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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】車両用ラジエータ
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240304BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F28F9/02 301H
F28D1/053 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020057335
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156499
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】梅原 基
(72)【発明者】
【氏名】長野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 亜希夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 恵
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0207755(US,A1)
【文献】実開平02-124221(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00-9/26
F28D 1/00-1/06,7/00-7/16
F01P 3/00-3/22,11/02
B60K 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側部タンクを有する上側ラジエータの下に、第2側部タンクを有する下側ラジエータが配置された車両用ラジエータにおいて、
前記第2側部タンクの底部にラジエータマウントを装着するための突出ピン部を備え、
前記第1側部タンク内から前記突出ピン部内に連通するドレン通路を前記第2側部タンク内に備えた排出部を有し、
前記第2側部タンクは樹脂成形によって形成され、前記ドレン通路は前記第2側部タンク内を区画する区画壁によって形成されたことを特徴とする車両用ラジエータ。
【請求項2】
前記突出ピン部には、下方から着脱可能なドレンプラグが装着されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ラジエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ラジエータに関し、特に2つのラジエータが上下に配置された車両用ラジエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両には、エンジン等の高温部を冷却するための冷却液を冷やす高水温ラジエータと、高温部よりも温度が低いインタークーラや電装部品等の低温部を冷却する冷却液を冷やす低水温ラジエータが搭載される場合がある。
【0003】
高水温ラジエータと低水温ラジエータは、例えば特許文献1のように一方が他方の上に載せられた状態で、前方から取り入れられる走行風と冷却液との熱交換を促進させるためにエンジンの前方に配設される。また、走行風とエアコンの冷媒の熱交換用のコンデンサが、高水温ラジエータと低水温ラジエータの前方に配設される。
【0004】
その上、コンデンサの前方には、走行時の空気抵抗を小さくするためにグリルシャッタが配設される場合もある。また、高水温ラジエータと低水温ラジエータの後側には、ラジエータファン及びラジエータファンを支持するファンシュラウドが配設される。
【0005】
高水温ラジエータと低水温ラジエータには、温度が上がった冷却液を導入する導入配管と、走行風によって温度が下がった冷却液を各部に送り出す導出配管が夫々接続される。それ故、エンジン前方の限られたスペースに、高水温ラジエータと低水温ラジエータとコンデンサ等の部品とこれらに接続される配管や配線等を干渉しないように配設することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-203625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高水温ラジエータと低水温ラジエータには、例えば冷却液の交換のために冷却液を排出する排出部が夫々設けられる。重力を利用して冷却液を排出するために、冷却液の排出部は高水温ラジエータの下部と低水温ラジエータの下部に夫々設けられる。しかし、特許文献1のように一方が他方の上に載せられた状態では、冷却液排出のために下側のラジエータの排出部を車両下側から操作することは可能であるが、上側のラジエータの排出部は下側のラジエータの上にあるので容易に操作することができない。
【0008】
それ故、上側のラジエータの排出部を、車両下側から容易に操作可能な位置まで通路状に延長するドレン通路を設けることが考えられる。しかし、エンジン前方の限られたスペースに他部品等との干渉を避けてドレン通路を設けることは困難である。
【0009】
本発明の目的は、容易に排出部の操作ができ、且つ他部品と干渉しないドレン通路を有する車両用ラジエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の車両用ラジエータは、第1側部タンクを有する上側ラジエータの下に、第2側部タンクを有する下側ラジエータが配置された車両用ラジエータにおいて、前記第2側部タンクの底部にラジエータマウントを装着するための突出ピン部を備え、前記第1側部タンク内から前記突出ピン部内に連通するドレン通路を前記第2側部タンク内に備えた排出部を有し、前記第2側部タンクは樹脂成形によって形成され、前記ドレン通路は前記第2側部タンク内を区画する区画壁によって形成されたことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、車両下側から排出部を容易に操作することができるので、上側ラジエータの冷却液を排出するメンテナンス作業の負担が軽減される。また、車両用ラジエータのドレン通路を車両用ラジエータの外側に突出させないので、車両用ラジエータが大きくならず、車両に搭載することが容易である。
【0012】
また、前記ドレン通路は前記第2側部タンク内を区画する区画壁によって形成されたので、下側ラジエータの第2側部タンクを樹脂成形する際に、ドレン通路を区画壁によって容易に形成することができる。
【0013】
【0014】
請求項の発明の車両用ラジエータは、請求項1の発明において、前記突出ピン部には、下方から着脱可能なドレンプラグが装着されたことを特徴としている。
上記構成によれば、突出ピン部に装着されたドレンプラグを車両下方から容易に操作することができるので、上側ラジエータ15の冷却液を排出するメンテナンス作業の負担が軽減される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用ラジエータによれば、容易に排出部の操作ができ、且つ他部品と干渉しないドレン通路を有するので、メンテナンス性が向上すると共に車両に搭載することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ラジエータの正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用ラジエータの下面図である。
図3図2のIII-III線要部断面図である。
図4図3のドレン通路の要部分解斜視図である。
図5図1のV-V線要部断面図である。
図6】管部材で形成されたドレン通路の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
図1図3に示すように、ラジエータ1(車両用ラジエータ)は、エンジンの前方のクロスメンバ2に前方に突出するように固定された1対のブラケット3に支持されている。そして、車幅方向に延びるシュラウドアッパーメンバ4に固定具5によって固定されている。クロスメンバ2は、左右1対のサスペンションフレーム6の先端部を連結している。尚、図中の矢印F、矢印L、矢印Uは、夫々車両の前方、左方、上方を示す。
【0019】
ラジエータ1の上面部と下面部には上部カバー7と下部カバー8が装着される。ラジエータ1の後側にはラジエータファンを支持するファンシュラウド9が装着される(図6参照)。また、ラジエータ1の後側には、ラジエータ1に冷却液を注ぐための注入口が設けられ、この注入口にラジエータキャップ20が装着されている。
【0020】
ラジエータ1の左右両端部の底部には、下方に突出させた円筒状の1対の突出ピン部11a,11bが設けられている。1対の突出ピン部11a,11bには、例えば合成ゴム材で円筒状に形成されたマウント部材12(ラジエータマウント)が夫々外嵌されている。マウント部材12は、テーパ部を有する外径が大きい大径部12aと、大径部12aよりも外径が小さい小径部12bを有し、小径部12bが突出ピン部11a,11bの先端部を覆っている。
【0021】
1対のブラケット3の下面部には、小径部12bに覆われた突出ピン部11a,11bの先端部を挿通可能な大きさ、且つ大径部12を挿通不能な大きさの挿通孔が設けられている。これら挿通孔に小径部12bに覆われた突出ピン部11a,11bの先端部を夫々挿通させた状態で、ラジエータ1をシュラウドアッパーメンバ4に固定することによって、ラジエータ1の前後方向、左右方向、上下方向の移動が規制される。マウント部材12は、ラジエータ1に伝わる走行時の衝撃や振動を吸収する。
【0022】
次にラジエータ1の構造について説明する。
ラジエータ1は、エンジン等の高温部を冷却する冷却液を冷やす高水温ラジエータと、高温部よりも低温のインタークーラや電装部品等の低温部を冷却する冷却液を冷やす低水温ラジエータを有する。上側ラジエータ15として高水温ラジエータの下に、下側ラジエータ16として低水温ラジエータが配置されているが、これと反対の配置であってもよい。
【0023】
上側ラジエータ15は、冷却液と走行風との間で熱交換させるコア部15aと、コア部15aの左右両側に設けられた側部タンク15b,15cを有する。同様に、下側ラジエータ16は、コア部16aと、コア部16aの左右両側に側部タンク16b,16cを有する。コア部15a,16aは、図示を省略するが、左右に延びる複数の冷却液通路と、複数の冷却液通路に接触させた複数のフィンを有するクロスフロー式の熱交換器である。
【0024】
上側ラジエータ15の側部タンク15b,15c、下側ラジエータ16の側部タンク16b,16cには夫々配管接続口が形成されている。例えば、下側ラジエータ16の側部タンク16b,16cは、前面部と後面部に夫々配管接続口16dを備え、上側ラジエータ15の側部タンク15b,15cは、後面部に夫々配管接続口15dを備えている。また、側部タンク15b,15c, 16b,16cには、他の部品を固定するための複数の部品取付部17が形成されている。
【0025】
側部タンク15b,15cの一方のタンクの配管接続口15dには冷却液の導入配管が接続され、他方のタンクの配管接続口15dには冷却液の導出配管が接続される。そして、導入配管から導入された冷却液がコア部15aの複数の冷却液通路に分配され、複数の冷却液通路を通過し冷やされた冷却液が合流して導出配管に供給される。下側ラジエータ16の側部タンク16b,16cにおいても同様である。
【0026】
図3に示すように、下側ラジエータ16の冷却液の排出部25aは、左側の側部タンク16b内と突出ピン部11a内を連通させて形成されている。この突出ピン部11aには、下方から操作して着脱することが可能なドレンプラグ24が装着されている。
【0027】
図3図5に示すように、上側ラジエータ15の冷却液の排出部25bは、ドレン通路21によって、右側の側部タンク15c(第1側部タンク)の底部から下側ラジエータ16の右側の側部タンク16c(第2側部タンク)の内部を通って、右側の突出ピン部11b内に連通させて形成されている。この右側の突出ピン部11bにも、下方から操作して着脱することが可能なドレンプラグ24が装着されている。
【0028】
側部タンク15cと側部タンク16cは、突出ピン部11bと共に例えば樹脂成形によって一体的に形成されており、内部を区画する区画壁15f,16fによって側部タンク15cと側部タンク16cに分けられている。左側の側部タンク15b,16bも同様に、突出ピン部11aと共に例えば樹脂成形によって一体的に形成されており、内部を区画する区画壁15e,16eによって側部タンク15bと側部タンク16bに分けられている。
【0029】
ドレン通路21は、側部タンク16c内を区画する例えば水平断面が略コ字状の区画壁16gによって形成されている。例えば、側部タンク16cの側壁部の一部を側部タンク16c内に進出させて形成された区画壁16gに囲まれた凹入部を、側部タンク15c内と突出ピン部11b内に連通させ、凹入部を閉塞する側壁部材16hを溶着することによってドレン通路21が形成される。
【0030】
また、ドレン通路21の代わりに、図6に示すように側部タンク15cの底部から側部タンク16c内に延びて突出ピン部11b内に連通する管部材22aによって、ドレン通路22を形成することもできる。管部材22aは、例えば突出ピン部11bと一体成形され、側部タンク15c内に連通するように側部タンク16c内に挿入して固定される。
【0031】
上記実施形態のラジエータ1の作用、効果について説明する。
ラジエータ1(車両用ラジエータ)は、側部タンク15c(第1側部タンク)を有する上側ラジエータ15の下に、側部タンク16c(第2側部タンク)を有する下側ラジエータ16が配置されて形成されている。側部タンク16cの底部には、マウント部材12(ラジエータマウント)を装着するための円筒状の突出ピン部11bを備えている。冷却液の排出部25bは、側部タンク16c内に、側部タンク15c内から突出ピン部11b内に連通するドレン通路21を有する。突出ピン部11bには下方から操作して着脱することが可能なドレンプラグ24が装着されている。
【0032】
突出ピン部11bの先端部は、ラジエータ1を支持するブラケット3の挿通孔に挿通され、車両下側からドレン通路21が連通する突出ピン部11bに装着されたドレンプラグ24を容易に操作することができる。従って、上側ラジエータ15の冷却液を排出するメンテナンス作業の負担が軽減される。
【0033】
また、ラジエータ1のドレン通路21をラジエータ1の外側に突出させないので、ドレン通路21が他部品と干渉せず、ラジエータ1が大きくならないので、車両に搭載することが容易である。
【0034】
側部タンク16cは樹脂成形によって形成され、ドレン通路21は側部タンク16c内を区画する区画壁16fによって形成されている。従って、下側ラジエータ16の側部タンク16cを樹脂成形する際に、ドレン通路21を区画壁16fによって容易に形成することができる。
【0035】
また、ドレン通路21の代わりに、側部タンク15の底部から延びて突出ピン部11b内に連通する管部材22aによって、ドレン通路22を形成することができる。ラジエータ1に他部品を取り付けるために側部タンク16cに設けられる部品取付部17との干渉を回避して、ドレン通路22を形成することができる。
【0036】
管部材22aが突出ピン部11bと別体で成形され、管部材22aを突出ピン部11b内から側部タンク15c内に連通するように装着することによって、ドレン通路22を形成してもよい。また、ドレン通路が左側の側部タンク16b内に設けられ、下側ラジエータ16の冷却液の排出部が右側の側部タンク16cに設けられてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0037】
1 :ラジエータ
2 :クロスメンバ
3 :ブラケット
11a,11b :突出ピン部
12 :マウント部材(ラジエータマウント)
15 :上側ラジエータ
15a :コア部
15b,15c :側部タンク
15d :配管接続口
15e,15f :区画壁
16 :下側ラジエータ
16a :コア部
16b,16c :側部タンク
16d :配管接続口
16e,16f,16g :区画壁
16h :側壁部材
21,22 :ドレン通路
22a :管部材
24 :ドレンプラグ
25a,25b :排出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6