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特許7446685メタルシールおよびメタルシールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】メタルシールおよびメタルシールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20240304BHJP
   F16J 15/00 20060101ALI20240304BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F16J15/08 H
F16J15/00 C
F16J15/06 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020096709
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021188716
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英俊
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 仁
(72)【発明者】
【氏名】河野 徹
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0066005(US,A1)
【文献】特開2010-096233(JP,A)
【文献】特開平07-330455(JP,A)
【文献】特開平08-180823(JP,A)
【文献】特開昭62-147174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0074338(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被取付部材に接触する第1接触部分を有する第1板部と、第2の被取付部材に接触する第2接触部分を有し前記第1板部に対向して配置される第2板部と、前記第1板部及び前記第2板部の端部同士を接続する湾曲部と、を備えたメタル体を具備するメタルシールであって、
前記メタルシールは、前記第1板部と前記第2板部との間に配置され、前記メタル体の自然状態時の伸縮方向寸法よりも短い基材と、前記基材の両端部を前記第1板部と前記第2板部にそれぞれ接着する所定の温度で接着特性を失う接着材とを具備しており、
前記接着材の融点は、前記基材の融点よりも低温であるメタルシール。
【請求項2】
前記基材は、所定の温度で気化する部材により構成されている請求項1に記載のメタルシール。
【請求項3】
前記基材は、前記湾曲部とは反対側の端部に配置されている請求項1または2に記載のメタルシール。
【請求項4】
前記基材は、前記第1板部及び前記第2板部の長手方向に亘って幅が一定の帯状をなしている請求項1ないし3のいずれかに記載のメタルシール。
【請求項5】
前記基材には、前記メタル体側の空間と被密封流体側の空間とに連通する開口が設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載のメタルシール。
【請求項6】
前記第1板部及び前記第2板部の内面には、前記第1及び第2接触部分に向けて凹む断面曲面形状の凹部が形成されており、前記基材の両端部は、各前記凹部に沿った曲面形状をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載のメタルシール。
【請求項7】
湾曲部のそれぞれの端部に接続され対向する第1板部と第2板部との間に、自然状態の伸縮方向寸法よりも短い基材を配置し、メタル体を圧縮させた状態で該基材の両端部と前記第1板部及び前記第2板部とを所定の温度で接着特性を失う接着材を介在させて接着固定し、前記接着材の融点は、前記基材の融点よりも低温であるメタルシールの製造方法。
【請求項8】
前記湾曲部を構成する谷折り部に前記基材を当て該基材の両端部と前記第1板部及び前記第2板部とを加圧した状態で前記接着固定した請求項7に記載のメタルシールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動機器の密封に用いられるメタルシールおよびメタルシールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製やゴム製のOリングが使用できない高温、極低温、高圧、高真空等の過酷な条件下で作動機器の連結部分を密封する際には、メタルシールが用いられている。このメタルシールは、連結部分を構成する2つの被取付部材間に挟み込まれることにより圧縮された状態で、これら被取付部材間をシールしている。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるメタルシールは、ガスタービンに用いられており、第1の被取付部材に接触する接触部分を有する環状の第1板部と、第2の被取付部材に接触する接触部分を有する環状の第2板部と、第1板部と第2板部との外径端部同士を連結する蛇腹部と、を有するメタル体及び該メタル体を圧縮状態に保持する接着材を具備している。
【0004】
また、第1及び第2の被取付部材間にメタル体を取付ける前の状態では、メタル体の内側に充填された接着材により、該メタル体の伸縮方向の寸法が第1及び第2の被取付部材間の設計寸法よりも小さい圧縮状態で保持されてメタルシールが形成されており、メタル体が圧縮状態にあるメタルシールを第1及び第2の被取付部材間に配置するようになっている。メタル体は、自然状態時において伸縮方向の寸法が第1及び第2の被取付部材間の設計寸法よりも大きく設定されている。
【0005】
また、ガスタービン稼働時には、発生する熱により接着材の接着特性が失われることで、接着材によるメタル体の保持が解除され、メタル体は伸長し、第1板部及び第2板部が第1及び第2の被取付部材に押し付けられることで第1及び第2の被取付部材間を密封するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6932353号明細書(第1頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようなメタルシールにあっては、第1及び第2の被取付部材間にメタルシールを取付ける時には、メタルシールの伸縮方向の寸法が第1及び第2の被取付部材間の設計寸法よりも小さい圧縮状態となっているので、メタルシールからの弾性力を受けることなく、第1及び第2の被取付部材同士の接続作業を簡便にかつ確実に行うことができるようになっている。しかしながら、メタル体の内側に接着材を充填することにより圧縮状態が保持される構成であるため、接着材が多く必要となり、かつ熱が伝わりにくく、接着材によるメタル体の圧縮状態の保持が解除されるまでに時間がかかってしまう虞あるとともに、接着材の充填作業と、接着材の硬化作業に時間と手間がかかり、メタル体を圧縮状態で保持させる作業が煩雑であった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、メタル体の圧縮状態を早期に解除できるメタルシールを提供することを目的とするとともに、メタル体を簡便かつ短時間で圧縮状態に保持できるメタルシールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明のメタルシールは、
第1の被取付部材に接触する第1接触部分を有する第1板部と、第2の被取付部材に接触する第2接触部分を有し前記第1板部に対向して配置される第2板部と、前記第1板部及び前記第2板部の端部同士を接続する湾曲部と、を備えたメタル体を具備するメタルシールであって、
前記メタルシールは、前記第1板部と前記第2板部との間に配置され、前記メタル体の自然状態時の伸縮方向寸法よりも短い基材と、前記基材の両端部を前記第1板部と前記第2板部にそれぞれ接着する所定の温度で接着特性を失う接着材とを具備している。
これによれば、基材の両端部が接着材で第1板部と第2板部に接着されることでメタルシールはメタル体が圧縮された状態で保持されているため、使用する接着材を少なくすることができる。これにより、所定以上の温度により接着材の接着特性が短時間で失われ、メタル体の圧縮状態が短時間で解除されてメタル体が伸長し第1及び第2接触部が第1及び第2の被取付部材に圧接され、第1及び第2の被取付部材間を早期に密封できる。
【0010】
前記基材は、所定の温度で気化する部材により構成されていてもよい。
これによれば、基材が所定の温度で気化するため、第1及び第2の被取付部材を有する作動機器の使用時に基材が作動機器またはメタル体に悪影響を与えることを防止できる。
【0011】
前記基材は、前記湾曲部とは反対側の端部に配置されていてもよい。
これによれば、第1及び第2の被取付部材により密封される高温の被密封流体に基材及び接着材を近付けて配置できるので、接着材の接着特性を早く失わせることができる。
【0012】
前記基材は、前記第1板部及び前記第2板部の長手方向に亘って幅が一定の帯状をなしていてもよい。
これによれば、基材によりメタル体が第1板部及び第2板部の長手方向に亘って均等に圧縮した状態を保持できる。
【0013】
前記基材には、前記メタル体側の空間と被密封流体側の空間とに連通する開口が設けられていてもよい。
これによれば、第1及び第2の被取付部材により密封される高温の被密封流体をメタル体側の空間に導入させ、メタル体側の空間と被密封流体側の空間とから基材及び接着材に熱を与えることができるので、接着材の接着特性を早く失わせることができる。
【0014】
前記第1板部及び前記第2板部の内面には、前記第1及び第2接触部分に向けて凹む断面曲面形状の凹部が形成されており、前記基材の両端部は、各前記凹部に沿った曲面形状をなしていてもよい。
これによれば、基材の両端部と第1板部及び第2板部の各凹部との接着面積を広く確保できるとともに、第1板部及び第2板部の間から基材が外れにくい。
【0015】
前記課題を解決するために、本発明のメタルシールの製造方法は、
湾曲部のそれぞれの端部に接続され対向する第1板部と第2板部との間に、自然状態の伸縮方向寸法よりも短い基材を配置し、メタル体を圧縮させた状態で該基材の両端部と前記第1板部及び前記第2板部とを所定の温度で接着特性を失う接着材を介在させて接着固定する。
これによれば、基材の両端部が接着材で第1板部と第2板部に接着されることでメタル体を圧縮した状態で保持されているため、使用する接着材を少なくすることができ、メタル体を圧縮状態で保持する作業を簡便にかつ短時間で行うことができる。
【0016】
前記湾曲部を構成する谷折り部に前記基材を当て該基材の両端部と前記第1板部及び前記第2板部とを加圧した状態で前記接着固定してもよい。
これによれば、第1板部及び第2板部に対し基材を位置決めした状態で接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る実施例1のメタルシールの一部を切断して示す斜視図である。
図2】実施例1のメタル体が第1及び第2の被取付部材間に形成されるシール溝内に取付けられた状態を示す断面図である。
図3】自然状態でのメタル体を示す断面図である。
図4】メタルシールを示す断面図である。
図5】(a)はシール溝内に配置されたメタルシールを示す断面図であり、(b)は接着剤が気化した状態でのメタル体及び基材を示す断面図であり、(c)は基材が気化した状態でのメタル体を示す断面図である。
図6】本発明に係る実施例2のメタルシールの一部を切断して示す斜視図である。
図7】本発明に係る実施例3のメタルシールの一部を切断して示す斜視図である。を示す図である。
図8】本発明に係る実施例1~3のメタルシールの変形例の一部を切断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るメタルシールを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係るメタルシールにつき、図1から図5を参照して説明する。以下、図2の紙面左右方向を軸方向、図2の紙面略中央を内径側、紙面上方及び紙面下方を外径側として紙面上下方向を径方向として説明する。
【0020】
本発明のメタルシール1は、図1に示されるように、メタル体2と基材6と接着材7とによって構成されており、メタル体2は、高温、極低温、高圧、高真空等の条件下で使用されるものである。例えば、図2に示されるように、容器、機械、機器等の連結部分を構成する第1の被取付部材である第1ハウジング10と、第2の被取付部材である第2ハウジング11間に形成される環状のシール溝12内に配置され、第1及び第2ハウジング10,11それぞれの径壁部10a,11aにより挟み込まれることにより軸方向に圧縮された状態で、これら第1及び第2ハウジング10,11間をシールするものである。尚、メタル体2よりも内径側の空間S1が被密封流体で満たされており、メタル体2よりも外径側の空間S2は大気であるものとする。
【0021】
また、図3を参照して、メタル体2は、略0.3mmの板厚を有するインコネルの板材をプレス加工することで断面視略M字状の環状に形成されており、第1板部3と、第1板部3に対向して配置される第2板部4と、第1板部3及び第2板部4に連続する湾曲部5とを備えている。
【0022】
尚、板厚の好ましい範囲は0.15mmから0.7mmであり、使用環境に応じて板厚は適宜変更されてもよい。さらに尚、メタル体2を形成する板材として、ハステロイX、ヘインズアロイ25、チタン合金等を用いてもよく、インコネルに限定されるものではない。
【0023】
第1板部3は、断面視内径側端部から軸方向左側に向かって湾曲するように突出する凸部30と、凸部30の断面視外径側端部に連続して外径側かつ軸方向右側に向かって直線状に延設された直線部とから構成されており、断面視外径側端部は、湾曲部5の軸方向左側の端部と連続している。
【0024】
また、第1板部3の凸部30の外面を径壁部10a(図1参照)に接触する第1接触部分31として説明する。
【0025】
また、第1板部3の凸部30の内面には、第1接触部分31に向けて凹む断面曲面形状の凹部32が形成されている。
【0026】
第2板部4は、第1板部3と断面視線対称であるのでその説明を省略する。
【0027】
湾曲部5は、第1板部3の断面視外径側端部と連続して外径側に向かって半円弧状に突出する山折り部51と、第2板部4の断面視外径側端部と連続して外径側に向かって半円弧状に突出し、山折り部51に対向して配置される山折り部52と、内径側に向かって突出する涙形状に形成され、山折り部51及び山折り部52のそれぞれの軸方向中央側端部に連続する谷折り部53とを備えている。
【0028】
谷折り部53は、山折り部51の断面視内径側端部と連続して内径側かつ軸方向左側に向かって直線状に延設された第1延設部と、第1壁部の下端部に連続して内径側に向かって四分の三円弧状に突出している湾曲凸状部53aと、内径側凸状部の軸方向右側の端部と連続して外径側かつ軸方向右側に向かって直線状に延設され、山折り部52の断面視内径側端部と連続する第2延設部と有している。
【0029】
また、メタル体2は、自然状態では第1接触部分31と第2接触部分41との間の軸方向の寸法がL1となっており、シール溝12の軸方向の寸法である設計寸法W1(図5(a)参照)よりも大きく形成されている。
【0030】
また、メタル体2は、第1板部3、第2板部4に対して互いの近接方向である軸方向中央側に向かって外力が加えられることにより、湾曲部5の山折り部51,52それぞれの頂点を基点に弾性変形し、第1板部3、第2板部4それぞれが湾曲部5に向かって近接された圧縮状態(図4参照)となる。
【0031】
このとき、自然状態で互いに接触状態であった山折り部51及び山折り部52は離間する。尚、メタル体2は、自然状態で山折り部51及び山折り部52同士が僅かに離間している形態であってもよい。
【0032】
また、メタル体2は、当該外力を小さくすることにより、自然状態に向かって軸方向に伸長するようになっている。すなわち、本実施例のメタル体2の伸縮方向は軸方向のことである。
【0033】
尚、本実施例における圧縮状態とは、自然状態に対して第1板部3、第2板部4同士が近接している状態のことである。
【0034】
また、メタル体2は、自然状態(図3参照)及び圧縮状態(図4参照)において、谷折り部53の湾曲凸状部53aの内径側端面が凹部32よりも外径側に位置している。
【0035】
図1を参照して、基材6は、アクリル樹脂で軸方向視半円弧状かつ軸方向の寸法が略同一の帯状に形成された硬質の板材であり、その融点は略160度、その沸点は略200度である。
【0036】
尚、基材6は、所定の温度、すなわち作動機器の使用時における高温の被密封流体により気化する素材であれば、アクリル樹脂に限らず、ABS樹脂、ポリアミド等を用いてもよく、使用環境に応じて、適宜変更してもよい。
【0037】
また、基材は、軸方向視半円弧状に形成された2つの基材を対向配置することで環状をなす構成に限らず、1つの基材で環状をなしていてもよく、3つ以上の基材で環状をなしていてもよい。
【0038】
図4を参照して、基材6の軸方向それぞれの端部61は、第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に沿う曲面形状に形成されている。
【0039】
接着材7は、エチレン酢酸ビニルを主成分としたものであり、その融点は略110度、その沸点は略180度である。尚、接着材7は、説明の都合上、各図において誇張して図示されている。
【0040】
尚、接着材7は、所定の温度、すなわち作動機器の使用時における高温の被密封流体により気化する素材であれば、エチレン酢酸ビニルを主成分としたものに限らず、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド等を主成分としたもの用いてもよく、使用環境に応じて、適宜変更してもよい。
【0041】
次に、メタルシール1の製造方法について、図3,4を参照して説明する。
【0042】
まず、基材6の各端部61それぞれに液状の接着材7を塗布する。
【0043】
次いで、図4を参照して、基材6の外径側端面を破線で示す自然状態のメタル体2の湾曲凸状部53aの内径側端面に当接させるとともに基材6をメタル体2の軸方向に略平行に配置する。これにより、メタル体2に対する基材6の径方向における位置決めを行うことができる。
【0044】
その後、基材6の一端を凹部32に入れ、第1板部3、第2板部4に対して互いが近接する方向に外力を加え所定時間保持する。このとき、メタル体2は図4の実線で示すように軸方向の寸法が寸法L2に圧縮され、第1板部3の凹部32と第2板部4の凹部42とはそれぞれ基材6の端部61に加圧された状態となっている。
【0045】
このようにして、接着材7が硬化することで、メタル体2に基材6が接着材7により接着固定された軸方向の寸法L2のメタルシール1を製造することができる。
【0046】
これによれば、基材6の両端部61が接着材7で第1板部3と第2板部4に接着されることでメタル体2を圧縮した状態で保持されているため、使用する接着材7を少なくすることができ、メタル体2を圧縮状態で保持する作業を簡便にかつ短時間で行うことができる。
【0047】
また、基材6は、軸方向の寸法が略同一の帯状に形成されているため、基材6によりメタル体2が第1板部3及び第2板部4の長手方向に亘って均等に圧縮した状態を保持できる。
【0048】
また、基材6の両端部61は、第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に沿う曲面形状に形成されているため、基材6の両端部61と第1板部3の凹部32及び第2板部4の凹部42との接着面積を広く確保できるとともに、第1板部3及び第2板部4の間から基材6が外れにくい。
【0049】
また、基材6の端部61は、第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に沿う曲面形状に形成されているため、第1板部3の凹部32と第2板部4の凹部42とをそれぞれ基材6の端部61に圧着させるにあたって、各端部61が第1板部3の凹部32または第2板部4の凹部42に案内されることにより、メタル体2の山折り部51,52それぞれに対する平行度合いを高めることができる。
【0050】
また、メタルシール1を基材6に接着固定するにあたって、基材6に対して軸方向に押し付け加圧状態で接着させることができるため、メタルシール1を基材6に強固に接着固定することができる。
【0051】
また、基材6は硬質であるため、基材6の両端部61を接着材7で第1板部3と第2板部4に接着させる際、基材6の反力を受けて接着作業を行うことができ、接着作業がしやすい。
【0052】
次に、メタルシール1の装着方法及び動作態様について、図5を参照して説明する。尚、メタルシール1を装着する前の第1ハウジング10及び第2ハウジング11は、それぞれ連結される前の状態であり、互いに独立している。
【0053】
図5(a)を参照して、まず第1ハウジング10の径壁部10aと径壁部10aに略直交する周壁部から構成される環状の窪部にメタルシール1を収納し、第1ハウジング10に対して第2ハウジング11をボルトで固定する。第1ハウジング10の径壁部10a、周壁部、第2ハウジング11の径壁部11aから主に構成される設計寸法W1のシール溝12が形成されている。
【0054】
次に、作動機器の運転が開始され、被密封流体の温度が接着材7の融点である110度を超え始めると、接着材7が融解し始める。接着材7の接着力にメタル体2の復元力が勝ると、基材6の両端部61は、第1板部3の凹部32及び第2板部4の凹部42から離れ、メタル体2は軸方向に伸長し、図5(b)に示される状態となる。その後、被密封流体が180度以上に昇温することで、接着材7は気化する。
【0055】
上述したように、自然状態のメタル体2の軸方向の寸法L1は、シール溝12の設計寸法W1よりも大きいことから、メタル体2が軸方向に伸長することで、メタル体2の第1板部3の第1接触部分31が第1ハウジング10の径壁部10aに圧接し、メタル体2の第2板部4の第2接触部分41が第2ハウジング11の径壁部11aに圧接する。これにより、メタル体2により第1ハウジング10及び第2ハウジング11の間が密封された状態となる。
【0056】
その後、被密封流体の温度が基材6の融点である160度を超え始めると、基材6が融解し始めて、図5(c)に示されるように、メタル体2の内側から離脱する。その後、被密封流体が200度以上に昇温することで、基材6は気化する。
【0057】
以上説明したように、メタルシール1は、基材6の両端部61が接着材7で第1板部3と第2板部4に接着されることでメタル体2が圧縮された状態で保持されているため、使用する接着材7を少なくすることができ、被密封流体の温度が110度以上となることで、接着材7の量が少ないことから接着材7の接着特性が短時間で失われ、メタル体2の圧縮状態が短時間で解除されてメタル体2が軸方向に伸長し、メタル体2の第1板部3の第1接触部分31が第1ハウジング10の径壁部10aに圧接され、メタル体2の第2板部4の第2接触部分41が第2ハウジング11の径壁部11aに圧接されて、第1ハウジング10及び第2ハウジング11間を早期に密封できる。
【0058】
また、基材6が200度以上の温度で気化するため、第1ハウジング10及び第2ハウジング11を有する作動機器の使用時に基材6が作動機器またはメタル体2に悪影響を与えることを防止できる。
【0059】
また、基材6が湾曲部5よりも内径側に配置されているため、第1ハウジング10及び第2ハウジング11により密封される高温の被密封流体に基材6及び接着材7を近付けて配置できるので、接着材7の接着特性を早く失わせることができる。
【実施例2】
【0060】
次に、実施例2に係るメタルシール101につき、図6を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0061】
図6に示されるように、基材106には、厚み方向に貫通する矩形状の開口60が、基材106の長手方向において所定間隔置きに形成されている。
【0062】
これにより、第1ハウジング10及び第2ハウジング11を有する作動機器の使用時に、第1ハウジング10及び第2ハウジング11により密封される高温の被密封流体をメタル体2側の空間S3(図2,5参照)に導入させ、メタル体2側の空間S3と被密封流体側の空間S1とから基材106及び接着材7に熱を与えることができるので、接着材7の接着特性を早く失わせることができる。
【0063】
加えて、開口60が基材106の長手方向において所定間隔置きに形成されていることから、基材106の体積を小さくすることができるため、基材106を短時間で溶解及び気化させることができる。
【0064】
また、基材106の体積が小さいことから、第1ハウジング10及び第2ハウジング11を有する作動機器の使用時に基材6が作動機器またはメタル体2に悪影響を与えることをより好適に防止できる。
【0065】
尚、開口60は、矩形でなく例えば円形であってもよい。また、開口60は、貫通孔でなく例えば切欠き形状であってもよい。
【実施例3】
【0066】
次に、実施例3に係るメタルシール201につき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0067】
図7に示されるように、メタルシール201は、棒状直線状に形成されたメタル体202と、略直線状の板状に形成された基材206と、接着材7から棒状に構成されている。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0069】
例えば、前記各実施例では、メタル体は、断面視略M字状に形成されている構成として説明したが、これに限らず、断面視略C字状に形成されていてもよく、断面視略W字状に形成されていてもよく、その形状は適宜変更されてもよい。
【0070】
また、基材は帯状に形成されていると説明したが、これに限らず、図8の変形例のメタルシール301に示されるように、複数の基材例えば複数の片状の基材306が周方向に間隔を開けてメタル体2に配置されていてもよい。
【0071】
また、メタル体は、断面視第1板部3及び第2板部4が屈曲形状であるものを例に説明したが、これに限らず、弧状や直線状に形成されていてもよい。
【0072】
また、メタル体は、凸部30,40が第1ハウジング10の径壁部10aまたは径壁部11aに向かって半円弧状に突出している構成として説明したが、これに限らず、W状であってもよく、クランク状であってもよく、その形状が限定されるものではない。
【0073】
また、メタル体は、プレス加工により形成され、その凸部30,40の内面が、断面曲面形状の凹部32,42である構成として説明したが、これに限らず、メタル体の内側を断面曲面形状に削ることで各凹部を構成してもよく、メタル体の内側に断面曲面形状のリブを形成することで凹部を構成してもよく、その形成方法は適宜変更されてもよい。
【0074】
また、基材は、硬質の板状である構成として説明したが、これに限らず、メタル体の軸方向への伸長を規制できる構成であればよく、例えばシート等であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1,101,201,301 メタルシール
2,202 メタル体
3 第1板部
4 第2板部
5 湾曲部
6,106,206,306 基材
7 接着材
10 第1ハウジング(第1の被取付部材)
11 第2ハウジング(第2の被取付部材)
31 第1接触部分
32 凹部
41 第2接触部分
42 凹部
53 谷折り部
60 開口
61 端部
L1 軸方向の寸法(伸縮方向の寸法)
L2 軸方向の寸法(伸縮方向の寸法)
S1 空間(被密封流体側の空間)
S2 空間
S3 空間(メタル体側の空間)
W1 設計寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8