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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】光拡散制御体および反射型表示体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20240304BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02F1/1335
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019150541
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021032961
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-037337(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178230(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221828(WO,A1)
【文献】特開平07-020319(JP,A)
【文献】特開平05-214677(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有する光拡散制御層を少なくとも2層備える光拡散制御体であって、
少なくとも2層の前記光拡散制御層は、互いに積層されており、
少なくとも2層の前記光拡散制御層は、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御層用組成物を硬化させたものであり、前記高屈折率成分は、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルであり、前記低屈折率成分は、ウレタン(メタ)アクリレートであり、
前記光拡散制御層のうちの2層である第一の光拡散制御層および第二の光拡散制御層は、それぞれ、その片面に対して当該面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で順次光線を照射したときに測定されるヘイズ値の最小値が、35%以上であり、
前記第一の光拡散制御層の拡散中心軸と、前記第二の光拡散制御層の拡散中心軸とが異なる角度であり、
前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層の両方における前記規則的内部構造は、前記屈折率が相対的に低い領域中に、前記屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造であり、
前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層との間のヘイズ値の差は、0.1ポイント以上、5ポイント以下であり、
前記差にかかる前記ヘイズ値は、前記第一の光拡散制御層および前記第二の光拡散制御層の各々に対して、入射角度0°で光線を照射したときに測定されるヘイズ値である
ことを特徴とする光拡散制御体。
【請求項2】
請求項1に記載の光拡散制御体と、
前記光拡散制御体における片面側に設けられた反射板と
を備えることを特徴とする反射型表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の入射角度範囲内の入射光を、強く、かつ、光損失が低い状態で透過拡散させることができる光拡散制御体、および当該光拡散制御体を備える反射型表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス、電子ペーパーなどといった表示体は、透過型表示体と反射型表示体とに大別される。透過型表示体は、その内部にバックライト等の光源を備え、当該光源によって背後から照らされた表示を、視認者が視認することとなる。これに対し、反射型表示体は、バックライトのような光源を備えておらず、外部に存在する室内照明や太陽等を光源とする。なお、夜間等の外部からの光量が不足する場合に、表示体の表面側に光源を設け間接照明のかたちで視認可能なシステムを備えるものも反射型表示体に含まれる。そして、反射型表示体は、通常、その内部に反射板を備えている。反射型表示体は、外部の光源からの光を反射板によって反射させ、その反射光によって表示を照らす。
【0003】
反射型表示体では、外部の光源を利用することに起因して、光源と視認者との位置関係が一定とはならない。その結果、光源の位置に依っては視認者に十分な光が到達せず、視認性が低下したり、表示体全体を明るく照明できないという問題が生じ易い。このような問題を解決するために、光拡散板を表示体に組み込むことが考えられる。しかし、一般的な光拡散板を単に組み込むだけでは、良好な視認性を得るために必要な拡散性が十分に得られなかったり、高い拡散を実現しようとすると迷光や後方散乱による光損失が生じ、画像鮮明度が損なわれるという問題がある。これらの問題を解消する観点から、反射型表示体においては、所定の入射角度範囲内の入射光を、強く、かつ、光損失が低い状態で透過拡散させることができる光拡散制御体を、視認者側の表面と反射板との間に設けることが検討されている。上記光拡散制御体が存在することにより、反射板にて反射された光は適度に拡散されるものとなり、光源の位置に依存した視認性の低下が低減される。
【0004】
上述したような光拡散制御体を備える反射型表示体として、特許文献1には、反射型の表示パネルと、前記表示パネル上に配置された光学積層体とを備え、前記光学積層体は、2枚以上の異方性散乱フィルムを有し、前記複数の異方性散乱フィルムのうち少なくとも2枚のフィルムの散乱中心軸方向の透過率が互いに異なり、前記光学積層体に含まれる異方性散乱フィルムのうち散乱中心軸方向の透過率が相対的に高い第1フィルムは、前記光学積層体に含まれる異方性散乱フィルムのうち散乱中心軸方向の透過率が相対的に低い第2フィルムと比較して、散乱中心軸方向の透過率が4倍以上である表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5749960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、液晶表示装置や電子ペーパーなどの反射型表示体の利用範囲が広がっており、それに伴い、より高い視認性が求められたり、あるいは、より悪条件の光源下においても視認できる性能が求められるようになってきている。その結果、特許文献1に開示されるような従来の反射型表示体では、求められる性能を満たすことができなくなっており、より優れた視認性を実現できる光拡散制御体が求められている。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、優れた視認性を有する表示体を実現可能な光拡散制御体、および優れた視認性を有する反射型表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有する光拡散制御層を少なくとも2層備える光拡散制御体であって、前記光拡散制御層のうちの2層である第一の光拡散制御層および第二の光拡散制御層は、それぞれ、その片面に対して当該面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で順次光線を照射したときに測定されるヘイズ値の最小値が、35%以上であることを特徴とする光拡散制御体を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係る光拡散制御体は、上述したヘイズ値の最小値をそれぞれ有する第一の光拡散制御層および第二の光拡散制御層を備えていることにより、適度に光を拡散させることが可能となる。そのため、当該光拡散制御体を備える反射型表示体では、より斜めから入射した光線についても有効に利用することが可能となり、視認性に優れたものとなる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記第一の光拡散制御層の拡散中心軸と、前記第二の光拡散制御層の拡散中心軸とが異なる角度であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記第一の光拡散制御層および第二の光拡散制御層の少なくとも一方における前記規則的内部構造は、前記屈折率が相対的に低い領域中に、前記屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造であることが好ましい(発明3)。
【0012】
第2に本発明は、前記光拡散制御体(発明1~3)と、前記光拡散制御体における片面側に設けられた反射板とを備えることを特徴とする反射型表示体を提供する(発明4)。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光拡散制御体によれば、優れた視認性を有する表示体、特に反射型表示体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る光拡散制御体の断面図である。
図2】本発明の一実施形態における光拡散制御層の規則的内部構造の一例(カラム構造)を概略的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る光拡散制御体を備える反射型表示体の断面図である。
図4】試験例1(光拡散制御層の変角ヘイズ測定)の結果を示す図である。
図5-1】試験例2(光拡散制御層の拡散輝度分布測定)の結果の一部を示す図である。
図5-2】試験例2(光拡散制御層の拡散輝度分布測定)の結果の一部を示す図である。
図6-1】試験例3(反射型表示体サンプルの拡散輝度分布測定)の結果の一部を示す図である。
図6-2】試験例3(反射型表示体サンプルの拡散輝度分布測定)の結果の一部を示す図である。
図6-3】試験例3(反射型表示体サンプルの拡散輝度分布測定)の結果の一部を示す図である。
図6-4】試験例3(反射型表示体サンプルの拡散輝度分布測定)の結果の一部を示す図である。
図7】試験例3(反射型表示体サンプルの拡散輝度分布測定)の結果から得られるグラフを示す図である。
図8】試験例4(反射型表示体サンプルの視認性の評価)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔光拡散制御体〕
図1には、本発明の一実施形態に係る光拡散制御体の断面図が示される。図1に示される光拡散制御体1は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有する光拡散制御層を少なくとも2層備える。ここで、上記規則的内部構造とは、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の領域が所定の規則性をもって配置されてなる内部構造(例えば、光拡散制御層表面と平行な平面で光拡散制御層を切断して得られる断面であって、上記規則的内部構造が存在する位置にて切断して得られる断面をみた場合に、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い領域が、上記断面内の少なくとも1方向に沿って、同程度のピッチをもって繰り返して配置されてなる内部構造)をいうものである。
【0016】
特に、図1に示される光拡散制御体1は、第一の光拡散制御層11と、当該第一の光拡散制御層11における片面側に積層された第二の光拡散制御層12とを備えたものとなっている。なお、本実施形態に係る光拡散制御体1は、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12以外の光拡散制御層をさらに備えていてもよく、あるいは、光拡散制御層以外の層をさらに備えていてもよい。また、光拡散制御体1は、第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12とを備えている限り、その形態は特に限定されず、例えば、表示体に組み込まれるような一般的な部材の形態であってもよく、特に、フィルム状であること、すなわち光拡散制御フィルムであることが好ましい。
【0017】
本実施形態に係る光拡散制御体1において、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12は、それぞれ、その片面に対して当該面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で順次光線を照射したときに測定されるヘイズ値の最小値が、35%以上である。本実施形態に係る光拡散制御体1は、上記ヘイズ値の最小値が35%以上である光拡散制御層を少なくとも2層備えることにより、光拡散制御体1に所定の角度で入射された光線を適度に拡散させて透過させることが可能となる。これにより、本実施形態に係る光拡散制御体1を用いて反射型表示体を製造した場合には、当該反射型表示体は、入射光の入射角度(反射型表示体の表示面の法線と入射光との角度)がより大きい場合であっても、当該入射光が視認者の方向に有効に到達するものとなる。その結果、視認者は、より明るく表示を認識することが可能となり、すなわち、優れた視認性が実現される。このような優れた視認性は、本実施形態に係る光拡散制御体1を用いて製造される透過型表示体においても同様に実現される。
【0018】
より優れた視認性を実現する観点からは、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12の少なくとも一方における(好ましくは両層における)上述したヘイズ値の最小値は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、特に60%以上であることが好ましく、さらには65%以上であることが好ましい。
【0019】
また、上述したヘイズ値の最大値については、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12の少なくとも一方において(好ましくは両層において)、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、特に90%以上であることが好ましく、さらには95%以上であることが好ましい。第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12の少なくとも一方において(好ましくは両層において)、上述したヘイズ値の最大値が上記の通りであることにより、視認者に対して、より明瞭な表示を到達させ易くなる。
【0020】
以上のヘイズ値の最小値および最大値は、変角ヘイズメーター等を用いた変角ヘイズ測定により取得することが可能であり、当該測定方法の詳細は後述する試験例に記載の通りである。
【0021】
本実施形態に係る光拡散制御体1において、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12との間のヘイズ値の差は、50ポイント未満であることが好ましく、特に30ポイント以下であることが好ましく、さらには10ポイント以下であることが好ましく、さらには5ポイント以下であることが好ましい。上記ヘイズ値の差が50ポイント未満であることにより、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12が、上述したヘイズ値の最小値を有し易いものとなる。なお、上記ヘイズ値の差の下限値については特に限定されず、例えば、0.1ポイント以上であってよく、特に0.5ポイント以上であってよく、さらには1%ポイント以上であってよい。なお、上記ヘイズ値の差におけるヘイズ値は、各光拡散制御層に対して、入射角度0°で光線を照射したときに測定されるヘイズ値とする。
【0022】
本実施形態に係る光拡散制御体1では、第一の光拡散制御層11の拡散中心軸と、第二の光拡散制御層12の拡散中心軸とが異なる角度であることが好ましい。これにより、本実施形態に係る光拡散制御体1は、所定の角度で入射された光線をより分散させ易いものとなる。そのため、本実施形態に係る光拡散制御体1を備える反射型表示体では、より入射角度の大きい入射光を、視認者に向けて反射し易いものとなり、すなわち、より優れた視認性が達成される。なお、上記拡散中心軸とは、それを中心にして拡散特性がほぼ対称となる軸をいい、光拡散制御層の変角ヘイズ測定等によって把握される拡散性能に基づいて推定することができ、その詳細な測定方法は、後述する試験例に記載の通りである。
【0023】
また、優れた視認性をさらに達成し易いという観点から、第一の光拡散制御層11の拡散中心軸と第二の光拡散制御層12の拡散中心軸とがなす角度は、1°以上であることが好ましく、特に5°以上であることが好ましく、さらには10°以上であることが好ましい。このように、拡散中心軸同士の角度が上記範囲以上であることにより、本実施形態に係る光拡散制御体1は、所定の角度で入射された光線をより分散させ易くなる。
【0024】
一方、第一の光拡散制御層11の拡散中心軸と第二の光拡散制御層12の拡散中心軸とがなす角度は、40°以下であることが好ましく、特に30°以下であることが好ましく、さらには20°以下であることが好ましい。拡散中心軸同士の角度が上記範囲以下であることにより、射出される光が有効に拡散される範囲が、第一の光拡散制御層11と第二の光拡散制御層12とで重なり易くなり、その結果、より優れた視認性を実現し易くなる。
【0025】
本実施形態に係る光拡散制御体1では、第一の光拡散制御層11の片面に対して入射光を最も強く拡散させる入射角度から光線を照射し、それによって他方の面に透過してくる拡散光の光強度の最大値と、第二の光拡散制御層12について同様に測定された拡散光の光強度の最大値との比(より大きな値をより小さな値で除して得られる比)が、4倍未満であることが好ましく、3.5倍以下であることがより好ましく、さらには3倍以下であることが好ましく、またさらには2倍以下であることが好ましく、1.4倍以下であることが最も好ましい。上記比が4倍未満であることにより、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12が、前述したヘイズ値の最小値を有し易いものとなる。一方、上記比の下限値については特に限定されず、例えば1.00倍以上であってもよく、特に1.01倍以上であってもよく、さらには1.05倍以上であってもよい。なお、拡散光の光強度の最大値は、例えば拡散輝度分布測定装置を用いた光拡散制御層の拡散輝度分布測定により取得することができ、その測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0026】
1.光拡散制御層の構成
本実施形態に係る光拡散制御体が備える第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するとともに、前述したヘイズ値の最小値を有するものである限り、特に限定されない。なお、本実施形態に係る光拡散制御体が、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12以外の光拡散制御層を更に備える場合、この更なる光拡散制御層は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するものである限り、特に限定されない。
【0027】
第一の光拡散制御層11、第二の光拡散制御層12、および更なる光拡散制御層は、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御層用組成物を硬化させたものであることが好ましい。特に、高屈折率成分および低屈折率成分は、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものであることが好ましい。このような光拡散制御層用組成物を用いることで、上述した規則的内部構造を良好に形成し易くなるとともに、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を形成する場合には、そのヘイズ値の調整も容易となり、結果として、前述したヘイズ値の最小値を達成し易いものとなる。
【0028】
(1)高屈折率成分
上記高屈折率成分の好ましい例としては、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特に複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等が挙げられる。これらの中でも、良好な規則的内部構造を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、具体的には、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0029】
高屈折率成分の重量平均分子量は、2500以下であることが好ましく、特に1500以下であることが好ましく、さらには1000以下であることが好ましい。また、高屈折率成分の重量平均分子量は、150以上であることが好ましく、特に200以上であることが好ましく、さらには250以上であることが好ましい。高屈折率成分の重量平均分子が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層を形成し易くなるとともに、前述したヘイズ値の最小値を有した第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を形成し易いものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0030】
高屈折率成分の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、特に1.54以上であることが好ましく、さらには1.56以上であることが好ましい。また、高屈折率成分の屈折率は、1.70以下であることが好ましく、特に1.65以下であることが好ましく、さらには1.59以下であることが好ましい。高屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層を形成し易くなるとともに、前述したヘイズ値の最小値を有した第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を形成し易いものとなる。なお、本明細書における屈折率とは、光拡散制御層用組成物を硬化する前における所定の成分の屈折率を意味し、また、当該屈折率は、JIS K0062:1992に準じて測定したものである。
【0031】
光拡散制御層用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、25質量部以上であることが好ましく、特に40質量部以上であることが好ましく、さらには50質量部以上であることが好ましい。また、光拡散制御層用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、特に300質量部以下であることが好ましく、さらには200質量部以下であることが好ましい。高屈折率成分の含有量がこれらの範囲であることで、形成される光拡散制御層の規則的内部構造において、高屈折率成分に由来する領域と低屈折率成分に由来する領域とが所望の割合で存在するものとなる。その結果、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層を形成し易くなるとともに、前述したヘイズ値の最小値を有した第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を形成し易いものとなる。
【0032】
(2)低屈折率成分
上記低屈折率成分の好ましい例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0033】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成されるものであることが好ましい。
【0034】
上述した(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物の好ましい例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましく、特にイソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
【0035】
上述した(b)ポリアルキレングリコールの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0036】
なお、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2300以上であることが好ましく、特に4300以上であることが好ましく、さらには6300以上であることが好ましい。また、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、19500以下であることが好ましく、特に14300以下であることが好ましく、さらには12300以下であることが好ましい。
【0037】
上述した(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、所定の規則的内部構造をより効率的に形成できる観点から、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0038】
上述した(a)~(c)の成分を材料としたウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って行うことができる。このとき(a)~(c)の成分の配合割合は、ウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成する観点から、モル比にて、(a)成分:(b)成分:(c)成分=1~5:1:1~5の割合とすることが好ましく、特に1~3:1:1~3の割合とすることが好ましく、さらには2:1:2の割合とすることが好ましい。
【0039】
低屈折率成分の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、特に5000以上であることが好ましく、さらには7000以上であることが好ましい。また、低屈折率成分の重量平均分子量は、20000以下であることが好ましく、特に15000以下であることが好ましく、さらには13000以下であることが好ましい。低屈折率成分の重量平均分子量が上記範囲であることにより、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層を形成し易くなるとともに、前述したヘイズ値の最小値を有した第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を形成し易いものとなる。
【0040】
低屈折率成分の屈折率は、1.59以下であることが好ましく、1.50以下であることがより好ましく、特に1.49以下であることが好ましく、さらには1.48以下であることが好ましい。また、低屈折率成分の屈折率は、1.30以上であることが好ましく、特に1.40以上であることが好ましく、さらには1.46以上であることが好ましい。低屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層を形成し易くなるとともに、前述したヘイズ値の最小値を有した第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を形成し易いものとなる。
【0041】
(3)その他の成分
前述した光拡散制御層用組成物は、高屈折率成分および低屈折率成分以外に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー(重合性官能基を3つ以上有する化合物)、光重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0042】
上述した添加剤の中でも、光拡散制御層用組成物は、光重合開始剤を含有することも好ましい。光拡散制御層用組成物が光重合開始剤を含有することで、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御層を効率的に形成し易いものとなる。
【0043】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
光重合開始剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中の光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.2質量部以上とすることが好ましく、特に0.5質量部以上とすることが好ましく、さらには1質量部以上とすることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、特に15質量部以下とすることが好ましく、さらには10質量部以下とすることが好ましい。光拡散制御層用組成物中の光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、光拡散制御層を効率的に形成し易いものとなる。
【0045】
(4)光拡散制御層用組成物の調製
光拡散制御層用組成物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分、ならびに、所望により光重合開始剤等のその他の添加剤を均一に混合することで調整することができる。
【0046】
上記混合の際には、40~80℃の温度に加熱しながら撹拌し、均一な光拡散制御層用組成物を得てもよい。また、得られる光拡散制御層用組成物が所望の粘度となるように、希釈溶剤を添加して混合してもよい。
【0047】
2.光拡散制御層の規則的内部構造
前述した通り、本実施形態における光拡散制御層は、その内部に、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有する。より具体的には、本実施形態における光拡散制御層は、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の領域が、フィルム膜厚方向に、所定の長さで延在する規則的内部構造を有する。なお、ここにおける規則的内部構造は、屈折率が相対的に高い領域がフィルム膜厚方向に延在してなるものである点で、一方の相が他方の相中に明確な規則性なく存在してなる相分離構造や、海成分中にほぼ球状の島成分が存在してなる海島構造とは区別されるものである。
【0048】
上述した規則的内部構造のより具体的な例としては、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造が挙げられる。本実施形態における第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12においては、前述したヘイズ値の最小値を達成し易いという観点から、規則的内部構造としてカラム構造を有することが好ましい。
【0049】
(1)カラム構造
図2は、上述したカラム構造を概略的に示した斜視図である。図2に示されるように、カラム構造113では、屈折率が相対的に高い柱状物112が厚さ方向に複数林立し、その周囲を、屈折率が相対的に低い領域114を埋める構造となっている。なお、図2では、柱状物112が、カラム構造113内の厚さ方向全域に存在するものとして描かれているものの、カラム構造113の厚さ方向の上端部および下端部の少なくとも一方に、柱状物112が存在しないものとなっていてもよい。
【0050】
このようなカラム構造113を有する光拡散制御層に入射された光は、所定の入射角度範囲内となる場合、所定の開き角をもって強く拡散しながら光拡散制御層から射出される。一方、入射光が上記入射角度範囲外の角度による入射となる場合、拡散することなく透過するか、または、入射角度範囲内の入射光の場合よりも弱い拡散を伴って射出されるものとなる。なお、カラム構造113によって生じる拡散光は、光拡散制御層表面と平行に造影体を配置する場合、いずれの方向にも広がりを有する、円形状もしくは略円形状(楕円形状など)となる。
【0051】
カラム構造113においては、屈折率が相対的に高い柱状物112の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域114の屈折率との差が、0.01以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましく、さらには0.1以上であることが好ましい。上記差が0.01以上であることで、効果的な拡散を行うことが可能となる。なお、上記差の上限は特に限定されず、例えば、0.3以下であってもよい。
【0052】
上述した柱状物112は、光拡散制御層の一方の面から他方の面に向かって、直径が増加する構造を有していることが好ましい。このような構造を有する柱状物112は、一方の面から他方の面に向かって直径がほぼ変化しない柱状物と比較して、柱状物の軸線方向と平行な光の進行方向を変更させ易くなり、これにより、光拡散制御層が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0053】
また、柱状物112を、軸線方向に水平な面で切断したときの断面における、直径の最大値は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、当該最大値は、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。直径の最大値が上記範囲であることで、光拡散制御層が効果的に光を拡散させることが可能となる。なお、柱状物112の軸線方向と垂直な面で切断したときの断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
【0054】
カラム構造113においては、隣接する柱状物112間の距離が、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、上記距離は、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。隣接する柱状物112間の距離が上記範囲であることで、光拡散制御層が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0055】
また、カラム構造113では、柱状物112が、光拡散制御層の厚さ方向に対して水平に林立していてもよいし、一定の傾斜角にて林立していてもよい。一定の傾斜角にて林立するときの傾斜角、すなわち、カラム構造113の柱状物112の軸線と、光拡散制御層表面の法線とがなす鋭角側の角度は、1°以上であることが好ましく、特に5°以上であることが好ましく、さらには10°以上であることが好ましい。また、上記角度は、50°以下であることが好ましく、特に40°以下であることが好ましく、さらには30°以下であることが好ましい。柱状物112が上記範囲で傾斜していることにより、そのようなカラム構造113を備える光拡散制御層では、透過する光を所望の方向に偏らせながら拡散させることが可能となる。
【0056】
なお、以上のカラム構造113の規則的内部構造に係る寸法や所定の角度等は、光学デジタル顕微鏡を用いてカラム構造113の断面を観察することにより測定することができる。
【0057】
(2)カラム構造の変形例
本実施形態における光拡散制御層の規則的内部構造は、上述したカラム構造113を変形させた構造であってもよい。例えば、光拡散制御層は、内部構造として、上述したカラム構造113における柱状物112が、光拡散制御層の厚さ方向の途中において屈曲してなる構造を有していてもよい。また、光拡散制御層は、光拡散制御層の厚さ方向に傾斜角度の異なる柱状物の領域を2つ以上有するカラム構造113であってもよい。
【0058】
3.光拡散制御体の製造方法
本実施形態に係る光拡散制御体の製造方法としては、例えば、第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12、ならびに所望により、更なる光拡散制御層といったその他の層を個別に形成した後、それらを所望の順番で積層することで得ることができる。また、製造方法の別の例として、第一の光拡散制御層11を形成した後、第一の光拡散制御層11上に直接、第二の光拡散制御層12を形成することにより得ることもできる。
【0059】
第一の光拡散制御層11、第二の光拡散制御層12および更なる光拡散制御層の形成方法としては、特に限定されず、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、工程シートの片面に、前述した光拡散制御層用組成物を塗布し、塗膜を形成した後、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、剥離シートの片面(特に剥離面)を貼合する。続いて、工程シートまたは剥離シート越しに、上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、光拡散制御層を形成することができる。このように、上記塗膜に剥離シートを積層することにより、剥離シートと工程シートとのギャップを保ち、塗膜が押しつぶされることを抑制して、均一な厚さを有する光拡散制御層を形成し易いものとなる。
【0060】
上述した塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散制御層用組成物は、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0061】
塗膜に対する活性エネルギー線の照射は、形成しようとする規則的内部構造に応じて、異なる態様により行う。このような照射は従来公知の方法により行うことができる。例えば、前述したカラム構造を形成する場合には、塗膜に対して、光線の平行度が高い平行光を照射する。
【0062】
なお、上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0063】
活性エネルギー線として紫外線を用い、カラム構造を形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~10mW/cmとすることが好ましい。なお、ここでいうピーク照度とは、塗膜表面に照射される活性エネルギー線が最大値を示す部分での測定値を意味する。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~200mJ/cmとすることが好ましい。
【0064】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような平行光や帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(平行光や帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を照射することも好ましい。
【0065】
4.光拡散制御体の使用
本実施形態に係る光拡散制御体1の用途は特に限定されず、従来の光拡散制御体と同様に使用することができる。特に、本実施形態に係る光拡散制御体1は、反射型表示体を製造するために使用することが好適である。
【0066】
図3には、本実施形態に係る光拡散制御体1を用いて製造された反射型表示体2の一例の断面図が示される。当該反射型表示体2は、本実施形態に係る光拡散制御体1と、当該光拡散制御体1における片面側に設けられた反射板21とを備える。
【0067】
なお、反射型表示体2は、光拡散制御体1および反射板21以外の層や部材を備えていてもよい。例えば、光拡散制御体1と反射板21との間に液晶などの表示パネルが設けられていてもよい。あるいは、反射型表示体2は、表示パネルの片面側に光拡散制御体1が設けられた構成であり、且つ、表示パネルを構成する部材の1つとして反射板21が設けられていてもよい。
【0068】
反射型表示体2の例としては、反射型液晶表示装置、電子ペーパー、電気泳動ディスプレイ、MEMSディスプレイ、固体結晶ディスプレイ等の電子機器が挙げられる。また、反射型表示体2は、このような電子機器以外にも、紙、樹脂フィルム、金属板等に表示内容が印刷されたものであってもよい。この場合、紙、樹脂フィルム、金属板等が反射板21としての役割を果たしてもよく、あるいは、光拡散制御体1と反射板21との間に、表示のための印刷が施された紙、樹脂フィルム等が設けられていてもよい。
【0069】
また、本実施形態に係る光拡散制御体1は、透過型液晶表示装置、有機ELディスプレイ等の透過型表示体の製造のためにも使用することができる。
【0070】
本実施形態に係る光拡散制御体1は、前述したヘイズ値の最小値をそれぞれ有する第一の光拡散制御層11および第二の光拡散制御層12を備えることにより、後方散乱光や迷光などの光損失を防止しながら、適度に光を拡散させることが可能となる。それにより、当該光拡散制御体1を用いて製造された表示体(特に反射型表示体2)では、優れた視認性が実現される。
【0071】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0072】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0073】
〔作製例1〕(光拡散制御層A)
(1)光拡散制御層用組成物の調製
低屈折率成分としての、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて得られた重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、高屈折率成分としての、分子量268のo-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御層用組成物を得た。
【0074】
(2)光拡散制御層の形成
得られた光拡散制御層用組成物を、工程シートとしての、長尺のポリエチレンテレフタレートシートの片面に塗布し、塗膜を形成した。続いて、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381130」,厚さ:38μm)の剥離面を積層した。
【0075】
これにより得られた、剥離シートと上記塗膜と工程シートとからなる積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における剥離シート側の面が上側となるとともに、積層体の長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック社製)を設置した。このとき、当該光源が、積層体における剥離シート側の面の法線方向に平行光を照射できるように設置した。
【0076】
その後、コンベアを作動させて、積層体を移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.00mW/cm、積算光量53.13mJ/cmの条件で、平行度が2°以下の平行光(主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線)を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させ、厚さ60μmの光拡散制御層Aを形成した。その結果、工程シートと、光拡散制御層A(厚さ:60μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体が得られた。
【0077】
なお、形成された光拡散制御層Aの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御層Aの内部に、厚さ方向全体に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。すなわち、得られた光拡散制御層A内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、100%であった。また、上述した柱状物は、光拡散制御層Aの厚さ方向に平行(傾斜角0°)であることが確認された。なお、本明細書において、当該傾斜角は、フィルム面の法線方向鉛直上向きを0°とし、コンベア進行方向をプラス、その反対方向をマイナスと表記するものとする。
【0078】
また、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。光拡散制御層Aの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0079】
〔作製例2〕(光拡散制御層B)
作製例1の工程(1)と同様にして得られた光拡散制御層用組成物を、工程シートとしての、長尺のポリエチレンテレフタレートシートの片面に塗布し、塗膜を形成した。これにより得られた、塗膜と工程シートとからなる積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における塗膜側の面が上側となるとともに、積層体の長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック社製)を設置した。このとき、当該光源が、積層体における塗膜側の面の法線方向に対して、コンベアの流れ方向に10°傾斜した方向の平行光を照射できるように設置した。
【0080】
その後、コンベアを作動させて、積層体を移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.00mW/cm、積算光量53.13mJ/cmの条件で、平行度が2°以下の平行光(主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線)を照射した。
【0081】
続いて、上記塗膜における工程シートとは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381130」,厚さ:38μm)の剥離面を積層した。これにより得られた剥離シートと塗膜と工程シートとからなる積層体を、上記と同様にコンベア上に載置した。続いて、当該コンベアに対し、上記と同様に紫外線スポット平行光源を設置した。そして、コンベアを作動させて、積層体を移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度11.0mW/cm、積算光量32.0mJ/cmの条件で、散乱光を照射した。
【0082】
以上により、積層体中の塗膜を硬化させ、厚さ90μmの光拡散制御層Bを形成した。その結果、工程シートと、光拡散制御層B(厚さ:90μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体が得られた。
【0083】
なお、得られた光拡散制御層B内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、10%であった。また、上述した柱状物は、光拡散制御層Bの厚さ方向に対してコンベアの進行方向に約7°傾斜している(傾斜角+7°)ことが確認された。
【0084】
〔作製例3〕(光拡散制御層C)
形成した光拡散制御層の厚さを120μmに変更した以外は、作製例2と同様にして、工程シートと、光拡散制御層C(厚さ:120μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0085】
なお、得られた光拡散制御層C内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、30%であった。
【0086】
〔作製例4〕(光拡散制御層D)
形成した光拡散制御層の厚さを140μmに変更した以外は、作製例2と同様にして、工程シートと、光拡散制御層D(厚さ:140μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0087】
なお、得られた光拡散制御層D内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、40%であった。
【0088】
〔作製例5〕(光拡散制御層E)
形成した光拡散制御層の厚さを160μmに変更した以外は作製例2と同様にして、工程シートと、光拡散制御層E(厚さ:160μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0089】
なお、得られた光拡散制御層E内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、50%であった。
【0090】
〔作製例6〕(光拡散制御層F)
形成した光拡散制御層の厚さを185μmに変更した以外は作製例2と同様にして、工程シートと、光拡散制御層F(厚さ:185μm)と、剥離シートとがこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0091】
なお、得られた光拡散制御層F内部におけるカラム構造領域の厚さ方向に延在する割合は、60%であった。
【0092】
〔実施例1〕
作製例1および作製例4で作製した積層体から、それぞれ工程シートおよび剥離シートを剥離除去し、光拡散制御層Aおよび光拡散制御層Dを得た。そして、第一の光拡散制御層としての光拡散制御層Aの紫外線を照射した面側に、第二の光拡散制御層としての光拡散制御層Dの紫外線を照射した面と反対の面を、互いに長手方向(コンベアの移動方向)が一致するように積層することで、光拡散制御体を得た。
【0093】
さらに、上記光拡散制御体における第一の光拡散制御層(光拡散制御層A)側の面と、反射板(厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にアルミニウムを厚さ300nmとなるように蒸着したもの)における反射面とを積層し、反射型表示体サンプルを得た。
【0094】
〔実施例2〕
作製例5で作製した積層体から工程シートおよび剥離シートを剥離除去して、光拡散制御層Eを取得し、これを第二の光拡散制御層として使用した以外、実施例1と同様にして、光拡散制御体および反射型表示体サンプルを得た。
【0095】
〔実施例3〕
作製例6で作製した積層体から工程シートおよび剥離シートを剥離除去して、光拡散制御層Fを取得し、これを第二の光拡散制御層として使用した以外、実施例1と同様にして、光拡散制御体および反射型表示体サンプルを得た。
【0096】
〔比較例1〕
第二の光拡散制御層を設けず、第一の光拡散制御層(光拡散制御層A)単層を光拡散制御体とした。さらに、当該光拡散制御体を使用した以外は実施例1と同様にして、反射型表示体サンプルを得た。
【0097】
〔比較例2〕
作製例2で作製した積層体から工程シートおよび剥離シートを剥離除去して、光拡散制御層Bを取得し、これを第二の光拡散制御層として使用した以外、実施例1と同様にして、光拡散制御体および反射型表示体サンプルを得た。
【0098】
〔比較例3〕
作製例3で作製した積層体から工程シートおよび剥離シートを剥離除去して、光拡散制御層Cを取得し、これを第二の光拡散制御層として使用した以外、実施例1と同様にして、光拡散制御体および反射型表示体サンプルを得た。
【0099】
〔試験例1〕(光拡散制御層の変角ヘイズ測定)
作製例1~6にてそれぞれ作製した光拡散制御層A~Fについて、変角ヘイズメーター(東洋精機製作所社製,製品名「ヘイズガードプラス、変角ヘイズメーター」)を用いて、ヘイズ値(%)を測定した。
【0100】
具体的には、作製例1~6にて得た積層体から工程シートおよび剥離シートを剥離除去してなる光拡散制御層の単体における、製造時に紫外線を照射した面と反対の面を、無アルカリガラス板(厚さ:1.1mm)の片面に貼付し、積層体を得た。そして、当該積層体を、上記変角ヘイズメーターにおける積分球開口から測定光の到達位置までの距離が62mmとなるよう、かつ、無アルカリガラス側が光源と対向するように設置した。次に、上記到達位置における光拡散制御層の幅方向を回転軸として、光拡散制御層の長手方向(作製時の搬送方向)を回転させることにより、ヘイズ値(%)の変化を測定した。すなわち、光拡散制御層の傾き角度のみを変えることで、光拡散制御層に対する測定光の入射角度を変更し、それぞれの入射角度ごとにヘイズ値(%)を測定した。なお、測定光が積層体の法線方向となる入射角度を0°とし、光拡散制御層の長手方向(作製時の搬送方向)の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとして、-70°~70°の範囲で測定を行った。測定条件の詳細は、次の通りとした。
光源:C光源
測定径:φ18mm
積分球開口径:φ25.4mm
【0101】
測定の結果を、図4に示す。なお、図4は、横軸を入射角度とし、縦軸を測定値として表したものである。また、測定されたヘイズ値(%)のうち、入射角度が0°の時の値、ならびに最小値および最大値を特定した。これらの結果を表1に示す。
【0102】
さらに、図4の結果から、光拡散制御層の拡散中心軸を次のように特定した。図4のグラフにおいては、入射角度をマイナスの値からプラスの値への変化させていった場合に、ヘイズ値が立ち上がった後、再度元の水準まで低下するものとなっている。ここにおいて、その立ち上がりの際に最初にヘイズ値が極大となる入射角度と、ヘイズ値が元の水準まで低下する直前にヘイズ値が極大となる入射角度との平均値を算出し、これを拡散中心軸とした。なお、図4のグラフでは、ヘイズ値が極大となる2つの入射角度が存在し、それらの間に、ヘイズ値が極小となる1つの入射角度が存在しているが、拡散中心軸を特定する際には、この極小となるときの入射角度は考慮しないものとする。このようにして得られた拡散中心軸も表1に示す。
【0103】
〔試験例2〕(光拡散制御層の拡散輝度分布測定)
作製例1~6にてそれぞれ作製した光拡散制御層A~Fについて、拡散輝度分布測定装置(スガ試験機社製,製品名「変角測色計VC-2」)を用いて、拡散輝度分布を測定した。
【0104】
具体的には、作製例1~6にて得た積層体から工程シートおよび剥離シートを剥離除去してなる光拡散制御層の単体における、製造時に紫外線を照射した面と反対の面を、無アルカリガラス板(厚さ:1.1mm)の片面に貼付して積層体を得た。当該積層体における無アルカリガラス側の面に対し、拡散中心軸の方向から測定光を照射し、それによって他方の面(光拡散制御層側の面)に透過してくる拡散光の光強度を、受光器を移動させながら順次測定した。このとき、受光器は、拡散光の射出点を含む光拡散制御層の幅方向(長手方向と同平面内の垂直な方向)を軸に回転するように、且つ、射出点から等距離を保ちながら、光拡散制御層表面と対向した状態で移動させた。当該移動は、当該射出点と受光器とを結ぶ線分と、当該射出点を通る法線とのなす角度(受光器角度)が-45°から45°となるように移動させた。なお、当該角度の値は、光拡散制御層における長手方向(作製時の搬送方向)の進行方向側に対して受光器が近位となる角度をプラスに、遠位となる角度をマイナスにて表している。光源としてはC光源を使用した。
【0105】
一方、基準として、測定対象を設置することなく、受光器角度を0°に固定した状態(測定光をそのまま受光器に照射した状態)にて、光強度の基準値を測定した。そして、当該基準値に対する、上述の通り測定された各光拡散制御層についての光強度の割合(上記基準値を100%とする百分率)を算出した。その結果を図5-1および図5-2に表す。なお、図5-1および図5-2は、横軸を受光器角度とし、縦軸を光強度(%)として表したものである。また、図5-1には、光拡散制御層A、D、EおよびFについての結果を示し、図5-2には、光拡散制御層BおよびCについての結果を示す。
【0106】
また、得られた光強度(%)の最大値を特定した。当該最大値を表1に示す。さらに、光拡散制御層Aの最大値を基準とした、光拡散制御層A~Fの最大値の比率を算出した。それらの結果も表1に示す。
【0107】
〔試験例3〕(反射型表示体サンプルの拡散輝度分布測定)
実施例および比較例で得た光拡散制御体を備える反射型表示体サンプルについて、拡散輝度分布測定装置(スガ試験機社製,製品名「変角測色計VC-2」)を用いて、拡散輝度分布を測定した。
【0108】
具体的には、反射型表示体サンプルにおける光拡散制御体側の面に対し、当該面の法線となす角度が10°となる入射角度(入射角度10°)にて光線を照射し、反射型表示体サンプルにて反射して生じた拡散光の光強度を、受光器を移動させながら順次測定した。このとき、受光器は、拡散光の射出点を含む光拡散制御層の幅方向(長手方向と同平面内の垂直な方向)を軸に回転するように、且つ、射出点から等距離を保ちながら、光拡散制御層と対向させた状態で移動させた。当該移動は、当該射出点と受光器とを結ぶ線分と、当該射出点を通る法線とのなす角度(受光器角度)が-45°から0°となるように移動させた。なお、当該角度の値は、光拡散制御層における長手方向(作製時の搬送方向)の進行方向側に対して受光器が近位となる角度をプラスに、遠位となる角度をマイナスにて表している。なお、光源としてはC光源を使用した。
【0109】
一方、基準として、測定対象として標準白色構成板を設置し、上記受光器角度を-45°に固定した状態にて、光強度の基準値を測定した。そして、当該基準値に対する、上述の通り測定された各光反射型表示体サンプルについての光強度の割合(上記基準値を100%とする百分率)を算出した。その結果を図6-1に表す。なお、図6-1は、横軸を受光器角度とし、縦軸を光強度(%)として表したものである。また、受光器角度0°のときの光強度(%)を表2に示す。
【0110】
さらに、入射角度を20°(受光器角度:-45°から10°)、30°(受光器角度:-45°から20°)および40°(受光器角度:-45°から30°)に変更し、それぞれ上記と同様に拡散輝度分布測定を行った。これらの測定結果を、図6-2、図6-3および図6-4に表す。また、入射角度を20°、30°および40°に変更したそれぞれの場合についても、受光器角度0°のときの光強度(%)を表2に示す。
【0111】
また、以上のようにして得られた、受光器角度0°のときの光強度(%)に基づいて、入射角度ごとの、変角ヘイズ値の最小値(%)と光強度(%)の関係を示すグラフを作成した。当該グラフを図7に示す。当該グラフでは、各例の第二の光拡散制御層の変角ヘイズ値の最小値(%)を横軸とし、受光器角度0°のときの光強度(%)を縦軸としている。なお、第二の光拡散制御層を設けていない比較例1については、第二の光拡散制御層の変角ヘイズ値の最小値(%)は「0%」であるものとした。また、入射角度が同じポイント同士は線分で結んでいる。
【0112】
〔試験例4〕(反射型表示体サンプルの視認性の評価)
実施例1、実施例2および比較例3にて製造した反射型表示体サンプルを、光拡散制御体側の面が上側となるように支持台上に並べた。そして、当該面に対して、当該面の法線となす角度が10°となる入射角度(入射角度10°)にて、デスクライトの光線を照射した。そして、当該面に対して正面の位置から目視にて、反射型表示体サンプルの明るさを観察するとともに、同じ位置から、反射型表示体サンプルをデジタルスチルカメラにて撮影した。得られた画像を図9に示す。また、入射角度を35°に変更して、上記と同様に目視にて確認するとともに、デジタルスチルカメラによる撮影を行った。得られた画像を図8に示す。
【0113】
図8からも明らかなように、入射角度10°の場合には、実施例1、実施例2および比較例3に係る反射型表示体サンプルいずれも、ほぼ同様に明るく視認することができた。一方、入射角度35°の場合には、実施例1および実施例2に係る反射型表示体サンプルについては明るく視認することができたのに対し、比較例3に係る反射型表示体サンプルについては暗く視認された。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
表2に示されるように、実施例に係る光拡散制御体を備える反射型表示体サンプルでは、入射角度が10°~30°である場合に、正面方向に対して十分な光強度にて光を反射できたことがわかる。特に、入射角度30°の場合には、比較例に係る反射型表示体サンプルでは、光強度が100%付近であるか、それよりも小さい値であったのに対し、実施例に係る反射型表示体サンプルでは、100%を大きく超える光強度にて、正面方向に光を反射できたことがわかる。これらの結果は、図9の目視による視認性の評価結果とも一致するものであった。
【0117】
なお、入射角度が40°である場合には、比較例に係る反射型表示体サンプルが、いずれも正面方向に対して光を反射させることができなかったのに対し、実施例2および3に係る反射型表示体サンプルは、正面方向に光を反射させることができたことがわかる。
【0118】
また、図8のグラフによれば、入射角度が10°および20°の場合には、第二の光拡散制御層における変角ヘイズ値の最小値に依らず、100%以上の光強度の光を反射させることができるものの、入射角度が30°である場合には、第二の光拡散制御層における変角ヘイズ値の最小値が約35%以上である場合に、100%以上の光強度の光を反射させることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の光拡散制御体は、表示体、特に反射型表示体の製造に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0120】
1…光拡散制御体
11…第一の光拡散制御層
12…第二の光拡散制御層
112…屈折率が相対的に高い柱状物
113…カラム構造
114…屈折率が相対的に低い領域
2…反射型表示体
21…反射板
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7
図8