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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】乾燥装置、印刷システムおよび乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20240304BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F26B13/10 D
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 123
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020050485
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148378
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】平松 賢太
(72)【発明者】
【氏名】竹市 芳邦
(72)【発明者】
【氏名】松田 健
(72)【発明者】
【氏名】平井 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】植村 亮太
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126060(JP,A)
【文献】特開2000-329463(JP,A)
【文献】特開2013-108702(JP,A)
【文献】特開2019-119609(JP,A)
【文献】特開2005-178235(JP,A)
【文献】特表2016-525950(JP,A)
【文献】特開2015-172450(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069074(WO,A1)
【文献】特開2017-106704(JP,A)
【文献】特開2012-107792(JP,A)
【文献】特開2002-331267(JP,A)
【文献】特開2014-238191(JP,A)
【文献】特開2004-358779(JP,A)
【文献】特開2010-222090(JP,A)
【文献】特開2021-148379(JP,A)
【文献】特開2021-146662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録面および前記記録面と反対側の非記録面とを有し、前記記録面に水性インクが付着する印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送中の前記印刷媒体の前記記録面に向けて気体を噴射することで、前記印刷媒体を乾燥させる前段乾燥部と、
前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体の進行方向の前記前段乾燥部の下流側において、前記搬送部により搬送中の前記印刷媒体の前記記録面に向けて気体を噴射することで、前記印刷媒体を乾燥させる次段乾燥部と
筐体と、
排気チャンバと
を備え、
鉛直方向において、前記次段乾燥部は、前記前段乾燥部の下側に配置されており、
前記前段乾燥部は、前記印刷媒体の前記記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第1ノズルを有し、前記印刷媒体の前記記録面に向けて前記第1ノズルから気体を噴射し、
前記次段乾燥部は、前記印刷媒体の前記記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第2ノズルを有し、前記印刷媒体の前記記録面に向けて前記第2ノズルから気体を噴射し、
前記第1ノズルが噴射する気体の風速は、前記第2ノズルが噴射する気体の風速よりも低く、
前記搬送部は、前記前段乾燥部に対向する印刷媒体を搬送する前段搬送部と、前記次段乾燥部に対向する印刷媒体を搬送する次段搬送部と、を含み、
前記搬送部と、前記前段乾燥部と、前記次段乾燥部とは、前記筐体の内部に設けられ、
前記排気チャンバは、前記前段搬送部によって搬送される印刷媒体と前記次段搬送部によって搬送される印刷媒体との間に配置され、前記筐体の内部からエアを吸引して前記筐体の外部に排出する乾燥装置。
【請求項2】
前記複数の第1ノズルは、同じ風速で気体を噴射し、前記複数の第2ノズルは、同じ風速で気体を噴射する請求項に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記前段乾燥部は、前記印刷媒体の前記非記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の回転体を有し、前記回転体は、前記印刷媒体の前記非記録面に接触する周面を有して前記印刷媒体に従動して回転する請求項1または2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記前段乾燥部では、前記第1ノズルと前記回転体とが前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に千鳥状に並ぶ請求項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記次段乾燥部は、前記印刷媒体の前記非記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第3ノズルを有し、前記印刷媒体の前記非記録面に向けて前記第3ノズルから気体を噴射し、
前記第1ノズルが噴射する気体の風速は、前記第3ノズルが噴射する気体の風速よりも低い請求項1ないし4のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記複数の第3ノズルは、同じ風速で気体を噴射する請求項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記複数の第2ノズルが噴射する気体の風速と、前記複数の第3ノズルが噴射する気体の風速とが同じである請求項5または6に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記次段乾燥部では、前記第2ノズルと前記第3ノズルとが前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に千鳥状に並ぶ請求項5ないし7のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記前段乾燥部における進行方向と、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記次段乾燥部における進行方向とは、反対向きであり、
前記搬送部は、前記前段乾燥部から搬送されてきた前記印刷媒体を下側へ折り曲げてから、前記次段乾燥部へ向けてさらに折り曲げる前段反転部を有する請求項1ないし8のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記次段乾燥部は、前記印刷媒体の前記非記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第3ノズルを有し、前記印刷媒体の前記非記録面に向けて前記第3ノズルから気体を噴射し、
前記第1ノズルが噴射する気体の風速は、前記第3ノズルが噴射する気体の風速よりも低く、
鉛直方向において、前記次段乾燥部は、前記前段乾燥部の下側に配置され、
前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記前段乾燥部における進行方向と、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記次段乾燥部における進行方向とは、反対向きであり、
前記搬送部は、前記前段乾燥部から搬送されてきた前記印刷媒体を下側へ折り曲げてから、前記次段乾燥部へ向けてさらに折り曲げる前段反転部を有し、
前記搬送部は、前記記録面が上側を向きつつ前記非記録面が下側を向いた状態で前記前段乾燥部における前記印刷媒体を搬送し、前記記録面が下側を向きつつ前記非記録面が上側を向いた状態で前記次段乾燥部における前記印刷媒体を搬送し、
前記第1ノズルは、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の上側に配置され、
前記回転体は、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の下側に配置され、
前記第2ノズルは、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の下側に配置され、
前記第3ノズルは、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の上側に配置される請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体の進行方向の前記次段乾燥部の下流側において、前記搬送部により搬送中の前記印刷媒体の前記記録面に向けて気体を噴射することで、前記印刷媒体を乾燥させる後段乾燥部をさらに備え、
鉛直方向において、前記後段乾燥部は、前記次段乾燥部の下側に配置され、
前記後段乾燥部は、前記印刷媒体の前記記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第4ノズルを有し、前記印刷媒体の前記記録面に向けて前記第4ノズルから気体を噴射し、
前記第1ノズルが噴射する気体の風速は、前記第4ノズルが噴射する気体の風速よりも低い請求項1ないし10のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項12】
前記第4ノズルが噴射する気体の風速と、前記第2ノズルが噴射する気体の風速とが同じである請求項11に記載の乾燥装置。
【請求項13】
前記後段乾燥部は、前記印刷媒体の前記非記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第5ノズルを有し、前記印刷媒体の前記非記録面に向けて前記第5ノズルから気体を噴射し、
前記第1ノズルが噴射する気体の風速は、前記第5ノズルが噴射する気体の風速よりも低い請求項11または12に記載の乾燥装置。
【請求項14】
前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記次段乾燥部における進行方向と、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記後段乾燥部における進行方向とは、反対向きであり、
前記搬送部は、前記次段乾燥部から搬送されてきた前記印刷媒体を下側へ折り曲げてから、前記後段乾燥部へ向けてさらに折り曲げる次段反転部を有する請求項11ないし13のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項15】
前記気体は、60度以上の温度を有する請求項1ないし14のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項16】
記録面および前記記録面と反対側の非記録面とを有し、前記記録面に水性インクが付着する印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送中の前記印刷媒体の前記記録面に向けて気体を噴射することで、前記印刷媒体を乾燥させる前段乾燥部と、
前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体の進行方向の前記前段乾燥部の下流側において、前記搬送部により搬送中の前記印刷媒体の前記記録面に向けて気体を噴射することで、前記印刷媒体を乾燥させる次段乾燥部と
を備え、
鉛直方向において、前記次段乾燥部は、前記前段乾燥部の下側に配置され、
前記前段乾燥部は、前記印刷媒体の前記記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第1ノズルを有し、前記印刷媒体の前記記録面に向けて前記第1ノズルから気体を噴射し、
前記次段乾燥部は、前記印刷媒体の前記記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第2ノズルと、前記印刷媒体の前記非記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第3ノズルとを有し、前記印刷媒体の前記記録面に向けて前記第2ノズルから気体を噴射するとともに、前記印刷媒体の前記非記録面に向けて前記第3ノズルから気体を噴射し、
前記第1ノズルが噴射する気体の風速は、前記第2ノズルが噴射する気体の風速よりも低いとともに、前記第3ノズルが噴射する気体の風速よりも低く、
前記前段乾燥部は、前記印刷媒体の前記非記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の回転体を有し、前記回転体は、前記印刷媒体の前記非記録面に接触する周面を有して前記印刷媒体に従動して回転し、
前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記前段乾燥部における進行方向と、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の前記次段乾燥部における進行方向とは、反対向きであり、
前記搬送部は、前記前段乾燥部から搬送されてきた前記印刷媒体を下側へ折り曲げてから、前記次段乾燥部へ向けてさらに折り曲げる前段反転部を有し、
前記搬送部は、前記記録面が上側を向きつつ前記非記録面が下側を向いた状態で前記前段乾燥部における前記印刷媒体を搬送し、前記記録面が下側を向きつつ前記非記録面が上側を向いた状態で前記次段乾燥部における前記印刷媒体を搬送し、
前記第1ノズルは、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の上側に配置され、
前記回転体は、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の下側に配置され、
前記第2ノズルは、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の下側に配置され、
前記第3ノズルは、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の上側に配置される乾燥装置。
【請求項17】
記録面および前記記録面と反対側の非記録面とを有する印刷媒体の前記記録面に水性インクを付着させる印刷装置と、
請求項1ないし16のいずれか一項に記載の乾燥装置と
を備え、
前記印刷装置によって水性インクが付着した前記印刷媒体を前記乾燥装置によって乾燥させる印刷システム。
【請求項18】
前記印刷媒体の前記記録面にプライマーを塗布する塗布装置をさらに備え、
前記印刷装置は、前記塗布装置によって前記プライマーが塗布された前記記録面に水性インクを付着させる請求項17に記載の印刷システム。
【請求項19】
記録面および前記記録面と反対側の非記録面とを有し、前記記録面に水性インクが付着する印刷媒体を、前段乾燥部に対向する印刷媒体を搬送する前段搬送部および次段乾燥部に対向する印刷媒体を搬送する次段搬送部を含む搬送部により搬送する搬送工程と、
前記搬送部により搬送中の前記印刷媒体の前記記録面に向けて、前記前段乾燥部により気体を噴射することで、前記印刷媒体を乾燥させる前段乾燥工程と、
前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体の進行方向の前記前段乾燥部の下流側において、前記搬送部により搬送中の前記印刷媒体の前記記録面に向けて、前記次段乾燥部により気体を噴射することで、前記印刷媒体を乾燥させる次段乾燥工程と
前記前段搬送部によって搬送される印刷媒体と前記次段搬送部によって搬送される印刷媒体との間に配置される排気チャンバによって、筐体の内部からエアを吸引して前記筐体の外部に排出する工程と
を備え、
鉛直方向において、前記次段乾燥部は、前記前段乾燥部の下側に配置されており、
前記前段乾燥部は、前記印刷媒体の前記記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第1ノズルを有し、前記印刷媒体の前記記録面に向けて前記第1ノズルから気体を噴射し、
前記次段乾燥部は、前記印刷媒体の前記記録面側において、前記搬送部により搬送される前記印刷媒体の進行方向に配列された複数の第2ノズルを有し、前記印刷媒体の前記記録面に向けて前記第2ノズルから気体を噴射し、
前記第1ノズルが噴射する気体の風速は、前記第2ノズルが噴射する気体の風速よりも低く、
前記搬送部と、前記前段乾燥部と、前記次段乾燥部とは、前記筐体の内部に設けられる乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水性インクが付着した印刷媒体を熱風により乾燥させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水性インクにより印刷媒体に印刷を行う場合、水性インクの水分を蒸発させるために、印刷媒体を乾燥させる必要がある。そこで、特許文献1のような、エアの噴射による乾燥技術を転用することが考えられる。つまり、特許文献1では、被乾燥体に対向してフローティングノズルが配置されており、フローティングノズルからエアを噴射することで、被乾燥体を乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-24574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、印刷媒体の乾燥が進まない段階では、印刷媒体の記録面に多量の水分が残存している。そのため、気体を噴射することで、水性インクが流されてしまい、画像が乱される場合があった。かかる問題に対しては、噴射する気体の風速を弱くする手法が考えられるが、この手法では印刷媒体の乾燥に長時間を要してしまう。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、噴射される気体によって水性インクが流されて画像が乱されるのを抑制しつつ、印刷媒体の乾燥に要する時間を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乾燥装置は、記録面および記録面と反対側の非記録面とを有し、記録面に水性インクが付着する印刷媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送中の印刷媒体の記録面に向けて気体を噴射することで、印刷媒体を乾燥させる前段乾燥部と、搬送部によって搬送される印刷媒体の進行方向の前段乾燥部の下流側において、搬送部により搬送中の印刷媒体の記録面に向けて気体を噴射することで、印刷媒体を乾燥させる次段乾燥部とを備え、前段乾燥部が噴射する気体の風速は、次段乾燥部が噴射する気体の風速よりも低い。
【0007】
本発明に係る乾燥方法は、記録面および記録面と反対側の非記録面とを有し、記録面に水性インクが付着する印刷媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送中の印刷媒体の記録面に向けて気体を噴射することで、印刷媒体を乾燥させる前段乾燥部と、搬送部によって搬送される印刷媒体の進行方向の前段乾燥部の下流側において、搬送部により搬送中の印刷媒体の記録面に向けて気体を噴射することで、印刷媒体を乾燥させる次段乾燥部とを備え、前段乾燥部が噴射する気体の風速は、次段乾燥部が噴射する気体の風速よりも低い。
【0008】
このように構成された本発明(乾燥装置、乾燥方法)では、搬送部によって搬送中の印刷媒体の記録面に対して、前段乾燥部が気体を噴射してから、次段乾燥部が気体を噴射することで、記録面に水性インクが付着した印刷媒体を乾燥させる。この際、前段乾燥部が噴射する気体の風速は、次段乾燥部が噴射する気体の風速よりも低い。つまり、前段乾燥部を通過する印刷媒体の記録面には多量の水分が残存するため、低い風速で気体を噴射することで、水性インクが流れるのを抑制しつつ印刷媒体を乾燥させる。一方、前段乾燥部による乾燥を受けた印刷媒体の記録面では水分が減少しており、水性インクの流動性が低下している。そこで、次段乾燥部を通過する印刷媒体に対しては、高い風速で気体を噴射することで、印刷媒体の乾燥を促進する。こうして、噴射される気体によって水性インクが流されて画像が乱されるのを抑制しつつ、印刷媒体の乾燥に要する時間を抑えることが可能となっている。
【0009】
また、前段乾燥部は、印刷媒体の記録面側において、搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に配列された複数の第1ノズルを有し、印刷媒体の記録面に向けて第1ノズルから気体を噴射し、次段乾燥部は、印刷媒体の記録面側において、搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に配列された複数の第2ノズルを有し、印刷媒体の記録面に向けて第2ノズルから気体を噴射し、第1ノズルが噴射する気体の風速は、第2ノズルが噴射する気体の風速よりも低いように、乾燥装置を構成しても良い。これによって、噴射される気体によって水性インクが流されて画像が乱されるのを抑制しつつ、印刷媒体の乾燥に要する時間を抑えることが可能となる。
【0010】
また、複数の第1ノズルは、同じ風速で気体を噴射し、複数の第2ノズルは、同じ風速で気体を噴射するように、乾燥装置を構成しても良い。かかる構成では、前段乾燥部を通過する印刷媒体に対して複数の第1ノズルから一様な風を噴射できるとともに、次段乾燥部を通過する印刷媒体に対して複数の第2ノズルから一様な風を噴射できる。
【0011】
また、前段乾燥部は、印刷媒体の非記録面側において、搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に配列された複数の回転体を有し、回転体は、印刷媒体の非記録面に接触する周面を有して印刷媒体に従動して回転するように、乾燥装置を構成しても良い。つまり、前段乾燥部における乾燥では、印刷媒体に多量に残存する水分の潜熱によって印刷媒体の温度分布が不均一になって、印刷媒体のしわが生じやすい。これに対して、前段乾燥部では、印刷媒体の非記録面を回転体により支持する。こうして、印刷媒体を回転体に沿わせることで、印刷媒体上の水分の潜熱による温度分布の影響に抗して印刷媒体のしわの発生を抑えることができる。
【0012】
また、前段乾燥部では、第1ノズルと回転体とが搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に千鳥状に並ぶように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、第1ノズルからの気体の噴射により印刷媒体の記録面からの水分蒸発を促進できるとともに、印刷媒体の非記録面を回転体でしっかりと支持して、しわの発生をより確実に抑制できる。
【0013】
また、次段乾燥部は、印刷媒体の非記録面側において、搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に配列された複数の第3ノズルを有し、印刷媒体の非記録面に向けて第3ノズルから気体を噴射し、第1ノズルが噴射する気体の風速は、第3ノズルが噴射する気体の風速よりも低いように、乾燥装置を構成しても良い。かかる構成では、次段乾燥部を通過する印刷媒体に対して両側から高い風速で気体を噴射して、印刷媒体の乾燥を促進することができる。
【0014】
また、複数の第3ノズルは、同じ風速で気体を噴射するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、次段乾燥部を通過する印刷媒体に対して複数の第3ノズルから一様な風を噴射できる。
【0015】
また、複数の第2ノズルが噴射する気体の風速と、複数の第3ノズルが噴射する気体の風速とが同じであるように、印刷装置を構成しても良い。かかる構成では、次段乾燥部を通過する印刷媒体が、第2ノズルおよび第3ノズルの一方に偏って接触するのを抑制できる。
【0016】
また、次段乾燥部では、第2ノズルと第3ノズルとが搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に千鳥状に並ぶように、乾燥装置を構成してもよい。かかる次段乾燥部では、第2ノズルと第3ノズルとが印刷媒体の進行方向に互いにずれる。したがって、第3ノズルから噴射される気体によって撓んだ印刷媒体の記録面が第2ノズルに接触するのを抑制できる。
【0017】
また、鉛直方向において、次段乾燥部は、前段乾燥部の下側に配置されているように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、乾燥装置を水平方向に小型化することができる。
【0018】
また、搬送部により搬送される印刷媒体の前段乾燥部における進行方向と、搬送部により搬送される印刷媒体の次段乾燥部における進行方向とは、反対向きであり、搬送部は、前段乾燥部から搬送されてきた印刷媒体を下側へ折り曲げてから、次段乾燥部へ向けてさらに折り曲げる前段反転部を有するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、前段反転部によって、上側の前段乾燥部から下側の次段乾燥部に印刷媒体を的確に搬送することができる。
【0019】
また、搬送部は、記録面が上側を向きつつ非記録面が下側を向いた状態で前段乾燥部における印刷媒体を搬送し、記録面が下側を向きつつ非記録面が上側を向いた状態で次段乾燥部における印刷媒体を搬送し、第1ノズルは、搬送部により搬送される印刷媒体の上側に配置され、回転体は、搬送部により搬送される印刷媒体の下側に配置され、第2ノズルは、搬送部により搬送される印刷媒体の下側に配置され、第3ノズルは、搬送部により搬送される印刷媒体の上側に配置されるように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、多量の水分が記録面に残存する前段乾燥部において、記録面が上側を向くため、第1ノズルから噴射される気体によって吹き飛んだ水分が下方に落下するのを防止できる。
【0020】
また、搬送部によって搬送される印刷媒体の進行方向の次段乾燥部の下流側において、搬送部により搬送中の印刷媒体の記録面に向けて気体を噴射することで、印刷媒体を乾燥させる後段乾燥部をさらに備え、鉛直方向において、後段乾燥部は、次段乾燥部の下側に配置され、後段乾燥部は、印刷媒体の記録面側において、搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に配列された複数の第4ノズルを有し、印刷媒体の記録面に向けて第4ノズルから気体を噴射し、第1ノズルが噴射する気体の風速は、第4ノズルが噴射する気体の風速よりも低いように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、次段乾燥部で乾燥された印刷媒体が後段乾燥部でさらに乾燥されるため、印刷媒体をより確実に乾燥させることができる。しかも、後段乾燥部は、次段乾燥部の下側に配置されるため、乾燥装置を水平方向に小型化することができる。
【0021】
また、第4ノズルが噴射する気体の風速と、第2ノズルが噴射する気体の風速とが同じであるように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、次段乾燥部および後段乾燥部を通過する印刷媒体に高い風速で気体を噴射して、印刷媒体の乾燥を促進することができる。
【0022】
また、後段乾燥部は、印刷媒体の非記録面側において、搬送部により搬送される印刷媒体の進行方向に配列された複数の第5ノズルを有し、印刷媒体の非記録面に向けて第5ノズルから気体を噴射し、第1ノズルが噴射する気体の風速は、第5ノズルが噴射する気体の風速よりも低いように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、後段乾燥部を通過する印刷媒体に対して両側から高い風速で気体を噴射して、印刷媒体の乾燥を促進することができる。
【0023】
また、搬送部により搬送される印刷媒体の次段乾燥部における進行方向と、搬送部により搬送される印刷媒体の後段乾燥部における進行方向とは、反対向きであり、搬送部は、次段乾燥部から搬送されてきた印刷媒体を下側へ折り曲げてから、後段乾燥部へ向けてさらに折り曲げる次段反転部を有するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、次段反転部によって、上側の次段乾燥部から下側の後段乾燥部に印刷媒体を的確に搬送することができる。
【0024】
また、気体は、60度以上の温度を有するように、乾燥装置を構成してもよい。かかる構成では、60度以上の熱風によって、印刷媒体の乾燥を促進することができる。
【0025】
本発明に係る印刷システムは、記録面および記録面と反対側の非記録面とを有する印刷媒体の記録面に水性インクを付着させる印刷装置と、上記の乾燥装置とを備え、印刷装置によって水性インクが付着した印刷媒体を乾燥装置によって乾燥させる。したがって、噴射される気体によって水性インクが流されて画像が乱されるのを抑制しつつ、印刷媒体の乾燥に要する時間を抑えることが可能となっている。
【0026】
また、印刷媒体の記録面にプライマーを塗布する塗布装置をさらに備え、印刷装置は、塗布装置によってプライマーが塗布された記録面に水性インクを付着させるように、印刷システムを構成してもよい。かかる構成では、プライマーによって水性インクを印刷媒体の記録面に定着させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、噴射される気体によって水性インクが流されて画像が乱されるのを抑制しつつ、印刷媒体の乾燥に要する時間を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
図2図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図。
図3図1の印刷システムが備える乾燥装置を模式的に示す正面図。
図4】上段搬送部に対して設けられた送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図。
図5】中段搬送部および下段搬送部に対して設けられた送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図。
図6】乾燥装置が備える熱風供給機構を模式的に示すブロック図。
図7】乾燥装置の変形例を模式的に示す正面図。
図8】乾燥装置の別の変形例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明に係る印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。図1および以下に示す図では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。図1に示すように、印刷システム1は、塗布装置2、印刷装置3および乾燥装置5がこの順で水平方向X(配列方向)に並んだ構成を具備する。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送しつつ、塗布装置2で塗布液を塗布した印刷媒体Mに対して印刷装置3がインクジェット方式で画像を印刷し、乾燥装置5は画像が印刷された印刷媒体Mを乾燥させる。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは、可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0030】
塗布装置2は、液状のプライマー(塗布液)を貯留するパン21と、パン21に貯留されたプライマーに部分的に浸かるグラビアローラ22と、印刷媒体Mを搬送する搬送部23とを有する。塗布装置2では、搬送部23により搬送される印刷媒体Mにグラビアローラ22が下方から接触する塗布領域が設けられており、搬送部23は、印刷媒体Mの表面M1を下方に向けつつ塗布領域に沿って印刷媒体Mを搬送する。一方、グラビアローラ22は、その周面にプライマーを保持しつつ回転することで塗布領域にプライマーを供給する。こうして、グラビアローラ22により供給されたプライマーが塗布領域において印刷媒体Mの表面M1に塗布される。また、塗布領域では、印刷媒体Mの進行方向と、グラビアローラ22の周面の回転方向とが逆である。つまり、いわゆるリバースキス方式でプライマーが印刷媒体Mに塗布される。そして、搬送部23は、プライマーが塗布された印刷媒体Mの表面M1を上方へ向けつつ、塗布装置2から印刷装置3へ印刷媒体Mを搬出する。
【0031】
図2図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図である。図2および以下の図では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2を適宜示す。ここで、一方側X1は塗布装置2から印刷装置3へ向う側であるとともに、印刷装置3から乾燥装置5へ向かう側であり、他方側X2は一方側X1の反対側である。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0032】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)の吐出ヘッド321を有する。複数の吐出ヘッド321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数の吐出ヘッド321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0033】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一の吐出ヘッド331を有する。吐出ヘッド331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33の吐出ヘッド331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0034】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口しており、塗布装置2から搬出されてきた印刷媒体Mは、搬入口311から筐体31内に搬入される。これに対して、搬送部4は、搬入部41(第4搬送部)を有する。搬入部41は、カラー印刷部32より下方において水平方向Xに配列された複数のローラ411を有し、搬入口311から搬入された印刷媒体Mを複数のローラ411によって支持しつつ、他方側X2から一方側X1へ向けて搬送する。
【0035】
また、搬送部4は、搬入部41の一方側X1に設けられた上昇搬送部42(第5搬送部)を有する。上昇搬送部42は、カラー印刷部32の外側(一方側X1)において鉛直方向Zに配列された複数のローラ421を有する。この上昇搬送部42は、複数のローラ421のうち下端に位置するローラ421によって、搬入部41から搬送されてきた印刷媒体Mを上側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を一方側X1から上側に変更してから、当該印刷媒体Mを複数のローラ421によって支持しつつ上方へ搬送する。
【0036】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32の上方に設けられた上方搬送部43(第6搬送部)を有する。上方搬送部43は、カラー印刷部32の上方において水平方向Xに配列された複数のローラ431を有する。この上方搬送部43は、複数のローラ431のうち一方側X1の端に位置するローラ431によって、上昇搬送部42から搬送されてきた印刷媒体Mを他方側X2へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を上側から他方側X2に変更してから、当該印刷媒体Mを複数のローラ431によって支持しつつ他方側X2へ搬送する。
【0037】
また、搬送部4は、上方搬送部43の他方側X2に設けられた下降搬送部44(第7搬送部)を有する。下降搬送部44は、カラー印刷部32の外側(他方側X2)において鉛直方向Zに配列された複数のローラ441を有する。この下降搬送部44は、複数のローラ441のうち上端に位置するローラ441によって、上方搬送部43から搬送されてきた印刷媒体Mを下側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を他方側X2から下側へ変更してから、当該印刷媒体Mをローラ441によって支持しつつ下方へ搬送する。この下降搬送部44が有する複数のローラ441のうち、上端のローラ441はカラー印刷部32の各吐出ヘッド321より上側に位置し、下端のローラ441はカラー印刷部32の各吐出ヘッド321より下側に位置する。つまり、下降搬送部44は、カラー印刷部32の上方から下方へ印刷媒体Mを搬送する。
【0038】
さらに、搬送部4は、上方搬送部43の下方で且つ下降搬送部44の一方側X1に設けられたカラー搬送部45(第1搬送部)を有する。このカラー搬送部45は、水平方向Xに配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ451を有し、下降搬送部44から搬送されてきた印刷媒体Mは、複数のローラ451によってカラー印刷部32の下方に支持される。このように、カラー搬送部45の複数のローラ451は、下降搬送部44から搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触することで印刷媒体Mを下方から支持しつつ、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する。そして、カラー印刷部32は、カラー搬送部45によってその表面M1に沿って搬送される印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出する。
【0039】
この際、カラー搬送部45によって搬送される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、当該印刷媒体Mの裏面M2は下方を向く。詳述すると、塗布装置2から搬出された印刷媒体Mは、その表面M1が上方を向いた状態で搬入口311から搬入されて、搬入部41によって他方側X2から一方側X1へ向けて搬送される。搬入部41を通過した印刷媒体Mは、上昇搬送部42および上方搬送部43によって上下反転された状態で、上方搬送部43によって一方側X1から他方側X2へ向けて搬送される。そのため、上方搬送部43によって搬送される印刷媒体Mの表面M1は下方を向く。上方搬送部43を通過した印刷媒体Mは、下降搬送部44およびカラー搬送部45によって上下反転された状態で、カラー搬送部45によって他方側X2から一方側X1へ向けて搬送される。そのため、カラー搬送部45によって搬送される印刷媒体Mの表面M1は上方を向く。
【0040】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向において、カラー搬送部45の上流側で印刷媒体Mの表面M1に接触するローラ461、462を有する。ローラ461は、印刷媒体Mを駆動する駆動ローラであり、ローラ462は、印刷媒体Mに付与された張力を検出する張力センサを有する従動ローラである。かかる駆動ローラ461と従動ローラ462とは、後述する印刷媒体Mに付与された張力を検出する張力センサを有する従動ローラ472と、駆動ローラ471と、駆動ローラ491とによって印刷媒体Mの張力を調整する張力調整部を構成する。即ち、ローラ461、ローラ471、ローラ491は、ローラ462およびローラ472の張力センサが検出した張力に応じた速度でそれぞれ回転することで、搬送部4により搬送される印刷媒体Mの張力を全体に渡って所定の目標張力に調整する。これによって、適切な張力を印刷媒体に与えつつ、カラーインクや白色インクを印刷媒体に吐出できる。
【0041】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二度上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、カラー搬送部45の一方側X1で鉛直方向Zに配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ471、472を有する。複数のローラ471、472のうち、上端のローラ471は、カラー搬送部45から搬送されてきた印刷媒体Mを下側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を一方側X1から下側へ変更し、下端のローラ472は、ローラ471から搬送されてきた印刷媒体Mを他方側X2へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を下側から他方側X2へ変更する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ471、472によって印刷媒体Mが上下反転されて、印刷媒体Mの裏面M2が上方を向くとともに、印刷媒体Mの表面M1が下方を向く。
【0042】
また、反転搬送部47は、カラー搬送部45の下方で且つローラ472の他方側X2において水平方向Xに配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ473を有する。これらローラ473は、ローラ472から搬送されてきた印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2へ向けて搬送する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ473によって、裏面M2が上方を向いた状態の印刷媒体Mが一方側X1から他方側X2へ向けて搬送される。
【0043】
さらに、反転搬送部47は、複数のローラ473および下降搬送部44の他方側X2で鉛直方向Zに配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ474、476、477を有する。複数のローラ474~477のうち、下端のローラ474は、複数のローラ473から搬送されてきた印刷媒体Mを上側へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を他方側X2から上側へ変更し、上端のローラ477は、ローラ476を経由してローラ474から搬送されてきた印刷媒体Mを一方側X1へ折り曲げることで、印刷媒体Mの進行方向を上側から一方側X1へ変更する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ474~477によって印刷媒体Mが上下反転されて、印刷媒体Mの表面M1が上方を向くとともに、印刷媒体Mの裏面M2が下方を向く。
【0044】
また、反転搬送部47は、上方搬送部43の上方で且つローラ477の一方側X1に配置されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ478を有する。ローラ478は、ローラ477から搬送されてきた印刷媒体Mを、他方側X2から一方側X1へ向けて搬送する。こうして、印刷媒体Mの裏面M2に接触するローラ478によって、表面M1が上方を向いた状態の印刷媒体Mが他方側X2から一方側X1へ向けて搬送される。
【0045】
このように、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~477によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ477によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ478によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0046】
こうして、反転搬送部47は、印刷媒体Mの裏面M2に接触して当該裏面M2を巻き掛けつつ回転するローラ471~478のみによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを二度上下反転させる。すなわち、反転搬送部47は、ローラやエアターンバーといった支持部材を印刷媒体Mの表面M1側に全く設けることなく、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを二度上下反転させることができる。
【0047】
また、搬送部4は、上方搬送部43の上方で且つ反転搬送部47のローラ478より一方側X1に設けられた白搬送部48(第2搬送部)を有する。この白搬送部48はローラ481を有し、反転搬送部47のローラ478から搬送されてきた印刷媒体Mは、ローラ481によって白印刷部33の下方に支持される。このように、白搬送部48のローラ481は、反転搬送部47のローラ478から搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触することで印刷媒体Mを下方から支持しつつ、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する。そして、白印刷部33は、白搬送部48によってその表面M1に沿って搬送される印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出する。
【0048】
さらに、搬送部4は、上方搬送部43より上方で且つ白搬送部48の一方側X1に設けられた搬出部49(第3搬送部)を有する。搬出部49は、水平方向Xに配列されて、印刷媒体Mの裏面M2に接触する複数のローラ491を有する。これに対して、筐体31の一方側X1の側壁には搬出口312が開口しており、搬出部49の複数のローラ491は、印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触しつつ他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送することで、印刷媒体Mを搬出口312から搬出する。
【0049】
このように、搬送部4は、カラー搬送部45に進入してから二度上下反転して搬出口312に到る印刷媒体Mを支持する支持部材を、印刷媒体Mの表面M1側には有さず、印刷媒体Mの裏面M2側にのみ有する。
【0050】
また、印刷装置3は、筐体31内に配置されたプレ乾燥部34を備える。プレ乾燥部34は、鉛直方向Zにおいて、搬入部41と反転搬送部47との間に配置される。このプレ乾燥部34は、反転搬送部47の複数のローラ473によって一方側X1から他方側X2へ向かって搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル341を有する。各ノズル341は、複数のローラ473によって搬送される印刷媒体Mの表面M1に下方から対向し、この印刷媒体Mの表面M1に室温のエアを下方から噴射する。つまり、カラー印刷部32からカラーインクが吐出された印刷媒体Mの表面M1が、プレ乾燥部34によって乾燥される。なお、このプレ乾燥部34は、必ずしも搬入部41と反転搬送部47との間に限られるものではなく、反転搬送部47によって搬送されている印刷媒体Mの表面M1に対してエア噴射できる位置関係を採りうる限り、プレ乾燥部34が配置される位置は制限されるものではない。即ち、印刷媒体Mの表面にカラー印刷部32で、カラーインクが吐出された後、白印刷部33で白インクが、印刷媒体Mの表面M1に吐出される前の間に印刷媒体Mの表面M1に対してエア噴射できるように、このプレ乾燥部34を配置することができる。但し、搬入部41と反転搬送部47との間に、このプレ乾燥部34が配置すれば、反転搬送部47の下方のスペースを、プレ乾燥部の配置スペースとして活用でき、水平方向において印刷装置の小型化を図ることができるというメリットがある。
【0051】
さらに、印刷装置3は、筐体31内に配置された上方乾燥部35を備える。上方乾燥部35は搬出部49の上方に配置される。この上方乾燥部35は、搬出部49によって他方側X2から一方側X1へ向かって搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル351を有する。各ノズル351は、搬出部49によって搬送される印刷媒体Mの表面M1に上方から対向し、この印刷媒体Mの表面M1に室温のエアを上方から噴射する。つまり、白印刷部33から白インクが吐出された印刷媒体Mの表面M1が、上方乾燥部35によって乾燥される。
【0052】
図3図1の印刷システムが備える乾燥装置を模式的に示す正面図である。乾燥装置5は、水平方向Xに印刷媒体Mを適宜折り返して搬送しながら印刷媒体Mを乾燥させる。この乾燥装置5は、印刷装置3の筐体31の一方側X1側に配置された筐体6(乾燥炉)を備える。この筐体6は、水平方向Xに延設された直方体形状を有し、水平方向Xにおける筐体6の両側壁6a、6bは、鉛直方向Zに平行であるとともに水平方向Xに垂直であり、水平方向Xに間隔を空けて互いに対向する。
【0053】
側壁6a、6bのうち、水平方向XのX2側(印刷装置3側)の側壁6aには、搬入口61が水平方向Xに貫通しており、水平方向XのX1側(印刷装置3の反対側)の筐体6bには、搬出口66が水平方向Xに貫通している。そして、印刷装置3の搬出口312から搬出された印刷媒体Mは、搬入口61から筐体6内に搬入されてから、搬出口66から筐体6外に搬出される。
【0054】
つまり、乾燥装置5は、印刷媒体Mを搬送する搬送部51を筐体6内に備え、搬送部51は、搬入口61から搬出口66へ印刷媒体Mを搬送する。この搬送部51は、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する上段搬送部51uと、一方側X1から他方側X2へ向けて印刷媒体Mを搬送する中段搬送部51mと、他方側X2から一方側X1へ向けて印刷媒体Mを搬送する下段搬送部51lとを有する。中段搬送部51mは上段搬送部51uの下方に配置され、下段搬送部51lは中段搬送部51mの下方に配置されている。したがって、上段搬送部51uにより搬送される印刷媒体Mと、中段搬送部51mにより搬送される印刷媒体Mと、下段搬送部51lにより搬送される印刷媒体Mとは、鉛直方向Zに並び、換言すれば鉛直方向Zから見て互いに重複する。具体的には、上段搬送部51uは、搬入口61と同じ高さで印刷媒体Mを搬送し、印刷媒体Mは、表面M1が上方を向くとともに裏面M2が下方を向いた状態で、上段搬送部51uによって水平方向Xに搬送される。中段搬送部51mは、上段搬送部51uの下方で印刷媒体Mを搬送し、印刷媒体Mは、表面M1が下方を向くとともに裏面M2が上方を向いた状態で、中段搬送部51mによって水平方向Xに搬送される。下段搬送部51lは、中段搬送部51mの下方で印刷媒体Mを搬送し、印刷媒体Mは、表面M1が上方を向くとともに裏面M2が下方を向いた状態で、下段搬送部51lによって水平方向Xに搬送される。
【0055】
上段搬送部51uは、一方側X1の端にローラ52を有し、中段搬送部51mは、一方側X1の端にローラ53を有する。ローラ52とローラ53とは上下に並んで、一方側X1から他方側X2へ印刷媒体Mを折り返す。つまり、ローラ52、53のうち、上側のローラ52は、搬入口61から一方側X1へ向けて搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に接することで、印刷媒体Mを下方に折り曲げ、下側のローラ53は、ローラ52から下方に向けて搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に接することで、印刷媒体Mを他方側X2に折り曲げる。こうして、一方側X1から他方側X2へ印刷媒体Mを折り返すことで、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とが上下に反転する。
【0056】
また、中段搬送部51mは、他方側X2の端にエアターンバー54を有し、下段搬送部51lは、他方側X2の端にエアターンバー55を有する。エアターンバー54とエアターンバー55とは上下に並んで、他方側X2から一方側X1へ印刷媒体Mを折り返す。つまり、エアターンバー54、55のうち、上側のエアターンバー54は、ローラ53から他方側X2へ向けて搬送されてきた印刷媒体Mの表面M1にエアを噴射する。これによって、エアターンバー54は、印刷媒体Mの表面M1との間に隙間を空けた状態で、印刷媒体Mを下方に折り曲げる。また、下側のエアターンバー55は、エアターンバー54から下方に向けて搬送されてきた印刷媒体Mの表面M1にエアを噴射する。これによって、エアターンバー55は、印刷媒体Mの表面M1との間に隙間を空けた状態で、印刷媒体Mを一方側X1へ折り曲げる。こうして、他方側X2から一方側X1へ印刷媒体Mを折り返すことで、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とが上下に反転する。
【0057】
また、下段搬送部51lは、一方側X1の端にローラ56を有する。このローラ56は、搬出口66に対して配置されており、エアターンバー55から一方側X1へ搬送されてきた印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ回転することで、印刷媒体Mを搬出口66に向けて搬送する。
【0058】
かかる乾燥装置5は、6個の送風乾燥機7a~7fを筐体6内に備える。これらのうち、2個の送風乾燥機7a、7bは、上段搬送部51uにより搬送される印刷媒体Mに対して設けられ、搬入口61とローラ52との間に配列される。そして、送風乾燥機7a、7bは、上段搬送部51uにより搬送される印刷媒体Mを乾燥させる。2個の送風乾燥機7c、7dは、中段搬送部51mにより搬送される印刷媒体Mに対して設けられ、ローラ53とエアターンバー54との間に配列される。そして、送風乾燥機7c、7dは、中段搬送部51mにより搬送される印刷媒体Mを乾燥させる。2個の送風乾燥機7e、7fは、下段搬送部51lにより搬送される印刷媒体Mに対して設けられ、エアターンバー55と搬出口66との間に配列される。そして、送風乾燥機7e、7fは、下段搬送部51lにより搬送される印刷媒体Mを乾燥させる。
【0059】
図4は上段搬送部に対して設けられた送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図であり、図5は中段搬送部および下段搬送部に対して設けられた送風乾燥機を部分的に拡大して示す模式図である。続いては、送風乾燥機7a~7fについて、図4および図5を併用して説明する。
【0060】
送風乾燥機7aは、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された送風ユニット71uを有する。送風ユニット71uは、印刷媒体Mの上方において水平方向Xに延設された送風チャンバ72uを有する。送風チャンバ72uの水平方向Xの両端面は、水平方向Xに垂直であって鉛直方向Zに平行な平面である。送風チャンバ72uには、印刷システム1の外部に設けられたヒータによってエアを加熱することで生成された熱風が供給される。送風チャンバ72uの下面は、上方を向く印刷媒体Mの表面M1(上面)に上方から対向するノズル配置平面73uである。このノズル配置平面73uは、水平方向Xに平行であるとともに鉛直方向Zに垂直な平面である。さらに、送風ユニット71uは、このノズル配置平面73uにおいて水平方向Xに所定ピッチで配列された複数のノズル76uを有する。こうして複数のノズル76uがノズル配置平面73uと印刷媒体Mの表面M1との間に並んで、印刷媒体Mの表面M1に対向する。各ノズル76uは、送風チャンバ72uと連通しており、送風チャンバ72uに供給された熱風は、ノズル76uから印刷媒体Mの表面M1に噴射され、印刷媒体Mを乾燥させる。このように、複数の送風乾燥機7a~7fのうち、送風乾燥機7aは、筐体6に搬入された印刷媒体Mを最初に乾燥させる。
【0061】
さらに、送風乾燥機7aは、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの下方に配置された複数(ノズル76uと同数)のローラ74を有する。複数のローラ74は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの進行方向(水平方向X)に所定ピッチで配列され、各ローラ74の周面は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの裏面M2(下面)に下方から接触する。そして、各ローラ74は、水平方向Xおよび鉛直方向Zに直交する方向(印刷媒体Mの幅方向)に平行な回転軸を中心に印刷媒体Mに従動して回転しつつ、印刷媒体Mを下方から支持する。また、ローラ74には微細な溝が螺旋状に設けられており、印刷媒体Mとローラ74の周面との間からエアが抜けやすくなっている。
【0062】
ちなみに、ノズル76uは、水平方向Xに隣り合う2個のローラ74の間の範囲に上側から対向し、ローラ74は、水平方向Xに隣り合う上側の2個のノズル76uの間の範囲に下側から対向する。つまり、水平方向Xにおいて、ノズル76uとローラ74とは、所定ピッチの半分のピッチで交互に並んでおり、鉛直方向Zからの平面視において水平方向Xに1個ずつ交互に並ぶ。換言すれば、ノズル76uとローラ74とは千鳥状に配列されている。
【0063】
かかる構成では、図4に示すように、印刷媒体Mは、ノズル76uに対向する部分ではこのノズル76uからの熱風により下側へ押されることでローラ74の上端より下方に偏り、ローラ74に対向する部分ではこのローラ74により支持される。したがって、印刷媒体Mは、ローラ74の上端と当該上端の下方との間で波打ちながら、他方側X2から一方側X1へ向かって水平方向Xに搬送される。
【0064】
また、図4に示すように、ローラ74の上端はノズル76uの下端より下方に位置する。したがって、ノズル76uあるいはローラ74の配列方向(水平方向X)、換言すれば上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの進行方向から見て、ノズル76uとローラ74との間には鉛直方向Zに隙間が空いている。したがって、何らかの不具合の発生によって、ノズル76uからの熱風の噴射が停止すると、印刷媒体Mの表面M1がノズル76uから離間しつつ印刷媒体Mの裏面M2がローラ74に接触した状態で、印刷媒体Mがローラ74によって下方から支持される。
【0065】
送風乾燥機7bは、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの進行方向において送風乾燥機7aの下流側に配置される。この送風乾燥機7bは、送風乾燥機7aと同様に、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mに対して、上方に配置された送風ユニット71uと、下方に配置された複数のローラ74とを有する。かかる送風乾燥機7bでは、複数のローラ74が印刷媒体Mの裏面M2を下方から支持しつつ、送風ユニット71uの複数(ローラ74と同数)のノズル76uが印刷媒体Mの表面M1に上方から熱風を噴射し、印刷媒体Mが乾燥される。
【0066】
送風乾燥機7cは、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mの上方および下方それぞれに配置された送風ユニット71u、71lを有する。上側の送風ユニット71uは、印刷媒体Mの上方において水平方向Xに延設された送風チャンバ72uを有する。送風チャンバ72uの水平方向Xの両端面は、水平方向Xに垂直であって鉛直方向Zに平行な平面である。送風チャンバ72uには、上記の熱風が供給される。送風チャンバ72uの下面は、上方を向く印刷媒体Mの裏面M2(上面)に上方から対向するノズル配置平面73uである。このノズル配置平面73uは、水平方向Xに平行であるとともに鉛直方向Zに垂直な平面である。さらに、送風ユニット71uは、このノズル配置平面73uにおいて水平方向Xに所定ピッチで配列された複数のノズル76uを有する。こうして複数のノズル76uがノズル配置平面73uと印刷媒体Mの裏面M2との間に並んで、印刷媒体Mの裏面M2に対向する。各ノズル76uは、送風チャンバ72uと連通しており、送風チャンバ72uに供給された熱風は、ノズル76uから印刷媒体Mの裏面M2に噴射される。
【0067】
下側の送風ユニット71lは、印刷媒体Mの下方において水平方向Xに延設された送風チャンバ72lを有する。送風チャンバ72lの水平方向Xの両端面は、水平方向Xに垂直であって鉛直方向Zに垂直な平面である。送風チャンバ72lには、上記の熱風が供給される。送風チャンバ72lの上面は、下方を向く印刷媒体Mの表面M1(下面)に下方から対向するノズル配置平面73lである。このノズル配置平面73lは、水平方向Xに平行であるとともに鉛直方向Zに垂直な平面である。さらに、送風ユニット71lは、このノズル配置平面73lにおいて水平方向Xに所定ピッチで配列された複数のノズル76lを有する。こうして複数のノズル76lがノズル配置平面73lと印刷媒体Mの表面M1との間に並んで、印刷媒体Mの表面M1に対向する。各ノズル76lは、送風チャンバ72lと連通しており、送風チャンバ72lに供給された熱風は、ノズル76lから印刷媒体Mの表面M1に噴射される。
【0068】
このように、送風ユニット71uと送風ユニット71lとは印刷媒体Mを挟む。換言すれば、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mは、送風ユニット71uと送風ユニット71lとの間を通過する。このように、送風乾燥機7cは、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mに対して、上下両側の送風ユニット71u、71lから熱風を噴射することで、印刷媒体Mを乾燥させる。
【0069】
ちなみに、上側のノズル76uは、水平方向Xに隣り合う下側の2個のノズル76lの間の範囲に上側から対向し、下側のノズル76lは、水平方向Xに隣り合う上側の2個のノズル76uの間の範囲に下方から対向する。つまり、水平方向Xにおいて、上側のノズル76uと下側のノズル76lとは、所定ピッチの半分のピッチで交互に並んでおり、鉛直方向Zからの平面視において水平方向Xに1個ずつ交互に並ぶ。換言すれば、ノズル76u、76lは千鳥状に配列されている。このようなノズル76u、76lの千鳥配列は、送風チャンバ72u、72lの位置を水平方向Xに相互にずらすことで実現される。
【0070】
かかる構成では、図5に示すように、印刷媒体Mは、上側のノズル76uに対向する部分ではこのノズル76uからの熱風により下方へ押されることで搬送中心線Lより下方に偏り、下側のノズル76lに対向する部分ではこのノズル76lからの熱風により上方へ押されることで搬送中心線Lより上方に偏る。ここで、搬送中心線Lは、ノズル76uおよびノズル76lそれぞれからの鉛直方向Zにおける距離が等しい水平な仮想直線である。したがって、印刷媒体Mは、搬送中心線Lの上方と下方との間で波打ちながら、一方側X1から他方側X2へ向かって水平方向Xに搬送される。
【0071】
送風乾燥機7dは、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mの進行方向において送風乾燥機7cの下流側に配置される。この送風乾燥機7dは、送風乾燥機7cと同様に中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む送風ユニット71u、71lを有する。かかる送風乾燥機7dでは、送風ユニット71uが印刷媒体Mの裏面M2に上方から熱風を噴射し、送風ユニット71lが印刷媒体Mの表面M1に下方から熱風を噴射することで、印刷媒体Mが乾燥される。
【0072】
送風乾燥機7eは、送風乾燥機7cと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む送風ユニット71u、71lを有する。ただし、送風乾燥機7eは、下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mに対して配置されているため、送風乾燥機7eの送風ユニット71u、71lは、下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む。かかる送風乾燥機7eでは、送風ユニット71uが印刷媒体Mの表面M1に上方から熱風を噴射し、送風ユニット71lが印刷媒体Mの裏面M2に下方から熱風を噴射することで、印刷媒体Mが乾燥される。
【0073】
送風乾燥機7fは、下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mの進行方向において送風乾燥機7eの下流側に配置される。この送風乾燥機7fは、送風乾燥機7eと同様に下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む送風ユニット71u、71lを有する。かかる送風乾燥機7fでは、送風ユニット71uが印刷媒体Mの表面M1に上方から熱風を噴射し、送風ユニット71lが印刷媒体Mの裏面M2に下方から熱風を噴射することで、印刷媒体Mが乾燥される。
【0074】
さらに、乾燥装置5は、筐体6内のエアを筐体6外に排出する排気部8a、8bを、筐体6内に備える。排気部8aは、筐体6内のX2側の端部に配置され、送風乾燥機7a、7d、7eと側壁6aとの間に位置する。排気部8bは、筐体6内のX1側の端部に配置され、送風乾燥機7b、7c、7fと側壁6bとの間に位置する。これら排気部8a、8bは共通する構成を備える。排気部8a、8bは、鉛直方向Zに配列された4個の排気チャンバ81~84を有する。排気チャンバ81は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの上方に配置され、排気チャンバ82は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mと中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mとの間に配置され、排気チャンバ83は、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mと下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mとの間に配置され、排気チャンバ84は、下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mの下方に配置される。排気チャンバ81~84のそれぞれは、筐体6の内部から吸引したエアを搬入口61の外部に排出する。
【0075】
図6は乾燥装置が備える熱風供給機構を模式的に示すブロック図である。同図では、上段搬送部51uに対して配置された送風乾燥機7a、7bで構成される上段乾燥部Duと、中段搬送部51mに対して配置された送風乾燥機7c、7dで構成される中段乾燥部Dmと、下段搬送部51lに対して配置された送風乾燥機7e、7fで構成される下段乾燥部Dlとが示されている。
【0076】
熱風供給機構9は、上段乾燥部Duに熱風を供給する上段供給部91uと、中段乾燥部Dmに熱風を供給する中段供給部91mと、下段乾燥部Dlに熱風を供給する下段供給部91lとを有する。上段供給部91u、中段供給部91mおよび下段供給部91lは、共通する構成を具備するため、これらの共通構成を上段供給部91uについて説明する。
【0077】
上段供給部91uは、外部のヒータによって加熱されたエア、すなわち熱風が入力される入力部911と、入力部911から入力された熱風を導入する導入管912と、導入管912から各送風乾燥機7a、7bに分岐する分岐管913とを有する。したがって、入力部911から入力された熱風は、導入管912を通過してから、分岐管913を介して各送風乾燥機7a、7bに供給されて、各送風乾燥機7a、7bのノズル76uから噴射される。また、導入管912には、入力部911側から上段乾燥部Du側へ熱風を送るブロワ914が取り付けられており、ブロワ914の回転数を変更することで、各送風乾燥機7a、7bに供給される熱風の風速(m/s)を変更し、その結果、ノズル76uから噴射される熱風の風速を調整できる。
【0078】
同様に、中段乾燥部Dmについては、ブロワ914により風速が調整された熱風が中段供給部91mによって送風乾燥機7c、7dに供給され、送風乾燥機7c、7dのノズル76u、76lから噴射される。また、下段乾燥部Dlについては、ブロワ914により風速が調整された熱風が下段供給部91lによって送風乾燥機7e、7fに供給され、送風乾燥機7e、7fのノズル76u、76lから噴射される。
【0079】
また、上段供給部91u、中段供給部91mおよび下段供給部91lのブロワ914の回転数は例えば作業者によって予め調整されており、上段乾燥部Duに設けられた各ノズル76uから噴射されるエアの風速は、中段乾燥部Dmに設けられた各ノズル76u、76lから噴射されるエアの風速よりも低く、下段乾燥部Dlに設けられた各ノズル76u、76lから噴射されるエアの風速よりも低い。ちなみに、ブロワ914の回転数によらずに風速の調整を行ってもよい。つまり、ブロワ914と分岐管913との間にダンパーを設けておき、ダンパーの開度を変更することで熱風の風速を調整してもよい。
【0080】
また、この例では、送風乾燥機7a、7bの複数のノズル76uは同じ風速で空気を噴射する。したがって、上段搬送部51uにより搬送される印刷媒体Mの表面M1に対して複数のノズル76uから一様な風を噴射できる。
【0081】
さらに、送風乾燥機7c、7dの複数のノズル76lは同じ風速で空気を噴射する。したがって、中段搬送部51mにより搬送される印刷媒体Mの表面M1に対して複数のノズル76lから一様な風を噴射できる。
【0082】
同様に、送風乾燥機7c、7dの複数のノズル76uは同じ風速で空気を噴射する。かかる構成では、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mの裏面M2に対して複数のノズル76uから一様な風を噴射できる。
【0083】
特に、送風乾燥機7c、7dにおいて、複数のノズル76lが噴射する空気の風速と、複数のノズル76uが噴射する空気の風速とが同じである。したがって、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mが、ノズル76lおよびノズル76uの一方に偏って接触するのを抑制できる。
【0084】
また、送風乾燥機7e、7fのノズル76uが噴射する空気の風速と、送風乾燥機7c、7dのノズル76lが噴射する空気の風速とが同じである。したがって、中段搬送部51mによって搬送される印刷媒体Mの表面M1および下段搬送部51lによって搬送される印刷媒体Mの表面M1に高い風速で空気を噴射して、印刷媒体Mの乾燥を促進することができる。
【0085】
ちなみに、本明細書において、熱風とは60度以上の風であり、熱風の温度は、好ましくは80度以上である。また、ノズル76u、76lから噴射する気体の種類は、ここの例のエアに限られない。
【0086】
以上に説明した実施形態では、搬送部51によって搬送中の印刷媒体Mの表面M1(記録面)に対して、送風乾燥機7a、7b(前段乾燥部)がエアを噴射してから、送風乾燥機7c、7d(次段乾燥部)がエアを噴射することで、表面M1に水性インクが付着した印刷媒体Mを乾燥させる。この際、送風乾燥機7a、7bが噴射するエアの風速は、送風乾燥機7c、7dが噴射するエアの風速よりも低い。つまり、送風乾燥機7a、7bを通過する印刷媒体Mの表面M1には多量の水分が残存するため、低い風速でエアを噴射することで、水性インクが流れるのを抑制しつつ印刷媒体Mを乾燥させる。一方、送風乾燥機7a、7bによる乾燥を受けた印刷媒体Mの表面M1では水分が減少しており、水性インクの流動性が低下している。そこで、送風乾燥機7c、7dを通過する印刷媒体Mに対しては、高い風速でエアを噴射することで、印刷媒体Mの乾燥を促進する。こうして、噴射されるエアによって水性インクが流されて画像が乱されるのを抑制しつつ、印刷媒体Mの乾燥に要する時間を抑えることが可能となっている。
【0087】
また、送風乾燥機7a、7bは、印刷媒体Mの表面M1側において、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル76u(第1ノズル)を有し、印刷媒体Mの表面M1に向けてノズル76uからエアを噴射する。また、送風乾燥機7c、7dは、印刷媒体Mの表面M1側において、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル76l(第2ノズル)を有し、印刷媒体Mの表面M1に向けてノズル76lからエアを噴射する。この際、送風乾燥機7a、7bのノズル76uが噴射するエアの風速は、送風乾燥機7c、7dのノズル76lが噴射するエアの風速よりも低い。これによって、噴射されるエアによって水性インクが流されて画像が乱されるのを抑制しつつ、印刷媒体Mの乾燥に要する時間を抑えることが可能となる。
【0088】
また、送風乾燥機7a、7bの複数のノズル76uは同じ風速で気体を噴射し、送風乾燥機7c、7dの複数のノズル76lは同じ風速で気体を噴射する。かかる構成では、送風乾燥機7a、7bを通過する印刷媒体Mの表面M1に対して複数のノズル76uから一様な風を噴射できるとともに、送風乾燥機7c、7dを通過する印刷媒体Mの表面M1に対して複数のノズル76lから一様な風を噴射できる。
【0089】
また、送風乾燥機7a、7bは、印刷媒体Mの裏面M2側において、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のローラ74(回転体)を有する。これらのローラ74は、印刷媒体Mの裏面M2に接触する周面を有して印刷媒体Mに従動して回転する。つまり、送風乾燥機7a、7bにおける乾燥では、印刷媒体Mに多量に残存する水分の潜熱によって印刷媒体Mの温度分布が不均一になって、印刷媒体Mのしわが生じやすい。これに対して、送風乾燥機7a、7bでは、印刷媒体Mの裏面M2をローラ74により支持する。こうして、印刷媒体Mをローラ74に沿わせることで、印刷媒体M上の水分の潜熱による温度分布の影響に抗して印刷媒体Mのしわの発生を抑えることができる。
【0090】
また、送風乾燥機7a、7bでは、ノズル76uとローラ74とが、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に千鳥状に並ぶ。かかる構成では、ノズル76uからのエアの噴射により印刷媒体Mの表面M1からの水分蒸発を促進できるとともに、印刷媒体Mの裏面M2をローラ74でしっかりと支持して、しわの発生をより確実に抑制できる。
【0091】
また、送風乾燥機7c、7dは、印刷媒体Mの裏面M2側において、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル76u(第3ノズル)を有し、印刷媒体Mの裏面M2に向けてノズル76uからエアを噴射する。この際、送風乾燥機7a、7bのノズル76uが噴射するエアの風速は、送風乾燥機7c、7dのノズル76uが噴射するエアの風速よりも低く、換言すれば、送風乾燥機7c、7dのノズル76uの風速は送風乾燥機7a、7bのノズル76uの風速より高い。かかる構成では、送風乾燥機7c、7dを通過する印刷媒体Mに対して両側から高い風速でエアを噴射して、印刷媒体の乾燥を促進することができる。
【0092】
また、送風乾燥機7c、7dの複数のノズル76uは、同じ風速で気体を噴射する。かかる構成では、送風乾燥機7c、7dを通過する印刷媒体Mの裏面M2に対して複数のノズル76uから一様な風を噴射できる。
【0093】
また、送風乾燥機7c、7dにおいて複数のノズル76lが噴射するエアの風速と複数のノズル76uが噴射するエアの風速とが同じである。かかる構成では、送風乾燥機7c、7dを通過する印刷媒体Mが、ノズル76lおよびノズル76uの一方に偏って接触するのを抑制できる。
【0094】
また、送風乾燥機7c、7dでは、ノズル76lとノズル76uとが搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に千鳥状に並ぶ。かかる送風乾燥機7c、7dでは、ノズル76lとノズル76uとが印刷媒体Mの進行方向に互いにずれる。したがって、ノズル76uから噴射されるエアによって撓んだ印刷媒体Mの表面M1がノズル76lに接触するのを抑制できる。
【0095】
また、鉛直方向Zにおいて、送風乾燥機7c、7dは送風乾燥機7a、7bの下側に配置されており、換言すれば、送風乾燥機7a、7bと、送風乾燥機7c、7dとは鉛直方向Zから見て互いに重複するように配置されている。かかる構成では、乾燥装置5を水平方向Xに小型化することができる。
【0096】
また、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの送風乾燥機7a、7bにおける進行方向と、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの送風乾燥機7c、7dにおける進行方向とは、反対向きである。そして、搬送部51は、送風乾燥機7a、7bから搬送されてきた印刷媒体Mを下側へ折り曲げてから、送風乾燥機7c、7dへ向けてさらに折り曲げるローラ52、53(前段反転部)を有する。かかる構成では、ローラ52、53によって、上側の送風乾燥機7a、7bから下側の送風乾燥機7c、7dに印刷媒体Mを的確に搬送することができる。
【0097】
また、搬送部51は、表面M1が上側を向きつつ裏面M2が下側を向いた状態で送風乾燥機7a、7bにおける印刷媒体Mを搬送する。これに対して、送風乾燥機7a、7bでは、ノズル76uが搬送部51により搬送される印刷媒体Mの上側に配置され、ローラ74が搬送部51により搬送される印刷媒体Mの下側に配置される。かかる構成では、多量の水分が表面M1に残存する送風乾燥機7a、7bにおいて、表面M1が上側を向くため、ノズル76uから噴射されるエアによって吹き飛んだ水分が下方に落下するのを防止できる。
【0098】
また、搬送部51によって搬送される印刷媒体Mの進行方向の送風乾燥機7c、7dの下流側において、搬送部51により搬送中の印刷媒体Mの表面M1に向けてエアを噴射することで、印刷媒体Mを乾燥させる送風乾燥機7e、7f(後段乾燥部)が具備されている。鉛直方向Zにおいて、送風乾燥機7e、7fは、送風乾燥機7c、7dの下側に配置され、送風乾燥機7e、7fは、印刷媒体Mの表面M1側において、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル76u(第4ノズル)を有し、印刷媒体Mの表面M1に向けてノズル76uからエアを噴射する。この際、送風乾燥機7a、7bのノズル76uが噴射するエアの風速は、送風乾燥機7e、7fのノズル76uが噴射するエアの風速よりも低く、換言すれば、送風乾燥機7e、7fのノズル76uが噴射するエアの風速は、送風乾燥機7a、7bのノズル76uが噴射するエアの風速よりも高い。かかる構成では、送風乾燥機7c、7dで乾燥された印刷媒体Mが送風乾燥機7e、7fでさらに乾燥されるため、印刷媒体Mをより確実に乾燥させることができる。しかも、鉛直方向Zにおいて、送風乾燥機7e、7fは送風乾燥機7c、7dの下側に配置されており、換言すれば、送風乾燥機7c、7dと、送風乾燥機7e、7fとは鉛直方向Zから見て互いに重複するように配置されている。かかる構成では、乾燥装置5を水平方向Xに小型化することができる。
【0099】
また、送風乾燥機7e、7fのノズル76uが噴射するエアの風速と、送風乾燥機7c、7dのノズル76lが噴射するエアの風速とが同じである。かかる構成では、送風乾燥機7c、7dおよび送風乾燥機7e、7fを通過する印刷媒体Mに高い風速でエアを噴射して、印刷媒体Mの乾燥を促進することができる。
【0100】
また、送風乾燥機7e、7fは、印刷媒体Mの裏面M2側において、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの進行方向に配列された複数のノズル76l(第5ノズル)を有し、印刷媒体Mの裏面M2に向けてノズル76lからエアを噴射する。この際、送風乾燥機7a、7bのノズル76uが噴射するエアの風速は、送風乾燥機7e、7fのノズル76lが噴射する気体の風速よりも低く、換言すれば、送風乾燥機7e、7fのノズル76lが噴射する気体の風速は、送風乾燥機7a、7bのノズル76uが噴射するエアの風速よりも高い。かかる構成では、送風乾燥機7e、7fを通過する印刷媒体Mに対して両側から高い風速でエアを噴射して、印刷媒体Mの乾燥を促進することができる。
【0101】
また、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの送風乾燥機7c、7dにおける進行方向と、搬送部51により搬送される印刷媒体Mの送風乾燥機7e、7fにおける進行方向とは、反対向きである。これに対して、搬送部51は、送風乾燥機7c、7dから搬送されてきた印刷媒体Mを下側へ折り曲げてから、送風乾燥機7e、7fへ向けてさらに折り曲げるエアターンバー54、55(次段反転部)を有する。かかる構成では、エアターンバー54、55によって、上側の送風乾燥機7c、7dから下側の送風乾燥機7e、7fに印刷媒体Mを的確に搬送することができる。
【0102】
また、空気は、60度以上の温度を有する。かかる構成では、60度以上の熱風によって、印刷媒体Mの乾燥を促進することができる。
【0103】
また、印刷媒体Mの表面M1にプライマーを塗布する塗布装置2が具備されており、印刷装置3は、塗布装置2によってプライマーが塗布された表面M1に水性インクを付着させる。かかる構成では、プライマーによって水性インクを印刷媒体Mの表面M1に定着させることができる。
【0104】
以上に説明した実施形態では、印刷システム1が本発明の「印刷システム」の一例に相当し、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、乾燥装置5が本発明の「乾燥装置」の一例に相当し、搬送部51が本発明の「搬送部」の一例に相当し、ローラ52、53が本発明の「前段反転部」の一例に相当し、送風乾燥機7a、7bが本発明の「前段乾燥部」の一例に相当し、送風乾燥機7c、7dが本発明の「次段乾燥部」の一例に相当し、送風乾燥機7e、7fが本発明の「後段搬送部」の一例に相当し、送風乾燥機7a、7bのノズル76uが本発明の「第1ノズル」の一例に相当し、送風乾燥機7c、7dのノズル76lが本発明の「第2ノズル」の一例に相当し、送風乾燥機7c、7dのノズル76uが本発明の「第3ノズル」の一例に相当し、送風乾燥機7e、7fのノズル76uが本発明の「第4ノズル」の一例に相当し、送風乾燥機7e、7fのノズル76lが本発明の「第5ノズル」の一例に相当し、ローラ74が本発明の「回転体」の一例に相当し、印刷媒体Mが本発明の「印刷媒体」の一例に相当し、表面M1が本発明の「記録面」の一例に相当し、裏面M2が本発明の「非記録面」の一例に相当し、搬送部51によって本発明の「搬送工程」が実行され、送風乾燥機7a、7bによって本発明の「前段乾燥工程」が実行され、送風乾燥機7c、7dによって本発明の「次段乾燥工程」が実行される。
【0105】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。つまり、上記の例では、送風乾燥機7a、7bの複数のノズル76uは同じ風速で空気を噴射し、送風乾燥機7c、7dの複数のノズル76lは同じ風速で空気を噴射する。ただし、風速の設定例はこれに限られない。つまり、送風乾燥機7a、7bの各ノズル76uが等しい風速でエアを噴射する必要は必ずしもなく、これらのノズル76uの間で風速に違いがあっても構わない。同様に、送風乾燥機7c、7dの各ノズル76lの間で風速に違いがあっても構わない。風速に違いがある場合には、送風乾燥機7a、7bの各ノズル76uから噴射されるエアの風速のうち最高の風速を、送風乾燥機7c、7dの各ノズル76ulから噴射されるエアの風速のうち最低の風速より低く設定するとよい。
【0106】
また、送風乾燥機7a、7bがノズル76uから噴射する空気の風速を、送風乾燥機7c、7dがノズル76lから噴射する空気の風速を低くしており、送風乾燥機7a、7bが本発明の「前段乾燥部」に相当し、送風乾燥機7c、7dが本発明の「次段乾燥部」に相当している。しかしながら、「前段乾燥部」および「次段乾燥部」の構成態様はこれに限られない。一例を挙げると、送風乾燥機7aがノズル76uから噴射する空気の風速を、送風乾燥機7b、7c、7dがノズル76lから噴射する空気の風速を低くしてもよい。この例では、送風乾燥機7aが本発明の「前段乾燥部」に相当し、送風乾燥機7b、7c、7dが本発明の「次段乾燥部」に相当する。
【0107】
また、送風乾燥機7aあるいは送風乾燥機7bにおいて、ノズル76uの個数とローラ74との個数が同じである必要はなく、ノズル76uの個数がローラ74の個数より多くても、少なくてもよい。
【0108】
あるいは、図7に示すように、一部のローラ74をノズル76lに置き換えてもよい。ここで、図7は乾燥装置の変形例を模式的に示す正面図である。図7の乾燥装置5が図3の乾燥装置5と異なるのは、送風乾燥機7aが印刷媒体Mの下方にノズル76lを有する点であり、その他の構成は、これらの乾燥装置5で共通する。
【0109】
図7に示す乾燥装置5の送風乾燥機7aは、印刷媒体Mの下方に配置された複数(ノズル76uの個数よりN個少ない)のローラ74と、N個のノズル76lとを有する。なお、Nは1以上の整数であり、ここの例では「4」である。複数のローラ74は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの進行方向(水平方向X)に所定ピッチで配列され、各ローラ74の周面は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの裏面M2(下面)に下方から接触する。また、N個のノズル76lは、水平方向Xに所定ピッチで配列され、印刷媒体Mの裏面M2に下方から熱風を噴射する。上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの進行方向において、これら複数のローラ74はN個のノズル76lの下流側に位置し、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mは、ノズル76lから熱風を噴射されてから、ローラ74によって下方から支持される。
【0110】
このように図7の例では、送風乾燥機7a、7b(前段乾燥部)は、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mの進行方向において、複数のローラ74(回転体)のうちの最上流のローラ74(図7の右端のローラ74)より上流側に配置されたノズル76lを、印刷媒体Mの裏面M2(非記録面)側に有し、ノズル76lは熱風を裏面M2に噴射する。搬入口61から送風乾燥機7a、7bに進入した最初の段階では、印刷媒体Mにおける温度分布は比較的均一である。そのため、印刷媒体Mの裏面M2にノズル76lから熱風を噴射して、印刷媒体Mの乾燥を促進することができる。
【0111】
図8は乾燥装置の別の変形例を模式的に示す図である。この変形例では、乾燥装置5は、複数のローラ74を加熱する加熱部75を有する。加熱部75は、ローラ74の内部に配置された電熱線751と、電熱線751に電流を供給する電源752とを有する。電熱線751は、複数のローラ74のそれぞれに対して設けられている。そして、電熱線751は、電源752から供給された電流によって発熱して、ローラ74を加熱する。したがって、上段搬送部51uによって搬送される印刷媒体Mは、加熱されたローラ74によって下方から支持される。かかる構成では、ローラ74の熱によって、印刷媒体Mの乾燥を促進することができる。
【0112】
さらに、図7および図8とは異なる変形を加えることもできる。例えば、送風乾燥機7bを送風乾燥機7eと同一に構成してもよい。かかる変形例では、送風乾燥機7bは、ローラ74を有さず、印刷媒体Mの上下に配置されたノズル76uおよびノズル76lによって印刷媒体Mを支持し、送風乾燥機7aのみがローラ74を有する。
【0113】
また、上段搬送部51u、中段搬送部51mおよび下段搬送部51lのそれぞれに対して2個ずつ送風乾燥機を配置する必要は必ずしもない。したがって、上段搬送部51uに対して単一の送風乾燥機7aを配置し、中段搬送部51mに対して単一の送風乾燥機7dを配置し、下段搬送部51lに対して単一の送風乾燥機7eを配置してもよい。
【0114】
また、送風乾燥機7a~7fの配置を上下に分ける必要は必ずしもない。したがって、送風乾燥機7a~7dを同じ高さに配置して、水平方向Xに配列してもよい。あるいは、送風乾燥機7a~7fを同じ高さに配置して、水平方向Xに配列してもよい。
【0115】
また、上段供給部91u、中段供給部91mおよび下段供給部91lが同一の構成を具備する必要はない。したがって、例えば、排気チャンバ82、83から排気されたエアを中段供給部91mの導入管912に戻すフィードバック用の配管を設けてもよい。また、下段供給部91lに同様のフィードバック用の配管を設けて、排気チャンバ83、84から排気されたエアを戻してもよい。
【0116】
また、搬送部4の具体的な構成は上記の例に限られない。したがって、搬入部41、上昇搬送部42、上方搬送部43、下降搬送部44、カラー搬送部45、反転搬送部47、白搬送部48および搬出部49において、ローラの配置あるいは個数等を適宜変更することもできる。
【0117】
また、印刷装置3の筐体31に対して搬入部41から印刷媒体Mを搬入する必要は必ずしもない。例えば、搬入部41および上昇搬送部42を設けずに、筐体31の一方側X1から上方搬送部43へ印刷媒体Mを搬入するように印刷装置3を構成してもよい。
【0118】
また、印刷装置3において、プレ乾燥部34および上方乾燥部35を設けることは必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、水性インクが付着する印刷媒体Mを熱風により乾燥させる技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
1…印刷システム
3…印刷装置
5…乾燥装置
51…搬送部
52…ローラ(前段反転部)
53…ローラ(前段反転部)
7a…送風乾燥機(前段乾燥部)
7b…送風乾燥機(前段乾燥部)
7c…送風乾燥機(次段乾燥部)
7d…送風乾燥機(次段乾燥部)
7e…送風乾燥機(後段搬送部)
7f…送風乾燥機(後段搬送部)
74…ローラ(回転体)
76u…ノズル(第1ノズル、第3ノズル、第4ノズル)
76l…ノズル(第2ノズル、第5ノズル、第6ノズル)
M…印刷媒体
M1…表面(記録面)
M2…裏面(非記録面)」
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8