(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】原子層堆積装置及び原子層堆積方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240304BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240304BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240304BHJP
C23C 16/22 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/455
C23C16/44 B
C23C16/22
(21)【出願番号】P 2023092608
(22)【出願日】2023-06-05
【審査請求日】2023-08-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500460782
【氏名又は名称】株式会社シー・ヴィ・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】川浦 廣
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017331(JP,A)
【文献】特開2020-021888(JP,A)
【文献】特開2017-139430(JP,A)
【文献】特開2015-070095(JP,A)
【文献】特開2011-096986(JP,A)
【文献】特開2021-125610(JP,A)
【文献】特開2021-125608(JP,A)
【文献】特開2010-141207(JP,A)
【文献】特開2010-059498(JP,A)
【文献】特開2014-082419(JP,A)
【文献】特開2014-138076(JP,A)
【文献】特開2021-125590(JP,A)
【文献】特開2010-245448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/455
C23C 16/44
C23C 16/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室と、
基板載置部が設けられた複数のサセプタと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するプリカーサノズルと、
前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給するリアクタントノズルと、
前記基板載置部が水平になるよう前記複数のサセプタを搭載し、前記反応室内で水平方向に回転することによって、前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルと、を備えた原子層堆積装置であって、
前記第1の温度が50~150℃、前記第2の温度が250~700℃であり、前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積装置。
【請求項2】
反応室と、
基板載置部が設けられた複数のサセプタと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するプリカーサノズルと、
前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給するリアクタントノズルと、
前記基板載置部が水平になるよう前記複数のサセプタを搭載し、前記反応室内で水平方向に回転することによって、前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルと、を備えた原子層堆積装置であって、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第3の温度に制御する第3ポジションを備え、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高く、
前記第3の温度が前記第1の温度よりも低いことを特徴とする原子層堆積装置。
【請求項3】
反応室と、
基板載置部が設けられた複数のサセプタと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するプリカーサノズルと、
前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給するリアクタントノズルと、
前記基板載置部が水平になるよう前記複数のサセプタを搭載し、前記反応室内で水平方向に回転することによって、前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルと、を備えた原子層堆積装置であって、
前記第2ポジションの上方にプラズマ発生ユニットを備え、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積装置。
【請求項4】
反応室と、
基板載置部が設けられた複数のサセプタと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するプリカーサノズルと、
前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給するリアクタントノズルと、
前記基板載置部が水平になるよう前記複数のサセプタを搭載し、前記反応室内で水平方向に回転することによって、前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルと、を備えた原子層堆積装置であって、
前記第1ポジションにおいて、前記基板載置部に近接する第1ステージと、
前記第1ステージを所定の温度に制御する温度制御機構と、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第3の温度に制御する第3ポジションを備え、
前記第3ポジションにおいて、前記基板載置部に近接する第3ステージと、
前記第3ステージを所定の温度に制御する温度制御機構と、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積装置。
【請求項5】
前記第1ポジションにおいて、前記基板載置部と前記第1ステージとの間に前記第1ステージの下方より不活性ガスを供給する第1ステージガスノズルと、
前記第3ポジションにおいて、前記基板載置部と前記第3ステージとの間に前記第3ステージの下方より不活性ガスを供給する第3ステージガスノズルを備える、請求項4記載の原子層堆積装置。
【請求項6】
前記第1ステージ及び前記第3ステージの、前記基板載置部に対向する面に、不活性ガスの流路となる溝を備える、請求項5記載の原子層堆積装置。
【請求項7】
反応室と、
基板載置部が設けられた複数のサセプタと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するプリカーサノズルと、
前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給するリアクタントノズルと、
前記基板載置部が水平になるよう前記複数のサセプタを搭載し、前記反応室内で水平方向に回転することによって、前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルと、を備えた原子層堆積装置であって、
全体として馬蹄形をなす、一部を欠いた円形のリングからなる複数のC形リングが、前記回転テーブル上に、前記第1ポジション及び前記第2ポジションにおける前記基板載置部と同心配置され、
前記複数のC形リングの上面が、前記反応室の天井面に近接し、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積装置。
【請求項8】
前記複数のC形リングとの間に隙間を設けつつ、前記複数のC形リングの間の空間を埋めるセンターブロックを備え、
前記センターブロックの上面が、前記反応室の天井面に近接する、
請求項7記載の原子層堆積装置。
【請求項9】
前記センターブロックの外側において、前記回転テーブルにポジション間ガス排出口を備える、請求項8記載の原子層堆積装置。
【請求項10】
前記基板載置部と前記C形リングの間に、基板周辺部ガス排出口を備える、請求項7記載の原子層堆積装置。
【請求項11】
水平に配置された基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションとを備えた反応室内において、
前記基板載置部に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するとともに、前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給しつつ、前記反応室を排気するステップと、
前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルを、前記反応室内で水平方向に回転するステップと、を備えた原子層堆積方法であって、
前記第1の温度が50~150℃、前記第2の温度が250~700℃であり、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積方法。
【請求項12】
水平に配置された基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションとを備えた反応室内において、
前記基板載置部に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するとともに、前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給しつつ、前記反応室を排気するステップと、
前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルを、前記反応室内で水平方向に回転するステップと、
を備えた原子層堆積方法であって、
基板の温度を前記第1の温度よりも低い第3の温度に制御する第3ポジションに基板を載置するステップをさらに備え、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積方法。
【請求項13】
水平に配置された基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションとを備えた反応室内において、
前記基板載置部に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するとともに、前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給しつつ、前記反応室を排気するステップと、
前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルを、前記反応室内で水平方向に回転するステップと、
を備えた原子層堆積方法であって、
前記第2ポジションの上方に設けられたプラズマ発生ユニットを用いてリアクタントを含むガスをプラズマ化するステップをさらに備え、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積方法。
【請求項14】
水平に配置された基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションとを備えた反応室内において、
前記基板載置部に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するとともに、前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給しつつ、前記反応室を排気するステップと、
前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルを、前記反応室内で水平方向に回転するステップと、
を備えた原子層堆積方法であって、
基板の温度を前記第1の温度よりも低い第3の温度に制御する第3ポジションに基板を配置するステップと、
前記第1ポジションに設けられた、前記基板載置部に近接する第1ステージ、及び、前記第1ステージを所定の温度に制御する温度制御機構を用いて、基板の温度を第1の温度に制御するステップと、
前記第3ポジションに設けられた、前記基板載置部に近接する第3ステージ、及び、前記第3ステージを所定の温度に制御する温度制御機構を用いて、基板の温度を第3の温度に制御するステップとをさらに備え、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積方法。
【請求項15】
水平に配置された基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、
前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションとを備えた反応室内において、
前記基板載置部に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、
前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するとともに、前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給しつつ、前記反応室を排気するステップと、
前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルを、前記反応室内で水平方向に回転するステップと、
を備えた原子層堆積方法であって、
全体として馬蹄形をなす、一部を欠いた円形のリングからなる複数のC形リングが、前記回転テーブル上に、前記第1ポジション及び前記第2ポジションにおける前記基板載置部と同心配置され、
前記複数のC形リングの上面が、前記反応室の天井面に近接し、
前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とする原子層堆積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造に用いられる原子層堆積装置及び原子層堆積方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)による成膜技術は、広く半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造に用いられている。
【0003】
ことに近年、非常に高価な極端紫外線(EUV:extreme ultraviolet)露光装置を用いることなく、極めて微細なパターン形成を可能とするダブルパターニング技術が開発されており、ALDはその鍵を握る技術として注目されている。これは、パターニングされた有機レジスト膜上に、これが劣化しないよう200℃程度以下の温度で、均一かつステップカバレッジの良い成膜方法により、10~20nm程度の厚さのシリコン又は金属の酸化膜を成膜する技術である。
【0004】
一方、エンジン、ブレーキなどが高度に電子制御される自動車には、パワー半導体が欠かせない存在となっている。世界的に電気自動車(EV:electric vehicle)化が推進されているが、電気自動車の高性能化にもパワー半導体の高性能化が必要不可欠である。パワー半導体の高性能化の手法の一つとして、Si基板を、高耐圧・高電流対応が可能なSiC基板やGaN基板に置き換えることが進められている。SiC基板やGaN基板を用いたパワー半導体において、とくに窒化膜の膜質は重要であるため、CVD(chemical vapor deposition)の代わりにALDが導入されつつある。例えば、GaNデバイスにおいて、ALD技術を用いて窒化アルミニウム(AlN)層を形成することにより、窒化アルミニウム層の無い素子に比べ、大幅なチャネル移動度の向上が実現されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
その他にも、ALD技術は、High-k/Metalゲート形成、TiNやRu等を用いたDRAMキャパシタ上下電極形成、SiNを用いたゲート電極サイドウォール形成、コンタクト及びスルーホールにおけるバリアシード形成、NANDフラッシュメモリのHigh-k絶縁膜やチャージトラップ膜形成等、多くの工程で利用されつつある。また、ALD技術は、フラットパネルディスプレイ、LED、太陽電池においても、ITO膜形成やパッシベーション膜形成において利用されている。
【0006】
従来のALDにおいて、枚葉式、バッチ式(例えば、特許文献1を参照)が広く知られているが、しばしば処理速度(単位時間当たりに処理できる基板数)の低さが問題となり、これまでに様々な工夫がなされてきた(例えば、特許文献2を参照)。工夫の一つとして、回転型セミバッチALD装置が開発された。回転型セミバッチALD装置において、円筒型真空容器が、二つの反応ガス室と、それらの間に配置された二つのパージガス室からなる合計四つの扇型サブチャンバーに分割され、各サブチャンバー中心部上方に反応ガス供給手段が配置され、ガス排気部は二つのパージガス室の下部に設置されている。ディスク状テーブルを回転することにより、テーブル上の複数の被処理基板が各サブチャンバーを通過し、ALD成膜が行われる(例えば、特許文献3を参照)。
【0007】
改良型の回転型セミバッチALD装置として、ガスカーテン式がある。ガスカーテン式回転型セミバッチALD装置においては、反応ガス供給手段の間にパージガスをカーテンのように流すことによって、反応ガスの混合が抑制される(例えば、特許文献4を参照)。
【0008】
なお、スパッタリングによる成膜装置としては、回転搬送テーブルにより搬送されるディスク状被処理物に多層膜を堆積する装置において、ディスク状被処理物を冷却する冷却機構を具備するものが開示されている(例えば、特許文献5及び6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-6801号公報
【文献】特開2014-201804号公報
【文献】米国特許公報5225366号
【文献】米国特許公報6576062号
【文献】特開2005-325428号公報
【文献】特開2020-97779号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】蔵口、梶原、向井、東芝レビュー、75巻6号(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来例に示した特許文献1~4に記載のALD技術では、良好な膜質が得られないという問題点があった。リアクタントを基板と反応させるステップでは、基板温度を所定の温度まで上げる必要があるが、プリカーサを基板と反応させるステップも同様に高温で行っている。すると、プリカーサの分解によって生じる炭素が膜中に取り込まれてしまい、膜質が悪くなってしまうものと考えられる。
【0012】
また、従来例に示した特許文献5及び6に記載の技術はスパッタリング成膜に関するものであり、ALDによる成膜はできない。スパッタリングは通常、ガスによる熱伝達がほとんど起きない1Pa程度以下の低圧で成膜を行う必要があるため、基板を昇降させるなどの複雑な機構を使って冷却を行っているが、このような冷却機構は一般に数百Paの圧力で成膜を行うALDには不向きである。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、ALDによる成膜を行うに際して、高品質の薄膜が得られる原子層堆積装置及び原子層堆積方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の第1発明の原子層堆積装置は、反応室と、基板載置部が設けられた複数のサセプタと、前記基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションと、前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するプリカーサノズルと、前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給するリアクタントノズルと、前記基板載置部が水平になるよう前記複数のサセプタを搭載し、前記反応室内で水平方向に回転することによって、前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルと、を備えた原子層堆積装置であって、前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とするものである。
【0015】
本願の第1発明の原子層堆積装置において、好適には、前記第1の温度が50~150℃、前記第2の温度が250~700℃であることが望ましい。
【0016】
また、好適には、前記基板載置部に載置した基板の温度を第3の温度に制御する第3ポジションを備えることが望ましい。
【0017】
さらに好適には、前記第3の温度が前記第1の温度よりも低いことが望ましい。
【0018】
また、好適には、前記基板載置部に載置した基板と前記反応室外の基板とを交換する第4ポジションを備えることが望ましい。
【0019】
また、好適には、前記第2ポジションの下方にランプユニットを備えることが望ましい。
【0020】
また、好適には、前記第2ポジションの上方にプラズマ発生ユニットを備えることが望ましい。
【0021】
また、好適には、前記第1ポジションにおいて、前記基板載置部に近接する第1ステージと、前記第1ステージを所定の温度に制御する温度制御機構と、前記第3ポジションにおいて、前記基板載置部に近接する第3ステージと、前記第3ステージを所定の温度に制御する温度制御機構とを備えることが望ましい。
【0022】
さらに好適には、前記第1ポジションにおいて、前記基板載置部と前記第1ステージとの間に前記第1ステージの下方より不活性ガスを供給する第1ステージガスノズルと、前記第3ポジションにおいて、前記基板載置部と前記第3ステージとの間に前記第3ステージの下方より不活性ガスを供給する第3ステージガスノズルを備えることが望ましい。
【0023】
さらに好適には、前記第1ステージ及び前記第3ステージの、前記基板載置部に対向する面に、不活性ガスの流路となる溝を備えることが望ましい。
【0024】
また、好適には、全体として馬蹄形をなす、一部を欠いた円形のリングからなる複数のC形リングが、前記回転テーブル上に、前記第1ポジション及び前記第2ポジションにおける前記基板載置部と同心配置され、前記複数のC形リングの上面が、前記反応室の天井面に近接することが望ましい。
【0025】
さらに好適には、前記複数のC形リングとの間に隙間を設けつつ、前記複数のC形リングの間の空間を埋めるセンターブロックを備え、前記センターブロックの上面が、前記反応室の天井面に近接することが望ましい。
【0026】
さらに好適には、前記センターブロックの外側において、前記回転テーブルにポジション間ガス排出口を備えることが望ましい。
【0027】
また、好適には、前記基板載置部と前記C形リングの間に、基板周辺部ガス排出口を備えることが望ましい。
【0028】
本願の第2発明の原子層堆積方法は、水平に配置された基板載置部に載置した基板の温度を第1の温度に制御する第1ポジションと、前記基板載置部に載置した基板の温度を第2の温度に制御する第2ポジションとを備えた反応室内において、前記基板載置部に、前記反応室外から基板を移動させて載置するステップと、前記第1ポジションに配置された前記基板載置部にプリカーサを含むガスを供給するとともに、前記第2ポジションに配置された前記基板載置部にリアクタントを含むガスを供給しつつ、前記反応室を排気するステップと、前記基板載置部を前記第1ポジション及び前記第2ポジションに配置する回転テーブルを、前記反応室内で水平方向に回転するステップと、を備えた原子層堆積方法であって、前記第2の温度が前記第1の温度よりも高いことを特徴とするものである。
【0029】
本願の第2発明の原子層堆積方法において、好適には、前記第1の温度が50~150℃、前記第2の温度が250~700℃であることが望ましい。
【0030】
このような構成により、高品質の薄膜が得られる原子層堆積装置及び原子層堆積方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ALDによる成膜を行うに際して、高品質の薄膜が得られる原子層堆積装置及び原子層堆積方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施の形態1における原子層堆積装置の構成を示す平面図
【
図2】本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図及び断面図
【
図3】本発明の実施の形態1における第1ステージの構成を示す斜視図
【
図4】本発明の実施の形態1における回転テーブルの構成を示す分解斜視図
【
図5】本発明の実施の形態1における回転テーブルの構成を示す斜視図
【
図6】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す分解斜視図
【
図7】本発明の実施の形態1における蓋の構成を示す分解斜視図
【
図8】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す分解斜視図
【
図9】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す平面図
【
図10】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図
【
図11】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図
【
図12】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図
【
図13】本発明の実施の形態1における回転テーブルの構成を示す平面図
【
図14】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す平面図
【
図15】本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図及び断面図
【
図16】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図
【
図17】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図
【
図18】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図
【
図19】本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図
【
図20】本発明の実施の形態1における成膜反応の構成を示す概念図
【
図21】本発明の実施の形態1における成膜反応の構成を示す概念図
【
図22】本発明の実施の形態2におけるサセプタの構成を示す斜視図及び断面図
【
図23】本発明の実施の形態3におけるサセプタの構成を示す斜視図及び断面図
【
図24】本発明の実施の形態4における反応室の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態における原子層堆積装置及び原子層堆積方法について、図面を用いて説明する。
【0034】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、
図1~
図21を参照して説明する。
【0035】
図1は、実施の形態1における原子層堆積装置の構成を示すもので、搬送系も含めた装置全体の平面図である。
【0036】
なお、以降の説明をわかりやすくするため、各図中にx、y、zの軸方向を示す図を入れている。
図1の場合、x軸は図の左から右に向かう向き、y軸は図の下から上に向かう向き、z軸は紙面の奥から手前に向かう向きである。
【0037】
図1において、予備室1及び2と、反応室3及び4が、ゲート5を介してロボット室6に接続されている。ロボット室6はロボット7を備えており、予備室1又は2と、反応室3又は4との間で基板の搬送を行う。予備室1及び2をロードロック室とし、反応室3及び4とロボット室6を常時真空状態で運転してもよいし、予備室1及び2とロボット室6を常時大気状態とし、反応室3及び4を大気状態にして基板の出し入れを行い、真空状態にして成膜する構成としてもよい。なお、「真空」とは減圧状態のことであり、大気圧よりも低い圧力を意味する。また、ロボット室6がさらに基板のアライメントをする機能を備えてもよい。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図(a)及び断面図(b)であり、基板をサセプタに載置していない状態を示す図である。
図2(b)は、
図2(a)をサセプタの中心を含むyz平面に平行な面で切断したときの断面図である。
【0039】
図2において、サセプタ8は、全体が基板と相似形(円形)であり、基板載置部としての円形の座グリ部9を備える。また、座グリ部9の周辺3箇所に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍3箇所に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている。スリット10及びピン穴11は、いずれも円周方向に等配されている。サセプタ8の材質としては、耐熱性に優れ、熱伝導率が高く、変形・変質しにくいものが好ましく、炭化珪素などを用いることができる。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態1における第1ステージの構成を示す斜視図である。
図3において、第1ステージ12は、全体として円柱形の凸部13と、凸部13よりも直径の大きな円柱からなる底部14からなる。凸部13の上面の外周部3箇所が切り欠かれており、段差部15が形成されている。3つの段差部15は、円周方向に等配されている。凸部13の上面には、不活性ガスの流路となる溝16が設けられている。第1ステージ12の中央部に、下方より不活性ガスを供給する第1ステージガスノズル17が設けられている。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態1における回転テーブルの構成を示す分解斜視図である。また、
図5は、本発明の実施の形態1における回転テーブルの構成を示す斜視図であり、
図4を組み立てた後の状態を示す図である。
【0042】
図4及び
図5において、回転テーブル18には、回転軸としてのシャフト19、3枚のサセプタ8を搭載するための3つのサセプタホルダ20(貫通穴)、及び3つのポジション間ガス排出口21が設けられている。3つのポジション間ガス排出口21は、3つのサセプタホルダ20のうちの2つの中間位置に配置されている。また、全体として馬蹄形をなす、一部を欠いた円形のリングからなる3つのC形リング22が、回転テーブル18上に、サセプタホルダ20と同心配置されている。C形リング22の円が欠けた部分は、回転テーブル18の外側に向くように配置されている。3つのC形リングのうち2つのC形リングとの間に隙間を設けつつ、3つのC形リングの間の空間を埋めるセンターブロック23が設けられている。センターブロック23の外側において、回転テーブル18にポジション間ガス排出口21が設けられている構成である。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す分解斜視図である。
図6において、3つのサセプタ8上の座グリ部に各1枚ずつ、合計3枚の基板24が搭載される。3つのサセプタ8は、3つのサセプタホルダ20にはめ込まれる。つまり、3つのC形リング22は、回転テーブル18上に、第1ポジション、第2ポジション、及び第3ポジションにおける基板載置部としての座グリ部と同心配置される。反応室3は、外形は直方体であるが、円柱状の内部空間が設けられている。シャフト19が、反応室3の底面25に設けられたシャフト穴26に挿入される。反応室3の底面25に、第1ポジション底穴27、第2ポジション底穴28、第3ポジション底穴29が、円周方向に等配されている。第1ポジション底穴27に、下方から第1ステージ12の凸部が挿入され、第3ポジション底穴29に、下方から第3ステージ30の凸部が挿入される。第3ステージ30は、第1ステージ12と同様の構成である。第2ポジション底穴28に、下方から石英ガラス窓31がはめ込まれる。反応室3の底面25には、さらにリフトピンを通すためのピン穴32が3箇所に設けられており、リフトピンホルダ33に固定された3本のリフトピン34が挿入される。また、反応室3の底面25に、第1ポジション底穴27、第2ポジション底穴28、第3ポジション底穴29のうちの2つの中間位置に、3つのガス排気口35が設けられている。反応室3の側面に、基板24交換用のゲート開口36が設けられている。
【0044】
図7は、本発明の実施の形態1における蓋の構成を示す分解斜視図である。
図7において、最上部にガス導入部37が設けられた石英チューブ38の周囲にコイル39が巻かれており、第2ポジションの上方に配置されるプラズマ発生ユニットを構成する。石英チューブ38の底部は、蓋40の第2ポジションの直上に相当する位置に設けられた開口部41にはめ込まれる。蓋40の第1ポジションの直上に相当する位置にガス導入穴42、第3ポジションの直上に相当する位置にガス導入穴43が設けられ、下方から、多数のシャワー穴44が設けられた2つのシャワープレート45がはめ込まれる。
【0045】
図8は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す分解斜視図である。石英チューブ38がはめ込まれた蓋40が、反応室3の上にはめ込まれる。
【0046】
図9は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す平面図であり、反応室3を上から見た図である。ただし、簡単のため、主要部品のみを表示している。
【0047】
図10は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図であり、
図9において、第1ポジションの中心を通る、xy平面に垂直なA-A断面を矢印aの向きに見たものである。
【0048】
図10において、水平に配置された、サセプタ8上の基板載置部としての座グリ部9に、基板24が載置されている。この図において、基板24は第1ポジションに位置する。反応室3内において、座グリ部9とC形リング22の間に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている。座グリ部9に近接する第1ステージ12は、凸部13と、凸部13よりも直径の大きな底部14からなる。凸部13の上面の外周部が切り欠かれており、段差部15が形成されている。第1ステージ12の中央部に、下方より不活性ガスを供給する第1ステージガスノズル17が設けられている。回転テーブル18には、回転軸としてのシャフト19、ポジション間ガス排出口21が設けられている。C形リング22が、回転テーブル18上に配置され、その上面は反応室3の天井面に近接している。C形リング22との間に隙間47を設けつつ、センターブロック23が設けられており、その上面は反応室3の天井面に近接している。シャフト19は、反応室3の底面25に設けられたシャフト穴26に挿入されている。反応室3の底面25に、ガス排気口35が設けられている。
【0049】
蓋40にガス導入穴42が設けられ、下方から、プリカーサノズルとしての多数のシャワー穴44が設けられたシャワープレート45がはめ込まれ、プリカーサを含むガス供給マニホールド46が構成されている。プリカーサの液化を防止するため、プリカーサを含むガスに接触する部分を加熱することが好ましく、蓋40及びシャワープレート45に温度制御機構(流体流路、抵抗加熱ヒーターなど)を設けてもよい。このとき、蓋40及びシャワープレート45の温度は40~150℃程度、典型的には80℃に制御することが好ましい。
【0050】
回転テーブル18のサセプタホルダ20(サセプタ8がはめ込まれている貫通穴)の周囲に、冷媒流路48が設けられている。冷媒流路48には、冷媒導入管49より冷媒が供給される。基板24の温度を第1の温度に制御する目的で、第1ステージ12の凸部13の内部に、第1ステージ12を所定の温度に制御する温度制御機構50が設けられている。温度制御機構50は、流体流路であってもよいし、抵抗加熱ヒーターであってもよい。
【0051】
図11は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図であり、
図9において、第2ポジションの中心を通る、xy平面に垂直なB-B断面を矢印bの向きに見たものである。
【0052】
図11において、サセプタ8上の基板載置部としての座グリ部9に、基板24が載置されている。この図において、基板24は第2ポジションに位置する。反応室3内において、座グリ部9とC形リング22の間に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている。回転テーブル18には、回転軸としてのシャフト19、ポジション間ガス排出口21が設けられている。C形リング22が、回転テーブル18上に配置され、その上面は反応室3の天井面に近接している。C形リング22との間に隙間47を設けつつ、センターブロック23が設けられており、その上面は反応室3の天井面に近接している。シャフト19は、反応室3の底面25に設けられたシャフト穴26に挿入されている。反応室3の底面25に、ガス排気口35が設けられている。回転テーブル18のサセプタホルダ20(サセプタ8がはめ込まれている貫通穴)の周囲に、冷媒流路48が設けられている。
【0053】
蓋40に、最上部にリアクタントノズルとしてのガス導入部37が設けられた石英チューブ38と、その周囲に巻かれたコイル39からなるプラズマ発生ユニットが設けられている。プラズマ発生ユニットは、シールド51によって囲われ、電磁ノイズの発生が抑制される。
【0054】
反応室3の下方から石英ガラス窓31がはめ込まれ、その下方にランプ52及び反射板53からなるランプユニットが設けられている。ランプ52からの光を効率よくサセプタ8の裏面に照射するとともに、回転テーブル18に照射される光を低減するため、冷媒流路などの冷却機構を備えた反射リング54が設けられている。反射リング54には、速やかにガスの排気が行えるよう、図示しない貫通穴を設けてもよい。なお、ここでは、基板の温度を制御する方法としてランプ52を用いるものを例示したが、抵抗加熱ヒーターなど、他の方法を用いてもよい。反応室3の底面25に、リフトピンを通すためのピン穴32が設けられており、リフトピンホルダ33に固定されたリフトピン34が挿入されている。リフトピンホルダ33はベローズ55に固定されて昇降可能となっており、ケース56内に収納されている。反応室3の側面に、基板24交換用のゲート開口36が設けられている。
【0055】
図12は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図であり、
図9において、第3ポジションの中心を通る、xy平面に垂直なC-C断面を矢印cの向きに見たものである。
【0056】
図12において、サセプタ8上の基板載置部としての座グリ部9に、基板24が載置されている。この図において、基板24は第3ポジションに位置する。反応室3内において、座グリ部9とC形リング22の間に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている。座グリ部9に近接する第3ステージ30は、凸部13と、凸部13よりも直径の大きな底部14からなる。凸部13の上面の外周部が切り欠かれており、段差部15が形成されている。第3ステージ30の中央部に、下方より不活性ガスを供給する第3ステージガスノズル57が設けられている。回転テーブル18には、回転軸としてのシャフト19、ポジション間ガス排出口21が設けられている。C形リング22が、回転テーブル18上に配置され、その上面は反応室3の天井面に近接している。C形リング22との間に隙間47を設けつつ、センターブロック23が設けられており、その上面は反応室3の天井面に近接している。シャフト19は、反応室3の底面25に設けられたシャフト穴26に挿入されている。反応室3の底面25に、ガス排気口35が設けられている。
【0057】
蓋40にガス導入穴43が設けられ、下方から、パージノズルとしての多数のシャワー穴44が設けられたシャワープレート45がはめ込まれ、パージガス供給マニホールド58が構成されている。
【0058】
回転テーブル18のサセプタホルダ20(サセプタ8がはめ込まれている貫通穴)の周囲に、冷媒流路48が設けられている。冷媒流路48に供給された冷媒は、冷媒排出管59より排出される。基板24の温度を第3の温度に制御する目的で、第3ステージ30の凸部13の内部に、第3ステージ30を所定の温度に制御する温度制御機構60が設けられている。温度制御機構60は、流体流路であってもよいし、抵抗加熱ヒーターであってもよい。
【0059】
図13は、本発明の実施の形態1における回転テーブルの構成を示す平面図であり、
図10におけるD-D断面(水平面)を示す図である。
図13において、回転テーブル18には、3枚のサセプタ8を搭載するための3つのサセプタホルダ20(貫通穴)、及び3つのポジション間ガス排出口21が設けられている。3つのサセプタホルダ20の周囲に、冷媒流路48が設けられている。冷媒流路48には、冷媒導入管49より冷媒が供給され、冷媒排出管59より排出される。このように回転テーブル18を冷却するのは、熱による変形を避けるためである。後述の説明から明らかなように、反応室3内では基板24及びサセプタ8が最も高温となるので、サセプタホルダ20の周辺を冷却しておくことで、回転テーブル18の変形を効果的に抑制できる。
【0060】
図14は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す平面図であり、反応室3を上から見た図である。ただし、簡単のため、主要部品のみを表示している。
図14においては、
図9とは異なり、第1ポジション、第2ポジション、第3ポジションに対応するいずれの位置にもサセプタホルダは位置せず、第4ポジションにのみ1つのサセプタホルダが位置している。つまり、
図9において、回転テーブル18を60度回転させた状態を示す。
【0061】
図15は、本発明の実施の形態1におけるサセプタの構成を示す斜視図(a)及び断面図(b)であり、基板をサセプタに載置していない状態を示す図である。
図15(b)は、
図15(a)をサセプタの中心を含むyz平面に平行な面で切断したときの断面図である。
【0062】
図15において、サセプタ8は、全体が基板と相似形(円形)であり、基板載置部としての円形の座グリ部9を備える。また、座グリ部9の周辺4箇所に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍4箇所に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている。スリット10及びピン穴11は、いずれも円周方向に等配されている。
図15に示すサセプタ8は、
図2に示すサセプタ8とは、スリット10及びピン穴11の数と配置が異なった例である。なお、このようなサセプタ8を用いる場合は、第1ステージ及び第3ステージに設ける段差部15の配置も、スリット10の配置に合わせて変更する必要がある。つまり、段差部15を4箇所設け、スリット10と段差部15を、上下に同位置に配置する。
【0063】
図16~
図19は、本発明の実施の形態1における反応室の構成を示す断面図であり、
図14において、第4ポジションの中心を通る、xy平面に垂直なE-E断面を矢印eの向きに見たものである。
図16~
図19は、基板交換の手順を説明するためのものであり、詳細は後述する。
【0064】
図20及び
図21は、本発明の実施の形態1における成膜反応の構成を示す概念図であるが、詳細は後述する。
【0065】
簡単のため、予備室1及び2をロードロック室とし、反応室3及び4とロボット室6を常時真空状態で運転する場合について、動作を説明する。予備室1又は2とロボット室6の間のゲート5を開けた状態で、予備室1又は2からロボット7で基板24を取り出し、ロボット室6と反応室3の間のゲート5を開けた状態で、ゲート開口36を介して基板24を反応室3内の座グリ部9に載置する。つまり、反応室3内に設けられた基板載置部としての座グリ部9に、反応室3外から基板24を移動させて載置する。このとき、回転テーブル18の回転は停止し、3つのサセプタ8のうちの1つが第4ポジションに位置するようにしておく。ここで、回転テーブル18は、座グリ部9が水平になるよう複数のサセプタ8を搭載し、反応室3内で水平方向に回転することによって、座グリ部9を第1ポジション、第2ポジション、第3ポジション、及び第4ポジションに配置する機構である。
【0066】
ここで、基板交換の手順について説明する。説明をわかりやすくするため、座グリ部9の周辺4箇所に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍4箇所に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている、
図15に示すサセプタ8を用いる例を使う。
図16において、成膜が完了した基板24がサセプタ8上の座グリ部9に載置されている。このとき、基板24は、座グリ部9に載置した基板24と反応室3外の基板24とを交換する第4ポジションに位置する。第4ポジションは、ゲート開口36に最も近いポジションである。次に、
図17に示すように、リフトピンホルダ33を上昇させると、リフトピン32がピン穴11を貫通し、基板24を上方に持ち上げる。次いで、
図18に示すように、ゲート開口36を介して、ロボット室6からロボット7を反応室3内に挿入し、ロボット7の先端を基板24の下方に移動させる。このとき、C形リング22の円が欠けた部分が、回転テーブル18の外側に向くように配置されているため、ロボット7とC形リング22が干渉する恐れはない。次に、
図19に示すように、リフトピンホルダ33を下降させて基板24をロボット7の先端に載置する。この後、ロボット7をロボット室6に戻すことで、基板24を反応室3から取り出す。基板24を反応室3内に搬送する際は、上記とは逆の手順の操作を行う。
【0067】
次に、回転テーブル18を回転させ、隣の座グリ部9に基板24を載置する。この操作を繰り返し実行することで、反応室3内のすべての座グリ部9に基板24を載置する。すでに成膜処理が完了した基板24を座グリ部9から取り出し、未成膜の基板24を座グリ部9に載置する基板交換の操作を、座グリ部9ごとに連続して行ってもよいし、反応室3内のすべての成膜済み基板24を座グリ部9から取り出した後、未成膜の基板24を座グリ部9に順次載置してもよい。基板24の交換又は載置操作を実行中は、すべてのガスノズルから少量のパージガス又は不活性ガスを反応室3内に供給し、反応室3がロボット室6に対して陽圧となるようにしておく。こうすることで、ゲート5を開放したことによってロボット室6から反応室3内に混入しうる、不要なガスの濃度を最小限にすることができる。
【0068】
反応室3内のすべての座グリ部9に基板24を載置し終えたら、ゲート5を閉じ、数秒の間、すべてのガスノズルから少量のパージガス又は不活性ガスを反応室3内に供給しておく。こうすることで、ゲート5を開放したことによってロボット室6から反応室3内に混入しうる、不要なガスの濃度を低減させることができる。なお、パージガス又は不活性ガスとしては、Arなどの希ガスや窒素ガス(N2)を用いることができる。
【0069】
次いで、回転テーブル18を回転させるステップ、並びに、各種ガスを供給するとともにランプユニット及びプラズマ発生ユニットを動作させるステップとを繰り返し行うことにより、原子層堆積プロセスを実行する。以降、1枚の基板24に着目してプロセスの流れを説明する。
【0070】
まず、基板24は第1ポジションに送られる(
図10)。第1ポジションの基板24の位置の直下に第1ステージ12が配置されており、第1ステージの凸部13は、その内部に温度制御機構50が設けられている。凸部13の温度を、基板24の温度を50~150℃(とくにプリカーサとしてTMAを用いる場合は、100~150℃)に制御するのに適した温度に制御する。プロセス条件や装置を構成する各種部品の材質等によって変わってくるが、凸部13の温度を、狙いとする基板24の温度に対して±10℃程度の温度に制御すればよい。第1ステージガスノズル17からサセプタ8の裏面に不活性ガスを供給すると、凸部13の座グリ部9に対向する面に設けられた、不活性ガスの流路となる溝16を介して、サセプタ8の裏面全体に不活性ガスが速やかに行き渡り、サセプタ8の裏面と凸部13の上面との間で熱伝達が生じ、基板24の温度を50~150℃に安定させることができる。不活性ガスとしてArなどの希ガスや窒素ガス(N
2)を用いることができるが、熱伝達率の大きいHeを用いることで、サセプタ8と凸部13との温度差を速やかに最小化できる。この不活性ガスは、回転テーブル18よりも上方へ到達することなく、ほとんどがガス排気口35から排気される。なお、ガス排気口35の後段には、図示しない真空ポンプが接続されている。基板24が下方からの不活性ガスの供給によって飛び上がったり振動したりしないよう、ガス導入穴42からパージガスを同時に供給してもよい。サセプタ8と凸部13との間の熱伝達を確保するためには、反応室3内の圧力を100~1000Paにすることが望ましい。反応室3内の圧力が100Pa未満だと、サセプタ8と凸部13との間の熱伝達が不十分となり、逆に1000Paを超えると、数百Paで実行するプリカーサの吸着プロセスを実行するための調圧に時間がかかる。
【0071】
ガス導入穴42からプリカーサを含むガスを供給すると、プリカーサを含むガス供給マニホールド46が速やかにプリカーサを含むガスで満たされ、第1ポジションに配置された座グリ部に載置された基板24に向けて、プリカーサを含むガスがシャワー状に供給される。プリカーサの一部が基板24表面と反応するが、残りのガスは、スリット10から回転テーブル18の下方に流れ、段差部15を通ってガス排気口35から排気される。スリット10と段差部15は、上下に同位置に配置されているため、不要なガスは速やかに排気される。C形リング22及びセンターブロック23は、プリカーサを含むガスが、第2ポジション、第3ポジション、第4ポジションに混入するのを効果的に抑制する。C形リング22を乗り越えてわずかに第1ポジションから流出したプリカーサを含むガスは、C形リング22とセンターブロック23の間の隙間47を通って、ポジション間ガス排出口21(
図11のポジション間ガス排出口21及び
図12のポジション間ガス排出口21)から排出される。
【0072】
プリカーサは、成膜したい膜種に合わせて適宜選択できる。例えば、AlN又はAl
2O
3を成膜する場合はTMA(トリメチルアルミニウム)、ZrO
2を成膜する場合はTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム)、TiO
2を成膜する場合はメチルシクロペンタジエニルトリスジメチルアミノチタン、SiO
2を成膜する場合は3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)を用いることができる。プリカーサは、バブラー、気化装置、超音波振動、インジェクションなどを用いて供給するが、その供給量は、3~30mg/回程度、典型的には10mg/回になるよう、プロセスに応じて調整する。プリカーサを単独で反応室3に供給するのは困難なため、通常は希ガスなどの不活性ガスで希釈する。典型的にはArガスで希釈するが、希釈ガスの流量は10~1000sccm(standard cubic centimeters per minute)程度、典型的には100sccmである。また、プリカーサの液化を防止するため、希釈ガスを加熱することが好ましい。希釈ガスの温度は40~150℃程度、典型的には80℃である。基板24がプリカーサを含むガスに曝されると、基板24の表面にプリカーサ分子が吸着する。その反応は自己制御的であり、基板24表面に吸着可能なサイトがなくなった時点で吸着反応は終了する。つまり、基板24表面において、ほぼ均一に原子一層分のプリカーサ分子が吸着した状態が得られる。GaN基板に対してTMAを用いる場合の反応を模式的に示したものが
図20(a)である。
【0073】
次に、ガス導入穴42からパージガスを供給すると、プリカーサを含むガス供給マニホールド46が速やかにパージガスで満たされ、第1ポジションに配置された座グリ部に載置された基板24に向けて、パージガスがシャワー状に供給される。同時に、第1ポジション近傍に残留していたプリカーサが、反応室3から排気される。このとき用いるパージガスの流量は、10~1000sccm程度、典型的には100sccmである。この反応を模式的に示したものが
図20(b)である。
【0074】
次いで、回転テーブル18を水平方向に120度回転させ、基板24を第2ポジションに移動させる(
図11)。回転テーブル18を回転させる際は、すべてのガスノズルから少量のパージガス又は不活性ガスを反応室3内に供給する。第2ポジションの基板24の位置の直下に石英ガラス窓31が配置されており、その下方に配置されたランプ52により、サセプタ8及び基板24が加熱される。サセプタ8又は基板24の温度を図示しない放射温度計などによりモニタリングすることで、基板24の温度を250~700℃(とくにTMAを用いて窒化膜を成膜する場合は、500~700℃)に制御することができる。
【0075】
ガス導入部37から矢印の向きにリアクタントを含むガスを供給すると、第2ポジションに配置された座グリ部に載置された基板24に向けて、リアクタントを含むガスが供給される。このとき、コイル39に高周波電力を供給することにより、石英チューブ38内に誘導結合型プラズマが発生し、第2ポジション近傍に拡散する。リアクタントや、電離によって生成されるイオン及びラジカルの一部が基板24表面と反応するが、残りのガスは、スリット10から回転テーブル18の下方に流れ、ガス排気口35から排気される。C形リング22及びセンターブロック23は、リアクタントを含むガスが、第1ポジション、第3ポジション、第4ポジションに混入するのを効果的に抑制する。C形リング22を乗り越えてわずかに第1ポジションから流出したリアクタントを含むガスは、C形リング22とセンターブロック23の間の隙間47を通って、ポジション間ガス排出口21(
図10のポジション間ガス排出口21及び
図12のポジション間ガス排出口21)から排出される。
【0076】
リアクタントは適宜選択できるが、酸化膜を成膜する場合は、H
2O、H
2O
2、オゾンなどが利用可能である。窒化膜を成膜する場合は、窒化剤、例えばNH
3を用いることができる。あるいは、NH
3、H
2、N
2の混合ガスを用いてもよい。リアクタントが常温で液体の物質であれば、プリカーサと同様、バブラー、気化装置、超音波振動、インジェクションなどを用いて供給する。例えばNH
3を用いる場合、その供給量は、1~100mg/回程度、典型的には10mg/回になるよう、プロセスに応じて調整する。リアクタントは、希ガスなどの不活性ガスで希釈してもよい。典型的にはArガスで希釈するが、希釈ガスの流量は10~1000sccm程度、典型的には100sccmである。プラズマによってリアクタントはより活性化され、基板24との反応が促進される。基板24表面に吸着したプリカーサとリアクタントとの反応により、およそ原子一層分の薄膜が基板24表面に成膜される。例えば、プリカーサとしてTMA、リアクタントとしてNH
3を用いる場合、NH
3がプリカーサのメチル基と反応して副生成物のメタン(CH
4)が生じ、メタンはガス排気口35から反応室3外に排出される一方、基板24表面にAlNが残り、薄膜となる。プリカーサとしてTMA、リアクタントとしてNH
3、H
2、N
2の混合ガスを用いる場合の反応を模式的に示したものが
図20(c)である。ここでは、最表面のN原子は、2つのH原子により終端されている。つまり、表面はアミノ基で終端される。
【0077】
次に、ガス導入部37からパージガスを供給すると、第2ポジションに配置された座グリ部に載置された基板24に向けて、パージガスが供給される。同時に、第2ポジション近傍に残留していたリアクタントが、反応室3から排気される。この反応を模式的に示したものが
図20(d)である。
【0078】
次いで、回転テーブル18を水平方向に120度回転させ、基板24を第3ポジションに移動させる(
図12)。第3ポジションの基板24の位置の直下に第3ステージ30が配置されており、第3ステージの凸部13は、その内部に温度制御機構60が設けられている。凸部13の温度を、基板24の温度を第1ポジションにおいて狙いとする基板温度よりも低い温度(例えば、80℃)に制御するのに適した温度に制御する。プロセス条件や装置を構成する各種部品の材質等によって変わってくるが、凸部13の温度を、狙いとする基板24の温度に対して±10℃程度の温度に制御すればよい。第3ステージガスノズル57からサセプタ8の裏面に不活性ガスを供給すると、凸部13の座グリ部9に対向する面に設けられた、不活性ガスの流路となる溝16を介して、サセプタ8の裏面全体に不活性ガスが速やかに行き渡り、サセプタ8の裏面と凸部13の上面との間で熱伝達が生じ、基板24の温度を、例えば80℃に安定させることができる。不活性ガスとしてArなどの希ガスや窒素ガス(N
2)を用いることができるが、熱伝達率の大きいHeを用いることで、サセプタ8と凸部13との温度差を速やかに最小化できる。この不活性ガスは、回転テーブル18よりも上方へ到達することなく、ほとんどがガス排気口35から排気される。なお、ガス排気口35の後段には、図示しない真空ポンプが接続されている。基板24が下方からの不活性ガスの供給によって飛び上がったり振動したりしないよう、ガス導入穴43からパージガスを同時に供給してもよい。サセプタ8と凸部13との間の熱伝達を確保するためには、反応室3内の圧力を100~1000Paにすることが望ましい。反応室3内の圧力が100Pa未満だと、サセプタ8と凸部13との間の熱伝達が不十分となり、逆に1000Paを超えると、数百Paで実行するプリカーサの吸着プロセスを実行するための調圧に時間がかかる。
【0079】
ガス導入穴43からパージガスを供給すると、パージガス供給マニホールド58が速やかにパージガスで満たされ、第3ポジションに配置された座グリ部に載置された基板24に向けて、パージガスがシャワー状に供給される。パージガスの供給は、第3ポジション近傍に僅かに残ったリアクタントを含むガスを、反応室3から追い出すのに有効である。ガスは、スリット10から回転テーブル18の下方に流れ、段差部15を通ってガス排気口35から排気される。スリット10と段差部15は、上下に同位置に配置されているため、ガスは速やかに排気される。C形リング22及びセンターブロック23は、パージガスが、第1ポジション、第2ポジション、第4ポジションに混入するのを効果的に抑制する。C形リング22を乗り越えてわずかに第3ポジションから流出したパージガスは、C形リング22とセンターブロック23の間の隙間47を通って、ポジション間ガス排出口21(
図10のポジション間ガス排出口21及び
図11のポジション間ガス排出口21)から排出される。
【0080】
次に、回転テーブル18を水平方向に120度回転させ、基板24を再び第1ポジションに移動させる(
図10)。その後、上述のプリカーサ吸着ステップとリアクタント反応ステップを繰り返し実行することにより、所定の膜厚の薄膜を得ることができる。2層目の成膜反応の様子を模式的に示したものが
図20(e)~(h)である。基板24が1回分成膜される間(およそ原子一層分の薄膜が形成される間)、本実施の形態の場合は、基板24が周方向に一回転する間、各基板24は、プリカーサを含むガス、パージガス、リアクタントを含むガス、パージガス、パージガスの順に各種ガスに暴露されるプロセスが1回だけ生じる。回転テーブル18よりも上で各ガスがなるべく混合しないようにするため、各ポジションに供給されるガスの量が等しくなるようにし、隣り合うポジションの間に差圧が生じにくいようにする。あるいは、パージガスの量を、プリカーサを含むガスやリアクタントを含むガスの量よりも若干多くしておくとよい。このようにすれば、プリカーサとリアクタントが各ポジションを含む空間内で混合することを効果的に回避できる。
【0081】
このようにして、回転テーブル18を回転させることにより、各基板24表面に、およそ原子一層分の薄膜が形成される。この一連のステップを繰り返し実施するために、回転テーブル18を反応室3内で何度も回転させることにより、所定の厚さの薄膜を得ることができる。ここで、およそ原子一層分という表現を用いたが、1サイクルで形成される薄膜の厚さを膜厚に換算するとおよそ1~2オングストロームであるから、例えば厚さ20nmの薄膜を形成したい場合は、100~200サイクルのプロセスが必要となるので、本実施の形態の場合、回転テーブル18を反応室3内で100~200回回転させる。
【0082】
所定の膜厚の成膜を終えた基板24は、基板載置のステップとは逆に、座グリ部9からゲート開口36を介して反応室3外に取り出され、ロボット7を使って予備室1又は2に収納される。なお、本実施の形態においては、二つの反応室3及び4が設けられており、片方の反応室で成膜をしながら、他方の反応室で基板交換を行うこともできる。このように、複数の反応室に対して、ロード及びアンロードと成膜という、ともに時間を要する処理を同時並行で実行することにより、処理速度が大きく、面積生産性が高い原子層堆積装置及び方法が実現できる。
【0083】
原子層堆積においては、気相反応を回避するため、プリカーサとリアクタントが気相中で混合するのをできるだけ抑制しなければならない。そこで、プリカーサを含むガスやリアクタントを含むガスを供給するタイミングにおいて、第3ポジションで必ずパージガスを供給するようにすることが望ましい。また、第1ポジションでプリカーサを含むガスを供給するタイミングにおいて、第2ポジションで必ずパージガスまたはリアクタントを含むガスを供給するようにすることが望ましい。また、第2ポジションでリアクタントを含むガスを供給するタイミングにおいて、第1ポジションで必ずパージガスまたはプリカーサを含むガスを供給するようにすることが望ましい。言い換えると、第2ポジション及び第3ポジションでガスを供給していないタイミングにおいて、第1ポジションでプリカーサを含むガスを供給すべきではなく、第1ポジション及び第3ポジションでガスを供給していないタイミングにおいて、第2ポジションでリアクタントを含むガスを供給すべきではない。
【0084】
本実施の形態では、従来技術、例えば特許文献1~4に記載の原子層堆積技術に比べて、高品質の薄膜が得られる。リアクタントを基板と反応させるステップでは、基板温度を所定の温度まで上げる必要があるが、従来技術においては、プリカーサを基板と反応させるステップも同様に高温で行っている。すると、プリカーサの分解によって生じる炭素が膜中に取り込まれてしまい、膜質が悪くなってしまうものと考えられる。このときの反応の進展の様子を模式的に示したのが
図21である。
図21(a)において、基板の温度が150℃よりも高いと、気相中でTMAの分解が生じる恐れがある。TMAの分解により、CH
3、CH
2などのラジカルが生じ、一部の炭素原子が吸着層中に取り込まれる。
図21(b)において、パージガスでガスを置換した際にも、膜中に炭素原子が残留する。
図21(c)において、リアクタントを含むガスに基板を曝すと、基板の表面はアミノ基で終端される。
図21(d)において、再びパージガスでガスを置換する。2層目の成膜反応の様子を模式的に示したものが
図21(e)~(h)であるが、
図21(e)において、再びプリカーサを含むガスに曝すと、一部の炭素原子が吸着層中に取り込まれる。このようにして、基板の温度が150℃よりも高い状態でプリカーサ吸着ステップを実行すると、膜中に不要な炭素が取り込まれてしまうため、膜特性が悪化するものと推察される。一方、本実施の形態においては、プリカーサを含むガスを供給するステップにおいて、気相中でTMAの分解が生じないので、
図20を用いて説明したとおり、膜中に炭素をほとんど含まない良質な薄膜が得られる。なお、プリカーサを含むガスを供給するステップにおいて、基板温度は50℃以上であることが好ましい。基板温度を50℃よりも低くすると、基板上におけるプリカーサのマイグレーションが起きにくくなるため、整然とした吸着層を得るのが困難である。成膜したい膜種(酸化膜、窒化膜など)に対応するプリカーサの種類によってその分解温度が異なるため、適した温度に制御することが好ましい。
【0085】
リアクタントを含むガスに曝すステップにおける基板温度を高温にすると、一般に緻密で良質な薄膜を得ることができる。したがって、リアクタントを含むガスに曝すステップにおける第2の温度は、プリカーサを含むガスに曝すステップにおける第1の温度よりも高いことが望ましい。TMAを用いてAlN薄膜を形成する場合の第2の温度は、250℃以上であることが望ましい。基板温度を700℃より高くするのは、変形や変質を避ける上で部品の材質に制約が生じるなど、装置の構成上困難を伴うため、基板温度は250~700℃であることが望ましい。
【0086】
本実施の形態では、従来技術、例えば特許文献1に記載の成膜装置と異なり、第1ポジションにおいて基板24の裏面に不活性ガスを供給しているため、基板24の裏面にプリカーサが吸着しにくく、その結果、薄膜が形成されない。したがって、裏面をエッチングする工程を追加する必要がないという利点がある。
【0087】
本実施の形態では、座グリ部9と第1ステージ又は第3ステージの凸部13が近接している。このことにより、座グリ部9と第1ステージ又は第3ステージとの間の熱伝達が効果的に行えるようにしている。このような効果を得るためには、座グリ部9と第1ステージ又は第3ステージの凸部13との距離は0.5mm以上2mm以下とすべきである。座グリ部9と第1ステージ又は第3ステージの凸部13との距離が0.5mm未満だと、装置の経年変化等によって回転精度が低下した際に、座グリ部9と第1ステージ又は第3ステージの凸部13が接触する恐れがある。逆に、座グリ部9と第1ステージ又は第3ステージの凸部13との距離が2mmよりも広いと、熱伝達の効率が極端に悪化する。
【0088】
本実施の形態では、C形リング22及びセンターブロック23が、回転テーブル18上に配置され、それぞれの上面が反応室3の天井面に近接している。このことにより、隣り合うポジションの間でガスが混合するのを効果的に抑制している。C形リング22を乗り越えてわずかに第1ポジションから流出したプリカーサを含むガスは、C形リング22とセンターブロック23の間の隙間47を通って、ポジション間ガス排出口21から排出される。このような効果を得るためには、C形リング22及びセンターブロック23の最上部と反応室3の天井面(上部内壁面)との距離は0.5mm以上10mm以下とすべきである。C形リング22及びセンターブロック23の最上部と反応室3の天井面(上部内壁面)との距離が0.5mm未満だと、装置の経年変化等によって回転精度が低下した際に、C形リング22及びセンターブロック23の最上部と反応室3の天井面(上部内壁面)が接触する恐れがある。逆に、C形リング22及びセンターブロック23の最上部と反応室3の天井面(上部内壁面)との距離が10mmよりも広いと、プリカーサを含むガスとリアクタントを含むガスが混合する恐れが若干高くなる。
【0089】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、
図22を参照して説明する。
【0090】
図22は、本発明の実施の形態2におけるサセプタの構成を示す斜視図(a)及び断面図(b)であり、基板をサセプタに載置していない状態を示す図である。
図22(b)は、
図22(a)をサセプタの中心を含むyz平面に平行な面で切断したときの断面図である。
【0091】
図22において、サセプタ8は、全体が基板と相似形(円形)であり、基板載置部としての円形の座グリ部9を備える。また、座グリ部9の周辺3箇所に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍3箇所に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている。スリット10及びピン穴11は、いずれも円周方向に等配されている。さらに、座グリ部9の全面に渡り、貫通穴61が多数設けられている。このような構成により、基板24と第1ステージ又は第3ステージとの間の熱伝達が促進され、また、第2ポジションにおけるランプ加熱が高速化されるので、より生産性の高い原子層堆積が可能となる。
【0092】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、
図23を参照して説明する。
【0093】
図23は、本発明の実施の形態3におけるサセプタの構成を示す斜視図(a)及び断面図(b)であり、基板をサセプタに載置していない状態を示す図である。
図23(b)は、
図23(a)をサセプタの中心を含むyz平面に平行な面で切断したときの断面図である。
【0094】
図23において、サセプタ8は、全体が基板と相似形(円形)であり、基板載置部としての円形の座グリ部9を備える。また、座グリ部9の周辺3箇所に、基板周辺部ガス排出口としてのスリット10が設けられ、座グリ部9の縁部近傍3箇所に、基板搬送時にリフトピンを通すためのピン穴11が設けられている。スリット10及びピン穴11は、いずれも円周方向に等配されている。さらに、座グリ部9の全面に渡る1つの貫通穴62が設けられている。このような構成により、基板24と第1ステージ又は第3ステージとの間の熱伝達が促進され、また、第2ポジションにおけるランプ加熱が高速化されるので、より生産性の高い原子層堆積が可能となる。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、
図24を参照して説明する。
【0095】
図24は、本発明の実施の形態4における反応室の構成を示す断面図であり、
図10に相当する。
【0096】
図24において、反応室3の側壁面を覆うインナーカバー63が設けられている。本発明においては、プリカーサとリアクタントの混合を抑制する様々な対策が講じられているものの、長期間装置を運転すると、ごく僅かであるが反応室3の側壁面にも薄膜が堆積する恐れがある。そこで、インナーカバー63によって反応室3の側壁面を保護した状態で装置を運転し、定期的にインナーカバー63を取り外して洗浄することにより、反応室3の内面を常に清浄な状態に保つことが可能となる。なお、インナーカバー63には、基板交換のために、基板及びロボット7が通過するのに十分な面積の図示しない貫通穴が、第4ポジション近傍に設けられる。
【0097】
以上述べた成膜装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎず、本発明は上述した以外にも様々な範囲に対し適用が可能である。
【0098】
例えば、排気口が3つ設けられているものを例示したが、排気口の後段で配管を合流させて1つの真空ポンプで反応室3を排気する構成としてもよいし、排気口ごとに別々のポンプで排気する構成としてもよい。あるいは、排気口ごとに別々の調圧バルブを用いて、きめ細かく調圧を行えるようにしてもよい。排気口の数が3つに限定されないことは言うまでもない。
【0099】
また、基板24の温度を低下させるために第3ポジションを設けるものを例示したが、第3ポジションの機能を第1ポジションが兼ねる構成とし、第3ポジションを用いない構成としてもよい。第3ポジションを用いる場合、吸着及び窒化反応を行っている間に別の基板を冷却できるため、より高速な処理が可能となる利点がある。
【0100】
また、第4ポジションにおいて基板交換を行うものを例示したが、第1、第2、又は第3ポジションにおいて基板交換を行い、第4ポジションを設けないような構成も可能である。第1又は第3ポジションで基板交換しようとすると、第1ステージ12又は第3ステージ30の下方にリフトピン関連の機構を組み込む必要があり、設計上の制約が増してしまうという問題がある。同様に、第2ポジションで基板交換しようとすると、ランプユニットの下方にリフトピン関連の機構を組み込む必要があり、設計は非常に困難となる。したがって、好ましくは、第1、第2、及び第3ポジションとは別に、基板交換を行う第4ポジションを設けることが望ましい。
【0101】
また、第2ポジションにおいてプラズマを発生させるプラズマ発生ユニットを備える場合を例示したが、プラズマ発生ユニットを用いず、第2ポジションを第1ポジションと同様の構成にして原子層堆積を行うことも可能である。
【0102】
また、プラズマ発生ユニットとして、コイル39に高周波電力を供給することによって、石英チューブ38内に誘導結合型プラズマを発生させる場合を例示したが、プラズマの発生方法として、電極を用いる方法、パルス電力を用いる方法、マイクロ波を用いる方法など、種々の方法を適用してもよい。また、プラズマ発生ユニットは、基板載置面よりもガス流れにおける上流に設けることが望ましい。これにより、イオンやラジカルなどの活性粒子を効率よく利用することができる。
【0103】
本発明の種々の構成によって、様々な成膜処理が可能となる。例えば、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造への適用が効果的である。とくに、GaNパワー半導体デバイスにおける、AlN形成に有用である。また、半導体集積回路製造におけるダブルパターニング工程や、High-k/Metalゲート形成、TiNやRu等を用いたDRAMキャパシタ上下電極形成、SiNを用いたゲート電極サイドウォール形成、コンタクト及びスルーホールにおけるバリアシード形成、NANDフラッシュメモリのHigh-k絶縁膜やチャージトラップ膜形成等、多くの工程で利用可能である。また、フラットパネルディスプレイ、LED、太陽電池においても、ITO膜形成やパッシベーション膜形成において利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように本発明は、さまざまな電子デバイスの製造に利用可能で、半導体、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、発光ダイオード等の電子デバイス製造への適用が効果的である。とくに、GaNパワー半導体デバイスにおける、AlN形成に有用である。また、半導体集積回路製造におけるダブルパターニング工程や、High-k/Metalゲート形成、TiNやRu等を用いたDRAMキャパシタ上下電極形成、SiNを用いたゲート電極サイドウォール形成、コンタクト及びスルーホールにおけるバリアシード形成、NANDフラッシュメモリのHigh-k絶縁膜やチャージトラップ膜形成等、多くの工程で利用可能である。また、フラットパネルディスプレイ、LED、太陽電池においても、ITO膜形成やパッシベーション膜形成において有用な発明である。
【符号の説明】
【0105】
3 反応室
8 サセプタ
9 座グリ部
10 スリット
11 ピン穴
13 凸部
14 底部
15 段差部
18 回転テーブル
19 シャフト
21 ポジション間ガス排出口
22 C形リング
23 センターブロック
24 基板
26 シャフト穴
30 第3ステージ
35 ガス排気口
40 蓋
43 ガス導入穴
44 シャワー穴
45 シャワープレート
47 隙間
48 冷媒流路
57 第3ステージガスノズル
58 パージガス供給マニホールド
【要約】
【課題】 ALDによる成膜を行うに際して、高品質の薄膜が得られる原子層堆積装置及び原子層堆積方法を提供する。
【解決手段】 高温でリアクタントと反応させるステップを終えた、サセプタ8に設けられた座グリ部9に載置された基板24を、回転テーブル18の回転によって反応室3内の別のポジションに移動させ、第3ステージ30の凸部13に近接させつつ、下方から第3ステージガスノズル57を介して不活性ガスを座グリ部9と凸部13の間に供給することにより、基板24が急速に冷却される。このような構成により、低温でプリカーサを吸着させ、高温でリアクタントと反応させるALD成膜を高速で行うことができ、高品質の薄膜が得られる。
【選択図】
図12