(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】リチウム金属複合酸化物粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20240304BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240304BHJP
【FI】
C01G23/00 C
H01M4/485
(21)【出願番号】P 2019058988
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】521484604
【氏名又は名称】曽根 宏隆
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆行
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】影山 拓也
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-105646(JP,A)
【文献】特開平10-139429(JP,A)
【文献】特開2001-210328(JP,A)
【文献】特開2018-035057(JP,A)
【文献】特開2016-160157(JP,A)
【文献】荻原隆 他,ラムスデライト型チタン酸リチウム負極活物質の合成及び電気化学的特性,粉末および粉末冶金,60巻,1号,日本,2013年,pp.19-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム元素、チタン元素、及び、酸素元素を含むリチウム金属複合酸化物源を導入流にて、プラズマ内に導入する工程を有し、
前記リチウム金属複合酸化物源におけるリチウム元素とチタン元素のモル比が、1:1.2~1:3の範囲内である、平均粒子径がナノ水準でありリチウム元素、チタン元素及び酸素元素の関係がLi
2+yTi
3O
7(但し、0≦y≦3)を満足する粒子を有するリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法。
【請求項2】
前記導入流が酸素ガスを含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記リチウム金属複合酸化物源は、リチウム化合物と金属チタンとを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記導入流の流量は20L/分以上200L/分以下の範囲内である、請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法により、平均粒子径がナノ水準であるリチウム金属複合酸化物粉末を製造する工程、及び、
前記リチウム金属複合酸化物粉末を用いて負極を製造する工程を含む、負極の製造方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の製造方法で得られた負極を用いて二次電池を製造する工程を含む、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム元素、チタン元素、及び、酸素元素を含むリチウム金属複合酸化物粉末、その製造方法、並びにリチウム金属複合酸化物粉末を用いた二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム元素、チタン元素及び酸素元素を含むリチウム金属複合酸化物は、リチウムイオン二次電池や全固体電池、リチウムイオンキャパシタ等の二次電池用の負極活物質として使用できることが知られている。
例えば、特許文献1及び特許文献2には、スピネル型のLi4Ti5O12、ラムスデライト型のLiTi2O4、ラムスデライト型のLi2Ti3O7等のリチウム金属複合酸化物が紹介されている。また、特許文献1にはこれらのリチウム金属複合酸化物がリチウムイオン二次電池に用いられる旨が紹介され、特許文献2には、それに加えて、当該リチウム金属複合酸化物がリチウムイオンキャパシタに用いられる旨も紹介されている。
更に、特許文献1及び特許文献2には、上記のリチウム金属複合酸化物のうちラムスデライト型のものはスピネル型のものに比べて理論容量が大きい旨が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-267462号公報
【文献】特開2017-48077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2等に紹介されている従来の製造方法によると、種々のリチウム金属複合酸化物粉末を製造することが可能である。しかし乍ら、近年、二次電池の用途は拡大の一途をたどり、当該二次電池に用いられるリチウム金属複合酸化物粉末についても、従来のものとは異なる、新規なものが望まれている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、新規なリチウム金属複合酸化物粉末を製造し得る、リチウム金属複合酸化物粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法は、
リチウム元素、チタン元素、及び、酸素元素を含むリチウム金属複合酸化物源を導入流にて、プラズマ内に導入する工程を有する、平均粒子径がナノ水準であるリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法によると、新規なリチウム金属複合酸化物粉末を製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末のTEM像である。
【
図3】実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末のTEM像である。
【
図4】実施例1及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末のX線回折チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限x及び上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、並びに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらにこれらの数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることもできる。
【0009】
(リチウム金属複合酸化物粉末)
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法は、リチウム元素、チタン元素、及び、酸素元素を含むリチウム金属複合酸化物源を導入流にて、プラズマ内に導入する工程を有する。また、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法によると平均粒子径がナノ水準であるリチウム金属複合酸化物粉末を製造できる。本明細書において「平均粒子径がナノ水準である」とは、平均粒子径が1nm以上1000nm未満の範囲内であることを指すものとする。つまり本発明の製造方法で得られたリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径は上記範囲内である。なお、本発明の製造方法により得られたリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径がナノ水準であるか否かは、後述するように電子顕微鏡像によって確認できる。
以下、必要に応じて、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法で得られるリチウム金属複合酸化物粉末を、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末と称する場合がある。また、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法を、単に、本発明の製造方法と称する場合がある。
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末は多数の粒子からなる。各々の粒子は結晶子からなるものであっても良いし、幾つかの結晶子が複合化したものであっても良い。
【0010】
以下、本発明の製造方法に沿って、本発明を説明する。
【0011】
本発明の製造方法は、リチウム元素、チタン元素、及び、酸素元素を含むリチウム金属複合酸化物源を材料とする。したがって、本発明の製造方法で製造される本発明のリチウム金属複合酸化物粉末は、リチウム金属複合酸化物源に由来するリチウム元素、チタン元素及び酸素元素を含む、粉末状のリチウム金属複合酸化物であるといえる。
【0012】
リチウム元素、チタン元素及び酸素元素を含むリチウム金属複合酸化物は、スピネル型のものとラムスデライト型のものとに大別される。
スピネル型のリチウム金属複合酸化物としては、Li4+zTi5O12(但し、0≦z≦3)を満足するものが例示され、このうちLi4Ti5O12が一般的である。
ラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物としては、Li2+yTi3O7(但し、0≦y≦3)を満足するもの及びLi1+xTi2O4(但し、0≦x≦3)を満足するものが例示される。このうち前者としてはLi2Ti3O7が一般的であり、後者としてはLiTi2O4が一般的である。
【0013】
リチウム金属複合酸化物は、リチウム元素、チタン元素及び酸素元素を含むものであれば良く、その他の金属元素を含んでも良い。当該その他の金属元素として、第1族元素、第2族元素、遷移金属及び第13族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種を例示できる。好ましくは遷移金属であり、Cr又はFeが例示される。
【0014】
また、本発明におけるリチウム金属複合酸化物は、上記のLi4+zTi5O12(但し、0≦z≦3)、Li2+yTi3O7(但し、0≦y≦3)又はLi1+xTi2O4を基本構造とするものであるのが良く、更にその他のドープ元素を含み得る。ドープ元素としては上記のその他の金属元素が例示される。また、当該リチウム金属複合酸化物におけるTiの一部は他の遷移金属で置換されても良い。
【0015】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末は、これら各種のリチウム金属複合酸化物の一種のみを含むものであっても良いし、二種以上を含むものであっても良い。場合によっては、二種以上のリチウム金属複合酸化物が複合化したものであっても良い。
【0016】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末は、二次電池用の負極活物質として使用することができる。その場合、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末のみを負極活物質として使用しても良いし、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末にその他の負極活物質を併用しても良い。本発明のリチウム金属複合酸化物粉末に併用し得るその他の負極活物質については後述する。
【0017】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法は、リチウム金属複合酸化物源を導入流にて、プラズマ内に導入する工程を有する。
リチウム金属複合酸化物源は、リチウム元素、チタン元素、及び、酸素ガスとなり得る酸素元素を含みさえすれば良く、粉末状の本発明のリチウム金属複合酸化物の原料となり得る原料物質又は原料混合物であれば良い。つまり、リチウム金属複合酸化物源は、上記したリチウム金属複合酸化物と同じものであっても良いし、異なるものであっても良いし、単体であっても良いし、複数の単体の混合体であっても良い。更には、リチウム金属複合酸化物源は固体状、液体状、ガス状の何れの性状であっても良いし、これらの混合物であっても良い。
【0018】
本発明の製造方法において、リチウム金属複合酸化物源は、プラズマ内に導入されるため、プラズマ内に導入し易い形状、すなわち、粉末状、液体状及び/又はガス状であるのが好ましい。
【0019】
以下、必要に応じて、リチウム金属複合酸化物源に含まれるリチウム元素を有するものをLi源と称し、チタン元素を有するものをTi源と称し、酸素ガスとなり得る酸素元素を有するものをO源と称する。リチウム金属複合酸化物源の取り扱い性を考慮すると、少なくともLi源及びTi源は粉末状であるのが好ましい。Li源及びTi源は、各々単独で使用しても良いし、これらのうち二種以上を含む化合物の状態で使用しても良い。O源はLi源及びTi源の少なくとも一種とともに化合物の状態で使用しても良いし、単独でつまり酸素ガスの状態で使用しても良い。
【0020】
具体的には、Li源は、リチウム単体つまり金属リチウムであっても良いし、リチウム元素に加えてチタン元素及び酸素元素の一方又は両方を含む化合物であっても良い。更には、リチウム源を必須とし上記以外の元素を含む化合物であっても良い。
【0021】
このようなLi源としては、リチウム単体、又は、Li2CO3、LiOH、LiNO3、Li4/3Ti5/3O4、Li2O、Li2O2、LiO2に代表されるリチウム化合物を例示することができる。その他、LiBr、Li2C2、LiCl、LiF、LiH、LiI、LiN3、Li3N等を用いても良い。Li源は、これらの何れかを単独で用いても良いし、これらの複数を組み合わせて用いても良い。
【0022】
Ti源もまた単体であっても良いし、上記のLi源とともに化合物を構成しても良いし、上記のO源とともに酸化物等の化合物を構成しても良いし、その他の元素とともに化合物を構成しても良い。例えばTi源は、単体で使用しても良いし、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン酸塩等の金属化合物の状態で使用しても良い。
【0023】
具体的には、Ti源としては、チタン単体、TiO、Ti2O3、TiO2、H2TiO4、H2TiO3、H4TiO4、TiC、TiOSO4、Ti2(SO4)3、Ti(SO4)2、TiCl2等を例示できる。
【0024】
リチウム金属複合酸化物源におけるLi源及びTi源の割合は、リチウム元素及びチタン元素のモル比が、目的とするリチウム金属複合酸化物における各元素のモル比に近い値となるよう設定すれば良い。
【0025】
但し、実施例の欄で詳しく述べるように、本発明の製造方法においては、リチウム金属複合酸化物源に含まれるリチウム元素とチタン元素とのモル比をLi:Ti=1:1とした場合と、Li:Ti=1:2とした場合とで、得られたリチウム金属複合酸化物粉末に含まれるリチウム金属複合酸化物の組成比が大きく変化した。
【0026】
具体的には、Li:Ti=1:1とした場合には、リチウム金属複合酸化物粉末におけるスピネル型のLi4Ti5O12の含有率が非常に多くなり、Li:Ti=1:2とした場合には、リチウム金属複合酸化物粉末におけるラムスデライト型のLi2Ti3O7の含有率が増大した。
このため、本発明の製造方法においては、目的とするリチウム金属複合酸化物に応じて、リチウム金属複合酸化物源に含まれるリチウム元素とチタン元素とのモル比を適宜適切に設定するのが良いと考えられる。
【0027】
例えば、目的とするリチウム金属複合酸化物粉末が、Li2+yTi3O7(但し、0≦y≦3)を満足するラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物を多く含むものである場合には、リチウム金属複合酸化物源は、1モルのリチウム元素に対して1モルを超えるチタン元素を含むのが好ましいと考えられる。また、この場合、リチウム金属複合酸化物源におけるリチウム元素とチタン元素のモル比の好ましい範囲としては、1:1.2~1:3、1:1.5~1:2.5、1:1.6~1:2.3、1:1.8~1:2.2、1:1.9~1:2.1の各範囲を挙げることができる。リチウム元素とチタン元素のモル比は、1:2に近い程良いと推測される。
【0028】
また、例えば、目的とするリチウム金属複合酸化物粉末が、Li4+zTi5O12(但し、0≦z≦3)を満足するスピネル型のリチウム金属複合酸化物を多く含むものである場合には、リチウム金属複合酸化物源は、1モルのリチウム元素に対して2モル未満のチタン元素を含むのが好ましいと考えられる。また、この場合、リチウム金属複合酸化物源におけるリチウム元素とチタン元素のモル比の好ましい範囲としては、1:1.5~1:0.5、1:1.3~1:0.7、1:1.2~1:0.8、1:1.1~1:0.9の各範囲を挙げることができる。リチウム元素とチタン元素のモル比は、1:1に近い程良いと推測される。
【0029】
本発明の製造方法は、プラズマ発生装置を用いて実施される。プラズマは、アーク放電、多相アーク放電、高周波電磁誘導、マイクロ波加熱放電などで発生させればよい。本発明の製造方法は、熱プラズマ法によってリチウム金属複合酸化物粉末を製造する方法と捉えることができる。
【0030】
高周波電磁誘導式のプラズマ発生装置の場合、その周波数は、例えば0.5~400MHzの範囲内、好ましくは1~80MHzの範囲内とすればよい。プラズマ出力は、例えば3~300kWの範囲内、好ましくは5~100kWの範囲内とすればよい。プラズマ発生装置内の圧力は適宜設定すればよく、例えば10kPa~大気圧の範囲内を例示できる。プラズマ出力やプラズマ発生装置内の圧力を変動させることで、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径を変化させることができる。例えば、プラズマ出力を増加することで、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径を小さくすることができる。
【0031】
導入流はプラズマへ向かう気体の流動によって発生する。導入流としては、プラズマの安定性を考慮して、プラズマ下で使用し得る気体を主流とするのが好ましい。導入流を構成する気体、つまり、導入ガスとしては、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスが好ましい。導入ガスの流量としては、20~120L/分を例示できる。
【0032】
プラズマ発生装置の種類によるが、本発明の製造方法においては、導入ガスとして、上記したLi源、Ti源及びO源を運搬するキャリヤーガス、キャリヤーガスとは別にコイル内に導入されるインナーガス、及び、プラズマ発生部位を不活性雰囲気下にするためのプロセスガスを採用するのが好ましい。
【0033】
キャリヤーガスの流量としては、1~10L/分を例示できる。インナーガスの流量としては、1~10L/分を例示できる。プロセスガスの流量としては、15~100L/分を例示できる。
【0034】
導入ガスは酸素ガスを含んでも良いし、含まなくても良い。導入ガスが酸素ガスを含む場合、当該酸素ガスをO源とみなすことができる。なお、本発明の製造方法におけるO源はガス状に限定されず、例えばLi源及び/又はTi源ともに化合物を構成していても良い。この場合には、導入ガスは酸素ガスを含まなくても良い。
【0035】
酸素ガスを含む導入ガスを用いる場合、導入ガスの酸素濃度の好ましい範囲としては、導入ガス、例えば上記したキャリヤーガス、インナーガス、及び、プロセスガス等、導入流を構成するガスの体積の総和を100体積%としたときに、0.5~10体積%、2~6体積%、3~5体積%、及び3.5~4.5体積%の各範囲を挙げ得る。
【0036】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末の生成機構について考察する。プラズマ内の温度は、8000~20000℃程度である。プラズマ内に導入されたリチウム金属複合酸化物源は、プラズマ内で気化又は分解状態となると考えられる。そして、当該リチウム金属複合酸化物源に含まれるリチウム元素、チタン元素及び酸素元素は、プラズマ内において、各々高温のガスとして存在すると考えられる。
【0037】
ここで、プラズマ内の上記各元素は、導入ガスとともに流動したり、自重で落下したりすることで、プラズマ外に移動する。このとき、上記各元素がおかれる雰囲気の温度は、急激に降下し、各元素を含むガスの温度もまた急激に降下する。当該温度降下に伴って、上記の各元素は気相→液相→固相の順に相転移する。
リチウム、チタン及びこれらの化合物のうち、金属チタンの核生成温度は最も高く、2400℃程度である。このため、本発明の製造方法においては、先ず金属チタンが核生成し、次いで、当該金属チタンの結晶核にリチウムが酸化を伴いながら凝縮することで、目的物であるリチウム金属複合酸化物、例えば上記したLi4Ti5O12やLi2Ti3O7が生成すると推測される。
【0038】
本発明の製造方法によると、ナノ水準のリチウム金属複合酸化物粉末が得られる。これは、主として、本発明の製造方法が熱プラズマ法を用いることに因ると考えられる。
つまり、本発明の製造方法において、リチウム金属複合酸化物の合成に用いるプラズマは非常に高温であり、また、高温の範囲もプラズマ内のみであるから、例えば電気炉等に比べて非常に狭い範囲である。このため、プラズマに導入されたリチウム金属複合酸化物源は、プラズマを通過した後に、急激に冷却されてリチウム金属複合酸化物となる。このような急激な冷却に因り、リチウム金属複合酸化物の結晶成長は抑制されるため、本発明の製造方法で得られるリチウム金属複合酸化物粉末は、平均粒子径がナノ水準という非常に微細なリチウム金属複合酸化物粒子で構成される。
プラズマ内で高温に加熱されたリチウム金属複合酸化物源を急激に冷却するためには、導入流の流量を適宜コントロールするのが合理的である。当該導入流の流量の好ましい範囲は、20L/分以上、30L/分以上、50L/分以上、60L/分以上の各範囲を例示できる。当該好ましい流量に上限はないが、強いて挙げるとすれば、200L/分以下とするのが合理的である。
【0039】
本発明の製造方法で得られるリチウム金属複合酸化物粉末は、多数のリチウム金属複合酸化物粒子で構成される。本発明のリチウム金属複合酸化物粉末を構成するリチウム金属複合酸化物粒子(以下、本発明の粒子という。)は、上記したように、高温状態から室温付近にまで、急激に冷却されるため、結晶成長する期間がほとんどない。そのため、本発明の粒子は、一般的な製造方法で得られるような、特定の軸が成長した針状結晶となることが妨げられている。その結果、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末に含まれる本発明の粒子は、各軸の結晶成長速度にムラの無い形状となっている。
【0040】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末を構成する本発明の粒子は、その結晶子径が0.1nm~150nmの範囲内にあるのが好ましく、1nm~100nmの範囲にあるのがより好ましく、50nm~90nmの範囲にあるのがさらに好ましく、60~80nmの範囲にあるのがなお好ましい。本発明の粒子の結晶子径は、X線回折法で得られた回折ピークの半値幅と回折角を基にシェラーの式を用いて算出できる。なお、当該回折ピークが複数である場合には、各々の回折ピークを基に複数の結晶子径を算出し、その算術平均値を本発明の粒子の結晶子径とみなしても良い。
【0041】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末は、その平均粒子径がナノ水準すなわち1nm以上1000nm未満の範囲内である。当該平均粒子径の好ましい範囲としては、1nm以上400nm以下、1nm以上200nm以下、10nm以上100nm未満、15nm以上90nm以下、20nm以上80nm以下、30nm以上70nm以下、40nm以上60nm以下の各範囲を挙げることができる。
なお、ここでの平均粒子径とは、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡などの電子顕微鏡で観察した場合における、観察された粒子像の外接円の直径の算術平均値を意味する。例えば、四角形の粒子像が観察されたら、その外接円を作成し、該外接円の直径を測定する。そのようにして、例えば200個の粒子につき、各外接円の直径を測定して、その算術平均値を算出する。この値が平均粒子径である。
【0042】
本発明の製造方法において、リチウム金属複合酸化物源を含むガス流の冷却速度が増加すれば、リチウム金属複合酸化物における結晶核の結晶成長が初期段階で中断されるため、より微細であり、かつ形状が均一なリチウム金属複合酸化物粒子が得られるといえる。
【0043】
したがって、より微細な本発明の粒子を含む本発明のリチウム金属複合酸化物粉末を得るためには、本発明の製造方法に、導入流がプラズマ内を通過した後の通過流を当該通過流に対向する冷却ガス流で冷却する工程を設けるのが良いと言える。
【0044】
冷却ガス流のガスとしては、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスや、酸素、空気を例示することができ、これらを混合して用いてもよい。上記した導入流用の導入ガスと同様に、冷却ガス流用のガスとしては酸素ガスを含まないものを用いても良いし、酸素ガスを含むものを用いても良い。
冷却ガス流の温度は室温でもよいし、室温以下でもよい。冷却ガスの流量としては、導入流よりも小さい流量であればよく、例えば1~30L/分の範囲内を例示できる。
【0045】
なお、微細な本発明の粒子で構成される本発明のリチウム金属複合酸化物粉末が電池の負極活物質として使用された場合、例えば、電池の反応抵抗を低減できる、高速の充放電でも十分な容量を示すことができるなどの効果が期待される。
【0046】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末は、上述したように二次電池用の負極活物質として使用可能である。以下、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末を具備する負極を本発明の負極と呼び、本発明の負極を具備する二次電池を本発明の二次電池と呼ぶ。
【0047】
(二次電池)
〔負極〕
本発明の二次電池は、負極、正極、並びに、電解液又は固体電解質、及び必要に応じてセパレータを具備する。このうち負極は、集電体と、集電体の表面に形成されている負極活物質層とを有する。
【0048】
負極活物質としては、既述したとおり、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末を用いる。本発明の二次電池における負極活物質層は、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末以外にも、他の公知の負極活物質、結着剤、導電助剤、その他の添加剤を含有し得る。
【0049】
他の公知の負極活物質としては、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を吸蔵及び放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する化合物、あるいは高分子材料などを例示することができる。
【0050】
具体的には、炭素系材料としては、難黒鉛化性炭素、黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が例示できる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
リチウムと合金化可能な元素としては、具体的にNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが例示でき、特に、Si又はSnが好ましい。
リチウムと合金化可能な元素を有する化合物としては、具体的にZnLiAl、AlSb、SiB4、SiB6、Mg2Si、Mg2Sn、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si3N4、Si2N2O、SiOv(0<v≦2)、SnOw(0<w≦2)、SnSiO3、LiSiOあるいはLiSnOを例示でき、特に、SiOx(0.3≦x≦1.6、又は0.5≦x≦1.5)が好ましい。
【0051】
本発明のリチウム金属複合酸化物粉末に対する上記した他の公知の負極活物質の量は特に問わないが、負極活物質全体に対して50質量%以下とするのが好ましく、30質量%以下とするのがより好ましく、20質量%以下とするのが更に好ましく、10質量%以下とするのが特に好ましい。
また、負極活物質層全体を100質量%としたときの負極活物質全体の量の好ましい範囲として、30~100質量%、40~90質量%、50~80質量%を例示できる。その他、50~99質量%、60~98質量%、70~97質量%を例示することもできる。
【0052】
結着剤は、負極活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースを例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
【0053】
結着剤の配合量は特に限定されないが、あえて負極活物質層における結着剤の配合量を挙げると、0.5~10質量%の範囲内が好ましく、1~7質量%の範囲内がより好ましく、2~5質量%の範囲内が特に好ましい。結着剤の配合量が少なすぎると負極活物質層の成形性が低下するおそれがある。また、結着剤の配合量が多すぎると、負極活物質層における負極活物質の量が相対的に減少するため、好ましくない。
【0054】
導電助剤は化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、及び各種金属粒子等が例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック等が例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて負極活物質層に添加することができる。
【0055】
導電助剤の形状は特に制限されないが、その役割からみて、導電助剤の平均粒子径は小さいほうが好ましい。導電助剤の好ましい平均粒子径として10μm以下が例示され、より好ましい平均粒子径として0.01~1μmの範囲が例示される。
【0056】
導電助剤の配合量は特に限定されないが、あえて負極活物質層における導電助剤の配合量を挙げると、0.5~10質量%の範囲内がよく、1~7質量%の範囲内が好ましく、2~5質量%の範囲内が特に好ましい。
【0057】
導電助剤及び結着剤以外の分散剤などの添加剤は、公知のものを採用することができる。
【0058】
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
【0059】
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm~100μmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
負極を製造するためには、上記のリチウム金属複合酸化物粉末を必要に応じてその他の材料及び溶剤と混合し、得られた負極活物質層用組成物を上記の集電体に塗布すれば良い。
溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。溶剤の使用量は、負極活物質層用組成物がスラリー状になる程度の量であるのが好ましい。
【0061】
負極活物質層用組成物を集電体に塗布するには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。
【0062】
〔その他の電池構成要素〕
正極は、集電体と、集電体の表面に形成されている正極活物質層を有する。集電体については、負極の欄で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて導電助剤、結着剤、添加剤等を含む。
【0063】
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物、Li2MnO3を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn2O4等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePO4FなどのLiMPO4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO3などのLiMBO3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、リチウムイオン等の電荷担体を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiS2などの金属硫化物、V2O5、MnO2などの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウム等の電荷担体を含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておく必要がある。電荷担体は、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、電荷担体がリチウムである場合には、リチウム箔を正極及び/又は負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
【0064】
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
【0065】
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、20/100<b<80/100、12/100<c<70/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、30/100<b<70/100、15/100<c<50/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
【0066】
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
【0067】
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、スピネル構造のLixMn2―yAyO4(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn2O4、LiMn1.5Ni0.5O4を例示できる。
【0068】
具体的な正極活物質として、LiFePO4、Li2FeSiO4、LiCoPO4、Li2CoPO4、Li2MnPO4、Li2MnSiO4、Li2CoPO4Fを例示できる。他の具体的な正極活物質として、Li2MnO3-LiCoO2を例示できる。
【0069】
正極活物質としては、以上のものの一種以上を使用することができる。
正極に用いる導電助剤、結着剤、その他の添加剤については、負極の欄で説明したものを同様の配合割合で適宜適切に採用すれば良い。
【0070】
電解液は、非水溶媒と当該非水溶媒に溶解されたリチウム塩とを含む。
非水溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル類等が使用できる。環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートを例示でき、環状エステルとしては、ガンマブチロラクトン、2-メチル-ガンマブチロラクトン、アセチル-ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネートを例示でき、鎖状エステルとしては、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解液には、これらの非水溶媒を単独で用いてもよいし、又は、複数を併用してもよい。
【0071】
電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3などのリチウム塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
【0072】
本発明の二次電池は、必要に応じて、セパレータを備え得る。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
【0073】
本発明の二次電池は、固体電解質を有する全固体電池であっても良い。固体電解質としては、有機固体電解質及び無機固体電解質の何れを用いても良い。
【0074】
有機固体電解質としては公知のものを用いることができる。また、有機固体電解質のポリマーは特に限定されず、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン又はポリスルフィド等のポリマーを一種又は複数種有するものを使用することができる。複数種のポリマーを併用する場合、ポリマー同士の少なくとも一部は共重合体であっても良い。
無機固体電解質もまた特に限定されず、各種の酸化物、硫化物、窒化物、ハロゲン化物等、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、Li2S-Al2S3、Li2S-SiS2-Li3PO4、LiTi2(PO4)3、Li7La3Zr2O12、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12、(LaLi)TiO3、Li14ZnGe4O16、Li4SiO4、LiGeO4、Li3InBr6、Li3InCl6、Li2FeCl4等の通常のものを用い得る。
【0075】
本発明の二次電池は、上記した負極及び正極を用い、定法によって製造すれば良い。例えば、本発明の二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、上記した正極および負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とする。
また、本発明の二次電池は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電可能であれば良い。
本発明の二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
【0076】
本発明の二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両に二次電池を搭載する場合には、二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明の二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。なお、本発明のリチウム金属複合酸化物粉末には、不純物が含まれるものもある。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
図1に示すプラズマ発生装置を用いて、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末を製造した。
図1に示すプラズマ発生装置において黒塗り矢印は冷却水を表す。
【0080】
Li源及びO源としてLi2CO3を、Ti源としてTi(金属Ti)を各々準備した。Li2CO3とTiとを1:2のモル比で混合して混合粉体として、当該混合粉体を粉体供給器に配置した。なお、当該混合粉体におけるリチウム元素とチタン元素とのモル比、すなわち、リチウム金属複合酸化物原料におけるリチウム元素とチタン元素とのモル比は1:1であった。
【0081】
プラズマ発生装置内に、プロセスガスとしてアルゴンと酸素を体積比57.5:2.5で混合した混合ガスを60L/分で供給した。
その他、インナーガスとしてアルゴンを5L/分で供給し、キャリヤーガスとしてアルゴンを3L/分で供給した。電力供給装置から電力を供給し、周波数4MHzの磁場をコイルに印加して、出力20kWのプラズマを発生させた。なお、プラズマ発生装置内の圧力は大気圧とした。
このときのプラズマ発生装置における導入流の流量は、プロセスガスとインナーガスとキャリヤーガスとの和、すなわち、68L/分であった。
【0082】
プラズマの安定後、粉体供給器を作動させ、混合粉体を300mg/分の供給量で、キャリヤーガスとともに、プラズマ内へ導入した。プラズマ内を通過した後の通過流とともに放出された粉末を収集し、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末とした。
【0083】
なお、実施例1においては冷却ガスを使用しなかったが、既述したアルゴン等の冷却ガスを用い、導入流がプラズマ内を通過した後の通過流を当該通過流に対向する冷却ガス流で冷却する工程を実施しても良い。この場合には、粉末の冷却速度が高まり、より微細な粒子からなる粉末が得られると考えられる。
【0084】
上記の実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末を用いて、以下のとおり、実施例1の負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
負極活物質として実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック4質量部、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン1質量部を秤量して、メノウ乳鉢で混合し、粘土状に加工して負極活物質層用組成物を得た。集電体としてメッシュ状の銅を準備し、これに負極活物質層用組成物を圧着することで、実施例1の負極を得た。作業はすべてアルゴンガス置換された水分濃度1ppm以下のグローブボックス内で行った。
【0085】
上記の手順で作製した実施例1の負極を作用極として用い、リチウムイオン二次電池(ハーフセル)を作製した。対極は金属リチウム箔とした。
作用極及び対極、並びに両極の間に介装させるセパレータ(ヘキストセラニーズ社製ガラスフィルター及びCelgard社製「Celgard2400」)を配設して電極体とした。この電極体を電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉株式会社製)に収容した。電池ケースに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比3:7で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解した非水電解液を注入し、電池ケースを密閉して、実施例1のリチウムイオン二次電池を得た。
【0086】
(実施例2)
Li2CO3とTiとを1:4のモル比で混合して混合粉体としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末、実施例2の負極及び実施例2のリチウムイオン二次電池を製造した。なお、実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法において、混合粉体におけるリチウム元素とチタン元素とのモル比、すなわち、リチウム金属複合酸化物原料におけるリチウム元素とチタン元素とのモル比は1:2であった。
【0087】
(比較例1)
比較例1は、固相法によってリチウム金属複合酸化物粉末を製造する方法である。
比較例1では、Li2CO3とTiとを1:2のモル比で秤量し、これらの粉末をボールミルに投入した。そして、ボールミルによる混合を約100rpmで24時間行い、混合物とした。混合物を成形した上で、アルゴンガス雰囲気下、1000℃で12時間加熱して焼成することで、焼成物である比較例1のリチウム金属複合酸化物粉末を得た。
当該比較例1のリチウム金属複合酸化物粉末と導電助剤としてのアセチレンブラックとを、質量比5:2となるように秤量して、ボールミルに投入した。そして、ボールミルによる混合を600rpmで0.5時間行い、比較例1のリチウム金属複合酸化物及びアセチレンブラックを含む比較例1の混合物を得た。
【0088】
上記した比較例1の混合物、アセチレンブラック、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレンを乳鉢で混合して、粘土状の負極活物質層用組成物とした。当該負極活物質層用組成物において、比較例1のリチウム金属複合酸化物とアセチレンブラックとポリテトラフルオロエチレンとの質量比は5:4:1であった。
集電体としてメッシュ状の銅を準備し、これに負極活物質層用組成物を圧着して、比較例1の負極を得た。当該比較例1の負極を用い、実施例1と同様に、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0089】
(評価試験1)
実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末のTEM像を
図2に示し、実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末のTEM像を
図3に示す。
【0090】
図2及び
図3を基に、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径を測定した。その結果、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径は59nmであり、実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径は52nmであることがわかった。
【0091】
なお、例えば特許文献1には、スピネル型のリチウム金属複合酸化物につき、その一次粒径は0.1μm以上0.5μm以下であるのが好ましく、二次粒径は5μm以上50μm以下であるのが好ましい旨が紹介されている。特許文献1の実施例において、スピネル型のリチウム金属複合酸化物の一次粒径は0.2~0.4μm、二次粒径は15.5~18μmであり、ラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物の二次粒径は10.5~17μmである。
また、特許文献2には、スピネル型のLi4Ti5O12とラムスデライト型のLiTi2O4とが混晶状態にあるリチウム金属複合酸化物につき、平均一次粒子径が1~7μmの範囲にある旨が紹介されている。
【0092】
実施例1及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径は、これら従来のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径に比べて、非常に小さいといい得る。これは、特許文献1や特許文献2に紹介されているような従来のリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法と、本発明の製造方法との違いに因るものと考えられる。
【0093】
つまり、実施例1や実施例2で用いた本発明の製造方法は、熱プラズマ法を用いた製造方法である。これに対して、特許文献1及び特許文献2に紹介されているリチウム金属複合酸化物粉末の製造方法は、何れも、リチウム金属複合酸化物原料の粉末を比較的低い温度で加熱してリチウム金属複合酸化物を合成する、所謂固相法を用いたものである。
【0094】
固相法によると、熱プラズマ法とは異なり、リチウム金属複合酸化物原料が気化又は分解状態となる過程はない。つまり、固相法は微細なリチウム金属複合酸化物粒子が生成する端緒となる工程を備えず、その結果、当該固相法で得られるリチウム金属複合酸化物粒子は、熱プラズマ法により得られる本発明の粒子に比べて、粗大なものにしかなり得ないと推測される。実際に、上記したように、特許文献1及び特許文献2に紹介されているリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径は、実施例1及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径に比べて格段に大きい。
【0095】
この結果から、本発明の製造方法により製造された本発明のリチウム金属複合酸化物粉末が、従来のリチウム金属複合酸化物とは異なる、新規なリチウム金属複合酸化物粉末であることが裏付けられる。
【0096】
(評価試験2)
粉末X線回折装置にて、実施例1及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末を分析した。実施例1及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末のX線回折チャートを
図4に示す。
【0097】
図4に示すように、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末は、何れも、スピネル型のLi
4Ti
5O
12及びラムスデライト型のLi
2Ti
3O
7を含んでいた。
また、実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末のX線回折チャートには、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末のX線回折チャートに比べて、ラムスデライト型のLi
2Ti
3O
7に由来するピークが多く観察された。
更に、実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末のX線回折チャートには、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末のX線回折チャートではあまりみられなかった、ルチル型のTiO
2に由来するピークやアナターゼ型のTiO
2に由来するピークが多く観察された。
【0098】
当該X線回折チャートのピーク高さを基に、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末における各リチウム金属複合酸化物の比率を算出した。その結果、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末においては、スピネル型のLi4Ti5O12の含有率は90%、ラムスデライト型のLi2Ti3O7の含有率は5%、及び、TiO2の含有率は5%であった。また、実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末においては、スピネル型のLi4Ti5O12の含有率は45%、ラムスデライト型のLi2Ti3O7の含有率は45%、及び、TiO2の含有率は10%であった。
【0099】
これらの結果から、熱プラズマ法を用いた本発明の製造方法によると、スピネル型のリチウム金属複合酸化物だけでなくラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物も得られることがわかる。また、リチウム金属複合酸化物源として、リチウム元素よりも多くのチタン元素を含むものを用いることで、リチウム金属複合酸化物粉末におけるラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物の含有率を高め得ることもわかる。
【0100】
ところで、スピネル型のリチウム金属複合酸化物とラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物とは互いに相転移可能であると考えられる。例えば特許文献2には、スピネル型のLi4Ti5O12からラムスデライト型のLiTi2O4に相転移する境界温度は925℃である旨が紹介されている。
また、ラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物は、高温かつ上記の境界温度を下回る温度で保持されることで、ラムスデライト型からスピネル型に相転移する可能性がある。つまり、高温下でラムスデライト型に相転移したリチウム金属複合酸化物は、緩やかに冷却されると、再度ラムスデライト型からスピネル型に相転移する可能性がある。
【0101】
これに対して本発明の製造方法では、既述したように、リチウム金属複合酸化物粉末の製造時において、プラズマ内で高温に加熱されたリチウム金属複合酸化物源が急激に冷却される。このため、ラムスデライト型からスピネル型へのリチウム金属複合酸化物の相転移は生じ難く、その分だけ、リチウム金属複合酸化物の組成をコントロールし易いと考えられる。
つまり、本発明の製造方法によると、リチウム金属複合酸化物源におけるリチウム元素とチタン元素との比を適宜適切にコントロールすることで、リチウム金属複合酸化物の組成を容易にコントロールし得ると考えられる。
【0102】
具体的には、本発明の製造方法によると、実施例1のようにリチウム金属複合酸化物源におけるチタンの元素比とリチウムの元素比とを同程度にすることで、その大部分がスピネル型のリチウム金属複合酸化物で構成されるリチウム金属複合酸化物粉末を得ることができる。また、実施例2のようにリチウム金属複合酸化物源におけるチタンの元素比をリチウムの元素比よりも多くすることで、ラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物を多く含むリチウム金属複合酸化物粉末を得ることができる。
【0103】
また、上記した評価試験1の
図2及び
図3に示すように、実施例1のリチウム金属複合酸化物粉末及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末は、何れも、ナノ水準の球状の粒子、及び、ナノ水準であり四角形にみえる粒子を多く含む。このうち小径かつ四角形にみえる粒子は、八面体のスピネル型のリチウム金属複合酸化物粒子であると推測され、小径かつ球状の粒子は、ラムスデライト型のリチウム金属複合酸化物粒子であると推測される。
【0104】
図2及び
図3に示すように、実施例1及び実施例2の製造方法により得られるリチウム金属複合酸化物粉末は、ナノ水準であり互いに独立した非常に微細な粒子で構成されている。
ここで、特許文献1及び特許文献2に紹介されている走査型電子顕微鏡像によると、固相法で得られたリチウム金属複合酸化物粉末は、粗大なリチウム金属複合酸化物粒子が多数凝集したマイクロ水準の二次粒子で構成されていると考えられる。
したがって、実施例1及び実施例2の製造方法により得られる本発明のリチウム金属複合酸化物粉末は、その平均粒子径及び外観において、従来の固相法で得られたリチウム金属複合酸化物と大きく相違するということができる。
【0105】
(評価試験3)
実施例1のリチウムイオン二次電池及び比較例1のリチウムイオン二次電池に対し、室温で、1.0V-2.0V間の充放電を、電流値0.05mA、0.1mA、1mA、2mA及び5mAの順序で行う充放電サイクル試験を行った。また、実施例2のリチウムイオン二次電池については、上記の電圧での充放電を0.05mAで行う充放電試験を行った。評価試験3の結果を表1に示す。
なお、ここでの記述は、対極を正極、作用極を負極とみなしている。
【0106】
【0107】
表1に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて大きな容量を示した。また、実施例1のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて、高い電流値でも容量の低下が少なかった。
実施例1のリチウムイオン二次電池と実施例2のリチウムイオン二次電池とを比較すると、実施例2のリチウムイオン二次電池は、電流値0.05mAにおいて、実施例1のリチウムイオン二次電池と同程度に大きな容量を示した。
これらの結果は、実施例1及び実施例2のリチウムイオン二次電池では、比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて、負極における電池反応が効率良く行われていることを意味すると考えられる。
【0108】
実施例1及び実施例2のリチウムイオン二次電池において電池反応が効率良く行われた理由の1つとして、実施例1及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粒子の形状を挙げることができる。上記したように、実施例1及び実施例2のリチウム金属複合酸化物粉末は、平均粒子径がナノ水準であるために、その比表面積は非常に大きい。このようなリチウム金属複合酸化物粉末を負極活物質として用いることで、負極における電池反応の反応場が非常に大きくなり、その結果、負極における電池反応が効率良く行われたと推測される。