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  • 特許-ダイレクト露光装置 図1
  • 特許-ダイレクト露光装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ダイレクト露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020124952
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021416
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】緑川 悟
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-098720(JP,A)
【文献】実開平03-113339(JP,U)
【文献】特開2018-105906(JP,A)
【文献】特開2000-128382(JP,A)
【文献】特開2002-053239(JP,A)
【文献】特開2016-052934(JP,A)
【文献】実開平03-116332(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
B65H 5/02
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラ間に巻き掛けられた無端ベルトの構成を有し、基板を搬送するコンベアベルトと、
前記コンベアベルトの上面に対して前記基板を密着させる吸着手段と、
前記基板を露光する露光ユニットと、
前記コンベアベルトの一側面の近傍に設けられ、前記コンベアベルトの一側面が形成する環状の形状とほぼ同一形状とされたガイド部と、
前記コンベアベルトの少なくとも一側面近傍の複数箇所と接合金具を介して接合され、ベアリングを介して前記ガイド部にスライド自在に取り付けられ複数のガイドスライダーとを備え、
前記基板を前記コンベアベルトに対して密着させる区間において、前記ベアリングに与圧を付与するようにしたダイレクト露光装置。
【請求項2】
前記基板が長尺の基板である請求項1に記載のダイレクト露光装置。
【請求項3】
前記吸着手段は、前記コンベアベルトに形成された複数の貫通孔を通じて前記基板を吸着するようになされ、前記ガイドスライダーが有する突起が前記貫通孔に係止されるようになされた請求項1又は2に記載のダイレクト露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCBやLCDパネル等の基板の露光工程で用いられるダイレクト露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板、半導体ウエハ、LCDガラス基板等の基板を製造するフォトリソグラフィ工程にて、フォトマスクを用いないダイレクト露光装置(マスクレス露光装置)が知られている。かかるダイレクト露光方式によれば、フォトマスクが不要となるため、コスト的に有利であり、また、高精度露光が可能であるとされている。ダイレクト露光装置では、基板と露光ユニットとを相対移動させながら露光することによって、光変調素子(DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)など)の投影像より広い範囲の露光を可能としている。
【0003】
相対移動手段については、直動ガイドを用いて長尺基板を保持する露光ステージを直線移動させる機構が一般的である。露光ステージより広い(搬送方向に長い)範囲にパターンを露光する場合は、狭い範囲のパターンをつなぎ合わせて行うようになされる(例えば特許文献1参照)。また、広い範囲にパターンを連続的に露光可能な露光装置として、ベルトコンベアによって長尺基板を搬送するダイレクト露光装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-224301号公報
【文献】特開2006-098720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の露光装置は、パターンのつなぎ合わせ部分で位置ズレが生じやすく、また、露光ステージの往復移動のために待ち時間が発生し、生産性が低下する。一方、特許文献2の露光装置では、ベルトの蛇行した量がそのままパターンの位置や形状の誤差として現れる。ベルトコンベアによる基板の移動には50μm程度の不規則な蛇行があるので、その分、露光位置に誤差を生じる。
【0006】
したがって、本発明は、ベルトコンベアによって距離の制限なく基板にパターンを露光し、且つ、基板と露光部との相対移動の直線性を確保可能なダイレクト露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数のローラ間に巻き掛けられた無端ベルトの構成を有し、基板を搬送するコンベアベルトと、
コンベアベルトの上面に対して基板を密着させる吸着手段と、
基板を露光する露光ユニットと、
コンベアベルトの一側面の近傍に設けられ、コンベアベルトの一側面が形成する環状の形状とほぼ同一形状とされたガイド部と、
コンベアベルトの少なくとも一側面近傍の複数箇所と接合金具を介して接合され、ベアリングを介してガイド部にスライド自在に取り付けられ複数のガイドスライダーとを備え、
基板をコンベアベルトに対して密着させる区間において、ベアリングに与圧を付与するようにしたダイレクト露光装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一の実施形態によれば、ベルトコンベアにより搬送される時の基板と露光部との相対移動の直線性を確保することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれの効果であってもよい。また、例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態の全体の概略的構成を示す正面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態の一部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施の形態に係るダイレクト露光装置1は、図1に示すように、露光手段としての露光ユニット10と、可撓性記録媒体である帯状の長尺基板(例えばフレキシブルプリント配線基板)Wを搬送するベルトコンベアユニット20によって構成されている。一実施形態は、ロールトゥロール方式の露光装置である。
【0012】
長尺基板Wはフォトレジストなどの感光材料が塗布された銅張積層板などによるシート状の基板であり、数十~数百メートルの長さを有する。露光後に現像やエッチング、裁断等の工程を経ることで、例えばフレキシブルプリント配線基板の基材となる。長尺基板Wの移動方向(搬送方向M)をX方向、長尺基板Wと直交する方向(厚さ方向)をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向と定義する。
【0013】
露光ユニット10は、複数の露光ヘッド11を備え、長尺基板Wから所定距離だけ鉛直上方に離れた場所に規則的に配置されている。各露光ヘッドに対し、光源および照明光学系が配置されており、光源から放射された光は、それぞれ対応する照明光学系を介して対応する露光ヘッド11に導かれる。各露光ヘッドは、複数のマイクロミラーを2次元配列させたDMD(Digital Micro-mirror Device)と、DMDの像を長尺基板上に結像する結像光学系とを備えている。
【0014】
ベルトコンベアユニット20は、図面に向かって見て左側から右側に向かう方向Mに長尺基板Wを搬送するために設けられている。コンベアベルト21は通気性のある構造の金属ベルト、例えば、微小な貫通孔が多数形成されているメッシュ状のステンレスベルトである。また、コンベアベルト21は、伸びにくく発塵性の低い金属ベルト(ステンレスベルト)であることが望ましい。
【0015】
コンベアベルト21の上面に長尺基板Wが載置され、破線で示す基板吸着テーブル23によってコンベアベルト21に対して長尺基板Wが密着される。すなわち、基板吸着テーブル23によってコンベアベルト21の貫通孔を通じて吸気がなされ、長尺基板Wがコンベアベルト21の上面に密着される。コンベアベルト21は、コンベア駆動ローラ22a及びコンベア駆動ローラ22b間に巻き掛けられた無端ベルトである。
【0016】
長尺基板Wは、基板巻き出し部30からベルトコンベアユニット20に対して供給され、露光後に基板巻き取り部40によってベルトコンベアユニット20から巻き取られる。基板巻き出し部30には、未露光の長尺基板Wが巻かれている基板巻き出しロール31と、バッファとしての機能を有するダンサーローラ32と、基板蛇行補正機構を構成するローラ33a及び33bが含まれている。基板巻き取り部40には、露光処理後の長尺基板Wを巻き取る基板巻き取りロール41と、基板バッファとしてのダンサーローラ42が含まれている。これらのダンサーローラ32及び42が張力設定手段として機能することによって、搬送経路上のコンベアベルト21上で長尺基板Wが弛むことなく安定して搬送される。
【0017】
さらに、露光ユニット10の上流側にアライメントカメラ50が配置され、長尺基板巻き取り部40に校正スケールユニット51が配置されている。アライメントカメラ50は、長尺基板Wの端部又はマークを検出し、長尺基板Wと露光ユニット10の相対位置ずれ量を検出し、露光ユニット10による露光処理を補正するようになされる。校正スケールユニット51は、露光量を適正とするために設けられている。長尺基板Wは複数の支持ローラによって支えられるが、アライメントカメラ50と露光ヘッド11の付近では、ベルトコンベア20によって支持される。
【0018】
このように長尺基板Wは、コンベアベルト21に吸着された状態を維持して、一定の搬送方向に連続して搬送される。コンベアベルト21を連続的に駆動しながら露光処理できるように構成されているので、常に露光処理をしつづけることを可能とし、生産性を高めることができる。また、長尺基板Wが平面性の高いコンベアベルト21に密着されているので、露光ユニット10の露光ヘッドとの相対位置関係を一定に保つことができる。
【0019】
図2はベルトコンベアユニット20を上から見た平面図である。なお、露光ヘッド11とアライメントカメラ50はベルトコンベアユニット20に属す構成要素ではないが、参考のため記載している。また、図1では、環状ガイドレール25を固定するフレーム24を省略している。
【0020】
コンベア駆動モータDMa及びDMbはコンベア駆動ローラ22a及び22bを回転させ、コンベアベルト21を移動(回転)させる。コンベアベルト21の移動量はコンベア駆動モータDMa及びDMbの回転量を検出することで算出できる。このコンベアベルト21の移動量は、露光ユニット10がDMDを制御する際の相対位置情報として利用される。
【0021】
エッジポジションコントローラ(EPC)を備えたベルトコンベアであっても、一般的にY方向(コンベアベルト21の幅方向)に50μm程度の不規則なベルト蛇行が存在する。一方、ダイレクト露光装置は、例えば、露光位置精度±5μm以下、線幅変化±1μm以下を許容誤差とする。したがって、露光位置精度や線幅精度の低下を防ぐためにコンベアベルト21の移動の直線性を確保するガイド機構が必要となる。
【0022】
本発明の一実施形態では、コンベアベルト21の一側面の近傍にフレーム24が設けられ、フレーム24に対して、コンベアベルト21の軌道に沿った形状の環状ガイドレール25が取り付けられている。すなわち、環状ガイドレール25は、コンベアベルト21の一側面が形成する環状の形状と同一又は相似形とされている。環状ガイドレール25に対してガイド部としての金属製のガイドスライダーSがスライド自在に取り付けられている。複数のガイドスライダーSは、例えばボールベアリングによる直動軸受を介して金属製の環状ガイドレール25を軸として取り付けられている。
【0023】
コンベアベルト21の長尺基板Wが載置される領域外である側面近傍部とガイドスライダーSが接合部としてのベルト接合金具Cによって結合される。ベルト接合金具Cは、ガイドスライダーSと一体構造でもよいし、別部品でもよい。したがって、コンベアベルト21はY方向の変位(蛇行)が規制される一方、環状ガイドレール25に沿ってX方向(及びZ方向)には、移動自在となる。
【0024】
ベルト接合金具CはガイドスライダーSから突出した突起部分を有し、コンベアベルト21に設けられている通気口に突起部分が嵌合(係止)されることによって、コンベアベルト21とガイドスライダーSを接合している。このような構造にすると、コンベアベルト21とガイドスライダーSの接合状態を解除することが容易となり、コンベアベルト21の消耗に伴う交換作業が容易となる。なお、嵌合に替わって接着や溶接、ボルトによる締結等でコンベアベルト21とガイドスライダーSを接合することも可能である。
【0025】
環状ガイドレール25は、少なくとも図1中のDの区間(コンベア駆動ローラ22a及び22b間で、長尺基板Wがコンベアベルト21の上面に密着される区間)においては、ガイドスライダーSのベアリングが与圧される構造となっており、コンベアベルトを精度よく直線移動させるようになされている。Dの区間以外では、ガイドスライダーSが環状ガイドレール25から脱落しないで保持できればよく、与圧を付与する必要はない。
【0026】
上述した本発明の一実施形態によれば、長尺基板Wがコンベアベルト21の上面に密着される区間(D)において、長尺基板Wと露光ヘッド11の相対移動の直線性を確保することができ、露光時の誤差を小さいものとできる。なお、環状ガイドレールをコンベアベルト21の両側面の近傍に設置し、コンベアベルト21の両端をガイドするようにしてもよい。
【0027】
本発明の露光装置は、無制限長のパターン露光を行うことが可能である。無制限長とは、供給する基板の長さ以外の要因から制限されなることのない長さであり、例えば、露光装置は6mに渡ってパターンを描画する。その際には、露光装置は以下のステップで露光動作を行う。
【0028】
ステップ1:アライメントカメラ50が、長尺基板Wの端部またはマークを検出し、長尺基板Wと露光ユニット10の相対位置ずれ量を検出する。基板端部またはマークの検出は、長尺基板Wを静止させた状態で行ってもよいし、コンベアベルト21を周回させて長尺基板Wを搬送方向Mに移動させながら検出してもよい。
【0029】
ステップ2:基板Wと露光ユニット10の相対位置ずれ量に基づいて、描画座標の補正を行う。同時に、基板に合わせて描画パターンのスケーリングを行う。
【0030】
ステップ3:基板吸着テーブル23を作動させながらコンベアベルト21を周回させて長尺基板Wを搬送方向Mに移動させ、コンベアベルト21の移動に従って露光ユニット10のDMDに描画パターンデータを転送して順次変調させる。露光ユニット10の光源から出た光がDMDによって変調され、露光ヘッド11の出射端から長尺基板Wに投影されることで、長尺基板Wのフォトレジストに対してパターン露光を行う。コンベアベルト21の周回によって長尺基板を移動させるので、無制限長のパターン露光が可能である。
【0031】
無制限長のパターン露光動作は、描画データの処理時間の確保のために、途中で一時停止するようにしてもよい。また、無制限長のパターン露光を行う途中で、アライメントカメラ50が途中に設けられた複数のマークの位置を確認するようにしてもよい。あるいは、露光中はアライメントカメラ50が常に基板端面の位置を確認するようにしてもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。また、変形の態様は、任意に選択された一又は複数を、適宜に組み合わせることもできる。また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0033】
例えば本発明は、マスクを使用する露光装置に対しても適用できる。また、本発明は、長尺基板を露光する構成に限らず、矩形(パネル状)に切り分けられた基板であっても、長尺基板同様にコンベア上に載置して露光することが可能である。その場合、基板巻き出し部30、基板巻取り部40の代わりに、基板搬送機(ハンドラー)、スカラーロボット等の搬送手段が設置される。さらに、上述した一実施形態では、コンベアベルト21が無端ベルトで、環状ガイドレール25が環状とされているが、これらの一方又は両方がロールツウロール方式であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
W・・・長尺基板、10・・・露光ユニット、20・・・ベルトコンベアユニット、
21・・・コンベアベルト、23・・・基板吸着テーブル、25・・・環状ガイドレール、S・・・ガイドスライダー、C・・・ベルト接合金具
図1
図2