(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】自動放送装置、及びその情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G10L 13/00 20060101AFI20240304BHJP
H04H 20/62 20080101ALI20240304BHJP
H04H 60/25 20080101ALI20240304BHJP
H04H 60/27 20080101ALI20240304BHJP
H04H 60/90 20080101ALI20240304BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20240304BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20240304BHJP
【FI】
G10L13/00 100Z
H04H20/62
H04H60/25
H04H60/27
H04H60/90
B61D37/00 G
G10L15/00 200Z
(21)【出願番号】P 2020085258
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充男
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】平塚 友久
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-292401(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083653(WO,A1)
【文献】特開2008-244527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 13/00
H04H 20/00-60/90
B61D 37/00
G10L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載された自動放送装置であって、
自動放送の内容を示す第1のテキストデータに基づく自動放送音声を音声合成によって生成する音声合成部と、
前記自動放送音声の音声認識によって生成された第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を送信する送信部と
を含む自動放送装置。
【請求項2】
前記第2のテキストデータは、前記音声合成部から出力された自動放送音声が前記鉄道車両内のスピーカから放音され、マイクロフォンによって集音された場合の音声から生成される
請求項1に記載の自動放送装置。
【請求項3】
前記第2のテキストデータは、前記音声合成部から出力された自動放送音声に対する音声認識によって生成される
請求項1又は2に記載の自動放送装置。
【請求項4】
前記第1のテキストデータを示す情報を受信する受信部
をさらに含む請求項1から3のいずれか一項に記載の自動放送装置。
【請求項5】
前記第1のテキストデータは、前記鉄道車両内の記憶装置に記憶され、指示に応じて前記音声合成部に供給される
請求項1から4のいずれか一項に記載の自動放送装置。
【請求項6】
前記第2のテキストデータを音声認識によって生成する音声認識部をさらに含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の自動放送装置。
【請求項7】
鉄道車両に搭載された自動放送装置が、
自動放送の内容を示す第1のテキストデータに基づく自動放送音声を音声合成によって生成することと、
前記自動放送音声の音声認識によって生成された第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を送信することと
を含む自動放送装置の情報処理方法。
【請求項8】
前記第2のテキストデータは、前記音声合成によって生成された音声が前記鉄道車両内のスピーカから放音され、マイクロフォンによって集音された場合の音声から生成される請求項7に記載の自動放送装置の情報処理方法。
【請求項9】
前記第2のテキストデータは、前記自動放送音声に対する音声認識によって生成される請求項7に記載の自動放送装置の情報処理方法。
【請求項10】
前記自動放送装置が、前記第1のテキストデータを示す情報を受信することをさらに含む
請求項7から9のいずれか一項に記載の自動放送装置の情報処理方法。
【請求項11】
前記自動放送装置が、指示に応じて、記憶装置に記憶された前記第1のテキストデータを音声合成用に読み出すことをさらに含む
請求項7から10のいずれか一項に記載の自動放送装置の情報処理方法。
【請求項12】
通信によって、自動放送音声の内容を示す第1のテキストデータを示す情報を含む指示を鉄道車両に送信する送信部と、
前記鉄道車両内の自動放送装置による前記第1のテキストデータの音声合成によって生成された自動放送音声の音声認識によって生成された第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を前記鉄道車両から受信する受信部と、
を含む情報処理装置。
【請求項13】
前記第2のテキストデータが受信された場合に、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとを対比して前記自動放送装置の動作適否判定を行う処理部をさらに含む請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
通信によって、自動放送音声の内容を示す第1のテキストデータを示す情報を含む指示を鉄道車両に送信し、
前記鉄道車両内の自動放送装置による前記第1のテキストデータの音声合成によって生成された自動放送音声の音声認識によって生成された第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を受信することをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項15】
前記第2のテキストデータが受信された場合に、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとを対比して前記自動放送装置の動作適否判定を前記コンピュータにさらに実行させる請求項14に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動放送装置、及びその情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両において、駅からの出発、到着、扉が開く側、乗り換え等の案内放送を自動的に放送する自動放送装置が搭載されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、自動放送用データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された自動放送用データを変更するための変更データを、無線通信を介して取得するデータ取得部と、データ取得部により取得された変更データに基づいて、記憶部に記憶された自動放送用データを変更する制御部とを備え、記憶部は自動放送用データのうち書き換えが必要なデータを格納する書き換え可能領域と、書き換えが不要なデータを格納する書き換え不要領域とを有し、データ取得部は、既に書き換え可能領域に格納されているデータを含む変更データを取得するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-216709号公報
【文献】特開2018-137598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載された技術は、例えば、『この電車は、上野東京ライン、高崎線直通、普通、高崎行きです』との自動放送の文章を、『この電車は、「a:上野東京ライン」、「b:高崎交通鉄道」、「c:普通」、「d:高崎」行きです』のように、不変部分(この列車は、~行きです)と、a~dのような、a:ライン名、b:直通運転、c:列車種別、d:行先の可変部分とに分けて、無線通信を用いて可変部分のデータを鉄道車両(編成)に送り、鉄道車両内で書き換えがなされるようにしたものである。
【0005】
しかしながら、書き換え後の自動放送音声が設定通りであるかの確認は、実際の鉄道車両に乗り込んで自動放送音声を聞くことによって行われており、煩雑であった。
【0006】
本発明は、自動放送装置の動作確認を遠隔から実施可能とする自動放送装置、及びその情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、鉄道車両に搭載された自動放送装置であって、自動放送の内容を示す第1のテキストデータに基づく自動放送音声を音声合成によって生成する音声合成部と、音声認識によって生成された、前記マイクによって集音された音声を示す第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を送信する送信部とを含む自動放送装置である。
【0008】
自動放送装置において、第2のテキストデータは、音声合成部から出力された自動放送音声が前記鉄道車両内のスピーカから放音され、マイクロフォンによって集音された場合の音声から生成されるように構成してもよい。或いは、音声合成部から出力された自動放送音声に対して音声認識が成される構成が採用されてもよい。
【0009】
自動放送装置は、前記第1のテキストデータを示す情報を受信する受信部をさらに含ん
でもよい。前記第1のテキストデータは、前記鉄道車両内の記憶装置に記憶され、指示に応じて前記音声合成部に供給されてもよい。また、自動放送装置は、前記第2のテキストデータを音声認識によって生成する音声認識部をさらに含んでもよい。
【0010】
本発明の他の態様の一つは、鉄道車両に搭載された自動放送装置が、自動放送の内容を示す第1のテキストデータに基づく自動放送音声を音声合成によって生成することと、前記自動放送音声の音声認識によって生成された第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を送信することとを含む自動放送装置の情報処理方法である。
【0011】
上記情報処理方法において、前記自動放送装置が、前記第1のテキストデータを受信することをさらに含む構成を採用してもよい。また、前記自動放送装置が、指示に応じて、記憶装置に記憶された前記第1のテキストデータを前記音声合成用に読み出すことをさらに含む構成を採用してもよい。或いは、 前記自動放送装置が、前記第2のテキストデータを音声認識によって生成することをさらに含む構成を採用してもよい。
【0012】
本発明の他の態様の一つは、通信によって、自動放送音声の内容を示す第1のテキストデータを示す情報を含む指示を鉄道車両に送信する送信部と、前記鉄道車両内の自動放送装置による前記第1のテキストデータの音声合成によって生成された自動放送音声の音声認識によって生成された第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を前記鉄道車両から受信する受信部と、を含む情報処理装置である。
【0013】
情報処理装置が、前記第2のテキストデータが受信された場合に、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとを対比して前記自動放送装置の動作適否判定を行う処理部をさらに含む構成を採用してもよい。
【0014】
本発明の他の態様の一つは、通信によって、自動放送音声の内容を示す第1のテキストデータを示す情報を含む指示を鉄道車両に送信し、前記鉄道車両内の自動放送装置による前記第1のテキストデータの音声合成によって生成された自動放送音声の音声認識によって生成された第2のテキストデータ、又は、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとの対比に基づく自動放送装置の動作適否を示す情報を受信することをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0015】
上記プログラムに関して、前記第2のテキストデータが受信された場合に、前記第1のテキストデータと前記第2のテキストデータとを対比して前記自動放送装置の動作適否判定を前記コンピュータにさらに実行させる構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動放送装置、及びその情報処理方法によれば、自動放送装置の動作確認を遠隔から実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図3は、自動放送装置のCPUの処理例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、サーバのプロセッサの処理例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、端末装置のプロセッサの処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、実施形態に係る自動放送装置の動作確認装置、及びその動作確認方法について説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
図1は、鉄道車両に搭載された自動放送装置100を含む、自動放送システムの一例を示す。
【0019】
図1において、鉄道車両10は、破線で模式的に示される。通常、鉄道車両は、先頭車両と、先頭車両に連結され、客室を有する1又は2以上の客車とを含む。鉄道車両10には、車内放送システム、非常通報システム、セキュリティカメラシステムなどが搭載されている。
【0020】
車内放送システムは、自動放送装置100と、制御増幅器(C.AMP)106と、及び出
力増幅器(P.AMP)107と、出力増幅器107に接続された1又は2以上の車内スピー
カ108とを含む。車内スピーカ108は客室内に設置されている。
【0021】
自動放送装置100は、図示しないモニタ装置(列車情報管理装置)に接続されている。モニタ装置は、鉄道車両の制御伝送・モニタリング装置(列車情報管理システムとも呼ばれる)であり、例えば、INTEROS(INtegrated Train communication networks for Evolvable Railway Operation System)、TIMS(Train Information Management System)などである。モニタ装置は、鉄道車両1に装備されている各種機器の状態などを表示器に表示し、監視及び制御を行う。モニタ装置は、種々の情報を表示及び設定する。情報は、列車情報(列車種別・列車番号または運行番号・行先・列車の現在位置・次停車駅など)、主要機器の動作状態、ドアの開閉状態、車内環境(温度・湿度・乗車率)、空調設定、自動放送・車内案内表示装置の設定、緊急時・故障時の操作支援、機器の遠隔操作などである。モニタ装置は、例えば、図示しない速度発電機から速度(車速)及び車両の位置情報を得る。
【0022】
自動放送装置100は、モニタ装置とデ-タ通信を行い、自動放送の設定情報や、列車の現在位置、時刻情報などをモニタ装置から取得する。自動放送装置100は、制御増幅器106及び出力増幅器107と音声線及び放送起動線を介して接続される。
【0023】
自動放送装置100は、CPU102と、記憶装置103と、テキスト選択部104と、音声合成部105と、音声認識部111とを含んでいる。CPU102は、処理部又は制御部の一例である。音声合成部105は、制御増幅器106と接続される。鉄道車両10内には、車内スピーカ108から放音された音声を集音するマイクロフォン(マイク)109が設置され、マイクロフォン109は、マイクアンプ(MIC AMP)110と接続さ
れており、マイクアンプ110はスイッチSW1を介して音声認識部111に接続されている。
【0024】
スイッチSW1は、マイクアンプ110からの信号の出力元を音声合成部105とマイクアンプ110との一方に切り替えることができる。スイッチSW1がオフのとき、マイクアンプ110からの信号が音声認識部111に接続されることで、マイクロフォン109に入力された、乗務員の音声などを車内スピーカ108から放送することができる。また、スイッチSW1がオンのとき、音声合成部105からの信号が音声認識部111に接続される。音声認識部111は、音声認識処理によって、マイクロフォン109で集音された音声を示すテキストデータを生成し、CPU102に供給する処理を行う。音声認識の方法は、既存の音声認識方法から適宜の方法を選んで適用することができる。すなわち、音声認識の方法は、マイクロフォン109からマイクアンプ110を経由して受信した車内放送実音声と、その放送の元となる音声合成部105で作成された合成音声を選ぶことができる。つまり、車内放送が正しく実行できているか、その前段の動作は大丈夫かの確認ができ、動作異常時など不具合部分の切り分けをすることができる。なお、音声認識
部111は、自動放送装置100の一部をなす集積回路或いは音声認識処理のプログラムを実行するプロセッサ及びメモリであっても、自動放送装置100と通信可能な音声認識機能を有する携帯端末であってもよい。
【0025】
記憶装置103は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、及びEEPROM
(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などであり、プログラム及
びデータを記憶する。記憶装置103には、自動放送用の放送音声メモリとして使用される記憶領域が設けられており、モニタ装置から入力又は受信される情報に従って車内放送を自動的に行うための自動放送プログラムを記憶している。自動放送プログラムには、自動放送の内容を示すテキストデータ(自動放送テキストデータ)が含まれている。自動放送テキストデータは、背景技術で説明した不変部分と可変部分とを合わせた放送内容の文章を示すテキストデータである。CPU102は、記憶装置103に記憶されたプログラムを実行することによって、自動放送装置としての動作制御を含む様々な処理を行う。
【0026】
CPU102及び記憶装置103は、無線通信インタフェース(通信IF)101と接続されている。無線通信IFが準拠する無線通信規格はLTEや5Gが好ましいがが、無線LANやBLEなどであってもよく、無線通信規格に制限はない。通信IF101を用いて、自動放送装置100は、サーバ2と無線区間を含むネットワークを介して通信を行うことができる。通信IF101は送信部及び受信部の一例である。なお、鉄道車両10の停車中に、自動放送装置100が有線ネットワークを介してサーバ2と接続される場合もあり得る。
【0027】
CPU102は、通信IF101で受信された様々なデータを受信し記憶装置103に記憶する処理を行う。例えば、通信IF101では、サーバ2から、自動放送プログラムの更新用データ(更新に係る自動放送プログラム及び自動放送テキストデータを含む)を含む自動放送プログラムの更新要求を受信し、更新用データを用いて、記憶装置103に記憶された自動放送プログラムを更新する処理を行う。これによって、遠隔のサーバ2から、更新に係る自動放送テキストデータを取得し記憶装置103に記憶することで、自動放送テキストデータの更新を図ることができる。背景技術における可変部分と非可変部分とがないため、データの扱いや記憶の仕方に煩雑さはない。
【0028】
また、CPU102は、確認指示を受けた場合に、確認用の自動放送プログラムの実行を開始し、自動放送テキストデータを音声合成部105に供給するために、テキスト選択部104に指示を与える。テキスト選択部104は、指示された自動放送テキストデータを記憶装置103から取得し(読み出し)、音声合成部105へ供給する。音声合成部105は、音声合成によって自動放送テキストデータに基づく音声データを生成し、制御増幅器106に接続する。テキスト選択部104及び音声合成部105は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの汎用又は専用のハードウェア(集積回路、又はプロセッサ及びメモリ)を用いて構成される。音声合成の方法に制限はなく、既存の適宜の音声合成方法を適用することができる。また、CPU102は、音声認識部111から受け取ったテキストデータを通信IF101からサーバ2へ送る処理も行う。
【0029】
サーバ2は、操作用の端末装置3とネットワーク4を介して接続されている。サーバ2は「情報処理装置」の一例である。サーバ2は、自動放送プログラムの更新用データ、或いは、所定の自動放送プログラムの実行時における自動放送装置100の動作確認を行うための情報(CPU102が所定の自動放送プログラムの実行を開始する、疑似的なモニタ装置の情報)を鉄道車両10(通信IF101)に送信(提供)する処理や、鉄道車両10の通信IF101から、音声認識処理によって生成されたテキストデータを受信(取
得)する処理を行う。
【0030】
図2は、サーバ2及び端末装置3の構成例を示す。サーバ2は、パーソルコンピュータ(PC)、又はワークステーション(WS)等の汎用の情報処理装置(コンピュータ)、或いはサーバマシンのような専用の情報処理装置を用いて構成することができる。サーバ2は、通信機能を有する。
【0031】
図2において、サーバ2は、バス26を介して相互に接続された、処理部又は制御部(コントローラ)としてのプロセッサ21と、記憶装置22と、通信インタフェース(通信IF)23と、入力装置24と、ディスプレイ25とを含む。サーバ2は、1台の情報処理装置(コンピュータ)から構成されていても、2以上の情報処理装置の集合(クラウド)であってもよい。
【0032】
記憶装置22は、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、プログラム及びデータの記憶領域、プログラムの展開領域、プログラムの作業領域、及び通信データのバッファ領域などとして使用される。主記憶装置はRAM、又はRAMとROMとの組み合わせで構成される。補助記憶装置は、データ及びプログラムの記憶領域として使用される。補助記憶装置は、例えば、ハードディスク、SSD、フラッシュメモリ、及びEEPROMなどの不揮発性記憶媒体を含む。
【0033】
通信IF23は、通信処理を行う回路である。通信IF23は、5G、LTE、無線LANなどの無線通信規格に準拠する通信回路である。また、通信IF23は、ネットワークインタフェースカード(NIC)などを含み、LANを介して通信IF101及び端末装置3と通信を行うこともできる。
【0034】
入力装置24は、例えば、キー、ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル等の少なくとも一つを含み、情報の入力に使用される。ディスプレイ25は例えば液晶ディスプレイなどであり、情報及びデータを表示する。プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)などである。プロセッサ21は、記憶装置22に記憶された各種
のプログラムを実行することによって、サーバ2としての様々な処理を行う。
【0035】
端末装置3は、サーバ2を操作できる端末であればよく、例えば、ラップトップパーソナルコンピュータであってもよく、スマートデバイス(スマートフォン及びタブレット端末など)であってもよい。また、端末装置3は、Personal Digital Assistant(PDA)、ウェアラブルコンピュータ等の携帯端末(可搬性を有する通信端末)であってもよい。端末装置3は、固定端末であっても移動端末であってもよい。また、端末装置3は、無線端末であっても有線端末であってもよい。端末装置3は、汎用の情報処理装置でも専用の情報処理装置でもよい。
【0036】
端末装置3は、バス36を介して相互に接続された、プロセッサ31と、記憶装置32と、通信インタフェース(通信IF)33と、入力装置34と、ディスプレイ35とを含む。プロセッサ31、記憶装置32、通信IF33、入力装置34、及びディスプレイ35の夫々は、プロセッサ21、記憶装置22、通信IF23、入力装置24、及びディスプレイ25について説明したものと同様のものを適用可能である。但し、用途及び使用目的等の違いに応じて、サーバ2に適用されるものと性能の異なるものが適用される。プロセッサ31は、記憶装置32に記憶された各種のプログラムを実行することによって、様々な処理を行う。
【0037】
なお、CPU102、プロセッサ21及びプロセッサ31の夫々として、複数個のCPUを適用しても、マルチコア型のCPUを適用してもよい。CPUによって行われる処理
の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)又はGPU(Graphical Processing Unit)のようなCPU以外のプロセッサによって行われてもよい。また、CPU
によって行われる処理の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)などを含む専用又は汎用の集積回路、或いはプロセッサと集積回路との組み合わせにより実行されてもよい。組み合わせは、マイクロコントローラ(MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、又はチップセットなどと呼ばれる。また、プロセッサ21で行われる処理の一部がプロセッサ31で行われるようにしてもよい。
【0038】
図1を用いて、自動放送システムの動作例について説明する。端末装置3の操作によって、サーバ2に対し、鉄道車両10の記憶装置に記憶されている自動放送プログラム(自動放送テキストデータ)についての動作確認の要求を、入力する。動作確認の要求は、自動放送装置100が放送内容「〇×△□」を放送するためのテキストおよび補助コマンドを含む。
【0039】
サーバ2は、端末装置3からの要求を受け付けると、要求に応じた確認指示のメッセージを生成し、無線ネットワークを介して鉄道車両10に送信する処理を行う。確認指示のメッセージには、自動放送内容「〇×△□」を示す自動放送テキストデータについての自動放送装置100の動作(すなわち、自動放送音声)を確認する指示を含む。すなわち、サーバ2は、端末装置3から受信した「〇×△□」テキストおよび補助コマンドから、鉄道車両10の走行中にモニタ装置が自動放送装置100に発行するデータを模擬した「疑似的なモニタ装置の情報」を生成し、確認指示のメッセージに含める。
【0040】
鉄道車両10では、通信IF101を介して、自動放送装置100のCPU102が確認指示のメッセージ中の、疑似的なモニタ装置からの情報を受けると、確認対象の自動放送内容「〇×△□」についての自動放送プログラムの実行を開始する。なお、事前処理として、サーバ2が「〇×△□」を示す自動放送テキストデータに関する自動放送プログラムの更新データを鉄道車両10の自動放送装置100に送信し、CPU102が「〇×△□」を示す自動放送テキストデータを記憶装置103に記憶するための自動放送プログラムの更新処理を実行してもよい。なお、確認指示の内容は、疑似的なモニタ装置からの情報以外であってもよい。
【0041】
確認指示のメッセージの送信時点で、鉄道車両10は業務時間外であり、サーバ2の確認指示に応じることのできる状態である。確認指示のメッセージが通信IF101で受信され、CPU2が受け取ると、CPU2は、確認指示(疑似的なモニタ装置からの情報)に従った所定の自動放送プログラムの実行を開始し、テキスト選択部104に、「〇×△□」のテキストデータの選択指示を与える。テキスト選択部104は、選択指示に従って、「〇×△□」のテキストデータを記憶装置103から読み出し、音声合成部105に供給する。「〇×△□」のテキストデータは、「第1のテキストデータ」の一例である。
【0042】
音声合成部105は、音声合成処理によって、合成音声「〇×△□」の信号を生成し、制御増幅器106に接続する。信号は制御増幅器106によって増幅され、さらに出力増幅器107によって増幅された後に車内スピーカ108に接続される。車内スピーカ108からは、合成音声「〇×△□」の信号に基づく音声が放送(放音)される。
【0043】
放音された音声は、マイクロフォン109によって集音され、マイクアンプ110で増幅された後、音声認識部111に接続される。音声認識部111は、音声認識処理を行い、マイクロフォン109で集音された音声のテキストデータが生成され、CPU102に供給される。この音声認識によって得られたテキストデータ(音声認識テキストともいう)が「第2のテキストデータ」の一例である。CPU102は、音声認識テキストを、通
信IF101(送信部)を用いてサーバ2へ送信する処理を行う。
【0044】
サーバ2では、端末装置3から受信されたテキスト「〇×△□」と、鉄道車両10の通信IF101から受信された「〇×△□」の音声認識テキストの示す内容とを対比して、自動放送装置100の動作の適否を判定する処理(動作適否判定処理)を行い、判定の結果と、判定理由(対比のポイントなど)とを端末装置3に送信する。端末装置3から受信したテキスト「〇×△□」と音声認識テキストとが合致する場合、適合(OK)との判定結果が得られ、端末装置3から受信したテキスト「〇×△□」と音声認識テキストとが不一致の場合には、不適合(NG)との判定結果が得られる。端末装置3では、判定の結果及び理由がディスプレイ35に表示する(判定結果がオペレータ(自動放送装置100の管理者等)に報知される)。表示形式は、Webベースであっても、電子メールであっても、専用アプリであってもよい。
【0045】
適合(OK)との判定結果が表示される場合、自動放送装置100の動作が正常であることを意味する。不適合(NG)との判定結果が示される場合、自動放送装置100が何らかの障害を有しているとの認識を得ることができる。障害は、記憶装置に対する書き込み又は読み出し機構の障害、記憶装置103の記憶機構の障害、音声合成の障害などが考えられる。
【0046】
図3は、自動放送装置のCPU102の処理例を示すフローチャートである。
図3に示す処理は、自動放送装置100の自動放送テキストデータの記憶及び動作確認に係る処理を抽出して示している。ステップS01において、CPU102は、通信IF101によって受信された指示が自動放送テキストデータの記憶指示(自動放送プログラムの更新要求)か自動放送装置100の動作の確認指示(疑似的なモニタ装置からの情報)かを判定する。指示が記憶指示(自動放送プログラムの更新要求)であると判定される場合には、処理がS06に進み、指示が確認指示(疑似的なモニタ装置からの情報)であると判定される場合には、処理がステップS02に進む。
【0047】
ステップS06に処理が進んだ場合には、CPU102は、記憶指示に従って自動放送プログラムの更新処理を行い、更新対象の自動放送テキストデータを、記憶装置103における放送音声メモリのエリアに記憶する処理を行う。S06の処理が終了すると、CPU102は処理を終了する。
【0048】
ステップS02に処理が進んだ場合には、CPU102は、確認指示に含まれる疑似的なモニタ装置からの情報に対する処理を行い、この処理によって確認対象の自動放送プログラムの実行を開始する。ステップS03では、CPU102は、S102の処理によって特定された確認対象の自動放送テキストデータの音声合成部105への供給をテキスト選択部103に指示する。その後、CPU102は、音声認識部111からの、音声認識テキストを待ち受ける(ステップS04)。CPU102は、音声認識テキストを取得すると(S04のY)、CPU102は、音声認識テキストをサーバ2へ送信する処理を行う(ステップS05)。その後、CPU102は処理を終了する。
【0049】
図4は、サーバ2のプロセッサ21の処理例を示すフローチャートである。最初のステップS101で端末装置3からの確認要求を受信したプロセッサ21は、確認指示を生成して自動放送装置100に送信する処理を行う(ステップS102)。
【0050】
その後、プロセッサ21は、自動放送装置100からの音声認識テキストの受信を待ち受ける状態となり(ステップS103)、音声認識テキストが受信されると(S103のY)、自動放送装置100の動作適否判定を行う(ステップS104)。そして、プロセッサ21は、動作適否判定の結果を含むレポートを生成して端末装置3に送信する処理を
行う(ステップS105)。このとき、サーバ2は、レポートを無線通信によって鉄道車両10の通信IF101に送信し、CPU102が通信IF101からレポートの内容(動作確認のOK又はNGなど)を受け取り表示装置112に表示するようにしてもよい。表示装置112はディスプレイ(LCD)であっても、LEDであってもよい。
【0051】
図5は、端末装置3のプロセッサ31の処理例を示すフローチャートである。ステップS201では、プロセッサ31は、端末装置3のオペレータ(自動放送装置100の管理者等)の入力装置34を用いた操作によって入力される、特定の自動放送テキストデータに対する自動放送装置100の動作確認に関する情報を受け付ける。情報は、動作確認をしたい自動放送テキストデータを特定する情報(識別子や記憶領域のアドレスなど)を含む。
【0052】
ステップS202では、プロセッサ31は、S101で受け付けた情報を用いて確認要求を生成し、通信IF33を用いて確認要求をサーバ2へ送信する処理を行う。ステップS203では、動作適否判定の判定結果を含むレポートが受信されたか否かを、プロセッサ31は判定する。レポートが受信されたと判定される場合(S203のY)、プロセッサ31は、レポートの内容(動作適否判定の結果等)をディスプレイ35に表示する処理を行う(ステップS204)。なお、レポートの内容を、鉄道車両10の乗務員に何らかの方法で報知する処理が行われてもよい。
【0053】
実施形態に係る車内放送システムによると、遠隔のサーバ2を用いて、鉄道車両10に搭載された自動放送装置100に係る自動放送プログラムを更新できる。また、所定の自動放送プログラムの実行に係る自動放送装置100の動作確認を、遠隔のサーバ2を用いて実施することができる。具体的には、自動放送装置100は、自動放送の内容を示す自動放送テキストデータ(第1のテキストデータに相当:例「〇×△□」)に基づく自動放送音声を音声合成によって生成する音声合成部105を含む。また、自動放送装置100は、自動放送音声に基づく音声を放音する車内スピーカ108(スピーカに相当)と、音声を集音するマイクロフォン109(マイクに相当)とを含む。そして、自動放送装置100は、音声認識部111の音声認識によって生成された、マイクロフォン109によって集音された音声を示す音声認識テキスト(第2のテキストデータ)を送信する通信IF101(送信部に相当)を含む。
【0054】
これによって、自動放送テキストデータの音声合成によって生成された音声がマイクロフォン109によって集音され、音声認識によって生成された音声認識テキストが生成されて送信される。音声認識テキストは、サーバ2における自動放送装置100の動作適否判定に使用される。動作適否判定は端末装置3で行われてもよい)。これによって、自動放送装置の動作適否判定に用いる情報を遠隔(サーバ2等)に送り、遠隔で動作適否判定を行い、その結果を得ることができる。
【0055】
なお、車内スピーカ108及びマイクロフォン109の経由は必須ではなく、場合によっては、音声合成部105をスイッチSW1のオンにより、音声合成部105から出力される自動放送音声が音声認識部111に接続され、この自動放送音声の音声認識によって音声認識テキストが生成されてもよい。この場合、制御増幅器106、出力増幅器107、及び車内スピーカ108からの影響を受けない状態での確認が可能となる。また、実際に制御増幅器106、出力増幅器107、車内スピーカ108を経由した音声と、それらの信号の元となった音声合成部105からの音声を比較することができる。このような比較によって、自動放送装置100のどこが不良かの判定をすることも可能となり、列車編成の車両毎にその動作結果を確認することが可能となる。
【0056】
また、実施形態では、自動放送装置100は、通信IF101を含み、確認指示に係る
自動放送テキストデータを示す情報(疑似的なモニタ装置からの情報)を受信して、
図3に示す処理を開始することができる。これにより、遠隔から、動作確認を開始させることができる。「自動放送テキストデータを示す情報」は、鉄道車両10において確認対象の自動放送テキストデータを取得できる限りにおいてその形式に制限はなく、実施形態で説明した「疑似的なモニタ装置からの情報」のように、自動放送テキストデータを間接的に示す(自動放送テキストデータが結果として取得される)情報であってもよく、自動放送テキストデータのID(識別子又は管理番号)のような、自動放送テキストデータを直接的に示す情報であってもよく、自動放送テキストデータそのものであってもよい。
【0057】
また、実施形態では、自動放送テキストデータ(第1のテキストデータ)は、鉄道車両10内の記憶装置103に記憶され、確認指示に応じて音声合成部105に供給される。これにより、記憶装置103に記憶されている、複数の自動放送テキストデータから、確認を所望するものを指定する確認指示を送ることができる。もっとも、確認指示に、確認対象の自動放送テキストデータが含まれ、これが音声合成部105に供給されてもよい。
【0058】
なお、実施形態では、動作適否判定はサーバ2が行っているが、サーバ2は単純に端末装置3へ音声認識テキストを渡し、動作適否判定の処理が端末装置3で実施されてもよい。また、
図4に示したS104及びS105の処理をCPU102が行い、レポートがサーバ2に送信され、端末装置3に転送されるように構成してもよい。以上説明した実施形態の構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
2・・・サーバ
3・・・端末装置
21、31・・・プロセッサ
22、32,103・・・記憶装置
23、33、101・・・通信インタフェース
24、34・・・入力装置
25、35・・・ディスプレイ
10・・・鉄道車両
100・・・自動放送装置
102・・・CPU
105・・・音声合成部
108・・・車内スピーカ
109・・・マイクロフォン
111・・・音声認識部