(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】一体型表面保護システム、複合材構造、及び、その保護方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/00 20060101AFI20240304BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20240304BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20240304BHJP
B64D 45/02 20060101ALI20240304BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B32B5/00 Z
C08J5/00 CFC
B29B11/16
B64D45/02
B64C1/00 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019147204
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】メアリー エス.アヤドゥライ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン イー.シー.コルテンバ
(72)【発明者】
【氏名】クインジャオ エヌ.レ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145075(JP,A)
【文献】特表2012-512056(JP,A)
【文献】特表2011-524265(JP,A)
【文献】特開2007-083721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02、5/04-5/10、
5/12-5/22、5/24
B29B 11/16、15/08-15/14
B64C 1/00
B64D 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の網目構造と
、繊維強化材料と
、前記導電性網目構造及び前記繊維強化材料を覆うマトリックス材料と、を有する単層レイヤを含
み、
複合材基板に対して接合される一体型表面保護システム
であって、
前記導電性網目構造は、銅又はアルミニウムのワイヤセグメントからなる三次元メッシュ又はグリッドである、一体型表面保護システム。
【請求項2】
前記繊維強化材料は、ガラス繊維と炭素繊維とのうちの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載の一体型表面保護システム。
【請求項3】
前記マトリックス材料は、エポキシ樹脂を含む、請求項
1又は2に記載の一体型表面保護システム。
【請求項4】
前記単層レイヤの第1表面に配置され、又は、含まれる紫外線保護レイヤをさらに含む、請求項1~
3のいずれかに記載の一体型表面保護システム。
【請求項5】
前記単層レイヤの第2表面に配置された担持レイヤをさらに含む、請求項1~
4のいずれかに記載の一体型表面保護システム。
【請求項6】
複合材
基板を保護する方法であって、
請求項1~5のいずれかに記載の一体型表面保護システムを前記複合材
基板に接合するステップを含
む、方法。
【請求項7】
前記接合の前に、前記一体型表面保護システムから担持レイヤを分離するステップをさらに含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記一体型表面保護システムを前記複合材
基板に接合するステップは、前記一体型表面保護システムを航空機のコンポーネントに接合することを含む、請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
前記一体型表面保護システムを前記複合材
基板に接合するステップの後で、前記一体型表面保護システムに塗装レイヤを塗布するステップをさらに含む、請求項
6~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記一体型表面保護システムを前記複合材
基板に接合するステップの後で、前記一体型表面保護システムにプライマーレイヤを付加するステップをさらに含み、この際に、前記プライマーレイヤを、前記一体型表面保護システムと前記塗装レイヤとの間に配置するものである、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機や航空宇宙用の複合材構造及び複合材部品などの複合材構造及び複合材部品への配置に適した多機能一体型表面保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は、炭素繊維強化ポリマ(CFRP)材料の使用の増加に伴い、広範囲にわたって避雷機能を導入することで安全性とコンプライアンスを確保している。既知のシステムとしては、銅箔やアルミニウム箔のエキスパンドメッシュをポリマ樹脂レイヤに埋設し、これを複合材構造に積層して構成される金属箔システムがある。
【0003】
いくつかの材料層を複合材構造の外側表面に接合させて用いることで、避雷機能に加えて、紫外線保護、ファスナ取り付け穴の切削時の衝撃の最小化、プライマーの接着性と塗装剤の塗布のための滑らかな表面仕上げが提供される。従来技術では、これらの機能には、それぞれ別個のレイヤが用いられている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、一体型表面保護システムは、導電性の網目構造と繊維強化材料とを含む単層レイヤを含む。
【0005】
他の実施形態において、複合材構造は、複合材基板と、前記複合材基板に配置された単層レイヤと、を含む。前記単層レイヤは、導電性の網目構造と繊維強化材料とを含む。
【0006】
さらに他の実施形態において、複合材構造を保護する方法は、一体型表面保護システムを前記複合材構造に接合するステップを含む。前記一体型表面保護システムは、単層レイヤを含み、前記単雄レイヤは、導電性網目構造と繊維強化材料とを含む。
【0007】
本開示の多機能一体型表面保護システムのその他の実施形態は、以下の詳細な説明、添付図面、及び、請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】航空機の上面図であり、航空機の被雷ゾーンを示す図である。
【
図2】
図1の航空機の複合材構造を保護する一体型表面保護システムの一例を示す図である。
【
図3】
図1の航空機の複合材構造を保護する一体型表面保護システムの他の例を示す図である。
【
図4】
図2の一体型表面保護システムを含む複合材構造の一例を示す図である。
【
図5】
図3の一体型表面保護システムを含む複合材構造の一例を示す図である。
【
図6】
図2及び
図3の一体型表面保護システムを用いて複合材構造を保護する方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の記載によれば、複数の層を含む表面保護システムによって提供される機能の多く、又は、すべてを、1つの一体型表面保護システムに集約して、避雷、ファスナ取り付け穴の切削時の衝撃の最小化、UV保護、及び/又は、プライマーの接着性と塗装剤の塗布のための滑らかな表面仕上げを提供することができる。複数のコンポーネントを1つのシステムに一体化することにより、設計重量の低減や、処理及び製造の単純化が可能になる。また、1つの一体型表面保護システムを最適化することで、システム全体としての設計の堅牢性を保証することが可能であり、これにより、システムを全体として改善させることができる。
【0010】
少なくとも1つの最適化の例として、応力のシミュレーションが示すように、エポキシ被覆層に埋設されたエキスパンド金属箔を覆うガラス繊維層を追加すると、ガラス繊維層を含まない構成に比べて熱応力が低減される。なお、熱応力シミュレーションは、-55℃と70℃との間の温度サイクルで行う。
【0011】
本開示の一体型表面保護システムでは、多層表面保護システムの複数のレイヤが有する機能の多く、又は、すべてが1つのレイヤに盛り込まれている。一体型表面保護システムは、落雷の直接的な影響に対する保護のために導電性の網目構造(electrically conducive network)を含む。一体型表面保護システムは、さらに、取り扱いの際や自動積層(automated lay down)の際の構造的な強度をもたらす繊維強化材料を含む。繊維強化材料は、切削加工が可能である(drill compatible)とともに、温度サイクルに対する環境耐久性を向上させる。繊維強化材料が含まれることにより、塗装レイヤを重ねた場合に、一体性を維持することができる。
【0012】
本開示の多機能一体型表面保護システムによれば、効率を高め、製造コストを低減することができる。また、本開示の多機能一体型表面保護システムによれば、避雷、穴の切削時の衝撃の緩和、熱応力の低減が実現されるので、使用時の耐性を保証することができる。
【0013】
図1は、航空機10の上面図であり、航空機10における様々なゾーン11を示している。航空機10のコンポーネント13は、1つ以上のゾーン11に配置され、あるいは、これを構成する。航空機10のゾーン11は、航空機10において着雷の可能性が比較的高い部分である。ゾーン11には、ノーズゾーン12、胴体ゾーン14、翼ゾーン16、尾部ゾーン18、翼端ゾーン20が含まれる。なお、本明細書では、航空機10を図示し、説明しているが、一体型表面保護システム22(
図2及び
図3に示す)は、電流を逃がしたり、導電させたりすることが望ましい他の任意の適当な乗り物、又は、他の部分にも利用可能である。
【0014】
図2及び
図3は、例示的な一体型表面保護システムを概括的に符号22で示す模式図である。図示の一体型表面保護システム22は、いずれも、導電性の網目構造26と繊維強化材料28とを含む単層レイヤ(single layer)24を有する。単層レイヤ24は、さらに、導電性網目構造26と繊維強化材料28を担うマトリックス材料27を含む。導電性網目構造26と繊維強化材料28を担うマトリックス材料27は、導電性網目構造26と繊維強化材料28を完全に覆って、1つに結合している。マトリックス材料27で覆うことにより、導電性網目構造26と繊維強化材料28を周辺環境から保護するとともに、一体型表面保護システム22の表面をプライマーの接着及び塗装に適した滑らかな表面にすることができる。単層レイヤ24は、第1表面31と、第1表面31の反対側の第2表面33を有する。マトリックス材料27は、エポキシ樹脂であってもよい。エポキシ樹脂は、高温においても比較的強度が高い熱硬化性の樹脂であって、炭素繊維やガラス繊維などの様々な繊維強化材料28に対する接着性が高い。単層レイヤ24は、これ以外のコンポーネント及び特徴も含むことができ、そのような構成も、本開示の範囲を逸脱するものではない。
【0015】
導電性網目構造26は、導電性の材料(又は、複数の導電性材料の組み合わせ)を含んでおり、一体型表面保護システム22に導電性を付与する(あるいは、当該システムの導電性を高める)。一体型表面保護システム22の導電性網目構造26は、例えば、雷電流などの電流が、一体型表面保護システム22を通り、取り付け位置、電気/電子システム、及び、燃料タンクから遠ざかるよう流れるように構成されている。したがって、導電性網目構造26は、落雷の直接的な影響に対する保護を提供することができる。
【0016】
導電性網目構造26は、導電性材料から成る複数の導電性要素29を含む。複数の導電性要素29は、電気的に接続されている。図示した実施例では、複数の導電性要素29は、物理的に接続されている。
【0017】
例えば、
図2に示すように、導電性網目構造26の導電性要素29は、マトリックス材料27に覆われたグリッド又はメッシュを構成するものである。したがって、導電性要素29は、物理的且つ電気的に接続されて、導電性網目構造26を形成する。
【0018】
あるいは、
図3に示すように、導電性網目構造の導電性要素29は、マトリックス材料27の全体に分散されたフレークや切片などの粒子である。マトリックス材料27には、十分な量の導電性要素29(粒子)が含まれているので、マトリックス材料27において粒子と粒子が確実に接触するような密度で配置されて、導電性網目構造26が構成される。
【0019】
一実施例において、導電性材料は、金属を含む。金属の導電性材料によれば、導電性要素29を物理的に接続して構成した網目構造を、単層レイヤ24全体に配置することができる。具体的には、導電性網目構造26を構成する導電性材料は、単層レイヤ24全体に亘って物理的につながった金属ワイヤのセグメントでもよい。
図2に示すように、導電性網目構造26は、予め形成されたメッシュ又はグリッドを、強化材料28を含むマトリックス材料27に付加して構成することができる。
図2では、予め形成されたメッシュ又はグリッドは、三次元の網目構造として示されている。この代わりに、予め形成されたメッシュ又はグリッドは、単層レイヤ24全体に延びる二次元の網目構造であってもよい。
【0020】
一態様では、導電性網目構造26は、銅とアルミニウムとのちの少なくとも1つを含む。銅とアルミニウムは、エポキシ樹脂を始めとする様々なマトリックス材料27に対して化学的な適合性を有するとともに、導電性を有する。単層レイヤ24に含める導電性材料の量は、導電性材料の導電性、単層レイヤ24における導電性材料の配置などの様々な要因によって決定される。
【0021】
他の例では、導電性網目構造26は、導電性の非金属を含む。導電性網目構造26の非金属は、導電性の非金属からなる複数の切片が分散された構成でもよい。この場合、導電性網目構造26は、導電性の非金属の切片が単層レイヤ24において分散された構成であり、マトリックス材料27において切片と切片が物理的に接触するように十分な量が含まれている。これにより、電気的に接続された導電性網目構造26が形成される。一態様によれば、導電性の非金属の切片は、単層レイヤにおいてランダムな配置で分散されている。一態様では、導電性網目構造26は、銅とアルミニウムのちの少なくとも1つを含む。銅及びアルミニウムは、エポキシ樹脂を始めとする様々なマトリックス材料27に対して化学的な適合性を有するとともに、導電性を有する。
【0022】
繊維強化材料28は、一体型表面保護システム22の強度を上げるために含まれている。構成としては、繊維強化材料28は、単一の材料であってもよいし、複数の材料の組み合わせであってもよい。例えば、繊維強化材料28は、比強度が比較的高い材料である繊維ガラスと炭素繊維のうちの少なくとも1つを含む。物理的には、繊維強化材料28は、複数の繊維の形態をとることができ、例えば、単層レイヤ24のマトリックス材料27に(例えば、ランダムに)分散された複数の繊維であってもよい。図示のとおり、繊維強化材料28は、物理的に互いに分離されている。あるいは、繊維強化材料28は、物理的につながっていてもよい。
【0023】
一体型表面保護システム22の繊維強化材料28は、取り扱いや自動レイアップの際に必要な構造的な支持を提供するとともに、ファスナ取付けのための穴の切削を容易にする。導電性網目構造26に加えて、繊維強化材料28を単層レイヤ24に組み込むことによって、多層構造体に比べて、温度サイクルに対する環境耐性を向上させ、塗装レイヤ48を上に重ねた場合の一体性を維持することができる。
【0024】
図2及び
図3に示すように、一体型表面保護システム22は、任意の要件として、単層レイヤ24の第1表面31上に、または当該第1表面の内部に(on or within)、紫外線保護レイヤ30をさらに有することができる。図示のとおり、紫外線保護レイヤ30は、単層レイヤ24の第1表面31上に設けられた別個のレイヤである。この代わりに、紫外線保護レイヤ30は、単層レイヤ24と一体化してもよく、この場合、単層レイヤ24は、導電性網目構造26、繊維強化材料28、及び、紫外線保護レイヤ30を含む。紫外線保護レイヤ30は、例えば、紫外線保護機能(例えば、UV安定剤)を有する任意の有機ポリマ樹脂であり、当該レイヤに覆われた材料を紫外線から保護する。
【0025】
図2及び
図3に示すように、一体型表面保護システム22は、任意の要件として、単層レイヤ24の第2表面33に、担持レイヤ(carrier layer)32をさらに含むことができる。担持レイヤ32は、単層レイヤ24を複合材基板42に積層する自動積層プロセスにおいて用いられる任意の適当な紙であってもよい。1つの表現方法によれば、担持レイヤ32は、シリコーン離型剤を有するといえる。シリコーン離型剤は、担持レイヤ32の表面を滑らかにして、一体型表面保護システム22から容易に分離できるようにする。例えば、担持レイヤ32は、0.1016mm(0.004インチ)から0.2032mm(0.008インチ)の範囲の断面厚さを有する。担持レイヤ32は、単層レイヤ24から分離するなどして、一体型表面保護システム22から分離して、破棄することができる。このように、担持レイヤ32を一体型表面保護システム22から分離すると、一体型表面保護システム22の表面、例えば、単層レイヤ24の第2表面33を、複合材基板(例えば、
図4及び
図5に示す複合材基板42)の表面に付着させることが可能になる。
【0026】
図4及び
図5は、例示的な複合構造を、概括的に符号40で示す模式図である。複合材構造40は、複合材基板42及び一体型表面保護システム22を含む。つまり、複合材構造40は、複合材基板42と、導電性網目構造26及び繊維強化材料28を含む単層レイヤ24と、を含む。図示のとおり、複合材構造40は、上述したように、マトリックス材料27及び紫外線保護レイヤ30をさらに含むことができる。
【0027】
図4及び
図5に示すように、複合材構造40は、さらに、一体型表面保護システム22上に配置されたプライマーレイヤ(primer layer)46をさらに含むことができる。例えば、プライマーレイヤ46は、単層レイヤ24の少なくとも1つの表面に配置される。プライマーレイヤ46は、塗布に先立って複合材構造40の単層レイヤ24に付加された下塗り層である。プライマーレイヤ46は、複合材構造40の単層レイヤ24に対する塗料の接着性を高めることができる。一実施例では、プライマーレイヤ46は、ポリウレタン層を含む。一実施例では、プライマーレイヤ46の厚みは、0.013mmである。
【0028】
図4及び
図5に示すように、複合材構造40は、一体型表面保護システム22上に塗装レイヤ48をさらに含むことができる。塗装レイヤ48は、複合材構造40の少なくとも1つの表面に、保護被膜として塗布された材料である。複合材構造40がプライマーレイヤ46も含む場合には、プライマーレイヤ46が、単層レイヤ24と塗装レイヤ48の間に配置される。一実施例では、塗装レイヤ48は、ポリウレタン層を含む。一実施例では、塗装レイヤ48の厚みは、0.13mm~0.15mmである。
【0029】
複合材構造40の複合材基板42は、例えば、航空機や航空宇宙構造における任意のコンポーネントである(あるいは、当該コンポーネントを含む)。例えば、複合材基板42は、ノーズゾーン12(
図1)、胴体ゾーン14(
図1)、翼ゾーン16(
図1)、尾部ゾーン18(
図1)、及び、翼端ゾーン20(
図1)を構成する(又は、これらを含む)。したがって、
図1に示すように、航空機10のコンポーネント13(
図1)は、複合材構造40を含みうる。
【0030】
複合材構造40の複合材基板42は、互いに積層された複数のプライ44(例えば、炭素繊維強化ポリマのシート又はテープ)を含む。
図4及び
図5では、3つのプライ44を示しているいるが、プライ44が3つより多い場合も、あるいは、3つより少ない場合も、本開示の範囲から逸脱するものではない。一態様では、複数のプライ44のうちの少なくとも1つのプライは、炭素繊維強化プラスチックから成る。
【0031】
複合材構造40は、任意の適当なプロセスで形成することができる。一態様では、複合材構造40は、例えば、単層レイヤ24、紫外線保護レイヤ30、及び、担持レイヤ32を含む一体型表面保護システム22(
図2及び
図3)を製造することで形成される。次に、一体型表面保護システム22を複合材基板42に接合し、その後、プライマーレイヤ46及び塗装レイヤ48を付加する。ただし、本開示の複合材構造40は、この製造プロセスによって限定されるものではない。
【0032】
図6は、本開示の一実施形態による、複合材構造40を保護する例示的な方法50を示すフロー図である。
【0033】
方法50は、ブロック53において、一体型表面保護システム22を複合材構造40に接合することを含む。この際に、一体型表面保護システム22は、導電性網目構造26と繊維強化材料とを含む単層レイヤ24を含むものとする。一実施例では、一体型表面保護システム22を複合材構造40に接合することは、一体型表面保護システム22を、航空機10(
図1)のコンポーネント13(
図1)に接合することを含む。複合材構造40は、例えば、航空機又は航空宇宙構造体の任意のコンポーネントを含み、例えば、ノーズゾーン12、胴体ゾーン14、翼ゾーン16、尾部ゾーン18、及び、翼端ゾーン20のコンポーネントを含む。一態様では、複合材構造40は、複数のプライ(例えば、CFRP基板外皮プライ(CFRP substrate skin plies))を含む。
【0034】
図示のとおり、方法50は、任意のステップとして、接合の前に、一体型表面保護システム22から担持レイヤを分離することをブロック51に含む。この分離により、単層レイヤ24の第2表面33を露出させた状態で、次に複合材構造40の付加を行うことができる。
【0035】
図示のとおり、方法50は、任意のステップとして、自動積層プロセスによって(例えば、ピック・アンド・プレイスロボットを用いて)、一体型表面保護システムを複合材構造40に付加することをブロック52にさらに含む。このように、一態様では、一体型表面保護システム22は、独立したコンポーネントとして作製され、その後、複合材構造40に接合される。
【0036】
図示のとおり、方法50は、任意のステップとして、接合後の一体型表面保護システム22にプライマーレイヤ46を付加することをブロック54にさらに含む。プライマーレイヤ46の付加は、複合材構造40に塗装レイヤ48を塗布するための準備工程であり、複合材構造40と塗装レイヤ48との接着性を高めることができる。
【0037】
図示のとおり、方法50は、任意のステップとして、接合後の一体型表面保護システム22に塗装レイヤ48を塗布することをブロック55に含む。例えば、塗装レイヤ48は、プライマーレイヤ46に塗布することができる。塗装レイヤ48を塗布することにより、複合材構造40に保護被膜が形成される。
【0038】
本開示は、さらに、以下に列挙する例示的な実施例を包含する。これらの実施例の列挙は、すべてを網羅するものではなく、また、請求の範囲に含まれるものも、含まれないものもある。
【0039】
1. 導電性の網目構造(26)と繊維強化材料(28)とを含む単層レイヤ(24)を含む、一体型表面保護システム(22)。
【0040】
2. 前記導電性網目構造(26)は、金属を含む、実施例1に記載の一体型表面保護システム(22)。
【0041】
3. 前記導電性網目構造(26)は、銅とアルミニウムとのうちの少なくとも1つを含む、実施例1又は2に記載の一体型表面保護システム(22)。
【0042】
4. 前記導電性網目構造(26)は、導電性の非金属を含む、実施例1に記載の一体型表面保護システム(22)。
【0043】
5. 前記導電性網目構造(26)は、グラフェンとカーボンナノチューブとのうちの少なくとも1つを含む、実施例1又は4に記載の一体型表面保護システム(22)。
【0044】
6. 前記繊維強化材料(28)は、ガラス繊維と炭素繊維とのうちの少なくとも1つを含む、実施例1~5のいずれかに記載の一体型表面保護システム(22)。
【0045】
7. 前記単層レイヤ(24)は、さらに、前記導電性網目構造(26)と前記繊維強化材料(28)とを担うマトリックス材料(27)を含む、実施例1~6のいずれかに記載の一体型表面保護システム(22)。
【0046】
8. 前記マトリックス材料(27)は、エポキシ樹脂を含む、実施例7に記載の一体型表面保護システム(22)。
【0047】
9. 前記単層レイヤ(24)の第1表面(31)に配置され、又は、含まれる紫外線保護レイヤ(30)をさらに含む、実施例1~8のいずれかに記載の一体型表面保護システム(22)。
【0048】
10. 前記単層レイヤ(24)の第2表面(33)に配置された担持レイヤ(32)をさらに含む、実施例1~9のいずれかに記載の一体型表面保護システム(22)。
【0049】
11. 複合材基板(42)と、
前記複合材基板(42)に付加された、実施例1に記載の一体型表面保護システム(22)と、を含む、複合材構造(40)。
【0050】
12. 前記複合材基板(42)は、炭素繊維強化プラスチックを含む、実施例11に記載の複合材構造(40)。
【0051】
13. 前記一体型表面保護システム(22)に配置された塗装レイヤ(48)をさらに含む、実施例11又は12に記載の複合材構造(40)。
【0052】
14. 前記一体型表面保護システム(22)と前記塗装レイヤ(48)との間に配置されたプライマーレイヤ(46)をさらに含む、実施例13に記載の複合材構造(40)。
【0053】
15. 実施例11~14のいずれかに記載の複合材構造(40)を含む、航空機(10)のコンポーネント(13)。
【0054】
16. 複合材構造(40)を保護する方法(50)であって、
一体型表面保護システム(22)を前記複合材構造(40)に接合するステップを含み、この際に、前記一体型表面保護システム(22)は、導電性網目構造(26)と繊維強化材料(28)とを含む単層レイヤ(24)を含むものである、方法。
【0055】
17. 前記接合の前に、前記一体型表面保護システム(22)から担持レイヤ(32)を分離するステップをさらに含む、実施例16に記載の方法(50)。
【0056】
18. 前記一体型表面保護システム(22)を前記複合材構造(40)に接合するステップは、前記一体型表面保護システム(22)を航空機(10)のコンポーネント(13)に接合することを含む、実施例16又は17に記載の方法(50)。
【0057】
19. 前記一体型表面保護システム(22)を前記複合材構造(40)に接合するステップの後で、前記一体型表面保護システム(22)に塗装レイヤ(48)を塗布するステップをさらに含む、実施例16~18のいずれかに記載の方法(50)。
【0058】
20. 前記一体型表面保護システム(22)を前記複合材構造(40)に接合するステップの後で、前記一体型表面保護システム(22)にプライマーレイヤ(46)を付加するステップをさらに含み、この際に、前記プライマーレイヤ(46)を、前記一体型表面保護システム(22)と前記塗装レイヤ(48)との間に配置するものである、実施例19に記載の方法(50)。
【0059】
したがって、本開示によれば、取り扱いに際して、また、自動積層に際して構造的な支持を提供できるとともに、切削を容易にし、温度サイクルに関する環境耐性を大幅に向上させることができ、これにより、塗装レイヤを上に設けた場合に一体性を保持することができる。本開示による多機能一体型表面保護システム及び方法によれば、効率を向上させ、製造コストを削減でき、これと同時に、落雷による直接的な影響に対する保護を提供し、熱応力を低減することができる。
【0060】
本開示の多機能一体型表面保護システムについて様々な実施形態を図示及び説明したが、当業者が本明細書に鑑みれば、様々な変形が想到可能であろう。本出願は、そのような変形も包含するものであり、請求の範囲によってのみ限定される。