(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】非対称誤りチャンネルを用いた量子情報処理
(51)【国際特許分類】
G06N 10/00 20220101AFI20240304BHJP
H03M 13/47 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G06N10/00
H03M13/47
(21)【出願番号】P 2020572761
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 US2019039945
(87)【国際公開番号】W WO2020068237
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
【住所又は居所原語表記】2 Whitney Avenue, New Haven, CT 06510, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】プーリ,シュルティ
(72)【発明者】
【氏名】グリム,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カンパーニュ-イバルク,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ガービン,スティーブン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】デボレット,マイケル
【審査官】大塚 俊範
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121161(JP,A)
【文献】国際公開第2018/089850(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0000066(US,A1)
【文献】特表2006-526794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00
H03M 13/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データキュービット
;
データキュービットにカップリングされ
、カー非線形性振動子を含むアンシラキュービット
;および
少なくとも1つのマイクロ波場をアンシラキュービットに適用し、アンシラキュービットにおいて猫状態を生成するように構成されるマイクロ波場供給源、ここで該猫状態は非対称誤りチャンネルを有する、
を含む、量子情報処理(QIP)系。
【請求項2】
アンシラキュービットの状態がデータキュービットの特性に基づくようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させること;および
アンシラキュービットの状態を測定してデータキュービットの状態を決定すること
による量子非破壊測定を使用してアンシラキュービットを使用してデータキュービットの特性を測定するように構成される測定デバイスをさらに含む、請求項1記載のQIP系。
【請求項3】
測定デバイスが、量子非破壊測定を反復して実施することにより、アンシラキュービットにおける第1の型の誤りを抑制するように構成される、請求項2記載のQIP系。
【請求項4】
測定デバイスが、
アンシラキュービットにカップリングされた読み出し空洞;および
読み出し空洞の状態を測定するように構成された空洞状態検出器、ここで空洞状態検出器が、位相感受性検出器またはホモダイン検出器の1つを含む、
を含む、請求項2記載のQIP系。
【請求項5】
マイクロ波場供給源が、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットの特性に基づくようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるように構成され
る、請求項2記載のQIP系。
【請求項6】
アンシラキュービットが共鳴周波数を有するアンシラ超伝導非線形非対称誘導要素(superconducting nonlinear asymmetric inductive element)(SNAIL)であり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数の2倍であるポンプ周波数でアンシラSNAILにポンプマイクロ波場を適用するように構成される、
請求項5記載のQIP系。
【請求項7】
マイクロ波場供給源が、
アンシラキュービットに
該少なくとも1つ
のマイクロ波場を適用して、ブロッホ球のx軸に沿って猫状
態を初期化するように構成される;および
データキュービットおよびアンシラキュービットの少なくとも1つに少なくとも1つの駆動マイクロ波場を適用して、データキュービットとアンシラキュービットの間の相互作用を作成するように構成される、
請求項6記載のQIP系。
【請求項8】
真空状態で調製されたアンシラSNAILのポンプマイクロ波場の振幅を、0からK|α|
2(式中Kは、アンシラSNAILのカー非線形性の強度であり、αは猫状態に関連するコヒーレント状態振幅である)に等しいポンプ振幅値まで断熱的に増加させることにより、マイクロ波場供給源が、
該少なくとも1つ
のマイクロ波場をアンシラキュービットに適用するように構成される、請求項7記載のQIP系。
【請求項9】
データキュービットがトランスモンであり;
データキュービットの特性が、トランスモンのσ
Zであり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数でポンプマイクロ波場と同じ位相において、駆動マイクロ波場をトランスモンに適用し、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのσ
Zに依存するようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるようにさらに構成される、
請求項6記載のQIP系。
【請求項10】
データキュービットが線形振動子において猫状態を含み;
データキュービットの特性が猫状態の光子数パリティであり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数でポンプマイクロ波場と同じ位相において、駆動マイクロ波場を線形振動子における猫状態に適用し、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットの光子数パリティに依存するようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるようにさらに構成される、
請求項6記載のQIP系。
【請求項11】
データキュービットが線形振動子においてGottesman-Kitaev-Preskill (GKP)状態を含み;
データキュービットの特性がGKP状態のスタビライザーであり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数と線形振動子の共鳴周波数の差に等しい駆動周波数で駆動マイクロ波場をアンシラSNAILに適用し、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのGKP状態のスタビライザーに依存するようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるようにさらに構成される、
請求項6記載のQIP系。
【請求項12】
アンシラキュービットにカップリングされたデータキュービットを含む系において量子情報処理(QIP)を実施する方法であって
、アンシラキュービットはカー非線形性振動子を含み、該方法は:
マイクロ波場供給源を使用して少なくとも1つのマイクロ波場をアンシラキュービットに適用することにより、アンシラキュービットにおいて猫状態を生成する工程、ここで該猫状態は非対称誤りチャンネルを有する、
を含む、方法。
【請求項13】
アンシラキュービットの状態がデータキュービットの特性に基づくようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させること;および
アンシラキュービットの状態を測定して、データキュービットの状態を決定すること
を含む量子非破壊測定を実施することによりアンシラキュービットを使用してデータキュービットの特性を測定する工程をさらに含む、請求項
12記載の方法。
【請求項14】
アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットの特性に基づくように、データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させる工程をさらに含む方法であって、
アンシラキュービットが、共鳴周波数を有するアンシラ超伝導非線形非対称誘導子要素(SNAIL)であり;
データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させることが、ポンプマイクロ波場を、SNAILの共鳴周波数の2倍であるポンプ周波数で、アンシラSNAILに適用することを含む、請求項
13記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの初期化マイクロ波場をアンシラキュービットに適用して、猫状態にあるアンシラキュービットをブロッホ球のx軸に沿って初期化する工程;および
少なくとも1つの駆動マイクロ波場を、データキュービットおよびアンシラキュービットの少なくとも1つに適用して、データキュービットとアンシラキュービットの間で相互作用を作成する工程
をさらに含む、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの初期化マイクロ波場をアンシラキュービットに適用する工程が、真空状態で調製されたアンシラSNAILのポンプマイクロ波場の振幅を、0からK|α|
2(式中KはアンシラSNAILのカー非線形性の強度であり、αは猫状態に関連するコヒーレント状態振幅である)に等しいポンプ振幅値まで断熱的に増加させることを含む、請求項
15記載の方法。
【請求項17】
データキュービットとアンシラキュービットの間で量子データゲートを実行する工程をさらに含む、請求項
12記載の方法。
【請求項18】
量子データゲートがCNOTゲートであり、データキュービットがCNOTゲートの標的キュービットであり、アンシラキュービットがCNOTゲートの対照キュービットであり、対照キュービットが第1の猫状態を含み、標的キュービットが第2の猫状態を含む、請求項
17記載の方法。
【請求項19】
位相空間において第1の猫状態を回転させてCNOTゲートを実行する工程をさらに含む、請求項
18記載の方法。
【請求項20】
ゲート時間持続時間にわたり、複数のマイクロ波場を、データキュービットおよびアンシラキュービットに適用して、CNOTゲートを実行する工程をさらに含む、請求項
18記載の方法。
【請求項21】
周波数2ω
cを有する第1のマイクロ波場を対照キュービットに適用する工程、ここでω
cは対照キュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
tを有する第2のマイクロ波場を標的キュービットに適用する工程、ここでω
tは標的キュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t-ω
cを有する第3のマイクロ波場を標的キュービットに適用する工程;
周波数ω
cを有する第4のマイクロ波場を対照キュービットに適用する工程;および
周波数ω
cを有する第5のマイクロ波場を標的キュービットに適用する工程
をさらに含む、請求項
20記載の方法。
【請求項22】
第1のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり一定であり;
第2のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第3のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第4のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第5のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり一定である、
請求項
21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての相互参照
本願は、2018年6月29日に出願された、発明の名称「FAULT TOLERANT MEASUREMENTS AND GATES FOR QUANTUM INFORMATION PROCESSING」の米国仮特許出願第62/692,243号の35 U.S.C. §119(e)の下の利益を主張し、該出願はその全体において参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府により支援される研究開発に関する陳述
本発明は、米国科学財団により授与された1609326の下の政府の支援、米国空軍科学研究局により授与されたFA9550-15-0029の下の支援、米国海軍研究局により授与されたN00014-16-2270の下の支援ならびに米国陸軍研究局により授与されたW911NF-14-1-0011およびW911NF-16-1-0349の下の支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
分野
本明細書に記載された技術は一般的に、量子情報系に関する。具体的に、本願は、非対称誤りチャンネルを有する少なくとも1つのキュービットを使用して量子情報処理(QIP)を実行するための系および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
QIPは、エネルギー量子化、重ね合わせおよびもつれなどの量子力学的現象を使用して、従来の情報処理では使用されない様式で情報をエンコードして処理する。例えば、特定のコンピューター計算問題は、従来の古典的コンピューター計算ではなく量子コンピューター計算を使用してより効率的に解決され得ることが知られる。しかしながら、現実的なコンピューター計算選択肢になるために、量子コンピューター計算は、「キュービット」として知られる多くの量子ビットおよびこれらのキュービットの間の相互作用を正確に制御する能力を必要とする。特に、キュービットは、長いコヒーレンス時間を有し、個々に操作され得、多キュービットゲートを実行する(implement)ために1つ以上の他のキュービットと相互作用し得、効率的に初期化および測定され得、多くのキュービットへと大規模化可能となるべきである。
【0005】
キュービットは、少なくとも2つの直交する状態を有する任意の物理的量子力学系から形成され得る。情報をエンコードするために使用される系の2つの状態は、「コンピューター計算基底(computational basis)」と称される。例えば、光子偏光、電子スピンおよび核スピンは、情報をエンコードし得、そのためにQIPのためのキュービットとして使用され得る二準位系である。キュービットの異なる物理的実行は、異なる利点および欠点を有する。例えば、光子偏光は、長いコヒーレンス時間および単純な単一キュービット操作により利益を受けるが、単純な多キュービットゲートを作成できないことを欠点としてもつ。
【0006】
キュービットの上述の例は物理的二準位系である。しかしながら、量子情報はまた、複数の物理的二準位系または2より多くの状態を有する量子系から形成される論理キュービット中に記憶され得る。例えば、無限の数のエネルギー固有状態が存在する量子力学振動子の状態はまた、QIPのためのコンピューター計算基底を形成するために使用され得る。例えば、位相空間中で互いに十分に置き換えられる(displace)量子力学振動子のコヒーレント状態は、準直交状態であり、コンピューター計算基底として使用され得る。さらに、「猫状態」として知られるコヒーレント状態の重ね合わせである状態は、互いに正確に直交し得、コンピューター計算規定を形成するために使用され得る。
【0007】
コンピューター計算基底がジョセフソン接合におけるクーパー対の量子化されたエネルギー状態である「位相キュービット」;コンピューター計算基底が超伝導ループにおける循環電流フローの方向である「フラックスキュービット」;およびコンピューター計算基底が超伝導島(superconducting island)上のクーパー対の存在または非存在である「電荷キュービット」を含むジョセフソン接合を使用する異なる種類の超伝導キュービットが提唱されている。超伝導キュービットは、2つのキュービットの間のカップリングが強力であり、2つのキュービットゲートを実行するのに比較的単純にするのでキュービットの有利な選択であり、超伝導キュービットは、従来の電子回路技術を使用して形成され得るメゾスコピック構成要素であるので、大規模化可能である。さらに、超伝導キュービットは、優れた量子コヒーレンスおよびジョセフソン効果に関連する強力な非線形性を示す。全ての超伝導キュービット設計は、非線形の非エネルギー散逸的要素として少なくとも1つのジョセフソン接合を使用する。
【発明の概要】
【0008】
簡単な概要
いくつかの局面によると、量子情報処理(QIP)系が提供される。QIP系は、データキュービットおよびアンシラキュービットを含み、アンシラキュービットは非対称誤りチャンネルを有する。データキュービットは、アンシラキュービットにカップリングされる。
【0009】
いくつかの局面によると、アンシラキュービットにカップリングされたデータキュービットを含む系においてQIPを実施する方法が提供される。該方法は、安定化させたマイクロ波場でアンシラキュービットを駆動させて、非対称誤りチャンネルを作成する工程を含む。
【0010】
前述のものは、添付の特許請求の範囲において規定される本発明の非限定的な概要である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
以下の図面を参照して、種々の局面および態様を説明する。図は必ずしも一定の割合で描かれていない。明確化の目的のために、全ての図において、全ての構成要素に符号が付されていないことがある。
【
図1】
図1は、いくつかの態様による、量子情報処理系のブロック図である。
【
図2】
図2は、いくつかの態様による、
図1のデータキュービットおよびアンシラキュービットの接合系の図である。
【
図3】
図3は、いくつかの態様による、トランスモンを含む
図2の超伝導回路要素の図である。
【
図4】
図4は、いくつかの態様による、超伝導非線形非対称誘導子要素(superconducting nonlinear asymmetric inductor element)(SNAIL)を含む
図2の超伝導回路要素の図である。
【
図5】
図5は、いくつかの態様による、空洞量子電磁力学に基づく量子情報系のブロック図である。
【
図6】
図6は、いくつかの態様による、猫状態に基づくブロッホ球を示す。
【
図7】
図7Aは、いくつかの態様による、ポンプされた猫振動子の固有スペクトルを示す。
図7Bは、いくつかの態様による、大パラメトリック駆動の限界におけるポンプされた猫振動子(PCO)のポテンシャルを示す。
【
図8】
図8は、いくつかの態様による、誤りシンドローム(error syndrome)検出の量子回路図である。
【
図9】
図9Aは、いくつかの態様による、4キュービットトーリックコード(toric code)についてのスタビライザー測定の間のPCOおよび関連のあるキュービットの力学のプロットである。
図9Bは、いくつかの態様による、4キュービットトーリックコードについてのスタビライザー測定の間のPCOおよび関連のあるキュービットの力学(dynamics)のプロットである。
【
図10】
図10Aは、いくつかの態様による、猫コードについてのスタビライザー測定の間のPCOおよび関連のあるキュービットの力学のプロットである。
図10Bは、いくつかの態様による、猫コードについてのスタビライザー測定の間のPCOおよび関連のあるキュービットの力学のプロットである。
【
図11】
図11Aは、いくつかの態様による、適応位相推定(adaptive phase estimation)を実施するための量子回路図である。
図11Bは、いくつかの態様による、適応位相推定を実施するための量子回路図である。
【
図12】
図12は、いくつかの態様による、ブロッホ球に関する読出しプロセスを図示する図である。
【
図13】
図13は、いくつかの態様による、量子情報処理系の概略図である。
【
図14】
図14Aは、いくつかの態様による、バイアス保存(bias-preserving)CNOTゲートを実行するために使用される複数の駆動場の時間の関数としての振幅のプロットである。
図14Bは、いくつかの態様による、バイアス保存CNOTゲートを実行するために使用される複数の駆動場の時間の関数としての位相のプロットである。
【
図15】
図15は、いくつかの態様による、誤りを検出するための技術の量子回路図である。
【
図16】
図16は、いくつかの態様による、量子情報処理法のフローチャートである。
【
図17】
図17は、いくつかの態様による、読出し法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
従来のQIPスキームは、1つ以上の二準位量子系(すなわち「キュービット」)において情報をエンコードする。単一キュービットの状態は、量子状態|ψ>により表され得、該状態は2つの量子状態、|0>および|1>の任意の任意重ね合わせ(arbitrary superposition)、例えば|ψ>=a|0>+b|1>であり得、ここでaおよびbは、状態|0>および|1>のそれぞれにある論理キュービットの確率振幅を表す複素数である。ここで|0>および|1>は、2つの直交状態を有する任意の物理的系を使用して物理的に実行され得るコンピューター計算基底である。
【0013】
有用な量子情報処理を実施するために、従来の量子情報系は、処理される情報をエンコードするために使用されるので「データキュービット」と称される一組のキュービットを特定の量子状態に初期化し、キュービット上の一組の量子ゲートを実行し、量子ゲートを実施した後にキュービットの最終的な量子状態を測定する。従来の量子ゲートの第1の型は、単一キュービットの量子状態を第1の量子状態から第2の量子状態に変換する単一キュービットゲートである。単一キュービット量子ゲートの例としては、ブロッホ球上のキュービットの回転の組が挙げられる。従来の量子ゲートの第2の型は、第2のキュービットの量子状態に基づいて第1のキュービットの量子状態を変換させる2キュービットゲートである。2キュービットゲートの例としては、制御(controlled)NOT(CNOT)ゲートおよび制御位相ゲートが挙げられる。従来の単一キュービットゲートおよび2キュービットゲートは、第1の量子状態から第2の量子状態へとキュービットの量子状態をユニタリーに進展させる。
【0014】
大規模量子コンピューター計算を実現可能にするために、QIPにおいて使用される量子状態は、避けられず制御されない環境との相互作用により生じる誤りから保護されなければならない。かかる誤りを減ずるための技術は、量子誤り訂正(QEC)スキームを含む。いくつかの従来のQECスキームにおいて、量子情報は、誤りおよび望ましくない相互作用を低加重の量子演算子と結びつけることにより保護される。例えば、量子情報は、物理的キュービットの2つの量子状態における情報を単純にエンコードするのではなく、高次元の系の非局所的な自由度(non-local degrees of freedom)を使用して論理キュービットにおいてエンコードされ得る。かかるエンコードにおいて、高加重演算子は、例えば単一の高次元物理系(例えば量子力学振動子)の多量子状態を含むいくつかのキュービットまたは演算子の系における多体演算子の起き上がりを包含する。量子情報のコード空間を特徴づける高加重演算子は、「スタビライザー」と称され、論理キュービット演算子と交換可能であるが、系における誤りとは交換可能でないように設計される。誤りの非存在下では、系は、スタビライザーの+1固有空間にあり、誤りが生じた後は、系は-1固有空間に移る。結果的に、誤りの位置および種類は、スタビライザーの測定の結果により決定され得、「誤りシンドローム」としても公知である。これらの高加重スタビライザーの測定は、量子系の構成要素の間の、高度に巧みに設計され(engineering)、高度に不自然な多体相互作用を使用する。
【0015】
本発明者らは、上述の種類のQEC技術は、QIPの実際的な実行には望ましくないことを認識し、理解している。その代り、本発明者らは、系およびアンシラリー(ancillary)系のデータキュービットの間の天然に利用可能なカップリングを介してスタビライザー測定を合成することが望ましいことを認識し、理解している。QIP系のデータキュービットのカップリングは、データキュービットを、減ずることがまさに困難であり得る異なる組の誤りに曝露する。例えば、アンシラリー系の測定が理知的に設計されない場合、アンシラリー系由来の誤りは、データキュービットに伝播し得、修復を超えて、エンコードされた量子情報に損傷を与える。これを認識することで、本発明者らは、アンシラリー系由来のかかる破壊的バックアクション(catastrophic backaction)を低減するおよび/またはいくつかの例において排除するための技術を開発した。
【0016】
本願のいくつかの局面の説明を補助するために、本明細書にスタビライザー測定技術を記載する。スタビライザー測定を合成するために、論理データキュービットを表す系
【数1】
は、物理的キュービットを使用して実行されるNサブ系における量子情報をエンコードする。コードは複数のスタビライザーにより画定されるが、簡易化のために本明細書において単一のスタビライザー
【数2】
を考慮する。低加重演算子の組
【数3】
は、スタビライザー
【数4】
と交換可能であり得、アンシラとのカップリングを通して
【数5】
を合成するために使用され得る。例として、4キュービット演算子
【数6】
はi番目のキュービットに作用するz-パウリ演算子である)は、
【数7】
である表面コードのためのスタビライザーである。第2の例として、パリティ演算子
【数8】
は、単一モードボゾン猫コードについてのスタビライザーであり、ここで
【数9】
は、それぞれ光子生成および消滅演算子である。アンシラリー系は、例えば相互作用ハミルトニアン
【数10】
を介してデータキュービットにカップリングされるアンシラキュービットであり得、ここで
【数11】
は、アンシラキュービットのz-パウリ演算子であり、
【数12】
は、論理データキュービットを形成するために使用される、アンシラと物理的キュービットのそれぞれの間の制御可能な相互作用強度である。データキュービットおよびアンシラキュービットの連結系の進展は、ユニタリー演算子:
【数13】
により記載される。
【0017】
データキュービットとアンシラキュービットの間のカップリング強度および相互作用の持続時間Tは、(局所回転まで)連結系に作用するユニタリー演算子が:
【数14】
になるように選択され得る。
【0018】
そのため、相互作用時間Tを有する相互作用の結果は、スタビライザーが+1であるかまたは-1であるかについて条件づけられたアンシラキュービットの位相フリップである。アンシラキュービットにおけるこの位相フリップは誤りシンドロームである。
【0019】
本発明者らは、相互作用時間の間に、データキュービットおよびアンシラキュービットがもつれ、成功裡のQECスキームとなり、アンシラキュービットにおける誤りが訂正できない誤りとしてデータキュービットに伝播しないように連結系を巧みに構成する(engineer)ことが望ましく、これが「フォールトトレランス性(fault-tolerance)」として知られることを認識し、理解している。訂正できない誤りのデータキュービットへの伝播を防ぎ、フォールトトレラント性を達成するために、アンシラキュービットにおける全ての起こり得る誤りは、全ての時点でユニタリー演算子
【数15】
と交換可能であるべきである。上記の例において、位相フリップ誤り
【数16】
はこの条件を満たす。そのため、相互作用時間持続時間の間に任意の時間τで位相フリップ誤りが起こる場合、時間Tにおいて系の状態は、ユニタリー演算子により記載される:
【数17】
【0020】
このユニタリー操作に基づいて、アンシラキュービットにおける位相フリップのみがシンドロームの測定において誤りを導入するが、データキュービットに対してバックアクションを何ら引き起こさないことが明らかである。しかしながら重要なことに、アンシラキュービットにおけるビットフリップ誤り(パウリマトリックス
【数18】
により表されるおよび振幅減衰誤り(パウリマトリックス
【数19】
により表される)は、ユニタリー演算子
【数20】
と交換可能でない。実際に、アンシラキュービット上のビットフリップ誤り
【数21】
は、高加重誤りとしてデータキュービットに伝播される。
【0021】
誤りシンドロームのフォールトトレラント抽出への従来のアプローチは、複雑な量子状態中で調製された複数のアンシラを使用すること、データキュービットとアンシラキュービットの間で複数のビットに関するもつれゲートを実施すること、および次いでアンシラキュービットを測定することに基づく。本発明者らは、不可能でない場合は大規模で、これらの従来のアプローチが、コンピューター計算的に不経済なもつれゲートおよびアンシラハードウェアのオーバーヘッド(overhead)を急速に増大させること、誤り率に対してより厳密な要件を強制することならびにフォールトトレラントな量子コンピューター計算を非実用的にすることをもたらすことを認識し、理解している。さらに、本発明者らは、効率の良いフォールトトレラントシンドローム抽出スキームが大規模な量子情報処理を可能にすることを認識し、理解している。したがって、本願のいくつかの局面は、効率の良いフォールトトレラントシンドローム抽出に関する。
【0022】
本発明者らは、上記のスタビライザー測定スキームにおいて、アンシラキュービットがビットフリップ
【数22】
誤りを有さなかった場合にユニタリー演算子
【数23】
が、データキュービットに対してバックアクションをもたらさないことを認識し、理解している。したがって、本願のいくつかの局面は、ビットフリップ誤りが位相フリップ誤りに対して抑制される非対称誤りチャンネルを有するアンシラキュービットを使用することに関する。ユニタリー演算子
【数24】
と交換可能でないビットフリップ誤りを抑制することにより、アンシラの誤りチャンネルとほとんど交換濃であり、そのためにアンシラ誤りに対して効果的に透明である物理的ユニタリー操作を巧みに構成することが可能である。
【0023】
本開示の局面は、量子系においてフォールトトレラント測定を行うための方法を含む。本明細書に記載される技術は、少なくとも3つの可能な用途において使用され得る。第1に、該技術は、誤りシンドロームのフォールトトレラント抽出を可能にすることにより、量子誤り訂正スキームにおいて使用され得る。第2に、該技術は、新規のより効率の良い誤り訂正コードおよび手順のために使用され得る。第3に、該技術は、制御器NOT(CNOT)ゲートなどのバイアス保存ゲートを作成するために使用され得る。
【0024】
本発明者らは、誤りチャンネルが強く偏っている(すなわち非対称)アンシラを用いた局所操作のみを使用して、誤りシンドロームのフォールトトレラント抽出を実施することが可能になることを認識し、理解している。いくつかの態様は、従来のスキームと比較して、フォールトトレラントシンドローム測定のオーバーヘッド要件を向上する。いくつかの態様は、高度に偏った雑音チャンネルを示すパラメトリックに駆動された非線形振動子において二成分猫状態を使用する、かかるシンドローム抽出スキームのハードウェア効率的実現を含む。
【0025】
本発明者らは、上記のアプローチの柔軟性をさらに認識し、理解している。いくつかの態様において、異なるコードが使用され得る。いくつかの態様において、シンドローム抽出プロセスは、キュービットに基づくトーリックコード、ボゾン猫コード(ならびに拡張した場合(inextension)、二項式およびペア猫コード)およびGottesman-Kitaev-Preskill (GKP)コードなどの種々のコードについて使用される。しかしながら他のコードも使用され得る。
【0026】
偏った雑音を有する誤り訂正のための挑戦は、CNOTゲートなどの基本的なゲート操作を実施しながら、偏りを保持し得ることであり、多くの誤り訂正コードおよびユニバーサルコンピューター計算に重要な成分である。データおよび/またはアンシラキュービットとして物理的キュービットを使用する従来の系において、基礎をなす雑音が偏ったとしても、ネイティブなバイアス保存CNOTは可能でない。本発明者らは、2つの安定化された猫状態の間でバイアス保存CNOTゲートを実現するために、フォールトトレラントシンドローム抽出のために開発された前述の技術が利用され得、拡張され得ることを認識し、理解している。いくつかの態様において、CNOTゲートは、位相空間における猫状態の構造に基づく。この場合において、安定化された猫状態は、パラメトリックに駆動される非線形空洞においてまたは散逸の巧みな構成を介して実現され得る。バイアス保存CNOTゲートを含むいくつかの態様は、トポロジカルな誤り訂正コード(例えばトーリックコードおよび表面コード)についての閾値において利得を達成し得る。
【0027】
いくつかの態様において、ZZ(θ)ゲートと組み合された場合、「マジック状態調製(magic state preparation)」(オーバーヘッドコストに関してユニバーサル性を達成するために重要であるが不経済な成分である)として公知であるものについての閾値を低減することが可能であり得る。いくつかの態様において、ZZ(θ)ゲートは、本質的にバイアスを保存し、安定化された猫を用いて実行され得る。本発明者らは、バイアス保存CNOTゲート、ZZ(θ)ゲートおよびシンドローム測定を組み合わせることにより、超高閾値を有する大規模量子コンピューター計算のためのフォールトトレラントアーキテクチャーのための基礎および劇的に低減されたオーバーヘッド要件が提供されることを認識し、理解している。安定化された猫キュービットの雑音チャンネルにおいてバイアスを活用するかかるアーキテクチャーは、物理的キュービットに基づく従来の系における同等なものを何ら有さない。
【0028】
図1は、いくつかの態様によるQIP系を例示する。QIP系100は、少なくともデータキュービット110およびアンシラキュービット120を含む。いくつかの態様はさらに、マイクロ波場供給源150および/または測定デバイス125を含む。測定デバイス125は、読み出し空洞130および空洞状態検出器140を含み得る。そのように例示されないが、マイクロ波場供給源150は、マイクロ波場供給源150により放出されるマイクロ波場が測定において役割を果たすので、測定デバイス125の一部であるとみなされ得る。
【0029】
データキュービット110は、アンシラキュービット120にカップリングされ得る任意の物理的または論理的キュービットであり得る。いくつかの態様において、データキュービット110は、超伝導回路構成要素を含み得る。例えば、データキュービット110は、少なくとも1つのジョセフソン接合を含み得る。いくつかの態様において、データキュービット110はトランスモンを含み得る。いくつかの態様において、データキュービット110は、複数のジョセフソン接合を含む超伝導回路構成要素の例である超伝導非線形非対称誘導子要素(SNAIL)を含み得る。他の態様において、データキュービット110は振動子を含み得る。使用され得る線形振動子の例としては、空洞により支持される電磁場、例えばマイクロ波放射が挙げられる。空洞は、三次元(3D)空洞または平面伝送線路空洞を含み得る。いくつかの態様において、空洞は、特定の型の量子状態を含むように駆動され得る。例えば以下により詳細に記載されるように、空洞は、猫状態またはGKP状態を含むように駆動され得る。いくつかの態様において、超伝導回路構成要素は、カー非線形空洞を形成するために空洞にカップリングされ得る。
【0030】
アンシラキュービット120は、データキュービット110にカップリングされ得る任意の物理的または論理的キュービットであり得る。いくつかの態様において、アンシラキュービット120は超伝導回路構成要素を含み得る。例えば、アンシラキュービット120は少なくとも1つのジョセフソン接合を含み得る。いくつかの態様において、アンシラキュービット120はトランスモンを含み得る。いくつかの態様において、アンシラキュービット120はSNAILを含み得る。他の態様において、アンシラキュービット120は振動子を含み得る。使用され得る線形振動子の例としては、空洞に支持される電磁場、例えばマイクロ波放射が挙げられる。空洞は、三次元空洞または平面伝送線路空洞を含み得る。いくつかの態様において、空洞は、特定の型の量子状態を含むように駆動され得る。例えば以下により詳細に記載されるように、空洞は、猫状態またはGKP状態を含むように駆動され得る。いくつかの態様において、超伝導回路構成要素は、カー非線形空洞を形成するために空洞にカップリングされ得る。
【0031】
アンシラキュービット120は、データキュービット110の1つ以上の特性を測定するために測定デバイス125により使用され得る。例えば、データキュービット110とアンシラキュービット120の間の相互作用は、アンシラキュービット120の状態がデータキュービット110の特定の特性に基づくように巧みに構成され得る。いくつかの態様において、データキュービット110の測定は量子非破壊測定であり、データキュービット110の状態が測定プロセスにより影響を受けないまま残ることを意味する。いくつかの態様において、量子非破壊測定は、データキュービット110およびアンシラキュービット120が相互作用した後にアンシラキュービット120の状態を測定して、アンシラキュービット120の特性を決定するために測定デバイス125を用いて実施され得る。いくつかの態様において、データキュービット110とアンシラキュービット120の間の相互作用は、マイクロ波場供給源150を使用して1つ以上のマイクロ波場によりデータキュービット110および/またはアンシラキュービット120を駆動することによりオンにされ得る。
【0032】
読み出し空洞130は、アンシラキュービット120にカップリングされる空洞であり、アンシラキュービット120の特性に基づいて複数の電磁放射、例えばマイクロ波放射の状態を支持するように構成される。いくつかの態様において、読み出し空洞130とアンシラキュービット120の間の相互作用は、読み出し空洞130の状態が、それ自体がデータキュービット110の特性に基づき得るアンシラキュービット120の特定の特性に依存するように巧みに構成される。例えば、アンシラキュービット120の特性が第1の値である場合は、相互作用は、第1の状態にある読み出し空洞130を生じ;アンシラキュービット120の特性が第2の値である場合は、相互作用は第2の状態にある読み出し空洞を生じる。いくつかの態様において、読み出し空洞130の2つの状態は、2つの異なる準直交コヒーレント状態であり得る。すなわち、読み出し空洞130は、アンシラキュービット120の特性の値に依存した異なる様式で置き換えられ得る。いくつかの態様において、このプロセスは、アンシラキュービット130の特性に基づいて読み出し空洞130を条件的に置き換えるために周波数変換技術を使用する、本明細書において「Q-スイッチ」と称されるものを使用して実施され得る。いくつかの態様において、読み出し空洞130とアンシラキュービット120の間の相互作用は、マイクロ波場供給源150を使用して1つ以上のマイクロ波場により読み出し空洞130および/またはアンシラキュービット120を駆動することによりオンにされ得る。
【0033】
空洞状態検出器140は、例えば読み出し空洞130とアンシラキュービット120の間の相互作用から生じる読み出し空洞130の起こり得る状態を区別し得るマイクロ波放射検出器であり得る。いくつかの態様において、空洞状態検出器は、振幅だけでなく読み出し空洞130の電磁場の位相を測定し得る位相感受性検出器であり得る。例えば、空洞状態検出器140は、ホモダイン検出器またはヘテロダイン検出器であり得る。いくつかの態様において、検出の結果は誤りシンドロームに直接関連する。
【0034】
いくつかの態様において、アンシラキュービット130は空洞を含み、空洞の状態は、ホモダイン検出器を使用して直接測定され得る。しかしながら、アンシラキュービット130の空洞が高いQ空洞である場合、ホモダイン検出は遅い。したがって、読み出し空洞は、速く読み出され得る低いQ空洞であり得る。
【0035】
図2は、いくつかの態様による、データキュービット110の例およびアンシラキュービット120の例を含む連結系200の特定の態様の図である。データキュービット110は、データ空洞210およびデータ超伝導回路212を含む。アンシラキュービット120は、アンシラ空洞220およびアンシラ超伝導回路222を含む。2つの空洞は、例えばマイクロ波導波管および/またはピンコネクタを含み得るインターフェース230を介してカップリングされて一緒になる。
【0036】
データ空洞210は、三次元空洞であり得、マイクロ波場供給源150からのマイクロ波場216を受信するための少なくとも1つのマイクロ波ポート214を含む。アンシラ空洞220は、マイクロ波場供給源150からのマイクロ波場226を受信するための少なくとも1つのマイクロ波ポート224を含む三次元空洞であり得る。いくつかの態様において、マイクロ波ポートは、ピンコネクタおよび/またはマイクロ波導波管を含み得る。
図2はそれぞれの空洞について単一のポートのみを図示するが、それぞれの空洞は、マイクロ波場を受信および/または伝送するための1つより多くのポートを含み得る。例えば、アンシラ空洞220を読み出し空洞130にカップリングするためのポートは
図2には示されない。
【0037】
いくつかの態様において、データ超伝導回路要素212およびアンシラ超伝導回路要素222は、非線形回路要素を含み得る。例えば、超伝導回路要素は、トランスモンまたはSNAILであり得る。
図3は、データ超伝導回路要素212および/またはアンシラ超伝導回路要素222として使用され得る超伝導回路要素300の例を図示する。超伝導回路要素300は、単一のジョセフソン接合からなるトランスモン301ならびに第1のアンテナ部分303および第2のアンテナ部分305を含むアンテナを含む。2つのアンテナ部分は一緒になって、ダイポールアンテナを通ってトランスモン301が、超伝導回路要素300が位置する三次元空洞にカップリングされるダイポールアンテナを形成する。
【0038】
図4は、データ超伝導回路要素212および/またはアンシラ超伝導回路要素222として使用され得る超伝導回路要素400の例を図示する。超伝導回路要素400は、単一のジョセフソン接合からなるSNAIL 401ならびに第1のアンテナ部分403および第2のアンテナ部分405を含むアンテナを含む。2つのアンテナ部分は一緒になって、ダイポールアンテナを通ってSNAIL 401が、超伝導回路要素400が位置する三次元空洞にカップリングされるダイポールアンテナを形成する。
【0039】
SNAIL 401は、トランスモンに対してさらなる維持可能性(tenability)を有する非線形超伝導回路要素である。
図5は、いくつかの態様によるSNAIL 500の概略図である。SNAIL 500は、2つのノード511および512を有する超伝導リング501を含む。第1のノード511および第2のノード512を連結する超伝導リング501の2つの異なる部分に沿った2つの経路がある。
【0040】
第1のリング部分は、直列に連結される複数のジョセフソン接合505~507を含む。いくつかの態様において、1つのジョセフソン接合と隣のジョセフソン接合の間に他の回路要素はない。例えば、ジョセフソン接合は、ダイポール回路要素である(すなわち2つのノードを有する)。第1のジョセフソン接合505の第1のノードは、SNAILの第1のノード511に直接連結され、いくつかの他の外部回路要素(示さず)につながれ得る。第1のジョセフソン接合505の第2のノードは第2のジョセフソン接合506の第1のノードに直接連結される。第2のジョセフソン接合506の第2のノードは第3のジョセフソン接合507の第1のノードに直接連結される。第3のジョセフソン接合507の第2のノードはSNAILの第2のノード512に直接連結され、アンテナの一部などいくつかの他の外部回路要素(示さず)につながれ得る。
【0041】
図5は、3個のジョセフソン接合を含む第1のリング部分を図示するが、1より多くの任意の適切な数のジョセフソン接合が使用されてもよい。例えば、3、4、5、6または7個のジョセフソン接合が使用されてもよい。3個のジョセフソン接合は、いくつかの態様において使用され得るDolanブリッジ製造プロセスを使用して形成され得る最少数のジョセフソン接合(0または1以外)であるので、示される例について3個のジョセフソン接合が選択される。
【0042】
いくつかの態様において、ジョセフソン接合505~507は同一になるように形成される。例えば、ジョセフソン接合505~507のトンネルエネルギー(tunneling energy)、臨界電流(critical current)およびサイズは全て同じである。
【0043】
SNAIL 500の第2のリング部分は単一のジョセフソン接合508を含む。いくつかの態様において、第2のリング部分において他の回路要素はない。単一のジョセフソン接合508の第1のノードは、SNAILの第1のノード511に直接連結され、アンテナの一部などのいくつかの他の外部回路要素(示さず)につながれ得る。単一のジョセフソン接合508の第2のノードはSNAILの第2のノード512に直接連結され、アンテナの一部などのいくつかの他の外部回路要素(示さず)につながれ得る。
【0044】
単一のジョセフソン接合508は、ジョセフソン接合505~507のそれぞれよりも小さいトンネルエネルギーを有する。この理由のために、単一のジョセフソン接合508は「小」ジョセフソン接合と称され得、ジョセフソン接合505~507は「大」ジョセフソン接合と称され得る。用語「大」および「小」は、ジョセフソン接合505~507と比較してジョセフソン接合508の相対的なサイズを分類するためだけに使用される相対的な用語である。ジョセフソンエネルギーおよびジョセフソン接合サイズは、小ジョセフソン接合よりも大ジョセフソン接合で大きい。パラメーターαは、小ジョセフソンエネルギー 対 大ジョセフソンエネルギーの比を表すために導入される。したがって、大ジョセフソン接合505~507のジョセフソンエネルギーはEJであり、小ジョセフソン接合508のジョセフソンエネルギーはαEJであり、ここで0>α<1である。
【0045】
図5の右側は、
図4の超伝導回路要素400において使用されるSNAIL 500についての回路要素記号を図示する。SNAIL 500を特徴づけるパラメーターはジョセフソンエネルギーE
Jおよび小ジョセフソン接合508の超伝導位相差ψである。注意すべきことは、SNAIL 500は、アンテナのそれぞれの部分に連結され得る2つのノード511および512のみを有するという事実である。
【0046】
1つはデータキュービット110のためのものであり、1つはアンシラキュービット120のためのものである2つの別々の3D空洞が
図2に図示されるが、他の空洞配置が使用されてもよい。いくつかの態様において、データ超伝導回路要素212およびアンシラ超伝導回路要素222は、単一の共有される3D空洞内に配置され得る。他の態様において、データ超伝導回路要素212およびアンシラ超伝導回路要素222は、それぞれ二次元(2D)伝送線路空洞にカップリングされ得る。
【0047】
図3に図示されるようなトランスモンまたは
図4に図示されるようなSNAILを使用する態様のいずれかにおいて、空洞にカップリングされる超伝導回路要素は、カー非線形性振動子を形成し、データキュービットおよび/またはアンシラキュービットとして使用され得る。いくつかの態様において、マイクロ波場発生器150から受信される2光子ポンプは、二成分猫状態:
【数25】
を作成するために使用され得、ここで
【数26】
であり、βは、猫状態に関連するコヒーレント状態|β>に関連する複素数の振幅である。猫状態
【数27】
および猫状態
【数28】
は、2光子駆動場によりポンプされるカー非線形性振動子の縮退および直交の固有状態である。ブロッホ球はこれらの猫状態を使用して形成され得、ブロッホ球の方向は猫状態の基底状態に関して任意である。
図6は、本願に使用されるブロッホ球600を図示する。これらの猫状態を使用して形成される論理的キュービットの基底は、ブロッホ球600の+Zおよび-Z軸がそれぞれ重ね合わせ状態
【数29】
に対応するようなものであり、これらはβの大きな値について、コヒーレント状態|±β>に密接に近づき;ブロッホ球600の+Xおよび-X軸は、猫状態
【数30】
および猫状態
【数31】
のそれぞれに対応し;ブロッホ球600の+Yおよび-Y軸は、それぞれ重ね合わせ状態
【数32】
に対応する。
図6はまた、ブロッホ球600の軸に関連する状態のそれぞれの簡易化された位相空間図を図示する。
【0048】
上述の型の猫状態は、猫状態を作成するために使用されるポンプが位相回転(すなわちコヒーレント状態|+β>から|-β>への回転およびその逆)を防ぐ大きなエネルギー障壁を作成するので、天然のカップリングがブロッホ球600のZ軸の周りの回転のみを引き起こすという特性を有する。したがって、ブロッホ球600を使用して、光子消失に関連する雑音チャンネルは、いくつかの態様における論理的キュービットのための誤りチャンネルを支配する位相フリップ誤りに対応するが、ビットフリップ誤りは、いくつかの態様による非対称誤りチャンネルを作成するように抑制される。位相フリップ誤りは、|β|2により決定されるように猫状態のサイズに伴って例えば線形に増加するか、または猫状態をポンプするために使用されるマイクロ波場の強度と同等に増加する。一方で、ビットフリップ誤りおよび振幅減衰誤りは、猫状態|β|2のサイズに基づいて指数関数的に抑制されるか、または猫状態をポンプするために使用されるマイクロ波場の強度と同等に抑制される。したがって、いくつかの態様において、カー非線形空洞のポンプされた猫状態がアンシラキュービットの物理的実行として使用される場合、フォールトトレラントシンドロームの測定を実施し得る。
【0049】
いくつかの態様はZ軸の周囲の猫状態の条件的回転に基づいて誤りシンドロームを抽出する。いくつかの例において、これは低加重局所的相互作用のみを使用して達成され得る。いくつかの態様において、このフォールトトレラント技術は、スタビライザーコードなどの種々の誤り訂正コードと共に使用され得る。スタビライザーコードの例としては、限定されないが、トーリックコード、ボゾン猫コードおよびGKPコードが挙げられる。いくつかの態様は、非加算的量子コードなどの非スタビライザーに基づく誤り訂正コードを使用し得る。さらに、いくつかの態様は、フォールトトレラント量子ゲートを実施するために、アンシラキュービットの非対称誤りチャンネルを使用し得る。
【0050】
いくつかの態様において、データキュービットとアンシラキュービットの間の相互作用は、カー非線形空洞における猫状態を使用して実行されるアンシラキュービットの固有の非線形性を使用して実現される。このように、いくつかの態様は、さらなるカップリング要素を必要としない。したがって、本明細書に記載される技術を活用することにより、ハードウェア効率的量子情報処理スキームが実現され得る。
【0051】
誤りシンドローム検出
いくつかの態様において、例えば上述のハードウェアを使用して実行されるカー非線形性振動子は、振動子の共振周波数の2倍に等しい周波数を有する2光子駆動により駆動され得る。かかるマイクロ波場により駆動される場合、振動子は、ポンプされた猫振動子(PCO)と称され、回転波近似におけるハミルトニアンは:
【数33】
であり、ここで
【数34】
は、PCOの光子生成および消滅演算子であり、Kは、カー非線形性の強度であり、Pは2光子駆動場の強度である。コヒーレント状態振幅
【数35】
の項においてPCOハミルトニアンを書き直すことにより、
【数36】
が生じる。
【0052】
コヒーレント状態|±β>および同等に猫状態
【数37】
は、それぞれ固有エネルギー
【数38】
を有するハミルトニアンの縮退固有状態である。簡易化のために、駆動場強度(P)は正の実数であり、実数であるβも生じることが推定される。コヒーレント状態|±β>は、準直交(
【数39】
)であり、猫状態
【数40】
は正確に直交する。猫状態
【数41】
はまた、光子数パリティ演算子
【数42】
の±1固有状態である。PCOハミルトニアンは光子数パリティ演算子と交換可能であるので、ハミルトニアンの固有状態はパリティ演算子の固有状態でもある。結果的に、
図7Aに示されるPCOハミルトニアンの固有空間700は、それぞれ上付き文字±により示される偶のパリティサブ空間701と奇のパリティサブ空間702に分割され得る。固有空間700の猫サブ空間は、
【数43】
で示され、固有空間700の状態の残りからエネルギーギャップ
【数44】
だけ分離される。
【0053】
回転枠(rotating frame)において、PCOハミルトニアンは、負のエネルギーを示す準エネルギー固有状態により記載される。PCOハミルトニアンに置き換え変換
【数45】
が適用される場合、置き換えられたハミルトニアン
【数46】
は:
【数47】
になり、ここで
【数48】
であるので、
【数49】
を有する項は消滅する。エネルギーシフトを表す定数項
【数50】
も低下する。真空状態|0>は
【数51】
の固有状態であるので、元の枠において、コヒーレント状態|±β>または同等にその重ね合わせ
【数52】
は元のPCOハミルトニアンの縮退固有状態である。大きなβ(すなわち大きなポンプ値)の限界において、β
2>>βであり、
【数53】
を生じ、これは逆調和振動子(inverted harmonic oscillator)のハミルトニアンである
【数54】
により十分に近似される。
【数55】
の第1の励起状態は、真空状態|0>未満のエネルギー
【数56】
を有するフォック状態|n=1>である。そのため、置き換えられたフォック状態
【数57】
は、元の置き換えられていない枠における2つの励起した縮退状態である。PCOハミルトニアンの固有状態はパリティ演算子の固有状態でもあるので、励起状態を、それぞれ偶および奇のパリティ状態である2つの直交状態
【数58】
と表すことが都合よくあり得、ここで
【数59】
は、規格化定数(normalization constant)である。そのため猫サブ空間と
【数60】
の間のエネルギーギャップは
【数61】
である。
【0054】
図7Bは、いくつかの態様による、大きなパラメトリック駆動の限界におけるPCOのポテンシャルを図示する。駆動マイクロ波場が大きい場合(例えば大きいβまたは同等に大きいP)、PCOは、±βで置き換えられた2つの調和振動子と同様に挙動する。トンネル分離(tunnel splitting)は重複
【数62】
により近似され得るので、2つの調和振動子の間のトンネルは、βの関数として指数関数的に抑制される。したがって、PCOハミルトニアンの固有スペクトルは、置き換えられた縮退フォック状態
【数63】
の対の重ね合わせまで単純化される。βの固定値について、この近似は、nのより高い値について、より妥当ではなくなり、n~β
2の近位でくずれる。駆動が0である場合(β=P=0)、ハミルトニアンは、縮退であるフォック状態|n=0>および|n=1>ならびに非縮退である次の2つの励起状態|n=2>および|n=3>を有する駆動されない非線形振動子のものになる。かかる状況において、
【数64】
は、2Kに等しいフォック状態|n=0>および|n=2>の間のギャップと等しくなる。この固有スペクトルは、振動子の周波数
【数65】
で回転している枠において記載され、これは実験室枠内のエネルギーギャップが
【数66】
であることを意味する。そのためこの周波数での外部駆動(例えばマイクロ波場)または摂動(perturbation)は、
【数67】
と励起状態の間の遷移を引き起こし得る。
【0055】
いくつかの態様において、PCOは、系
【数68】
により表されるデータキュービットと、回転枠における相互作用ハミルトニアンが:
【数69】
となるような様式で相互作用する。
【0056】
PCO上のこの相互作用/カップリングの効果を理解するために、猫状態は、光子消滅演算子
【数70】
の作用の下でビットフリップを経験することに注意されたい。
【数71】
であるので、大きなβについて
【数72】
である。消滅演算子
【数73】
は猫サブ空間
【数74】
内の状態を
【数75】
内の別の状態に変換するが、光子生成演算子
【数76】
は、PCOを猫サブ空間の外側に取り出し得る。しかしながら、小さなカップリング
【数77】
について、これらのみせかけのサブ空間外励起は、猫サブ空間と固有スペクトルの他の状態の間のエネルギーギャップのために抑制される。この制限されたサブ空間において、
【数78】
である。したがって、相互作用ハミルトニアンは:
【数79】
として近似され得、ここで、
【数80】
は、猫サブ空間におけるパウリ演算子である。したがって、相互作用ハミルトニアンは、例示的スタビライザー測定技術において上述される相互作用ハミルトニアン
【数81】
と同一であるもつれ相互作用であり、そのため上述のユニタリー演算子
【数82】
と同等のユニタリー進展がもたらされる。したがって、カップリング
【数83】
および相互作用時間は、時間t=T後の系の進展が
【数84】
により示されるように選択され得る。
【0057】
上記に基づいて、PCOのアンシラ猫状態は、
【数85】
であるスタビライザーに対して条件づけられるビットフリップを経験する。いくつかの態様において、誤りシンドロームは、時間TでPCOの状態を測定することにより抽出され得る。
【0058】
いくつかの態様において、形式
【数86】
の代替的なカップリングが使用され得る。例えば、かかるカップリングは、GKPコードを使用する場合に誤りシンドロームを抽出するために使用され得る。
【0059】
図8は、いくつかの態様による誤りシンドローム検出800の量子回路図である。3本の水平の線は、読出し空洞801、アンシラキュービット802およびデータキュービット803を表す。図の左で起こる操作が図の右に図示される操作の前に実施されるように、時間は左から右に増加する。読出し空洞801は真空状態|0>で初期化され、アンシラキュービット802は偶数の猫状態
【数87】
で初期化され、データキュービット803は何らかの状態
【数88】
にあり、データキュービットは、誤りシンドローム検出800の前にデータキュービット803上で実施され得る他の操作に基づく。いくつかの態様において、アンシラキュービット802は上述のようなPCOを含む。
【0060】
誤りシンドローム検出800の第1の行為は、PCOの状態に対して誤りシンドロームをマッピングすることである。これはシンドローム測定810と称される。例えば、アンシラキュービット802は、猫状態
【数89】
にとどまり得るか、またはデータキュービット803の少なくとも1つの特性に基づいて猫状態
【数90】
に変換され得る。いくつかの態様において、シンドローム測定は、制御(control)Z回転811を使用して実行され得、ここでPCOの状態は、データキュービット803の状態に基づいてブロッホ球(block sphere)のZ軸の周囲に条件的に回転される。いくつかの態様において、シンドローム測定810は、データキュービット803の状態を変化させない。このように、シンドローム測定810は量子非破壊測定であり得る。
【0061】
シンドローム測定810を実施した後、誤りシンドローム検出800は、読出し操作820を含む。読出し操作820は、アンシラキュービット802が猫状態
【数91】
または猫状態
【数92】
にあることを決定することによりアンシラキュービット802の状態を決定する。いくつかの態様において、アンシラキュービット802の読出しは、アンシラキュービット802の状態の読出し空洞801上へのマッピングを含み得る。いくつかの態様において、読出し操作820は、2つの別の操作を含み得る。第1の操作は、アンシラキュービット802上の回転操作821であり得る。例えば回転操作821は、猫状態
【数93】
を、近似コヒーレント状態|±β>に回転させ得る。読出し操作820の第2の操作は、PCOと読出し空洞801の間の単一光子交換カップリングがマイクロ波場発生器150からの適切なマイクロ波場を適用することによりオンになる「Qスイッチ」操作823を含む。Qスイッチ操作823の結果は、読出し空洞801が、PCOの状態に基づいて条件的に置き換えられることである。最終的に、読出し操作820が完了した後、読出し空洞801は、例えばホモダイン検出スキームを使用して測定され、それにより誤りシンドロームが生じる。
【0062】
単一光子消失のための誤りチャンネル
PCOの誤りチャンネル(時々雑音チャンネルと称される)は、槽(bath)との単一光子変換カップリングから生じる振動子内の単一光子消失に支配される。先に述べたように、槽へのカップリングが猫状態サブ空間
【数94】
と固有スペクトルの他の状態の間のエネルギーギャップよりも小さい場合、PCOの力学は、猫状態サブ空間に制限される。この制限されたサブ空間において、槽中に熱励起がない、すなわちPCOは光子を獲得するのではなく光子を消失し得るだけであり得ると仮定すると、槽との単一光子変換カップリングは、ビットフリップ誤りよりも優勢な位相フリップ誤りを生じ、ビットフリップ誤りはポンプ場βの強度に関して指数関数的に小さい。槽は、β
2のサイズにおいて指数関数的に小さい量だけ、猫状態サブ空間
【数95】
の2倍の縮退を取り除く(lift)。これは、
【数96】
により与えられた奇の猫状態
【数97】
における光子の数および
【数98】
により与えられた偶の猫状態
【数99】
における光子の数が、指数関数的に小さい量だけ異なるためである。光子は、
【数100】
からよりも
【数101】
から、環境へとより消失されやすい。この非対称性は、2つの猫状態の間の縮退を取り除く。しかしながら、光子数の差はβにより指数関数的に減少するので、猫状態
【数102】
である状態は、
【数103】
であるβ~2などの適度なサイズのポンプ強度についても、ほとんど縮退する。
【0063】
いくつかの態様において、槽とのカップリングは相互作用ハミルトニアンと交換可能であり、データキュービット
【数104】
に対してバックアクションを引き起こさないので、縮退猫サブ空間の保存は、PCOを、シンドローム検出における使用のための計器についての良好な候補にする。しかしながら、槽に対する単一の光子消失は、アンシラキュービットの測定の正確性を低減する、2つの猫状態
【数105】
の間のランダムフリップを誘導し得る。それにもかかわらず、バックアクションは指数関数的に抑制されるので、測定を複数回反復することにより正確性は回復され得る。したがって、いくつかの態様において、アンシラキュービットの測定は複数回実施され、誤りシンドロームを決定するために多数決(majority vote)が使用される。
【0064】
他の雑音供給源
いくつかの態様において、光子利得、純粋離調(pure dephasing)、2光子消失などの他の雑音の供給源がある。単一光子利得および純粋離調は、猫状態サブ空間からの漏れを生じ得る。しかしながら、漏れは、これらの雑音供給源のスペクトル密度を、猫状態サブ空間と固有スペクトルの他の状態の間のエネルギーギャップよりも狭くすることを確実にすることにより抑制され得る。したがって、いくつかの態様は、PCOが、単一光子利得およびエネルギーギャップよりも小さい純粋離調スペクトル密度を有するように巧みに構成される。かかる態様において、雑音の根源的な原因に関係なく、PCOの誤りチャンネルは位相フリップ誤りにより支配され、一方でビットフリップ誤りは、指数関数的に抑制される。
【0065】
さらに、いくつかの態様において、見せかけの励起または突然の非摂動効果は、エネルギー障壁を克服し、猫状態サブ空間の外側の状態に対して励起を生じることが可能である。顕著に、シンドローム測定のフォールトトレラント性は、これらの誤り下で依然として保存される。
【0066】
単一光子利得の例において、猫状態サブ空間
【数106】
の一部である猫状態に対する
【数107】
の商は、猫状態サブ空間からの漏れおよび位相フリップ誤りの両方を引き起こす。先に述べたように、大きなβの限界において、第1の励起した状態
【数108】
は、置き換えられた単一の光子フォック状態と近似的に等しい(例えば
図7B参照)。この近似下で、
【数109】
および単一光子利得は、第1の励起したサブ空間を励起させる。第1の励起したサブ空間において、
【数110】
である。第1の励起したサブ空間の2つの状態
【数111】
は近似的な縮退であるので、項
【数112】
はこれらの2つの状態の間の遷移を引き起こし得るが、第1の励起したサブ空間の外側への遷移は引き起こし得ない。上記から、PCOとデータキュービットの間のカップリングは
【数113】
に比例し、猫状態サブ空間
【数114】
であることが想起される。したがって、励起した状態は、猫状態サブ空間におけるアンシラと同じデータキュービットに対するカップリングを有する別の二準位のアンシラを形成する。結果的に、データキュービットは、PCOが猫サブ空間(例えば第1の励起したサブ空間)にあったかどうかについて何の情報も獲得しない。同等に、データキュービットは、PCOにおける漏れ誤りに対して透明(transparent)である。PCOがn光子利得事象を経験する場合、PCOは、
【数115】
に励起される。n番目の励起したサブ空間が二重(two-fold)縮退である限りは、該サブ空間は、データキュービットへの同じカップリングを有する二準位アンシラとして挙動する(
【数116】
)。この近似は、高度に励起した状態(例えば大きいn)について、より妥当でないものになる。したがって、単一または2光子消失などの散逸プロセスによりかかる励起を低減することが有益であり得る。これは、光子消失事象が、n番目の励起したサブ空間から(n-1)番目の励起したサブ空間へと集団を移行させるためである。まとめると、PCOにおけるサブ空間外の励起のためのバックアクションは、PCOのスペクトルにおける縮退固有状態のペアの存在に依存する。固有状態
【数117】
のペアのエネルギーの差は、猫状態の規模(magnitude)βのサイズに伴い指数関数的に減少するので、バックアクションも同じ様式で減少する。
【0067】
純粋離調誤りの例において、ジャンプ演算子
【数118】
は漏れを引き起こす。大きなβの限界において、
【数119】
である。単一光子利得に関する上記のものと同様の議論を使用して、データキュービットは、猫状態サブ空間
【数120】
の一部ではない状態の励起に対して透明なままであり、漏れ誤りのためのバックアクションは抑制される。
【0068】
例示的スタビライザー測定:トーリックコード
いくつかの態様において、nキュービット
【数121】
スタビライザーは、トポロジカル量子誤り訂正コードの例であるトーリックコードと関連して使用される。いくつかの態様において、二次元トーリックコードが使用されてもよい。4キュービットスタビライザー
【数122】
は、例えば直接的な固有空間保存測定を使用して測定され得る。スタビライザー
【数123】
のヒルベルト空間は、偶の固有空間εおよび奇の固有空間
【数124】
に分類され得る。いくつかの態様において、八重縮退の偶(奇)のサブ空間は、
【数125】
の+1(-1)固有状態である状態を含む。偶の固有空間εおよび奇の固有空間
【数126】
は、それぞれコードおよび誤りサブ空間として画定され得るので、
【数127】
の測定は、誤りがあったかまたはなかったかに基づいて-1または+1を生じる。したがって、測定は誤りシンドロームを示す。
【0069】
いくつかの態様において、スタビライザー
【数128】
の直接測定は、実験的に実現することが困難であるデータキュービットとアンシラキュービットの間の5体相互作用を必要とする。その代り、いくつかの態様は、2体相互作用のみを使用してシンドローム測定を実施する。これは、上述の相互作用ハミルトニアン中で
【数129】
で置き換えることにより達成され得る。得られる相互作用ハミルトニアンは:
【数130】
であり、ここで
【数131】
であり、これは長手方向のキュービット-振動子カップリングの形態を有する。簡易化のために、全ての相互作用強度は等しいと仮定するが、それらが等しいことは必要とされない。相互作用強度が分かっている限り、それぞれのキュービットとの相互作用の持続時間は、シンドローム測定を実施するように調整され得る。代替的なアプローチは、固定された相互作用の持続時間を維持するが、時間内に適切に分離されるそれぞれのキュービットについて、ビットフリップ駆動場パルスの組を使用することである。
【0070】
上述の例示的なスタビライザー測定技術の分析に続いて、相互作用ハミルトニアンに対応するユニタリー演算子は:
【数132】
である。
【0071】
いくつかの態様において、誤りシンドロームは、最初にPCOを猫状態
【数133】
に初期化することにより抽出され得る。次いで、全てのキュービットについて相互作用強度が同じである態様において、系は相互作用時間
【数134】
の間、
【数135】
となるように進展される。より一般的に、それぞれのキュービットについて相互作用強度が異なる態様について、i番目のキュービットについての相互作用時間持続時間は、
【数136】
であり、ここでそれぞれのキュービットについて
【数137】
である。相互作用時間持続時間の終了時に、ユニタリー演算子は:
【数138】
まで単純化される。
【0072】
相互作用時間持続時間後のユニタリー演算子のこの表現において、開始時の指数関数項は、キュービットの局所的位相回転である。いくつかの態様において、局所的位相回転は、キュービットについてその後の操作を実施しながら古典的ソフトウェアのトラックを維持し得、その後の原因となり得る。他の態様において、局所
【数139】
ゲートは、これらの位相回転を補償するためのシンドローム測定中またはその後にキュービットに適用され得る。そのため、いくつかの態様において、時間
【数140】
後のPCOの状態は、キュービットが
【数141】
のそれぞれで開始される場合、
【数142】
である。
【0073】
いくつかの態様において、時間依存的キュービット振動子相互作用は、キュービットと振動子の間でカップリングをオンに切り替えること、次いでオフにすることにより実行される。いくつかの態様において、4つのキュービットは、奇の固有空間
【数143】
において最大もつれ状態
【数144】
で初期化される:
【数145】
【0074】
いくつかの態様において、PCOは偶数の猫状態
【数146】
に初期化される。
【0075】
図9Aおよび9Bは、単一光子消失の割合、κ=0(実線)およびκ=K/200(点線)について、値P=4K(β=2に等しい)、
【数147】
についてのスタビライザー測定の間のPCOキュービットの力学のプロットである。
図9Aは、PCOが状態
【数148】
で初期化され、キュービットが奇のパリティ状態
【数149】
で初期化される場合の時間の関数としての、状態
【数150】
にあるPCOについての確率901および状態
【数151】
にあるキュービットについての確率903を図示するプロット900である。光子消失がない状況(実線)における相互作用時間持続時間
【数152】
後、密度マトリックス
【数153】
により表されるキュービットが最大もつれ奇パリティ状態である確率は
【数154】
であり、密度マトリックス
【数155】
により表されるPCOが奇の猫状態である確率は
【数156】
である。光子消失が導入される場合(点線)、相互作用時間持続時間
【数157】
後の奇の猫状態にあるPCOの確率は、偶の猫状態と奇の猫状態の間の消失消失誘導ビットフリップ(loss loss-induced bit-flip)のために
【数158】
まで単純化される。相互作用時間持続時間
【数159】
後の奇のパリティ状態にあるキュービットの確率は、光子消失がない場合に対して変化しない:
【数160】
。光子消失がκ=K/10に増加する場合、相互作用時間持続時間
【数161】
後の奇の猫状態にあるPCOの確率は、
【数162】
まで単純化される。したがって、シンドロームをアンシラキュービットにマッピングすることの忠実度は52%まで低減され、これは多数決が失敗した場合に50%の点に近づくが、データキュービットに対するバックアクションは、抑制されたままである。
【0076】
図9Bは、PCOが状態
【数163】
で初期化され、キュービットが偶のパリティ状態
【数164】
で初期化される場合の時間の関数としての、状態
【数165】
にあるPCOについての確率911および状態
【数166】
にあるキュービットについての確率913を図示するプロット910であり、ここで:
【数167】
である。
【0077】
相互作用時間持続時間
【数168】
の後、光子消失がない状況(実線)において、密度マトリックス
【数169】
により表されるキュービットが偶のパリティ状態にある確率は
【数170】
であり、密度マトリックス
【数171】
により表されるPCOが奇の猫状態にある確率は、
【数172】
である。したがって、データキュービットは、PCOにおける誤りに対して透明である。PCOにおける単一光子消失は、シンドローム抽出の忠実度を低減するが、これは、プロトコルを複数回反復し、多数決を行うことにより回復され得る。例えば、κ=K/200の場合、制御されるZ回転の忠実度は93%まで減少する(点線)が、手順を5回反復することにより、シンドロームをPCOに正確にマッピングする確率は、99.7%まで増加する。プロット913に関連する点線から見られるように、相互作用時間持続時間後のデータキュービットの状態は、光子消失により影響を受けない。
【0078】
PCOを使用する測定のフォールトトレラント性を強調するために、同じ緩和速度γ=K/200を有する従来の二準位物理的キュービットを用いて測定を行う場合。従来の物理的キュービットを用いると、元の状態にとどまるデータキュービットについての確率は、
【数173】
(およびγ=K/10の場合
【数174】
)および
【数175】
(およびγ=K/10の場合、
【数176】
)まで有意に減少する。すなわち、従来の物理的キュービットを用いたただ1つの測定によるものと同じ程度に多く、データキュービットが信頼できなくなる前に100回より多くPCOを用いて測定を反復する必要がある。これにより、アンシラキュービットとしてPCOを使用して測定を行った場合、バックアクションの指数関数的な抑制が明確に説明される。
【0079】
光子消失が導入される場合(点線)、相互作用時間持続時間
【数177】
後に奇の猫状態にあるPCOの確率は、偶の猫状態と奇の猫状態の間の消失消失誘導ビットフリップのために、
【数178】
まで低減される。相互作用時間持続時間
【数179】
後に奇のパリティ状態にあるキュービットの確率は、光子消失がない場合に対して変化しない:
【数180】
。光子消失がκ=K/10まで増加される場合、相互作用時間持続時間
【数181】
後に奇の猫状態にあるPCOの確率は、
【数182】
まで低減される。したがって、シンドロームをアンシラキュービットにマッピングすることの忠実度は52%まで低減され、これは多数決が失敗する場合に50%の点に近づくが、データキュービットに対するバックアクションは抑制されたままである。
【0080】
例示的スタビライザー測定:猫コード
いくつかの態様において、情報がコヒーレント状態の重ね合わせにおいてコードされるある型のボゾン誤り訂正コードである猫コードスタビライザーが使用される。猫コードのためのスタビライザーは、光子数パリティ演算子
【数183】
であり、ここで
【数184】
は、データキュービット(本明細書において時々記憶キュービットまたは記憶ネコまたは記憶振動子と称される)についての光子生成および消滅演算子である。測定される場合、光子数パリティ演算子は、データキュービットの状態が偶数または奇数の光子を有するかどうかを示す。
【0081】
いくつかの態様において、二重縮退コードサブ空間は、固有値+1を有する
【数185】
の固有状態である偶数の光子数を有する猫状態
【数186】
により画定される。誤りサブ空間は、固有値-1を有する
【数187】
の固有状態である奇数の光子数を有する猫状態
【数188】
により画定される。
【0082】
猫シンドローム測定を実施するためのいくつかの態様において、猫コードワードをエンコードする記憶振動子は、アンシラキュービットに分散的にカップリングされる。記憶振動子とアンシラキュービットの間の分散的カップリングは、アンシラキュービットに対して、データキュービットの特性である記憶ネコのパリティをマッピングするために使用され得る。しかしながら、測定の間のアンシラのランダム緩和は、猫コードワードのランダム位相回転を含み、このスキームを非フォールトトレラントにする。本発明者らは、フォールトトレラントシンドローム検出スキームは、上述の相互作用ハミルトニアン
【数189】
における演算子
【数190】
を光子数演算子
【数191】
で置き換えることにより巧みに構成され得ることを認識し、理解している。いくつかの態様において、記憶振動子の相互作用ハミルトニアンおよびアンシラPCOは次いで:
【数192】
により示される。
【0083】
この相互作用は、記憶振動子とアンシラPCOの間の長手方向の相互作用と同等である。いくつかの態様において、この相互作用は、整調可能な(tunable)様式で作成され得る。
【0084】
この相互作用ハミルトニアンに対応するユニタリー演算子は:
【数193】
である。
【0085】
いくつかの態様において、誤りシンドロームは、PCOを最初に猫状態
【数194】
に初期化することにより抽出され得る。次いで、記憶振動子とアンシラPCOの間の相互作用は、
【数195】
となるように相互作用時間持続時間
【数196】
の間にオンになる。相互作用時間持続時間
【数197】
の終了の時点で、ユニタリー演算子は:
【数198】
まで単純化される。相互作用時間持続時間後のユニタリー演算子についてのこの表現において、最初の指数関数的な項は記憶猫の参照の枠の決定論的回転である。いくつかの態様において、決定論的回転は、キュービット上でその後の操作を実施しながら古典的ソフトウェアのトラックを維持し得、その後のものの原因となる。記憶振動子がコードサブ空間
【数199】
にある場合、相互作用時間持続時間
【数200】
後のアンシラPCOおよび記憶振動子の状態は、それぞれ
【数201】
である(決定論的枠回転を無視する)。一方で、記憶振動子が誤りサブ空間
【数202】
にある場合、PCOは、時間
【数203】
で状態
【数204】
まで進展し、記憶猫は状態
【数205】
のままである。したがって、アンシラPCOの状態は、誤りシンドローム
【数206】
を示す。いくつかの態様において、PCOは、χが小さくかつPCOの力学が安定化された猫サブ空間に限定され得る限りは、実際の光子統計学についての情報を明らかにすることなく、記憶猫のパリティのみを測定する。無限の
【数207】
について、記憶猫における位相拡散を引き起こし得る
【数208】
サブ空間の外側に励起の小さい確率がある。いくつかの態様において、この拡散の部分訂正は、PCOに逆駆動(counter-drive)を適用して、訂正ハミルトニアン
【数209】
となるように、平均して
【数210】
サブ空間の外側の励起を相殺することにより可能である。
【0086】
いくつかの態様において、時間依存的キュービット-振動子相互作用は、記憶空洞とアンシラPCOの間のカップリングをオンに切り替え、次いでオフにすることにより実施される。いくつかの態様において、記憶空洞は、奇のパリティ状態
【数211】
で初期化され、アンシラPCOは、猫状態
【数212】
で初期化される。
【0087】
図10Aおよび10Bは、値P=4K(β=2に等しい)、
【数213】
についての単一光子消失、κ=0(実線)およびκ=K/200(点線)についてのスタビライザー測定の間のPCOおよび記憶空洞の力学のプロットである。
図10Aは、PCOが状態
【数214】
で初期化され、記憶空洞が奇のパリティ状態
【数215】
で初期化される場合の時間の関数としての、状態
【数216】
にあるPCOについての確率1001および状態
【数217】
にある記憶空洞についての確率1003を図示するプロット1000である。相互作用時間持続時間
【数218】
後、光子消失がない状況(実線)において、密度マトリックス
【数219】
により表される記憶空洞が最大にもつれる奇のパリティ状態である確率は
【数220】
であり、密度マトリックス
【数221】
により表されるPCOが奇の猫状態である確率は
【数222】
である。光子消失が導入される場合(点線)、相互作用時間持続時間
【数223】
後に奇の猫状態であるPCOの確率は、偶の猫状態と奇の猫状態の間の消失消失誘導ビットフリップのために、
【数224】
まで低減される。相互作用時間持続時間
【数225】
後に奇のパリティ状態である記憶空洞の確率は光子消失がない場合に対して変化されず:
【数226】
である。
【0088】
図10Bは、PCOが偶のパリティ状態
【数227】
で初期化され、アンシラPCOが猫状態
【数228】
で初期化される場合の時間の関数としての状態
【数229】
にあるPCOについての確率1011および状態
【数230】
にある記憶空洞についての確率1013を図示するプロット1010である。光子消失なし(κ=0)について、偶のパリティ状態にある時間
【数231】
での記憶空洞の確率は
【数232】
であり、PCOが奇のパリティ状態にある確率は
【数233】
である。光子消失が導入される場合(κ=K/200)、奇のパリティ状態にあるアンシラPCOの確率は
【数234】
まで減少されるが、記憶空洞が偶のパリティ状態にある確率は
【数235】
のままである。
【0089】
PCOを使用する測定のフォールトトレラント性を強調するために、同じ緩和速度γ=K/200を有する従来の二準位物理的キュービットを用いて測定を行う場合。従来の物理的を用いて、記憶空洞に対するバックアクションは、約2桁だけ増加する。
【0090】
例示的スタビライザー測定:Gottesman-Kitaev-Preskill (GKP)コード
いくつかの態様において、位相空間におけるランダム置き換え誤りを訂正するように設計されるボゾン誤り訂正コードの型であるGKPコードが使用される。いくつかの態様において、GKPコードについてのコードワードは、記憶空洞の位相空間置き換え
【数236】
の同時+1固有状態であり、ここで
【数237】
であり、
【数238】
が置き換え演算子である(式中、
【数239】
)ように、
【数240】
は、記憶空洞の光子消滅および生成演算子に関して画定される位置および運動量のそれぞれの演算子である。
【0091】
2つの理想的なGKPコードワードは、
【数241】
の偶数および奇数の整数倍のそれぞれでの位置演算子
【数242】
の固有状態の均一な重ね合わせである。これらのGKP状態は、無限スクイーズド状態の無限数の合計であり、光子のそれらの制限のない(unbouded)数のために非物理的(非規格化性)である。いくつかの態様において使用され得るより現実的なコードワードは、無限スクイーズド状態
【数243】
をスクイーズドガウス状態で置き換えることおよびこれらの状態にわたる均一な重ね合わせを例えばガウス、二項式等の包絡関数全体(overall envelope function)により置き換えることにより実現され得る。GKPコードは、
【数244】
により示される振動子の小さい位相空間置き換えとして表され得る低率誤りに対する保護を提供する。置き換えられるGKP状態はまた、固有値
【数245】
のそれぞれを有するスタビライザー
【数246】
の固有状態である。スタビライザーの測定は固有値を生じるので、置き換え誤りuおよびvがただ1つに決定される。いくつかの態様において、これは、置き換え誤りがコードワードの間の並進距離(translational distance)
【数247】
の半分よりも小さい場合である
【数248】
の場合に可能である。
【0092】
いくつかの態様において、
【数249】
のそれぞれの固有値
【数250】
を測定するための単純なアプローチは、適応位相推定プロトコル(adaptive phase-estimation protocol)(APE)に基づく。かかる態様において、アンシラキュービットの状態に対して条件づけられる置き換え操作は、記憶空洞に対して繰り返し実施される。したがって、いくつかの態様は、PCOにおける安定化された猫を使用するGKPコードについてのスタビライザーのAPEのためのフォールトトレラントプロトコルに関する。
【0093】
いくつかの態様において、APEにおける使用のための制御された置き換えを達成するために、記憶空洞は、ハミルトニアン:
【数251】
(式中、g(t)は記憶空洞とPCOの間の力学的カップリング強度である)により画定される整調可能単一光子交換相互作用(ビームスプリッター操作としても知られる)を介してPCOにカップリングされる。いくつかの態様において、この整調可能ビームスプリッター操作は、PCOおよびマイクロ波場発生器150から受信される適切な周波数の外部マイクロ波駆動の3または4波混合能力を使用して実現され得る。|g|の小さな値について、ビームスプリッターハミルトニアンは、
【数252】
として近似され得る。
【0094】
大きな振幅βについて、ハミルトニアン
【数253】
の第2の項は無視できるほどに小さくなり、ハミルトニアン下での進展は、カップリングg(t)について選択される位相に依存して位置または運動量の求積(quadrature)に沿って、制御された置き換えを生じる。この限定において、カップリングg(t)の位相および振幅が
【数254】
となるように選択される場合、上述のビームスプリッター相互作用ハミルトニアンに対応するユニタリー演算子は:
【数255】
まで単純化される。
【0095】
上述のユニタリー演算子
【数256】
は、いくつかの態様によると
【数257】
のAPEについての記憶空洞の条件的置き換えである。
【0096】
同様に、カップリングg(t)の位相および振幅が、
【数258】
となるように選択される場合、上述のビームスプリッター相互作用ハミルトニアンに対応するユニタリー演算子は:
【数259】
まで単純化される。
【0097】
上述のユニタリー演算子
【数260】
は、いくつかの態様によると
【数261】
のAPEについての記憶空洞の条件的置き換えである。
【0098】
図11Aおよび11Bは、いくつかの態様によるとAPEプロトコルを実施するための量子回路図を示す。
図11Aは、
【数262】
を推定するためのプロトコル1100を図示し、
図11Bは、
【数263】
を推定するためのAPEプロトコル1150を図示する。3本の水平な線は、読出し空洞1101、アンシラキュービット1102およびデータキュービット1103を表す。時間は、図の左で起こる操作が、図の右に図示される操作の前に実施されるように、左から右へと増加する。読出し空洞1101は真空状態|0>で初期化され、アンシラキュービット1102は偶数の猫状態
【数264】
で初期化され、データキュービット1103は、何らかの状態
【数265】
にあり、データキュービットは、APEプロトコルの前にデータキュービット1103上で実施され得る他の操作に基づく。いくつかの態様において、アンシラキュービット1102は上述のようなPCOを含む。
【0099】
【数266】
を推定するためのプロトコル1100は、
【数267】
が実行されるように、データキュービット1102およびアンシラキュービット1103上で第1の連結ユニタリー操作1110を実施する工程を含む。いくつかの態様において、第1の連結ユニタリー操作1110は2つの別々の作用を含む。第1に、データキュービット1103上で置き換え
【数268】
を実行する置き換え操作1111が実施される。次いで、アンシラキュービット1102の状態に基づいてデータキュービット1103上で置き換え
【数269】
を実行する条件的置き換え操作1113。
【0100】
次いで
【数270】
を推定するためのプロトコル1100は、角度ψだけZ軸の周りで、アンシラキュービット1102上で実施される回転操作1120を含む。いくつかの態様において、回転操作1120は、PCOであり得るアンシラキュービット1102をマイクロ波場で駆動することにより実施される。いくつかの態様において、ψの値は、
【数271】
を推定するためのプロトコル1100の以前のイテレーション(iteration)により決定され得る。
【0101】
次いで、
【数272】
を推定するためのプロトコル1100は、アンシラキュービット1102の状態を決定するための読出し操作1130を含む。読出し操作1130は、例えばアンシラキュービット1102が猫状態
【数273】
にあることを決定することによりアンシラキュービット1102の状態を決定する。いくつかの態様において、アンシラキュービット1102の読出しは、アンシラキュービット1102の状態を読出し空洞1101にマッピングすることを含み得る。いくつかの態様において、読出し操作1130は、2つの別々の操作を含み得る。第1の操作は、アンシラキュービット1102上の回転操作1131であり得る。例えば、回転操作1131は、近似コヒーレント状態|±β>まで猫状態
【数274】
を回転させ得る。読出し操作1130の第2の操作は、マイクロ波場発生器150からの適切なマイクロ波場を適用することにより、PCO 1102と読出し空洞1101の間の単一光子交換カップリングがオンになる「Qスイッチ」操作1133を含む。Qスイッチ操作1133の結果は、読出し空洞1101がPCO 1102の状態に基づいて条件的に置き換えられるというものである。最終的に、読出し操作1130が完了した後、読出し空洞1101は、例えばホモダイン検出スキームを使用して測定される。
【0102】
【数275】
を推定するためのプロトコル1100を実施した後、読出し空洞1101およびアンシラキュービット1103は、それらのそれぞれの初期化状態(|0>および
【数276】
のそれぞれ)にリセットされ得る。
【0103】
【数277】
を推定するためのプロトコル1150は、
【数278】
が実行されるように、データキュービット1102およびアンシラキュービット1103上で第2の連結ユニタリー操作1160を実施することを含む。いくつかの態様において、第2の連結ユニタリー操作1160は、2つの別々の行為を含む。第1に、データキュービット1103上で置き換え
【数279】
を実行する置き換え操作1161が実施される。次いで、アンシラキュービット1102の状態に基づいてデータキュービット1103上で置き換え
【数280】
を実行する条件的置き換え操作1163。
【0104】
次いで、
【数281】
を推定するためのプロトコル1100は、角度φだけZ軸の周りで、アンシラキュービット1102上で実施される回転操作1170を含む。いくつかの態様において、回転操作1170は、PCOであり得るアンシラキュービット1102をマイクロ波場で駆動することにより実施される。いくつかの態様において、φの値は、
【数282】
を推定するためのプロトコル1100の以前のイテレーションにより決定され得る。
【0105】
次いで、
【数283】
を推定するためのプロトコル1100は、アンシラキュービット1102の状態を決定するための読出し操作1180を含む。読出し操作1180は、例えばアンシラキュービット1102が猫状態
【数284】
であることを決定することにより、アンシラキュービット1102の状態を決定する。いくつかの態様において、アンシラキュービット1102の読出しは、アンシラキュービット1102の状態を読み出し空洞1101にマッピングすることを含み得る。いくつかの態様において、読出し操作1180は、2つの別々の操作を含み得る。第1の操作は、アンシラキュービット1102上の回転操作1181であり得る。例えば、回転操作1181は、近似のコヒーレント状態|±β>まで猫状態
【数285】
を回転させ得る。読出し操作1180の第2の操作は、マイクロ波場発生器150からの適切なマイクロ波場を適用することによりPCO 1102と読出し空洞1101の間の単一光子交換カップリングをオンにする「Qスイッチ」操作1183を含む。Qスイッチ操作1183の結果は、読出し空洞1101がPCO 1102の状態に基づいて条件的に置き換えられるというものである。最終的に、読出し操作1180が完了した後、読出し空洞1101は、例えばホモダイン検出スキームを使用して測定される。
【0106】
【数286】
を推定するためのプロトコル1100を実施した後、読出し空洞1101およびアンシラキュービット1103は、それらのそれぞれの初期化状態(|0>および
【数287】
のそれぞれ)にリセットされ得る。
【0107】
上述のように、上述の回転操作1120および1160において実施される回転の量はψおよびφのそれぞれであり、それぞれの推定プロトコルの以前のイテレーションに基づいて決定され得る。この様式において、測定結果は、APEプロトコルのその後のイテレーションにフィードバックされる。これらのフィードバック位相がどのように決定されるかを理解するために、データキュービット1103が固有値
【数288】
を有するスタビライザー
【数289】
の固有状態である状況が考慮される。
【数290】
を実行する第1の連結ユニタリー操作1110の適用の後、アンシラキュービットの状態は
【数291】
になる。アンシラキュービット1102が回転操作1120によりZ軸の周りに角度φ/2だけさらに回転される場合、アンシラキュービット1102の状態は
【数292】
になる。したがって、位相推定の単一イテレーションの後アンシラキュービット1102が
【数293】
状態にとどまる確率は、
【数294】
である。結果的に、uの値を正確に予測するために、確率分布
【数295】
の感度を最大化すべきである。いくつかの態様において、これは、アンシラキュービット1102が、プロトコルの以前のイテレーションにおいて
【数296】
の状態であると測定されたかどうかに基づいて、フィードバック位相φを選択することによりAPEにおいて達成される。
【数297】
の固有値およびフィードバック位相ψのためのAPEプロトコル1150の実施に同様の分析を適用する。
【0108】
上記に基づいて、いくつかの態様において、APEプロトコル1100および1150は、スタビライザー固有値を推定するために繰り返され得る。位相推定のイテレーションの数が増加するにつれて、u、vの推定の精度も増加し、結果的に固有値
【数298】
の不確定さは減少する。
【0109】
アンシラ読出し
上述の態様(例えば
図8および
図11A~11B参照)のいくつかにおいて、読出し操作は、アンシラキュービットを測定するように実施される。アンシラキュービットの状態は、アンシラキュービットがPCOである場合において、ホモダイン検出を使用して空洞の状態を直接測定することにより直接測定され得るが、かかる測定は、PCO空洞の高いQのために遅い。したがって、いくつかの態様において、アンシラ空洞のQ値よりも小さいQ値を有する読出し空洞は、アンシラキュービットの状態を読み出し空洞の状態にマッピングした後にホモダイン検出を使用して測定される。いくつかの態様において、PCOの読出しは、量子非破壊(QND)測定であり得るが、そうである必要はない(例えば、読出しは、アンシラキュービットの状態においてビットフリップまたは他の誤りを導入することがあり得る)。かかる非QND測定は、アンシラ誤りがデータキュービットに伝播しないようにPCOが測定されながら、アンシラPCOとデータキュービットの間の相互作用がオフになり得るために可能である。アンシラキュービットのかかる直接測定は、超伝導トランスモンを使用して実施され得る。
【0110】
いくつかの態様において、アンシラPCOの読出しは、ブロッホ球のZ軸に沿った測定を含み、系にさらなる非線形性を何ら導入しない。上述のように、ブロッホ球のZ軸に沿った状態は、ほぼコヒーレント状態であり、PCOの出力で場のホモダイン検出を使用して測定され得る。PCO空洞の直接ホモダイン検出の遅い速度を克服するために、Qスイッチ操作を実施し、周波数変換を介してPCOスタット(stats)を、低Q読み出し空洞に切り替える。いくつかの態様において、Qスイッチ操作は、Z軸に沿ったPCOの状態に基づいて読み出し空洞を条件的に置き換える。
【0111】
上述のように、読出し操作は、PCOの猫状態がコヒーレント状態に回転される第1の操作を含み得る。次いで、PCOのコヒーレント状態は、読み出し空洞にQ切り替えされる。最終的に、読み出し空洞が測定される。
図12は、ブロッホ球に関する読出しプロセス1200を図示する。
【0112】
いくつかの態様において、PCOの猫状態
【数299】
の回転は、マイクロ波場発生器150からのマイクロ波駆動場を使用して実施される。読出しプロセス1200のブロッホ球1201は、ブロッホ球1201のX軸に沿って位置するPCOの猫状態
【数300】
を示し、これは次いでブロッホ球1201のZ軸の周りに回転される。いくつかの態様において、Z軸の周りの回転は、ハミルトニアン:
【数301】
を有する単一光子駆動を使用して実施される。
【0113】
この単一光子駆動ハミルトニアンの結果は、時間
【数302】
において
【数303】
Z軸の周りに猫状態を回転させることであり、これはパリティレス(parityless)猫状態と称され、ブロッホ球(読出しプロセス1200のブロッホ球1203参照)のY軸に沿った状態に対応する。これらのパリティレス猫状態をコヒーレント状態にマッピングするために、猫状態を作成する2光子ポンプを、時間T=π/2Kの間オフにし(ブロッホ球1203参照)、PCOの状態を、カー非線形ハミルトニアン(
【数304】
)の下で自由に進展させる。読出しプロセス1200のブロッホ球1205に示されるように、カー非線形ハミルトニアンの下での自由進展により、近位のコヒーレント状態
【数305】
に変換される状態
【数306】
が生じる。一旦PCO状態の自由進展が完了すると、2光子猫ポンプは猫サブ空間がビットフリップに対して再度安定化されるように、再度適用される。結果的に、読出しプロセス1200のブロッホ球1205に示されるように、PCOはコヒーレント状態のままである。
【0114】
PCOが、上記の回転を介して猫状態からコヒーレント状態に変換される後、PCOの状態は、ブロッホ球のZ軸に沿って存在する。いくつかの態様において、PCOは、次いでオフ共鳴読み出し空洞にカップリングされる。外部マイクロ波駆動場の非存在下で、PCOと読み出し空洞の間のカップリングは、2つの間の大きな離調のために無視できる。いくつかの態様において、単一光子交換カップリング(ビームスプリッターカップリング)は、マイクロ波場発生器からの少なくとも1つのマイクロ波駆動場を適用して、PCOと読み出し空洞の間の周波数の差を補償することによりオンになる。駆動、PCOおよび読み出し空洞の間の3または4波混合は、PCOと読み出し空洞の間の相互作用を生じ、2つの間の共鳴単一光子交換を生じる。この制御可能なカップリングはQスイッチと称される。Qスイッチ操作の結果は、読出しプロセス1200の位相空間
図1207に示されるように、PCOの状態に対する読み出し空洞条件を置き換えることである。このプロセスのためにQスイッチハミルトニアンは
【数307】
は、読み出し空洞の生成および消滅演算子であり、gはPCOと読み出し空洞の間の整調可能カップリング強度である)により示される。gの小さな値のために、Qスイッチハミルトニアンは:
【数308】
として近似され得る。
【0115】
適度に大きいβの場合、最終項は無視できるほどに小さくなり、結果は、PCOの状態に対して条件づけられた読出し振動子の置き換えであり、ここで読み出し空洞の場の振幅は、
【数309】
であり、ここでκ
rは場の線幅である。
【0116】
読み出し空洞が条件的に置き換えられる後、ホモダイン検出器を使用して、読み出し空洞の状態を決定し、それにより誤りシンドロームの抽出と同等であるPCOの状態を決定する。
【0117】
バイアス保存量子ゲート
本発明者らは、誤りシンドロームを検出するためのアンシラキュービットの非対称誤りチャンネルを使用する上述の技術は、バイアス保存量子ゲートを実行するために拡張され得ることを認識し、理解している。偏った雑音チャンネルを有するキュービット(すなわち非対称誤りチャンネル)について、支配的な誤りの型と交換可能でない操作は、キュービットの雑音チャンネルを偏らないようにし得るかまたは復極(depolarize)し得、それにより偏った雑音チャンネルの利益が低減される。
【0118】
交換可能でない操作が偏った雑音チャンネルを有するキュービットの雑音チャンネルをどのように偏らないようにし得るかを理解するために、雑音バイアスを保存する系を考慮する。例えば、以下の2キュービットゲート:
【数310】
を考慮し、ここで
【数311】
i番目のキュービットについてのZパウリ演算子であり、θは整調可能位相角である。θ=π/2である場合、ZZ(θ)ゲートは、局所パウリ回転および位相の全体まで、CZゲートとも称される制御位相ゲートになる。ZZ(θ)ゲートは、
【数312】
により示されるユニタリー進展を伴う形態
【数313】
の相互作用ハミルトニアンにより実行され得る。このユニタリー進展の下、ZZ(θ)ゲートは、相互作用時間持続時間T=θ/2V後に実現される。相互作用時間の間に時間τで2つのキュービットのいずれか1つにおいて位相フリップが起こる場合、進展は、以下:
【数314】
のように変更される。したがって、誤ったゲート操作は、位相フリップが続く誤りがないゲートと同等である。よって、ZZ(θ)ゲートは、キュービットの誤りバイアスを保存する。
【0119】
一方、2つのキュービットの間の制御NOT (CNOT)ゲート(CXゲートとも称される)は、
【数315】
により示されるユニタリー進展を伴う以下のCXハミルトニアン:
【数316】
を使用して実行され得、ここでCNOTゲートの対照キュービットおよび標的キュービットは、1および2のそれぞれで標識される。この進展の下、CNOTゲートは、
【数317】
となるように相互作用時間持続時間T=π/2V後に実現され、ここで位相全体は無視される。このCNOTゲートの場合、相互作用時間の間の時間τでの標的キュービットにおける位相フリップ誤りは、ユニタリー進展を以下:
【数318】
のように改変する。よって、標的キュービットにおける位相フリップ誤りは、標的キュービットにおいて位相誤りが生じる場合に応じて、対照キュービットに位相フリップ誤りを導入する。重要なことに、CNOTゲートの間の標的キュービットの位相フリップは、同じキュービットにおける位相フリップ誤りとビットフリップ誤りの組合せとして伝播する。結果的に、CNOTゲートは、標的キュービットにビットフリップを導入することにより雑音チャンネルのバイアスを低減する。同様に、VおよびTにおける不確定性から生じるゲート操作におけるコヒーレント誤りはまた、標的キュービットにおいてビットフリップ誤りを生じる。結果的に、ネイティブなバイアス保存CNOTゲートは実行することが可能ではない。
【0120】
本発明者らは、バイアス保存CNOTゲートの非存在下で、誤りシンドロームを抽出するために代替的な回路が必要であることを認識し、理解している。これらの代替的な回路は、複雑さを追加し、偏った雑音を有するキュービットを使用することにより生じる誤り訂正のためのフォールトトレラント性閾値における利得を制限する。そのため、本発明者らは、上記のパラメトリック駆動非線形振動子において実現される同じ二成分猫状態を使用するバイアス保存CNOTゲートを巧みに構成することにより、この問題の新規の解決を開発した。
【0121】
上記の
図6に示されるように、ブロッホ球は、重ね合わせ状態がブロッホ球のZ軸に沿って方向づけられるように方向づけられる。さらに、CNOTゲートの目的のために、Z軸は:
【数319】
となるようにコンピューター計算基底として選択され、ここでαは猫状態に関連するコヒーレント状態の複雑な振幅である。
【0122】
猫状態およびそれらの重ね合わせ|0>および|1>は、パラメトリック駆動カー非線形性振動子の縮退固有状態である。上述のように、PCOは、ビットフリップが指数関数的に抑制されるような強力な雑音バイアスを示す。いくつかの態様は、誤りバイアスを保存しながらネイティブなCNOTゲートを実行するためにPCOを使用して、上述の例示的CNOTゲートに伴う問題を克服する。いくつかの態様において、CNOTゲートは、パラメトリック駆動の位相を変化させることにより生じるブロッホ球の周りの猫状態の回転から生じるトポロジカル位相(topological phase)に基づく。いくつかの態様のトポロジカル(topological)性質は、CNOTゲートに、キュービットにおける誤りバイアスを保存させる。雑音バイアスを保存するための能力は、キュービットのバイアスとして二準位物理的系を使用するのではなく、PCOなどの連続可変物理的系を使用して、論理キュービットを実行するというのただ1つの利点を示す。
【0123】
いくつかの態様において、CNOTゲートの上述の例に記載されるように、
【数320】
演算子はキュービットの雑音バイアスを維持しないので、CNOTゲートを経験するキュービットの時間依存的ユニタリー進展は、明示的な
【数321】
演算子(すなわちXパウリ演算子)を含まない。いくつかの態様において、
【数322】
演算子と同等の進展は、雑音バイアスを保存する代替的な技術を使用して巧みに構成される。これをどのように達成するかを理解するために、猫状態は、
【数323】
となるような
【数324】
演算子の固有状態であることが注意される。また、ブロッホ球上の猫状態の方向は、PCOにおいて猫状態を作成する2光子駆動場の位相φにより画定され、ここでPCOのハミルトニアンは:
【数325】
により示される。このハミルトニアンは、以前に記載されるPCOハミルトニアンと同じであるが、駆動場はもはや実数および正とはみなされず、位相φの包含を生じる。いくつかの態様において、2光子ポンプのこの位相はCNOTゲートを実行するように変化される。例えば、位相が0からπへと断熱的に変化する場合、猫状態は、
【数326】
変換される。結果的に、2光子ポンプ場の位相をπだけ回転させることは、
【数327】
演算子を実行することと同等である。
【0124】
いくつかの態様において、2キュービットバイアス保存CNOTゲートは、対照キュービットの状態に基づく標的キュービットの条件的位相空間回転に基づく。条件的回転がCNOTゲートをどのように生じるかを示すために、それぞれがそれ自体の二光子マイクロ波ポンプ場により安定化/ポンプされる2つのPOCを考慮する。2キュービット系の初期状態は:
【数328】
であり、ここでテンソル積における第1および第2の項は、対照および標的のキュービットのそれぞれを言及し、項c
iおよびd
iは単純に、重ね合わせの成分のそれぞれについての確率振幅であり、任意の初期状態であるように任意に選択され得る。標的PCOに適用される2光子駆動の位相が対照PCOの状態に対して条件づけられる場合、系の状態は以下のように、任意の所定の時間tで状態が:
【数329】
となるように進展する。
【0125】
時間変動位相φ(t)がφ(0)=0およびφ(T)=πとなるようなものである場合、時間Tで、状態は:
【数330】
となる。
【0126】
上述の結果は、対照PCOの状態に対して条件づけられる標的PCOにおける猫の位相をπだけ回転させることによりCNOTゲートが実現されることを示す。この回転の間に
【数331】
状態は、
【数332】
状態に対してπ位相を獲得するので、CNOT操作が実現される。2つの猫状態の間のこの獲得された位相の差は、αの位相において2π周期(periodic)である状態
【数333】
から生じるトポロジカル位相であるが、状態
【数334】
はαの位相におけるπ周期である。トポロジカル位相は力学的位相と同様にエネルギーに依存しない。幾何学位相による場合と同様に、トポロジカル位相は経路の幾何学にも依存しない。この位相は、状態|±α>が原点に近づきすぎない位相空間におけるループに沿って移動する限り生じる(例えば、猫αのサイズは、2つの猫状態の間の幾何学的位相の差が指数関数的に小さく、トポロジーが2つの猫状態の間の位相の差のみの供給源になるように十分に大きくあるべきである)。状態|±α>が原点の周りを
【数335】
まで進む時間の数がuで表される場合、|±α>により獲得される位相は
【数336】
である。すなわち、uは屈曲(winding)の数である。
【0127】
【数337】
演算子を使用した以前に記載されるCNOTゲートとは異なり、上述のトポロジカル位相に基づくCNOTゲートはキュービットの雑音チャンネルにおいてバイアスを保存することが示され得る。特に、CNOTゲート進展の間に対照PCOにおいて起こる位相フリップ誤りは理想のCNOTゲートが実施される後に対照キュービット上で起こる位相フリップと同等である。同様に、CNOTゲート進展の間の標的PCO上の位相フリップ誤りは、理想のCNOTゲートの後に起こる対照および標的のキュービットの位相フリップ誤りと同等である。そのため、いくつかの態様によるCNOTゲートは、雑音チャンネルを偏らせないことはない。この結果は、2つの厳密な二準位キュービットの間の前述のCNOTゲート実行と対照的であり、量子情報処理を実施するためにより大きなヒルベルト空間(例えば振動子)を使用することの1つの利点を示す。
【0128】
いくつかの態様において、上述の状態
【数338】
の時間進展を実行するために特定のハミルトニアンを使用する。一般的に、対照PCOαおよび標的PCOβにおける猫の振幅は異なることが推定される。以下は、いくつかの態様による2つのPCOの間でバイアス保存CNOTゲートを実行する時間依存的相互作用ハミルトニアンである:
【数339】
【0129】
ハミルトニアン
【数340】
において、第1の線は対照猫キュービットを安定化するパラメトリック駆動非線形性振動子である。この振動子に対する駆動の位相はφ=0で固定される。他の2つの線を理解するために、
【数341】
が想起される。そのため、対照キュービットが(大きなβについて|β>とほぼ等しい)コンピューター計算基底における状態|0>にあり、
【数342】
項からの指数関数的に小さい寄与が無視される場合、CNOTハミルトニアンは:
【数343】
に簡易化される。結果的に、対照キュービットが状態|0>にある場合、標的振動子の状態は変化しないままである。
【0130】
一方で、対照キュービットが(大きなβについて|-β>とほぼ等しい)コンピューター計算基底における状態|1>にある場合、CNOTハミルトニアンは:
【数344】
に簡易化される。上述の表現の第2の線は、猫状態
【数345】
が標的PCOの瞬間の固有状態であることを示す。結果的に、位相φ(t)が限界(limitation)
【数346】
に関して断熱的に変化される場合、標的PCO状態の方向はφ(t)に従い、αはいずれは
【数347】
まで進展する。位相空間における回転の間に、標的PCOはまた、位相空間経路下の面積に比例しかつ標的PCOの状態に依存する幾何学的位相
【数348】
を獲得し、ここで
【数349】
である。2つの猫状態
【数350】
により獲得される幾何学的位相の差は、2つの猫状態について平均光子数が異なり、位相空間における
【数351】
がたどる経路の面積は
【数352】
がたどるものよりも大きいことを反映する。大きいαの限界において、2つの幾何学的位相における差は、
【数353】
となるようにα
2において指数関数的に減少する。結果的に、大きいαについて、2つの幾何学的な位相はほぼ等しく、2つの状態の間に位相の差を生じない。その代わり、これはさらなる
【数354】
回転を生じる全体的位相シフトである。この全体的位相シフトは、ソフトウェアにおいて古典的に説明され得るか、またはさらなる回転を元に戻すためにさらなる回転
【数355】
を適用することにより説明され得る。代替的に、この余分な回転は、上記の
【数356】
についての表現における最後の項により示されるさらなる相互作用を使用するCNOTゲート自体の操作により相殺され得る。猫状態基底におけるこの最後の項の射影は:
【数357】
により示される。この項は、幾何学的位相を正確に相殺する力学的位相をもたらす。したがって、CNOTハミルトニアンは、バイアス保存CNOTゲートを実行する2キュービット進展を生じる。
【0131】
いくつかの態様において、2つの振動子の間で3波混合を使用するバイアス保存CNOTゲートの物理的実現。2つの振動子の間の自然なカップリングはビームスプリッターカップリングである。したがって、いくつかの態様において、振動子はそれ自体、4次のカー非線形である。このように、3波混合は、標的振動子を周波数ωd=2ωt-ωcでパラメトリックに駆動することにより生成され得、ここでωtおよびωcは、標的および対照の振動子(oxillator)のそれぞれの周波数である。かかる駆動場の下、4次非線形性は、駆動場における光子および対照振動子における光子を、標的振動子における2つの光子に変換する。それにより、対照および標的の振動子の間で有効な3波混合が実現される。いくつかの態様において、振動子自体のカー非線形性はCNOT相互作用ハミルトニアンを実現するのに十分であり、さらなるカップリング要素は必要ない。さらに、相互作用のパラメトリックな性質のために、カップリングは制御可能である。
【0132】
図13は、いくつかの態様による、バイアス保存CNOTゲートを実行するように構成される量子情報処理デバイス1300の概略図である。
図13は、例えば
図1および
図2のブロック図において提供される(than)駆動場についてのさらなる詳細を提供する。
図13の概略図は、量子情報処理デバイス1300の回路図同等物である。いくつかの態様において、物理的系は、上述の
図1~5に関して記載されるように実行される。
【0133】
量子情報処理デバイス1300は、対照キュービット1301および標的キュービット1303を含む。いくつかの態様において、キュービット1301および1303は、カー非線形空洞である。空洞の非線形性は、上述のようにトランスモンまたはSNAILなどの超伝導回路要素を使用して制御され得る。
図13に示される例において、対照キュービット1301および標的キュービット1303の両方はSNAILを含む。対照キュービット1301のSNAILはω
cの共振周波数を有し、標的キュービット1303のSNAILはω
tの共振周波数を有する。いくつかの態様において、SNAILは、対照キュービット1301と標的キュービット1303の間の3および/または4波混合相互作用を巧みに構成するために外部磁場により偏る。この巧みに構成された相互作用を使用して、2光子駆動カー非線形振動子は、偏った雑音チャンネルを有するPCOを生じ、該PCOを作成するために使用され得る。
【0134】
対照キュービット1301および標的キュービット1303は、コンデンサ1309により図示されるように互いに容量的にカップリングされる。マイクロ波場は入力ポート1305を介して対照キュービット1301にカップリングされ得、マイクロ波場は入力ポート1307を介して標的キュービット1303にカップリングされ得る。マイクロ波場は、
図1に関して記載されるマイクロ波場発生器150から受信され得る。いくつかの態様において、1つより多くの周波数のマイクロ波場が1度に所定の入力ポートに適用され得る。
【0135】
対照PCOの状態に基づいて位相空間において標的PCOの状態を条件的に回転させるために、上述のCNOTハミルトニアン
【数358】
を実行する。CNOTハミルトニアンの項を展開することにより、このハミルトニアンを実行するために駆動場が必要とされるものの理解が補助され得る。展開されたCNOTハミルトニアンは:
【数359】
として記載され得る。
【0136】
この表現はさらに、ハミルトニアンを、2つのPCOの周波数が両方0である回転枠に変更することにより:
【数360】
として簡易化され得、ここで
【数361】
である。この形態において、カー非線形性および駆動場に基づいて4波混合を使用して、ハミルトニアンをどのようにパラメトリックに巧みに構成し得るかが明らかになる。例えば、SNAILを使用してPCOを実現する態様において、
【数362】
(式中i=c,tは対照(c)および標的(t)キュービットを表示する)に比例する項は3波混合を使用して実現され、
【数363】
に比例する項は4波混合を使用して実現される。
【数364】
に比例する項は、非線形性を必要とせず、単に駆動場を対照キュービットに適用することにより実現される。さらに、φ(t)は、経時的に変化してかつ時間Tにおいて0からπまで断熱的に増加する位相シフトである。上記の情報の全てを使用して、CNOTハミルトニアンは、マイクロ波場振幅および位相に関して:
【数365】
と表され得、ここで場振幅A
iは、正であると仮定される。振幅A
1、A
2、A
3、A
4およびA
5に対応する駆動マイクロ波場は、周波数2ω
c、2ω
t、2ω
t-ω
c、ω
cおよびω
cのそれぞれで適用される。
【0137】
いくつかの態様において、相互作用時間持続時間Tの間に、場の特定のシーケンス(sequence)が対照キュービット1301および/または標的キュービット1303に適用される。この相互作用時間の間にCNOTゲートの実行が実施される。いくつかの態様において、相互作用時間持続時間以外の時間の間に振幅および位相は以下の固定された値:
【数366】
を採る。CNOT相互作用時間の間に、位相Φ
i(t)は時間変動化し(time-varying)、0からπの値まで変化する。0~Tの間の位相の値は、変化が断熱的である限りは任意の様式で変化し得る。いくつかの態様において、位相変化は線形である。例えばΦ
i(t)=πt/Tである。
【0138】
図14Aは、いくつかの態様による、CNOTゲートを実行するために使用される5個の駆動場の時間の関数としての振幅のプロットであり、
図14Bは、CNOTゲートを実行するために使用される5個の駆動場についての時間の関数としての時間依存的位相のプロットである。
【0139】
第1に、第1のマイクロ波場は、固定振幅A
1および時間依存的位相Φ
1(t)を有する周波数2ω
cで対照空洞に適用される。この第1のマイクロ波場は、3波混合を介して対照空洞を駆動するための二光子項を提供する。固定された振幅A
1は、
図14Aの線1401により図示され、時間依存位相Φ
1(t)は、
図14Bの線1411により図示される。示される例において、位相は線形に減少する。
【0140】
次いで、第2のマイクロ波場は、時間依存的振幅A
2および時間依存的位相Φ
2(t)を有する周波数2ω
tで標的空洞に適用される。この第2のマイクロ波場は、3波混合を介して標的空洞を駆動するための二光子項を提供する。変化振幅A
2は
図14Aの線1402により図示され、時間依存的位相Φ
2(t)は
図14Bの線1412により図示される。振幅は経時的にシヌソイド的に変化する。示される例において、位相は、ゲート時間持続時間の第1の部分の間に第1の位相値で一定であり、ゲート時間持続時間の第2の部分の間に第2の位相値で一定であり、ここで第1の位相値は第2の位相値よりも小さい。これは、振幅が常に正を採るためである。正弦関数である振幅A
2が0振幅点を通過する(cross)場合、負に進むのではなく、振幅は再度増加し始め、位相はその代りに別の値を採る。
【0141】
周波数2ω
t-ω
cでの第3のマイクロ波場は、時間依存的振幅A
3および時間依存的位相Φ
3(t)を有するもので標的空洞に適用される。この第3のマイクロ波場は、CNOTハミルトニアンにおいて
【数367】
に比例するカップリング項を実現させる。変化振幅A
3は
図14Aの線1403により図示され、時間依存的位相Φ
3(t)は
図14Bの線1413により図示される。振幅は、経時的に余弦として変化する。示される例において、位相は時間の関数として線形に増加する。
【0142】
周波数ω
cでの第4のマイクロ波場は、時間依存的振幅A
4および時間依存的位相Φ
4(t)を有するもので対照空洞に適用される。この第4のマイクロ波場は、対照空洞の単一光子駆動を実現する。変化振幅A
4は
図14Aの線1404により図示され、時間依存的位相Φ
4(t)は
図14Bの線1414により図示される。振幅は、経時的に余弦として変化する。示される例において、位相は、ゲート時間持続時間の第1の部分の間に線形に減少し、ゲート時間持続時間の第2の部分の間に線形に減少する。線形減少は、ゲート時間持続時間の両方の部分において同じ傾斜を有するが、ゲート時間持続時間を通る位相の中間点(phase half way through)にジャンプが存在する。これは、振幅が常に正を採るためである。余弦である振幅A
4が0振幅点を通過する場合、負に進むのではなく、振幅は、再度増加し始め、その代わりに位相は異なる値にジャンプする。
【0143】
最終的に、第5のマイクロ波場は、固定振幅A
5および時間依存的位相Φ
5(t)を有する周波数ω
cで、標的空洞に適用される。この第5のマイクロ波場は、CNOTハミルトニアンにおける最終項の実現を提供する。固定振幅A
5は
図14Aの線1405により図示され、時間依存的位相Φ
5(t)は
図14Bの線1415により図示される。示される例において、位相は線形に減少する。
【0144】
偏った雑音に合わて構成される(tailored)誤り訂正コード
本発明者らは、上述のスタビライザー測定スキームは雑音バイアスを保存するので、該測定スキームの局面は、偏った雑音に合わさて構成される誤り訂正コードを効率的に実行するために使用され得ることを認識し、理解している。上述のように、データキュービットおよびアンシラキュービットにおける猫状態の調製が記載される。Z軸回転およびZZ(θ)ゲートなどの量子ゲートも上述される。さらに、Z軸に沿った測定は、例えば上述の技術を使用するホモダイン検出を使用して実施され得る。X軸に沿った測定は、さらなるゲートおよびアンシラを使用して実施され得る。本発明者らは、これらの状態調製技術、量子ゲートおよび検出は、ユニバーサルフォールトトレラント量子コンピューター計算を実行するために2つの猫キュービットの間でバイアス保存CNOTゲートと組み合され得ることを認識し、理解している。したがって、いくつかの態様は、連鎖(concatenation)に基づくフォールトトレラント誤り訂正のための効率の良い小型の回路を実行するための操作
【数368】
のバイアス保存の組を使用し、ここで
【数369】
は猫状態
【数370】
の調製であり、
【数371】
はX軸に沿った測定であり、
【数372】
はZ軸に沿った測定である。
【0145】
いくつかの態様において、偏った雑音キュービットは反復コード
【数373】
にエンコードされ、訂正は支配的な誤りの型(例えば位相フリップ誤り)についてなされる。n個のキュービットを有する反復コードは(n-1)/2の位相フリップ誤りを訂正し得る。いくつかの態様において、コードワードは、
【数374】
であり、ここでコードワード状態当たりn個の猫状態がある。この第1のエンコードの結果は、雑音強度が低減されたより対称な雑音チャンネルである。いくつかの態様において、次いで閾値未満の誤りを有する反復コードは、誤りをさらに低減するためにCSSコード
【数375】
に結び付けられ得る。
【0146】
反復コードについてのn-1個のスタビライザー発生器は、
【数376】
等である。いくつかの態様において、アンシラを使用してそれぞれのスタビライザー発生器を測定するためのものである誤りを検出するための最もナイーブ(naive)な方法が使用される。かかる技術は、
図15の量子回路
図1500により示される。水平な線1501~1503はコードキュービットを表し、水平な線1504~1505はn=3である例のアンシラキュービットを表す。
【0147】
それぞれのアンシラ1504~1505は、三角形1517および1527により図示されるように状態
【数377】
で初期化される。次いで、2つのCNOTゲート1510および1515は、第1のアンシラキュービット1504と第1の2つのコードキュービット1501および1502の間で実行され、2つのCNOTゲート1520および1525は、第2のアンシラキュービット1505と第2の2つのコードキュービット1502および1503の間で実行される。最終的に、アンシラキュービット1504~1505は、三角形1519および1529により表されるようにX軸に沿って測定される。フォールトトレラントであるいくつかの態様は、スタビライザー発生器のそれぞれをr回測定し、シンドロームビットは測定結果に対する多数決により決定される測定のm≧(r+1)/2が欠陥である場合、シンドロームビットは不正確である。
【0148】
このデコードスキームは、反復コードの(n-1)個のスタビライザー発生器のそれぞれについてのrビット反復コードを構築することと同等である。したがって、内部コードからのシンドロームのそれぞれのビットはそれ自体、[r, 1, r]反復コードにおいてエンコードされるので、デコードは、最初にシンドロームビットをデコードし、次いで得られたシンドロームをデコードすることにより進行し得る。シンドロームをデコードするためのこのナイーブな様式は、論理誤り率のための単純な分析的表現を生じる。しかしながら、本発明者らは、このナイーブはデコードするための好ましいアプローチではあり得ず、いくつかの態様において、
図15の2段階デコーダーは、sの測定されたシンドロームビットが与えられたnキュービット反復コードに対して最も起こりやすい誤りを直接示すデコーダーにより置き換えられ得ることを認識し、理解している。したがって、いくつかの態様において、単一のデコード工程におけるn個のデータキュービットに対するビットフリップ誤りを直接訂正し得るブロックコードを構築することにより、ナイーブスキームに対して向上を加えるための上述の洞察を活用する測定コードの概念が導入される。
【0149】
いくつかの態様において、測定コードを構築するために、シンドローム測定手順は、アンシラキュービットをカップリングすることによりスタビライザーグループ(必ずしも特定の発生器ではない)のs個の要素の合計を測定し、n個のキュービットに対する任意のt=(d-1)/2位相フリップ誤りを訂正する。したがって、パラメーター[n+2,n,d]を有する古典的コードがある。しかしながら、古典的パリティチェックは、反復コードのこの例において、元の量子コードのスタビライザーと適合性(compatible)であるべきであるので、これらのパラメーターを有する全ての古典的コードが許容可能ではない。特に、測定コードにおけるそれぞれのパリティチェックは、データキュービットに制限される場合に等しい加重を有するべきであるので、量子位相フリップコードの論理的
【数378】
演算子と交換可能である。いくつかの態様において、基底量子コードのスタビライザーグループとの一致性(consistency)は、測定コードに対する制的のみである。
【0150】
測定コードの一般的な形態は、パリティチェックマトリックス
【数379】
により特定され得る。これは次いで、量子反復コードの(一般的に余剰な(redandant))パリティチェック
【数380】
および測定を標識するSアンシラビットのさらなる組の関数として特定される。
【数381】
を考慮すれば、測定コードのパリティチェックマトリックスは、ブロックマトリックス
【数382】
恒等マトリックスである。読出しについてSアンシラビットがあるので、
【数383】
マトリックスである。いくつかの態様において、
【数384】
の列は量子反復コードのスタビライザーから生じるので、該列は等しい加重を有する。該列は線形に独立であり、関連のあるコードにいくつかのd≦nについてのパラメーター[n+s,n,d]を持たせる。正確に最初のn個のビット上の1に対応するデータキュービット上の一連の
【数385】
演算子は常に
【数386】
の中心にあるので、間隔はnよりも決して大きくならない。
【0151】
測定コードにおけるj番目のパリティチェックの測定は、回路の標準的な選択によりなされ得る。いくつかの態様において、i番目のカラムに1がある場合、CNOTゲートは、i番目のキュービットに適用され、カラムn+jにおいて標識されるアンシラを標的化する。構築により、
【数387】
の位置(j;n+j)に1があることに注意。このベアアンシラ(bare-ancilla)測定装置の有効な誤り率は、使用されるCNOTゲートの数、およびそのために測定されるスタビライザーの加重に依存する。そのため、全ての他の事柄(例えばコード間隔(code distance))が等しければ、測定コードを設計する場合、より低い加重の列が好ましい。本明細書において考慮される2つの例は、本明細書において空間を節約するために転置行列:
【数388】
において示される
【数389】
についての以下の選択から生成される。
【0152】
これらの例示的なコードは、それぞれのコードについてd=n(例えばd=3およびd=5のそれぞれ)となるように結合される間隔を飽和させる。対照的に、n=r=3について標準的な発生器のr回の測定の反復に関連する測定コードは:
【数390】
である。
【0153】
この選択および上述の3×3の選択の両方は、測定コードとして間隔d=3を有する。しかしながら、上述の3×3の選択は、[6, 3, 3]測定コードに対応するが、ナイーブ反復発生器方法は[12, 3, 3]測定コードを生じる。一般的に、ナイーブスキームは
【数391】
コードを生じ、より小さなrについて間隔は依然としてnを飽和しない。n=5の場合について、測定コードが間隔3を有する前にrは2に等しくなければならず、間隔がd=5で飽和する前にr=4である。したがって、ナイーブスキームは、[13, 5, 3]コードまたは[21, 5, 5]コードのいずれかを生じ、これらは間隔または律のそれぞれのいずれかにおいて、該選択から生じる[14, 5, 5]コードに劣る。これらの例はまた、いくつかの態様による測定コードの直観に反した特性を示す。n=5およびr=2または4を有するナイーブ反復発生器法を再度考慮すること。最初にシンドロームビットを個々にデコードすることによりデコーダーが作動する場合、データは、多くて(r-1)/2=0または1の任意の誤りのそれぞれに対して保護されるのみである。しかしながら、関連のある測定コードの構造を使用するデコーダーは、これらのそれぞれのパラメーターを用いて1または2の任意のデータ誤りを訂正して、次いで、コード失敗確率の最高次の挙動を低減する。
【0154】
上述の2つの例示的なコードの両方は、失敗をデコードする正確な確率が網羅的なルックアップの表を介してコンピューター計算され得るのに十分に小さい。ナイーブなエンコードおよびデコードに対する測定コードの利点を説明するために、本発明者らは、n=5について上述の第2の例の測定コードを使用してCNOT装置における論理的誤りの確率を推定する。対応する閾値は約6×10-3である。一方で、ナイーブデコーダーを使用して同様の閾値に達することは、n=11、r=5を必要とする。したがって、いくつかの態様において、デコーダーは、ナイーブデコーダーよりも少ない供給源を必要とする。一般的に、最適な(最大尤度(likelihood))デコーダーは、コンピューター計算のためにnおよびsにおいて指数関数的な供給源(exponential resource)を必要とするので、実行することが可能であり、そのため実質的により多くのコードは、ピークデコード性能に近づくために、メッセージ伝達アルゴリズム(message passing algorithm)などのヒューリスティクス(heuristics)をデコードすることを必要とする。いくつかの態様において、データ誤りが正確に正しいと推測されない場合はいつでも、これが必要でなくても、デコーダーは失敗を宣言する。誤り訂正の反復のラウンドが起こる場合、任意の訂正可能な誤りの加重が低減されるにつれて、誤り訂正の反復ラウンドは成功を明らかにするのに十分である。
【0155】
QIPを実施する方法
QIPを実施する種々の方法は、誤りシンドロームの測定およびバイアス保存ゲートの実施に関して上述される。
図16は、一般的に、アンシラキュービットにカップリングされたデータキュービットを使用する上述の態様のほとんどに適用される、QIPを実施する方法1600のフローチャートである。いくつかの態様において、データキュービットおよびアンシラキュービットの物理的実現は、上述の物理的系のいずれかであり得る。
【0156】
行為1602において、方法1600は、安定化場によりアンシラキュービットを駆動する工程を含む。いくつかの態様において、安定化場は、誤りシンドロームを測定しかつバイアス保存量子ゲートを実施するために活用されるアンシラキュービットの誤りチャンネルにおいて非対称性を生成する。安定化場は、マイクロ波場発生器160を使用して、アンシラキュービットに適用され得る。
【0157】
行為1604において、方法1600は、アンシラの少なくとも1つのジョセフソン接合を使用して、アンシラキュービットにおいてカー非線形性を作成する工程を含む。いくつかの態様において、超伝導回路要素を空洞にカップリングすることにより、カー非線形性が作成される。例えば、トランスモンまたはSNAILは、カー非線形空洞を作成するために、3D空洞内に配置され得る。
【0158】
行為1605において、方法1600は、アンシラキュービットおよびデータキュービットに複数のマイクロ波場を適用する工程を含む。いくつかの態様において、これらのマイクロ波場は、カー非線形空洞においてポンプされた猫状態を作成するために適用され得る。いくつかの態様において、マイクロ波場は、データキュービットまたはアンシラキュービットの状態において回転を実施するために適用され得る。いくつかの態様において、マイクロ波場は、別のキュービットの状態に基づいて1つのキュービット上で、条件的回転などの条件的ゲートを実施するために適用され得る。いくつかの態様において、マイクロ波場は、アンシラキュービットをデータキュービットにカップリングするため、またはアンシラキュービットを読み出し空洞にカップリングするために適用され得る。あるいは上述のように、マイクロ波場をデータキュービットおよび/またはアンシラキュービットに適用することにより任意の数の操作を実施し得る。
【0159】
行為1608において、方法は、アンシラキュービットを測定する工程を含む。上述のように、アンシラキュービットは、例えばアンシラキュービットの空洞のホモダイン検出を実施することにより直接的に測定され得る。代替的に、アンシラキュービットは、アンシラキュービットを読み出し空洞にカップリングすること、アンシラキュービットの状態に基づいて読み出し空洞の状態を条件的に置き換えること、および次いで読み出し空洞の状態を測定することにより測定され得る。いくつかの態様において、アンシラの測定はQND測定である。
【0160】
図17は、いくつかの態様による、アンシラキュービットの読出しを実施するための方法1700のフローチャートである。いくつかの態様において、方法1700は、アンシラキュービットにカップリングされるデータキュービットの特性を測定するために使用され得る。いくつかの態様において、方法1700はQND測定を実行し得る。
【0161】
行為1702において、方法1700は、少なくとも1つの回転マイクロ波場を、アンシラキュービットに適用する工程を含む。いくつかの態様において、回転は、アンシラキュービットに関連するブロッホ球のZ軸の周りであり得る。いくつかの態様において、回転は、猫状態を
【数392】
へと回転させ得る。
【0162】
行為1704において、方法1700は、ある量の時間、安定化マイクロ波場をオフにする工程を含む。いくつかの態様において、これは、アンシラキュービットを自由に進展させる。いくつかの態様において、アンシラキュービットはカー非線形空洞を含み得、アンシラキュービットの状態は、カー非線形ハミルトニアン下で自由に進展し得る。いくつかの態様において、アンシラキュービットの自由進展は、安定化場がアンシラキュービットにさらに適用される場合に実施され得ないアンシラキュービットの状態の回転を生じる。
【0163】
行為1706において、方法1700は、安定化マイクロ波場(exchange microwave field)を、アンシラキュービットに再度適用する工程を含む。いくつかの態様において、安定化マイクロ波場を再度適用することは、アンシラの状態の自由進展を停止する。いくつかの態様において、安定化マイクロ波場を再度適用することは、2つのコヒーレント状態の1つにおいて、アンシラの状態を維持する。いくつかの態様において、安定化場を再度適用することは、アンシラキュービットの誤りチャンネルが非対称となるように、特定の型の誤りを抑制する。例えば、安定化場は、ビットフリップ誤りを抑制し得る。
【0164】
行為1708において、方法1700は、交換マイクロ波場をアンシラキュービットに適用する工程を含む。いくつかの態様において、交換マイクロ波場は、アンシラキュービットと読み出し空洞の間の相互作用を作成する。いくつかの態様において、交換マイクロ波場を適用することは、3または4波混合相互作用を作成する。いくつかの態様において、交換マイクロ波場を適用することは、Qスイッチ操作を引き起こす。
【0165】
その他の考慮すべき事項
本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの局面はこのように記載されるが、種々の改変、変更および向上は当業者には容易であることが認識されるであろう。かかる改変、変更および向上は、本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内にあることが意図される。さらに、本発明の利点が示されるが、本発明の全ての態様が、記載される全ての利点を含むわけではないことが認識されるべきである。いくつかの態様は、本明細書およびいくつかの例において利点として記載される任意の特徴を満たさないことがある。したがって、前述の記載および図面は例示のみのためのものである。
【0166】
本発明の種々の局面は、単独、組合せまたは前述のものに記載される態様中に具体的に記載されない種々の配置で使用され得、そのためその適用において前述の記載に示されるかまたは図面に示される構成要素の詳細および配置に限定されない。例えば、一態様に記載される局面は、任意の様式で他の態様に記載される局面と組み合されてもよい。
【0167】
請求項構成要素を修飾するための特許請求の範囲における例えば「第1」、「第2」、「第3」などの順序を示す用語の使用は、それ自体では、別の請求項構成要素に対する1つの請求項構成要素の優先、先行もしくは順序または方法の行為が実施される時間的な順序のいずれも意味しないが、単に、特定の名称を有する1つの請求項構成要素を、同じ名称(順序を示す用語の使用以外)を有する別の構成要素と区別して、請求項構成要素を区別するための標識として使用される。
【0168】
本明細書において定義および使用される場合、全ての定義は、辞書の定義、参照により援用される文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味を支配するものと理解されるべきである。
【0169】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、そうではないと明確に示さない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0170】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つ以上の要素のリストに関して、句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中のいずれか1つ以上の要素から選択されるが、要素のリスト内に具体的に列挙されるそれぞれの要素の少なくとも1つおよび全ての要素を必ずしも含むわけではなく、該要素のリストにおける要素の任意の組合せを排除しない少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。この規定はまた、具体的に特定されるこれらの要素に関係があるか関係がないかのいずれにしても、句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内に具体的に特定される要素以外の要素が任意に存在し得ることを可能にする。
【0171】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、2つの値(例えば距離、幅等)に関して句「等しい(equal)」または「同じ(the same)」は、2つの値が、製造の許容誤差内で同じであることを意味する。したがって、等しいかまたは同じである2つの値は、該2つの値が互いから±5%だけ異なることを意味し得る。
【0172】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、句「および/または」は、そのように結合された要素、すなわちある場合において接続的に存在し、他の場合において離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」と共に列挙される複数の要素は、同じ様式、すなわちそのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。「および/または」節で具体的に特定された要素以外の他の要素は、具体的に特定されたこれらの要素と関連するか関連しないかのいずれにせよ、任意に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」についての参照は、「含む(comprising)」などの開放型の専門用語を伴って使用される場合、一態様においてAのみ(任意にB以外の要素を含む)、別の態様においてBのみ(任意にA以外の要素を含む)、さらに別の態様においてAとBの両方(任意に他の要素を含む)などのことをいい得る。
【0173】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「または(or)」は、上述に定義された「および/または」と同じ意味を有するように理解されるべきである。例えば、リスト中で項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的である(inclusive)ように解釈されるものとし、すなわちいくつかの要素または要素のリストの少なくとも1つであるが、1つより多くも含み、かつ任意に列挙されないさらなる項目を含むように解釈されるものとする。「の1つのみ」もしくは「の正確に1つ」、または特許請求の範囲において使用される場合は「からなる」などのそれと反対を明確に示する用語のみでは、いくつかの要素または要素のリストの正確に1つの要素を含むことが言及される。一般に、本明細書で使用される場合は、用語「または」は、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」または「の正確に1つ」などの排他性の用語が先にくる場合は、排他的な選択肢(すなわち「両方ではなく1つまたは他のもの」)を示すようにのみ解釈されるものとする。特許請求の範囲において使用される場合は、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用されるようなその通常の意味を有するものとする。
【0174】
また、本明細書で使用される語法および用語法は、説明を目的とするものであり、限定とみなされるべきではない。本明細書中の「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」およびそれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびそれらの同等物ならびにさらなる項目を包含することを意味する。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
データキュービット;および
非対称誤りチャンネルを有するアンシラキュービット、ここでデータキュービットはアンシラキュービットにカップリングされる、
を含む、量子情報処理(QIP)系。
項2
アンシラキュービットを使用してデータキュービットの特性を測定するように構成される測定デバイスをさらに含む、項1記載のQIP系。
項3
測定デバイスが、量子非破壊測定を使用してデータキュービットの特性を測定するように構成される、項2記載のQIP系。
項4
測定デバイスが、
アンシラキュービットの状態がデータキュービットの特性に基づくようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させること;および
アンシラキュービットの状態を測定してデータキュービットの状態を決定すること
により量子非破壊測定を実施するように構成される、項3記載のQIP系。
項5
測定デバイスが、量子非破壊測定を反復して実施することにより、アンシラキュービットにおける第1の型の誤りを抑制するように構成される、項4記載のQIP系。
項6
測定デバイスが、
アンシラキュービットにカップリングされた読み出し空洞;および
読み出し空洞の状態を測定するように構成された空洞状態検出器
を含む、項4記載のQIP系。
項7
測定デバイスが、
読み出し空洞の状態がアンシラキュービットの状態に基づくようにアンシラキュービットと読み出し空洞を相互作用させること;
読み出し空洞の状態を測定してアンシラキュービットの状態を決定すること
により、アンシラキュービットの状態を測定するように構成される、項6記載のQIP系。
項8
空洞状態検出器が位相感受性検出器を含む、項7記載のQIP系。
項9
空洞状態検出器がホモダイン検出器を含む、項8記載のQIP系。
項10
アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットの特性に基づくようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるように構成されるマイクロ波場供給源をさらに含む、項2記載のQIP系。
項11
アンシラキュービットが共鳴周波数を有するアンシラ超伝導非線形非対称誘導要素(superconducting nonlinear asymmetric inductive element)(SNAIL)であり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数の2倍であるポンプ周波数でアンシラSNAILにポンプマイクロ波場を適用するように構成される、
項10記載のQIP系。
項12
マイクロ波場供給源が、
アンシラキュービットに少なくとも1つの初期化マイクロ波場を適用して、ブロッホ球のx軸に沿って猫状態のアンシラキュービットを初期化するように構成される;および
データキュービットおよびアンシラキュービットの少なくとも1つに少なくとも1つの駆動マイクロ波場を適用して、データキュービットとアンシラキュービットの間の相互作用を作成するように
構成される、項11記載のQIP系。
項13
真空状態で調製されたアンシラSNAILのポンプマイクロ波場の振幅を、0からK|α|
2
(式中Kは、アンシラSNAILのカー非線形性の強度であり、αは猫状態に関連するコヒーレント状態振幅である)に等しいポンプ振幅値まで断熱的に増加させることにより、マイクロ波場供給源が、少なくとも1つの初期化マイクロ波場をアンシラキュービットに適用するように構成される、項12記載のQIP系。
項14
データキュービットがトランスモンであり;
データキュービットの特性が、トランスモンのσ
Z
であり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数でポンプマイクロ波場と同じ位相において、駆動マイクロ波場をトランスモンに適用し、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのσ
Z
に依存するようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるようにさらに構成される、
項11記載のQIP系。
項15
データキュービットが線形振動子において猫状態を含み;
データキュービットの特性が猫状態の光子数パリティであり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数でポンプマイクロ波場と同じ位相において、駆動マイクロ波場を線形振動子における猫状態に適用し、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットの光子数パリティに依存するようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるようにさらに構成される、
項11記載のQIP系。
項16
データキュービットが線形振動子においてGottesman-Kitaev-Preskill (GKP)状態を含み;
データキュービットの特性がGKP状態のスタビライザーであり;
マイクロ波場供給源が、SNAILの共鳴周波数と線形振動子の共鳴周波数の差に等しい駆動周波数で駆動マイクロ波場をアンシラSNAILに適用し、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのGKP状態のスタビライザーに依存するようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させるようにさらに構成される、
項11記載のQIP系。
項17
マイクロ波場供給源が、ポンプマイクロ波信号と同じ位相において駆動マイクロ波場をGKP状態に適用するように構成され;
データキュービットのGKP状態のスタビライザーがS
q
スタビライザーである、
項16記載のQIP系。
項18
マイクロ波場供給源が、ポンプマイクロ波信号と90°位相が異なる(90° out of phase)、駆動マイクロ波場をGKP状態に適用するように構成され;
データキュービットのGKP状態のスタビライザーがS
p
スタビライザーである、
項16記載のQIP系。
項19
データキュービットがデータSNAILにおいて猫状態を含み;
データキュービットの特性がデータSNAILのσ
Z
であり;
マイクロ波場供給源が、相互作用時間持続時間にわたり、複数のマイクロ波場を、データキュービットおよびアンシラキュービットに適用して、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのσ
Z
に依存するようにデータキュービットおよびアンシラキュービットを相互作用させるようにさらに構成され、
複数のマイクロ波場を適用することが:
周波数2ω
c
を有する第1のマイクロ波場をアンシラキュービットに適用すること、ここでω
c
はアンシラキュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
を有する第2のマイクロ波場をデータキュービットに適用すること、ここでω
t
はデータキュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
-ω
c
を有する第3のマイクロ波場をデータキュービットに適用すること;
周波数ω
c
を有する第4のマイクロ波場をアンシラキュービットに適用すること;および
周波数ω
c
を有する第5のマイクロ波場をデータキュービットに適用すること
を含む、
項11記載のQIP系。
項20
第1のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり一定であり;
第2のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり時間変化し;
第3のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり時間変化し;
第4のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり時間変化し;
第5のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり一定である、
項19記載のQIP系。
項21
第1のマイクロ波場の位相が相互作用時間持続時間にわたり線形に減少し;
第2のマイクロ波場の位相が、相互作用時間持続時間の第1の部分の間に第1の位相値で一定であり、相互作用時間持続時間の第2の部分の間に第2の位相値で一定であり、ここで第1の位相値は第2の位相値より小さい;
第3のマイクロ波場の位相が相互作用時間持続時間にわたり線形に増加し;
第4のマイクロ波場の位相が、相互作用時間持続時間の第1の部分の間に線形に減少し、相互作用時間持続時間の第2の部分の間に線形に減少し;
第5のマイクロ波場の位相が相互作用時間持続時間にわたり線形に減少する、
項20記載のQIP系。
項22
マイクロ波場供給源が、データキュービットとアンシラキュービットの間でCNOTゲートが実施されるように、データキュービットおよびアンシラキュービットを相互作用させるように構成される、項10記載のQIP系。
項23
アンシラキュービットがカー非線形空洞を含む、項1記載のQIP系。
項24
カー非線形空洞のカー非線形性が1MHzより大きい、項23記載のQIP系。
項25
アンシラキュービットのパラメトリック駆動の強度が、カー非線形空洞のカー非線形性より大きい、項24記載のQIP系。
項26
カー非線形空洞のカー非線形性がアンシラキュービットにおける位相フリップの率より大きい、項23記載のQIP系。
項27
アンシラキュービットがカー非線形空洞における猫状態を含む、項23記載のQIP系。
項28
アンシラキュービットが、カー非線形空洞においてカー非線形性を作成するように構成される少なくとも1つのジョセフソン接合を含む、項27記載のQIP系。
項29
アンシラキュービットがカー非線形空洞においてトランスモンを含む、項28記載のQIP系。
項30
アンシラキュービットがカー非線形空洞において超伝導非線形非対称誘導子要素(SNAIL)を含む、項28記載のQIP系。
項31
誤りシンドロームが猫状態の条件的回転に基づいて決定される、項1記載のQIP系。
項32
条件的回転が局所的相互作用のみを使用して実行される、項31記載のQIP系。
項33
アンシラキュービットの誤りチャンネルが、ビットフリップ誤りではなく位相フリップ誤りにより支配される、項1記載のQIP系。
項34
位相フリップ誤りが光子消失により生じる、項33記載のQIP系。
項35
位相フリップ誤りがアンシラキュービットにおいて起こる場合に、データキュービットの状態が影響を受けない、項34記載のQIP系。
項36
ビットフリップ誤りが、アンシラキュービットにおいて猫状態を作成するために使用されるポンプのパワー(power)の関数として指数関数的に抑制される、項33記載のQIP系。
項37
量子データゲートが、データキュービットとアンシラキュービットの間で実行される、項1記載のQIP系。
項38
量子データゲートがCNOTゲートであり、データキュービットがCNOTゲートの標的キュービットであり、アンシラキュービットがCNOTゲートの対照キュービットである、項37記載のQIP系。
項39
対照キュービットが第1の猫状態を含み、標的キュービットが第2の猫状態を含む、項38記載のQIP系。
項40
CNOTゲートが、位相空間において第1の猫状態を回転することにより実行される、局面40記載のQIP系。
項41
ゲート時間持続時間にわたり、複数のマイクロ波場をデータキュービットおよびアンシラキュービットに適用して、CNOTゲートを実行するように構成されるマイクロ波場供給源をさらに含む、項40記載のQIP系。
項42
マイクロ波場供給源が:
周波数2ω
c
を有する第1のマイクロ波場を対照キュービットに適用し、ここでω
c
は対照キュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
を有する第2のマイクロ波場を標的キュービットに適用し、ここでω
t
は標的キュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
-ω
c
を有する第3のマイクロ波場を標的キュービットに適用し;
周波数ω
c
を有する第4のマイクロ波場を対照キュービットに適用し;
周波数ω
c
を有する第5のマイクロ波場を標的キュービットに適用する
ように構成される、項41記載のQIP系。
項43
第1のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり一定であり;
第2のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第3のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第4のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第5のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり一定である、
項42記載のQIP系。
項44
第1のマイクロ波場の位相がゲート時間持続時間にわたり線形に減少し;
第2のマイクロ波場の位相が、ゲート時間持続時間の第1の部分の間に第1の位相値で一定であり、ゲート時間持続時間の第2の部分の間に第2の位相値で一定であり、ここで第1の位相値は第2の位相値よりも小さい;
第3のマイクロ波場の位相がゲート時間持続時間にわたり線形に増加し;
第4のマイクロ波場の位相が、ゲート時間持続時間の第1の部分の間に線形に減少し、ゲート時間持続時間の第2の部分の間に線形に減少し;
第5のマイクロ波場の位相がゲート時間持続時間にわたり線形に減少する、
項43記載のQIP系。
項45
安定化マイクロ波場をアンシラキュービットに適用して、非対称誤りチャンネルを作成するように構成されるマイクロ波場供給源をさらに含む、項1記載のQIP系。
項46
安定化マイクロ波場が、アンシラブロッホ球の少なくとも1つの軸の周りの回転に対してアンシラキュービットの状態を安定化する、項45記載のQIP系。
項47
アンシラキュービットにカップリングされる読み出し空洞をさらに含む、項46記載のQIP系。
項48
読み出し空洞の状態を決定するように構成され、アンシラの状態を測定するように構成される空洞状態検出器をさらに含む、項47記載のQIP系。
項49
読み出し空洞が、アンシラキュービットの状態に基づいて、条件的に置き換えられるように構成される、項47記載のQIP系。
項50
ある量の時間、安定化マイクロ波場をオフにして、アンシラキュービットのカー非線形性に基づいて、アンシラキュービットの状態を進展させること;
安定化マイクロ波場を再度適用して、アンシラキュービットの状態を再度安定化すること;および
交換マイクロ波場をアンシラキュービットに適用して、アンシラキュービットと読み出し空洞の間の交換カップリングをオンにすること
により、
少なくとも1つの回転マイクロ波場を適用して、ブロッホ球の軸の周りにアンシラキュービットの状態を回転させることにより、
読み出し空洞を条件的に置き換えるように、マイクロ波場供給源が構成される、項49記載のQIP系。
項51
アンシラキュービットにカップリングされたデータキュービットを含む系において量子情報処理(QIP)を実施する方法であって:
安定化マイクロ波場によりアンシラキュービットを駆動させて、非対称誤りチャンネルを作製する工程を含む、方法。
項52
アンシラキュービットを使用してデータキュービットの特性を測定する工程をさらに含む、項51記載の方法。
項53
データキュービットの特性を測定する工程が、量子非破壊測定を実施することを含む、項52記載の方法。
項54
量子非破壊測定を実施することが:
アンシラキュービットの状態がデータキュービットの特性に基づくようにデータキュービットとアンシラキュービットを相互作用させること;および
アンシラキュービットの状態を測定して、データキュービットの状態を決定すること
を含む、項53記載の方法。
項55
量子非破壊測定を反復して実施することによりアンシラキュービットにおいて第1の型の誤りを抑制する工程をさらに含む、項54記載の方法。
項56
量子非破壊測定を実施することが:
アンシラキュービットにカップリングされる読み出し空洞;および
読み出し空洞の状態を測定するように構成される空洞状態検出器
を含む測定デバイスを使用して達成される、項54記載の方法。
項57
量子非破壊測定を実施することが:
読み出し空洞の状態がアンシラキュービットの状態に基づくようにアンシラキュービットと読み出し空洞を相互作用させること;
読み出し空洞の状態を測定して、アンシラキュービットの状態を決定すること
を含む、項56記載の方法。
項58
空洞状態検出器が位相感受性検出器を含む、項57記載の方法。
項59
空洞状態検出器がホモダイン検出器を含む、項58記載の方法。
項60
アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットの特性に基づくように、データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させる工程をさらに含む、項52記載の方法。
項61
アンシラキュービットが、共鳴周波数を有するアンシラ超伝導非線形非対称誘導子要素(SNAIL)であり;
データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させることが、ポンプマイクロ波場を、SNAILの共鳴周波数の2倍であるポンプ周波数で、アンシラSNAILに適用することを含む、
項60記載の方法。
項62
少なくとも1つの初期化マイクロ波場をアンシラキュービットに適用して、猫状態にあるアンシラキュービットをブロッホ球のx軸に沿って初期化する工程;および
少なくとも1つの駆動マイクロ波場を、データキュービットおよびアンシラキュービットの少なくとも1つに適用して、データキュービットとアンシラキュービットの間で相互作用を作成する工程
をさらに含む、項61記載の方法。
項63
少なくとも1つの初期化マイクロ波場をアンシラキュービットに適用する工程が、真空状態で調製されたアンシラSNAILのポンプマイクロ波場の振幅を、0からK|α|
2
(式中KはアンシラSNAILのカー非線形性の強度であり、αは猫状態に関連するコヒーレント状態振幅である)に等しいポンプ振幅値まで断熱的に増加させることを含む、項62記載の方法。
項64
データキュービットがトランスモンであり;
データキュービットの特性がトランスモンのσ
Z
である方法であって、
該方法が、駆動マイクロ波場を、SNAILの共鳴周波数でポンプマイクロ波場と同じ位相において、トランスモンに適用し、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのσ
Z
に依存するように、データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させる工程をさらに含む、項61記載の方法。
項65
データキュービットが線形振動子において猫状態を含み;
データキュービットの特性が猫状態の光子数パリティである方法であって、
該方法が、駆動マイクロ波場を、SNAILの共鳴周波数でポンプマイクロ波場と同じ位相において、線形振動子における猫状態に適用して、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットの光子数パリティに依存するように、データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させる工程をさらに含む、項61記載の方法。
項66
データキュービットが線形振動子においてGottesman-Kitaev-Preskill (GKP)状態を含み;
データキュービットの特性がGKP状態のスタビライザーである方法であって、
該方法が、駆動マイクロ波場を、SNAILの共鳴周波数と線形振動子の共鳴周波数の間の差に等しい駆動周波数で、アンシラSNAILに適用して、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのGKP状態のスタビライザーに依存するように、データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させる工程をさらに含む、項61記載の方法。
項67
駆動マイクロ波場をGKP状態に適用する工程がポンプマイクロ波信号を有する位相でなされ;
データキュービットのGKP状態のスタビライザーがS
q
スタビライザーである、
項66記載の方法。
項68
駆動マイクロ波場をGKP状態に適用する工程がポンプマイクロ波信号と90°異なる位相でなされ;
データキュービットのGKP状態のスタビライザーがS
p
スタビライザーである、
項66記載の方法。
項69
データキュービットがデータSNAILにおいて猫状態を含み;
データキュービットの特性がデータSNAILのσ
Z
である方法であって、
該方法が、相互作用時間持続時間にわたり、複数のマイクロ波場を、データキュービットおよびアンシラキュービットに適用して、アンシラキュービットの状態のz成分がデータキュービットのσ
Z
に依存するように、データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させる工程をさらに含み、
ここで、複数のマイクロ波場を適用する工程が:
周波数2ω
c
を有する第1のマイクロ波場をアンシラキュービットに適用すること、ここでω
c
は対照キュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
を有する第2のマイクロ波場をデータキュービットに適用すること、ここでω
t
はデータキュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
-ω
c
を有する第3のマイクロ波場をデータキュービットに適用すること;
周波数ω
c
を有する第4のマイクロ波場をアンシラキュービットに適用すること;および
周波数ω
c
を有する第5のマイクロ波場をデータキュービットに適用すること
を含む、項61記載の方法。
項70
第1のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり一定であり;
第2のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり時間変化し;
第3のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり時間変化し;
第4のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり時間変化し;
第5のマイクロ波場の振幅が相互作用時間持続時間にわたり一定である、
項69記載の方法。
項71
第1のマイクロ波場の位相が相互作用時間持続時間にわたり線形に減少し;
第2のマイクロ波場の位相が、相互作用時間持続時間の第1の部分の間に第1の位相値で一定であり、相互作用時間持続時間の第2の部分の間に第2の位相値で一定であり、ここで第1の位相値は第2の位相値より小さい;
第3のマイクロ波場の位相が相互作用時間持続時間にわたり線形に増加し;
第4のマイクロ波場の位相が、相互作用時間持続時間の第1の部分の間に線形に減少し、相互作用時間持続時間の第2の部分の間に線形に減少し;
第5のマイクロ波場の位相が相互作用時間持続時間にわたり線形に減少する、
項70記載の方法。
項72
データキュービットとアンシラキュービットを相互作用させる工程が、データキュービットとアンシラキュービットの間で実施されているCNOTゲートを生じる、項60記載の方法。
項73
アンシラキュービットがカー非線形空洞を含む、項51記載の方法。
項74
カー非線形空洞のカー非線形性が1MHzより大きい、項73記載の方法。
項75
アンシラキュービットのパラメトリック駆動の強度が、カー非線形空洞のカー非線形性より大きい、項74記載の方法。
項76
カー非線形空洞のカー非線形性が、アンシラキュービットにおける位相フリップの率より大きい、項73記載の方法。
項77
アンシラキュービットがカー非線形空洞において猫状態を含む、項73記載の方法。
項78
アンシラキュービットの少なくとも1つのジョセフソン接合を使用してカー非線形空洞におけるカー非線形性を作成する工程をさらに含む、項77記載の方法。
項79
アンシラキュービットがカー非線形空洞においてトランスモンを含む、項78記載の方法。
項80
アンシラキュービットがカー非線形空洞において超伝導非線形非対称誘導子要素(SNAIL)を含む、項78記載の方法。
項81
猫状態の条件的回転に基づいて誤りシンドロームを決定する工程をさらに含む、項77記載の方法。
項82
局所的相互作用のみを実施して条件的回転を実行する工程をさらに含む、項81記載の方法。
項83
アンシラキュービットの誤りチャンネルが、ビットフリップ誤りではなく位相フリップ誤りにより支配される、項51記載の方法。
項84
位相フリップ誤りが光子消失の結果である、項83記載の方法。
項85
位相フリップ誤りがアンシラキュービットで起こる場合に、データキュービットの状態が影響を受けない、項84記載の方法。
項86
ポンプマイクロ波場をアンシラキュービットに適用して、ビットフリップ誤りがポンプマイクロ波場のパワーの関数として指数関数的に抑制されるように猫状態を作成する工程をさらに含む、項83記載の方法。
項87
データキュービットとアンシラキュービットの間で量子データゲートを実行する工程をさらに含む、項51記載の方法。
項88
量子データゲートがCNOTゲートであり、データキュービットがCNOTゲートの標的キュービットであり、アンシラキュービットがCNOTゲートの対照キュービットである、項87記載の方法。
項89
対照キュービットが第1の猫状態を含み、標的キュービットが第2の猫状態を含む、項88記載の方法。
項90
位相空間において第1の猫状態を回転させてCNOTゲートを実行する工程をさらに含む、局面89記載の方法。
項91
ゲート時間持続時間にわたり、複数のマイクロ波場を、データキュービットおよびアンシラキュービットに適用して、CNOTゲートを実行する工程をさらに含む、項88記載の方法。
項92
周波数2ω
c
を有する第1のマイクロ波場を対照キュービットに適用する工程、ここでω
c
は対照キュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
を有する第2のマイクロ波場を標的キュービットに適用する工程、ここでω
t
は標的キュービットの共鳴周波数である;
周波数2ω
t
-ω
c
を有する第3のマイクロ波場を標的キュービットに適用する工程;
周波数ω
c
を有する第4のマイクロ波場を対照キュービットに適用する工程;および
周波数ω
c
を有する第5のマイクロ波場を標的キュービットに適用する工程
をさらに含む、項91記載の方法。
項93
第1のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり一定であり;
第2のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第3のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第4のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり時間変化し;
第5のマイクロ波場の振幅がゲート時間持続時間にわたり一定である、
項92記載の方法。
項94
第1のマイクロ波場の位相がゲート時間持続時間にわたり線形に減少し;
第2のマイクロ波場の位相が、ゲート時間持続時間の第1の部分の間に第1の位相値で一定であり、ゲート時間持続時間の第2の部分の間に第2の位相値で一定であり、ここで第1の位相値は第2の位相値より小さい;
第3のマイクロ波場の位相がゲート時間持続時間にわたり線形に減少し;
第4のマイクロ波場の位相が、ゲート時間持続時間の第1の部分の間に線形に減少し、ゲート時間持続時間の第2の部分の間に線形に減少し;
第5のマイクロ波場の位相がゲート時間持続時間にわたり線形に減少する、
項93記載の方法。
項95
安定化マイクロ波場が、アンシラキュービットの状態を、アンシラブロッホ球の少なくとも1つの軸の周りの回転に対して安定化する、項51記載の方法。
項96
読み出し空洞をアンシラキュービットにカップリングする工程をさらに含む、項95記載の方法。
項97
アンシラキュービットの状態に基づいて読み出し空洞を条件的に置き換える工程をさらに含む、95記載の方法。
項98
読み出し空洞を条件的に置き換える工程が:
ある量の時間に、安定化マイクロ波場をオフにして、アンシラキュービットのカー非線形性に基づいてアンシラキュービットの状態を進展させること;
安定化マイクロ波場を再度適用して、アンシラキュービットの状態を再度安定化させること;および
交換マイクロ波場をアンシラキュービットに適用して、アンシラキュービットと読み出し空洞の間の交換カップリングをオンにすることにより、
少なくとも1つの回転マイクロ波場を適用して、ブロッホ球の軸の周りにアンシラキュービットの状態を回転させること
を含む、項97記載の方法。