(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】表装システム
(51)【国際特許分類】
E04F 13/18 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
E04F13/18 A
(21)【出願番号】P 2020050241
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000148151
【氏名又は名称】株式会社川島織物セルコン
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【氏名又は名称】堀家 和博
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】吉留 美津久
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-328522(JP,A)
【文献】特開平07-229213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の枠材と、前記複数の枠材間で張設された可撓性表装材とで、下地面を覆う表装システムであって、
前記下地面と可撓性表装材との間に、クッション層材を有し、
前記クッション層材は、所定密度の低密度層材と、前記低密度層材より密度が高い高密度層材を少なくとも備え、
前記高密度層材が、前記低密度層材より下地面側に位置していることを特徴とする表装システム。
【請求項2】
前記高密度層材は、その密度が
80kg/m
3
以上120kg/m
3
以下であることを特徴とする請求項1に記載の表装システム。
【請求項3】
前記低密度層材は、その密度が0kg/m
3
より大きく50kg/m
3
未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表装システム。
【請求項4】
前記高密度層材と前記低密度層材との密度差は、10kg/m
3
以上200kg/m
3
以下であることを特徴とする請求項1に記載の表装システム。
【請求項5】
前記下地面は、所定の一方向に沿って湾曲しており、
前記高密度層材は、複数
であり、
前記複数の高密度層材は、
それらの長手方向視の断面それぞれが略台形状であり、
前記複数の高密度層材は、それらの略台形状断面の下底側それぞれが前記可撓性表装材側に位置しながら、隣り合う前記下底側同士が略接するように配置されていることを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の表装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の枠材と、前記複数の枠材間で張設された可撓性表装材とで、下地面を覆う表装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁取付部材の使用方法が知られている(特許文献1)。
この壁取付部材の使用方法は、建築物の壁面に取り付けられる基板部と、前記基板部から立上がるよう形成された一対の立設板部とを備え、前記立設板部の一方の先端部をほぼUターン状に折り曲げて他方の立設板部の先端部に弾性的に押圧して接触させ、前記一対の立設板部の先端部の断面に各々波形の凹凸面を形成してこの一対の凹凸面の互いの凹部と凸部を噛み合わせて接触するようにした壁取付部材を前記壁面に少なくとも一対互いに対向させて取り付け、一の前記壁取付部材と他の前記壁取付部材の間の壁面に壁取付部材の高さと同じ位の厚さの機能材料を固定し、一の前記壁取付部材の先端部の互いに押圧して接触させた一対の波形の凹凸面の間に壁面カバーシート材の一端部を挾んで係止し、他の前記壁取付部材の先端部の互いに押圧して接触させた一対の波形の凹凸面の間に前記壁面カバーシート材の他端部を挾んで係止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された壁取付部材の使用方法は、一の壁取付部材と他の壁取付部材の間の壁面に固定される機能材料が、1つの部材で構成されているため、当該機能材料が、所定期間の使用によってヘタリを生じ易い問題がある。
一方、ヘタリ抑制のために、特許文献1の壁取付部材の使用方法において、硬い素材を用いたとしても、当該機能材料が1つの部材で構成されているため、当然、使用者が触れた最初の感触は硬いものとなる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、下地面と可撓性表装材の間で低密度層材より下地面側に高密度層材を備えることによって、「ヘタリ抑制」と「最初の感触の向上」等を両立できる表装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表装システム1は、複数の枠材と、前記複数の枠材間で張設された可撓性表装材とで、下地面を覆う表装システムであって、前記下地面と可撓性表装材との間に、クッション層材を有し、前記クッション層材は、所定密度の低密度層材と、前記低密度層材より密度が高い高密度層材を少なくとも備え、前記高密度層材が、前記低密度層材より下地面側に位置していることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る表装システム1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記高密度層材は、その密度が80kg/m
3
以上120kg/m
3
以下である点にある。
【0008】
本発明に係る表装システム1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記低密度層材は、その密度が0kg/m
3
より大きく50kg/m
3
未満である点にある。
その他、表装システム1は、前記クッション層材は、ガラス繊維を含んでいても良い。
【0009】
本発明に係る表装システム1の第4の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記高密度層材と前記低密度層材との密度差は、10kg/m
3
以上200kg/m
3
以下である点にある。
その他、表装システム1は、前記下地面は、所定の一方向に沿って湾曲しており、前記高密度層材は、複数で且つ略短冊状であり、前記複数の高密度層材は、それらの短手方向それぞれが前記下地面の湾曲した一方向に略沿いながら、並列して配置されていても良い。
【0010】
本発明に係る表装システム1の第5の特徴は、上記第1~4の特徴に加えて、前記下地面は、所定の一方向に沿って湾曲しており、前記高密度層材は、複数であり、前記複数の高密度層材は、それらの長手方向視の断面それぞれが略台形状であり、前記複数の高密度層材は、それらの略台形状断面の下底側それぞれが前記可撓性表装材側に位置しながら、隣り合う前記下底側同士が略接するように配置されている点にある。
【0011】
これらの特徴により、下地面Sと可撓性表装材3の間のクッション層材4において、低密度層材5より、高密度層材6を下地面S側に設けることで、特許文献1とは異なり、所定期間の使用によっても、高密度層材6が設けられている分だけ、ヘタリを生じ難い。
これと同時に、特許文献1とは異なり、低密度層材5が設けられている分だけ、使用者が触れた最初の感触を柔らかくすることが出来ると言える。
つまり、「ヘタリ抑制」と「最初の感触の向上」の両立が実現する。
【0012】
又、高密度層材6の密度を50kg/m
3
以上とすることで、所定期間の使用によっても、更なる「ヘタリ抑制」を図れる。
更に、クッション層材4を全てガラス繊維としたり、少なくともガラス繊維を含ませることで、仮に、高密度層材が樹脂で固められる等しても、ガラス繊維を含ませた分だけ、防火性が向上すると言える。
【0013】
そして、複数の略短冊状の高密度層材6を、短手方向が下地面Sの湾曲方向に略沿わせながら並列して配置することで、たとえ下地面Sが湾曲していても、下地面Sと可撓性表装材3との間に、隙間が生じ難くなり、可撓性表装材3が筋立つ等を抑制できる。
又、複数の断面略台形状の高密度層材を、下底側が可撓性表装材3側に位置させながら、隣り合う下底側同士が略接するように配置することで、たとえ下地面Sが湾曲していても、下地面Sと可撓性表装材3との間に、更に隙間が生じ難くなり、より可撓性表装材3の筋立つ等を抑制可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表装システムによると、下地面と可撓性表装材の間で低密度層材より下地面側に高密度層材を備えることによって、「ヘタリ抑制」と「最初の感触の向上」等を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る表装システムを示す断面図であって、(a)は下地面が略平坦である場合を示し、(b)は下地面が湾曲している場合を示す。
【
図2】表装システム全体を例示する図面代用写真である。
【
図3】表装システムにおける枠材、可撓性表装材、及び、高密度層材を例示する図面代用写真である。
【
図4】表装システムにおける可撓性表装材、低密度層材、及び、高密度層材の断面等を例示する図面代用写真である。
【
図5】表装システムにおける枠材、可撓性表装材、低密度層材及び高密度層材を例示する図面代用写真である。
【
図6】表装システムにおける長尺状の把持枠材の別の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<表装システム1の全体構成>
図1~6には、本発明の実施形態に係る表装システム(以下「表装システム」)1が例示されている。
表装システム1は、後述する複数の枠材2と、これらの複数の枠材2間で張設された可撓性表装材3とで、下地面Sを覆うシステムである。
【0017】
又、表装システム1は、下地面Sと可撓性表装材3との間に、クッション層材4を有している。
以下、表装システム1が覆う下地面Sについて、まず述べる。
【0018】
<下地面S>
図1、2に示したように、下地面Sは、複数の枠材2と可撓性表装材3とで覆われる面である。
下地面Sは、屋内の柱の外周面や、部屋の壁面だけでなく、天井面や床面などでも良く、その他、ドアの表裏面や、衝立の表裏面などであっても良い。
【0019】
下地面Sは、ある一方向に沿って湾曲していても良い。
ここで、本発明における「湾曲した下地面Sが沿うある一方向」とは、例えば、下地面Sが、円柱の外周面であれば、当該円柱の周方向を意味したり、平面視で湾曲した(カーブした)廊下や部屋などの壁面が下地面Sであれば、当該平面視で湾曲した方向を意味し、その他、角柱の角部や部屋の隅が、平面視で丸みを帯びていれば(略1/4円状や略半円状等であれば)、当該平面視で略1/4円状の部分の周方向を意味する。
【0020】
このような下地面Sを覆う表装システム1は、内装システム(内装材)であるとも言える。
又、湾曲した(曲面である)下地面Sを覆う表装システム1は、「曲面表装システム」であるとも言える。
【0021】
<枠材2>
図1~6で示したように、枠材2は、上述した下地面Sを覆う部材の1つであり、複数存在している。
枠材2は、複数の当該枠材2間で、後述する可撓性表装材3を張設できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、それぞれの枠材2は、長尺状であり、少なくとも2組の長尺状の枠材2を、下地面Sに所定の距離をおいて固定しても構わない。
【0022】
長尺状の枠材2は、可撓性表装材3を把持する部材(長尺状の把持枠材)であっても良く、例えば、この長尺状の把持枠材2は、下地面Sに当接して固定する基板2aと、この基板2aから立ち上がった支板2bと、この支板2bから基板2aとは逆向きに折れ曲がって続く縁板2cと、支板2bと縁板2cによって構成されて逆L字状断面に囲まれたスペースにおいて支板2bと縁板2cの交わる角部から離れる方向に端縁が支板2b又は縁板2cから突き出た1又は複数の爪板2dを有していても構わない。尚、爪板2dは、支板2bや縁板2cに対して、断面視で斜めに突き出ていても良い。
このような長尺状の把持枠材2は、基板2aを下地面Sに当接して固定し、基板2aから隆起して下地面Sから突き出る支板2b及び縁板2cを、下地面Sと交わる(例えば、略直交する)他の下地面S、又は、下地面Sから突設した他の長尺状の把持枠材2に向かい合わせにし、縁板2c及び爪板2dと他の下地面Sとの間、又は、縁板2c及び爪板2dと他の長尺状の把持枠材2との間の隙間が構成する溝2eに、後述する可撓性表装材3の端縁を差し込んで係止しても良い。
【0023】
長尺状の枠材(把持枠材)2は、その長手方向が湾曲していても良く、この湾曲は、上述した下地面Sの湾曲に略沿っていても構わない。
尚、本発明において「長尺状の枠材2の長手方向が湾曲する」とは、長尺状の枠材2の長手方向が下地面Sの湾曲方向(例えば、円柱の周方向など)に略沿って湾曲している場合だけでなく、長尺状の枠材2が湾曲した下地面Sに略沿いつつ、当該長尺状の枠材2の長手方向が下地面Sの湾曲方向(例えば、円柱の周方向など)と交わる(交差する)方向に略沿って湾曲している場合も含む(
図2~5参照)。
湾曲した長尺状の枠材2は、湾曲しているのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、湾曲中心(湾曲内方)側に切込みを有していたり、湾曲外方側に切込みを有していたり、逆に、切込みを有さずに湾曲していても良い。
【0024】
<可撓性表装材3>
図1~6に示したように、可撓性表装材3は、上述した複数の枠材2の間で張設される部材である。尚、可撓性表装材3の表面は、表装システム1において露出する側の面(露出面)であるとも言える。
可撓性表装材3は、複数の枠材2の間で張設されるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、シート状であっても良く、シート状の可撓性表装材3は、布帛であったり、合成樹脂製のフィルムなどのシート状物などであっても構わない。
【0025】
ここで、布帛とは、織物、編物、不織布や、それらを組み合わせたものである。
可撓性表装材3が織物の場合、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織、二重織、二重織以上の多重織などであっても良い。
【0026】
可撓性表装材3が編物の場合、デンビー編(トリコット編)や、ラッシェル編、ダブルラッシェル編、バンダイク編(アトラス編)、コード編などの経編や、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編などの緯編など、それぞれ何れの組織であっても構わない。
可撓性表装材3が不織布である場合には、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布であっても良く、その他、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものであっても構わない。
【0027】
可撓性表装材3が織物や編物、不織布等の布帛である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル系繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維、その他、絹(シルク)繊維、綿繊維、麻繊維、羊毛繊維、ガラス繊維などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
又、可撓性表装材3が織物や編物、不織布等の布帛である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、20dtex以上3000dtex以下である。
【0028】
可撓性表装材3がフィルムなどのシート状物であれば、それを構成する材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂などの合成樹脂などや、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
【0029】
可撓性表装材3は、その色彩については、赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、青色系、紫色系、黒色系、白色系など何れの色調でも良く、彩度や明度についても何れの値でも構わない。カーテン生地10の模様についても、花や草木などの植物の柄や、動物の柄、幾何学模様、無地、表面凹凸等による模様など何れでも良い。
可撓性表装材3は、所望により、酸化チタン、炭酸カルシウム等の体質顔料やフィラー(充填材)を任意に付与したり、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、撥水剤、防汚剤、着色剤、香料、発泡剤等を付与しても良く、付与するタイミングも、可撓性表装材3として構成する(織成・編成等をする)前後を問わず、付与の方法も何れであっても良い。
【0030】
<クッション層材4>
図1~6に示したように、クッション層材4は、上述した可撓性表装材3と下地面Sとの間に存在する部材である。
クッション層材4は、後述する低密度層材5と高密度層材6を、少なくとも備えている。
【0031】
クッション層材4は、可撓性表装材3と下地面Sとの間に存在し、低密度層材5と高密度層材6を備えていれば、何れの素材でも良いが、例えば、繊維ウェブ(不織布など)であっても構わない。
特に、クッション層材4が不織布である場合には、上述したように、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布であっても良く、その他、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものであっても構わない。
【0032】
繊維ウェブであるクッション層材4が不織布である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル系繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維、その他、絹(シルク)繊維、綿繊維、麻繊維、羊毛繊維などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
クッション層材4は、ガラス繊維を含んでいても良く、又、クッション層材4はガラス繊維のみで構成されても構わない(この場合、クッション層材4は、グラスウールで構成されているとも言える)。
【0033】
<低密度層材5と、その密度(低密度)M
Lなど>
図1~6に示したように、低密度層材5は、上述したクッション層材4において、所定密度の層材であり、その密度(低密度)M
Lは、後述する高密度層材6の密度(高密度)M
Hより低い。
尚、本発明における密度は、嵩密度であるとも言える。
又、低密度層材5は、後述する高密度層材6より可撓性表装材3側(謂わば、上側(露出する側寄り))に位置する。
低密度層材5の素材については、上述したクッション層材4の素材と同様である。
【0034】
低密度層材5の密度MLは、高密度層材6の密度MHより低ければ、特に限定はないが、例えば、0kg/m3より大きく50kg/m3未満、好ましくは0kg/m3より大きく40kg/m3以下、更に好ましくは5kg/m3以上30kg/m3以下、より更に好ましくは10kg/m3以上25kg/m3以下(16kg/m3や19kg/m3など)であっても良い。
低密度層材5の厚みも、特に限定はないが、例えば、1mm以上50mm以下、好ましくは3mm以上40mm以下、更に好ましくは5mm以上35mm以下、より更に好ましくは7mm以上30mm以下(10mmや25mmなど)であっても良い。
【0035】
<高密度層材6、その密度(高密度)M
Hなど>
図1~6に示したように、高密度層材6は、上述したクッション層材4における層材であり、その密度(高密度)M
Hは、上述した低密度層材5の密度(低密度)M
Lより高い。
又、高密度層材6は、上述した低密度層材5より下地面S側(謂わば、下側(露出しない側寄り))に位置する。
高密度層材6の素材についても、上述したクッション層材4の素材と同様である。尚、高密度層材6が繊維ウェブ(不織布など)である場合、繊維ウェブである高密度層材6の表面を合成樹脂等で固めていても良い。
【0036】
高密度層材6の密度MHは、低密度層材5の密度MLより高ければ、特に限定はないが、例えば、50kg/m
3
以上300kg/m3以下、好ましくは60kg/m3以上200kg/m3以下、更に好ましくは70kg/m3以上150kg/m3以下、より更に好ましくは80kg/m3以上120kg/m3以下(96kg/m3など)であっても良い。
高密度層材6の厚みも、特に限定はないが、例えば、1mm以上50mm以下、好ましくは3mm以上40mm以下、更に好ましくは5mm以上30mm以下、より更に好ましくは7mm以上20mm以下(12mmなど)であっても良い。
【0037】
高密度層材6は、複数で且つ略短冊状であっても良い。
この場合、複数の略短冊状の高密度層材6は、それらの短手方向それぞれが、上述した下地面Sの湾曲した一方向に略沿いながら、並列して配置されていても良い。
【0038】
又、複数の高密度層材6は、それらの長手方向視の断面それぞれが略台形状であっても良い。
この場合、記複数で断面略台形状の高密度層材6は、それらの略台形状断面の下底(略台形状断面における一対の平行な辺(底)のうち、長い方の底)側それぞれが、上述した可撓性表装材3側(露出する側寄り)に位置しながら、隣り合う当該高密度層材6の下底側同士が略接するように配置されていても良い。
【0039】
<高密度層材6と低密度層材5の密度差ΔM>
上述した高密度層材6と低密度層材5との密度差ΔM、つまり、(高密度層材6の密度MH)-(低密度層材5の密度ML)の値も、特に限定はないが、例えば、10kg/m
3
以上200kg/m3以下、好ましくは20kg/m3以上150kg/m3以下、更に好ましくは40kg/m3以上120kg/m3以下、より更に好ましくは60kg/m3以上100kg/m3以下(77kg/m3や80kg/m3など)であっても良い。
【0040】
<試験>
本発明の試験においては、ここまで述べた表装システム1について、実施例と、比較例1、2を作成し、これら実施例、比較例1~3に対して、「ヘタリ抑制」と「最初の感触」を調べる。
まずは、実施例、比較例1~3について詳解する。
【0041】
<実施例>
実施例の表装システム1は、枠材2を上述した長尺状の把持枠材2とし、可撓性表装材3を織物とし、低密度層材5は密度MLを19kg/m3とし厚みを10mmとし、高密度層材6は密度MLを96kg/m3とし厚みを12mmとして、下地面Sと可撓性表装材3との間において、高密度層材6が低密度層材5より下地面S側に位置するように設けた。
尚、下地面Sは、円柱の周面であり、当該円柱の周方向(所定の一方向)に沿って湾曲している。
【0042】
<比較例1>
実施例1の表装システム1において、高密度層材6を、密度が19kg/m3で厚みが10mmの層材とする(謂わば、2層とも低密度層材とする、又は、低密度層材のみを有する)ことで、比較例1の表装システムとした。
【0043】
<比較例2>
実施例1の表装システム1において、低密度層材5を、密度が96kg/m3で厚みが12mmの層材とする(謂わば、2層とも高密度層材とする、又は、高密度層材のみを有する)ことで、比較例2の表装システムとした。
【0044】
<比較例3>
実施例1の表装システム1において、下地面Sと可撓性表装材3との間において、低密度層材5が高密度層材6より下地面S側に位置するように設けることで、比較例3の表装システムとした。
【0045】
試験では、上述した実施例と比較例1~3の表装システムについて、「ヘタリ抑制」と「最初の感触」を調べた結果を、以下の表1に示す。
尚、表1中の評価について詳解すれば、「ヘタリ抑制」については、所定期間の使用によって、ヘタリが生じたとき「×」とし、ヘタリが若干生じたとき「△」とし、ヘタリを生じなかったとき「○」とした。
又、表1中の評価のうち「最初の感触」については、使用者が触れた最初の感触が硬いとき「×」とし、最初の感触が若干硬いとき「△」とし、最初の感触が柔らかいとき「○」とした。
【0046】
【0047】
<試験の評価>
表1より、実施例の表装システム1のように、下地面Sと可撓性表装材3との間において、高密度層材6が低密度層材5より下地面S側に位置するように設けることで、比較例1、2の表装システムのように、低密度層材のみを有したり、高密度層材のみを有するものと比べて、「ヘタリ抑制」と「最初の感触」の評価が何れも「○」であり、「ヘタリ抑制」と「最初の感触の向上」の両立が図れていると言える。
一方、低密度層材のみを有する比較例1の表装システムは、「最初の感触」は「○」であるものの、「ヘタリ抑制」は「×」であるため、「ヘタリ抑制」と「最初の感触の向上」の両立は図れない。
又、高密度層材のみを有する比較例2の表装システムは、「ヘタリ抑制」は「○」であるものの、「最初の感触」は「×」であるため、「ヘタリ抑制」と「最初の感触の向上」の両立は図れない。
更に、下地面Sと可撓性表装材3との間において、実施例の表装システム1とは逆に、低密度層材5が高密度層材6より下地面S側に位置する比較例3の表装システムは、「ヘタリ抑制」は「△」である(下地面S側の低密度層材5の一部にヘタリが生じるだけで、可撓性表装材3側の高密度層材6全体が斜め等になるため、より影響が大きい(広面積の凹みや傾斜(つまり、ヘタリ)が生じ易い)と共に、「最初の感触」も「△」である(使用者が最初に触れるのは、やはり可撓性表装材3側の高密度層材6となる)ことから、「ヘタリ抑制」と「最初の感触の向上」の何れもが十分ではなかった。
【0048】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。表装システム1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
表装システム1が覆う下地面Sは、湾曲していなくとも(略平坦であっても)良い。
表装システム1は、上述した枠材2や可撓性表装材3、クッション層材4以外に部材を有していても良く、例えば、表装システム1で、ドア等の板状体における表裏面(表面と裏面の少なくとも一方)を覆う場合、当該覆われる板状体の端面と、覆う表装システム1(特に、枠材2)の端面を纏めてカバーする断面略コ字状の縁取材を有していても構わない。
【0049】
表装システム1は、上述した下地面Sにアタッチメント部材を介して取り付けられても良い。
表装システム1は、枠材2が長尺状の把持枠材である場合、長尺状の把持枠材2における溝2eに、可撓性表装材3の端縁を押し込んだ後、溝2eに楔材を押し込んでも良く、この楔材は、例えば、断面形状が略V字状等の2枚の板体から成る部材であったり、断面形状が略三角形状の部材であっても構わない。
【0050】
枠材2が長尺状の把持枠材である場合、この長尺状の把持枠材2は、上述した基板2aから下地面Sの反対側に向けて突出した外枠板2fも有していても良い(
図6参照)。
この場合、長尺状の把持枠材2は、支板2b及び縁板2cを、他の下地面Sや、他の長尺状の把持枠材2と向かい合わせにすることなく、縁板2c及び爪板2dと外枠板2fとの間の隙間が構成する溝2eに、後述する可撓性表装材3の端縁を差し込んで係止することとなる。
枠材2が長尺状の把持枠材である場合、この長尺状の把持枠材2における基板aは、断面形状が略U字状等の2枚の板体から成る二重構造であっても良い(
図6参照)。
尚、枠材2が長尺状の把持枠材である場合において、この長尺状の把持枠材2は、上述した外枠板2fと、基板2aの二重構造のうち、少なくとも一方を有していても良い。
【0051】
クッション層材4において、上述した低密度層材5や高密度層材6は、それぞれ1枚ずつであっても良いが、その他、低密度層材5が1枚で高密度層材6が複数枚であったり、低密度層材5が複数枚で高密度層材6が1枚であったり、低密度層材5と高密度層材6の両方が複数枚であっても構わない。
クッション層材4は、上述した低密度層材5や高密度層材6以外に、他の層材を1枚又は複数枚備えていても良く、他の層材の密度も、低密度層材5や高密度層材6の何れかと略同じが、異なっていても構わない。
クッション層材4の素材は、上述した以外に、ポリウレタン等の合成樹脂を発泡させた合成樹脂フォーム(ウレタンフォームなど)であっても良い。
【0052】
高密度層材6は、1つでも良く、この場合、形状についても、略短冊状ではなく、1つのシート状やマット状等であっても構わない。
1つ又は複数の高密度層材6は、それらの長手方向視の断面が、略台形状でなくとも良く、例えば、略矩形状や略楕円形状、略正方形状や略円形状、略三角形状などの略多角形状であっても構わない。
又、高密度層材6が複数で断面略台形状である場合、高密度層材6は、それらの略台形状断面の下底側それぞれが、上述した可撓性表装材3側(露出する側寄り)に位置するものの、隣り合う当該高密度層材6の下底側同士が略接するように配置されていなくとも良く、隣り合う当該高密度層材6の下底側同士の間に、隙間があっても構わない。
更には、高密度層材6が複数で断面略矩形状である場合、高密度層材6は、それらの略矩形状断面の短辺側それぞれが、上述した可撓性表装材3側(露出する側寄り)に位置しながら、隣り合う当該高密度層材6の短辺側の端面同士が略接するように配置されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る表装システムは、屋内の柱の外周面や、各種の部屋、廊下の壁面だけでなく、天井面や床面などの下地面を覆うものとして利用可能であり、その他、ドアの表裏面や、衝立の表裏面を含む板状体における表裏面などであったり、船舶や航空機、乗用車、鉄道車両など乗り物の内側面など、何れの下地面に対しても利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 表装システム
2 枠材
3 可撓性表装材
4 クッション層材
5 低密度層材
6 高密度層材
S 下地面