビトロ転写の方法は当業者に公知であり、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
【0229】
mRNAは一本鎖であるが、mRNAの一部が折りたたまれ、それ自体と対合して二重らせんを形成することを可能にする自己相補的配列を含み得る。
【0230】
本開示によれば、「dsRNA」は二本鎖RNAを意味し、2つの部分的または完全に相補的な鎖を有するRNAである。
【0231】
本開示の好ましい実施形態では、mRNAは、ペプチドまたはポリペプチドをコードするRNA転写物に関する。
【0232】
いくつかの実施形態では、好ましくはペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAは、少なくとも45ヌクレオチド(例えば、少なくとも60、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1,000、少なくとも1,500、少なくとも2,000、少なくとも2,500、少なくとも3,000、少なくとも3,500、少なくとも4,000、少なくとも4,500、少なくとも5,000、少なくとも6,000、少なくとも7,000、少なくとも8,000、少なくとも9,000ヌクレオチド)、好ましくは最大15,000、例えば最大14,000、最大13,000、最大12,000ヌクレオチド、最大11,000ヌクレオチドまたは最大10,000ヌクレオチドの長さを有する。
【0233】
当技術分野で確立されているように、mRNAは一般に、5’非翻訳領域(5’-UTR)、ペプチド/ポリペプチドコード領域および3’非翻訳領域(3’-UTR)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、インビトロ転写または化学合成によって生成される。いくつかの実施形態では、mRNAは、DNA鋳型を使用したインビトロ転写によって生成される。インビトロ転写の方法は当業者に公知である;例えば、Molecular Cloning:4th Edition,M.R.Green and J.Sambrook eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 2012参照。さらに、様々なインビトロ転写キットが、例えば、Thermo Fisher Scientific(TranscriptAid(商標)T7キット、MEGAscript(登録商標)T7キット、MAXIscript(登録商標)など)、New England BioLabs Inc.(HiScribe(商標)T7キット、HiScribe(商標)T7 ARCA mRNAキットなど)、Promega(RiboMAX(商標)、HeLaScribe(登録商標)、Riboprobe(登録商標)システムなど)、Jena Bioscience(SP6またはT7転写キットなど)、およびEpicentre(AmpliScribe(商標)など)から市販されている。修飾されたmRNAを提供するために、対応して修飾されたヌクレオチド、例えば修飾された天然に存在するヌクレオチド、非天然に存在するヌクレオチドおよび/または修飾された非天然に存在するヌクレオチドを合成(好ましくはインビトロ転写)中に組み込むことができ、または転写後にmRNA中で修飾を行うおよび/またはmRNAに修飾を付加することができる。
【0234】
いくつかの実施形態では、mRNAはインビトロ転写mRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、インビトロ転写は、T7またはSP6プロモータによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0235】
本開示のいくつかの実施形態では、mRNAは、「レプリコンmRNA」または単に「レプリコン」、特に「自己複製mRNA」または「自己増幅mRNA」である。特定の実施形態では、レプリコンまたは自己複製mRNAは、ssRNAウイルス、特にアルファウイルスなどのプラス鎖ssRNAウイルスに由来するか、またはそれに由来する要素を含む。アルファウイルスは、プラス鎖RNAウイルスの典型的な代表例である。アルファウイルスは、感染細胞の細胞質で複製する(アルファウイルスの生活環の総説については、Jose et al.,Future Microbiol.,2009,vol.4,pp.837-856参照)。多くのアルファウイルスの総ゲノム長は、典型的には11,000~12,000ヌクレオチドの範囲であり、ゲノムRNAは、典型的には5’キャップおよび3’ポリ(A)尾部を有する。アルファウイルスのゲノムは、非構造タンパク質(ウイルスRNAの転写、修飾および複製ならびにタンパク質修飾に関与する)および構造タンパク質(ウイルス粒子を形成する)をコードする。典型的には、ゲノム内に2つのオープンリーディングフレーム(ORF)が存在する。4つの非構造タンパク質(nsP1~nsP4)は、典型的にはゲノムの5’末端付近から始まる第1のORFによって一緒にコードされ、一方アルファウイルスの構造タンパク質は、第1のORFの下流に見出され、ゲノムの3’末端付近に延びる第2のORFによって一緒にコードされる。典型的には、第1のORFは第2のORFよりも大きく、その比率はおよそ2:1である。アルファウイルスに感染した細胞では、非構造タンパク質をコードする核酸配列のみがゲノムRNAから翻訳され、一方構造タンパク質をコードする遺伝情報は、真核生物のメッセンジャーRNA(mRNA;Gould et al.,2010,Antiviral Res.,vol.87,pp.111-124)に類似したRNA分子であるサブゲノム転写物から翻訳可能である。感染後、すなわちウイルス生活環の初期段階に、(+)鎖ゲノムRNAは、非構造ポリタンパク質(nsP1234)をコードするオープンリーディングフレームの翻訳のためにメッセンジャーRNAのように直接作用する。アルファウイルス由来のベクターは、外来遺伝情報を標的細胞または標的生物に送達するために提案されている。単純なアプローチでは、アルファウイルス構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームに置き換える。アルファウイルスに基づくトランス複製系は、2つの別個の核酸分子上のアルファウイルスヌクレオチド配列要素に依存する:一方の核酸分子はウイルスレプリカーゼをコードし、他方の核酸分子はトランスで前記レプリカーゼによって複製され得る(したがってトランス複製系という名称)。トランス複製は、所与の宿主細胞内にこれらの両方の核酸分子が存在することを必要とする。トランスでレプリカーゼによって複製され得る核酸分子は、アルファウイルスレプリカーゼによる認識およびRNA合成を可能にする特定のアルファウイルス配列要素を含まなければならない。
【0236】
本開示のいくつかの実施形態では、mRNAは、例えば、その安定性を高め、および/または翻訳効率を高め、および/または免疫原性を低下させ、および/または細胞傷害性を低下させるために、1つ以上の修飾を含む。例えば、mRNAの発現を増加させるために、mRNAを、好ましくは発現されるペプチドまたはポリペプチドの配列を変化させることなく、コード領域、すなわち発現されるペプチドまたはポリペプチドをコードする配列内で修飾し得る。そのような修飾は、例えば、国際公開第2007/036366号およびPCT/EP2019/056502号に記載されており、以下を含む:5’キャップ構造;天然に存在するポリ(A)尾部の伸長もしくは切断;5’および/もしくは3’非翻訳領域(UTR)の改変、例えば前記RNAのコード領域に関連しないUTRの導入;1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの合成ヌクレオチドによる置換;ならびにコドン最適化(例えば、RNAのGC含有量を変化させるため、好ましくは増加させるため)。
【0237】
いくつかの実施形態では、mRNAは、5’キャップ構造を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、キャップされていない5’-三リン酸を有さない。いくつかの実施形態では、mRNAは、従来の5’キャップおよび/または5’キャップ類似体を含み得る。「従来の5’キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端に見出されるキャップ構造を指し、一般に、その三リン酸部分を介してmRNAの次のヌクレオチドの5’末端に連結されているグアノシン5’-三リン酸(Gppp)からなる(すなわち、グアノシンは5’-5’三リン酸結合を介してmRNAの残りの部分に連結されている)。グアノシンは、N7位でメチル化され得る(キャップ構造m7Gpppをもたらす)。「5’キャップ類似体」という用語は、従来の5’キャップに基づくが、5’キャップ類似体の逆向きの組み込みを回避するためにm7グアノシン構造の2’位または3’位のいずれかで修飾されている5’キャップを含む(そのような5’キャップ類似体はアンチリバースキャップ類似体(ARCA)とも呼ばれる)。特に好ましい5’キャップ類似体は、PCT/EP第2019/056502号に記載されているように、リン酸架橋中の架橋酸素および非架橋酸素に1つ以上の置換を有するもの、例えばβ-リン酸におけるホスホロチオエート修飾5’キャップ類似体(例えば、m2
7,2’OG(5’)ppSp(5’)G(β-S-ARCAまたはβ-S-ARCAと呼ばれる))である。例えば、本明細書に記載の5’キャップ構造を有するmRNAを提供することは、対応する5’キャップ化合物の存在下でのDNA鋳型のインビトロ転写によって達成され得、前記5’キャップ構造は、生成されたmRNA鎖に共転写的に組み込まれるか、またはmRNAは、例えばインビトロ転写によって生成され得、5’キャップ構造は、キャッピング酵素、例えばワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後にmRNAに結合され得る。
【0238】
いくつかの実施形態では、mRNAは、m2
7,2’OG(5’)ppSp(5’)G(特にそのD1ジアステレオマ)、m2
7,3’OG(5’)ppp(5’)G、およびm2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGからなる群より選択される5’キャップ構造を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、mRNAは、キャップ0、キャップ1、またはキャップ2、好ましくはキャップ1またはキャップ2を含む。本開示によれば、「キャップ0」という用語は、構造「m7GpppN」を意味し、Nは、2’位にOH部分を担持する任意のヌクレオシドである。本開示によれば、「キャップ1」という用語は、構造「m7GpppNm」を意味し、Nmは、2’位にOCH3部分を担持する任意のヌクレオシドである。本開示によれば、「キャップ2」という用語は、構造「m7GpppNmNm」を意味し、各Nmは、独立して、2’位にOCH3部分を担持する任意のヌクレオシドである。
【0240】
ベータ-S-ARCA(β-S-ARCA)のD1ジアステレオマは、以下の構造:
【0241】
【0242】
を有する。
【0243】
「ベータ-S-ARCAのD1ジアステレオマ」または「ベータ-S-ARCA(D1)」は、ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマ(ベータ-S-ARCA(D2))と比較して、HPLCカラムで最初に溶出し、したがってより短い保持時間を示すベータ-S-ARCAのジアステレオマである。HPLCは、好ましくは分析HPLCである。いくつかの実施形態では、好ましくは5μm、4.6×250mmの形式のSupelcosil LC-18-T RPカラムを分離に使用し、それにより1.3ml/分の流量を適用することができる。いくつかの実施形態では、酢酸アンモニウム中のメタノールの勾配、例えば15分以内で0.05M酢酸アンモニウム、pH=5.9中のメタノールの0~25%直線勾配を使用する。UV検出(VWD)は260nmで実施することができ、蛍光検出(FLD)は280nmでの励起および337nmでの検出で実施することができる。
【0244】
キャップ1のビルディングブロックである5’キャップ類似体m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApG(m2
7,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGとも呼ばれる)は、以下の構造:
【0245】
【0246】
を有する。
【0247】
β-S-ARCAおよびmRNAを含む例示的なキャップ0mRNAは、以下の構造:
【0248】
【0249】
を有する。
【0250】
m2
7,3’OG(5’)ppp(5’)GおよびmRNAを含む例示的なキャップ0mRNAは、以下の構造:
【0251】
【0252】
を有する。
【0253】
m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGおよびmRNAを含む例示的なキャップ1mRNAは、以下の構造:
【0254】
【0255】
を有する。
【0256】
本発明で使用される場合、「ポリA尾部」または「ポリA配列」という用語は、典型的にはmRNA分子の3’末端に位置するアデニル酸残基の連続的または断続的な配列を指す。ポリA尾部またはポリA配列は当業者に公知であり、本明細書に記載のmRNAの3’-UTRに後続し得る。連続的なポリA尾部は、連続するアデニル酸残基を特徴とする。自然界では、連続的なポリA尾部が典型的である。本明細書に開示されるmRNAは、転写後に鋳型非依存性RNAポリメラーゼによってmRNAの遊離3’末端に結合したポリA尾部、またはDNAによってコードされ、鋳型依存性RNAポリメラーゼによって転写されたポリA尾部を有し得る。
【0257】
約120個のAヌクレオチドのポリA尾部は、トランスフェクトされた真核細胞中のmRNAのレベル、およびポリA尾部の上流(5’側)に存在するオープンリーディングフレームから翻訳されるタンパク質のレベルに有益な影響を及ぼすことが実証されている(Holtkamp et al.,2006,Blood,vol.108,pp.4009-4017)。
【0258】
ポリA尾部は任意の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ポリA尾部は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのAヌクレオチド、特に約120個のAヌクレオチドを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。この文脈において、「から本質的になる」は、ポリA尾部のほとんどのヌクレオチド、典型的にはポリA尾部のヌクレオチド数の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%がAヌクレオチドであるが、残りのヌクレオチドがAヌクレオチド以外のヌクレオチド、例えばUヌクレオチド(ウリジル酸)、Gヌクレオチド(グアニル酸)、またはCヌクレオチド(シチジル酸)であることを許容することを意味する。この文脈において、「からなる」は、ポリA尾部の全てのヌクレオチド、すなわちポリA尾部のヌクレオチド数の100%がAヌクレオチドであることを意味する。「Aヌクレオチド」または「A」という用語は、アデニル酸を指す。
【0259】
いくつかの実施形態では、ポリA尾部は、コード鎖に相補的な鎖内に反復dTヌクレオチド(デオキシチミジル酸)を含むDNA鋳型に基づいて、RNA転写中、例えばインビトロ転写RNAの調製中に結合される。ポリA尾部をコードするDNA配列(コード鎖)は、ポリ(A)カセットと呼ばれる。
【0260】
いくつかの実施形態では、DNAのコード鎖に存在するポリ(A)カセットは、本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、およびdT)のランダムな配列によって中断されている。そのようなランダムな配列は、5~50、10~30、または10~20ヌクレオチドの長さであり得る。そのようなカセットは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/005324A1号に開示されている。国際公開第2016/005324A1号に開示されている任意のポリ(A)カセットを本開示において使用し得る。本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)が均等に分布し、例えば5~50ヌクレオチドの長さを有するランダムな配列によって中断されているポリ(A)カセットは、DNAレベルでは、大腸菌(E.coli)におけるプラスミドDNAの持続的な増殖を示し、RNAレベルでは、RNAの安定性および翻訳効率の支持に関する有益な特性と依然として関連している。結果として、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNA分子に含まれるポリA尾部は、本質的にAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(A、C、G、U)のランダムな配列によって中断されている。そのようなランダムな配列は、5~50、10~30、または10~20ヌクレオチドの長さであり得る。
【0261】
いくつかの実施形態では、Aヌクレオチド以外のヌクレオチドは、その3’末端でポリA尾部に隣接しておらず、すなわち、ポリA尾部はその3’末端でA以外のヌクレオチドによってマスクされていないか、または後続されていない。
【0262】
いくつかの実施形態では、ポリA尾部は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリA尾部は、本質的に、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリA尾部は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリA尾部は、配列番号8に示されるポリA尾部を含む。いくつかの実施形態では、ポリA尾部は少なくとも100個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリA尾部は約150個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリA尾部は約120個のヌクレオチドを含む。
【0263】
いくつかの実施形態では、本開示において使用されるmRNAは、5’-UTRおよび/または3’-UTRを含む。「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子内の領域、またはmRNA分子などのRNA分子内の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5’側(上流)(5’-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3’側(下流)(3’-UTR)に存在し得る。5’-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流の5’末端に位置する。5’-UTRは5’キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば5’キャップに直接隣接している。3’-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終止コドンの下流の3’末端に位置するが、「3’-UTR」という用語は、一般にポリ(A)配列を含まない。したがって、3’-UTRはポリA配列(存在する場合)の上流にあり、例えばポリA配列に直接隣接している。RNA(好ましくはmRNA)分子の3’非翻訳領域への3’UTRの組み込みは、翻訳効率の向上をもたらし得る。そのような3’UTRの2つ以上を組み込むことによって(好ましくは頭-尾の向きに配置される;例えば、Holtkamp et al.,Blood 108,4009-4017(2006)参照)、相乗作用が達成され得る。3’UTRは、それらが導入されるRNA(例えばmRNA)に対して自己または異種であり得る。特定の実施形態では、3’-UTRは、グロビン遺伝子またはmRNA、例えばα2-グロビン、α1-グロビン、またはβ-グロビン、例えばβ-グロビン、例えばヒトβ-グロビンの遺伝子またはmRNAに由来する。例えば、RNA(例えばmRNA)は、既存の3’-UTRを、グロビン遺伝子、例えばα2-グロビン、α1-グロビン、β-グロビン、例えばβ-グロビン、例えばヒトβ-グロビンに由来する1コピー以上、例えば2コピーの3’-UTRで置き換えるまたはそれを挿入することによって修飾され得る。
【0264】
特に好ましい5’-UTRは、配列番号6のヌクレオチド配列を含む。特に好ましい3’-UTRは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む。
【0265】
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号6のヌクレオチド配列、または配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’-UTRを含む。
【0266】
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号7のヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’-UTRを含む。
【0267】
mRNAは、その安定性を高め、および/または免疫原性を低下させ、および/または細胞傷害性を低下させるために、修飾リボヌクレオチドを有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA中のウリジンは、修飾されたヌクレオシドによって置き換えられる(部分的または完全に、好ましくは完全に)。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは修飾ウリジンである。
【0268】
いくつかの実施形態では、ウリジンを置換する修飾ウリジンは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)、5-メチル-ウリジン(m5U)、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0269】
いくつかの実施形態では、mRNA中のウリジンを置換する(部分的または完全に、好ましくは完全に)修飾ヌクレオシドは、3-メチルウリジン(m3U)、5-メトキシウリジン(mo5U)、5-アザウリジン、6-アザウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオウリジン(s2U)、4-チオウリジン(s4U)、4-チオプソイドウリジン、2-チオプソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン(ho5U)、5-アミノアリルウリジン、5-ハロウリジン(例えば5-ヨードウリジンもしくは5-ブロモウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチルウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチルプソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチルウリジン(mnm5U)、1-エチルプソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニルウリジン、1-プロピニルプソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン(τm5U)、1-タウリノメチルプソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオプソイドウリジン)、5-メチル-2-チオウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオプソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチルプソイドウリジン、3-メチルプソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチルプソイドウリジン、1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン(m5D)、2-チオジヒドロウリジン、2-チオジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオウリジン、4-メトキシプソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオプソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジン(inm5s2U)、α-チオウリジン、2’-O-メチルウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチルウリジン(m5Um)、2’-O-メチルプソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2’-O-メチルウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチルウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン(inm5Um)、1-チオウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジン、または当技術分野で公知の任意の他の修飾ウリジンのいずれか1つ以上であり得る。
【0270】
プソイドウリジン(ウリジンを部分的または完全に、好ましくは完全に置換する)によって修飾されたRNA(好ましくはmRNA)は、本明細書では「Ψ修飾された」と呼ばれ、「m1Ψ修飾された」という用語は、RNA(好ましくはmRNA)がN(1)-メチルプソイドウリジン(ウリジンを部分的または完全に、好ましくは完全に置換する)を含むことを意味する。さらに、「m5U修飾された」という用語は、RNA(好ましくはmRNA)が5-メチルウリジン(ウリジンを部分的または完全に、好ましくは完全に置換する)を含むことを意味する。そのようなΨ-またはm1Ψ-またはm5U修飾されたRNAは、通常、それらの非修飾形態と比較して低下した免疫原性を示し、したがって、免疫応答の誘導を回避または最小化すべき用途において好ましい。いくつかの実施形態では、RNA(好ましくはmRNA)は、ウリジンを完全に置換するN(1)-メチルプソイドウリジンを含有する。
【0271】
本開示で使用されるmRNAのコドンは、例えば、RNAのGC含有量を増加させるため、および/または目的のペプチドもしくはポリペプチドが発現されるべき細胞(もしくは対象)においてまれなコドンを、前記細胞(もしくは対象)において同義の頻度の高いコドンであるコドンによって置換するために、さらに最適化され得る。いくつかの実施形態では、本開示で使用されるmRNAによってコードされるアミノ酸配列は、コドン最適化されたコード配列および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされる。これはまた、コード配列の1つ以上の配列領域が、野生型コード配列の対応する配列領域と比較して、コドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が増加している実施形態を含む。いくつかの実施形態では、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変化させない。
【0272】
「コドン最適化された」という用語は、好ましくは核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を改変することなく、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映するための核酸分子のコード領域中のコドンの改変を指す。本開示の文脈内で、コード領域は、本明細書に記載のmRNAを使用して治療される対象における最適な発現のためにコドン最適化され得る。コドン最適化は、翻訳効率が、細胞におけるtRNAの出現の異なる頻度によっても決定されるという所見に基づく。したがって、mRNAの配列は、頻繁に生じるtRNAが利用可能であるコドンが「まれなコドン」の代わりに挿入されるように改変され得る。
【0273】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNAのコード領域のグアノシン/シトシン(G/C)含有量は、野生型RNAの対応するコード配列のG/C含有量と比較して増加しており、mRNAによってコードされるアミノ酸配列は、好ましくは野生型RNAによってコードされるアミノ酸配列と比較して改変されていない。mRNA配列のこの改変は、翻訳される任意のRNA領域の配列がそのmRNAの効率的な翻訳のために重要であるという事実に基づく。G(グアノシン)/C(シトシン)含有量が増加した配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含有量が増加した配列よりも安定である。いくつかのコドンが全く同じアミノ酸をコードする(いわゆる遺伝暗号の縮重)という事実に関して、安定性のために最も好ましいコドンを決定することができる(いわゆる代替的コドン使用頻度)。mRNAによってコードされるアミノ酸に依存して、その野生型配列と比較して、mRNA配列の改変には様々な可能性がある。特に、Aおよび/またはUヌクレオチドを含むコドンは、これらのコドンを、同じアミノ酸をコードするがAおよび/もしくはUを含まないかまたはより低い含有量のAおよび/もしくはUヌクレオチドを含む他のコドンで置換することによって改変することができる。
【0274】
様々な実施形態では、本明細書に記載のmRNAのコード領域のG/C含有量は、野生型RNAのコード領域のG/C含有量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、またはさらにそれ以上増加している。
【0275】
上述の修飾の組合せ、すなわち、5’キャップ構造の組み込み、ポリA配列の組み込み、ポリA配列のアンマスキング、5’-UTRおよび/または3’-UTRの改変(1つ以上の3’-UTRの組み込みなど)、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドを合成ヌクレオチド(例えば、シチジンの場合は5-メチルシチジン、および/またはウリジンの場合はプソイドウリジン(Ψ)もしくはN(1)-メチルプソイドウリジン(m1Ψ)もしくは5-メチルウリジン(m5U))で置き換えること、ならびにコドン最適化は、RNA(好ましくはmRNA)の安定性および翻訳効率の増加に相乗的な影響を及ぼす。したがって、いくつかの実施形態では、本開示において使用されるmRNAは、上述の修飾の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは5つ全ての組合せ、すなわち、(i)5’キャップ構造の組み込み、(ii)ポリA配列の組み込み、ポリA配列のアンマスキング、(iii)5’-UTRおよび/または3’-UTRの改変(1つ以上の3’-UTRの組み込みなど)、(iv)1つ以上の天然に存在するヌクレオチドを合成ヌクレオチド(例えば、シチジンの場合は5-メチルシチジン、および/またはウリジンの場合はプソイドウリジン(Ψ)もしくはN(1)-メチルプソイドウリジン(m1Ψ)もしくは5-メチルウリジン(m5U))で置き換えること、ならびに(v)コドン最適化を含む。
【0276】
本開示のいくつかの態様は、特定の細胞または組織への本明細書に開示されるmRNAの標的化送達を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることを含む。投与されるmRNAが、免疫応答を誘導するための抗原またはエピトープをコードするmRNAである場合、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることが特に好ましい。いくつかの実施形態では、標的細胞は脾臓細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、脾臓におけるプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、脾臓における樹状細胞である。「リンパ系」は、循環系の一部であり、リンパを運ぶリンパ管のネットワークを含む免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ器官、リンパ管の伝導ネットワーク、および循環リンパからなる。一次または中枢リンパ器官は、未成熟な前駆細胞からリンパ球を生成する。胸腺および骨髄は一次リンパ器官を構成する。リンパ節および脾臓を含む二次または末梢リンパ器官は、成熟したナイーブリンパ球を維持し、適応免疫応答を開始する。
【0277】
脂質ベースのmRNA送達システムは、肝臓に対する固有の選択性を有する。肝臓蓄積は、肝血管系の不連続な性質または脂質代謝(リポソームおよび脂質もしくはコレステロール複合体)によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、標的器官は肝臓であり、標的組織は肝臓組織である。そのような標的組織への送達は、特に、この器官または組織におけるmRNAまたはコードされたペプチドもしくはポリペプチドの存在が望ましい場合、および/またはコードされたペプチドもしくはポリペプチドを大量に発現することが望ましい場合、および/またはコードされたペプチドもしくはポリペプチドの全身的な存在、特に有意な量での存在が望ましいかもしくは必要とされる場合に好ましい。
【0278】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNA粒子の投与後、mRNAの少なくとも一部が標的細胞または標的器官に送達される。いくつかの実施形態では、mRNAの少なくとも一部が標的細胞のサイトゾルに送達される。いくつかの実施形態では、mRNAは、ペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAであり、mRNAは、標的細胞によって翻訳されてペプチドまたはポリペプチドを生成する。いくつかの実施形態では、標的細胞は肝臓における細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は筋細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は内皮細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞または腫瘍微小環境における細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は血球である。いくつかの実施形態では、標的細胞はリンパ節内の細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は肺の細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は血球である。いくつかの実施形態では、標的細胞は皮膚の細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は脾臓細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、脾臓におけるプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、脾臓における樹状細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞はB細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞はNK細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は単球である。したがって、本明細書に記載のRNA粒子は、そのような標的細胞にmRNAを送達するために使用され得る。
【0279】
薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチド
「コードする」は、定義されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、およびそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると呼ばれ得る。
【0280】
いくつかの実施形態では、本開示で使用されるmRNAなどの核酸は、1つ以上のペプチドまたはポリペプチド、好ましくは薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0281】
好ましい実施形態では、本開示で使用されるmRNAなどの核酸は、ペプチドまたはポリペプチド、好ましくは薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸配列を含み、特に細胞または対象に移入された場合、前記ペプチドまたはポリペプチドを発現することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示で使用される核酸は、ペプチドまたはポリペプチドをコードする、例えば薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをコードするコード領域(オープンリーディングフレーム(ORF))を含む。これに関して、「オープンリーディングフレーム」または「ORF」は、開始コドンで始まり、終止コドンで終わるコドンの連続した一続きである。薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをコードするそのような核酸は、本明細書では「薬学的に活性な核酸」とも呼ばれる。特に、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドをコードするそのようなmRNAは、本明細書では「薬学的に活性なmRNA」とも呼ばれる。
【0282】
本開示によれば、「薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチド」という用語は、ペプチドまたはポリペプチドの発現が、例えば疾患の症状を改善するのに有益である個体の治療において使用することができるペプチドまたはポリペプチドを意味する。好ましくは、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドは、治癒特性または緩和特性を有し、疾患の1つ以上の症状を改善する、緩和する、軽減する、逆転させる、発症を遅延させるまたは重症度を軽減するために投与され得る。いくつかの実施形態では、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドは、治療有効量で個体に投与された場合、個体の状態または病態に対してプラスの効果または有利な効果を及ぼす。薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドは、予防的特性を有し得、疾患の発症を遅延させるため、またはそのような疾患の重症度を軽減するために使用され得る。「薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチド」という用語は、ペプチドまたはポリペプチド全体を含み、その薬学的に活性な断片も指すことができる。この用語はまた、ペプチドまたはポリペプチドの薬学的に活性な変異体および/または類似体を含み得る。
【0283】
薬学的に活性なペプチドおよびポリペプチドの具体例としては、サイトカイン、ホルモン、接着分子、免疫グロブリン、免疫学的に活性な化合物、成長因子、プロテアーゼ阻害剤、酵素、受容体、アポトーシス調節因子、転写因子、腫瘍抑制タンパク質、構造タンパク質、リプログラミング因子、ゲノムエンジニアリングタンパク質、および血液タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0284】
「サイトカイン」という用語は、約5~60kDaの分子量を有し、細胞シグナル伝達(例えばパラクリン、内分泌、および/または自己分泌シグナル伝達)に関与するタンパク質に関する。特に、サイトカインは、放出された場合、放出された場所周辺の細胞の挙動に影響を及ぼす。サイトカインの例としては、リンホカイン、インターロイキン、ケモカイン、インターフェロン、および腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。本開示によれば、サイトカインはホルモンまたは成長因子を含まない。サイトカインは、(i)通常、ホルモンよりもはるかに可変的な濃度で作用し、および(ii)一般に広範囲の細胞によって作られる(ほぼ全ての有核細胞がサイトカインを産生できる)という点でホルモンとは異なる。インターフェロンは、通常、抗ウイルス活性、抗増殖活性、および免疫調節活性を特徴とする。インターフェロンは、調節される細胞の表面のインターフェロン受容体に結合することによって細胞内の遺伝子の転写を変化させ、調節するタンパク質であり、それにより細胞内のウイルス複製を防止する。インターフェロンは2つのタイプに分類することができる。IFN-γは唯一のII型インターフェロンである;他は全てI型インターフェロンである。サイトカインの特定の例としては、エリスロポエチン(EPO)、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、骨形成タンパク質(BMP)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、インターフェロンガンマ(INFγ)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、およびインターロイキン21(IL-21)、ならびにそれらの変異体および誘導体が挙げられる。
【0285】
いくつかの実施形態では、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドは、補充タンパク質を含む。これらの実施形態では、本開示は、タンパク質補充を必要とする障害(例えばタンパク質欠損性障害)を有する対象の治療のための方法であって、補充タンパク質をコードする本明細書に記載の核酸を対象に投与する工程を含む方法を提供する。「タンパク質補充」という用語は、そのようなタンパク質の欠損を有する対象へのタンパク質(その機能的変異体を含む)の導入を指す。この用語はまた、タンパク質の提供を必要とするかまたはタンパク質の提供から利益を得る、例えばタンパク質不足を患っている対象へのタンパク質の導入を指す。「タンパク質欠損を特徴とする障害」という用語は、タンパク質の欠如または不十分な量によって引き起こされる病態を呈する任意の障害を指す。この用語は、生物学的に不活性なタンパク質産物をもたらすタンパク質フォールディング障害、すなわちコンフォメーション障害を包含する。タンパク質不足は、感染症、免疫抑制、臓器不全、腺の障害、放射線症、栄養不足、中毒、または他の環境的もしくは外的傷害に関与し得る。
【0286】
「ホルモン」という用語は、腺によって産生されるシグナル伝達分子のクラスに関し、シグナル伝達は通常、以下の工程:(i)特定の組織におけるホルモンの合成;(ii)貯蔵および分泌;(iii)ホルモンのその標的への輸送;(iv)受容体によるホルモンの結合;(v)シグナルの中継および増幅;ならびに(vi)ホルモンの分解を含む。ホルモンは、(1)通常、あまり可変的でない濃度で作用し、および(2)一般に特定の種類の細胞によって作られるという点でサイトカインとは異なる。いくつかの実施形態では、「ホルモン」は、ペプチドまたはポリペプチドホルモン、例えばインスリン、バソプレシン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺ホルモン、成長ホルモン(ヒト成長ホルモンまたはウシソマトトロピンなど)、オキシトシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、グルカゴン、ソマトスタチン、コレシストキニン、ガストリン、およびレプチンである。
【0287】
「接着分子」という用語は、細胞の表面に位置し、細胞と他の細胞または細胞外マトリックス(ECM)との結合に関与するタンパク質に関する。接着分子は、典型的には膜貫通型受容体であり、カルシウム非依存性(例えば、インテグリン、免疫グロブリンスーパーファミリー、リンパ球ホーミング受容体)およびカルシウム依存性(カドヘリンおよびセレクチン)として分類することができる。接着分子の特定の例は、インテグリン、リンパ球ホーミング受容体、セレクチン(例えばP-セレクチン)、およびアドレシンである。
【0288】
インテグリンもシグナル伝達に関与する。特に、リガンド結合時に、インテグリンは細胞シグナル伝達経路、例えば、受容体チロシンキナーゼ(RTK)などの膜貫通タンパク質キナーゼの経路を調節する。そのような調節は、細胞の成長、分裂、生存もしくは分化、またはアポトーシスをもたらすことができる。インテグリンの特定の例としては、α1β1、α2β1、α3β1、α4β1、α5β1、α6β1、α7β1、αLβ2、αMβ2、αIIbβ3、αVβ1、αVβ3、αVβ5、αVβ6、αVβ8、およびα6β4が挙げられる。
【0289】
「免疫グロブリン」または「免疫グロブリンスーパーファミリー」という用語は、細胞の認識、結合、および/または接着プロセスに関与する分子を指す。このスーパーファミリーに属する分子は、免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリンフォールドとして知られる領域を含むという特徴を共有する。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーには、抗体(例えば、IgG)、T細胞受容体(TCR)、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、共受容体(例えば、CD4、CD8、CD19)、抗原受容体アクセサリ分子(例えば、CD-3γ、CD3-δ、CD-3ε、CD79a、CD79b)、共刺激分子または阻害性分子(例えば、CD28、CD80、CD86)などが含まれる。
【0290】
「免疫学的に活性な化合物」という用語は、例えば免疫細胞の成熟を誘導および/もしくは抑制することによって免疫応答を変化させる、サイトカイン生合成を誘導および/もしくは抑制する、ならびに/またはB細胞による抗体産生を刺激することによって体液性免疫を変化させる任意の化合物に関する。免疫学的に活性な化合物は、抗ウイルスおよび抗腫瘍活性を含むがこれらに限定されない強力な免疫刺激活性を有し、また免疫応答の他の局面を下方制御する、例えば免疫応答をTH2免疫応答からシフトさせることもでき、これは、広範囲のTH2媒介疾患を治療するのに有用である。免疫学的に活性な化合物は、ワクチンアジュバントとして有用であり得る。免疫学的に活性な化合物の特定の例としては、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレシン、セレクチン、ホーミング受容体、ならびに抗原、特に腫瘍関連抗原、病原体関連抗原(細菌抗原、寄生虫抗原、またはウイルス抗原など)、アレルゲン、および自己抗原が挙げられる。免疫学的に活性な化合物は、ワクチン抗原、すなわち、対象への接種が免疫応答を誘導する抗原であり得る。
【0291】
本開示による「抗原」は、免疫応答を誘発する任意の物質ならびに/または免疫応答もしく細胞性応答および/もしくは体液性応答などの免疫機構が向けられる任意の物質を包含する。これはまた、抗原が抗原ペプチドにプロセシングされ、特にMHC分子に関連して提示される場合、免疫応答または免疫機構が1つ以上の抗原ペプチドに向けられる状況を含む。特に、「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する、ペプチドまたはポリペプチドなどの任意の物質に関する。「抗原」という用語は、T細胞エピトープなどの少なくとも1つのエピトープを含む分子を含み得る。いくつかの実施形態では、抗原は、任意でプロセシング後に、抗原(抗原を発現する細胞を含む)に特異的であり得る免疫反応を誘導する分子である。いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、もしくは細菌抗原などの疾患関連抗原、またはそのような抗原に由来するエピトープである。
【0292】
「自己抗原(autoantigenまたはself-antigen)」という用語は、対象の体内に由来し(すなわち自己抗原は「自家抗原」とも呼ばれ得る)、身体のこの正常な部分に対する異常に激しい免疫応答を生じさせる抗原を指す。自己抗原に対するそのような激しい免疫反応は、「自己免疫疾患」の原因であり得る。
【0293】
本開示によれば、免疫応答の候補である任意の適切な抗原を使用することができ、免疫応答は体液性および細胞性免疫応答の両方であり得る。本開示のいくつかの実施形態の文脈において、抗原は、MHC分子に関連して、抗原提示細胞などの細胞によって提示され、抗原に対する免疫応答をもたらす。抗原は、天然に存在する抗原に対応するまたは由来する生成物であり得る。そのような天然に存在する抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫ならびに他の感染因子および病原体を含んでもよく、もしくはそれらに由来してもよく、または抗原は腫瘍抗原であってもよい。本開示によれば、抗原は、天然に存在する生成物、例えばウイルスタンパク質、またはその一部に対応し得る。
【0294】
「疾患関連抗原」という用語は、疾患に関連する任意の抗原を指すためにその最も広い意味で使用される。疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して、疾患に対する細胞性抗原特異的免疫応答および/または体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含む分子である。疾患関連抗原としては、病原体関連抗原、すなわち微生物による感染に関連する抗原、典型的には微生物抗原(細菌抗原もしくはウイルス抗原など)、または癌、典型的には腫瘍に関連する抗原、例えば腫瘍抗原が挙げられる。
【0295】
いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、すなわち腫瘍細胞の一部、特に主に細胞内にまたは腫瘍細胞の表面抗原として存在するものである。別の実施形態では、抗原は、病原体関連抗原、すなわち病原体に由来する抗原、例えばウイルス、細菌、単細胞生物、または寄生虫に由来する抗原、例えばウイルスリボ核タンパク質またはコートタンパク質などのウイルス抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、特にT細胞受容体の活性の調節を介して、調節、特にCD4+およびCD8+リンパ球などの免疫系の細胞の活性化をもたらすMHC分子によって提示されるべきである。
【0296】
「腫瘍抗原」という用語は、細胞質、細胞表面または細胞核に由来し得る癌細胞の成分を指す。特に、この用語は、細胞内でまたは腫瘍細胞上の表面抗原として産生される抗原を指す。例えば、腫瘍抗原としては、癌胎児性抗原、α1-フェトプロテイン、イソフェリチン、および胎児性スルホグリコプロテイン、α2-H-フェロプロテインおよびγ-フェトプロテイン、ならびに様々なウイルス腫瘍抗原が挙げられる。本開示のいくつかの実施形態によれば、腫瘍抗原は、タイプおよび/または発現レベルに関して腫瘍または癌および腫瘍細胞または癌細胞に特徴的な任意の抗原を含む。
【0297】
「ウイルス抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意のウイルス成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスリボ核タンパク質またはエンベロープタンパク質であり得る。
【0298】
「細菌抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意の細菌成分を指す。細菌抗原は、細菌の細胞壁または細胞質膜に由来し得る。
【0299】
「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち免疫系によって認識される、例えば、特にMHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識される分子の一部または断片を指す。タンパク質のエピトープは、前記タンパク質の連続または不連続部分を含み得、例えば、約5~約100、約5~約50、約8~約30、または約10~約25アミノ酸長であり得、例えば、エピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の文脈におけるエピトープはT細胞エピトープである。
【0300】
「エピトープ」、「抗原の断片」、「免疫原性ペプチド」および「抗原ペプチド」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、例えば、抗原または抗原を発現するかもしくは含み、抗原を提示する細胞に対する免疫応答を誘発することができる、抗原の不完全な表示形態に関連し得る。いくつかの実施形態では、これらの用語は、抗原の免疫原性部分に関する。いくつかの実施形態では、これは、特にMHC分子に関連して提示された場合、T細胞受容体によって認識される(すなわち特異的に結合される)抗原の一部である。特定の好ましい免疫原性部分は、MHCクラスIまたはクラスII分子に結合する。「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識される抗原などの分子の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体によって認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含み得、約5~約100アミノ酸、例えば約5~約50、約8~約30、または約8~約25アミノ酸の長さであり得、例えば、エピトープは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸の長さであり得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、約10~約25アミノ酸の長さである。「エピトープ」という用語は、T細胞エピトープを含む。
【0301】
「T細胞エピトープ」という用語は、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識されるタンパク質の一部または断片を指す。「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、全ての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質または分子はペプチドエピトープに結合し、T細胞上のT細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)および非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方をT細胞に表示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約8~約10アミノ酸長であるが、より長いまたはより短いペプチドも有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、より長いおよびより短いペプチドも有効であり得る。
【0302】
ペプチドおよびポリペプチド抗原は、例えば、5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、または50アミノ酸を含む、2~100アミノ酸の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、50個を超えるアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、100個を超えるアミノ酸であり得る。
【0303】
ペプチドまたはポリペプチド抗原は、ペプチドまたはポリペプチドに対する抗体およびT細胞応答を生じさせる免疫系の能力を誘導または増加させることができる任意のペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0304】
いくつかの実施形態では、ワクチン抗原、すなわち対象への接種が免疫応答を誘導する抗原は、免疫エフェクタ細胞によって認識される。いくつかの実施形態では、ワクチン抗原は、免疫エフェクタ細胞によって認識される場合、適切な共刺激シグナルの存在下で、ワクチン抗原を認識する抗原受容体を担持する免疫エフェクタ細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大を誘導することができる。本開示の実施形態の文脈において、ワクチン抗原は、例えば、抗原提示細胞などの細胞の表面に提示され得るかまたは存在し得る。いくつかの実施形態では、抗原は、疾患細胞(腫瘍細胞または感染細胞など)によって提示される。いくつかの実施形態では、抗原受容体は、MHCに関連して提示される抗原のエピトープに結合するTCRである。いくつかの実施形態では、T細胞によって発現される場合および/またはT細胞上に存在する場合のTCRの、抗原提示細胞などの細胞によって提示される抗原への結合は、前記T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞によって発現された場合および/またはT細胞上に存在する場合のTCRの、疾患細胞上に提示される抗原への結合は、疾患細胞の細胞溶解および/またはアポトーシスをもたらし、前記T細胞は、例えば細胞傷害性因子、例えばパーフォリンおよびグランザイムを放出する。
【0305】
いくつかの実施形態によれば、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、直接的に、またはリンカーを介して、抗原ペプチドまたはポリペプチドに融合される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、抗原ペプチドまたはポリペプチドならびに抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列をコードする少なくとも1つのコード領域を含む。
【0306】
いくつかの実施形態では、それをコードする核酸の形態で投与され得るワクチン接種のための抗原は、天然に存在する抗原またはそのエピトープなどの断片を含む。
【0307】
抗原プロセシングおよび/または提示を増強するそのようなアミノ酸配列は、限定されないが、好ましくは抗原ペプチドまたはポリペプチド質のC末端に(および任意で免疫寛容を破壊するアミノ酸配列のC末端に)位置する。本明細書で定義される抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、好ましくは抗原プロセシングおよび提示を改善する。一実施形態では、本明細書で定義される抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、限定されないが、ヒトMHCクラスI複合体(HLA-B51、ハプロタイプA2、B27/B51、Cw2/Cw3)に由来する配列、特に配列番号2のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む配列を含む。抗原プロセシングおよび提示を改善することに加えて、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するそのようなアミノ酸配列はまた、本明細書に記載されるプロセスにおけるアミノ酸配列の発現を決定するために使用され得る。
【0308】
一実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列もしくは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0309】
したがって、特に好ましい実施形態では、本明細書に記載のRNAは、抗原ペプチドまたはポリペプチドをコードする少なくとも1つのコード領域ならびに抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列を含み、抗原プロセシングおよび/または提示を増強する前記アミノ酸配列は、好ましくは抗原ペプチドまたはポリペプチド、より好ましくは本明細書に記載の抗原ペプチドまたはポリペプチドのC末端に融合されている。
【0310】
さらに、分泌配列、例えば配列番号1のアミノ酸配列を含む配列は、抗原ペプチドまたはポリペプチドのN末端に融合され得る。
【0311】
破傷風菌(Clostridium tetani)の破傷風トキソイドに由来するアミノ酸配列は、プライミング中にT細胞支援を提供することによって自己抗原に対する免疫応答を効率的に開始するために、自己寛容機構を克服するために使用され得る。
【0312】
破傷風トキソイド重鎖は、MHCクラスII対立遺伝子に無差別に結合し、破傷風ワクチン接種を受けたほぼ全ての個体においてCD4+メモリT細胞を誘導することができるエピトープを含むことが公知である。さらに、破傷風トキソイド(TT)ヘルパーエピトープと腫瘍関連抗原との組合せは、プライミング中にCD4+媒介T細胞支援を提供することによって、腫瘍関連抗原単独の適用と比較して免疫刺激を改善することが公知である。腫瘍抗原特異的T細胞応答の意図された誘導と競合し得る破傷風配列でCD8+T細胞を刺激するリスクを低下させるために、破傷風トキソイドの断片C全体ではCD8+T細胞エピトープを含有することが公知であるので、断片C全体は使用しない。可能な限り多くのMHCクラスII対立遺伝子への結合を確実にするために、無差別に結合するヘルパーエピトープを含有する2つのペプチド配列を代替的に選択した。エクスビボ試験のデータに基づいて、周知のエピトープp2(QYIKANSKFIGITEL;TT830-844)およびp16(MTNSVDDALINSTKIYSYFPSVISKVNQGAQG;TT578-609)を選択した。p2エピトープは、抗黒色腫活性をブーストするために臨床試験におけるペプチドワクチン接種に既に使用されていた。
【0313】
非臨床データは、腫瘍抗原および無差別に結合する破傷風トキソイド配列の両方をコードするRNAワクチンが、腫瘍抗原に対するCD8+T細胞応答の増強および寛容破壊の改善をもたらすことを示した。腫瘍抗原特異的配列とインフレームで融合した配列を含むワクチンを接種した患者からの免疫モニタリングデータは、選択された破傷風配列がほぼ全ての患者において破傷風特異的T細胞応答を誘導することができることを明らかにする。
【0314】
いくつかの実施形態によれば、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、直接的に、またはリンカー、例えば配列番号4に従うアミノ酸配列を有するリンカーを介して、抗原ペプチドまたはポリペプチドに融合される。
【0315】
免疫寛容を破壊するそのようなアミノ酸配列は、限定されないが、好ましくは抗原ペプチドまたはポリペプチドのC末端に(ならびに任意で抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列のN末端に、ここで、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列と抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列とは、直接的に、またはリンカー、例えば配列番号5に従うアミノ酸配列を有するリンカーを介して融合されていてもよい)位置する。本明細書で定義される免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、好ましくはT細胞応答を改善する。一実施形態では、本明細書で定義される免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、限定されないが、破傷風トキソイド由来のヘルパー配列p2およびp16(P2P16)に由来する配列、特に配列番号3のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む配列を含む。
【0316】
いくつかの実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号3のアミノ酸配列もしくは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0317】
いくつかの実施形態によれば、生物発光を生じるアミノ酸配列は、直接的に、またはリンカー、例えば配列番号4に従うアミノ酸配列を有するリンカーを介して、抗原ペプチドまたはポリペプチドに融合される。
【0318】
生物発光を生じるそのようなアミノ酸配列は、限定されないが、好ましくは抗原ペプチドまたはポリペプチドのC末端に(ならびに任意で(i)抗原プロセシングおよび/もしくは提示を増強するアミノ酸配列、または(ii)免疫寛容を破壊するアミノ酸配列のN末端に、ここで、生物発光を生じるアミノ酸配列と、(i)抗原プロセシングおよび/もしくは提示を増強するアミノ酸配列、または(ii)免疫寛容を破壊するアミノ酸配列とは、直接的に、またはリンカー、例えば配列番号5に従うアミノ酸配列を有するリンカーを介して融合されていてもよい)位置する。本明細書で定義される生物発光を生じるアミノ酸配列は、好ましくは抗原ペプチドまたはポリペプチドの量の決定を改善する。いくつかの実施形態では、本明細書で定義される生物発光を生じるアミノ酸配列は、蛍光を生じる。いくつかの実施形態では、本明細書で定義される生物発光を生じるアミノ酸配列は、限定されないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(EBFP)、シアン蛍光タンパク質(ECFP)、それらの変異体(例えば、増強GFP(EGFP)、スーパーフォルダGFP(sfGFP)およびルシフェラーゼに由来する配列を含む。
【0319】
以下において、ワクチンRNAの実施形態を説明し、その要素を説明する場合に使用される特定の用語は、以下の意味を有する。
【0320】
hAg-コザック:翻訳効率を高めるための最適化された「コザック配列」を有するヒトαグロビンmRNAの5’-UTR配列。
【0321】
sec/MITD:抗原プロセシングおよび提示を改善することが示されている、ヒトMHCクラスI複合体(HLA-B51、ハプロタイプA2、B27/B51、Cw2/Cw3)をコードする配列に由来する融合タンパク質タグ。secは、新生ポリペプチド鎖の小胞体への移行を誘導する分泌シグナルペプチドをコードする78bp断片に対応する。MITDは、MHCクラスI輸送ドメインとも呼ばれる、MHCクラスI分子の膜貫通および細胞質ドメインに対応する。
【0322】
抗原:それぞれの抗原/エピトープをコードする配列。
【0323】
グリシン-セリンリンカー(GS):融合タンパク質に一般的に使用される、主にアミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなる短いリンカーペプチドをコードする配列。
【0324】
P2P16:免疫寛容を破壊するための破傷風トキソイド由来ヘルパーエピトープをコードする配列。
【0325】
FI要素:3’-UTRは、「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアにコードされた12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素の組合せである。これらは、RNAの安定性を付与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択プロセスによって同定された。
【0326】
A30L70:30個のアデノシン残基のストレッチ、それに続く10個のヌクレオチドのリンカー配列、および樹状細胞におけるRNAの安定性と翻訳効率を高めるように設計された別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)尾部。
【0327】
一実施形態では、本明細書に記載のワクチンRNAは、構造:
β-S-ARCA(D1)-hAg-コザック-sec-GS(1)-抗原-GS(2)-P2P16-GS(3)-MITD-FI-A30L70
を有する。
一実施形態では、本明細書に記載のワクチン抗原は、構造:
sec-GS(1)-抗原-GS(2)-P2P16-GS(3)-MITD
を有する。
【0328】
一実施形態では、hAg-コザックは、配列番号6のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、secは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、P2P16は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、MITDは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、GS(1)は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、GS(2)は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、GS(3)は、配列番号5のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、FIは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、A30L70は、配列番号8のヌクレオチド配列を含む。
【0329】
いくつかの実施形態では、抗原受容体は、抗原中のエピトープに結合する抗体またはB細胞受容体である。いくつかの実施形態では、抗体またはB細胞受容体は、抗原の天然エピトープに結合する。
【0330】
「細胞表面に発現された」または「細胞表面と会合した」という用語は、抗原などの分子が細胞の原形質膜と会合して位置し、分子の少なくとも一部が前記細胞の細胞外空間に面しており、例えば細胞の外側に位置する抗体によって前記細胞の外側からアクセス可能であることを意味する。この文脈では、一部は、例えば少なくとも4、少なくとも8、少なくとも12、または少なくとも20アミノ酸であり得る。会合は、直接的または間接的であり得る。例えば、会合は、1つ以上の膜貫通ドメイン、1つ以上の脂質アンカーによるものであってもよく、または他の任意のタンパク質、脂質、サッカリド、もしくは細胞の原形質膜の外葉に見出され得る他の構造との相互作用によるものであってもよい。例えば、細胞の表面と会合する分子は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であってもよく、または膜貫通タンパク質である別のタンパク質と相互作用することによって細胞の表面と会合するタンパク質であってもよい。
【0331】
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがって、タンパク質および他の分子による結合にアクセス可能な細胞の外側を含む。抗原は、細胞の表面に位置し、例えば細胞に加えられた抗原特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、前記細胞の表面に発現される。
【0332】
本開示の文脈における「細胞外部分」または「エキソドメイン」という用語は、細胞の細胞外空間に面しており、好ましくは、例えば細胞の外側に位置する抗体などの分子に結合することによって、前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、1つ以上の細胞外ループもしくはドメインまたはその断片を指す。
【0333】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。「抗原特異的T細胞」という用語または同様の用語は、特にMHC分子に関連して抗原提示細胞または癌細胞などの疾患細胞の表面に提示された場合、T細胞が標的とする抗原を認識し、好ましくはT細胞のエフェクタ機能を発揮するT細胞に関する。T細胞が抗原を発現する標的細胞を死滅させる場合、T細胞は抗原に特異的であると見なされる。T細胞特異性は、例えば、クロム放出アッセイまたは増殖アッセイ内で、様々な標準的技術のいずれかを使用して評価され得る。あるいは、リンホカイン(インターフェロンγなど)の合成を測定することができる。
【0334】
「標的」という用語は、細胞性免疫応答などの免疫応答の標的である細胞または組織などの作用物質を意味する。標的には、抗原または抗原エピトープ、すなわち抗原に由来するペプチド断片を提示する細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、標的細胞は、抗原を発現し、前記抗原をクラスI MHCと共に提示する細胞である。
【0335】
「抗原プロセシング」は、抗原の、前記抗原の断片であるプロセシング産物への分解(例えばポリペプチドのペプチドへの分解)、および抗原提示細胞などの細胞による特異的T細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0336】
「抗原応答性CTL」とは、抗原提示細胞の表面にクラスI MHCと共に提示される、抗原または前記抗原に由来するペプチドに応答性であるCD8+T細胞を意味する。
【0337】
本開示によれば、CTL応答性には、持続的なカルシウム流動、細胞分裂、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、CD44およびCD69などの活性化マーカの上方制御、ならびに腫瘍抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解性死滅が含まれ得る。CTL応答性はまた、CTL応答性を正確に示す人工レポータを使用して決定され得る。
【0338】
本明細書で使用される「活性化」または「刺激」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞などの免疫エフェクタ細胞の状態を指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の開始、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクタ機能に関連し得る。「活性化免疫エフェクタ細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けている免疫エフェクタ細胞を指す。
【0339】
「プライミング」という用語は、T細胞などの免疫エフェクタ細胞がその特異的抗原と最初に接触し、エフェクタT細胞などのエフェクタ細胞への分化を引き起こす過程を指す。
【0340】
「拡大」という用語は、特定の実体が増加する過程を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、免疫エフェクタ細胞が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特異的免疫エフェクタ細胞が増幅される免疫学的応答に関連して使用される。いくつかの実施形態では、拡大は免疫エフェクタ細胞の分化をもたらす。
【0341】
「免疫応答」および「免疫反応」という用語は、本明細書ではそれらの従来の意味で互換的に使用され、抗原に対する統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答、体液性免疫応答、またはその両方を指し得る。本開示によれば、抗原、細胞または組織などの作用物質に関する「への免疫応答」または「に対する免疫応答」という用語は、作用物質に対する細胞応答などの免疫応答に関する。免疫応答は、1つ以上の抗原に対する抗体の発現、ならびにインビトロでの様々な増殖またはサイトカイン産生試験で検出され得るCD4+およびCD8+Tリンパ球、例えばCD8+Tリンパ球などの抗原特異的Tリンパ球の拡大からなる群より選択される1つ以上の反応を含み得る。
【0342】
本開示の文脈における「免疫応答を誘導する」および「免疫応答を誘発する」という用語および同様の用語は、免疫応答の誘導、例えば細胞性免疫応答、体液性免疫応答、またはその両方の誘導を指す。免疫応答は、保護的/防止的/予防的および/または治療的であり得る。免疫応答は、任意の免疫原または抗原または抗原ペプチド、例えば腫瘍関連抗原または病原体関連抗原(例えば、ウイルス(インフルエンザウイルス(A型、B型、もしくはC型)、CMVまたはRSVなど)の抗原)に対するものであり得る。この文脈における「誘導する」は、誘導前に特定の抗原または病原体に対する免疫応答が存在しなかったことを意味し得るが、誘導前に特定の抗原または病原体に対するある程度の免疫応答が存在し、誘導後に前記免疫応答が増強されることも意味し得る。したがって、この文脈における「免疫応答を誘導する」には、「免疫応答を増強する」ことも含まれる。いくつかの実施形態では、個体において免疫応答を誘導した後、前記個体は、感染症または癌性疾患などの疾患の発症から保護されるか、または免疫応答を誘導することによって疾患状態が改善される。
【0343】
「細胞性免疫応答」、「細胞応答」、「細胞媒介性免疫」または同様の用語は、抗原の発現および/またはクラスIもしくはクラスII MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞応答を含むことを意味する。細胞応答は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働くT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも呼ばれる)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも呼ばれる)は、疾患細胞などの細胞を死滅させる。
【0344】
「体液性免疫応答」という用語は、作用物質および生物に応答して抗体が産生され、最終的にそれらを中和および/または排除する、生きている生物におけるプロセスを指す。抗体応答の特異性は、単一特異性の抗原に結合する膜結合受容体を介してT細胞および/またはB細胞によって媒介される。適切な抗原の結合および様々な他の活性化シグナルの受け取り後、Bリンパ球が分裂し、メモリB細胞および抗体分泌形質細胞クローンを産生し、それぞれが、その抗原受容体によって認識された同一の抗原エピトープを認識する抗体を産生する。メモリBリンパ球は、その後それらの特異的抗原によって活性化されるまで休眠状態のままである。これらのリンパ球は、記憶の細胞基盤、および特異的抗原に再曝露されたときに生じる抗体応答の増大を提供する。
【0345】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原上のエピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。特に、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、および前記のいずれかの組合せを含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)とで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)とで構成される。可変領域および定常領域は、本明細書ではそれぞれ可変ドメインおよび定常ドメインとも呼ばれる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRと4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。VHのCDRはHCDR1、HCDR2およびHCDR3と呼ばれ、VLのCDRはLCDR1、LCDR2およびLCDR3と呼ばれる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)を含み、CHは、定常ドメインCH1、ヒンジ領域、ならびに定常ドメインCH2およびCH3(以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置されている:CH1、CH2、CH3)にさらに細分することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体は、天然源または組換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであり得、無傷の免疫グロブリンの免疫活性部分であり得る。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体を含む様々な形態で存在し得る。
【0346】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質、例えば抗体またはB細胞受容体(BCR)などの抗原受容体に関する。免疫グロブリンは、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する構造ドメイン、すなわち免疫グロブリンドメインを特徴とする。この用語は、膜結合免疫グロブリンおよび可溶性免疫グロブリンを包含する。膜結合免疫グロブリンは、一般にBCRの一部である、表面免疫グロブリンまたは膜免疫グロブリンとも呼ばれる。可溶性免疫グロブリンは、一般に抗体と呼ばれる。免疫グロブリンは一般に、いくつかの鎖、典型的にはジスルフィド結合を介して連結された2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖を含む。これらの鎖は、主に、VL(可変軽鎖)ドメイン、CL(定常軽鎖)ドメイン、VH(可変重鎖)ドメイン、ならびにCH(定常重鎖)ドメインCH1、CH2、CH3およびCH4などの免疫グロブリンドメインで構成される。哺乳動物免疫グロブリン重鎖には5つの種類、すなわちα、δ、ε、γおよびμが存在し、これらは抗体の異なるクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMを構成する。可溶性免疫グロブリンの重鎖とは対照的に、膜または表面免疫グロブリンの重鎖は、そのカルボキシ末端に膜貫通ドメインおよび短い細胞質ドメインを含む。哺乳動物には、2種類の軽鎖、すなわちラムダおよびカッパが存在する。免疫グロブリン鎖は、可変領域および定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ内で本質的に保存されており、可変部分は高度に多様であり、抗原認識を構成する。
【0347】
「ワクチン接種」および「免疫化」という用語は、治療または予防上の理由で個体を治療するプロセスを表し、本明細書に記載されているように、1つ以上の免疫原または抗原またはその誘導体を、特にそれをコードするRNA(特にmRNA)の形態で個体に投与し、前記1つ以上の免疫原もしくは抗原または前記1つ以上の免疫原もしくは抗原の提示を特徴とする細胞に対する免疫応答を刺激する手順に関する。
【0348】
「抗原の提示を特徴とする細胞」または「抗原を提示する細胞」または「抗原提示細胞の表面に抗原を提示するMHC分子」または同様の表現は、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII分子などのMHC分子に関連して、直接またはプロセシング後のいずれかに、疾患細胞、特に腫瘍細胞もしくは感染細胞、または抗原もしくは抗原ペプチドを提示する抗原提示細胞などの細胞を意味する。いくつかの実施形態では、MHC分子はMHCクラスI分子である。
【0349】
「アレルゲン」という用語は、対象の体外に由来し(すなわち、アレルゲンは「異種抗原」とも呼ばれ得る)、対象の免疫系が、さもなければ対象に無害である認識された脅威を撃退する異常に激しい免疫応答を生じさせる、ある種の抗原を指す。「アレルギー」は、アレルゲンに対するそのような激しい免疫反応によって引き起こされる疾患である。アレルゲンは通常、免疫グロブリンE(IgE)応答を介してアトピー性個体におけるI型過敏反応を刺激することができる抗原である。アレルゲンの特定の例としては、落花生タンパク質(例えばAra h 2.02)、オボアルブミン、イネ科花粉タンパク質(例えばPhl p 5)、およびイエダニのタンパク質(例えばDer p 2)に由来するアレルゲンが挙げられる。
【0350】
「成長因子」という用語は、細胞の成長、増殖、治癒、および/または細胞分化を刺激することができる分子を指す。典型的には、成長因子は細胞間のシグナル伝達分子として機能する。「成長因子」という用語は、その標的細胞の表面上の特異的受容体に結合する特定のサイトカインおよびホルモンを含む。成長因子の例としては、骨形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞成長因子(FGF)、VEGFAなどの血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子、エフリン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ニューレグリン、ニューロトロフィン(例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF))、胎盤成長因子(PGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、レナラーゼ(RNLS)(抗アポトーシス生存因子)、T細胞成長因子(TCGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング成長因子(トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β))、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)が挙げられる。いくつかの実施形態では、「成長因子」は、ペプチドまたはポリペプチド成長因子である。
【0351】
「プロテアーゼ阻害剤」という用語は、プロテアーゼの機能を阻害する分子、特にペプチドまたはポリペプチドを指す。プロテアーゼ阻害剤は、阻害されるプロテアーゼによって(例えばアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤)またはそれらの作用機序によって(例えばセルピンなどの自殺阻害剤)分類することができる。プロテアーゼ阻害剤の特定の例としては、α1-アンチトリプシン、アプロチニン、およびベスタチンなどのセルピンが挙げられる。
【0352】
「酵素」という用語は、化学反応を加速する高分子生物学的触媒を指す。任意の触媒と同様に、酵素はそれらが触媒する反応で消費されず、前記反応の平衡を変化させない。多くの他の触媒とは異なり、酵素ははるかに特異的である。いくつかの実施形態では、酵素は対象の恒常性に不可欠であり、例えば、酵素の機能不全(特に、突然変異、欠失または産生低下のいずれかによって引き起こされ得る活性低下)は疾患をもたらす。酵素の例としては、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV1-TK)、ヘキソサミニダーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、プソイドコリンエステラーゼおよびラクターゼが挙げられる。
【0353】
「受容体」という用語は、細胞の外部からシグナル(特にリガンドと呼ばれる化学シグナル)を受け取るタンパク質分子を指す。受容体へのシグナル(例えばリガンド)の結合は、細胞のある種の応答、例えばキナーゼの細胞内活性化を引き起こす。受容体は、膜貫通型受容体(イオンチャネル連結型(イオンチャネル型)受容体、Gタンパク質結合(代謝型)受容体、および酵素結合受容体など)ならびに細胞内受容体(細胞質受容体および核内受容体など)を含む。受容体の特定の例としては、ステロイドホルモン受容体、成長因子受容体、およびP-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)などのペプチド受容体(すなわち、そのリガンドがペプチドである受容体)が挙げられる。「成長因子受容体」という用語は、成長因子に結合する受容体を指す。
【0354】
「アポトーシス調節因子」という用語は、アポトーシスを調節する、すなわち、アポトーシスを活性化するかまたは阻害する分子、特にペプチドまたはポリペプチドを指す。アポトーシス調節因子は、ミトコンドリア機能を調節するものとカスパーゼを調節するものの2つの広いクラスに分類することができる。第1のクラスには、ミトコンドリア膜電位の喪失および/またはシトクロムCなどのアポトーシス促進性タンパク質のサイトゾルへの放出を防止することによってミトコンドリアの完全性を維持するように働くタンパク質(例えばBCL-2、BCL-xL)が含まれる。また、シトクロムCの放出を促進するアポトーシス促進性タンパク質(例えばBAX、BAK、BIM)もこの第1のクラスに属する。第2のクラスには、カスパーゼの活性化を遮断するアポトーシスタンパク質(例えばXIAP)またはFLIPの阻害剤などのタンパク質が含まれる。
【0355】
「転写因子」という用語は、特に特定のDNA配列に結合することによって、DNAからメッセンジャーRNAへの遺伝情報の転写の速度を調節するタンパク質に関する。転写因子は、生涯を通して細胞分裂、細胞増殖、および細胞死を調節し、胚発生中の細胞移動および組織化を調節し、ならびに/またはホルモンなどの細胞の外側からのシグナルに応答して調節し得る。転写因子は、通常は転写因子によって調節される遺伝子に隣接する、特定のDNA配列に結合する少なくとも1つのDNA結合ドメインを含む。転写因子の特定の例としては、MECP2、FOXP2、FOXP3、STATタンパク質ファミリー、およびHOXタンパク質ファミリーが挙げられる。
【0356】
「腫瘍抑制タンパク質」という用語は、癌への経路の一段階から細胞を保護する分子、特にペプチドまたはポリペプチドに関する。腫瘍抑制タンパク質(通常、対応する腫瘍抑制遺伝子によってコードされる)は、細胞周期の調節に対する弱化もしくは抑制効果を示し、および/またはアポトーシスを促進する。その機能は以下の1つ以上であり得る:細胞周期の継続に不可欠な遺伝子の抑制;DNA損傷への細胞周期の結合(損傷したDNAが細胞内に存在する限り、細胞分裂は起こらないはずである);損傷したDNAを修復できない場合のアポトーシスの開始;転移抑制(例えば腫瘍細胞の分散を防ぎ、接触阻害の喪失をブロックし、および転移を阻害する);ならびにDNA修復。腫瘍抑制タンパク質の特定の例としては、p53、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)、SWI/SNF(SWItch/スクロース非発酵性)、フォンヒッペル-リンダウ腫瘍抑制因子(pVHL)、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)、CD95、腫瘍原性抑制5(ST5)、腫瘍原性抑制5(ST5)、腫瘍原性の抑制14(ST14)、およびYippee様3(YPEL3)が挙げられる。
【0357】
「構造タンパク質」という用語は、さもなければ流動性の生物学的成分に堅さと剛性を付与するタンパク質を指す。構造タンパク質は、ほとんどが線維状(コラーゲンおよびエラスチンなど)であるが、球状(アクチンおよびチューブリンなど)の場合もあり得る。通常、球状タンパク質はモノマーとして可溶性であるが、重合して、例えば細胞骨格を構成し得る長い線維を形成する。他の構造タンパク質は、機械力を生成することができるモータタンパク質(ミオシン、キネシン、およびダイニンなど)、ならびにサーファクタントタンパク質である。構造タンパク質の特定の例としては、コラーゲン、サーファクタントタンパク質A、サーファクタントタンパク質B、サーファクタントタンパク質C、サーファクタントタンパク質D、エラスチン、チューブリン、アクチン、およびミオシンが挙げられる。
【0358】
「再プログラミング因子」または「再プログラミング転写因子」という用語は、任意でさらなる再プログラミング因子などのさらなる作用物質と共に体細胞で発現された場合、幹細胞特性、特に多能性を有する細胞への前記体細胞の再プログラミングまたは脱分化をもたらす分子、特にペプチドまたはポリペプチドに関する。再プログラミング因子の特定の例としては、OCT4、SOX2、c-MYC、KLF4、LIN28、およびNANOGが挙げられる。
【0359】
「ゲノム操作タンパク質」という用語は、DNAを対象のゲノムに挿入する、ゲノムから欠失させるまたは置換することができるタンパク質に関する。ゲノムエンジニアリングタンパク質の特定の例としては、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクタヌクレアーゼ(TALEN)、およびクラスタ化された規則的な間隔の短いパリンドロームリピートCRISPR関連タンパク質9(CRISPR-Cas9)が挙げられる。
【0360】
「血液タンパク質」という用語は、対象の血漿、特に健常対象の血漿中に存在するペプチドまたはポリペプチドに関する。血液タンパク質は、輸送(例えばアルブミン、トランスフェリン)、酵素活性(例えばトロンビンまたはセルロプラスミン)、血液凝固(例えばフィブリノーゲン)、病原体に対する防御(例えば補体成分および免疫グロブリン)、プロテアーゼ阻害剤(例えばα1-アンチトリプシン)などの多様な機能を有する。血液タンパク質の特定の例としては、トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、プロテインC、フォン・ヴィレブランド因子、アンチトロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、修飾第VIII因子、および抗凝固因子が挙げられる。
【0361】
したがって、いくつかの実施形態では、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドは、(i)好ましくはエリスロポエチン(EPO)、インターロイキン4(IL-2)およびインターロイキン10(IL-11)からなる群より選択されるサイトカイン、より好ましくはEPO;(ii)接着分子、特にインテグリン;(iii)免疫グロブリン、特に抗体;(iv)免疫学的に活性な化合物、特に抗原;(v)ホルモン、特にバソプレシン、インスリンまたは成長ホルモン;(vi)成長因子、特にVEGFA;(vii)プロテアーゼ阻害剤、特にα1-アンチトリプシン;(viii)好ましくは単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ(HSV1-TK)、ヘキソサミニダーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、プソイドコリンエステラーゼ、膵酵素およびラクターゼからなる群より選択される酵素;(ix)受容体、特に成長因子受容体;(x)アポトーシス調節因子、特にBAX;(xi)転写因子、特にFOXP3;(xii)腫瘍抑制タンパク質、特にp53;(xiii)構造タンパク質、特にサーファクタントタンパク質B;(xiv)例えばOCT4、SOX2、c-MYC、KLF4、LIN28およびNANOGからなる群より選択される再プログラミング因子;(xv)ゲノムエンジニアリングタンパク質、特にクラスタ化された規則的な間隔の短いパリンドロームリピートCRISPR関連タンパク質9(CRISPR-Cas9);ならびに(xvi)血液タンパク質、特にフィブリノーゲンである。
【0362】
いくつかの実施形態では、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチドは、1つ以上の抗原または1つ以上のエピトープを含む、すなわち、対象へのペプチドまたはポリペプチドの投与は、対象において、治療的または部分的もしくは完全に保護的であり得る、1つ以上の抗原または1つ以上のエピトープに対する免疫応答を誘発する。
【0363】
いくつかの実施形態では、mRNAなどの核酸は、少なくとも1つのエピトープをコードする。
【0364】
いくつかの実施形態では、エピトープは腫瘍抗原に由来する。腫瘍抗原は、様々な癌において発現されることが一般的に知られている「標準」抗原であり得る。腫瘍抗原はまた、個体の腫瘍に特異的であり、免疫系によって以前に認識されていない「ネオ抗原」であり得る。ネオ抗原またはネオエピトープは、アミノ酸変化をもたらす癌細胞のゲノムにおける1つ以上の癌特異的変異から生じ得る。腫瘍抗原の例としては、限定されないが、p53、ART-4、BAGE、β-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディン-6、クローディン-18.2およびクローディン-12などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap 100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(またはhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、またはMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メランA、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl90マイナーBCR-abL、Pml/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART-1またはSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、サバイビン、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、WT、およびWT-1が挙げられる。
【0365】
癌の変異は各個体によって異なる。したがって、新規エピトープ(ネオエピトープ)をコードする癌変異は、ワクチン組成物および免疫療法の開発における魅力的な標的である。腫瘍免疫療法の有効性は、宿主内で強力な免疫応答を誘導することができる癌特異的抗原およびエピトープの選択に依存する。RNAは、患者特異的腫瘍エピトープを患者に送達するために使用することができる。脾臓に存在する樹状細胞(DC)は、腫瘍エピトープなどの免疫原性エピトープまたは抗原のRNA発現のための特に興味深い抗原提示細胞である。複数のエピトープの使用は、腫瘍ワクチン組成物における治療効果を促進することが示されている。腫瘍ミュータノームの迅速な配列決定は、本明細書に記載のmRNAによってコードされ得る個別化ワクチンのための複数のエピトープを、例えば、エピトープが任意でリンカーによって分離されている単一のポリペプチドとして提供し得る。本開示のいくつかの実施形態では、mRNAは、少なくとも1つのエピトープ、少なくとも2つのエピトープ、少なくとも3つのエピトープ、少なくとも4つのエピトープ、少なくとも5つのエピトープ、少なくとも6つのエピトープ、少なくとも7つのエピトープ、少なくとも8つのエピトープ、少なくとも9つのエピトープ、または少なくとも10個のエピトープをコードする。例示的な実施形態は、少なくとも5つのエピトープ(「ペンタトープ」と呼ばれる)をコードするmRNAおよび少なくとも10個のエピトープ(「デカトープ」と呼ばれる)をコードするmRNAを含む。
【0366】
いくつかの実施形態では、抗原またはエピトープは、病原体関連抗原、特にウイルス抗原に由来する。いくつかの実施形態では、抗原またはエピトープは、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性変異体、またはSARS-CoV-2 Sタンパク質の免疫原性断片もしくはその免疫原性変異体に由来する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示で使用されるmRNAは、SARS-CoV-2 Sタンパク質、その免疫原性変異体、またはSARS-CoV-2 Sタンパク質の免疫原性断片もしくはその免疫原性変異体を含むアミノ酸配列をコードする。
【0367】
本開示のいくつかの実施形態では、抗原(腫瘍抗原またはワクチン抗原など)は、好ましくは、RNAが投与される対象の細胞に入るとそれぞれのタンパク質に翻訳される一本鎖5’キャップmRNAとして投与される。好ましくは、RNAは、安定性および翻訳効率に関してRNAの最大有効性のために最適化された構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)配列)を含む。
【0368】
いくつかの実施形態では、β-S-ARCA(D1)をmRNAの5’末端の特異的キャッピング構造として利用する。いくつかの実施形態では、m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGをmRNAの5’-末端の特異的キャッピング構造として利用する。いくつかの実施形態では、5’-UTR配列は、ヒトα-グロビンmRNAに由来し、任意で、翻訳効率を高めるために最適化された「コザック配列」を有する。いくつかの実施形態では、「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素(FI要素)の組合せをコード配列とポリ(A)配列との間に配置して、より高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続性を確実にする。いくつかの実施形態では、ヒトβグロビンmRNAに由来する2つの反復3’-UTRをコード配列とポリ(A)尾部との間に配置して、より高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続性を確実にする。いくつかの実施形態では、30個のアデノシン残基のストレッチと、それに続く10個のヌクレオチドリンカー配列および別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)配列が使用される。このポリ(A)配列は、RNAの安定性および翻訳効率を高めるように設計された。
【0369】
いくつかの実施形態では、抗原(腫瘍抗原またはワクチン抗原など)をコードするmRNAは、治療される対象の細胞で発現されて、抗原を提供する。いくつかの実施形態では、mRNAは対象の細胞において一過性に発現される。いくつかの実施形態では、mRNAはインビトロ転写される。いくつかの実施形態では、抗原の発現は細胞表面においてである。いくつかの実施形態では、抗原はMHCに関連して発現および提示される。いくつかの実施形態では、抗原の発現は細胞外空間に対してであり、すなわち抗原は分泌される。
【0370】
抗原分子またはそのプロセシング産物、例えばその断片は、免疫エフェクタ細胞によって運ばれるBCRまたはTCRなどの抗原受容体、または抗体に結合し得る。
【0371】
抗原がワクチン抗原である、ペプチド抗原およびポリペプチド抗原をコードするmRNAを投与することによって本開示に従って対象に提供されるペプチド抗原およびポリペプチド抗原は、好ましくは、ペプチド抗原またはポリペプチド抗原が提供される対象において免疫応答、例えば体液性および/または細胞性免疫応答の誘導をもたらす。前記免疫応答は、好ましくは標的抗原に対するものである。したがって、ワクチン抗原は、標的抗原、その変異体、またはその断片を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような断片または変異体は、標的抗原と免疫学的に等価である。本開示の文脈において、「抗原の断片」または「抗原の変異体」という用語は、免疫応答が抗原を標的とする免疫応答の誘導をもたらす作用物質、すなわち標的抗原を意味する。したがって、ワクチン抗原は、標的抗原に対応し得るもしくはそれを含み得る、標的抗原の断片に対応し得るかもしくはそれを含み得る、または標的抗原もしくはその断片に相同な抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る。したがって、本開示によれば、ワクチン抗原は、標的抗原の免疫原性断片または標的抗原の免疫原性断片に相同なアミノ酸配列を含み得る。本開示による「抗原の免疫原性断片」は、好ましくは、標的抗原に対する免疫応答を誘導することができる抗原の断片に関する。ワクチン抗原は組換え抗原であり得る。
【0372】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示し、および/または、例えば免疫学的効果の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的効果を及ぼすことを意味する。本開示の文脈において、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは、免疫化に使用される抗原または抗原変異体の免疫学的効果または特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列が対象の免疫系に曝露されたときに、参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。
【0373】
いくつかの実施形態では、本開示で使用されるmRNAは非免疫原性である。免疫賦活化剤をコードするRNAを本開示に従って投与して、アジュバント効果を提供し得る。免疫賦活化剤をコードするRNAは、標準RNAまたは非免疫原性RNAであり得る。
【0374】
本明細書で使用される「非免疫原性RNA」(「非免疫原性mRNA」など)という用語は、例えば哺乳動物に投与したとき免疫系による応答を誘導しないか、または非免疫原性RNAを非免疫原性にする修飾および処理に供されていないという点においてのみ異なる同じRNAによって誘導されるよりも弱い応答を誘導する、すなわち標準的なRNA(stdRNA)によって誘導されるよりも弱い応答を誘導するRNAを指す。特定の実施形態では、本明細書では修飾RNA(modRNA)とも呼ばれる非免疫原性RNAは、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する修飾ヌクレオシドをRNAに組み込む工程、および/または二本鎖RNA(dsRNA)を除去する工程によって非免疫原性にされる。
【0375】
修飾ヌクレオシドの組み込みによって非免疫原性RNA(特にmRNA)を非免疫原性にするために、RNAの免疫原性を低下させるまたは抑制する限り、任意の修飾ヌクレオシドを使用し得る。自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する修飾ヌクレオシドが特に好ましい。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む。いくつかの実施形態では、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。いくつかの実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(m1s4Ψ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(m3Ψ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acp3Ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される。特定の実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)、特にN1-メチル-プソイドウリジンである。
【0376】
いくつかの実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%のウリジンの置換を含む。
【0377】
T7 RNAポリメラーゼを使用したインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中、酵素の通常とは異なる活性のために二本鎖RNA(dsRNA)を含む有意な量の異常な産物が産生される。dsRNAは、炎症性サイトカインを誘導し、エフェクタ酵素を活性化してタンパク質合成の阻害をもたらす。dsRNAは、例えば、非多孔性または多孔性のC-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリックスを使用するイオン対逆相HPLCによって、IVT RNAなどのRNAから除去することができる。あるいは、ssRNAではなくdsRNAを特異的に加水分解し、それによってIVT RNA調製物からdsRNA夾雑物を除去する大腸菌RNaseIIIを用いた酵素ベースの方法を使用することができる。さらに、セルロース材料を使用することによってdsRNAをssRNAから分離することができる。いくつかの実施形態では、RNA調製物をセルロース材料と接触させ、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を許容しない条件下で、ssRNAをセルロース材料から分離する。ssRNAを提供するための適切な方法は、例えば国際公開第2017/182524号に開示されている。
【0378】
本明細書で使用される場合、「除去する」または「除去」という用語は、dsRNAなどの第2の物質の集団の近傍から分離されている、非免疫原性RNAなどの第1の物質の集団の特徴を指し、ここで、第1の物質の集団は必ずしも第2の物質を欠くわけではなく、第2の物質の集団は必ずしも第1の物質を欠くわけではない。しかしながら、第2の物質の集団の除去を特徴とする第1の物質の集団は、第1の物質と第2の物質との分離されていない混合物と比較して、第2の物質の含有量が測定可能に低い。
【0379】
いくつかの実施形態では、非免疫原性RNAからのdsRNA(特にmRNA)の除去は、非免疫原性RNA組成物中のRNAの10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.3%未満、または0.1%未満がdsRNAであるようなdsRNAの除去を含む。いくつかの実施形態では、非免疫原性RNA(特にmRNA)は、dsRNAを含まないか、または本質的に含まない。いくつかの実施形態では、非免疫原性RNA(特にmRNA)組成物は、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製された調製物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、一本鎖ヌクレオシド修飾RNA(特にmRNA)の精製調製物は、二本鎖RNA(dsRNA)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、精製調製物は、他の全ての核酸分子(DNA、dsRNAなど)と比較して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%の一本鎖ヌクレオシド修飾RNAである。
【0380】
いくつかの実施形態では、非免疫原性RNA(特にmRNA)は、同じ配列を有する標準RNAよりも効率的に細胞内で翻訳される。いくつかの実施形態では、翻訳は、その修飾されていない対応物と比較して2倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は3倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は4倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は5倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は6倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は7倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は8倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は9倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は10倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は15倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は20倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は50倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は100倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は200倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は500倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は1000倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は2000倍増強される。いくつかの実施形態では、倍数は10~1000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~100倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~200倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~300倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~500倍である。いくつかの実施形態では、倍数は20~1000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は30~1000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は50~1000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は100~1000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は200~1000倍である。いくつかの実施形態では、翻訳は、任意の他の有意な量または量の範囲だけ増強される。
【0381】
いくつかの実施形態では、非免疫原性RNA(特にmRNA)は、同じ配列を有する標準RNAよりも有意に低い自然免疫原性を示す。いくつかの実施形態では、非免疫原性RNA(特にmRNA)は、その非修飾対応物よりも2倍低い自然免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は3倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は4倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は5倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は6倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は7倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は8倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は9倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は10倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は15倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は20倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は50倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は100倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は200倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は500倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は1000倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は2000倍低下する。
【0382】
「有意に低い自然免疫原性を示す」という用語は、自然免疫原性の検出可能な低下を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、検出可能な自然免疫応答を誘発することなく有効量の非免疫原性RNA(特にmRNA)を投与することができるような低下を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、非免疫原性RNA(特にmRNA)を、非免疫原性RNAによってコードされるタンパク質の産生を検出可能に減少させるのに十分な自然免疫応答を誘発することなく繰り返し投与することができるような低下を指す。いくつかの実施形態では、低下は、非免疫原性RNA(特にmRNA)を、非免疫原性RNAによってコードされるタンパク質の検出可能な産生を排除するのに十分な自然免疫応答を誘発することなく繰り返し投与することができるようなものである。
【0383】
「免疫原性」は、RNAなどの異物がヒトまたは他の動物の体内で免疫応答を引き起こす能力である。自然免疫系は、比較的非特異的で即時的な免疫系の構成要素である。これは、適応免疫系と共に、脊椎動物免疫系の2つの主な構成要素のうちの1つである。
【0384】
粒子
本明細書に記載の核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)は、(i)核酸、および(ii)核酸を複合体化するポリマーまたは脂質などの少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性のイオン化可能な化合物を含む粒子中に存在し得る。ポリマーおよび脂質などの正に帯電した分子と負に帯電した核酸との間の静電相互作用は、粒子形成に関与する。これは、核酸粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。
【0385】
様々なタイプのRNA含有粒子が微粒子形態のRNAの送達に適することが以前に記述されている(例えば、Kaczmarek,J.C.et al.,2017,Genome Medicine 9,60参照)。非ウイルスRNA送達ビヒクルの場合、RNAのナノ粒子封入はRNAを分解から物理的に保護し、特定の化学的性質に応じて、細胞取り込みおよびエンドソーム脱出を支援することができる。
【0386】
本開示の文脈において、「粒子」という用語は、分子または分子複合体、特に粒子形成化合物によって形成された構造化実体に関する。いくつかの実施形態では、粒子は、1種類以上の両親媒性物質(例えば両親媒性脂質)から作製されたエンベロープ(例えば1つ以上の層またはラメラ)を含有する。これに関連して、「両親媒性物質」という表現は、物質が親水性および親油性の両方の特性を有することを意味する。エンベロープはまた、両親媒性である必要がないさらなる物質(例えばさらなる脂質)を含み得る。したがって、粒子は、1つ以上の層またはラメラを構成する物質が、任意で、両親媒性である必要がないさらなる物質(例えばさらなる脂質)と組み合わせて、1種類以上の両親媒性物質(特に、両親媒性脂質からなる群より選択される)を含む、モノラメラまたはマルチラメラ構造であり得る。いくつかの実施形態では、「粒子」という用語は、マイクロサイズまたはナノサイズの構造、例えばマイクロサイズまたはナノサイズのコンパクト構造に関する。本開示によれば、「粒子」という用語はナノ粒子を含む。
【0387】
「RNA粒子」を使用して、目的の標的部位(例えば細胞、組織、器官など)にRNAを送達することができる。RNA粒子は、少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質または脂質様物質を含む脂質から形成され得る。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質または脂質様物質は、RNAと一緒に結合して凝集体を形成し、この凝集はコロイド的に安定な粒子をもたらすと考えられる。
【0388】
本明細書に記載の核酸粒子(RNA粒子、DNA粒子またはDNA/RNA粒子など)は、脂質ナノ粒子(LNP)ベースおよびリポプレックス(LPX)ベースの製剤を含む。
【0389】
一般に、リポプレックス(LPX)は、2つの水相、すなわち核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を含む相と脂質の分散液を含む相とを混合することから得ることができる。いくつかの実施形態では、脂質相はリポソームを含む。
【0390】
いくつかの実施形態では、リポソームは自己閉鎖型単層または多層小胞粒子であり、ラメラは脂質二重層を含み、封入された内腔は水相を含む。ナノ粒子形成のためにリポソームを使用するための必要条件は、必要に応じて混合物中の脂質が適用された水性環境中でラメラ(二重層)相を形成することができることである。
【0391】
いくつかの実施形態では、リポソームは、水性コア(本明細書では水性内腔とも呼ばれる)を取り囲む単層または多層リン脂質二重層を含む。それらは、極性頭部(親水性)基および非極性尾部(疎水性)基を有する材料から調製され得る。いくつかの実施形態では、核酸の送達のために設計されたリポソームを製剤化するのに使用されるカチオン性脂質は、本質的に両親媒性であり、グリセロールを介して炭化水素鎖またはコレステロール誘導体に連結された正電荷(カチオン性)アミン頭部基からなる。
【0392】
いくつかの実施形態では、リポプレックスは、カチオン性リポソームと核酸(RNAおよび/またはDNAなど)との静電相互作用の際に形成される多層リポソームベースの製剤である。いくつかの実施形態では、形成されたリポプレックスは、リポソーム構造からコンパクト核酸-リポプレックス(RNA-リポプレックスおよび/またはDNA-リポプレックスなど)への変換に起因して生じる分子の異なる内部配置を有する。いくつかの実施形態では、これらの製剤は、核酸(RNAなど)の封入が不十分であり、核酸(RNAなど)の捕捉が不完全であることを特徴とする。
【0393】
いくつかの実施形態では、LPX粒子は、両親媒性脂質、特にカチオン性またはカチオン性のイオン化可能な両親媒性脂質、および本明細書に記載の核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)を含む。いくつかの実施形態では、正に帯電したリポソーム(1つ以上の両親媒性脂質、特にカチオン性またはカチオン性のイオン化可能な両親媒性脂質から作製される)と負に帯電した核酸(特にmRNA)との間の静電相互作用は、核酸リポプレックス粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。正に荷帯電したリポソームは、一般に、DOTMAおよび/またはDODMAなどのカチオン性またはカチオン性のイオン化可能な両親媒性脂質、ならびにDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成され得る。いくつかの実施形態では、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)リポプレックス粒子はナノ粒子である。
【0394】
一般に、脂質ナノ粒子(LNP)は、水相中の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)と、エタノールなどの有機溶媒を含む相中の脂質との直接混合から得ることができる。その場合、水中でラメラ(二重層)相を形成しない脂質または脂質混合物を粒子形成に使用することができる。
【0395】
いくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性/イオン化可能脂質ならびにヘルパー脂質、例えばリン脂質、コレステロールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)脂質を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸LNP(例えばRNA LNP、例えばmRNA LNP)において、核酸(例えばRNA、例えばmRNA)は、LNPの中心コアを占めるイオン化可能な脂質によって結合される。いくつかの実施形態では、PEG脂質は、リン脂質と共にLNPの表面を形成する。いくつかの実施形態では、表面は二重層を含む。いくつかの実施形態では、荷電形態および非荷電形態のコレステロールおよびイオン化可能な脂質は、LNP全体に分布し得る。
【0396】
いくつかの実施形態では、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、例えばmRNA)は、本明細書に記載の粒子と非共有結合的に会合し得る。実施形態では、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)は、粒子の外面に付着していてもよく(表面核酸(例えば表面RNA、特に表面mRNA))、および/または粒子に含まれていてもよい(封入された核酸(例えば封入されたRNA、特に封入されたmRNA))。
【0397】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の粒子(例えば、LNPおよびLPX)は、約10~約2000nmの範囲、例えば少なくとも約15nm(例えば、少なくとも約20nm、少なくとも約25nm、少なくとも約30nm、少なくとも約35nm、少なくとも約40nm、少なくとも約45nm、少なくとも約50nm、少なくとも約55nm、少なくとも約60nm、少なくとも約65nm、少なくとも約70nm、少なくとも約75nm、少なくとも約80nm、少なくとも約85nm、少なくとも約90nm、少なくとも約95nm、もしくは少なくとも約100nm)および/または最大でも1900nm(例えば、最大でも約1900nm、最大でも約1800nm、最大でも約1700nm、最大でも約1600nm、最大でも約1500nm、最大でも約1400nm、最大でも約1300nm、最大でも約1200nm、最大でも約1100nm、最大でも約1000nm、最大でも約950nm、最大でも約900nm、最大でも約850nm、最大でも約800nm、最大でも約750nm、最大でも約700nm、最大でも約650nm、最大でも約600nm、最大でも約550nm、もしくは最大でも約500nm)、例えば約20~約1500nm、例えば約30~約1200nm、約40~約1100nm、約50~約1000nm、約60~約900nm、約70~800nm、約80~700nm、約90~600nm、または約50~500nmまたは約100~500nmの範囲、例えば10~1000nm、15~500nm、20~450nm、25~400nm、30~350nm、40~300nm、50~250nm、60~200nm、または70~150nmの範囲のサイズ(直径など)を有する。
【0398】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の粒子(例えば、LNPおよびLPX)は、いくつかの実施形態では、約50nm~約1000nm、約50nm~約800nm、約50nm~約700nm、約50nm~約600nm、約50nm~約500nm、約50nm~約450nm、約50nm~約400nm、約50nm~約350nm、約50nm~約300nm、約50nm~約250nm、約50nm~約200nm、約100nm~約1000nm、約100nm~約800nm、約100nm~約700nm、約100nm~約600nm、約100nm~約500nm、約100nm~約450nm、約100nm~約400nm、約100nm~約350nm、約100nm~約300nm、約100nm~約250nm、約100nm~約200nm、約150nm~約1000nm、約150nm~約800nm、約150nm~約700nm、約150nm~約600nm、約150nm~約500nm、約150nm~約450nm、約150nm~約400nm、約150nm~約350nm、約150nm~約300nm、約150nm~約250nm、約150nm~約200nm、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約200nm~約700nm、約200nm~約600nm、約200nm~約500nm、約200nm~約450nm、約200nm~約400nm、約200nm~約350nm、約200nm~約300nm、または約200nm~約250nmの範囲の平均直径を有する。
【0399】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の粒子はナノ粒子である。「ナノ粒子」という用語は、本明細書に記載の核酸(特にmRNA)および少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質を含むナノサイズ粒子に関し、粒子の3つの外形寸法は全てナノスケール、すなわち少なくとも約1nmおよび約1000nm未満である。好ましくは、粒子のサイズはその直径である。
【0400】
本明細書に記載の核酸粒子(特にmRNA粒子)は、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、約0.2未満、約0.1未満、または約0.05未満の多分散指数(PDI)を示し得る。例として、核酸粒子は、約0.01~約0.4または約0.1~約0.3の範囲の多分散指数を示し得る。
【0401】
N/P比は、脂質中の窒素基対核酸中のリン酸基の数の比率を与える。窒素原子(pHに依存する)は通常正に帯電し、リン酸基は負に帯電するので、これは電荷比と相関する。電荷平衡が存在する場合、N/P比はpHに依存する。正に帯電したナノ粒子はトランスフェクションに有利であると考えられているので、脂質製剤は、4より大きく12までのN/P比で形成されることが多い。その場合、RNAはナノ粒子に完全に結合していると見なされる。
【0402】
本明細書に記載の核酸粒子(特にmRNA粒子などのRNA粒子)は、少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質からコロイドを得る工程、およびコロイドを核酸と混合して核酸粒子を得る工程を含み得る広範囲の方法を使用して調製することができる。
【0403】
本明細書で使用される「コロイド」という用語は、分散した粒子が沈降しない均質な混合物の一種に関する。混合物中の不溶性粒子は微視的であり、粒径は1~1000ナノメートルである。混合物は、コロイドまたはコロイド懸濁液と呼ばれ得る。「コロイド」という用語は、混合物中の粒子のみを指し、懸濁液全体を指すのではない場合がある。
【0404】
少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質を含むコロイドの調製のために、リポソーム小胞を調製するために従来使用され、適切に適合された方法が本明細書で適用可能である。リポソーム小胞を調製するために最も一般的に使用される方法は、以下の基本的な段階を共有する:(i)有機溶媒中での脂質溶解、(ii)得られた溶液の乾燥、および(iii)乾燥した脂質の水和(様々な水性媒体を使用して)。
【0405】
膜水和法では、脂質を最初に適切な有機溶媒に溶解し、乾燥させてフラスコの底部に薄膜を得る。得られた脂質膜を、適切な水性媒体を用いて水和して、リポソーム分散液を得る。さらに、さらなる小型化工程が含まれてもよい。
【0406】
逆相蒸発は、水相と脂質を含有する有機相との間の油中水型エマルジョンの形成を含む、リポソーム小胞を調製するための膜水和の代替方法である。この混合物の短時間の超音波処理は、系の均質化のために必要である。減圧下での有機相の除去により、その後リポソーム懸濁液に変わる乳白色のゲルが得られる。
【0407】
「エタノール注入技術」という用語は、脂質を含むエタノール溶液が針を通して水溶液に迅速に注入されるプロセスを指す。この作用は、溶液全体に脂質を分散させ、脂質構造形成、例えばリポソーム形成などの脂質小胞形成を促進する。一般に、本明細書に記載の核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)リポプレックス粒子は、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)をコロイドリポソーム分散液に添加することによって得ることができる。エタノール注入技術を使用して、そのようなコロイドリポソーム分散液は、いくつかの実施形態では、以下のように形成される:DOTMAおよび/またはDODMAのようなカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質などの脂質ならびにさらなる脂質を含むエタノール溶液を撹拌下で水溶液に注入する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)リポプレックス粒子は、押出工程なしで得ることができる。
【0408】
「押し出す」または「押出」という用語は、固定された断面プロファイルを有する粒子の作製を指す。特に、これは粒子の小型化を指し、それによって粒子は規定された細孔を有するフィルタを通過する。
【0409】
有機溶媒を含まない特性を有する他の方法もまた、コロイドを調製するために本開示に従って使用され得る。
【0410】
いくつかの実施形態では、LNPは、4つの成分:イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質などの中性脂質、コレステロールなどのステロイド、およびポリマーコンジュゲート脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、エタノールに溶解した脂質を水性緩衝液中で核酸(RNAおよび/またはDNAなど)と迅速に混合することによって調製され得る。本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子は、PEG脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含み得るが、本明細書では、PEG脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含まない核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子も提供される。
【0411】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)と少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質とを含むLNPは、(a)水および緩衝系を含有する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)溶液を調製する工程;(b)カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質、および存在する場合は、1つ以上のさらなる脂質を含むエタノール溶液を調製する工程;ならびに(c)(a)で調製した核酸(RNAおよび/またはDNAなど)溶液を(b)で調製したエタノール溶液と混合し、それによってLNPを含む製剤を調製する工程によって調製される。工程(c)の後に、接線流濾過などの希釈および濾過から選択される1つ以上の工程を行うことができる。
【0412】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)と少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質とを含むLNPは、(a’)カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質、および存在する場合は、水相中の1つ以上のさらなる脂質のリポソームまたはコロイド調製物を調製する工程;(b’)水および緩衝系を含有する核酸(RNAおよび/またはDNAなど)溶液を調製する工程;ならびに(c’)(a’)で調製したリポソームまたはコロイド調製物を(b’)で調製した核酸(RNAおよび/またはDNAなど)溶液と混合する工程によって調製される。工程(c’)の後に、接線流濾過などの希釈および濾過から選択される1つ以上の工程を行うことができる。
【0413】
本開示は、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)と、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)と会合して核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子を形成する少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質とを含む粒子、ならびにそのような粒子を含む組成物を記載する。核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子は、粒子に対する非共有結合相互作用によって様々な形態で複合体化された核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を含み得る。本明細書に記載の粒子は、ウイルス粒子、特に感染性ウイルス粒子ではない、すなわち、それらは細胞にウイルス感染することができない。
【0414】
適切なカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質は、核酸粒子を形成するものであり、「粒子形成成分」または「粒子形成剤」という用語に含まれる。「粒子形成成分」または「粒子形成剤」という用語は、核酸と会合して核酸粒子を形成する任意の成分に関する。そのような成分は、核酸粒子の一部であり得る任意の成分を含む。
【0415】
いくつかの実施形態では、核酸粒子(例えばRNAおよび/またはDNA粒子、特にmRNA粒子)は、複数種の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)分子を含み、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)分子の分子パラメータは、モル質量、または分子構造、キャッピング(RNAのみ)、コード領域もしくは他の特徴などの基本的構造要素に関してのように、互いに類似し得るかまたは異なり得る。
【0416】
粒子製剤では、各核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種を個々の粒子製剤として別々に製剤化することが可能である。その場合、各個々の粒子製剤は、1つの核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種を含む。個々の粒子製剤は、別個の実体として、例えば別個の容器中に存在し得る。そのような製剤は、各核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種を別々に(典型的にはそれぞれ核酸(RNAおよび/またはDNAなど)含有溶液の形態で)粒子形成剤と共に提供し、それによって粒子の形成を可能にすることによって得ることができる。それぞれの粒子は、粒子が形成されるときに提供される特定の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種のみを含む(個々の粒子製剤)。いくつかの実施形態では、医薬組成物などの組成物は、複数の個々の粒子製剤を含む。それぞれの医薬組成物は混合粒子製剤と呼ばれる。本発明による混合粒子製剤は、個々の粒子製剤を別々に形成し、続いて個々の粒子製剤を混合する工程によって得ることができる。混合する工程により、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)含有粒子の混合集団を含む製剤を得ることができる。個々の粒子集団は、個々の粒子製剤の混合集団を含む1つの容器に一緒に存在し得る。あるいは、医薬組成物の全ての核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種を組み合わせた粒子製剤として一緒に製剤化することが可能である。そのような製剤は、全ての核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種の組合せ製剤(典型的には組合せ溶液)を粒子形成剤と共に提供し、それによって粒子の形成を可能にすることによって得ることができる。混合粒子製剤とは対照的に、組合せ粒子製剤は、典型的には、複数の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種を含む粒子を含む。組合せ粒子組成物では、異なる核酸(RNAおよび/またはDNAなど)種が、典型的には単一粒子中に一緒に存在する。
【0417】
ポリマー
ポリマーは、それらの高度な化学的柔軟性を考慮して、ナノ粒子ベースの送達のために一般的に使用される材料である。典型的には、カチオン性ポリマーは、負に帯電した核酸をナノ粒子に静電的に凝縮するために使用される。これらの正に帯電した基は、多くの場合、5.5~7.5のpH範囲でプロトン化の状態を変化させるアミンからなり、エンドソーム破裂をもたらすイオン不均衡につながると考えられる。ポリ-L-リジン、ポリアミドアミン、プロタミンおよびポリエチレンイミンなどのポリマー、ならびにキトサンなどの天然に存在するポリマーは全て核酸送達に適用されており、本明細書におけるカチオン性ポリマーとして適している。さらに、一部の研究者は、特に核酸送達のためのポリマーを合成した。ポリ(β-アミノエステル)は、特に、その合成の容易さと生分解性のために核酸送達において広く使用されている。そのような合成ポリマーは、本明細書におけるカチオン性ポリマーとしても適している。
【0418】
本明細書で使用される「ポリマー」は、その通常の意味、すなわち、共有結合によって連結された1つ以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造体という意味を与えられる。繰り返し単位は、全て同一であり得るか、または場合によっては、ポリマー内に複数種の繰り返し単位が存在し得る。場合によっては、ポリマーは生物学的に誘導される、すなわち、タンパク質などのバイオポリマーである。場合によっては、さらなる部分、例えば標的化部分もポリマー中に存在し得る。
【0419】
複数種の繰り返し単位がポリマー内に存在する場合、そのポリマーは「コポリマー」であると言われる。本明細書で使用されるポリマーはコポリマーであり得ることを理解されたい。コポリマーを形成する繰り返し単位は、任意の方法で配置され得る。例えば、繰り返し単位は、ランダムな順序で、交互の順序で、または「ブロック」コポリマーとして、すなわち、それぞれが第1の繰り返し単位(例えば第1のブロック)を含む1つ以上の領域、およびそれぞれが第2の繰り返し単位(例えば第2のブロック)を含む1つ以上の領域、などを含むように配置することができる。ブロックコポリマーは、2つ(ジブロックコポリマー)、3つ(トリブロックコポリマー)、またはそれ以上の数の別個のブロックを有することができる。
【0420】
特定の実施形態では、ポリマーは生体適合性である。生体適合性ポリマーは、典型的には、中程度の濃度で有意な細胞死を引き起こさないポリマーである。特定の実施形態では、生体適合性ポリマーは生分解性であり、すなわち、ポリマーは、体内などの生理学的環境内で、化学的および/または生物学的に分解することができる。
【0421】
特定の実施形態では、ポリマーは、プロタミンまたはポリアルキレンイミンであり得る。
【0422】
「プロタミン」という用語は、アルギニンに富み、様々な動物(魚のような)の精子細胞において体細胞ヒストンの代わりに特にDNAと会合して見出される、比較的低分子量の様々な強塩基性タンパク質のいずれかを指す。特に、「プロタミン」という用語は、強塩基性で、水に可溶性であり、熱によって凝固せず、加水分解時に主にアルギニンを生成する、魚の精子に見出されるタンパク質を指す。精製形態では、それらは、インスリンの長時間作用型製剤において、ヘパリンの抗凝固作用を中和するために使用される。
【0423】
本開示によれば、本明細書で使用される「プロタミン」という用語は、天然源または生物源から得られるまたはそれに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列およびその断片、ならびに前記アミノ酸配列またはその断片の多量体形態、ならびに人工の、特定の目的のために特別に設計された、天然源または生物源から単離することができない(合成された)ポリペプチドを含むことが意図されている。
【0424】
一実施形態では、ポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミンおよび/またはポリプロピレンイミン、好ましくはポリエチレンイミンを含む。好ましいポリアルキレンイミンはポリエチレンイミン(PEI)である。PEIの平均分子量は、好ましくは0.75×102~107Da、好ましくは1000~105Da、より好ましくは10000~40000Da、より好ましくは15000~30000Da、さらにより好ましくは20000~25000Daである。
【0425】
本開示によれば、直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)などの直鎖状ポリアルキレンイミンが好ましい。
【0426】
本明細書での使用が企図されるカチオン性ポリマー(ポリカチオン性ポリマーを含む)には、核酸に静電的に結合することができる任意のカチオン性ポリマーが含まれる。一実施形態では、本明細書での使用が企図されるカチオン性ポリマーは、例えば核酸と複合体を形成することによって、または核酸が封入もしくはカプセル化された小胞を形成することによって、核酸が会合することができる任意のカチオン性ポリマーを含む。
【0427】
本明細書に記載の粒子はまた、カチオン性ポリマー以外のポリマー、すなわち非カチオン性ポリマーおよび/またはアニオン性ポリマーを含み得る。集合的に、アニオン性および中性ポリマーは、本明細書では非カチオン性ポリマーと呼ばれる。
【0428】
脂質
「脂質」および「脂質様物質」という用語は、本明細書では、1つ以上の疎水性部分または基、および任意で1つ以上の親水性部分または基も含む分子として広く定義される。疎水性部分および親水性部分を含む分子はまた、しばしば両親媒性物質として示される。脂質は、通常、水に不溶性または難溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性である。水性環境では、両親媒性の性質は、分子が組織化された構造体および様々な相に自己集合することを可能にする。それらの相の1つは、水性環境で小胞、多層/単層リポソーム、または膜に存在する場合、脂質二重層からなる。疎水性は、長鎖飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、ならびに1つ以上の芳香族、脂環式、または複素環式基で置換されたそのような基を含むがこれらに限定されない無極性基を含むことによって付与され得る。親水性基は、極性および/または荷電基を含み得、炭水化物、リン酸基、カルボン酸基、硫酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、および他の同様の基を含む。
【0429】
本明細書で使用される場合、「疎水性」という用語は、水溶液中で実質的に非混和性または不溶性である任意の分子、部分または基を指す。疎水性基という用語は、少なくとも6個の炭素原子を有する炭化水素を含む。疎水性基は、水溶液中で実質的に非混和性または不溶性であるという条件を満たす限り、官能基(例えば、エーテル、エステル、ハロゲン化物など)ならびに炭素および水素以外の原子を有することができる。
【0430】
「炭化水素」という用語は、本明細書で定義されるアルキル、アルケニル、またはアルキニルを含む。アルキル、アルケニルまたはアルキニル中の水素の1つ以上は、他の原子、例えばハロゲン、酸素または硫黄で置換されてもよいことを理解されたい。特に明記しない限り、炭化水素基はまた、炭化水素の全体的な極性が比較的無極性のままである限り、環状(アルキル、アルケニルもしくはアルキニル)基またはアリール基を含むことができる。
【0431】
「アルキル」という用語は、6~30個、典型的には6~20個、しばしば6~18個の炭素原子を有し得る飽和直鎖または分岐一価炭化水素部分を指す。例示的な非極性アルキル基としては、ヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0432】
「アルケニル」という用語は、総炭素原子が6~30個、典型的には6~20個、しばしば6~18個であり得る、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐一価炭化水素部分を指す。
【0433】
「アルキニル」という用語は、総炭素原子が6~30個、典型的には6~20個、しばしば6~18個であり得る、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分岐一価炭化水素部分を指す。アルキニル基は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有していてもよい。
【0434】
本明細書で使用される場合、「両親媒性」という用語は、極性部分と非極性部分の両方を有する分子を指す。多くの場合、両親媒性化合物は、長い疎水性尾部に結合した極性頭部を有する。いくつかの実施形態では、極性部分は水に可溶性であるが、非極性部分は水に不溶性である。さらに、極性部分は、形式正電荷または形式負電荷のいずれかを有し得る。あるいは、極性部分は、形式正電荷および形式負電荷の両方を有してもよく、双性イオンまたは内部塩であってもよい。本開示の目的のために、両親媒性化合物は、1つ以上の天然または非天然脂質および脂質様化合物であり得るが、これらに限定されない。
【0435】
「脂質様物質」、「脂質様化合物」または「脂質様分子」という用語は、構造的および/または機能的に脂質に関連するが、厳密な意味で脂質とは見なされない可能性がある物質に関する。例えば、この用語は、水性環境で小胞、多層/単層リポソーム、または膜に存在する場合に両親媒性層を形成することができる化合物を含み、界面活性剤、または親水性部分と疎水性部分の両方を有する合成化合物を含む。一般的に言えば、この用語は、脂質の構造と類似していても類似していなくてもよい、異なる構造組織を有する親水性部分と疎水性部分とを含む分子を指す。細胞膜への自発的な組み込みが可能な脂質様化合物の例としては、合成機能-スペーサ-脂質構築物(FSL)、合成機能-スペーサ-ステロール構築物(FSS)、および人工両親媒性分子などの機能性脂質構築物が挙げられる。脂質は一般に円筒形である。2つのアルキル鎖が占める面積は、極性頭部基が占める面積と同様である。脂質はモノマーとしての溶解度が低く、水不溶性の平面二重層に凝集する傾向がある。従来の界面活性剤モノマーは、一般に円錐形である。親水性頭部基は、直鎖アルキル鎖よりも多くの分子空間を占める傾向がある。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、水溶性である球形または楕円形のミセルに凝集する傾向がある。脂質はまた、界面活性剤と同じ一般構造-極性親水性頭部基および非極性疎水性尾部-を有するが、脂質は、モノマーの形状、溶液中で形成される凝集体の種類、および凝集に必要な濃度範囲において界面活性剤とは異なる。本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、脂質および脂質様物質の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0436】
一般に、脂質は、8つのカテゴリ:脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、ポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合に由来する)、ステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合に由来する)に分けられ得る。「脂質」という用語は時に脂肪の同義語として使用されるが、脂肪はトリグリセリドと呼ばれる脂質のサブグループである。脂質はまた、脂肪酸およびその誘導体(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、およびリン脂質を含む)などの分子、ならびにステロイド、すなわち、コレステロールまたはその誘導体などのステロール含有代謝物を包含する。コレステロール誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、トコフェロールおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0437】
脂肪酸または脂肪酸残基は、カルボン酸基で終わる炭化水素鎖でできた分子の多様な群である;この配置は、分子に、極性の親水性末端と水に不溶性の非極性の疎水性末端とを付与する。典型的には4~24炭素長である炭素鎖は、飽和または不飽和であってもよく、酸素、ハロゲン、窒素、および硫黄を含む官能基に結合していてもよい。脂肪酸が二重結合を含む場合、シスまたはトランス幾何異性のいずれかの可能性があり、これは分子の立体配置に有意に影響を及ぼす。シス二重結合は脂肪酸鎖の屈曲を生じさせ、これは、鎖中のより多くの二重結合と組み合わされる影響である。脂肪酸カテゴリにおける他の主要な脂質クラスは、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドである。
【0438】
グリセロ脂質は、一置換、二置換、および三置換グリセロールから構成され、最もよく知られているのは、トリグリセリドと呼ばれるグリセロールの脂肪酸トリエステルである。「トリアシルグリセロール」という語は、「トリグリセリド」と同義に使用されることがある。これらの化合物では、グリセロールの3つのヒドロキシル基はそれぞれ、典型的には異なる脂肪酸によってエステル化されている。グリセロ脂質のさらなるサブクラスは、グリコシド結合を介してグリセロールに結合した1つ以上の糖残基の存在を特徴とするグリコシルグリセロールによって代表される。
【0439】
グリセロリン脂質は、エステル結合によって2つの脂肪酸由来の「尾部」に、およびリン酸エステル結合によって1つの「頭部」基に結合したグリセロールコアを含む両親媒性分子(疎水性領域と親水性領域の両方を含む)である。通常リン脂質と呼ばれる(スフィンゴミエリンもリン脂質として分類されるが)グリセロリン脂質の例は、ホスファチジルコリン(PC、GPChoまたはレシチンとしても知られる)、ホスファチジルエタノールアミン(PEまたはGPEtn)およびホスファチジルセリン(PSまたはGPSer)である。
【0440】
スフィンゴ脂質は、スフィンゴイド塩基骨格という共通の構造的特徴を共有する化合物の複雑なファミリーである。哺乳動物における主要なスフィンゴイド塩基は、一般にスフィンゴシンと呼ばれる。セラミド(N-アシル-スフィンゴイド塩基)は、アミド結合脂肪酸を有するスフィンゴイド塩基誘導体の主要なサブクラスである。脂肪酸は、典型的には飽和または一不飽和であり、16~26個の炭素原子の鎖長を有する。哺乳動物の主要なスフィンゴリン脂質はスフィンゴミエリン(セラミドホスホコリン)であるが、昆虫は主にセラミドホスホエタノールアミンを含有し、真菌はフィトセラミドホスホイノシトールおよびマンノース含有頭部基を有する。スフィンゴ糖脂質は、グリコシド結合を介してスフィンゴイド塩基に結合した1つ以上の糖残基で構成される分子の多様なファミリーである。これらの例は、セレブロシドおよびガングリオシドなどの単純なおよび複雑なスフィンゴ糖脂質である。
【0441】
コレステロールおよびその誘導体、またはトコフェロールおよびその誘導体などのステロール脂質は、グリセロリン脂質およびスフィンゴミエリンと共に膜脂質の重要な成分である。
【0442】
糖脂質は、脂肪酸が糖骨格に直接連結され、膜二重層と適合性である構造を形成する化合物を表す。糖脂質では、単糖がグリセロ脂質およびグリセロリン脂質に存在するグリセロール骨格の代わりになる。最もよく知られている糖脂質は、グラム陰性菌のリポ多糖のリピドA成分のアシル化グルコサミン前駆体である。典型的なリピドA分子は、7本もの脂肪アシル鎖で誘導体化されている、グルコサミンの二糖である。大腸菌での増殖に必要な最小限のリポ多糖は、2つの3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソン酸(Kdo)残基でグリコシル化されたグルコサミンのヘキサアシル化二糖である、Kdo2-リピドAである。
【0443】
ポリケチドは、古典的な酵素、ならびに脂肪酸シンターゼと機構的特徴を共有する反復およびマルチモジュラー酵素によるアセチルおよびプロピオニルサブユニットの重合によって合成される。それらは、動物、植物、細菌、真菌および海洋源からの多数の二次代謝物および天然産物を含み、大きな構造的多様性を有する。多くのポリケチドは、その骨格がしばしばグリコシル化、メチル化、ヒドロキシル化、酸化、または他のプロセスによってさらに修飾される環状分子である。
【0444】
本開示によれば、脂質および脂質様物質は、カチオン性、アニオン性または中性であり得る。中性脂質または脂質様物質は、選択されたpHで非荷電または中性の双性イオン形態で存在する。
【0445】
カチオン/カチオン性イオン化可能脂質
本明細書に記載の核酸粒子(RNAおよび/またはDNA粒子など)は、粒子形成剤として少なくとも1つのカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質を含む。本明細書での使用が企図されるカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質には、核酸に静電的に結合することができる任意のカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質(脂質様材料を含む)が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書での使用が企図されるカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質は、例えば核酸と複合体を形成することによって、または核酸が封入もしくはカプセル化された小胞を形成することによって、核酸と会合することができる。
【0446】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」は、正味の正電荷を有する脂質または脂質様物質を指す。カチオン性脂質は、静電相互作用によって負に帯電した核酸に結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシル鎖、ジアシルまたはそれ以上のアシル鎖などの親油性部分を有し、脂質の頭部基は、典型的には正電荷を担持する。
【0447】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、特定のpH、特に酸性pHでのみ正味の正電荷を有するが、好ましくは正味の正電荷を有さず、好ましくは電荷を有さず、すなわち、生理学的pHなどの異なる、好ましくはより高いpHでは中性である。このイオン化可能な挙動は、生理学的pHでカチオン性のままである粒子と比較して、エンドソーム脱出を助け、毒性を低減することによって有効性を高めると考えられる。
【0448】
本明細書で使用される場合、「カチオン性イオン化可能脂質」は、正味の正電荷を有するかまたは中性である、すなわち永久的にカチオン性ではない脂質または脂質様物質を指す。したがって、カチオン性イオン化可能脂質が溶解している組成物のpHに依存して、カチオン性イオン化性可能脂質は正に帯電しているかまたは中性のいずれかである。本開示の目的のために、カチオン性イオン化可能脂質は、状況によって矛盾しない限り、「カチオン性脂質」という用語に包含される。
【0449】
いくつかの実施形態では、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質は、例えば生理学的条件下で、正に帯電しているかまたはプロトン化され得る少なくとも1つの窒素原子(N)を含む頭部基を含む。
【0450】
カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質の例としては、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、l,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(cis,cis-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス、シス-9’,12’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン(DLinDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-XTC2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(DMRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(cis-9-テトラデセニルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DMORIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DLRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DMRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(βAE-DMRIE)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DMDAP)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DPDAP)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、2,3-ビス(ドデシルオキシ)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アモニウムブロミド(DLRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミニウムブロミド(DMORIE)、ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)8,8’-((((2(ジメチルアミノ)エチル)チオ)カルボニル)アザンジイル)ジオクタノエート(ATX)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DLDMA)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DMDMA)、ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)-9-((4-(ジメチルアミノブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、N-ドデシル-3-((2-ドデシルカルバモイル-エチル)-{2-[(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-2-{(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-[2-(2-ドデシルカルバモイル-エチルアミノ)エチル]-アミノ}-エチルアミノ)プロピオンアミド(リピドイド98N12-5)、1-[2-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル-[2-[4-[2-[ビス(2ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル]ピペラジン-1-イル]エチル]アミノ]ドデカン-2-オール(リピドイドC12-200)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0451】
いくつかの実施形態では、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質はDOTMAである。いくつかの実施形態では、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質はDODMAである。
【0452】
DOTMAは、第四級アミン頭部基を有するカチオン性脂質である。DOTMAの構造は、以下のように表され得る:
【0453】
【0454】
DODMAは、第三級アミン頭部基を有するイオン化可能なカチオン性脂質である。DODMAの構造は、以下のように表され得る:
【0455】
【0456】
いくつかの実施形態では、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質は、粒子中に存在する総脂質の約10モル%~約95モル%、約20モル%~約95モル%、約20モル%~約90モル%、約30モル%~約90モル%、約40モル%~約90モル%、または約40モル%~約80モル%を構成し得る。
【0457】
さらなる脂質
本明細書に記載の粒子はまた、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質(本明細書では集合的にカチオン性脂質とも呼ばれる)以外の脂質(脂質様物質を含む)、すなわち非カチオン性脂質(非カチオン性または非カチオン性イオン化可能脂質または脂質様物質を含む)を含み得る。集合的に、アニオン性および中性脂質または脂質様物質は、本明細書では非カチオン性脂質と呼ばれる。カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質に加えて、コレステロールおよび脂質などの他の疎水性部分を添加することによって核酸粒子の製剤を最適化することにより、粒子の安定性および核酸送達の有効性を高め得る。
【0458】
1つ以上のさらなる脂質は、核酸粒子の全体的な電荷に影響を及ぼしても及ぼさなくてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる脂質は、非カチオン性脂質または脂質様物質である。非カチオン性脂質は、例えば、1つ以上のアニオン性脂質および/または中性脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」は、選択されたpHで負に帯電している任意の脂質を指す。本明細書で使用される場合、「中性脂質」は、選択されたpHで非荷電または中性の双性イオン形態で存在するいくつかの脂質種のいずれかを指す。
【0459】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸粒子(特にmRNAを含む粒子)は、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質および1つ以上のさらなる脂質を含む。
【0460】
理論に拘束されることを望むものではないが、1つ以上のさらなる脂質の量と比較したカチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質の量は、核酸の電荷、粒径、安定性、組織選択性、および生物活性などの重要な核酸粒子特性に影響を及ぼし得る。したがって、いくつかの実施形態では、カチオン性またはカチオン性イオン化可能脂質対1つ以上のさらなる脂質のモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約4:1~約1:1、約3:1~約1:1、または約3:1~約2:1である。
【0461】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸粒子(特にmRNAを含む粒子)に含まれる1つ以上のさらなる脂質は、中性脂質、ステロイド、およびそれらの組合せの1つ以上を含む。
【0462】
いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる脂質は、リン脂質である中性脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンおよびスフィンゴミエリンからなる群より選択される。使用することができる特定のリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンまたはスフィンゴミエリンが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなリン脂質としては、特に、ジアシルホスファチジルコリン、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)およびホスファチジルエタノールアミン、特にジアシルホスファチジルエタノールアミン、例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジラウロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジフィタノイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPyPE)、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPG)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DPPG)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、N-パルミトイル-D-エリスロ-スフィンゴシルホスホリルコリン(SM)、および様々な疎水性鎖を有するさらなるホスファチジルエタノールアミン脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、中性脂質は、DSPC、DOPC、DMPC、DPPC、POPC、DOPE、DOPG、DPPG、POPE、DPPE、DMPE、DSPE、およびSMからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、中性脂質はDOPEである。
【0463】
いくつかの実施形態では、さらなる脂質は、以下のうちの1つを含む:(1)リン脂質;(2)コレステロールもしくはその誘導体;または(3)リン脂質とコレステロールもしくはその誘導体との混合物。コレステロール誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、トコフェロールおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0464】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸粒子(特にmRNAを含む粒子)は、(1)カチオン性もしくはカチオン性イオン化可能脂質およびDOPEなどのリン脂質、または(2)カチオン性もしくはカチオン性イオン化可能脂質およびDOPEなどのリン脂質およびコレステロールを含む。
【0465】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸粒子(特にmRNAを含む粒子)は、(1)DOTMAおよびDOPE、(2)DOTMA、DOPEおよびコレステロール、(3)DODMAおよびDOPE、または(4)DODMA、DOPEおよびコレステロールを含む。
【0466】
DOPEは中性リン脂質である。DOPEの構造は、以下のように表され得る:
【0467】
【0468】
コレステロールの構造は、以下のように表され得る:
【0469】
【0470】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の粒子は、ペグ化脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含まない。「ペグ化脂質」という用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は当技術分野で公知である。
【0471】
いくつかの実施形態では、さらなる脂質(例えば、1つ以上のリン脂質および/またはコレステロール)は、粒子中に存在する総脂質の約0モル%~約90モル%、約0モル%~約80モル%、約2モル%~約80モル%、約5モル%~約80モル%、約5モル%~約60モル%、約5モル%~約50モル%、約7.5モル%~約50モル%、または約10モル%~約40モル%を構成し得る。いくつかの実施形態では、さらなる脂質(例えば、1つ以上のリン脂質および/またはコレステロール)は、粒子中に存在する総脂質の約10モル%、約15モル%、または約20モル%を構成する。
【0472】
いくつかの実施形態では、さらなる脂質は、(i)DOPEなどのリン脂質と、(ii)コレステロールまたはその誘導体との混合物を含む。いくつかの実施形態では、DOPEなどのリン脂質対コレステロールまたはその誘導体のモル比は、約9:0~約1:10、約2:1~約1:4、約1:1~約1:4または約1:1~約1:3である。
【0473】
ポリマーコンジュゲート脂質
いくつかの実施形態では、粒子は、少なくとも1つのポリマーコンジュゲート脂質を含み得る。ポリマーコンジュゲート脂質は、典型的には、脂質部分と、それにコンジュゲートしたポリマー部分とを含む分子である。いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、本明細書ではペグ化脂質またはPEG-脂質とも呼ばれる、PEGコンジュゲート脂質である。
【0474】
いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、疎水性脂質層を遮蔽する保護親水性層を形成することによって脂質粒子を立体的に安定化するように設計される。いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、そのような脂質粒子がインビボで投与される場合、血清タンパク質とのその会合および/または結果として生じる細網内皮系による取り込みを減少させることができる。
【0475】
様々なPEGコンジュゲート脂質が当技術分野で公知であり、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えば、ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメートまたは2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ωメトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0476】
いくつかの実施形態では、粒子は、その各々の内容全体が本明細書に記載の目的のために参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/075531号および国際公開第2018/081480号に記載されているような1つ以上のPEGコンジュゲート脂質またはペグ化脂質を含み得る。
【0477】
リポプレックス粒子
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)中に存在し得る。
【0478】
リポプレックス(LPX)は、一般に、予め形成されたカチオン性脂質リポソームをアニオン性核酸(RNAおよび/またはDNAなど)と混合することによって形成される静電複合体である。形成されたリポプレックスは、リポソーム構造からコンパクト核酸-リポプレックス(RNAおよび/またはDNAリポプレックスなど)への変換に起因して生じる分子の異なる内部配置を有する。これらの製剤は、一般に、核酸の封入が不十分であり、核酸の捕捉が不完全であることを特徴とする。
【0479】
特定の実施形態では、核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)は、カチオン性脂質とさらなる脂質の両方を含む。例示的な実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
【0480】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質対少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。特定の実施形態では、モル比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、または約1:1であり得る。例示的な実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質対少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約2:1である。
【0481】
本明細書に記載の核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)は、いくつかの実施形態では、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、または約1000nmの平均直径を有する。一実施形態では、核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的な実施形態では、核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)は、約400nmの平均直径を有する。
【0482】
本明細書に記載の核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)ならびに核酸リポプレックス粒子(RNAおよび/またはDNAリポプレックス粒子など)を含む組成物は、非経口投与後、特に静脈内投与後の標的組織への核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の送達に有用である。
【0483】
脾臓を標的とするRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/143683号に記載されている。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子は、脾臓組織または脾臓細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を選択的に標的とするために使用し得ることが見出された。したがって、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)リポプレックス粒子は、脾臓において核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を発現させるために使用され得る。一実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)リポプレックス粒子の投与後、肺および/または肝臓における核酸(RNAなど)の蓄積および/または核酸(RNAなど)の発現は起こらないか、または本質的に起こらない。一実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)リポプレックス粒子の投与後、脾臓のプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞における核酸(RNAなど)の蓄積および/または核酸(RNAなど)の発現が起こる。したがって、本開示の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)リポプレックス粒子は、そのような抗原提示細胞において、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)、例えば、抗原または少なくとも1つのエピトープをコードする核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を発現させるために使用され得る。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0484】
本開示の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)リポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する電荷と核酸(RNAなど)に存在する電荷との和である。電荷比は、少なくとも1つのカチオン性脂質中に存在する正電荷対核酸(RNAなど)中に存在する負電荷の比である。少なくとも1つのカチオン性脂質中に存在する正電荷対核酸(RNAなど)中に存在する負電荷の電荷比は、以下の式によって計算される:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(モル))*(カチオン性脂質中の正電荷の総数)]/[(核酸(RNAなど)濃度(モル))*(核酸(RNAなど)中の負電荷の総数)]。核酸(RNAなど)の濃度および少なくとも1つのカチオン性脂質の量は、当業者によって日常的な方法を使用して決定され得る。
【0485】
一実施形態では、生理学的pHで、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)リポプレックス粒子における正電荷対負電荷の電荷比は、約1.6:2~約1:2、または約1.6:2~約1.1:2である。特定の実施形態では、生理学的pHでの核酸(RNAおよび/またはDNAなど)リポプレックス粒子における正電荷対負電荷の電荷比は、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0、または約1:2.0である。
【0486】
脂質ナノ粒子(LNP)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)は、脂質ナノ粒子(LNP)の形態で存在する。LNPは、1つ以上の核酸分子が結合している、または1つ以上の核酸分子が封入されている粒子を形成することができる任意の脂質を含み得る。
【0487】
LNPは、典型的には、4つの成分:イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質などの中性脂質、コレステロールなどのステロイド、およびPEG脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含む。LNPは、エタノールに溶解した脂質を水性緩衝液中で核酸と混合することによって調製され得る。
【0488】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)LNPにおいて、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)は、LNPの中心コアを占めるイオン化可能な脂質によって結合される。PEG脂質は、リン脂質と共にLNPの表面を形成する。いくつかの実施形態では、表面は二重層を含む。いくつかの実施形態では、荷電形態および非荷電形態のコレステロールおよびイオン化可能な脂質は、LNP全体に分布し得る。
【0489】
いくつかの実施形態では、LNPは、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上の安定化脂質とを含む。安定化脂質には、中性脂質およびペグ化脂質が含まれる。
【0490】
いくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、および脂質ナノ粒子内に封入されているか、または脂質ナノ粒子と会合している核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を含む。
【0491】
いくつかの実施形態では、LNPは、40~55モル%、40~50モル%、41~50モル%、42~50モル%、43~50モル%、44~50モル%、45~50モル%、46~50モル%、または46~49モル%を含む。
【0492】
いくつかの実施形態では、中性脂質は、5~15モル%、7~13モル%、または9~11モル%の範囲の濃度で存在する。
【0493】
いくつかの実施形態では、ステロイドは、30~50モル%、35~45モル%または38~43モル%の範囲の濃度で存在する。
【0494】
いくつかの実施形態では、LNPは、1~10モル%、1~5モル%、または1~2.5モル%のポリマーコンジュゲート脂質を含む。
【0495】
いくつかの実施形態では、LNPは、45~50モル%のカチオン性脂質;5~15モル%の中性脂質;35~45モル%のステロイド;1~5モル%のポリマーコンジュゲート脂質;および脂質ナノ粒子内に封入されているか、または脂質ナノ粒子と会合している核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を含む。
【0496】
いくつかの実施形態では、モルパーセントは、脂質ナノ粒子中に存在する脂質の総モルに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、モルパーセントは、脂質ナノ粒子中に存在するカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドおよびポリマーコンジュゲート脂質の総モルに基づいて決定される。
【0497】
いくつかの実施形態性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、DOPG、DPPG、POPE、DPPE、DMPE、DSPE、およびSMからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、中性脂質はDSPCである。
【0498】
いくつかの実施形態では、ステロイドはコレステロールである。
【0499】
いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質はペグ化脂質である。いくつかの実施形態では、ペグ化脂質は、以下の構造:
【0500】
【0501】
またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を有し、ここで、
R12およびR13は、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和または不飽和アルキル鎖であり、アルキル鎖は、1つ以上のエステル結合によって中断されていてもよく、wは、30~60の範囲の平均値を有する。いくつかの実施形態では、R12およびR13は、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、wは、40~55の範囲の平均値を有する。いくつかの実施形態では、平均wは約45である。いくつかの実施形態では、R12およびR13は、それぞれ独立して、約14個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖であり、wは約45の平均値を有する。
【0502】
いくつかの実施形態では、ペグ化脂質は、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミドであるか、またはそれを含む。
【0503】
いくつかの実施形態では、LNPのカチオン性脂質成分は、式(III)の構造:
【0504】
【0505】
またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を有し、ここで、
L1またはL2の一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、NRaC(=O)NRa-、-OC(=O)NRa-または-NRaC(=O)O-であり、L1またはL2の他方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、NRaC(=O)NRa-、-OC(=O)NRa-または-NRaC(=O)O-または直接結合であり;
G1およびG2は、それぞれ独立して、置換されていないC1-C12アルキレンまたはC1-C12アルケニレンであり;
G3は、C1-C24アルキレン、C1-C24アルケニレン、C3-C8シクロアルキレン、C3-C8シクロアルケニレンであり;
Raは、HまたはC1-C12アルキルであり;
R1およびR2は、それぞれ独立して、C6-C24アルキルまたはC6-C24アルケニルであり;
R3は、H、OR5、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4または-NR5C(=O)R4であり;
R4はC1-C12アルキルであり;
R5は、HまたはC1-C6アルキルであり、;および
xは、0、1または2である。
【0506】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は、以下の構造(IIIA)または(IIIB):
【0507】
【0508】
の1つを有し、ここで、
Aは、3~8員のシクロアルキルまたはシクロアルキレン環であり;
R6は、各存在において、独立してH、OHまたはC1-C24アルキルであり;
nは、1~15の範囲の整数である。
【0509】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は構造(IIIA)を有し、他の実施形態では、脂質は構造(IIIB)を有する。
【0510】
式(III)の他の実施形態では、脂質は、以下の構造(IIIC)または(IIID):
【0511】
【0512】
の1つを有し、ここで、yおよびzは、それぞれ独立して、1~12の範囲の整数である。
【0513】
式(III)の前述の実施形態のいずれかでは、L1またはL2の一方は-O(C=O)-である。例えば、いくつかの実施形態では、L1およびL2の各々は-O(C=O)-である。前述のいずれかのいくつかの異なる実施形態では、L1およびL2は、それぞれ独立して、-(C=O)O-または-O(C=O)-である。例えば、いくつかの実施形態では、L1およびL2の各々は-(C=O)O-である。
【0514】
式(III)のいくつかの異なる実施形態では、脂質は、以下の構造(IIIE)または(IIIF):
【0515】
【0516】
の1つを有する。
【0517】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は、以下の構造(IIIG)、(IIIH)、(IIII)または(IIIJ):
【0518】
【0519】
の1つを有する。
【0520】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、nは、2~12、例えば2~8または2~4の範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態では、nは、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、nは3である。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは5である。いくつかの実施形態では、nは6である。
【0521】
式(III)の前述の実施形態のいくつかの他の実施形態では、yおよびzは、それぞれ独立して、2~10の範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態では、yおよびzは、それぞれ独立して、4~9または4~6の範囲の整数である。
【0522】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R6はHである。前述の実施形態の他の実施形態では、R6はC1-C24アルキルである。他の実施形態では、R6はOHである。
【0523】
式(III)のいくつかの実施形態では、G3は非置換である。他の実施形態では、G3は置換されている。様々な異なる実施形態では、G3は、直鎖C1-C24アルキレンまたは直鎖C1-C24アルケニレンである。
【0524】
式(III)のいくつかの他の前述の実施形態では、R1もしくはR2、またはその両方がC6-C24アルケニルである。例えば、いくつかの実施形態では、R1およびR2は、それぞれ独立して、以下の構造:
【0525】
【0526】
を有し、ここで、
R7aおよびR7bは、各存在において、独立してHまたはC1-C12アルキルであり;ならびに
aは2~12の整数であり、
式中、R7a、R7bおよびaはそれぞれ、R1およびR2がそれぞれ独立して6~20個の炭素原子を含むように選択される。例えば、いくつかの実施形態では、aは、5~9または8~12の範囲の整数である。
【0527】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R7aの少なくとも1つの存在はHである。例えば、いくつかの実施形態では、R7aは、各存在においてHである。前述の実施形態の他の異なる実施形態では、R7bの少なくとも1つの存在はC1-C8アルキルである。例えば、いくつかの実施形態では、C1-C8アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0528】
式(III)の異なる実施形態では、R1もしくはR2、またはその両方が、以下の構造:
【0529】
【0530】
の1つを有する。
【0531】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R3は、OH、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4または-NHC(=O)R4である。いくつかの実施形態では、R4は、メチルまたはエチルである。
【0532】
様々な異なる実施形態では、式(III)のカチオン性脂質は、以下の表に示される構造の1つを有する。
【0533】
式(III)の代表的な化合物。
【0534】
【0535】
様々な脂質(例えば、カチオン性脂質、中性脂質およびポリマーコンジュゲート脂質を含む)が当技術分野で公知であり、本明細書では、脂質ナノ粒子、例えば特定の細胞型(例えば肝細胞)を標的とする脂質ナノ粒子を形成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、中性脂質は、リン脂質もしくはその誘導体(例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPSC))および/またはコレステロールであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、PEGコンジュゲート脂質(例えば、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミドまたはその誘導体)であり得る。
【0536】
いくつかの実施形態では、LNPは、式(III)の脂質、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)、中性脂質、ステロイドおよびペグ化脂質を含む。いくつかの実施形態では、中性脂質はDSPCである。いくつかの実施形態では、ステロイドはコレステロールである。いくつかの実施形態では、ペグ化脂質はALC-0159である。
【0537】
ALC-0159:
【0538】
【0539】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、LNP中に約45~約50モル%の量で存在する。いくつかの実施形態では、中性脂質は、LNP中に約5~約15モル%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ステロイドは、LNP中に約35~約45モルパーセントの量で存在する。いくつかの実施形態では、ペグ化脂質は、LNP中に約1~約5モル%の量で存在する。
【0540】
いくつかの実施形態では、LNPは、約45~約50モル%の量のカチオン性脂質、約5~約15モル%の量のDSPC、約35~約45モル%の量のコレステロール、および約1~約5モル%の量のALC-0159を含む。
【0541】
N/P値は、好ましくは少なくとも約4である。いくつかの実施形態では、N/P値は、4~20、4~12、4~10、4~8、または5~7の範囲である。いくつかの実施形態では、N/P値は約6である。
【0542】
トランスフェクト細胞における核酸の発現の測定
アミノ酸配列をコードする核酸でトランスフェクトした細胞において発現されたアミノ酸配列を定量化するために、核酸コード配列の1つ以上のペプチド、例えばコードされたアミノ酸配列のC末端に存在する固有のMITD(MHCクラスI輸送ドメイン)ペプチドまたは生物発光を生成するペプチドの特定の断片を、LC-MS/MS分析を使用して全細胞溶解物から定量化し得る。
【0543】
細胞の溶解
細胞を溶解するのに適した任意の方法を、本明細書に記載のアッセイにおいて使用し得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤、例えば穏やかな双性イオン性界面活性剤、例えば、CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)および/またはCHAPSO(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート)を含む、例えば約7.5のpHを有する(例えばHClで調整された)トリス/HCl緩衝液などの緩衝液が溶解緩衝液として使用される。溶解緩衝液は、EDTAなどのキレート剤および/または1つ以上のプロテアーゼ阻害剤をさらに含み得る。
【0544】
以下の表は、溶解緩衝液調製物および最終成分濃度の一例を示す。
【0545】
【0546】
発現産物の定量化
ペプチドおよびポリペプチドを定量化するのに適した任意の方法を、本明細書に記載のアッセイにおいて使用し得る。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析(LC-MS/MS)が使用される。いくつかの実施形態では、標的LC-MSが使用される。
【0547】
LC-MS/MSは、液体クロマトグラフィの分離能と質量分析法の高感度かつ選択的な質量分析能力とを組み合わせた強力な分析技術である。目的の分析物を含有する試料溶液は、高圧で流れる移動相によって固定相(LCカラム)にポンプ輸送される。試料、固定相および移動相の成分間の化学的相互作用は、分離に影響を及ぼすLCカラムを通る異なる移動速度に影響する。LCカラムからの溶出後、流出物は質量分析計に導かれる。LC-MS/MSシステム用の質量分析計は、LCカラム流出物がイオン化されて荷電粒子を生成するイオン化源を有する。次いで、これらの荷電粒子は、電磁場を印加することによって一連の質量分析装置を通って高真空下で移動する。この技術の強みは、MSが目的の各化合物の固有の質量/電荷(m/z)遷移に基づいて高い感度および選択性で化合物を定量化する能力と組み合わされた、広範囲の化合物に対するLCの分離能にある。
【0548】
本明細書に記載のアッセイでモニターされるペプチドには、(1)発現された核酸のペプチド、例えばMITD7-28、ペプチド1および/またはペプチド3(両方とも破傷風毒素由来)および/または生物発光を生成するペプチドの断片、(2)ハウスキーピングペプチド(適合性試験の評価および細胞ベースの構築物の効力の計算に使用される)、例えばCiRT-02、CiRT-06、CiRT-07、CiRT-11、CiRT-12および/またはCiRT-14、ならびに任意で(3)重標識合成ペプチド(保持時間調整、消化制御、クロマトグラフィ安定性の評価、ならびに試料調製およびMS性能の追加情報に使用される)が含まれ得る。
【0549】
いくつかの実施形態では、記載されるアッセイでモニターされる発現核酸のペプチドは、MITD7-28(GGSYSQAASSDSAQGSDVSLTA)、ペプチド1(FIGITELK)およびペプチド3(IYSYFPSVISK)からなる群より選択される1つ以上を含む。
【0550】
いくつかの実施形態では、記載されるアッセイでモニターされるハウスキーピングペプチドは、アクチン、60Sリボソームタンパク質L12、熱ショックタンパク質SSA3、ADP/ATPトランスロカーゼおよび/または14-3-3タンパク質からなる群より選択されるタンパク質に由来する1つ以上のペプチドを含む。いくつかの実施形態では、記載されるアッセイでモニターされるハウスキーピングペプチドは、CiRT-02(AGFAGDDAPR;アクチン)、CiRT-06(IGPLGLSPK;60Sリボソームタンパク質L12)、CiRT-07(TTPSYVAFTDTER;熱ショックタンパク質SSA3)、CiRT-11(SYELPDGQVITIGNER;アクチン)、CiRT-12(YFPTQALNFAFK;ADP/ATPトランスロカーゼ)および/またはCiRT-14(DSTLIMQLLR;14-3-3タンパク質)からなる群より選択される1つ以上を含む。
【0551】
核酸を含む組成物
本明細書に記載される1つ以上の核酸を、例えば核酸粒子の形態で含む組成物は、塩、緩衝液、または以下にさらに記載されるような他の成分を含み得る。
【0552】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物に使用するための塩は、塩化ナトリウムを含む。理論に拘束されることを望むものではないが、塩化ナトリウムは、脂質と混合する前に核酸(RNAおよび/またはDNAなど)を前処理するためのイオン性浸透圧剤として機能する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、代替の有機塩または無機塩を含み得る。代替の塩としては、限定されないが、塩化カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一カリウム、酢酸カリウム、重炭酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化カルシウム、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のナトリウム塩が挙げられる。
【0553】
一般に、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子を保存するため、例えば核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子を凍結するための組成物は、低い塩化ナトリウム濃度を含むか、または低いイオン強度を含む。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは、0mM~約50mM、0mM~約40mM、または約10mM~約50mMの濃度である。
【0554】
本開示によれば、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子組成物は、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子の安定性、特に核酸(RNAおよび/またはDNAなど)の安定性に適したpHを有する。理論に拘束されることを望むものではないが、緩衝系の使用は、組成物の製造、貯蔵および使用中に本明細書に記載の粒子組成物のpHを維持する。本開示のいくつかの実施形態では、緩衝系は、溶媒(特に水、例えば脱イオン水、特に注射用水)および緩衝物質を含み得る。緩衝物質は、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(トリス)、酢酸塩およびヒスチジンから選択され得る。好ましい緩衝物質はHEPESである。
【0555】
本明細書に記載の組成物はまた、例えば凝集、粒子崩壊、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)分解および/または他の種類の損傷を低減または防止するために、生成物の品質の実質的な損失、特に保存、凍結および/または凍結乾燥中の核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)活性の実質的な損失を回避するための安定剤として凍結保護剤および/または界面活性剤を含み得る。
【0556】
一実施形態では、凍結保護剤は炭水化物である。本明細書で使用される「炭水化物」という用語は、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖および多糖を指し、それらを包含する。
【0557】
一実施形態では、凍結保護剤は単糖である。本明細書で使用される「単糖」という用語は、より単純な炭水化物単位に加水分解することができない単一の炭水化物単位(例えば単純糖)を指す。例示的な単糖凍結保護剤としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、リボースなどが挙げられる。
【0558】
一実施形態では、凍結保護剤は二糖である。本明細書で使用される「二糖」という用語は、グリコシド結合、例えば1~4個の結合または1~6個の結合を介して互いに結合している2つの単糖単位によって形成される化合物または化学部分を指す。二糖は、2つの単糖に加水分解され得る。例示的な二糖凍結保護剤としては、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトースなどが挙げられる。
【0559】
「三糖」という用語は、互いに結合して1つの分子を形成する3つの糖を意味する。三糖の例としては、ラフィノース、メレジトースが挙げられる。
【0560】
一実施形態では、凍結保護剤はオリゴ糖である。本明細書で使用される「オリゴ糖」という用語は、グリコシド結合、例えば1~4個の結合または1~6個の結合を介して互いに結合して直鎖、分岐または環状構造を形成する3~約15個、例えば3~約10個の単糖単位によって形成される化合物または化学部分を指す。例示的なオリゴ糖凍結保護剤としては、シクロデキストリン、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、スタキオース、アカルボースなどが挙げられる。オリゴ糖は、酸化または還元され得る。
【0561】
一実施形態では、凍結保護剤は環状オリゴ糖である。本明細書で使用される「環状オリゴ糖」という用語は、グリコシド結合、例えば1~4個の結合または1~6個の結合を介して互いに結合して環状構造を形成する3~約15個、例えば6、7、8、9または10個の単糖単位によって形成される化合物または化学部分を指す。例示的な環状オリゴ糖凍結保護剤としては、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、またはγシクロデキストリンなどの別個の化合物である環状オリゴ糖が挙げられる。
【0562】
他の例示的な環状オリゴ糖凍結保護剤には、環状オリゴ糖部分を含有するポリマーなどの、より大きな分子構造中にシクロデキストリン部分を含む化合物が含まれる。環状オリゴ糖は、酸化または還元することができ、例えばジカルボニル形態に酸化することができる。本明細書で使用される「シクロデキストリン部分」という用語は、ポリマーなどのより大きな分子構造に組み込まれる、またはその一部であるシクロデキストリン(例えば、α、βまたはγシクロデキストリン)ラジカルを指す。シクロデキストリン部分は、1つ以上の他の部分に直接または任意のリンカーを介して結合することができる。シクロデキストリン部分は、酸化または還元することができ、例えばジカルボニル形態に酸化することができる。
【0563】
炭水化物凍結保護剤、例えば環状オリゴ糖凍結保護剤は、誘導体化された炭水化物であり得る。例えば、一実施形態では、凍結保護剤は、誘導体化環状オリゴ糖、例えば誘導体化シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、例えば部分エーテル化シクロデキストリン(例えば部分的にエーテル化されたβシクロデキストリン)である。
【0564】
例示的な凍結保護剤は多糖である。本明細書で使用される「多糖類」という用語は、グリコシド結合、例えば1~4個の結合または1~6個の結合を介して互いに結合して直鎖、分岐または環状構造を形成する少なくとも16個の単糖単位によって形成される化合物または化学部分を指し、多糖をその骨格構造の一部として含むポリマーを含む。骨格において、多糖は直鎖状または環状であり得る。例示的な多糖凍結保護剤としては、グリコーゲン、アミラーゼ、セルロース、デキストラン、マルトデキストリンなどが挙げられる。
【0565】
いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子組成物はスクロースを含み得る。理論に拘束されることを望むものではないが、スクロースは、組成物の凍結保護を促進するように機能し、それにより、核酸(例えばRNAおよび/またはDNA、特にmRNA)粒子の凝集を防止し、組成物の化学的および物理的安定性を維持する。いくつかの実施形態では、核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子組成物は、スクロースに代わる代替凍結保護剤を含み得る。代替の安定剤としては、限定されないが、トレハロースおよびグルコースが挙げられる。特定の実施形態では、スクロースの代替安定剤は、トレハロースまたはスクロースとトレハロースとの混合物である。
【0566】
好ましい凍結保護剤は、スクロース、トレハロース、グルコース、およびそれらの組合せ、例えばスクロースとトレハロースの組合せからなる群より選択される。好ましい実施形態では、凍結保護剤はスクロースである。
【0567】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)組成物におけるキレート剤の使用を企図する。キレート剤とは、金属イオンと少なくとも2つの配位共有結合を形成し、それによって安定な水溶性錯体を生成することができる化合物を指す。理論に拘束されることを望むものではないが、キレート剤は、さもなければ本開示において加速された核酸(RNAおよび/またはDNAなど)分解を誘導し得る、遊離二価イオンの濃度を低下させる。適切なキレート剤の例としては、限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの塩、デスフェリオキサミンB、デフェロキサミン、ジチオカルブナトリウム、ペニシラミン、ペンテト酸カルシウム、ペンテト酸のナトリウム塩、スクシマー、トリエンチン、ニトリロ三酢酸、トランス-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(DCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、およびビス(アミノエチル)グリコールエーテル-N,N,N’,N’-四酢酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、キレート剤は、EDTAまたはEDTAの塩である。例示的な実施形態では、キレート剤は、EDTA二ナトリウム二水和物である。いくつかの実施形態では、EDTAは、約0.05mM~約5mM、約0.1mM~約2.5mM、または約0.25mM~約1mMの濃度である。
【0568】
代替的な実施形態では、本明細書に記載の核酸(RNAおよび/またはDNAなど)粒子組成物は、キレート剤を含まない。
【0569】
本明細書に記載される核酸を含み、任意で粒子に製剤化された組成物は、治療的または予防的処置のための医薬組成物または薬剤として、または医薬組成物または薬剤を調製するために有用であり得る。
【0570】
「医薬組成物」という用語は、治療上有効な薬剤を、好ましくは薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共に含む組成物に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物を対象に投与することによって疾患を治療する、予防する、または疾患の重症度を軽減するのに有用である。
【0571】
本開示の医薬組成物は、1つ以上のアジュバントを含み得るか、または1つ以上のアジュバントと共に投与され得る。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長、増強または加速する化合物に関する。アジュバントは、油エマルジョン(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素など)、または免疫刺激複合体などの不均一な群の化合物を含む。アジュバントの例としては、限定されることなく、LPS、GP96、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、成長因子、およびサイトカイン、例えばモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインが挙げられる。ケモカインは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、INFa、INF-γ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらなる公知のアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント、またはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本開示で使用するための他の適切なアジュバントとしては、Pam3Cysなどのリポペプチド、ならびにサポニン、トレハロース-6,6-ジベヘネート(TDB)、モノホスホリルリピドA(MPL)、モノミコロイルグリセロール(MMG)、またはグルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)などの親油性成分が挙げられる。
【0572】
本開示の医薬組成物は、保存可能な形態(例えば、凍結もしくは凍結乾燥/フリーズドライ形態)または「すぐに使用できる形態」(すなわち、例えば希釈などのいかなる処理も行わずに、対象に直ちに投与することができる形態)であり得る。したがって、医薬組成物の保存可能な形態の投与前に、この保存可能な形態をすぐに使用できる形態または投与可能な形態に処理または移行しなければならない。例えば、適切な溶媒(例えば注射用水などの脱イオン水)または液体(例えば水溶液)を使用することによって、凍結医薬組成物を解凍しなければならないか、または凍結乾燥医薬組成物を再構成しなければならない。
【0573】
本開示による医薬組成物は、一般に、「薬学的有効量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0574】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0575】
「薬学的有効量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療に関するいくつかの実施形態では、所望の反応は、疾患の経過の阻害に関連し得る。これは、疾患の進行を遅らせること、およびいくつかの実施形態では、疾患の進行を中断するまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の予防であり得る。本明細書に記載の医薬組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の医薬組成物の投与される用量は、様々なそのようなパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0576】
本開示の医薬組成物は、緩衝剤、防腐剤、および任意で他の治療薬を含有し得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤を含有する。
【0577】
本開示の医薬組成物で使用するための適切な防腐剤には、限定されることなく、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが含まれる。
【0578】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の医薬組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例としては、限定されないが、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤が挙げられる。
【0579】
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする薬剤に関する。さらに、「希釈剤」という用語は、流体、液体または固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上を含む。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロールおよび水が挙げられる。
【0580】
「担体」という用語は、医薬組成物の投与を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適した1つ以上の適合性の固体または液体充填剤、希釈剤または封入物質であり得る。適切な担体としては、限定されないが、滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は等張食塩水を含む。
【0581】
治療的使用のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
【0582】
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択することができる。
【0583】
医薬組成物の投与経路
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、皮内、経皮、節内、筋肉内、腫瘍内、または腫瘍周囲に投与され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与には、消化管を介した吸収を含む経腸投与、または非経口投与が含まれ得る。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、静脈内注射などによる、消化管を介する以外の任意の方法での投与を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は全身投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、全身投与は静脈内投与によるものである。
【0584】
組成物の使用
本明細書に記載される核酸を含み、任意で粒子に製剤化された組成物は、様々な疾患、特にペプチドまたはポリペプチドを対象に提供することが治療効果または予防効果をもたらす疾患の治療的または予防的処置に使用され得る。例えば、ウイルスに由来する抗原またはエピトープを提供することは、前記ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に有用であり得る。腫瘍抗原またはエピトープを提供することは、癌細胞が前記腫瘍抗原を発現する癌疾患の治療に有用であり得る。機能性タンパク質または酵素を提供することは、例えばリソソーム蓄積症(例えばムコ多糖症)または因子欠乏症における機能不全タンパク質を特徴とする遺伝性障害の治療に有用であり得る。サイトカインまたはサイトカイン融合物を提供することは、腫瘍微小環境を調節するのに有用であり得る。
【0585】
「疾患」(本明細書では「障害」とも呼ばれる)という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部源に由来する因子によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能不全によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能不全、窮迫、社会的問題、もしくは死亡を引き起こす、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、ならびに構造および機能の非定型の変化を含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリと見なされ得る。多くの疾患を患い、それらと共に生活することは、人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。
【0586】
本文脈において、「治療」、「治療する」または「治療的介入」という用語は、疾患などの状態と闘うことを目的とした対象の管理およびケアに関する。この用語は、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、ならびに/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは排除するため、ならびに状態を予防するための治療上有効な化合物の投与などの、対象が罹患している所与の状態に対するあらゆる範囲の治療を含むことを意図しており、予防は、疾患、状態または障害と闘うことを目的とした個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を含む。
【0587】
「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長する(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を排除し得る、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ得る、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ得る、個体における症状の頻度もしくは重症度を低下させ得る、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
【0588】
「予防的処置」または「防止的処置」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的処置」または「防止的処置」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0589】
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、疾患(例えば癌、感染症)に罹患し得るかもしくは罹患しやすいが、疾患を有していても有していなくてもよい、またはワクチン接種などの予防的介入を必要としてもよく、またはタンパク質補充などによる介入の必要性を有していてもよい、ヒトもしくは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長動物)、または鳥(ニワトリ)、魚もしくは他の任意の動物種を含む他の任意の非哺乳動物を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、小児、および新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。
【0590】
「患者」という用語は、治療のための個体または対象、特に疾患個体または対象を意味する。
【0591】
本明細書に記載のアッセイによる効力を有する核酸、特にRNAは、対象の細胞に核酸を送達するために対象に投与され得る。
【0592】
本明細書に記載のアッセイによる効力を有する核酸、特にRNAは、治療用または予防用ペプチドまたはポリペプチド(例えば、薬学的に活性なペプチドまたはポリペプチド)を対象に送達するために対象に投与され得、ここで、核酸は、治療用または予防用ペプチドまたはポリペプチドをコードする。
【0593】
本明細書に記載のアッセイによる効力を有する核酸、特にRNAは、対象における疾患を治療または予防するために対象に投与され得、対象の細胞に核酸を送達することは、疾患を治療または予防するのに有益である。
【0594】
本明細書に記載のアッセイによる効力を有する核酸、特にRNAは、対象における疾患を治療または予防するために対象に投与され得、ここで、核酸は、治療用または予防用ペプチドまたはポリペプチドをコードし、治療用または予防用ペプチドまたはポリペプチドを対象に送達することは、疾患を治療または予防するのに有益である。
【0595】
いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書に記載の組成物中に存在する。
【0596】
いくつかの実施形態では、核酸は、薬学的有効量で投与される。
【0597】
いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0598】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、ワクチンを提供することによって免疫応答を誘導することである。
【0599】
当業者は、免疫療法およびワクチン接種の原理の1つが、治療される疾患に関して免疫学的に関連する抗原またはエピトープで対象を免疫することによって疾患に対する免疫保護反応が生じるという事実に基づくことを理解するであろう。したがって、本明細書に記載の核酸は、免疫応答を誘導または増強するために適用可能である。したがって、本明細書に記載の核酸は、抗原またはエピトープが関与する疾患の予防的および/または治療的処置に有用である。
【0600】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、ワクチン接種によって癌を治療することである。
【0601】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、ワクチン接種によって感染症に対する保護を提供することである。
【0602】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、抗体、二重特異性抗体、サイトカイン、サイトカイン融合タンパク質、酵素などの分泌された治療用タンパク質を対象、特にそれを必要とする対象に提供することである。
【0603】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、エリスロポエチン、第VII因子、フォン・ヴィレブランド因子、β-ガラクトシダーゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼの産生などのタンパク質補充療法を対象、特にそれを必要とする対象に提供することである。
【0604】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、血液中の免疫細胞を調節/再プログラムすることである。
【0605】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、腫瘍微小環境を調節する1つ以上のサイトカインまたはサイトカイン融合物を対象、特にそれを必要とする対象に提供することである。
【0606】
本開示のいくつかの実施形態では、目的は、抗腫瘍活性を有する1つ以上のサイトカインまたはサイトカイン融合物を対象、特にそれを必要とする対象に提供することである。
【0607】
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認を意図するものではない。これらの文書の内容に関する全ての記述は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
【0608】
説明(以下の実施例を含む)は、当業者が様々な実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。具体的な装置、技術、および用途の説明は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される例に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、様々な実施形態の精神および範囲から逸脱することなく他の例および用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲を与えられるべきである。
以下、参考形態の例を付記する。
[1]
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするRNAを分析するための方法であって、以下の工程:
(i)前記RNAを提供する工程;
(ii)インビトロで細胞に前記RNAをトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の発現を可能にする工程;
(iv)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量を決定する工程;および
(v)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量を、生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力の指標として使用する工程
を含む方法。
[2]
前記細胞が生物系のRNA取り込み機構を模倣する、[1]に記載の方法。
[3]
前記生物系がヒト患者に存在する、[2]に記載の方法。
[4]
前記生物系が抗原提示細胞、好ましくは樹状細胞を含む、[2]または[3]に記載の方法。
[5]
前記樹状細胞が未成熟樹状細胞を含む、[4]に記載の方法。
[6]
前記細胞が、マクロピノサイトーシス媒介RNA取り込み機構および/またはエンドソーム取り込みを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7]
前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの動物細胞株の細胞である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の方法。
[8]
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の前記断片が、前記発現されるアミノ酸配列に特異的である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9]
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の前記断片が、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列に含まれない、[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10]
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の前記断片が、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列またはその断片を含む、[1]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11]
抗原プロセシングおよび/または提示を増強する前記アミノ酸配列が、MHC分子、好ましくはMHCクラスI分子の膜貫通および細胞質ドメインに対応するアミノ酸配列を含む、[10]に記載の方法。
[12]
抗原プロセシングおよび/または提示を増強する前記アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、[10]または[11]に記載の方法。
[13]
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の前記断片が、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列またはその断片を含む、[1]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[14]
免疫寛容を破壊する前記アミノ酸配列が、ヘルパーエピトープ、好ましくは破傷風トキソイド由来のヘルパーエピトープを含む、[13]に記載の方法。
[15]
免疫寛容を破壊する前記アミノ酸配列が、配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、[13]または[14]に記載の方法。
[16]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量を決定する前に細胞を溶解する工程を含む、[1]~[15]のいずれか一つに記載の方法。
[17]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量を決定する前に前記細胞溶解物を処理する工程をさらに含む、[16]に記載の方法。
[18]
前記細胞溶解物を処理する工程が、変性、還元、プロテアーゼ消化(例えば、トリプシン、Glu-C、LysN、Lys-C、Asp-Nキモトリプシン、またはこれらのプロテアーゼのいずれか2つ以上の混合物を用いた消化)、アルキル化、乾燥、再構成および脱塩から、例えばトリプシン消化、アルキル化および脱塩から選択される1つ以上を含む、[17]に記載の方法。
[19]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、質量分析を用いて決定される、[1]~[18]のいずれか一つに記載の方法。
[20]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)、例えば標的LC-MSを用いて決定される、[1]~[19]のいずれか一つに記載の方法。
[21]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、前記細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用して決定される、[1]~[20]のいずれか一つに記載の方法。
[22]
前記細胞によって発現される前記1つ以上のアミノ酸配列が、ハウスキーピングタンパク質の1つ以上のアミノ酸配列を含む、[21]に記載の方法。
[23]
生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力が、前記RNAの治療効力を含む、[1]~[22]のいずれか一つに記載の方法。
[24]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が所定のカットオフを上回る場合、前記RNAが生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有する、[1]~[24]のいずれか一つに記載の方法。
[25]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が所定のカットオフ未満である場合、前記RNAが生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有さない、[1]~[24]のいずれか一つに記載の方法。
[26]
前記所定のカットオフが、生物系において生物学的活性を誘導するための許容される効力、例えば治療効力を有することが公知のRNAを使用して決定される、[24]または[25]に記載の方法。
[27]
前記所定のカットオフを決定するために使用される前記RNAと前記分析されるRNAとが同じ化学組成を有する、[24]~[26]のいずれか一つに記載の方法。
[28]
同じRNAの異なるバッチを分析するためのものである、[1]~[27]のいずれか一つに記載の方法。
[29]
生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有するRNAもしくはRNAバッチが治療に使用されるかもしくは使用されることになっており、および/または生物系において生物学的活性を誘導するのに十分な効力、例えば治療効力を有さないRNAもしくはRNAバッチが治療に使用されないかもしくは使用されないことになっている、[1]~[28]のいずれか一つに記載の方法。
[30]
生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力、例えば前記RNAの治療効力が、前記RNAの治療品質などの品質を反映する、[1]~[29]のいずれか一つに記載の方法。
[31]
前記RNAの品質が、前記RNAが有害な条件に曝露されたかどうかおよび/またはどの程度曝露されたかを反映する、[30]に記載の方法。
[32]
前記有害な状態が熱を含む、[31]に記載の方法。
[33]
生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力、例えば前記RNAの治療効力が、前記RNAの完全性および/または前記RNAのキャッピングを反映する、[1]~[32]のいずれか一つに記載の方法。
[34]
生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力を分析するためのものである、[1]~[33]のいずれか一つに記載の方法。
[35]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、生物系において生物学的活性を誘導する前記RNAの効力を示す、[1]~[34]のいずれか一つに記載の方法。
[36]
前記RNAの品質および/または量が生物系において生物学的活性を誘導するのに十分であるかどうかを分析するためのものである、[1]~[35]のいずれか一つに記載の方法。
[37]
生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量が、前記RNAの品質および/または量が生物系において生物学的活性を誘導するのに十分であるかどうかを示す、[1]~[36]のいずれか一つに記載の方法。
[38]
前記生物学的活性が、疾患関連系において特異的応答を誘発する能力を含む、[1]~[37]のいずれか一つに記載の方法。
[39]
前記特異的応答が免疫応答を含む、[38]に記載の方法。
[40]
前記免疫応答がT細胞応答を含む、[39]に記載の方法。
[41]
生物学的活性を有する前記ペプチドまたはポリペプチドが、ワクチン、補充療法のためのタンパク質、抗体、抗体様分子およびサイトカインからなる群より選択される、[1]~[40]のいずれか一つに記載の方法。
[42]
前記RNAが一本鎖RNAである、[1]~[41]のいずれか一つに記載の方法。
[43]
前記RNAがmRNAである、[1]~[42]のいずれか一つに記載の組成物。
[44]
前記RNAがRNAのインビトロ転写によって生成される、[1]~[43]のいずれか一つに記載の方法。
[45]
前記RNAが5’キャップ構造を含む、[1]~[44]のいずれか一つに記載の方法。
[46]
前記RNAが送達ビヒクルと共に製剤化される、[1]~[45]のいずれか一つに記載の方法。
[47]
前記RNAが、前記RNAと複合体を形成する1つ以上の化合物と共に製剤化される、[1]~[45]のいずれか一つに記載の方法。
[48]
前記RNAが粒子として製剤化される、[1]~[47]のいずれか一つに記載の方法。
[49]
前記RNAがリポプレックス粒子として製剤化される、[1]~[48]のいずれか一つに記載の方法。
[50]
前記RNAが脂質粒子として製剤化される、[1]~[49]のいずれか一つに記載の方法。
[51]
生物学的活性を有する前記ペプチドまたはポリペプチドがワクチンである、[1]~[50]のいずれか一つに記載の方法。
[52]
前記ワクチンがT細胞ワクチンである、[51]に記載の方法。
[53]
前記RNAが異なるRNAの混合物を含み、各RNAが、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする、[1]~[52]のいずれか一つに記載の方法。
[54]
異なるRNAの前記混合物が、生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む異なるアミノ酸配列をコードするRNAを含む、[53]に記載の方法。
[55]
前記異なるアミノ酸配列が、生物学的活性を有する異なるペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む、[54]に記載の方法。
[56]
生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするRNAが生物系において生物学的活性を誘導する効力を分析するための方法であって、以下の工程:
(i)前記RNAを提供する工程;
(ii)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの動物細胞株の細胞にインビトロでRNAをトランスフェクトする工程;
(iii)生物学的活性を有するペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列の発現を可能にする工程;
(iv)前記細胞を溶解する工程;
(v)前記細胞溶解物を処理する工程;および
(vi)生物学的活性を有するペプチドもしくはポリペプチドのアミノ酸配列を含む前記アミノ酸配列またはその断片の量を、質量分析を用いて決定する工程であって、前記動物細胞株の細胞によって発現される1つ以上のアミノ酸配列を定量化のための参照として使用する、工程を含む方法。
【実施例】
【0609】
(実施例1)
正当化細胞株(CHO)-マクロピノサイトーシスによる取り込み
マクロピノサイトーシスによってRNA-LPXを取り込む標的細胞である樹状細胞(DC)は、ロットレリンによって阻害され得る特殊なプロセスを採用する(Kranz et al.2016)。以前の報告は、CHO細胞がマクロピノサイトーシスを介して様々なナノ粒子(脂質ベースのナノ粒子を含む)を取り込むこともできることを実証している(Hufnagle et al.2009;Cardarelli et al.2012;Pozzi et al.2014;Zhang et al.2011)。
【0610】
CHO細胞の特性評価試験により、RNA-LPXの効率的かつ用量依存的な取り込みが確認された(
図1)。この取り込みは、マクロピノサイトーシス阻害剤ロットレリンによって拮抗される。これらのデータは、DC細胞およびCHO細胞の両方におけるRNA-LPX取り込み機構が主にマクロピノサイトーシスによって駆動されることを実証する。
【0611】
(実施例2)
正当化細胞株(CHO)-RNA-LPXコード抗原の細胞内局在
以前の報告では、RNAがコードするタンパク質構築物がプロセシングされ、抗原提示細胞から原形質膜に導かれたことが示されている(Kreiter et al.2008)。DCおよびCHO細胞を、腫瘍抗原(MAGE A3)をコードするRNA-LPXと共インキュベートし、翻訳されたMAGE A3タンパク質の局在化を評価した。両方の細胞型において、RNAから翻訳されたMAGE A3タンパク質は検出可能であり、形質細胞膜の同じ細胞区画に局在していた(
図2)。データは、DCおよびCHO細胞がRNAコードタンパク質を同様の方法で翻訳し、プロセシングすることを示している。
【0612】
(実施例3)
正当化細胞株(CHO)-RNAがコードする機能性タンパク質のRNA-LPX用量依存的検出
定量的効力アッセイの典型的な特徴は、薬物に対する初期の低い応答、線形部分および薬物からの飽和を示すプラトーを伴うシグモイド用量反応関係である。本発明者らは、レポータタンパク質として増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするRNA-LPXの発現を用いてDC細胞およびCHO細胞におけるRNA-LPX用量反応関係を分析した。両方の細胞型は、初期相および線形相と用量依存性を示し、両方とも高いRNA-LPX投与量に感受性である(プラトー相)(
図3、
図4;CHOについては
図5にも、およびLC-MS読み出しは
図6のパネルCにも)。これは、腫瘍抗原および別の読み出しについても実証された(
図8および
図11)。対照的に、無細胞アッセイ(網状赤血球溶解物)において同じRNAを使用すると、キャップされたRNAとキャップされていないRNAの両方について用量依存的なシグナル増加が観察された(
図5のパネルC)。これは、本明細書に開示される効力アッセイが、キャップされていないRNAとキャップされたRNAとを区別することができるのに対して、無細胞アッセイは、キャップされていないRNAとキャップされたRNAとを区別することができない可能性があることを示す。
【0613】
(実施例4)
正当化細胞株(CHO)-ストレス負荷試料による分析
RNA-LPXの製品品質の低下に対するDCと比較したCHO細胞の感受性を評価するために、熱ストレスを負荷したeGFP RNA-LPX試料を用いた以下の実験を実施した。まず、eGFP RNA-LPX試料を、製品品質を低下させる(例えばRNAの完全性の低下)ことが公知のストレス条件である40℃で3日間保存した。ストレス負荷した試料、ならびにストレス負荷していない対照eGFP RNA-LPX参照試料をDC細胞およびCHO細胞にリポフェクトした。レポータタンパク質シグナル(すなわち、タンパク質の翻訳/機能の評価)に対するRNA-LPX産物の品質の影響を直接決定する。アッセイは、両方の細胞型において製剤の変動に対する感受性を有することが分かった(
図4)。
【0614】
効力アッセイの読み出しに対するRNA品質の影響をさらに分析するために、本発明者らは、40~95%のRNA完全性レベルを有するRNAおよび5’キャップなしで製造されたRNAを用いて製造された一連のeGFP-RNA-LPX製剤バッチを試験した。
図6に示すように、eGFP蛍光シグナルはMSベースの相対的に定量化されたペプチドの量に正比例するので、本発明者らは、製剤バッチの分析のためにeGFP蛍光読み取り値を測定した。全てのRNA-LPXを、蛍光シグナルを観測した24時間のインキュベーション時間内に用量依存的方法で試験した(
図5)。
【0615】
本発明者らは、eGFPタンパク質の活性量とRNA完全性の程度との直接的な相関関係を見出した(
図5A)。さらに、キャップされていないRNAバッチではシグナルは検出されず、機能性の喪失を示した(
図5B)。真核生物RNAの翻訳効率および安定性は、5’キャップなどのシス作用要素に強く依存するので、これは予想された(Kuhn et al.,2011)。
【0616】
(実施例5)
概念実証-細胞溶解物中のコード化ペプチドのLC-MS検出
MSに基づく効力アッセイの概念実証を、レポータ遺伝子(eGFP)を代理マーカとして用いて示した。eGFPの使用は、蛍光の定量化からの読み取り値およびMSシグナルの直接的な定量的比較を並行して可能にした。細胞を異なる用量のeGFP-RNA-リポプレックスと共にインキュベートし、発現を観測した(
図6、パネルA)。一晩インキュベートした後、細胞を洗浄し、回収し、溶解した。溶解物の蛍光強度を消化前に分析した(
図6、パネルCの青色曲線)。その後、消化した溶解物をnanoUPLCシステムで分離し、ペプチドをMS/MSによって分析した。本発明者らは、処理した溶解物中で16個のeGFP特異的ペプチドを同定した(
図6、パネルB)(モックトランスフェクト細胞溶解物中では全く同定しなかった)。最も適切な3つのペプチド(例えば電荷、長さ/質量に関して)を、標識を含まない相対的な定量化のために選択し、溶解物のeGFP蛍光強度シグナルと直接比較した(
図6、パネルC)。両方のシグナル(MS対蛍光)は、分析された線量範囲で直接相関し、予想されたシグモイド曲線特性を再び示す。
【0617】
データは、活性なコードされたタンパク質からのシグナル、すなわち蛍光およびMSペプチド定量化が、非常に類似した用量反応曲線で直接相関することを明確に実証する。これは、コードされた生物学的に活性なeGFPタンパク質由来の特異的ペプチドが、無標識MSアプローチを介したリポフェクション後の細胞溶解物において検出および同定され得ることを実証した。さらに、特異的ペプチドは用量依存的方法で相対的に定量化することができ、それらは細胞によって発現される機能性タンパク質の量を直接反映する。
【0618】
eGFPレポータタンパク質による概念実証の後、本発明者らは、6つの代表的なiNeST構築物によってコードされるiNeST特異的ペプチドをさらに検出および定量化することができるかどうかを分析した(以下の表を参照)。したがって、本発明者らは、6つの異なるRNA-リポプレックス代表的構築物で細胞を別々にトランスフェクトし、C末端の定常MITDペプチドの相対量を分析した(
図13参照)。
【0619】
試験した代表的なiNeST RNA配列
【0620】
【0621】
6つ全てのiNeST代表的構築物について、本発明者らは、コードされたMITDペプチドを、リポフェクトされた細胞においてのみ特異的に見出した(やはり、モック細胞溶解物またはトランスフェクトされていない細胞溶解物では見出さなかった)。これは、発現されたネオ抗原構築物由来の特異的ペプチドもまた、提案された無標識MSアプローチを介してリポフェクション後の細胞溶解物において検出および同定され得ることを実証した。興味深いことに、翻訳レベル、すなわちMITDペプチドの量は、個別化ネオ抗原構築物について約20倍変動する(
図7および
図9)。
【0622】
iNeST特異的構築物のRNA-LPXもシグモイド用量反応関係(正当化細胞株(CHO)-RNAがコードする機能性タンパク質のRNA-LPX用量依存的検出のセクション、
図3を参照)を示すかどうかを分析するために、MITD翻訳レベルが最も低い2つのiNeST構築物(iNeST5および6)を用いて異なる濃度で実験を繰り返した。上述のデータ(
図3および
図6)と同様に、本発明者らは、iNeST構築物について直接的なシグモイド用量反応関係を見出した(
図8)。eGFPデータと比較して、本発明者らは、コードされた腫瘍抗原の活性(例えば表面局在化および免疫学的読み出し)も用量反応関係に従うことを実証することができた(
図11参照)。要約すると、本発明者らのLC-MSアプローチと組み合わせた本発明者らの細胞モデル系は、定量的効力アッセイの典型的な特徴であるシグモイド用量反応関係を示す。
【0623】
(実施例6)
概念実証-ストレス負荷された試料による分析
効力アッセイの必要性の1つは、放出試験だけでなく安定性試験のための使用でもある。iNeST LPX試料およびLC-MS製剤効力アッセイを使用してストレス負荷試料に対する実証された細胞感受性も検出できることを検証するために、一連の異なる実験を実施した。生成物の安定性を評価するために、本発明者らは、熱からの加速ストレスに供した安定性試験から6つ全ての代表的なiNeSTデザインスペースRNA-LPXを測定した。それぞれの非ストレス負荷対照を含む全ての試料を、3つの異なる用量レベルで細胞に適用し、LC-MS効力アッセイによって分析した(
図9)。全てのストレス負荷iNeSTデザインスペースRNA-LPX試料について、MITDペプチドの量の明確な減少が見られ、さらに、これは全ての適用したRNA-LPX投与量について可視である。
【0624】
さらに、LC-MS効力測定に対する2つの加速ストレス時点(2および10日)の影響を分析した。2つの時点の理論的根拠は、80%のRNA完全性仕様限界を上回るおよび下回る異なるレベルのRNA完全性を有する試料を得ることであった(
図10)。これらの試料を、未処理対照試料と同様に細胞に添加し、LC-MS測定によって分析した。再び、全てのストレス負荷iNeST RNA-LPXについて力価の明らかな低下が見られ、これもストレス時間依存性である。興味深いことに、効力の読み出しは、RNAの完全性の低下に対して非常に感受性である。10~15%のRNA完全性の喪失は、25%~75%の効力活性の低下をもたらし、さらに、80%のRNA完全性仕様を下回る喪失は、効力活性のさらにより大きな低下をもたらした。
【0625】
要約すると、データは、LC-MS効力アッセイが、投与後のタンパク質の翻訳量に影響を及ぼし得る製剤品質の損失を高感度に検出できることを実証する。これらの変化は、RNAの完全性の喪失、キャッピング効果の変動、RNA品質の他の局面の変動、ならびに翻訳に影響を及ぼす複合体化状態の変動を含む。LC-MSアッセイは、高度に安定であることを示している(これは、効力アッセイのための必須条件と考えられ得る)。
【0626】
(実施例7)
概念実証-RNA-LPXの生物学的効果は生物学的機能と用量依存的に直接相関する
最終的な相関は、(i)LC-MSアプローチを介して定量化された抗原特異的ペプチドの量、(ii)ネイティブ染色された細胞の免疫蛍光顕微鏡法を介して測定された抗原構築物のプロセシング、および(iii)Jurkat NFATアッセイを介して検出された機能的読み出しの間に存在するべきである。2つの異なる腫瘍抗原(ヒト白血球抗原[HLA]クラスIおよびクラスII拘束性)について、本発明者らは、LC-MSアプローチによって定量化された抗原特異的ペプチドと抗原構築物の表面局在化(プロセシング)との間の直接的な用量依存関係を検出した。さらに、HLA-A*0101を発現する腫瘍抗原MAGE-A3 RNA-LPXトランスフェクトCHO細胞は、MAGE-A3-TCR発現Jurkat T細胞をRNA-LPX用量依存的に刺激することができることが実証された(
図11A)。CHO細胞がHLAクラスII拘束性エピトープをプロセシングおよび提示して、抗原特異的T細胞刺激を誘導することができるかどうかを評価するために、HLA-DQBA1*0102/DQB1*0501拘束性HPV-E7特異的TCRを使用して同じ実験を行った(
図11B)。HLA-DQBA1*0102/DQB1*0501を発現するHPV-E7 RNA-LPXトランスフェクトCHO細胞は、HPV-E7-TCR発現Jurkat T細胞をRNA-LPX用量依存的に刺激することができた。
【0627】
3つ全ての読み出し(LC-MS;ABおよびJurkat)について、DCの関連する測定値と同様のシグモイド用量反応曲線を再び見出すことができる(
図3および4参照)。これは、検出されたペプチドの量(LC-MS)が活性タンパク質の量(Jurkat)に再び直接的に関連することを実証する(eGFPと同様、
図6C参照)。要約すると、これらのデータは、CHO細胞がRNA-LPXを取り込み、抗原コードRNAを細胞内でプロセシングし、(HLA分子を人工的に備えている場合)T細胞の同族活性化のためにHLAクラスIまたはクラスII分子のいずれかでそれを提示する方法に関与する機構に関して、CHO細胞がDCの適切なモデルであることを示す。これらのデータはまた、CHO細胞へのRNA-LPX投与後に得られるトランスフェクトされたRNAおよび翻訳されたタンパク質の量が、HLA拘束的にそれぞれの抗原を認識するT細胞の活性化のレベルについて直接的に関連し、堅固な指標であることを実証する。LC-MS効力の読み出しは、RNA-LPXの生物学的活性を完全に予測する。
【0628】
(実施例8)
LC-MSアッセイによる腫瘍抗原構築物の試験
レポータeGFP遺伝子による検証の後、適用された溶解プロトコルが膜貫通(TRM)タンパク質を溶解するのに適していること、および本発明者らの関連するTRMドメインペプチド(MITD)に対する本発明者らのMSアプローチの実現可能性を示すために、3つの腫瘍抗原構築物(
図14)をLC-MSアッセイで試験した。TRMドメインペプチド(MITD)の理論的特徴(例えば長さ、電荷/質量)に基づいて、このペプチドはMS分析においてあまり機能しないことが予想される。したがって、本発明者らは、MSベースの相対定量化において良好に機能するはずである免疫学的にコードされた構築物中の2つの代替ペプチド(P1およびP2、p2p16領域)を分析する(
図15)。
【0629】
実験は、eGFP-RNA-リポプレックス概念実証実験と同様の方法で実施した。ここでも、用量依存的方法での細胞のリポフェクションを行った。一晩のインキュベーション後、細胞を溶解し、消化し、LC-MS/MS測定によって相対的に定量化した。事前に、LC-MS/MS法を3つの新たな特異的ペプチドに適合させた。予想されたように、3つ全ての構築物の3つのユニークなペプチド(ペプチド#1;ペプチド#2およびMITD)が、リポフェクトされた細胞の溶解物において同定された(
図15)。さらに、ペプチドを相対的に定量化することができ、RNA-リポプレックス用量依存的に発現させた。ここでも、これらの3つの構築物に由来するペプチドのほとんどについて、予想されるシグモイド用量反応曲線(
図15)の検出を得ることができる。
【0630】
(実施例9)
LC/MS効力アッセイ:ブリッジングデータ
LC-MS効力アッセイの読み出しが直交分析インビトロ読み出しと相関するかどうかを分析するために以下の試験を実施した(実施例7と同様、
図11)。適用されたDP用量は、アッセイの線形範囲内になるように選択した。
【0631】
試験デザイン:特定の癌タイプ内で共有されるmRNAコード非変異抗原の2つの異なる固定された組合せ(組合せ1;4つの異なる抗原/組合せ2;2つの異なる抗原)を試験した。6つ全てのDPについて、3つの試料(非ストレス負荷、ならびに熱ストレスをそれぞれ3日間および10日間負荷)をLC-MS効力に供した;Jurkat NFAT(HepG2細胞、R&D下で実施したGMP放出アッセイ);Jurkat NFAT(CHO細胞);トランスフェクト細胞のネイティブ免疫蛍光(IF)染色(主な分析はLC-MS対Jurkat(HepG2)である)。全てのアッセイが全ての構築物について利用可能であるわけではない(例えばIF;Jurkat CHO))。構築物あたり3つ全てのDP(3日間ストレス負荷、10日間ストレス負荷および非ストレス負荷)を線形用量レベルで分析した。
【0632】
図16は、MAGE A3(
図16A)またはTPTE(
図16B)腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX;組合せ1)で用量依存的にリポフェクトした細胞についての実験を示す。その後、異なる分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2またはCHO細胞を含む)および定量的免疫蛍光顕微鏡法(IF))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DP、さらに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【0633】
図17は、非ストレス負荷(右の値)、3日間(中央の値)および10日間(左の値)ストレス負荷したDPの様々な分析結果の評価および比較(LC-MS対JurkatおよびRNA完全性(CE)対LC-MS)を示す。様々な分析測定の線形適合の勾配をグラフにプロットし、線形回帰によって適合させた。
【0634】
全てのアッセイは、LC-MSアッセイとの直接的な線形相関を示す。
【0635】
図18は、LC-MS(図の右側のバー)およびJurkatアッセイ(図の左側のバー)の結果のさらなる評価および比較を示す。そのために、用量反応曲線のデータ点をGMPソフトウェアPLAを用いて分析した。異なるストレス負荷試料を非ストレス負荷試料(100%効力として設定)と比較し、PLAソフトウェアを使用してそれぞれの効力を計算する。LC-MSおよびJurkatアッセイの値は非常によく一致しており、LC-MSがT細胞刺激読み出しを直接示すことを示している。
【0636】
図19は、TYR(
図19A)またはNY-ESO(
図19B)をコードするDP(RNA-LPX;組合せ1)で用量依存的にリポフェクトした細胞についての実験を示す。その後、異なる分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2を含む))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DP、さらに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【0637】
図20は、非ストレス負荷(右の値)、3日間(中央の値)および10日間(左の値)ストレス負荷したDPの様々な分析結果の評価および比較(LC-MS対JurkatおよびRNA完全性(CE)対LC-MS)を示す。様々な分析測定の線形適合の勾配をグラフにプロットし、線形回帰によって適合させた。
【0638】
全てのアッセイは、直接的な線形相関を示す。
【0639】
図21は、LC-MS(図の右側のバー)およびJurkatアッセイ(図の左側のバー)の結果のさらなる評価および比較を示す。そのために、用量反応曲線のデータ点をGMPソフトウェアPLAを用いて分析した。異なるストレス負荷試料を非ストレス負荷試料(100%効力として設定)と比較し、PLAソフトウェアを使用してそれぞれの効力を計算する。LC-MSおよびJurkatアッセイの値は非常によく一致しており、LC-MSがT細胞刺激読み出しを直接示すことを示している。
【0640】
図22は、E6(
図22A)またはE7(
図22B)腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX;組合せ2)で用量依存的にリポフェクトした細胞についての実験を示す。その後、異なる分析読み出し(LC-MS;Jurkat NFAT(HepG2またはCHOを含む)および定量的免疫蛍光顕微鏡法(IF))を並行して行い、結果を線形適合させ、比較する。2つの条件(3日間(四角)および10日間(丸))で加速熱ストレス負荷した各DP、さらに非ストレス負荷DP(三角)を用量依存的に細胞に適用した。エラーバーは標準偏差を表す。
【0641】
図23は、非ストレス負荷(右の値)、3日間(中央の値)および10日間(左の値)ストレス負荷したDPの様々な分析結果の評価および比較(LC-MS対JurkatおよびRNA完全性(CE)対LC-MS)を示す。様々な分析測定の線形適合の勾配をグラフにプロットし、線形回帰によって適合させた。
【0642】
全てのアッセイは、直接的な線形相関を示す。
【0643】
図24は、LC-MS(図の右側のバー)およびJurkatアッセイ(図の左側のバー)の結果のさらなる評価および比較を示す。そのために、用量反応曲線のデータ点を相対効力GMPソフトウェアPLAを用いて分析した。異なるストレス負荷試料を非ストレス負荷試料(100%効力として設定)と比較し、PLAソフトウェアを使用してそれぞれの効力を計算する。LC-MSおよびJurkatアッセイの値はよく一致しており、LC-MSがT細胞刺激読み出しを直接示すことを示している。
【0644】
要約すると、全てのアッセイは、(i)試験した全ての抗原について直接的な線形DP用量関係、(ii)ストレス負荷したDP試料についてより低い活性、これは試験した全ての投与量について見られる、および(iii)試験した全てのDPおよび投与量について活性の非常に類似した相関(非ストレス負荷>3日間ストレス負荷>10日間ストレス負荷)を示す。さらに、LC-MSの読み出しもRNAの完全性(CQA)と相関しており、T細胞活性化(Jurkat NFAT)と直接相関している。
【0645】
(実施例10)
LC/MS効力アッセイ:ブリッジングデータ
以下の試験は、(i)LC-MS効力アッセイの読み出しが他の医薬品製剤、例えばLNPベースの製剤に適用可能であるかどうかを分析し、LC-MSアッセイをRNAベースのナノ粒子の一般的な効力プラットフォームアッセイとして可能にする;(ii)1つのDP(1つのDPは、4つの異なる抗原をコードする4つの異なるRNAを含む、「1バイアル」アプローチ)中の複数の抗原をLC-MS効力アッセイによって分析することができるPoCを提供する;(iii)LC-MSアッセイが異なるRNA形態(uRNAおよびmodRNA)に適用可能であることを実証する;(iv)LC-MS効力アッセイがDNAトランスフェクションに適用可能であるPoCを提供する;ならびに(v)LC-MS効力がp2p16ペプチド定量化データに基づいて適用可能であることを実証するために実施した。
【0646】
試験デザイン:2つの異なるLNPを試験した。両方のDPをLC-MS効力アッセイに供した(細胞培養部分をLNPにわずかに適合させ(長期および投薬)、LC-MS部分を特定のコードされたペプチドに適合させる)。2つ全てのLNP DPを異なる用量レベルで分析して、用量反応曲線を作成した。T細胞ストリングをコードするRNA(SARS-CoV-2 T細胞エピトープの融合タンパク質をコードするRNA)および4つの異なる結核抗原をコードするRNAを使用した。
【0647】
T細胞ストリングをコードするRNAに関して、CHO細胞にATMまたはCTM DP(LNP)をトランスフェクトした。DPを用量依存的に(0.75~9μg、非翻訳細胞(UT)も対照として分析した)細胞に適用した。RNAの取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。2つのT細胞特異的ペプチドをLC-MS/MS(PRM)によって分析し、正規化した発現値をプロットした。
【0648】
図25の結果は、LC-MSアプローチがLNP形態に適用可能であることを実証する。T細胞ストリング融合構築物は、ブランク(UT)を除く全ての試料において一貫して同定された。さらに、ペプチド量の用量依存的増加が観察された。3~6μgのトランスフェクトされたDP LNPの間で飽和が始まり、9μgをトランスフェクトするとペプチド量の減少が観察された。ATMのトランスフェクションは、全体として、CTMと比較してより高い翻訳レベルの融合構築物をもたらす。
【0649】
結核抗原をコードするRNAに関して、CHO細胞に、uRNAまたはmodRNAを有するDP ATM(LNP)をトランスフェクトした。各DPは、8つのTB抗原から構成される4つの融合タンパク質(Ag85A+Hrp1;ESAT6+RpfD;M72+VapB47;RpfA+HbhA)をコードする4つのRNAを含む。DPを用量依存的に(150~2400ng)細胞に適用した。取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。TB抗原特異的ペプチドをPRMによって分析した。エラーバーは標準偏差を表す。
【0650】
図26の結果は、LC-MSアプローチが、LNP形態、他の抗原、および他の特異的LC-MS分析ペプチドに適用可能であることを実証する。4つのRNAを含有するDP(「1バイアル」アプローチ)について、全てのRNAが翻訳されることが実証されている。LC-MS効力は、1バイアルアプローチに適用可能である。全ての抗原は、RNA形態とは無関係に検出することができる(modRNA対uRNA)。ブランク試料は翻訳を示さない。3つのRNAは用量依存的に翻訳された(ESAT6-RpfDはおそらく強く分泌された融合タンパク質であり、および/または翻訳効率が低い)。
【0651】
さらなる実験では、CHO細胞に、レポータルシフェラーゼをコードするRNAを含有するLNP対照をトランスフェクトし、ルシフェラーゼは分泌型であった。DPを1用量で三連で細胞に適用した。取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。ルシフェラーゼ特異的ペプチドをPRMによって分析した。エラーバーは標準偏差を表す。
【0652】
図27の結果は、タンパク質が分泌される場合でさえも、ルシフェラーゼ特異的ペプチドが検出され得ることを実証する。ブランク試料はシグナルを示さず、翻訳を示さない。
【0653】
さらなる実験は、DNAがeGFPをコードする、DNA-リポフェクタミン2000(Lipofectamine 2000(Fisher Scientific GmbH,11668030)、ロット:2418953)による24時間のリポフェクション後のCHO細胞の二重蛍光測定を含んだ。4つの異なるDNA-リポフェクタミン用量(225~1800ng)を細胞に適用した。DNAの取り込みおよび翻訳の後、細胞を回収し、溶解し、MS試料調製に供した。細胞のeGFP蛍光シグナル(蛍光強度)は、2つの異なるGFP特異的ペプチド(Top1およびTop2)に由来するeGFP MS/MSペプチドシグナル強度(MSシグナル)と比較して相関していた。
【0654】
図28の結果は、LC-MS効力アッセイがDNAにも適用可能であることを実証する。LC-MS定量化ペプチドはどちらも、細胞の蛍光シグナルに対して直接的な線形相関を示す。
【0655】
さらなる実験では、細胞を、5つの異なる腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的に(抗原あたり11の異なる投与量)リポフェクトした。24時間のインキュベーション時間後、細胞を回収し、LC-MS分析に供した。(p2p16ドメインの)ペプチド3をLC-MSアプローチによって定量化し、正規化した発現を適用された投与量に対してプロットしている。
【0656】
図29の結果は、LC-MS効力がp2p16ペプチド定量データに基づいて製剤に適用可能であることを実証する。
【0657】
さらなる実験では、細胞を、1つの腫瘍抗原をコードするDP(RNA-LPX)で用量依存的に(抗原あたり11の異なる投与量)リポフェクトした。24時間のインキュベーション時間後、細胞を回収し、LC-MS分析に供した。(p2p16ドメインの)ペプチド3をLC-MSアプローチによって定量化し、正規化した発現を適用された投与量に対してプロットしている。
【0658】
図30の結果は、LC-MS効力がp2p16ペプチド定量データに基づいて製剤に適用可能であることを実証する。
【0659】
要約すると、本明細書に記載のデータは、本明細書に記載の効力アッセイが以下に適用可能であることを実証する:
複数の細胞株(接着細胞および懸濁細胞)
複数のDP形態(LPX、Lipofectamin2000、LNP、エレクトロポレーション作業も)
複数のタンパク質/抗原の検出(例えば、DPあたり複数のRNA)
異なるRNA形態(modRNAおよびuRNA)ならびにDNA
異なる細胞溶解アプローチ
異なるタンパク質(レポータ(GFPおよびLuc)、腫瘍抗原、ネオ抗原、ウイルス抗原、分泌タンパク質)。
【配列表】