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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20240304BHJP
   F04B 39/10 20060101ALI20240304BHJP
   F04B 45/04 20060101ALI20240304BHJP
   F04B 53/10 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F04B43/02 D
F04B43/02 L
F04B39/10 P
F04B45/04 D
F04B45/04 H
F04B53/10 F
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017223908
(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2018084233
(43)【公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】16002479.0
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517408070
【氏名又は名称】ペー・エス・ゲー ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】PSG Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス アーベル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ギスベアツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フレリクス
(72)【発明者】
【氏名】プラヴィーン チャンドラシェカライアー
(72)【発明者】
【氏名】ゴキルナサン ヴァスデヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァサンタ クマール ラジャ
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】八木 敬太
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3900276(US,A)
【文献】実開平6-63878(JP,U)
【文献】特開2016-6315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポンプ室(18)を備えたダイヤフラムポンプ(1)であって、前記ポンプ室(18)は、流入弁(22)を介して流入室(12)に接続されていて、かつ流出弁(24)を介して流出室(14)に接続されており、前記流入弁(22)は、流入弁体によって閉鎖可能な複数の流入開口を有しており、かつ前記流出弁(24)は、流出弁体によって閉鎖可能な複数の流出開口を有している、ダイヤフラムポンプにおいて、
(i)前記複数の流出開口のうち少なくとも第1の流出開口は、前記複数の流入開口の少なくとも一部よりも上方に位置しており、かつ、前記ポンプ室(18)内に残っている残留空気を脱気する位置にあり
(ii)前記複数の流出開口のうち少なくとも第2の流出開口は、前記ポンプ室の底部に位置しており、前記複数の流入開口のうち少なくとも一部よりも下方に位置しており、かつ、前記ポンプ室(18)内に残っている残留液体を排出する位置にあり
前記流出開口は前記流入開口を取り囲んでいる
ことを特徴とする、ダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
前記流出弁の前記複数の流出開口は、互いに隔てられた少なくとも2つの流出開口部分(23a)によって形成されており、該流出開口部分(23a)は、前記流入開口を取り囲んでいる、請求項1記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
前記流入室(12)および前記流出室(14)は、1つの共通の中心軸線の周りに形成されている、請求項1または2記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
前記流入室(12)は、その鉛直方向下側の領域に壁を有しており、前記壁は、該壁が少なくとも1つの前記流入弁(22)の前記流入開口の下側部分と同一平面を成すように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項5】
前記流出室(14)は、その鉛直方向下側の領域に壁を有しており、前記壁は、該壁が少なくとも1つの前記流出弁(24)の前記流出開口の下側部分と同一平面を成すように形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項6】
複数のポンプ室(18)が設けられており、該ポンプ室(18)のそれぞれに、少なくとも1つの前記流入弁(22)および少なくとも1つの前記流出弁(24)が設けられている、請求項1から5までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項7】
前記ポンプ室(18)は、弁プレート(5)の一部として形成されており、前記弁プレート(5)は、複数の前記流出弁(24)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項8】
前記弁プレート(5)は、前記ポンプ室(18)の数に相当する数の前記流出弁(24)を有している、請求項7記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項9】
前記ダイヤフラムポンプの、前記流入室(12)および前記流出室(14)を有する部分と、ポンプダイヤフラム(7)を支持するダイヤフラム支持体(6)との間に、前記ポンプ室(18)と前記流入弁(22)および前記流出弁(24)とを有する弁プレート(5)が配置されている、請求項7または8記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項10】
前記流入室(12)と前記ポンプ室(18)との間に流入通路(16)が設けられており、前記ポンプ室(18)に対応配置された流入弁(22)は、前記流入通路(16)内に、または前記流入通路(16)の始端部または終端部に配置されている、請求項7から9までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項11】
前記流出室と前記ポンプ室との間に流出通路が設けられており、前記ポンプ室に対応配置された流出弁は、前記流出通路内に、または前記流出通路の始端部または終端部に配置されている、請求項7から10までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項12】
4つの前記ポンプ室(18)が設けられており、前記弁プレート(5)には、少なくとも4つの前記流出弁(24)と少なくとも4つの前記流入弁(22)とが配置されている、請求項7から10までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載のダイヤフラムポンプを備えた、流体を圧送する装置であって、ポンプヘッド(2)が、駆動室および駆動装置を備えており、前記ポンプ室は、ポンプダイヤフラム(7)を用いて前記駆動室(29)に対してシールされていることを特徴とする、流体を圧送する装置。
【請求項14】
前記ポンプダイヤフラム(7)は、対応配置されたポンプエレメント(6)を介して、周期的に軸方向においてポンピング運動することができる、請求項13記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室を備えており、このポンプ室が、流入通路を介して流入室に接続されていて、かつ流出通路を介して流出室に接続されている、ダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第10117531号明細書および独国実用新案第202006020237号明細書に基づいて公知のダイヤフラムポンプは、主として駆動装置に結合されたポンプヘッドを有している。ポンプヘッドは、複数の、例えば4つのポンプ室を有しており、これらのポンプ室はそれぞれ、ポンプダイヤフラムを用いて駆動室に対してシールされている。各ポンプダイヤフラムは、対応配置されたポンプエレメントを介して、駆動室内に配置された回転斜板に結合されている。このとき回転斜板の揺動運動によって、ポンプダイヤフラムは、周期的に軸方向に揺動してポンピング運動させられる。回転斜板は、駆動装置に結合された駆動軸の駆動ジャーナルにセットされている。駆動ジャーナルは、駆動軸の長手方向軸線に対して傾けられていて、玉軸受を介して回転斜板に結合されている。独国特許出願公開第10117531号明細書および独国実用新案第202006020237号明細書に記載されたダイヤフラムポンプでは、流出室は中心に配置されており、流入室は、流出室に対して同心的に流出室の周りに配置されている。
【0003】
独国特許発明第102008035592号明細書に基づいて公知のダイヤフラムポンプでは、流入室は中央に配置されており、流出室は流入室に対して同心的に配置されている。流出室は、その鉛直方向下側の領域に流出通路を有しており、これらの室を有する中間プレート部分と、ポンプダイヤフラムを支持するダイヤフラム支持部分との間に、ポンプ室および弁を有する弁プレートが配置されており、中間プレート部分の流入室には、弁プレートの段部内において、流入弁を有する流入弁プレートがポンプ室に向かって前置されている。
【0004】
このようなポンプは、特に化学、薬学および生物工学の分野において使用され、これらの分野において、圧送すべき媒体は、時々極めて高価であるので、ポンピング動作後に、圧送された媒体の残留量が、可能な限りまったくまたは僅かな残留量だけしかダイヤフラムポンプ内に残っていないことが望ましい。さらに、気泡の侵入なしに、このようなダイヤフラムポンプを流体によって完全に満たすことが、圧送出力のための有利である。
【0005】
独国特許出願公開第10117531号明細書および独国実用新案第202006020237号明細書に基づいて公知の、基本的には良好であることが実証されているダイヤフラムポンプにおける欠点としては次のことがある。すなわち、これらのダイヤフラムポンプは中央の流入室を有しており、この流入室は、流入室に対して実質的に同心的に配置された外側に位置している流出室に基づいて、ポンピング動作の終了後に、圧送された媒体の比較的多くの残留量が流入室内に残っているという事態を生じさせる。さらに、多くの場合空気がポンプの上側のポンプ室内に残っており、この空気は、通常、圧送安定性(脈動)およびポンプ出力に対して不都合に作用する。独国特許発明第102008035592号明細書に基づいて公知のダイヤフラムポンプにおける欠点としては、少なくともダイヤフラムポンプの上側のポンプ室内に空気が残っているということがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゆえに、本発明の課題は、公知のダイヤフラムポンプを、ポンプ室の残留物排出(Restentleerung)および/または脱気に関して改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の対象によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項および以下の記載において開示されている。
【0008】
本発明は、流出弁の流出開口が流入弁の流入開口を取り囲んでいるか、または流入開口が流出開口を取り囲んでいるという基本思想から出発している。流出弁開口が流入弁開口を取り囲んでいることによって、流出弁開口の、流入弁開口の上に設けられた部分を通して、場合によってはポンプ室内に存在する空気が、ポンプ室から流出室内に流入することができ、従来技術の幾つかのダイヤフラムポンプにおけるように、ポンプ室の上側領域においては捕捉されない。流出弁開口が流入弁開口を取り囲んでいることによって、さらに、ポンプ室の下側領域に位置しているポンピングされる流体も、流出開口の、流入開口の下に設けられた領域を通って、流出室内に流入することができ、ひいては良好な残留物排出を達成することができる。本発明に係るダイヤフラムポンプでは、これによって、ダイヤフラムポンプが特に自動的に十分に排出および/または脱気されるという可能性が得られる。さらに、改善された流れ分配の他に、小さな構造寸法が可能になり、このような構造寸法は、ダイヤフラムポンプにおいて圧送することができる流体の量を有意に減じることを可能にする。さらに、流出室と流入室とを同心的に配置し得ることが可能になる。好適な実施形態において下側領域に配置された流出通路と一緒に、いまや流入室および流出室を事実上完全に空にすることができる。
【0009】
本発明によれば、ダイヤフラムポンプは、1つのポンプ室、有利には2つ、特に好ましくは、3つ、4つ、またはそれ以上のポンプ室を有している。これらのポンプ室は、特に好ましくは、サイクルで、特に周期的に、外力によってその容積を変化させることができる。特に好ましくは、室容積の少なくとも1つの壁が、ダイヤフラムによって形成され、このダイヤフラムは、好ましくは弾性材料、例えばプラスチック、ゴム、エラストマ、シリコンまたは等価の材料である弾性材料から製造されており、このような弾性材料は、特に、安定性および耐用寿命を高めるために複合材料をも含むことができる。ポンプ室は、ダイヤフラムによって形成された壁が、ポンプ室を形成するために設けられた室を完全に押し潰すことができるように構成されている場合には、ポンプ室の提供可能な最大容積に関して、この最大容積がポンプ一行程において圧送可能な流体容量に正確に相当するように寸法設定されていてよい。しかしながらまた、例えば流れ特性、ダイヤフラムポンプの効率または製造コストを改善する大幅に大きなポンプ室も可能である。
【0010】
ポンプ室は、少なくとも1つの流入弁と少なくとも1つの流出弁とを有している。流入弁は、流入弁体によって閉鎖可能な流入開口を有しており、かつ流出弁は、流出弁体によって閉鎖可能な流出開口を有している。それぞれの弁体は、特に弾性のダイヤフラムによって形成されてよく、このダイヤフラムは、通常、弁体に対応配置された弁開口を、適宜な圧力差が存在する場合に、少なくとも部分的に開放する。弁体のための材料としては、例えば、金属も可能であるが、しかしながら特にまた、プラスチック、ゴム、エラストマ、シリコン、または特に複合材料をも含む等価の材料が可能である。逆向きの方向において圧力差が存在する場合には、弁体は弁開口を閉鎖し、かつ/またはばねエレメントが設けられており、このばねエレメントは、弁体に作用し、かつこの弁体に、弁体が弁開口を閉鎖する閉鎖位置の外側の位置において、閉鎖位置へと予荷重をかける。ダイヤフラムというのは、ここでは特に、好ましくは平らなプレートを意味しており、このプレートは多くの場合、たとえ部分的にでも、例えばフレキシブルな縁部部分によって、弾性特性および/またはばね特性を有している。さらに弁制御装置は、弁の開閉を制御すること、またはポンピング動作の最適化に影響を及ぼすことができる。
【0011】
本発明によれば、流出開口が流入開口を取り囲んでいるか、または流入開口が流出開口を取り囲んでいる。これによって本発明は、流入開口と流出開口とが互いに並んで、例えば互いに上下に配置されている、従来技術に基づいて公知の解決策とは異なっている。
【0012】
特に好ましくは、流入弁および/または流出弁は、傘形弁である。傘形弁というのは、弁体が傘状部材によって形成される弁のことを意味する。
【0013】
流入室は、流体を準備するために機能する。流入開口は、流入室の壁に直接形成されていてよい。これによって、特にさらに好適な実施形態において流入開口がポンプ室内に直接開放する場合、ダイヤフラムポンプのコンパクトな構造が可能になる。しかしながら、好適な実施形態では、流入室とポンプ室との間に、流入室をポンプ室に接続する流入通路が設けられている。これによって、ダイヤフラムポンプの内部における流入室の位置を、ポンプ室に対して比較的自由に形成するという可能性が得られる。
【0014】
流出室は、特に複数のポンプ室および/または流出弁が設けられている場合に、特にダイヤフラムポンプの1つの中央の流出部にさらに導くために、圧送された流体を集めかつ束ねるために役立つ。流出開口は、流出室の壁に直接形成されていてよい。これによって、特にさらなる好適な実施形態において流出開口が直接ポンプ室内に開放する場合に、ダイヤフラムポンプのコンパクトな構造が可能になる。しかしながら、好適な実施形態では、流出室とポンプ室との間に、流出室をポンプ室に接続する流出通路が設けられている。これによって、ダイヤフラムポンプ内における流出室の位置を、ポンプ室に対して比較的自由に形成するという可能性が得られる。
【0015】
流出開口が流入開口を取り囲んでいる、本発明の代替的な態様では、流出開口がただ1つのリング形状に形成された開口によって形成される、好適な実施形態が可能である。「リング形状(ringfoermig)」というのは、開口が取り囲む中心点を起点として、それぞれの半径方向に開口の一部分が設けられているということを意味する。「リング形状」という概念は、円形リング形状(kreisringfoermig)の開口の記載に制限されるものではない。開口を形成する自由空間の形状は、特に、自由空間を画定する壁の形状によって確定される。円形リング形状の開口では、開口は例えば、第1の円形リング形状の壁と、第1の円形リング形状の壁に向かい合って位置するように配置された第2の円形リング形状の壁とによって画定される。このとき、開口を形成する自由空間の形状が、開口が取り囲む中心点から半径方向で見て外側の壁と、内側の壁とによって画定されることを、認識することができる。好適な実施形態では、外側の壁および内側の壁は、等しい幾何学形状を有している。特に好ましくは、内側の壁と外側の壁とは互いに同心的に形成されている。例えば外側の壁および内側の壁は、円形、楕円形、方形、特に正方形、または三角形の壁である。特に好ましくは、流出開口の周方向における各箇所において、内側の壁と外側の壁との間における間隔は等しいままである。このことは特に、外側の壁および内側の壁が等しい幾何学形状を有している場合に提供される。しかしながらまた、別の可能な実施形態では、流出開口の周方向における各箇所において、内側の壁と外側の壁との間における間隔は等しいままではない。このような場合には、内側の壁と外側の壁との間における間隔を、流出開口の上側領域および/または下側領域において、側部領域におけるよりも大きく選択するという利点を提供することができ、これによって、流出開口を貫流する流体に、特に上側領域および/または下側領域において特に大きな空間を提供することができる。このことは特に、好適な実施形態において、外側の壁と内側の壁とが等しい幾何学形状を有していないか、または等しい幾何学形状を有しているが、互いに同心的に形成されていない形態によって得ることができる。
【0016】
流出開口が流入開口を取り囲んでいる、本発明の代替的な態様では、好適な実施形態において、流出弁の流出開口は、少なくとも2つの互いに隔てられた流出開口部分によって形成され、これらの流出開口部分は、流入開口を取り囲んでいる。したがって「流出開口」という概念は、本発明の枠内においては、ただ1つの開口のことだけを意味しているのではなく、その代わりに、互いに画定されている複数の個別開口の集合に対しても使用される。好適な実施形態によれば、流出開口は複数の流出開口部分に分けられている。流出開口部分は、特に好ましくはリング状に流入開口の周りに配置されている。例えば流出開口は、流入開口の上における円弧形状の流出開口部分によって形成され、かつ/または流入開口の下における円弧形状の流出開口部分によって形成されることができ、これに対して、特に好適な実施形態では、流入開口の側方には、流出開口部分は設けられていない。流出弁に対する流出開口部分の対応関係は、好適な実施形態では、流出開口部分が1つの共通の弁体によって閉鎖されることによって達成される。
【0017】
好適な実施形態では、流出開口が流入開口を取り囲む、本発明の代替的な態様では、流入開口は、複数の流入開口部分に分割されていないただ1つの開口によって形成される。しかしながらまた、流入開口を複数の流入開口部分によって形成することも可能であり、このときこれらの流入開口部分は、空間的に、流出開口部分を取り囲む包絡円の内部に配置されており、例えばただ1つの円形状の流入開口の代わりに、互いに並んで配置された円形状の流入開口部分の集合を設けることも可能である。
【0018】
流入開口が流出開口を取り囲んでいる、本発明の代替的な態様では、流入開口がただ1つのリング形状に形成された開口によって形成される、好適な実施形態が可能である。「リング形状(ringfoermig)」というのは、開口が取り囲む中心点を起点として、それぞれの半径方向に開口の一部分が設けられているということを意味する。「リング形状」という概念は、円形リング形状(kreisringfoermig)の開口の記載に制限されるものではない。開口を形成する自由空間の形状は、特に、自由空間を画定する壁の形状によって確定される。円形リング形状の開口では、開口は例えば、第1の円形リング形状の壁と、第1の円形リング形状の壁に向かい合って位置するように配置された第2の円形リング形状の壁とによって画定される。このとき、開口を形成する自由空間の形状が、開口が取り囲む中心点から半径方向で見て外側の壁と、内側の壁とによって画定されることを、認識することができる。好適な実施形態では、外側の壁および内側の壁は、等しい幾何学形状を有している。特に好ましくは、内側の壁と外側の壁とは互いに同心的に形成されている。例えば外側の壁および内側の壁は、円形、楕円形、方形、特に正方形、または三角形の壁である。特に好ましくは、流入開口の周方向における各箇所において、内側の壁と外側の壁との間における間隔は等しいままである。このことは特に、外側の壁および内側の壁が等しい幾何学形状を有している場合に提供される。しかしながらまた、別の可能な実施形態では、流入開口の周方向における各箇所において、内側の壁と外側の壁との間における間隔は等しいままではない。このような場合には、内側の壁と外側の壁との間における間隔を、流入開口の上側領域および/または下側領域において、側部領域における間隔よりも大きく選択するという利点を提供することができ、これによって、流入開口を貫流する流体に、特に上側領域および/または下側領域において特に大きな空間を提供することができる。このことは特に、好適な実施形態において外側の壁と内側の壁とが等しい幾何学形状を有していない、または等しい幾何学形状を有しているが、互いに同心的に形成されていない形態によって得ることができる。
【0019】
流入開口が流出開口を取り囲んでいる、本発明の代替的な態様では、好適な実施形態において、流入弁の流入開口は、少なくとも2つの互いに隔てられた流入開口部分によって形成され、これらの流入開口部分は、流出開口を取り囲んでいる。したがって「流入開口」という概念は、本発明の枠内においては、ただ1つの開口のことだけを意味しているのではなく、その代わりに、互いに画定されている複数の個別開口の集合に対しても使用される。好適な実施形態によれば、流入開口は複数の流入開口部分に分けられている。流入開口部分は、特に好ましくはリング状に流出開口の周りに配置されている。例えば流入開口は、流出開口の上における円弧形状の流入開口部分によって形成され、かつ/または流出開口の下における円弧形状の流入開口部分によって形成されることができ、これに対して、特に好適な実施形態では、流出開口の側方には、流入開口部分は設けられていない。流入弁に対する流入開口部分の対応関係は、好適な実施形態では、流入開口部分が1つの共通の弁体によって閉鎖されることによって達成される。
【0020】
好適な実施形態では、流入開口が流出開口を取り囲む、本発明の代替的な態様では、流出開口は、複数の流出開口部分に分割されていないただ1つの開口によって形成される。しかしながらまた、流出開口を複数の流出開口部分によって形成することも可能であり、このときこれらの流出開口部分は、空間的に、流入開口部分を取り囲む包絡円の内部に配置されており、例えばただ1つの円形状の流出開口の代わりに、互いに並んで配置された円形状の流出開口部分の集合を設けることも可能である。
【0021】
別の好適な実施形態によれば、流入室および流出室は、1つの共通の中心軸線の周りに形成されている。中心軸線は、有利には、ダイヤフラムポンプの長手方向軸線によって形成される。この配置形態では、中心軸線は、特に好ましくは流入室を通ってかつ流出室を通って延びている。特に好ましくは、流入室または流出室の中央配置形態が設けられている。中央配置形態というのは、流出室または流入室が、中心軸線に位置する点を中心にして回転対称に形成されている形状を有しているか、または中心軸線に位置する点を中心にして点対称に形成されている形状を有しているか、または中心軸線を含む平面に関して鏡面対称に形成されている形状を有していることを意味しており、このとき中心軸線は、流出室の領域および/または流入室の領域を貫いて延びている。
【0022】
代替的な実施形態では、流入室は中心軸線の周りに形成されており、中心軸線は流入室を貫いて延びており、これに対して流出室は、中心軸線の周りに形成されていて、中心軸線が流出室を貫いて延びないようになっており、流出室は例えば、リング形状に中心軸線の周りに形成されている。このことは、特に好ましくは、流出室および流入室が、中心軸線に位置する点を中心にして回転対称に形成されている形状を有しているということ、または中心軸線に位置する点を中心にして点対称に形成されている形状を有しているということ、または中心軸線を含む平面に関して、鏡面対称に形成されている形状を有していて、しかしながら中心軸線は、流入室の領域だけを貫いて延びているが、流出室の領域を貫いて延びていないということを意味する。
【0023】
代替的な実施形態では、流出室は中心軸線の周りに形成されており、中心軸線は流出室を貫いて延びており、これに対して流入室は、中心軸線の周りに形成されていて、中心軸線は流入室を貫いて延びておらず、流入室は、例えば中心軸線の周りにリング形状に形成されている。このことは、特に好ましくは、流出室および流入室が、中心軸線に位置する点を中心にして回転対称に形成されている形状を有しているということ、または中心軸線に位置する点を中心にして点対称に形成されている形状を有しているということ、または中心軸線を含む平面に関して、鏡面対称に形成されている形状を有していて、しかしながら中心軸線は、流出室の領域だけを貫いて延びているが、流入室の領域を貫いて延びていないということを意味する。
【0024】
本発明の好適な実施形態によれば、流入室は、中心に配置された流入通路を有している。複数の流入弁を備えた実施形態において、好適な実施形態では、この中心に配置された流入通路から複数の供給通路が、個々の流入弁に分岐していてよい。このとき中心の流入通路を通して、特に、流入弁への好適な流れ分配が得られる。
【0025】
代替的な実施形態によれば、流入室は、その鉛直方向下側の領域に壁を有しており、この壁は、壁が少なくとも1つの流入弁の流入開口の下側部分とほぼ同一平面を成すように形成されている。特に、最も低い位置にある1つまたは複数の流入弁は、そのそれぞれの流入開口のそれぞれの下側領域で、流入室の壁内に移行しており、流入室は完全に流入弁を介して空にすることができ、かつ残りの流体がポンピング動作時に流入室から流出室に圧送されるようになっている。
【0026】
本発明の好適な実施形態によれば、流出室は、中心に配置された流出通路を有している。複数の流出弁を備えた実施形態において、好適な実施形態では、この中心に配置された流出通路に複数の供給通路が、個々の流出弁から通じていてよい。
【0027】
代替的な実施形態によれば、流出室は、その鉛直方向下側の領域に壁を有しており、この壁は、壁が少なくとも1つの流出弁の流出開口の下側部分とほぼ同一平面を成すように形成されている。特に、最も低い位置にある1つまたは複数の流出弁は、そのそれぞれの流出開口のそれぞれの下側領域で、流出室の壁内に移行していて、流出室は完全に流出弁を介して空にすることができ、かつ残りの流体がポンピング動作時に流入室から流出室に圧送されるようになっている。
【0028】
好適な実施形態では、複数のポンプ室が設けられており、ポンプ室のそれぞれに、有利には少なくとも1つの流入弁および/または少なくとも1つの流出弁が設けられている。
【0029】
好適な実施形態において、ダイヤフラムポンプのすべての流出弁は、互いに同じ形式で形成されており、特に好ましくは流出開口の同じ形状および/または弁体の同じ形状を有している。好適な実施形態において、ダイヤフラムポンプのすべての流入弁は、互いに同じ形式で形成されており、特に好ましくは流入開口の同じ形状および/または弁体の同じ形状を有している。
【0030】
本発明の好適な実施形態によれば、各ポンプ室に1つの流入弁が設けられている。好適な実施形態では、流入弁プレートが設けられており、この流入弁プレートに、複数の流入弁が互いに空間的に隔てられて配置されている。特に好適な実施形態では、ダイヤフラムポンプは4つのポンプ室を有している。この場合、好適な実施形態では、流入弁プレートは、空間的に隔てられた4つの流入弁を有している。
【0031】
本発明の好適な実施形態によれば、各ポンプ室に1つの流出弁が設けられている。好適な実施形態では、流出弁プレートが設けられており、この流出弁プレートに、複数の流出弁が互いに空間的に隔てられて配置されている。特に好適な実施形態では、ダイヤフラムポンプは4つのポンプ室を有している。この場合、好適な実施形態では、流出弁プレートは、空間的に隔てられた4つの流出弁を有している。
【0032】
好適な実施形態において、1つの弁プレートが設けられていて、弁プレートに複数の流入弁および複数の流出弁が形成されている。
【0033】
特に好ましくは、流出弁のうちの1つの流出弁が、ポンプヘッドまたは弁プレートの鉛直方向下側の領域に、1つの流出通路に対応して配置されている。これによってダイヤフラムポンプを空にすることが、さらに好適になる。
【0034】
本発明の別の好適な実施形態によれば、流出弁の数および流入弁の数は、ポンプ室の数に相当している。弁プレートにおける相応に4つの流出弁と流入弁プレートにおける相応に4つの流入弁とを備えた、4つのポンプ室の数が、特に好適であるということが判明している。しかしながらまた、基本的には、各ポンプ室に例えば2つの流出弁および/または流入弁が対応配置されていること、またはそれぞれさらに多くの流出弁および/または流入弁が対応配置されていることも可能である。
【0035】
本発明の好適な実施形態によれば、流入室を有するフロントプレートおよび流出室を有する中間プレートと、ポンプダイヤフラムを支持するダイヤフラム支持体との間に、1つまたは複数のポンプ室と1つまたは複数の流出弁および1つまたは複数の流入弁とを有する弁プレートが配置されている。簡単かつ安価な製造のために、弁プレートはほぼ平らに形成されていてよい。
【0036】
別の好適な実施形態によれば、流入室とポンプ室との間に流入通路が設けられている。特に好ましくは、ポンプ室に対応配置された流入弁は、流入通路内に、特に流入通路の始端部または終端部に配置されている。補足的にまたは代替的に、流出室とポンプ室との間に流出通路が設けられていてよい。特に好ましくは、ポンプ室に対応配置された流出弁は、流出通路内に、特に好ましくは流出通路の始端部または終端部に配置されている。
【0037】
別の好適な実施形態によれば、本発明は、本発明に係るダイヤフラムポンプを備えた、流体を圧送する装置を含んでおり、ポンプヘッドが、駆動室および駆動装置を備えており、ポンプ室はそれぞれ、ポンプダイヤフラムを用いて駆動室に対してシールされている。好適な実施形態において、ポンプダイヤフラムを、対応配置されたポンプエレメントを介して、周期的に軸方向においてポンピング運動させることができる。
【0038】
次に、本発明の実施形態を示す図を参照しながら本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係るダイヤフラムポンプ(駆動装置なし)のポンプヘッドを示す平面図、および平面図における線A-Aに沿って断面した側面図である。
図2】弁プレートと共に図1のポンプヘッドを斜め前から見た正面図である。
図3図1の本発明に係るポンプヘッドのフロントプレートを示す正面図および背面図である。
図4図1の本発明に係るポンプヘッドの弁プレートを示す正面図および背面図である。
図5図1の本発明に係るポンプヘッドの中間プレートを示す正面図および背面図である。
図6図1に示されたダイヤフラムポンプを備えた装置を部分的に断面して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、ダイヤフラムポンプ1のポンプヘッド2が示されている。ダイヤフラムポンプ1は、図6に示された装置の一部を形成している。
【0041】
ポンプヘッド2は、フロントプレート3、室ハウジングとも呼ばれる中間プレート4、弁プレート5、およびダイヤフラム支持体とも呼ばれる端部プレート6を有しており、端部プレート6は、ポンプエレメントを介して、図2には示されていない回転斜板に結合されたポンプダイヤフラム7を備えている。
【0042】
フロントプレート3には、中央の流入部10が設けられており、この流入部10は、フロントプレート3に形成された流入通路11を介して中央の流入室12に開口している。フロントプレート3には、流出部13が設けられており、この流出部13は、一部がフロントプレート3にかつ一部が中間プレート4に形成された流出通路15を介して、中間プレート4の同様に中央の流出室14に接続されている。
【0043】
中間プレート4と端部プレート6との間には、弁プレート5が配置されている。弁プレート5は、中間プレート4とは反対側の背側面17に4つのポンプ室18を有している。端部プレート6に向かって開放しているポンプ室18は、それぞれポンプダイヤフラム7によって閉鎖または画定されている。これらのポンプダイヤフラム7は、端部プレート6と弁プレート5との間に配置されている。ポンプダイヤフラム7のリング形状の隆起部19は、弁プレート5の、ポンプ室18の周りに配置された溝20内に配置されている。
【0044】
中間プレート4は、フロントプレート3の流入室12を閉鎖しているが、しかしながらそれぞれ流入弁22に通じる流入通路16を有しており、これらの流入通路16は、中間プレート4の流出室14を貫いて延びている。弁プレート5は、4つの流入弁22を有しており、これらの流入弁22は、傘形弁(Schirmventil)として形成されていて、流入室12を、各通路16を介して、各流入弁22に対応配置されたポンプ室18に接続している。
【0045】
弁プレート5は、さらに中間プレート4の中央の流出室14をシールしている。弁プレート5は、ほぼ平らに形成されていて、流出室14に対応する4つの流出弁24を有しており、これらの流出弁24は同様に傘形弁として形成されている。流出弁24の流出開口は、各流出弁24の流出開口部分23aによって形成され、これらの流出開口部分23aは、それぞれ等しいポンプ室18に対応配置された流入弁22の流入開口部分23bを取り囲んでおり、これらの流入開口部分23bは、流入弁22の流入開口を形成している。流出開口部分23aは、好ましくは、流入開口部分23bに直接隣接しており、各流出開口部分23aと流入開口部分23bとは、特に隆起部または壁によって互いに隔てられている。
【0046】
図6に示された回転斜板9は、玉軸受25を介して駆動軸27のジャーナル26に結合されている。ジャーナル26は、駆動軸27の長手方向軸線28に対して傾けられており、これによって回転斜板8の揺動運動を生じさせることができる。駆動軸と回転斜板8との間の結合部は、端部プレート6に前置された駆動室29の領域に配置されている。
【0047】
流入室12は、中間プレート4に対して、図示の実施形態ではコードリングパッキンとして形成されたシール部材30によってシールされている。流出室14の外側画定部は、図示の実施形態では同様にコードリングパッキンとして形成されたシール部材31によってシールされている。弁プレート5の流出開口23aは、中間プレート4の流入通路16に向かって同様に、流出弁24の傘状の弁体における、溝33内に配置された隆起部34によってシールされている。
【0048】
駆動軸27の長手方向軸線28を中心にした駆動軸27の回転によって、回転斜板8は、ジャーナル26の傾斜に基づいて、駆動軸27と一緒に回転することなしに、回転揺動運動する。回転斜板8の揺動運動によって、ポンプダイヤフラム7は、周期的に軸方向においてポンピング運動する。このポンピング運動によってポンプ室18においては交互に、吸込み行程では、駆動室29に向かっての運動によって負圧が生じ、かつ吐出行程では、フロントプレート3に向かっての運動によって正圧が生じる。
【0049】
流入弁22の傘形弁体がそれぞれ下流側に配置されていることに基づいて、対応配置されたポンプ室18において負圧が発生すると、流入弁22は自動的に開放し、かつ相応の流出弁24は自動的に閉鎖する。ポンプ室18における正圧時には、対応配置された流入弁22は自動的に閉鎖し、かつ相応の流出弁24は自動的に開放する。これによってポンプ媒体は、ポンプ室18から流出室14を通って流出部13に圧送される。
【0050】
図2には、弁プレートを備えた、図1のポンプヘッドを斜め正面から見た図が示されている。この斜視図から、フロントプレート3、中間プレート4、弁プレート5および端部プレート6といった部材の順番を認識することができる。
【0051】
図3には、図1の本発明に係るポンプヘッドのフロントプレート3が、正面図および背面図で示されている。この図面においても、流入通路11および流出通路15ならびに流入室12を明瞭に認識することができる。
【0052】
図4には、図1の本発明に係るポンプヘッドの弁プレート5が、正面図および背面図で示されている。この図面では、特に、リング形状の流出弁24、円弧状の流出開口23a、およびポンプ室18の孔として形成された流入開口23bが、円板状に形成された流入弁22と同様に示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6