(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】フラクション・コレクション(分取)システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/80 20060101AFI20240304BHJP
B65G 47/46 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G01N30/80 C
B65G47/46 A
(21)【出願番号】P 2021517979
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2019077419
(87)【国際公開番号】W WO2020074613
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・スタッフストローム
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197036(JP,A)
【文献】特開2001-305120(JP,A)
【文献】米国特許第02604249(US,A)
【文献】英国特許出願公開第00744624(GB,A)
【文献】特表2012-529649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 35/00 -37/00
B65G 47/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラクション・コレクション・システム(100)であって、
- 接続されたシステムから受け取った液体のフラクションを分配するために構成された出口(24)を含む分配装置(23)と、
- 前記フラクションの1つまたは複数を受容するように構成された複数のレセプタクル(25)であって、前記分配装置(23)が前記液体の各フラクションを1つまたは複数のレセプタクル(25)にそれぞれ分配できるように、該レセプタクル(25)および前記分配装置(23)は、互いに対していくつかの異なる位置に移動可能である、複数のレセプタクル(25)と、
- 当該フラクション・コレクション・システム(100)に配置され、少なくとも第1および第2の位置に移動できるように配置された廃棄物収集装置(27)であって、第1の位置では、前記分配装置(23)の出口(24)から分配される液体が該廃棄物収集装置(27)内に受容されるように、該廃棄物収集装置(27)の入口(29)が前記分配装置(23)の出口(24)の下に配置され、さらに、第2の位置では、前記分配装置(23)から分配されるフラクションが1つまたは複数のレセプタクル(25)内に受容されるように、該廃棄物収集装置(27)の前記入口(29)が、前記分配装置(23)の前記出口(24)の下に配置されない、廃棄物収集装置(27)と、
を含んで
なり、
前記フラクション・コレクション・システム(100)は、前記分配装置(23)を備えたアーム(31)および複数の前記レセプタクル(25)を備えたトレイ(37)の両方に接続された位置決め装置(35)に接続される制御システム(33)をさらに含み、前記制御システム(33)は、前記位置決め装置(35)を制御して、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)を互いに対して移動させるように構成され、前記制御システム(33)は、前記レセプタクル(25)に分配されるために前記分配装置(23)に供給される液体中の内容物を検出できる検出器(39)にさらに接続され、前記制御システム(33)はさらに、前記廃棄物収集装置(27)に接続されかつ前記廃棄物収集装置(27)を少なくとも第1および第2の位置に移動するように配置された廃棄物収集装置位置決め装置(41)に接続されていることを特徴とする、フラクション・コレクション・システム(100)。
【請求項2】
前記廃棄物収集装置(27)が、前記分配装置(23)を備えたアーム(31)に接続され、該アーム(31)は可動であり、前記廃棄物収集装置(27)は、該アーム(31)および前記分配装置(23)と共に、前記レセプタクル(25)に対して異なる位置に移動されることを特徴とする、請求項1に記載のフラクション・コレクション・システム。
【請求項3】
前記分配装置(23)が液体を異なる前記レセプタクル(25)に分配できるように、前記レセプタクル(25)が異なる位置に移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載のフラクション・コレクション・システム。
【請求項4】
前記廃棄物収集装置(27)は、前記レセプタクル(25)および前記分配装置(23)の間の相対移動中に前記第1の位置に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のフラクション・コレクション・システム。
【請求項5】
前記制御システム(33)は、前記検出器(39)からの出力に基づいて、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)の相対的な動きを制御するように構成され、前記制御システム(33)は、前記検出器(39)からの出力に基づいて、および/または、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)の相対的な動きに基づいて、前記廃棄物収集装置(27)の第1または第2の位置への動きを制御するように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載のフラクション・コレクション・システム。
【請求項6】
フラクション・コレクション・システム(
100)でのフラクション・コレクションの方法であって、
- 前記フラクション・コレクション・システムの分配装置(23)から前記フラクション・コレクション・システム(100)に設けられた複数のレセプタクル(25)への液体のフラクション(分画)を分配するステップと、
- 前記液体のそれぞれのフラクションを1つまたは複数の前記レセプタクル(25)に分配できるように、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)を互いに対して移動させるステップと、
- 前記フラクション・コレクション・システム(100)に設けられた廃棄物収集装置(27)の位置を少なくとも第1および第2の位置に制御するステップであって、第1の位置では、前記分配装置(23)の出口(24)から分配される液体が該廃棄物収集装置(27)内に受容されるように、該廃棄物収集装置(27)の入口(29)が前記分配装置(23)の出口(24)の下に配置され、さらに、第2の位置では、前記分配装置(23)から分配されるフラクションが1つまたは複数のレセプタクル(25)内に受容されるように、該廃棄物収集装置(27)の前記入口(29)が、前記分配装置(23)の前記出口(24)の下に配置されない、少なくとも第1および第2の位置に制御するステップと、
を含んで
なり、
前記フラクション・コレクション・システム(100)は、前記分配装置(23)を備えたアーム(31)および複数の前記レセプタクル(25)を備えたトレイ(37)の両方に接続された位置決め装置(35)に接続される制御システム(33)をさらに含み、前記制御システム(33)は、前記位置決め装置(35)を制御して、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)を互いに対して移動させるように構成され、前記制御システム(33)は、前記レセプタクル(25)に分配されるために前記分配装置(23)に供給される液体中の内容物を検出できる検出器(39)にさらに接続され、前記制御システム(33)はさらに、前記廃棄物収集装置(27)に接続されかつ前記廃棄物収集装置(27)を少なくとも第1および第2の位置に移動するように配置された廃棄物収集装置位置決め装置(41)に接続されていることを特徴とする、フラクション・コレクションの方法。
【請求項7】
前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)を互いに対して移動させるステップが、前記分配装置(23)および前記廃棄物収集装置(27)の両方が接続されているアーム(33)の位置を制御することによって前記分配装置(23)を移動させるステップを含むことを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)を互いに対して移動させるステップが、前記分配装置(23)が液体を異なる前記レセプタクル(25)に分配できるように、前記レセプタクル(25)の位置を制御するステップを含むことを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記廃棄物収集装置(27)の位置を制御するステップが、前記レセプタクル(25)および前記分配装置(23)の間の相対移動中に前記廃棄物収集装置(27)を前記第1の位置に配置するステップを含むことを特徴とする、請求項
6~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レセプタクル(25)に分配されるために前記分配装置(23)に供給される液体中の内容物を検出器(39)で検出するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)を互いに対して移動させるステップが、前記検出器(39)からの出力に基づいて実行され、前記廃棄物収集装置(27)の第1または第2の位置への位置を制御するステップが、前記検出器(39)からの出力に基づいて、および/または、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)の相対的な動きに基づいて実行されることを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のフラクション・コレクション・システム(100)を含むことを特徴とする、クロマトグラフィーシステム。
【請求項13】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のフラクション・コレクション・システムにおける位置決め装置(35)に接続されるように構成された制御システムであって、当該制御システムは、分配装置(23)およびレセプタクル(25)を互いに対して移動させるように前記位置決め装置(35)を制御するように構成され、当該制御システム(33)はさらに、廃棄物収集装置(27)に接続され、前記廃棄物収集装置(27)を少なくとも第1および第2の位置に移動するように構成された廃棄物収集装置位置決め装置(41)に接続されていることを特徴とする、制御システム。
【請求項14】
前記制御システム(33)が、前記レセプタクル(25)に分配されるために前記分配装置(23)に供給される液体中の内容物を検出することができる検出器(39)にさらに接続されていることを特徴とする、請求項
13に記載の制御システム。
【請求項15】
前記制御システム(33)が、前記検出器(39)からの出力に基づいて、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)の相対的な動きを制御するように構成され、前記制御システム(33)が、前記検出器(39)からの出力に基づいて、および/または、前記分配装置(23)および前記レセプタクル(25)の相対的な動きに基づいて、前記廃棄物収集装置(27)の第1または第2の位置への動きを制御するように構成されていることを特徴とする、請求項
14に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクション・コレクション(分取)システム、フラクション・コレクションのための方法、クロマトグラフィーシステム、および制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラクション・コレクタ(分取装置)は、液体クロマトグラフィーの分野など、多くの用途で広く使用されている。フラクション・コレクタは、液体流れのフラクション(分画)をいくつかのレセプタクルに分配するために使用される。レセプタクルは通常、ラックに取り付けられた試験チューブとして、またはプレートに形成された凹部として構成される。フラクション・コレクタにおいては、2つの主要な動作原理に区別され得る。すなわち、回転運動によってレセプタクルが分配装置に向かって供給される回転可能なコレクタと、1方向または2方向の直線運動によってレセプタクルが分配装置に向かって供給されるX-Yコレクタとである。もちろん、これらの原理は、レセプタクルが静止している間に分配装置が移動するフラクション・コレクタの原理と同じである。
【0003】
レセプタクルのタイプやフラクション・コレクタの動作原理に関係なく、それぞれのレセプタクルの間には常に距離がある。したがって、あるレセプタクルから次のレセプタクルに切り替えると、特に液体流れが本質的に連続している場合に、分配された液体のこぼれが発生する可能性がある。このようなこぼれが望ましくない理由はたくさんあり、貴重な物質が含まれている場合があり、健康に害を及ぼす場合があり、作業エリアが汚くなる場合があり得る。
【0004】
このようなこぼれを回避する方法は公知である。例えば、Gilson他に付与された米国特許第4,077,444号明細書(特許文献1)には、チューブがそれぞれの位置間を移動するときにチューブからこぼれるのを防ぐために、分配チューブを通る液体流れを停止するために使用されるバルブおよびバルブオペレータが記載されている。しかしながら、高精度液体クロマトグラフィーなどの特定のアプリケーションでは、保持時間中の液体流れの中断は不都合が生じる。液体クロマトグラフィーシステムの性能は、保持時間中に分配装置の近くのチューブに保持された液体ボリューム内の成分の拡散の発生によって悪影響を受ける。液体クロマトグラフィーに適した拡張可能なチャンバーを含む、フラクション・コレクション中の液体の損失を低減するための方法および装置は、欧州特許出願公開第1177434号明細書(特許文献2)に記載されている。拡張可能なチャンバーを備えたこのようなシステムは、こぼれを回避するのに適しているが、ピーク間に供給される液体の一部をレセプタクルに収集するのではなく廃棄に移す必要があるピークフラクションモード用には設計されていない。さらに、拡張可能なチャンバーの問題は、使用の合間に洗浄する必要があり、汚染の問題が生じる可能性がある。さらに、拡張可能なチャンバーは、正しい速度で充填および空にするために複雑な制御を必要とする。
【0005】
レセプタクルの交換中に液体の流れを廃棄物に運ぶためにシャントバルブを使用することも知られている。ピークフラクションモードでは、検出されたピーク間の液体流れも、このようなシャントバルブを介して廃棄物に運ぶことができる。このようなバルブを備えたシステムの問題は、バルブを通過する遅延時間を補償するのが複雑になることや、貴重な材料が失われたり混合されたりするリスクがあることである。前のピークからの休息があり、次のピークの収集を開始するときにチューブ内に液体量が残る可能性がある場合、ピーク収集の間に分配装置の近くのチューブに保持される液体量にも問題が生じる。また、バルブの汚染にも問題が生じ得る。バルブから廃棄物、バルブを介してそれに続くフラクション出口へのチューブを通る遅延量の相違は、補償するのが複雑になり、貴重な材料が失われたり混合されたりするリスクが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,077,444号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1177434号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、こぼれを回避することができ、さらに/或いは、廃棄物を向け直すことができる、フラクション・コレクションのための改善された方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、フラクション・コレクション・システム、液体クロマトグラフィーシステム、制御システム、および独立請求項に記載された方法によって達成される。
【0009】
本発明の一の態様によれば、提供されるフラクション・コレクション・システムは、
- 接続されたシステムから受け取った液体のフラクションを分配するために構成された出口を含む分配装置と、
- 前記フラクションの1つまたは複数を受容するように構成された複数のレセプタクルであって、前記分配装置が前記液体の各フラクションを1つまたは複数のレセプタクルにそれぞれ分配できるように、該レセプタクルおよび前記分配装置は、互いに対していくつかの異なる位置に移動可能である、複数のレセプタクルと、
- 当該フラクション・コレクション・システムに配置され、少なくとも第1および第2の位置に移動できるように配置された廃棄物収集装置であって、第1の位置では、前記分配装置の出口から分配される液体が該廃棄物収集装置内に受容されるように、該廃棄物収集装置の入口が前記分配装置の出口の下に配置され、さらに、第2の位置では、前記分配装置から分配されるフラクションが1つまたは複数のレセプタクル内に受容されるように、該廃棄物収集装置の前記入口が、前記分配装置の前記出口の下に配置されない、廃棄物収集装置と、
を備えている。
【0010】
本発明の別の態様によれば、提供されるフラクション・コレクション・システムにおけるフラクション・コレクションのための方法は、
- 前記フラクション・コレクション・システムの分配装置から前記フラクション・コレクション・システムに設けられた複数のレセプタクルへの液体のフラクションを分配するステップと、
- 液体のそれぞれのフラクションを1つまたは複数のレセプタクルに分配できるように、前記分配装置および前記レセプタクルを互いに対して移動させるステップと、
- 前記フラクション・コレクション・システムに設けられた廃棄物収集装置の位置を少なくとも第1および第2の位置に制御するステップであって、第1の位置では、前記分配装置の出口から分配される液体が該廃棄物収集装置内に受容されるように、該廃棄物収集装置の入口が前記分配装置の出口の下に配置され、さらに、第2の位置では、前記分配装置から分配されるフラクションが1つまたは複数のレセプタクル内に受容されるように、該廃棄物収集装置の前記入口が、前記分配装置の前記出口の下に配置されない、少なくとも第1および第2の位置に制御するステップと、
を含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、上記のフラクション・コレクション・システムを含むクロマトグラフィーシステムが提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、上記のようなフラクション・コレクション・システム内の位置決め装置に接続されるように構成された制御システムが提供され、当該制御システムは、前記位置決め装置を制御して、前記分配装置および前記レセプタクルを互いに対して移動させるように構成され、当該制御システムはさらに、前記廃棄物収集装置に接続され、前記廃棄物収集装置を少なくとも第1および第2の位置に移動するように配置された廃棄物収集装置位置決め装置に接続されている。
【0013】
これにより、廃棄物収集装置は、分配装置から分配された液体が、レセプタクルではなく廃棄物収集装置に収集されるように配置され得る。次に、廃棄物収集装置は、分配装置から分配された液体がレセプタクルに受容され得る、第2の位置に移動し得る。これにより、レセプタクルの切り替え中にこぼれる可能性を回避でき、さらに、例えば、ピーク分別モードのピーク間の液体や、分配装置へのチューブ内に残っている新しいフラクション(分画)の開始時の前の分画の液体など、レセプタクルに不要な液体を代わりに廃棄物収集装置に収集することができる。これにより、バルブの使用を回避することができ、システム内の異なる遅延時間/ボリュームで問題が生じることはない。さらに、本発明によるシステムおよび方法を用いれば、使用間の汚染の問題はなく、廃棄物収集装置の洗浄の必要もない。さらに、レセプタクルを最適に利用することができ、すなわち、例えば、分画の開始時やピークフラクションの間などで、レセプタクルを廃液に使用する必要はない。
【0014】
本発明の一実施形態では、廃棄物収集装置が、分配装置を備えたアームに接続され、該アームは可動であり、前記廃棄物収集装置は、該アームおよび前記分配装置と共に、レセプタクルに対して異なる位置に移動される。これにより、廃棄物収集装置は常に分配装置の近くに保たれ、廃棄物収集装置は、第1の位置と第2の位置との間の移行のために短い距離だけ動かされる必要がある。
【0015】
本発明の一実施形態では、レセプタクルは、分配装置が液体を異なるレセプタクルに分配できるように、異なる位置に移動可能である。
【0016】
本発明の一実施形態では、廃棄物収集装置は、レセプタクルと分配装置との間の相対的な移動中に第1の位置に配置される。これにより、レセプタクル交換時のこぼれを防止する。
【0017】
本発明の一実施形態では、フラクション・コレクション・システムは、分配装置を備えたアームまたは複数のレセプタクルを備えたトレイのいずれかに接続された位置決め装置に接続される制御システムをさらに含み、制御システムは、位置決め装置を制御して、前記分配装置および前記レセプタクルを互いに対して移動させるように構成され、前記制御システムは、前記レセプタクルに分配されるために前記分配装置に供給される液体中の内容物を検出できる検出器(39)にさらに接続され、制御システムはさらに、廃棄物収集装置に接続され、前記廃棄物収集装置を少なくとも第1および第2の位置に移動するように配置された廃棄物収集装置位置決め装置に接続されている。
【0018】
本発明の一実施形態では、制御システムは、検出器からの出力に基づいて、分配装置およびレセプタクルの相対的な動きを制御するように構成され、前記制御システムは、前記検出器からの出力に基づいて、および/または、前記分配装置および前記レセプタクルの相対的な動きに基づいて、廃棄物収集装置の第1または第2の位置への動きを制御するように構成されている。これにより、検出器によって廃棄物として検出された液体を廃棄物収集装置に収集することができ、レセプタクルを効率的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】従来のフラクション・コレクタの概略斜視図である。
【
図1b】従来の他のフラクション・コレクタの概略斜視図である。
【
図2】レセプタクル切り替え中のこぼれを回避するための従来の方法による流路の概略図である。
【
図3a】第1の位置にある本発明の一実施形態によるフラクション・コレクション・システムを概略的に示す図である。
【
図3b】本発明の一実施形態による第2の位置でのフラクション・コレクション・システムを概略的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
背景として、
図1aおよび
図1bは、典型的なフラクション・コレクタ1の基本構成要素を概略的に示している。
図1aは回転式のコレクタ1を示し、
図1bはX-Y平行移動式のコレクタ1′を示している。コレクタ1は、その中心の周りで回転可能(矢印で示されている)なトレイ2を含む。トレイ2は、チューブ3などのレセプタクルを収容するためのラックを備えている。延長アーム4は、典型的には注射針またはプラスチックチューブである、分配装置5を保持する。分配装置は、注入管6からなる供給ラインと流体連通しており、それを介して、フラクション・コレクタのチューブに分配される液体が、液体クロマトグラフィーカラムなどの任意の選択された装置(図示せず)から供給される。
【0021】
動作中、トレイ2を回転させて、第1のチューブ3を分配装置5の下に配置する。分配装置5を介して注入管6を通って供給された液体は、チューブに排出される。第1のチューブ3が1フラクション(分画)量の液体を受け取ったとき、トレイ2をある角度回転させて、第2のチューブ3を分配装置の下に配置して、1フラクション量を受け取る。これらの手順は、選択した回数だけ繰り返される。
【0022】
回転可能なトレイを備えた従来のフラクション・コレクタの構成要素および操作ステップに関するこの一般的な説明は、本発明をこのタイプのフラクション・コレクタに限定することを意図していないことに留意されたい。本発明が他のタイプの従来のフラクション・コレクタと同様に有用であることは、当業者には容易に理解されるであろう。例えば、
図1bのように分配装置の直線運動を使用してチューブ3′が分配装置5′の下に配置される、或いは、マイクロタイタープレート(microtiter plates)などの試験管以外の他のタイプのレセプタクルが使用される、
図1bに概略的に示されているようなフラクション・コレクタ1′は、本発明と共に使用され得る。
【0023】
フラクション・コレクションのタイプに関係なく、最初のレセプタクルが分配装置から排出された液体の流れを離れる瞬間と次のレセプタクルが液体の流れを受け入れるために配置される瞬間との間に時間の間隔Tが生じる。流量がFR(t)であるとすると、tは流量が時間とともに変化する可能性があることを示し、対策が講じられていない場合、レセプタクルの切り替え中に体積Vが失われる。この体積は、以下の式(1)を使用して計算できる。
【0024】
【0025】
こぼれを回避するための従来のアプローチの1つは、シャットオフ・バルブを介して分配装置を通る流れを停止することである。これにより、液体が失われることはないが、流れを停止すると、フラクション・コレクションの上流にある装置と、分画全体の精度に影響する。
【0026】
上述したように、
図2に示されている、別の従来のアプローチは、三方弁11を使用して、チューブスイッチ操作中に、注入管6から三方弁11を介して廃棄物に液体の流れを運ぶことである。チューブの切り替えに続いて、弁11は、分配装置5を介して液体をチューブに向ける。このアプローチは、フラクション・コレクショントレイへのこぼれを回避しながら、貴重な成分を含む可能性のあるボリュームVを無駄にする。さらに、上述した、弁11を通る遅延時間/体積は、補償するために複雑になる可能性があり、弁およびその後のチューブ内の汚染に問題が生じる可能性がある。
【0027】
図3aおよび
図3bは、それぞれ第1および第2の位置にある本発明の一実施形態によるフラクション・コレクション・システム100を概略的に示している。
【0028】
フラクション・コレクション・システム100は、接続されたシステムから受け取った液体のフラクションを分配するように構成された出口24を含む分配装置23を備えている。分配装置23は、異なる位置に移動可能であり得るアーム31に取り付けられている。例えば液体クロマトグラフィーシステムなどの接続されたシステムから液体を移送する注入管6は、分配装置23に接続され得る。フラクションの1つまたは複数を受け入れるように構成された複数のレセプタクル25は、トレイ37に設けられている。トレイは、回転トレイ、すなわち可動式であり得る。従来技術に関連して上記において論じたように、トレイ37が可動であるか、或いは、アーム31が可動であり、異なるレセプタクルでのフラクション・コレクションを可能にする。これにより、レセプタクル25および分配装置23は、分配装置23が前記液体のそれぞれのフラクションをレセプタクル25の1つまたは複数に分配できるように、互いに対していくつかの異なる位置に移動可能である。
【0029】
本発明によれば、フラクション・コレクション・システム100は、少なくとも第1および第2の位置に移動可能であるようにフラクション・コレクション・システム100内に配置された廃棄物収集装置27をさらに備えている。廃棄物収集装置27の第1の位置は
図3aに示され、廃棄物収集装置27の第2の位置は
図3bに示されている。第1の位置では、廃棄物収集装置27の入口29は、分配装置23の出口24から分配される液体が廃棄物収集装置27で受け取られるように、分配装置23の出口24の下に配置される。第2の位置では、廃棄物収集装置27の入口29は、分配装置23から分配されるフラクションが1つまたは複数のレセプタクル25で受け取られるように、分配装置23の出口24の下に配置されていない。
【0030】
廃棄物収集装置27は、本発明の一実施形態では、分配装置23を含むアーム31に接続されている。アーム31が、フラクション・コレクション中にレセプタクルを変更するためにトレイ37に対して移動する可動アームである場合、これにより、廃棄物収集装置27は、アーム31および分配装置23と共に、レセプタクル25に対して異なる位置に移動される。これにより、廃棄物収集装置27は常に分配装置23の近くに保たれ、廃棄物収集装置27を第1の位置と第2の位置との間で移動させるのに必要なのはわずかな移動だけである。これにより、2つの位置の間の迅速な移行が達成され、廃棄物収集装置27は、例えば、各レセプタクルの交換中に、第1の位置に容易に移動し得る。本発明の一実施形態では、廃棄物収集装置は、レセプタクルと分配装置との間の相対的な移動中に第1の位置に配置される。これにより、こぼれを効果的に防止する。さらに、廃棄物収集装置27は、分配される液体が所望のフラクションではない場合、例えば、検出されたピーク間のサンプル(以下でさらに説明される検出器によって検出される)であり、これにより、廃棄物はレセプタクルではなく廃棄物収集に容易に向けられ得る。これにより、こぼれ防止と廃棄物収集とは、バルブを使用せずに完全に実行され、ボリューム/時間の遅延や汚染などのバルブ関連の問題を回避できる。
【0031】
フラクション・コレクション・システム100は、制御システム33をさらに備える。制御システム33は、位置決め装置35に接続され、位置決め装置35は、分配装置23を含むアーム31、またはレセプタクル25を含むトレイ37のいずれかに接続され、それは、これらの一方が移動可能であることに基づく。制御システム33は、位置決め装置35を制御して、分配装置23およびレセプタクル25を互いに対して移動させるように構成されている。制御システム33はさらに、レセプタクル25に分配されるために分配装置23に供給される液体中の内容物を検出することができる検出器39に接続されている。制御システム33はまた、廃棄物収集装置27に接続され、前記廃棄物収集装置27を少なくとも第1および第2の位置に移動するように構成された廃棄物収集装置位置決め装置41に接続されている。廃棄物収集装置位置決め装置41は、例えば、廃棄物収集装置27を第1および第2の位置に前後に動かすためにアーム31に取り付けられ得るバネ式電磁石を備え得る。廃棄物収集装置位置決め装置41は、もちろん、例えば、モーター駆動装置または空気圧駆動装置など、廃棄物収集装置を移動させるための他のタイプの装置を含み得る。廃棄物収集装置は、必要なときにすばやく移動できるというアイデアである。
【0032】
制御システム33は、検出器39からの出力に基づいて、分配装置23およびレセプタクル25の相対的な移動を制御するように構成され、制御システム33は、検出器39からの出力に基づいて、さらに/或いは、分配装置23およびレセプタクル25の相対的な移動に基づいて、廃棄物収集装置27の移動を第1または第2の位置に制御するように構成され得る。これにより、制御システム33は、廃棄物収集装置27を制御して、分配装置23およびレセプタクル25の相対的な移動中に常に第1の位置に配置することができる。これにより、こぼれが効果的に防止される。さらに、制御システム33は、検出器39からの出力に基づき、すなわち、検出器39からの出力が、例えば、関連したピーク間の液体等の廃棄物がすぐに分配装置によって分配されることを示す場合、廃棄物収集装置27は、検出器39からの出力が、例えば、ピークフラクションのピーク等のより関連した材料が分配装置23によって間もなく分配されることを示すまで、この廃棄物を収集するための第1の位置に設けるように制御することができる。もちろん、検出器39と分配装置23との間の距離は、廃棄物収集装置27の移動制御に関連する。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。この方法におけるステップを以下の順序で説明する。
【0034】
S1:フラクション・コレクション・システムの分配装置23から、フラクション・コレクション・システム100に設けられた複数のレセプタクル25への液体のフラクションを分配するステップ。
【0035】
S2:液体のそれぞれのフラクションが1つまたは複数のレセプタクル25内に分配されるように、分配装置23およびレセプタクル25を互いに対して移動させるステップ。分配装置23およびレセプタクル25の相互の移動は、分配装置23および廃棄物収集装置27の両方が接続されているアーム33の位置を制御することによって分配装置23を移動するか、或いは、レセプタクル25を含むトレイ37の位置を制御することによって、レセプタクル25を移動するかのいずれかである。
【0036】
S3:フラクション・コレクション・システム100に設けられた廃棄物収集装置27の位置を、少なくとも第1および第2の位置に制御するステップ。具体的には、第1の位置において、廃棄物収集装置27の入口29は、分配装置23の出口24から分配される液体が廃棄物収集装置27に受け入れられるように、分配装置23の出口24の下に配置される。そして、第2の位置では、廃棄物収集装置27の入口29は、分配装置23から分配される液体が、1つまたは複数のレセプタクル25に受け入れられるように、分配装置23の出口24の下に配置されていない。廃棄物収集装置27の位置を制御するステップは、レセプタクル25と分配装置23との相対的な移動中に廃棄物収集装置27を第1の位置に配置することを含み得る。
【0037】
この方法は、追加のステップを含み得る。
【0038】
S4:レセプタクル25に分配されるために分配装置23に供給される液体中の内容物を検出器39で検出するステップ。
【0039】
これにより、分配装置23およびレセプタクル25を相互に移動させる方法ステップS2は、検出器39からの出力に基づき実行することができ、さらに、廃棄物収集装置27の位置を第1または第2の位置へ制御するステップは、検出器39からの出力に基づき、さらに/或いは、分配装置23およびレセプタクル25の相対的な移動に基づいて実行することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 コレクタ
2、37 トレイ
3、23 チューブ
4 延長アーム
5 分配装置
6 注入管
11 三方弁
24 出口
25 レセプタクル
27 廃棄物収集装置
29 入口
31 アーム
33 制御システム
35 位置決め装置
39 検出器
41 廃棄物収集装置位置決め装置
100 フラクション・コレクション・システム