(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240304BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240304BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2020011693
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】栗田 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 紫朗
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/026562(WO,A1)
【文献】特開2018-041434(JP,A)
【文献】「NNCチュートリアル:Image Augmentationレイヤーによる画像データの水増し」,YouTube[online][video],2019年10月02日,<https://www.youtube.com/watch?v=DrQoTVQP_RI>,[検索日:2023年8月28日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06F 18/00 - G06F 18/40
G06N 3/00 - G06N 99/00
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 7/90
G06V 10/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の良品画像を記憶する記憶装置と、
前記複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付ける手段と、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションする手段と、
検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた前記良品画像とを表示する表示装置と、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として前記記憶装置に登録する手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差分画像を更に表示する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との合成画像を更に表示する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれの画素値が異なる色成分の濃淡に変換にされた上で合成された画像である、画像処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれから抽出されたエッジを合成して得られる画像である、画像処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれの色濃度を合成して得られる画像である、画像処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれに位置決めの目印となるマークを表示する、画像処理装置。
【請求項8】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差が最小となるオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解を探索するための手段を更に備え、
前記表示装置は、前記探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像と前記検査対象となる製品の画像との差分画像を表示する、画像処理装置。
【請求項9】
画像処理装置が、
複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付けるステップと、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、
検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた前記良品画像とを表示するステップと、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として登録するステップと、
を実行する画像処理方法。
【請求項10】
画像処理装置に、
複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付けるステップと、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、
検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた前記良品画像とを表示するステップと、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として登録するステップと、
を実行させる画像処理プログラム。
【請求項11】
複数の良品画像を記憶する記憶装置と、
前記複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付ける手段と、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションする手段と、
検査対象となる製品の画像と、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差分画像とを表示する表示装置と、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として前記記憶装置に登録する手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像処理装置であって、
前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差が最小となるオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解を探索するための手段を更に備え、
前記表示装置は、前記探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像と前記検査対象となる製品の画像との差分画像を表示する、画像処理装置。
【請求項13】
請求項11に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、オーギュメンテーションされた前記良品画像を更に表示する、画像処理装置。
【請求項14】
請求項11に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との合成画像を更に表示する、画像処理装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれの画素値が異なる色成分の濃淡に変換にされた上で合成された画像である、画像処理装置。
【請求項16】
請求項14に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれから抽出されたエッジを合成して得られる画像である、画像処理装置。
【請求項17】
請求項14に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれの色濃度を合成して得られる画像である、画像処理装置。
【請求項18】
請求項13に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれに位置決めの目印となるマークを表示する、画像処理装置。
【請求項19】
画像処理装置が、
複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付けるステップと、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、
検査対象となる製品の画像と、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差分画像とを表示するステップと、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として登録するステップと、
を実行する画像処理方法。
【請求項20】
画像処理装置に、
複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付けるステップと、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、
検査対象となる製品の画像と、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差分画像とを表示するステップと、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として登録するステップと、
を実行させる画像処理プログラム。
【請求項21】
複数の良品画像を記憶する記憶装置と、
前記複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付ける手段と、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションする手段と、
検査対象となる製品の画像と、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との合成画像とを表示する表示装置と、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として前記記憶装置に登録する手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項22】
請求項21に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれの画素値が異なる色成分の濃淡に変換にされた上で合成された画像である、画像処理装置。
【請求項23】
請求項21に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれから抽出されたエッジを合成して得られる画像である、画像処理装置。
【請求項24】
請求項21に記載の画像処理装置であって、
前記合成画像は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれの色濃度を合成して得られる画像である、画像処理装置。
【請求項25】
請求項21乃至24のうち何れか1項に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、オーギュメンテーションされた前記良品画像を更に表示する、画像処理装置。
【請求項26】
請求項25に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像とのそれぞれに位置決めの目印となるマークを表示する、画像処理装置。
【請求項27】
請求項21に記載の画像処理装置であって、
前記表示装置は、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差分画像を更に表示する、画像処理装置。
【請求項28】
請求項27に記載の画像処理装置であって、
前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との差が最小となるオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解を探索するための手段を更に備え、
前記表示装置は、前記探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像と前記検査対象となる製品の画像との差分画像を表示する、画像処理装置。
【請求項29】
画像処理装置が、
複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付けるステップと、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、
検査対象となる製品の画像と、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との合成画像とを表示するステップと、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として登録するステップと、
を実行する画像処理方法。
【請求項30】
画像処理装置に、
複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、前記選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関する前記ユーザからの指示とを受け付けるステップと、
前記選択された良品画像を前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、
検査対象となる製品の画像と、前記検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた前記良品画像との合成画像とを表示するステップと、
前記オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうち前記ユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた前記良品画像を新規の良品画像として登録するステップと、
を実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関わる。
【背景技術】
【0002】
工業製品の製造分野においては、画像処理技術を応用した外観検査により、製品の欠陥の有無や程度を評価する検査方法が実用化されている。この種の検査方法の分野においては、機械学習の応用により検査精度を高める試みが検討されている。例えば、検査対象となる製品の良品のみの画像から良品の特徴を学習し、その学習結果に基づいて、検査対象が良品であるのか又は不良品であるのかを判定するアルゴリズムが知られている。このアルゴリズムでは、検査対象となる製品の画像から良品の特徴を抽出し、抽出した特徴から復元画像を生成する。仮に、検査対象となる製品に欠陥が含まれていたとしても、復元画像には、欠陥の特徴は踏まれていないため、検査対象となる製品の画像と復元画像とを対比して両者の差が閾値以上であるときには、検査対象となる製品は、欠陥を含む不良品であると判定することができる。
【0003】
このような機械学習により、良品の特徴を適切に学習するには、良品の特徴のばらつきを漏れなく分析するに足りる必要十分な量の画像が必要となる。学習に用いられる画像が表す良品の特徴のばらつきに偏りがあると、学習結果は、偏りのある特徴を反映することになるため、そのような学習結果を用いて生成された復元画像と検査対象となる製品の画像との間にずれが生じ得る。このようなずれは、欠陥として誤判定される要因となり得る。
【0004】
良品の特徴のばらつきを漏れなく分析するに足りる必要十分な量の画像を得るための手段として、オーギュメンテーションと呼ばれる手法が知られている。この手法は、学習に用いられる画像に意図的に変動(例えば、平行移動、回転、拡大縮小、左右反転、上下反転など)を加え、変動が加えられた画像を学習用の画像として追加することにより、学習に用いられる画像を増やす技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、良品の特徴のばらつきは、製品毎に異なるため、学習に用いられる画像にどのような変動をどれくらい加えるべきかということも製品毎に異なる。学習に用いられる画像に適切な変動を適切な量だけ加えないと、学習に用いられる画像が表す良品の特徴のばらつきに偏りがある場合と同様に、誤検出を招く要因となり得る。また、学習に費やす時間も増大してしまう問題も生じる。従来は、学習に用いられる画像にどのような変動をどれくらい加えるべきかを試行錯誤で決定していたため、手間を要していた。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明に関わる画像処理装置は、複数の良品画像を記憶する記憶装置と、複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関するユーザからの指示とを受け付ける手段と、選択された良品画像をオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションする手段と、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像とを表示する表示装置と、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうちユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像を新規の良品画像として記憶装置に登録する手段を備える。これにより、ユーザは、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像とを見比べながら、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【0008】
表示装置は、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像との差分画像を更に表示してもよい。ユーザは、差分画像から、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像との差又は相違を視覚的に認識することができる。これにより、ユーザは、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像との差を考慮に入れて、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【0009】
表示装置は、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像との合成画像を更に表示してもよい。ユーザは、合成画像から、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像との差又は相違を視覚的に認識することができる。これにより、ユーザは、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像との差を考慮に入れて、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【0010】
ここで、合成画像は、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像との差又は相違を視覚的に認識することができる画像であればよい。合成画像は、例えば、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像とのそれぞれの画素値が異なる色成分の濃淡に変換にされた上で合成された画像でもよい。合成画像は、例えば、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像とのそれぞれから抽出されたエッジを合成して得られる画像でもよい。合成画像は、例えば、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像とのそれぞれの色濃度を合成して得られる画像でもよい。
【0011】
表示装置は、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像とのそれぞれに位置決めの目印となるマークを表示してもよい。これにより、ユーザは、マークを目印として、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像との差が少なくなるように、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【0012】
本発明に関わる画像処理装置は、検査対象となる製品の画像とオーギュメンテーションされた良品画像との差が最小となるオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解を探索するための手段を更に備えてもよい。表示装置は、探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた良品画像と、検査対象となる製品の画像との差分画像を表示してもよい。これにより、探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解が正しいか否かをユーザが判断することができる。
【0013】
本発明に関わる画像処理方法は、画像処理装置が、複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関するユーザからの指示とを受け付けるステップと、選択された良品画像をオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像とを表示するステップと、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうちユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像を新規の良品画像として登録するステップを実行する。これにより、ユーザは、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像とを見比べながら、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【0014】
本発明に関わる画像処理プログラムは、画像処理装置に、複数の良品画像の中から何れかの良品画像を選択することを要求するユーザからの指示と、選択された良品画像のオーギュメンテーションの方法及び量に関するユーザからの指示とを受け付けるステップと、選択された良品画像をオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップと、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像とを表示するステップと、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうちユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像を新規の良品画像として登録するステップを実行させる。これにより、ユーザは、検査対象となる製品の画像と、オーギュメンテーションされた良品画像とを見比べながら、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションの手順の概要を示す説明である。
【
図2】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションの一例を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示を受け付けるユーザインタフェースとして機能する部分画面の一例を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に関わる画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す説明である。
【
図5】本発明の実施形態に関わる画像処理方法における機械学習の一例を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に関わる画像処理方法における良品判定の処理の流れの一例を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に関わる画像処理方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図9】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図10】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図11】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図12】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図13】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図14】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図15】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図16】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図17】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図18】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図19】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図20】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図21】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図22】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図23】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図24】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図25】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図26】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図27】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図28】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図29】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図30】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図31】本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションされた良品画像と検査対象となる製品の画像との差又は相違を認識できる画面の一例である。
【
図32】本発明の実施形態に関わる画像処理方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図33】本発明の実施形態に関わる設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一側面に関わる実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更又は改良され得るととともに、本発明には、その等価物も含まれる。なお、同一符号は、同一の構成要素を示すものとし、重複する説明は省略する。
【0018】
[適用例]
まず、本発明の適用例について説明する。本実施形態では、良品として分類されるクラスと不良品として分類されるクラスとを予め設定する。本明細書では、良品のクラスに分類される製品の画像を良品画像と呼ぶ。本実施形態に関わる画像処理装置は、複数の良品画像を学習用の画像として登録し、登録された複数の良品画像に基づいて良品の特徴を学習する。画像処理装置は、例えば、公知のアルゴリズムにより、検査対象となる製品の画像が良品のクラスに分類されるのか、或いは不良品のクラスに分類されるのかを判定する。本明細書では、このような判定を良否判定と呼ぶ。
【0019】
次に、
図1を参照しながら、学習に用いられる良品画像をオーギュメンテーションにより増やす手法についてその概要を説明する。
図1において、符号32は、検査対象となる製品の画像を示す。検査対象となる製品は、良品のクラスに属するものでもよく、或いは、不良品のクラスに属するものでもよい。ユーザは、予め登録されている複数の良品画像31の中から、検査対象となる製品の画像32に最も類似する良品画像31を選択する。「類似」とは、画像に写っている製品の外観特徴(例えば、形状)の類似の度合いを意味する。ユーザは、予め登録されている複数の良品画像31の中から選択した良品画像31と、検査対象となる製品の画像32との差が少なくなるように、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示を画像処理装置に与える。符号35は、選択された良品画像31と、検査対象となる製品の画像32との差が少なくなるように、ユーザによって入力されたオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像を示す。即ち、良品画像35は、ユーザからの指示に応じて、良品画像31がオーギュメンテーションされた後の画像である。良品画像35が画像32に一致しない場合には、ユーザは、良品画像35と画像32との差が少なくなるように、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示を、画像処理装置に、例えば、複数回再入力することができる。
【0020】
ここで、オーギュメンテーションの方法とは、オーギュメンテーションにより画像を変動させる仕方(例えば、上移動、下移動、左移動、右移動、回転、拡大縮小、左右反転、及び上下反転など)を意味する。
図2に示す例では、良品画像31を上移動、下移動、左移動、又は右移動することにより、良品画像35を生成する例を示している。オーギュメンテーションの量とは、オーギュメンテーションにより画像に加えられる変動の度合いを定量化した値を意味する。例えば、良品画像31を右移動して良品画像35を生成する場合には、オーギュメンテーションの量は、良品画像31の右方向の移動量を意味する。
【0021】
なお、良品画像35と画像32との差は、良品画像35に写っている製品の外観特徴と、画像32に写っている製品の外観特徴との差を意味し、この差は、必ずしも面積のみを基準に判断するのではなく、良品画像35に写っている製品の形状と画像32に写っている製品の形状との差も考慮に入れるのが望ましい。良品画像35に写っている製品の面積と、画像32に写っている製品の面積との差が最小となるときにおける、良品画像35に写っている製品の形状と、画像32に写っている製品の形状との差が、例えば、薄肉の中空円形状となる場合には、欠陥を認識するアルゴリズムによっては、これを欠陥として誤認識する場合があり得る。このような誤認識は、良否判定の精度の低下をもたらすことがあり得る。
【0022】
図3は、本発明の実施形態に関わるオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示を受け付けるユーザインタフェースとして機能する部分画面の一例を示す説明図である。
図3において、符号71は、複数の良品画像31の中から何れかの良品画像31を選択することを要求するユーザからの指示を受け付けるためのユーザインタフェースとして機能する部分画面(例えば、ウィンドウ)の一例である。部分画面71には、画像処理装置に予め登録されている複数の良品画像31のリストが提示されている。「画像1」、「画像2」、…、「画像N」は、良品画像31のファイル名である。例えば、ユーザは、部分画面71に提示されているリストの中から画像32に最も類似する良品画像31の選択を指示することができる。
【0023】
図3において、符号72は、オーギュメンテーションの方法に関する指示をユーザから受け付けるためのユーザインタフェースとして機能する部分画面(例えば、ウィンドウ)の一例である。部分画面72には、オーギュメンテーションの方法に関する複数の選択肢80が列挙されている。複数の選択肢80のそれぞれは、異なるオーギュメンテーションの方法に対応付けられている。ユーザは、部分画面71に提示されているリストの中から選択した何れかの良品画像31をオーギュメーテーションする方法を複数の選択肢80の中から選択することができる。なお、オーギュメンテーションの方法に関する指示の入力方法は、選択肢の形式に限られるものではなく、例えば、テキスト入力や音声入力などでもよい。
【0024】
図3において、符号73は、オーギュメンテーションの量に関する指示をユーザから受け付けるためのユーザインタフェースとして機能する部分画面(例えば、ウィンドウ)の一例である。この例では、部分画面73は、オーギュメンテーションの量に関する指示をユーザからの「数字」入力により受け付ける。例えば、オーギュメンテーションの方法として、選択肢80の中から「上移動」が選択され、オーギュメンテーションの量として「10」が入力されると、部分画面71に提示されているリストの中から選択された良品画像31を「10」の量だけ上に移動させる指示が画像処理装置に入力される。なお、オーギュメンテーションの量に関する指示の入力方法は、数字入力に限られるものではなく、例えば、選択肢の形式でもよく、或いは音声入力などでもよい。
【0025】
ユーザは、部分画面72,73を通じて入力したオーギュメンテーションの方法及び量に関する一つ以上の指示の中で、良品画像35と画像32との差が、面積及び形状を考慮に入れた上で、最も適度に少なくなるときの何れか一つの指示を決定する。画像処理装置は、このようにして決定された指示に従って良品画像31をオーギュメンテーションすることにより得られる良品画像35を新規の良品画像として登録する。このように、ユーザは、検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35とを見比べながら、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。これにより、製品毎に異なる良品の外観特徴のばらつきを適切に考慮に入れた上で、学習に用いられる良品画像31をオーギュメンテーションにより増やすことができる。
【0026】
[ハードウェア構成]
次に、
図4を参照しながら、本実施形態に関わる画像処理装置10のハードウェア構成の一例について説明する。
画像処理装置10は、そのハードウェア資源として、プロセッサ11と、メインメモリ12と、カメラインタフェース13と、入出力インタフェース14と、ディスプレイインタフェース15と、通信インタフェース16と、記憶装置17とを備えるコンピュータシステムである。
【0027】
記憶装置17は、ディスク媒体(例えば、磁気記録媒体又は光磁気記録媒体)又は半導体メモリ(例えば、揮発性メモリ又は不揮発性メモリ)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。このような記録媒体は、例えば、非一過性の記録媒体と呼ぶこともできる。記憶装置17には、画像処理プログラム20と、良品画像31と、学習器40とが記憶されている。画像処理プログラム20は、本実施形態に関わる画像処理方法をプロセッサ11に実行させるためのコンピュータプログラムである。画像処理プログラム20は、記憶装置17からメインメモリ12に読み込まれ、プロセッサ11により解釈及び実行されることにより、本実施形態に関わる画像処理方法が実行される。学習器40は、複数の良品画像31の特徴の機械学習により生成される。
【0028】
カメラインタフェース13には、カメラ51が接続されている。カメラ51は、例えば、カラー画像を撮影するイメージセンサを備えてもよい。カメラ51は、画像処理装置10に内蔵されているものでもよく、或いは画像処理装置10に外付けされるものでもよい。検査対象となる製品が良品である場合、カメラ51により撮影された画像は、良品画像31として記憶装置17に記憶される。
【0029】
なお、検査対象は、例えば、生産ライン上をベルトコンベヤで搬送される仕掛け品又は部品などのワークでもよい。画像処理装置10は、生産ライン上に設置されていてもよく、或いは生産ラインとは異なる場所に設置されていてもよい。画像処理装置10が生産ラインとは異なる場所に設置されている場合には、画像処理装置10は、生産ラインに設置されているカメラによる検査対象の撮影により得られた画像を、通信インタフェース16を通じて有線又は無線のネットワークから受信してもよい。
【0030】
入出力インタフェース14には、入力デバイス52と出力デバイス53とが接続されている。入力デバイス52は、良品画像31の選択に関する指示及び選択された良品画像31のオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示をユーザが画像処理装置10に入力するためのデバイスである。入力デバイス52は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッドなどである。出力デバイス53は、各種処理結果(例えば、検査対象となる製品の良否判定結果)などを出力するデバイスである。出力デバイス53は、例えば、プリンタである。
【0031】
ディスプレイインタフェース15には、表示装置54が接続されている。表示装置54は、オーギュメンテーションにより良品画像31を増やすための処理に用いられる各種の情報を表示する。このような情報として、例えば、ユーザからの指示を受け付けるためのユーザインタフェースとして機能する部分画面71,72,73や、各種の画面(例えば、
図8乃至
図31に示す画面)が挙げられる。
【0032】
[学習処理]
図5は本発明の実施形態に関わる画像処理方法における機械学習の一例を示す説明図である。学習器40は、不良品の画像を用いずに、複数の良品画像31から良品の特徴を学習する。
【0033】
[良否判定処理]
図6は本発明の実施形態に関わる画像処理方法における良品判定の処理の流れの一例を示す説明図である。学習器40は、例えば、部分空間法により、検査対象となる製品の画像32から良品の特徴を抽出し、抽出した特徴から復元画像33を生成する。画像処理装置10は、画像32と復元画像33との差分である差分画像34を生成し、差分画像34を二値化及びラベリング処理して得られる結果値(例えば、面積値)と閾値との比較により、良否判定を行う。
【0034】
[画像処理方法]
図7は本発明の実施形態に関わる画像処理方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。この画像処理方法は、学習に用いられる良品画像31をオーギュメンテーションにより増やす方法に関わる。
【0035】
ステップ701において、画像処理装置10は、複数の良品画像31の中から何れかの良品画像31を選択することを要求するユーザからの指示を、部分画面71を通じて受け付けるとともに、選択された良品画像31のオーギュメンテーションの方法及び量に関するユーザからの指示を、部分画面72,73を通じて受け付ける。
【0036】
ステップ702において、画像処理装置10は、ステップ701で選択された良品画像31を、ステップ701で指定されたオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションする。
【0037】
ステップ703において、画像処理装置10は、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35との差又は相違を認識できる画面(例えば、
図8乃至
図31に示す画面)を表示装置54に表示する。ユーザは、このような画面を参照することにより、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35との差が許容範囲内にあるか否かを判断することができる。検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35との差が許容範囲内にない場合、後述するステップ704の判定結果は、否定判定となり、
図7の処理はステップ701に戻る。ステップ701において、ユーザは、複数の良品画像31の中から選択した良品画像31と、検査対象となる製品の画像32との差が少なくなるように、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示を画像処理装置10に再入力することができる。
【0038】
ステップ704において、画像処理装置10は、ステップ701で入力されたオーギュメンテーションの方法及び量に関する一つ以上の指示の中で、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702オーギュメンテーションされた良品画像35との差が、面積及び形状を考慮に入れた上で、最も適度に少なくなるときの何れか一つの指示がユーザにより決定されたか否かを判定する。ユーザは、例えば、入力デバイス52を操作して、この決定を画像処理装置10に指示することができる。
【0039】
ステップ705において、画像処理装置10は、ステップ704で決定された指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35を新規の良品画像として登録する。
【0040】
次に、
図8乃
図31に記載の画面例について説明する。
図8に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35とを対比表示する。この例では、検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35とを見比べるときの参考となる情報として、例えば、画像32の中のある点Pの画素値を部分画面(例えば、ウィンドウ)91に表示し、良品画像35の中のある点Qの画素値を部分画面(例えば、ウィンドウ)92に表示してもよい。ここで、画像32の特定の位置(例えば、中心位置)に対する点Pの相対的な位置関係と、良品画像35の特定の位置(例えば、中心位置)に対する点Qの相対的な位置関係は同じである。ユーザは、部分画面91,92のそれぞれに表示される画素値を基に、良品画像35と画像32との差を的確に認識することができる。
【0041】
図9に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35とに加えて、差分画像36を更に対比表示する。差分画像36は、画像32と良品画像35との差分を示す。差分画像36は、例えば、画像32と良品画像35との対応する画素同士の画素値の差分を二値化処理したものでもよい。ユーザは、検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像と35の差を考慮に入れて、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【0042】
図10乃至
図12に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35とに加えて、合成画像37A,37B,37Cの何れか一つの合成画像を更に対比表示する。合成画像37Aは、例えば、画像32と良品画像35とのそれぞれの画素値が異なる色成分の濃淡に変換された上で合成された画像である。例えば、画像32の各画素値を第1の色成分(例えば、赤色)の濃淡に変換し、良品画像35の各画素値を第1の色成分とは異なる第2の色成分(例えば、青色)の濃淡に変換した上で、両者を合成することにより、合成画像37Aを生成してもよい。合成画像37Bは、例えば、画像32と良品画像35とのそれぞれから抽出されたエッジを合成して得られる画像である。合成画像37Cは、例えば、画像32と良品画像35とのそれぞれの色濃度を合成して得られる画像である。
【0043】
ユーザは、合成画像37A,37B,37Cから、検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35との差又は相違を視覚的に認識することができる。これにより、ユーザは、検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35との差を考慮に入れて、オーギュメンテーションの適切な方法及び量を決定することができる。
【0044】
なお、画像処理装置10は、合成画像37A,37B,37Cを、例えば、一定時間間隔で表示装置54に切り替え表示してもよい。例えば、画像処理装置10は、合成画像37Aを一定時間表示した後に、合成画像37Aから合成画像37Bに表示切替を行い、合成画像37Bを一定時間表示した後に、合成画像37Bから合成画像37Cに表示切替を行ってもよい。また、このような表示切替は、ユーザからの指示に応じて画像処理装置10が行ってもよい。ユーザは、どのタイミングでどの合成画像を表示するべきかを入力デバイス52を用いて画像処理装置10に指示することができる。画像処理装置10は、そのような指示を受け付けるユーザインタフェースを有してもよい。
【0045】
図13に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35とのそれぞれに位置決めの目印となるマーク61,62を表示する。例えば、画像32の特定の位置(例えば、中心位置)に対するマーク61の相対的な位置関係と、良品画像35の特定の位置(例えば、中心位置)に対するマーク62の相対的な位置関係とが同じになるように、マーク61,62が表示される。これにより、ユーザは、マーク61,62を目印として、良品画像35と画像32との差が少なくなるように、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示を入力することができる。
【0046】
図14に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、差分画像36を対比表示する。
【0047】
図15に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と差分画像36とに加えて、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35を更に対比表示する。この例では、検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35とを見比べるときの参考となる情報として、例えば、
図8と同様に、画像32の中のある点Pの画素値を部分画面(例えば、ウィンドウ)91に表示し、良品画像35の中のある点Qの画素値を部分画面(例えば、ウィンドウ)92に表示してもよい。
【0048】
図16乃至
図18に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と差分画像36とに加えて、合成画像37A,37B,37Cの何れか一つの合成画像を更に対比表示する。
【0049】
図19に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と差分画像36とに加えて、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35を更に対比表示する。この例では、
図13と同様に、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35とのそれぞれに位置決めの目印となるマーク61,62を表示してもよい。
【0050】
図20乃至
図22に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、合成画像37A,37B,37Cの何れか一つの合成画像を対比表示する。
【0051】
図23乃至
図25に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、合成画像37A,37B,37Cの何れか一つの合成画像とに加えて、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35を更に対比表示する。これらの例では、検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35とを見比べるときの参考となる情報として、例えば、
図8と同様に、画像32の中のある点Pの画素値を部分画面(例えば、ウィンドウ)91に表示し、良品画像35の中のある点Qの画素値を部分画面(例えば、ウィンドウ)92に表示してもよい。
【0052】
図26乃至
図28に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、合成画像37A,37B,37Cの何れか一つの合成画像とに加えて、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35を更に対比表示する。これらの例では、
図13と同様に、検査対象となる製品の画像32と、ステップ702でオーギュメンテーションされた良品画像35とのそれぞれに位置決めの目印となるマーク61,62を表示してもよい。
【0053】
図29乃至
図31に示す画面例は、検査対象となる製品の画像32と、合成画像37A,37B,37Cの何れか一つの合成画像とに加えて、差分画像36を更に対比表示する。
【0054】
図32は本発明の実施形態に関わる画像処理方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。この画像処理方法は、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35との差が最小となるオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解を自動探索する方法に関わる。
【0055】
ステップ3201において、画像処理装置10は、記憶装置17に記憶されている複数の良品画像31の中から何れか一つの良品画像31を選択する。
【0056】
ステップ3202において、画像処理装置10は、ステップ3201で選択された良品画像31をオーギュメンテーションする方法を一つ選択する。
【0057】
ステップ3203において、画像処理装置10は、ステップ3201で選択された良品画像31を、ステップ3202で選択されたオーギュメンテーションの方法でオーギュメンテーションする量を選択する。この選択は、例えば、オーギュメンテーションの方法毎に予め定められたオーギュメンテーションの量の範囲内の何れかの量を任意に選択すればよい。
【0058】
ステップ3204において、画像処理装置10は、ステップ3201で選択された良品画像31を、ステップ3202,3203で選択されたオーギュメンテーションの方法及び量に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35と、検査対象となる製品の画像32との差分Aを計算する。この差分Aは、例えば、良品画像35と画像32との対応する画素同士の画素値の差分を二値化処理した結果の面積値でもよい。
【0059】
ステップ3205において、画像処理装置10は、ステップ3204の計算により求めた差分Aが仮の最小値Aminよりも小さいか否かを判定する。
【0060】
ステップ33206において、画像処理装置10は、ステップ3204の計算により求めた差分Aを仮の最小値Aminとする。
【0061】
ステップ3207において、画像処理装置10は、ステップ3201で選択された良品画像31をオーギュメンテーションする方法を変更するか否かを判定する。この判定は、例えば、ステップ3201で選択された良品画像31を、ステップ3202で選択されたオーギュメンテーションの方法でオーギュメンテーションする量の選択が全範囲についてされたか否かを判断基準としてもよい。
【0062】
ステップ3208において、画像処理装置10は、ステップ3201で選択されるべき良品画像31を変更するか否かを判定する。この判定は、例えば、ステップ3201で選択された良品画像31を、全てのオーギュメンテーションの方法及び量についてオーギュメンテーションしたか否かを判断基準としてもよい。
【0063】
上述のステップ3201~3208により求められる最小値Aminは、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35との差が最小となるオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解となる。
【0064】
表示装置54は、上述のステップ3201~3208により探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35と検査対象となる製品の画像32との差分画像36を表示する。例えば、
図9、
図14乃至
図19、及び
図29乃至
図31に示す差分画像36は、上述のステップ3201~3208により探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35と検査対象となる製品の画像32との差分画像でもよい。これにより、探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解が正しいか否かをユーザが判断することができる。例えば、探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35に写っている製品の形状と、検査対象となる製品の画像32に写っている製品の形状との差が欠陥として誤認認識されるようなものである場合には、ユーザは、オーギュメンテーションの方法及び量の仮の解が正しくないものと判断してもよい。
【0065】
画像処理装置10は、上述の画像処理方法(
図7のステップ701~705、
図32のステップ3201~3208)を実行する手段として機能し、斯かる手段は、必ずしも、画像処理装置10のハードウェア資源と画像処理プログラム20との協働によって実現される必要はなく、例えば、画像処理装置10の専用のハードウェア資源(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など)を用いて実現されてもよい。
【0066】
図33は、オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示をユーザから受け付けるための設定画面100の一例を示す。設定画面100は、検査画像表示部101、登録画像表示部102、オーギュメンテーション表示部103、差分画像表示部104、登録画像一覧表示部105、及びオーギュメンテーションパラメータ指定部106を備える。この設定画面100は、例えば、表示装置54に表示される。
【0067】
登録画像一覧表示部105には、予め登録されている複数の良品画像31の一覧が表示される。この一覧の中から何れか一つの良品画像31がユーザにより選択されると、選択された良品画像31は、登録画像表示部102に表示される。ユーザは、オーギュメンテーションパラメータをオーギュメンテーションパラメータ指定部106から指定することができる。オーギュメンテーションパラメータは、良品画像31をオーギュメンテーションする量を定めるパラメータである。
図33に示す例では、オーギュメンテーションパラメータとして、水平移動量及び回転移動量が例示されているが、この例に限られるものではない。オーギュメンテーション表示部103には、指定されたオーギュメンテーションパラメータに従ってオーギュメンテーションされた良品画像35が表示される。一方、検査画像表示部101には、検査対象となる製品の画像32が表示される。差分画像表示部104には、画像32と良品画像35との差分を示す差分画像36が表示される。
【0068】
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限定されない。
(付記1)
複数の良品画像31を記憶する記憶装置17と、
複数の良品画像31の中から何れかの良品画像31を選択することを要求するユーザからの指示と、選択された良品画像31のオーギュメンテーションの方法及び量に関するユーザからの指示とを受け付ける手段701と、
選択された良品画像31をオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションする手段702と、
検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35とを表示する表示装置54と、
オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうちユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35を新規の良品画像31として記憶装置17に登録する手段705と、
を備える画像処理装置10。
(付記2)
付記1に記載の画像処理装置10であって、
表示装置54は、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35との差分画像36を更に表示する、画像処理装置10。
(付記3)
付記1に記載の画像処理装置10であって、
表示装置54は、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35との合成画像37A,37B,37Cを更に表示する、画像処理装置10。
(付記4)
付記3に記載の画像処理装置10であって、
合成画像37Aは、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35とのそれぞれの画素値が異なる色成分の濃淡に変換にされた上で合成された画像である、画像処理装置10。
(付記5)
付記3に記載の画像処理装置10であって、
合成画像37Bは、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35とのそれぞれから抽出されたエッジを合成して得られる画像である、画像処理装置10。
(付記6)
付記3に記載の画像処理装置10であって、
合成画像37Cは、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35とのそれぞれの色濃度を合成して得られる画像である、画像処理装置10。
(付記7)
付記1に記載の画像処理装置10であって、
表示装置54は、検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35とのそれぞれに位置決めの目印となるマーク61,62を表示する、画像処理装置10。
(付記8)
付記2に記載の画像処理装置10であって、
検査対象となる製品の画像32とオーギュメンテーションされた良品画像35との差が最小となるオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解を探索するための手段3201~3208を更に備え、
表示装置54は、探索されたオーギュメンテーションの方法及び量の仮の解に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35と検査対象となる製品の画像32との差分画像36を表示する、画像処理装置。
(付記9)
画像処理装置10が、
複数の良品画像31の中から何れかの良品画像31を選択することを要求するユーザからの指示と、選択された良品画像31のオーギュメンテーションの方法及び量に関するユーザからの指示とを受け付けるステップ701と、
選択された良品画像31をオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップ702と、
検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35とを表示するステップ703と、
オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうちユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35を新規の良品画像31として登録するステップ705と、
を実行する画像処理方法。
(付記10)
画像処理装置に、
複数の良品画像31の中から何れかの良品画像31を選択することを要求するユーザからの指示と、選択された良品画像31のオーギュメンテーションの方法及び量に関するユーザからの指示とを受け付けるステップ701と、
選択された良品画像31をオーギュメンテーションの方法及び量に関する指示に従ってオーギュメンテーションするステップ702と、
検査対象となる製品の画像32と、オーギュメンテーションされた良品画像35とを表示するステップ703と、
オーギュメンテーションの方法及び量に関する指示のうちユーザにより決定された何れかの指示に従ってオーギュメンテーションされた良品画像35を新規の良品画像31として登録するステップ705と、
を実行させる画像処理プログラム20。
【符号の説明】
【0069】
10…画像処理装置 11…プロセッサ 12…メインメモリ 13…カメラインタフェース 14…入出力インタフェース 15…ディスプレイインタフェース 16…通信インタフェース 17…記憶装置 20…画像処理プログラム 31…良品画像 32…画像 33…復元画像 34…差分画像 35…良品画像 36…差分画像 37A,37B,37C…合成画像 54…表示装置 61,62…マーク 71,72,73…部分画面 80…選択肢