(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
A47J27/00 109A
A47J27/00 109S
(21)【出願番号】P 2020083183
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】島田 博司
(72)【発明者】
【氏名】柳田 真志
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-169912(JP,A)
【文献】特開平10-325985(JP,A)
【文献】特開昭63-095850(JP,A)
【文献】特開2021-044102(JP,A)
【文献】特開2021-009802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
H01H 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器であって、
調理鍋と、
前記調理鍋を閉じる蓋体と、
ソレノイドを有し、前記ソレノイドを用いて前記調理鍋内の圧力を調整する調圧器と、
交流電源の電圧のゼロクロスを検出した場合に検出信号を出力するゼロクロス検出器と、
前記検出信号の入力に応じて、前記ソレノイドに対する、前記交流電源に応じた電圧の印加を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1の検出信号が入力されてから、第1時間が経過した後に、前記ソレノイドに対する電圧の印加を開始する第1印加開始処理と、
前記ソレノイドに電圧を印加している状態で、第2の検出信号に応じて、前記ソレノイドに対する電圧の印加を停止する第1印加停止処理と、
前記第1印加開始処理によって前記ソレノイドに電圧を印加している状態で、前記第1の検出信号が入力されてから第2時間が経過した場合に、前記ソレノイドに対する電圧の印加を停止する第2印加停止処理と、
前記第2印加停止処理によって前記ソレノイドに対する電圧の印加が停止した場合に、前記第1の検出信号が入力されてから第3時間が経過した後、前記ソレノイドに対する電圧の印加を開始する第2印加開始処理と、
を実行
し、
前記第3時間は、前記交流電源のゼロクロス周期2個分の時間と前記第1時間との差と等しい、調理器。
【請求項2】
請求項
1の調理器であって、
前記交流電源のゼロクロス周期を特定するゼロクロス周期特定部、
をさらに備え、
前記制御部は、前記ゼロクロス周期特定部によって特定される前記ゼロクロス周期に基づいて、前記第1時間および前記第2時間を設定する、調理器。
【請求項3】
請求項
2の調理器であって、
前記制御部は、前記第2時間を、前記ゼロクロス周期特定部によって特定される前記ゼロクロス周期よりも長い時間に設定する、調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項の調理器であって、
前記調圧器は、前記蓋
体に位置しており、前記調理鍋の内側と連通する開口を塞ぐボール、を有し、
前記ソレノイドは、前記ボールを、前記開口を塞ぐ位置と、前記開口を開放する位置との間で移動させる、調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸し器や炊飯器など、調理鍋の圧力を一定に維持しながら、圧力鍋を加熱して調理する調理鍋が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ソレノイドを有する調圧器を備えた炊飯器が開示されている。特許文献1の炊飯器では、マイコンが、ソレノイドのプランジャを一定位置に保持するため、本体に供給される交流電圧のゼロクロス周期に同期して、ソレノイドに通電を許容するパルス信号を送信する。特許文献1では、駆動電圧の全波整流波形内においてパルス制御することによって、消費電力の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電源周波数が不安定な場合、電源周波数の変動によって、ソレノイドが過熱する可能性があった。例えば、電源周波数が低下した場合、ゼロクロス周期が長くなることによって、ソレノイドに対するパルス信号が長くなる場合がある。その結果、ソレノイドの駆動時間が長くなり、ソレノイドが過熱する可能性があった。
【0006】
また、電源周波数が上昇した場合には、ゼロクロス周期が短くなる。すると、ノイズによるゼロクロスの誤検出をマイコンがしてしまうことを防ぐために設けられたゼロクロス読み飛ばし期間(ノイズキャンセル時間)を下回ることによって、ゼロクロスの検出信号が読み飛ばされる場合がある。このため、見かけ上のゼロクロス周期が長くなることによって、ソレノイド駆動時間が長くなり、ソレノイドが過熱する可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、ゼロクロス周期が変動しても、ソレノイドに対する電圧の印加を適切に行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、調理器は、調理鍋と、前記調理鍋を閉じる蓋体と、ソレノイドを有し、前記ソレノイドを用いて前記調理鍋内の圧力を調整する調圧器と、交流電源の電圧のゼロクロスを検出した場合に検出信号を出力するゼロクロス検出器と、前記検出信号の入力に応じて、前記ソレノイドに対する、前記交流電源に応じた電圧の印加を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、第1の検出信号が入力されてから、第1時間が経過した後に、前記ソレノイドに対する電圧の印加を開始する第1印加開始処理と、前記ソレノイドに電圧を印加している状態で、第2の検出信号に応じて、前記ソレノイドに対する電圧の印加を停止する第1印加停止処理と、前記第1印加開始処理によって前記ソレノイドに電圧を印加している状態で、前記第1の検出信号が入力されてから第2時間が経過した場合に、前記ソレノイドに対する電圧の印加を停止する第2印加停止処理と、を実行する。
【0009】
この調理器によると、ゼロクロス周期の変動によって、ゼロクロスの検出信号の入力がない場合であっても、第2印加停止処理によって、検出信号が入力されてから第2時間が経過した時点で、ソレノイドに対する電圧の印加が停止される。これにより、ゼロクロス周期が変動した場合であっても、ソレノイドに対する電圧の印加を適切に行うことができる。
【0010】
前記制御部は、前記第2印加停止処理によって前記ソレノイドに対する電圧の印加が停止した場合に、前記第1の検出信号が入力されてから第3時間が経過した後、前記ソレノイドに対する電圧の印加を開始する第2印加開始処理をさらに実行することが好ましい。これにより、第2印加停止処理によって電圧の印加を停止した場合に、第3時間が経過した時点で、ソレノイドに対する電圧の印加を開始できる。したがって、ソレノイドのプランジャの位置を保持できる。
【0011】
前記調理器は、前記交流電源のゼロクロス周期を特定するゼロクロス周期特定部、をさらに備え、前記制御部は、前記ゼロクロス周期特定部によって特定される前記ゼロクロス周期に基づいて、前記第1時間および前記第2時間を設定することが好ましい。これにより、交流電源のゼロクロス周期に応じて、第1時間および第2時間を適切に設定できる。
【0012】
前記制御部は、前記第2時間を、前記ゼロクロス周期特定部によって特定される前記ゼロクロス周期よりも長い時間に設定することが好ましい。第2時間がゼロクロス周期よりも長いため、ソレノイドに充分な電流を流すことができる。したがって、ソレノイドのプランジャの位置を維持できる。
【0013】
前記調圧器は、前記蓋に位置しており、前記調理鍋の内側と連通する開口を塞ぐボール、を有し、前記ソレノイドは、前記ボールを、前記開口を塞ぐ位置と、前記開口を開放する位置との間で移動させることが好ましい。これにより、ソレノイドがボールを移動させることによって、調理鍋内を調圧できる。
【発明の効果】
【0014】
ゼロクロス周期の変動によって、ゼロクロスの検出信号の入力がない場合であっても、第2印加停止処理によって、検出信号が入力されてから第2時間が経過した時点で、ソレノイドに対する電圧の印加が停止される。これにより、ゼロクロス周期が変動した場合であっても、ソレノイドに対する電圧の印加を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1に示すソレノイドの制御回路を示す図である。
【
図3】マイコンがソレノイドのプランジャを保持する際に出力する制御信号とソレノイドに印加される電圧の関係を示す波形図である。
【
図4】ゼロクロスの検出信号がない場合に、マイコンが出力する制御信号とソレノイドに印加される電圧の関係を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0017】
図1は、実施形態の圧力炊飯器1を示す図である。圧力炊飯器1(調理器)は、内鍋2(調理鍋)、装置本体3、誘導加熱コイル6、内鍋用温度センサ7、蓋体8、蓋体用温度センサ12、圧力センサ13、調圧器14、およびマイコン18(制御部)を備える。
【0018】
内鍋2は、熱伝導率が高いアルミや銅などからなる母材と、母材の外面に対してコーティングまたは接合された強磁性材料とを有する。強磁性材料は、誘導加熱コイル6に対して高周波電流を通電したときに生じる渦電流によって電磁誘導加熱される。
【0019】
装置本体3は、有底筒状である胴体4と、胴体4の内部に位置する保護枠5とを備える。保護枠5は、内鍋2を収容する。保護枠5は、非導電性材料で構成される。誘導加熱コイル6、内鍋用温度センサ7、およびマイコン18は、胴体4と保護枠5との間に位置する。
【0020】
誘導加熱コイル6は、保護枠5の下面に位置する。誘導加熱コイル6は、内鍋2を加熱する加熱手段である。誘導加熱コイル6は、高周波電流が通電されることによって、内鍋2を電磁誘導加熱する。
【0021】
内鍋用温度センサ7は、内鍋2の温度を検出する。内鍋用温度センサ7は、保護枠5の底部に位置する。内鍋用温度センサ7は、マイコン18と電気的に接続されており、内鍋用温度センサ7の先端の検出部は、保護枠5の貫通孔を通じて内鍋2の外面に接触する。これにより、内鍋用温度センサ7は、内鍋2の温度をマイコン18に出力する。
【0022】
蓋体8は、内鍋2および装置本体3の各開口を閉じる部材である。蓋体8は、ヒンジを介して胴体4と連結されている。蓋体8は、ヒンジを中心として、内鍋2および装置本体3の各開口を閉鎖する位置と開放する位置の間で移動する。
【0023】
蓋体8は、内蓋11を有する。内蓋11は、蓋体8における内鍋2側に位置する。蓋体8は、蓋体用温度センサ12、圧力センサ13、および調圧器14(圧力機構)を有する。蓋体用温度センサ12、圧力センサ13、および調圧器14は、蓋体8の内部に位置する。
【0024】
蓋体用温度センサ12および圧力センサ13は、マイコン18と電気的に接続されている。蓋体用温度センサ12は、内鍋2内の温度を検出するとともに、検出した温度をマイコン18に出力する。圧力センサ13は、内鍋2内の圧力を検出するとともに、検出した圧力をマイコン18に出力する。
【0025】
調圧器14は、蒸気通路15と、調圧ボール16と、ソレノイド17とを有する。蒸気通路15は、内鍋2と連通する開口151を有する。調圧ボール16は、蒸気通路15の内側に位置し、かつ、開口151の上側に位置する。ソレノイド17は、調圧ボール16を駆動するための駆動部である。ソレノイド17は、プランジャ171を備える。
【0026】
調圧器14は、ソレノイド17のプランジャが押し出されることによって、調圧ボール16を押圧する。押圧された調圧ボール16は、開口151から離れた位置に移動する。これによって、内鍋2内と蓋体8の外側とが、蒸気通路15を介して連通する(オフ状態)。圧力炊飯器1において、圧力炊飯が実行される場合、ソレノイド17のプランジャ171が退避することによって、調圧ボール16が開口151を閉鎖する位置に移動する。これにより、内鍋2の内圧を高めることが可能となる(オン状態)。なお、内鍋2の内圧が所定値を越えると、内鍋2内の蒸気が調圧ボール16を浮き上がらせる。これによって、内鍋2内の蒸気は、外部に排出される。
【0027】
マイコン18は、制御基板32に搭載されている。マイコン18は、プログラムを記憶する記憶部を有する。記憶部は、例えば、フラッシュROMまたはEEPROMである。マイコン18は、プログラムに従って、予熱、炊飯(圧力制御)、むらし、及び保温の各工程を順次実行して炊飯動作を行う。また、マイコン18は、内鍋用温度センサ7、蓋体用温度センサ12、圧力センサ13からの入力に応じて、誘導加熱コイル6およびソレノイド17を制御する。また、マイコン18は、圧力センサ13が正常に動作しているか否かを検知し、正常に動作していないことを検知した場合は、出力部(不図示)を介してユーザに通知する。出力部は、例えば、ランプ、スピーカー、またはディスプレイである。
【0028】
装置本体3の外表面には、スイッチ類(不図示)が設けられる。スイッチ類は、マイコン18と電気的に接続される。マイコン18は、スイッチ類に対するユーザの操作入力に応じて、処理を実行する。なお、スイッチ類の代わりにタッチパネルディスプレイが設けられてもよい。
【0029】
図2は、
図1に示すソレノイド17の制御回路を示す図である。
図2に示すように、制御基板32は、ソレノイド駆動回路35、整流回路38、電源電圧測定器42(ゼロクロス検出器)を備える。
【0030】
ソレノイド駆動回路35は、ソレノイド17への電力の供給をオン/オフする。ソレノイド駆動回路35は、ダイオード36とトランジスタ37とを有する。ダイオード36は、ソレノイド17と並列に接続されている。
【0031】
トランジスタ37のコレクタは、ソレノイド17と直列に接続される。トランジスタ37のエミッタは、整流回路38に接続されるとともに、アースに接続される。トランジスタ37のベースは、抵抗39を介して、マイコン18の接続ポート33aに接続される。また、トランジスタ37のベースは、抵抗40を介してアースに接続される。
【0032】
電源電圧測定器42は、マイコン18に接続される。電源電圧測定器42は、電源プラグ20(
図1参照)を介して商用電源41(交流電源)から供給される交流電圧を検出し、検出信号をマイコン18に入力する。具体的に、電源電圧測定器42は、商用電源41の交流電圧がゼロ電圧となるゼロクロスを検出し、ゼロクロスを検出したタイミングを表す検出信号をマイコン18に出力する。
【0033】
マイコン18は、電源電圧測定器42から送信される検出信号に基づいて、商用電源41のゼロクロス周期を特定する。つまり、マイコン18は、ゼロクロス周期特定部として機能する。なお、圧力炊飯器1は、商用電源41のゼロクロス周期を検出する専用の回路を別途備えてもよい。
【0034】
整流回路38とソレノイド17との間には、ヒューズ45が位置する。ヒューズ45は、例えば、ソレノイド17の近傍に位置しており、ソレノイドの過熱を検知して開路する温度ヒューズである。
【0035】
マイコン18は、内鍋2内に圧力を投入する際に、ソレノイド駆動回路35を介してソレノイド17に駆動電圧(例えば、DC90V)を印加することによって、ソレノイド17のプランジャ171を退避させる。これにより、
図1中、調圧ボール28が、破線で示す位置から実線で示す位置に移動する。これにより、調圧ボール16が開口151を閉塞する。また、マイコン18は、開口151の閉塞を保持するため、ソレノイド駆動回路35を介してソレノイド17に対する電圧の印加をオン、オフ制御する。
【0036】
マイコン18は、スイッチ類に対する操作入力に応じて炊飯処理を開始すると、予熱工程を実行する。予熱工程では、マイコン18は、接続ポート33aから、ソレノイド駆動回路35のトランジスタ37をオン状態とする信号を出力しない。このため、トランジスタ37は、オフ状態を維持する。すると、ソレノイド17に対して駆動電圧が印加されないため、ソレノイド17がプランジャ171を進出させた状態(非駆動状態)となる。これにより、調圧ボール16は、
図1の破線で示す位置へ移動するため、開口151が開放される。
【0037】
マイコン18は、予熱工程を終了すると、炊飯工程に移行する。マイコン18は、炊飯工程において、内鍋2内に圧力を投入する。具体的には、マイコン18は、まず、接続ポート33aからソレノイド駆動回路35のトランジスタ37へオン状態とするための信号を出力する。そうすると、ベース電位がしきい値を越えることによって、トランジスタ37がオン状態になる。これにより、ソレノイド17は、プランジャ171を退避させた状態(駆動状態)となる。ソレノイド17が駆動状態となることにより、調圧ボール16が自重によって開口151上に移動する。なお、初期のソレノイドの駆動は、プランジャを確実に退避させた状態にするために、ソレノイドに対して全波整流波形で駆動電圧を印加するのが好ましい。また、ソレノイドに駆動電圧の印加を開始する工程は、予熱工程からであってもよい。
【0038】
図3は、マイコン18がソレノイド17のプランジャ171を保持する際に出力する制御信号とソレノイド17に印加される電圧の関係を示す波形図である。
図3(A)は、電源電圧測定器42からの信号に基づき、マイコン18が出力する検出信号の波形W20を示す図である。
図3(B)は、マイコン18がソレノイド駆動回路35に出力する制御信号の波形W21を示す図である。
図3(C)は、波形W21の制御信号に応じてソレノイド17に印加される電圧の波形W22を示す図である。
【0039】
前述したように、ソレノイド17のプランジャ171が、完全に退避すると、マイコン18は、
図3(A)に示す検出信号に基づいて、
図3(B)に示す制御信号をトランジスタ37に出力する。具体的に、マイコン18は、検出信号がオンになってから時間T1(第1時間)が経過した時点で、制御信号をオンにする(第1印加開始処理S1)。
【0040】
マイコン18は、時間T1を、商用電源41のゼロクロス周期CT1よりも短い時間に設定する。マイコン18が、ゼロクロスが検出されてから時間T1が経過した後に制御信号をオンにすることによって、交流電圧が安定したタイミングでソレノイド17に対して電圧を印加できる。
【0041】
マイコン18は、炊飯工程よりも前の時点で、商用電源41のゼロクロス周期CT1を特定する。例えば、マイコン18は、圧力炊飯器1の電源が投入された直後、または、上記予熱工程の前などの適宜のタイミングで、ゼロクロス周期CT1を特定してもよい。
【0042】
商用電源41の電源周波数が50Hzである場合、通常のゼロクロス周期CT1は10.00msである。また、商用電源41の電源周波数が60Hzである場合、通常のゼロクロス周期CT1は8.33msである。時間T1は、これら通常のゼロクロス周期CT1よりも短い時間に設定される。
【0043】
マイコン18は、制御信号がオンの状態で、次の検出信号が検出されると、制御信号をオフにする。これにより、マイコン18は、ソレノイド17に対する電圧の印加を停止する(第1印加停止処理S2)。このように、マイコン18が、ゼロクロスの検出信号に基づいて、第1印加開始処理S1および第1印加停止処理S2を交互に繰り返すことによって、制御信号を出力する。すると、ソレノイド駆動回路35のトランジスタ37は、全波整流波形と同じ周期で、オン状態とオフ状態の間を周期的に遷移する。その結果、ソレノイド17には、
図3(C)に示すように、破線で示す全波整流波形内で電圧が印加され、プランジャ171が退避した位置に保持される。すると、調圧ボール16は、自重によって開口151を閉塞した状態を維持する。これにより、内鍋2内には大気圧以上の圧力が投入される。
【0044】
図4は、ゼロクロスの検出信号が部分的に欠けた場合に、マイコン18が出力する制御信号とソレノイド17に印加される電圧の関係を示す波形図である。
図4(A)は、電源電圧測定器42がマイコン18に出力する検出信号の波形W30を示す図である。
図4(B)は、マイコン18がソレノイド駆動回路35に与える制御信号の波形W31を示す図である。
図4(C)は、波形W31の制御信号に応じてソレノイド17に印加される電圧の波形W32を示す図である。
【0045】
図3において説明したように、マイコン18は、検出信号がオンになってから時間T1が経過した時点で駆動信号をオンする。これにより、マイコン18は、ソレノイド17に対する電圧の印加を許可する(電圧印加処理)。商用電源41の電源周波数が変動するなどして、電源電圧測定器42からマイコン18に対して、ゼロクロスの検出信号が入力されなかった場合、
図4(A)中、破線で示すように、検出信号がオフのままとなるため、
図4(B)に示すように、マイコン18からの制御信号はオンに維持される。ただし、マイコン18は、検出信号がオンになってから時間T2(第2時間)が経過した時点で、駆動信号をオフにする(第2印加停止処理S3)。
【0046】
マイコン18は、時間T2を、通常のゼロクロス周期CT1よりも長い時間に設定する。このため、マイコン18が第2印加停止処理S3を実行した場合、
図4(C)に示すように、ソレノイド17に対する電圧の印加時間は、(=T2-T1)となる。この印加時間は、通常の印加時間(=CT1-T1)よりも長くなる。
【0047】
仮にマイコン18が、第2印加停止処理S3を行わずに第1印加停止処理S2のみを行った場合、
図4(B)中、破線で示すように、マイコン18は、次の検出信号がオンになるまで、制御信号をオンにすることとなる。そうすると、ソレノイド17に対する電圧の印加時間が長くなってしまう。例えば、電源周波数が低下し、ゼロクロス周期が長くなることが頻発した場合、ソレノイド17が過熱し、さらには、ヒューズ45が切れる可能性がある。また、電源周波数が増大し、ゼロクロスの読み飛ばしによって見かけ上のゼロクロス周期が長くなることが頻発した場合にも、ソレノイド17が過熱する可能性がある。これに対して、本実施形態では、時間T2が経過した時点で電圧の印加が停止されるため、ソレノイド17に流れる電流が抑えられる。したがって、ソレノイド17の過熱を抑制できる。
【0048】
図4(B)に示すように、マイコン18は、第2印加停止処理S3によって制御信号をオフにした場合、検出信号から時間T3(第3時間)が経過した時点で、制御信号をオンにする(第2印加開始処理S4)。これより、
図4(C)に示すように、ソレノイド17に対して電圧が印加される。また、マイコン18は、検出信号に応じて、制御信号をオフにする(第1印加停止処理S2)。第2印加開始処理S4および第1印加停止処理S2による、ソレノイド17に対する電圧の印加時間は、2・CT1-T3となる。
【0049】
マイコン18は、時間T3を、通常のゼロクロス周期CT1よりも長く設定する。また、マイコン18は、時間T3を、時間T2よりも長い時間に設定する。好ましくは、マイコン18は、時間T3を、ゼロクロス周期2個分の時間(=2・CT1)よりも短い時間に設定する。マイコン18は、時間T3を、ゼロクロス周期2個分の時間と時間T1の差(=2・CT1-T1)と等しくしても良い。この場合、ソレノイド17に対する電圧の印加時間(=2・CT1-T3)が、通常印加時間(=CT1-T1)と等しくなる。これにより、ソレノイド17に対して通常時と同じように電圧の印加を行うことができる。
【0050】
このように、マイコン18が、第2印加停止処理S3によってソレノイド17に対する電圧の印加を停止した場合に、第2印加開始処理S4を実行することによって、ソレノイド17に電圧を印加できる。このため、ソレノイド17のプランジャ171の位置を適切に保持できる。
【0051】
マイコン18は、既定時間内にゼロクロスの検出信号が入力されなかった場合、停電モードに移行してもよい。例えば、マイコン18は、正常なゼロクロス周期2個分の時間(=2・CT1)以内にゼロクロスの検出信号がオンにならない場合、停電モードに移行してもよい。マイコン18は、停電モードに移行すると、ソレノイド17に対する電力供給の停止、および、誘導加熱コイル6に対する電力供給の停止など、炊飯制御を停止する。
【0052】
以上のように、本実施形態の圧力炊飯器1によれば、ゼロクロス周期の変動によりゼロクロスの検出信号の入力がない場合でも、第2印加停止処理S3によって、検出信号の入力から時間T2が経過した時点で、ソレノイド17に対する電圧の印加が停止される。これにより、ゼロクロス周期が変動した場合であっても、電流がソレノイド17に過剰に流れることを抑制できるため、ソレノイド17の過熱を抑制できる。
【0053】
また、第2印加停止処理S3によってソレノイド17に対する電圧の印加を停止した場合には、第2印加開始処理S4によって、検出信号が入力されてから時間T3が経過した時点で、ソレノイド17に対して電圧が印加される。これにより、ソレノイドのプランジャの位置を好適に保持できる。
【0054】
なお、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、調圧器14は、ソレノイド17が調圧ボール16を移動させるように構成されている。しかしながら、調圧器14は、その他の構成によって構成されていてもよい。また、本発明の調理器は、圧力炊飯器1に限定されるものではなく、例えば蒸し器などであってもよい。
【0055】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 圧力炊飯器(調理器)
2 内鍋
8 蓋体
10 蓋ヒータ
14 調圧器
151 開口
16 調圧ボール
17 ソレノイド
171 プランジャ
18 マイコン(制御部)
20 電源プラグ
28 調圧ボール
41 商用電源(交流電源)
42 電源電圧測定器(ゼロクロス検出器)