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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】超吸収性ポリマーの物理的性質の予測
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20240304BHJP
   A61F 13/53 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
G01N21/65
A61F13/53 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021530082
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2019083176
(87)【国際公開番号】W WO2020109601
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】18209220.5
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18213570.7
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ブルロット,ワルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンホウテ,ギス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルベルト,スティン
(72)【発明者】
【氏名】ミーズ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンベル,マルテン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517987(JP,A)
【文献】特表2010-504534(JP,A)
【文献】特表2008-501837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0133364(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
C08J 3/00- C08J 3/28
C08F 2/00- C08F 2/60
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質を予測する方法であって、前記方法が、超吸収性ポリマーのラマンスペクトルを収集すること、及び分光分析データから物理的性質の値を決定するモデルの入力としてラマンスペクトルを使用することを含み、前記モデルが回帰アルゴリズムに基づき、前記物理的性質が、前記超吸収性ポリマーの性能パラメーター、粒子サイズ分布(PSD)又はかさ密度であり、前記超吸収性ポリマーのラマンスペクトルが、重合のステップとポリマーの乾燥のステップとポリマーの粉砕のステップとポリマーの表面後架橋のステップと完成品のパッケージングのステップとを含む前記超吸収性ポリマーの製造プロセスにおいてインラインで収集される、方法。
【請求項2】
前記分光分析データが、前記ポリマーの表面後架橋のステップ及び前記完成品のパッケージングのステップ中に収集される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モデルが、ラマンスペクトルと、広い範囲の物理的性質の値をカバーする複数の超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質の測定値によりトレーニングされている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各超吸収性ポリマーについて複数のラマンスペクトルが収集され、分光分析データが各ラマンスペクトルのベースライン補正、任意選択の各ラマンスペクトルの平滑化又は微分値の生成、及びその後のラマンスペクトルの正規化により前処理されている、請求項に記載の方法。
【請求項5】
物理的性質が、以下の性能パラメーター:遠心分離保持容量(CRC)、加圧下吸収倍率(AAP)、固定高さ吸収(FHA)、有効容量(EFFC)、食塩水流動伝導率(SFC又はSFC1.5(UPM))、超吸収性ポリマーが20g/gの液体吸収に達する時間(T20)、及びボルテックスのうちの少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
超吸収性ポリマーが、少なくとも部分的に中和されたアクリル酸モノマー単位の架橋ポリマー鎖を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
超吸収性ポリマーの製造プロセスを制御するための、請求項1からのいずれか一項に記載の方法により得られた超吸収性ポリマーの物理的性質の予測値の使用。
【請求項8】
コンピューティングデバイスのメモリにロードされ、コンピューティングデバイスの少なくとも1つのプロセッサユニットにより実行される場合、コンピュータに実装される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法のステップを実行する、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質を予測するためのコンピュータシステムであって、
超吸収性ポリマーのラマンスペクトルにアクセスして読み取るように構成されているインターフェースコンポーネント、
モデルを実装し、分光分析データから物理的性質の値を決定するモデルの入力として、インターフェースコンポーネントを介して提供されるラマンスペクトルを使用するように構成されているプロセッサユニットであり、前記モデルが回帰アルゴリズムに基づく、プロセッサユニット
を少なくとも含み、
前記物理的性質が、前記超吸収性ポリマーの性能パラメーター、粒子サイズ分布(PSD)又はかさ密度であり、
重合のステップとポリマーの乾燥のステップとポリマーの粉砕のステップとポリマーの表面後架橋のステップと完成品のパッケージングのステップとを含む前記超吸収性ポリマーの製造プロセスにおいてインラインで分光分析データから物理的性質の値を決定するように構成されているシステム。
コンピュータシステム。
【請求項10】
有線及び/又は無線通信接続を介してラマン分光計に結合され、インターフェースコンポーネントを介してアクセスしてラマン分光計から少なくとも部分的に自動的にラマンスペクトルを読み取るように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
複数の測定されたラマンスペクトルと、広い範囲の物理的性質の値をカバーする複数の超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質の測定値を少なくとも一時的に保存するデータベースをさらに含み、保存された測定ラマンスペクトルと少なくとも1つの物理的性質の測定値とによりモデルをトレーニングするようにさらに構成されている、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
新たに測定されたラマンスペクトルと超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質の新たに測定された値とによりモデルを繰り返しトレーニングすることにより、モデルを繰り返し継続的に更新するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超吸収性ポリマーの物理的性質、特に性能パラメーターを予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収性ポリマー(SAP)はパーソナルケア用品、例えばおむつに一般的に使用されている周知の材料である。これらのポリマーは例えば、水、食塩溶液、尿、血液、及び漿液の重量の数倍を吸収することが知られている。
【0003】
吸水性ポリマー粒子の製造は、モノグラフ「Modern Superabsorbent Polymer Technology」、F.L.Buchholz及びA.T.Graham、Wiley-VCH、1998年の71から103ページに記載されている。
【0004】
超吸収性ポリマーの重要な要件は、ヒドロゲルが液体を伝導して(浸透性)、分配する能力である。超吸収剤の浸透性は、食塩水流動伝導率(SFC)の形で報告される。他の重要な性能パラメーターは、遠心分離保持容量(CRC)、負荷の下での吸収容量、及び超吸収剤1グラムあたりに吸収される1秒あたりの液体の量として報告される超吸収剤粒子の吸収速度、すなわち自由膨潤速度(FSR)、又は超吸収剤1gあたり20gの液体を吸収するのに超吸収剤が必要とする時間として報告される超吸収剤粒子の吸収速度(T20)を含む。通常、吸水性ポリマー粒子は均一な粒子サイズではなく、粒子サイズ分布(PSD)を有している。粒子サイズ分布は、超吸収性ポリマーの性能にも影響を与える。
【0005】
吸水性ポリマー粒子のポリマー鎖は互いに架橋されている。この効果の1つは、ポリマー粒子が水に不溶性であることである。吸水性ポリマー粒子の特性は、使用される架橋剤の量によって調整され得る。架橋剤の量が増えると、遠心分離保持容量(CRC)が低下し、加圧下吸収倍率(absorption against pressure)(AAP)は最大値を経る。
【0006】
使用特性、例えば負荷の下での浸透性及び吸収を改善するために、吸水性ポリマー粒子は一般に表面架橋される。これは粒子表面の架橋のレベルを増加させ、このようにして負荷の下での吸収と保持容量を少なくとも部分的に切り離すことが可能である。表面架橋に適した架橋剤は、吸水性ポリマー粒子の少なくとも2つのカルボキシレート基に共有結合を形成することができる化合物である。
【0007】
吸水性ポリマー粒子の製造は、例えば国際公開第01/038402号、国際公開第03/022896号、国際公開第03/051415号、国際公開第2006/034806号、国際公開第2006/034853号、及び国際公開第2009/115472号に記載されている。
【0008】
国際公開第2005/097313号は高いCRC、SFC及びFSRを有するポリマー粒子を与える吸水性ポリマー粒子を生成するためのプロセスであって、その中で水性ポリマーゲルが粉砕され、押出機によってダイプレートを通して押し出され、乾燥され、表面架橋されるプロセスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第01/038402号
【文献】国際公開第03/022896号
【文献】国際公開第03/051415号
【文献】国際公開第2006/034806号
【文献】国際公開第2006/034853号
【文献】国際公開第2009/115472号
【文献】国際公開第2005/097313号
【文献】米国特許出願公開第2004/133,364号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】モノグラフ「Modern Superabsorbent Polymer Technology」、F.L.Buchholz及びA.T.Graham、Wiley-VCH、1998年の71から103ページ
【文献】Adar,F.ら:Applied Spectroscopy Reviews 32(1997年)45~101ページの「Raman Spectroscopy for Process/Quality Control」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
超吸収性ポリマーの性能特性の測定は、特に生産される製品の一定の品質を保証するために超吸収性ポリマーの工業生産プロセスを監視する必要がある場合、かなりの分析作業を必要とする。限定的な測定作業を伴う超吸収性ポリマーの物理的性質を決定するための迅速、簡単、且つ信頼できる方法を持つことが望ましいであろう。
【0012】
本開示の目的は、超吸収性ポリマーの物理的性質、特に性能パラメーターを予測するための信頼できるツールを提供することである。
【0013】
米国特許出願公開第2004/133,364号明細書は、スラリー反応器系、例えば撹拌スラリー又はスラリーループ反応器においてオンラインでポリマー生成物、すなわちポリオレフィン粒子の特性を決定及び制御するための方法を開示している。この方法は、ポリマー生成物の特性を決定するための、主成分負荷及び主成分スコアを含む回帰モデルを取得すること、スラリー反応器系におけるポリマー生成物のラマンスペクトルを取得すること、ラマンスペクトルと主成分負荷の少なくとも一部から新たな主成分スコアを計算すること、新たな主成分スコアを回帰モデルに適用することによりポリマー生成物の特性を計算することを含む。特性は、計算されたポリマー生成物の特性に基づき少なくとも1つの重合パラメーターを調整することによって制御され得る。
【0014】
Adar,F.ら:Applied Spectroscopy Reviews 32(1997年)45~101ページの「Raman Spectroscopy for Process/Quality Control」は、プロセス制御におけるラマン分光法の使用を開示している。反応した樹脂の割合を決定するために、ポリアクリルアミドゲルの架橋が監視される。そして、ゲルの化学的特性が決定される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
超吸収性ポリマーの物理的性質、特に性能パラメーターを予測するためのコンピュータに実装される方法が提供される。本開示の計量化学モデルでは、分光分析データ(通常はラマン散乱スペクトル)が超吸収性ポリマーの物理的性質、特に性能パラメーターと関係付けられる。回帰アルゴリズム、例えば部分最小二乗回帰アルゴリズムに基づく数学的モデルが、超吸収性ポリマーの分光分析データとその物理的性質、特に性能パラメーターを関係付ける。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、ベースライン補正として線形フィット減算と、データ前処理としてSNV(標準正規変量)正規化ステップを使用した超吸収性ポリマーからの10個のラマンスペクトルのセットの例を示す図である
図2図2は、超吸収性ポリマーのSFCの予測インラインデータと測定データを示すグラフである。
図3図3は、様々な超吸収性ポリマーのCRCの予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図4図4は、超吸収性ポリマーの製造プロセスの概略図である。
図5図5は、様々な超吸収性ポリマーの加圧下吸収倍率(AAP)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図6図6は、様々な超吸収性ポリマーの遠心分離保持容量(CRC)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図7図7は、様々な超吸収性ポリマーの有効容量(EFFC)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図8図8は、様々な超吸収性ポリマーの固定高さ吸収(FHA)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図9図9は、様々な超吸収性ポリマーの圧力下浸透性依存吸収(PDAUP)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図10図10は、様々な超吸収性ポリマーの食塩水流動伝導率(SFC-1.5)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図11図11は、様々な超吸収性ポリマーの圧力下吸収時間(T20)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図12図12は、様々な超吸収性ポリマーの吸収時間(ボルテックス)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図13図13は、様々な超吸収性ポリマーのかさ密度の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図14図14は、様々な超吸収性ポリマーの流速の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
図15図15は、様々な超吸収性ポリマーの残留モノマー含有量(ReMo)の予測値と測定値の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、超吸収性ポリマー(SAP)の少なくとも1つの物理的性質、特にそれぞれ1つの性能パラメーターを予測する方法であって、超吸収性ポリマーのラマンスペクトルを収集すること、及び分光分析データからそれぞれの性能パラメーターの値を決定するモデルの入力としてラマンスペクトルを使用することを含む方法を提供する。一実施形態では、モデルは部分最小二乗(PLS)回帰アルゴリズムに基づく。他の統計モデリング手法、例えばリッジ回帰やエラスティックネット回帰も同様に使用され得る。これらの手法はPLSモデリングと同様な結果をもたらす。本開示では、モデリングは例としてPLSモデリングを使用して説明される。
【0018】
基本的に超吸収性ポリマーの化学組成と形態は、性能パラメーターに直接的に影響するため、超吸収性ポリマーの分光分析データと性能データの相関が可能である。
【0019】
さらに分光学的分析法、例えばラマン散乱分光法は化学組成、そしてある程度までポリマーの形態を精査する。
【0020】
超吸収性ポリマーの物理的性質、例えば性能パラメーターが分光法を使用して予測され得ることが見出された。
【0021】
ラマン分光法は、インラインとオフラインのどちらの適用においても超吸収性ポリマーを特徴付けるために使用され得る。一実施形態では、785nmの基本波長でのラマンスペクトルが用途に応じて10秒から2分の間の時間枠で記録される。
【0022】
アルゴリズム、統計的因子モデルはラマンスペクトルをSAPの物理的性質、例えば性能パラメーターへと翻訳するために使用される。一実施形態では、部分最小二乗法又は潜在構造への射影(Projection to Latent Structures)(PLS)モデルが使用される。通常、物理的性質ごとに個別のPLSモデルが使用される(PLS1)。代替的な実施形態では、1つのPLSモデルが複数の特性に使用される(PLS2)。
【0023】
分光分析データと性能データの関係付け(モデルの較正(calibrating))は、部分最小二乗回帰(PLS)モデリングを用いて行われる。この反復アルゴリズムは、分光分析データ(例えばラマン散乱スペクトル)のどの部分が、測定された性能パラメーターにおいて観察される変動を説明できるかを決定する。最も単純なモデルでは、分光分析データの1つの波長又は波数又はピークが、性能パラメーターにおける変動を完全に決定する。しかしながら、ポリマー中に存在する異なる化学基、鎖長、形態などの量、それらの性能パラメーターへの加重寄与、及び他の境界条件、例えば温度又は実験のやり方のため、得られるモデルはしばしば複雑であり、結果を予測するために広い範囲の利用可能なデータを使用する。
【0024】
PLSキャリブレーションモデルの品質は、関係付けられるデータの品質に直接関係する。分光分析データ、例えばラマン散乱スペクトルは通常、高品質である。超吸収性ポリマーの場合、制約要因は測定される物理的性質、特に性能パラメーターの精度である。したがって、系統的誤差を可能な限り低減又は排除することにより、実験室の基準測定から高品質のデータを取得することが重要である。例は、複数の人を選択することで実験技師によるバイアスを減らすことや、同じポリマー試料で同じ実験を繰り返す回数を増やして測定の標準偏差を減らすことである。
【0025】
較正されたPLSモデルは、較正範囲(calibration range)内でのみ有効であることに注意することも重要である。例として、基準データ(reference data)のCRCの範囲が20~25g/gの場合、モデルはこの範囲外のCRC値を正確に予測するのには適していない。
【0026】
一実施形態では、モデルはラマンスペクトルと、広い範囲の物理的性質の値をカバーする複数の超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質、特に性能パラメーターの測定値とによりトレーニングされている。
【0027】
モデルの取得における第1のステップは、ラマンスペクトルに基づいて試料の性能パラメーターを一定の精度で予測可能な「較正(calibrated)」モデルを得るために、(ラマン散乱)スペクトルといくつかの基準超吸収体試料の測定された性能パラメーターを関係付けるトレーニングフェーズである。較正の際の(パラメーター、数などの統計的分布の観点からの)試料やその他の設定(反復回数、モデルの複雑さ、データの前処理など)の選択は、交差検証におけるロバスト性、精度、誤差の観点から異なる特性を有する異なるキャリブレーションモデルを生じる。
【0028】
この第1のステップのトレーニング試料の選択は非常に重要である。超吸収性ポリマーの場合、2つの選択肢が考慮され得る。第1の選択肢は処理試料に基づいてモデルをトレーニングすることであり、第2の選択肢は合成試料を使用してモデルをトレーニングすることである。
【0029】
第1の選択肢では、試料は可能な限り多くの処理のバリエーションで選択されるべきである。これは、較正の範囲を可能な限り広く拡張し、トレーニング試料セット全体における単一試料の測定誤差の影響を減らすためである(例えば、0.9g/g CRCの総合測定誤差は、較正範囲が15~30g/gの場合よりも20~25g/gの場合、モデル化がより困難である)。
【0030】
第2の選択肢は、性能パラメーターなどの物理的性質が実験室又はパイロット設備で操作される合成試料の使用である。これらの操作は、製造プロセスからのポリマー、パイロット設備からのポリマー、又は実験室合成からのポリマーに基づいて行われ得る。操作の典型的な例は、製造試料からの様々な粒子サイズを(ふるいカットを介して)混合して、幅広い性能特性を導く新たな「人工」粒子サイズ分布(PSD)を取得することである。操作の2つ目の例は、製造設備からのベースポリマーを使用して、例えば異なる表面架橋剤、広い温度範囲、反応時間の変更など、様々な条件下において実験室でこれらを表面後架橋(surface post-crosslinked)超吸収性ポリマーに変換することである。操作の3つ目の例は、製造プロセスと同じ試薬を使用するが、実験室環境で超吸収性ポリマーを合成することである。様々な合成試料を取得するための4つ目の例は、パイロット設備における処理パラメーターを実際の製造環境ではまれな極端なものに変更することである。性能特性に幅広いバリエーションを有する超吸収性ポリマーを製造する他の方法も、計量化学モデルのトレーニング試料として「合成」試料を合成するために使用され得る。この第2の選択肢は、オフラインモデルにのみ関連付けられる。
【0031】
モデリングプロセスの第2のステップでは、第1のステップで取得されたキャリブレーションモデルが、独立した試験試料(トレーニングフェーズで使用されていないバッチ)を用いて検証される。次に予測の誤差、複雑さの低減、ロバスト性などの観点から、検証で最良の結果をもたらすキャリブレーションモデルを選択して、他の試料の性能パラメーターを予測する。
【0032】
予測モデルのロバストな性能を保証するために、方法の一実施形態では、継続的な検証が使用される。これはコンピュータでは(in silico)、モデルをトレーニングするのに使用されたスペクトルに対する新たに測定されたスペクトルの適合を決定することにより、また実験室では、予測結果を実際の測定データと(同じレベルの精度で)比較することにより行われる。頻度とサンプルポイント(sample points)を含む検証計画は、モデルの性能(モデリングプロセスのステップ2で評価)とポリマーの必要な仕様に基づいて設計され得る。例えば、仕様範囲20~25で予測誤差が1のパラメーターを予測するモデルの場合、誤差が0.1のモデルよりも頻繁な検証が必要になるであろう。モデルの性能が要求どおりでないことが検出された場合(例えば、パラメーターが較正範囲外の場合)、追加の基準試料をモデルに含めるか、モデルを再トレーニングすることができる。
【0033】
超吸収性ポリマーの製造におけるレシピの変更が発生した場合、新しいレシピに対する既存のモデルの有効性は、レシピに加えられた変更に大きく依存するであろう。変更が既に使用されている試薬の比率のわずかな逸脱、又は処理の際の物理パラメーター、例えば温度の小さな変更に限定されており、その結果得られる性能パラメーターがモデルの較正範囲内にある場合、既存のモデルを使用して新しいレシピへの移行が成功する確率は高い。生成物の化学作用を変更したり(例えば、新しい試薬)、処理パラメーターに大きな逸脱を適用したりする場合には、移行が成功する可能性は低くなる。どちらの場合も、既存のモデルの有効性を検証する必要がある。可能な選択肢の2つは、合成試料を使用した操業開始前の検証、又は操業開始時の強化された検証計画である。
【0034】
トレーニングステップの一実施形態では、各超吸収性ポリマーについて複数のラマンスペクトルが収集され、分光分析データが各ラマンスペクトルのベースライン補正、任意選択の各ラマンスペクトルの平滑化又は微分値(derivative)の生成、及びその後のラマンスペクトルの正規化により前処理されている。
【0035】
一実施形態では、スペクトルがx軸及びy軸で前処理される。前者では、これは3つのアクションにより行われる:(1)モデルのラマンシフトが、測定されたスペクトルのラマンシフトに対応することを保証するために基準スペクトルで再サンプリングする、(2)モデルで考慮されるスペクトルの全体範囲(通常は200~1800cm-1)を定義する、及び(3)モデルが無視する範囲、例えば920~1130cm-1の「除外された」範囲を定義する。後者は、特徴付けられる生成物に応じた任意選択の最適化ステップである。y軸の前処理は(1)ベースライン補正、(2)平滑化及び/又は微分、並びに(3)正規化の3つのアクションにより行われ得る。これらの前処理の組み合わせは、特徴付けられる生成物に応じて最適化される。
【0036】
例示的な実施形態では、第1は、ラマンスペクトルから直線又は線形フィットを減算することによるベースライン補正である。或いは、より単純なベースライン補正は、オフセット減算を使用するか、補正をまったく使用しないことである。より複雑な補正は、ラバーバンド減算であり得る。
【0037】
第2のy軸前処理は、スペクトルの平滑化又はスペクトルの微分値(1階又は2階微分値)の使用である。この前処理ステップは、情報の損失をもたらし得ることを考慮して、信号対雑音比を最適化するために使用される。したがって、この前処理を使用する前に例えば、より長い時間枠で記録するか、同じ試料のより多くの記録を平均化することによって、スペクトルの品質を改善することが好ましい。
【0038】
最後の前処理は、スペクトルの正規化である。例示的な実施形態では、スペクトルは面積に基づいて、又は標準正規変量(SNV)正規化によって正規化される。前者はスペクトルの下の信号領域を1にスケーリングする。後者は標準正規分布に合うように信号強度をスケーリングする。したがって、これは加重正規化であり、全てのポイントが正規化に等しく寄与するわけではない。代替的な正規化ステップは、最小-最大正規化であり得るが、この場合、信号強度の最小値が0に等しくなり、最大値は1に等しくなり、結果として0~1の範囲の相対強度が得られる。別の代替的な方法はピーク正規化であり、この場合、信号強度は基準ピーク(通常、性能パラメーターの影響を受けないピーク)に対してスケーリングされる。
【0039】
前処理の組み合わせと選択は、検討するモデルと生成物に依存するが、通常、直線減算又は線形フィット減算が、平滑化フィルター又は微分値を使用せずに、面積又はSNV正規化と組み合わされる。
【0040】
PLSモデルのモデリング/トレーニングステップ中に、様々なモデル性能パラメーター又はモデルKPIが最適化される:交差検定の二乗平均平方根誤差(RMSECV)、予測の二乗平均平方根誤差(RMSEP)、R2、スペクトル残差、及びマハラノビス距離。通常、いくつかのモデルが処理試料を使用して作成/トレーニングされ、試験/検証される。最適なモデルが、生成物の性能パラメーターの予測/計算値の信頼性、正確度、及び精度に基づいて選択される。検証試料は通常、同じ生成物の2つの独立した製造キャンペーン(production campaigns)から選択される。モデルパラメーターと前処理のセットが選択された後、モデルはマハラノビス距離とスペクトル残余(の傾向)を継続的に評価することによって、また、定期的な対照試料(通常は毎週1試料)によって評価される。例えば、モデルの予測と基準値の間の差がユーザー定義の制限(例えば信頼区間)を超える場合、時間の経過とともに予測力を向上させるために、追加のトレーニング試料がモデルに追加され得る。ラマンスペクトルの特徴選択が、モデルの性能を最適化するために使用され得る。
【0041】
本開示の方法の一実施形態では、超吸収性ポリマーのラマンスペクトルは、超吸収性ポリマーの製造プロセスにおいてインラインで収集される。別の実施形態では、超吸収性ポリマーのラマンスペクトルは、超吸収性ポリマーの試料についてオフラインで収集される。
【0042】
本開示の方法の一実施形態では、予測される物理的性質は超吸収性ポリマーの性能パラメーターである。
【0043】
超吸収性ポリマーの性能パラメーターは遠心分離保持容量(CRC)、負荷下吸収度(Absorbency Under Load)(AUL)、有効容量(effective capacity)(EFFC)、食塩水流動伝導率(SFC)、T20、自由膨潤速度(FSR)、固定高さ吸収(fixed height absorption)(FHA)、圧力下浸透性依存吸収(Permeability Dependent Absorption Under Pressure)(PDAUP)及びボルテックス(Vortex)を含む。超吸収性ポリマーの他の重要な物理的性質は流速、かさ密度、及びコア構造内の残留モノマー含有量を含む。
【0044】
特定の一実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの遠心分離保持容量(CRC)である。CRCは、過剰な液体中での膨潤について、超吸収性ポリマー粒子によって吸収される液体を測定する。CRCはEDANA試験方法NWSP241.0.R2(15)(ISO 17190-6:2001)「Polyacrylate Superabsorbent Powders - Determination of the Fluid Retention Capacity in Saline Solution by Gravimetric Measurement Following Centrifugation」に従って測定されるが、遠心分離保持容量の値が高い場合は、より大きなティーバッグが使用されなければならない。
【0045】
さらなる特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの負荷下吸収度(AUL)又は加圧下吸収倍率(AAP)である。超吸収性ポリマー粒子のAULは、EDANA試験方法番号NWSP242.0.R2(15)(ISO 17190-7:2001)「Polyacrylate Superabsorbent Powders - Gravimetric Determination of Absorption Against Pressure」に従って決定される。
【0046】
別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの有効容量(EFFC)である。有効容量は遠心分離保持容量(CRC)の値と、超吸収性ポリマー粒子の加圧下吸収倍率(AAP)の値の平均を表す。有効容量はEFFC=(CRC+AAP)/2として計算される。
【0047】
さらに別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの食塩水流動伝導率(SFC)である。食塩水流動伝導率は、吸水性ポリマー粒子の膨潤したゲル層のゲル層浸透性を表す。これは、欧州特許出願公開第0640330号明細書に記載されているようにして決定され、測定の評価は欧州特許出願公開第0640330号明細書に記載のようにして実施される。流速は自動的に記録される。欧州特許出願公開第0640330号明細書の19ページ及び図8に記載されている装置は、ガラスフリット(40)がもはや使用されず、プランジャー(39)がシリンダー(37)と同じポリマー材料から成るように変更され、そして現在は、それぞれが接触面全体に均一に分布している直径9.65mmの21個のボアを含んでいる。食塩水流動伝導率(SFC)は次のようにして計算される:
SFC[cm3s/g]=(Fg(t=0)×L0)/(d×A×WP)、
(式中、Fg(t=0)はg/s単位のNaCl溶液の流速であり、これはt=0への外挿による流れの決定のFg(t)データの線形回帰分析によって得られ、L0は単位cmのゲル層の厚さであり、dは単位g/cm3のNaCl溶液の密度であり、Aは単位cm2のゲル層の表面積であり、WPは単位dyn/cm2のゲル層の静水圧である)。
【0048】
この方法のバリエーションでは、超吸収性ポリマーの食塩水流動伝導率(SFC1.5)は、欧州特許出願公開第2535027号明細書の19~22ページに記載されている、いわゆるUPM法に従って測定される。
【0049】
さらなる特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマー1gあたり20gの液体の液体取り込みに超吸収性ポリマーが達する時間(T20)である。20g/g(T20)の液体取り込みに達する時間は、欧州特許出願公開第2535027号明細書の13~18ページ「K(t) Test Method (Dynamic Effective Permeability and Uptake Kinetics Measurement Test Method)」に開示の方法によって決定される。
【0050】
さらなる特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの自由膨潤速度(FSR)である。自由膨潤速度は、超吸収性ポリマーが撹拌も外圧も加えずに(without neither stirring nor applying external pressure)、既知量の食塩水を吸収できる速度を指し示す。FSRは次の手順に従って測定される:1.00g(=W1)の乾燥吸水性ポリマー粒子を25mlのガラスビーカーに量り取り、ガラスビーカーの底に均一に分散させる。次に、20mlの0.9重量%塩化ナトリウム溶液を第2のガラスビーカーに分注する。このビーカーの内容物を第1のビーカーに迅速に追加し、ストップウォッチを開始させる。塩溶液の最後の一滴が吸収され、液面での反射の消失により確認され次第、ストップウォッチを停止させる。第2のビーカーから注がれ、第1のビーカー内のポリマーによって吸収された液体の正確な量は、第2のビーカーを計量することによって正確に決定される(=W2)。ストップウォッチで測定された吸収に必要な時間はtで表される。自由膨潤速度(FSR)はFSR[g/gs]=W2/(W1×t)として計算される。ヒドロゲル形成ポリマーの水分含有量が3重量%を超える場合、重量W1は、この水分含有量に対して補正されなければならない。
【0051】
別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの水分含有量(MC)である。超吸収性ポリマー粒子のMCは、EDANA試験方法番号NWSP230.0.R2(15)(ISO 17190-4:2001)「Polyacrylate Superabsorbent Powders - Estimation of the Moisture Content as Weight Loss Upon Heating」に従って決定される。
【0052】
さらに別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの固定高さ吸収(FHA)である。FHAは超吸収体に加えられた一定の静水圧に対する超吸収性ポリマーの食塩水の吸収容量を表す。これは欧州特許出願公開第1493453号明細書の9/10ページに記載の方法を使用して測定され得る。
【0053】
別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの圧力下浸透性依存吸収(PDAUP)である。PDAUPは下から上への(from the bottom up)一定圧力下での超吸収体の吸収容量を表す。浸透性は超吸収体に吸収される食塩水の総量を決定する。これはEDANA試験法NWSP243.0.R2(15)「Polyacrylate Superabsorbent Powders - Determination of the Permeability Dependent Absorption Under Pressure of Saline Solution by Gravimetric Measurement」に従って測定され得る。
【0054】
別の特定の実施形態では、物理的性質は超吸収性ポリマーの粒子サイズ分布(PSD)である。超吸収性ポリマー粒子の粒子サイズ分布は、EDANA試験方法番号NWSP220.0.R2(15)(ISO 17190-3:2001)「Polyacrylate Superabsorbent Powders - Determination of the Particle Size Distribution by Sieve Fractionation」に従って決定される。
【0055】
さらに別の特定の実施形態では、物理的性質は超吸収性ポリマーのかさ密度である。かさ密度はEDANA法NWSP251.0.R2(15)「Polyacrylate Superabsorbent Powders - Gravimetric Determination of Flow Rate and Bulk Density」に従って測定される。
【0056】
さらに別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの流速である。超吸収性ポリマー粒子の流速は、EDANA試験方法番号NWSP251.0.R2(15)「Polyacrylate Superabsorbent Powders - Gravimetric Determination of Flow Rate and Bulk Density」に従って決定される。
【0057】
さらに別の特定の実施形態では、物理的性質は超吸収性ポリマーの色値である。色値は、DIN5033-6に従う三刺激値法(color value)のとおりに測定される。
【0058】
別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーの水性抽出物の表面張力である。水性抽出物の表面張力は、以下の方法に従って測定される:0.50gの超吸収性ポリマー粒子を小さなビーカーに量り入れ、40mlの0.9重量%塩化ナトリウム溶液を加える。ビーカーの内容物をマグネチックスターラーバーにより500rpmで3分間撹拌し、次に2分間静置する。最後に、上澄み水相の表面張力(ST)をK10-STデジタル張力計又はプラチナプレートを備えた同等の機器(Kruss GmbH、ハンブルク、独国)で測定する。測定は23℃の温度で行われる。
【0059】
さらに別の特定の実施形態では、性能パラメーターは超吸収性ポリマーのボルテックスである。ボルテックスは次の方法で測定される:50.0±1.0mlの0.9%NaCl溶液を100mlビーカーに加える。円筒形のスターラーバー(30×6mm)を追加し、食塩水を撹拌プレート上60rpmで撹拌する。2.000±0.010gの超吸収性ポリマー粒子をビーカーにできるだけ早く加え、添加の開始と共にストップウォッチを開始させる。混合物の表面が「静止」した場合にストップウォッチを停止させる。これは表面に乱流がなく、混合物がなおも回転し得る一方で、粒子の表面全体が1つの単位として回転することを意味する。ストップウォッチの表示時間がボルテックスの時間として記録される。
【0060】
本開示の方法の一実施形態では、超吸収性ポリマーは少なくとも部分的に中和されたアクリル酸モノマー単位の架橋ポリマー鎖を含む。一実施形態では、架橋剤はN-(2-ヒドロキシエチル)-2-オキサゾリジノン(HEONON)である。
【0061】
超吸収性ポリマー粒子を製造するための例示的な方法を以下に詳細に説明する。
【0062】
超吸収性ポリマー粒子は、
a)酸基(acid groups)を有し、少なくとも部分的に中和されうる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、
b)少なくとも1つの架橋剤、
c)少なくとも1つの開始剤
を含むモノマー溶液又は懸濁液を重合させ、
結果として得られるポリマーゲルを乾燥させ、乾燥したポリマーゲルを粉砕することによって生成されうる。超吸収性ポリマーは通常、水に不溶性である。
【0063】
適切なモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸である。特に好ましいモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸である。非常に特別な優先がアクリル酸に与えられる。
【0064】
アクリル酸は通常、保存安定剤として重合阻害剤、好ましくはヒドロキノンモノエーテルを含む。
【0065】
モノマー溶液は、好ましくは最大250重量ppm、好ましくは最大150重量ppm、より好ましくは最大100重量ppm、そして好ましくは少なくとも10重量ppm、より好ましくは少なくとも30重量ppm、特に約50重量ppmのヒドロキノンモノエーテルを、各場合において中和されていないモノマーa)に基づき含む。例えばモノマー溶液は、適切な含有量のヒドロキノンモノエーテルを有する酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを使用することによって調製され得る。
【0066】
適当な架橋剤b)は、架橋に適した少なくとも2つの基を有する化合物である。そのような基は例えば、フリーラジカルでポリマー鎖に重合され得るエチレン性不飽和基、及びモノマーa)の酸基と共有結合を形成できる官能基である。さらに、モノマーa)の少なくとも2つの酸基と配位結合を形成できる多価金属塩もまた、架橋剤b)として適当である。
【0067】
架橋剤b)は好ましくは、ポリマーネットワークにフリーラジカル重合され得る少なくとも2つの重合性基を有する化合物である。適当な架橋剤b)は、例えば欧州特許出願公開第0530438号明細書に記載されているエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン、欧州特許出願公開第0547847号明細書、欧州特許出願公開第0559476号明細書、欧州特許出願公開第0632068号明細書、国際公開第93/21237号、国際公開第2003/104299号、国際公開第2003/104300号、国際公開第2003/104301号、及び独国特許出願公開第10331450号明細書に記載されているジアクリレート及びトリアクリレート、独国特許出願公開第10331456号明細書及び独国特許出願公開第10355401号明細書に記載されているアクリレート基と同様にさらにエチレン性不飽和基を含む混合アクリレート、又は例えば独国特許出願公開第19543368号、独国特許出願公開第19646484号明細書、国際公開第90/15830号、及び国際公開第2002/032962号に記載されている架橋剤混合物である。
【0068】
架橋剤b)の量は、各場合にモノマーa)に基づいて、好ましくは0.05から1.5重量%、より好ましくは0.1から1重量%、そして最も好ましくは0.3から0.6重量%である。架橋剤の含有量が増えると、遠心分離保持容量(CRC)が低下し、21.0g/cm2の圧力下吸収が最大値を経る。
【0069】
使用される開始剤c)は、重合条件下でフリーラジカルを生成するあらゆる化合物、例えば熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤であり得る。適当なレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/亜硫酸水素ナトリウム、及び過酸化水素/亜硫酸水素ナトリウムである。優先が熱開始剤とレドックス開始剤の混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸を使用することに与えられる。しかしながら、使用される還元成分は好ましくは、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム、又は2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸二ナトリウム、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムの混合物である。このような混合物は、Bruggolite(登録商標)FF6及びBruggolite(登録商標)FF7(Bruggemann Chemicals、ハイルブロン、独国)として入手可能である。
【0070】
通常、モノマー水溶液が使用される。モノマー溶液の含水量は、好ましくは40から75重量%、より好ましくは45から70重量%、そして最も好ましくは50から65重量%である。モノマー懸濁液、すなわち過剰なモノマーa)、例えばアクリル酸ナトリウムを含むモノマー溶液を使用することも可能である。含水量が増加すると、その後の乾燥に必要なエネルギーが増加し、含水量が減少すると、重合熱が不十分にしか除去できなくなる。
【0071】
最適な作用のために、好ましい重合阻害剤は溶存酸素を必要とする。したがって、モノマー溶液は不活性化、すなわち不活性ガス、好ましくは窒素又は二酸化炭素を流通させることにより、重合の前に溶存酸素が取り除かれ得る。モノマー溶液の酸素含有量は、好ましくは重合前に1重量ppm未満、より好ましくは0.5重量ppm未満、最も好ましくは0.1重量ppm未満に下げられる。
【0072】
重合反応をより良く制御するために、任意選択であらゆる既知のキレート剤をモノマー溶液又は懸濁液又はその原料に添加することが可能である。適当なキレート剤は例えば、リン酸、二リン酸、三リン酸、ポリリン酸、クエン酸、酒石酸、又はそれらの塩である。
【0073】
モノマー溶液又は懸濁液は重合される。適当な反応器は例えば、ニーディング反応器又はベルト反応器である。ニーダーでは、モノマー水溶液又は懸濁液の重合で形成されたポリマーゲルが、例えば国際公開第2001/038402号に記載されているようにして、逆回転撹拌シャフトによって連続的に粉砕される。ベルト上での重合は、例えば独国特許出願公開第3825366号明細書及び米国特許第6,241,928号明細書に記載されている。ベルト反応器での重合はポリマーゲルを形成し、これはさらなる処理ステップ、例えば押出機又はニーダーで粉砕されなければならない。
【0074】
乾燥特性を改善するために、ニーダーによって得られた粉砕ポリマーゲルをさらに押し出すことができる。
【0075】
結果として得られるポリマーゲルの酸基は通常、部分的に中和されている。中和は好ましくはモノマー段階で実施される。これは通常、中和剤を固体として、又は好ましくは水溶液として混合することによって達成される。中和の程度は、好ましくは50から90モル%、より好ましくは60から85モル%、そして最も好ましくは65から80モル%であり、特に65から75モル%が好ましく、そのために通常の中和剤、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩、またそれらの混合物が使用され得る。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を使用することも可能である。特に好ましいアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムであるが、非常に特別な優先が水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、またそれらの混合物に与えられる。
【0076】
結果として得られるポリマーゲルは乾燥させられる。乾燥機には制限は課されない。しかしながら、ポリマーゲルの乾燥は好ましくは、残留水分含有量が好ましくは0.5から10重量%、より好ましくは1から7重量%、そして最も好ましくは2から5重量%になるまでベルト乾燥機で実施され、残留水分含有量はEDANA試験方法番号WSP230.2-05「Mass Loss Upon Heating」によって決定される。残留水分含有量が高すぎる場合、乾燥させたポリマーゲルは低すぎるガラス転移温度Tgを有し、困難をもってのみ、さらに処理され得る。残留水分含有量が低すぎる場合、乾燥させたポリマーゲルは脆すぎ、その後の粉砕ステップで過度に小さい粒子サイズを有する望ましくないほど大量のポリマー粒子が得られる(「微粉」)。乾燥前のゲルの固形分は、好ましくは25から90重量%、より好ましくは35から70重量%、そして最も好ましくは40から60重量%である。しかしながら、流動床乾燥機又はパドル乾燥機も、任意選択で乾燥目的のために使用され得る。
【0077】
続いて、乾燥ポリマーゲルが粉砕され、分類される。生成物画分として除去されるポリマー粒子の平均粒子サイズは、好ましくは少なくとも200μm、より好ましくは250から600μm、そして極めて特に300から500μmである。生成物画分の平均粒子サイズは、スクリーン画分の質量比率が累積形式でプロットされ、平均粒子サイズがグラフィカルに決定されるEDANA試験方法番号WSP220.2-05「Particle Size Distribution」を使用して決定され得る。ここで、平均粒子サイズは累積50重量%を生じさせるメッシュサイズの値である。
【0078】
特性を改善するために、ポリマー粒子はその後、熱的に表面後架橋され得る。適当な表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2つの酸基と共有結合を形成できる基を含む化合物である。適当な化合物は、例えば欧州特許出願公開第0083022号明細書、欧州特許出願公開第0543303号明細書及び欧州特許出願公開第0937736号明細書に記載されているような多官能性アミン、多官能性アミドアミン、多官能性エポキシド、独国特許出願公開第3314019号明細書、独国特許出願公開第3523617号明細書及び欧州特許出願公開第0450922号明細書に記載されているような二官能性又は多官能性アルコール、又は独国特許出願公開第10204938号明細書及び米国特許第6,239,230号明細書に記載されているようなβ-ヒドロキシアルキルアミドである。
【0079】
好ましい表面後架橋剤はエチレンカーボネート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール(登録商標)、Nagase ChemteX Corp、東京、日本)、ポリアミドとエピクロルヒドリンとの反応生成物、及びプロピレングリコールと1,4-ブタンジオールの混合物である。
【0080】
表面後架橋剤の量は、各場合にポリマー粒子に基づいて、好ましくは0.001から2重量%、より好ましくは0.02から1重量%、そして最も好ましくは0.05から0.2重量%である。
【0081】
本発明の好ましい実施形態においては、多価カチオンが表面後架橋の前、最中、又は後に、表面後架橋剤に加えて粒子表面に適用される。
【0082】
本発明による方法で使用可能な多価カチオンは、例えば二価カチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄及びストロンチウムのカチオン、三価カチオン、例えばアルミニウム、鉄、クロム、希土類及びマンガンのカチオン、四価カチオン、例えばチタン及びジルコニウムのカチオンである。可能な対イオンは、塩化物、臭化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、及びカルボン酸塩、例えば酢酸塩及び乳酸塩である。硫酸アルミニウム及び乳酸アルミニウムが好ましい。金属塩とは別に、多価カチオンとしてポリアミンを使用することも可能である。
【0083】
使用される多価カチオンの量は、各場合にポリマー粒子に基づいて、例えば0.001から1.5重量%、好ましくは0.005から1重量%、そしてより好ましくは0.02から0.8重量%である。
【0084】
表面後架橋は通常、表面後架橋剤の溶液が乾燥したポリマー粒子に噴霧されるような方法で実施される。噴霧塗布後、表面後架橋剤でコーティングされたポリマー粒子は熱的に乾燥され、表面後架橋反応が乾燥前又は乾燥中に生じ得る。
【0085】
表面後架橋剤の溶液の噴霧塗布は、好ましくは移動混合ツールを備えたミキサー、例えばスクリューミキサー、ディスクミキサー及びパドルミキサーで実施される。横型ミキサー、例えばパドルミキサーに特別な優先が与えられ、縦型ミキサーに非常に特別な優先が与えられる。横型ミキサーと縦型ミキサーの区別は、混合シャフトの位置によって行われ、すなわち横型ミキサーは水平に取り付けられた混合シャフトを有しており、縦型ミキサーは垂直に取り付けられた混合シャフトを有している。適当なミキサーは例えば、水平Pflugschar(登録商標)すき刃ミキサー(Gebr.Lodige Maschinenbau GmbH、パーダーボルン、独国)、Vrieco-Nauta連続ミキサー(Hosokawa Micron BV、ドゥーティンヘム、オランダ)、Processall Mixmillミキサー(Processall Incorporated、シンシナティ、米国)及びSchugi Flexomix(登録商標)(Hosokawa Micron BV、ドゥーティンヘム、オランダ)である。しかしながら、流動床中の表面後架橋剤溶液に噴霧することも可能である。
【0086】
表面後架橋剤は通常、水溶液の形で使用される。ポリマー粒子への表面後架橋剤の侵入深度は、非水溶媒の含有量と溶媒の総量を介して調整され得る。
【0087】
熱表面後架橋は、好ましくは接触乾燥機、より好ましくはパドル乾燥機、最も好ましくはディスク乾燥機で実施される。適当な乾燥機は例えば、Hosokawa Bepex(登録商標)水平パドルドライヤー(Hosokawa Micron GmbH、ラインガルテン、独国)、Hosokawa Bepex(登録商標)ディスクドライヤー(Hosokawa Micron GmbH、ラインガルテン、独国)及びNaraパドルドライヤー(NARA Machinery Europe、フレッヘン、独国)である。さらに、流動床乾燥機も使用され得る。
【0088】
熱表面後架橋はジャケットを加熱するか、暖かい空気を吹き込むことによって、ミキサー自体で遂行され得る。同様に適当なのはダウンストリームドライヤー、例えば棚式乾燥機、回転管オーブン、又は加熱可能スクリューである。流動床乾燥機で混合及び乾燥を行うことは特に有利である。
【0089】
好ましい表面後架橋温度は、100から250℃、好ましくは110から230℃、より好ましくは120から210℃、そして最も好ましくは150から190℃の範囲である。反応ミキサー又は乾燥機におけるこの温度での好ましい滞留時間は、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分、最も好ましくは少なくとも30分、そして通常は最大で60分である。
【0090】
続いて、表面後架橋ポリマー粒子を再び分類することができ、過度に小さい及び/又は過度に大きいポリマー粒子が除去され、プロセスに再利用される。
【0091】
特性をさらに改善するために、表面後架橋ポリマー粒子はコーティング又は再加湿され得る。
【0092】
再加湿は好ましくは30から80℃で、より好ましくは35から70℃で、最も好ましくは40から60℃で行われる。過度に低い温度では、超吸収性ポリマー粒子は塊を形成する傾向があり、より高い温度では、水が既に顕著な程度まで蒸発する。再加湿に使用される水の量は、好ましくは1から10重量%、より好ましくは2から8重量%、そして最も好ましくは3から5重量%である。再加湿は、ポリマー粒子の機械的安定性を高め、静電気荷電の傾向を低下させる。
【0093】
自由膨潤速度及び食塩水流動伝導率(SFC)を改善するための適当なコーティングは、例えば無機不活性物質、例えば水不溶性金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマー、及び二価又は多価金属カチオンである。ダスト結合(dust binding)に適したコーティングは、例えばポリオールである。ポリマー粒子の望ましくない固化傾向を打ち消すための適当なコーティングは例えば、ヒュームドシリカ、例えばAerosil(登録商標)200(Evonik Industries AG、エッセン、独国)、又は沈降シリカ、例えばSipernat(登録商標)D17(Evonik Industries AG、エッセン、独国)、及び界面活性剤、例えばSpan(登録商標)20(Merck KGaA、ダルムシュタット、独国)である。
【0094】
本開示の方法はまた、超吸収性ポリマーの化学組成に関する追加の情報、例えば残留アクリル酸又はHEONON、1,2-プロパンジオール又は1,3-プロパンジオールのような溶媒、又は抽出物の濃度を取得するためにも使用され得る。
【0095】
超吸収性ポリマー粒子中の残留モノマー(ReMo)含有量は、EDANA試験方法番号WSP210.2(04)「Determination of the Amount of Residual Monomers in Superabsorbent Materials」に従って決定される。
【0096】
本開示の別の態様は、超吸収性ポリマーの製造プロセスを操作するための、本開示の方法によって得られる超吸収性ポリマーの物理的性質の予測値の使用である。本開示の方法によって得られた超吸収性ポリマーの物理的性質、例えば性能パラメーターの予測値は、製造プロセスを操作するため、すなわちプロセスパラメーター又はプロセスステップをそれぞれ、例えば重合ステップにおける架橋剤の濃度を変えることによって、又は表面架橋剤の濃度を変えることによって、又はプロセス操作パラメーターを最適化することによって、制御及び最適化するために使用され得る。最適化された生成物の性能をもたらし、一貫した生成物の品質、すなわち生成物の性能における、より少ない変動を保証するフィードバックループが確立される。
【0097】
本開示はまた、本開示の方法を実施するように構成されたソフトウェア製品も提供する。一実施形態では、ソフトウェア製品は、超吸収性ポリマーの製造のためのプラントにおいて、例えば、そこに統合された及び/又はそれに接続されたコンピューティングユニット(コンピュータ)において実装されるコンピュータプログラムである。
【0098】
さらなる実施形態によれば、ソフトウェア製品はコンピューティングデバイスのメモリにロードされ、コンピューティングデバイスの少なくとも1つのプロセッサによって実行される場合、上記のコンピュータに実装される方法のステップを実行するコンピュータプログラム製品である。
【0099】
ソフトウェア製品、すなわちコンピュータプログラム製品は、スタンドアロンユニットであるか、又は例えばインターネット若しくはイントラネットなどのネットワークを介して中央コンピュータと通信する1つ以上のリモート端末若しくはデバイスを含むことができるコンピュータシステムと共に使用され又は当該コンピュータシステムに組み込まれ得る。したがって、本明細書に記載のコンピュータ又はプロセッサ及び関連するコンポーネントは、ローカルコンピュータシステム又はリモートコンピュータ又はオンラインシステム又はそれらの組み合わせの一部であり得る。任意のデータベース及びソフトウェア製品、すなわち本明細書に記載のコンピュータプログラム製品は、コンピュータの内部メモリ又は非一時的なコンピュータ可読媒体に格納され得る。
【0100】
本開示はさらに、超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質を予測するためのコンピュータシステムであって、少なくとも以下:
- 超吸収性ポリマーのラマンスペクトルにアクセスして読み取るように構成されたインターフェースコンポーネント、
- モデルを実装し、分光分析データから物理的性質の値を決定するモデルの入力として、インターフェースコンポーネントを介して提供されるラマンスペクトルを使用するように構成されており、モデルが回帰アルゴリズムに基づく、プロセッサユニット
を含むコンピュータシステムを提供する。
【0101】
一実施形態では、回帰アルゴリズムは部分最小二乗(PLS)回帰アルゴリズムである。別の実施形態では、回帰アルゴリズムはリッジ回帰に基づく。さらに別の実施形態では、回帰アルゴリズムは弾性ネット回帰アルゴリズムである。
【0102】
一実施形態によれば、システムは有線及び/又は無線通信接続を介してラマン分光計に結合され、インターフェースコンポーネントを介してアクセスしてラマン分光計から少なくとも部分的に自動的にラマンスペクトルを読み取るように構成される。このシステムは、超吸収性ポリマーの製造のためのプラントに結合、又はそれぞれのプラントに統合され得る。
【0103】
さらなる実施形態によれば、システムは超吸収性ポリマーの製造プロセスにおいてインラインで分光分析データから物理的性質の値を決定するように構成される。
【0104】
システムは、複数の測定されたラマンスペクトルと、広い範囲の物理的性質の値をカバーする複数の超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質の測定値を少なくとも一時的に保存するデータベースをさらに含み、システムが、保存された測定ラマンスペクトルと少なくとも1つの物理的性質の測定値とによりモデルをトレーニングするようにさらに構成されていてもよい。
【0105】
システムはさらに、新たに測定されたラマンスペクトルと、超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質の新たに測定された値によりモデルを繰り返しトレーニングすることにより、モデルを繰り返し更新するように構成されていてもよい。
【0106】
システムは超吸収性ポリマーの少なくとも1つの物理的性質を予測するための上記方法を実行するように特に構成される。
【0107】
本開示の主題は、以下の実施例においてさらに記載及び説明される。
【実施例
【0108】
SAPを特徴付けるために使用されるラマン法
インラインとオフラインの適用の両方で、ラマン分光法を使用して超吸収性ポリマーの特徴付けを行った。オフラインの適用は、ベンチトップのRamanRXN2(商標)ハイブリッド分光計(波長785nm)(Kaiser Optical Systems,Inc.、アナーバー、ミシガン州48103、米国)を使用してセットアップした。インラインの適用も、無塵キャビネット中で冷却したRamanRXN2(商標)ハイブリッド分光計を用いてセットアップし、レーザーと検出器をPhATプローブヘッド(Kaiser Optical Systems,Inc.、アナーバー、ミシガン州48103、米国)を備えた挿入プローブに光ファイバーを通して接続した。挿入プローブは、生成物が自由に流れる製造プロセスの戦略的な位置に配置した。785nmの基本波長におけるラマンスペクトルを適用に応じて10秒から2分の時間枠で記録した。
【0109】
検出ウィンドウは150cm-1から1900cm-1の範囲であった。モデリングには200cm-1から1800cm-1までのウィンドウを使用した。
【0110】
使用したモデリングソフトウェアはPEAXACT(登録商標)(S・PACT GmbH、52064アーヘン、独国)であった。他のモデリングソフトウェア、例えばR、python、mathlabも使用され得る。実験室での半自動データ収集とプロセスでの自律測定には、S・PACTによって特別に開発されたソフトウェアソリューションを使用した。モデルはラマン分光計のソフトウェア制御によって補われる。モデルがより正確なデータでトレーニングされるため、超吸収性ポリマーのラマン予測性能は、性能データの広がりを限定する。
【0111】
この手法のオンライン能力により、プロセスの操作が大いに高速且つ効果的となる。オンラインのラマンデバイスを使用すると、プロセス中の試料の数が減り、実験室で行う必要がある作業の削減がもたらされる。生成物のリリースをオンラインのラマンスペクトルの評価に結び付けて、必要となる実験室作業をさらに削減することができるであろう。
【0112】
さらに、超吸収性ポリマーの化学的性質、例えばそれらの化学組成に関するデータを光学スペクトルから抽出することができ、これを生成物の最適化に用いることができる。自動プロセス操作は、ラマン予測を意思決定ステップに統合してプロセス設定を最適化することで達成され得る。
【0113】
図1は、ベースライン補正として線形フィット減算を行い、データ前処理としてSNV正規化ステップを行った後、超吸収性ポリマーの試料から得られた10個のラマンスペクトルのセットの例を示している。各スペクトルは、それぞれ10秒の累積を6回、合計60秒測定することにより実験室で取得した。
【0114】
図2は、予測インラインデータと、個々のデータポイント及び測定データから計算された平滑化した曲線(a)並びに超吸収性ポリマーの食塩水流動伝導率(SFC)の個々のデータポイントから計算された平滑化した曲線(b)を示している。測定データはエラーバーと共に、予測データはエラーバーなしで示されている。データは1週間の期間にわたって収集した。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。
【0115】
図3は、様々な超吸収性ポリマーの予測されたCRCと測定されたCRCの相関関係を示している。合計169の試料を評価に含めた。34から38g/gの範囲をモデル化した。図及び示されているパラメーターから明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。
【0116】
図4は、超吸収性ポリマーの製造プロセスの概略図である。製造プロセスは(1)重合、(2)ポリマーの乾燥、(3)ポリマーの粉砕、(4)ポリマーの表面後架橋(SXL)、そして最後に(5)完成品のパッケージングのステップを含む。SXL及びパッケージングのプロセスステップ中にインラインのラマンプローブによって収集された分光分析データ(6)から本開示の方法によって得られた超吸収性ポリマーの物理的性質、例えば性能パラメーターの予測値が、プロセスを操作するための任意のプロセスステップ(7)、すなわちプロセスパラメーターを制御及び最適化する際に使用され得る。
【0117】
図5は、様々な超吸収性ポリマーの加圧下吸収倍率(AAP)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。21.5から25.2g/gの範囲をモデル化した。
【0118】
図6は、様々な超吸収性ポリマーの遠心分離保持容量(CRC)について、予測されたインラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。24.5から29g/gの範囲を44の試料でモデル化した。
【0119】
図7は、様々な超吸収性ポリマーの有効容量(EFFC)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。24.5から29g/gの範囲を44の試料でモデル化した。
【0120】
図8は、様々な超吸収性ポリマーの高さ20cmでの固定高さ吸収(FHA)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。20.5から25g/gの範囲を44の試料でモデル化した。
【0121】
図9は、様々な超吸収性ポリマーの圧力下浸透性依存吸収(PDAUP)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。12から19g/gの範囲を44の試料でモデル化した。
【0122】
図10は、様々な超吸収性ポリマーの食塩水流動伝導率(SFC-1.5)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。25.5から80×10-7cm3・s/gの範囲を44の試料でモデル化した。
【0123】
図11は、様々な超吸収性ポリマーの圧力下吸収時間(absorption time under pressure)(T20)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。128から175秒の範囲を43の試料でモデル化した。
【0124】
図12は、様々な超吸収性ポリマーの吸収時間(ボルテックス)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。34から46秒の範囲を43の試料でモデル化した。
【0125】
図13は、様々な超吸収性ポリマーのかさ密度について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。0.55から0.63g/mlの範囲を44の試料でモデル化した。
【0126】
図14は、様々な超吸収性ポリマーの流速について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインで測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。7.8から9.4g/sの範囲を44の試料でモデル化した。
【0127】
図15は、様々な超吸収性ポリマーの残留モノマー含有量(ReMo)について、予測インラインデータと、実験室においてオフラインでHPLCによって測定された実際の測定データを示している。線は予測データと測定データの間の相関関数を示している。図から明らかなように、予測値は実験的に測定された値と厳密に一致している。ラマンスペクトルをインラインで測定し、各スペクトルをそれぞれ20秒の6回の累積として、よってスペクトルごとに合計2分記録した。350から430ppmの範囲を44の試料でモデル化した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15