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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】包装用箱の持ち手構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/468 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
B65D5/468
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020080839
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172435
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】393028058
【氏名又は名称】サクラパックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 正浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 匠
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-016629(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3147232(JP,U)
【文献】特開2010-083532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/468
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種内容物(T1またはT2)が収容される内部空間(S)を取り囲むように配置される複数枚の側板(31、32)と、該内部空間(S)の下部を塞ぐ底板(21、22)と、該内部空間(S)の上部を塞ぐ上方内フラップ(51または61)および上方外フラップ(42)と、を有する包装用箱において、
前記内部空間(S)を挟んで互いに対向する二枚の前記側板(31)には、持ち手穴(37)を形成するため切れ目状の切断線(35)を設けてあり、該切断線(35)で囲まれた範囲の内側が持ち手板(36)となり、該持ち手板(36)が配置された該側板(31)の上端には前記上方内フラップ(51または61)が接続しており、
前記上方内フラップ(51または61)には、前記内部空間(S)を塞いだ際、前記側板(31)の上端よりも下方に落ち込む落下域を設けてあり、該落下域は拘束手段によって上方への移動を規制することができ、
前記内部空間(S)に向けて押し込まれた前記持ち手板(36)が前記落下域に接触することで、該持ち手板(36)の上方への移動が規制され、
前記上方内フラップ(51)には、前記内部空間(S)を塞いだ際、下方に向けて傾斜するように配置される根元域(53)と、該根元域(53)の先で概ね水平方向に配置される先方域(55)と、を設けてあり、前記落下域は、該根元域(53)の先端部または該先方域(55)の全体であり、
前記拘束手段は、前記先方域(55)の外縁部に位置しており、前記内容物(T1またはT2)に形成されている段差に嵌まり込む係合部(57)であることを特徴とする包装用箱の持ち手構造。
【請求項2】
各種内容物(T1またはT2)が収容される内部空間(S)を取り囲むように配置される複数枚の側板(31、32)と、該内部空間(S)の下部を塞ぐ底板(21、22)と、該内部空間(S)の上部を塞ぐ上方内フラップ(51または61)および上方外フラップ(42)と、を有する包装用箱において、
前記内部空間(S)を挟んで互いに対向する二枚の前記側板(31)には、持ち手穴(37)を形成するため切れ目状の切断線(35)を設けてあり、該切断線(35)で囲まれた範囲の内側が持ち手板(36)となり、該持ち手板(36)が配置された該側板(31)の上端には前記上方内フラップ(51または61)が接続しており、
前記上方内フラップ(51または61)には、前記内部空間(S)を塞いだ際、前記側板(31)の上端よりも下方に落ち込む落下域を設けてあり、該落下域は拘束手段によって上方への移動を規制することができ、
前記内部空間(S)に向けて押し込まれた前記持ち手板(36)が前記落下域に接触することで、該持ち手板(36)の上方への移動が規制され、
前記落下域は、前記上方内フラップ(61)に形成した切れ目状の区画線(63)で仕切られた舌片(65)であり、該舌片(65)を「く」の字状に屈曲させることでその中間部が下方に落ち込み、該区画線(63)の途中には、該舌片(65)の中心に向けて入り込むクビレ部(64)を設けてあり、
前記拘束手段は、前記舌片(65)が下方に落ち込むことで形成される断面に設けた突出面(67)であり、該突出面(67)は前記クビレ部(64)の外縁に位置しており、屈曲した該舌片(65)の先端側が該突出面(67)に接触することで、その屈曲が維持されることを特徴とする包装用箱の持ち手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運びの際、指先に加わる圧力を緩和することのできる包装用箱の持ち手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品や生活必需品など、様々な物資を流通させる際は、何らかの包装用箱を用いることが多い。この包装用箱の素材は段ボールが主流だが、耐水性や耐久性が必要になる場合、合成樹脂板を用いることもある。このように従来から広く普及している包装用箱の形状例を図9に示す。この包装用箱は最も単純なもので、四枚の側板が長方形状に配置されており、その下部を底板で塞いでいるほか、上部の開口を上方外フラップと上方内フラップで塞ぐことができ、両フラップと側板との境界には事前に折り目を加工してあり、通常は上方内フラップを先に閉じる。そして、人力での持ち運びを考慮し、側板の上部には、あらかじめU字状の切れ目を加工してあり、その内側の持ち手板を押し込むことで、指を差し入れるための持ち手穴が形成される。
【0003】
このような包装用箱の持ち手に関する技術開発の例として後記の文献が挙げられ、そのうち特許文献1では、梱包箱において、持ち手孔の端部の破断を防止できる構造が開示されている。この持ち手孔の中央には、横に延びる第1切込線を形成してあり、さらにこの第1切込線の上下いずれとも横に並ぶ三個の折込片で構成されており、全体では計六個の折込片で持ち手孔を塞いでいる。そしてこれらの折込片のうち、中央に位置する「上部中央折込片」と「下部中央折込片」は、その両隣のものよりも第1切込線から離れた位置にまで到達している。その結果、横に並ぶ三個の折込片は、中央の物が最も奥まで伸びており、全体で凸状の外観になる。このように持ち手孔に段差を設けることで、持ち手孔に指を通した際、その中央部でも負荷が受け止められるため、端部の負荷が軽減され、その破断を防止することができる。
【0004】
次の特許文献2では、別部材を用いることなく容器本体の持ち手の装着部分の強度を向上させることができる梱包容器が開示されている。この容器本体において、互いに対向する二側面には、切れ目で区画された舌片を形成してあり、この舌片を容器本体の内側上方に折り曲げ、側面と舌片を接触させた重なり部を設ける。そしてこの重なり部に二箇所の貫通孔を設け、さらにこの貫通孔を利用してヒモなどの持ち手を組み込むことで、持ち手は、側面と舌片が並ぶ重なり部で係止されることになり、必然的に持ち手の装着部分の強度が向上する。
【0005】
そのほか非特許文献1は、包装用箱の意匠登録であり、包装用箱の壁面に設けた手穴部の形状を小動物の顔に似せたことを特徴としており、需要者などに好印象を与えることが期待できる。加えて、手穴部の上部において、左右の突起(耳部)の間には、あらかじめ溝部を形成してあるため、手穴部が内側方向に折れ曲がりやすくなっており、手穴部を開く作業が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-123546号公報
【文献】特開2009-67442号公報
【文献】意匠登録第1589249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9のように、包装用箱の側板にU字状の切れ目を加工して持ち手穴を形成する方法は広く知られているが、この図の持ち手板は、その上端を軸として自在に揺動可能である。その結果、実際に包装用箱を持ち運ぶ際は、持ち手穴の上端(持ち手板の付け根)が指と強く接触することになるが、この持ち手穴の上端は、幅の狭い線状であり、指との接触面積が限られるため、指に作用する圧力が増大し、人に対して大きな苦痛を与えることになる。なお近年は、健康志向の高まりやネット通販の拡大といった事情から、飲用水の宅配が広く普及するようになり、飲用水が梱包された重い包装用箱を消費者自身で取り扱う機会が増えており、その際の苦痛を軽減できる対策が待ち望まれている。
【0008】
この苦痛を軽減する対策として、前記の特許文献2のように、何らかの持ち手を取り付ける方法は非常に有用である。ただし、この持ち手のように、何らかの付属部品を用いる場合、単純にその分の費用が増大するほか、その組み込み作業も必要になり、製造コストの増加が避けられない。したがって、一切の付属部品を用いることなく製造コストへの影響を最小限に留めながら、苦痛を軽減できることが望ましい。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、持ち運びの際の苦痛を軽減できるほか、製造コストの増加を抑制可能な包装用箱の持ち手構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1及び2に記載の発明は、各種内容物が収容される内部空間を取り囲むように配置される複数枚の側板と、該内部空間の下部を塞ぐ底板と、該内部空間の上部を塞ぐ上方内フラップおよび上方外フラップと、を有する包装用箱において、前記内部空間を挟んで互いに対向する二枚の前記側板には、持ち手穴を形成するため切れ目状の切断線を設けてあり、該切断線で囲まれた範囲の内側が持ち手板となり、該持ち手板が配置された該側板の上端には前記上方内フラップが接続しており、前記上方内フラップには、前記内部空間を塞いだ際、前記側板の上端よりも下方に落ち込む落下域を設けてあり、該落下域は拘束手段によって上方への移動を規制することができ、前記内部空間に向けて押し込まれた前記持ち手板が前記落下域に接触することで、該持ち手板の上方への移動が規制されることを1つの特徴とする包装用箱の持ち手構造である。
【0011】
本発明による包装用箱は、従来のものと同様、各種内容物を収容するための内部空間を取り囲むような形状で、通常は直方体状になる。そしてその側面は複数枚の側板が環状に並ぶ構成で、また内部空間の下部を塞ぐように底板を配置してある。さらに内部空間の上部は、側板の上端から伸びるフラップで塞がれるが、このフラップについては、箱の内部空間に入り込む上方内フラップと、その上に覆い被さる上方外フラップと、の二種類があり、内部空間を塞いだ状態では、上方外フラップだけが外部に露出する。なお本発明において、素材は段ボールに限定されるものではなく、合成樹脂板などに置き換えることができるほか、包装用箱の形状についても自在であり、直方体や立方体などに限定されるものではない。
【0012】
持ち手穴は、包装用箱を人力で持ち運ぶ際、指を差し入れるための隙間であり、それ自体は従来と何ら変わりがなく、内部空間を挟んで互いに対向する二枚の側板に設ける。そして持ち手穴は、側板に切れ目を加工し、その内側を包装用箱の内部空間に向けて押し込むことで形成される。なお本発明では、この切れ目を切断線と称しており、切断線で囲まれた範囲の内側を持ち手板と称しているが、持ち手板は、押し込まれた後も側板から切り離されることはない。そのため切断線は、環状ではなくU字状などになり、この切断線の両端を結ぶ線が持ち手板の揺動の軸となるが、この軸は、持ち手穴の上端に位置するものとする。そのほか、持ち手穴が形成される側板の上端には、上方外フラップではなく、上方内フラップが接続するものとする。
【0013】
落下域は、上方内フラップで内部空間を塞いだ際、その付け根部分よりも下方に落ち込む部分を指しており、持ち手穴の内側上方に配置する必要がある。したがって持ち手板を押し込むと、やがて持ち手板がほぼ水平方向に突出して落下域と接触し、それよりも上方に移動することを防ぐ。この状態で持ち手穴に指を差し入れると、指と持ち手板は、線状ではなく面状に接触し、双方の接触面積が増大することから、指に作用する圧力が緩和される。なお、持ち手板と落下域との接触点は、持ち手板が水平方向に突出する状態を基準として、概ねその上下30度の範囲とする。
【0014】
落下域の具体的な形状や大きさは自在であり、その具体例としては、上方内フラップの根元部分を除いた範囲を落下域とすることもあれば、上方内フラップの中央に切れ目を加工し、その内側だけを下方に突出させ、落下域とすることもできる。いずれについても、持ち手板と接触することで、その移動を規制できればよい。なお包装用箱を持ち運ぶ際は、落下域にもその荷重が伝達するため、それに応じた強度を確保する必要がある。
【0015】
拘束手段は、上方内フラップと上方外フラップを閉じた後、落下域の浮き上がりを防ぐ役割を担う。この拘束手段が適切に機能することで、持ち手板と落下域が接触した際、落下域がその反力で押し上げられ、持ち手板が移動してしまうことを防ぐ。なお拘束手段の具体例については、落下域と上方外フラップとの間に柱状の部材を挟み込む方法や、落下域を側板と一体化させる方法など、様々のものを選択可能だが、信頼性や製造コストに配慮されたものが望ましい。
【0016】
このように、側板と底板と上方内フラップと上方外フラップなどで構成される包装用箱において、互いに対向する二枚の側板には、持ち手穴を形成するための切れ目を設け、また上方内フラップの一部には落下域を設け、さらに落下域の移動を規制する拘束手段を設けることで、持ち手穴を形成するために押し込まれた持ち手板は、落下域との接触によって水平方向に突出した状態を維持することになる。そのため、持ち手穴に指を差し入れて包装用箱を持ち運ぶ際、指と持ち手板は、広い範囲で面接触することになり、指に作用する圧力が緩和され、苦痛を軽減することができる。
【0017】
請求項1に記載の発明は拘束手段の具体例に関する特徴を有し、上方内フラップには、内部空間を塞いだ際、下方に向けて傾斜するように配置される根元域と、根元域の先で概ね水平方向に配置される先方域と、を設けてあり、落下域は、根元域の先端部または先方域の全体であり、拘束手段は、先方域の外縁部に位置しており、内容物に形成されている段差に嵌まり込む係合部であることを特徴とする。ここでの上方内フラップは、その根元(側板との接続点)に近い側と、この根元から離れた先端側に区画され、そのうち根元側を根元域と称し、対する先端側を先方域と称するものとする。したがって根元域は、側板の上端から下方に向けて傾斜するように配置され、その先の先方域は、ほぼ水平方向に突出する。
【0018】
拘束手段となる係合部は、先方域の外縁部の一部区間を指しており、この区間を内容物に形成された段差に接触させることで、落下域の浮き上がりを防ぐ。なお「内容物に形成されている段差」とは、内容物の側面において、水平方向外側に突出している箇所のほか、何らかのへこみを指しており、その具体例としては、各種液体が充填されたボトルにおいて、キャップが嵌め込まれた箇所が挙げられる。この場合、係合部(先方域の外縁部の一部区間)をキャップの底面に接触させることで、先方域は上方へ移動できなくなる。したがってこの発明において、上方内フラップの形状や係合部の配置は、内容物の形状や収容方法に応じて決めることになる。
【0019】
請求項2に記載の発明についても、拘束手段の具体例に関する特徴を有し、落下域は、上方内フラップに形成した切れ目状の区画線で仕切られた舌片であり、舌片を「く」の字状に屈曲させることでその中間部が下方に落ち込み、区画線の途中には、舌片の中心に向けて入り込むクビレ部を設けてあり、拘束手段は、舌片が下方に落ち込むことで形成される断面に設けた突出面であり、この突出面はクビレ部の外縁に位置しており、屈曲した舌片の先端側が突出面に接触することで、その屈曲が維持されることを特徴とする。
【0020】
ここでの落下域は、上方内フラップに設けた舌片である。舌片は、上方内フラップに加工した切れ目の内側であり、舌片を押し下げることで落下域が形成されるが、当然ながら舌片は、持ち手穴の上方付近に配置する。また舌片の外縁となる切れ目は、上方内フラップの根元などを始点として二本が概ね平行に伸び、その先でこの二本が結ばれた構成であり、必然的に舌片は帯状になるが、切れ目は環状ではないため、舌片が上方内フラップから切り離されることはない。なおこの切れ目は、区画線と称するものとする。そして舌片を内部空間に向けて押し下げる際は、その根元から先端に向けて単純に傾斜させる訳ではなく、その中間部を屈曲させ、「く」の字を横に倒したような形状にする。加えて、区画線において二本が概ね平行に伸びる区間は、単純な直線状ではなく、その途中でジグザグ状にう回させ、局地的に舌片の中心方向に入り込むクビレ部を設ける。
【0021】
拘束手段となる突出面は、舌片を押し下げた後、区画線に沿って形成される断面を流用したもので、そのうちクビレ部の外縁に相当する区間であり、且つ舌片の付け根と対向している箇所である。当然ながら突出面は、区画線の外側(舌片ではない方)に位置している。そして屈曲させた舌片の先端側をこの突出面に接触させることで、その屈曲が維持されることになる。なおクビレ部を設けることで、舌片の先端側は、突出面に接触可能な横幅を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1及び2に記載の発明のように、側板と底板と上方内フラップと上方外フラップなどで構成される包装用箱において、互いに対向する二枚の側板には、持ち手穴を形成するための切れ目を設け、また上方内フラップの一部には落下域を設け、さらに落下域の移動を規制する拘束手段を設けることで、持ち手穴を形成するために押し込まれた持ち手板は、落下域との接触によって水平方向に突出した状態を維持することになる。そのため、持ち手穴に指を差し入れて包装用箱を持ち運ぶ際、指と持ち手板は、広い範囲で面接触することになり、指に作用する圧力が緩和され、苦痛を軽減することができる。
【0023】
その結果、未開封のボトルが収容された包装用箱など、重量がかさむ場合でも需要者が無理なく持ち運ぶことができ、安全性の向上に貢献する。加えて本発明では、付属品が一切不要であり、包装用箱を構成する板材に所定の切れ目を加工するだけで実現可能であり、製造コストの増大を抑制できる。
【0024】
請求項1に記載の発明のように、上方内フラップを根元域と先方域に区画し、根元域を下方に向けて傾斜するように配置して落下域を設けるほか、その拘束手段については、先方域の外縁部に位置する係合部を用い、この係合部を内容物に形成された段差に嵌め込むことで、落下域の移動を確実に規制することができる。なおこの発明では、内容物に応じて係合部を配置する必要があり、包装用箱の形状は、内容物に依存することになる。
【0025】
請求項2に記載の発明のように、上方内フラップに形成した舌片を落下域とするほか、その拘束手段については、舌片が落ち込むことで形成される断面に位置する突出面を用い、屈曲した舌片の先端側をこの突出面に接触させることで、舌片の移動を確実に規制することができる。なおこの発明は、内容物に依存することなく包装用箱単体で機能する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による包装用箱の形状例を示す斜視図であり、図の下方では断面構造を描いてある。
図2図1の包装用箱において、上方内フラップを折り曲げる前の状態を示す斜視図であり、その断面構造と全体形状を描いてある。
図3図1の包装用箱において、上方内フラップを折り曲げた後の状態を示す斜視図であり、図の上方は内容物を収容する前で、図の下方は収容した後である。
図4図1の包装用箱に内容物を収容し、さらに持ち手板を押し込んだ状態を示す斜視図であり、その断面構造と全体形状を描いてある。
図5図1とは異なる構成の包装用箱の形状例を示す斜視図であり、大形の内容物を一個だけ収容する形態である。
図6図5の包装用箱に内容物を収容した状態を示す斜視図であり、図の上方は持ち手板を押し込む前で、図の下方は押し込んだ後である。
図7図1および図5とは異なる構成の包装用箱の形状例を示す斜視図であり、上方内フラップの中央付近に舌片を設けてある。なお図の下方には、舌片の詳細を描いてある。
図8図7の包装用箱の舌片を屈曲させた状態を示す斜視図であり、図の上方は持ち手板を押し込む前で、図の下方は押し込んだ後である。
図9】従来から広く普及している包装用箱の形状例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明による包装用箱11の形状例を示しており、図の下方では断面構造を描いてある。この包装用箱11は直方体状で、計六本の内容物T1を収容するために用いられる。なおここでの内容物T1は、飲用水が充填されたボトルBであり、その上部にはキャップCが嵌め込まれており、六本が緩みなく包装用箱11に収容される。また包装用箱11は、内容物T1が収容される内部空間Sを四枚の側板31、32で取り囲む構造で、そのうち対向する一組の側板32は横に長く、残る一組の側板31は横に短く、この横に短い側板31に持ち手穴37を設けてある。さらに内部空間Sの下部は、底板22で塞がれている。
【0028】
持ち手穴37は、包装用箱11を持ち運ぶ際の持ち手として機能するもので、包装用箱11を構成する板材を切り出す際、側板31の中央上部にU字状の切れ目を加工することで形成されるが、ここではこの切れ目を切断線35と称しており、その内側を持ち手板36と称しているが、切断線35は環状ではなくU字状のため、その上端同士を結ぶ区間は途切れており、この区間を軸として持ち手板36は揺動可能になる。そして持ち手板36を内部空間Sに向けて押し込むことで、切断線35の内側に持ち手穴37が形成され、ここに指を差し入れることで、包装用箱11を持ち運ぶことができる。
【0029】
内部空間Sの上部は、横に長い側板32の上端に接続する一組の上方外フラップ42と、横に短い側板31の上端に接続する一組の上方内フラップ51と、で塞がれるが、その際は、まず上方内フラップ51を折り曲げ、次に上方外フラップ42を折り曲げるが、一組の上方外フラップ42は、内部空間Sを完全に塞ぐ大きさを確保してある。対して上方内フラップ51は、単純な矩形状ではなく、先細りの三角形状としてあるほか、使用時の利便性を考慮し、製造段階で元部折り目52と先方折り目54を加工してあり、元部折り目52と先方折り目54との間を根元域53と称し、先方折り目54の先を先方域55と称している。そのうち根元域53は、上方内フラップ51を閉じた際、側板31の上端から下向きに傾斜するように配置される。対して先方域55は、内容物T1のキャップCの底面と同等の高さになり、ほぼ水平に配置される。
【0030】
先方域55の左右には、円弧状の係合部57を設けてある。係合部57は、先方域55などの移動を規制する拘束手段として機能しており、この図では、係合部57をキャップCの底面に接触させる。その結果、先方域55は、キャップCの底面よりも上方に移動することができず、上方外フラップ42との間隔が維持される。なお係合部57は、先方域55の左右に配置しており、このいずれとも、キャップCの底面に嵌まり込み、先方域55は安定した状態で移動が規制される。そのほか先方域55の中央には、切り抜き状の逃し部56を設けてある。逃し部56は、持ち手板36のほか、差し込まれた指を通す役割を担う。そのため逃し部56は、持ち手板36に応じた横幅としてある。
【0031】
図1の下方では、上方内フラップ51を折り曲げ、係合部57をキャップCの底面に嵌め込んだ状態を描いてあり、上方内フラップ51の根元域53は、側板31の上端から下向きに傾斜しており、その先で先方域55が水平方向に突出しており、その外縁部に位置する係合部57は、キャップCの底面に嵌まり込んでいる。なおボトルBは、内部空間Sに隙間なく収容されており、水平方向に移動することはない。そのため、係合部57がキャップCから離脱することは不可能であり、先方域55が自然に上方に移動することはない。
【0032】
持ち手板36を内部空間Sに向けて押し込むと、やがてほぼ水平方向に突出した状態になり、根元域53の端部と接触する。したがって持ち手板36は、これよりも上方に移動することができない。その結果、持ち手穴37に指を差し入れると、指と持ち手板36が広い範囲で面接触するため、指に作用する圧力が緩和される。なお持ち手板36の先端側は、根元域53との接触点で折れ曲がり、逃し部56に入り込むことができ、加えて逃し部56には指も入り込むことができる。そのため包装用箱11を持ち運ぶ際は、持ち手穴37の上部を指で握り締めた状態になり、手の平側の全域で荷重を受け止め、包装用箱11を安定した状態で持ち運ぶことができる。
【0033】
なお左右の上方内フラップ51は同一形状だが、図1の上方では、右側のものは真上に突出させてあり、対する左側のものは折り曲げた後の状態になっており、その先方域55はキャップCの底面付近で水平方向に突出している。また図1の下方では、左右の上方内フラップ51のいずれとも、折り曲げた後の状態になっており、その係合部57がキャップCの底面に嵌まり込んでいる。
【0034】
図2は、図1の包装用箱11において、上方内フラップ51を折り曲げる前の状態を示しており、その断面構造と全体形状を描いてある。この図の右上のように、内部空間Sの下部は、横に長い側板32から伸びる底板22と、横に短い側板31から伸びる底板21と、が重なる構造である。また切断線35の内側が持ち手板36になるが、これは当初の段階では側板31と段差なく並んでおり、内部空間Sに異物が入り込むことを防いでいる。ただし、指などで持ち手板36を内部空間Sに向けて押し込むと、簡単に移動する。そのほか内容物T1は、ボトルBの首部にキャップCが嵌め込まれた構造で、ボトルBの首部に対してキャップCの方が大径となっており、ここに段差が生じることになる。
【0035】
図3は、図1の包装用箱11において、上方内フラップ51を折り曲げた後の状態を示しており、図の上方は内容物T1を収容する前で、図の下方は収容した後である。上方内フラップ51の元部折り目52を大きく折り曲げると、根元域53が下向きに傾斜した状態になり、さらに先方折り目54を逆方向に折り曲げると、先方域55は、ほぼ水平状態になる。なおこの状態での先方域55の高さは、内容物T1の形状に応じて決める必要がある。
【0036】
そしてこの図の下方のように、内部空間Sに内容物T1を収容する際は、先方域55の係合部57をキャップCの底面に接触させ、上方内フラップ51の移動を規制させる。なお図では三個の内容物T1が並んでいるが、これらは緩みなく内部空間Sに収容されるため、これらが不用意に移動することはなく、輸送などで激しい揺れが加わった際も、係合部57がキャップCから離脱することはない。
【0037】
図4は、図1の包装用箱11に内容物T1を収容し、さらに持ち手板36を押し込んだ状態を示しており、その断面構造と全体形状を描いてある。持ち手板36を押し込むと、やがてその一部範囲が根元域53と接触し、それ以上の移動が規制され、持ち手板36は、概ね水平方向に突出することになる。したがって包装用箱11を持ち運ぶため、持ち手穴37に指を差し入れた際、指と持ち手板36は広い範囲で面接触し、指に作用する圧力が緩和される。しかも上方内フラップ51は、内容物T1によって移動が規制されており、持ち手板36からの荷重が根元域53に伝達した際も、その荷重が根元域53で受け止められ、持ち手板36が大きく変形することはない。
【0038】
持ち手板36の先端側は、先方域55の逃し部56に入り込む。逃し部56は持ち手板36を通すことができる大きさとしてあり、しかも逃し部56の中については、持ち手板36の変形が規制されない。そのため持ち運びの際、指を逃し部56まで差し入れ、さらに指を曲げることで、持ち手穴37の上部を指で握り締めることができ、包装用箱11を安定した状態で保持できる。このように逃し部56を設けることで、身体的負担を一段と軽減することができる。
【0039】
図5は、図1とは異なる構成の包装用箱12の形状例を示しており、大形の内容物T2を一個だけ収容する形態である。この内容物T2は、ウォーターサーバーに飲用水を供給するための大形のボトルBであり、包装用箱12は、内容物T2を隙間なく収容できる大きさで、真上から見て正方形であり、角を挟んで隣接する側板31、32は、いずれとも同じ大きさになるが、その一方の側板31の上端には上方内フラップ51が接続しており、残る一方の側板32の上端には上方外フラップ42が接続している。さらに上方内フラップ51と接続する側板31には、切れ目状の切断線35をU字状に加工してあり、その内側が持ち手板36になり、持ち手板36を押し込むことで持ち手穴37が形成される。
【0040】
この包装用箱12についても、上方内フラップ51の基本的な構成は、図1のものと同じであり、元部折り目52と先方折り目54との間が根元域53になり、その先が先方域55になり、先方域55の中央には、切り抜き状の逃し部56を設けてある。そして上方内フラップ51を閉じた際、根元域53は、側板31の上端から下方に向けて傾斜するように配置され、その先で先方域55が水平方向に突出する。また、先方域55の先端の外縁部は、係合部58としてある。係合部58は、内容物T2のキャップCの底面に嵌まり込み、上方内フラップ51の移動を規制する拘束手段として機能する。そのほか逃し部56は、持ち手板36が入り込み可能な大きさとしてある。
【0041】
図6は、図5の包装用箱12に内容物T2を収容した状態を示しており、図の上方は持ち手板36を押し込む前で、図の下方は押し込んだ後である。包装用箱12に内容物T2を収容した後、上方内フラップ51を閉じ、その根元域53を傾斜させた上、その先の先方域55を水平方向に突出させ、その先端の係合部58をキャップCの底面に嵌め込むと、先方域55および根元域53の移動が規制される。したがって持ち手板36を押し込むと、やがてその一部範囲が根元域53の端部に接触し、それ以上の移動が規制される。ただし逃し部56に入り込む部分については、規制を受けない。そのため差し入れた指で持ち手板36をさらに押し込むと、持ち手板36は根元域53との接触点で折れ曲がり、逃し部56に入り込むが、この際は、持ち手穴37の上部を握り締めた状態になり、包装用箱12が安定した状態で保持され、その持ち運びを円滑に行うことができる。
【0042】
図7は、図1および図5とは異なる構成の包装用箱13の形状例を示しており、上方内フラップ61の中央付近に舌片65を設けてある。なお図の下方には、舌片65の詳細を描いてある。この包装用箱13についても、内部空間Sを側板31、32で取り囲み、その下部を底板22で塞いでいるほか、上方内フラップ61と接続する側板31には、切れ目状の切断線35を加工してあり、その内側が持ち手板36になり、これを押し込むことで持ち手穴37が形成される点に変わりはなく、上方内フラップ61の付け根には元部折り目62を加工してある。ただし、これまでの各図のように、上方内フラップ51に根元域53と先方域55を設けた構成ではなく、その代替として舌片65を設けてあり、これが、持ち手板36の移動を規制する落下域として機能する。
【0043】
舌片65は、切れ目状の区画線63によって周囲から切り離されており、その形状は、上方内フラップ61の付け根から先端に向けて伸びる帯状だが、その両側は単純な直線状ではなく、途中で中心側に入り込むクビレ部64を設けてあり、ジグザグ状になっている。そして舌片65を押し下げることで持ち手板36と接触可能になり、その移動を規制することになるが、舌片65は単純に押し下げる訳ではなく、その中間部を屈曲させ、「く」の字を横に倒したような形状にする。
【0044】
舌片65を押し下げた後、その抜け跡は、区画線63に沿った断面が露出することになるが、この断面の一部である突出面67は、舌片65の移動を規制する拘束手段として機能する。突出面67は自在に配置できる訳ではなく、クビレ部64の外縁にあたる箇所で、しかも舌片65の付け根と対向する箇所に限定される。そして実際に舌片65を押し下げて屈曲させた後、その先端部を突出面67に接触させると、舌片65が「く」の字状に屈曲した状態を維持する。さらに上方外フラップ42を閉じると、舌片65が押し上げられることを防ぎ、持ち手板36から舌片65に上向きの荷重が作用した際も、変形することなくこれを受け止める。なお舌片65の先端部は、クビレ部64から離れているため、突出面67に接触可能な横幅が確保されている。そのほか図中の上方内フラップ61は、対向する二枚とも同一形状である。
【0045】
図8は、図7の包装用箱13の舌片65を屈曲させた状態を示しており、図の上方は持ち手板36を押し込む前で、図の下方は押し込んだ後である。舌片65を「く」の字状に屈曲させ、その先端部を突出面67に接触させると、舌片65はその形状を維持する。また舌片65は、持ち手板36の上方に配置してあり、押し込まれた持ち手板36は、やがて図の下方のように舌片65と接触する。この際、持ち手板36は、ほぼ水平方向に突出するため、指との接触面積が増大し、指に作用する圧力が緩和される。なお実際には上方外フラップ42を閉じるため、舌片65の移動が規制されるほか、舌片65が持ち手板36と接触した際も、その上向きの荷重を受け止めることができる。
【符号の説明】
【0046】
11 包装用箱(拘束手段が係合部、内容物が小さいボトル六本)
12 包装用箱(拘束手段が係合部、内容物が大きいボトル一本)
13 包装用箱(拘束手段が突出面)
21 底板(折り曲げた際、上方に位置する方)
22 底板(折り曲げた際、下方に位置する方)
31 側板(その上端に上方内フラップが接続)
32 側板(その上端に上方外フラップが接続)
35 切断線(切れ目)
36 持ち手板
37 持ち手穴
42 上方外フラップ
51 上方内フラップ
52 元部折り目
53 根元域
54 先方折り目
55 先方域
56 逃し部
57 係合部(拘束手段)
58 係合部(拘束手段)
61 上方内フラップ
62 元部折り目
63 区画線(切れ目)
64 クビレ部
65 舌片
67 突出面(拘束手段)
B ボトル
C キャップ
S 内部空間
T1 内容物(大きいボトル)
T2 内容物(小さいボトル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9