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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】無線受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/38 20060101AFI20240304BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20240304BHJP
   H04B 17/336 20150101ALI20240304BHJP
   H04B 17/364 20150101ALI20240304BHJP
【FI】
H04L27/38 100
H04B17/318
H04B17/336
H04B17/364
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020045754
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150684
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 康英
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004118(JP,A)
【文献】特開2010-034834(JP,A)
【文献】特開2016-052001(JP,A)
【文献】国際公開第2004/107695(WO,A1)
【文献】特開2005-318533(JP,A)
【文献】特開2005-223835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/38
H04B 17/318
H04B 17/336
H04B 17/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応変調方式を用いて無線通信を行う無線通信装置を構成する無線受信装置であり、
クロック再生処理におけるクロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率を検出するクロック検出部と、
キャリア再生処理におけるキャリア位相の遅れおよび進みの発生比率を検出するキャリア検出部と、
タップ係数の更新処理における更新前後でのタップ係数の変動の大きさを検出するタップ係数検出部と、のうちの少なくとも1つを備え、
前記クロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率、前記キャリア位相の遅れおよび進みの発生比率、ならびに前記タップ係数の変動の大きさのうちの少なくとも1つに基づいて直角位相振幅変調の変調多値数を切り替える、
ことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
受信信号強度を検出するRSSI検出部と、
搬送波対雑音比を検出するC/N検出部と、のうちの少なくとも1つをさらに備え、
前記クロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率、前記キャリア位相の遅れおよび進みの発生比率、ならびに前記タップ係数の変動の大きさのうちの少なくとも1つに加えて、
前記受信信号強度と前記搬送波対雑音比とのうちの少なくとも1つに基づいて、
直角位相振幅変調の変調多値数を大きくするように切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信装置に関し、特に、伝搬路の環境に応じて変調方式を切り替える適応変調方式を用いて運用される無線通信システムにおける受信に纏わる機序としての無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル変復調無線システムにおいては、種々の伝搬路環境に応じて変調方式を切り替える適応変調方式を用いて、最適なタイミングで変調方式を切り替えることによって回線品質劣化を改善することが行われている。適応変調方式を用いたデジタル無線通信装置に関する技術として、例えば、複数の変調符号化方式の中からデータ通信に用いる変調符号化方式を適応的に選択するデータ通信装置であって、受信信号からデータ通信の回線品質を測定する品質測定手段と、前記複数の変調符号化方式の中の2つの、マルチパスおよびフェージングによる擾乱が無い、白色ガウスノイズのみによる理想条件下における回線品質に対するスループットの特性(静特性)を示す曲線の交点での回線品質の値から求まる閾値と、前記品質測定手段で測定された前記回線品質とを比較することにより、いずれかの前記変調符号化方式を選択する適応変調制御手段とを有するデータ通信装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4506979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、伝搬路環境に応じて変調方式を切り替える適応変調方式は、変調方式が高多値になるほど伝搬路環境の変動の影響を受け易くなるため、低多値から高多値に切り替えるとき、或いは高多値から低多値に切り替えるときの判定が的確に行われない場合には回線品質の低下を招くことになる。従来の適応変調では、復調器の推定C/N(即ち、搬送波対雑音比)や受信レベルといった情報から最適な変調方式を選択するようにしている。具体的には例えば特許文献1に記載の技術では、信号電力対干渉電力比に応じて変調多値数を切り替えるようにしており、フェージング環境と静特性とで最適閾値をテーブルとして予め持って制御するようにしている。しかしながら、高多値化に伴うフェージングに対する等化限界の低下や細かな受信レベルの揺らぎによる性能劣化に対応するには情報として不十分である、という問題がある。
【0005】
そこで本発明は、伝搬路の変化の予兆を検出して変調方式の切り替えを的確に行うことにより、伝搬路環境の変動に対して性能保持が困難な高多値変調方式においても性能を劣化させずに運用することが可能な、無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、適応変調方式を用いて無線通信を行う無線通信装置を構成する無線受信装置であり、クロック再生処理におけるクロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率を検出するクロック検出部と、キャリア再生処理におけるキャリア位相の遅れおよび進みの発生比率を検出するキャリア検出部と、タップ係数の更新処理における更新前後でのタップ係数の変動の大きさを検出するタップ係数検出部と、のうちの少なくとも1つを備え、前記クロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率、前記キャリア位相の遅れおよび進みの発生比率、ならびに前記タップ係数の変動の大きさのうちの少なくとも1つに基づいて直角位相振幅変調の変調多値数を切り替える、ことを特徴とする無線受信装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線受信装置において、受信信号強度を検出するRSSI検出部と、搬送波対雑音比を検出するC/N検出部と、のうちの少なくとも1つをさらに備え、前記クロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率、前記キャリア位相の遅れおよび進みの発生比率、ならびに前記タップ係数の変動の大きさのうちの少なくとも1つに加えて、前記受信信号強度と前記搬送波対雑音比とのうちの少なくとも1つに基づいて、直角位相振幅変調の変調多値数を大きくするように切り替える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
発明者の知見によると、クロックタイミングの遅れや進みの発生比率、キャリア位相の遅れや進みの発生比率、およびタップ係数の変動の大きさはいずれも、伝搬路環境が不安定な状態になっていることを示唆/暗示する指標であり、伝搬路環境の悪化を予兆する情報として用いて有用な指標である。したがって、請求項1に記載の発明や請求項2に記載の発明によれば、伝搬路の変化の予兆を検出して変調方式の切り替えを的確に行うことができ、変調方式の切り替え時の信頼性を向上させることが可能となるとともに、伝搬路環境の変動に対して性能保持が困難な高多値変調方式においても性能を劣化させずに運用することが可能となる。
【0009】
上記の発明者の知見について、伝搬環境の変動の代表的な例として直接波と遅延波との合成による周波数選択制フェージングに関して説明すると、周波数選択制フェージングによるノッチ周波数変動は合成される2波のキャリア位相差や遅延差(クロック位相差)の変化により発生する。よって、ノッチ周波数の変動が発生したときは受信したキャリア位相やクロック位相が大きく変化し、通常の機器のクロック偏差やキャリア周波数偏差の変動とは異なる挙動となるため、クロックタイミングの遅れや進みの発生比率、キャリア位相の遅れや進みの発生比率は伝搬路環境が不安定になっている指標になりうると考えられる。また、フェージングによる周波数歪を補正する等化器のタップの変動が伝搬環境の悪化の予兆になるのは明らかであると言える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態における無線通信システムの概略構成を示す図である。
図2】この発明の実施の形態に係る無線受信装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図2の無線受信装置の制御部に関係する概略構成を示す機能ブロック図である。
図4図2の無線受信装置における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、通信対象のデータの送受信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を簡略にしたり省略したりする。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態における無線通信システム100の概略構成を示す図である。
【0013】
無線通信システム100を構成する無線通信の送受信局のそれぞれに、無線通信装置101およびアンテナ102が配置される。無線通信装置101同士は、アンテナ102を介して無線回線103によって相互に接続される。
【0014】
無線通信システム100では、変調方式として、直角位相振幅変調が用いられる。なお、直角位相振幅変調は「QAM」とも表記される(QAM:Quadrature Amplitude Modulation の略)。
【0015】
図2は、この発明の実施の形態に係る無線受信装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。なお、図2に示す無線受信装置1は、無線通信システム100における無線通信装置101に対して、特に受信に纏わる機序として適用される。
【0016】
この実施の形態に係る無線受信装置1は、適応変調方式を用いて無線通信を行う無線通信装置を構成する無線受信装置であり、クロック再生処理におけるクロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率を検出するクロック検出部63と、キャリア再生処理におけるキャリア位相の遅れおよび進みの発生比率を検出するキャリア検出部64と、タップ係数の更新処理における更新前後でのタップ係数の変動の大きさを検出するタップ係数検出部65と、を備え、クロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率、キャリア位相の遅れおよび進みの発生比率、ならびにタップ係数の変動の大きさに基づいて直角位相振幅変調の変調多値数を切り替える、ようにしている。
【0017】
この実施の形態に係る無線受信装置1は、また、受信信号強度を検出するRSSI検出部61と、搬送波対雑音比を検出するC/N検出部62と、を備え、クロックタイミングの遅れおよび進みの発生比率、キャリア位相の遅れおよび進みの発生比率、ならびにタップ係数の変動の大きさのうちの少なくとも1つに加えて、受信信号強度と搬送波対雑音比とに基づいて、直角位相振幅変調の変調多値数を大きくするように切り替える、ようにしている。
【0018】
無線通信装置101同士がアンテナ102および無線回線103を介して伝送データとしての無線フレームの送受信を行う際に、或る通信において受信側になる無線通信装置101のアンテナ102が無線フレームを受信すると、アンテナ102は受信した無線フレームを電気信号へと変換して出力する。
【0019】
電気信号に変換された無線フレーム(受信波信号)は、所定の周波数帯域の信号のみを通過させる受信フィルタ(図示省略)を必要に応じて通過したうえで、低雑音増幅器11へと入力される。低雑音増幅器11は、無線フレーム(受信波信号)を増幅して出力する。
【0020】
この実施の形態に係る無線受信装置1は、大まかな構成として自動利得制御部20と、クロック再生部30と、キャリア再生部40と、等化器50と、を含む機序として構成される。
【0021】
自動利得制御部20(尚、「AGC(Automatic Gain Control の略)」とも呼ばれる)は、ATT21、電力検出器22、D/A変換器23、およびローパスフィルタ24を備える。
【0022】
ATT21は、減衰器(尚、「アッテネータ(attenuator)」とも呼ばれる)を含み、低雑音増幅器11から出力される無線フレーム(受信波信号)を、外部からの信号に応じて減衰量を調整して減衰させて出力する。ATT21における減衰量は、D/A変換器23およびローパスフィルタ24を介して供給される電力検出器22による電力の検出結果に応じて所定の制御が行われて変化する。
【0023】
電力検出器22は、帯域制限部18から出力される信号の電力を検出する。電力検出器22の出力は、D/A変換器23へと入力されてD/A変換器23においてデジタル-アナログ変換処理が施されたうえで、ローパスフィルタ24へと入力される。
【0024】
ローパスフィルタ24は、D/A変換器23から出力される、電力検出器22における検出電力のアナログ信号の入力を受け、前記検出電力のアナログ信号を平滑化したうえでATT21およびATT15に対して出力する。そして、ATT21およびATT15は、ローパスフィルタ24から出力される検出電力のアナログ信号によって制御される。
【0025】
検波回路12は、ATT21から出力される減衰処理後の無線フレーム(受信波信号)の入力を受け、前記無線フレームに対して直交復調処理を施して同相成分のベースバンド信号Iおよび直交成分のベースバンド信号Qを出力する。なお、検波回路12は同相検波回路と直交検波回路とから構成され、直交復調処理後のベースバンド信号は同相成分と直交成分とからなるが、分かり易さを考慮して、図面では、同相成分のベースバンド信号Iと直交成分のベースバンド信号Qとを1つの信号線で表す。また、ATT21から出力される減衰処理後の無線フレームは、同相検波回路および直交検波回路に対して分配供給される。
【0026】
局部発振器13は、所定の固定周波数を持つ局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を検波回路12へと出力し、検波回路12における周波数変換の基準となる信号を発振する。なお、局部発振器13から出力される局部発振信号は、図示していない分配器で2分配されたうえで、一方は0°位相の局部発振信号として同相検波回路へと供給され、他方は90°移相されたうえで90°位相の局部発振信号として直交検波回路へと供給される。
【0027】
パワーアンプ14は、検波回路12から出力される信号(具体的には、同相成分のベースバンド信号I,直交成分のベースバンド信号Q)を増幅して出力する。
【0028】
ATT15は、減衰器を含み、パワーアンプ14から出力される信号を、外部からの信号に応じて減衰量を調整して減衰させて出力する。ATT15における減衰量は、D/A変換器23およびローパスフィルタ24を介して供給される電力検出器22による電力の検出結果に応じて所定の制御が行われて変化する。
【0029】
A/D変換器16は、ATT15から出力される減衰処理後の信号(具体的には、同相成分のベースバンド信号I,直交成分のベースバンド信号Q)の入力を受け、前記信号(同相成分のベースバンド信号Iと直交成分のベースバンド信号Qとのそれぞれ)に対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(同相成分、直交成分)を出力する。
【0030】
デジタル信号処理型復調器17(図中では、DDEMと表記)は、A/D変換器16から出力される受信信号(同相成分、直交成分)の入力を受け、前記受信信号に対して復調処理を施して復調信号(同相成分、直交成分)を出力する。
【0031】
帯域制限部18は、デジタルデータ伝送における符号間干渉防止に要求される伝達特性を形成するためのフィルタであり、デジタルデータ伝送におけるROF(Roll-Off Filter の略)を用いて構成され、デジタル信号処理型復調器17から出力される復調信号(同相成分、直交成分)の入力を受け、前記復調信号に対して帯域制限処理を施して出力する。
【0032】
クロック再生部30は、クロックタイミング検出部31、ローパスフィルタ32、および電圧制御型発振器33を備える。
【0033】
クロックタイミング検出部31は、デジタル信号処理型復調器17から出力されて帯域制限部18を経た同相成分のベースバンド信号Iと直交成分のベースバンド信号Qとについて、クロック再生のクロックタイミングのずれの程度を検出して、検出したクロックタイミングのずれの程度をクロックタイミング誤差信号として出力する。なお、クロックタイミングのずれの検出の仕法は、例えばアーリーレイト方式が用いられる。
【0034】
ローパスフィルタ32は、クロックタイミング検出部31から出力されるクロック位相の誤差成分の入力を受け、前記クロック位相の誤差成分を平滑化して出力する。
【0035】
電圧制御型発振器33は、ローパスフィルタ32から出力されるクロック位相の誤差成分によって制御され、0系の無線フレームと1系の無線フレームとで位相同期したクロックをA/D変換器16のクロック入力端子に対して入力する。
【0036】
キャリア再生部40は、複素乗算回路41、キャリア位相誤差検出部42、ループフィルタ43、および数値制御発振器44を備える。
【0037】
複素乗算回路41は、A/D変換器16から出力されてデジタル信号処理型復調器17および帯域制限部18を経て入力されるデジタル信号の復調信号(同相成分、直交成分)と、数値制御発振器44から出力される局部発振信号とを乗算して混合処理し、前記デジタル信号の復調信号(同相成分と直交成分とのそれぞれ)をベースバンド帯の復調信号(同相成分、直交成分)に周波数変換する。複素乗算回路41には、周波数変換キャリアとして、数値制御発振器44から出力される局部発振信号が供給される。
【0038】
キャリア位相誤差検出部42は、誤差計算部56から出力される、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相誤差の入力を受け、理想シンボルと受信シンボルとの間のキャリア位相の誤差成分を検出し、検出したキャリア位相の誤差成分をループフィルタ43に対して出力する。なお、キャリア位相の誤差成分の検出の仕法は、特定の手法に限定されるものではなく、理想シンボルと受信シンボルとの間のキャリア位相の差を特定/計算することができる手法の中から適当な手法が適宜選択される。
【0039】
ループフィルタ43は、キャリア位相誤差検出部42から出力されるキャリア位相の誤差成分の入力を受け、前記キャリア位相の誤差成分を平均化したうえで数値制御発振器44の周波数制御端子に対して出力する。
【0040】
数値制御発振器44(尚、「NCO(Numerical Controlled Oscillator の略)」とも呼ばれる)は、ループフィルタ43で平均化されたキャリア位相の誤差成分に対応するキャリア再生基準信号(局部発振信号)を生成し、生成したキャリア再生基準信号を複素乗算回路41へと出力する。
【0041】
等化器50は、FF等化部51、FB等化部52、タップ更新部53、加算器54、シンボル判定部55、および誤差計算部56を備える。
【0042】
FF等化部51は、複素乗算回路41から出力される周波数変換された復調信号に対してフィードフォワード等化を適用するための仕組みであり、すなわちセンタータップからみて現在あるいは未来のデータを合成するタップ(フィードフォワードタップ)であり、タップ係数可変のトランスバーサルフィルタを用いて構成され、フィードフォワード等化器として機能する(FF:Feed Forward の略)。FF等化部51は、タップ更新部53から出力されるタップ係数に従って等化処理を行う。
【0043】
FB等化部52は、デジタルサンプルに対してフィードバック等化を適用するための仕組みであり、すなわちセンタータップからみて過去のデータを合成するタップ(フィードバックタップ)であり、タップ係数可変のトランスバーサルフィルタを用いて構成され、シンボル判定部55の判定結果を受けるフィードバック等化器として機能する(FB:Feed Back の略)。FB等化部52は、タップ更新部53から出力されるタップ係数に従って等化処理を行う。
【0044】
加算器54は、FF等化部51の出力とFB等化部52の出力とを足し合わせる機能を備える。
【0045】
シンボル判定部55は、加算器54からの出力についてシンボル判定を行う機能を備える。
【0046】
誤差計算部56は、シンボル判定部55から出力される信号について、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相誤差を計算する機能を備える。誤差計算部56は、具体的には減算器によって構成される。
【0047】
タップ更新部53は、FF等化部51のタップ係数およびFB等化部52のタップ係数を計算・更新し、前記計算・更新したタップ係数をFF等化部51とFB等化部52とのそれぞれに対して出力する。タップ更新部53は、下記の数式1で表されるLMSアルゴリズムを適応アルゴリズムとして用いてタップ係数の計算・更新処理を行う(LMS:Least Mean Squares の略)。
(数1) h(n+1)=h(n)+μenx(n)
ここに、h(n+1):時刻n+1のタップ係数ベクトル
h(n):時刻nのタップ係数ベクトル
μ:ステップサイズパラメータ
n:理想シンボルと受信シンボルとの間の誤差
x(n):入力信号
【0048】
数式1における、誤差enは誤差計算部56によって計算されてタップ更新部53へと入力され、入力信号x(n)は複素乗算回路41から出力されてタップ更新部53へと入力される。また、数式1におけるステップサイズパラメータμは、LMSアルゴリズムによる係数の更新量を決定づけて適応動作の収束速度と推定精度との間のバランスを調節するパラメータであり、μ>0である。この発明の説明では、LMSアルゴリズムにおけるステップサイズパラメータであって、等化処理において用いられるタップ係数を計算し更新する際のステップサイズパラメータのことを単に「ステップサイズ」と呼ぶ。
【0049】
復号部19は、シンボル判定部55から出力される信号(同相成分と直交成分とのそれぞれ)に対して復号処理を施し、復号化したデータ(並列復調データ)を出力する。なお、無線通信システム100において用いられる復号方式は、特定の方式には限定されない。
【0050】
復号部19から出力される復号処理後のデータは、例えば、さらに並直列変換されて1系列の復調データとされるなどした上で、データ回線終端装置(データ通信装置やデータ回線装置と呼ばれる機器を含む)へと入力される。
【0051】
ここで、無線通信装置101は、伝搬路環境に応じて、無線フレームの変調方式のパラメータ、具体的には直角位相振幅変調の変調多値数の切り替えを行う(延いては、伝送容量を変更する)適応変調方式によって通信を行う。無線通信装置101は、無線フレームの変調方式を切り替える適応変調として、直角位相振幅変調の変調多値数を例えば4から4096までの範囲のうちのいくつかの変調多値数で段階的に切り替えながら、データ伝送を行う。無線通信装置101は、あくまで一例として挙げると、具体的には例えば16QAM、1024QAM、および4096QAMの中からいずれかを選択しながら、データ伝送を行う。
【0052】
無線通信装置101は、例えば、フェージングが発生していないなどで伝搬路の状態が良好であるときには変調多値数を大きくして(例えば、4096に設定して)伝送容量を拡大させ、また、フェージングの影響があるものの影響の程度は大きくないなどで伝搬路の状態が中庸である(即ち、特別良好ではないものの特別不良でもない)ときには変調多値数を中位にして(例えば、1024に設定して)伝送容量と伝送品質とのバランスをとり、さらに、フェージングの影響が大きいなどで伝搬路の状態が不良であるときには変調多値数を小さくして(例えば、16に設定して)伝送容量を縮小させる。
【0053】
無線受信装置1は、直角位相振幅変調の変調多値数の切り替えを制御して適応変調を運用するための構成として制御部60を有するとともに、適応変調に必要な情報を収集するための構成としてRSSI検出部61、C/N検出部62、クロック検出部63、キャリア検出部64、およびタップ係数検出部65を有する(図2図3参照)。
【0054】
RSSI検出部61は、自動利得制御部20のローパスフィルタ24から出力される信号(即ち、電力検出器22における検出電力に相当するアナログ信号)の入力を受け、前記信号について受信信号強度を検出する(尚、RSSI:Received Signal Strength Indicator の略)。
【0055】
C/N検出部62は、等化器50の誤差計算部56から出力される信号(即ち、理想シンボルと受信シンボルとの間の位相誤差に相当する信号)の入力を受け、前記信号についてC/N(即ち、搬送波対雑音比)を検出する。
【0056】
クロック検出部63は、クロック再生部30のクロックタイミング検出部31から出力されるクロックタイミング誤差信号(即ち、クロック再生のクロックタイミングのずれの程度に相当する信号)の入力を受け、前記クロックタイミング誤差信号について、クロック再生処理におけるクロックタイミングの遅れや進みの発生比率を計算する。
【0057】
クロックタイミングの遅れや進みの発生比率は、分母をシンボル数とするとともに、分子を前記分母のシンボル数の範囲における「遅れ」検出数と「進み」検出数との差の絶対値とした値として計算される。発明者の知見によると、クロック再生処理における「遅れ」検出数と「進み」検出数との差は伝搬路環境の悪化を予兆する情報として用いて有用な指標であり、「遅れ」検出数と「進み」検出数との差が大きいときにフェージング変動の予兆があると判断される。
【0058】
キャリア検出部64は、キャリア再生部40のキャリア位相誤差検出部42から出力されるキャリア位相の誤差成分(即ち、理想シンボルと受信シンボルとの間のキャリア位相の誤差成分)の入力を受け、前記キャリア位相の誤差成分について、キャリア再生処理におけるキャリア位相の遅れや進みの発生比率を計算する。
【0059】
キャリア位相の遅れや進みの発生比率は、分母をシンボル数とするとともに、分子を前記分母のシンボル数の範囲における「遅れ」検出数と「進み」検出数との差の絶対値とした値として計算される。発明者の知見によると、キャリア再生処理における「遅れ」検出数と「進み」検出数との差は伝搬路環境の悪化を予兆する情報として用いて有用な指標であり、「遅れ」検出数と「進み」検出数との差が大きいときにフェージング変動の予兆があると判断される。
【0060】
タップ係数検出部65は、等化器50のタップ更新部53から出力されるFF等化部51のタップ係数およびFB等化部52のタップ係数の入力を受け、前記タップ係数について、タップ係数の更新処理における更新前後でのタップ係数の変動の大きさを計算する。
【0061】
更新前後でのタップ係数の変動の大きさは、更新前のタップ係数と更新後のタップ係数との差の絶対値として計算される。発明者の知見によると、タップ係数の更新処理における更新前のタップ係数と更新後のタップ係数との差は伝搬路環境の悪化を予兆する情報として用いて有用な指標であり、更新前のタップ係数と更新後のタップ係数との差が大きいときにフェージング変動の予兆があると判断される。
【0062】
次に、上記のような構成の無線受信装置1の動作や作用などについて、図4も参照しながら説明する。
【0063】
まず、送信側の無線通信装置101から送信された無線フレームを無線回線103を介して受信側の無線通信装置101が受信すると、受信側の無線通信装置101において、無線受信装置1の自動利得制御部20によって受信波信号の利得の制御処理が行われ、また、クロック再生部30によってクロックの再生処理が行われるとともに、キャリア再生部40によってキャリアの再生処理が行われ、さらに、等化器50によってタップ係数の更新処理が行われる(ステップS0)。
【0064】
上記の各処理が行われる際に、RSSI検出部61は受信信号強度RSSを検出して制御部60へと出力し、C/N検出部62は搬送波対雑音比C/Nを検出して制御部60へと出力する。また、クロック検出部63はクロック再生処理におけるクロックタイミングの遅れや進みの発生比率(「クロックタイミングのずれ発生比率CTP」と呼ぶ)を計算して制御部60へと出力し、キャリア検出部64はキャリア再生処理におけるキャリア位相の遅れや進みの発生比率(「キャリア位相のずれ発生比率CPP」と呼ぶ)を計算して制御部60へと出力し、さらに、タップ係数検出部65はタップ係数の更新処理における更新前後でのタップ係数の変動の大きさ(「タップ係数の変動量TCA」と呼ぶ)を計算して制御部60へと出力する。
【0065】
制御部60は、RSSI検出部61およびC/N検出部62から出力される情報に加えて、クロック検出部63、キャリア検出部64、およびタップ係数検出部65から出力される情報を用いて、直角位相振幅変調の変調多値数の切り替えを制御して、適応変調方式によって通信を行う。
【0066】
制御部60は、具体的には、まず、クロック検出部63から出力されるクロックタイミングのずれ発生比率CTPが第1のクロック閾値CT1以上であるか否か、キャリア検出部64から出力されるキャリア位相のずれ発生比率CPPが第1のキャリア閾値CP1以上であるか否か、および、タップ係数検出部65から出力されるタップ係数の変動量TCAが第1のタップ係数閾値TC1以上であるか否かを判断する(ステップS1)。
【0067】
ここで、クロックタイミングのずれ発生比率CTP、キャリア位相のずれ発生比率CPP、およびタップ係数の変動量TCAはいずれも、発明者の知見によると、伝搬路環境が不安定な状態になっていることを示唆/暗示する指標であり、伝搬路環境の悪化を予兆する情報として用いて有用な指標である。
【0068】
上記の発明者の知見も踏まえ、第1のクロック閾値CT1は、伝搬路環境が安定しているか否かを判断するための、延いては伝搬路環境が悪化するか否かを判断するための閾値であり、特定の値に限定されるものではなく、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機における実際の値の挙動が確認されるなどした上で、適宜設定される。第1のクロック閾値CT1は、例えば、フェージングが発生しているなどで伝搬路の状態が不安定になっていると考えられるときの、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機におけるクロックタイミングのずれ発生比率の実際の値に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0069】
第1のキャリア閾値CP1および第1のタップ係数閾値TC1も同様に、伝搬路環境が安定しているか否かを判断するための、延いては伝搬路環境が悪化するか否かを判断するための閾値であり、特定の値に限定されるものではなく、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機における実際の値の挙動が確認されるなどした上で、それぞれ適宜設定される。第1のキャリア閾値CP1および第1のタップ係数閾値TC1は、例えば、フェージングが発生しているなどで伝搬路の状態が不安定になっていると考えられるときの、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機におけるキャリア位相のずれ発生比率の実際の値やタップ係数の変動量の実際の値に基づいてそれぞれ設定されるようにしてもよい。
【0070】
そして、クロックタイミングのずれ発生比率CTP、キャリア位相のずれ発生比率CPP、およびタップ係数の変動量TCAの3つの指標のうちの少なくとも1つが各々に対応して設定されている第1の閾値CT1,CP1,TC1以上である場合は(ステップS1:Yes)、制御部60は、直角位相振幅変調の変調多値数を小さくすることを決定する(ステップS2)。なお、直角位相振幅変調の変調多値数が、すでに、予め設定されている範囲の最小の変調多値数である場合には、最小の変調多値数のまま維持される。
【0071】
直角位相振幅変調の変調多値数を小さくすることを決定した無線通信装置101は、例えば、通信の相手方となる無線通信装置101に対して、通信で用いる直角位相振幅変調の変調多値数を通知するための制御情報を送信したりなどする。そのうえで、制御部60は、直角位相振幅変調の変調多値数の切り替え制御の処理手順をステップS1の処理に戻す。
【0072】
一方、クロックタイミングのずれ発生比率CTP、キャリア位相のずれ発生比率CPP、およびタップ係数の変動量TCAの3つの指標のいずれもが各々に対応して設定されている第1の閾値CT1,CP1,TC1未満である場合は(ステップS1:No)、制御部60は、続けて、RSSI検出部61から出力される受信信号強度RSSが信号強度閾値RST以上であるか否か、および、C/N検出部62から出力される搬送波対雑音比C/NがC/N閾値CNT以上であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0073】
信号強度閾値RSTやC/N閾値CNTは、瞬時の伝搬路環境が安定しているか否かを判断するための閾値であり、特定の値に限定されるものではなく、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機における実際の値が確認されるなどした上で、それぞれ適宜設定される。信号強度閾値RSTは、例えば、フェージングが発生していないなどで伝搬路の状態が良好であると考えられるときの、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機における受信信号強度の実際の値に基づいて設定されるようにしてもよい。また、C/N閾値CNTは、例えば、フェージングが発生していないなどで伝搬路の状態が良好であると考えられるときの、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機におけるC/N(搬送波対雑音比)の実際の値に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0074】
そして、受信信号強度RSSの値が信号強度閾値RST未満であったり搬送波対雑音比C/Nの値がC/N閾値CNT未満であったりする場合は(ステップS3:No)、制御部60は、直角位相振幅変調の変調多値数の切り替え制御の処理手順をステップS1の処理に戻す。
【0075】
一方、受信信号強度RSSの値が信号強度閾値RST以上であるとともに搬送波対雑音比C/Nの値がC/N閾値CNT以上である場合は(ステップS3:Yes)、制御部60は、続けて、クロック検出部63から出力されるクロックタイミングのずれ発生比率CTPが第2のクロック閾値CT2以下であるか否か、キャリア検出部64から出力されるキャリア位相のずれ発生比率CPPが第2のキャリア閾値CP2以下であるか否か、および、タップ係数検出部65から出力されるタップ係数の変動量TCAが第2のタップ係数閾値TC2以下であるか否かを判断する(ステップS4)。
【0076】
上記した発明者の知見も踏まえ、第2のクロック閾値CT2は、伝搬路環境が安定しているか否かを判断するための、延いては伝搬路環境が悪化するか否かを判断するための閾値であり、特定の値に限定されるものではなく(但し、CT2≦CT1)、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機における実際の値の挙動が確認されるなどした上で、適宜設定される。第2のクロック閾値CT2は、例えば、フェージングが発生していないなどで伝搬路の状態が安定していると考えられるときの、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機におけるクロックタイミングのずれ発生比率の実際の値に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0077】
第2のキャリア閾値CP2および第2のタップ係数閾値TC2も同様に、伝搬路環境が安定しているか否かを判断するための、延いては伝搬路環境が悪化するか否かを判断するための閾値であり、特定の値に限定されるものではなく(但し、CP2≦CP1、TC2≦TC1)、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機における実際の値の挙動が確認されるなどした上で、それぞれ適宜設定される。第2のキャリア閾値CP2および第2のタップ係数閾値TC2は、例えば、フェージングが発生していないなどで伝搬路の状態が安定していると考えられるときの、無線受信装置1を含む無線通信装置101実機におけるキャリア位相のずれ発生比率の実際の値やタップ係数の変動量の実際の値に基づいてそれぞれ設定されるようにしてもよい。
【0078】
ここで、第1のクロック閾値CT1と第2のクロック閾値CT2とは、異なる値に設定されるようにしてもよく、或いは、同じ値に設定されるようにしてもよい。第1のクロック閾値CT1と第2のクロック閾値CT2とが同じ値に設定される場合には、ステップS1の処理における条件が、クロックタイミングのずれ発生比率CTPが第1のクロック閾値CT1より大きいか否か、とされるか、或いは、ステップS4の処理における条件が、クロックタイミングのずれ発生比率CTPが第2のクロック閾値CT2(=CT1)未満であるか否か、とされる。第1のキャリア閾値CP1と第2のキャリア閾値CP2とについても同様であり、また、第1のタップ係数閾値TC1と第2のタップ係数閾値TC2とについても同様である。
【0079】
そして、クロックタイミングのずれ発生比率CTP、キャリア位相のずれ発生比率CPP、およびタップ係数の変動量TCAの3つの指標のいずれもが各々に対応して設定されている第2の閾値CT2,CP2,TC2以下である場合は(ステップS4:Yes)、制御部60は、直角位相振幅変調の変調多値数を大きくすることを決定する(ステップS5)。なお、直角位相振幅変調の変調多値数が、すでに、予め設定されている範囲の最大の変調多値数である場合には、最大の変調多値数のまま維持される。
【0080】
直角位相振幅変調の変調多値数を大きくすることを決定した無線通信装置101は、例えば、通信の相手方となる無線通信装置101に対して、通信で用いる直角位相振幅変調の変調多値数を通知するための制御情報を送信したりなどする。そのうえで、制御部60は、直角位相振幅変調の変調多値数の切り替え制御の処理手順をステップS1の処理に戻す。
【0081】
一方、クロックタイミングのずれ発生比率CTP、キャリア位相のずれ発生比率CPP、およびタップ係数の変動量TCAのうちの少なくとも1つが各々に対応して設定されている第2の閾値CT2,CP2,TC2よりも大きい場合は(ステップS4:No)、制御部60は、直角位相振幅変調の変調多値数の切り替え制御の処理手順をステップS1の処理に戻す。
【0082】
発明者の知見によると、クロックタイミングの遅れや進みの発生比率、キャリア位相の遅れや進みの発生比率、およびタップ係数の変動の大きさはいずれも、伝搬路環境が不安定な状態になっていることを示唆/暗示する指標であり、伝搬路環境の悪化を予兆する情報として用いて有用な指標である。したがって、この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、伝搬路の変化の予兆を検出して変調方式の切り替えを的確に行うことができ、変調方式の切り替え時の信頼性を向上させることが可能となるとともに、伝搬路環境の変動に対して性能保持が困難な高多値変調方式においても性能を劣化させずに運用することが可能となる。
【0083】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。具体的には、上記の実施の形態に係る無線受信装置1を構成する自動利得制御部20、クロック再生部30、キャリア再生部40、および等化器50の具体的な回路構成は上記の実施の形態における構成には限定されない。
【0084】
また、上記の実施の形態ではクロックタイミングのずれ発生比率CTP、キャリア位相のずれ発生比率CPP、およびタップ係数の変動量TCAの3つの指標が用いられるようにしているが、前記3つの指標のうちの1つのみが用いられるようにしたり2つが用いられるようにしたりしてもよい。
【0085】
また、上記の実施の形態では直角位相振幅変調の変調多値数を大きくすることを決定する(ステップS5)際に受信信号強度RSSが信号強度閾値RST以上であるか否か、および、搬送波対雑音比C/NがC/N閾値CNT以上であるか否かが判断される(ステップS3)ようにしているが、この発明はそのような処理手順に限定されるものではなく、直角位相振幅変調の変調多値数を大きくするか否かを判断する際に受信信号強度RSSと搬送波対雑音比C/Nとのうちの一方のみについて各々に対応して設定されている閾値RST,CNT以上であるか否かが判断されるようにしてもよく、さらに言えば、直角位相振幅変調の変調多値数を大きくするか否かを判断する際には受信信号強度RSSおよび搬送波対雑音比C/Nは考慮されないようにしてもよい。すなわち、上記の実施の形態におけるステップS3の処理はこの発明において必須の処理手順ではなく、ステップS1の処理において「No」の場合に続いてステップS4の処理が行われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 無線受信装置
11 低雑音増幅器
12 検波回路
13 局部発振器
14 パワーアンプ
15 ATT
16 A/D変換器
17 デジタル信号処理型復調器
18 帯域制限部
19 復号部
20 自動利得制御部
21 ATT
22 電力検出器
23 D/A変換器
24 ローパスフィルタ
30 クロック再生部
31 クロックタイミング検出部
32 ローパスフィルタ
33 電圧制御型発振器
40 キャリア再生部
41 複素乗算回路
42 キャリア位相誤差検出部
43 ループフィルタ
44 数値制御発振器
50 等化器
51 FF等化部
52 FB等化部
53 タップ更新部
54 加算器
55 シンボル判定部
56 誤差計算部
60 制御部
61 RSSI検出部
62 C/N検出部
63 クロック検出部
64 キャリア検出部
65 タップ係数検出部
100 無線通信システム
101 無線通信装置
102 アンテナ
103 無線回線
図1
図2
図3
図4