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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】概日リズム調節剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20240304BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 35/413 20150101ALI20240304BHJP
   A61K 35/55 20150101ALI20240304BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240304BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P43/00 111
A61P25/20
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/02
A61P43/00
A61P43/00 121
A61K35/413
A61K35/55
A23L33/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020027988
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021130644
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-10-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月20日に第42回日本分子生物学会年会の講演要旨集において発表 令和1年12月6日に開催された第42回日本分子生物学会年会において発表
(73)【特許権者】
【識別番号】591262779
【氏名又は名称】救心製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173658
【氏名又は名称】公益財団法人国際科学振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 栄二
(72)【発明者】
【氏名】清水 康晴
(72)【発明者】
【氏名】須藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】堀 厚
(72)【発明者】
【氏名】堀 正典
(72)【発明者】
【氏名】川崎 陽久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】石田 直理雄
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】FASEB Journal,2019年,33(6),7479-7489
【文献】PLOS One,2016年,11:e0167319
【文献】富山大学リエゾンニュース,国立大学法人 富山大学 地域連携推進機構 産学連携部門,2014年,No.18,p.1-2
【文献】Analytical Methods,2015年,7:7606-7617
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 35/00-35/768
A61P 1/00-43/00
A23L 33/00-33/29
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルソデオキシコール酸、豚胆、麝香および牛黄を有効成分として含有する概日リズム調節剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概日リズム調節剤に関する。
【背景技術】
【0002】
概日リズムは、約24時間の周期で変動し、睡眠・覚醒、ホルモン分泌、免疫などを制御している。不規則な生活、ストレス、加齢などにより概日リズムが乱れると、睡眠障害、循環器疾患、肥満などの生活習慣病、癌、精神疾患など様々な疾患が引き起こされる。概日リズム障害に起因する疾患としては、睡眠相前進症候群、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群および季節性うつ病などが挙げられる。心筋梗塞、脳梗塞、躁鬱病、緊張症、高血圧症、潰瘍、糖尿病、脳血管型痴呆症、アルツハイマー型痴呆症などもまた、概日リズム障害に起因する疾患である。
【0003】
概日リズムは、時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子群が、約24時間周期の発現フィードバックループを形成することにより生み出される(例えば、非特許文献1)。哺乳類においては、約20種類の時計遺伝子が知られているが、特にPer(Period)、Cry(Cryptochrome)、Bmal1およびClock遺伝子が、コア時計遺伝子と呼ばれ重要な役割を担っている。具体的には、Bmal1およびClock遺伝子の産物であるBMAL1/CLOCK複合体がE-Box配列に結合して、PerおよびCry遺伝子の転写を活性化し、作られたPER/CRY複合体が核に移行して、BMAL1/CLOCK複合体を抑制するネガティブフィードバックループが形成される。
【0004】
概日リズムの要素は、位相、周期長および振幅の3種である。概日リズムの位相とは、2つのリズムを重ねた時のずれの長さであり、概日リズムの周期長とは、1周期の長さで、正常人では約24.3時間である。また、概日リズムの振幅とは、1周期における発現量の大きさである。振幅は、老化やうつ病など精神疾患により減衰することが知られている。特に、周期長や振幅の調節機能が、様々な生体リズム関連疾患の予防または改善において重要であると考えられている。
概日リズムを調節する物質は、概日リズム障害に起因する疾患の改善につながる可能性があり、創薬ターゲットとして多くの研究が行われている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-110564号公報
【文献】特開2015-140305号公報
【文献】特開2016-204280号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Nature 418, 935-941(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な概日リズム調節剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ウルソデオキシコール酸が、時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長を延長し、振幅を増大させて、概日リズムを調節する作用を有することを見出した。すなわち、本発明は、ウルソデオキシコール酸を有効成分として含有する概日リズム調節剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な概日リズム調節剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす生薬製剤(救心感應丸氣)の影響を示す図である。
図2】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの振幅に及ぼす生薬製剤(救心感應丸氣)の影響を示す図である。
図3】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長に及ぼす生薬製剤(救心感應丸氣)の影響を示す図である。
図4】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼすウルソデオキシコール酸の影響を示す図である。
図5】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの振幅に及ぼすウルソデオキシコール酸の影響を示す図である。
図6】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長に及ぼすウルソデオキシコール酸の影響を示す図である。
図7】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす豚胆の影響を示す図である。
図8】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの振幅に及ぼす豚胆の影響を示す図である。
図9】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長に及ぼす豚胆の影響を示す図である。
図10】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす麝香の影響を示す図である。
図11】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの振幅に及ぼす麝香の影響を示す図である。
図12】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長に及ぼす麝香の影響を示す図である。
図13】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす牛黄の影響を示す図である。
図14】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの振幅に及ぼす牛黄の影響を示す図である。
図15】NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長に及ぼす牛黄の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の概日リズム調節剤は、ウルソデオキシコール酸を有効成分として含有する。ウルソデオキシコール酸は、豚胆、麝香および牛黄とともに生薬製剤(救心感應丸氣)に含有されている。この生薬製剤は、OTC医薬品として市販されており、気つけ、息切れ、どうき、胃腸虚弱、消化不良、下痢の効能を有し、基礎薬理試験においてストレス負荷による心拍数の増加や消化管運動、痛覚閾値の低下を抑える作用が認められている(非特許文献4:Natural Medicines 51, 108-124(1997))。
【0012】
ウルソデオキシコール酸は、胆汁酸の一種であり、熊胆の主成分として知られている。ウルソデオキシコール酸の代表的な薬理作用としては、従来、利胆、肝機能改善および胆石溶解作用が知られていた。本発明者らは、ウルソデオキシコール酸が、時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長を延長し、振幅を増大させて、概日リズムを調節する作用を有することを見出した。
【0013】
本発明の概日リズム調節剤は、ウルソデオキシコール酸に加えて、豚胆を有効成分として含有することができる。豚胆とは、ブタ(Sus scrofa domestica Brisson)の胆汁を濃縮・乾燥したものである。豚胆の代表的な薬理作用としては、従来、利胆、鎮痙および鎮痛作用が知られていた。本発明者らは、豚胆が、時計遺伝子Per2の発現リズムの周期長を延長し、振幅を増大させることを見出した。
【0014】
本発明の概日リズム調節剤は、麝香または牛黄を有効成分としてさらに含有することができる。麝香とは、ジャコウジカ(Moschus moschiferus Linne)またはその近縁動物の雄のジャコウ腺分泌物を乾燥したものである。麝香の代表的な薬理作用としては、従来、強心、男性ホルモン様、抗炎症、呼吸興奮、鎮静および抗ストレス作用が知られていた。また、牛黄とは、ウシ(Bos taurus Linne var. domesticusGmelin)の胆嚢中にまれに生じる結石である。牛黄の代表的な薬理作用としては、従来、強心、鎮静、解熱、血圧降下および抗酸化作用が知られていた。
【0015】
本発明者らは、麝香および牛黄が、振幅を増大させることにより、概日リズムを調節する作用を有することを見出した。
【0016】
本発明の概日リズム調節剤は、ウルソデオキシコール酸および豚胆とともに、麝香および牛黄を有効成分として含有していてもよい。本発明者らは、ウルソデオキシコール酸、豚胆、麝香、および牛黄を含有する生薬製剤(救心感應丸氣)が、時計遺伝子Per2の発現リズムの振幅を増大させ、周期長を延長して、概日リズムを調節する作用を有することを見出した。
【0017】
本発明の概日リズム調節剤において、豚胆、麝香および牛黄は、それぞれ原生薬のままでも使用できるが、原生薬から抽出した抽出物や原生薬を粉砕した粉砕物(粉末)として使用することが好ましい。なお、抽出や粉砕は、医薬品や食品の製造に利用する公知の方法であれば特に限定することなく使用できる。
【0018】
例えば、抽出は各原料をその質量の5~30倍量、好ましくは10~20倍量の熱水により抽出し、抽出液を濃縮および乾燥したものを使用することができる。なお、濃縮および乾燥には、減圧蒸発濃縮、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の手段が使用できる。また、粉砕には、インパクトミルやジェットミルなどの公知の手段を使用できる。
【0019】
本発明の概日リズム調節剤は、例えば、ヒト1日当たり体重1kgにつき有効成分としてウルソデオキシコール酸0.01~10mg、豚胆0.1~100mg、麝香0.01~10mg、および牛黄0.01~10mgを含有する製剤とすることができる。この場合、有効成分以外の成分としては、羚羊角0.01~10mg、沈香0.01~10mg、龍脳0.01~10mg、人参0.1~100mgを含有することができる。さらに、添加物として、パラペン、トウモロコシでんぷん、寒梅粉、アラビアゴム、カルメロース、薬用炭を含有してもよい。
【0020】
本発明の概日リズム調節剤は、そのままの形態で最終製品として用いることができる。あるいは、飲食品用の添加剤、医薬品用のリズム添加剤、または医薬部外品の添加剤として用いてもよい。この場合には、飲食品、医薬品として概日リズム調節効果を付与することができる。
【0021】
本発明の概日リズム調節剤を用いた飲食品の形態としては、例えば、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料など)、菓子類(クッキー、ケーキ、ガム、キャンディー、タブレット、グミ、饅頭、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベットなど)、水産加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなど)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、チーズ、マーガリン、発酵乳など)、スープ(粉末状スープ、液状スープなど)、主食類(ご飯類、麺(乾麺、生麺)、パン、シリアルなど)、調味料(マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、ソース、たれ、しょうゆなど)が挙げられる。
【0022】
本発明の概日リズム調節剤を医療品として用いる場合には、任意の形態で投与することができる。例えば、経口投与(例えば、口腔内投与、舌下投与など)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与など)などが挙げられる。好ましくは侵襲性の少ない投与形態であり、経口投与であることがより好ましい。本発明の概日リズム調節剤を飲食品として用いる場合には、経口投与されることがさらに好ましい。
【0023】
本発明の概日リズム調節剤の剤形は特に限定されず、例えば液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、粒状(錠剤、丸剤)、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒、細粒)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状、半液体状、クリーム状、ペースト状等の任意の剤形とすることができる。なかでも、粒状、カプセル状、粉末状、ソフトカプセル状、固形状、粒状(錠剤、丸剤)が好ましく、粒状(丸剤)がより好ましい。
【0024】
本発明の概日リズム調節剤は、使用の形態に応じて剤形を適宜決定して、任意の時期に投与することができる。
【0025】
本発明における概日リズムの調節作用は、Per2などの時計遺伝子の発現で表される体内時計の振幅を増大させる作用、および周期長を延長させる作用の少なくとも一方である。例えば、細胞内でPer2プロモーターにより発現制御されたレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子など)の発現の振幅および周期長を調べることによって、概日リズムの調節作用を確認することができる。
【0026】
本発明の概日リズム調節剤は、時計遺伝子Per2の発現リズムの振幅増大作用、および周期延長作用を有している。振幅延長作用は、概日リズム睡眠障害、特に睡眠相前進症候群(時計の進みが早く、夕方に寝てしまい、社会適応出来なくなる睡眠障害)の治療に効果を発揮する可能性がある。一方、振幅増大作用は、特に老化防止やうつ病など精神疾患の治療に効果を発揮する可能性がある。
このように、概日リズムの調節、睡眠改善が期待されることから、本発明の概日リズム調節剤は、睡眠障害、不眠症、自律神経失調症、躁うつ病などの予防または緩和にも用いることができる。
【実施例
【0027】
以下、本発明に係る概日リズム調節剤を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0028】
(被験薬)
被験薬として、生薬製剤(救心感應丸氣)(1000μg/mL、3000μg/mL)、ウルソデオキシコール酸(75μM、250μM)、豚胆(200μg/mL、600μg/mL)、麝香(15μg/mL、50μg/mL)、牛黄(100μg/mL、300μg/mL)を用意した。被験薬は10% Dimethyl sulfoxideで30分間超音波抽出し、遠心分離(1000 rpmで3分間)した上清をろ過滅菌した。
【0029】
生薬製剤(救心感應丸氣)は、1日量(270mg)中、ウルソデオキシコール酸10mg、豚胆30mg、麝香5mg、牛黄10mg、羚羊角10mg、沈香10mg、龍脳10mg、人参75mgを含有する。さらに、添加物として、パラペン、トウモロコシでんぷん、寒梅粉、アラビアゴム、カルメロース、および薬用炭を含有している。
【0030】
(実験方法)
トランスフェクション前日に、マウス線維芽細胞株NIH3T3細胞(RCB1862;理研バイオリソース)を、2×10個になるように35mmプレートに播種した。Per2プロモーター下流にルシフェラーゼレポーター遺伝子を連結したプラスミド(mPer2-Luc)は、非特許文献5(Proc Natl Acad Sci USA 62, 1159-1166(1969))の方法で作製した。プラスミド(mPer2-Luc)は、HilyMax(同仁化学)を用いてNIH3T3細胞にトランスフェクションした。
【0031】
20時間後、細胞は0.1μMデキサメサゾンで2時間処理し、被験薬、10%ウシ胎児血清、25mMHEPES buffer (pH 7.2)、0.1mM ルシフェリンを含むDMEMで置換した。いずれの被験薬もDimethyl sulfoxide終濃度が0.1%となるように添加した。被験薬添加後のルシフェラーゼの発光量を、ルミノメーター(クロノスAB2500;ATTO(株)製)を用いて計測した。発光量は、10秒間の積算値を3分間隔で測定した。
【0032】
ルミノメーターに搭載されている解析システムにより、得られた発光値の経時変化の波形からノイズを除去し、デトレンドして時計遺伝子Per2の発現リズムを得た。具体的には、解析は10ポイントの移動平均/メディアン処理でノイズを除去し、12時間の移動平均を用いてデトレンドを行った。得られた発現リズムの振幅および周期長を求め、コントロール群との比較検証を行った。
【0033】
(実施例1:生薬製剤(救心感應丸氣)を含有する概日リズム調節剤)
図1~3には、NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす生薬製剤の影響を示す。生薬製剤(1000μg/mL)の添加によって、Per2の発現リズムの振幅がコントロール群の最大3倍まで増大し、生薬製剤(3000μg/mL)の添加によって、Per2の発現リズムの周期長がコントロール群より約2時間延長したことが図1に示されている。
図2、3において、データは平均±標準誤差(mean±SE)を示す。生薬製剤を添加していないもの(コントロール群)との有意差の解析には、t検定を使用した。*はp<0.05、**はp<0.01を表す。これらの結果から、生薬製剤は、時計遺伝子Per2発現の振幅を増大させ、周期長を延長させて、概日リズムを調節する作用を有することが確認された。
【0034】
(実施例2:ウルソデオキシコール酸を含有する概日リズム調節剤)
図4~6には、NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼすウルソデオキシコール酸の影響を示す。ウルソデオキシコール酸(75μM、250μM)の添加によって、Per2の発現リズムの振幅が増大し、ウルソデオキシコール酸(250μM)の添加によって、Per2の発現リズムの周期長が延長したことが図4に示されている。
図5、6において、データは平均±標準誤差(mean±SE)を示す。ウルソデオキシコール酸を添加していないもの(コントロール群)との有意差の解析には、t検定を使用した。*はp<0.05、**はp<0.01を表す。これらの結果から、ウルソデオキシコール酸は、時計遺伝子Per2発現の振幅を増大させ、周期長を延長させて、概日リズムを調節する作用を有することが確認された。
【0035】
(実施例3:豚胆を含有する概日リズム調節剤)
図7~9には、NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす豚胆の影響を示す。豚胆(200μg/mL)の添加によって、Per2の発現リズムの振幅が増大し、豚胆(600μg/mL)の添加によって、Per2の発現リズムの周期長が延長したことが図7に示されている。
図8、9において、データは平均±標準誤差(mean±SE)を示す。豚胆を添加していないもの(コントロール群)との有意差の解析には、t検定を使用した。*はp<0.05、**はp<0.01を表す。これらの結果から、豚胆は、時計遺伝子Per2発現の振幅を増大させ、周期長を延長させて、概日リズムを調節する作用を有することが確認された。
【0036】
(実施例4:麝香を含有する概日リズム調節剤)
図10~12には、NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす麝香の影響を示す。麝香(50μg/mL)の添加によってPer2の発現リズムの振幅が増大したことが、図10に示されている。
図11、12において、データは平均±標準誤差(mean±SE)を示す。麝香を添加していないもの(コントロール群)との有意差の解析には、t検定を使用した。*はp<0.05を表す。これらの結果から、麝香は、時計遺伝子Per2発現の振幅を増大させて、概日リズムを調節する作用を有することが確認された。
【0037】
(実施例5:牛黄を含有する概日リズム調節剤)
図13~15には、NIH3T3細胞における時計遺伝子Per2の発現リズムに及ぼす牛黄の影響を示す。牛黄(300μg/mL)の添加によって、Per2の発現リズムの振幅が増大し、Per2の発現リズムの周期長が延長したことが図13に示されている。
図14、15において、データは平均±標準誤差(mean±SE)を示す。牛黄を添加していないもの(コントロール群)との有意差の解析には、t検定を使用した。*はp<0.05を表す。これらの結果から、牛黄は、時計遺伝子Per2発現の振幅を増大させて、概日リズムを調節する作用を有することが確認された。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15