(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】保守計画支援装置、保守計画支援方法、保守計画支援プログラム及び保守計画支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240301BHJP
【FI】
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2023572185
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2022017074
【審査請求日】2023-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 仁
(72)【発明者】
【氏名】小泉 賢一
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一輝
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/180947(WO,A1)
【文献】特開2002-329021(JP,A)
【文献】特開2011-70274(JP,A)
【文献】特開2006-127070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守作業が必要な部品である保守部品がある物件を保守物件として、出発地から前記保守物件までの経路からの距離に基づき1つ以上の候補物件を抽出する候補抽出部と、
前記候補抽出部によって抽出された前記1つ以上の候補物件それぞれを対象として、対象の候補物件における保守対象の部品である対象部品の残存寿命から前記対象部品の残存価値を計算する残存価値計算部と、
前記残存価値計算部によって計算された前記残存価値を基準費用から減算して、前記対象の候補物件についての保守費用を計算する保守費用計算部と
を備える保守計画支援装置。
【請求項2】
前記保守費用計算部は、前記対象の候補物件への出張費用の一部を前記基準費用からさらに減算して、前記保守物件に保守に行く日における前記保守費用を計算する
請求項1に記載の保守計画支援装置。
【請求項3】
前記残存価値計算部は、前記保守部品の残存寿命がなくなる日を基準とした候補期間における複数の日それぞれを対象として、対象の日における前記残存寿命から前記対象の日における前記残存価値を計算し、
前記保守費用計算部は、前記対象の日における前記残存価値を前記基準費用から減算して、前記対象の日における前記保守費用を計算する
請求項1又は2に記載の保守計画支援装置。
【請求項4】
前記保守計画支援装置は、さらに、
前記対象の候補物件について、前記複数の日それぞれについての前記保守費用を示して保守実施日の選択を受け付ける実施日選択部
を備える請求項3に記載の保守計画支援装置。
【請求項5】
前記実施日選択部は、前記1つ以上の候補物件それぞれについて順に、前記複数の日それぞれについての前記保守費用を示して前記保守実施日の選択を受け付け、
前記保守費用計算部は、前記実施日選択部によって前記保守実施日の選択が受け付けされると、前記対象の候補物件への出張費用の一部を前記基準費用からさらに減算して、前記保守実施日における前記保守費用を再計算する
請求項4に記載の保守計画支援装置。
【請求項6】
前記保守費用計算部は、出張費用の一部として、前記保守実施日に保守が実施される物件の数に応じた割合を前記出張費用に乗じた金額を用いる
請求項5に記載の保守計画支援装置。
【請求項7】
前記保守計画支援装置は、さらに、
前記対象の候補物件についての前記残存価値が前記対象の候補物件への出張費用よりも高い物件である除外物件を、前記1つ以上の候補物件から除外する候補除外部
を備える請求項
1に記載の保守計画支援装置。
【請求項8】
コンピュータが、保守作業が必要な部品である保守部品がある物件を保守物件として、出発地から前記保守物件までの経路からの距離に基づき1つ以上の候補物件を抽出し、
コンピュータが、前記1つ以上の候補物件それぞれを対象として、対象の候補物件における保守対象の部品である対象部品の残存寿命から前記対象部品の残存価値を計算し、
コンピュータが、前記残存価値を基準費用から減算して、前記対象の候補物件についての保守費用を計算する保守計画支援方法。
【請求項9】
保守作業が必要な部品である保守部品がある物件を保守物件として、出発地から前記保守物件までの経路からの距離に基づき1つ以上の候補物件を抽出する候補抽出処理と、
前記候補抽出処理によって抽出された前記1つ以上の候補物件それぞれを対象として、対象の候補物件における保守対象の部品である対象部品の残存寿命から前記対象部品の残存価値を計算する残存価値計算処理と、
前記残存価値計算処理によって計算された前記残存価値を基準費用から減算して、前記対象の候補物件についての保守費用を計算する保守費用計算処理と
を行う保守計画支援装置としてコンピュータを機能させる保守計画支援プログラム。
【請求項10】
保守作業が必要な部品である保守部品がある物件を保守物件として、出発地から前記保守物件までの経路からの距離に基づき1つ以上の候補物件を抽出する候補抽出部と、
前記候補抽出部によって抽出された前記1つ以上の候補物件それぞれを対象として、対象の候補物件における保守対象の部品である対象部品の残存寿命から前記対象部品の残存価値を計算する残存価値計算部と、
前記残存価値計算部によって計算された前記残存価値を基準費用から減算して、前記対象の候補物件についての保守費用を計算する保守費用計算部と
を備える保守計画支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予防保全の導入を考慮した保守計画の支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ又は空調機器等の保守では、保守員が顧客物件を訪問し対応する。保守経費として、作業人件費以外に、移動時間分の人件費及び交通費である出張費用がかかる。
遠隔地の保守では1件の保守のために長時間移動することが多々ある。そのため、出張費用と移動時間とが保守側の大きな負担となっている。
【0003】
突発対応の場合、他物件と合わせて対応するような柔軟な日程調整ができない。突発対応は、故障又は寿命に起因する異常が発生してから対応することである。そのため、突発対応では、効率的な保守計画を立てることが困難である。
遠隔保守を活用した予防保全の技術により、故障前に保守対応できる環境が整いつつある。しかし、予防保全では、故障していない機器を前倒しで保守する。例えば、残存価値がある部品が交換されるといったことが行われる。この場合には、残存価値分だけ、保守を受ける顧客に経済的損失が発生する。そのため、予防保全は、顧客に受け入れられづらい。
【0004】
特許文献1には、予防保全の技術を用いた保守計画の立案技術が記載されている。具体的には、特許文献1には、点検時期と物件位置と残存価値と保守員の技量とを考慮して、保守経費が最小となるように保守対象の物件を選定し、計画立案を行うことが記載されている。これにより、出張費用と移動時間との削減を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、予防保全によって顧客に発生する経済的損失が考慮されていない。そのため、立案された保守計画が顧客には受け入れられない可能性がある。
本開示は、予防保全によって顧客に発生する経済的損失を考慮した保守計画の立案を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る保守計画支援装置は、
保守作業が必要な部品である保守部品がある物件を保守物件として、出発地から前記保守物件までの経路からの距離に基づき1つ以上の候補物件を抽出する候補抽出部と、
前記候補抽出部によって抽出された前記1つ以上の候補物件それぞれを対象として、対象の候補物件における保守対象の部品である対象部品の残存寿命から前記対象部品の残存価値を計算する残存価値計算部と、
前記残存価値計算部によって計算された前記残存価値を基準費用から減算して、前記対象の候補物件についての保守費用を計算する保守費用計算部と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、対象部品の残存価値を基準費用から減算して保守費用を計算する。これにより、予防保全によって顧客に発生する経済的損失を抑えることができる。その結果、予防保全に基づく保守計画が顧客に受け入れられやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る保守計画支援装置10の構成図。
【
図2】実施の形態1に係る保守計画支援装置10の全体的な動作を示すフローチャート。
【
図3】実施の形態1に係る残存価値計算処理の説明図。
【
図5】実施の形態1に係る実施日決定処理のフローチャート。
【
図6】実施の形態1に係る実施日決定処理の具体例の説明図。
【
図7】実施の形態1に係る実施日決定処理の具体例の説明図。
【
図8】実施の形態1に係る実施日決定処理の具体例の説明図。
【
図9】実施の形態1に係る実施日決定処理の具体例の説明図。
【
図10】実施の形態1に係る実施日決定処理の具体例の説明図。
【
図11】従来の予防保全と突発対応とのメリット及びデメリットの説明図。
【
図12】実施の形態1に係る保守計画支援装置10を導入した場合における予防保全と突発対応とのメリット及びデメリットの説明図。
【
図13】変形例1に係る保守計画支援装置10の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1を参照して、実施の形態1に係る保守計画支援装置10の構成を説明する。
保守計画支援装置10は、コンピュータである。
保守計画支援装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14とのハードウェアを備える。プロセッサ11は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0011】
プロセッサ11は、プロセッシングを行うICである。ICはIntegrated Circuitの略である。プロセッサ11は、具体例としては、CPU、DSP、GPUである。CPUは、Central Processing Unitの略である。DSPは、Digital Signal Processorの略である。GPUは、Graphics Processing Unitの略である。
【0012】
メモリ12は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ12は、具体例としては、SRAM、DRAMである。SRAMは、Static Random Access Memoryの略である。DRAMは、Dynamic Random Access Memoryの略である。
【0013】
ストレージ13は、データを保管する記憶装置である。ストレージ13は、具体例としては、HDDである。HDDは、Hard Disk Driveの略である。また、ストレージ13は、SD(登録商標)メモリカード、CompactFlash(登録商標)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク、DVDといった可搬記録媒体であってもよい。SDは、Secure Digitalの略である。DVDは、Digital Versatile Diskの略である。
【0014】
通信インタフェース14は、外部の装置と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース14は、具体例としては、Ethernet(登録商標)、USB、HDMI(登録商標)のポートである。USBは、Universal Serial Busの略である。HDMIは、High-Definition Multimedia Interfaceの略である。
【0015】
保守計画支援装置10は、機能構成要素として、対象検知部21と、候補選定部22と、保守費用計算部23と、実施日選択部24とを備える。候補選定部22は、候補抽出部25と、残存価値計算部26と、出張費用計算部27と、候補除外部28とを備える。保守計画支援装置10の各機能構成要素の機能はソフトウェアにより実現される。
ストレージ13には、保守計画支援装置10の各機能構成要素の機能を実現するプログラムが格納されている。このプログラムは、プロセッサ11によりメモリ12に読み込まれ、プロセッサ11によって実行される。これにより、保守計画支援装置10の各機能構成要素の機能が実現される。
【0016】
ストレージ13には、機器状態情報31と、顧客情報32と、部品情報33とが記憶される。機器状態情報31は、保守対象の複数の機器それぞれの状態を示す情報である。顧客情報32は、保守契約している顧客の情報である。顧客情報32は、顧客の物件の位置と、顧客の物件にある機器の機種と等を示す。部品情報33は、各機器を構成する部品の情報である。部品情報33は、各部品について、部品単価と、部品寿命と、導入日と等を示す。ここでは、部品寿命は、過去の部品の使用実績から予測される寿命であってもよいし、使用実績に関わらず製造元等により定められた耐用年数であってもよい。
【0017】
図1では、プロセッサ11は、1つだけ示されていた。しかし、プロセッサ11は、複数であってもよく、複数のプロセッサ11が、各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。
【0018】
***動作の説明***
図2から
図10を参照して、実施の形態1に係る保守計画支援装置10の動作を説明する。
実施の形態1に係る保守計画支援装置10の動作手順は、実施の形態1に係る保守計画支援方法に相当する。また、実施の形態1に係る保守計画支援装置10の動作を実現するプログラムは、実施の形態1に係る保守計画支援プログラムに相当する。
【0019】
図2を参照して、実施の形態1に係る保守計画支援装置10の全体的な動作を説明する。
【0020】
(ステップS11:対象検知処理)
対象検知部21は、点検又は修理等の保守作業が必要な部品を保守部品として検知する。
具体的には、対象検知部21は、複数の顧客それぞれの物件にある機器の状態を監視する状態監視システムから、定期的に機器情報を収集する。機器情報は、機器についての稼働データと音と振動と映像といった情報である。対象検知部21は、機器情報から、機器の状態を予測して、機器状態情報31としてストレージ13に蓄積する。機器の状態としては、機器の劣化状況と予測寿命と故障状態と等である。対象検知部21は、機器の状態が予め定められた保守作業が必要な状態になっている部品を保守部品として検知する。
【0021】
(ステップS12:候補抽出処理)
候補抽出部25は、ステップS11で検知された保守部品がある物件を保守物件Xに設定する。候補抽出部25は、出発地から保守物件Xまでの経路からの距離に基づき1つ以上の候補物件Yを抽出する。出発地は、保守作業を行う作業者がいる場所である。ここでは、出発地を保守事業所とする。
具体的には、候補抽出部25は、保守事業所から保守物件までの経路を特定する。保守物件の位置は、顧客情報32を参照することにより特定される。経路の特定は、既存の経路探索アルゴリズム等を用いることで実現される。候補抽出部25は、複数の顧客それぞれの物件から経路上の最近点までの距離を計算する。候補抽出部25は、距離が基準距離以内であった1つ以上の物件を候補物件Yとして抽出する。
【0022】
(ステップS13:残存価値計算処理)
残存価値計算部26は、ステップS12で抽出された1つ以上の候補物件Yそれぞれを対象の候補物件に設定する。残存価値計算部26は、対象の候補物件における保守対象の部品である対象部品の残存寿命から対象部品の残存価値を計算する。
具体的には、残存価値計算部26は、部品情報33を参照して、対象部品の導入日と部品寿命とを特定する。残存価値計算部26は、導入日からの経過期間を部品寿命から減算することにより、残存寿命を計算する。残存価値計算部26は、残存寿命と部品単価とから予め定められた方法により残存価値を計算する。例えば、残存価値計算部26は、残存寿命を部品寿命で除した値を部品単価に乗じて残存価値を計算する。
この際、残存価値計算部26は、保守部品の残存寿命がなくなる日を基準とした一定期間を候補期間に設定する。具体的には、残存価値計算部26は、保守部品の残存寿命がなくなる日以前の一定期間を候補期間に設定する。残存価値計算部26は、候補期間における複数の日それぞれを対象に設定する。候補期間における複数の日は、例えば、候補期間における保守業者の全ての営業日である。残存価値計算部26は、対象の日における残存寿命から対象の日における残存価値を計算する。
【0023】
図3を参照して具体的に説明する。
図3では、物件0が、ステップS11で検知された保守部品がある保守物件Xである。物件1~物件4の4つの物件が、ステップS12で抽出された候補物件Yである。
保守物件Xの残存寿命は3/31に0になる。3/31以前の1月間が候補期間に設定されている。そして、物件1~物件4の4つの物件それぞれについて、候補期間における各日における残存価値が計算されている。早い日ほど残存寿命が長いので残存価値が高くなっている。
【0024】
(ステップS14:出張費用計算処理)
出張費用計算部27は、ステップS12で抽出された1つ以上の候補物件Yそれぞれを対象の候補物件に設定する。出張費用計算部27は、対象の候補物件についての出張費用を計算する。
具体例としては、出張費用は、保守事業所から対象の候補物件までの距離に応じて予め定められている。そこで、出張費用計算部27は、保守事業所から対象の候補物件までの距離を計算する。そして、出張費用計算部27は、計算された距離に対応する出張費用を特定する。
【0025】
(ステップS15:候補除外処理)
候補除外部28は、ステップS13で計算された残存価値が出張費用よりも高い物件を除外物件に設定する。候補除外部28は、除外物件を候補物件Yから除外する。
具体的には、候補除外部28は、ステップS12で抽出された1つ以上の候補物件Yそれぞれを対象の候補物件に設定する。候補除外部28は、対象の候補物件についての残存価値が、ステップS14で特定された出張費用よりも高い場合には、対象の候補物件を除外物件に設定する。そして、候補除外部28は、除外物件を候補物件Yから除外する。
【0026】
図3の物件1~物件4の出張費用がいずれも¥25,000であるとする。この場合には、
図4に示すように、物件3については、残存価値が出張費用よりも高いため、除外物件に設定される。そして、物件3は、候補物件Yから除外される。
なお、候補期間における一部の日に関してだけ、候補物件Yから除外される可能性もある。正確には、残存価値が高い、候補期間における早い日に関してだけ、候補物件Yから除外される可能性もある。
【0027】
(ステップS16:実施日決定処理)
保守費用計算部23は、ステップS15で除外物件が除外された後の1つ以上の候補物件Yそれぞれについての保守費用を計算する。そして、実施日選択部24は、保守物件XとステップS15で除外物件が除外された後の1つ以上の候補物件Yそれぞれとについて、複数の日それぞれについての保守費用を示して保守実施日の選択を受け付ける。
【0028】
図5を参照して、実施の形態1に係る実施日決定処理を説明する。
(ステップS21:費用計算処理)
保守費用計算部23は、保守物件X及び候補物件Yの保守費用を計算する。
具体的には、保守費用計算部23は、保守物件Xと、ステップS14で除外物件が除外された後の1つ以上の候補物件Yそれぞれとを対象の候補物件に設定する。保守費用計算部23は、候補期間における複数の日それぞれを対象に設定する。保守費用計算部23は、対象の候補物件について、ステップS13で計算された対象の日における残存価値を基準費用から減算して、対象の候補物件についての対象の日における保守費用を計算する。
ここでは、保守費用は、出張費用と交換費用との合計とする。基準費用は、対象の候補物件についての出張費用と、対象の候補物件についての保守作業における交換費用との合計である。保守費用計算部23は、基準費用のうちの交換費用から残存価値を減算して、保守費用を計算する。
【0029】
(ステップS22:順序決定処理)
保守費用計算部23は、保守物件Xと1つ以上の候補物件Yとについて、実施日の決定順序を決定する。具体的には、保守費用計算部23は、実施日の決定順序を残存寿命の短い順に決定する。ここでは、残存寿命の短い順に、実施日の決定順序が1,...,mに決定される。
【0030】
変数nの初期値として1が設定される。
【0031】
(ステップS23:日程調整処理)
実施日選択部24は、実施日の決定順序がn番目の物件を対象の物件に設定する。これは、保守実施日が決まっていない物件のうち、実施日の決定順序が最も高い物件が対象の物件に設定されることを意味する。実施日選択部24は、対象の物件について、複数の日それぞれについての保守費用を示して保守実施日の選択を受け付ける。例えば、実施日選択部24は、対象の物件のユーザ端末に、複数の日それぞれについての保守費用を表示して、保守実施日を選択させる。
初めてステップS23の処理が実行される場合には、実施日選択部24は、保守物件Xについて保守実施日の選択を受け付けることになる。
【0032】
(ステップS24:保守計画生成処理)
実施日選択部24は、ステップS23で選択された保守実施日についての、保守員派遣計画を更新させる。具体的には、実施日選択部24は、実施日の決定順序がn番目の物件に保守員を派遣する計画を組み込ませる。保守員を派遣する計画をどのように組み込むかは、保守事業所の状況等に応じて決められる。保守員を派遣する計画を組み込む処理は、既存の計画立案システムに実行させてもよいし、管理者等に行わせてもよい。
【0033】
(ステップS25:上限判定処理)
実施日選択部24は、ステップS23で選択された日について、その日が保守実施日として選択された選択数が、保守可能上限数に到達したか否かを判定する。保守可能上限数は、1日に保守作業を実行可能な物件数の上限値である。
実施日選択部24は、選択数が保守可能上限数に到達した場合には、処理をステップS26に進める。一方、実施日選択部24は、選択数が保守可能上限数に到達していない場合には、処理をステップS27に進める。
【0034】
(ステップS26:日程除外処理)
実施日選択部24は、ステップS23で選択された日を保守実施日として選択可能な日から除外する。除外された日は、これ以降ステップS23で保守実施日として選択することができない状態になる。
【0035】
(ステップS27:残候補判定処理)
実施日選択部24は、保守実施日が決まっていない候補物件Yが存在するか否かを判定する。
実施日選択部24は、存在する場合には、処理をステップS28に進める。一方、存在しない場合には、処理を終了する。
【0036】
(ステップS28:費用再計算処理)
保守費用計算部23は、保守実施日が決定していない1つ以上の候補物件Yそれぞれの保守費用を再計算する。
具体的には、保守費用計算部23は、保守実施日が決定していない1つ以上の候補物件Yそれぞれを対象の候補物件に設定する。保守費用計算部23は、ステップS23で選択された保守実施日について、対象の候補物件への出張費用の一部を基準費用からさらに減算して、保守費用を再計算する。ここでは、保守費用計算部23は、基準費用のうちの出張費用から出張費用の一部を減算して、保守費用を再計算する。
【0037】
実施の形態1では、保守費用計算部23は、出張費用の一部として、保守実施日に保守が実施される物件の数に応じた割合を出張費用に乗じた金額を用いる。ここでは、保守費用計算部23は、出張費用の一部として、出張費用に(1-(1/(保守実施日に保守が実施される物件の数+1)))を乗じた金額を用いる。
例えば、保守実施日に保守が実施される物件の数が1であれば、出張費用に(1-(1/(1+1)))=1/2を乗した金額が用いられる。つまり、出張費用が1/2に減額される。
例えば、保守実施日に保守が実施される物件の数が2であれば、出張費用に(1-(1/(2+1)))=2/3を乗した金額が用いられる。つまり、出張費用が1/3に減額される。
【0038】
保守費用計算部23は、保守費用を再計算した後、変数nに1加算した上で処理をステップS23に戻す。
【0039】
図6から
図10を参照して、実施の形態1に係る実施日決定処理の具体例を説明する。
図6から
図10では、
図4に示す物件0と物件1と物件2と物件4とについての保守実施日を決定する例が示されている。
ステップS21では、
図4における例では、
図6に示すように、物件1と物件2と物件4とについて候補期間における複数の日それぞれの保守費用が計算される。ステップS22では、物件0、物件1、物件2、物件4の順に実施日の決定順序が決定されたとする。
【0040】
ステップS23では、物件0である保守物件Xについて、保守実施日の選択が受け付けされる。この際、
図7に示すように、保守物件Xについては、候補期間における複数の日について、基準費用をそのまま保守費用として示して、保守実施日の選択が受け付けされる。ここでは、3/21が保守実施日として選択されたとする。すると、ステップS24で3/21に保守物件Xに保守員を派遣する計画が組み込まれる。
ステップS25では、ステップS23で選択された日について、選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。つまり、ここでは、3/21の選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。ここでは、3/21の選択数が保守可能上限数に到達していないとする。そのため、処理がステップS27に進められる。ステップS27では、保守実施日が決まっていない候補物件Yが存在すると判定される。そのため、処理がステップS28に進められる。ステップS28では、
図8に示すように、物件1と物件2と物件4とについて、3/21の出張費用が1/2に減額されて、保守費用が再計算される。そして、処理がステップS23に戻される。
【0041】
ステップS23では、
図8の物件1についての保守費用を示して、物件1についての保守実施日の選択が受け付けされる。ここでは、3/24が保守実施日として選択されたとする。すると、ステップS24で3/24に物件1に保守員を派遣する計画が組み込まれる。
ステップS25では、ステップS23で選択された日について、選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。つまり、ここでは、3/24の選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。ここでは、3/24の選択数が保守可能上限数に到達していないとする。そのため、処理がステップS27に進められる。ステップS27では、保守実施日が決まっていない候補物件Yが存在すると判定される。そのため、処理がステップS28に進められる。ステップS28では、
図9に示すように、物件2と物件4とについて、3/24の出張費用が1/2に減額されて、保守費用が再計算される。そして、処理がステップS23に戻される。
【0042】
ステップS23では、
図9の物件2についての保守費用を示して、物件2についての保守実施日の選択が受け付けされる。ここでは、3/21が保守実施日として選択されたとする。すると、ステップS24で3/21に物件2に保守員を派遣する計画が組み込まれる。
ステップS25では、ステップS23で選択された日について、選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。つまり、ここでは、3/21の選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。ここでは、3/21の選択数が保守可能上限数に到達していないとする。そのため、処理がステップS27に進められる。ステップS27では、保守実施日が決まっていない候補物件Yが存在すると判定される。そのため、処理がステップS28に進められる。ステップS28では、
図10に示すように、物件4について、3/21の出張費用が1/3に減額されて、保守費用が再計算される。そして、処理がステップS23に戻される。
【0043】
ステップS23では、
図10の物件4についての保守費用を示して、物件4についての保守実施日の選択が受け付けされる。ここでは、3/21が保守実施日として選択されたとする。すると、ステップS24で3/21に物件4に保守員を派遣する計画が組み込まれる。
ステップS25では、ステップS23で選択された日について、選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。つまり、ここでは、3/21の選択数が保守可能上限数に到達したか否かを判定する。ここでは、3/21の選択数が保守可能上限数に到達したとする。そのため、処理がステップS26に進められる。ステップS26では、3/21が保守実施日として選択可能な日から除外される。そして、ステップS27では、保守実施日が決まっていない候補物件Yが存在しないと判定される。そのため、処理が終了する。
【0044】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る保守計画支援装置10は、対象部品の残存価値を基準費用から減算して保守費用を計算する。
これにより、予防保全によって顧客に発生する経済的損失を抑えることができる。その結果、予防保全に基づく保守計画が顧客に受け入れられやすくなる。予防保全が顧客に受け入れられることにより、突発対応が減る。そのため、効率的な保守計画を立てやすくなる。そして、保守に伴う移動時間分の人件費及び交通費を抑えることが可能になる。
【0045】
また、実施の形態1に係る保守計画支援装置10は、他の物件の保守実施日と同じ日についての保守費用を減額する。
これにより、顧客が他の物件の保守実施日が、保守実施日として選択され易くなる。その結果、同日に同一方面の保守作業が多く設定され易くなる。そのため、効率的な保守計画を立てやすくなる。
【0046】
図11及び
図12を参照して、実施の形態1に係る保守計画支援装置10の効果を詳しく説明する。
図11を参照して、従来の予防保全と突発対応とのメリット及びデメリットを説明する。
顧客側には、予防保全のメリットとして、停止期間が最短化される点がある。一方、突発対応のメリットとして、保守料金が最小化される点がある。予防保全のデメリットとして、保守料金が高くなることがある。つまり、残存寿命分の残存価値を捨てることになるというデメリットがある。突発対応のデメリットとして、停止期間が長期化してしまうことがある。
保守側には、予防保全のメリットとして、計画的な対応が可能なため、保守コストを低減できることがある。突発対応にはメリットがない。予防保全にはデメリットがない。突発対応のデメリットとして、即時対応が必要になることがある。つまり、故障が発生した場合に、急な部品手配と急な日程調整が発生する。また、突発対応のデメリットとして、計画的な対応が不可能なため、保守コストが高くなることがある。具体的には、出張費用が増加してしまう。また、突発対応のデメリットとして、対応の遅れ等に起因して顧客の不満が高まることがある。
【0047】
図12を参照して、実施の形態1に係る保守計画支援装置10を導入した場合における予防保全と突発対応とのメリット及びデメリットを説明する。ここでは、
図11と相違する点について説明する。
顧客側には、予防保全のメリットとして、停止期間が最短化されることに加え、突発対応の場合と同じコスト費用で故障前に部品交換できることがある。突発対応にはメリットがない。予防保全にはデメリットがない。突発対応のデメリットは、
図11と同じである。
保守側については、予防保全のデメリットとして、残存価値分だけ保守費用を減額する分だけ収入が減ることがある。その他は、
図11と同じである。
【0048】
このように、実施の形態1に係る保守計画支援装置10を導入することにより、顧客側としては、突発対応よりも予防保全を導入することが望ましい状態になる。その結果、予防保全に基づく保守計画が顧客に受け入れられ易くなる。
【0049】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、保守計画支援装置10は、1台の装置として構成された。しかし、保守計画支援装置10の機能構成要素のうち、一部がクラウド上のサーバで実現され、残りがクライアント端末で実現されるといった構成であってもよい。この場合には、保守計画支援装置10は、複数の装置から構成される保守計画支援システムとなる。
また、ストレージ13に記憶された機器状態情報31と顧客情報32と部品情報33とは、外部のデータベースに記憶されてもよい。この場合にも、保守計画支援装置10は、複数の装置から構成される保守計画支援システムとなる。
【0050】
実施の形態1では、各機能構成要素がソフトウェアで実現された。しかし、変形例1として、各機能構成要素はハードウェアで実現されてもよい。この変形例1について、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0051】
図13を参照して、変形例1に係る保守計画支援装置10の構成を説明する。
各機能構成要素がハードウェアで実現される場合には、保守計画支援装置10は、プロセッサ11とメモリ12とストレージ13とに代えて、電子回路15を備える。電子回路15は、各機能構成要素と、メモリ12と、ストレージ13との機能とを実現する専用の回路である。
【0052】
電子回路15としては、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、FPGAが想定される。GAは、Gate Arrayの略である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略である。
各機能構成要素を1つの電子回路15で実現してもよいし、各機能構成要素を複数の電子回路15に分散させて実現してもよい。
【0053】
<変形例2>
変形例2として、一部の各機能構成要素がハードウェアで実現され、他の各機能構成要素がソフトウェアで実現されてもよい。
【0054】
プロセッサ11とメモリ12とストレージ13と電子回路15とを処理回路という。つまり、各機能構成要素の機能は、処理回路により実現される。
【0055】
また、以上の説明における「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「処理回路」に読み替えてもよい。
【0056】
以上、本開示の実施の形態及び変形例について説明した。これらの実施の形態及び変形例のうち、いくつかを組み合わせて実施してもよい。また、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施してもよい。なお、本開示は、以上の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 保守計画支援装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 通信インタフェース、15 電子回路、21 対象検知部、22 候補選定部、23 保守費用計算部、24 実施日選択部、25 候補抽出部、26 残存価値計算部、27 出張費用計算部、28 候補除外部、31 機器状態情報、32 顧客情報、33 部品情報。
【要約】
候補抽出部(25)は、保守作業が必要な保守部品がある物件を保守物件として、出発地から保守物件までの経路からの距離に基づき1つ以上の候補物件を抽出する。残存価値計算部(26)は、抽出された1つ以上の候補物件それぞれを対象として、対象の候補物件における保守対象の部品である対象部品の残存寿命から対象部品の残存価値を計算する。保守費用計算部(23)は、残存価値を基準費用から減算して、対象の候補物件についての保守費用を計算する。