(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ピキア・アノマーラとレチノールとを含む局所用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20240304BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240304BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240304BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20240304BHJP
A61K 36/062 20060101ALI20240304BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240304BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61K8/34
A61K8/67
A61K31/07
A61K36/062
A61P17/00
A61Q19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019156462
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-26
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522236350
【氏名又は名称】ジョンソン アンド ジョンソン コンシューマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マンプリート・ランドハワ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ディー・サウスオール
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/327
A61P 17/00-17/18
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとを含む局所用組成物
であって、前記局所用組成物中の前記ピキア・アノマーラの抽出物のレチノールに対する重量比が1.3である、局所用組成物。
【請求項2】
0.13重量%の前記ピキア・アノマーラの抽出物
と、0.1重量%のレチノール
とを含む、請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項3】
少なくとも10重量%のグリセリンを更に含む、請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項4】
6.5以下のpHを有する、請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項5】
皮膚老化の徴候を処置する方法であって、皮膚老化の処置を要する皮膚に、
請求項1~4のいずれか一項に記載の局所用組成物を局所的に塗布することを含む、方法
(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項6】
皮膚のバリア機能及び保湿性を改善する方法であって、皮膚のバリア機能及び保湿性の改善を要する皮膚に、
請求項1~4のいずれか一項に記載の局所用組成物を局所的に塗布することを含む、方法
(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項7】
ピキア・アノマーラの抽出物と接触されたときに皮膚により生成されるヒアルロン酸の量を増加させる方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の局所用組成物を前記皮膚と接触させることを含む、方法
(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピキア・アノマーラ(Pichia anomala)の抽出物とレチノールとの組み合わせを皮膚に局所的に塗布することによって皮膚を処置する方法を提供する。加えて、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとの組み合わせを含む局所用組成物が提供される。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、皮膚のコラーゲン及びエラスチン繊維の外周、及びこれらの繊維が交差する部分に見出される。ヒアルロン酸は、真皮内だけでなく、表皮の細胞間隙、特に中間有棘層にも局在しているが、角質層(SC)又は顆粒層には局在していない。老化した皮膚ではヒアルロン酸の濃度は低下し、コラーゲン及びエラスチンから解離する。ヒアルロン酸の濃度が低下した皮膚は水分結合の低下も示し、これが、しわ、弾力の変化、ハリの低下、及び皮膚の微小血管を支持する能力の低下をはじめとする、老化した皮膚に見られる変化に関与していると考えられる。主要なGAGのうちの1種であるヒアルロン酸は、その重量の1000倍もの水と結合可能であり、皮膚が水を保持及び維持する助けとなり得る。ヒアルロン酸は全ての結合組織において見られ、皮膚の線維芽細胞及び角化細胞によって主として産生される。
【0003】
ヒアルロン酸の注入をはじめとする、しわ及び小じわに対処するための複数の異なる方法が提案されている。外因性のヒアルロン酸の注入は、軟組織の増強処置における一時的な皮膚充填剤として使用される。しかしながら、注入されたヒアルロン酸の持続時間(lifetime)は限られている。一方、外因性ヒアルロン酸を皮膚に浸透させることは局所塗布では困難であることが示されている。
【0004】
ピキア属は、サッカロミセス科(Saccharomycetaceae)の酵母の属である。この属の100を超える種が公知である。とりわけよく知られた種としては、ピキア・アノマーラ、ピキア・ギリエルモンジィ(Pichia guilliermondii)、ピキア・ノルベゲンシス(Pichia norvegensis)、及びピキア・オーメリ(Pichia ohmeri)が挙げられる。
【0005】
ピキア・アノマーラ(旧称ハンゼヌラ・アノマーラ(Hansenula anomala))は、生乳及びチーズに見られる。ピキア属の酵母の抽出物は、マンノースモノマーで構成される多糖類であるマンナンを多く含んでいる。ピキア・アノマーラ及びマンナンは、老化する皮膚の処置において使用されることが知られている。例えば、仏国特許第2938768号、仏国特許第2906719号、仏国特許第2897266号及び仏国特許第2976490号を参照。
【0006】
PRO-LIPISKIN(登録商標)は、ピキア・アノマーラの抽出物を含有する市販の化粧料成分である。これは、サトウキビから単離されたピキア株によって生成される。これは、Silab-Franceから入手可能である。
【0007】
米国特許出願公開第2017/0172913(A1)号は、ヒアルロン酸の産生を増加させる、ピキア・アノマーラ抽出物とチコリ根抽出物との組み合わせを含む局所用組成物、及び皮膚老化の徴候を治療し、皮膚バリアの保護及び皮膚の保湿性を改善する方法に関する。
【0008】
レチノールを含むレチノイドは、周知のアンチエイジング活性物質である。それらは、局所塗布のための様々な化粧品で使用される。レチノールは、例えば、Johnson&Johnson Consumer Inc.から市販されているNEUTROGENA(登録商標)Rapid Wrinkle Repair(登録商標)で使用される。NEUTROGENA(登録商標)Rapid Wrinkle Repair(登録商標)は、皮膚のしわの様相を薄くし、小じわを滑らかにし、肌のきめを改善し、皮膚の色調を明るくするために使用される。レチノールは、特に、非常に有効でありかつ費用効果の高い化粧品成分であることが証明されている。
【0009】
ピキア・アノマーラ抽出物及びレチノールは、異なる生物学的機序により作用し、異なる臨床効果の改善をもたらす。レチノールは、アンチエイジング効果のための代表的な手段として知られており、マーカーCRABP2及びHBEGFを含む生物学的経路により作用することが知られている。ピキア・アノマーラ抽出物は、水和、皮膚バリアの改善、引き締めなどを含む臨床的効果につながるヒアルロン酸シンターゼ2酵素の活性を高めることによって、水和経路を通じて作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該技術分野では、ピキア・アノマーラの抽出物及びレチノールの局所使用を別々に提供しているが、本出願人らは、これらの2つの成分を組み合わせて局所塗布することによっても、レチノールの活性及びピキア・アノマーラ抽出物の活性が有益に増強されることを発見した。この発見は、期せずして、皮膚の老化の少なくとも1つの兆候の改善、低減、阻害、又はその出現の遅延、並びに皮膚のバリア保護及び皮膚の保湿の強化を含む、多大な効果を皮膚にもたらすものである。したがって、例えば、皮膚の老化の徴候を処置する新しい方法がここに与えられるものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとを含む局所用組成物に関する。
【0012】
本発明はまた、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとを含む局所用組成物を、皮膚老化の処置を要する皮膚に局所的に塗布することを含む、皮膚老化の徴候を処置する方法にも関する。
【0013】
本発明は、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとを含む局所用組成物を、皮膚のバリア機能及び保湿性の改善を要する皮膚に局所的に塗布することを含む、皮膚のバリア機能及び保湿性の改善方法を更に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の局所用組成物は、ピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとの相乗作用により、皮膚におけるヒアルロン酸の生成を改善する。
【0015】
当業者であれば、本明細書の記載に基づいて本発明を最大限利用できると考えられる。以下の具体的な実施形態は、あくまで例示的なものとして解釈すべきであり、以下の開示内容をいかなる意味においても限定するものとして解釈すべきではない。
【0016】
特段の記載がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に解釈するのと同じ意味を有する。更に、本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許、及びその他の引用文献は全て参照により援用するものである。特に指定しない限り、成分の量を表すために用いられるパーセントは、重量パーセント(すなわち、%(W/W)である。同様に、成分の相対的割合を表すために用いられる重量比も重量パーセントを用いて求められる(すなわち、重量比は、ある成分の重量パーセントを別の成分の重量パーセントで除することによって計算される)。特に明記しない限り、全ての範囲は、両端点を包含し、例えば、「4~9」は、両端点の4と9を含む。
【0017】
本明細書で使用するとき、「製品」は、任意に、包装された最終製品の状態である。一実施形態では、パッケージは、組成物を収容しているプラスチック、金属又はガラスの管又はジャーなどの容器である。製品は、このような容器を保管するためのプラスチック又は板紙の箱などの追加の包装を更に含んでもよい。一実施形態では、製品は、本発明の組成物を含み、皮膚又は毛髪に当該組成物を適用することをユーザに指示する指示書を含む。
【0018】
本明細書で使用するとき、「局所的に塗布」とは、例えば、手、又は拭き取り用品、ローラー若しくはスプレーなどのアプリケータを使用することによって、外皮、頭皮又は毛髪に直接塗るか又は広げることを意味する。
【0019】
本明細書で使用するとき、「化粧料」とは、具体的には組織又は皮膚の外観に関する場合、身体的に美しい外観を保つ、回復させる、与える、装う若しくは高める、又は美しさ若しくは若々しさが増すようにみえる美容用物質又は製剤を指す。
【0020】
本発明で使用するとき、「化粧用として許容可能な」とは、この用語が説明する成分が、過度の毒性、不適応性、不安定性、刺激、又はアレルギー応答などなく、組織(例えば、皮膚又は毛髪)と接触させて使用するのに好適であることを意味する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、皮膚の老化の徴候を処置するのに好適である。本明細書で使用するとき、「皮膚の老化の徴候」とは、小じわ及びしわの存在、弾性の喪失、まだらのある皮膚、並びにシミを含む。特に好ましい実施形態では、老化の徴候は、小じわ及びしわの存在、及び/又は弾性の喪失である。
【0022】
本発明で使用するとき、「皮膚の老化の徴候の処置」とは、上述の皮膚の老化の存在又は徴候の緩和、低減、予防、改善又は排除を指す。
【0023】
本明細書で使用するとき、「しわ」は、細かい小じわ、細かいしわ、又は粗いしわを含む。しわの例としては、目の周囲の細かい小じわ(例えば、「カラスの足跡」のようなしわ)、額及び頬のしわ、眉間の小じわ、並びに口の周囲の笑いじわが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用するとき、「弾性の喪失」には、たるんだ、弛緩した及び緩んだ組織を含むが、これらに限定されない皮膚又は組織の弾性又は構造的完全性の喪失を含む。弾性、又は組織の構造的完全性の喪失は、疾患、老化、ホルモン変化、機械的外傷、環境損傷、又は化粧料若しくは医薬品などの製品の組織への適用の結果を含むが、これらに限定されない、多数の要因の結果であり得る。
【0025】
本明細書で使用するとき、「まだらのある皮膚」とは、炎症後色素沈着過剰などの色素沈着過剰に分類され得る、びまん性又は斑点模様の色素沈着に関連する皮膚の状態を意味する。
【0026】
本明細書で使用するとき、「シミ」とは、赤み又は紅斑に関連する皮膚の状態を意味する。
【0027】
本明細書で使用するとき、「皮膚の張りの改善」とは、皮膚の張り若しくは弾性の強化、皮膚の張り若しくは弾性の喪失の予防、又はたるんだ、弛緩した及び緩んだ皮膚の予防若しくは処置を意味する。皮膚の張り又は弾性は、キュートメータを使用することによって測定することができる。Handbook Of Non-Invasive Methods And The Skin,eds.J.Serup,G.Jemec & G.Grove,Chapter 66.1(2006)を参照。皮膚の弾性又は張りの喪失は、老化、環境からのダメージ、又は化粧料の皮膚への適用によるものが挙げられるが、これらに限定されない、多数の要因の結果であり得る。
【0028】
本明細書で使用するとき、「皮膚の質感の改善」とは、皮膚表面における隆起又は凹みのいずれかをなくすために皮膚の表面を滑らかにすることを意味する。
【0029】
本明細書で使用するとき、「皮膚におけるしわの外観の改善」とは、皮膚におけるしわ及び細かい小じわの形成プロセスを阻止、遅延、停止又は後戻りさせることを意味する。
【0030】
本明細書で使用するとき、「安全かつ有効な量」という用語は、所望の効果を誘導するのに十分であるが、重篤な副作用を回避するのに十分少ない量を意味する。化合物、抽出物又は組成物の安全かつ有効な量は、例えば、エンドユーザの年齢、健康及び環境曝露、処置の期間及び性質、使用される具体的な抽出物、成分又は組成物、利用される具体的な担体、及び同様の要因によって変動するであろう。
【0031】
本発明で使用するとき、「皮膚のバリア機能及び保湿性の改善を要している皮膚」とは、水分が欠如している、皮脂が欠如している、ひび割れしている、乾燥している、痒みがある、鱗屑性である、乾皮症である、脱水状態である、柔軟性が欠如している、輝きが欠如している、くすんでいる、又は脂質が欠如しているが、これらに限定されない皮膚を意味する。
【0032】
本明細書に記載されるように、出願人らは、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとの組み合わせの局所塗布が、予想外に良好な皮膚のバリア機能、皮膚保湿性、及び皮膚のアンチエイジング効果をもたらすことを発見した。
【0033】
出願人らは、特に、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとの組み合わせを含有する組成物の局所塗布が、皮膚中の内因性ヒアルロン酸(「HA」)の濃度を高め、水和における改善及び皮膚の老化の少なくとも1つの兆候の外観における改善をもたらすことも発見した。かかる組成物の局所的使用は、より若い皮膚で見られる方向へとヒアルロン酸の濃度を増大させることができ、これにより皮膚への構造的支持を与えることで皮膚の老化の徴候の外観を低減することができる。
【0034】
ピキア・アノマーラ
局所用組成物は、ピキア・アノマーラ(Pichia anomala)の1つ以上の抽出物を含む。具体的には、このような抽出物は、植物の果実又は他の地上部から単離されたピキア・アノマーラの様々な株のうちの1つを用いて生成される抽出物であってよい。ピキア・アノマーラの任意の化粧用として許容可能な抽出物を使用してよい。
【0035】
ピキア・アノマーラの好適な抽出物の一例は、Silab-Franceから市販されているPRO-LIPISKINである。これは、サトウキビに存在するピキア・アノマーラの株から生成される。
【0036】
ピキア・アノマーラの適当な抽出物の別の例は、キウイ植物の果実又は葉に存在するピキア・アノマーラの株から生成される。
【0037】
ピキア・アノマーラの抽出物は、約20重量%、より詳細には2~10重量%、最も詳細には3~7重量%の範囲の乾燥物(抽出物)を含有する溶液として与えることができる。
【0038】
かかる溶液の溶媒としては、水、アルコール、グリコールなどが挙げられる。一実施形態では、溶媒は、少なくとも約90重量%が水、又は少なくとも約95重量%が水である。
【0039】
レチノール
局所用組成物は、レチノールも含有する。レチノールは、式:
【0040】
【0041】
量
任意の好適な量のピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとを本発明の組成物に使用することができる。好ましくは、組成物は、安全かつ有効な量の両方の成分を含む。具体的には、使用されるピキア・アノマーラ抽出物及びレチノールの量は、化粧用として許容可能であり、老化の兆候、バリア機能の低下、又は保湿性の減少などの特定の状態の皮膚の所望の処置を達成するように選択される。
【0042】
特定の好ましい実施形態では、組成物は、約0.01~約1重量%のピキア・アノマーラ抽出物、より好ましくは約0.065~約0.26重量%のピキア・アノマーラ抽出物を含む。一実施形態では、組成物は、約0.13重量%のピキア・アノマーラ抽出物を含む。
【0043】
特定の好ましい実施形態では、組成物は、約0.01~約10重量%、より好ましくは約0.05~約1重量%のレチノールを含む。一実施形態では、組成物は、約0.1重量%のレチノールを含む。
【0044】
特定の実施形態では、組成物中のピキア・アノマーラ抽出物のレチノールに対する重量比は、約0.5~約2である。一実施形態では、組成物中のピキア・アノマーラ抽出物のレチノールに対する重量比は、約1.3である。
【0045】
局所用組成物
本発明の組成物は、ヒトの皮膚又は毛髪に局所的に塗布される。したがって、本組成物は、組成物の約50重量%~約99.99重量%(例えば、組成物の約80重量%~約99重量%)であってよい化粧用として許容可能な局所用キャリアを更に含み得る。本発明の好ましい実施形態では、化粧用として許容可能な局所用キャリアには水が含まれる。
【0046】
本組成物は、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、クレンジング液体洗浄剤、及び固形バー、シャンプー及びヘアコンディショナー、ヘアフィクサー、ペースト、フォーム、パウダー、ムース、シェービングクリーム、拭き取り用品、パッチ、ヒドロゲル、フィルム形成製品、フェイシャルマスク及びスキンマスク、フィルム、並びにファンデーション及びマスカラなどのメークアップを含むが、これらに限定されない、多種多様な製品の種類へと作製されてもよい。これらの製品の種類としては、溶液、懸濁液、マイクロエマルション及びナノエマルションなどのエマルション、ゲル、固形物、及びリポソームが挙げられるが、これらに限定されない、数種類の化粧用として許容可能な局所用キャリアを含有し得る。以下は、このようなキャリアの非限定例である。当業者によれば他のキャリアを配合することもできる。
【0047】
本発明に有用な組成物は溶液として配合することができる。溶液は、典型的には、水性又は有機溶媒(例えば、約50%~約99.99%又は約90%~約99%の化粧用として許容可能な水性又は有機溶媒)を含む。好適な有機溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
本発明に有用な組成物は、皮膚軟化剤を含む溶液として配合することができる。このような組成物は、好ましくは、約2%~約50%の皮膚軟化剤(複数可)を含有する。本発明で使用する場合、「皮膚軟化剤」とは、皮膚からの経皮水分蒸散を防止することなどによる、乾燥状態の防止又は緩和のために使用する材料を指す。皮膚軟化剤の例としては、当該技術分野で周知のものが挙げられる。特に好適な皮膚軟化剤の例としては、植物油、鉱油、脂肪エステルなどが挙げられる。
【0049】
ローションはそのような溶液から作製され得る。ローションは、典型的には、約1%~約20%(例えば、約5%~約10%)の皮膚軟化剤(複数可)と、約50%~約90%(例えば、約60%~約80%)の水とを含有する。
【0050】
溶液から配合できる別の種類の製品にはクリームがある。クリームは、典型的には、約5%~約50%(例えば、約10%~約20%)の皮膚軟化剤(複数可)と、約45%~約85%(例えば、約50%~約75%)の水とを含有する。
【0051】
本発明の組成物は、水を含んでよく、又は無水であってよく、若しくは水を含まないが有機及び/又はシリコーン溶媒、油、脂質、並びにワックスを含む軟膏であってよい。軟膏は、動物又は植物油の単一塩基又は半固体の炭化水素を含有してもよい。軟膏は、約2%~約10%の皮膚軟化剤(複数可)と、約0.1%~約2%の増粘剤(複数可)とを含有し得る。
【0052】
組成物は、エマルションとして配合されてもよい。局所用キャリアがエマルションである場合、約1%~約10%(例えば、約2%~約5%)の局所用キャリアが乳化剤(複数可)を含有する。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、又はカチオン性であってもよい。乳化剤の例は、当該技術分野では周知のものである。
【0053】
ローション及びクリームを、エマルションとして配合することができる。典型的には、このようなローションは、0.5%~約5%の乳化剤(複数可)を含有する。このようなクリームは、典型的には、約1%~約20%(例えば、約5%~約10%)の皮膚軟化剤(複数可)と、約20%~約80%(例えば、約30%~約70%)の水と、約1%~約10%(例えば、約2%~約5%)の乳化剤(複数可)とを含有する。
【0054】
水中油型及び油中水型の、ローション及びクリームのような単相エマルションのスキンケア製剤は、化粧品技術分野で周知であり、本発明に有用である。水中油中水型又は油中水中油型などの多相エマルション組成物もまた、本発明に有用である。一般に、そのような単相又は多相のエマルションは、必須成分として水、皮膚軟化剤、及び乳化剤を含有する。
【0055】
本発明の組成物は、ゲル(例えば、好適なゲル化剤を使用した水性、アルコール、アルコール/水、又は油ゲル)として配合することもできる。水性及び/又はアルコール性ゲル用の好適なゲル化剤には、天然ゴム、アクリル酸及びアクリレートのポリマー及びコポリマー、及びセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)が含まれるが、これらに限定されない。油(鉱油など)用の好適なゲル化剤としては、水素添加ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー及び水素添加エチレン/プロピレン/スチレンコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。このようなゲルは、典型的には、約0.1重量%~5重量%のこのようなゲル化剤を含有する。
【0056】
一実施形態では、組成物はゲルクリームである。ゲルクリームの美粧性は、水のような変化(watery break)、半透明の外観及び軽い使用感を特徴とする。本明細書で使用するとき、「ゲルクリーム」という用語は、低濃度の油滴が水性ゲルマトリクスに懸濁している処方を意味する。
【0057】
本発明の組成物は、固形配合物(例えば、ワックス系スティック、固形石鹸組成物、パウダー、又はパウダーを含有するティッシュ)に配合することもできる。
【0058】
組成物は、上記の成分以外に、当該技術分野で確立された濃度で皮膚及び毛髪用の組成物に従来より使用されている、後半な更なる油溶性材料及び/又は水溶性材料を含有することができる。
【0059】
追加の化粧用活性剤
本発明の組成物は、任意の様々な追加の化粧用活性剤を更に含んでよい。好適な追加の活性剤の例としては、皮膚美白剤、黒化剤、追加のアンチエイジング剤、トロポエラスチンプロモーター、コラーゲンプロモーター、抗ニキビ剤、光沢調整剤、抗微生物剤(例えば、抗酵母剤、抗真菌剤及び抗菌剤)、抗炎症剤、抗寄生生物剤、外用鎮痛剤、日焼け止め剤、光防護剤、酸化防止剤、角質溶解剤、洗剤/界面活性剤、保湿剤、栄養素、ビタミン、エネルギーエンハンサ、抗発汗剤、収斂剤、防臭剤、脱毛剤、育毛強化剤、育毛遅延剤、安定剤、水和増進剤、有効性増進剤、抗たこ剤、皮膚コンディショニング剤、抗セルライト剤、悪臭防止剤(例えば、悪臭マスキング剤)又はpH変更剤などが挙げられる。
【0060】
様々な好適な追加の化粧用として許容可能な活性物質の例としては、以下が挙げられる。ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、D-パンテノール、UVフィルター[アボベンゾン(PARSOL1789)、ビスジスリゾール二ナトリウム(NEO HELIOPAN AP)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(UVINUL A Plus)、エカムスル(MEXORYL SX)、メチルアントラニレート、4-アミノ安息香酸(PABA)、シノキセート、エチルヘキシルトリアゾン(UVINUL T150)、ホモサレート、4-メチルベンジリデンカンファー(PARSOL 5000)、オクチルメトキシシンナメート(Octinoxate)、オクチルサリチレート(Octisalate)、パディメートO(ESCALOL 507)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(ENSULIZOLE)、ポリシリコーン-15(PARSOL SLX)、トロラミンサリチレート、ベモトリジノール(TINOSORB S)、ベンゾフェノン1-12、ジオキシベンゾン、ドロメトリゾールトリシロキサン(MEXORYL XL)、イソコトリジノール(UVASORB HEB)、オクトクリレン、オキシベンゾン(EUSOLEX 4360)、スルイソベンゾン、ビソクトリゾール(TINOSORB M)、二酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。]、カロチノイド、フリーラジカルスカベンジャー、スピントラップ剤、他のレチノイド及びレチノイド前駆体(例えば、レチノイン酸及びパルミチン酸レチニル)、セラミド、多価不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、酵素、酵素阻害剤、ミネラル、ホルモン(例えば、エストロゲン)、ステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、2-ジメチルアミノエタノール、銅塩(例えば、塩化銅)、銅を含有するペプチド、コエンザイムQ10、アミノ酸(例えば、プロリン)、ビタミン、ラクトビオン酸、アセチル-コエンザイムA、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、リボース、電子輸送体(例えば、NADH及びFADH2)、並びに他の植物抽出物(例えば、オート麦、アロエベラ、ナツシロギク、ダイズ、シイタケの抽出物)、並びにこれらの誘導体及び混合物。
【0061】
特定の好ましい実施形態では、組成物は、ピキア・アノマーラ抽出物と、レチノールと、少なくとも1つの追加の皮膚保湿活性剤との組み合わせを含む。
【0062】
特定の好ましい実施形態では、組成物は、皮膚の老化の少なくとも1つの徴候の外観を改善するためのピキア・アノマーラ抽出物と、レチノールと、少なくとも1つの追加の剤との組み合わせを含む。皮膚の老化の少なくとも1つの徴候の外観を改善する好適な添加剤の例としては、トロポエラスチンプロモーター、コラーゲンプロモーター、レチノイド、架橋ヒアルロン酸を含むヒアルロン酸、架橋コンドロイチン硫酸を含むコンドロイチン硫酸、ジメチルアミノエタノール、N,N,N’,N’-テトラキス(2ーヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、αヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ酸、糖アミン、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「トロポエラスチンプロモーター」とは、本明細書で使用するとき、トロポエラスチンの生成を強化する生物活性を有する化合物の分類を指す。本発明によるトロポエラスチンプロモーターとしては、人体におけるトロポエラスチンの生成を強化することができる全ての天然又は合成化合物が挙げられる。
【0064】
好適なトロポエラスチンプロモーターの例としては、クロイチゴ抽出物、ハグマノキ抽出物、ナツシロギク抽出物、並びに銅及び/又は亜鉛成分を有する二金属錯体が挙げられるが、これらに限定されない。銅及び/又は亜鉛構成要素を有する二金属錯体は、例えば、クエン酸銅-亜鉛、シュウ酸銅-亜鉛、酒石酸銅-亜鉛、リンゴ酸銅-亜鉛、コハク酸銅-亜鉛、マロン酸銅-亜鉛、マレイン酸銅-亜鉛、アスパラギン酸銅-亜鉛、グルタミン酸銅-亜鉛、グルタル酸銅-亜鉛、フマル酸銅-亜鉛、グルカル酸銅-亜鉛、ポリアクリル酸銅-亜鉛、アジピン酸銅-亜鉛、ピメリン酸銅-亜鉛、スベリン酸銅-亜鉛、アゼライン酸銅-亜鉛、セバシン酸銅-亜鉛、ドデカン酸銅-亜鉛又はこれらの組み合わせであってよい。好ましい実施形態では、トロポエラスチンプロモーターは、クロイチゴ抽出物、ハグマノキ抽出物、ナツシロギク抽出物、及びこれらの組み合わせから選択される。特に好ましい実施形態では、トロポエラスチンプロモーターは、クロイチゴ抽出物、ナツシロギク抽出物、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0065】
「クロイチゴ抽出物」とは、キイチゴ属の植物、好ましくは、セイヨウヤブイチゴから単離された化合物のブレンドを意味する。一実施形態では、上記の化合物は、植物の花から単離される。更なる実施形態では、上記の化合物は、乾燥させた植物の花から単離される。このような化合物は、植物の1つ又は2つ以上の部分(例えば、植物全体、植物の花、種子、根、根茎、茎部、果実及び/又は葉)から単離され得る。好ましい実施形態では、クロイチゴ抽出物は、クロイチゴ葉抽出物である。ある特に好適なクロイチゴ抽出物は、マルトデキストリンマトリクスを用いて、約5%~約10%の活性になるように配合された水とエタノールとの混合物でセイヨウヤブイチゴの葉を抽出することによって生成されるものであり、Symrise Inc.(Teterboro,NJ)から市販されており、商標名SYMMATRIXとして販売されている。
【0066】
本発明の組成物は、化粧用として有効な量の1つ又は2つ以上のトロポエラスチンプロモーター(例えば、上記のもの)を含んでよい。上記の組成物は、活性物質に基づいて、好ましくは約0.1%~約10%のトロポエラスチンプロモーター、より好ましくは約0.5%~約5%のトロポエラスチンプロモーター、最も好ましくは約0.5%~約2%のトロポエラスチンプロモーターを含む。
【0067】
「コラーゲンプロモーター」とは、本明細書で使用するとき、コラーゲンの生成を強化する、生物活性を有する化合物を指す。本発明による「非レチノイド系コラーゲンプロモーター」としては、レチノイドでもなくレチノイドに由来するものでもなく、かつ人体におけるコラーゲンの生成を強化することができる全ての天然又は合成化合物が挙げられる。
【0068】
好適なコラーゲンプロモーターの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:レチノイド、ナツシロギク(Tanacetum parthenium)の抽出物、ツボクサ(Centella asiatica)の抽出物及びメナモミ(Siegesbeckia orientalis)の抽出物、ダイズの抽出物、コラーゲン促進ペプチド、ウルソール酸、並びにアシアチコシド。
【0069】
ツボクサは、レユニオン島ではViolette marronne、インドではGotu Kola又はインドツボクサ、北米ではCentella repanda、マダガスカルではTalapetrakaとしても知られており、多形性の草本であり、セリ科(Apiaceae)、特にチドメグサ亜科に属する。これは、熱帯全体に自生しており、海抜約600~1200メートルの高度の多湿で日陰の地域を好む。ツボクサは、3つの変種、Typica、Abyssinica及びFloridanaを有する。この草本は公知であり、その治癒、鎮静、鎮痛、抗うつ、抗ウイルス及び抗微生物特性のために使用されている。この草本の生物活性は、草本中のトリテルペン分子の存在に起因すると思われる。好適なツボクサの抽出物は、Bayer Consumer HealthCare(Basel,Switzerland)からTECAとして入手可能である。
【0070】
「メナモミの抽出物」とは、Sederma(Croda International Group(Edison,NJ))から入手可能なDarutosideを含む、メナモミ植物の様々な抽出物のうちのいずれかを意味する。
【0071】
好適なコラーゲン促進ペプチドとしては、以下を含むマトリカインペプチド(すなわち、細胞外マトリクスタンパク質の分解から誘導されるペプチド-コラーゲン、エラスチン又はプロテオグリカン)が挙げられ、それには、パルミトイルペンタペプチド[例えば、Sederma(Croda International Group(Edison,NJ))製のMATRIXYL]、Photomedex(Montgomeryville,PA)からPROCYTEとして入手可能なGHK銅ペプチド、Sederma(Croda International Group(Edison,NJ))からBiopoeptide CLとして入手可能なパルミトイルGHKペプチド、Unipex(Quebec,Canada)からChronoline Tri Peptideとして入手可能なものなどの生体模倣テトラペプチド、及びDSM(Basel,Switzerland)からSyn-Collとして入手可能なパルミトイルトリペプチドが挙げられる。
【0072】
ウルソール酸は、五環式トリテルペン酸、Prunol、Malol、Urson、β-ウルソール酸及び3-β-ヒドロキシ-ウルサ-12-エン-28-酸としても知られている。これは、例えば、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から市販されている。
【0073】
化学的に[6-[[3,4-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)-5-(3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル)オキシオキサン-2-イル]オキシメチル]-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル]10,11-ジヒドロキシ-9-(ヒドロキシメチル)-1,2,6a,6b,9,12a-ヘキサメチル-2,3,4,5,6,6a,7,8,8a,10,11,12,13,14b-テトラデカヒドロ-1H-ピセン-4a-カルボキシレート)としても知られているアシアチコシドは、例えば、Bayer Sante Familiale Division Serdex,69,Boulevard Victor Hugo 93400 SAINT-OUEN Franceから市販されている。
【0074】
本発明の組成物は、化粧用として有効な量の1つ又は2つ以上のコラーゲンプロモーターを含んでよい。上記の組成物は、活性物質に基づいて、好ましくは約0.1%~約10%のコラーゲンプロモーター、より好ましくは約0.5%~約5%のコラーゲンプロモーター、最も好ましくは約0.5%~約2%のコラーゲンプロモーターを含む。
【0075】
本発明の組成物は、少なくとも1つの皮膚美白活性剤を更に含んでよい。好適な皮膚美白活性剤の例としては、チロシナーゼ阻害物質、メラニン分解剤、メラノソーム移動阻害剤(PAR-2アンタゴニストを含む)、剥離剤、日焼け止め剤、レチノイド、酸化防止剤、トラネキサム酸、トラネキサム酸セチルエステルヒドロクロリド、皮膚白化剤、リノール酸、アデノシン一リン酸二ナトリウム塩、カモミール抽出物、アラントイン、乳白剤、タルク及びシリカ、亜鉛塩など、並びにSolano et al.Pigment Cell Res.19(550-571)及びAndo et al.Int J Mol Sci 11(2566-2575)に記載されているような他の剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
好適なチロシナーゼ阻害物質の例としては、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、コウジ酸、アルブチン、レゾルシノール、ヒドロキノン、フラボン(例えば、カンゾウフラバノイド、カンゾウ根抽出物、クワ根抽出物、ディオスコレア・コポジータ(Dioscorea Coposita)根抽出物、ユキノシタ科抽出物など)、エラグ酸、サリチル酸塩及び誘導体、グルコサミン及び誘導体、フラーレン、ヒノキチオール、二酸、アセチルグルコサミン、5,5’-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール(Magnolignan)、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール(4-HPB)、これらのうちの2つ又は3つ以上の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。ビタミンCの誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸-2-グルコシド、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、及びビタミンCを濃縮した天然抽出物が挙げられる。ビタミンEの誘導体としては、これらに限定されるものではないが、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、及びこれらの混合物、酢酸トコフェロール、リン酸トコフェロール、及びビタミンE誘導体を濃縮した天然抽出物が挙げられる。レゾルシノール誘導体の例としては、レゾルシノール、4-置換レゾルシノール[例えば、4-ブチルレゾルシノール(ルシノール)、4-ヘキシルレゾルシノール(Synovea HR、Sytheon)、フェニルエチルレゾルシノール(Symwhite、Symrise)、1-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(2,4-ジメトキシ-3-メチルフェニル)-プロパン(ニビトール、Unigen)などの4-アルキルレゾルシノール]、及びレゾルシノールを多く含む天然抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。サリチル酸塩の例としては、4-メトキシカリウムサリチレート、サリチル酸、アセチルサリチル酸、4-メトキシサリチル酸及びこれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、チロシナーゼ阻害物質としては、4-置換レゾルシノール、ビタミンC誘導体又はビタミンE誘導体が挙げられる。より好ましい実施形態では、チロシナーゼ阻害物質は、フェニルエチルレゾルシノール、4-ヘキシルレゾルシノール又はアスコルビル-2-グルコシドを含む。
【0077】
好適なメラニン分解剤の例としては、ペルオキシド及び酵素(例えば、ペルオキシダーゼ及びリグニナーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、メラニン阻害剤としては、ペルオキシド又はリグニナーゼが挙げられる。
【0078】
好適なメラノソーム移動阻害剤の例としては、PAR-2アンタゴニスト(例えば、ダイズトリプシン阻害物質又はボーマン-バーク阻害物質)、ビタミンB3及び誘導体(例えば、ナイアシンアミド)、必須ダイズ、全ダイズ、ダイズ抽出物が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、メラノソーム移動阻害剤としては、ダイズ抽出物又はナイアシンアミドが挙げられる。
【0079】
剥離剤の例としては、α-ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸又は前述のもののいずれかの任意の組み合わせ)、β-ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸、ポリヒドロキシ酸、例えば、ラクトビオン酸及びグルコン酸)、及び機械的剥離剤(例えば、微小皮膚擦傷剤)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、剥離剤としては、グリコール酸又はサリチル酸が挙げられる。
【0080】
レチノール以外のレチノイドの例としては、レチナール(ビタミンAアルデヒド)、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、リノール酸レチニル、レチノイン酸、パルミチン酸レチニル、イソトレチノイン、タザロテン、ベキサロテン、アダパレン、これらの2つ以上の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、レチノイドは、レチナール、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、リノール酸レチニル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0081】
酸化防止剤の例としては、スルフヒドリル化合物及びその誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム及びN-アセチル-システイン、グルタチオン)、リポ酸及びジヒドロリポ酸、スチルベノイド(例えば、レスベラトロール及び誘導体)、ラクトフェリン、鉄及び銅キレート剤、並びにアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体(例えば、アスコビル-2-グルコシド、パルミチン酸アスコルビル及びアスコビルポリペプチド)などの水溶性酸化防止剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物に使用するのに好適な油溶性酸化防止剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、レチノイド、トコフェロール(例えば、酢酸トコフェノール)、トコトリエノール、及びユビキノンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物において使用するのに適した酸化防止剤を含有する天然抽出物としては、フラボノイド及びイソフラボノイド並びにこれらの誘導体(例えば、ゲニステイン及びダイゼイン)を含有する抽出物、レスベラトロールを含有する抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。このような天然抽出物の例としては、ブドウ種子、緑茶、紅茶、白茶、マツ樹皮、ナツシロギク、パルテノライドを含まないナツシロギク、オート麦抽出物、クロイチゴ抽出物、ハグマノキ抽出物、ダイズ抽出物、ザボン抽出物、小麦胚抽出物、ヘスペレジン、ブドウ抽出物、スベリヒユ抽出物、リコカルコン、カルコン、2,2’-ジヒドロキシカルコン、サクラソウ抽出物、プロポリスなどが挙げられる。
【0082】
追加の化粧用活性剤は、任意の好適な量、例えば、組成物の約0.0001重量%~約20重量%、例えば、約0.001重量%~約10重量%、例えば、約0.01重量%~約5重量%などの量で組成物中に存在してよい。特定の好ましい実施形態では、0.1%~5%、他の好ましい実施形態では、1%~2%の量である。
【0083】
本発明の組成物は、化粧用として有効な量の1つ又は2つ以上の抗炎症化合物を含んでよい。
【0084】
好適な抗炎症化合物の例としては、置換レゾルシノール、(E)-3-(4-メチルフェニルスルホニル)-2-プロペンニトリル(例えば、Sigma-Aldrich(St.Louis,Missouri)から市販されている「Bay11-7082」、テトラヒドロクルクミノイド(例えば、Sabinsa Corporation(Piscataway,NJ)から入手可能なテトラヒドロクルクミノイドCG)、以下に由来する抽出物及び物質[キハダ(Phellodendron amurense)外皮抽出物(PCE)、非変性ダイズ(Glycine max)、ナツシロギク(Tanacetum parthenium)、ショウガ(Zingiber officinale)、イチョウ(Ginkgo biloba)、マデカソサイドド(Centella asiatica抽出物成分)、ハグマノキ(Cotinus coggygria)、西洋フキ抽出物(Petasites hybridus)、クコの実(Lycium barbarum)、マリアアザミ抽出物(Silybum marianum)、ハニーサックル(Lonicera japonica)、ペルーバルサム(Myroxylon pereirae)、セージ(Salvia officinalis)、クランベリー抽出物(Vaccinium oxycoccos)、アマランス油(Amaranthus cruentus)、ザクロ(Punica granatum)、イェルバ・マテ(Ilex paraguariensis葉抽出物)、白百合花抽出物(Lilium candidum)、オリーブ葉抽出物(Olea europaea)、フロレチン(リンゴ抽出物)、オート麦粉(Aveena sativa)、Lifenol(ホップ、Humulus lupulus)抽出物、Bugrane P(Ononis spinosa)、リコカルコン(カンゾウ、Glycyrrhiza inflate抽出物成分)、Symrelief(ビサボロール及びショウガ抽出物)、これらのうちの2つ以上の組み合わせなど]が挙げられる。
【0085】
一実施形態では、抗炎症剤は、レゾルシノールである。特に好適な置換レゾルシノールとしては、4-ヘキシルレゾルシノール及び4-オクチルレゾルシノール、特に、4-ヘキシルレゾルシノールが挙げられる。4-ヘキシルレゾルシノールは、Sytheon(Lincoln Park,NJ)からSYNOVEA HRとして市販されている。4-オクチルレゾルシノールは、City Chemical LLC(West Haven,Connecticut)から市販されている。
【0086】
「ナツシロギクの抽出物」とは、例えば、「PARTHENOLIDE FREE BIOACTIVE INGREDIENTS FROM FEVERFEW (TANACETUM PARTHENIUM)AND PROCESSES FOR THEIR PRODUCTION」と題された米国特許出願公開第2007/0196523号に記載の詳細に従って生成され得る、植物「Tanacetum parthenium」の抽出物を意味する。ある特に好適なナツシロギク抽出物は、Integrated Botanical Technologies(Ossining,NY)から約20%活性ナツシロギクとして市販されている。
【0087】
本発明のスキンケア組成物において、組み合わせたピキア・アノマーラ抽出物及びレチノールの量と抗炎症化合物の量との比を変化させてもよい。例えば、抽出物と抗炎症化合物とは、約0.001~約100、好ましくは約0.01~約10、より好ましくは約0.25~約2の重量比(乾燥抽出物の重量を抗炎症化合物の重量で割ることで求められる)で存在してもよい。
【0088】
様々な他の材料が本発明の組成物中に存在してもよい。特定の好ましい実施形態では、組成物は、界面活性剤、キレート剤、皮膚軟化剤、保湿剤、コンディショナー、防腐剤、乳白剤、芳香剤などからなる群から選択される1つ又は2つ以上の局所適用成分を含む。
【0089】
皮膚軟化剤とは、(例えば、皮膚の表面又は角質層に残存して潤滑剤として作用することによって)皮膚の柔らかく、滑らかで、しなやかな外観を維持するのに役立つ化合物を意味する。好適な皮膚軟化剤の例としては、Handbook of Cosmetic Science and Technology(A.Barel、M.Paye及びH.Maibach編、2001年発行、Marcel Dekker,Inc.New York,NY)の第35章399~415ページ(Skin Feel Agents、G Zocchi著)に見られるものが挙げられ、例えば、ワセリン、ヘキシルデシルステアレート、並びに植物、ナッツ及び植物油(例えば、マカダミアナッツ油、米糠油、ブドウ種子油、パーム油、サクラソウ油、水素添加ピーナッツ油、及びアボカド油)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
保湿剤とは、皮膚の最上層の含水量を増加させる意図の化合物(例えば、吸湿性化合物)を意味する。好適な保湿剤の例としては、Handbook of Cosmetic Science and Technology(A.Barel、M.Paye及びH.Maibach編、2001年発行、Marcel Dekker,Inc New York,NY)の第35章399~415ページ(Skin Feel Agents、G Zocchi著)に見られるものが挙げられ、例えば、グリセリン、ソルビトール又はトレハロース(例えば、α,α-トレハロース、β,β-トレハロース、α,βートレハロース)又はこれらの塩若しくはエステル(例えば、トレハロース-6-ホスフェート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
一実施形態では、組成物は、グリセリンを含有する。例えば、組成物は、少なくとも10重量%のグリセリンを含有する。組成物は、少なくとも12重量%のグリセリンを含有してもよい。
【0092】
別の実施形態では、組成物は、0.5~25重量パーセントのグリセリンを含む。一実施形態では、上記の組成物は、1~6重量パーセントのグリセリンを含む。
【0093】
別の実施形態では、組成物は、6.5以下のpHを有する。例えば、組成物は5.5以下のpHを有してもよい。
【0094】
特定の実施形態では、組成物は、少なくとも10重量%のグリセリンを含有し、6.5以下のpHを有する。
【0095】
別の実施形態では、組成物は、0.1~5重量パーセントのセテアリルオリベートを含む。一実施形態では、上記の組成物は、0.1~2重量パーセントのセテアリルオリベートを含む。
【0096】
更なる実施形態では、組成物は、0.1~5重量パーセントのソルビタンオリベートも含む。一実施形態では、上記の組成物は、0.1~2重量パーセントのグリセリンオリベートを含む。
【0097】
便利なセテアリルオリベート及びソルビタンオリベート源は、Hallstar Italiから市販されているOlivem1000である。
【0098】
界面活性剤とは、洗浄又は乳化の意図の表面活性剤を意味する。好適な界面活性剤の例としては、Handbook of Cosmetic Science and Technology(A.Barel、M.Paye及びH.Maibach編、2001年発行、Marcel Dekker,Inc New York,NY)の第37章431~450ページ(Classification of surfactants、L.Oldenhove de Guertechin著)に見られるものが挙げられ、例えば、サルフェートなどのアニオン性界面活性剤、ベタインなどのカチオン性界面活性剤、ココグリシンナトリウムなどの両性界面活性剤、アルキルポリグルコシドなどの非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
好適なキレート化剤の例としては、本発明の組成物を保護及び保存することができるものが挙げられる。好ましくは、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)であり、より好ましくは、Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から商標名VERSENE 100XLとして市販されているEDTA四ナトリウムである。
【0100】
好適な防腐剤としては、例えば、パラベン、四級アンモニウム種、フェノキシエタノール、ベンゾエート、DMDMヒダントイン、有機酸が挙げられ、組成物の総重量に基づいて、約0~約1%又は約0.05%~約0.5%の量で組成物中に存在する。
【0101】
毛髪に光沢を与えるなどの更なる属性を付与する各種コンディショナーはいずれも、本発明における使用に適当である。例としては、約220℃未満の大気圧沸点を有する揮発性シリコーンコンディショニング剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な揮発性シリコーンの例としては、非排他的に、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシクロシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、Dow Corning Corporation(Midland,Michigan)から「DC-345」の商品名で市販されているポリジメチルシクロシロキサンなどのシクロメチコン流体、及びそれらの混合物が挙げられ、並びに好適にはシクロメチコン流体が挙げられる。他の好適なコンディショナーとしては、ポリクオタニウム、カチオン性グアーなどを含むカチオン性ポリマーが挙げられる。
【0102】
各種市販の真珠光沢又は不透明化剤はいずれも、組成物において使用するのに好適である。好適な真珠光沢又は不透明化剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。(a)約16~約22個の炭素原子を有する脂肪酸及び(b)エチレン若しくはプロピレングリコールのいずれかのモノ又はジエステル、(a)約16~約22個の炭素原子を有する脂肪酸、(b)式HO-(JO)a-H(式中、Jは、約2~約3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、aは2又は3である)のポリアルキレングリコールのモノ又はジエステル、約16~約22個の炭素原子を含有する脂肪族アルコール、式:KCOOCH2L(式中、K及びLは、独立して、約15~約21個の炭素原子を含有する)の脂肪族エステル、シャンプー組成物に不溶性の無機固体、並びにこれらの混合物。
【0103】
皮膚において使用するのに好適な任意の芳香剤組成物を本発明に従って使用してよい。
【0104】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、本発明の組成物を含む基材の形態である。任意の適当な基材を使用することができる。適当な基材及び基材材料の例は、例えばその全容を本明細書に参照により援用するところの米国特許出願公開第2005/0226834号及び同第2009/0241242号に開示されている。
【0105】
特定の好ましい実施形態では、基材は、ワイプ、手袋、又はフェイシャルマスクである。好ましくは、このような実施形態は、上記に引用した参照文献において定義されるような水溶性基材で構成される。特定の実施形態では、水溶性基材は使用者の顔面を覆うことで使用者の顔面の周囲にマスク基材として水溶性基材を配置することを容易とするようなサイズ及び形状を有することができる。例えば、水溶性マスク基材は、使用者の口、鼻、及び/又は両目に対する開口部を有することができる。あるいは、水溶性基材はこのような開口部を有さなくともよい。開口部のないこのような構成は、水溶性基材が顔面以外の皮膚部分を覆って被せられるような本発明の実施形態において、又は水溶性基材がワイプとして使用されることを目的とするような場合に有用となり得る。水溶性基材は、角のある形状(例えば長方形)、又は円形若しくは楕円形のような円弧状の形状など、様々な形状を有することができる。特定の実施形態では、基材は、その全容を本明細書に援用するところの米国特許出願公開第2006/0141014号に述べられるような手袋である。本発明の一実施形態では、製品は、異なる形状の複数の水溶性基材を含む。
【0106】
本発明は、皮膚のバリア機能及び/又は保湿性の改善を要する皮膚にピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとの組み合わせを適用することによって、皮膚のバリア機能を改善し、保湿する方法を更に含む。本方法は、例えば、皮膚のバリア機能及び保湿性の改善を要する皮膚に、ピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとの組み合わせを含む本発明の組成物を局所的に塗布することを含む。このような局所適用は、身体、例えば、顔、唇、首、胸、背中、腕、脇の下、手、足及び/又は脚の皮膚の処置を必要としている任意の皮膚に対して行ってよい。ピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとの組み合わせは、好ましくは、皮膚のバリア機能の所望の改善の達成をもたらす有効量で適用される。
【0107】
本発明は、皮膚の老化の少なくとも1つの徴候の外観の改善を要する皮膚にピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとの組み合わせを適用することによって、皮膚の老化の少なくとも1つの徴候の外観を改善する方法を更に含む。本方法は、例えば、皮膚の老化の少なくとも1つの徴候の処置を要する皮膚にピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとを含む本発明の組成物を局所的に塗布することを含む。このような局所適用は、身体、例えば、顔、唇、首、胸、背中、腕、脇の下、手、足及び/又は脚の皮膚の処置を必要としている任意の皮膚に対して行ってよい。ピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとの組み合わせは、好ましくは、皮膚の老化の少なくとも1つの兆候の外観の所望の改善の達成をもたらす有効量で塗布される。
【0108】
要している皮膚に組成物を塗布する、任意の好適な方法を用いてよい。例えば、組成物を、要している皮膚にパッケージから直接塗布してもよく、要している皮膚に手で塗布してもよく、拭き取り用品若しくはマスクなどの基材から移動させてもよく、又はこれらのうちの2つ若しくは3つ以上の組み合わせであってもよい。他の実施形態では、組成物は、スポイト、チューブ、ローラー、スプレー及びパッチを介して適用してもよく、浴槽、又はそうでなければ皮膚などに適用される水に添加してもよい。上記の組成物を、リーブオンクリーム、マスク及び/又はセラムなどを含むが、これらに限定されない様々な方法/形態で適用してよい。
【0109】
特定の実施形態では、本発明の方法は、ピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとを含む少なくとも2つの異なる組成物又は製品を皮膚に塗布することを含む。例えば、本方法は、ピキア・アノマーラの抽出物を含む第1の組成物を塗布することと、続いて、第1の組成物とは異なるレチノールを含む第2の組成物を、処置を要する皮膚に塗布することを含み得る。
【0110】
特定の好ましい実施形態では、第1及び第2の組成物は、ローション、クレンザー、マスク、ワイプ、クリーム、セラム、ゲルなどからなる群から独立して選択することができる。特定の好ましい実施形態では、第1及び第2の組成物の少なくとも一方は、クレンザー、ローション、クリーム、エッセンス、又はセラムであり、他方は、フェイシャルマスク又はワイプである。特定の他の好ましい実施形態では、第1及び第2の組成物の少なくとも一方はクレンザーであり、他方はローション又はクリームである。
【0111】
本発明のこのような組成物を含有する組成物並びに配合物及び製品は、当業者に周知の方法を用いて調製することができる。これらの組成物は、しわ、ハリの喪失、シミの低減を含む不均一な皮膚などの老化する皮膚を処置するうえで有用でありうる。組成物は日常的に使用することができ、皮膚刺激物質を実質的に含まない。
【0112】
以下の非限定的な実施例は、本発明を更に説明するものである。
【実施例】
【0113】
(実施例1)
異なる量のピキア・アノマーア抽出物を含有する試験組成物1~4で皮膚移植片を以下のように処理した後で、ヒト皮膚移植片によるヒアルロン酸(HA)の産生を測定した。
【0114】
最初に、以下の成分を含有するゲルを作製した。
【0115】
【0116】
組成物1~4は、2重量%のゲルを、追加成分と共に、異なる量のピキア・アノマーラ抽出物の5%水溶液と組み合わせることによって作製した。ピキア・アノマーラをキウイ植物上で増殖させた。この5%水溶液を100%の原液として処理した。
【0117】
組成物1~4は、表1に示される成分を含有していた。
【0118】
【0119】
組成物1~4によるHA産生を、3名のドナー(29、30、55歳)から得たヒト皮膚の正常移植片上で免疫組織学的に測定した。直径8mmの打ち抜き片を移植片から切り出し、滅菌ガーゼの小片に付着させ、6ウェルプレートの各ウェルに、3mLの培地と共に1つずつの移植片を入れた。培地は、GIBCO DMEM/F-12(ThermoFisher Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)、カタログ番号11514436)の商標名で販売されており、1%GIBCOペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher Scientific、カタログ番号11528876)及び0.1%アンホテリシンBは、FUNGIZONE(ThermoFisher Scientific、カタログ番号11510496)の商標名で販売されている。
【0120】
各試験組成物について、5μLの試験組成物を、1日1回、5日間にわたって移植片に塗布した。無処置の移植片試料を対照として使用した。7日目に、移植片を回収し、滅菌ガーゼで拭き取った後、縦半分に切断し、4%パラホルムアルデヒド(V/V)で固定した。8日目に移植片を脱水し、パラフィンに埋め込んだ。各試験組成物を3重に試験した。
【0121】
パラフィン処理したスライドをキシレンで脱パラフィン処理し、PTリンク(Agilent,Santa Clara,CA)及び商標名ENVISION Flex,High pH(Dako,DM828,Agilent,Santa Clara,CA)で販売されている標的回収溶液を用いてエピトープ回収を行った。次いで、スライドを、ENVISION(Dako,DM831,Agilent、カリフォルニア州サンタクララ)の商標名で販売される洗浄バッファーで10分間すすいだ。透過処理及び飽和を、PBS0.3%Triton/5%ヤギ血清(Dako,Santa Clara,CA、カタログ番号CP3418/X090710-8)を用いて30分間行い、続いてヒアルロン酸結合タンパク質(Calbiochemの「HAPB」、カタログ番号385911,Millipore Sigma,St.Louis,NJ)で一晩4℃で標識した。翌日、スライドをPBSで3回、それぞれ5分間すすいだ。ALEXA FLUOR 488ストレプトアビジン(Invitrogen(商標)、カタログ番号S11223)の商標名で販売される、蛍光標識に共有結合させたビオチン結合タンパク質を用いて抗体を曝露し、5μg/mLのDAPI溶液(Dako,Santa Clara,CA)を用いて、周囲温度で30分間、核の染色を行った。次いで、スライドをPBSですすぎ、Fluoprepマウンティング培地(bioMerieux UK Ltd.、英国、カタログ番号75521)を用いてマウントした。
【0122】
画像分析システム(NIS-ELEMENTS ARソフトウェア、Nikon Instruments(ニューヨーク州メルビル))と接続したOlympus IX70蛍光顕微鏡(オリンパス株式会社、日本)で皮膚切片の写真を撮影した。ImageJソフトウェアを用いて画像の定量分析を行った。
【0123】
結果を表2に示す。結果は、真皮の平均蛍光強度(任意単位(AU))として表される。蛍光強度(緑色)は、HABPの合成に比例する。
【0124】
【0125】
これらの結果は、皮膚による最大HA生成が、約0.13%重量パーセントのピキア・アノマーラ抽出物を使用して得られることを示唆する。この量を超えるとHAの産生は横ばいとなった。
【0126】
(実施例2)
ヒト皮膚移植片によるヒアルロン酸(HA)の生成を、4つの試験組成物:実施例1に記載の組成物2(ピキア・アノマーラ抽出物を含有する)、組成物5(レチノールを含有する)、並びに本発明による組成物6及び7(両方を含有する)でそれらを処置した後に測定した。
【0127】
組成物5は、0.1重量%のレチノール及び表3に示す他の成分を含有した。
【0128】
【0129】
組成物5を以下のように調製した。冷凍保管していたポリソルベート20;レチノールを取り出した。溶解するまで50℃のオーブンに入れた。アスコルビン酸プレミックス:アスコルビン酸を2%の水と混合し、pHを約5に調整した。後で添加するために40℃で取っておいた。主相:水(アスコルビン酸プレミックスの-2%)を添加し、均一になるまで混合を開始した。次いで、EDTA二ナトリウムを添加した。高速混合下でナトリウムアクリロイルジメチルタウレート/VPクロスポリマーを添加した。作業を進める前に均質であること/完全に水和したことを確認した。目標とする73℃まで加熱を開始した。グリセリン及びブチレングリコールを添加した。65℃超で、カプリリルグリコール、クロルフェネシン、フェノキシエタノール、及びヒアルロン酸ナトリウムを添加した。油相:イソヘキサデカン、PPG15ステアリルエーテル、ペンタエリスリチルテトラエチルヘキサノエート、ジメチコーン;ジメチコーンクロスポリマー、ジメチコーン;トリシロキサン;ジメチコーン;ジメチコーンステアリルアルコール;セテアレス-20及びセテアリルアルコール;セテアレス-20を添加した。混合しながら、目標とする73℃に加熱した。乳化5分前にBHTを添加した。乳化:主相及び油相が約73℃である場合、油相を水相にゆっくりと添加した。10~15分間混合した後、ポリアクリルアミド;ラウレス-7;C13~14イソパラフィンを加える。1分間均質化した(Silverson、4000RPM)。プロペラ混合下で冷却を開始した。後添加:40℃以下で、ポリエチレン、PTFE、及びプレミックス1(アスコルビン酸)を添加した。pHを測定し、6.5~6.8の目標pHに調整した。黄色光及びアルゴンガス下で、レチノール(50℃)を添加し、10~15分間十分に混合した。30~35℃に冷却させた。
【0130】
それぞれ、実施例1に記載のピキア・アノマーラ抽出物の5%溶液の2.5重量%又は5重量%がアスコルビン酸プレミックスの後に添加され、水の量が適宜調整されたことを除き、組成物6及び7は、組成物5と同様に調製された。
【0131】
HA生成は、以下のように免疫組織学を使用して測定した。腹部皮膚試料は、腹壁形成術を受けているヒト成人から得た。インフォームドコンセントを各患者から得、全ての実験工程は、治験審査委員会(IRB)による承認を受けた。皮下脂肪を慎重に除去し、0.93cm2の皮膚生検を減菌条件下で調製し、5%CO2加湿雰囲気下で一晩、2%熱不活性化ウシ胎児血清(Thermofisher Scientific,Bridgewater,NJカタログ番号A3840202)、10μg/mLのインスリン(Sigma Aldrich,Allentown,PA、カタログ番号I0516-5ML)、10ng/mLのヒドロコルチゾン(Sigma Aldrich,Allentown,PA、カタログ番号H0135)、10ng/mLのEGF(Sigma Aldrich,Allentown,PA、カタログ番号11376454001)、1X ABAM(Thermofisher Scientific,Bridgewater,NJ、カタログ番号15240062)を添加した培養培地DMEM/F12(1:1)(Thermofisher Scientific,Bridgewater,NJ、カタログ番号11320082)において順化させた。
【0132】
移植片を、4μLの試験組成物で5日間毎日局所的に処置した。無処置の移植片試料を対照として使用した。6日目に、組織を回収した。回収した組織を緩衝ホルマリンで24時間固定した。固定後、試料を脱水し、Leica TP 1020脱水オートマット(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)を使用してパラフィンを含浸させた。Leica EG 1160包埋ステーション(Leica Biosystems)を使用して試料を包埋した。Leica RM 2125 Minot型ミクロトーム(Leica Biosystems)を使用して厚さ5μmの切片を作成し、商標名SUPERFROSTで販売されている組織学用ガラススライドに切片を載置した。顕微鏡観察は、Leica DMLB(Leica Biosystems)又はOlympus BX43顕微鏡(Olympus Corporation,Japan)を使用して実現した。写真を、CellD保存ソフトウェア(Olympus Corporation,Japan)を用いて、numeric DP72 Olympusカメラでデジタル化した。室温で1時間の間に、PBS-BSA 0.3%中に1:100で希釈したビオチン化HABP(AMS Biotechnology Limited,Abingdon,UK、製品コードAMS.HKD.BC41)を使用して、パラフィン化切片上でヒアルロン酸の染色を実施し、ストレプトアビジン/ビオチン系で増強し、商標Vector VIP(Vector Laboratories,Burlingame CA、カタログ番号SK-4600)で販売されているペルオキシダーゼ基質を使用して明らかにした。染色を顕微鏡観察により評価した。
【0133】
結果を表4に示す。
【0134】
【0135】
本発明によるピキア・アノマーラ抽出物とレチノールとの組み合わせを含有する組成物6及び7による組織移植片の処置では、レチノールのみを含有する組成物5又はピキア・アノマーラ抽出物のみを含有する組成物2のいずれかと比較してHA生成が増加していた。
【0136】
更に、0.1%のレチノール及び0.13重量%のピキア・アノマーラ抽出物を含有する組成物7は、HAPBにおいて、無処置に対して72.39%の増加をもたらしたのに対し、0.13重量%のピキア・アノマーラ抽出物を含有する組成物2は、無処置に対して40.90%のみの増加をもたらし、0.1重量%のレチノールを含有する組成物5は、無処置に対して42.48%のみの増加をもたらした。
【0137】
(実施例3)
ヘパリン結合表皮成長因子(HBEGF)、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、及びCD44の遺伝子発現を、組成物5(0.1重量%のレチノール)、実施例1に記載のピキア・アノマーラの抽出物の5%溶液、並びに組成物5とピキア・アノマーラの抽出物の5%溶液との併用塗布について測定した。
【0138】
最初に、腹壁形成術を受けているヒト成人から腹部皮膚試料を得た。インフォームドコンセントを各患者から得、全ての実験工程は、治験審査委員会(IRB)によって承認を受けた。皮下脂肪を慎重に除去し、0.93cm2の皮膚生検を減菌条件下で調製し、5%CO2加湿雰囲気下で一晩、10%抗生物質を添加したケラチノサイト成長培地(商標名KGM-GOLD BULLETKIT(Lonza,Walkersville,MD)で販売)で順化させた。
【0139】
皮膚移植片を、4μLの様々な製剤で局所的に処置し、48時間インキュベートした。無処置の移植片試料を対照として使用した。組成物5と、ピキア・アノマーア抽出物の5%溶液とを組み合わせて塗布する場合、それぞれ4μLを塗布した。48時間後、表皮及び真皮を加熱し分離した。これらのそれぞれを、スクリューキャップ及びOリングクロージャを備えた強化チューブに入れた100部のRLT緩衝液(RNeasy Miniキット、Qiagen,Valencia,CA)対1部の2-メルカプトエタノール、及び組織研削用のチューブ内のセラミックビーズ(商標名PRECELLYS CKMix50-R,Bertin Corp,Rockville,MDで販売されている)からなる400μLの溶解緩衝液に溶解した。チューブを、6300rpmで40秒間振盪した。製造元の使用説明に従いRNeasy Miniキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して溶液からRNAを抽出し、RNAを25μLのRNaseフリー水に溶出した。Applied Biosystems High Capacity Reverse Transcription Kit(ThermoFisher Scientific,Bridgewater,NJ)を使用して逆転写(RT)を実施した。
【0140】
遺伝子発現アッセイを、SyBR green方法に基づくリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって実施した。qPCRは、商標名CFX96 TOUCH(Bio-Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)で販売されているリアルタイムPCRシステムで実施した。これらの遺伝子の発現を、ヒトRNA 18Sハウスキーピング遺伝子の発現に対して正規化した。無処置対照と比較して倍率変化を計算し、ANOVA統計試験を実施した。
【0141】
結果を表5、6、及び7に示す。
【0142】
【0143】
レチノールとピキア・アノマーラ抽出物との組み合わせの塗布は、レチノール単独から得られるHBEGF発現(291)と比較して、HBEGF発現(494)において予想外のブーストをもたらした。これは、ほぼ70%の増加であった。
【0144】
【0145】
レチノールとピキア・アノマーラ抽出物との組み合わせの塗布は、レチノール単独+ピキア・アノマーラ抽出物単独に予想される相加的結果(22)と比較して、HAS2発現の刺激において予想外の増加(ほぼ70%)(37)をもたらした。
【0146】
【0147】
レチノールとピキア・アノマーラ抽出物との組み合わせの塗布は、レチノール単独+ピキア・アノマーラ抽出物単独に予想される相加的結果(20)と比較して、CD44発現の予想外の刺激(65)をもたらした。これは、225%の増加であった。
【0148】
〔実施の態様〕
(1) ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとを含む局所用組成物。
(2) 前記ピキア・アノマーラの抽出物が、キウイ果実又は葉に存在するピキア・アノマーラの株から調製されるものである、実施態様1に記載の局所用組成物。
(3) 前記ピキア・アノマーラの抽出物が、サトウキビに存在するピキア・アノマーラの株から調製されるものである、実施態様1に記載の局所用組成物。
(4) 前記局所用組成物中の前記ピキア・アノマーラの抽出物のレチノールに対する重量比が約1.3である、実施態様1に記載の局所用組成物。
(5) 少なくとも10重量%のグリセリンを更に含む、実施態様1に記載の局所用組成物。
【0149】
(6) 6.5以下のpHを有する、実施態様1に記載の局所用組成物。
(7) 皮膚老化の徴候を処置する方法であって、皮膚老化の処置を要する皮膚に、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとを含む局所用組成物を局所的に塗布することを含む、方法。
(8) 皮膚のバリア機能及び保湿性を改善する方法であって、皮膚のバリア機能及び保湿性の改善を要する皮膚に、ピキア・アノマーラの抽出物とレチノールとを含む局所用組成物を局所的に塗布することを含む、方法。
(9) ピキア・アノマーラの抽出物と接触されたときに皮膚により生成されるヒアルロン酸の量を増加させる方法であって、レチノールと組み合わせた前記抽出物を前記皮膚と接触させることを含む、方法。