IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図1
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図2
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図3
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図4
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図5
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図6
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図7
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図8
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図9
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図10
  • 特許-トイレ空間の長期滞在防止システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】トイレ空間の長期滞在防止システム
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/00 20060101AFI20240304BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
A47K17/00
E03D9/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020047870
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021145839
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 大平
(72)【発明者】
【氏名】高尾 綾
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 俊洲
(72)【発明者】
【氏名】森下 翔午
(72)【発明者】
【氏名】奥野 祐一
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6652175(JP,B1)
【文献】特開2013-026842(JP,A)
【文献】特開2004-324346(JP,A)
【文献】特開2010-182680(JP,A)
【文献】特開2008-075405(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0092022(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00 - 17/02
E03D 9/00 ー 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ空間の長期滞在防止システムであって、
前記トイレ空間には、大便器が設置されたトイレブースが複数配置され、
前記トイレブース内に設置され、当該トイレブース内の照度または色温度を変更可能な照明装置と、
前記照明装置を制御する制御装置と、
前記トイレブース内における使用者の滞在時間を検知可能な滞在時間検知手段と、を備え、
前記滞在時間検知手段は、前記トイレブースへの使用者による入室を検知する入室検知センサと、前記大便器が備える便座装置への使用者による着座を検知する着座検知センサと、を備え、
前記制御装置は、前記滞在時間検知手段により第1設定時間の滞在が検知された場合、前記トイレブース内の照度または色温度が上昇するように前記照明装置を制御し、
さらに、前記制御装置は、前記入室検知センサによって入室が検知されてから、前記着座検知センサによって着座が検知されることなく前記第1設定時間よりも短い第2設定時間の滞在が検知された場合、前記トイレブース内の照度または色温度が上昇するように照明装置を制御することを特徴とする長期滞在防止システム。
【請求項2】
トイレ空間の長期滞在防止システムであって、
前記トイレ空間には、大便器が設置されたトイレブースが複数配置され、
前記トイレブース内に設置され、当該トイレブース内の照度または色温度を変更可能な照明装置と、
前記照明装置を制御する制御装置と、
前記トイレブース内における使用者の滞在時間を検知可能な滞在時間検知手段と、を備え、
前記滞在時間検知手段は、前記トイレブースへの使用者による入室を検知する入室検知センサを備え、
前記制御装置は、
前記入室検知センサにより入室が検知されてから、前記滞在時間検知手段により第1設定時間の滞在が検知されるまでの期間は、前記トイレブース内に設置された前記照明装置の色温度を電球色又は温白色に設定する一方で、
前記滞在時間検知手段により第1設定時間の滞在が検知された場合、
前記トイレブース内の照度または色温度を上昇させ、前記トイレブース内に設置された前記照明装置の色温度を白色、昼白色または昼光色に設定することで早期退室を促すように制御を行い、
さらに、前記使用者の前記トイレブースからの退室が検知された場合、前記トイレブース内に設置された前記照明装置の色温度を電球色又は温白色に戻すように制御することを特徴とするトイレ空間の長期滞在防止システム。


【請求項3】
前記滞在時間検知手段は、前記大便器が備える便座装置への使用者による着座を検知する着座検知センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記入室検知センサによって入室が検知されてから、前記着座検知センサによって着座が検知されることなく前記第1設定時間よりも短い第2設定時間の滞在が検知された場合、前記トイレブース内の照度または色温度が上昇するように照明装置を制御する請求項2に記載のトイレ空間の長期滞在防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、トイレ空間の長期滞在防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレブースを使用する使用者による長期滞在を防止する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された装置は、使用者がトイレブース内に入室したことが検知されてからの時間に基づき、トイレブース内に向けて注意喚起音を出力することで、トイレブースを使用する使用者による長期滞在を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6647536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された装置のように、トイレブースを使用している時間が長い使用者に対して音を用いて注意喚起を行うと、複数のトイレブースが配置されるトイレ空間において、他のトイレブースを使用している使用者にも注意喚起音が伝わってしまうため、使い勝手が悪いという問題がある。
【0005】
開示の実施形態は、上述した問題を改善するためになされたものであり、トイレブースを使用している時間が長い使用者のみに対して注意喚起を行うことで、使用者による使い勝手を損ねることのないトイレ空間の長期滞在防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムは、トイレ空間の長期滞在防止システムであって、トイレ空間には、大便器が設置されたトイレブースが複数配置され、トイレブース内に設置され、そのトイレブース内の照度または色温度を変更可能な照明装置と、照明装置を制御する制御装置と、トイレブース内における使用者の滞在時間を検知可能な滞在時間検知手段と、を備え、制御装置は、滞在時間検知手段により第1設定時間の滞在が検知された場合、トイレブース内の照度または色温度が上昇するように照明装置を制御することを特徴とする。
【0007】
本件発明を開発するにあたって、本件発明者らは、長期滞在が検知されたトイレブース内の使用者のみに早期退出を促すための構成として、光による視覚刺激を利用することに着目した。そして、複数の被験者に異なる照明条件に設定されたトイレブースを利用してもらい、各照明条件におけるトイレブースでの滞在時間について効果測定を行った。その結果、明るいトイレブース(照度または色温度が高い照明条件に設定されたトイレブース)を利用した使用者の方が、暗いトイレブース(照度または色温度が低い照明条件に設定されたトイレブース)を利用した使用者よりも、トイレブース内における滞在時間が短くなる傾向にあることを見出した。
【0008】
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムによれば、トイレブース内の照度または色温度を変更可能な照明装置と、トイレブース内における使用者の滞在時間を検知可能な滞在時間検知手段と、を備え、滞在時間検知手段により、トイレブース内における第1設定時間を超える使用者による滞在が検知された場合、制御装置が照明装置を制御することで、トイレブース内の照度または色温度を上昇させる。すなわち、使用者がトイレブース内に長期滞在したことが検知された場合、明るいトイレブースになるように制御する。これにより、使用者がトイレブース内に長期滞在することを防止することが可能になると共に、長期滞在していない使用者に対しては光による視覚刺激を与えることがないため、使用者による使い勝手を損ねることのないトイレ空間の長期滞在防止システムを提供することが可能となる。
【0009】
ここで本発明においてトイレブースとは、主としてブース内への出入りのための扉材と壁面部材とによって個室空間を形成するものである。なお、消防や防犯上の観点等から、扉材や壁面部材と天井面あるいは床面との間に間隙を設ける場合があるが、当該個室空間が光を内外から完全に遮蔽するものである必要はない。
【0010】
また本発明において照明装置は、ひとつのトイレブースに対応して少なくとも一つ以上設置されるものであり、当該トイレブース内の照度や色温度を変更することができるものである。当該照明装置は天井面や壁面、扉、床、あるいはトイレブース内に設置された化粧台等、いずれの場所にも設置することができる。特に、トイレブース内の使用者に視覚的効果の高い、天井面や壁面上方に設置すると良い。また、照明装置として光照射の指向性の高いLED等の光源を用いる場合には、上述した扉材や壁面部材と天井面あるいは床面との間の間隙の部分に設けたとしても、隣り合うトイレブースへの影響を抑えることができる。
【0011】
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムにおいて、好ましくは、トイレブース内に設置された照明装置は、滞在時間検知手段により第1設定時間の滞在が検知される前において、電球色または温白色に設定されると共に、滞在時間検知手段により第1設定時間の滞在が検知された後において、制御装置によって、白色、昼白色または昼光色へと変更するように制御される。
【0012】
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムによれば、トイレブース内に設置された照明装置は、滞在時間検知手段により検知された滞在時間に応じて、電球色または温白色に設定された色温度から、白色、昼白色または昼光色に設定された色温度へと変更するように制御される。これにより、使用者がトイレブース内に長期滞在するおそれを更に防止することが可能となる。
【0013】
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムにおいて、好ましくは、滞在時間検知手段は、トイレブースへの使用者による入室を検知する入室検知センサと、大便器が備える便座装置への使用者による着座を検知する着座検知センサと、を備え、制御装置は、入室検知センサによって入室が検知されてから、着座検知センサによって着座が検知されることなく第1設定時間よりも短い第2設定時間の滞在が検知された場合、トイレブース内の照度または色温度が上昇するように照明装置を制御する。
【0014】
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムによれば、入室検知センサによって使用者による入室が検知されてから、着座検知センサによって使用者による着座が検知されることなく第1設定時間よりも短い第2設定時間の滞在が検知された場合、制御装置が照明装置を制御することで、トイレブース内の照度または色温度を上昇させる。すなわち、大便器に備えられた便座装置に着座することなく、使用者がトイレブース内に長期滞在していることが検知された場合、通常よりも早いタイミングで明るいトイレブースになるように制御する。これにより、大便器の利用以外の目的でトイレブースを利用する使用者が、トイレブース内に長期滞在するおそれを防止することが可能となる。
【0015】
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムは、トイレ空間の長期滞在防止システムであって、トイレ空間には、大便器および洗面化粧台が設置されたトイレブースが複数配置され、トイレブース内に設置され、そのトイレブース内の照度または色温度を変更可能な照明装置と、照明装置を制御する制御装置と、大便器が備える便座装置への使用者による着座および離座を検知する着座検知センサと、を備え、制御装置は、着座検知センサによって使用者による離座が検知された場合、トイレブース内の照度または色温度が上昇するように照明装置を制御することを特徴とする。
【0016】
本件発明者らは、上述した効果測定において、トイレブース内に大便器だけでなく洗面化粧台が設置されている場合、使用者がトイレブース内に長期滞在する割合が高まることを見出した。
実施形態の一態様に係るトイレ空間の長期滞在防止システムによれば、大便器および洗面化粧台が設置されたトイレブース内において、着座検知センサによって使用者による離座が検知された場合に、トイレブース内の照度または色温度が上昇するように照明装置を制御する。すなわち、離座に伴う大便器の使用終了が検知された場合、明るいトイレブースになるように制御する。これにより、洗面化粧台の使用時間によって、使用者がトイレブース内に長期滞在することを防止することが可能になると共に、長期滞在していない使用者に対しては光による視覚刺激を与えることがないため、使用者による使い勝手を損ねることのないトイレ空間の長期滞在防止システムを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
実施形態の一態様によれば、使用者による使い勝手を損ねることなく、使用者がトイレブース内に長期滞在するおそれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1の実施形態に係るトイレ空間の構成の一例を示す上面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るトイレブースの構成の一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、照明装置の制御に関するタイムチャートの一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るトイレブースの構成の一例を示す上面図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、使用者によるトイレブース内での滞在時間について、効果測定を行ったときの評価結果である。
図10図10は、使用者によるトイレブース内での滞在時間について、効果測定を行ったときの評価結果である。
図11図11は、使用者によるトイレブース内での滞在時間について、効果測定を行ったときの評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するトイレ空間の長期滞在防止システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、使用者によるトイレブース内での長期滞在を防止するための制御について説明するが、最初に前提となるトイレ空間に設けられる各種構成について説明する。
【0020】
<1.トイレ空間及びトイレブースの構成>
まず、第1の実施形態に係るトイレ空間及びそのトイレ空間に設けられるトイレブースの構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係るトイレ空間の構成の一例を示す上面図である。図2は、第1の実施形態に係るトイレブースの構成の一例を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、トイレ空間1には、トイレブース3が複数配置される。図2に示すように、トイレブース3には、床面Fに洋式大便器(以下「便器」と記載する)5が設置される。なお、以下では、床面Fからトイレブース3の空間内に臨む向きを上と記載する。便器5の上部には、使用者が着座する便座装置7が設けられる。
【0022】
また、図2に示すように、トイレブース3の上方には照明装置9が設置される。照明装置9は、トイレブース3内の照度または色温度を変更可能な照明である。このために、照明装置9は、異なる照度または色温度に調光可能なLEDなどによって構成される。なお、照明装置9は、電球形状に限られず、パネル形状や棒形状であってもよい。また、照明装置9は、トイレブース3内に複数設置される構成であってもよい。そして、照明装置9の設置位置は、トイレブース3の天井に限られず、トイレブース3の上方であれば、トイレブース3の壁面に設置されても構わない。
【0023】
また、図2に示すように、トイレ空間1に複数設置されるトイレブース3は、トイレブース3を構成する壁面Wによって、トイレブース3内に設けられた照明装置9による光が、隣のトイレブース3内の照度および色温度に影響を及ぼさないように区画されている。なお、壁面Wの上方または下方の一部に切欠きが形成される構成であったとしても、隣のトイレブース3に漏れ出る光は僅かであるため、使用者による使い勝手を損ねるおそれは低い。また、隣のトイレブース3に漏れ出る光をより低減するために、照明装置9は、光の広がりが狭い下方向タイプのLEDが用いられることが好ましい。
【0024】
<2.長期滞在防止システムの機能構成>
次に、長期滞在防止システムの機能構成について、図3を参照して説明する。図3は、実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、長期滞在防止システムは、照明装置9と、滞在時間検知手段11と、制御装置13と、を備える。さらに、報知装置15を備えることが好ましい。
【0026】
滞在時間検知手段11は、使用者によるトイレブース3内での滞在時間を検知する。例えば、トイレブース3の入口であるドアに設けられ、そのドアの開閉を検知することで使用者による入室および退室を検知可能な入室検知センサ11aや、便座装置7に設けられ、その便座装置7に対する使用者による着座および離座を検知可能な着座検知センサ11b。トイレブース3の入口付近に設けられる人感検知センサ等によって構成される。なお、滞在時間検知手段11は、トイレブース3の外部に設けられていてもよい。
【0027】
入室検知センサ11aとしては、例えば、トイレブース3のドアにマグネットセンサや変位センサ、振動センサなどの検出手段を用いることができる。
また、着座検知センサ11bとしては、例えば、歪みセンサや圧力センサ、赤外線センサなどの検知手段を用いることができる。
また、人感検知センサとしては、例えば、赤外線ラインセンサやマイクロ波センサなどの検出手段を用いることができる。
【0028】
制御装置13は、滞在時間検知手段11によって検知された、使用者によるトイレブース3内での滞在時間に基づいて、照明装置9の照度または色温度を制御する装置である。このために、制御装置13は、CPUやマイコン等の種々の手段を用いることができる。
【0029】
また、制御装置13は、各トイレブース3に設けられ、特定のトイレブース3内の制御を実行するものであってもよく、また、トイレ空間1の外部に設けられ、複数のトイレブース3内の制御をまとめて実行するものであってもよい。このために、制御装置13は、有線または無線によって、照明装置9及び滞在時間検知手段11に接続され、制御信号の送受信が可能なように構成される。
【0030】
報知装置15は、滞在時間検知手段11によって検知された、使用者によるトイレブース3内での滞在時間に基づいて、使用者による異常な長期滞在が検知された場合において、トイレブース3外の人に異常事態の発生を報知するための装置である。このために、報知装置15には、例えば、LCD(液晶表示装置)やOLED(有機ELディスプレイ)等の表示装置や、警報音を出力する音声出力装置を用いることができる。
【0031】
<3.長期滞在防止システムが実行する制御フロー>
次に、長期滞在防止システムによる制御フローについて、図4及び図5を参照して説明する。図4は、第1の実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5は、第1の実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムが実行する処理の手順の変形例を示すフローチャートである。
【0032】
初めに、図4に示すフローチャートについて説明する。
ステップS41において、滞在時間検知手段11により使用者によるトイレブース3への入室を検知する。これによって、トイレブース3に使用者が入室したことが検知されたとき、次のステップS42に移行する。なお、使用者によるトイレブース3への入室を検知する滞在時間検知手段11は、上述したように、入室検知センサ11aや人感検知センサなどによって構成される。
【0033】
ステップS42において、使用者によるトイレブース3内での滞在時間が予め定められた第1所定時間(例えば10分)を上回るか否かを判定する。ここで、ステップS42による滞在時間の判定は、ステップS44において、滞在時間検知手段11により使用者によるトイレブース3からの退室が検知されるまで継続する。
そして、ステップS42において、使用者によるトイレブース3内での滞在時間が、予め定められた第1所定時間以上となったとき(ステップS42、No)、ステップS43に移行する。
【0034】
ステップS43において、制御装置13は、トイレブース3内の照度または色温度が上昇するように照明装置9を制御する。具体的には、滞在時間検知手段11から受信した使用者による滞在時間が第1所定時間以上になったという制御信号を起点に、照明装置9の照度または色温度に関する照明条件を変更する制御信号を照明装置9に送信する。すなわち、使用者がトイレブース3内に長期滞在したことが検知された場合、明るいトイレブースになるように制御する。これにより、使用者がトイレブース3内に長期滞在することを防止することができる。
【0035】
最後に、ステップS44において、使用者によるトイレブース3からの退室が検知されることで、使用者による一回のトイレブース3の利用に伴う、制御装置13による制御が終了する。なお、ステップS44において、使用者によるトイレブース3からの退室が検知された場合(ステップS44、Yes)、制御装置13が照明装置9に対して、照明条件を使用者による入室前の照明条件に戻すという制御信号を送信すると共に、制御装置13が滞在時間検知手段11に対して、滞在時間のカウントをリセットするという制御信号を送信することで、長期滞在防止システムを初期状態に戻す(ステップS45)。これにより、次にトイレブース3に入室する使用者の使い勝手を損ねないようにすることができる。
【0036】
次に、図5に示すフローチャートについて説明する。
ステップS51において、滞在時間検知手段11により使用者によるトイレブース3への入室を検知する。これによって、トイレブース3に使用者が入室したことが検知されたとき、次のステップS52に移行する。なお、使用者によるトイレブース3への入室を検知する滞在時間検知手段11は、上述したように、入室検知センサ11aや人感検知センサなどによって構成される。
【0037】
ステップS52において、使用者によるトイレブース3内での滞在時間が予め定められた第1所定時間よりも短い第2所定時間(例えば5分)を上回るか否かを判定する。ここで、ステップS52による滞在時間の判定は、ステップS53において、滞在時間検知手段11により大便器5が備える便座装置7への使用者による着座を検知されるまで継続する。なお、使用者による便座装置7への着座を検知する滞在時間検知手段11は、上述したように、着座検知センサ11bなどによって構成される。
そして、ステップS52において、使用者によるトイレブース3内での滞在時間が、予め定められた第2所定時間以上となったとき(ステップS52、No)、ステップS54に移行する。
【0038】
ステップS54において、制御装置13は、トイレブース3内の照度または色温度が上昇するように照明装置9を制御する。具体的には、滞在時間検知手段11から受信した使用者による滞在時間が第2所定時間以上になったという制御信号を起点に、照明装置9の照度または色温度に関する照明条件を変更する制御信号を照明装置9に送信する。すなわち、便座装置7に着座することなく、使用者がトイレブース3内に長期滞在していることが検知された場合、便座装置7に着座した場合の長期滞在の判定よりも早いタイミングで明るいトイレブースになるように制御する。これにより、大便器5の利用以外の目的でトイレブース3を利用する利用者が、トイレブース3内に長期滞在することを防止することができる。
【0039】
ステップS55において、使用者によるトイレブース3内での滞在時間が予め定められた第1所定時間よりも長い第3所定時間(例えば20分)を上回るか否かを判定する。ここで、ステップS55による滞在時間の判定は、ステップS56において、滞在時間検知手段11により使用者によるトイレブース3からの退室が検知されるまで継続する。なお、使用者によるトイレブース3からの退室が検知された場合の処理(ステップS56、Yes)は、図4に対して行った説明と重複するため、省略する。
【0040】
そして、ステップS55において、使用者によるトイレブース3内での滞在時間が、予め定められた第3所定時間以上となったとき(ステップS55、No)、ステップS58に移行する。
【0041】
ステップS58において、制御装置13は、使用者による長期滞在が検知されたトイレブース3において、異常事態が発生しているおそれがある旨をトイレブース3の外部に設けられた報知装置15を用いて報知する。なお、ステップS55による滞在時間の判定が行われるまでに、制御装置13による照明装置9の制御が行われていない場合、図4に示したステップS42及びステップS43が実行される。これにより、制御装置13によって、明るいトイレブースになるように制御されたにも関わらず、使用者による異常な長期滞在が検知された場合において、トイレブース3外の人に異常事態の発生を報知することができる。
【0042】
<4.トイレブース内の照明条件>
次に、長期滞在防止システムによって変更されるトイレブース内の照明条件について、図6を参照して説明する。図6は、照明装置の制御に関するタイムチャートの一例を示す図である。
【0043】
まず、図6の例では、入室検知センサ11aは、時間t1においてONになる。すなわち、滞在時間検知手段11は、時間t1に使用者がトイレブース3に入室したことを検知する。
【0044】
そして、着座検知センサ11bは時間t1よりも後にONになる。すなわち滞在時間検知手段11は、時間t1よりも後にトイレブース3に入室した使用者が便座装置7に着座したことを検知する。図6の例では、着座検知センサ11bは、時間t2においてONになる。
【0045】
そして、照明装置9は時間t3において制御される。照明装置9は、時間t3よりも前において、電球色である2600~3250K(ケルビン)に設定されていた照明条件から、時間t3よりも後において、昼白色である4600~5500K(ケルビン)へと変更される。ここで、時間t3よりも前に設定される照明装置9の照明条件は、温白色である3250~3800K(ケルビン)に設定されても構わない。また、時間t3よりも後において設定される照明装置9の照明条件は、白色である3800~4500K(ケルビン)または昼光色である5700~7100K(ケルビン)に設定されても構わないが、昼白色以上であることが望ましい。
なお、照明条件の区分は、JIS規格(Z9112)に基づいて設定している。また、トイレブース内の照明条件について、本発明の実施形態においては、照度計(コニカミノルタ製、CL-500A)を照明装置9の鉛直下方向に存在する床面に配置し、照度計の受光部を照明装置9に向けた際の測定結果として規定した。但し、トイレブース内の照明条件の規定方法は、上述した方法に限られない。
【0046】
時間t3は、トイレ空間1の管理者によって予め所定時間に設定される。例えば、使用者がトイレブース3に入室したことが検知された時間t1から15分経過した時間として設定される。なお、時間t3は、使用者が便座装置7に着座したことが検知された時間t2から起算された経過時間として設定されても構わない。
【0047】
そして、入室検知センサ11aは、時間t4においてOFFになる。すなわち、滞在時間検知手段11は、時間t4に使用者がトイレブース3から退室したことを検知する。ここで、照明装置9は、時間t1よりも前において設定されていた照明条件へと変更される。
【0048】
そして、入室検知センサ11aは、時間t5においてONになる。すなわち、滞在時間検知手段11は、時間t5に次の使用者がトイレブース3に入室したことを検知する。そして、長期滞在防止システムは、トイレブース3に入室した次の使用者について同様の処理を繰り返す。
【0049】
<5.他の装置構成や他の制御フロー例>
なお、トイレ空間1の構成や、長期滞在防止システムが実行する制御フローは上記に限らず、種々の構成や制御フローであってもよい。例えば、図7に示すように、トイレ空間1に複数配置されるトイレブース3には、便器5だけでなく、洗面化粧台6が設置されてもよい。このような構成を有する場合における、長期滞在防止システムが実行する制御フローについて、図8を参照して説明する。図8は、第2の実施形態に係るトイレ空間の長期滞在防止システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0050】
ステップ81において、着座検知センサ11bにより大便器が備える便座装置7からの使用者による離座を検知する。
【0051】
次に、ステップS82において、制御装置13は、トイレブース3内の照度または色温度が上昇するように照明装置9を制御する。ここで、ステップS82による照明装置9の制御は、ステップS83において、滞在時間検知手段11により使用者によるトイレブース3からの退室が検知されるまで継続する。なお、使用者によるトイレブース3からの退室が検知された場合の処理(ステップS83、Yes)は、図4に対して行った説明と重複するため、省略する。
【0052】
ステップS82では、着座検知センサ11bにより使用者が便座装置7から離座したという制御信号を起点に、照明装置9の照度または色温度に関する照明条件を変更する制御信号を照明装置9に送信する。すなわち、離座に伴う便器5の使用終了が検知された場合、明るいトイレブースになるように制御する。これにより、洗面化粧台6の使用時間によって、使用者がトイレブース3内に長期滞在することを防止することができる。
【0053】
<6.各照明条件におけるトイレブースでの滞在時間に関する効果測定>
以下、本件発明者らが実際に行った、異なる照明条件に設定されたトイレブースを利用したときの、複数の被験者によるトイレブースでの滞在時間に関する効果測定の結果について説明する。図9から図11は、使用者によるトイレブース内での滞在時間について、効果測定を行ったときの評価結果である。
【0054】
まず、この効果測定を行うにあたって、本件発明者らが設定した条件について説明する。
評価環境として、通常時においてトイレブース3内の照明条件を温白色である3310K(ケルビン)にすると共に、使用者による操作に応じて、トイレブース3内の照明条件を電球色である2670K(ケルビン)または昼白色である4800K(ケルビン)に変更可能な照明装置9を設けた。
そして、トイレブース3内における使用者の滞在時間を検知するために、使用者によるトイレブース3への入室および退室を検知可能な入室検知センサ11aとしてドアセンサを設けた。
【0055】
効果測定の結果、図9から図11に示すように、電球色の照明条件に設定されたトイレブース3内での滞在時間の中央値が295秒、温白色の照明条件に設定されたトイレブースでの滞在時間の中央値が293秒であるのに対し、昼白色の照明条件に設定されたトイレブース3内での滞在時間の中央値が193秒と短縮されていることが確認できた。
つまり、明るいトイレブース3(昼白色に設定されたトイレブース)を利用した使用者の方が、暗いトイレブース3(電球色または温白色に設定されたトイレブース)を利用した使用者よりも、トイレブース3内における滞在時間が短くなる傾向にあることが確認できた。
【0056】
なお、上述してきた各実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、第1所定時間、第2所定時間および第3所定時間は、トイレ空間1の施主や管理者が自由に設定でき、混雑の程度、トイレ空間が設けられる環境に応じて適切な時間間隔に設定することができる。
【0057】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上の様に表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・・トイレ空間
3・・・・トイレブース
5・・・・便器
6・・・・洗面化粧台
7・・・・便座装置
9・・・・照明装置
11・・・滞在時間検知手段
11a・・入室検知センサ
11b・・着座検知センサ
13・・・制御装置
15・・・報知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11