(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】天井構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20240304BHJP
E04B 9/22 20060101ALI20240304BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20240304BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20240304BHJP
F21V 21/03 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
E04B9/00 J
E04B9/22 C
E04B9/00 G
F21V29/503
F21V29/76
F21V21/03
(21)【出願番号】P 2020150217
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509311252
【氏名又は名称】株式会社共立電照
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉光 智哉
(72)【発明者】
【氏名】竹田 康浩
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】横山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】船ヶ山 保幸
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-222301(JP,A)
【文献】特開2009-080994(JP,A)
【文献】特開2005-294099(JP,A)
【文献】特開2012-204199(JP,A)
【文献】実開昭62-049523(JP,U)
【文献】特開2010-262743(JP,A)
【文献】実開昭57-066115(JP,U)
【文献】特開2012-009274(JP,A)
【文献】特開2013-114982(JP,A)
【文献】特開2014-102999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00,9/22
F21V 21/02 -21/04
F21V 29/503,29/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の天井部に水平に固定され、格子状に設けられた下地材と、
上記下地材の一部に取り付けられた照明装置とを備えた天井構造であって、
上記照明装置は、上記下地材の一部に固定された本体パネル
と、該本体パネルの下側に着脱可能に設けられた前面パネルとを備え、
上記本体パネルは、水平に設けられたベース部と、該ベース部から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた複数の光出射部とを備え、
上記各光出射部は、該各光出射部の上面の下側表面に設けられて複数の点状光源が基板下側表面に配置された発光基板と、該発光基板の下側に該発光基板に対向するように設けられ、上記各点状光源から出射した光の一部を透過する光透過板とを備え、
上記下地材の一部は、上記複数の光出射部の周囲の上記ベース部の上面に固定されていることを特徴とする天井構造。
【請求項2】
請求項
1に記載された天井構造において、
上記照明装置が取り付けられていない上記下地材の他部の下面には、該照明装置を囲むように複数の天井ボードが固定されていることを特徴とする天井構造。
【請求項3】
請求項
2に記載された天井構造において、
上記前面パネルの周端部は、上記照明装置の周囲に配置された天井ボードの端部と重なるように設けられていることを特徴とする天井構造。
【請求項4】
請求項
2又は
3に記載された天井構造において、
上記発光基板と上記光透過板とは、上記各天井ボードの厚さ以上に離間するように設けられていることを特徴とする天井構造。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1つに記載された天井構造において、
上記下地材の一部は、上記複数の光出射部の間の上記ベース部の上面に固定されていることを特徴とする天井構造。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか1つに記載された天井構造において、
上記複数の光出射部の1つに隣接して、該複数の光出射部に電力を供給する電源ユニットが設けられていることを特徴とする天井構造。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか1つに記載された天井構造において、
上記各光出射部の上面の上側表面には、複数のフィンが立った状態に設けられていることを特徴とする天井構造。
【請求項8】
建物内の天井部に水平に固定され、格子状に設けられた下地材と、
上記下地材の一部に取り付けられた照明装置とを備えた天井構造の施工方法であって、
上記照明装置は、上記下地材の一部に固定された本体パネル
と、該本体パネルの下側に着脱可能に設けられた前面パネルとを備え、
上記本体パネルは、水平に設けられたベース部と、該ベース部から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた複数の光出射部とを備え、
上記各光出射部は、該各光出射部の上面の下側表面に設けられて複数の点状光源が基板下側表面に配置された発光基板と、該発光基板の下側に該発光基板に対向するように設けられ、上記各点状光源から出射した光の一部を透過する光透過板とを備えており、
上記照明装置を取り付けない上記下地材の他部の下面に、該照明装置を囲むように複数の天井ボードを固定する天井ボード固定工程と、
上記下地材の一部の下面に、上記複数の光出射部の周囲の上記ベース部の上面を固定して、上記本体パネルを設置する本体パネル設置工程とを備え
、
上記本体パネル設置工程の後に、上記本体パネルに上記前面パネルを装着する前面パネル装着工程を備えることを特徴とする天井構造の施工方法。
【請求項9】
請求項
8に記載された天井構造の施工方法において、
上記天井ボード固定工程の後に上記本体パネル設置工程を行うことを特徴とする天井構造の施工方法。
【請求項10】
請求項
8又は9に記載された天井構造の施工方法において、
上記天井ボード固定工程は、上記下地材の下面に、複数の天井ボードをマトリクス状に固定した後に、上記照明装置を取り付ける部分に対応する天井ボードを取り除くことにより、行われることを特徴とする天井構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスビル等の天井において、金属製の複数のバー材を格子状に組んだ下地材を天井スラブから吊り下げ、その格子状の下地材に天井ボード、照明設備、空調設備、安全設備等を固定する天井構造が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、天井下地に固定設置された天井埋込型のLED(light emitting diode)照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示されたLED照明装置は、例えば、オフィスビルの天井に設置される天井用石膏ボードと同じ大きさで形成され、天井ボードの代わりに天井部分に設置されるので、10mm以下の厚さである。そのため、上記特許文献1に開示されたLED照明装置では、人が見上げた際に、点状光源として装置内に設けられたLEDチップが外側から視認されて、眩しく感じることがあるので、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、人が見挙げた際の点状光源による眩しさを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る天井構造は、建物内の天井部に水平に固定され、格子状に設けられた下地材と、上記下地材の一部に取り付けられた照明装置とを備えた天井構造であって、上記照明装置は、上記下地材の一部に固定された本体パネルと、該本体パネルの下側に着脱可能に設けられた前面パネルとを備え、上記本体パネルは、水平に設けられたベース部と、該ベース部から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた複数の光出射部とを備え、上記各光出射部は、該各光出射部の上面の下側表面に設けられて複数の点状光源が基板下側表面に配置された発光基板と、該発光基板の下側に該発光基板に対向するように設けられ、上記各点状光源から出射した光の一部を透過する光透過板とを備え、上記下地材の一部は、上記複数の光出射部の周囲の上記ベース部の上面に固定されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、照明装置を構成する本体パネルは、水平に設けられたベース部と、そのベース部から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた複数の光出射部とを備えている。ここで、各光出射部は、箱状の各光出射部の上面の下側表面に設けられた発光基板と、その発光基板の下側にその発光基板に対向するように設けられた光透過板とを備えている。そして、建物内の天井部に水平に固定された格子状の下地材の一部は、複数の光出射部の周囲のベース部の上面に固定されている。これにより、本体パネルを構成する箱状の複数の光出射部は、下地材の格子間に配置するので、各光出射部の箱上面の下側表面に設けられた発光基板を下地材よりも上方に配置することができる。さらに、複数の点状光源が基板下側表面に配置された発光基板の下側には、例えば、乳白色の光透過板が設けられているので、人が見挙げた際の点状光源による眩しさを抑制することができる。また、格子状に設けられた下地材を切断することなく、照明装置が取り付けられるので、下地材の剛性を確保することができ、耐震性を向上させることができる。さらに、照明装置が本体パネルの下側に着脱可能に設けられた前面パネルを備えているので、本体パネルの下面に露出する配線等が前面パネルにより遮蔽され、照明装置の見映えをよくすることができる。
【0009】
上記照明装置が取り付けられていない上記下地材の他部の下面には、該照明装置を囲むように複数の天井ボードが固定されていてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、建物内の天井部に水平に固定された格子状の下地材において、一部の下面に本体パネルのベース部が固定されて照明装置が取り付けられ、その周囲の他部の下面に複数の天井ボードが固定された天井構造を具体的に構成することができる。
【0011】
上記前面パネルの周端部は、上記照明装置の周囲に配置された天井ボードの端部と重なるように設けられていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、前面パネルの周端部が照明装置の周囲に配置された天井ボードの端部と重なるように設けられているので、照明装置の周囲に配置された天井ボードとの隙間が見えなくなり、見映えをよくすることができる。
【0013】
上記発光基板と上記光透過板とは、上記各天井ボードの厚さ以上に離間するように設けられていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、発光基板と光透過板とが各天井ボードの厚さ以上に離間するので、人が見挙げた際の点状光源による眩しさをいっそう抑制することができる。
【0015】
上記下地材の一部は、上記複数の光出射部の間の上記ベース部の上面に固定されていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、下地材の一部は、複数の光出射部の周囲のベース部の上面に固定されているだけでなく、複数の光出射部の間のベース部の上面に固定されているので、下地材に本体パネルを確実に固定することができ、耐震性を向上させることができる。
【0017】
上記複数の光出射部の1つに隣接して、該複数の光出射部に電力を供給する電源ユニットが設けられていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、複数の光出射部の1つに隣接して、複数の光出射部に電力を供給する電源ユニットが設けられているので、交流電力を直流電力に変換して供給する電源ユニットを一箇所に集約することができる。
【0019】
上記各光出射部の上面の上側表面には、複数のフィンが立った状態に設けられていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、各光出射部の上面の上側表面に複数のフィンが立った状態に設けられているので、発光基板の下側表面に配置された各点状光源で発生した熱を複数のフィンを介して外部に放出させることができる。
【0021】
また、本発明に係る天井構造の施工方法は、建物内の天井部に水平に固定され、格子状に設けられた下地材と、上記下地材の一部に取り付けられた照明装置とを備えた天井構造の施工方法であって、上記照明装置は、上記下地材の一部に固定された本体パネルと、該本体パネルの下側に着脱可能に設けられた前面パネルとを備え、上記本体パネルは、水平に設けられたベース部と、該ベース部から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた複数の光出射部とを備え、上記各光出射部は、該各光出射部の上面の下側表面に設けられて複数の点状光源が基板下側表面に配置された発光基板と、該発光基板の下側に該発光基板に対向するように設けられ、上記各点状光源から出射した光の一部を透過する光透過板とを備えており、上記照明装置を取り付けない上記下地材の他部の下面に、該照明装置を囲むように複数の天井ボードを固定する天井ボード固定工程と、上記下地材の一部の下面に、上記複数の光出射部の周囲の上記ベース部の上面を固定して、上記本体パネルを設置する本体パネル設置工程とを備え、上記本体パネル設置工程の後に、上記本体パネルに上記前面パネルを装着する前面パネル装着工程を備えることを特徴とする。
【0022】
上記の方法によれば、照明装置を構成する本体パネルは、水平に設けられたベース部と、そのベース部から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた複数の光出射部とを備えている。ここで、各光出射部は、箱状の各光出射部の上面の下側表面に設けられた発光基板と、その発光基板の下側にその発光基板に対向するように設けられた光透過板とを備えている。そして、本体パネル設置工程において、建物内の天井部に水平に固定された格子状の下地材の下面に複数の光出射部の周囲のベース部の上面を固定する。これにより、本体パネルを構成する箱状の複数の光出射部は、下地材の格子間に配置するので、各光出射部の箱上面の下側表面に設けられた発光基板を下地材よりも上方に配置することができる。さらに、複数の点状光源が基板下側表面に配置された発光基板の下側には、例えば、乳白色の光透過板が設けられているので、人が見挙げた際の点状光源による眩しさを抑制することができる。また、格子状に設けられた下地材を切断することなく、照明装置が取り付けられるので、下地材の剛性を確保することができ、耐震性を向上させることができる。さらに、本体パネル設置工程の後に、本体パネルに前面パネルを装着する前面パネル装着工程を備えているので、本体パネルの下面に露出する配線等が前面パネルにより遮蔽され、照明装置の見映えをよくすることができる。
【0023】
上記天井ボード固定工程の後に上記本体パネル設置工程を行ってもよい。
【0024】
上記の方法によれば、天井ボード固定工程において、照明装置を取り付けない下地材の他部の下面に、取り付ける予定の照明装置を囲むように複数の天井ボードを固定した後に、本体パネル設置工程において、下地材の一部の下面に、複数の光出射部の周囲のベース部の上面を固定して、本体パネルを設置する。これにより、下地材の他部の下面に複数の天井ボードを固定する際には、下地材の一部の下面に本体パネルのベース部がまだ固定されていないので、施工中の照明装置(本体パネル)の破損を抑制することができる。
【0025】
上記天井ボード固定工程は、上記下地材の下面に、複数の天井ボードをマトリクス状に固定した後に、上記照明装置を取り付ける部分に対応する天井ボードを取り除くことにより、行われてもよい。
【0026】
上記の方法によれば、天井ボード固定工程では、格子状の下地材の下面に、複数の天井ボードをマトリクス状に固定した後に、照明装置を取り付ける部分に対応する天井ボードを取り除くので、下地材の下面の全面に複数の天井ボードがマトリクス状に固定された天井構造であっても、照明装置を取り付ける施工を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、建物内の天井部に水平に固定された格子状の下地材の一部が、照明装置を構成する本体パネルにおける複数の光出射部の周囲のベース部の上面に固定されているので、人が見挙げた際の点状光源による眩しさを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る天井構造を構成する下地材の平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る天井構造を構成する照明装置及び天井ボードの配列を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る天井構造を構成する下地材に照明装置を設置した状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る天井構造の下地材を構成するメインバーの斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る天井構造の下地材を構成するクロスバーの斜視図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る天井構造の照明装置の斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る天井構造の照明装置を構成する本体パネルのX方向に沿った断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る天井構造の照明装置を構成する本体パネルのY方向に沿った断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る天井構造の照明装置を構成する前面パネルのX方向及びY方向に沿った断面図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る天井構造のX方向に沿った断面図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る天井構造のY方向に沿った断面図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る天井構造において、クロスバーと本体パネルを構成するベース部との固定箇所を示す平面図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態に係る天井構造の照明装置のX方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0030】
《第1の実施形態》
図1~
図15は、本発明に係る天井構造及びその施工方法の第1の実施形態を示している。ここで、
図1は、本実施形態の天井構造50を構成する下地材10の平面図である。また、
図2は、天井構造50を構成する照明装置40及び天井ボード15の配列を示す平面図である。また、
図3は、天井構造50を構成する下地材10に照明装置40を設置した状態を示す斜視図である。また、
図4及び
図5は、天井構造50の下地材10を構成するメインバー10a及びクロスバー10bの斜視図である。また、
図6は、天井構造50の照明装置40の斜視図である。また、
図7及び
図8は、天井構造50の照明装置40を構成する本体パネル30のX方向(
図6中のVII-VII線)及びY方向(
図6中のVIII-VIII線)に沿った断面図である。また、
図9は、天井構造50の照明装置40を構成する前面パネル35のX方向(
図6中のVII-VII線)及びY方向(
図6中のVIII-VIII線)に沿った断面図である。また、
図10及び
図11は、天井構造50のX方向(
図6中のVII-VII線参照)及びY方向(
図6中のVIII-VIII線参照)に沿った断面図である。また、
図12は、
図10中の領域Aを拡大した断面図であり、
図13は、
図11中の領域Bを拡大した断面図である。また、
図14は、天井構造50において、クロスバー10bと本体パネル30を構成するベース部20との固定箇所を示す平面図である。また、
図15は、天井構造50を構成する照明装置40のX方向(
図6中のXV―XV線)に沿った断面図である。
【0031】
天井構造50は、
図1~
図3に示すように、建物の壁Wに囲まれた空間内の天井部に水平に固定された格子状の下地材10と、下地材10の一部に取り付けられた9つの照明装置40と、各照明装置40を囲むように下地材10の他部に取り付けられた複数の天井ボード15とを備えている。
【0032】
下地材10は、
図1及び
図3に示すように、例えば、1800mmのピッチで互いに平行にX方向に延びるように設けられた複数のメインバー10aと、隣り合う一対のメインバー10aの間において300mmのピッチで互いに平行にY方向に延びるように設けられた複数のクロスバー10bとを備えている。ここで、下地材10は、例えば、複数のメインバー10a及び複数のクロスバー10bの交差する部分の幾つかの後述する接続部7を建物内の天井スラブに埋め込まれた吊りボルトで固定することにより、天井スラブに吊り下げられている。
【0033】
メインバー10a及びクロスバー10bは、
図4及び
図5に示すように、例えば、1枚の帯状の鋼板を幅方向の中央部で折り曲げて重ね合わせ且つその重ね合わせ部分の先端側の略半部を他の部分と直角になるように逆方向に折り曲げて、断面略T字状に成形したものである。ここで、メインバー10a及びクロスバー10bは、
図4及び
図5に示すように、上記逆方向に折り曲げられた部分からなる所定幅の細長い板状に設けられた水平部5と、水平部5の幅方向中央から上方に突出するように延び、重ね合わせ部分からなる細長い板状に設けられた垂直部6と、垂直部6の上端部に中空の矩形筒状に設けられた接続部7とを備えている。なお、水平部5の幅方向の両端部には、
図4及び
図5に示すように、上方に折り曲げられた起立部5aが設けられている。
【0034】
メインバー10aの垂直部6には、
図4に示すように、所定間隔で連結係合部8a及び8bが設けられている。ここで、連結係合部8aは、垂直部6に略円弧状に形成された一対のスリットの間を
図4中の手前側に切り起こした部分である。また、連結係合部8bは、垂直部6に略円弧状に形成された一対のスリットの間を
図4中の奥側に切り起こした部分である。
【0035】
クロスバー10bの垂直部6の両端部には、
図5に示すように、上面視でL字状の連結係合片9が固定されている。ここで、クロスバー10bは、その両端部の連結係合片9がメインバー10aの連結係合部8a又は8b内に挿入された状態でメインバー10aに固定されるように構成されている。
【0036】
照明装置40は、
図6に示すように、下地材10(クロスバー10b)の一部に固定されて平面視で矩形状に設けられた本体パネル30と、本体パネル30の下側に着脱可能に平面視で矩形状に設けられた前面パネル35とを備えている。
【0037】
本体パネル30は、
図6~
図8に示すように、水平に設けられたベース部20と、ベース部20から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた4つの光出射部25と、4つの光出射部25の1つに隣接して設けられた電源ユニット29とを備えている。ここで、本体パネル30は、例えば、599.5mm×599.5mmの平面視で正方形状に設けられている。
【0038】
ベース部20は、
図6及び
図14に示すように、例えば、矩形状の板状の鋼板に4つの光出射部25に対応して4つの開口部21を形成し、4つの開口部21の外側に後述するVばね31を挿通させるための4つの挿通孔22を形成したものである。ここで、4つの光出射部25の周囲のベース部20の上面には、
図10~
図14に示すように、下地材10の一部のクロスバー10bの下面がねじNにより固定されている。また、4つの光出射部25の間のベース部20の上面には、
図10、
図11及び
図14に示すように、下地材10の一部のクロスバー10bの下面がねじNにより固定されている。なお、光出射部25の間のベース部20にクロスバー10bを固定するために設けられた複数のねじNは、
図14に示すように、千鳥状に配置されている。また、4つの光出射部25の周囲のベース部20の上面には、
図6に示すように、後述するVばね31の下部を受けるばね受け部27が平面視でコの字状に設けられている。なお、ばね受け部27は、
図6~
図8に示すように、例えば、板状の鋼板にコの字状の切り欠きを形成し、切り欠いた部分の基部を互いに逆方向に直角に2度折り曲げて成形したものであり、その基部がベース部20の上面にカシメ結合等により固定されている。
【0039】
光出射部25は、
図7、
図8及び
図15に示すように、光出射部25の上面の下側表面に設けられた発光基板23と、発光基板23の下側に発光基板23に対向するように設けられた光透過板24とを備えている。また、光出射部25の(発光基板23及び光透過板24以外の)本体は、
図7及び
図8に示すように、例えば、板状の鋼板を折り曲げて、下方が開口するように箱状に成形したものである。ここで、発光基板23は、
図15に示すように、複数のLEDチップCが実装された回路基板であり、各光出射部25の箱上面の下側表面に固定されている。また、発光基板23の下側表面には、
図15に示すように、複数の点状光源として、複数のLEDチップCが配置されている。なお、LEDチップCは、例えば、発光効率が106lm/W程度の明るさを有している。また、光透過板24は、乳白色のアクリル樹脂により形成され、各LEDチップCから出射した光の一部を透過するように構成され、
図14に示すように、各光出射部25の箱内側面に固定されている。なお、発光基板23と光透過板24とは、各天井ボード15の厚さ(例えば、10mm)以上に離間するように設けられている。また、各光出射部25は、ベース部20の対応する開口部21の縁に溶接やカシメ結合等により固定されている。また、各光出射部25の箱内面は、複数のLEDチップ26から出射した光が反射するように、例えば、白色に塗装されている。また、各光出射部25の上面の上側表面には、
図6~
図8、
図10、
図11及び
図15に示すように、例えば、鋼板製の複数のフィン26が直立した状態に互いに平行に延びるように設けられている。また、光透過板24は、
図15に示すように、光透過板24が目に入らなくなる限界線と器具の水平線との角度である遮光角θが24°程度になる位置に設けられている。
【0040】
電源ユニット29は、交流電力を直流電力に変換して、その直流電力を各光出射部25の発光基板23に供給するように設けられている。ここで、電源ユニット29には、発光基板23のLEDチップCから出射される光の明るさを調整する調光回路が設けられていてもよい。なお、本実施形態では、箱状の光出射部25の外部に電源ユニット29が設けられた照明装置40を例示したが、電源ユニット29は、光出射部25の内部に設けられていてもよい。
【0041】
前面パネル35は、4つの光出射部25に対応して4つの開口部を有し、例えば、板状の鋼板により構成されている。ここで、前面パネル35の各開口部には、
図9及び
図15に示すように、上縁部が各光出射部25の光透過板24に接するように設けられた枠状部材34が取り付けられている。また、前面パネル35は、
図9に示すように、その上面に環状の基部が固定されたVばね31を備えている。また、前面パネル35の周端部は、
図12及び
図13に示すように、照明装置40の周囲に配置された天井ボード15の端部と、例えば、3mm程度重なるように設けられている。
【0042】
天井ボード15は、例えば、600mm×600mmの平面視で正方形に設けられている。ここで、天井ボード15は、例えば、ロックウール吸音板や石膏ボード等の無機質繊維板である。また、天井ボード15の上面には、
図10~
図14に示すように、下地材10の他部のクロスバー10b及びメインバー10aの下面がビス止め等により固定されている。
【0043】
上記構成の天井構造50は、例えば、小中学校の普通教室の天井部に施工され、下地材10の一部に取り付けられた9つの照明装置40を点灯させることにより、室内を隈なく照らすことができる。
【0044】
次に、本実施形態の天井構造50を施工する方法について説明する。なお、本実施形態の天井構造50の施工方法は、下地材設置工程、天井ボード固定工程、本体パネル設置工程及び前面パネル装着工程を備える。
【0045】
<下地材設置工程>
まず、建物内の天井スラブの所定位置に埋め込まれた吊りボルトに複数のメインバー10aを固定して、複数のメインバー10aを、例えば、1800mmのピッチで互いに平行に且つ水平に配置する。
【0046】
続いて、メインバー10aの連結係合部8a及び8bにクロスバー10bの連結係合片9を差し込むことにより、互いに隣り合うメインバー10aの間に複数のクロスバー10bを、例えば、300mmのピッチで互いに平行に且つ水平に固定して、複数のメインバー10a及び複数のクロスバー10bからなる下地材10を設置する(
図1参照)。
【0047】
<天井ボード固定工程>
まず、上記下地材設置工程で設置した下地材10の下面の全面に、例えば、600mm×600mmの天井ボード15をビス止めにより固定する。なお、
図2に示すように、天井部の壁Wに面する部分の天井ボード15は、設置する箇所の形状や大きさに合わせて、切断加工されている。
【0048】
続いて、下地材10の下面の全面に固定した天井ボード15のうち、照明装置40を取り付ける部分の9箇所の天井ボード15を取り除く。
【0049】
このようにして、照明装置40を取り付けない下地材10の他部の下面に、照明装置40を取り付ける部分を囲むように複数の天井ボード15が固定される。
【0050】
なお、本実施形態では、下地材10の下面の全面に天井ボード15を貼り付けて一旦仕上げた後に、照明装置40を取り付ける部分の天井ボード15を取り除く施工方法を例示したが、照明装置40を取り付ける部分の天井ボード15は、言うまでもなく、予め貼り付けなくてもよい。
【0051】
<本体パネル設置工程>
上記天井ボード固定工程で天井ボード15を取り除いた9箇所の下地材10の下面に、本体パネル30の4つの光出射部25の周囲におけるベース部20の上面をビス止めによりそれぞれ固定して、下地材10の一部の下面に9つの本体パネル30を設置する。
【0052】
<前面パネル装着工程>
上記本体パネル設置工程で設置した各本体パネル30の挿通孔22を介して各本体パネル30のばね受け部27に前面パネル35のVばね31を引っ掛けることにより、各本体パネル30に前面パネル35を装着する。
【0053】
以上のようにして、本実施形態の天井構造50を施工することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、照明装置40を構成する本体パネル30は、水平に設けられたベース部20と、そのベース部20から上方に突出するように下方に開口する箱状にそれぞれ設けられた4つの光出射部25とを備えている。ここで、各光出射部25は、箱状の各光出射部25の上面の下側表面に設けられた発光基板23と、発光基板23の下側に発光基板23に対向するように設けられた光透過板24とを備えている。そして、本体パネル設置工程において、建物内の天井部に水平に固定された格子状の下地材10の下面に4つの光出射部25の周囲のベース部20の上面を固定する。これにより、本体パネル30を構成する箱状の4つの光出射部25は、下地材10の格子間に配置するので、各光出射部25の箱上面の下側表面に設けられた発光基板23を下地材10よりも上方に配置することができる。さらに、複数のLEDチップCが基板下側表面に配置された発光基板23の下側には、例えば、乳白色の光透過板24が設けられているので、人が見挙げた際のLEDチップCによる眩しさを抑制することができる。また、格子状に設けられた下地材10を切断することなく、照明装置40が取り付けられるので、下地材10の剛性を確保することができ、耐震性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、本体パネル設置工程の後に、本体パネル30に前面パネル35を装着する前面パネル装着工程を備えているので、本体パネル30の下面に露出する配線等が前面パネル35により遮蔽され、照明装置40の見映えをよくすることができる。
【0056】
また、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、天井ボード固定工程において、照明装置40を取り付けない下地材10の他部の下面に、取り付ける予定の照明装置40を囲むように複数の天井ボード15を固定した後に、本体パネル設置工程において、下地材10の一部の下面に、4つの光出射部25の周囲のベース部20の上面を固定して、本体パネル30を設置する。これにより、下地材10の他部の下面に複数の天井ボード15を固定する際には、下地材10の一部の下面に本体パネル30のベース部20がまだ固定されていないので、施工中の照明装置40(本体パネル30)の破損を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、天井ボード固定工程では、格子状の下地材10の下面に、複数の天井ボード15をマトリクス状に固定した後に、照明装置40を取り付ける部分に対応する天井ボード15を取り除くので、例えば、別の施工業者によって下地材10の下面の全面に複数の天井ボード15がマトリクス状に固定された天井構造であっても、照明装置40を取り付ける施工を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、前面パネル35の周端部が照明装置40の周囲に配置された天井ボード15の端部と重なるように設けられているので、照明装置40の周囲に配置された天井ボード15との隙間が見えなくなり、見映えをよくすることができる。
【0059】
また、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、発光基板23と光透過板24とが各天井ボード15の厚さ以上に離間するので、人が見挙げた際のLEDチップCによる眩しさをいっそう抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、下地材15の一部は、4つの光出射部25の周囲のベース部20の上面に固定されているだけでなく、4つの光出射部の間のベース部20の上面に固定されているので、下地材10に本体パネル30を確実に固定することができ、耐震性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態の天井構造50及びその施工方法によれば、4つの光出射部25の1つに隣接して、各光出射部25の発光基板23に電力を供給する電源ユニット29が設けられているので、交流電力を直流電力に変換して供給する電源ユニット29を一箇所に集約することができる。
【0062】
《その他の実施形態》
上記第1の実施形態では、2行2列の4個の光出射部を有する照明装置を備えた天井構造を例示したが、本発明は、m行n列(m、nは自然数)のm×n個の複数の光出射部を有する照明装置を備えた天井構造にも適用することができる。
【0063】
上記第1の実施形態では、下地材が水平に固定された天井構造を例示したが、本発明は、下地材が略水平に又は傾斜して固定された天井構造にも適用することができる。
【0064】
上記第1の実施形態では、天井スラブに下地材が吊り下げられた天井構造を例示したが、本発明は、天井部の壁に下地材が固定された天井構造にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、人が見挙げた際の点状光源による眩しさを抑制することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0066】
C LEDチップ(点状光源)
10 下地材
10a メインバー(下地材)
10b クロスバー(下地材)
15 天井ボード
20 ベース部
23 発光基板
24 光透過板
25 光出射部
26 フィン
29 電源ユニット
30 本体パネル
35 前面パネル
37 パッキン材
40 照明装置
50 天井構造