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特許7446588足操作式の内締まり錠の操作体及び突出体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】足操作式の内締まり錠の操作体及び突出体
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/06 20060101AFI20240304BHJP
   E05C 3/06 20060101ALI20240304BHJP
   E05C 3/08 20060101ALI20240304BHJP
   E05C 3/10 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
E05C1/06 A
E05C1/06 B
E05C3/06
E05C3/08
E05C3/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021193715
(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公開番号】P2023080394
(43)【公開日】2023-06-09
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】522243473
【氏名又は名称】名古屋HKプランニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137899
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 広文
(72)【発明者】
【氏名】堀部 泰隆
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-131586(JP,A)
【文献】実開平4-82180(JP,U)
【文献】特開2021-165519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記操作体は、前記内締まり錠の前記足による前記面に沿った操作を補助し、
前記使用者が操作のために前記足で接触する、前記操作体に備わる操作面おいて、
前記操作面が、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体。
【請求項2】
建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記操作体は、前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁に開口部を穿設してその前記開口部から膨出した押釦であり、前記使用者が前記足で前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁向かって押圧する前記押釦の表面を操作面とし、
前記操作面である前記押釦の表面の上端が、前記開口部の上端又は前記開口部の枠体の開口の上端と略一致した水準にあると同時に、前記押釦の表面の全部又は上端から続く一部が、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した面で形成される押釦であることを特徴とした、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体。
【請求項3】
建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記操作体は、前記使用者が前記足で踏み下げる可倒ペダルあり、
前記可倒ペダルは、前記使用者が、操作のために前記足で接触する前記可倒ペダルの踏み面が床面に対して圧縮方向に縮み代を有する弾性体で支えられた略水平な状態と、前記使用者の踏力が加わることによって、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態との間で回転支軸を中心に回動し、
前記可倒ペダルは、傾斜した状態が進むと支持アームのストッパーに接触し、前記可倒ペダル全体が前記面に沿って鉛直下方へ変位することを特徴とした、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体。
【請求項4】
建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
平面又は曲面で構成される前記操作体の操作面が、凸部を有する面、又は凹部を有する面、又は網目を有する面、又は空隙を有する面、又は線状若しくは点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面のうち、少なくとも一つを具備することを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体。
【請求項5】
建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記使用者が操作のために前記足で接触する操作面とは異なる前記操作体の突出部において、
前記突出部のうち、前記操作体の背面が前記操作体の突設された前記面に近接すると共に前記室内の天井に露出する上面部が、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体。
【請求項6】
建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁に開口部を穿設してその前記開口部から膨出した押釦であり、前記押釦の側面の全部又は一部が枠体で囲まれるとともに前記押釦が前記枠体に収容され、前記使用者が前記足で前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁向かって押圧する前記押釦の表面を操作面とする操作体において、
前記使用者が前記足で前記操作面を押圧して変位する前記押釦の摺動部とは異なる前記枠体の前記室内の天井に露出する上面が、前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体。
【請求項7】
建築物に備わる可動ドアに設置された足操作式の内締まり錠の操作体が突出するドアパネルの面上に固設する突出体であって、
前記突出体は、前記ドアパネルの前記面上に複数個の前記操作体を並設する場合、隣接する前記操作体の間に固設されるものであり、
前記突出体の上端を前記操作体の操作面又は上端と略同位又は上位、及び/又は、前記突出体の突端を前記操作体の突端と略同位又は前位、であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠に付設される突出体。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に備わる可動ドアの施解錠を行う際に使用者が足を使って操作する内締まり錠、その中でも従来のツマミ又はサムターンに準ずる部材である操作体、また、建築物に備わる可動ドアに設置された足操作式の内締まり錠の操作体が突出するドアパネルの面上に固設する突出体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に備わる可動ドアには、必要に応じて錠が設置されており、その錠について施解錠することが可能か否かの違いによる本締まり或いは仮締まり、また、施解錠する側が室内からか室外からかの違いによる内締まり錠或いは外締まり錠、のような区分がある。ここでは、本締まりが可能な内締まり錠を念頭に置いて、一般的に手指を使って操作するツマミやサムターンに代わり、使用者が足を使って施解錠の操作を行う「操作体」と言うものを対象とする。
【0003】
通常、人が可動ドアに設置された錠を操作する場合、鍵の使用も含めて手指を使うことがほとんどである。一般的に人が手指で出すことのできる力は、それほど強くないので、錠を操作するツマミやサムターンも特段に堅牢な造りを施しているようには見受けられない。しかし、錠というものの性質上、素手で破壊できるほど脆弱ではなく、必要にして十分な強度を持たされて設計、製造及び施工されているのが普通である。
【0004】
ところで、その手指で操作する錠を人の足で操作しようと考える場合、錠自体は言うに及ばず、操作する対象物にも特段の堅牢さが要求される。なぜなら、足は、手指の何倍もの力を出すことができる上に微妙な力加減が難しいからである。足による操作で強い力を加えられた錠は、やがて故障、或いは破損に至る可能性が高くなる。当然、そのような事態を想定して可能な限り頑丈な設計にしておくことが発想される訳であるが、強力な足による操作は、錠のみならずドア本体や蝶番などの連結具にまで影響を与えるため、物理的にも経済的にも大掛かりな対応が迫られることになってしまう。そこで、別の視点に立った対策を模索することにする。
【0005】
まず、過去の特許・実用新案の文献より、足を使って錠を操作する事例として特許文献1がある。この特許は、ドア面に設けたスライド機構部とドアノブをワイヤー等で接続して、上下スライド機構部の踏み板を足で昇降させてドアノブに触れることなくドアの開閉を行うものである。従来のドアノブに付加する装置であって、仮締まりのドアに適用される模様である。更に、踏み板を上部開放有底の箱体とすることで犬猫兼用の踏み板式ドア開閉装置を提供しようとする特許である。
【0006】
同様に、開き戸のドアノブより下に足を使うドア開閉装置を取り付け、手で接触することなく開き戸を開閉する事例が特許文献2である。こちらも特許文献1と同じく、従来のドアノブに付加する装置であって、仮締まりのドアに適用されるようである。開き戸のドアノブの回転軸に離隔部と呼んでいる腕のようなものを装着し、ドアノブの下方に車輪部を底部に備える足踏み板を設置し、線状部材で連結して操作を行うものである。この特許の注目すべき点は、足踏み板を過剰に押し下げても車輪部が床に接地して受け止め、ドア開閉装置を破損させないように保護し、更に、その押し下げられた足踏み板がそのままドアの開閉動作につながるところである。装置の保護と実用上の機能を両立する優れた特許と言うことができる。
【文献】特開2010―270578号公報
【文献】特許第6722968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が対象とする足操作式の内締まり錠は、特許文献1及び特許文献2が対象とする仮締まりの錠とは同じ種類ではない。内締まり錠とは、施錠することを目的とする本締まりであって、特許文献1及び特許文献2の中のドアノブを回転させて開閉する錠、即ちラッチボルト等の施錠することができない仮締まりの錠と機能が異なる。しかしながら、開き戸などの可動ドアに取付け、且つ足を使って操作を行うという共通点があり、本発明を説明する上で非常に示唆に富んだ特許である為、参考とした。
【0008】
まず、特許文献1は、ドアに設置された仮締まりの錠のノブをドア下部の踏み板によって解錠しようとするものであり、人のみならず犬猫までも視野に入れて、広く利便性を追求する特許である。しかし、ここで提案されているスライド機構部に備わる踏み板に対して、実際の使用における配慮が乏しいと言わざるを得ない。なぜなら、ドア面の、それも最下位置でも空中にある踏み板を人が足で踏み下げる場合、その力が踏み板を始めとする装置全体やドア本体を支える金具にまで影響を及ぼすからである。緩衝スプリングをワイヤーの途中に仕込んでドアノブへの衝撃を緩和するだけでは不十分である。仮に犬猫のみであれば問題にならないであろうが、ドア面にスライド機構部及び踏み板が設置されている以上、スライドする下限まで達した踏み板に対して更に人が過剰な力を加えれば、この犬猫兼用踏み板式ドア開閉装置の破損のみならずドア本体にまで悪影響を及ぼし兼ねない。
【0009】
また、特許文献2では、ドアノブと線材を介して連結された足踏み板によって操作する仕組みは基本的に特許文献1と変わりないが、特許文献1で言及されていない破損対策や仮締まりを解錠した後のドアの開閉動作にまで配慮された特許となっている。過度な力を足踏み板に加えられてもその底部に設けられた車輪が床面に接地して受け止め、足踏み板の面上に設けられた突起部に足裏が引っ掛ってドアを自在に開閉できるというものである。ただ、足踏み板と車輪がドア下部の足元付近の位置に、それもドアの表裏両側へ突出して設置されている状況は、通常使用において人が足踏み板や車輪に足を引っ掛けて負傷する場合が想像される。従って、突出の程度、加えて突出物の形状についても注意深く検討しなければならないことを示唆するものである。また、この文献の実施形態として示された説明図のような、車輪や線材などが剥き出しで見えてしまう状態は、ドアの美観上、好ましくないと考える向きも少なからずいるはずである。可能であれば、このドア開閉装置がドアと調和のとれたデザインであって欲しいところであるが、機能との両立が難しいことを物語っている。
【0010】
前記の特許文献1及び特許文献2に鑑みれば、安全やデザインに配慮しつつも、本発明の足操作式の内締まり錠の操作体に対する最も優先されるべき課題は、如何に破損し難くできるかという点である。従来、手指で操作してきた内締まり錠に対して、足という手指よりも何倍も大きな力を出すことができるが繊細な動作が難しい身体の部位を使って操作するためには、まず、足で直接触れる操作体が壊れ難いことが必要な条件になる。
【0011】
本発明の目的は、極力、破損され難い操作体を備え、安定して使用することができる足操作式の内締まり錠を提供することであるが、この足操作式の内締まり錠の操作体を保護する手段を以下に示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記操作体は、前記内締まり錠の前記足による前記面に沿った操作を補助し、
前記使用者が操作のために前記足で接触する、前記操作体に備わる操作面おいて、
前記操作面が、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体である。
【0013】
請求項2の発明は、建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記操作体は、前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁に開口部を穿設してその前記開口部から膨出した押釦であり、前記使用者が前記足で前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁向かって押圧する前記押釦の表面を操作面とし、
前記操作面である前記押釦の表面の上端が、前記開口部の上端又は前記開口部の枠体の開口の上端と略一致した水準にあると同時に、前記押釦の表面の全部又は上端から続く一部が、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した面で形成される押釦であることを特徴とした、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体である。
【0014】
請求項3の発明は、建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記操作体は、前記使用者が前記足で踏み下げる可倒ペダルあり、
前記可倒ペダルは、前記使用者が、操作のために前記足で接触する前記可倒ペダルの踏み面が床面に対して圧縮方向に縮み代を有する弾性体で支えられた略水平な状態と、前記使用者の踏力が加わることによって、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態との間で回転支軸を中心に回動し、
前記可倒ペダルは、傾斜した状態が進むと支持アームのストッパーに接触し、前記可倒ペダル全体が前記面に沿って鉛直下方へ変位することを特徴とした、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体である。
【0015】
請求項4の発明は、建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
平面又は曲面で構成される前記操作体の操作面が、凸部を有する面、又は凹部を有する面、又は網目を有する面、又は空隙を有する面、又は線状若しくは点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面のうち、少なくとも一つを具備することを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体である。
【0016】
請求項5の発明は、建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記使用者が操作のために前記足で接触する操作面とは異なる前記操作体の突出部において、
前記突出部のうち、前記操作体の背面が前記操作体の突設された前記面に近接すると共に前記室内の天井に露出する上面部が、前記操作体の突設された前記面から垂直に離れるに従って前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体である。
【0017】
請求項6の発明は、建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者が足を使って操作をする、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面から室内側へ突出した操作体であって、
前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁に開口部を穿設してその前記開口部から膨出した押釦であり、前記押釦の側面の全部又は一部が枠体で囲まれるとともに前記押釦が前記枠体に収容され、前記使用者が前記足で前記ドアパネル又は前記戸先パネル又は前記固定壁向かって押圧する前記押釦の表面を操作面とする操作体において、
前記使用者が前記足で前記操作面を押圧して変位する前記押釦の摺動部とは異なる前記枠体の前記室内の天井に露出する上面が、前記室内の床面に近づくように下がり傾斜した状態であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠の錠機構に連係した操作体である。

【0018】
請求項7の発明は、建築物に備わる可動ドアに設置された足操作式の内締まり錠の操作体が突出するドアパネルの面上に固設する突出体であって、
前記突出体は、前記ドアパネルの前記面上に複数個の前記操作体を並設する場合、隣接する前記操作体の間に固設されるものであり、
前記突出体の上端を前記操作体の操作面又は上端と略同位又は上位、及び/又は、前記突出体の突端を前記操作体の突端と略同位又は前位、であることを特徴とする、足操作式の内締まり錠に付設される突出体である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、本発明の足操作式の内締まり錠の操作体において、使用者の足と操作体が接触する操作面が前記操作体の突設した面から垂直に離れるに従って床面に近づくように下がり傾斜した状態であることにより、使用者は、前記操作面に対して必要以上に踏力を加えようとしても前記傾斜で分散され、その全ての踏力を前記操作面に加えることができない。また、前記操作面が傾斜していることにより、使用者は、心理的に接触した足が滑り落ちるのではないかと危惧して前記操作面を必要以上に強い力で踏み下げようとしない。従って、前記操作体は、高い確度で破損を免れることができる。更に、前記操作体の上部の張り出しが減少して安全上の配慮にもつながる。
【0020】
請求項2の発明によれば、本発明の足操作式の内締まり錠が備える操作体の操作面である押釦の表面について、前記押釦の表面の上端が、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁に穿設した開口部の上端又は後述する枠体の開口の上端と略一致した状態であると共に、前記押釦の表面の全部又は上部のみが、前記操作体の突設した前記面から垂直に離れるに従って室内の床面に近づくように下がり傾斜した平面又は曲面で形成されることにより、前記押釦の表面の上端がほとんど存在しなくなる。これにより使用者は、前記押釦の上端の縁に足を掛けることができないので、故意に、或いは誤って上方から踏力を加えて押釦を破損することが困難になる。従って、前記操作体である押釦は、高い確度で破損を免れることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、本発明の足操作式の内締まり錠の操作体において、前記操作体が可倒ペダルであることにより、使用者は、操作前の水平状態のペダルを見知して、既に傾斜した状態のペダルよりも、踏み下げるという操作方法をより直感的に認識することができ、より円滑に動作に移ることができる。次に、操作面であるペダルが下方に倒れて、前記操作体が突設された面から垂直に離れるに従って床面に近づくように下がり傾斜することにより、使用者は、前記ペダルに対して必要以上に踏力を加えようとしても前記傾斜で力が分散され、その全ての踏力を前記操作面に加えることができない。従って、前記操作体は、錠操作に対する認知の容易さを確保しつつ、高い確度で破損を免れることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、本発明の足操作式の内締まり錠の操作体において、平面又は曲面で構成される前記操作体の操作面が、凸部を有する面、又は凹部を有する面、又は網目を有する面、又は空隙を有する面、又は線状若しくは点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面のうち、少なくとも一つを具備するという特徴を備えることにより、使用者の足と前記操作面の間の摩擦状態を適切に調整することが可能である。本発明の課題である破損され難い操作体とするために前記操作面の傾斜の度合いを高める必要がある一方、滑り落ち易くなった前記操作面の表面に前記特徴を付加することによって、必要な操作性を確保しつつ、破損され難い操作体を提供することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、本発明の足操作式の内締まり錠の操作体が備える、操作面とは異なる前記操作体の突出部において、室内の天井に面する箇所、即ち室内の天井に露出する上面部が、前記操作体の突設される面から垂直に離れるに従って床面に近づくように下がり傾斜することにより、使用者は、前記上面部に対して故意に、或いは誤って踏力を加えようとしても前記傾斜で分散され、その全ての踏力を前記上面部に加えることができない。また、ドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面に面する箇所、即ち操作体の背面が、前記操作体の突設するドアパネル又は戸先パネル又は固定壁の面に近接することで、前記上面部の傾斜と相まって、使用者は、前記上面部に対して故意に、或いは誤って前記上面部に足を掛けることができない。更に、前記上面部が傾斜していることにより、使用者は、心理的に、掛けた足が滑り落ちることを危惧して前記上面部に無理に足を掛けようとは思わなくなる。従って、前記操作体は、高い確度で破損を免れることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、本発明の足操作式の内締まり錠がドアパネル又は戸先パネル又は固定壁に向かって押圧する押釦からなる操作体を有する場合、使用者が足で押圧することで変位する押釦の摺動部とは異なる枠体の室内の天井に面する箇所、即ち天井に露出する上面が、前記操作体の突設される面から垂直に離れるに従って床面に近づくように下がり傾斜することにより、使用者は、前記操作体の固設された前記突出部に足の縁を掛けることができないので、故意に、或いは誤って上方から踏力を加えて前記押釦の摺動部及びそれとは異なる前記突出部からなる操作体を破損することが困難になる。従って、前記操作体は、高い確度で破損を免れることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、足操作式の内締まり錠の操作体が複数、ドアパネルの面上に並設される場合、隣接する前記操作体の間の位置に突出体が固設されることにより、使用者は、故意に複数の操作体を同時に足で操作しようとしても、前記突出体が障害となって同時に操作することができない。従って、前記操作体と連係された錠機構に対して同時に逆の力が加えられることで発生する故障や内部の破損を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】開き戸式ドアに適用した足操作式の内締まり錠の概念図である。
図2】足操作式の内締まり錠における操作体の斜視図である。(1)水平な操作面とする操作体(2)傾斜した操作面とする操作体
図3】傾斜したペダルを操作面とする操作体の概念図である。(a)斜視図 (b)側面図
図4】回転塊の表面を操作面とする操作体の概念図である。(1) 半球状の回転塊(a)斜視図 (b)側面図(2)正八角錐台状の回転塊(a)斜視図 (b)側面図
図5】押釦からなる操作体の図である。(1) ドアパネル面から膨出した直方体状の押釦(2) 枠体付き押釦(a)動作させていない状態の斜視図(b)押釦の上部側面を足の縁で踏み下げようとする様子の側面図(3)押釦の表面の最上部と枠体の表面が略一致し、押釦の表面全体が 傾斜した平面である押釦(a)斜視図 (b)側面図(4)押釦の表面の最上部と枠体の表面が略一致し、押釦上部の表面のみ湾曲して傾斜した押釦(a)斜視図 (b)側面図 (5)押釦の表面の最上部と枠体の表面とが略一致した状態の拡大した側面図 (a)押釦の表面の最上部と枠体の表面が面一の状態 (b)押釦の表面の最上部が枠体の表面より突出した状態 (c)押釦の表面の最上部が枠体の表面よりドアパネル側へ入り込んだ状態
図6】シーソー型押釦の操作体の図である。(1)横配置したシーソー型押釦(a)斜視図 (b)側面図(2)縦配置したシーソー型押釦(a)斜視図 (b)側面図
図7】可倒ペダルからなる操作体の側面図である。(a)踏力を加えていない状態(b)踏み下げ開始直後
図8】傾斜した操作面の代表的な形態(1) 多数の空隙を有する平面(2) 線状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面(3) 点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想的な面
図9】1枚の板状体からなる操作体の概念図である。(a)斜視図 (b)側面図
図10】支持アームを介してドアパネル表面から離れて設置された一枚の板状体からなる操作体の頂上部を足で踏み下げようとする様子の側面図
図11】回転軸から張り出した1枚の板状体からなる操作体である。 (1)足で矩形の板状体に働き掛ける状況の概念図(2例を同時描写)(2)矩形の板状体(a)平面図 (b)斜視図
図12】短縮化した回転軸から張り出した1枚の板状体からなる操作体である。(1)直角三角形状の板状体(a)平面図 (b)斜視図(2)矩形の上半分を四分円のような形状とした板状体(a)平面図 (b)斜視図
図13】枠体を突出させて押釦の側面を保護した押釦からなる操作体の図である。(a)動作させていない状態の斜視図(b)押釦の枠体の上部側面を足の縁で踏み下げようとする様子の側面図
図14】傾斜化された枠体を有する押釦からなる操作体の図である。(1) 押釦の側面を保護する枠体の外側の角を落として傾斜化した押釦(a)斜視図(b)側面図(2)足で図14(1)の押釦を押し込んだ状況を示した概念図
図15】枠体の表面と押釦の表面を一緒に傾斜化した押釦からなる操作体の図である。(1) 枠体の表面の最上部とドアパネルの表面が略一致し、枠体の表面全体及び押釦の表面が傾斜化した押釦(a)斜視図(b)側面図(2)足で図15(1)の押釦を押し込んだ状況を示した概念図
図16】ドアパネル面上の複数の操作体と共に設置した突出体の図である。 (1)2本のペダル式の操作体の間に配置した丸棒状の突出体(a)斜視図 (b)側面図(2)2個の押釦の操作体の間に配置した特殊形状の突出体(a)斜視図 (b)側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、建築物に備わる可動ドアの室内側に設置した内締まり錠を使用者7が足13を使って操作する、ドアパネル1又は戸先パネル2又は固定壁(不図示)の面から室内側INへ突出した操作体10であり、また、建築物に備わる可動ドアに設置された足操作式の内締まり錠の操作体10が突出するドアパネル1の面上に固設する突出体40である。以下、本発明を実施するための形態として例を挙げて説明する。
【0028】
図1は、足操作式の内締まり錠を開き戸式のドアパネル1の室内側INの下部に埋設した概念図である。戸尻パネル3に蝶番5で吊るされた内開きのドアパネル1は、その戸先側が戸先パネル2の先端に略合致して閉扉する。この図は、使用者7がドアパネル1に付設された抗菌パネル6を肘で押しつつ、足操作式の内締まり錠の操作体10の水平な操作面11に片方の足13で接触し、操作体10を水平に動かすことでデッドボルト8を突出させて施錠の準備をしている様子を示している。一般的な手指で操作する内締まり錠とは違う、足操作式の内締まり錠の操作を示した例である。なお、図1の内締まり錠は、所謂、彫り込み型と呼ばれるドアパネル1内部に埋設された錠であるが、ドアパネル1の室内側INの面に着設された、面付け型の内締まり錠であっても構わない。
【0029】
既に背景技術で述べた通り、人の足13という、微妙な力加減と複雑な動作が苦手な身体の部位を使って操作を行うことから、足操作式の内締まり錠は、一般的な手指で操作する内締まり錠よりも堅牢に製作される必要がある。しかしながら、ただ足操作式の内締まり錠や可動ドア自体の強度だけを追求することは、物理的にも費用的にも限りがある。そこで、それらにある一定の強化を施す一方、使用者7が足操作式の内締まり錠に加えようとする踏力を弱める、又は必要以上に加え難くするような工夫を考えることにする。
【0030】
再び図1に戻って考察すれば、操作面11が水平な操作体10に水平方向へ滑動する片方の足13を掛けて操作する状況にある使用者7は、その気になれば、その片方の足13に全体重を掛けて操作体10に乗ることが可能である。そうなれば、操作体10の後述する支持アーム25は勿論、ドアパネル1を吊るす蝶番5にも無理な力が加わることになる。それが繰り返されたり、もっと体重の重い使用者7が乗ったりすれば、操作体10の支持アーム25が根元から曲がって動かなくなるなど、この内締まり錠が破損してしまうことになる。当然、ドアパネル1にも悪影響が及ぶことは明らかである。
【0031】
そこで、本発明は、足操作式の内締まり錠の操作体10の操作面11に傾斜を与え、使用者7の踏力の分散を図ることにする。
【0032】
図2(1)は、図1の操作体10を示したものである。その操作面11は、水平な状態であり、両端には滑止垂直板14が設けられて片方の足13による水平方向、即ち左右への操作を補助する。これに対して図2(2)は、操作面11に傾斜角θを与えたものである。操作面11が、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した状態となっている。但し、この傾斜角θ、即ち床面Fと操作面11の為す角度の範囲は、0°<θ<90°とする。使用者7は、片方の足13を傾斜した操作面11に乗せて操作体10を左右いずれかの方向へ操作を行うことになるが、全体重を掛けて操作体10に乗ろうと試みても傾斜で滑り落ちてしまう。但し、普通に操作する場合、片方の足13が操作面11から外れないように操作面11の表面状態に応じた適切な傾斜角θが選定されるものとする。ここで、操作体10の突設された面とは、ドアパネル1の室内側INの面、戸先パネル2の室内側INの面、引き戸タイプのドアにおいて戸先パネル2に相当する固定壁の室内側INの面のいずれかであるとする。
【0033】
また、外見的に操作面11が傾斜していることにより、使用者7に操作面11に掛けている片方の足13が滑り落ちることを想像させ、必要以上に強い力で踏み付けようとする意識を削ぐという心理的効果も期待される。
【0034】
更に、操作面11が傾斜することで操作体10の上部の角張った張り出しが角丸になり、使用者7が足13を引っ掛けて負傷すること等への安全対策にもつながる。また、蛇足ながら、操作体10の下部、或いは底部へも同様な理由で角丸のような処理が為されることが望ましい。
【0035】
図3は、足操作式の内締まり錠の操作体10が傾斜ペダル15である例を示したものであり、こちらも操作面11が、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した状態となっている。図3(a)は、ドアパネル1の戸先側下部に突設された傾斜ペダル15であり、図示されたように下方へ傾斜している状態を表した斜視図である。図3(b)は、その右からの側面図であり、操作面11である傾斜ペダル15が操作面11と仮想線との角度(傾斜角θ)で傾斜している状態を表している。傾斜ペダル15の表面には、滑止凹部16が掘られており適度な摩擦で傾斜ペダル15の踏み下げ動作を補助する。一方、必要以上に強い踏力を加えれば傾斜ペダル15から鉛直下方へ踏み下げる片方の足13が滑って外れ、結果としてこの操作体10を破損から保護することができる。
【0036】
勿論、図3の操作体10である傾斜ペダル15は、可動ドアの錠機構に連係されて、足操作によって施解錠する為の入力部位であることは言うまでもない。
【0037】
図4は、ドアパネル1の戸先側下部に取り付けられた回転塊17及び回転軸18からなる操作体10の例である。使用者7は、ドアパネル1から垂直に突出した回転軸18を中心に回転する回転塊17に足13で接触して転がし、回転塊17を回転させて錠の操作を行う。図4(1)の(a)は、室内側INに突出した半球状の回転塊17の斜視図であり、その円形の底面が、ドアパネル1に着設された台座12の上で回転軸18を中心に回転する。この例においても操作面11に相当する略半球の外周面が、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した状態となっている。図4(1)の(b)の側面図等に示すように、操作面11に相当する略半球の外周面において、略半球の尖塔部から底面との境界にかけて、放射方向へ球面に沿って小さく突出した滑止垂直板14が、底面との境界に近い部分には、分散配置された小さな滑止凸部20が、それぞれ設置されている。使用者7が回転塊17を転がす場合、前記の滑止垂直板14や滑止凸部20が適度な摩擦を発生して足13による操作を補助するが、回転塊17に乗って必要以上に強い踏力を上方から加えようとすれば、球面と前記滑止垂直板14によって足13が回転塊17から前記滑止垂直板14の長手方向に滑り落ちてしまい、結果としてこの操作体10が破損を免れることになる。
【0038】
同様に、図4(2)の(a)は、室内側INに突出した正八角錐台の形状をした回転塊17の斜視図であり、下底の正八角形がドアパネル1に着設された台座12の上で回転軸18を中心に回転する。この例においても操作面11に相当する正八角錐台の各面が、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した状態となっている。側面の各角部が回転軸18を中心に転がす回転塊17の操作を補助する一方、図4(2)の(b)の側面図に示すように、この回転塊17に乗ろうとすれば下底から上底にかけての各側面の傾斜によって足13が滑って外れ、やはりこの操作体10が破損を免れることになる。なお、ここでは正八角錐台の形状で説明したが、本発明の趣旨に合致すれば特に形状は問わないため、例えば三角錐台、四角錐台、五角錐台、六角錐台といった多角錐台、円錐台等であってもよい。
【0039】
勿論、図4の回転塊17及び回転軸18からなる操作体10は、いずれも可動ドアの錠機構に連係され、足操作によって施解錠する為の入力部位であることは言うまでもない。
【0040】
図5は、ドアパネル1面の戸先側の下部に設置された足操作による押釦35の操作体10がドアパネル1から突出した様子を示したものである。押釦35は、使用者7が片方の足13でドアパネル1又は戸先パネル2又は固定壁に向かって押圧する押釦の表面37を操作面11とする操作体10である。図5(1)で図示したように、ドアパネル1又は戸先パネル2又は固定壁の表面に開口部4を穿設して、この開口部4内をそのまま摺動する押釦35を設置することも可能であるが、押釦35という部材としての構成や施工し易さ等を考慮して図5(2)以降は、枠体36付きの押釦35、即ち押釦35の側面(上部側面38、下部側面、左部側面、右部側面)の全部又は一部が枠体36で囲まれると共に押釦35が枠体36に収容される構成を中心に説明を進める。この枠体36もドアパネル1から突出するが、使用者7が足の縁を掛けることができない程度の突出量で、概ね、数ミリ程度である。
【0041】
図5(2)は、枠体36付きの押釦35が枠体36の開口から膨出した状態を表しており、(a)は、斜視図、(b)は、側面図である。使用者7は、通常、足13で押釦の表面37に触れて枠体36から膨出している押釦35をドアパネル1側等へ押し込んで操作を行う。しかしながら、この時、期待される操作とは異なった足13の動作をする使用者7が存在することを想定しなければならない。動機は定かでないが、図5(2)の(b)中の片方の足13のように、突出状態にある押釦の上部側面38に足裏の縁を掛けて押釦35の踏み下げを試みるのである。当然、押釦の上部側面38に抉って捲るような力を加えれば、押釦35がもげて破損してしまうことは容易に想像ができる。押釦35は、構造上、枠体36に沿って摺動する独立した小部材であるため、部材自体の補強が難しい。
【0042】
なお、本例では、押釦35の形態を直方体としているが、摺動する押釦の上部側面38に片方の足13の縁を掛けられるだけの突出があれば、前記の破損の危機に晒される対象となり得るので、押釦35の形状は、直方体のみに限定されるものではなく、円柱やその他の多角柱などであっても差し支えない。
【0043】
この課題に対して、押釦35の形状を見直すという簡易な方法で解決を図ろうとした例が図5(3)と図5(4)であり、それぞれ(a)が斜視図、(b)が側面図を示している。
【0044】
図5(3)は、押釦の表面37の上端37aを押釦35の枠体36の開口の上端36aと略一致した状態にして上部側面38を無くし、押釦の表面37を含む全体を下方に行くに従って次第に大きくなるように突出させ、平面状の押釦の表面37を傾斜させたものである。従って、図5(3)の押釦35は、操作面11である押釦の表面37の上端37aが枠体36の開口の上端36aと略一致した水準にあると同時に、押釦の表面37の全体が、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した面で形成されている。この押釦35は、最上部付近の回転支軸19を中心に押釦35が回動して錠操作の機能を果たす一方、使用者7の通常ではない動作による破損から保護する役目も果たしている。
【0045】
図5(4)は、図5(2)の一般的な直方体状の押釦35が作動させていない状態で膨出している部分の上部だけを角丸に削り落として傾斜化し、同様に、押釦の表面37の上端37aを押釦35の枠体36の開口の上端36aと略一致の状態にして押釦の上部側面38を無くしたものである。従って、図5(4)の押釦35は、操作面11である押釦の表面37の上端37aが枠体36の開口の上端36aと略一致した水準にあると同時に、押釦の表面37の上端37aから続く一部(上部)が、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した面で形成されている。この形状の押釦35であっても前記で想定した破損から保護するには十分である。なお、図1のような枠体36を備えない構成、即ちドアパネル1又は戸先パネル2又は固定壁の表面に穿設した開口部4内においてそのまま摺動する押釦35を設置する構成の場合、押釦の表面37の上端37aが開口部4の上端4aと略一致した水準にあることとなる。また、図5(4)も図5(3)と同様に、回転支軸19を中心に押釦35が回動する機能を採用している。
【0046】
図5(5)は、押釦の表面37の上端37aと押釦35の枠体36の開口の上端36aとが略一致した状態を詳細に区分けしたもので、図5(3)の(b)の一部分〔補注:点線円Aの要部〕を拡大した図である。この部分の一致状態が、押釦の上部側面38に使用者7の片方の足13の縁が掛るか否か、即ち押釦35が破損の危機に晒されるか否かに関係してくる。
【0047】
図5(5)の(a)は、押釦の表面37の上端37aと押釦35の枠体36の開口の上端36aとが略一致した状態の中でも、所謂、面一の状態で両者がぴったりと一致した理想的な状態である。当然、使用者7が片方の足13の縁を掛ける余地はないのでこの操作体10が破損を免れることは言うまでもない。
【0048】
図5(5)の(b)は、前記の略一致した状態の中で、押釦の表面37の上端37aが押釦35の枠体36の開口の上端36aより突出した状態のものである。この場合、その突出の程度がドアパネル1の面から数ミリ程度であれば問題ないが、それ以上に突出して使用者7が片方の足13の縁を掛けられてしまうのであれば、設計を見直して突出量を縮める必要がある。その突出量に関しても枠体36のそれと同じく、概ね、数ミリ以内が許容範囲と思われる。
【0049】
図5(5)の(c)は、前記の略一致した状態の中で、押釦の表面37の上端37aが押釦35の枠体36の開口の上端36aよりドアパネル1の側へ窪んだ状態のものである。このような状態であれば、図5(5)の(a)と同様、使用者7は、片方の足13の縁を掛ける余地はなく、結果として操作体10である押釦35は、破損を免れることができる。
【0050】
また、その他の押釦35の形式としてシーソー型押釦39も本発明の足操作式の内締まり錠の操作体10として活用できると考えられ、図6がその例である。
【0051】
図6(1)は、シーソー型押釦39を設置するドアパネル1等の面に対して横に配置した図である。左右いずれかの起立した押釦35を押圧することで錠操作を行うもので、押圧により一方が押し込まれれば、設置する面に内在する回転支軸19(不図示)を介して、もう一方が起立する。この図6(1)においては、破損に対する備えとしてシーソー型押釦39の押釦35の上部側面38〔補注:図6(1)の(a)中の斜め格子模様の部分である傾斜面22〕が傾斜化されている。従って、使用者7によって片方の足13の縁を掛けて踏力を加えられることもないので、結果として操作体10であるシーソー型押釦39は、破損を免れることになる。
【0052】
図6(2)は、シーソー型押釦39を設置するドアパネル1等の面に対して縦に配置した図である。上下いずれかの起立した押釦35を押圧することで錠操作を行うもので、押圧により一方が押し込まれれば、設置する面に内在する回転支軸19(不図示)を介して、もう一方が起立する。この図6(2)においては、破損に対する備えとしてシーソー型押釦39の押釦35の上部側面38〔補注:図6(2)の(a)中の斜め格子模様の部分、傾斜面22〕が傾斜化されている。従って、使用者7によって片方の足13の縁を掛けて踏力を加えられることもないので、結果として操作体10であるシーソー型押釦39は、破損を免れることになる。
【0053】
勿論、図5(3)、図5(4)、図6(1)、図6(2)で示された操作体10としての押釦35は、可動ドアの錠機構に連係されて、足操作によって施解錠する為の入力部位であることは言うまでもない。
【0054】
なお、図6の(1)、(2)いずれのシーソー型押釦39も起立した部分の押釦35の頂上部が設置するドアパネル1の面と略平行な状態の押圧面〔補注:図6中の記号*の面〕として形成されている。これは、使用者7が実際に前方へ押圧する片方の足13で押圧し易いように配慮したもので、必ずしもそのように形成されていなくても構わない。
【0055】
図7は、ドアパネル1の下部に取り付けられた可倒ペダル24からなる操作体10の例である。可倒ペダル24は、使用者7が、操作のために片方の足13で接触する可倒ペダル24の踏み面(操作面11)が床面Fに対して略水平な状態と、使用者7の踏力が加わることによって、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した状態との間で回動する。図7(a)は、可倒ペダル24に踏力を加えていない状態の側面図であり、回転支軸19を中心に回動することができる可倒ペダル24は、圧縮方向に縮み代を有する弾性体27に支えられて略水平な状態を維持している。この略水平な可倒ペダル24を片方の足13で踏み下げを開始した直後の状態が図7(b)の側面図である。略水平であった可倒ペダル24は、踏力により弾性体27が縮むと共に回転支軸19を中心に回動し、可倒ペダル24の先端が図のように下がり傾斜する。傾斜する動きが進んで可倒ペダル24が支持アーム25のストッパー28に接触すると、次に可倒ペダル24全体が台座12に沿って鉛直下方へ変位する。当然、この可倒ペダル24は、踏み下げている片方の足13が外れて踏力が無くなれば、弾性体27の付勢力によりまた元の略水平な状態に復帰する。
【0056】
操作体10が可倒ペダル24であることの効果は、踏力を加えていない状態でペダル自体が略水平であるため、使用者7が躊躇なく可倒ペダル24に足13を掛ける動作に移ることができる点である。既に傾斜しているペダルに足13を掛けることに対し、何らかの抵抗感を覚えるという使用者7が少なからず存在すると思われるので、外見を一般的なものにすることでその心理的な障壁を少しでも取り除くことは、時に重要になる。その上で、可倒ペダル24は、図3(a)の傾斜ペダル15と同様、使用者7に必要以上の踏力を掛けられても、その踏力を分散し、ストッパー28まで傾斜した可倒ペダル24から片方の足13が滑り落ち、結果として、この操作体10を破損から保護することができる。
【0057】
勿論、図7の可倒ペダル24からなる操作体10は、可動ドアの錠機構に連係されて、足操作によって施解錠する為の入力部位であることは言うまでもない。
【0058】
図8は、本足操作式の内締まり錠の備える操作体10において、操作体10を構成する操作面11が採用し得る表面形態の代表例を示したものである。いずれも、操作体10が設置された面から垂直に離れるに従って床面Fに近づくように傾斜する平面又は曲面で構成される操作面11の表面に特徴を与えることで、傾斜化という破損対策の施された操作体10に対して必要な操作性を補完するものである。
操作面11に加える特徴としての凸部を有する面及び凹部を有する面は、既出の例の中で図示した。図4(1)中の略半球状の回転塊17において、球面である外周面上に放射状に配置した滑止凸部20が凸部の例である。また、図3(1)中の傾斜ペダル15の平らな表面に彫り込んだ溝状の滑止凹部16が、文字通り、凹部の例に相当する。いずれも操作面11の傾斜により難化する操作体10の操作性を補う作用がある。
【0059】
その他の操作面11に加える特徴として、図8(1)は、傾斜角θで傾斜した平面に多数の空隙30を有する操作面11の斜視図である。この空隙30も既出の凹部を有する面と同様、操作面11の摩擦に影響を及ぼすもので操作性の改善に寄与する。更に空隙30の数を増やし、細密化した網目を有する操作面11であっても構わない。
【0060】
一方、これまでの連続して拡がりを持つ平面又は曲面に付加する特徴ではなく、操作面11そのものの構成要素を特徴とした例もある。具体的には線状若しくは点状の小面積の連続並置を以て為すところの仮想面を操作面11とするもので、図8(2)は、傾斜角θで傾斜した線状の小面積による仮想面の例を示した斜視図である。図中では、直角を有する三角形状の板状物31が間隔を空けて並列され、斜辺に相当する三角形状の板状物の端面部32が並列して仮想面を構成している。効果として、板状物の端面部32が操作面11である仮想面の横方向の摩擦を発生させて操作体10の操作性を向上させる。
【0061】
また、別の構成による仮想面として、点状の小面積を並列して傾斜角θの傾斜した略平面を形成した例が図8(3)の斜視図である。多数の棒状物33が操作体10の内部から伸び、縦横に並列された棒状物の尖端部34を結んでできる仮想面を操作面11としたものである。それぞれの棒状物の尖端部34が操作面11である仮想面に対して縦方向にも横方向にも摩擦を発生させる効果があり、同様に操作体10の操作性を向上させる。
【0062】
他方、足操作式の内締まり錠の操作体10に使用者7が足13で触れられる箇所は、操作体10の形状によっては操作面11だけとは限らない。操作面11とは異なる操作体10の突出部には、その操作体10が突設した面に向かって、正面や側面などがあり、中でも室内の天井に露出した上面は、使用者7が足13を掛け易い箇所である。従って、操作面11の場合と同様、その気になれば足13に全体重を掛けて操作体10に乗ることが可能であり、延いては、内締まり錠や可動ドアの破損に繋がり兼ねない。そこで、このような室内の天井に露出した操作体10の上面に対しても前述の操作面11と同様、傾斜化する必要が生じてくる。
【0063】
図9は、ドアパネル1の戸先側下部に取り付けられた足操作式の内締まり錠を操作する、略鉛直に立った縦板21からなる操作体10の例である。使用者7が操作のために足13で接触する操作面11とは異なる操作体10の突出部、具体的には傾斜面22や背面26等のうち、操作体10の背面26が操作体10の突設された面に近接するとともに、室内の天井に露出する上面部(傾斜面22)が、操作体10の突設された面から垂直に離れるに従って床面Fに近づくように下がり傾斜した構成である。図9(a)が斜視図、図9(b)が側面図である。この操作体10の上面部、即ち縦板21の上部の端面は、ドアパネル1の面から室内側INに向かって垂直に離れるに従って鉛直下方に傾斜が付けられている。ここでは傾斜の仕方が傾斜角θの直線になっているが、前記の傾斜が付けられていれば曲線であっても構わない。このような状態の縦板21に対して故意に上から踏力を加えようとしても、使用者7は、上部端面が傾斜面22〔補注:図9(a)中の斜め格子模様の部分〕となっている縦板21に片方の足13を掛けることができない。もし、縦板21が矩形〔補注:一点鎖線で描写〕のような形状であれば、使用者7は、容易に片方の足13を掛けることが可能となり、いたずらで無理な踏力が加えられて矩形の縦板21からなる操作体10は、破損されるに違いない。従って、縦板21の上面部が傾斜面22であることにより、縦板21の操作体10が破損から保護されることになる。
【0064】
また、図10の例は、図9の略鉛直に立った縦板21からなる操作体10の支持アーム25が延長されて操作体10の背面26とドアパネル1が離隔した場合である。このような状態では、たとえ操作体10の上面部が前記のように傾斜化されていても、図10のように操作体10の頂上部に片方の足13を掛けることができてしまい、無理な踏力が加えられ、この縦板21からなる操作体10が破損されることは、図9(a)の矩形の縦板21〔補注:一点鎖線で描写〕の場合と同様である。従って、操作体10が破損されないためには、操作体10の背面26が、その操作体10が突設した面、即ちドアパネル1等の表面に近接し、ドアパネル1等の表面と操作体10の背面26の隙間δを利用して使用者7が操作体10の上方から片方の足13を掛けられないような位置関係にあることが重要である。隙間δとしては、数ミリ以内が望ましいと考えられる。
【0065】
図11は、ドアパネル1の戸先側下部に取り付けられた板状体23及び回転軸18からなる操作体10の例である。図11(1)は、使用者7が足13を使ってこの操作体10に働き掛ける事例を二つ同時に表した概念図である。また、図11(2)は、この板状体23及び回転軸18からなる操作体10で、(a)が平面図、(b)が斜視図である。
【0066】
この足操作式の内締まり錠に対して使用者7に期待される動作は、図11(1)中、下方で図示した足13のように水平方向へ動かし、操作面11である板状体23を押し払って回転軸18を回転させて鎌ボルト9を出し入れする操作である。一方、ドアパネル1の面から突出した回転軸18を眼下に見下ろした使用者7がよくやる動作として、図11(1)中、上方で図示した足13のように上方から片方の足13を掛けて乗ることが挙げられる。これもまた、過度な踏力が加えられて回転軸18が曲がり、操作体10が破損することにつながる。
【0067】
そこで板状体23及び回転軸18からなる操作体10に傾斜化の要素を取り入れて対策を考える。図11(2)は、矩形の板状体23を持った操作体10であるが、図11(2)の(a)及び(b)の通り、ドアパネル1から回転軸18が垂直に突出して、その鉛直下方に矩形の板状体23が張り出した状態にある。この矩形の板状体23の上辺部分を無くして傾斜化するためには、板状体23の上辺部分を上から覆っている回転軸18も無くす、或いは最小化する必要がある。そこで板状体23及び回転軸18からなる操作体10に傾斜化の要素を取り入れて対策を考える。
【0068】
図12(1)は、鉛直状態の板状体23の上部端面をほぼ無くして直線的な傾斜面22〔補注:図12(1)中の斜め格子模様の部分〕にすると共に回転軸18を極力、短縮したものである。図12(1)の(a)の平面図の通り、回転軸18は略根元の部分のみとなり、板状体23は上辺部分が無くなって直角三角形状になった状態を図12(1)の(b)の斜視図が表している。また、図12(2)のように回転軸18を極力、短縮しつつ、板状体23の上部だけが傾斜面22〔補注:図12(2)中の斜め格子模様の部分〕になっていても良い。図12(2)の(a)の平面図は、図12(1)の(a)と殆ど変わらないが、図12(2)の(b)の斜視図の通り、矩形の上半分を湾曲状に切欠いた状態になったものである。つまり、板状体23の上部の傾斜状態は、直線、曲線のいずれであってもよく、使用者7が上方から片方の足13を掛け難い形状になっていることが重要である。従って、板状体23の上辺部分の傾斜化と回転軸18の短縮化により、この操作体10が破損から保護されることになる。
【0069】
勿論、図12の板状体23及び回転軸18からなる操作体10は、可動ドアの錠機構に連係され、足操作によって施解錠する為の入力部位であることは言うまでもない。
【0070】
他の操作面11以外の突出部の傾斜化として、押釦35の操作体10に対する例も挙げることができる。図5のような押釦35の摺動部のみが枠体36から突出した操作体10を破損の危険から保護するために、枠体36を押釦35の表面と略面一になる位に突出させたものが図13の操作体10である。図13(a)が斜視図、図13(b)が側面図であるが、図13(b)中の使用者7の片方の足13の通り、突出した枠体36の上部側面38に使用者7が片方の足13の縁を掛けることが可能である。この突出した枠体36の頑丈さにもよるが、やはり、この押釦35の操作体10の破損に対する不安が拭い切れない。
【0071】
そこで押釦35の操作体10が備える枠体36にも傾斜化を取り入れたものが、図14で、図14(1)の(a)が斜視図、図14(1)の(b)が側面図である。この例は、ドアパネル1又は戸先パネル2又は固定壁には開口部4を穿設し、更にこの開口部4に合わせた枠体36を備え、これらの開口部4及び枠体36に押釦35が収容される構成である。この操作体10であるところの押釦35は、押釦35の側面(押釦35の上部側面38、下部側面、左部側面、右部側面)の全部又は一部が枠体36で囲まれると共に、開口部4から膨出しており、使用者7が足13でドアパネル1又は戸先パネル2又は固定壁に向かって押圧する押釦の表面37を操作面11とする。そして、使用者7が足13で操作面11を押圧して変位する押釦35の摺動部(本体部分)とは異なる、室内の天井に露出する枠体36の上面が、室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した傾斜面22〔補注:図14(1)中の斜め格子模様の部分〕となっている。ここでは、押釦35の摺動部を取り囲む枠体36の上下左右すべての面を傾斜化して、ドアパネル1の下部面上に設置したものであるが、少なくとも室内の天井に露出する枠体36の上面が、この操作体10の突設されたドアパネル1面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜した状態であれば良く、他の三つの部分は必ずしも傾斜化の必要はない。図14(2)は、この傾斜化された枠体36を有する押釦35の操作体10を使用者7が片方の足13で押圧して操作する様子である。
【0072】
また、同じく枠体36を傾斜化する方法として、図15のように押釦35ごと一緒に傾斜化してしまう方法もある。図15(1)の(a)が斜視図、図15(1)の(b)が側面図である。枠体36の開口の上端36aの最上部をドアパネル1の表面と一致した状態にして枠体36の上部側面を無くし、押釦35の表面を含む枠体36の開口の上端36aを、この操作体10の突設されたドアパネル1面から垂直に離れるに従って室内の床面Fに近づくように下がり傾斜させた傾斜面22〔補注:図15(1)中の斜め格子模様の部分〕とするものである。即ち押釦の表面37と枠体36の表面が面一となり、共に下がり傾斜するものである。図15(2)は、この傾斜化された枠体36を有する押釦35の操作体10を使用者7が片方の足13で押圧して操作する様子である。
【0073】
従って、図14図15いずれの例も使用者7は、押釦35又は枠体36の上部に片方の足13を掛けることができず、結果として、これらの押釦35の操作体10は、破損から保護されることになる。
【0074】
次に、これまでの操作体10を初めとする外部に露出した内締まり錠の部材から転じて、ドアパネル1の内側の錠機構に視点を変え、足操作による破損への対応を考える。具体的には建築物に備わる可動ドアに設置された足操作式の内締まり錠の操作体10が突出するドアパネル1の面上に固設する突出体40について説明する。
【0075】
足13を使って操作するため細かな動作が期待できないことから、足操作式の内締まり錠の操作体10の様式によっては、施錠用、解錠用といった複数の操作体10をドアパネル1の面上に設けることがある。このような状況においては、使用者7が足13で、故意に複数の操作体10を同時に操作することを想定しておく必要がある。なぜなら内部の錠機構が別々、或いは真逆の入力を同時に受けることで無理な負荷が加わり破損する可能性があるからである。そこでドアパネル1の面上に、操作体10とは別に、突出体40を設けて、同時に複数の操作体10に接触できない様にする。即ち足操作式の内締まり錠に近設される突出体40は、ドアパネル1の面上に複数個の操作体10を並設する場合において、隣接する操作体10と操作体10との間に固設されるものである。
【0076】
図16(1)は、昇降する2本の傾斜ペダル15の足操作式の鎌錠に設置した円柱型の突出体40の例であり、(a)が斜視図、(b)が側面図である。この円柱型の突出体40は、2本のペダルの間に固設され、ペダルの最高到達点よりやや上方に位置する。もし、この突出体40が無ければ、使用者7は、片方の足13をドアパネル1の短辺に沿って平行に構え、上から同時に2本の傾斜ペダル15に踏力を掛けることが可能である。一度に真逆の入力を与えられた錠機構は、内部の連結部などに無理な力が加わって破損しかねないが、この突出体40が障害となることで一度に1本の傾斜ペダル15にしか接触できず、結果として、この鎌錠の内部の錠機構が保護されることになる。
【0077】
また、図16(2)は、2個の押釦35を備える足操作式の鎌錠に設置した特殊形状の突出体40の例であり、(a)が斜視図、(b)が側面図である。この正面視が砂時計の様な特殊形状の突出体40は、ドアパネル1の表面からの垂直な高さが押釦35の高さよりもやや高く設定され、2個の押釦35の間に固設されている。もし、この突出体40が無ければ、使用者7は、足13の側面や足裏を使って同時に2個の押釦35をドアパネル1に向かって押圧することができる。しかし、この突出体40に分離されて、同時に2個の押釦35に接触することができないので、結果として、この鎌錠の内部の錠機構が保護されることになる。
【0078】
突出体40と操作体10との位置関係に関しては、突出体40の上端40aを操作体10の操作面11又は上端11a(上端37a)と同位又は上位、及び/又は、突出体40の突端40bを操作体10の突端11bと同位又は前位(操作体10の手前側、即ち、使用者7側)が望ましい。しかし、突出体40は、同時に複数の操作体10に接触できないようにすることによって錠機構内部への無理な負荷が加わることによる破損を回避することができれば、突出体40の上端40aが操作体10の操作面11又は上端11a(上端37a)よりも下位でもよく、また、突出体40の突端40bが操作体10の突端11bよりも後位であってもよい。また、突出体40の形状に関しては、図16(1)のように円柱形状、図16(2)のような正面視略砂時計形状の他、六角柱や八角柱等の多角柱形状であってもよい。なお、突出体40はドアパネル1に垂直に固設するのが望ましいが、垂直に固設せず、一定の角度を設けてもよい。
【0079】
ここまで、足操作式の内締まり錠にまつわる懸念への対策を述べて来たが、従来の手指による操作とは異なり、足13による操作という状況に鑑みて、事前段階で可能な限りの対策を講じておくことは必要不可欠である。単純な動作しか期待できない一方、使用者7の誰もが強い力を出し得る「足13」という身体の部位を使うということで、手指で取り扱う従来の内締まり錠よりも一層、堅牢でなければならないことは言うまでもない。
ともすれば、心無い使用者7が故意に足13で一撃を加えれば、これらの足操作式の内締まり錠は、容易に破損させられてしまうかもしれない。ただでさえ誤って踏み付ける可能性の高い位置に取り付けられた内締まり錠であるが、一般的な日常の使用条件で想定される事態に対応した仕様にしておくことは、非常に有意義であると思われる。
【0080】
なお、各図において各実施例を示したが、図を分かり易くする等のために、一部構成を省略、簡略化、透視化した部分を含むため、本発明は図示した実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
以上、各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施例に記載の技術、又は、その他の公知や周知の技術を組み合わせるようにしてもよい。
【0082】
本発明は、説明したように、各操作体10は、可動ドアの錠機構に連係されて、足操作によって施解錠するための入力部位であるが、錠機構については各種錠やサムターン等の周知の錠機構や周知の技術常識(ギア機構、ラックピニオン、リンク機構、クランク機構等)を組み合わせる等して利用するものである。従って、本実施例では錠を施解錠する錠機構自体の内部構造や動き等についての説明は割愛する。
【符号の説明】
【0083】
1:ドアパネル
2:戸先パネル
3:戸尻パネル
4:開口部
4a:上端
5:蝶番
6:抗菌パネル
7:使用者
8:デッドボルト
9:鎌ボルト
10:操作体
11:操作面
11a:上端
11b:突端
12:台座
13:足
14:滑止垂直板
15:傾斜ペダル
16:滑止凹部
17:回転塊
18:回転軸
19:回転支軸
20:滑止凸部
21:縦板
22:傾斜面(斜め格子模様の部分)
23:板状体
24:可倒ペダル
25:支持アーム
26:背面
27:弾性体
28:ストッパー
30:空隙
31:板状物
32:板状物の端面部
33:棒状物
34:棒状物の尖端部
35:押釦
36:枠体
36a:開口の上端
37:押釦の表面
37a:上端
38:押釦の上部側面
39:シーソー型押釦
40:突出体
40a:上端
40b:突端
θ:傾斜角(床面と操作面の為す角度)
δ:隙間(ドアパネル表面と操作体の背面との距離)
A:点線円
F:床面
IN:室内側

図1
図2
図3
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