(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】防蟻構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/72 20060101AFI20240304BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
E04B1/72
E04B1/64 A
(21)【出願番号】P 2019226199
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390039295
【氏名又は名称】株式会社コシイプレザービング
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 吉寛
(72)【発明者】
【氏名】久保 友治
(72)【発明者】
【氏名】奥埜 佑馬
(72)【発明者】
【氏名】畑 義行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-211414(JP,A)
【文献】特開2011-226248(JP,A)
【文献】登録実用新案第3056667(JP,U)
【文献】特開2006-316538(JP,A)
【文献】実開昭57-140611(JP,U)
【文献】特開2019-044554(JP,A)
【文献】特開2018-155075(JP,A)
【文献】特開2010-241717(JP,A)
【文献】特公昭48-013415(JP,B1)
【文献】特開2007-247313(JP,A)
【文献】米国特許第05417017(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎コンクリート構造と、前記コンクリート構造に埋設される配管との間に繊維集合体が複数配置されており、
繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目が複数存在し、
複数の前記第1継ぎ目が不連続になるように配置されて
おり、
3つ以上の前記繊維集合体が連続して配置されていることを特徴とする防蟻構造。
【請求項2】
前記基礎コンクリート構造の外側に断熱材が配置されており、
前記断熱材と、前記断熱材に埋設される前記配管との間に繊維集合体が複数配置されており、
繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目が複数存在し、
複数の前記第1継ぎ目が不連続になるように配置されている請求項1に記載の防蟻構造。
【請求項3】
前記繊維集合体が配管の周方向と平行に配置されている請求項1または2に記載の防蟻構造。
【請求項4】
建築物の基礎コンクリート構造の外側に配置される断熱材と断熱材との間に繊維集合体が複数配置されており、
繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目が複数存在し、
複数の前記第1継ぎ目が不連続になるように配置されて
おり、
前記繊維集合体が建築物の基礎コンクリート構造の側面から垂直方向に2段以上積み重ねられていることを特徴とする防蟻構造。
【請求項5】
繊維集合体の長手方向が建築物の高さ方向と平行である請求項
4に記載の防蟻構造。
【請求項6】
建築物の基礎コンクリート構造と、断熱材との間に繊維集合体が複数配置されており、
繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目、または、繊維集合体の長手方向の端部と繊維集合体の側部が対向している第2継ぎ目を覆うように他の繊維集合体が配置されることを特徴とする防蟻構造。
【請求項7】
前記基礎コンクリート構造と前記繊維集合体と前記断熱材は水平方向に並んでいる請求項6に記載の防蟻構造。
【請求項8】
前記繊維集合体がコーナー部に継ぎ目なく配置されている請求項
6または7に記載の防蟻構造。
【請求項9】
前記繊維集合体が建築物の高さ方向に3段以上積み重ねられている請求項
6~8のいずれか一項に記載の防蟻構造。
【請求項10】
前記断熱材及び前記繊維集合体の下に防湿シートが配置されている請求項
6~
9のいずれか一項に記載の防蟻構造。
【請求項11】
前記繊維集合体が無機繊維集合体である請求項1~1
0のいずれか一項に記載の防蟻構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防蟻構造、特に基礎コンクリート構造を有する建築物における防蟻構造に関する。
【背景技術】
【0002】
白蟻は建物の外部から建物内地下に向けて進み、コンクリートの隙間や割れ目から建物内部に侵入し、支柱となる木材や断熱材等の建築物に備えられた部材を食い荒らすため、特許文献1や特許文献2に記載されているような防蟻を達成するための手段が示されてきた。
【0003】
特許文献1には、建築物の基礎コンクリート構造に、無機繊維集合体により包囲された配管が埋没されていることを特徴とする防蟻構造が記載されている。
【0004】
特許文献2には、建築物の基礎で囲まれるとともに土間コンクリートが配置された床下部分に断熱部を配置した断熱床下構造であって、前記断熱部は、前記基礎の内側面と前記土間コンクリートの上面との境界部分から第1の間隔をあけて前記基礎の内側面を被覆する基礎側断熱材と、前記境界部分から第2の間隔をあけて前記土間コンクリートの上面を被覆する土間側断熱材と、前記境界部分から前記基礎の内側面に沿う前記第1の間隔の範囲内で、かつ、当該境界部分から前記土間コンクリートの上面に沿う前記第2の間隔の範囲内を塞ぐように配置され、防蟻用薬液が浸透可能な繊維性材料からなる薬液流通部材とを備えており、前記第1の間隔は、前記土間側断熱材の厚さより大きく、前記第2の間隔は、前記基礎側断熱材の厚さより大きく、前記薬液流通部材の一部は、床下側に露出している、ことを特徴とする防蟻断熱床下構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-44554号公報
【文献】特開2013-7183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されている防蟻構造においては、未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外力や薬効低下などによる防蟻性能の低下が起こりにくく、長期間に亘って白蟻の侵入をより防ぐことができる防蟻構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決できた防蟻構造とは、建築物の基礎コンクリート構造と、前記コンクリート構造に埋設される配管との間に繊維集合体が複数配置されており、繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目が複数存在し、複数の前記第1継ぎ目が不連続になるように配置されていることを特徴とする防蟻構造である。第1継ぎ目は繊維集合体の端部が対向している部分で白蟻にとっては比較的蟻道を作りやすい部分である。複数の第1継ぎ目が不連続になるように繊維集合体が配置されていることで、隣り合う繊維集合体の第1継ぎ目は離れた位置に存在することとなる。このため、白蟻が繊維集合体の第1継ぎ目に沿って侵入してきたとしても、隣り合う繊維集合体の第1継ぎ目はそこから離れた位置に存在するため白蟻の進行は堰き止められ、それ以上先に白蟻が侵入してくるのを防ぐことができる。
【0009】
前記基礎コンクリート構造の外側に断熱材が配置されており、前記断熱材と、前記断熱材に埋設される前記配管との間に繊維集合体が複数配置されており、繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目が複数存在し、複数の前記第1継ぎ目が不連続になるように配置されていることが好ましい。
【0010】
前記繊維集合体が配管の周方向と平行に配置されていることが好ましい。
【0011】
3つ以上の前記繊維集合体が連続して配置されることが好ましい。
【0012】
上記課題を解決できた防蟻構造とは、建築物の基礎コンクリート構造の外側に配置される断熱材と断熱材との間に繊維集合体が複数配置されており、繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目が複数存在し、複数の前記第1継ぎ目が不連続になるように配置されていることを特徴とする防蟻構造である。第1継ぎ目は繊維集合体の端部が対向している部分で白蟻にとっては比較的蟻道を作りやすい部分である。複数の第1継ぎ目が不連続になるように繊維集合体が配置されていることで、隣り合う繊維集合体の第1継ぎ目は離れた位置に存在することとなる。このため、白蟻が繊維集合体の第1継ぎ目に沿って侵入してきたとしても、隣り合う繊維集合体の第1継ぎ目はそこから離れた位置に存在するため白蟻の進行は堰き止められ、それ以上先に白蟻が侵入してくるのを防ぐことができる。
【0013】
繊維集合体の長手方向が建築物の高さ方向と平行であることが好ましい。
【0014】
前記繊維集合体が建築物の基礎コンクリート構造の側面から垂直方向に2段以上積み重ねられていることが好ましい。
【0015】
上記課題を解決できた防蟻構造とは、建築物の基礎コンクリート構造と、断熱材との間に繊維集合体が複数配置されており、繊維集合体の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目、または、繊維集合体の長手方向の端部と繊維集合体の側部が対向している第2継ぎ目を覆うように他の繊維集合体が配置されることを特徴とする防蟻構造である。第1継ぎ目または第2継ぎ目を覆うように他の繊維集合体が配置されているため、繊維集合体の第1継ぎ目または第2継ぎ目と他の繊維集合体は対向する。このため、白蟻が繊維集合体の第1継ぎ目または第2継ぎ目に沿って侵入してきたとしても、他の繊維集合体によって堰き止められ、それ以上先への白蟻の侵入を防ぐことができる。
【0016】
前記繊維集合体がコーナー部に継ぎ目なく配置されていることが好ましい。
【0017】
前記繊維集合体が建築物の高さ方向に3段以上積み重ねられていることが好ましい。
【0018】
前記断熱材及び前記繊維集合体の下に防湿シートが配置されていることが好ましい。
【0019】
前記繊維集合体が無機繊維集合体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防蟻構造は、外力や薬効低下などによる防蟻性能の低下が起こりにくく、長期間に亘って白蟻の侵入をより防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す側面図(一部断面図)である。
【
図2】
図1に示されている本発明の実施の形態に係る防蟻構造に備えられている繊維集合体の側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る防蟻構造に備えられている繊維集合体の一例を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す側面図(一部断面図)である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示されている本発明の実施の形態に係る防蟻構造に備えられている繊維集合体の斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示されている本発明の実施の形態に係る防蟻構造に備えられている繊維集合体の配置位置を示す上面図である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造を横から見たときの断面図であり、
図9(b)は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造の上面図(一部断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る防蟻構造に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0023】
(実施の形態1)
上記課題を解決できた防蟻構造とは、建築物の基礎コンクリート構造2と、コンクリート構造2に埋設される配管3との間に繊維集合体4が複数配置されており、繊維集合体4の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目5が複数存在し、複数の第1継ぎ目5が不連続になるように配置されていることを特徴とする防蟻構造10である。第1継ぎ目5は繊維集合体4の端部が対向している部分で白蟻にとっては比較的蟻道を作りやすい部分である。複数の第1継ぎ目5が不連続になるように繊維集合体4が配置されていることで、隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5は離れた位置に存在することとなる。このため、白蟻が繊維集合体4の第1継ぎ目5に沿って侵入してきたとしても、隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5はそこから離れた位置に存在するため白蟻の進行は堰き止められ、それ以上先に白蟻が侵入してくるのを防ぐことができる。また、複数の繊維集合体4を複数回に分けて基礎コンクリート構造2と配管3の間に配置するため、施工を容易に行うことができる。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す側面図(一部断面図)である。建築物の配管と基礎コンクリート構造の間に繊維集合体が配置されている様態を示している。
【0025】
図2の(a)(b)は、
図1で示す防蟻構造のうち基礎コンクリート構造と配管の間に配置される繊維集合体の実施の形態について拡大して示した図である。
図3の(a)は、
図2の(a)(b)とは異なる第1継ぎ目の実施の形態を示している。
図2の(c)は、
図2の(a)(b)に記載されている繊維集合体を矢印Aの方向から見たときの形状を示している。
図3の(b)は、
図3の(a)に記載されている繊維集合体を矢印Aの方向から見たときの形状を示している。
【0026】
基礎コンクリート構造2は、建築物の自重による鉛直方向の荷重や、地震や風によって加わる水平方向の荷重を最下部で支持し地盤に伝える部分のことをいう。基礎コンクリート構造2の構造として、一般的に通常の硬さの地盤に用いられる布基礎と、比較的軟弱な地盤に用いられるベタ基礎があるが、本発明の実施の形態に係る防蟻構造10を実施するにあたり、基礎コンクリート構造2の構造は特に限定されず、どちらの構造であってもよい。
【0027】
配管3は、ガスや水のような気体・液体を輸送するために敷設された管である。本発明の実施の形態に係る防蟻構造10において、配管3に用いられる管の種類は特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ステンレス鋼などから作られた管から適宜選択すればよい。
【0028】
繊維集合体4は、細長い糸状の繊維が集まってできた比較的柔軟性のある塊のことをいう。繊維集合体4を構成する素材としては、綿、麻、ポリアミド、ポリエステル、アクリルなどの有機繊維や、ガラス繊維、ロックウール、スラッグ繊維などの無機繊維を使用することができるが、繊維集合体4は無機繊維が集まってできた無機繊維集合体であることが好ましく、なかでも繊維集合体4はグラスウールまたはロックウールであることがより好ましい。これにより、繊維集合体4の耐熱性、耐食性を向上させることができる。
【0029】
繊維集合体4は、適切な大きさや形に形成されたものを使用すればよいが、適宜適切な大きさや形にカットして使用することもできる。繊維集合体4の形状は特に限定されず、板状、柱状、棒状などにすることができるが、基礎コンクリート構造と配管の間で隙間ができにくいようにするため、
図1、
図2の(a)、(b)及び(c)、
図3の(a)及び(b)に示すように、繊維集合体4は板状であるとより好ましい。
【0030】
図1に示すように、繊維集合体4の長手方向が配管3の周方向と平行になるように繊維集合体4が配置されていることが好ましいが、繊維集合体4の長手方向が配管3の周方向に対して角度を有するように配置されていても構わない。ここでいう配管3の周方向と平行とは、実質的な配管3の周方向と平行の±10°以内を意味するものとする。
【0031】
第1継ぎ目5は、繊維集合体4の長手方向の端部同士が対向している部分のことをいう。第1継ぎ目5は、一の繊維集合体4における長手方向の端部同士が対向するものであってもよいし、一の繊維集合体4の長手方向の端部と他の繊維集合体4の長手方向の端部が対向するものであってもよい。具体的には、例えば、
図1、
図2(a)、(b)及び(c)、
図3(a)及び(b)に示すように、繊維集合体4が板状である場合には、長手方向の両端に存在する面が対向している部分を第1継ぎ目5と呼ぶ。
【0032】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造10の隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5は不連続である。第1継ぎ目5が不連続な状態は、例えば、
図2(a)に示すように、複数の第1継ぎ目5が配管3の周方向に対して異なる位置にある(矢印Aの方向から見たときに複数の第1継ぎ目が異なる位置にある)状態や、隣り合う繊維集合体4が有する第1継ぎ目5が連結されていない状態、隣り合う繊維集合体4が有する第1継ぎ目5が離隔している状態などを不連続であるということができる。
【0033】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造10の隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5は不連続である。
図2(a)で示すように矢印Aの方向から見たときに基礎コンクリート構造2と配管3の間に配置される繊維集合体4の全ての第1継ぎ目5が配管3の周の異なる位置に配置されることもできるが、
図2(c)で示すように繊維集合体4を矢印Aの方向から見たときに隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5が配管3の円の中心3aに対して対称の位置3bの前後1/4円の弧上3cに配置されることが好ましく、前後1/8円の弧上3dに配置されることがより好ましく、前後1/16円の弧上3eに配置されることがさらに好ましい。上記構成とすることで、白蟻が第1継ぎ目5に沿って侵入してきたとしても該繊維集合体4の次に存在する繊維集合体4によって白蟻の進路を塞ぐことができ、また、該第1継ぎ目5と隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5までの白蟻の移動する道のりをより長くすることができるため、より確実に白蟻の侵入を防ぐことができる。
【0034】
図2(b)及び(c)に示すように矢印Aの方向から見たときに隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5が配管3の円の中心3aに対して対称の位置3bに配置されることが特に好ましい。矢印Aの方向から見たときに隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5が配管3の周の中心3aに対して対称の位置3bに配置される場合には、繊維集合体4の第1継ぎ目5からそれと隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5までの距離を配管3の半周分に固定することができる。白蟻が第1継ぎ目5に沿って侵入してきたとしても該第1継ぎ目5と隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5までの白蟻の移動する道のりをより長くすることができるため、より確実に白蟻の侵入を防ぐことができる。
【0035】
第1継ぎ目5の形状は、
図2の(a)及び(b)で示す第1継ぎ目5のように配管3の周方向に対して垂直になるように構成されていてもよいが、
図3(a)で示す第1継ぎ目5のように、配管3の周方向に対して傾斜を有するように構成されていてもよい。
図3(a)で示す第1継ぎ目5のように配管3の周方向に対して傾斜を有するように構成されていると、
図2の(a)及び(b)で示す第1継ぎ目5のように配管3の周方向と垂直になるように構成されているよりも、第1継ぎ目5の道のりLを長くすることができる。このように、第1継ぎ目5の道のりLを長くすることでより確実に白蟻の侵入を防ぐことができる。第1継ぎ目5の道のりLとは、第1継ぎ目5の端部から端部までの道のりのことをいう。また、
図2の(a)、(b)、
図3(a)で示す第1継ぎ目5は直線状であるが、曲線状や波打った形状であっても構わない。このように構成することで、第1継ぎ目5の道のりLをより長くすることができる。
【0036】
基礎コンクリート構造2の外側に断熱材6が配置されており、断熱材6と、断熱材6に埋設される配管3との間に繊維集合体4が複数配置されており、繊維集合体4の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目5が複数存在し、複数の前記第1継ぎ目5が不連続になるように配置されている防蟻構造20であることが好ましい。複数の第1継ぎ目5が不連続になるように配置されていることで、隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5は離れた位置に存在することとなる。このため、白蟻が繊維集合体4の第1継ぎ目5に沿って侵入してきたとしても、隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5はそこから離れた位置に存在するため白蟻の進行は堰き止められ、それ以上先に白蟻が侵入してくるのを防ぐことができる。また、複数の繊維集合体4を複数回に分けて基礎コンクリート構造2と配管3の間に配置するため、施工を容易に行うことができる。さらに、繊維集合体4の設置面積が基礎コンクリート構造2に備えられる断熱材6の厚さ分増えるため、より白蟻が侵入しにくくすることができる。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す側面図(一部断面図)である。建築物の基礎コンクリート構造の外側に設置された断熱材と配管との間に繊維集合体が配置されている様態を示している。
【0038】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造20に使用される断熱材6は保温や遮熱のために用いる部材であり、断熱材6としては、例えば、セルロースファイバー、インシュレーションボード、グラスウール、ロックウールなどの繊維系断熱材や、ウレタンフォーム、抽出法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなどの発泡系断熱材を使用することができる。また、本発明の実施の形態に係る防蟻構造20に使用する断熱材6としては、吹き付け断熱材よりも貼り付け断熱材を利用することが好ましい。
【0039】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造20における、断熱材6と配管3との間に配置される繊維集合体4と繊維集合体4の長手方向の端部が対向することで形成される第1継ぎ目5については、防蟻構造10についての説明で記載されている、基礎コンクリート構造2と配管3の間に配置される繊維集合体4及び第1継ぎ目5についての説明を参酌することができる。
【0040】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造10、20における繊維集合体4が配管3の周方向と平行に配置されていることが好ましく、繊維集合体4の長手方向が配管3の周方向と平行に配置されていることがより好ましい。繊維集合体4が配管3の周方向と平行に配置されることで、白蟻が進行して欲しくない方向である配管3が延在する方向に対して略垂直に繊維集合体4を配置することができる。これによって白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。ここでいう配管3の周方向と平行とは、実質的な配管3の周方向と平行の±10°以内を意味するものとする。
【0041】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造10、20は、3つ以上の繊維集合体4が連続して配置されることが好ましく、3つ以上の繊維集合体4が隙間なく連続して配置されることが特に好ましい。3つ以上の繊維集合体4が連続して配置されることで、繊維集合体4の第1継ぎ目5に沿って侵入してしまった白蟻がいたとしても、他の繊維集合体4が白蟻の進行してきた第1継ぎ目5の末端部分を隙間なく塞ぐことで、白蟻が次の第1継ぎ目5に進行しようとするのを防ぐことができるため、より確実に白蟻の侵入を堰き止めることができる。
【0042】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造10、20は、3つ以上の繊維集合体4が繊維集合体4の長手方向が配管3の周方向と平行になるように連続して配置されることが好ましく、3つ以上の繊維集合体4が繊維集合体4の長手方向が配管3の周方向と平行になるように隙間なく連続して配置されることが特に好ましい。3つ以上の繊維集合体4が繊維集合体4の長手方向が配管3の周方向と平行になるように連続して配置されることで、繊維集合体4の第1継ぎ目5に沿って侵入してしまった白蟻がいたとしても、他の繊維集合体4が白蟻の進行してきた第1継ぎ目5の末端部分を隙間なく塞ぐことで、白蟻が次の第1継ぎ目5に進行しようとするのを防ぐことができるため、より確実に白蟻の侵入を堰き止めることができる。
【0043】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造20の断熱材6は繊維集合体4よりも硬いものであることが好ましい。上記構成とすることで、より隙間なく繊維集合体4を配管3と断熱材6との間に配置することができる。断熱材6及び繊維集合体4の硬さの比較は、それぞれのロックウェル硬さを測定してその値を比較することによって行う。ロックウェル硬さは、JIS K 7202-2法に準じて測定する。
【0044】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造10、20は、例えば、繊維集合体4によって表面を包囲された配管3の周囲に基礎コンクリートを流し込み、基礎コンクリート構造2の自重で繊維集合体4を押圧しつつ、該基礎コンクリート構造2を硬化させることによって形成することができる。また、上記の防蟻構造10、防蟻構造20は、配管3を設置するための穴を開けた基礎コンクリート構造2を形成した後、配管3を該穴に通過させ、該基礎コンクリート構造2における穴と配管3との間に繊維集合体4を詰め込むように配置することもできる。基礎コンクリート構造2における穴と配管3との間に繊維集合体4を詰め込む際には強く押し込むようにするとより好ましい。配管3と断熱材6との間に繊維集合体4を配置する防蟻構造20の場合も同様に、配管3を設置するための穴を開けた断熱材6を形成した後、配管3を穴に通過させ、断熱材6における穴と配管3との間に繊維集合体4を詰め込むように配置することもできる。断熱材6における穴と配管3との間に繊維集合体4を詰め込む際にも強く押し込むようにするとより好ましい。
【0045】
上記のような防蟻構造10、20では、比較的柔軟性のある繊維集合体4が基礎コンクリート構造2と配管3の間に配置される。そのため、地震などの外的な力が加わったときにも繊維集合体4は割れたり破損したりすることがない。また、繊維集合体4自身の可撓性を利用して基礎コンクリート構造2と配管3との間に間隙ができるのを防ぐことができる。上記のような防蟻構造10、20とすることで、薬剤処理なしに長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防ぐことができる。
【0046】
(実施の形態2)
上記課題を解決できた防蟻構造とは、建築物の基礎コンクリート構造2の外側に配置される断熱材6と断熱材6との間に繊維集合体4が複数配置されており、繊維集合体4の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目5が複数存在し、複数の第1継ぎ目5が不連続になるように配置されていることを特徴とする防蟻構造30である。複数の第1継ぎ目5が不連続になるように配置されていることで、隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5は離れた位置に存在することとなる。このため、白蟻が繊維集合体4の第1継ぎ目5に沿って侵入してきたとしても、隣り合う繊維集合体4の第1継ぎ目5はそこから離れた位置に存在するため白蟻の進行は堰き止められ、それ以上先に白蟻が侵入してくるのを防ぐことができる。また、複数の繊維集合体4を複数回に分けて断熱材6と断熱材6の間に配置するため、施工を容易に行うことができる。
【0047】
図5は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す斜視図である。図面に向かって手前(z方向の内の手前側)が建築物の外側方向で、図面に向かって奥側(z方向の内の奥側)が建築物の内側方向を示す。矢印yは建築物の高さ方向を示す。矢印xはz方向とy方向に垂直な方向である。
【0048】
図6は、
図5に示す本発明の実施の形態に係る防蟻構造のうち繊維集合体のみを拡大した斜視図である。
【0049】
基礎コンクリート構造2、配管3、繊維集合体4、断熱材6については、実施の形態1において示されているそれぞれの説明を参酌することができる。
【0050】
第1継ぎ目5は、繊維集合体4の長手方向の端部同士が対向している部分のことをいう。第1継ぎ目5は、一の繊維集合体4における長手方向の端部同士が対向するものであってもよいし、一の繊維集合体4の長手方向の端部と他の繊維集合体4の長手方向の端部が対向するものであってもよい。具体的には、例えば、
図5及び6に示すように繊維集合体4が柱状である場合には、長手方向の両端に存在する面、即ち底面が対向している部分を第1継ぎ目5と呼ぶ。
【0051】
図5、
図6で示す第1継ぎ目5は略水平で直線状であるが、水平方向に対して傾きを有する形状や曲線状や波打った形状であっても構わない。このように構成することで、第1継ぎ目5における白蟻の移動する道のりをより長くすることができるため、白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。ここで、第1継ぎ目5について水平と言う場合には、実質的な水平の±10°以内を意味するものとする。
【0052】
図5及び
図6に示すように、本発明の実施の形態に係る防蟻構造30における繊維集合体4の長手方向が建築物の高さ方向と平行であることが好ましい。白蟻に進行して欲しくない方向である建築物の基礎コンクリート構造2の前後方向(z方向)に対して繊維集合体4の長手方向が略垂直になるようにすることで、白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。ここでいう建築物の高さ方向と平行とは、実質的な建築物の高さ方向と平行の±10°以内を意味するものとする。繊維集合体4が四角柱や板状である場合には、繊維集合体4の主平面がコンクリート構造2の主平面と平行になるように配置されることも蟻が侵入する隙間が生じにくくなるため好ましい。
【0053】
図5及び
図6に示すように、本発明の実施の形態に係る防蟻構造30における繊維集合体4が建築物の基礎コンクリート構造2の側面から垂直方向に2段以上積み重ねられていることが好ましく、3段以上積み重ねられていることがより好ましい。白蟻が進行して欲しくない方向である建築物の基礎コンクリート構造2の前後方向(z方向)に対して2段以上重ねて繊維集合体4が配置されることで、白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。段数の上限は、例えば10段以下、8段以下、5段以下などにすることができる。
【0054】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造30の断熱材6は繊維集合体4よりも硬いものであることが好ましい。上記構成とすることで、より隙間なく繊維集合体4を断熱材6と断熱材6との間に配置することができる。断熱材6及び繊維集合体4の硬さの比較は、それぞれのロックウェル硬さを測定してその値を比較することによって行う。ロックウェル硬さは、JIS K 7202-2法に準じて測定する。
【0055】
上記のような本発明の実施の形態に係る防蟻構造30は、基礎コンクリート構造2の外側に断熱材6を複数配置した後、断熱材6と他の断熱材6との間に繊維集合体4を詰め込むように配置することで実施することができる。断熱材6と他の断熱材6との間に繊維集合体4を詰め込む際には強く押し込むようにするとより好ましい。
【0056】
上記のような防蟻構造30では、比較的柔軟性のある繊維集合体4が断熱材6と他の断熱材6の間に配置される。そのため、地震などの外的な力が加わったときにも繊維集合体4は割れたり破損したりすることがない。また、繊維集合体4自身の可撓性を利用して断熱材6と他の断熱材6との間に間隙ができるのを防ぐことができる。上記のような防蟻構造30とすることで、薬剤処理無しに長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防ぐことができる。
【0057】
(実施の形態3)
上記課題を解決できた防蟻構造とは、建築物の基礎コンクリート構造2と、断熱材6との間に、繊維集合体4が複数配置されており、繊維集合体4の長手方向の端部同士が対向している第1継ぎ目5または繊維集合体4の長手方向の端部と繊維集合体4の側部が対向している第2継ぎ目7を覆うように他の繊維集合体4が配置されることを特徴とする防蟻構造40である。上記のように、第1継ぎ目5または第2継ぎ目7が他の繊維集合体4の側部によって覆われるように配置されていることで、繊維集合体4の第1継ぎ目5の末端または第2継ぎ目7の末端と他の繊維集合体4の側部は対向する。このため、繊維集合体4の第1継ぎ目5または第2継ぎ目7に沿って侵入してきた白蟻が他の繊維集合体4によって堰き止められ、それ以上先への白蟻の侵入を抑制することができる。また、複数の繊維集合体4を複数回に分けて基礎コンクリート構造2と断熱材6の間に配置するため、施工を容易に行うことができる。
【0058】
図7は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造を示す斜視図である。断熱材と基礎コンクリート構造との間に繊維集合体が配置されている様態を示しているものであるが、繊維集合体の周囲に存在するコンクリート構造の部分については図示していない。図中の矢印xは横方向、矢印yは上下方向、矢印zは縦方向を示している。
【0059】
図8は、
図7に示されている本発明の実施の形態に係る防蟻構造の各段における繊維集合体の配置位置を示す上面図である。(a)は下から1段目を、(b)は下から2段目を、(C)は下から3段目を示している。
図8についても繊維集合体の周囲に存在するコンクリート構造の部分については図示していない。
【0060】
図7及び
図8では、繊維集合体4が鉛直方向に3段設けられる実施例が示されているが、本発明の実施の形態に係る防蟻構造40はこれに限られず、繊維集合体4が鉛直方向に2段設けられる構成であってもよいし、4段以上設けられる構成であってもよい。
【0061】
図7に示すように、繊維集合体4の長手方向が水平方向と平行であることが好ましい。ここでいう繊維集合体4の長手方向が水平方向と平行とは、実質的な水平方向と平行の±10°以内を意味するものとする。
【0062】
基礎コンクリート構造2、配管3、繊維集合体4、断熱材6については、実施の形態1に記載されているそれぞれの説明を参酌することができる。
【0063】
第1継ぎ目5は、繊維集合体4の長手方向の端部同士が対向している部分のことをいう。第1継ぎ目5は、一の繊維集合体4における長手方向の端部同士が対向するものであってもよいし、一の繊維集合体4の長手方向の端部と他の繊維集合体4の長手方向の端部が対向するものであってもよい。
【0064】
第2継ぎ目7とは、繊維集合体4の長手方向の端部と繊維集合体4の側部が対向している部分のことをいう。第2継ぎ目7は、一の繊維集合体4における長手方向の端部と該繊維集合体4の側部が対向するものであってもよいし、一の繊維集合体4の長手方向の端部と他の繊維集合体4の側部が対向するものであってもよい。
【0065】
図7、
図8で示す第1継ぎ目5及び第2継ぎ目7は鉛直方向と略平行で直線状であるが、鉛直方向に対して傾きを有する形状や曲線状や波打った形状であっても構わない。このように構成することで、第1継ぎ目5及び第2継ぎ目7における白蟻の移動する道のりをより長くすることができるため、白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。鉛直方向と平行という場合には、実質的な鉛直方向と平行の±10°以内を意味するものとする。
【0066】
繊維集合体4の側部とは、繊維集合体4の長手方向の端部以外の部分である。例えば、
図7で示すような四角柱状の繊維集合体4の場合は、底面に相当する部分が長手方向の端部であり、側面に相当する部分が長手方向の端部以外の部分である。
【0067】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造40は、繊維集合体4がコーナー部8に継ぎ目なく配置されていることが好ましい。
【0068】
コーナー部8とは、基礎コンクリート構造2と断熱材6との間に形成されたコーナーの部分のことをいう。
図7及び
図8(c)に示すように、隙間ができやすい土間のコーナー部8に継ぎ目なく繊維集合体4が配置されることで、白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。コーナー部8に継ぎ目なく繊維集合体4が配置されるのは下から1段目でもよく、2段目であってもよいし、さらに上の段であってもよい。
【0069】
図9(a)は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造の基礎コンクリート構造と断熱材を示す断面図である。
図9(b)は、本発明の実施の形態に係る防蟻構造の上面図(一部断面図)であり、矢印B及び矢印Cはコーナー部に繊維集合体を配置する際に繊維集合体を押し込む方向を示している。
【0070】
図9(a)に示すように、基礎コンクリート構造2と断熱材6の間41に複数の繊維集合体4が配置される際、繊維集合体4は基礎コンクリート構造2と断熱材6の間41のうちの上1/2部分41aにおいてコーナー部8に継ぎ目なく配置されていることが好ましく、上1/4部分41bにおいてコーナー部8に継ぎ目なく配置されていることがより好ましく、
図7及び
図8に示すように、1番上の段の繊維集合体4がコーナー部8に継ぎ目なく配置されていることがさらに好ましい。基礎コンクリート構造2と断熱材6の間に複数の繊維集合体4が配置される際、下の段において繊維集合体4をコーナー部8にする場合は深さのある基礎コンクリート構造2と断熱材6の間には、施工者が手を入れにくく、施工がしづらいため、隙間が埋まりにくくなる可能性がある。基礎コンクリート構造2と断熱材6の間41のなかでもより施工者が手を入れやすい上側の部分において、繊維集合体4がコーナー部8に継ぎ目なく配置される構成とすれば施工の際にコーナー部8の隅まで繊維集合体4を詰め込みやすく、よりコーナー部8における隙間をなくしやすくすることができる。
【0071】
コーナー部8に継ぎ目なく配置される繊維集合体4の長さは、基礎コンクリート構造2と断熱材6の間41においてコーナー部8以外の部分で配置される繊維集合体4の長さよりも短いことが好ましい。上記のように、コーナー部8に配置される繊維集合体4の長さをそれ以外の部分に配置される繊維集合体4よりも短くすることで、コーナー部8に繊維集合体4を詰め込みやすくすることができるため、より確実にコーナー部8における隙間を潰すことができる。コーナー部8以外の部分で配置される繊維集合体4とは、コーナー部8が直角である場合は基礎コンクリート構造2または断熱材6によって形成される角に接しない状態で配置される繊維集合体4のことをいい、コーナー部8が弧状である場合は基礎コンクリート構造2または断熱材6によって形成される弧の始まりから終わりまでの部分に接しない状態で配置される繊維集合体4のことをいう。
【0072】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造40は、繊維集合体4が建築物の高さ方向に3段以上積み重ねられていることが好ましい。白蟻に進行して欲しくない方向である上方向に対して3段以上重ねて繊維集合体4を配置することで、白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。段数の上限は、例えば10段以下、8段以下などにすることができる。
【0073】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造40は、繊維集合体4の長手方向が水平方向と平行であることが好ましい。白蟻に進行して欲しくない方向である上方向(鉛直方向)に対して繊維集合体4の長手方向を略垂直に配置することで、白蟻の侵入をより確実に防ぐことができる。ここでいう水平方向と平行とは、実質的な水平方向と平行の±10°以内を意味するものとする。
【0074】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造40は、
図7に示すように、断熱材6及び繊維集合体4の下に防湿シート9が配置されていることが好ましい。断熱材6及び繊維集合体4の下に防湿シート9がさらに配置されることで、より確実に白蟻の侵入を防ぐことができる。また、断熱材6や繊維集合体4に使用する素材が湿気や水に弱いものであった場合に、それらを湿気や水から保護することもできる。
【0075】
本発明の実施の形態に係る防蟻構造40の断熱材6は繊維集合体4よりも硬いものであることが好ましい。上記構成とすることで、より隙間なく繊維集合体4を基礎コンクリート構造2と断熱材6との間に配置することができる。断熱材6及び繊維集合体4の硬さの比較は、それぞれのロックウェル硬さを測定してその値を比較することによって行う。ロックウェル硬さは、JIS K 7202-2法に準じて測定する。
【0076】
上記のような本発明の実施の形態に係る防蟻構造40は、土間において特に好適な防蟻構造である。
【0077】
上記のような本発明の実施の形態に係る防蟻構造40は、基礎コンクリート構造2の内側に断熱材6を配置した後、基礎コンクリート構造2と断熱材6との間41に繊維集合体4を詰め込むように配置することで実施することができる。基礎コンクリート構造2と断熱材6との間に繊維集合体4を詰め込む際には強く押し込むようにすると好ましく、
図9(b)で示す矢印B及び矢印Cの方向に強く押し込むようにするとより好ましい。上記のように配置することで、繊維集合体4と、基礎コンクリート構造2と断熱材の間41との間において、より隙間ができにくくすることができる。
【0078】
上記のような防蟻構造40では、比較的柔軟性のある繊維集合体4が基礎コンクリート構造2と断熱材6の間に配置される。そのため、地震などの外的な力が加わったときにも繊維集合体4は割れたり破損したりすることがなく、繊維集合体4自身の可撓性を利用して基礎コンクリート構造2と断熱材6との間に間隙ができるのを防ぐことができる。上記のような防蟻構造とすることで、薬剤処理無しに長期間に亘って持続的に白蟻の侵入を防ぐことができる。
【0079】
以上の通り、本発明の防蟻構造は、繊維集合体によって形成される複数の継ぎ目が不連続になるように建築物の部材同士の間に配置することで、外力や薬効低下などによる防蟻性能の低下が起こりにくく、長期間に亘って白蟻の侵入をより防ぐことができるものである。
【符号の説明】
【0080】
1: 土
2: 基礎コンクリート構造
3: 配管
3a: 配管の円の中心
3b: 円の中心に対して対称の位置
3c: 前後1/4円の弧上
3d: 前後1/8円の孤上
3e: 前後1/16円の弧上
4: 繊維集合体
5: 第1継ぎ目
6: 断熱材
7: 第2継ぎ目
8: コーナー部
9: 防湿シート
10: 防蟻構造
20: 防蟻構造
30: 防蟻構造
40: 防蟻構造
41: 基礎コンクリート構造と断熱材の間
41a:上1/2部分
41b:上1/4部分
L: 第1継ぎ目の道のり